(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダイアライザー(2)の前記中空糸膜(3b)が、デキストランふるい係数基準で170〜320kDの水中でのカットオフ分子量、及びデキストランふるい係数基準で10〜20kDの水中での保持開始分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の肝臓補助装置。
前記中空糸膜(3b)が少なくとも1つの疎水性ポリマーと少なくとも1つの親水性ポリマーとを含み、前記疎水性ポリマーが、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリプロピレン(PP)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorethylene)(PTFE)又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、且つ前記少なくとも1つの親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリプロピレンオキシドとポリエチレンオキシドの共重合体(PPO−PEO)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の肝臓補助装置。
前記中空糸膜(3b)が、全血中で計測されるふるい係数が0.1〜1.0で最大45kDの分子量を有する物質の通過を許容することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の肝臓補助装置。
前記中空糸膜(3b)が、デキストランふるい係数基準で170〜320kDの水中でのカットオフ分子量、及びデキストランふるい係数基準で15〜20kDの水中での保持開始分子量を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の肝臓補助装置。
前記粒子状材料(5)が疎水性及び/又は親水性であり、酸素含有吸着剤、炭素系吸着剤及びポリマー系吸着剤又はそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の肝臓補助装置。
前記疎水性粒子状材料が、活性炭、カーボンナノチューブ、疎水性シリカ、スチレン系ポリマー、ポリジビニルベンゼンポリマー及びスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の肝臓補助装置。
前記親水性粒子状材料が、少なくとも1つの活性炭と、いかなる官能基も含まない少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体と、トリメチルベンジルアンモニウム官能基を有する少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体との組み合わせを含むか、又はいかなる官能基も含まない少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体と、トリメチルベンジルアンモニウム官能基を有する少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体との組み合わせを含むことを特徴とする、請求項10に記載の肝臓補助装置。
【背景技術】
【0002】
境界域肝機能患者をその肝臓が再生するまで、或いは移植のためドナー肝が入手されるまで補助するために使用される肝臓置換及び/又は肝臓補助用人工システム及び装置を開発又は改良することが必要とされている。現在、先行技術においてこの目的を果たすいくつかのシステムが公知である。原理上、かかる肝臓補助(多くの場合に肝臓透析とも称される)は解毒処置であり、様々な肝障害、例えば、肝腎症候群、非代償性慢性肝疾患、急性肝不全、肝移植後の移植片機能不全、肝臓手術後の肝不全、二次性肝不全、多臓器不全又は胆汁うっ滞における難治性掻痒症などの患者に使用される。肝臓補助は血液透析と同様であり、同じ原理に基づく。バイオ人工肝臓装置と同様、肝臓補助は人工体外肝臓補助の形態である。
【0003】
いわゆる肝腎症候群(HRS)は、肝硬変又は重度肝不全の罹患者における腎機能の急速な悪化からなる生命を脅かす医学的状態である。HRSは通常、肝移植が行われない限り致死的であるが、透析などの種々の治療によって病態の進行を防ぐことができる。
【0004】
HRSは、肝硬変(原因に依らず)、重症アルコール性肝炎、又は重度肝不全の罹患者に発症し得るもので、通常、感染症、胃腸管の出血、又は利尿薬の過用などの急性損傷が原因で肝機能が急速に悪化するときに起こる。HRSは肝硬変に比較的よく見られる合併症であり、肝硬変患者の18%がその診断から1年以内に発症し、肝硬変患者の39%がその診断から5年以内に発症する。肝機能の悪化が腸に供給する循環の変化を引き起こし、腎臓における血流及び血管緊張が変質すると考えられている。HRSの腎不全は、腎臓の直接的な損傷というよりむしろ、こうした血流変化の帰結である。2つの形態の肝腎症候群が定義されている:1型HRSは急速に進行する腎機能低下を伴い、一方、2型HRSには、標準的な利尿薬では改善しない腹水(腹部の体液貯留)が付随する。
【0005】
例えば、肝腎症候群の死亡リスクは極めて高い;1型HRS罹患者の死亡率は短期間で50%を超える。この病態に対する唯一の長期治療の選択肢は肝移植である。移植前の短期治療の選択肢として、肝臓透析がこの患者にとって極めて重要であるということになり得る。
【0006】
肝不全の臨床的症候群の重大な問題は、不全の肝臓で排泄されない毒素の蓄積である。この仮説に基づけば、親油性のアルブミン結合物質、例えば、ビリルビン、胆汁酸、芳香族アミノ酸の代謝産物、中鎖脂肪酸及びサイトカインの除去が肝不全における患者の臨床経過に有益であるはずである。
【0007】
MARS(登録商標)システムなどの肝臓透析システムでは、腎臓透析及び肝臓透析の両方の組み合わせである体外回路において血液が浄化される。腎臓透析は水溶性毒素しか除去しないため、腎臓透析単独の確立された方法を肝不全に適用することはできない。通常、肝臓はアルブミン結合毒素を除去する。アルブミンは血中に見られるタンパク質であり、毒素を含め水不溶性物質を運ぶ。このため、MARS(登録商標)システムのようなシステムは外因性ヒトアルブミンを利用して血液を浄化し、なぜならこのアルブミンが、非抱合型ビリルビン、胆汁酸、疎水性アミノ酸及び脂肪酸などの、腎臓透析の水溶液が除去できない血中で内因性アルブミンに結合する毒素を除去するためである。毒素のかなりの割合が低分子量乃至中間分子量の水溶性分子であり、肝不全及び腎不全によってその濃度が増加し得る。これらの分子は血液透析で有効に除去することができる。従ってMARS(登録商標)システムは、水溶性毒素及びアルブミン結合毒素に関する肝臓の解毒機能を代替すると考えられる。このシステムの原理は欧州特許第0 615 780 A1号明細書に既に開示されている。
【0008】
現行のMARS(登録商標)システムでは、患者の血液は中空糸膜ヘモダイアライザーの中に通される。このダイアライザーの透析液側は、透析液として働く清浄なヒトアルブミンを提供する。患者の血液が膜に沿って進むに従い、血液中の水溶性毒素及びタンパク質結合毒素が膜を通って他方の側の透析液アルブミン溶液へと運び込まれる。この膜はアルブミン並びに他の有用なタンパク質、例えばホルモン及び凝固因子に対しては不透過性であり、それらは患者の循環中に残される。次に浄化された血液が患者に戻る。その間、毒素を含むアルブミン溶液が、初めにローフラックスダイアライザーを通過することにより再生処理される。この過程でアルブミン溶液から水溶性物質が除去される。次にアルブミンは活性炭吸収材を通過し、炭素粒子を除去するフィルターを通った後、アルブミンに結合した毒素を除去する陰イオン交換体を通過する。再生処理されたアルブミンは、次に再びダイアライザーに入り、再び毒素に結合することができ、このようにして毒素が患者の血液から除去され得る。MARS(登録商標)システムは有効ではあるが比較的複雑であり、システムに外因性アルブミンを供給する必要があるためシステムが比較的高価にもなる。
【0009】
別の公知の肝臓補助システム、Prometheus(登録商標)システム(FPSA、分画血漿分離吸着(fractionated plasma separation and adsorption))は、血液回路におけるアルブミン透過性フィルター(AlbuFlow(登録商標))を通じた分画血漿分離及びハイフラックス透析に基づく。このシステムはいわゆるAlbuFlow(登録商標)膜を利用し、この膜はアルブミンなどの大型のタンパク質に対して透過性である。このシステムでは、初めに血液が圧送されてAlbuFlow(登録商標)フィルターに通され、フィルターは血液細胞及び巨大タンパク質分子を保持する。次に、血液の液体分、即ち血漿がアルブミン及び小型タンパク質分子と共に2つの吸収材に通して送り込まれ、吸収材が毒素をアルブミンから分離させて結合する。吸着後、解毒されたアルブミンを含む血漿が、AlbuFlowフィルターにより保持される血液細胞と一緒に合わされる。最後に、血液が透析されることにより残りの水溶性毒素が除去され、次にろ過された血液が再び患者に導入される。このシステムは、内因性アルブミンがAlbuFlow(登録商標)膜を介して二次回路に入るため、二次回路に外因性アルブミンは不要である。それでもなお、Prometheus(登録商標)システムは血漿分画が必要であり、またいくつかの構成要素も包含するため、このシステムは比較的複雑となる。
【0010】
「SEPET」と称される別の手法は選択的な血漿ろ過に基づき、これは、患者の血液から、特定の分子量範囲内の物質(毒性物質を含む)を含有する特定の血漿画分を除去することを含む。この方法は、例えば国際公開第2004/014315(A2)号パンフレットに記載されている。
【0011】
それぞれの既存のシステムの複雑性を低減し、及び/又は肝臓毒の除去効率を、特に非抱合型ビリルビン、胆汁酸及び/又はIL−6などの特定の望ましくない分子の排除に関して改善することが、極めて望ましいといえる。特に、タンパク質結合肝臓毒の効率的な除去を可能にする方法又は装置を考案することが重要であるといえる。現行のシステムには、非抱合型ビリルビンなどの強く結合した毒素に関するその排除性能の点で限界があることが知られている。また、急性肝不全における炎症誘発性サイトカインの蓄積が高い死亡率と関連付けられている。IL−6、IL−1β及びTNFは、肝組織の広範な壊死性炎症を引き起こすことが知られている。
