特許第6392718号(P6392718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392718車両用電池パックのサービスプラグの保護カバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392718
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】車両用電池パックのサービスプラグの保護カバー
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20180910BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20180910BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20180910BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20180910BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20180910BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALN20180910BHJP
【FI】
   B60R16/04 J
   H01M2/34 B
   H01M2/10 S
   !H01M10/613
   !H01M10/625
   !H01M10/6563
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-175335(P2015-175335)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-52302(P2017-52302A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年11月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中津留 義樹
(72)【発明者】
【氏名】長峰 浩一
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 尚憲
(72)【発明者】
【氏名】三島 拓也
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−107542(JP,A)
【文献】 特開2013−248969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
H01M 2/10
H01M 2/34
10/613
10/625
10/6563
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート下部に配置された電池パックを車室内から仕切り、前記電池パックに挿抜可能なサービスプラグを操作するための操作用開口が設けられた内装パネルと、
前記操作用開口を閉じた状態で前記内装パネルに取り付けられ、前記サービスプラグと近接して対抗配置された内装トリムと、
前記内装トリムの内側に設けられ、前記内装トリムの前記サービスプラグを取り囲む複数の位置から前記電池パックに向かってそれぞれ突出するリブと、
を備え、
前記リブは、前記内装トリムが前記サービスプラグ側に移動したとき、前記内装トリムが前記サービスプラグに接触するよりも先に前記電池パックに接触することを特徴とする車両用電池パックのサービスプラグの保護カバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池パックのサービスプラグの保護カバーに関し、電池パックに対して挿抜可能なサービスプラグを保護するサービスプラグの保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車等には、車両を駆動するモータに電力を供給する電池パックが搭載されている。この電池パックには、メンテナンス等の際に電池パックの高電圧回路を遮断するサービスプラグやブレーカが設けられている。特に、サービスプラグは、電池パックに対して挿抜可能に設けられており、電池パックから抜き取ることによって高電圧回路を遮断する。サービスプラグやブレーカは車室内から操作される場合があり、誤操作を防止するために、通常、保護カバーで覆われている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−344950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成のようにサービスプラグは、独立した専用の保護カバーで覆われているので、部品点数が増えコストもかかる。また、電池パックはシート下部等に配置されることがあり、電池パックと一体的に設けられるサービスプラグもシート下部等に配置される。サービスプラグがシート下部に配置される場合、シート下部においてサービスプラグは保護カバーで覆われるが、乗員の足による押圧により保護カバーが変形することがある。保護カバーの変形により、保護カバーがサービスプラグに接触すると、この接触による外力によってサービスプラグが振動して接点摩耗する可能性がある。
【0005】
