(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、織機に炭素繊維等の特殊糸を供給するクリールは、糸が巻かれたボビンを回転可能に支持するスピンドルユニットを備えている。このスピンドルユニットは、例えば特許文献1に記載されているように、回転自在に支持された回転軸を有するスピンドル部と、この回転軸を制動する制動部とから構成されている。
【0003】
スピンドル部の回転軸は、糸が巻かれたボビンを回転可能に支持する。ボビンをスピンドル部の回転軸に装着するときには、作業者がボビンを手で持ち、ボビンの軸心部内にボビン装着用の回転軸を挿入している。糸が巻かれたボビンの重量は、10kg程度になることがある。
ボビンをスピンドル部の回転軸に固定する固定構造としては、例えば、ボビンとボビン装着用の回転軸との間にOリングが介在する構造がある。
スピンドル部の回転軸は、糸が織機によって引かれると、ボビンとともに回転する。
【0004】
スピンドルユニットの制動部は、例えば、ヒステリシスブレーキによって構成されて、スピンドル部の回転軸を制動して、ボビンから引き出される糸に張力を付与する。
特許文献1に開示されているヒステリシスブレーキは、ブレーキトルクが作用する回転軸を有している。ヒステリシスブレーキは、このヒステリシスブレーキの回転軸がボビン装着用のスピンドル部の回転軸と平行になるように、架台に取付けられている。ヒステリシスブレーキの回転軸とスピンドル部の回転軸とは、互いに歯車を介して連結されて連動する。したがって、ボビンが装着されたスピンドル部の回転軸にヒステリシスブレーキによって一定の大きさのブレーキトルクが作用して、織機によって引かれる糸に張力が付与される。
【0005】
一般的なヒステリシスブレーキは、励磁コイルを内蔵する環状のヨーク、またはフィールドコアと、同一軸線まわりに一体に回転する回転軸を有する円筒状のヒステリシス部材とを備えている。
フィールドコアは、フィールドコアの内周側に位置する内周側磁極と、フィールドコアの外周側に位置する外周側磁極とを有している。フィールドコアには、内周側磁極と外周側磁極とによって環状の空間が形成されている。
円筒状のヒステリシス部材は、このフィールドコアの環状の空間に挿入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたスピンドルユニットは、ボビンが装着されるスピンドル部の回転軸とヒステリシスブレーキの回転軸とが、歯車によって連結されている。このため、このスピンドルユニットは、部品の数が多くなり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
このような部品数の問題は、スピンドル部と制度部とを同一軸線上に配置し、ヒステリシスブレーキとボビンとが一体に回転するように、ヒステリシスブレーキの回転軸にボビンを装着すれば、ある程度は解消することができる。
しかし、この構成を採ると、ボビンをスピンドル部に装着する作業の作業時間が長くなってしまう。この理由は、重量物であるボビンがヒステリシスブレーキに衝突すると、衝撃荷重がヒステリシスブレーキに加えられ、ヒステリシスブレーキが破損するおそれがあるので、ボビンがヒステリシスブレーキに衝突することがないように、作業を慎重に行わなければならないからである。
【0009】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、ヒステリシスブレーキが破損することを防ぎながら構造を簡素化し、製造コストが低減された糸供給用スピンドルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係るスピンドルユニットは、一端部が固定フレームに固定された支持軸と;一端側が前記固定フレームに固定され、他端側に環状の空間を隔てて互いに対向する内周側磁極と外周側磁極を有するとともに励磁コイルを内蔵し、かつ中央の孔を前記支持軸が貫通する平面視環状のヨークと、前記支持軸が貫通しかつ前記ヨークの前記他端側の前記空間に一端部が挿入された円筒状のヒステリシス部材と、前記支持軸が貫通しかつ前記ヒステリシス部材を前記支持軸を回転中心として回転自在に支持する環状のハブとを備えたヒステリシスブレーキと;前記支持軸の前記ヒステリシスブレーキより他端部側において前記ヒステリシスブレーキ側への移動が規制された状態で前記支持軸を回転中心として回転自在に支持され
