特許第6392713号(P6392713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392713切削液の付着を報知可能なモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392713
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】切削液の付着を報知可能なモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20180910BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20180910BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180910BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20180910BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20180910BHJP
   H02K 5/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   G01M3/20 N
   H05K5/02 L
   C09K3/00 Y
   B23Q17/00 A
   B23Q11/08 Z
   H02K5/02
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-149841(P2015-149841)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-31250(P2017-31250A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】熊本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 康之
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 樹一
(72)【発明者】
【氏名】益田 直樹
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−103750(JP,A)
【文献】 特開2003−001544(JP,A)
【文献】 特開2008−090010(JP,A)
【文献】 特開平07−140078(JP,A)
【文献】 特開2015−098142(JP,A)
【文献】 特開2009−115737(JP,A)
【文献】 特開2005−161471(JP,A)
【文献】 特開2012−116922(JP,A)
【文献】 特開平11−179631(JP,A)
【文献】 特表2014−515487(JP,A)
【文献】 特開2011−189505(JP,A)
【文献】 特開2014−146393(JP,A)
【文献】 特開2015−089229(JP,A)
【文献】 特開2015−159159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/20
B23Q 11/08
B23Q 17/00
C09K 3/00
H02K 5/02
H05K 5/02
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、
前記電子部品を収容する筐体であって、該筐体の外面の少なくとも一部、切削液と接触したときに該切削液に含まれる成分に反応して変色する変色物質を含有する、筐体と、を備える、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記筐体の少なくとも一部は、接触した前記切削液の濃度に応じて異なる色に変色する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記切削液と接触したときに変色する材料から構成される、請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記筐体は、
本体部と、
該本体部の外面に設けられ、前記切削液と接触したときに変色する変色部と、を有する、請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記変色部は、前記本体部の外面に着脱可能に取り付けられる、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記変色部は、前記本体部の外面に積層された薄膜層である、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記本体部は、該本体部の外面に付着した前記切削液の流路を有し、
前記変色部は、前記流路上に配置される、請求項4〜6のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記流路は、前記本体部の外面から凹む溝によって形成される、請求項7に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
