(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392723
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】輸送コンテナ及びその積み付け方法
(51)【国際特許分類】
B65D 90/00 20060101AFI20180910BHJP
B66C 13/23 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
B65D90/00 F
B66C13/23 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-195530(P2015-195530)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-65777(P2017-65777A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 茂
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−254592(JP,A)
【文献】
特開昭62−251380(JP,A)
【文献】
特開昭62−041441(JP,A)
【文献】
特開2002−234578(JP,A)
【文献】
実開昭48−092666(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0247275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/00
B66C 13/23
B66C 15/00
B66C 1/04
B66C 1/06
B65G 57/04
F16F 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状のコンテナ本体と、
このコンテナ本体の上面及び下面に取り付けられ、前記コンテナ本体の外側に同一の磁極となる磁力線を出力する磁力線発生部と、
前記磁力線を制御する磁力線電源部と、
を備えることを特徴とする輸送コンテナ。
【請求項2】
前記磁力線発生部は、さらに前記コンテナ本体の側面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の輸送コンテナ。
【請求項3】
前記磁力線発生部の磁極は、前記磁力線電源部によって切り替え可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の輸送コンテナ。
【請求項4】
前記磁力線発生部は、電磁石であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の輸送コンテナ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の輸送コンテナの積み付け方法であって、
クレーンに吊られた前記輸送コンテナの下面側の前記磁力線発生部および載置された前記輸送コンテナの上面側の前記磁力線発生部に同一の磁極となる磁力線を出力させ、前記磁力線の反発力により、クレーンに吊られた前記輸送コンテナの巻下げを、載置された前記輸送コンテナの上面との間で空間を持って停止させた後、クレーンに吊られた前記輸送コンテナの下面と載置された輸送コンテナの上面とを接触させることを特徴とする輸送コンテナの積み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、輸送コンテナ及びその積み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸送コンテナの荷役にはクレーンが用いられている。クレーンによる輸送コンテナの荷役は、例えば船上や船倉に輸送コンテナを荷積みする場合、クレーンの巻上ロープに吊られたスプレッダを荷積みする輸送コンテナの直上に吊り下ろし、輸送コンテナの上部を掴持して、これを吊り上げ、船上や船倉の積み上げ場所まで輸送する。その後、スプレッダを吊り下ろし、輸送コンテナを載置する。
【0003】
輸送コンテナを積み付ける場合には、下の輸送コンテナに接触する際に巻上ロープの巻下げ速度が十分に落ちてないと、輸送コンテナ同士の衝突によって大きな損傷を受ける。このため、巻上ロープの速度を十分落とした上で、積み付ける輸送コンテナを下の輸送コンテナに接触させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2014−133635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した手法では、巻上ロープの巻上げ速度を落とすタイミングが早すぎると輸送効率が悪くなり、他方、速度を落とすタイミングが遅すぎると輸送コンテナに衝突による大きな損傷を生じさせてしまう虞があり、輸送コンテナ同士を効率よく接触させるためには、高度な運転技術が要求され、クレーンを操作する者の練度に大きく依存してしまう。
【0006】