このため、サービスプラグへの外力作用を抑制するために保護カバーの剛性を高めることが考えられるが、保護カバーのコストや重量が増加してしまう。あるいは、保護カバーとサービスプラグとの間隔を広げることも考えられるが、保護カバーとサービスプラグとの間隔を広げると、その分空間が必要になり大型化してしまう。また、サービスプラグまでの距離が遠くなって操作しにくくなり、メンテナンス作業時のサービスプラグの挿抜作業が煩雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明では、サービスプラグの保護カバーのコストを低減するとともに、サービスプラグのメンテナンス時の作業性を向上しつつ、保護カバーがサービスプラグに接触することを防止して、サービスプラグの接点摩耗を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用電池パックのサービスプラグの保護カバーは、シート下部に配置された電池パックを車室内から仕切り、前記電池パックに挿抜可能なサービスプラグを操作するための操作用開口が設けられた内装パネルと、前記操作用開口を閉じた状態で前記内装パネルに取り付けられ、前記サービスプラグと近接して対抗配置された内装トリムと、前記内装トリムの内側に設けられ、前記内装トリムの前記サービスプラグを取り囲む複数の位置から前記電池パックに向かってそれぞれ突出するリブと、を備え、前記リブは、前記内装トリムが前記サービスプラグ側に移動したとき、前記内装トリムが前記サービスプラグに接触するよりも先に前記電池パックに接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サービスプラグの保護カバーのコストを低減できるとともに、サービスプラグのメンテナンス時の作業性を向上しつつ、保護カバーがサービスプラグに接触することを防止して、サービスプラグの接点摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電池パックがリアシート下部に配置された状態を示す斜視図である。
図2】リアシート下部の拡大断面図である。
図3】内装トリムと電池パックとの展開斜視図である。
図4】内装トリムとサービスプラグを簡略化したリアシート下部の拡大断面図であり、(A)は通常時の内装トリムの状態を示し、(B)は応力により変形した内装トリムの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、ハイブリッド自動車の駆動用モータに電力を供給する電池パック1の配置位置について説明する。図1において、前後左右、上下の記載は、ハイブリッド自動車の前後左右、上下方向を示す。図1に示すように、リアシート4の下部に形成される空間5、すなわち、フロアパネル3とリアシート4との間に形成される空間5には、ハイブリッド自動車の左右方向に長い電池パック1と、電池パック1に冷却空気を送給する電池冷却装置30とが配置されている。
【0011】
リアシート4の座面前面の下側には、電池パック1が収容された空間5の前面を覆う内装パネル6が取り付けられている。このため、図2に示すように、車室2と空間5との間は内装パネル6で仕切られている。
【0012】
電池冷却装置30は、電池パック1の右側側面に配置されている。電池冷却装置30は、冷却ファン31と、冷却ファン31と電池パック1とを接続する接続ダクト32と、冷却ファン31と内装パネル6に設けられた吸気口33aとを接続する吸気ダクト33とを備えている。吸気口33aから吸い込まれた車室2内の空気は、吸気ダクト33を通って冷却ファン31に吸い込まれ、接続ダクト32から電池パック1に送給され、電池パック1を冷却する。電池パック1を冷却した後の空気は、図示しない排気ダクトから車室2外に排気される。
【0013】
図2に示すように、電池パック1は、バッテリモジュール10と、高電圧回路を電気的に遮断するサービスプラグ11と、バッテリモジュール10を収納するバッテリカバー12とを備えている。
【0014】
バッテリモジュール10は、例えば、リチウムイオン電池で構成されるバッテリセルを複数個直列に接続して一体化したものである。これにより、走行駆動等の動力源となる高電圧回路が形成されている。
【0015】
バッテリモジュール10には、この高電圧回路を遮断するサービスプラグ11が設けられている。サービスプラグ11は、ハイブリッド自動車のメンテナンスの際に、作業者の感電を防止するために高電圧回路を遮断して、メンテナンス終了後に高電圧回路を接続する電源回路遮断装置である。サービスプラグ11は、高電圧回路の一部に接続されたソケット11aと、このソケット11aに挿抜可能なプラグ11bとを備えている。プラグ11bがソケット11aに挿入されることで高電圧回路は接続され、プラグ11bがソケット11aから抜き取られることで高電圧回路は遮断される。
【0016】
図1、2に示すように、バッテリカバー12は、バッテリモジュール10を覆う板金製の箱型ケースであり、図示しないステーによりフロアパネル3に固定されている。バッテリカバー12のサービスプラグ11を覆う面は、サービスプラグ11のプラグ11bの先端と略同じ位置にあり、このサービスプラグ11のプラグ11bを覆う面には、プラグ11bを挿抜するための開口12aが設けられている。
【0017】
開口12aを形成する上縁12a1は、内側に折り曲げられており、その先端がバッテリモジュール10の近傍まで延出している。また、下縁12a2も上縁12a1と同様に、内側に折り曲げられており、その先端がバッテリモジュール10の近傍まで延出している。
【0018】
図1、2に示すように、内装パネル6は、ハイブリッド自動車の左右方向に亘って、リアシート4とフロアパネル3との間を覆う樹脂製のパネルである。内装パネル6のバッテリカバー12の開口12aに対向する部分には、サービスプラグ11の挿抜の作業性を確保するために、この開口12aよりも大きい操作用開口6aが形成されている。
【0019】
内装パネル6の操作用開口6aには、この操作用開口6aを閉じる樹脂製の内装トリム20が着脱可能に取り付けられている。内装トリム20は、サービスプラグ11に近接して配置されており、サービスプラグ11の保護カバーとして機能している。また、サービスプラグ11と内装トリム20との間隔は、間隔L1に設定されている。
【0020】
内装トリム20の4隅には、操作用開口6aの4隅に設けられたフック6bに係合する爪20aがそれぞれ設けられている。また、内装トリム20は、着脱に専用工具を必要とする図示しない固定クリップによって、内装パネル6に固定されている。すなわち、内装トリム20は、専用工具を使用しないと着脱できない。
【0021】
図3に示すように、内装トリム20のサービスプラグ11の近接面、すなわち、内装トリム20の内側におけるサービスプラグ11の上下左右に対応する4カ所の位置には、電池パック1に向かって突出する4つのリブ21,22,23,24がそれぞれ形成されている。
【0022】