前記切削液は、塩素または臭素を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項10】
前記筐体は、前記切削液と接触したときに変色する酸塩基指示薬を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削液が付着したことを使用者に報知可能なモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等に内蔵されるサーボモータを駆動するモータ駆動装置において、モータ駆動装置に内蔵された電子部品に切削液等が付着するのを防止する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−103750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本技術分野において、モータ駆動装置の筐体に切削液が付着したときにその旨を使用者に確実に認識させることができる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様において、モータ駆動装置は、電子部品と、電子部品を収容する筐体とを備える。筐体の少なくとも一部は、切削液と接触したときに変色する。筐体の少なくとも一部は、接触した切削液の濃度に応じて異なる色に変色してもよい。
【0006】
筐体は、切削液と接触したときに変色する材料から作製されてもよい。筐体は、本体部と、該本体部の外面に設けられ、切削液と接触したときに変色する変色部とを有してもよい。
【0007】
変色部は、本体部の外面に着脱可能に取り付けられてもよい。変色部は、本体部の外面に積層された薄膜層であってもよい。本体部は、該本体部の外面に付着した切削液の流路を有してもよい。記変色部は、流路上に配置されてもよい。
【0008】
流路は、本体部の外面から凹む溝によって形成されてもよい。切削液は、塩素または臭素を含んでもよい。筐体は、切削液と接触したときに変色する酸塩基指示薬を含有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るモータ駆動装置の斜視図であって、図中の領域(a)は、筐体の断面図を示している。
図2図1に示す筐体の機能を説明するための図であって、図中の領域(a)は、切削液の濃度と変色の度合との関係を示している。
図3】本発明の他の実施形態に係るモータ駆動装置の斜視図である。
図4図3に示す筐体の機能を説明するための図である。
図5】本発明のさらに他の実施形態に係るモータ駆動装置の斜視図である。
図6図5に示す筐体を、図5中のy−z平面で切断した断面図である。
図7図5に示す筐体を右側(x軸プラス方向の側)から見た側面図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態に係るモータ駆動装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るモータ駆動装置10について説明する。なお、以下の説明においては、図中の直交座標系を基準とし、便宜上、x軸プラス方向を右方、y軸プラス方向を前方、z軸プラス方向を上方とする。
【0011】
モータ駆動装置10は、工作機械等に内蔵されたサーボモータに電力を供給し、該サーボモータを駆動するための装置である。モータ駆動装置10は、通常、工作機械のワークセルに隣接して配置された制御盤の内部に収容されている。
【0012】
モータ駆動装置10は、電子部品12と、該電子部品12を収容する筐体14とを備える。電子部品12は、パワー素子等を含み、工作機械等のサーボモータへ供給される電力を生成する。
【0013】
筐体14は、直方体状の中空部材であって、底壁16、前壁18、後壁20、左壁22、右壁24、および上壁26を有する。前壁18は、底壁16の前端縁から上方へ立ち上がるように設けられている。
【0014】
後壁20は、底壁16の後端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、前壁18と対向する。左壁22は、底壁16の左端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、前壁18と後壁20との間で延在する。
【0015】
右壁24は、底壁16の右端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、左壁22と対向し、前壁18と後壁20との間で延在する。上壁26は、底壁16と対向して配置され、前壁18、後壁20、左壁22、および右壁24の上端縁に接続されている。
【0016】
本実施形態においては、電子部品12は、基板28の上に実装されており、該基板28は、筐体14の底壁16に固定されている。
【0017】
筐体14(すなわち、底壁16、前壁18、後壁20、左壁22、右壁24、および上壁26の各々)は、2層構造を有している。具体的には、図1中の領域(a)に示すように、筐体14は、本体部30および変色部32を有する。変色部32は、該本体部30の外面30aに積層された薄膜層であって、筐体14の外面を構成している。
