【文献】
Polyamides derived from piperazine and used for hot-melt adhesives,International Journal of Adhesion & Adhesives,米国,2002年,22,75-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
著者B.S. Biggs、C.J. FroschおよびR.H. Ericksonによる、Melting Points of N−Substituted Polyamidesという表題のIndustrial and Engineering Chemistryの38巻(1946年10月)、1016〜1019頁は、ポリアミドの窒素上での効果的な置換ならびにポリアミド融点と置換の程度およびタイプとの相関を検討している。
【0003】
ポリアミドの基本的特性(結晶化度、引っ張り強さ、有機溶媒中での安定性等)を記載している、VI. Synthesis of Polyamines Starting with N−Alkylated Hexamethylenediamine, Production of Partly N−alkylated Polyamides、1820〜1823頁;およびVII. Preparation of Completely N−alkylated Polyamides and Coupling of Their Chains with a Diisocyanate、1824〜1828頁を含む、著者A. L. KlebanskiiおよびM.S. Vilesova(1957年)による、Research in the Field of Synthesis of Condensation of a N−alkylated Hexamethylenediamineという表題の編集物は、ジイソシアネートとのカップリングによるポリアミド鎖の延長を記載している。
【0004】
米国特許第4,992,500号は、ロジン誘導体で乳化されたポリアミドの水分散体(Aqueous Dispersions of Polyamides Emulsified with Rosin Derivatives)を記載している。
【0005】
Makromol. Chem.(1983年)の184巻、1957〜1965頁は、N−メチルドデカンラクタムからのポリアミドの重合を開示している。Crystallization Behavior of Poly(N−methyldodecano−12−lactam)という表題のPolymer(2000年)の41巻、7653〜7866頁は、N−メチルドデカノ−12−ラクタムのホモポリマーを開示している。
【0006】
Polyurethane Elastomers with Hydrolytic and Thermoxidative Stability. I. Polyurethanes with N−Alkylated Polyamide Soft Blocksという表題のJ. of Polym. Sci. Part A:Polym. Chem.(1990年)の28巻、1473〜1482頁は、N−アルキル化ポリアミド結合を有するポリウレタンを開示している。
【0007】
Polyurethane Elastomers with Hydrolytic and Thermoxidative Stability. II. Polyurethanes with N−Alkylated Polyamide Soft Blocksという表題のJ. of Polym. Sci. Part A:Polym. Chem.(1990年)の28巻は、アミン上のアルキル基がメチル、エチル、イソプロピルまたはブチルであり、二塩基酸が炭酸(carbonate)であるコポリアミドを開示している。
【0008】
米国特許第5,610,224号は、コーティング組成物において使用するためのイオン性および非イオン性ポリアミド変性ポリウレタンポリマー、形成させるための方法ならびにこれらのポリマーを含むコーティング組成物を開示している。
【0009】
欧州特許第594292A1号は、ラクトンと反応させたN−アルキル化アミノアルコールを記載している。その反応生成物を、ジカルボン酸のジエステルまたはジカルボン酸の無水物と反応させている。
【0010】
Acushnet Companyに譲渡されている、Compositions for Golf Equipmentという名称の米国特許第7,276,570号は、それと結合した複数のアニオン性部分を有する少なくとも1つのポリマーを含む熱可塑性、熱硬化性、キャスタブルまたはミラブルエラストマー組成物を含むゴルフボールを開示している。これらの組成物は、ゴルフボール構造物の一部として使用することができる。
【0011】
Polyamides Derived from Piperazine and Used for Hot−melt Adhesives: Synthesis and Propertiesという表題のInternational J. of Adhesion & Adhesives(2002年)の22巻、75〜79頁は、ピペラジンとエチレンジアミンおよびダイマー脂肪酸のコポリマーを開示している。
【0012】
Novartis Pharma GmbhのWO2006/053777A1は、コンタクトレンズの成分として使用可能な水溶性プレポリマーを提供するために使用できるポリアミドプレポリマーを含む架橋性ポリ(オキシアルキレン)を開示している。米国特許出願公開第2008/0090956A1号は、アミド構造単位を含む水希釈可能なヒドロキシ官能性ポリウレタン、それらを調製するための方法およびそれらから調製される水性コーティング組成物を開示している。
Polyamide Polyols and Polyurethanes, Methods for Making and Using, and Products Made Therefromという表題の米国特許出願公開第2008/0223519号(WO2008/070762に相当)は、ポリマー性および非ポリマー性ジアミンとジカルボン酸およびヒドロキシ置換カルボン酸の反応生成物を開示している。これは、ポリアミドとジイソシアネートの反応も開示している。
欧州特許第449419A1号は、第一級アミノアルコールと酸性末端のポリアミドエーテルを反応してヒドロキシル末端ポリマーを生成させることを記載している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
