特許第6392778号(P6392778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392778人工心臓弁リーフレットにおける曲げ特性の幾何学的制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392778
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】人工心臓弁リーフレットにおける曲げ特性の幾何学的制御
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】28
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-549384(P2015-549384)
(86)(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公表番号】特表2016-501100(P2016-501100A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】US2013068390
(87)【国際公開番号】WO2014099150
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】61/739,721
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/835,988
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム シー.ブラッチマン
(72)【発明者】
【氏名】コーディー エル.ハートマン
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−507097(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/167131(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0114913(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0185038(US,A1)
【文献】 特表2002−541915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
概ね管状の形状を有し、複数のリーフレット窓を画定する、リーフレットフレームと、
前記リーフレットフレームに連結され、前記リーフレット窓の各々から広がる少なくとも1つのリーフレットを画定するフィルムと
を備える人工弁であって、
前記リーフレット窓の各々は、2つのリーフレット窓側部と、リーフレット窓基部と、リーフレット窓上部とを含み、各リーフレットは、2つのリーフレット側部と、リーフレット基部と、前記リーフレット基部の反対側にある自由縁とを有する二等辺四辺形の形状を有し、前記2つのリーフレット側部は前記リーフレット基部から分岐しており、前記リーフレット基部は平らであり、前記リーフレット基部は前記窓基部に連結され、前記2つのリーフレット側部の各々は前記2つの窓側部の一方に連結され、各リーフレットは、2つの側部領域と、前記2つの側部領域の間にある中央領域とを有し、前記中央領域は、前記2つの側部領域とは異なる形状を有し、前記中央領域は平面状である、人工弁。
【請求項2】
前記2つの側部領域と前記中央領域は平面状である、請求項1に記載の人工弁。
【請求項3】
前記中央領域は平面状であり、前記2つの側部領域は、各々の形状に球状又は円筒状の構成部分を有する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項4】
記中央領域は、中央領域両側の二辺と、前記リーフレット基部と、前記リーフレット自由縁とで画定される二等辺三角形の形状で画定され、前記中央領域両側の二辺は、前記リーフレット基部から集まり、前記2つの側部領域の各々は、三角形の形状を有し、前記中央領域両側の辺の一方と、前記リーフレット側部の一方と、前記リーフレット自由縁とで画定される、請求項1に記載の人工弁。
【請求項5】
前記人工弁が非加圧条件下で閉位置にある時、前記2つの側部領域の各々は平面状である、請求項4に記載の人工弁。
【請求項6】
前記リーフレットフレームは、リーフレットフレーム第1端と、前記リーフレットフレーム第1端の反対側にあるリーフレットフレーム第2端とを備え、前記リーフレット窓は、二次元の二等辺四辺形を前記管形状の前記リーフレットフレームに巻き付けることにより少なくとも部分的に決定される形状を有し、前記二等辺四辺形は、基部と、前記基部から分岐する2つの辺とを有し、隣り合う二等辺四辺形からの辺が、前記リーフレットフレーム第2端で交わる、請求項に記載の人工弁。
【請求項7】
前記隣り合う二等辺四辺形が交わる場所から伸びて、前記リーフレットフレーム第2端まで及ぶ長さを有する垂直要素をさらに備える、請求項に記載の人工弁。
【請求項8】
前記フィルムは、前記リーフレットフレームの外面に連結し、前記フィルムは、前記リーフレット窓の各々から広がる前記リーフレットを画定する、請求項に記載の人工弁。
【請求項9】
前記フィルムは、前記リーフレットフレームの内面に連結し、前記フィルムは、前記リーフレット窓の各々から広がる前記リーフレットを画定する、請求項に記載の人工弁。
【請求項10】
前記フィルムは、前記リーフレットフレームの内面と外面に連結し、前記フィルムは、前記リーフレット窓の各々から広がる前記リーフレットを画定する、請求項に記載の人工弁。
【請求項11】
前記リーフレットフレームは、三角形の形状を有する相互に接続された3つのリーフレット窓を画定する、請求項に記載の人工弁。
【請求項12】
1つのリーフレット窓の一方のリーフレット窓側部が、隣接するリーフレット窓の一方のリーフレット窓側部と相互に接続される、請求項に記載の人工弁。
【請求項13】
前記リーフレットフレームは、間隔を空けて配置された複数のリーフレット窓を備え、前記リーフレット窓の各々は、前記リーフレット窓間の基部要素により相互に接続される二等辺三角形の形状を画定し、各リーフレット窓側部は、1つの三角形の一辺と、隣接する三角形の一辺とで画定され、各リーフレット窓基部は、前記基部要素で画定される、請求項に記載の人工弁。
【請求項14】
前記リーフレットフレームは、間隔を空けて配置され相互に接続した複数のリーフレット窓を含み、各リーフレット窓は二等辺四辺形を画定し、各リーフレット窓側部は、前記二等辺四辺形の前記窓側部で画定され、各リーフレット窓基部は、基部要素で画定される、請求項に記載の人工弁。
【請求項15】
経カテーテル送達用に折り畳み構成と拡張構成とを含む、請求項に記載の人工弁。
【請求項16】
前記リーフレットはポリマー材料を含む、請求項に記載の人工弁。
【請求項17】
前記リーフレットは積層物を含む、請求項16に記載の人工弁。
【請求項18】
前記積層物は、1層より多い層のフルオロポリマー膜を有する、請求項17に記載の人工弁。
【請求項19】
前記リーフレットは、少なくとも1層のフルオロポリマー膜を有するフィルムを含み、前記フルオロポリマー膜は、複数の孔と、前記少なくとも1層のフルオロポリマー膜の前記孔の全部に存在するエラストマーとを有する、請求項に記載の人工弁。
【請求項20】
前記フィルムは、80重量%未満のフルオロポリマー膜を含む、請求項19に記載の人工弁。
【請求項21】
前記エラストマーはパーフルオロアルキルビニルエーテルを含む、請求項20に記載の人工弁。
【請求項22】
前記エラストマーは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルのコポリマーを含む、請求項19に記載の人工弁。