【0012】
ここで本出願者らは、単純で、且つ血漿分画、外因性アルブミン及び余計な構成要素、例えば吸収材カートリッジをなしで済ませることができると同時に、種々の肝臓毒に関する排除性能の大幅な改善を実現する肝不全治療装置を開発した。第1のステップでは、患者の血液が標準的なヘモダイアライザー、例えば当該技術分野において公知のとおりのハイフラックスダイアライザーなどに通して灌流される。この第1のステップは、原理上は第2のステップとしてもまた実施され得るものであって、水溶性毒素を除去する働きをし、これが既に血中の毒素負荷を低減した後、その血液が、標準的な血液透析では効率的に除去されない毒素の吸着に重点が置かれる第2のダイアライザーに通して灌流される。第2のステップでは、場合によりまた第1のステップでも、第1のダイアライザーを出た浄化された血液が第2のフィルター装置の中空糸に入り、第2のフィルター装置は、実質的な、しかし限られた量のアルブミンが膜壁を通過することを許容する膜を含む。アルブミンは、それに結合した毒素及びハイフラックスダイアライザーでは除去できなかったより小型の血液成分と共にダイアライザーのろ液スペースに運び込まれ、そこで特定の吸着剤と接触する。この吸着剤は装置のろ液スペースに占在しており、且つタンパク質結合毒素、疎水性毒素及び水溶性毒素(これらは全て総称的に「肝臓毒」と称することができる)を除去する働きをする。ろ液スペースは中空糸のルーメンスペースとのみ流体連通している。従って、ろ液スペースの粒子状材料により吸着又は結合されなかった成分は全て、再び中空糸のルーメンスペースに入り、ダイアライザーを血液と共に離れ、患者に直接戻され得る。
【0013】
従ってこの新規肝臓透析装置は、公知のシステムの前述の構成要素のいくつかの機能を組み合わせる。同時に、この新規装置は、システムの解毒効率を大幅に改善することが可能である。詳細には、強くアルブミンが結合した肝臓毒、例えば非抱合型ビリルビン、胆汁酸及び炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン6(IL−6)が一層高い効率で除去される。本装置はさらに、いかなる特別に適合された透析機も必要としない。従って本発明は、肝不全治療用の体外肝臓補助システムにおける血液からの肝臓毒、特にアルブミン結合肝臓毒の除去に、改良された、同時に複雑性の低いシステムを提供する。
【0014】
ろ液側に粒子状材料を含む中空糸フィルターモジュールが当該技術分野において公知である。この原理を使用している装置の例は、例えば米国特許出願公開第2011/0218512 A1号明細書に記載され、この特許出願公開は、血液又は血漿をレクチン親和性血液透析装置に通過させることを含む抗ウイルス療法に関するものである。この装置では、血液が中空糸膜のルーメンを通過し、ここではウイルスを受け入れて固定化するカートリッジのルーメン外スペースにレクチンが位置する。米国特許出願公開第2009/0304677 A1号明細書は、エキソソームなどの微小胞粒子を血液から除去する方法に関し、ここでは、具体的な一実施形態において、中空糸カートリッジを使用する体外循環回路中に血液が流される。しかしながら、これまでのところ、一方で規定量のアルブミンが膜壁を通過することを可能にする特定の中空糸膜と、他方で膜のろ液側における活性の粒子状材料とを組み合わせる、従って本来であれば数種の装置を提供しなければならない数種の機能を1つの装置に組み合わせるようなフィルター装置は公知となっていない。
【0015】
また、肝不全と密接な関係がある特定の毒素を除去する働きをするある種の肝臓透析システムが当該技術分野において公知であるが、標準的なハイフラックスダイアライザーを前述したような統合型のダイアライザーとインラインで組み合わせる、両方が血液回路に位置するようなシステムは公知となっていない。本発明はかかる装置を初めて記載し、また、肝臓補助療法におけるその使用も記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の肝臓補助システムの実質的な部分の概略図を示し、ここで(2)は、実質的であるが限られた量のアルブミンが通過して、1つ以上の吸着剤(5)が占在しているろ液スペース(4b)に入ることを許容する中空糸膜(3b)を含む中空糸膜ダイアライザーを指す。明確にするため、この図には1つの膜糸のみを概略的に示す。ろ液スペースは中空糸のルーメンスペースから遮断されている。入口(7b)からダイアライザーに入る血液(6)(実線の矢印として図示される)は第1の標準ヘモダイアライザー(1)の保持液であり、第1の標準ヘモダイアライザー(1)は、より低分子量の化合物を除去するための標準ハイフラックス血液透析膜を含み、従って透析溶液(9)(破線矢印として図示される)で灌流され、透析溶液(9)は入口(10a)を通ってろ液スペースに入り、中空糸(3a)のルーメンスペース内の血液の流れ方向と逆方向に流れた後、ダイアライザーを出口ポート(11a)から離れる。処理済みの血液はダイアライザー(1)を出口(8a)から離れ、続いてダイアライザー(2)に入る。ろ液側で吸着剤により捕捉しようとするアルブミン及びアルブミンに結合した水溶性の肝臓毒を含むより小型の化合物は、ダイアライザー(2)の膜を通過することができる。浄化済みの透過液は中空糸膜のルーメン側に再び入り、血液と共に出口(8b)を通って装置を離れ得る。任意選択の入口(10b)及び任意選択の出口(11b)は、この図では閉鎖されている。中空糸ダイアライザー(1)は、入口ポート(10a)からフィルターに入り出口ポート(11a)からそこを離れる透析流体(9)によってろ液側で灌流される標準ダイアライザーである。ダイアライザー(1)の中空糸膜(3a)(ここでは単一の膜糸として表される)は実質的な量のアルブミンの通過を許容しないが、血液(6)から水溶性成分を除去する働きをし、それらの水溶性成分はまた、腎不全患者の治療用ダイアライザーを使用するときに血液から除去されるものでもある。
【
図2】本発明の体外肝臓補助システムの構成要素である中空糸膜ダイアライザー(2)の別の概略図を示す。この中空糸膜ダイアライザー(2)は、円筒形フィルターハウジング(2b)と、前記ハウジング(2b)内で長手方向に分布した実質的に平行な中空糸(3b)の束とを含み、ここで中空糸の開放している端部は入口手段(7b)及び出口手段(8b)と流体連通し、及びこれらの端部はシーリング化合物(2c)の中に、中空糸(3b)の開放端部がシーリング化合物(2c)を貫通して延在するように埋設される。ダイアライザーはろ液スペース(4b)をさらに含み、これは中空糸膜(3b)のルーメンスペースから遮断されている。ろ液スペース(4b)は、場合により、透過液をハウジング(2b)から除去するため入口手段(10b)及び出口手段(11b)と流体連通していてもよいが、概して閉鎖されている。ろ液スペース(4b)には、透過液の成分、例えばアルブミンに結合していなくても又は結合していてもよい肝臓毒との相互作用能を有する粒子状吸着剤材料(5)が一様に占在している。この図では、患者から誘導される血液(6)が入口(7b)からダイアライザー(2)に入り、出口(8b)からダイアライザー(2)を離れる。任意選択の入口(10b)及び出口(11b)は閉鎖されている。
【
図3】本発明の肝臓補助システムの極めて概略的な図を示す。血液が患者(12)からその体外治療のため引き込まれる。この図では、血液は初めにダイアライザー(1)に入り、その後ダイアライザー(2)を灌流する。中空糸膜ダイアライザー(1)及び(2)については
図1にさらに詳細に示される。このシステム内で使用される透析機は(13)として表示される。
【
図4】本発明に係る中空糸膜ダイアライザー(2)の中に吸着剤材料を充填するために使用され得る充填装置(14)を示す。ダイアライザーを装置の取付台(17)に位置決めすることができ、取付台(17)は、フィルターモジュールの出口ポート(11b)及び場合によりまた入口ポート(10b)も受け入れるスロット(18)を有し得る。取付台(17)は旋回ユニット(15)に固定され、旋回ユニット(15)は空気圧式直線振動器(16)と連通している。振動器(16)はスロット(16a)及び(16b)内を往復して動くことができ、それにより旋回ユニット(15)及び取付台(17)の角変位が調整され得る。旋回ユニット(15)は取付台(17)と併せて、実質的にモジュールの長手方向軸の周りで往復して動くことのできる可動要素として設計される。充填装置(14)は、充填方法(乾燥又は懸濁液)及び吸着剤の特性に応じて、充填する間のフィルターモジュールの直立位置(90°)(
図5B)又はフィルターモジュールの傾斜(
図5A)を可能にするように設計されてもよい。
【
図5】フィルターモジュールに対する粒子状材料の懸濁液式充填方法の概略図を示し、ここではフィルター(2)が直立(90°)位置に保持され、粒子状材料の懸濁液が出口ポート(11b)からろ液スペースに導入される。打撃器(20)及び振動器(16)が動作可能にされる。懸濁液が、スターラ(24)を備えた供給タンク(21)からポンプで送り込まれる(Q
Rez)。溶媒は膜壁を通過した後に入口ポート(8b)からモジュールを離れる一方、粒子状材料はろ液スペース内に残り、溶媒はポンプで送られて(Q
Bout)受液タンク(22)に入る。溶媒は充填プロセスを補助するためポンプで(Q
Bin)入口ポート(7b)からモジュールに戻されてもよく、ここでは真空ポンプ(19b)と連通している脱気ユニット(23)を使用して気泡の混入が回避される。入口ポート(10b)は閉鎖されている。
【
図6】本発明に係る肝臓補助システムのインビトロ試験のセットアップを示す。このセットアップは再循環式であり、例えば、PrismafleX(登録商標)(Gambro Lundia AB、スウェーデン)透析機(25)と、血液加温器ユニット(30)(38℃に設定されている)とを含む。oXiris(登録商標)セットを使用してダイアライザー(1)が提供され、ダイアライザー(1)は実施例2に係るプロトタイプ(ダイアライザー(2))に接続されている。このシステムは、抱合型及び非抱合型ビリルビン、ケノデオキシコール酸、クレアチニン及び塩化アンモニウム(実施例3を参照)を補足したヒト血漿からなる、水浴(27)中で加熱器(29)により約37℃に加温されている試液プール(26)をさらに含む。このプールはマグネチックスターラ(28)の助けにより撹拌される。試料をB
