【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は独立項の主題によって解決され、更なる実施態様は従属項に含まれる。
【0005】
本発明の以下に記載する特徴は、X線管用のカソード、X線管、X線撮像用のシステム、及びX線管用のカソードの組立方法にも当て嵌まる。
【0006】
本発明の第1の特徴によれば、X線管のためのカソードが提供され、カソードは、フィラメントと、支持構造と、本体構造と、フィラメントフレーム構造とを含む。フィラメントは、電子放出方向においてアノードに向かって電子を放出するために設けられ、フィラメントは、螺旋構造を少なくとも部分的に含む。フィラメントは、本体構造に固定的に接続される支持構造によって保持される。フィラメントフレーム構造は、放出される電子の電子光学的な集束のために設けられる。フィラメントフレーム構造は、フィラメントの外側境界に近接して設けられる。フィラメントフレーム構造は、放出方向に対して直交して配置されるフレーム表面部分を含む。フィラメントフレーム構造は、支持構造によって保持される。
【0007】
「電子放出方向」という用語は、フィラメントの中心部分をアノード上の焦点の中心部分と接続する線によって定められるような電子の主方向に関する。
【0008】
例えば、フィラメントは完全に再結晶化される。即ち、フィラメントは完全再結晶化(total recrystallization)の状態にある。再結晶化のために、フィラメントを、例えば、オーブン又は炉内で、外部的に適用される熱に晒し得る。熱を加える一例として、フィラメントの囲込みが提供され、その構造は誘導によって加熱される。例えば、誘導構造はベル形状のキャップ又はカバーの下に設けられる。よって、完全再結晶化は、フィラメントの外側からの熱によるのではなく、むしろ内側から熱を生成するよう、カソードの2つの端部に適用される電流によってもたらされない。
【0009】
例示的な実施態様によれば、フィラメントは、直線端部螺旋フィラメントであり、巻線の接続端部は、フィラメントの螺旋巻線がその回りに設けられる長手方向に整列させられる。よって、接続端部の長さの如何なる変更も回避される。
【0010】
フィラメントフレーム構造は、電子のための焦点装置として提供される。フィラメントフレーム構造を放出方向に対して垂直に或いは垂直方向の+/−10°のような僅かに偏向した方向に配置される平坦部分として設け得る。
【0011】
フィラメントフレーム構造は、第1及び第2の電気的に別個の部分に分割され、第1の部分は、第1の電気接続電位に割り当てられ、第2の部分は、第2の電気接続電位に割り当てられる。
【0012】
例えば、第1の部分は、フィラメントの第1の端部に適用される電位に接続され、第2の部分は、フィラメントの他の端部で適用される電位に接続される。
【0013】
例示的な実施態様によれば、フィラメントフレーム構造は、本体構造に対するフィラメントの少なくとも1つの位置決め方向のために、少なくとも1つの位置決め装置を含む。
【0014】
よって、フィラメントの正しい位置決めが促進される。例えば、支持構造によるフィラメント構造の保持によって、支持構造はフィラメントフレーム構造を介して電子放出方向に対するフィラメントの位置を定める。フィラメントフレーム構造は、フィラメントの直線方向を定めるための長手溝を含み得る。フィラメントフレーム構造は、2つの方向のための位置決め装置も含み得る。
【0015】
例示的な実施態様によれば、フィラメント支持構成の部分を受け入れるための適合部材(fitting members)が、支持構造及び/又はフィラメントフレーム支持体に設けられる。
【0016】
フィラメントフレーム構造を取付及び組立プロセス中に設け得る。しかしながら、フィラメントフレーム構造は、少なくとも、X線管内でX線放射を生成する通常運転の前に除去される。
【0017】
例示的な実施態様によれば、フィラメントフレーム構造及び/又は支持構造は、フィラメントの取付中に提供される直線フィラメント取付ピンの2つの端部を受け入れるための受容部を含み、ピンは、フィラメントの正しい配置のために、フィラメントのコイルの開口内に挿入可能である。
【0018】
更なる例示的な実施態様によれば、本体構造はカソードカップとして提供される。カソードカップは非導電性セラミックから作製されるセラミック製のカソードカップとして提供される。カソードカップの表面の一部が金属塗膜を備える。
【0019】
「非導電性」という用語は、電気的に絶縁されていることを意味する。金属塗膜を金属化表面とも呼ぶ。金属塗膜は導電目的のために並びに鑞接目的のために設けられる。例えば、カソードカップは酸化アルミニウム(Al
2O
3)で作製される。硝酸アルミニウム(AlN)からもカソードを作製し得る。
【0020】
例示的な実施態様によれば、カソードカップは平坦な前側を備え、フィラメントは平坦な前側に配置される。
【0021】
本発明の第2の特徴によれば、X線管が提供され、X線管は、カソードと、アノードとを含む。カソードは、上述の実施例の1つに従ったカソードとして提供される。
【0022】
本発明の第3の特徴によれば、X線撮像のためのシステムが提供され、システムは、X線源と、X線検出器と、処理ユニットとを含む。処理ユニットは、関心の物体のX線画像データを提供するために、X線源及びX線検出器を制御するよう構成される。X線源は、上記で記載し且つ議論したようなX線管を備える。
【0023】
X線システムは、医療用撮像システム(イメージングシステム)であり得る。
【0024】
更なる実施例によれば、検査装置が、例えば、手荷物又は輸送品の走査及びスクリーニングのための或いは材料及び構造検査目的のためのX線システムとして提供される。
【0025】
本発明の第4の特徴によれば、X線管のためのカソードの組立のための方法が提供され、方法は、以下のステップ、即ち、