【請求項23】
前記フルオロポリマー膜はePTFEを含む、請求項19に記載の人工弁。
【請求項24】
複数のリーフレット窓を画定する、概ね管形状のリーフレットフレームを提供することと、
フィルムを提供することと、
前記リーフレットフレームの周りに前記フィルムを巻き、複数層の前記フィルムを、前記リーフレット窓の各々から広がる少なくとも1つのリーフレットを画定する別のフィルム層に接触させることと、
前記フィルムの層を互いに接着させ、且つ前記リーフレットフレームに接着させることと
を含む、請求項1に記載の人工弁の形成方法であって、
前記リーフレット窓の各々は、2つのリーフレット窓側部と、リーフレット窓基部と、リーフレット窓上部とを含み、
各リーフレットは、2つのリーフレット側部と、リーフレット基部と、前記リーフレット基部の反対側にある自由縁とを有する二等辺四辺形の形状を有し、前記2つのリーフレット側部は前記リーフレット基部から分岐しており、前記リーフレット基部は平らであり、前記リーフレット基部は前記窓基部と連結し、前記2つのリーフレット側部の各々は前記2つの窓側部の一方と連結して、概ね環状の支持構造を提供する、
人工弁の形成方法。
【請求項25】
リーフレットを提供することは、間隔を空けて配置された複数のリーフレット窓を提供することを含み、前記リーフレット窓の各々は、前記リーフレット窓間の基部要素により相互に接続される二等辺三角形の形状を画定し、各リーフレット窓側部は、1つの三角形の一辺と、隣接する三角形の一辺とで画定され、各リーフレット窓基部は、前記基部要素で画定される、請求項24に記載の人工弁の形成方法。
【請求項26】
リーフレットを提供することは、間隔を空けて配置された複数のリーフレット窓を提供することを含み、前記リーフレット窓の各々は二等辺四辺形を画定し、各リーフレット窓側部は、前記二等辺四辺形の前記窓側部で画定され、各リーフレット窓基部は、基部要素で画定される、請求項24に記載の人工弁の形成方法。
【請求項27】
前記リーフレットフレームの周りに前記フィルムを巻くことは、前記リーフレットフレームの内面の周りに第1フィルムを巻くことと、前記リーフレットフレームの外面の周りに第2フィルムを巻くこととを含み、前記リーフレットは、前記リーフレット窓において互いに接着する前記第1フィルムと前記第2フィルムとによって画定される、請求項24に記載の人工弁の形成方法。
【請求項28】
各リーフレットが、前記リーフレット基部と前記自由縁との間に交差ひだがないことにより特徴付けられる、請求項1に記載の人工弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年12月19日に出願された米国特許仮出願第61/739,721号明細書に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して人工弁に関し、より具体的には合成可撓性リーフレットタイプの人工弁の装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
天然弁の機能と性能の模倣を試みた生体弁が開発されている。可撓性リーフレットはウシ心膜等の生物組織から作製される。幾つかの弁設計では、リーフリットを支持する比較的強固なフレームに生物組織を縫い込み、植え込み時に寸法安定性を提供する。生体弁は、短期的には血行動態上及び生体力学上の優れた性能を提供できるが、故障モードの中でも特に石灰化と弁尖断裂が起こりやすく、再手術と交換が必要になる。
【0004】
天然弁の機能と性能の模倣を試みた生体弁が開発されている。可撓性リーフレットはウシ心膜等の生物組織から作製される。幾つかの弁設計では、リーフリットを支持する比較的強固なフレームに生物組織を縫い込み、植え込み時に寸法安定性を提供する。生体弁は、短期的には血行動態上及び生体力学上の優れた性能を提供できるが、故障モードの中でも特に石灰化と弁尖断裂が起こりやすく、再手術と交換が必要になる。
【0005】
生物組織に代わる材料として、特にポリウレタン等の合成材料を用いることにより、より耐久性の高い可撓性リーフレット人工弁(本明細書では「合成リーフレット弁」(SLV)と称する)を提供する試みがなされてきた。しかしながら、合成リーフレット弁は、特に準最適設計であることと耐久性合成材料の欠如が原因で早期故障を起こすことから、有効な弁置換オプションとなっていない。
【0006】
リーフレットは流体圧力の影響下で移動する。稼働中、リーフレットは、上流流体圧力が下流流体圧力を超えると開き、下流流体圧力が上流流体圧力を超えると閉じる。弁を閉じる下流流体圧力の影響下では、リーフレットの自由縁同士が接合して、下流血液が弁を通って逆流するのを防止する。
【0007】
リーフレットの開閉という反復負荷の下では、弁の耐久性は、リーフレットとフレームの間の負荷分散に部分的に依存する。さらに、リーフレットが閉位置にある時はリーフレットに実質的負荷がかかる。リーフレットの機械的故障は、例えば、可撓性リーフレットが比較的強固なフレームで支持される位置である取り付けエッジ位置で発生し得る。リーフレット開閉という反復負荷がかかる結果、リーフレット材料に部分的に依存して、疲労、クリープ、その他のメカニズムにより材料故障が発生する。取り付けエッジ位置の機械的故障は、特に合成リーフレットで発生することが多い。
【0008】
弁のリーフレットの耐久性は、開閉サイクル中のリーフレットの曲げ特性の関数でもある。小半径の屈曲、ひだ、及び交差ひだがあると、リーフレットに高応力領域が発生し得る。このような高応力領域が発生すれば、反復負荷の下で穴と断裂が形成され得る。
【0009】
生体弁を送達するには、外科手技又は経カテーテル手技を使用できる。外科手術用の弁は、直視下心臓外科手技を用いて患者の体内に植え込まれる。経カテーテル用の弁は、アクセスと送達のため様々な直径にする必要があるが、対照的に、外科用の弁は、固定の直径を有するように製造されるのが一般的である。外科用の弁は通常、天然の組織開口部に縫合できるようにするため、弁の周囲に縫合カフが提供される。
【0010】
合成心臓弁のリーフレットの好ましい形状については、これまでに多数説明されているが、それぞれ異なる形状である。説明されている三次元形状は、球形、円筒形から、球と交差する円錐台、「alpharabola」まで様々である。
【0011】
好ましいと表現されることが最も多い形状は、天然のヒト大動脈弁をモデルにしたものである。自然界は天然組織が心臓弁を形成する上で最適な形状を決定するが、我々は、合成材料にはこれが当てはまらないことを発見した。したがって、本開示で指定される設計は、天然弁の複製に基づく形状と比較して、合成材料を最小の応力条件下に置くことを意図している。このことは、リーフレット材料の折れ曲がりを減らすことで部分的に達成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
記載されている実施形態は、心臓弁置換等の弁置換のための装置、システム、及び方法に関するものである。より具体的には、記載されている実施形態は、リーフレットがそれぞれ特定の幾何学的形状を有するゾーンに分かれた、可撓性リーフレット弁装置に関するものである。
【0013】
一実施形態によれば、人工弁は複数のリーフレットを備え、各リーフレットは2つの側部領域と、当該2つの側部領域の間にある中央領域とを画定し、中央領域は、側部領域とは異なる形状を有する。
【0014】
一実施形態によれば、人工弁は、リーフレットフレームとフィルムとを備える。リーフレットフレームは概ね管状の形状を有する。リーフレットフレームは複数のリーフレット窓を画定し、その各々は、2つのリーフレット窓側部と、リーフレット窓基部と、リーフレット窓上部とを含む。フィルムは、リーフレットフレームに連結され、リーフレット窓の各々から広がる少なくとも1つのリーフレットを画定し、各リーフレット取り付けゾーンは、2つのリーフレット側部と、リーフレット基部と、リーフレット基部の反対側にある自由縁とを有する実質的に二等辺四辺形の形状を有し、2つのリーフレット側部はリーフレット基部から分岐しており、リーフレット基部は実質的に平らである。リーフレット基部は窓基部と連結し、2つのリーフレット側部の各々は2つの窓側部の一方と連結する。