in、B
zw又はB
outで採取して、ダイアライザーを通過する前、通過中及び通過した後の試験物質の濃度を計測することができる。
【
図7】実施例3において
図6に係る試験セットアップで得られたクレアチニン除去の結果を示す。
図7Aは、4、8及び10時間後のクレアチニン除去総量(mg単位)を図示する。
図7Bは、クレアチニンのクリアランスデータ(ml/分単位)を示す。システムの経時的なクリアランス特性を示すため、様々な時間ウィンドウが示される。
【
図8】実施例3において
図6に係る試験セットアップで得られたアンモニウム除去の結果を示す。
図8Aは、4、8及び10時間後のアンモニウム除去総量(mg単位)を図示する。
図8Bは、クレアチニンのクリアランスデータ(ml/分単位)を示す。アンモニウムに関するシステムの経時的なクリアランス特性を示すため、様々な時間ウィンドウが示される。
【
図9】実施例3において
図6に係る試験セットアップで得られたケノデオキシコール酸(CDCA)除去の結果を示す。
図9Aは、4、8及び10時間後のCDCA除去総量(mg単位)を図示する。
図9Bは、クレアチニンのクリアランスデータ(ml/分単位)を示す。システムの経時的なクリアランス特性を示すため、様々な時間ウィンドウが示される。
【
図10】実施例3において
図6に係る試験セットアップで得られたビリルビン除去の結果を示す。
図10A及び
図10Bは、4、8及び10時間後のそれぞれ非抱合型及び抱合型ビリルビン除去総量(mg単位)を図示する。
図10Cは、4、8及び10時間後の総ビリルビン除去総量(mg単位)を示す。
図10D、
図10E及び
図10Fは、それぞれ非抱合型、抱合型及び総ビリルビンのクリアランスデータ(ml/分単位)を示す。システムのクリアランス特性を示すため、様々な時間ウィンドウが示される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、肝不全に罹患している患者の治療用肝臓補助システム(
図3)に関し、これは、実質的な量のアルブミンが膜壁を通過することを許容しない、且つ入口ポート(7a)からダイアライザーに入る患者の血液(6)で灌流される第1の中空糸膜ダイアライザー(1)であって、透析液溶液(9)がろ液スペース(4a)を中空糸(3a)内の血液の流れと逆方向に連続流で通過する、第1の中空糸膜ダイアライザー(1)と、所定量のアルブミンが膜壁を通過することを許容する、且つ患者(12)又は第1のダイアライザー(1)から入口ポート(7b)を通じて処理済みの血液(6)を受け取る第2の中空糸膜ダイアライザー(2)であって、ろ液スペース(4b)が中空糸膜(3b)のルーメンスペースから遮断されており、いかなる透析溶液によっても灌流されず、且つ親水性材料及び/又は疎水性材料を含む粒子状材料(5)が中空糸膜ダイアライザー(2)のろ液スペースに占在している、第2の中空糸膜ダイアライザー(2)とを血液回路に含むことを特徴とする。原理上、血液を初めに中空糸膜ダイアライザー(2)に通し、その後中空糸膜ダイアライザー(1)に通すことが可能である。しかしながら、初めに標準的な血液透析により水溶性毒素を除去し、そのようにして血液がダイアライザー(2)に入る前に血液の毒素負荷を低減することが有利であり得る。ダイアライザー(2)は、主として、肝不全状況で典型的に現れる毒素、特に親油性(疎水性)であるタンパク質結合(アルブミン結合)毒素であって、且つ腎臓透析に利用可能な透析システム及び標準的な尿毒症毒素の除去では除去することのできない毒素を除去する働きをする。
【0026】
本発明との関連において、表現「実質的な量のアルブミン」又は「所定量のアルブミン」は、ダイアライザー(2)の中空糸膜が、ウシ血漿(タンパク質レベル60g/l)、37℃、Q
B最大(概して200〜500ml/分)及びUF 20%でISO8637に従い計測したふるい係数が0.1〜0.3でアルブミンの通過を許容することを意味する。従って、アルブミンが、それに結合していてもよい肝臓毒と共に、ろ液スペース中の粒子状材料と接触することになり、それにより前記結合した及び未結合の毒素が有効に除去され得る。同時に、ダイアライザー(2)で使用される特別な中空糸膜(3b)が、さらに大型のタンパク質、例えばフィブリノゲンなどの凝固因子及び実質的に患者の血中に保持されていなければならない他の成分の通過を阻止する。ダイアライザー(1)は実質的な量のアルブミンが膜壁を通過することを許容せず、これは、ウシ血漿(タンパク質レベル60g/l)、37℃でISO8637に従い計測したときのアルブミンふるい係数が、Q
B最大及びUF20%で0.01を下回ることを意味する。
【0027】
本発明に係る肝臓補助システムで使用される中空糸膜ダイアライザー(1)は、現在腎臓透析患者の体外治療で血液透析、血液ろ過又は血液透析ろ過に使用されているとおりのダイアライザーであってよい。本発明の一態様によれば、中空糸膜ダイアライザー(1)で使用することのできる中空糸膜はいわゆるローフラックス膜であり、しかしながらさらに後述するハイフラックス膜ダイアライザーの方がより好ましい。ローフラックスダイアライザーは、概して、ハイフラックス膜と比較して低い透過性を特徴とする。ローフラックス膜は、15mL/時間/mm Hg未満のUF係数及び10ml/分未満のβ2−ミクログロブリンクリアランスを有することを特徴とし得る。デキストランふるい係数基準では、ローフラックス膜はさらに、10〜20の分子量カットオフ(MWCO)(kg/mol)及び2〜4kDの保持開始分子量(MWRO)を特徴とし得る。MWROは、ふるい係数が0.9となる最小の分子量として定義される。ローフラックス膜の水透過性は、概して2〜5・10
−4cm/(バール・秒)の範囲(37±1℃で0.9wt.−%NaCl及びQ
B100〜500ml/分で)である。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)で使用することのできる中空糸膜は、いわゆるハイフラックス膜である。用語「ハイフラックス」は時に不明瞭に用いられる。ハイフラックス膜は、概して、ローフラックス膜と比較して、約1.4kDの分子量を有するビタミンB12などのある種のマーカー分子のインビトロクリアランスを増加させるその高い透過性を特徴とする。ハイフラックス膜はまた、β2−ミクログロブリン(11.8kD)などのより高い分子量の溶質を除去するその能力も特徴とする。本発明との関連において、用語「ハイフラックス」及び「ハイフラックス膜」は、それぞれ、>15mL/時間/mm HgのUF係数を有する膜を指し、ここでUF係数は、単位時間当たりの所与の容積の限外ろ過液、従来のHDにおいて膜面積約1.7〜2.1m
2についてQ
B300〜400ml/分及びQ
D500ml/分で計測するとき>20mL/分、好ましくは20〜40mL/分のβ2−ミクログロブリンクリアランス、及び>450mL/分の物質移動係数(K
oA)を生じさせるために透析膜を横切って及ぼさなければならない圧力の量(膜間差圧)を決定する。本発明との関連においてハイフラックス膜は、さらに、40〜90・10
−4cm/(バール・秒)の膜の水透過性(37±1℃で0.9wt.−%NaCl及びQ
B100〜500ml/分で)により定義される。本発明との関連においてハイフラックス膜のアルブミン損失は、従来のHD、4時間後並びにQ
B250ml/分及びQ
D500ml/分で<0.5gである。ハイフラックス膜は、例えば米国特許出願第13/477473号明細書に記載されるとおり決定されるデキストランふるい係数基準として、約2〜3nmの細孔半径を有するローフラックス膜及び細孔半径8〜12nmを有する高カットオフ膜と比較して約3.5〜5.5nmの細孔半径をさらに特徴とする。前記デキストランふるい係数基準では、ハイフラックス膜は、25〜65の分子量カットオフ(MWCO)(kg/mol)及び5〜10kDの保持開始分子量(MWRO)をさらに特徴とし得る。
【0029】
ハイフラックス及びローフラックスダイアライザーは、セルロース系材料及び合成材料を含む様々な材料で作製され得る。本発明の一実施形態によれば、中空糸膜ダイアライザー(1)の膜は、少なくとも1つの疎水性ポリマーと少なくとも1つの親水性ポリマーとを含む。本発明の一実施形態によれば、疎水性ポリマーは、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリプロピレン(PP)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorethylene)(PTFE)又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、及び少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリプロピレンオキシドとポリエチレンオキシドの共重合体(PPO−PEO)からなる群から選択される。本発明のさらに別の実施形態によれば、中空糸膜ダイアライザー(1)で使用されるハイフラックス膜は、アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムの共重合体を含み、場合によりその表面がポリエチレンイミン(PEI)、好ましくは高分子量PEIでコーティングされ、さらに場合によりその上にグラフト化されたヘパリンを有し得る。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、ダイアライザー(1)は、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、及びポリビニルピロリドンをベースとした、非対称3層構造を有し且つ約5×10
−4cm/バールの水力学的透過率(Lp)を示す膜を含む。かかる膜は、例えば、Gambro Lundia ABにより商標名Polyflux(登録商標)P21Lで販売されるフィルターに含まれている。本発明に係るダイアライザー(1)で使用することのできる膜糸の別の例は、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、及びポリビニルピロリドンを含む、非対称3層構造を有し且つ約80×10