【0018】
本体部30は、例えば樹脂材料から構成されている。一方、変色部32は、工作機械に使用される切削液と接触したときに、該切削液に含まれる成分に反応して変色する変色物質を含む。
【0019】
この変色物質は、例えば、酸塩基指示薬、酸化還元指示薬、または吸着指示薬等の指示薬を含む。この場合、変色部32は、切削液に含有されている成分(例えば、塩素または臭素)の濃度に応じて、異なる色に変色する。ここで、「異なる色に変色する」とは、ある特定の色の濃淡が変化する場合や、異なる波長の色(赤、青、黄色)に変化することを含む。
【0020】
一例として、変色部32は、変色物質(指示薬等)を含有する塗料を、本体部30の外面に塗布することによって、形成される。また、他の例として、変色部32は、変色物質(指示薬等)を含有する材料を、CVD等の手法によって本体部30の外面に積層させることによって、形成される。
【0021】
また、さらに他の例として、変色部32を、変色物質(指示薬等)を含有する薄膜(例えば、可撓性フィルムまたは紙材)から構成し、該薄膜を、接着剤等を介して、本体部30の外面に貼着してもよい。
【0022】
次に、図1および図2を参照して、本実施形態に係る筐体14の機能について説明する。上述したように、モータ駆動装置10は、工作機械に隣接する制御盤の内部に収容されている。
【0023】
このような工作機械において、該工作機械の作業中に発生する切削液が、制御盤の内部に進入し、モータ駆動装置10の筐体14に付着してしまう場合がある。工作機械に使用される切削液は、例えば塩素または臭素を含んでおり、電子部品12に接触した場合、該電子部品12の腐食や故障を引き起こしてしまう場合がある。
【0024】
このような切削液による電子部品12の腐食または故障を防止するべく、本実施形態に係る筐体14は、切削液が該筐体14に付着したときに、その旨を使用者に確実に報知する。
【0025】
具体的には、上述したように筐体14の外面は、切削液と接触することで変色する変色部32によって構成されている。したがって、切削液が制御盤の内部に進入して筐体14に付着した場合、切削液が付着した部分の変色部32が、変色する。
【0026】
図2に、変色部32の変色の態様の一例を示す。図2中の領域(a)に示すように、本実施形態においては、変色部32は、接触した切削液に含有されている成分(例えば、塩素または臭素)の濃度が低いと、淡い色に変色する一方、切削液に含有されている成分(例えば、塩素または臭素)の濃度が高くなるにつれて、より濃い色に変色するように、構成されている。
【0027】
図2に示す例においては、変色部32は、筐体14の外面上の領域34において濃い色に変色し、該領域34の周辺の領域36において淡い色に変色している。この場合、使用者は、制御盤内に進入した切削液が領域34に主に付着し、次いでその周囲の領域36まで拡がったものと推察できる。
【0028】
このように、本実施形態によれば、制御盤の内部に切削液が進入し、筐体14の外面に付着していることを、色の変色によって、使用者に報知する。このため、使用者は、制御盤の内部への切削液の進入および筐体14への付着を、視覚的に認識することができ、進入した切削液によって電子部品12が故障するのを未然に防ぐための予防策を講じることができる。
【0029】
また、使用者は、変色部32の変色の分布から、制御盤の内部への切削液の進入経路を推察することもできる。例えば、図2に示す例の場合、濃い色の領域34の近傍において、制御盤の内部へ切削液が進入している可能性が高い。このため、使用者は、制御盤における、切削液が進入しているポイントを、特定し易くなる。
【0030】
また、本実施形態においては、上述のように切削液の浸入を早期に検知できるので、切削液の浸入を予防する観点からモータ駆動装置10を密閉構造とする必要がなく、また、冷却ファンを取り除く必要もない。これにより、モータ駆動装置10の熱設計に対する自由度を高めることもできる。
【0031】
なお、本実施形態においては、筐体14を、本体部30および変色部32の2層構造で構成した場合について述べた。しかしながら、筐体自体を、切削液と接触したときに変色する材料から作製してもよい。
【0032】
例えば、切削液と接触して変色する変色物質(指示薬等)を基材(例えば樹脂)に混入し、筐体を、基材と変色物質の混合材料から作製してもよい。このように作製された筐体においても、上述した筐体14と同様に、切削液が該筐体の外面に付着した場合に、図2に示すように変色する。したがって、使用者は、制御盤の内部への切削液の進入および筐体への付着を視覚的に認識できる。
【0033】
なお、本実施形態においては、筐体14の全体(すなわち、底壁16、前壁18、後壁20、左壁22、右壁24、および上壁26の各々)が、本体部30および変色部32の2層構造を有している場合について述べた。
【0034】
しかしながら、これに限らず、筐体14の一部(例えば、前壁18、右壁24、および上壁26)のみを、本体部30および変色部32の2層構造とし、筐体14の他の部分(例えば、底壁16、後壁20、および左壁22)を、本体部30の1層構造としてもよい。