【0015】
一実施形態によれば、人工弁は複数のリーフレットを備える。各リーフレットは、中央領域と、中央領域の両側にある2つの側部領域とを含む。中央領域は、中央領域両側の二辺と、リーフレット基部と、リーフレット自由縁とで画定される実質的に二等辺三角形の形状で画定され、中央領域両側の二辺は、リーフレット基部から集まり、側部領域の各々は、実質的に三角形の形状を有し、中央領域両側の辺の一方と、リーフレット側部の一方と、リーフレット自由縁とで画定される。
【0016】
一実施形態によれば、人工心臓弁を形成する方法は、複数のリーフレット窓を画定する概ね管形状のリーフレットフレームを提供することと(リーフレット窓の各々は、2つのリーフレット窓側部と、リーフレット窓基部と、リーフレット窓上部とを含む)、フィルムを提供することと、リーフレットフレームの周りにフィルムを巻き、複数層のフィルムを、リーフレット窓の各々から広がる少なくとも1つのリーフレットを画定する別のフィルム層に接触させることと(各リーフレットは、2つのリーフレット側部と、リーフレット基部と、リーフレット基部の反対側にある自由縁とを有する実質的に二等辺四辺形の形状を有し、2つのリーフレット側部はリーフレット基部から分岐しており、リーフレット基部は実質的に平らであり、リーフレット基部は窓基部と連結し、2つのリーフレット側部の各々は2つの窓側部の一方と連結して、概ね環状の支持構造を提供する)、フィルムの層を互いに接着させ、且つリーフレットフレームに接着させることと、を含む。
【0017】
添付の図面は、本開示の理解を深めることができるように本明細書に含められ、本明細書に援用されて本明細書の一部を成し、本明細書に記載の実施形態を図解し、本開示で論じる原理を本明細書と共に説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、弁の一実施形態の側面図である。
図1B図1Bは、図1Aの弁の実施形態の斜視図である。
図2図2は、図1Aの弁の実施形態を平らな向きに広げた図である。
図3A図3Aは、図1Aの弁の実施形態の開放構成時の軸線方向図即ち上面図である。
図3B図3Bは、図1Aの弁の実施形態の閉鎖構成時の軸線方向図即ち上面図である。
図4A図4Aは、解剖学的組織内にある経カテーテル送達システムの一実施形態の側面図である。
図4B図4Bは、解剖学的組織内にある外科用弁の一実施形態の側面図である。
図5図5は、リーフレットフレームの一実施形態を平らな向きに広げて示した図である。
図6図6は、一実施形態に従って、組立てマンドレルの表面に配置されたリーフレットフレームの側面図である。
図7A図7Aは、一実施形態に従って、切断マンドレルの表面に配置されたリーフレットフレームの側面図である。
図7B図7Bは、図7Aの切断マンドレル表面に配置されたリーフレットフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
当業者であれば、意図された機能を果たすように構成された任意の数の方法及び装置により、本開示の種々の態様が実現可能であることを容易に認識するであろう。言い換えれば、他の方法及び装置を本明細書に援用して、意図された機能を果たすことができる。なお、本明細書で参照する添付の図面は、必ずしも縮尺通りに作成されたものではなく、本開示の種々の態様を図解するために誇張されている場合があることにも留意すべきであり、この点で、これらの図面を限定的なものと解釈すべきではない。
【0020】
本明細書に記載の実施形態は、種々の原理及び見解との関連で説明される場合があるが、記載されている実施形態は理論に拘束されるものではない。例えば、本明細書では、人工弁に関連して、より具体的には人工心臓弁に関連して実施形態が記載されている。しかしながら、本開示の範囲内にある実施形態を、任意の弁又は類似構造若しくは類似機能の機構に適用することができる。さらに、本開示の範囲内にある実施形態を、心臓病以外の用途に適用することもできる。
【0021】
本明細書において人工弁の文脈で使用する「リーフレット」という語は、一方向弁の構成部品を意味し、リーフレットは、圧力差の影響下で開位置と閉位置の間を移動するように動作できる。開位置にある時、リーフレットは、弁を通じた血液の流れを可能にする。閉位置にある時、リーフレットは、弁を通じた血液の流れを実質的に遮断する。複数のリーフレットを備える実施形態では、各リーフレットは、少なくとも1つの隣接リーフレットと協調して血液の逆流を阻止する。血液の圧力差は例えば心室や心房の収縮により発生し、このような圧力差は通常、リーフレットの閉鎖時にリーフレットの片側に流体圧力が蓄積することにより生じる。弁の流入側の圧力が弁の流出側圧力より高くなると、リーフレットが開き、開いたリーフレットを通って血液が流れる。弁を流れた血流が近くのチャンバ又は血管に流入すると、流入側の圧力が流出側の圧力と等しくなる。弁の流出側の圧力が弁の流入側血圧より高くなると、リーフレットが閉位置に戻り、弁を通じた血液の逆流を概ね阻止する。
【0022】
本明細書で使用する「膜」という語は、延伸フルオロポリマー等(ただしこれに限定されない)の単一組成物を含むシート状材料を指す。
【0023】
本明細書で使用する「複合材料」という語は、膜(例えば延伸フルオロポリマーが挙げられるが、これに限定されない)とエラストマー(例えばフルオロエラストマーが挙げられるが、これに限定されない)の組み合わせを指す。このエラストマーは、膜の多孔質構造内に吸収されていてよく、膜の片側又は両側にコーティングされていてもよく、或いは膜へのコーティングと吸収が組み合わされたものでもよい。
【0024】
本明細書で使用する「積層物」という語は、膜、複合材料、又は他の材料(例えばエラストマー)、及びこれらの組み合わせから成る複数の層を指す。
【0025】
本明細書で使用する「フィルム」という語は、膜、複合材料、又は積層物のうちの1つ以上を総称的に指す。
【0026】
本明細書で使用する「生体適合性材料」という語は、フィルム又は生体材料(例えばウシ心膜が挙げられるがこれに限定されない)を総称的に指す。
【0027】
「リーフレット窓」という語は、リーフレットフレームにより画定され、リーフレットの付け根となる空間と定義される。リーフレットは、リーフレットフレーム要素から伸びてよく、或いはリーフレットフレーム要素の近傍に、リーフレットフレーム要素から間隔を空けて配置されてもよい。
【0028】
「天然弁開口部」及び「組織開口部」という語は、人工弁の配置先としてよい解剖学的構造を指す。このような解剖学的構造の例として、心臓弁が外科的に除去済みであるか又は未除去の場所が挙げられるが、これに限定されない。人工弁の配置先としてよい他の解剖学的構造の例として、静脈、動脈、管、及びシャントが挙げられると理解される(ただしこれらに限定されない)。本明細書では天然弁を人工弁と置換することに言及しているが、弁開口部又は植え込み部位とは、特定目的で弁の設置先としてよい合成導管又は生体導管内の任意の場所も指し、したがって、本明細書に記載の実施形態の範囲は弁置換に限定されないものと理解、認識される。
【0029】
本明細書で使用する「連結する」という語は、直接的か間接的かを問わず、且つ持続的か一時的かを問わずに、接合、連結、接続、取り付け、接着、貼付、又は結合することを意味する。
【0030】