、糸が巻かれたボビンの軸心部内に着脱可能に挿入されるスピンドル部と;前記ハブと前記スピンドル部とを互いに連結する
連結ピンと;前記スピンドル部の前記ヒステリシスブレーキ側への移動を規制する規制部材と
;前記スピンドル部と前記ハブとのうちいずれか一方に形成された環状の溝と、他方の部材に設けられ前記溝に一端が挿入される円筒状の壁部材とからなるラビリンスシールと;を備え
、前記連結ピンは、前記支持軸の軸線方向に沿って設けられ、前記スピンドル部と前記ハブとのうちいずれか一方の部材に一端部が固定されかつ他方の部材に他端部が軸線方向へ移動可能に嵌合するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスピンドルユニットは、ボビンを支持するスピンドル部とヒステリシスブレーキとが同一軸線上で並べられて連結されている。このため、これらの部材を連結するために歯車を使用する場合と比べると、部品数が減るから製造コストを低減することができる。
【0012】
このスピンドルユニットにおいて、ボビンをスピンドル部に装着するときにボビンがスピンドル部に衝突した場合は、衝撃荷重がスピンドル部から支持軸を介して固定フレームに伝達される。このため、ヒステリシスブレーキとスピンドル部とが同一軸線上で並ぶにもかかわらず、ボビン装着時に衝撃荷重がヒステリシスブレーキに直接加えられることはない。
したがって、本発明によれば、ヒステリシスブレーキが破損することを防ぎながら構造を簡素化し、製造コストが低減されたスピンドルユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る糸供給用スピンドルユニットの一実施の形態を
図1〜
図3によって詳細に説明する。
図1に示すスピンドルユニット1は、炭素繊維からなる特殊糸2(以下、単に糸という。)を引き出すクリール(図示せず)に使用される糸供給用スピンドルユニットである。
図1において、ボビン3は、円筒状に形成されており、外周部に糸2が巻かれている。スピンドル部4は、ボビン3の内周部に挿入される。
【0015】
このスピンドルユニット1は、クリールの固定フレーム11に固定用ボルト12によって一端が固定された支持軸6と、糸2が巻かれたボビン3の軸心部内に着脱可能に挿入されたスピンドル部4と、このスピンドル部4の一端部に接続された張力付与部5とを備えている。張力付与部5は、ボビン3から引き出される糸2に張力を付与するためのものである。詳細は後述するが、本実施の形態において、張力付与部5は、環状に形成されて軸線方向の一端部が固定フレームに固定されている。支持軸6は、環状の張力付与部5の中空部を貫通している。
【0016】
支持軸6は、スピンドル部4と張力付与部5の中空部とを貫通する長さに形成されている。
スピンドル部4は、円筒状に形成されており、その軸心部を貫通する支持軸6に基端側軸受7と先端側軸受8とによって回転自在に支持されている。スピンドル部4の基端側軸受7と先端側軸受8は、支持軸6の張力付与部5から突出した部分(以下、この部分を「支持部」という。)6aに設けられている。その結果、支持軸6の支持部6aはスピンドル部4の軸心部に位置する。また、スピンドル部4は、この支持部6aと同一軸線上に位置する状態で、この支持部6aに軸受7,8によって回転自在に支持されている。
【0017】
この実施の形態において、スピンドル部4は、上述した基端側軸受7に取り付けられて、張力付与部5と隣り合う円筒状の基端側管部材13と、先端側軸受8に取り付けられた円筒状の先端側管部材15と、基端側管部材13に一端部が結合され先端側管部材15に他端部が結合された筒体14とを備えている。