【0035】
次に、図3を参照して、他の実施形態に係るモータ駆動装置40について説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、既に述べた実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
モータ駆動装置40は、電子部品12と、該電子部品12を収容する筐体42とを備える。筐体42は、本体部44と、該本体部44の外面上に着脱可能に取り付けられた変色部46とを有する。
【0037】
本体部44は、例えば、樹脂等から構成された直方体状の中空部材であって、底壁48、前壁50、後壁52、左壁54、右壁56、および上壁58を有する。電子部品12は、基板28の上に実装されており、該基板28は、本体部44の底壁48に固定されている。
【0038】
前壁50は、底壁48の前端縁から上方へ立ち上がるように設けられている。後壁52は、底壁48の後端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、前壁50と対向する。左壁54は、底壁48の左端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、前壁50と後壁52との間で延在する。
【0039】
右壁56は、底壁48の右端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、左壁54と対向し、前壁50と後壁52との間で延在する。上壁58は、底壁48と対向して配置され、前壁50、後壁52、左壁54、および右壁56の上端縁に接続されている。
【0040】
変色部46は、本体部44とは別体の薄膜であって、例えば、剥離可能な粘着テープ等を介して、本体部44に着脱可能に取り付けられている。変色部46は、上述の変色部32と同様に、切削液と接触したときに該切削液に含まれる成分に反応して変色する変色物質を含有する。
【0041】
変色部46は、本体部44の外面のうち、電子部品12の近傍の領域を覆うように、配置されている。具体的には、図3に示す例においては、電子部品12は、本体部44の底壁48の右後方側の領域に、配置されている。変色部46は、後壁52の外面の右側の領域と、右壁56の外面の後方側の領域と、上壁58の外面の右後方側の領域を覆っている。
【0042】
次に、図3および図4を参照して、本実施形態に係る筐体42の機能について説明する。図4に示す例においては、変色部46は、領域60において濃い色に変色し、該領域60の周辺の領域62において淡い色に変色している。この場合、使用者は、制御盤内に進入した切削液が領域60に主に付着し、次いでその周囲の領域62まで広がったものと推察できる。
【0043】
本実施形態においては、変色部46は、本体部44の外面のうち、電子部品12の近傍の領域を覆うように配置されている。この構成によれば、使用者は、制御盤の内部に進入した切削液が、筐体42のうち、電子部品12の近傍の領域に付着したか否かを、重点的に検知することができる。
【0044】
したがって、使用者は、切削液によって電子部品12が故障するリスクを効果的に認識することができ、これに応じて、故障を未然に防ぐための予防策を講じることができる。
【0045】
その一方で、本実施形態においては、切削液が付着したとしても電子部品12が故障するリスクの低い本体部44の領域(すなわち、電子部品12から所定の距離だけ離れている領域)においては、変色部46を設けていない。したがって、変色部46に係る材料コストを削減できる。
【0046】
次に、図5図7を参照して、さらに他の実施形態に係るモータ駆動装置70について説明する。モータ駆動装置70は、電子部品12と、該電子部品12を収容する筐体72とを備える。筐体72は、本体部74と、該本体部74の外面上に設けられた変色部76、78、80、および82とを有する。
【0047】
本体部74は、例えば、樹脂等から構成された直方体状の中空部材であって、底壁84、前壁86、後壁88、左壁90、右壁92、および上壁94を有する。電子部品12は、基板28の上に実装されており、該基板28は、本体部74の底壁84に固定されている。
【0048】
前壁86は、底壁84の前端縁から上方へ立ち上がるように設けられている。後壁88は、底壁84の後端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、前壁86と対向する。左壁90は、底壁84の左端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、前壁86と後壁88との間で延在する。
【0049】
右壁92は、底壁84の右端縁から上方へ立ち上がるように設けられ、左壁90と対向し、前壁86と後壁88との間で延在する。図5および図7に示すように、右壁92には、溝96が形成されている。
【0050】