−4cm/バールの水力学的透過率Lpを示す膜である。かかる膜は、例えば、Gambro Lundia ABにより商標名Polyflux(登録商標)P210Hで販売されるフィルターに含まれている。本発明に係るダイアライザー(1)で使用することのできる膜糸の別の例は、ポリアリールエーテルスルホン及びポリビニルピロリドンを含む、非対称3層構造を有し且つ約80×10
−4cm/バールの水力学的透過率(Lp)を示す膜である。かかる膜は、例えば、Gambro Lundia ABにより商標名Polyflux(登録商標)Revaclearで販売されるフィルターに含まれている。本発明の別の実施形態によれば、本発明の肝臓補助システムは、ダイアライザー(1)として、同様にGambroから入手可能な、均質なゲル構造を有し且つポリエチレンイミン及びヘパリンでコーティングされている、アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムの共重合体をベースとする膜を含むoXiris(商標)ダイアライザーを含む。本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の装置で使用することのできる膜は、同様にアクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムの共重合体で作られた、均質なゲル構造を有し、且つ商標名Filtral(商標)(Gambro)で販売されるフィルターに含まれている膜である。本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の肝臓補助システムは、ダイアライザー(1)として、同様にGambroから入手可能な、アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムの共重合体をベースとする膜を含むNephral(商標)STダイアライザーを含む。本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の肝臓補助システムは、ダイアライザー(1)として、同様にGambroから入手可能な、均質なゲル構造を有し且つポリエチレンイミン及びヘパリンでコーティングされている、アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムの共重合体をベースとする膜を含むEvodial(登録商標)ダイアライザーを含む。本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の肝臓補助システムは、ダイアライザー(1)として、Fresenius Medical CareによりFX 80及びFX 100として販売されるダイアライザー(両方ともにいわゆるHelixone(登録商標)膜を含む)、又はOptiflux(登録商標)ダイアライザーF180NR又はF200NR、Baxter Healthcare CorporationによりXenium XPH 210又はXenium XPH 190として販売されるダイアライザー、又は旭化成メディカル株式会社によりRexeed−18S及びRexeed−21Sとして販売されるダイアライザーを含むことができる。
【0031】
本発明に係る肝臓補助システムで使用される中空糸膜ダイアライザー(2)は、それが、円筒形フィルターハウジングと、ハウジング内に長手方向に分布した略平行中空糸膜(3b)の束と、中空糸膜(3b)のルーメンスペースから遮断された、且つダイアライザーの中空糸(3b)のルーメンスペースに血液を送り込むための入口手段(7b)及び中空糸(3b)のルーメンから処理済みの血液を除去するための出口手段(8b)と流体連通しているろ液スペース(4b)であって、少なくとも1つの吸着剤を含む粒子状材料(5)が占在しているダイアライザー(2)のろ液スペース(4b)とを含むことを特徴とする。ダイアライザー(2)の中空糸膜は、それが、概してハイフラックス膜などの従来の膜タイプと比べて膜の選択的な層上により大きい平均細孔径を有し、且つそれに関係して、より大きい分子に対してより高いふるい係数を有することを特徴とし得るいわゆる高カットオフ膜であることを特徴とする。膜の平均細孔径は膜表面上の細孔の中央値又は平均サイズの指標となる。平均細孔径は半径又は直径を指し得る。平均細孔径はまた、膜が排除する又は通過させることが可能な粒度も示す。膜細孔はむしろ非均一である傾向があり、従って形状及び容積のいかなる前提も、主として数学的モデリング及び解釈を目的とするものである。しかしながら、平均細孔径は、膜がある種の状況下でどのように挙動するかの正確な記述及び定量的分析を提供し得る。本発明との関連において高カットオフ膜は、Aimar et al.:“A contribution to the translation of retention curves into pore size distributions for sieving membranes”.J.Membrane Sci.54(1990)339−354から引用する以下の式[1]
α=0.33(MM)
0.46[1]
に従い決定するとき、及び例えば米国特許出願第13/477473号明細書、実施例3に記載されるとおり決定されるデキストランふるい係数基準で、7nmより大きい、一般には8〜12nmの選択的な層上の平均細孔径により定義される膜を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「ふるい係数(S)」は、特定の分子量の分子を排除する又は通過させる膜の物理的特性を指す。全血中、血漿中又は水中におけるふるい係数は、規格ISO8 637、2010年版に従い決定することができる。簡単に言えば、膜のふるい係数は、タンパク質溶液(例えばウシ又はヒト血漿)を限定条件(Q
B、TMP及びろ過速度)下で膜束を通じてポンプで圧送し、供給液中、保持液中及びろ液中のタンパク質の濃度を求めることにより決定される。ろ液中のタンパク質の濃度がゼロである場合、0%のふるい係数が得られる。ろ液中のタンパク質の濃度が供給液及び保持液中のタンパク質の濃度に等しい場合、100%のふるい係数が得られる。
【0033】
本発明の一態様によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)の膜は、少なくとも1つの疎水性ポリマーと少なくとも1つの親水性ポリマーとを含む。本発明の一実施形態によれば、疎水性ポリマーは、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリプロピレン(PP)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorethylene)(PTFE)又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、及び少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリプロピレンオキシドとポリエチレンオキシドの共重合体(PPO−PEO)からなる群から選択される。本発明の別の実施形態によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)の膜は、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)及びポリスルホン(PSU)からなる群から選択される疎水性ポリマーと、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される親水性ポリマーとを含む。本発明のさらに別の実施形態において、中空糸膜ダイアライザー(2)の膜は、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)及びポリスルホン(PSU)からなる群から選択される疎水性ポリマーと、親水性ポリマーポリビニルピロリドン(PVP)とを含む。
【0034】
本発明の別の態様によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)の膜は、デキストランふるい係数基準で170〜320kDの水中でのカットオフ分子量、及びデキストランふるい係数基準で10〜20kDの水中での保持開始分子量を特徴とする。本発明の別の実施形態によれば、膜は、デキストランふるい係数基準で90〜200kDの水中でのカットオフ分子量を有する。本発明のさらに別の実施形態によれば、膜は、デキストランふるい係数基準で120〜170kDの水中でのカットオフ分子量を有する。
【0035】
ダイアライザー(2)の中空糸膜は、ある十分な量のアルブミンが膜壁を通過し、ダイアライザーのろ液スペース(4b)に占在する粒子状材料(5)と接触することを許容する。アルブミンは、本発明との関連では、それに結合した肝臓毒を有してもよく、肝臓毒はろ液スペース中の粒子状材料(5)に接触して少なくとも段階的に除去されることになる。他の肝臓毒もまた膜壁を通過し、粒子状材料(5)によって吸着され得るか又はそれに結合し得ることは明らかである。実質的に毒素が結合していないアルブミンを含む浄化済みの透過液は、中空糸膜のルーメンスペースに再び入ることによりろ液スペースを離れることができ、ルーメンスペースから出口手段(8b)を通ってダイアライザー(2)を離れることができる。所与の分子、例えばアルブミンは、それがダイアライザー(2)を通過する間、当然ながら膜壁を2回以上通過し得るため、従って粒子状材料(5)に接触する(それにより結合した毒素が除去され得る)機会を2回以上有し得る。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)の膜は、それが、ISO 8637に従い0.1〜1.0の全血中で計測されるふるい係数で最大45kDの分子量を有する物質の通過を許容することを特徴とする。本発明の別の実施形態によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)の膜は、ウシ血漿中で計測して、Q
B最大及びUF20%、37℃、血漿中タンパク質含量60g/lでISO 8637に従い0.05〜0.3のアルブミンふるい係数を有し、及び全血中で計測して、37℃、タンパク質レベル60g/l、Q
B最大及びUF20%でISO 8637に従い0.1〜0.3のアルブミンふるい係数を有する。
【0037】