以下の用語は以下で述べるような定義を有する:2つの反応性末端基を含む高分子として定義されるテレケリックポリマーは、架橋物質、鎖延長物質として使用されるものであり、ブロックおよびグラフトコポリマー、星形、超分岐または樹枝状ポリマーを含む様々な高分子構造物のための重要な構築ブロックである。ポリジエン、ポリエステル、ポリエーテルおよびポリカーボネート型のテレケリックポリマーが当技術分野で周知である。第一級または第二級ヒドロキシル、第一級または第二級アミンおよびカルボン酸から選択される官能性末端基を有するこれら従来技術のテレケリックポリマーは、テレケリック前駆体の特性を有する、より大きなポリマーを形成するための補完的な(complimentary)反応物と反応されている。加工するのが容易な低融点を有するポリアミドテレケリックは得られていない。
【0017】
本発明者らは括弧を、1)モノマー(s)がモノマーもしくはモノマー(複数)を意味し、また、(メタ)アクリレート{(meth)acrylate}がメタクリレートもしくはアクリレートを意味するように、何かが任意選択で存在すること、2)前に言及した用語を限定する(qualify)またはさらに定義すること、あるいは3)より狭い実施形態を挙げることを表すために使用することとする。
【0018】
ポリエステルポリオールは良好な機械的特性およびUV耐性を付与するが、加水分解耐性が劣っているという問題がある。ポリエーテルポリオールは、ポリエステルより良好な加水分解安定性を有するが、UV耐性が不十分である。ポリカーボネートポリオールは、ある程度大きい硬度でポリエステルに優る改善された加水分解耐性を提供するが、それらは、他のポリオールより1桁程度でより高価である。ポリジエンポリオールは有用であるが、疎水性が強すぎて、極性の基材と十分に相互作用することができない。一部のポリジエンポリオールは水素化されると、ジエンモノマーからの残留不飽和に応じて分解機構を低減させる。したがって、新規なクラスのテレケリックポリアミドはこれらの問題を克服する助けとなろう。
【0019】
アミン末端ポリアミドオリゴマーは、低い粘度、低いガラス転移温度、抑えられた結晶化度、低い酸価、種々の窒素またはアミド:炭化水素重量比(または親水性/疎水性バランス)、および制御された数の水素結合または非水素結合アミド基で作製されている。
【0020】
従来の二官能性酸およびアミンから一連のポリアミドオリゴマーが作製されてきた。最初のオリゴマーはアミン末端を含んでおり、ジイソシアネートと反応してポリアミド−ポリ尿素骨格を形成する。しかし、これらの構造における強い水素結合の存在は、低分子量であってもそれらを非常に硬い(高いガラス転移)ものにし、したがって、より高分子量のポリマーまたは架橋ネットワークへのさらなる構造的改変または調製には適していない。本発明者らは、これらのポリマー上でのN−アルキル基の置換は、それらを軟質化し、加工するのを容易にすることを発見した。
【0021】
本発明は、より大きい分子量のポリマーおよび/または架橋ポリマーネットワークを作製するマクロモノマー、プレポリマーまたはポリマーセグメントとして有用な、例えば加水分解またはUV分解による鎖の切断に対して抵抗性のあるポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドに関する。得られるポリマーまたはネットワークは、アミド結合のより高い熱安定性のため、ポリエーテルおよび/またはポリエステルからの同様のポリマーまたはネットワークより良好な熱安定性を有している。中程度の分子量ポリアミドオリゴマー、およびオリゴマーの末端で共反応基と化学結合を形成することができる共反応物から構築されたポリマー。これらのポリマーは、そのオリゴマーが最終ポリマーの実質的な重量割合を形成するので、それからこのポリマーが作られるポリアミドオリゴマーの特性の多くを有する。オリゴマーの分子量および組成の改変を、所望の特性を達成するために使用することができる。それらは、ポリ尿素/ウレタンを作製するためにも使用することができる。ポリ尿素/ウレタンという用語は、尿素結合、ウレタン結合またはそうした結合のブレンドを有するポリマーを指すために使用される。この組成物は、少量の他のポリマーおよび材料を、物理的ブレンドとしてかまたは他のポリマーまたは材料がポリアミド中に共反応されていてよい状態で含むことができる。
【0022】
ポリアミドオリゴマーという用語は、2つまたは2つより多くのアミド結合を有するオリゴマーを指し、場合によって、アミド結合の量は指定されることになる。ポリアミドオリゴマーのサブセットはテレケリックポリアミドである。テレケリックポリアミドは、高い割合または指定された割合の単一の化学種類の2つの官能基、例えば2つの末端アミン基(第一級、第二級またはその混合物を意味する)、2つの末端カルボキシル基、2つの末端ヒドロキシル基(やはり第一級、第二級またはその混合物を意味する)または2つの末端イソシアネート基(脂肪族、芳香族またはその混合物を意味する)を有するポリアミドオリゴマーである。テレケリックの定義に適合するのに好ましい、二官能性のもののパーセントの範囲は、より高いまたはより低い官能性とは対照的に、二官能性のオリゴマーの少なくとも70または80、より望ましくは少なくとも90または95モル%である。反応性アミン末端のテレケリックポリアミドは、末端基がどちらも、第一級または第二級およびその混合物、すなわち第三級アミン基を除くアミン型であるテレケリックポリアミドオリゴマーである。
【0023】
本発明の第1の部分は、テレケリックオリゴマーから作製されたポリマー中のポリエステル、ポリエーテルまたはポリカーボネート軟質セグメントについての、ポリアミドセグメントでの置換である。ポリエステル、ポリエーテルまたはポリカーボネートセグメントについてのポリアミドセグメントの置き換えまたは置換は一部であっても全部であってもよい。熱安定性を含む最適の環境抵抗性は、ポリエーテルおよびポリエステルにおいてそれらがより簡単に鎖切断されるという潜在性のため、ポリエステルおよびポリエーテルセグメントの完全な置き換えによってもたらされる可能性がある。いくつかの実施形態では、ポリエステルおよび/またはポリエーテルセグメントの一部は、エラストマー部分を軟質化させるか、または得られるポリマーの他のポリマー表面との適合性を改変するそれらの能力のため、テレケリックポリアミドまたはポリアミドオリゴマー中に保持されていてよい。ポリエステルまたはポリエーテルからのポリマーが、加水分解またはUV活性化による鎖の切断によって分解する場合、そのポリマーの分子量は減少し、その結果、ポリマーまたはセグメントは、間もなく、その引っ張り強さ、破断点伸び(elongation to break)、耐溶剤性等を失うことになる。