a)フィラメントを提供するステップと、
b)フィラメントフレーム構造に対してフィラメントを整列させるステップと、
c)フィラメントをフィラメントフレーム構造に接続するステップと、
d)支持構造を本体構造に接続するステップと、
e)支持構造の上にフィラメントフレーム構造を配置するステップと、
f)フィラメントフレーム構造及びフィラメントを支持構造に接続するステップとを含み、
フィラメントは、電子放出方向においてアノードに向かって電子を放出するよう構成され、フィラメントは、螺旋構造を少なくとも部分的に含み、
フィラメントフレーム構造は、放出される電子の電子光学的な集束のために構成され、フィラメントフレーム構造は、フィラメントの外側境界に近接して設けられ、フィラメントフレーム構造は、放出方向に対して直交して配置されるフレーム表面部分を含む。
【0026】
例えば、セラミック製のカソードヘッドの場合には、支持構造に接続されることに加えて或いは代えて、フィラメントフレーム構造を本体構造に接続し得る。
【0027】
本体構造への支持構造の接続を、上述のステップa)乃至c)のうちの1つの前であるが、ステップe)の後にもたらし得る。
【0028】
例示的な実施態様によれば、支持ガイドが組立のために提供され、前記ステップは、
a1)支持ガイドの上にフィラメントを提供するステップ、及び
b1)フィラメントフレーム構造に対して支持ガイドを整列させるステップとして提供され、
支持ガイドは、i)フィラメントがフィラメントフレーム構造に接続された後に、或いはii)フィラメントフレーム構造が支持構造に接続された後に、移動させられる。
【0029】
更なる例示的な実施態様によれば、ステップa)に続き、ステップe)の配置の前に、外部熱を提供することによって、フィラメントの完全再結晶化がもたらされる。例えば、熱はフィラメントの2つの端部に電流を提供することによって生成されず、むしろ、例えば、オーブン又は炉内で、外側から生成される。
【0030】
本発明の特徴によれば、フィラメント及びフィラメントフレーム構造の両方を支持構造に固定することによって、電子放出方向に対するそれぞれの部分の正しい整列が容易化される。更に、本体構造に次に取り付けられ或いは固定的に接続される支持構造を設けることの故に、それぞれの部分、即ち、フィラメント及びフィラメントフレーム構造のための容易化された固定手続きのための接続可能性が提供される。よって、本体構造への支持構造の固定的な接続を別個にもたらすことができ、特に本体構造への固定は整列における偏向を引き起こし得ることを記さなければならない。しかしながら、実施例によれば、フィラメントは支持構造と接続され、本体構造に対して直接的に接続されないので、フィラメント自体の整列は支持構造の「不整列」の補償を可能にする。例えば、高さ偏向(deviation)の場合には、即ち、支持構造が本体構造内に十分に遠く挿入されない場合には、支持構造の高さの正しい整列を達成するために、幾分簡単な方法において支持構造を機械加工し得る。フィラメントを支持構造に接続する目的のために、フィラメントを支持構造の上に配置するとき、本体構造に対するそれぞれの整列が容易化される。
【0031】
更なる特徴によれば、電子光学的な操縦(案内)のために設けられるフィラメントフレーム構造は、フィラメントの正しい位置決めのためにも適用可能である。例えば、フィラメントはフィラメントフレーム構造によって一時的に保持され、よって、フィラメントフレーム構造はいわば保持装置として作用し、組立中のフィラメントの取扱いを容易化する。更なる実施例によれば、組立中にフィラメント自体が安定化され、それは取付ステップ中のフィラメントの取扱いのための要求を減少させる。更に、カソードの本体構造に対するフィラメントの正しい整列及び正しい位置決めのために、フィラメントのための取付支持構成も用い得る。
【0032】
本発明の更なる特徴によれば、フィラメントフレーム構造の形態の部分的に一体化されるツーリング(工具)が提供され、より少ない段階間(inter-phases)をもたらし、それは取付手続きを容易化し、それによって、例えば、完全に再結晶化されるフィラメントの場合におけるより一層少ない変形の故にも、より高い精度も達成し得る。よって、組立手続き中により少ない努力がもたらされる。例えば、手作業による調節は不要である。完全に再結晶化されるフィラメントの場合には、更なる閃光(flashing)は不要である。「閃光」という用語は、フィラメントを所定の短い時間期間に亘って白熱させるための高電流の適用を指す。よって、閃光はフィラメントを安定化させるという目的を伴う熱処理をもたらす。完全に再結晶化されるフィラメントは、寿命に亘る塑性変形の減少、及び故障型の減少による寿命分布の改良を有する。
【0033】
更なる特徴によれば、フィラメントフレーム構造は、部品点数及び組立ステップの減少を伴うセラミック構造の簡素化も可能にする。簡素化されるセラミック構造は、例えば、カソードの熱性能の向上のための潜在性を有する。
【0034】
更なる特徴によれば、組立中に調節のための可塑性は不要である。従って、より短い素子及びより直接的な接続を用いた安定性の増大及びより少ない熱ドリフト(thermal drift)による潜在的により高いカソードの熱的及び機械的装填可能性(loadability)を伴って、フィラメントの支持体を、例えば、カソードに直接的に鑞接し得る。
【0035】
更なる特徴によれば、フィラメントフレーム構造は支持構造によって保持され、フィラメント自体は支持構造に接続されるので、フィラメントフレーム構造はフィラメントと共に移動し、熱ドリフト効果を有意に削減する。
【0036】
本発明のこれらの及び他の特徴は、以下に記載する実施態様を参照して明らかになり且つ解明されるであろう。
【0037】
以下の図面を参照して、本発明の例示的な実施態様を以下に記載する。