本明細書に記載の実施形態は、心臓弁置換等(ただしこれに限定されない)の外科的配置及び経カテーテル的配置に適した人工弁の装置、システム、及び方法を含む。この弁は一方向弁として動作可能であり、流体圧力差に応じてリーフレットが開くと、弁が画定する弁開口部への流れが可能になり、リーフレットが閉じると、弁開口部が遮断され流れが阻止される。
【0031】
本明細書に記載の実施形態は、制御されたリーフレット開放に関連する。弁リーフレットの耐久性は、開閉サイクル中にリーフレットが示す曲げ特性により概ね制御される。小半径の曲げ、ひだ、特に交差ひだがあると、リーフレットに高応力領域が発生し得る。このような高応力領域が発生すれば、反復負荷の下で穴と断裂が形成され得る。
【0032】
薄く弾性の高い合成リーフレットでは、曲がるとセロファン様になる傾向があることから、制御された曲げが特に重要である。リーフレットの曲げ特性が制御されていない場合、ひだが形成されるだけでなく、ひだが交差する結果、曲げに抵抗する大きな三次元構造が形成されて、リーフレットの開閉動作が低速になる。これを回避するには、リーフレットの各部分の開放順序を制御しなければならない。
【0033】
開放特性の大部分を制御する基本的物理特性として、ゾーン曲率半径、ゾーン面積という2つの特性が認知されている。平面状のゾーンは円筒より早く動き、円筒は、半径が小さいほど動きが遅く、球形ゾーンと比べれば円筒の方が早く動き、平面状のゾーンでは、面積が大きい方が早く動く、といった特性である。
【0034】
後述する通り、幾つかの実施形態では、リーフレットは平らな基部を備え、この基部からリーフレット自由縁に向かってリーフレットが曲がり、ひだとバタツキは最小にされる。幾つかの実施形態では、リーフレットは平らな基部を備え、これにより特に、曲線的な基部と比べて、比較的短い弁を1つ以上提供し、血液の滞留を実質的に阻止し、基部での洗浄を促進する。
【0035】

図1Aは、一実施形態による弁100の側面図である。図1B図1Aの弁100の斜視図である。図2は、図1Aの弁100を長手方向に切断して広げ、概して管形状の弁100の要素をより明瞭に示す側面図である。図3A、3Bは、それぞれ開放構成時と閉鎖構成時の図1Aの弁100の軸線方向図である。図1A、1B、3Bでは、特徴物を見やすくするためにリーフレット140が少し開いた状態を図示しているが、弁100が完全に閉じた状態では、下流の流体圧力の影響下でリーフレット140の自由縁142同士が接合し、その結果、弁が閉じて、下流の血液が弁を介して逆流するのを阻止するものと理解される。
【0036】
リーフレットフレーム
図1A図2を参照すると、リーフレットフレーム130は概ね管状の部材である。リーフレットフレーム130は、リーフレットフレーム第1端121aと、リーフレットフレーム第1端121aの反対側にあるーフレットフレーム第2端121bとを有する。図3Aに示すように、リーフレットフレーム130は、リーフレットフレーム外面126aと、リーフレットフレーム外面126aとは反対側のリーフレットフレーム内面126bとを備える。リーフレットフレーム130は、当技術分野でステントとして知られる構造物を備えてよい。ステントとは、経カテーテルにより経皮的に解剖学的組織に送達するのに適した小さな直径を有し、且つ解剖学的組織内での展開時に大きな直径に拡張することのできる、管状の部材である。種々の設計及び材料特性を有するステントが当技術分野において周知である。
【0037】
ステントの開骨格は、幾何学的形状、及び/又は直線状、蛇行した一続きの正弦曲線等、繰り返し性を有するかを問わず、任意の数の形状構成を画定することができる。リーフレットフレーム130には、カットチューブ等、特定目的に適した任意の要素が含まれてよい。リーフレットフレーム130は、エッチング、切断、レーザー切断、又は打ち抜き加工によりチューブ又はシート材を形成してから、実質的に円柱状の構造物を形成してよい。別の方法として、ワイヤ、屈曲可能な細長片、又はその連続物等の細長い材料を曲げるか撚り合わせて、実質的に円柱状の構造物を形成して、円柱壁部が開骨格を備えるようにしてもよい。
【0038】
リーフレットフレーム130に、金属製又はポリマー製の任意の生体適合性材料を含めてよい。リーフレットフレーム130に含めてよい材料として、ニチノール、コバルト−ニッケル合金、ステンレススチール、ポリプロピレン、アセチルホモポリマー、アセチルコポリマー、ePTFE、その他の合金若しくはポリマー、又は本明細書に記載の通りに機能する上で充分な物理特性と機械特性を有する他の生体適合性材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
実施形態に従い、リーフレットフレーム130は、弁100の経カテーテル配置を表す図4Aに示す通り、植え込み部位と確実に係合して、弁100を植え込み部位にしっかりと係留するように構成することができる。一実施形態によれば、リーフレットフレーム130は、組織開口部150との充分な並置関係を維持して所定位置を保てるように、弾性反跳の小さい、充分な剛性を有するフレームを含んでよい。別の一実施形態では、リーフレットフレーム130は、組織開口部150より大きな直径に拡張して、弁100が組織開口部150内へと拡張した時に確実に収容されるように構成することができる。別の一実施形態では、リーフレットフレーム130は、組織開口部150等の植え込み部位と係合して弁100を植え込み部位に固定するように構成された、1つ以上のアンカー(図示せず)を備えてよい。
【0040】
弁100を植え込み部位に連結するための他の要素又は手段も想定されるものと理解される。他の手段の例として、例えば機械的手段及び接着手段を用いて、弁100を合成導管又は生体導管に連結することができるが、これらに限定されない。
【0041】
後述するように、外科的移植に適した弁100は、直径が固定されていてもよく、圧縮と再拡張を行うように作用する必要がないことから、ジグザグ構成を有しても有していなくてもよい。
【0042】
図2を参照すると、リーフレットフレームは、間隔を空けて配置され実質的に二等辺三角形を画定する複数のフレーム要素を含み、これらのフレーム要素は、二等辺四辺形の形状を画定するリーフレット窓137を画定する基部要素138により相互に接続される。リーフレット窓の各側部133は、三角形の一辺と、隣接する三角形の一辺とで画定され、リーフレット窓の各基部134は、基部要素138で画定される。
【0043】
再び図1A図2を参照すると、リーフレットフレーム第1端121aは、さらに、実質的に二等辺三角形を画定するリーフレットフレーム要素の尖部から伸びている柱136を備える。柱136は、隣接し合うリーフレット自由縁142同士の接着領域146を大きく又は広くするように、リーフレット自由縁142に影響を及ぼすことができる。
【0044】
図5は、別の一実施形態のリーフレットフレーム130aを平らな向きに広げて示した図である。リーフレットフレーム130は図2の実施形態と実質的に同じであるが、柱136がない点が異なる。
【0045】
一実施形態によれば、図2及び図5が示すように、フレーム130は、二次元の二等辺四辺形を管形状のフレーム130に巻き付けることにより少なくとも部分的に決定される形状を有するフレームを備え、この二等辺四辺形は、基部134と、基部134から分岐から分岐する2つの辺133とを有し、隣り合う二等辺四辺形からの辺133が、フレーム第1端121aで交わる。リーフレット140は点線で表示され、リーフレット窓137内のどの場所にリーフレット143が配置されるかを表し、リーフレット窓137は、リーフレット窓側部133とリーフレット窓基部134とで画定される。
【0046】
縫合カフ
外科的移植に適した弁100の実施形態によれば、弁100は、図4Bが示すように、一実施形態のリーフレットフレーム外面の周囲にある縫合カフ170をさらに備える。縫合カフ170は、植え込み部位に連結するための縫合糸を受け取る構造を提供するように作用できる。縫合カフ170は、任意の適切な材料(例えばダブルベロアポリエステルが挙げられるが、これに限定されない)を含んでよい。リーフレットフレーム130の外側の縁部分の周りに縫合カフ170を配置してよい。縫合カフは当技術分野において公知である。