【0018】
基端側軸受7と固定フレーム11との間には、スリーブ16が設けられている。スリーブ16は、円筒状の部材である。支持軸6はスリーブ16を貫通している。基端側軸受7の内輪7a(
図2参照)は、このスリーブ16によって張力付与部5側への移動が規制されている。
また、この基端側軸受7の外輪7bは、基端側管部材13の内周側に形成されたフランジ13aとサークリップ17とによって挟まれている。したがって、スピンドル部4は、軸受7,8を介して支持軸6に回転自在に支持されていると同時に、その張力付与部5側への移動が規制されている。
【0019】
張力付与部5と対向する基端側管部材13の端部には、複数の連結ピン21が設けられている。これらの連結ピン21は、軸線が支持軸6と平行になる状態で、基端側管部材13の周方向へ等間隔に並んでおり、一端部が基端側管部材13に固定されている。これらの連結ピン21の他端部は、張力付与部5に形成されている貫通孔22に軸線方向へ移動自在に嵌合している。
【0020】
基端側管部材13の外周部には、径方向の外側に向けて突出する外周側フランジ13bと、ボビン3の内周面が嵌合する大きさの周面13cと、Oリング23が挿入される環状溝13dと、小径部13eとが形成されている。
外周側フランジ13bには、スピンドル部4に装着されたボビン3の端面が当接する突き当て面24が形成されている。このため、ボビン3の張力付与部5側への移動は、この外周側フランジ13bによって規制される。この外周側フランジ13bの外周縁部には、張力付与部5側へ突出する円筒状の壁25が一体に形成されている。この円筒状の壁25は、張力付与部5に形成された環状の溝26に挿入されており、この環状の溝26とともにラビリンスシール27を構成している。
【0021】
Oリング23は、スピンドル部4にボビン3が装着された状態で弾性変形してボビン3の内周面に密着する。ボビン3の基端部(張力付与部5に接近する端部)は、Oリング23との摩擦によって、基端側管部材13(スピンドル部4)に一体となって回転可能に保持される。
基端側管部材13の小径部13eは、筒体14が嵌合する形状に形成されており、筒体14の基端部が固定されている。筒体14は、
図1に示すように、基端側管部材13に固定された円筒状のパイプ14aと、このパイプ14aの先端部(張力付与部5とは反対側の端部)に固着されたリング14bとによって構成されている。パイプ14aの外径とリング14bの外径は、ボビン3の内周部に挿入可能な大きさに形成されている。
【0022】
このリング14bは、後述する先端側管部材15の小径部15aに軸線方向へ移動自在に
嵌合している。
先端側管部材15は、
図3に示すように、先端側軸受8の外輪8bに軸線方向への移動が規制される状態で取付けられている。先端側軸受8の外輪8bは、先端側管部材15の内周側フランジ15bとサークリップ28とに挟まれている。
【0023】
先端側軸受8の内輪8aは、支持軸6に軸線方向へ移動可能に嵌合している。支持軸6の先端部には、雄ねじ29が設けられており、締込ナット31と抜け止め用ナット32とが取付けられている。締込ナット31は、先端側軸受8の内輪8aを張力付与部5側へ押圧する円筒状の押圧子31aを有しており、支持軸6の雄ねじ29の基端側に螺合している。この締込ナット31が雄ねじ29に対して締め込まれることによって、先端側軸受8と先端側管部材15とが張力付与部5側へ移動する。抜け止め用ナット32は、締込ナット31が弛むことを阻止するためのもので、雄ねじ29の先端部に螺合している。
【0024】
先端側管部材15の外周部は、張力付与部5側に位置する上述した小径部15aと、大径部15cとによって構成されている。大径部15cの外径は、ボビン3の内周部に挿入可能な大きさに形成されている。
先端側管部材15の小径部15aには、上述した筒体14のリング14bが嵌合しているとともに、環状の弾性部材33が嵌合している。弾性部材33は、リング14bと大径部15cとの間に挟まれている。この実施の形態による弾性部材33は、ウレタンワッシャによって構成されている。