【0024】
軟質ポリエーテルまたはポリエステルセグメントを、軟質ポリアミドセグメントで置き換える本発明の第1の部分の第2の利益は、ポリアミドセグメントが、ガラス、ナイロンおよび金属などの様々な極性基材に対して、ポリエステルまたはポリエーテルベースのポリマーより良好な湿潤および接着を促進する傾向があるという点である。ポリアミドの疎水/親水特性は、ポリアミド中において、異なる重量比の炭化水素とアミド結合または窒素原子を使用することによって調整することができる。アミド結合部分に対して大きな脂肪族炭化水素部分を有する二塩基酸、ジアミン、アミノカルボン酸およびラクタムは、疎水性である傾向がある。アミド結合または窒素原子に対する炭化水素の重量比がより小さくなると、ポリアミドはより親水性になる。ポリマー中のポリアミドの量を増大させると、ポリアミドと同様かまたはそれに適合する表面を有する基材に対する接着性を増進させることができる。
【0025】
ポリアミドセグメントから作製されたポリマーは、良好な耐溶剤性を有することができる。溶剤は、ポリマーを変形および膨潤させ、それによってポリマーの早期破壊を引き起こす恐れがある。溶剤は、2つの間の界面でコーティングを膨潤させ、基材からの層剥離を引き起こす恐れがある。
【0026】
従来技術のポリアミドの多くは、ブロック型の熱可塑性ポリマーが望ましい場合に、軟質セグメントとして機能するのにはずっと高い温度、例えば100℃超で溶融する、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロンなどの高融点の結晶性ポリアミドであることに留意すべきである。従来技術の文献(prior art publications)の一部では、ポリアミド、しばしば結晶性または高Tgのポリアミド型は、ポリアミドと適合する基材との表面相互作用を増進させるためだけに加えられている。より低いTgのポリマーを生み出すために、軟質(低いTg)のポリエステル、ポリエーテルまたはポリカーボネートをポリアミドセグメントに加えて、より低い複合Tgエラストマーセグメントを提供している。他の従来技術の文献では、ほんのわずかなポリアミド結合をポリマーに挿入してポリマーの極性を改変し、耐溶剤性を増進させるか、または軟化点を上昇させている。
【0027】
本特許出願の1つの目的は、1つまたは複数のポリアミドセグメントを含むテレケリックオリゴマーにおいて高い割合のアミド結合を使用して、加水分解による鎖の切断および/またはUV活性化による鎖の切断に対する耐性を提供することである。したがって、いくつかの実施形態は、軟質セグメント中の繰り返し単位の間での全結合の高い割合が、アミド結合である軟質セグメントを説明することとする。いくつかの実施形態は、繰り返し単位間の一部の結合がアミド結合以外のものであることを考慮に入れる。
【0028】
低いTgのポリアミド軟質セグメントを得るための従来のポリアミドからの重要な改変は、ポリアミドの形成における第二級アミン末端基を有するモノマーの使用である。第二級アミンおよびカルボン酸型基によって形成されるアミド結合は第三級アミド結合と称される。第一級アミンはカルボン酸型基と反応して第二級アミドを形成する。第二級アミドの窒素原子は、しばしば近接するアミドのカルボニル基との水素結合である、結合した水素原子を有する。分子内H結合は、高融点を有する結晶化度を誘導し、鎖移動性を低下させる架橋として機能する可能性がある。第三級アミド基では、アミド結合の窒素上の水素は、水素結合とともに排除される。それと結合した1つの追加的なアルキル基を有する第三級アミド結合は、それと結合した水素を有する第二級アミド基と比較して、そのポリマーがバルクポリマーサンプル中に存在する場合に、近接するアミド基とは低い極性相互作用しかもたない。低い極性相互作用とは、アミド結合を含むガラス状または結晶性の相が、第二級アミド基である同様のアミド基より低い温度で溶融することを意味する。第三級アミド結合への前駆体である第二アミン反応物を得る1つの方法は、アミン含有モノマーの窒素原子をアルキル基で置き換えることである。第二級アミン反応物を得る別の方法は、アミンの窒素が環構造の一部である複素環分子を使用することである。ピペラジンは、両方の窒素原子が第二のタイプのものであり、複素環の一部である一般的な環状ジアミンである。
【0029】
ポリアミド軟質セグメントのTgを低下させるための他の改変は、ポリアミドを形成させるためのモノマーの最小数を超える少なくとも1つの追加のモノマーを使用することである。したがって、N−メチル−ドデシルラクタムからなどのラクタム重合により形成されるポリアミドのために、重合用のモノマー中に追加のラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンまたはジカルボン酸を含めて、そのモノマーによって形成されるアミド結合の間の間隔(繰り返し単位の中の)を変え、それによって、ポリアミド中のアミド結合間の間隔が骨格に沿って不規則になる、例えば、各オリゴマー中の繰り返し単位の一部について物理的大きさが同じでないようにすることを含むことになる。アミノカルボン酸の重合のために、重合用のモノマーブレンド中に、追加のラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンまたはジカルボン酸(モノマーの主要反応基間で異なった物理的長さを有する)を含めて、アミド結合間の繰り返し単位の間での間隔を変えることになる。モノマー上の末端基を切り替えることは、極性アミド結合の間隔の規則性をかく乱し、コポリマーの有効なTgを低下させることもできる。したがって、C
6アミノカルボン酸を少量のC
6二塩基酸およびC
6ジアミンと一緒に共重合するとアミド結合の規則性をかく乱させることができる。それは、二塩基酸およびジアミン単位が、アミド結合の方向を頭部から尾部方向から、尾部から頭部方向へ切り替え、ポリアミド骨格に沿ったアミド結合の間隔の均一性を若干かく乱させることになるからである。一般に、この手順にしたがう場合、ポリアミドにおける主要モノマーとして使用されるモノマーのアミド形成末端基間の原子の数を増大または減少させるかく乱性(disrupting)モノマーを添加しようと試みることになる。2個のメチレン原子がその環の上半分を形成し、2個のメチレン原子がその環の下半分を形成しているピペラジン、環状ジアミンモノマーなどの環状構造を有する第2のかく乱性モノマーを使用して、二塩基酸を、そのジアミンの窒素原子間に2個のメチレン原子を有するジアミンモノマーと反応させて、形成されるポリアミドの規則性をかく乱させることもできる。