中空糸膜ダイアライザー(2)を調製するための膜の製造は転相法に従い、ここではポリマー又はポリマー混合物を溶媒中に溶解してポリマー溶液が形成される。この溶液を脱気してろ過し、その後高温に保つ。続いて、2つの同心開口を有するノズルの外側環状スリットからポリマー溶液を押し出す。同時に、ノズルの内側開口から中心流体を押し出す。回転ノズルの出口で中心流体がポリマー溶液と接触するようになり、この時点で沈殿が初期化される。この沈殿過程は、ポリマー溶液からの溶媒と中心流体の非溶媒との交換である。この交換によってポリマー溶液はその相が液相から固相に反転する。固相では、溶媒/非溶媒交換の動力学により細孔構造、即ち非対称性及び細孔径分布が生じる。この過程は、ポリマー溶液の粘度に影響を与える特定の温度で働く。回転ノズルの温度並びにポリマー溶液及び中心流体の温度は30〜80℃である。粘度が溶媒と非溶媒との交換による細孔形成過程の動力学を決定する。続いて膜を好ましくは洗浄し、乾燥させる。沈殿条件、例えば中心流体の組成、温度及び速度を選択することにより、所定量の親水性末端基が細孔の表面に位置して親水性ドメインを作り出すような形で疎水性及び親水性ポリマーが「凍結」される。疎水性ポリマーは他のドメインを構築する。タンパク質の吸着を回避するため、細孔表面積に所定量の親水性ドメインが必要である。親水性ドメインのサイズは、好ましくは20〜50nmの範囲内でなければならない。膜表面からアルブミンをはじくためには、親水性ドメインはまた、互いが所定距離の範囲内になければならない。アルブミンが膜表面からはじかれることにより、アルブミンと疎水性ポリマーとの直接の接触、結果的にアルブミンの吸収が回避される。膜の調製に使用されるポリマー溶液は、好ましくは10〜20wt.−%の疎水性ポリマー及び2〜11wt.−%の親水性ポリマーを含む。中心流体は、概して水、グリセロール及び他のアルコール類から選択される45〜60wt.−%の沈殿媒体、及び40〜55wt.−%の溶媒を含む。換言すれば、中心流体は親水性ポリマーを一切含まない。一実施形態において、外側スリット開口を通って出てくるポリマー溶液は、沈殿する膜糸の外側で湿り蒸気/空気混合物に曝露される。好ましくは、湿り蒸気/空気混合物は最低15℃、より好ましくは最低30℃、且つ75℃以下、より好ましくは60℃以下の温度を有する。好ましくは、湿り蒸気/空気混合物の相対湿度は60〜100%である。さらに、外側スリット開口から現れるポリマー溶液の周りの外気中の湿り蒸気は、好ましくは溶媒を含む。湿り蒸気/空気混合物中の溶媒含量は、好ましくは0.5〜5.0wt−%であり、含水量に関係する。温度制御された蒸気雰囲気中の溶媒の効果は、膜糸の沈殿速度を制御することである。用いられる溶媒が少ないと、外表面はより密な表面となり、使用される溶媒が多いと、外表面はより開放した構造を有することになる。
【0038】
押出し前、ポリマー溶液に好適な添加剤が添加されてもよい。添加剤を使用すると適切な細孔構造が形成され、膜透過性、水力学的透過率及び拡散透過率、並びにふるい特性が最適となる。好ましい実施形態において、ポリマー溶液は、好ましくは、水、グリセロール及び他のアルコール類を含む群から選択される0.5〜7.5wt.−%の好適な添加剤を含有する。溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブチロラクトン及び前記溶媒の混合物を含む群から選択され得る。好適な膜の作製方法は、例えば、国際公開第2004/056460 A1号パンフレット又は米国特許出願第13/477473号明細書に開示される。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る中空糸膜ダイアライザー(2)の調製に使用することのできる中空糸膜は、当該技術分野において公知の、且つGambro Lundia ABから商標名HCO1100(登録商標)又はTheralite(登録商標)で市販されているダイアライザーで現在使用されている膜である。例えば、Theralite(登録商標)膜は、ポリエーテルスルホン及びPVPから調製され、50μmの壁厚及び215μmの内径を有する。60g/lのタンパク質レベル(アルブミンレベル20〜30g/l)を有する37℃のウシ血漿で、且つQ
B=250ml/分、Q
D=500ml/分及びUF=0ml/分では、Theralite(登録商標)ダイアライザーに使用されているとおりの膜に関して最初の4時間のアルブミン損失は最大約28gであり、4時間後の平均毎時アルブミン損失(±20%)は約7gである。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、ダイアライザー(2)内の膜糸充填密度又は膜糸割当て(fiber allocation)は20%〜50%の範囲である。本発明のさらに別の実施形態によれば、ダイアライザー(2)の総膜面積は1.0〜2.1m
2の範囲である。ダイアライザーにおいて膜糸は、好ましくはフィルターモジュールの円筒形ハウジングの長さにわたり一様に分布し、これは、単一の膜糸間の距離がそれらの膜糸の全長にわたり実質的に同じまま保たれることを意味する。本発明の別の実施形態において、膜糸割当ては25%〜55%である。本発明のさらに別の実施形態において、膜糸割当ては25%〜45%である。
【0041】
本発明に係るモジュールの作製に使用することのできる膜糸は直線状又はクリンプ状であってもよく、ここでクリンプ状膜糸は、所定の波状のうねり(ondulation)を有する膜糸であり、この波状のうねりは膜糸の長さにわたり実質的に正弦波状であるが、かかる正弦波状のうねりから逸脱していてもよく、即ち1つの単一の膜糸の又は2つ以上の膜糸間でクリンプの波長及び/又は振幅が異なっていてもよい。波状のうねりを有する膜糸及び膜糸に波状のうねりを付与する方法は当該技術分野において公知であり、例えば、欧州特許第1 257 333 A1号明細書に記載されている。1つの装置において直線状膜糸とクリンプ状膜糸とを組み合わせることが可能である。本発明の一実施形態では、フィルターモジュールの全ての膜糸が波状のうねりを有する。本発明の別の実施形態によれば、フィルターモジュールの全ての膜糸が直線状膜糸である。本発明に係る中空糸膜ダイアライザー(2)に関しては、0.1mm〜0.9mmの振幅及び3.5mm〜11.5mmの波長の波状のうねりを有する膜糸を使用することが有利であり得る。例えば、Theralite(登録商標)ダイアライザーで使用されている標準的な中空糸は、0.6mmの振幅及び約7.3mmの波長を有する。
【0042】
本発明の別の実施形態によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)の膜表面積は1.0〜2.1m
2の範囲である。概して、本発明に係るダイアライザー(2)で肝臓毒の有効な除去を可能にするために、1.3〜1.8m
2の膜表面積が十分である。本発明のさらに別の実施形態によれば、膜糸の寸法は180〜250μm(内径)及び35〜80μm(壁厚)の範囲である。
【0043】
本発明の一態様によれば、本発明に係る中空糸膜ダイアライザー(2)は、先述のとおりの微細孔中空糸膜の束を含み、さらに、モジュールのろ液スペースに、中空糸膜ダイアライザー(2)のろ液スペースに占在する粒子状材料(5)を含み、ここで粒子状材料(5)は、中空糸膜を通過した肝臓毒を固定化又は吸着することができる。粒子状材料は疎水性及び/又は親水性材料からなってもよく、酸素含有吸着剤、炭素系吸着剤及びポリマー系吸着剤又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。表現「吸着」は、それが本明細書で使用されるとき、物質が液相から固体基材(粒子状材料)の表面上へと選択的に分配されることを指す。物理吸着は、主に、吸着質分子と吸着剤表面を構成する原子との間のファンデルワールス力及び静電力により引き起こされる。従って吸着剤は、第一に表面積及び極性などの表面特性を特徴とする。非極性吸着剤は概して「疎水性」と称される。炭素質吸着剤、ポリマー吸着剤及びシリカライトは、典型的な非極性吸着剤である。
【0044】
表現「粒子状材料」は、本明細書で使用されるとき、中空糸膜モジュール又はフィルターのろ液スペースの中に充填されて占在する材料を指す。粒子状材料は概して、この記載全体を通して、特定の平均直径を有する粒子からなることを指す。前記粒子は、簡単にするため凸形状を有するものと見なされ、その直径は、その境界の接線をなす2つの対向する平行線の間に形成し得る最大の距離であると定義され、及び幅は、最小のかかる距離であると定義される。一般に粒子は事実上略球形であると仮定され、これは直径及び幅が同じであることを意味する。本発明の別の実施形態によれば、粒子状材料は1μm〜300μmの直径を有する粒子からなる。
【0045】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ろ液スペースには粒子状材料が、使用される粒子状材料、ハウジング内における充填密度及びろ液スペースの利用可能な容積を含めたハウジングそれ自体の幾何学的形状に適合される所定の充填比で一様に占在している。表現「一様」は、本明細書で使用されるとき、粒子状材料、即ちそれを構成する粒子がろ液スペースにわたり均等に分布していることを意味する。これは、容積当たり、例えばcm
3当たりの平均粒子数がその空間にわたり実質的に同じであることを意味する。1cm
3の平均粒子数に関連して使用される表現「実質的に同じ」は、所与の1cm
3容積範囲にある粒子の数が第2の1cm
3容積範囲にある粒子の数と最大20%まで、好ましくは10%までの差であり得ることを意味する。
【0046】
表現「充填比」は、本明細書で使用されるとき、それぞれその乾燥形態又は湿潤形態で、所与の中空糸膜モジュールのろ液スペースに収容することのできる最大量の粒子状材料のml単位での容積(V
PM)と、前記モジュールのろ液スペースのml単位での利用可能な容積(V
FS)との比を指す:
【0047】
従ってV
PM(ml)は、装置のろ液スペースに収容することのできる粒子状材料の容積を表す。V
FS(ml)は利用可能なろ液スペースを表し、これは所与の中空糸膜フィルターモジュールについて既知であるか、又は容易に決定することができる。従って比が1.0であれば、それはろ液スペースの利用可能な全容積が粒子状材料で占拠されていることを意味する。比が低いほど、モジュールのろ液スペースに存在する粒子状材料は少なくなる。充填比は常に、実質的にモジュールの利用可能な全容積が使い尽くされているモジュールを参照する。「使い尽くされた」は、本発明との関連では、それ以上粒子状材料を装置に充填できないことを意味する。V