また、輸送コンテナの配置を自動検出するシステムを導入することで、輸送コンテナ同士が衝突しないように自動減速させることが可能となるが、減速速度を小さくすると接触までの時間が長くかかってしまい、輸送効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、輸送コンテナ同士の衝突による損傷を軽減するとともに輸送効率の高い輸送コンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る輸送コンテナは、箱状のコンテナ本体と、このコンテナ本体の上面及び下面に取り付けられ、上記コンテナ本体の外側に同一の磁極となる磁力線を出力する磁力線発生部と、上記磁力線を制御する磁力線電源部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る輸送コンテナを示す図である。
【
図3】
図3は、磁力線電源部の機能構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る輸送コンテナの積み付けを示す図である。
【
図5】
図5は、本実施の他の形態に係る輸送コンテナを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る輸送コンテナについて
図1乃至
図4を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る輸送コンテナを示す図であり、
図2は、
図1の点線AA’における断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る輸送コンテナ1は、箱状のコンテナ本体2と、コンテナ本体2に取り付けられ、磁力線を出力する磁力線発生部3と、磁力線発生部3から出力される磁力線を制御する磁力線電源部4を備える。
【0012】
磁力線発生部3は、電磁石であり、コンテナ本体2の上面及び下面に取り付けられる。磁力線発生部3の取付け箇所は、輸送コンテナ1同士が磁力線発生部3による反発力により一定の空間を発生させることができれば特に制限されず、例えばコンテナ本体2の上面及び下面の略全面に取り付けられた形態でもよいし、コンテナ本体2の上面及び下面の4隅に取りけられた形態でもよい。磁力線電源部4は、磁力線発生部3がコンテナ本体2の外側に同一の磁極(N極またはS極)となる磁力線を出力するなどの制御を行う。
【0013】
図3は、磁力線電源部4の機能構成図である。磁力線電源部4は、励磁電源供給部41と、磁力線制御部42と、受信部43とを備える。励磁電源供給部41は、磁力線発生部3と磁力線制御部42に接続している。励磁電源供給部41は、磁力線制御部42から出力された信号に基づいて磁力線発生部3への磁力の調整や磁極の切り替えを行う。
【0014】
励磁電源供給部41が磁力線発生部3へ供給する電力は、輸送コンテナ1の内部にバッテリー等の電源を設ける形態でもよいし、輸送コンテナ1の外部から供給する形態としてもよい。電源を輸送コンテナ1の外部から供給する形態では、輸送コンテナ1の積み付け作業の際に輸送コンテナ1に電源を接続する。
【0015】
磁力線制御部42は、励磁電源供給部41と受信部43に接続している。磁力線制御部42は、受信部43から出力される信号に基づいて励磁電源供給部41に磁力線発生部3への磁力の調整や磁極の切り替えを行う旨の信号を出力する。受信部43は、アンテナ43aを介して後述のコンテナクレーン10の主幹制御装置17から受信した信号を磁力線制御部42へ出力する。
【0016】
図4は、コンテナクレーンを使用した本実施形態に係る輸送コンテナ同士の積み付けを示す図である。
【0017】
本実施形態に係る輸送コンテナ1の荷役に使用されるコンテナクレーン10は、輸送コンテナ1を吊り上げるスプレッダ11を備えている。スプレッダ11は、巻上ドラム12に巻き回された巻上ロープ13と接続している。巻上ドラム12は、巻上電動機14及び巻上位置検出器15に接続されている。巻上電動機14は、駆動装置16に接続されている。
【0018】
巻上電動機14は、駆動装置16から出力される信号に基づいて巻上ドラム12を回転駆動させ、スプレッダ11の巻上げ及び巻下げが行われる。輸送コンテナ1を吊り上げる際には、例えばスプレッダ11の四隅の上部に設けたロックピン(図示しない)を輸送コンテナ1の上部四隅に設けた鍵穴などに挿入して90度回転させることでロックし、スプレッダ11ごと吊り上げる。
【0019】
巻上位置検出器15は、輸送コンテナ1の吊り上げ位置を検出する。巻上位置検出器15及び駆動装置16は、主幹制御装置17に接続している。主幹制御装置17には、巻上運転主幹コントローラ18が接続されている。また、主幹制御装置17は、アンテナ17aを介して輸送コンテナ1の磁力線電源部4からの信号を受信する。主幹制御装置17は、巻上位置検出器15、巻上運転主幹コントローラ18及び磁力線電源部4からの信号に基づいてコンテナクレーン10の動作全般を制御する。
【0020】
コンテナクレーン10のスプレッダ11に接続された輸送コンテナ1aは、地面あるいは船倉等の積み付け場所Pに載置された輸送コンテナ1bの上面に向かって巻下げられる。輸送コンテナ1aを巻下げていくと、輸送コンテナ1aの下面に設置された磁力線発生部3aから発生する磁極(図中矢印G1)と輸送コンテナ1bの上面に設置された磁力線発生部3bから発生する磁極(図中矢印G2)は同じであるため、輸送コンテナ1aの下面と輸送コンテナ1bの上面との間で反発力が発生する。
【0021】