【0030】
Tgを低下させ、結果としてポリアミドの硬度を低下させるための共重合法の使用を表現する別の方法は、そのポリアミドが以下のa、bまたはc:
a)前記アミド結合が、1つまたは複数のモノマーを重合することによって誘導され、前記モノマーの90モル%超がラクタムおよびアミノカルボン酸モノマーから選択されるモノマーを重合することによって誘導される場合、前記ポリアミドは少なくとも2つの異なるモノマーのコポリマーとして定義される(それらがアミン基とカルボン酸基の間が異なる間隔長さのヒドロカルビル部分を有するので、前記モノマーが少なくとも2つの異なるモノマーであることを特徴とすることを意味する。ここで、前記少なくとも2つの異なるモノマーのそれぞれは、前記ポリアミド中の全ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸モノマーの少なくとも10%、より望ましくは少なくとも20もしくは30%のモル濃度で存在する)、または、
b)前記アミド結合が、2つまたは2つより多くのモノマーを重合することによって誘導され、前記モノマーの90モル%超がジカルボン酸とジアミンモノマーを重合することによって誘導される場合、前記ポリアミドは少なくとも3つの異なるモノマーのターポリマーとして定義される(前記アミド結合が、ジカルボン酸およびジアミンモノマーの群から選択される少なくとも3つの異なるモノマーから形成されることを意味する。ここで、前記少なくとも3つの異なるモノマーは、ジカルボン酸のカルボン酸基間の異なる間隔長さまたはジアミンのアミン基の間の異なる間隔長さのヒドロカルビル基によって互いに異なっていることを特徴とし、前記少なくとも3つの異なるモノマーのそれぞれは、前記ポリアミド中の全モノマーの少なくとも10モル%、より望ましくは少なくとも20もしくは30モル%の濃度で存在する)、または、
c)前記アミド結合が、ジカルボン酸、ジアミンおよびラクタムおよび/またはアミノカルボン酸モノマーのいずれかの組合せを重合することによって誘導され、その結果、全ジカルボン酸モノマー(単数または複数)およびジアミンモノマー(単数または複数)が、モノマーブレンド中に、少なくとも10モル%、より望ましくは少なくとも20もしくは30モル%の濃度で存在し、全ラクタムおよびアミノカルボン酸モノマーがモノマーブレンド中に少なくとも10モル%、より望ましくは少なくとも20もしくは30モル%の濃度で存在する場合、追加の異なるモノマーを必要とする制約はないことを条件とする
の中にあることを特徴とするものである。
【0031】
一般に、ほぼ等量の2つまたは2つより多くの異なるアミド形成モノマーを有すると、ポリアミド骨格に沿ってアミド結合間に異なる間隔がもたらされ、結晶溶融およびガラス転移温度の最適な低下が提供される。例えば、2つの異なるジアミンの50:50モルブレンドが望ましい。2つの異なる二塩基酸の50:50モルブレンドが望ましい。ラクタムと二塩基酸およびジアミンとの33:33:33モルブレンドが望ましい。
【0032】
本発明者らは、ポリアミドセグメントの大部分が最初は低分子量であり、その低分子量オリゴマーのTgを測定することが容易なことではなく、測定された値が分子量によって劇的に影響を受けることを理解しているが、それでも本発明者らは低いTg、ガラス転移温度という用語を使用する。例えば、示差走査熱量測定法(DSC)で測定して70、80または90℃超のTg値を有する高いTgのポリマーは、低分子量であっても固体またはゲルを形成する傾向がある。したがって、ポリアミドオリゴマー、テレケリックポリアミド、さらには、テレケリックポリアミドまたはポリアミドオリゴマーからのオリゴマーは、本明細書において、しばしば、特定の温度でのそれらの粘度で記載される。低いTgのポリアミドオリゴマーは、20,000g/モル超の分子量であった場合、50℃未満、より望ましくは25℃または0℃未満のTgを有する組成物として定義されることになる。
【0033】
一実施形態では、テレケリックオリゴマーまたはテレケリックポリアミドは、5rpmで回転する円板を用いたブルックフィールド円板型粘度計で測定して、70℃の温度で100,000cps未満、より望ましくは70℃で15,000または10,000cps未満、さらにより望ましくは60または50℃で100,000cps未満、より好ましくは60℃で15,000または10,000cps未満;さらにより好ましくは50℃で15,000または10,000cps未満の粘度を有する。これらの粘度は、溶剤または可塑剤を含まない生のテレケリックプレポリマーまたはポリアミドオリゴマーであることが望ましい。これらの粘度値は、妥当な速度で望ましい反応が起こり、望ましくない反応、例えば副反応がそれほど起きない適切な条件下で、テレケリックポリアミドを、共反応物および/または粒子材料と混合するのを容易にすることになる。いくつかの実施形態では、テレケリックポリアミドを、溶剤で希釈してこれらの範囲内の粘度を達成することができる。
【0034】
本明細書のオリゴマー、テレケリックおよびポリマーの多くは、所望モノマー上の反応基の縮合反応によって作製される。ポリアミドへのラクタム重合は、連鎖重合プロセスによって同様のアミド結合をもたらすが、これは当技術分野で周知である。カルボン酸基とアミンまたはヒドロキシル基とのこれらの縮合反応は周知であり、水の除去および/または触媒によって促進される。カルボン酸基とアミン基の反応によるアミドの形成は、ホウ酸、ホウ酸エステル、ボラン、亜リン酸、ホスフェート、リン酸エステル、アミン、酸、塩基、ケイ酸塩およびシルセスキオキサンで触媒作用させることができる。追加的な触媒、条件等は、Larockによる「Comprehensive Organic Transformations」などの教科書で得ることができる。
【0035】
反応基の縮合反応は、モノマー間に化学結合を生み出すこととして定義される。オリゴマーまたはポリマー中に組み込まれるモノマーの部分は、特定のモノマーからの繰り返し単位として定義される。アミノカルボン酸、またはジアミンの1つの末端と反応している二塩基酸の1つの末端などのいくつかのモノマーは、そのモノマーがモノマーからポリマーの繰り返し単位になると1つの水分子を失う。他のモノマー、例えばラクタム、イソシアネート、イソシアネートと反応したアミン、イソシアネートと反応したヒドロキシル基等は、分子の一部を環境へ放出せず、むしろ、そのモノマーのすべてを得られるポリマー中に保持する。
【0036】