PM(ml)は、所与の方法でモジュールに充填することのできるg単位の粒子状材料の総量をその材料のかさ密度(g/ml)で除して計算することができる。粒子状材料のかさ密度は、粒子が占有する総容積当たりの材料の粒子の質量として定義される。粒子状材料のかさ密度は材料の処理の仕方に応じて変化し得ることに留意しなければならない。例えば、単純にシリンダに流し込まれた粒子状材料は、あるかさ密度を有し得る(「かさ密度」)。そのシリンダが撹拌される場合、粒子は動き、通常互いに近付いて沈降するため、かさ密度は高くなる。このため、本発明に従い調製されたフィルターにおける粒子状材料のかさ密度は「タップ密度」(ρ)と称され、これは原理的には、粒子状材料を圧密化した後のかさ密度を指す。所与の材料について、ρはDIN ISO 3953に従い決定することができる。それ以上材料の圧密化が起こらないとき、最大かさ密度(「タップ密度」)に達する。従って、所与の中空糸膜モジュールのろ液スペースに収容することのできる粒子状材料の容積V
PM(ml)は、以下のとおり計算することができる:
【0048】
m
PMは、モジュールのろ液スペースに収容し得る粒子状材料の量を表す。m
PMは、例えば、初めの(乾燥)粒子状材料の分量から残りの粒子状材料(ろ去され乾燥させたもの、材料を懸濁液としてモジュールに充填した場合)の量を減じることにより決定することができる。本発明の一態様によれば、ダイアライザー(2)は0.6〜1.0の範囲の充填比を提供する。本発明の別の態様によれば、ダイアライザー(2)は0.4〜0.7の範囲の充填比を提供する。本発明のさらに別の態様によれば、ダイアライザー(2)は0.3〜0.5の範囲の充填比を提供する。
【0049】
肝臓毒を結合及び/又は吸着するための、本発明に係る中空糸膜ダイアライザー(2)のろ液スペースに占在する非荷電又は非極性疎水性材料は、概して当該技術分野において公知の様々な材料から選択され得る。本発明の一態様によれば、疎水性粒子状材料は、活性炭、カーボンナノチューブ、疎水性シリカ、スチレン系ポリマー、ポリジビニルベンゼンポリマー及びスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる群から選択される。活性炭は、例えば粒子状の形態で、平均直径が0.001〜0.15mmの1.0mm未満のサイズの粉末又は細顆粒として、又は粉末状の活性炭と比べて比較的大きい粒度を有する顆粒状活性炭として使用することができる。顆粒状活性炭には、取り扱いがより簡単で、且つろ液スペースにおけるその保持の点で安全性がより高いという利点がある。本発明に係るダイアライザー(2)で使用し得る活性炭は、酸洗浄された顆粒状活性炭粒子であってもよい。本発明の一態様によれば、顆粒状活性炭の粒度は>10メッシュ(2.0mm)及び<40メッシュ(0.420mm)の範囲である。本発明の別の態様によれば、活性炭の粒度は約0.200mmの範囲である。本発明により有利に用いられ得る活性炭の総表面積は600m
2/g〜1200m
2/gの範囲である。かかる活性炭は、例えば、Norit(登録商標)GAC 1240 PLUS A(Norit Nederland BV)として購入することができる。使用し得るポリマー疎水性材料の例は、例えば、スチレン系ポリマー、例えば、DOWEX(商標)OPTIPORE(商標)L493及びV493、又はAmberlite(登録商標)XAD(登録商標)−2、ポリジビニルベンゼンポリマー又はスチレン−ジビニルベンゼン共重合体(例えばAmberlite(登録商標)XAD4又はAmberchrom(商標)CG161)、ポリ(1−フェニルエテン−1,2−ジイル)(Thermocole)、又は表面に化学的に結合した疎水性基を有するシリカである疎水性シリカ、又はそれらの組み合わせである。疎水性シリカはヒュームドシリカ及び沈降シリカの両方から作製され得る。使用することのできる別の疎水性材料は、いかなる官能基も含まないスチレンとジビニルベンゼンの共重合体であるUjotitとして知られ、Ujotit PA−30、Ujotit PA−40又はUjotit PA−20として入手可能である。本発明の一実施形態によれば、ダイアライザー(2)のろ液スペース中の粒子状材料は、Ujotit PA−30などの、いかなる官能基も含まないスチレンとジビニルベンゼンの共重合体を含む。Ujotit PA−30粒子又はビーズは80〜200μmの平均直径及び750〜850m
2/gの比表面積を有する。本発明の別の実施形態によれば、ダイアライザー(2)のろ液スペース中の粒子状材料は、活性炭、例えばNorit(登録商標)GAC 1240 PLUS A(Norit Nederland BV)などを含む。本発明のさらに別の実施形態によれば、ダイアライザー(2)のろ液スペース中の粒子状材料は、非荷電疎水性材料として、少なくとも1つの活性炭と、少なくとも1つの、いかなる官能基も含まないスチレンとジビニルベンゼンの共重合体との組み合わせを含む。
【0050】
肝臓毒を結合及び/又は吸着するための、本発明に係る中空糸膜ダイアライザー(2)のろ液スペースに占在する荷電又は極性親水性材料は、当該技術分野において公知の様々な材料から選択され得る。本発明の別の態様によれば、粒子状材料は、さらなる修飾なしに使用され得る陽イオン交換粒子からなり得る。かかる陽イオン交換材料は、概して、アガロース、セルロース、デキストラン、メタクリル酸塩、ポリスチレン又はポリアクリル酸のマトリックスをベースとする。かかる材料は概して公知であり、例えば、それぞれ、Sepharose(登録商標)CM、Sephadex、Toyopearl(登録商標)、Amberlite(登録商標)、Diaion(商標)、Purolite(登録商標)、Dowex(登録商標)及びDuolite(登録商標)SO
3Hなどの商標名で市販されている。
【0051】
本発明の別の態様によれば、粒子状材料は、さらなる修飾なしに使用することのできる陰イオン交換材料からなり得る。かかる陰イオン交換材料は、ポリスチレン又はスチレン−ジビニルベンゼンであって、スルホン酸、ポリアミン又は第4級若しくは第3級アミンで修飾されていなくても又は修飾されていてもよいものをベースとし得る。本発明の一態様によれば、粒子は、活性基、例えば、第4級アンモニウム基、ジメチルエタノールアミン基、ジメチルエタノールベンジルアンモニウム基、ベンジルトリアルキルアンモニウム基、ベンジルジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム及び/又はトリメチルベンジルアンモニウム官能基を有するスチレンとジビニルベンゼンの共重合体をベースとする。本発明の具体的な態様によれば、使用される粒子は、第4級アンモニウム基を有するスチレンとジビニルベンゼンの共重合体をベースとする。本発明の一態様によれば、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体はトリメチルベンジルアンモニウム官能基を有し、コレスチラミン(Cholestyramine)、クエミド(Cuemid)、MK−135,コルバール(Cholbar)、コルバール(Cholbar)、クエストラン(Questran)、カンタラン(Quantalan)、コレスチラミン(Colestyramine)又はDowex(登録商標)1x2−Clとも称される。使用することのできるかかる陰イオン交換媒体は、例えば商標名Amberlite(登録商標)で知られている。Amberlite(登録商標)は、例えば、第4級アンモニウム基、ベンジルジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム基又はジメチルエタノールアミン基などの活性基又は官能基を有するスチレン−ジビニルベンゼンで形成されるマトリックスを含む。使用することのできる他の陰イオン交換媒体は、例えば商標名Dowex(登録商標)で知られている。Dowex(登録商標)は、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムなどの活性基又は官能基を有し得るスチレン−ジビニルベンゼンで形成されるマトリックスを含む。本発明の一実施形態によれば、ダイアライザー(2)のろ液スペース中の粒子状材料は、トリメチルベンジルアンモニウム官能基、例えば、コレスチラミン(Cholestyramine)、クエミド(Cuemid)、MK−135,コルバール(Cholbar)、コルバール(Cholbar)、クエストラン(Questran)、カンタラン(Quantalan)、コレスチラミン(Colestyramine)、Purolite(登録商標)又はDowex(登録商標)1x2−Clなどを有する少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体を含む。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ダイアライザー(2)のろ液スペース中の粒子状材料は、少なくとも1つの活性炭と、いかなる官能基も含まない少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体と、トリメチルベンジルアンモニウム官能基を有する少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体との組み合わせを含む。それぞれの成分の間の可能な比は、1:1:1〜10:5:1の範囲である。本発明のさらに別の実施形態によれば、ダイアライザー(2)のろ液スペース中の粒子状材料は、いかなる官能基も含まない少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体と、トリメチルベンジルアンモニウム官能基を有する少なくとも1つのスチレンとジビニルベンゼンの共重合体との組み合わせを含む。それぞれの成分の間の可能な比は、10:1〜1:1の範囲である。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー粒子状材料がビーズの形態で使用され、ビーズはサイズ及び組成が異なってもよい小型の略球形の粒子であり、100nm〜5mmの範囲、特に3μm〜300μmの範囲の平均直径を有し得る。
【0054】