【0047】
フィルム
フィルム160は、生体適合性の概して任意のシート状材料であり、実施形態に従ってリーフレット140をリーフレットフレーム130に連結するように構成される。「フィルム」という語は、特定目的に適した1つ以上の生体適合性材料の総称として使用されるものと理解される。リーフレット140もフィルム160で構成される。
【0048】
一実施形態によれば、生体適合性材料であるフィルム160は、生物に由来せず、特定目的に対して充分な可撓性と強度を有する材料(例えば生体適合性ポリマー)である。一実施形態では、フィルム160は、「複合材料」と称される、エラストマーと組み合わされた生体適合性ポリマーを含む。
【0049】
一実施形態では、フィルム160は、少なくとも部分的にリーフレットフレーム130とリーフレットフレーム130とを覆うように、概ね管状の材料で形成されてよい。フィルム160は、膜、複合材料、又は積層物のうちの1つ以上を含んでよい。様々な種類のフィルム160を以下に詳述する。
【0050】
リーフレット
図1A図2を参照すると、各リーフレット窓137にフィルム160等の生体適合性材料が提供され、フィルム160は、リーフレット窓側部133の一部分と連結して、リーフレット140を画定する。一実施形態によれば、各リーフレット140は、リーフレット自由縁142とリーフレット基部143とを画定する。後述するように、複数の実施形態のリーフレット基部構成を提供できることが想定される。一実施形態によれば、フィルム160は、リーフレット窓側部133の一部分とリーフレット窓基部134に連結し、この場合、リーフレット140はリーフレット窓側部133の当該部分とリーフレット窓基部134で画定される。
【0051】
リーフレット140の形状は、リーフレット窓137の形状とリーフレット自由縁142により、部分的に画定される。図3Aに示す通り、リーフレット140が完全な開位置にある時、弁100は、実質的に円形の弁開口部102を呈する。リーフレット140が開位置にある時は、流体が弁開口部102を通って流れることができる。
【0052】
リーフレット140が開位置と閉位置の間で開閉を繰り返す時、リーフレット140は概ね、リーフレット基部143の周辺と、リーフレット窓側部133のリーフレットとの連結部分の周辺が曲がる。弁100が閉じている時、図3Bに示す通り、各リーフレット自由縁142の概ね半分が、隣接リーフレット140のリーフレット自由縁142の半分の隣接部分と当接する。図3Bに示す実施形態の3つのリーフレット140は、三重点148で交わる。リーフレット140が閉位置にある時、弁開口部102が閉鎖して流体の流れを停止する。
【0053】
図3Bを参照すると、一実施形態によれば、各リーフレット140は、中央領域182と、中央領域182の両側にある2つの側部領域184とを含む。中央領域182は実質的に二等辺三角形の形状で画定され、この二等辺三角形は、中央領域両側の二辺183と、リーフレット基部143と、自由縁142とで画定される。中央領域両側の二辺183は、リーフレット基部143から伸びて自由縁142の位置に集まる。側部領域184の各々は、実質的に三角形の形状を有し、中央領域両側の辺183の一方と、リーフレット側部141の一方と、自由縁142とで画定される。
【0054】
一実施形態によれば、弁100が閉位置にあり圧力負荷がない時、2つの側部領域184の各々と中央領域182は、実質的に平面状である。
【0055】
リーフレット140は、例えば心室や心房の収縮により血液の圧力差が発生した時(この圧力差は通常、弁100の閉鎖時に片側に流体圧力が蓄積することにより生じる)作動するように構成することができる。弁100の流入側の圧力が弁100の流出側圧力より高くなると、リーフレット140が開き、開いたリーフレットを通って血液が流れる。弁100を通った血液が近くのチャンバ又は血管に流れると、圧力が等しくなる。弁100の流出側圧力が弁100の流入側血圧より高くなると、リーフレット140が元の閉位置に戻り、弁100の流入側を通じた血液の逆流を概ね防止する。
【0056】
実施形態に従い、リーフレットフレーム130は、特定目的に適した任意の数のリーフレット窓137を備えてよく、ゆえに任意の数のリーフレット140を備えてよいものと理解される。リーフレットフレーム130は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の数のリーフレット窓137を備え、これらに対応する数のリーフレット140を備えることが想定される。
【0057】
リーフレットフィルム
リーフレット140を構成する生体適合性材料は、充分な柔軟性と可撓性を有する、生体適合性の任意の生物組織材料又は合成材料(例えば生体適合性ポリマー)を含んでよい。一実施形態では、リーフレット140は、「複合材料」と称される、エラストマーと組み合わされた生体適合性ポリマーを含む。一実施形態による材料は、フィブリル配列内に複数の空間を含む延伸フルオロポリマー膜と、エラストマー材料とを含む複合材料を含む。本開示の範囲を逸脱することなく、複数の種類のフルオロポリマー膜と、複数の種類のエラストマー材料とを組み合わせて積層物を形成できることを理解すべきである。また、本開示の範囲を逸脱することなく、エラストマー材料に複数のエラストマーを含めてよく、複数の種類の非エラストマー成分(例えば無機充填剤、治療剤、放射線不透過性マーカー、又は同種のもの)を含めてよいことも理解すべきである。
【0058】
一実施形態によれば、複合材料は、例えばBacinoに対する米国特許第7,306,729号明細書に概要が記載されている多孔質ePTFE膜で作られた、延伸フルオロポリマー材料を含む。
【0059】
上記延伸フルオロポリマー材料の形成に使われる延伸可能フルオロポリマーには、PTFEホモポリマーが含まれていてよい。別の実施形態では、PTFE、延伸可能な修飾PTFE、及び/又はPTFEの延伸コポリマーのブレンドを使用してよい。適切なフルオロポリマー材料の非限定的な例は、例えば、Brancaに対する米国特許第5,708,044号明細書、Baillieに対する米国特許第6,541,589号明細書、Sabolらに対する米国特許第7,531,611号明細書、Fordに対する米国特許出願第11/906,877号明細書、及びXuらに対する米国特許出願第12/410,050号明細書に記載されている。
【0060】
延伸フルオロポリマー膜には、所望のリーフレット性能を達成するための任意の適切な微細構造が含まれていてよい。一実施形態によれば、延伸フルオロポリマーは、例えばGoreに対する米国特許第3,953,566号明細書に記載されているような、フィブリルで相互接続されたノードからなる微細構造を含む。ノードからフィブリルが放射状に複数方向に伸びており、膜は概して均質な構造を有する。この微細構造を有する膜は、直交する2方向のマトリクス引張り強度の比が典型的に2未満を示し、場合によっては1.5未満を示すことができる。
【0061】
別の一実施形態では、延伸フルオロポリマーは、Bacinoに対する米国特許第7,306,729号明細書に概要が教示されているように、実質的にフィブリルのみからなる微細構造を有する。実質的にフィブリルのみを有する延伸フルオロポリマー膜は、20m2/g超、或いは25m2/g超もの大きな表面積を有することができ、幾つかの実施形態では、上記延伸フルオロポリマー膜は、直交する2方向のマトリクス引張り強度の積が少なくとも1.5×105MPa2、及び/又は直交する2方向のマトリクス引張り強度の比が4未満、場合によっては1.5未満を有する、高度にバランスの取れた強度の材料を提供できる。