本発明者らは、ポリアミドオリゴマーを、オリゴマー当たり2つまたは2つより多くのアミド結合を有する20,000g/モル未満の分子量、例えばしばしば10,000;5,000;2,500;または2000g/モル未満の種として定義する。後で、本発明者らは、種々のオリゴマー種において平均して繰り返し単位当たり1つのアミド結合を提供するアミド結合またはモノマーの好ましい割合を規定することとする。ポリアミドオリゴマーのサブセットはテレケリックオリゴマーであろう。テレケリックポリアミドは、上記ポリアミドオリゴマーと同じ分子量を有していることが好ましい。テレケリックという用語はすでに定義されている。多数のポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドを、縮合反応で結合して一般に100,000g/モル超のポリマーを形成することができる。
【0037】
一般に、アミド結合は、カルボン酸基のアミン基との反応、または、例えば環構造中のアミド結合がポリマー中でアミド結合へ転換されるラクタムの開環重合によって形成される。好ましい実施形態では、モノマーのアミン基の大部分は第二級アミン基であるか、またはラクタムの窒素は第三級アミド基である。アミン基がカルボン酸と反応してアミドを形成する場合、第二級アミン基は第三級アミド基を形成する。本開示のために、例えばラクタムにおけるように、アミドのカルボニル基は、カルボン酸基から誘導されると考えられる。ラクタムのアミド結合は、アミノカルボン酸のカルボン酸基と、同じアミノカルボン酸のアミン基との反応によって形成される。一実施形態では、本発明者らは、ポリアミドを作製するのに使用されるモノマーの20、10または5モル%未満が、アミド結合の重合において、3つまたは3つより多くの官能基をもつことを望む。これは、ポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドにおける分岐を減少させることになる。
【0038】
本開示のポリアミドオリゴマーおよびテレケリックポリアミドは、これらの結合を形成させるために使用される追加のモノマーが、目的とするポリマーの使用に有用である場合、少量のエステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、尿素結合等を含むことができる。これは、ポリアミド中に含めようとする他のモノマーおよびオリゴマーが特定の特性を提供できるようにする。これは必要であるが、100%ポリアミドセグメントオリゴマーでは達成することができない。場合によって、添加されたポリエーテル、ポリエステルまたはポリカーボネートが、より軟質の、例えばより低いTgのセグメントを提供する。場合によって、ポリアミドのカルボン酸末端基または第一級もしくは第二級アミン末端基を、縮合重合可能な他の官能性末端基へ転換させることが望ましい。そのテレケリックポリアミドを2つのヒドロキシル末端基を有するポリエーテル、または1つのアミノ(第一級もしくは第二級)および1つのヒドロキシル末端基を有するポリエーテルと反応させることによって、カルボン酸末端基を有するテレケリックポリアミドを、ヒドロキシル末端基を有するオリゴマーに転換させることができる。これを表1、実施例E、FおよびGに示す。これは好ましい実施形態である。ポリエーテルセグメントを有するオリゴマーまたはポリマーは、UV曝露に起因した鎖切断に対して脆弱である。ナイロン6−ポリエチレングリコールブロックコポリマーのブロックコポリマーに対するUV曝露の影響は、Gauvin, Pascal; Lemaire, Jacques、Makromolekulare Chemie(1987年)、188巻(5号)、971〜986頁に報告されている。場合によって、アミド結合を形成しない、ラクタムのオリゴマーの連鎖重合のための開始剤を使用する。場合によって、ポリエーテルを、ポリアミドのセグメントまたは一部として使用して、得られるポリアミドオリゴマーのTgを低下させるか、またはその軟質セグメントを提供する。場合によって、ポリアミドセグメント、例えばカルボン酸またはアミン末端基で二官能性の可能性のあるものを、2つのポリエーテル末端セグメント(例えばJeffamine(商標)D230から)で官能化して、ポリアミドオリゴマーのTgをさらに低下させる、またはポリアミドオリゴマー中に軟質セグメントを提供し、アミンまたはヒドロキシル末端基を有するテレケリックポリアミドを生成させることができる。場合によって、カルボン酸末端のテレケリックポリアミドセグメントは、そのいずれもが末端ヒドロキシル基を有するテレケリックポリアミドを生成することができる、アミノアルコール、例えばN−メチルアミノエタノールまたはHN(R
α)(R
β){式中、R
αはC
1〜C
4アルキル基であり、R
βはアルコール基およびC
2〜C
12アルキレン基を含む、あるいは、R
αとR
βは相互に連結されて、環状構造およびペンダント型ヒドロキシル基(例えば2−ヒドロキシメチルピペリジンにおける)を含むC
3〜C
16アルキレン基を形成することができる}と反応させることによって官能化される。第二級アミン(ヒドロキシル基とは対照的に)のカルボン酸との反応は、100%モル過剰のアミノアルコールを使用し、160℃+/−10または20℃で反応を実施することが好都合である。過剰のアミノアルコールは、反応後に蒸留により除去することができる。一実施形態では、テレケリックポリアミドの官能性第一級または第二級アミン基を、2または4〜10個の炭素原子のラクトン(例えば、バレロまたはカプロラクトン)および/または3〜30個の炭素原子のヒドロキシルカルボン酸と反応させて、前記テレケリックポリアミド上の前記ラクトンまたは前記ヒドロキシルカルボン酸から誘導された1つまたは2つのヒドロキシル官能性末端基を生成する。前記ラクトンまたはヒドロキシルカルボン酸からの1つだけの繰り返し単位を、前記テレケリックポリアミドのそれぞれの末端に付加させるのが最適である。
【0039】
上記で示したように、多くのアミド形成モノマーは、平均して繰り返し単位当たり1つのアミド結合を形成する。これらには、二塩基酸およびジアミン(互いに反応させる場合)、アミノカルボン酸およびラクタムが含まれる。これらのモノマーまたはこれらのモノマーからの繰り返し単位を論じる場合、一般に、これらのモノマー、それらの繰り返し単位およびそれらの反応性同等物(挙げられているモノマーと同じ繰り返し単位を形成するモノマーを意味する)を意味する。これらの反応性同等物は、二塩基酸の無水物、二塩基酸のエステル等を含むことができる。同じグループの中の他のモノマーと反応する場合、これらのモノマーも、形成される繰り返し単位の両末端でアミド結合を形成する。したがって、アミド結合の割合と、アミド形成モノマーからの繰り返し単位のモル%および重量割合の両方を用いることとする。アミド形成モノマーを、通常のアミド形成縮合結合反応において、繰り返し単位当たり平均して1つのアミド結合を形成するモノマーを指すのに使用することとする。