【0025】
この弾性部材33は、上述した締込ナット31が締め込まれて先端側管部材15が張力付与部5側へ移動することによって、リング14bと先端側管部材15の大径部15cとに挟まれ、弾性変形により外径が大きくなる。この弾性部材33がボビン3の中に挿入された状態でこのように弾性部材33の外径が大きくなることによって、弾性部材33の外周部がボビン3の内周面(軸心部)に押し付けられる。
【0026】
張力付与部5は、ヒステリシスブレーキ34によって構成されている。このヒステリシスブレーキ34は、全体が環状に形成されており、その中空部に支持軸6が貫通する状態で軸線方向の一端部が固定フレーム11に固定用ボルト35によって固定されている。このヒステリシスブレーキ34は、支持軸6と同一軸線上に位置付けられている。
【0027】
ヒステリシスブレーキ34は、固定フレーム11に固定されたヨーク36と、このヨーク36に対して回転するハブ37とを備えている。ヨーク36は、環状の励磁コイル38を備えているとともに、後述する内側ポール構造体39と外側ポール構造体40とを備えている。内側ポール構造体39と外側ポール構造体40との間には環状の空間41が形成されている。励磁コイル38は、ヨーク36に形成された環状溝36aの中に絶縁された状態で収容されている。環状溝36aは、固定フレーム11とは反対側に向けて開口している。
【0028】
内側ポール構造体39は、円環状に形成されており、ヨーク36の内周側で固定フレーム11とは反対側を指向する内磁極面36bに、固定用ボルト42によって固定されている。この内側ポール構造体39の内周部には、軸線方向に延びる複数の凹溝39aが形成されている。これらの凹溝39aは、内側ポール構造体39の周方向へ等間隔に並んでいる。この実施の形態においては、この内側ポール構造体39によって、本発明でいう内周側磁極が構成されている。
内側ポール構造体39の内周部とヨーク36の内周部には、後述するハブ37のボス部37aが軸受43,44によって回転自在に支持されている。
【0029】
外側ポール構造体40は、複数の円環状の板40aを軸線方向に重ねて構成されている。この外側ポール構造体40は、ヨーク36の外周側で固定フレーム11とは反対側を指向する外磁極面36cに、全ての板40aを貫通する固定用ボルト45によって固定されている。また、外側ポール構造体40の内周部には、軸線方向に延びる複数の凹溝40bが形成されている。これらの凹溝40bは、外側ポール構造体40の周方向へ等間隔に並んでいる。また、これらの凹溝40bは、内側ポール構造体39の凹溝39aどうしの間に位置する凸部39bと対向している。この実施の形態においては、この外側ポール構造体40によって、本発明でいう外周側磁極が構成されている。
【0030】
ヒステリシスブレーキ34のハブ37は、上述した軸受43,44によってヨーク36と内側ポール構造体39とに支持された円筒状のボス部37aと、このボス部37aから径方向の外側に延びる円板状のフランジ部37bとを含んでいる。ボス部37aは、ヨーク36および内側ポール構造体39の内周部と支持軸6との間に位置付けられている。このボス部37aと支持軸6側のスリーブ16との間には、隙間dが形成されている。
【0031】
ハブ37のフランジ部37bは、ボス部37aにおける固定フレーム11とは反対側の端部に接続されている。このフランジ部37bには、上述した連結ピン21が嵌合する貫通孔22と、スピンドル部4側の円筒状の壁25と協働してラビリンスシール27を構成する環状の溝26とが形成されている。この環状の溝26と円筒状の壁25とからなるラビリンスシール27は、連結ピン21より径方向の外側に位置付けられている。このため、スピンドル部4と張力付与部5(ヒステリシスブレーキ34)との連結部分は、糸2が回転する空間に対してラビリンスシール27によってシールされる。
【0032】