本発明に係る中空糸膜ダイアライザー(2)の調製には、粒子状材料は好ましくは、ろ液スペース(4b)内における粒子状材料(5)の均質な分布を可能にする方法でろ液スペースに導入される。粒子状材料(5)は乾燥形態でろ液スペースに充填することができ、ここで材料は入口ポート(10b)を介して上から下に充填される。この場合、フィルターモジュールが傾斜した位置を取らなければならない。粒子状材料はまた、例えば水中にある懸濁液としてろ液スペースに充填されてもよい。乾燥粒子状材料又は材料の懸濁液もまた、ろ液スペースに入口ポート(10b)を介して上から下に導入され得る。代替として、懸濁液はろ液スペースに出口ポート(11b)を介して下から上に導入されてもよく、ここでフィルターモジュールは、垂直位置又は傾斜した位置、好ましくは垂直位置に保持される。本発明との関連において、表現「入口ポート」及び「出口ポート」は、材料をろ液スペースに導入し又はそこから除去するためのその実際の使用とは無関係に、(10b)及び(11b)などの特定のポートに割り当てられる。例えば、出口ポート(11b)のような「出口ポート」は、原理上、流体を装置からろ液スペースから除去するために使用することができ、従って「出口」として働き得るが、また材料を装置に導入するためにも使用することができ、従って「入口」としても働き得る。しかしながら、二重の割当てを回避するため、それぞれのポートは、それらのポートを特定の使用に限定しようとするものではないが、「入口」ポート又は「出口」ポートのいずれかと命名されている。
【0055】
本発明に係るモジュールは、ろ液スペースに疎水性材料が一様に占在する方法で調製されなければならない。同時に、装置の能力を向上させるため、高い充填比が有利である。従って、0.6〜1.0の高い充填比が望ましいが、しかしながらそれより低い充填比であっても極めて良好な結果を達成するには十分であり得る。ひいてはより低い比が好ましいこともある。このように、モジュールは、標的肝臓毒を含む処理しようとする流体中に存在する物質がモジュールのろ液スペースに入ると、その物質が活性粒子状材料全体にわたり均等に分布し、吸着又は結合され、従って高効率で除去されるように流れの最適化された透過を提供するように設計される。先述のとおり、充填プロセスは、例えば、モジュールをその長手方向軸に対して特定の傾斜角、好ましくは45°〜90℃で位置決めすることを可能にするように設計された充填装置で達成され得る。かかる充填装置(
図4A及び
図4B)は、中空糸フィルターモジュールを最小総角変位(θ)を約10°としてその長手方向軸の周りに素早く連続して時計回りと反時計回りとに交互に回転させることにより充填プロセスを最適化するように設計することができる。ろ液スペースを充填する間のモジュールの回転運動は、場合により乾燥材料の特定の傾斜角と組み合わさって、ハウジングの利用可能な全スペースにわたる中空糸間への粒子状材料の分布及び堆積の向上を可能にする。好ましくは、充填過程におけるモジュールは、さらに、打叩手段の助けによりモジュールの長手方向軸と垂直に加えられる力に曝される。充填中のフィルターモジュールに対するかかる押叩又は打叩の衝撃は、ろ液スペース中の粒子状材料の一様な分布及び堆積をさらに向上させる。押叩力又は打叩力は、例えば、
図4A及び
図4Bに示されるとおり充填装置に空気圧式断続打撃器を補足することにより実現し得る。これにより、モジュールのろ液スペースに一様に堆積させることのできる粒子状材料の総量がさらに増加する。本発明の一実施形態によれば、充填プロセスは粒子状材料をその湿潤形態でろ液スペースに充填することにより達成される(
図4B)。本発明に係るモジュールの調製に適用することのできる充填方法の詳細な説明は、本出願者によって本願と同日に出願された、且つ参照により本明細書に援用される「Filter device combining beads and fibers」と題される欧州特許出願に記載されている。しかしながら、処理しようとする流体からの標的肝臓毒の効率的な除去を実現するのに十分な材料の存在及び均質な分布を可能にする形で粒子がろ液スペース内に分布する限り、疎水性粒子をろ液スペースに導入するため任意の手段又は方法を用いることができる。
【0056】
本発明に係るモジュールの調製には、当該技術分野においてヘモダイアライザー、ヘモダイアフィルター又はプラズマフィルター用のハウジングとして知られるものを含め、様々な種類のハウジングを使用することができる。透析フィルターハウジングは様々なプラスチック材料で、射出成形など様々な方法によって作製され得る。例えば、ポリカーボネート及びポリプロピレンが様々な成形及び押出し適用において広く使用されており、ここに開示するモジュールにもまた使用することができる。例えば、本来標準的な透析フィルターに使用されるハウジング、例えばPolyflux(登録商標)210Hハウジングを使用することが可能である。しかしながら、本発明の趣旨から逸脱することなく異なる寸法を有する他のハウジングを使用し得ることは明らかである。
【0057】
本発明の一態様によれば、中空糸膜ダイアライザー(2)は、アルブミン結合肝臓毒を含めた肝臓毒を血液から除去するための体外肝臓補助システム又は装置の一部である。かかる肝臓補助システムは、肝不全の病態の治療に使用される。治療は好ましくは、患者の血液からのタンパク質結合毒素を含む肝臓毒の排除にある。本発明との関連においては、肝不全の経過中に特異的に蓄積し及び/又は患者に悪影響を及ぼすことが示されている物質であって、且つ肝臓補助システムにより除去する必要がある物質を、「肝臓毒」と称する。従って本記載の意味における肝臓毒には、限定なしに、アンモニア、メルカプタン、フェノール、ビリルビン、胆汁酸(例えばケノデオキシコール酸)、特定の血管拡張薬(例えばアルドステロン、ノルエピネフリン、バソプレシン(vasopression)、血漿レニン)、芳香族アミノ酸、乳酸、尿素、尿酸、中鎖脂肪酸の代謝産物並びに炎症誘発性及び抗炎症性サイトカイン(例えばIL6、IL8、IL10、TNFa、sTNFaR1)、白血病抑制因子(LIF)、TGF−β1などの肝細胞成長阻害因子及び肝損傷又は肝不全を引き起こし得る薬物(例えばジアゼパム、アセトアミノフェン、フェニルブタゾン)が含まれる。例えば、疎水性胆汁酸は高濃度では細胞毒性であり、肝細胞内でのその蓄積はアポトーシス又は壊死をもたらし得る。炎症誘発性サイトカインは、肝炎、肝細胞のアポトーシス及び壊死、胆汁うっ滞、及び線維症を媒介すると考えられている(例えば、Stauber et al(2010):慢性肝不全急性憎悪におけるMARS及びPrometheus:毒素排除及び転帰(MARS and Prometheus in Acute−on−Chronic Liver Failure:Toxin Elimination and Outcome)、Transplantationsmedizin 22:333−338を参照)。肝不全に罹患している患者を本発明に係る肝臓補助装置で治療することにより、かかる肝臓毒の血中濃度の低下が得られる。ここで、概して標準的な腎血液透析の間に除去されるような、且つ「腎」毒素又は「尿毒症」毒素(尿素等)とも称することのできる毒素もまた、この肝臓補助システムにより中空糸膜ダイアライザー(1)によって除去され得ることに留意しなければならない。本発明との関連において、表現「肝臓毒」は、概してかかる尿毒症毒素を包含する。
【0058】
用語「肝不全」は、本発明との関連では、肝臓が正常な生理の一部としてのその正常な合成及び代謝機能を果たすことができないことを指す。従って肝不全は、例えば不十分なアルブミン解毒をもたらし、それに続いてアルブミンの結合能が枯渇し、他の場合にアルブミンに結合した毒素、例えば非抱合型ビリルビンが高濃度化する。治療は例えば>10mg/dLのビリルビン濃度で適応される。しかしながら、肝臓透析治療が適応されるもののビリルビン値の上昇を特徴としない肝障害がある。本発明で使用されるとおりの表現「肝不全」に関連する障害としては、限定はされないが、肝腎症候群、非代償性慢性肝疾患、急性肝不全、肝移植後の移植片機能不全、肝臓手術後の肝不全、二次性肝不全、多臓器不全、外因性中毒症又は胆汁うっ滞における難治性掻痒症等が挙げられる。
【0059】
本発明に係る肝臓透析は、患者(12)の血液を第1のダイアライザー(1)に送り込むことにより実施され得る(
図3)。ダイアライザー(1)は、入口ポート(7a)からダイアライザーに入る患者の血液(6)で灌流され、及び入口ポート(10a)からダイアライザー(1)に入る透析液溶液(9)が、ろ液スペース(4a)を中空糸(3a)内の血液の流れと逆方向に連続流で通過する。ダイアライザー(1)は、腎機能障害患者に提供される腎臓の血液透析治療でもまた除去されるとおりの尿毒症毒素と称され得る小型の分子を有効に除去するものと思われる。従って、ダイアライザー(1)は実質的な量のアルブミンが膜壁を通過することを許容しない。処理済みの血液は出口ポート(8a)からダイアライザー(1)を離れ、入口ポート(7b)を通ってダイアライザー(2)に入る。第2の中空糸膜ダイアライザー(2)は、実質的な量のアルブミンが膜壁を通過することを許容するものであって、且つ第1のダイアライザー(1)の血液(6)を入口ポート(7b)から受け取るものであり、中空糸膜(3b)のルーメンスペースから遮断されているろ液スペース(4b)を有する。ろ液スペースはいかなる透析溶液によっても灌流されないが、肝臓毒を結合又は吸着することが可能な1つ又はいくつかの材料で構成される粒子状材料(5)が占在している。
【0060】
本発明に係る治療を実施するために追加的な又は特別に適合された透析機は必要ないことが、本肝臓補助システムの別の利点である。慢性又は急性腎疾患に罹患している患者の血液透析治療に現在使用されている透析機を、本肝臓補助システムにも使用することができる。使用し得る透析モニタの例は、例えば、PrismafleX(登録商標)又はArtis(商標)透析機(いずれもGambro)、又はFresenius Medical Careの2008、4008及び5008透析機シリーズである。概して、本発明に係る肝臓補助システムは、CVVHD又はCVVHDFなどの標準的なCRRTモードで実行することができる。
【0061】
本発明に係る肝臓補助システムで使用される流量は、所定の範囲にわたり異なることもあり、当業者は周知している。標準的な流量は、例えば、100〜500ml/分、好ましくは150〜250ml/分のQ
B(血流)、ICユニット(例えばPrismaflex(登録商標))について100〜800ml/分のQ
D、及び標準的な慢性透析ユニットについて300〜800ml/分のQ