【0040】
一実施形態では、炭化水素型結合を連結するヘテロ原子を含む結合の総数の望ましくは少なくとも10モル%、より望ましくは少なくとも25、45または50、より望ましくは少なくとも55、60、70、75、80、90または95モル%が、アミド結合であることを特徴とする。ヘテロ原子結合は、ヘテロ原子が、一般に炭化水素である(または炭化水素結合などの炭素と炭素の結合を有する)ことを特徴とするオリゴマーまたはポリマーの2つの部分を連結するアミド、エステル、ウレタン、尿素、エーテル結合などの結合である。ポリアミド中のアミド結合の量が増大すると、ポリアミド中のアミド形成モノマーからの繰り返し単位の量が増大する。
【0041】
一実施形態では、ポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドの望ましくは少なくとも25wt%、より望ましくは少なくとも30、40、50wt%、より望ましくは少なくとも60、70、80、90または95wt%は、繰り返し単位の両末端でアミド結合を形成するモノマーとも特定されるアミド形成モノマーからの繰り返し単位である。そうしたモノマーには、ラクタム、アミノカルボン酸、ジカルボン酸およびジアミンが含まれる。
【0042】
一実施形態では、ポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミン中のアミド結合の望ましくは少なくとも25、50、65、75、76、80、90または95モル%は第三級アミド結合である。上記で説明したように、第三級アミド結合は、第三級アミドを有するラクタムの開環重合または第二級アミンとカルボン酸基の反応によってもたらされる。
第三級アミド結合%の計算:
【0043】
アミド結合の総数の第三級アミド結合の%は、以下の式:
【数1】
{式中、nはモノマーの数であり、
指数iは特定のモノマーを指し、
w
tertNは、重合において第三級アミド結合を形成するまたはその一部であるモノマー中の窒素原子平均数であり(注記:末端基を形成するアミンは、重合の間にアミド基を形成せず、それらの量はw
tertNから排除されている)、
w
totalNは、重合において第三級アミド結合を形成するまたはその一部であるモノマー中の窒素原子平均数(注記:末端基を形成するアミンは、重合の間にアミド基を形成せず、それらの量はw
totalNから排除されている)であり、
n
iは指数iを有するモノマーのモル数である}
で計算した。
アミド結合%の計算:
【0044】
すべてのヘテロ原子含有結合(炭化水素結合を連結する)の総数のアミド結合の%は以下の式:
【数2】
{式中、w
totalSは、モノマー中のヘテロ原子含有結合(炭化水素結合を連結する)の平均数と、ポリアミド重合の間にカルボン酸担持モノマーとの反応によってそのモノマーから形成されるヘテロ原子含有結合(炭化水素結合を連結する)の数の和である}
で計算した。「炭化水素結合」は、繰り返し単位において連続した炭素と炭素の結合から形成される(すなわち、窒素または酸素などのヘテロ原子を含まない)、それぞれの繰り返し単位のまさに炭化水素部分である。この炭化水素部分は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのエチレンまたはプロピレン部分;ドデシルラクタムのウンデシル基、エチレンジアミンのエチレン基およびアジピン酸の(CH
2)
4(すなわちブチレン)基である。
【0045】
好ましいアミドまたは第三級アミド形成モノマーには、ジカルボン酸、ジアミン、アミノカルボン酸およびラクタムが含まれる。好ましいジカルボン酸は、ジカルボン酸のアルキレン部分が、任意選択で二塩基酸の3または10個の炭素原子当たり最大で1個のヘテロ原子を含む、2〜36個の炭素原子、より好ましくは4〜36個の炭素原子(二塩基酸はアルキレン部分より2個多い炭素原子を含む)の環状、直鎖状または分枝状(任意選択で芳香族基を含む)アルキレンであるものである。これらには、ダイマー脂肪酸、水素化ダイマー酸、セバシン酸等が含まれる。通常より低いTg値を有するポリアミド繰り返し単位をもたらすので、一般に、より大きいアルキレン基を有する二塩基酸が好ましい。
【0046】
好ましいジアミンには、ジアミンのそれぞれの3または10個の炭素原子について任意選択で1個のヘテロ原子(2個の窒素原子の他に)を含み、任意選択で様々な環状、芳香族または複素環基含む最大で60個の炭素原子を有するものが含まれる。ただし、そのアミン基の1つまたは両方は第二級アミンであり、好ましい式は
【化1】
{式中、R
bは、直接結合、あるいは、2〜36個の炭素原子、より好ましくは2または4〜12個の炭素原子の直鎖状もしくは分枝状(任意選択で環状、複素環もしくは芳香族部分(単数または複数)であるかまたはそれらを含む)のアルキレン基(任意選択で、ジアミンの10個の炭素原子当たり最大で1または3個のヘテロ原子を含む)であり、R
cおよびR
dは個別に、1〜8個の炭素原子、より好ましくは1もしくは2〜4個の炭素原子の直鎖状または分枝状アルキル基である、またはR
cとR
dは一緒に連結して1〜8個の炭素原子の単一の直鎖状または分枝状アルキレン基を形成している、あるいは、任意選択でR
cおよびR
dの1つは炭素原子でR
bと連結しており、より望ましくはR
cおよびR
dは1または2〜4個の炭素原子である}
である。
【0047】
そうしたジアミンには、AlbermarleからのEthacure(商標)90(たぶんN,N’−ビス(1,2,2−トリメチルプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン);DorfketalからのClearlink(商標)1000またはHuntsmanからのJefflink(商標)754;N−メチルアミノエタノール;アルキレンが2〜4個の炭素原子を有し、約40または100〜2000の分子量を有する、ジヒドロキシ末端、ヒドロキシルおよびアミン末端またはジアミン末端のポリ(アルキレンオキシド);N,N’−ジイソプロピル−1,6−ヘキサンジアミン;N,N’−ジ(sec−ブチル)フェニレンジアミン;ピペラジン;ホモピペラジン;およびメチル−ピペラジンが含まれる。Jefflink(商標)754は構造
【化2】
を有する。Clearlink(商標)1000は構造
【化3】