溝96は、右壁92の外面から内方へ凹むように形成され、前壁86に形成された第1の開口端98と、後壁88に形成された第2の開口端100との間で延在している。より具体的には、溝96は、位置Pから第1の開口端98まで延在する第1溝部102と、位置Pから第2の開口端100まで延在する第2溝部104とを有する。位置Pは、右壁92の前後方向の中央部に位置している。
【0051】
第1溝部102は、位置Pから前方へ向かうにつれて下方へ向かうように、水平面(すなわち、x−y平面)に対して傾斜している。一方、第2溝部104は、位置Pから後方へ向かうにつれて下方へ向かうように、水平面に対して傾斜している。
【0052】
ここで、第2溝部104は、電子部品12の近傍を通過するように、配置されている。第1溝部102と第2溝部104とは互いに連通する。
【0053】
上壁94は、底壁84と対向して配置され、前壁86、後壁88、左壁90、および右壁92の上端縁に接続されている。図5および図6に示すように、上壁94には、溝106が形成されている。
【0054】
溝106は、上壁94の外面から内方へ凹むように形成され、前壁86に形成された第1の開口端108と、後壁88に形成された第2の開口端110との間で延在している。より具体的には、溝106は、位置Pから第1の開口端108まで延在する第1溝部112と、位置Pから第2の開口端110まで延在する第2溝部114とを有する。
【0055】
位置Pは、上壁94の前後方向の中央部に位置している。第1溝部112は、その上下方向の深さが、位置Pから前方へ向かうにつれて深くなるように、形成されている。一方、第2溝部114は、その上下方向の深さが、位置Pから後方へ向かうにつれて深くなるように、形成されている。
【0056】
ここで、第2溝部114は、電子部品12の近傍(直上)を通過するように、配置されている。第1溝部112と第2溝部114とは互いに連通する。
【0057】
変色部76、78、80、および82の各々は、略四角形の薄膜であって、例えば、剥離可能な粘着テープ等を介して、本体部74の外面上に着脱可能に取り付けられている。変色部76、78、80、および82の各々は、上述の変色部32、46と同様に、切削液と接触したときに該切削液に含まれる成分に反応して変色する変色物質を含有する。
【0058】
変色部76は、後壁88の外面における、溝106の第2の開口端110の直下の位置に、配置されている。一方、変色部78は、前壁86の外面における、溝106の第1の開口端108の直下の位置に、配置されている。
【0059】
また、変色部80は、後壁88および右壁92の外面における、溝96の第2の開口端100の直下の位置に配置されている。一方、変色部82は、右壁92および前壁86の外面における、溝96の第1の開口端98の直下の位置に、配置されている。
【0060】
次に、図5図7を参照して、本実施形態に係る筐体72の機能について説明する。筐体72の上壁94に形成された溝106は、該上壁94の外面に切削液が付着した場合、付着した切削液の流路を形成する。
【0061】
より具体的には、上壁94の外面に切削液が付着して蓄積すると、付着した切削液の少なくとも一部は、溝106内に入り込んで溜まる。上述したように、溝106は、第1の開口端108または第2の開口端110に向かってその深さが徐々に深くなるように形成されている。
【0062】
したがって、溝106内に溜まった切削液は、重力の作用により、第1の開口端108または第2の開口端110に向かって溝106内を流れることになる。そして、第1の開口端108に流れ着いた切削液は、重力の作用により、前壁86の外面上を下方へ流れて、第1の開口端108の直下の位置に配置された変色部78に到達することになる。
【0063】
一方、第2の開口端110に流れ着いた切削液は、重力の作用により、後壁88の外面上を下方へ流れて、第2の開口端110の直下の位置に配置された変色部76に到達することになる。
【0064】
同様に、筐体72の右壁92に形成された溝96は、該右壁92の外面に付着した切削液の流路を形成する。具体的には、溝96は、上述したように水平面に対して傾斜するように延在している。
【0065】
したがって、溝96内に溜まった切削液は、重力の作用により、第1の開口端98または第2の開口端100へ向かって流れることになる。そして、第1の開口端98に流れ着いた切削液は、重力の作用により、前壁86または右壁92の外面上を下方へ流れて、第1の開口端98の直下の位置に配置された変色部82に到達することになる。
【0066】
一方、第2の開口端100に流れ着いた切削液は、重力の作用により、後壁88または右壁92の外面上を下方へ流れて、第2の開口端100の直下の位置に配置された変色部80に到達することになる。
【0067】
このように、本実施形態においては、溝96、106は、上述したような切削液の流路を形成し、変色部76、78、80、82は、切削液の流路上に配置されている。したがって、筐体72の外面に付着した切削液を、効果的に変色部76、78、80、82まで導くことができる。
【0068】
この構成によれば、筐体72に切削液が付着したことを、変色部76、78、80、82によって、より効率的に検知することができる。また、使用する変色部76、78、80、82の寸法を小型化することができるので、変色部に係る材料コストを削減できる。