【0062】
所望のリーフレット性能を達成するため、延伸フルオロポリマー膜を調整して任意の適切な厚さ及び質量にすることができる。例えば、非限定的な例では、リーフレット140は、約0.1μm厚さの延伸フルオロポリマー膜を含む。また、延伸フルオロポリマー膜は、約1.15g/m2の単位面積当たり質量を有し得る。本発明の一実施形態による膜は、長手方向と横断方向のマトリクス引張り強度として、それぞれ約411MPa、315MPaを有し得る。
【0063】
所望されるリーフレット特性を強化するため、追加の物質を膜の細孔、膜の物質内、又は膜の層間に組み込んでよい。所望のリーフレット性能を達成するため、本明細書に記載の複合材料を調整して任意の適切な厚さ及び質量にしてよい。実施形態による複合材料は、フルオロポリマー膜を含んでよく、厚さが約1.9μm、単位面積当たり質量が約4.1g/m2であってよい。
【0064】
エラストマーと組み合わされて複合材料を形成する延伸フルオロポリマーは、本開示の各種要素に対して、高サイクルの屈曲性インプラント用途(心臓弁リーフレット等)で必要とされる性能特性を種々の方法で提供する。例えばエラストマーを添加すると、ePTFEのみの材料に見られる硬化が解消又は低減され、リーフレットの疲労特性を改善することができる。加えて、結果的に性能低下を招くおそれのある永続的なひずみ変形(しわ、ひだ等)が材料に生じる可能性を低減することもできる。一実施形態では、延伸フルオロポリマー膜の多孔質構造内にある細孔容積又は空間の実質的に全部を、エラストマーが占有する。別の一実施形態では、少なくとも1つのフルオロポリマー層の実質的に全部の細孔にエラストマーが存在する。エラストマーが細孔容積を埋め、或いはエラストマーが実質的に全部の細孔に存在することにより、異物が不要に複合材料に組み込まれ得る空間が減少する。異物とは、例えば、血液との接触により膜に引き込まれる可能性のあるカルシウムである。例えば心臓弁リーフレットで使われる複合材料にカルシウムが取り込まれると、開閉サイクルの間に機械的損傷が発生する可能性があり、その結果、リーフレットに穴が形成され血行動態が悪化することになる。
【0065】
一実施形態では、ePTFEと組み合わされるエラストマーは、例えばChangらに対する米国特許第7,462,675号明細書に記載されているような、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の熱可塑性コポリマーである。上述の通り、エラストマーは、延伸フルオロポリマー膜内の間隙又は細孔の実質的に全部を占有して複合材料を形成するように、延伸フルオロポリマー膜と組み合わされる。延伸フルオロポリマー膜の細孔に上記のようにエラストマーを充填するには、様々な方法を使用できる。一実施形態では、延伸フルオロポリマー膜の細孔に充填する方法は、溶媒にエラストマーを溶解させるステップと、溶媒を蒸発させて充填物を残すステップとを含み、この溶媒は、延伸フルオロポリマー膜の細孔の一部分又は全部に流入させるのに適した粘度及び表面張力を有する溶液を作成するのに適した溶媒である。
【0066】
一実施形態では、複合材料は、2層のePTFE外層と、その間に設けられた1層のフルオロエラストマー内層の計3層を含む。この他のフルオロエラストマーも適切であり得、これらはChangらに対する米国特許出願公開第2004/0024448号明細書に記載されている。
【0067】
別の一実施形態では、延伸フルオロポリマー膜の細孔に充填する方法は、分散物を介して充填物を送達して、延伸フルオロポリマー膜の細孔の一部分又は全部に充填するステップを含む。
【0068】
別の一実施形態では、延伸フルオロポリマー膜の細孔に充填する方法は、エラストマーが延伸フルオロポリマー膜の細孔に流入できる熱条件及び/又は圧力条件下において、多孔質延伸フルオロポリマー膜をシート状エラストマーと接触させるステップを含む。
【0069】
別の一実施形態では、延伸フルオロポリマー膜の細孔に充填する方法は、最初に細孔にエラストマーのプレポリマーを充填してから、エラストマーを少なくとも部分的に硬化させることにより、延伸フルオロポリマー膜の細孔の中でエラストマーを重合させるステップを含む。
【0070】
エラストマーが最小重量パーセントに達した後、フルオロポリマー材料又はePTFEで作られたリーフレットの性能は、エラストマーの割合が増加するほど概ね向上し、結果としてサイクル寿命が有意に増加した。一実施形態では、ePTFEと組み合わされるエラストマーは、例えばChangに対する米国特許第7,462,675号明細書及び当業者に知られている他の文献に記載されているような、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルの熱可塑性コポリマーである。リーフレットとして使用するのに適切であり得る他の生体適合性ポリマーの例として、ウレタン類、シリコーン類(有機ポリシロキサン類)、ケイ素−ウレタンのコポリマー、スチレン/イソブチレンのコポリマー、ポリイソブチレン、ポリエチレン−co−ポリ(酢酸ビニル)、ポリエステルコポリマー、ナイロンコポリマー、フッ化炭化水素ポリマー及びコポリマー、これらの各々の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
他の留意事項
一実施形態によれば、植え込み時に左心室の索枝を覆わないことにより、大動脈弁置換術で遭遇し得るような心臓刺激伝導系との干渉を防止するように弁100を構成できる。例えば、弁100の長さを約25mm未満又は約18mm未満にしてよい。また、弁100のアスペクト比(弁100の長さと拡張時の機能的直径との間の関係を表す比率)を1未満にしてよい。しかしながら、弁100は任意の長さで構成してよく、より一般的には所望の寸法で構成してよい。
【0072】
経カテーテル送達に適した弁100の一実施形態によれば、弁100は、より小さい直径の折り畳み構成へと圧縮し、且つ拡張構成へと拡張できるので、折り畳み構成時の弁100をカテーテルを介して送達でき、図4Aに示すように、展開時に組織開口部150の中で拡張できる。リーフレットフレーム130は、折り畳み構成から拡張構成に移行する時に、外周の均一性を復元するように作用できる。
【0073】
弁100は生物活性剤をさらに含んでよい。弁100を植え込んだ後に薬剤が制御放出されるように、フィルム160の一部又は全体に生物活性薬剤をコーティングしてよい。生物活性薬剤の例として、血管拡張薬、抗凝固薬、抗血小板薬、抗血栓薬(ヘパリン等)が挙げられるが、これらに限定されない。他の生物活性薬剤の例として、ビンカアルカロイド(即ちビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(即ちエトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、及びマイトマイシン、酵素(L−アスパラギンを全身的に代謝し、独自のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を取り除くL−アスパラギナーゼ)等の天然産物を含む抗増殖/有糸分裂阻害剤;G(GP)IIb/IIIa阻害剤、ビトロネクチン受容体アンタゴニスト等の抗血小板薬;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(trazenes-dacarbazinine)(DTIC)等の抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン、及びシタラビン)、プリン類似体及び関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、及び2−クロロデオキシアデノシン{クラドリビン})等の抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗薬;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(即ちエストロゲン);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩類、及び他のトロンビン阻害剤);血栓溶解薬(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ等)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキマブ;抗遊走薬(antimigratory);抗分泌薬(ブレベルジン);抗炎症薬、例えば副腎皮質ステロイド(コルチソル、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン)、非ステロイド系薬(サリチル酸誘導体、即ちアスピリン;パラアミノフェノール誘導体、即ちアセトミノフェン;インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク、及びエトドラク)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク、及びケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、メクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、及びオキシフェンタトラゾン)、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);血管形成剤、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素供与体;アンチセンスオリジオヌクレオチド、及びその組み合わせ;細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、増殖因子受容体シグナル伝達キナーゼ阻害剤;レチノイド(retenoids);サイクリン/CDK阻害剤;HMGコエンザイムレダクターゼ阻害剤(スタチン);プロテアーゼ阻害剤等の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
経カテーテル送達システム
図4Aを参照すると、一実施形態では、弁送達システム500は、上述のような折り畳み構成と拡張構成を有する弁100と、細長い可撓性カテーテル480(例えばバルーンカテーテル)とを備え、カテーテルを介して弁100を展開するように構成される。カテーテル480は、弁100を拡張させ、且つ/又は必要に応じて弁100を微調整して確実に配置させるためのバルーンを備えてよい。脈管構造を通じて送達するために、弁100をカテーテル480の遠位部分に取り付けてよい。折り畳み構成時の弁をカテーテル480上に保持する目的で、弁送達システムは、経カテーテル弁100にぴったりとフィットする取り外し可能シース(図示せず)をさらに備えてよい。
【0075】
送達方法には、弁を折り畳み構成へと半径方向に圧縮して、遠位端と近位端を有する細長い可撓性カテーテルの遠位端に設置するステップと、経大腿経路又は経心尖経路を介して弁を組織開口部(例えば天然大動脈弁口)に送達するステップと、弁を拡張させながら組織開口部に挿入するステップとが含まれ得る。バルーンを膨張させることにより弁を拡張させてよい。
【0076】
送達方法には、弁を折り畳み構成へと半径方向に圧縮して、遠位端と近位端を有する細長い可撓性カテーテルの遠位部分に設置するステップが含まれ得る。弁の開口部とカテーテルの管腔を通過する係留具に拘束具を接続してよく、この拘束具を弁の柱の周りに装着する。次に、送達経路を介して弁を天然弁開口部(例えば天然大動脈弁開口部)に送達し、天然開口部に挿入しながら拡張させる。送達経路には、経大腿経路又は経心尖経路が含まれ得る。バルーンを膨張させることにより弁を拡張させてよい。
【0077】
外科的実施形態
上記実施形態の弁100を、経カテーテル手法を用いる代わりに外科的に植え込んでもよいと理解される。外科的に植え込まれる弁100の実施形態は、上記実施形態と実質的に同じであり得るが、一実施形態によれば、図4Bに示す通り、リーフレットフレーム外面126aに隣接して縫合カフが追加される。縫合カフは、当技術分野において周知であり、弁100を植え込み部位(例えば組織開口部)に連結するための縫合糸を受け取る構造を提供するように作用できる。縫合カフは、任意の適切な材料(例えばダブルベロアポリエステルが挙げられるが、これに限定されない)を含んでよい。縫合カフは、リーフレットフレーム130の基部の周囲に配置してもよく、リーフレットフレームが従属する弁の周囲に配置してもよい。
【0078】
製作方法
本明細書に記載の実施形態は、本明細書に記載の実施形態の弁100を製作する方法にも関連する。円筒形のマンドレル710を使用して各種実施形態を製作できる。図6を参照すると、マンドレル710は、表面にリーフレットフレーム130を受け入れるように作用できる構造形態を含む。弁100の製作方法の一実施形態は、マンドレル710の周囲に第1フィルム層160(例えば、本明細書に記載の複合材料)を管形状に形成するステップと、図6に示すように第1フィルム層160にリーフレットフレーム130をかぶせるステップと、リーフレットフレーム130の上に第2フィルム層160を形成するステップと、組立体を熱で固定するステップと、図7A、7Bに示すように切断マンドレル712の上に組立体を受け入れるステップと、リーフレット窓137内のリーフレット窓上部を横切ってフィルム160を切断するステップとを含む。
【実施例】
【0079】
好ましい実施形態において、下記の工程に従って、複合材料(延伸フルオロポリマー膜とエラストマー材料とを有し、半剛性で折り畳み不能の金属フレームに連結される複合材料)で形成されたポリマーリーフレットと、さらに歪み緩和物(strain relief)とを有する心臓弁を製作した。
【0080】
焼入れ処理された、ある一定長さのMP35Nコバルトクロム管をレーザー加工して、直径26.0mm、壁厚0.6mmの形状のリーフレットフレーム130を作成した。リーフレットフレームを電解研磨すると、各表面から0.0127mmの材料が除去され、丸くなった縁が残った。リーフレットフレームに粗面化処理を行って、リーフレットフレームに対するリーフレットの接着性を高めた。リーフレットフレームをアセトン超音波浴に約5分浸して洗浄した。次に、一般に当業者に知られている機器(例えば、カリフォルニア州コロナのPVA TePLa America社のPlasma Pen)及び方法を使用して、金属製フレーム全体をプラズマ処理した。この処理は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)接着剤の湿潤を向上させるのにも役立った。
【0081】
次に、リーフレットフレームにFEP粉末(ダイキンアメリカ社、ニューヨーク州オレンジバーグ)を施した。より具体的には、FEP粉末を密閉ブレンド装置(例えば標準の料理用ミキサー)内で撹拌して、空気を含んだ「雲」を形成し、この「雲」の中にリーフレットフレームを浮かせた。リーフレットフレームの表面全体に均一な粉末層が付着するまで、リーフレットフレームをFEP粉末の「雲」にさらした。次に、320℃に設定された強制空気オーブン内でリーフレットフレームを約3分静置することにより、熱処理を施した。その結果、粉末が溶けて、薄い被膜の形でリーフレットフレーム全体に付着した。リーフレットフレームをオーブンから取り出し、静置してほぼ室温になるまで冷ました。
【0082】