フランジ部37bの外周部分には、ヒステリシス部材46が取付ねじ47によって取付けられているとともに、カバー48が取付ねじ49によって取付けられている。ヒステリシス部材46は、強磁性材によって円筒状に形成されており、内側ポール構造体39と外側ポール構造体40との間に形成された環状の空間41に挿入されている。カバー48は、外側ポール構造体40の外周部とヨーク36の外周部とを径方向の外側から覆う筒状に形成されている。
【0033】
このように構成された糸供給用スピンドルユニット1において、スピンドル部4にボビン3を装着するためには、先ず、締込ナット31が弛められている状態でスピンドル部4の先端部をボビン3の中に挿入する。そして、ボビン3を張力付与部5に向けて進め、スピンドル部4をボビン3の中に挿入する。ボビン3は、進行方向の前端が基端側管部材13の突き当て面24に当接するまで進められる。ボビン3が突き当て面24に当接した状態においては、基端側管部材13のOリング23がボビン3の内周面に押し付けられることによって、ボビン3がスピンドル部4と同一軸線上に位置付けられる。その後、締込ナット31を締め込む。締込ナット31が締め込まれることにより、弾性部材33の外径が大きくなり、弾性部材33がボビン3の内周面に押し付けられてボビン3の他端部がスピンドル部4に固定される。
【0034】
この装着状態で糸2が織機によって引かれることにより、ボビン3とスピンドル部4が一体に回転する。スピンドル部4の回転は、連結ピン21を介してヒステリシスブレーキ34のハブ37に伝達される。このとき、ヒステリシスブレーキ34の励磁コイル38が励磁されていると、内側ポール構造体39と外側ポール構造体40とに対してヒステリシス部材46が回転することによって、ハブ37(スピンドル部4およびボビン3)にブレーキトルクが作用する。すなわち、織機によって引かれる糸2に張力が付与される。
【0035】
この実施の形態による糸供給用スピンドルユニット1は、ボビン3を支持するスピンドル部4とヒステリシスブレーキ34とが同一軸線上に並べられて互いに連結されている。このため、これらの部材を連結するために歯車を使用する場合と比べると、部品数が減るから、製造コストを低減することができる。
【0036】
この糸供給用スピンドルユニット1において、ボビン3をスピンドル部4に装着するときにボビン3が突き当て面24またはスピンドル部4の他の部分に衝突した場合は、衝撃荷重がスピンドル部4から支持軸6(基端側軸受7とスリーブ16)を介して固定フレーム11に伝達される。このため、ヒステリシスブレーキ34とスピンドル部4とが同一軸線上で並べられているにもかかわらず、ボビン装着時に衝撃荷重がヒステリシスブレーキ34に直接加えられることはない。
したがって、この実施の形態によれば、ヒステリシスブレーキ34が破損することを防ぎながら構造を簡素化し、製造コストが低減された糸供給用スピンドルユニットを提供することができる。
【0037】
この実施の形態において、スピンドル部4と張力付与部5(ハブ37)とを連結する連結部材は、支持軸6の軸線方向に沿って設けられた連結ピン21によって構成されている。連結ピン21は、スピンドル部4に連結ピン21の一端部が固定され、ヒステリシスブレーキ34のハブ37に連結ピン21の他端部が軸線方向へ移動可能に嵌合している。
【0038】
この実施の形態によれば、スピンドル部4とヒステリシスブレーキのハブ37とを連結するピンを軸線方向へ移動可能に設けることによって、上述した衝撃荷重がスピンドル部4と張力付与部5との連結部分を介してハブ37に伝達されることを確実に防ぐことができる。したがって、この構成を採ることにより、ヒステリシスブレーキ34がより一層破損し難くなる。
【0039】
なお、本実施の形態においては、連結ピン21の一端はスピンドル部4に固定されているが、ヒステリシスブレーキ34のハブ37に一端部が固定されかつスピンドル部4に他端部が軸線方向へ移動可能に嵌合するように構成してもよい。
【0040】