を有する。芳香族基を有する別のジアミンは:N,N’−ジ(sec−ブチル)フェニレンジアミンである。以下の構造:
【化4】
を参照されたい。好ましいジアミンは、両方のアミン基が第二級アミンであるジアミンである。
【0048】
好ましいラクタムには、ラクタムの窒素上に置換基をもたない環構造が合計5〜13個の炭素原子(1つがカルボニルを含む場合)を有し、ラクタムの窒素上の置換基(そのラクタムが第三級アミドである場合)が1〜8個の炭素原子のアルキル、より望ましくは1〜4個の炭素原子のアルキルである、その中に4〜12個の炭素原子の直鎖状または分枝状アルキレンセグメントが含まれる。ドデシルラクタム、アルキル置換ドデシルラクタム、カプロラクタム、アルキル置換カプロラクタム、およびより大きいアルキレン基を有する他のラクタムは、それらがより低いTg値を有する繰り返し単位を提供するので、好ましいラクタムである。アミノカルボン酸は、ラクタムと同じ数の炭素原子を有する。アミノカルボン酸のアミンとカルボン酸基の間の直鎖状または分枝状アルキレン基における炭素原子の数は4〜12個であり、アミン基の窒素上の置換基(それが第二アミン基である場合)は1〜8個の炭素原子、より好ましくは1または2〜4個の炭素原子を有するアルキル基であることが望ましい。第二級アミン基を有するアミノカルボン酸が好ましい。
【0049】
一実施形態では、前記ポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドの望ましくは少なくとも50wt%、より望ましくは少なくとも60、70、80または90wt%が、
【化5】
{式中、R
aはジカルボン酸のアルキレン部分であり、任意選択で二塩基酸の3または10個の炭素原子当たり最大で1個のヘテロ原子を含む、2〜36個の炭素原子、より好ましくは4〜36個の炭素原子(二塩基酸はアルキレン部分より2個多い炭素原子を含む)の環状、直鎖状または分枝状(任意選択で芳香族基を含む)アルキレンであり、
R
bは、直接結合、あるいは、2〜36または60個の炭素原子、より好ましくは2または4〜12個の炭素原子の直鎖状もしくは分枝状(任意選択で環状、複素環もしくは芳香族部分(単数または複数)であるまたはそれらを含む)アルキレン基(任意選択で10個の炭素原子当たり最大で1または3個のヘテロ原子を含む)であり、R
cおよびR
dは個別に、1〜8個の炭素原子、より好ましくは1または2〜4個の炭素原子の直鎖状または分枝状アルキル基である、またはR
cとR
dは一緒に連結して1〜8個の炭素原子の単一の直鎖状または分枝状アルキレン基を形成している、あるいは、任意選択でR
cおよびR
dの1つは炭素原子でR
bに連結しており、より望ましくはR
cおよびR
dは1または2〜4個の炭素原子のアルキル基である}
である繰り返し単位の構造の二塩基酸およびジアミンからの繰り返し単位を含む。
【0050】
一実施形態では、前記ポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドの望ましくは少なくとも50wt%、より望ましくは少なくとも60、70、80または90wt%が、構造
【化6】
のラクタムまたはアミノカルボン酸からの繰り返し単位を含む。ここで、繰り返し単位は、開始剤のタイプに応じてラクタムまたはアミノカルボン酸から誘導されるオリゴマーにおいて様々な方向であってよく、各R
eは独立に、4〜12個の炭素原子の直鎖状または分枝状アルキレンであり、各R
fは独立に、1〜8個、より望ましくは1または2〜4個の炭素原子の直鎖状または分枝状アルキルである。
【0051】
上記のポリアミドオリゴマーおよびテレケリックポリアミドは、ポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドを、ポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドの官能基(例えば、ポリアミドのこれらの官能基には第一級および第二級アミン、第一級または第二級ヒドロキシルまたはカルボン酸基が含まれる)と反応させたとき化学結合を形成すことができる2つまたは2つより多くの反応基を有する共反応物と反応させることによって、ポリマーを作製するのに有用である。共反応物上の反応基はイソシアネートであってよく、または、特にテレケリックポリアミドでは、それらはヒドロキシル、アミンまたはカルボン酸基であってよい。
【0052】
本発明者らは、慣用的な二官能性酸およびアミンから一連のポリアミドオリゴマーを作製した。これらのオリゴマーはアミン末端を含み、ジイソシアネートと反応してポリアミド−ポリ尿素骨格を形成する。本発明者らの新規の分散ポリマーにおけるポリアミド構築ブロックは、ポリエステルおよびポリエーテルセグメントと比較して、優れた加水分解安定性、優れた熱およびUV耐性、より良好な全般的機械的特性を提供する。さらに、これらのポリアミドオリゴマー中のアミン鎖末端は、イソシアネートと反応した場合、イソシアネートと反応したポリオールからのウレタンに対して、尿素結合を形成する。これらのポリ尿素結合は、より真の架橋ポリマーのように機能し、これらに限定されないが、より良好な耐溶剤性および弾性を含むウレタンを凌ぐ性能の利点をもたらす、より強力な分子間引力をもつことが公知である。
他のポリマーとの慣用的なブレンド
【0053】
本発明のポリアミドオリゴマーまたはテレケリックポリアミドは、当技術分野で公知の方法で、適合するポリマーおよびポリマー分散体と一緒にすることができる。そうしたポリマー、ポリマー溶液およびポリマー分散体には:Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology. John Wiley & Sons.第3版、20巻、H. F. Markら、Eds.、207〜230頁(1982年)のA. S. Teot.「Resins, Water−Soluble」に記載されているものが含まれる。
応用
【0054】
本発明のオリゴマーポリアミドまたはテレケリックポリアミドは、コーティング材、フィルム、繊維、接着剤または成形もしくは押し出し物品として使用されるポリマー組成物における成分として有用である。
【実施例】
【0055】
これらの実施例では、以下の試薬を使用した:
Jeffamine−D230:ジ−第一級アミン末端ポリプロピレングリコール、Mn=230g/mol。
IPA:イソプロピルアルコール
DBTL:ジブチルすずジラウレート
EC−90:Ethacure(商標)90(Albermarleから) N,N’−ビス(1,2,2−トリメチルプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン)