歪み緩和物を以下の方法でリーフレットフレームに取り付けた。壁厚の薄い(122μm)焼結済みの15mm径ePTFE管を、先細のマンドレルにかぶせて半径方向に引き伸ばすことにより24.5mmの通気性金属マンドレルの表面に配置した。一続きのFEPコーティングを有する実質的に無孔のePTFE膜2層を、FEP側をマンドレルに向けた状態でマンドレルの外周に巻き付けた。上記のように巻き付けたマンドレルを、320℃に設定された対流式オーブンに入れて20分間加熱した。ePTFEと実質的に無孔のePTFE膜とを併せて内部剥離ライナーとして機能させ、メスの刃で穴あけしてマンドレルの通気孔間に圧力が伝わるようにした。この剥離ライナーは、後工程で全て除去される。
【0083】
壁厚が厚く(990μ)部分的に焼結された、長さ5cm、内径22mmのePTFE管(密度=0.3g/cm3)を、剥離ライナーと共に24.5mmの通気性金属マンドレルの表面に配置した。より直径の大きいマンドレルを収容できるように、ePTFE管を先細のマンドレルで引き伸ばすことにより、ePTFE管の内径を大きくした。
【0084】
溶融押し出しと引き伸ばしを用いて、タイプ1のFEP薄膜(4μm)(ASTM D3368)を形成した。5cm長さの上記ePTFE管に1層のFEPを巻き付けた。
【0085】
FEP粉末が付着したリーフレットフレームを、通気性金属マンドレル上の、全長5cmのePTFE管とFEPフィルムの概ね中央位置に配置した。
【0086】
リーフレットフレーム及び5cm長さのePTFE管に1層のFEPを巻き付けた。
【0087】
長さ5cm、厚さ990μm、内径22mmの第2のePTFE管を、先細のマンドレルで半径方向に引き延ばして、より大きな直径の構築物を収容できるようにして、24.5mmの通気性金属マンドレルに層状に形成された組立体の上に配置した。
【0088】
実質的に無孔のePTFE膜を上記構築物より直径の大きい円筒状に構成し、組立体にかぶせて、いわゆる犠牲管を形成した。焼結ePTFE繊維(例えばGore(登録商標)Rastex(登録商標)Sewing Thread、部品番号S024T2、デラウェア州ニューアーク)を用いて犠牲管の両端を密閉し、マンドレルを保護した。
【0089】
マンドレルの内側は真空を維持しながら、上記犠牲管の外側に100psiの空気圧を加えることのできる対流式オーブン(設定温度390℃)の中で、組立体(マンドレルを含む)を加熱した。マンドレルの温度(マンドレルの内径に直接接する熱電対で測定した温度)が約360℃に達するまで、組立体を40分間加熱した。オーブンから組立体を取り出し、圧力100psiと真空条件を維持したまま静置してほぼ室温まで冷ました。
【0090】
次に、犠牲管を取り外した。組立体を外しやすくするため、マンドレルの内径に約30psiの圧力を加えた。内部の剥離ライナーを反転させ軸線方向に引き離すことにより、組立体の内径から内部剥離ライナーを剥がした。
【0091】
ポリマー材料をメスで切り整えてからリーフレット窓とリーフレットフレーム底部から除去し、約0.5〜1.0mmの材料が張り出した状態にした。
【0092】
次にリーフレット材料を準備した。ePTFE膜は、米国特許第7,306,729号明細書で概説されている教示内容に従って製造されたものである。このePTFE膜は、単位面積当たり質量0.452g/m2、厚さ約508nm、マトリクス引張り強度は長手方向が705MPa、横断方向が385MPaであった。この膜にフルオロエラストマーを吸収させた。このコポリマーは、約65〜70重量パーセントのパーフルオロメチルビニルエーテルと、それと相補的な約35〜30重量パーセントのテトラフルオロエチレンから本質的になる。
【0093】
フルオロエラストマーを2.5%濃度のNovec HFE7500(3M、ミネソタ州セントポール)に溶かした。(ポリプロピレン剥離フィルムで支えられた)ePTFE膜に溶液をマイヤーバーで塗布し、145℃に設定された対流式オーブンに入れて30秒間乾燥させた。2回のコーティング工程後の最終のePTFE/フルオロエラストマー即ち複合材料は、単位面積当たり質量が1.75g/m2、フルオロポリマー29.3重量%、ドーム破裂強度(dome burst strength)が約8.6KPa、厚さが0.81μmであった。
【0094】
最終のリーフレットは、28.22重量%のフルオロポリマーで構成され、厚さは50.3μmであった。個々のリーフレットは26層の複合材料を有し、厚さ/層数の比率は1.93μmであった。
【0095】
得られた弁は、複数層のフルオロポリマー層を有する複合材料で形成されたリーフレットを備え、この複数層のフルオロポリマー層は複数の孔を有し、これらのフルオロポリマー層の実質的に全部の孔にエラストマーが存在していた。各リーフレットは、図3Bに例示する閉位置(弁を通って流体が流れるのを実質的に阻止する位置)と、図3Aに例示する開位置(弁を通って流体が流れるのを可能にする位置)との間を移動可能であった。
【0096】
リアルタイムのパルスデュプリケータを用いて、弁を横切る典型的な解剖学的圧力と流れを測定することにより、弁リーフレットの性能の特性を評価した。下記の工程で流れ性能の特性を評価した。
【0097】
弁組立体をシリコーン製の環状リング(支持構造物)に嵌め込み、引き続きリアルタイムパルスデュプリケータで評価できるようにした。嵌め込みは、パルスデュプリケータの製造者(ViVitro Laboratories社、カナダ国ブリティッシュコロンビア州ビクトリア)の推奨事項に従って行った。
【0098】
嵌め込んだ弁組立体を、リアルタイム左心流パルスデュプリケータシステムの中に配置した。この流体流パルスデュプリケータシステムはVSI Vivitro Systems社(カナダ国ブリティッシュコロンビア州ビクトリア)から提供され、以下の構成部品を備えていた。スーパーポンプサーボパワー増幅器、部品番号SPA3891;スーパーポンプヘッド、部品番号SPH 5891B、シリンダ面積38.320cm2;弁ステーション/固定具;波形発生器TriPack、部品番号TP 2001;センサインタフェース、部品番号VB 2004;センサ増幅部品、部品番号AM 9991;矩形波電磁流量計(カロライナメディカルエレクトロニクス社、米国ノースカロライナ州イーストベンド)。
【0099】
一般に、流体流パルスデュプリケータシステムでは、固定変位量のピストンポンプを用いて試験中に弁を通過する所望の流体流量を発生させる。
【0100】
この心臓流体流パルスデュプリケータシステムを調整して、所望の流量(5L/分)、平均圧(15mmHg)、擬似脈拍(70bpm)を生成するようにした。試験対象の弁を、約5〜20分間反復動作させた。
【0101】
右心室圧、肺動脈圧、流量、ポンプピストン位置を含む、試験期間中の圧力データと流量データを測定し回収した。弁の特性評価に用いたパラメータは、有効開口部面積と逆流率である。有効開口部面積(EOA:effective orifice area)は次式により計算できる。
EOA(cm2)=Qrms/(51.6*(ΔΡ)1/2
(式中、Qrmsは収縮期/拡張期流量(cm3/s)の二乗平均平方根、ΔΡは収縮期/拡張期平均血圧低下(mmHg)である。)
【0102】
弁の流体力学的性能を表す別の測定値として、逆流率(弁を通って逆流した流体又は血液の量を一回拍出量で割った値)を使用した。
【0103】
加速摩耗試験の前に流体力学的性能を測定した。流体力学的性能値は、EOA=2.4cm2、逆流率=11.94%であった。
【0104】
上記実施形態の精神又は範囲から逸脱することなく上記実施形態を様々に修正及び変形できることは、当業者には明らかであろう。このように、添付の請求項及びその均等物の範囲に入ることを条件として、上記実施形態は、上記実施形態の修正物及び変形物に及ぶことが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B