輸送コンテナ1aの巻下げは、輸送コンテナ1bとの間で発生する反発力によって、輸送コンテナ1bとの間に一定の空間を持って停止する。その後、輸送コンテナ1aの下面に設置された磁力線発生部3aの磁力線を制御する磁力線電源部4aおよび輸送コンテナ1bの上面に設置された磁力線発生部3bの磁力線を制御する磁力線電源部4bによって対応する磁力線発生部3aおよび3bの磁力を徐々に小さくし、輸送コンテナ1aと輸送コンテナ1bの反発力を小さくする。そして、輸送コンテナ1aの下面と輸送コンテナ1bの上面が接触した時あるいは接触する直前に、磁力線電源部4a及び4bからの電源供給を切る。輸送コンテナ1aは、輸送コンテナ1bとの間に一定の空間を保った状態で停止し、その後に接触するので、輸送コンテナ1aと輸送コンテナ1bとの衝突による衝撃を小さくできる。
【0022】
次に、本実施形態に係る輸送コンテナの積み付け動作の一例について、より具体的に説明する。
【0023】
先ず、クレーン操作員は、コンテナクレーン10のスプレッダ11に輸送コンテナ1aを接続し、巻上ロープ13を巻き上げることでスプレッダ11を介して輸送コンテナ1aを吊り上げ、積み付ける場所に移動させる。積み付け場所は、既に載置されている輸送コンテナ1bの上である。輸送コンテナ1aを巻下げ位置である輸送コンテナ1bの上に移動させ、巻上運転主幹コントローラ18を操作し、巻上ロープ13を巻き下げる。
【0024】
巻上運転主幹コントローラ18の巻き下げる旨の信号は、主幹制御装置17に入力される。巻き下げる旨の信号が入力された主幹制御装置17は、そのまま駆動装置16に巻下げる旨の信号を出力する。巻下げる旨の信号が入力された駆動装置16は、巻上電動機14を駆動し、巻上ロープ13が巻回された巻上ドラム12を巻き下げ方向に回転させてスプレッダ11に接続された輸送コンテナ1aを巻き下げる。
【0025】
輸送コンテナ1aの位置は、巻上位置検出器15により検出される。巻上位置検出器15の位置信号は、主幹制御装置17に入力される。巻上位置検出器15からの位置信号が入力された主幹制御装置17は、減速開始位置を演算して、巻下げ速度を遅くする信号を駆動装置16に出力する。巻下げ速度を遅くする信号が入力された駆動装置16は、巻上電動機14に巻上ドラム12の回転速度を落とす信号を出力し、巻上電動機14は、巻上ドラム12の回転速度を落とし、輸送コンテナ1aの巻下げ速度を減速させる。
【0026】
主幹制御装置17は、減速開始位置を演算後、輸送コンテナ1aの下面側の磁力線発生部3aである電磁石を励磁するために、アンテナ17aを介して下面側の電磁石を制御する磁力線電源部4aに励磁開始信号を送信する。これと併せて、輸送コンテナ1bの上面側の磁力線発生部3bである電磁石を励磁するために、アンテナ17aを介して上面側の電磁石を制御する磁力線電源部4bに励磁開始信号を送信する。
【0027】
輸送コンテナ1aは、減速開始位置から下降が減速し、低速度になっている状態で輸送コンテナ1bと接近する。そして、輸送コンテナ1aの下面側の電磁石と輸送コンテナ1bの上面側の電磁石との反発力が働き、輸送コンテナ1aは、輸送コンテナ1bと一定の空間距離を保って下降を停止する。輸送コンテナ1aの下降が停止すると、スプレッダ11に接続している巻上ロープ13は弛む。巻上電動機14を駆動している駆動装置16は、巻上ロープ13が弛むことによってトルクが急変したことを検出し、主幹制御装置17にその旨の信号を出力する。トルクが急変した旨の信号が入力された主幹制御装置17は、駆動装置16へ輸送コンテナ1aの巻下げを止める信号を出力する。輸送コンテナ1aの巻下げを止める信号が入力された駆動装置16は、巻上電動機14の駆動を止める。
【0028】
その後、主幹制御装置17は、下面側の電磁石を制御する磁力線電源部4aに励磁終了信号を送信すると同時に輸送コンテナ1bに、上面側の電磁石を制御する磁力線電源部4bに励磁終了信号を送信し、励磁を徐々に小さくする。これにより、輸送コンテナ1aの下面とコンテナ1bの上面の反発力が徐々に小さくなり、輸送コンテナ1aの下面と輸送コンテナ1bの上面は接触する。接触した後、スプレッダ11は、輸送コンテナ1aから離され、積み付け作業が終了する。
【0029】
次に、本実施の他の形態に係る輸送コンテナについて
図5を参照して説明する。なお、以下の説明において、主に輸送コンテナ1と相違する構成について説明し、共通する構成については同一符号を付し、説明を割愛する。
【0030】
図5は、本実施の他の形態に係る輸送コンテナ20の断面を示す図である。輸送コンテナ20は、輸送コンテナ1の上面及び下面に取り付けた磁力線発生部3を、さらに両側面にも備えた構成である。このように、輸送コンテナ20の両側面に磁力線発生部31を備えることで、積み付け時において輸送コンテナ同士の上下方向における衝突だけでなく、横方向における衝突の衝撃を小さくすることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1,1a,1b,20… 輸送コンテナ 2… コンテナ本体
3,3a,3b,31… 磁力線発生部 4,4a,4b… 磁力線電源部
10… コンテナクレーン 11… スプレッダ 12… 巻上ドラム
13… 巻上ロープ 14… 巻上電動機 15… 巻上位置検出器
16… 駆動装置 17… 主幹制御装置
18… 巻上運転主幹コントローラ 41… 励磁電源供給部
42… 磁力線制御部 43… 受信部