PTMO−270:約270g/モル分子量のポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール
ポリアミドA
すべての二塩基酸、ピペラジン(量:処方における「ブロック」と「ジアミン」の合計)および水を、N
2雰囲気下で反応器に仕込んだ。反応器を100℃に加熱し、水を蒸発させた。加熱を170℃まで続行し、この温度で3h保持した。反応器の圧力を1〜30ミリバールに低下させ、反応をさらに10h続行した。生成物は、室温で酸価<3.0mg KOH/gポリマーを有するやや黄色がかったペースト状物であった。末端基は第二級アミンであった。
ポリアミドB
すべての二塩基酸、EC−90およびホウ酸をN
2雰囲気下で反応器に仕込んだ。反応器を250℃に加熱し、その温度で5h保持した。反応器を130℃に冷却し、ピペラジンを反応器に仕込んだ(量:処方における「ブロック」と「ジアミン」の合計)。反応器を170℃に加熱し、ポリマーを大気圧下で2h反応させた。反応器の圧力を1〜30ミリバールに低下させ、反応をさらに10h続行した。生成物は、室温で酸価<3.0mg KOH/gポリマーを有するやや黄色がかったペースト状物であった。末端基は第二級アミンであった。
ポリアミドC
すべての二塩基酸、ピペラジン、ホモピペラジン、2−メチルピペラジンおよび水を、N
2雰囲気下で反応器に仕込んだ。反応器を100℃に加熱し、水を蒸発させた。加熱を180℃まで続行し、反応器をこの温度で3h保持した。反応器を130℃に冷却し、エチレンジアミンを反応器に仕込んだ。反応器を170℃に加熱し、ポリマーを大気圧下で2h反応させた。反応器の圧力を1〜30ミリバールに低下させ、反応をさらに10h続行した。生成物は、室温で酸価<3.0mg KOH/gポリマーを有するやや黄色がかったペースト状物であった。末端基は第一級アミンであった。
ポリアミドD
すべての二塩基酸、ピペラジンおよび水を、N
2雰囲気下で反応器に仕込んだ。反応器を100℃に加熱し、水を蒸発させた。加熱を180℃まで続行し、この温度を3h保持した。反応器を130℃に冷却し、Jeffamine−D230を反応器に仕込んだ。反応器を170℃に加熱し、ポリマーを大気圧下で2h反応させた。反応器の圧力を1〜30ミリバールに低下させ、反応をさらに10h続行した。生成物は、室温で酸価<3.0mg KOH/gポリマーを有するやや黄色がかったペースト状物であった。末端基は第一級アミンであった。
【表1-1】
【表1-2】
ポリアミドEのための一般的手順。ポリマーの骨格を、アミド基の窒素が部分的にまたは完全にアルキル化されているラクタムの開環重合によって作製した。末端ブロックを加え、混合物を大気圧下、170℃で3h保持した。真空をかけ、温度を3h保持した。ポリマーを室温に冷却した。
ポリアミドFのための一般的手順:二塩基酸、ジアミンおよび水を200℃で2h加熱した。末端ブロックを加え、混合物を大気圧下、170℃で3h保持した。真空をかけ、温度を3h保持した。ポリマーを室温に冷却した。
ポリアミドG1
すべての二塩基酸、ピペラジンおよび水を、N
2雰囲気下で反応器に仕込んだ。反応器を100℃に加熱し、水を蒸発させた。加熱を180℃まで続行し、この温度を3h維持した。生成物は室温でカルボン酸末端基を有する白色ペースト状物である。
ポリアミドG2
ポリアミドG1およびPTMOを反応器に仕込んだ。反応器を180℃に加熱し、ポリマーを大気圧下で3h反応させた。DBTL触媒を加え、反応器の圧力を1〜30ミリバールに低下させた。反応を180℃でさらに4h続行し、次いで200℃で4h続行した。生成物は、室温で酸価<3.0mg KOH/gポリマーを有するやや黄色がかったペースト状物であった。末端基は第一級アルコールであった。
【0056】
上記で参照した文献のそれぞれを参照により本明細書に組み込む。実施例または別途示している場合を除いて、量、反応条件、分子量、炭素原子数等を指定する本説明におけるすべての数量は、「約(about)」という言葉で修飾されているものと理解すべきである。別段の指定のない限り、すべてのパーセントおよび処方値はモルベースである。別段の指定のない限り、すべての分子量は数平均分子量である。別段の指定のない限り、本明細書で参照するそれぞれの化学品(chemical)または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および市販グレードに含まれていると通常理解されている他のそうした材料を含む可能性のある市販グレードの材料であると解釈すべきである。しかし、各化学成分の量は、別段の指定のない限り、市販材料中に慣行的に存在している可能性のある溶媒または希釈剤を除いて提示される。本明細書で示される量、範囲および比の上限および下限は、独立に組み合わせることができることを理解すべきである。同様に、本発明の各要素についての範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲または量と一緒に使用できる。本明細書で使用されるように、「〜から本質的になる(consisting essentially of)」は、考慮されている組成物の基本的な新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない物質を含めることを許容するものである。本明細書で説明する本発明の実施形態のすべては、末端が開放されている(open−ended)および端値を含む(inclusive)という見方(すなわち、「含む(comprising of)」という用語を用いて)と、閉鎖的(closed)および排他的(exclusive)という見方(すなわち、「からなる(consisting of)」という用語を用いて)の両方によって考慮され、かつその両方から読み取ることができる。本明細書で使用されるように、括弧は、1)モノマー(s)がモノマーもしくはモノマー(複数)を意味する、または(メタ)アクリレート{(meth)acrylate}がメタクリレートもしくはアクリレートを意味するように、何かが任意選択で存在する、2)前に言及した用語を限定するまたはさらに定義する、あるいは3)より狭い実施形態を挙げることを表すために使用することとする。
【0057】
主題の発明を例示するために、特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、対象とする本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更および改変をそこに加えることができることは、当業者に明らかであろう。