Dである。治療時間は所与の患者について異なり得る。しかしながら、治療時間は、通常は8〜10時間の範囲である。
【0062】
アルブミンは、ある程度までは、ダイアライザー(2)のろ液スペースに存在する吸着剤に吸着され得ることが分かっている。アルブミンは肝臓においてのみ合成される。健康なヒトにおける血漿中のアルブミン濃度は、通常は33〜52g/lの範囲である。正常なアルブミン合成速度は1日体重1kg当たり約0.2gであり、アルブミン合成と代謝との間には定常状態が存在する。1日に代謝されるアルブミンの量は血漿濃度に比例すると考えられ、これは血漿アルブミン含有量の約10%の一定の割合が1日当たりに代謝されることを意味する。アルブミンの半減期は血漿アルブミン濃度に反比例し、即ちアルブミン含有量が低下すると半減期の増加がもたらされる一方、アルブミン濃度が増加すると最大50%の代謝率の増加が引き起こされる(Boldt,Br.J.Anaesth.(2010)104(3):276−284)。従って、本発明に係る肝臓補助システムによる治療の間に吸着剤により吸着され得るアルブミンの置換は不要であり得る。しかしながら、アルブミン置換は、特に突発性細菌性腹膜炎(SBP)、肝腎症候群(HRS)、及び穿刺後症候群(PPS)の場合に、肝臓が重度に障害されているということに起因して適応され得る。置換は当該分野の技術水準に従い、ほとんどは輸液により行うことができる。従って、本発明の一態様によれば、本発明に係る肝臓補助又は透析治療は、血清アルブミン値を30g/lより高く維持するため治療の間に吸着されたアルブミンの置換が続いて行われ得る。
【0063】
当業者には、本明細書に開示される本発明に対し、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な代替及び変更を行い得ることは容易に明らかであろう。ここで、本発明の理解をさらに促進するため、本発明を好ましい実施形態の非限定的な例として示す。
【実施例】
【0064】
実施例1
ダイアライザーモジュール(2)で使用される中空糸膜の調製
膜の形成には2つの溶液、N−メチルピロリドン中に溶解した疎水性及び親水性ポリマー成分(21wt−%)からなるポリマー溶液と、N−メチルピロリドンと水との混合物である中心溶液とを使用する。ポリマー溶液はポリエーテルスルホン(PES 14.0wt−%)及びポリビニルピロリドン(PVP 7.0wt−%)を膜構築成分として含む。この溶液はNMP(77.0wt−%)及び水(2.0wt−%)をさらに含む。中心溶液は水(53.0wt−%)及びNMP(47.0wt−%)を含む。膜形成プロセスの間、ポリマー溶液と中心溶液とをスピナレット又はジェットで接触させて膜を沈殿させる。スピナレット、ポリマー溶液及び中心溶液の規定の一定温度(58℃)を用いてこのプロセスを補助する。沈殿した中空糸は、蒸気が充満した加湿シャフト(100%相対湿度、54℃)を通り抜けて落ち、凝固/洗浄浴(20℃、約4wt−%NMP)に入る。膜を2つのさらなる水浴(70℃〜90℃)中において向流(250l/h)でさらに洗浄する。膜の乾燥をオンラインで実施し、ここで残留水が除去され、膜糸束の形成後、束をハウジングに注封する。
【0065】
実施例2
中空糸及びろ液スペースにおける粒子状材料を含む中空糸膜ダイアライザー(2)の調製(懸濁充填)
実施例1に従い調製した標準的な中空糸を使用して、モジュールのろ液側に活性粒子状材料を含むフィルターモジュールを調製した。使用したハウジングはISO 8637:2004に従い血液側及びろ液側にコネクタを有した。膜糸は、内径が215μm及び壁厚が50μmであった。膜糸は、表Iに示すとおり、深さ0.6mm又は0.8の僅かなクリンプを有した。総膜表面積は、表Iに示すとおり、1.9m
2又は1.7m
2のいずれかであった。ハウジングは直径が48mm及び全長(有効膜糸長さ)が270mmであった。注封材料はポリウレタンからなった。
【0066】
【0067】
図4に示すとおりの充填セットアップに従い、及び表IIに指示するとおり、7つのフィルターに表Iに示すとおり粒子状材料を充填した。使用した粒子状材料は、平均直径が80〜200μm及び比表面積が750〜850m
2/gのUjotit PA−30粒子(Dr.Felgentraeger & Co.−Oeko−chem.und Pharma GmbH、Dessau−Rosslau、ドイツ)、コレスチラミン(cholestyramin)(Purolite GmbH、Ratingen、ドイツからのPurolite(登録商標)A430MR)及び活性炭(Norit(登録商標)GAC 1240 PLUS A、Norit Nederland BV、オランダ)であった。
【0068】
【0069】
【0070】
フィルターを秤量してフィルターの初期質量を特定した。次にフィルターを充填装置(14)の取付台(18)に装着し、空気圧式断続打撃器(Netter Druckluft−Intervallklopfer PKL 190、Netter GmbH、ドイツ)をフィルターモジュールに取り付けた(
図5)。必要に応じて取付台(18)を70°の傾斜に設定した。出口ポート(10b)及び(11b)は閉鎖し、入口ポート(7b)は開放した。出口ポート(8b)もまた開放した。空気圧式直線振動器(Netter Druckluft−Kolbenvibrator NTK 15x、Netter GmbH、ドイツ)をこのシステムに接続し、5.5バールに設定した。第1のステップにおいて、フィルターの血液側及びろ液側に、気泡を避けながら脱気RO水を充填した。空気圧式断続打撃器並びに空気圧式直線振動器を圧縮空気に接続し、ポンプを100ml/分の流量で始動させた。ビーズを装置の下部からろ液スペースに送り込み、速やかに装置の上部に沈降させて、続いてろ液スペースが完全に充填されるまで、ビーズをモジュールに上部から徐々に充填した。ろ液スペースが完全に充填されてシステム内の圧力が上昇した時点でこのプロセスを終了し、供給タンクに残る未使用のビーズを乾燥させて秤量した。ろ液スペースに導入された粒子状材料の総量を示す結果は表Iを参照することができる。表Iに示す材料のタップ密度(Ujotit PA−30;コレスチラミン;活性炭)を使用して、DIN ISO 3953に従いモジュールの充填比を計算することができる。
【0071】
実施例3
肝臓毒の除去
本発明に係る肝臓補助システム(
図1を参照)を、PrismafleX(登録商標)機械(Gambro)にダイアライザー(2)として実施例2のプロトタイプを含み、且つダイアライザー(1)としてoXiris(登録商標)フィルター(Gambro)を含む再循環試験セットアップ(
図6)において試験した。3000mlの試験プールは、約37℃に保たれているOctaplas(登録商標)LGヒト血漿(血液型O、Octapharmaから)中に、75又は375mg/l抱合型ビリルビン(Sigma)、25又は125mg/l非抱合型ビリルビン M
W842.9(Calbiochem)、100又は1000mg/lケノデオキシコール酸(CDCA)(Sigma)、1000mg/lクレアチニン無水物(Sigma−Aldrich)及び20mg/l塩化アンモニウム>99.5%(Roth)を含有した。プロトタイプ6、7及び9にはそれぞれの高い方の濃度を使用した(
図7〜
図10を参照)。このプールは5mlヘパリン(Heparin−Natrium−25000−ratiopharm)をさらに含有した。60ml 0.1M HClを添加して中性pHにした。プールは常に光から保護した。ダイアライザーを所定のとおり機械に接続し、CVVHDFモードで実行した。oXiris(登録商標)ダイアライザー(1)は下から上に実行した。血液加温器(PrismaTherm(登録商標)II)を下流に接続し、38℃に設定した。システムを、5000IU/lヘパリンを含む2×2l NaCl 0.9%でフラッシュした。Q
B=200ml/分、Q
D=1.5l/時間及び補液1l/h(合計:2.5l/h)。UF=0l/h。このシステムを10時間運転させた。その後フィルター及び血液ラインをNaCl 0.9%でフラッシュした。3×1.5mlの試料を0分、10分、30分、60分、90分、120分、2時間、3時間、4時間、4.25時間、5時間、6時間、7時間、8時間、8.25時間、9時間及び10時間後にそれぞれB
in、B
ZW、及びB
outで採取した。60分後に1mlヘパリンを添加し、その後は2時間毎に添加した。4時間後及び8時間後、18.75mg抱合型ビリルビン、6.25mg非抱合型ビリルビン、25mgケノデオキシコール酸、250mgクレアチニン及び60mg塩化アンモニウムを含有する血漿溶液(100ml)を添加した。この「スパイク」は、図に指示するとおり場合によっては省いた。使用した透析溶液はPrismasol(登録商標)2(Gambro)であった。
【0072】
試験の間に得られた試料を分析した。ビリルビン試料を、抱合型ビリルビンについてはDiaSys Diagnostic Systems GmbH、ドイツからのBilirubin Auto Direct FS検査キットで評価し、総ビリルビンについてはHORIBA ABX SAS、フランスからのABX Pentra Bilirubin Total CP検査キットで評価した。Trinity Biotech(St.Louis、米国)からの胆汁酸キットの助けによりCDCA濃度を決定した。scil Diagnostics GmbH(Viernheim、ドイツ)からのEnzytec(登録商標)流体アンモニア検査キットで塩化アンモニウム濃度を決定した。Dialab(Sasbach a.K.、ドイツ)からのクレアチニン酵素的PAPキットの助けによりクレアチニン濃度を決定した。
【0073】
クレアチニン除去総量(mg単位)の結果を
図7Aに示す。クレアチニンクリアランスを
図7Bに示す。アンモニウム除去総量(mg単位)の結果を
図8Aに示す。アンモニウムクリアランスを
図8Bに示す。CDCA除去総量(mg単位)の結果を
図9Aに示す。CDCAクリアランスを
図9Bに示す。最後に、
図10Aは非抱合型ビリルビンの除去総量(mg単位)を示し;
図10Bは抱合型ビリルビン(mg単位)の除去総量(mg単位)を示す。
図10Cはビリルビン(非抱合型及び抱合型)の総除去量(mg単位)を示す。非抱合型及び抱合型のクリアランス並びに総ビリルビン(非抱合型及び抱合型)のクリアランスをそれぞれ
図10D、
図10E及び
図10Fに示す。