4つのリブ21,22,23,24は、サービスプラグ11を取り囲むように配置されている。4つのリブ21,22,23,24は、サービスプラグ11の上側に対応する上リブ21、サービスプラグ11の下側に対応する下リブ22、サービスプラグ11の右側に対応する右リブ23、サービスプラグ11の左側に対応する左リブ24からなる。
【0023】
上リブ21は、バッテリカバー12の開口12aの上縁12a1に対向する位置に設けられ、下リブ22は、バッテリカバー12の開口12aの下縁12a2に対向する位置に設けられている。左右リブ23,24は、バッテリカバー12の開口12aの左右縁に対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0024】
上リブ21は、四角形状の筒部21aと、この筒部21aの内部に形成された十字状の補強部21bとを有する筒状部材である。下リブ22は、内装トリム20の車幅方向に長い平板22aと、この平板22aの端部から直角に折曲がった短い平板22bとを有するL字状部材である。右リブ23は、バッテリカバー12に向かって延びる上下一対の平板23a,23bと、これら平板23a,23bの端部を互いに接続して下方に延出する平板23cとを有する逆F字状部材である。左リブ24は、バッテリカバー12に向かって延びる上下一対の平板24a,24bと、これら平板24a,24bの端部を互い接続する平板24cとを有するコ字状部材である。なお、各リブの形状が異なっているが、各リブの形状を同形状としてもよい。
【0025】
各リブ21,22,23,24のバッテリカバー12との間隔は、全て同じ間隔L2に設定されている。サービスプラグ11と内装トリム20との間隔L1と、各リブ21,22,23,24とバッテリカバー12との間隔L2との関係について説明する。両間隔L1,L2は、間隔L1>間隔L2となるように設定されている。このように設定することによって、内装トリム20が、バッテリカバー12に向かって変形したときに、内装トリム20の内面がサービスプラグ11に当接する前に、各リブ21,22,23,24がバッテリカバー12に当接する。
【0026】
次に、サービスプラグ11の挿抜作業及び内装トリム20に乗員の足の当接による外力が作用した場合について説明する。図4は、内装トリム20の変形を説明するために、内装トリム20の各リブ21,22やバッテリカバー12を簡略化した図を示しており、(A)は通常時の内装トリム20の状態を示し、(B)は外力により変形した内装トリム20の状態を示す。なお、図4において、リブ23,24の図示を省略している。
【0027】
図4(A)において、メンテナンス作業を行うためにサービスプラグ11の挿抜を行う場合には、まず、専用工具を使用して固定クリップを取り外す。次に、内装トリム20の爪20aと内装パネル6のフック6bとの係合を外して内装トリム20を内装パネル6から取り外す。そして、サービスプラグ11のプラグ11bをソケット11aから抜き取って高電圧回路を遮断する。メンテナンス作業終了後は、上述の逆の手順により内装トリム20を内装パネル6に取り付ける。
【0028】
図4(B)において、乗員の足が内装トリム20に当接し、内装トリム20に図中矢印Fで示すように外力が作用すると、内装トリム20はサービスプラグ11に向かって突出するように変形する。すなわち、内装トリム20は、サービスプラグ11側に移動する。そして、内装トリム20の変形によって、各リブ21,22もバッテリカバー12に向かって移動する。このとき、各リブ21,22の先端とバッテリカバー12との間隔L2は内装トリム20とサービスプラグ11との間隔L1よりも小さいので、各リブ21,22の先端が最初にバッテリカバー12に当接する。特に、上リブ21,22に作用する外力は、開口12aの周囲のバッテリカバー12を変形することがあるが、バッテリカバー12の上縁12a1及び下縁12a2を介して剛性の高いバッテリモジュール10でしっかりと受け止められ、内装トリム20のそれ以上の変形を抑制する。
【0029】
よって、各リブ21,22がバッテリカバー12に当接することによって、内装トリム20のそれ以上の変形が抑制されて、内装トリム20とサービスプラグ11との接触が抑制される。また、各リブ21,22の間隔L2は同じ間隔であるので、各リブ21,22は略同時にバッテリカバー12に当接することになり、外力を分散して受け止めることができる。
【0030】
このように、サービスプラグ11が内装トリム20で覆われて保護されるので、サービスプラグ11を保護する専用の保護カバーが必要なくなり、部品点数を削減でき、コストも低減できる。また、サービスプラグ11の保護に内装トリム20を使用するので、保護カバーとしての意匠性を向上できる。
【0031】
また、サービスプラグ11の挿抜方向において、サービスプラグ11に近接して内装トリム20が配置されており、内装トリム20を取り外すことによって、操作用開口6aを介してサービスプラグ11の挿抜作業を簡単に行うことができるので、作業性を向上できる。
【0032】
さらに、乗員の足の当接による外力が内装トリム20に作用して内装トリム20がサービスプラグ11に向かって変形しても、リブ21,22,23,24がバッテリカバー12に当接して、それ以上の内装トリム20の変形が抑制されるので、内装トリム20とサービスプラグ11との接触も抑制されて、サービスプラグ11の接点摩耗を抑制できる。
【0033】
なお、電池パック1をリアシート4の下部に配置した場合について説明したが、電池パック1の配置位置はこの場所に限らず、例えば、電池パック1をフロントシートの下部に配置した場合にも、内装トリム20の取付位置や形状を変更して使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 電池パック、2 車室、3 フロアパネル、4 リアシート、5 空間、6 内装パネル、6a 操作用開口、6b フック、10 バッテリモジュール、11 サービスプラグ、11a ソケット、11b プラグ、12 バッテリカバー、12a 開口、12a1 上縁、12a2 下縁、20 内装トリム、20a 爪、21 上リブ、22 下リブ、23 右リブ、24 左リブ、30 電池冷却装置、31 冷却ファン、32 接続ダクト、33 吸気ダクト、L1,L2 間隔。

図1
図2
図3
図4