【0069】
なお、本実施形態においては、右壁92および上壁94に、それぞれ、溝96および106を1つずつ形成した場合について述べた。しかしながら、前壁86、後壁88、左壁90等のような、右壁92および上壁94以外の本体部74の部分に溝を形成してもよい。
【0070】
前壁86、後壁88、左壁90、右壁92、および上壁94の各々に1つずつ溝を形成してもよいし、または、前壁86、後壁88、左壁90、右壁92、および上壁94の各々に複数の溝を形成してもよい。
【0071】
この場合において、溝は、電子部品12の近傍を通過するように配置されてもよい。これにより、電子部品12の近傍において、切削液の付着を検知する感度を高めることができる。
【0072】
次に、図8を参照して、さらに他の実施形態に係るモータ駆動装置120について説明する。モータ駆動装置120は、電子部品12と、該電子部品12を収容する筐体122とを備える。
【0073】
筐体122は、上述の本体部44と、該本体部44の右壁56の外面上に着脱可能に取り付けられた補助部材124と、該補助部材124の外面に設けられた変色部80、82とを有する。
【0074】
本実施形態においては、補助部材124は、板状であって、本体部44の右壁56の外面に、ボルト等の締結工具または接着剤等を介して、着脱可能に取り付けられている。補助部材124には、上述の溝96が形成されている。溝96は、補助部材124の右端面126から内方へ凹むように形成されている。
【0075】
変色部82は、補助部材124の外面における、溝96の第1の開口端98の直下の位置に配置されている。一方、変色部80は、補助部材124の外面における、溝96の第2の開口端100の直下の位置に配置されている。
【0076】
このように、本実施形態においては、溝96と変色部80、82とが設けられた補助部材124を、本体部44とは別体として作製し、該補助部材124を本体部44に着脱可能に取り付けている。
【0077】
この構成によれば、使用者は、モータ駆動装置120の用途に応じて、筐体122に、切削液の付着を検知する機能を付与するか否かを選択できる。したがって、モータ駆動装置の広範な用途に対して、柔軟に対応することができる。
【0078】
なお、本実施形態に係る筐体122において、補助部材124とは別に、図5の溝106と変色部76、78とを有する第2の補助部材をさらに設けてもよい。この場合、第2の補助部材は、本体部44の上壁58の外面上に、着脱可能に取り付けられ得る。
【0079】
また、本実施形態においては、補助部材124が溝96と変色部80、82とを有する場合について述べた。しかしながら、補助部材は、溝96または変色部80、82のみを有するものであってもよい。
【0080】
また、筐体は、直方体形状に限らず、例えば円柱状であってもよいし、または他の如何なる形状であってもよい。
【0081】
また、上述の実施形態においては、変色部32、46、76、78、80、82が、切削液に含有されている成分の濃度に応じて、異なる色に変色する場合について述べた。しかしながら、変色部32、46、76、78、80、82は、切削液の濃度に関わらず、切削液と接触したときに、所定の色に変色するだけのものであってもよい。
【0082】
また、上述の実施形態においては、切削液の濃度に応じて、変色部32、46、76、78、80、82の色の濃淡が変化する場合について述べた。しかしながら、変色部32、46、76、78、80、82は、切削液の濃度に応じて、異なる波長の色(赤、青、黄色)に変色してもよい。
【0083】
また、切削液は、上述した塩素や臭素に限らす、例えば、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、含フッ素系溶剤、含リン系溶剤、含ケイ素系溶剤等を含んでもよい。
【0084】
ここで、炭化水素系溶剤は、オレフィンオリゴマー、ポリブテン、またはアルキルベンゼン等を含む。また、エステル系溶剤は、脂肪酸エステル等を含む。また、エーテル系溶剤は、ポリアルキレングリコール、またはフェニルエーテル等を含む。
【0085】
また、含フッ素系溶剤は、パーフルオロポリエーテル、またはパーフルオロカーボン等を含む。また、含リン系溶剤は、リン酸エステル等を含む。また、含ケイ素系溶剤は、シリコーン、ケイ酸エステル、またはテトラアルキルシリコン等を含む。
【0086】
変色部32、46、76、78、80、82は、上述した種々の材料のいずれかを含む切削液と接触したときに変色する変色物質(指示薬等)を含有する。
【0087】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得るが、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0088】
10,40,70,120 モータ駆動装置
12 電子部品
14,42,72,122 筐体
30,44,74 本体部
32,46,76,78,80,82 変色部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8