また、この実施の形態によれば、ヒステリシスブレーキ34のハブ37は、軸受43,44によってヨーク36の内周部に回転自在に支持されたボス部37aと、ヒステリシス部材46を支持するフランジ部37bとを含んでいる。したがって、ヒステリシス部材を支持するハブの円筒状のボス部37aは、支持軸6ではなく、軸受43,44を介して環状のヨーク36の内周部によって回転自在に支持される。
【0041】
このため、ヒステリシス部材46を回転自在に支持するにあたって、支持軸6に依存することはないから、上述した衝撃荷重が支持軸6からヒステリシスブレーキ34に伝達されることを確実に防ぐことができる。したがって、この実施の形態によれば、ヒステリシスブレーキ34がボビン装着時に衝撃を受けることがないから、ヒステリシスブレーキ34の動作の信頼性が高い糸供給用スピンドルユニットを提供することができる。
【0042】
また、ボビン3を支持するスピンドル部4とヒステリシスブレーキ34とを同一軸線上に並べる構成を採ると、スピンドル部4とヒステリシスブレーキ34とが互いに接近するから、ボビン3から特殊糸が引き出されたときに発生した微細な糸粉がヒステリシスブレーキ34内に侵入するおそれがある。もし、この糸粉がヨーク36の環状の空間に入ったり、回転軸を回転自在に支持する軸受に入ると、ヒステリシスブレーキ34の故障の原因となる。
【0043】
そこで、この実施の形態によるスピンドル部4と張力付与部5(ハブ37)との連結部分には、スピンドル部4からハブ37に向けて延びる円筒状の壁25と、ハブ37に形成されて円筒状の壁25が挿入される環状の溝26とを有するラビリンスシール27が設けられている。
このため、この実施の形態によれば、糸2がボビン3から引き出されるときに生じた糸粉(図示せず)がヒステリシスブレーキ34内に侵入することをラビリンスシール27によって防ぐことができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、ハブ37に環状の溝26を形成したが、スピンドル部4の基端側管部材13に環状の溝を形成し、ハブ37に設けた円筒状の壁の一端をこの溝に挿入することによって、ラビリンスシールを構成してもよい。
【0045】
ところで、従来のスピンドルユニットでは、ボビンとボビン装着用の回転軸との間にOリングを介在させて、ボビンをボビン装着用の回転軸に固定していた。しかし、このような固定構造を有する従来のスピンドルユニットでは、糸を供給するときに振動が発生するおそれがあった。この理由は、ボビンの内径のばらつきが大きいために、ボビンの内径が回転軸に取り付けられたOリングの外径よりも大きい場合には、Oリングによって得られる固定力が相対的に小さくなって、ボビンを回転軸と同一軸線上に保持することができなくなるからである。
【0046】
そこで、ボビンの装着を簡単に行うことができるにもかかわらず、糸供給時に振動が発生することがない糸供給用スピンドルユニットを提供するために、この実施の形態において、スピンドル部4は、支持軸6に対して軸線方向への移動が規制された固定部として機能するリング14bと、支持軸6に対して軸線方向に移動可能な可動部として機能する先端側管部材15と、これらに挟まれた環状の弾性部材33とを有している。さらに、スピンドル部4は、リング14bと先端側管部材15との間隔を調整する機構として、ヒステリシスブレーキ34とは反対側に位置する先端部に先端側軸受8、雄ねじ29、締込ナット31等を備えている。したがって、締込ナット31を雄ねじ29に対して締め込むことによって、先端側軸受8と先端側管部材15とがリング14bに接近する方向に移動するので、弾性部材33は、弾性変形により外径が大きくなり、ボビン3の軸心部に押し付けられる。
【0047】
このため、この実施の形態によれば、ボビン3の内径のばらつきに影響を受けることなくボビン3が弾性部材33によってスピンドル部4に強固に固定される。このため、ボビン3の装着を簡単に行うことができるにもかかわらず、糸供給時に振動が発生することがない糸供給用スピンドルユニットを提供することができる。