(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392823
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-204635(P2016-204635)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-67109(P2018-67109A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2017年11月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】前田 英朗
【審査官】
田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−037383(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/027355(WO,A1)
【文献】
特開2010−092405(JP,A)
【文献】
特開2003−271215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のブロックからなるNC加工プログラムと、前記NC加工プログラムに基づいて動作する工作機械の物理的状態と、を表示する情報処理装置において、
前記ブロックを実行中に、前記工作機械の前記物理的状態を示すデータを取得する加工運転部と、
実行中であった前記ブロック及び前記データを対応付けて格納するデータベースと、
前記データベースを参照し、前記ブロックを前記データの値の大きさに応じて色を多段階に変化させ、かつ時間経過に応じて前記色による描画領域を変えて描画して、前記NC加工プログラムを表示する表示部と、を有することを特徴とする
情報処理装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記ブロックの表示領域のサイズを、前記ブロックの実行時間に応じて変動させることを特徴とする
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記ブロックの表示領域のサイズを、前記ブロックの実行時間に関わらず決定することを特徴とする
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記ブロックの表示領域を、前記ブロックに対応付けられた前記データの数に応じて分割し、前記分割された領域夫々を前記色を用いて描画することを特徴とする
請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記加工運転部はさらに、前記データを取得する際、前記工作機械の工具の座標値を共に取得し、
前記データベースはさらに、前記データ及び前記工具の座標値を対応付けて格納し、
前記表示部はさらに、前記データベースを参照し、前記工作機械の工具経路を、前記色を用いて描画することを特徴とする
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記ブロックの背景色を前記色を用いて描画することを特徴とする
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記ブロックに代えて、前記ブロックの近傍に設けられたインジゲータを前記色を用いて描画することを特徴とする
請求項1記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置に関し、特に加工プログラムに実行時の各種データをオーバレイ表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の数値制御装置における制御画面の一例である。この画面上には、実行中のNC加工プログラムと共に、サーボにかかる負荷の瞬時値を表示するロードメータが配置されている。負荷の瞬時値は、例えば切り込み量の是非を判断する際には大変有用である。一方、例えば工具(サーボ)にかかる負荷の程度などを全般的にレビューするためには、負荷の時系列的変化を観察する必要がある。従来のロードメータを用いて負荷の時系列的変化を得るためには、オペレータは、ロードメータを視認し続ける必要がある。
【0003】
また、仮に
図2に示すように負荷の時系列的変化を単にグラフ表示したとしても、ある時点における負荷がNC加工プログラムのどの部分に対応するかが理解しにくい。したがって、例えばNC加工プログラムのどの部分で負荷が強まり、どの部分で負荷が弱まっているかなどといったレビューを行うことが困難である。
【0004】
この点、特許文献1には、ユーザプログラムと、負荷トルクを示すグラフとを、時間軸を揃えて並べて表示することにより、両者の対応関係を把握しやすくした構成が記載されている。
【0005】
特許文献2には、加工プログラムと、加工負荷のタイムチャートとを、対応部分を同色で表示することにより、両者の対応関係を把握しやすくした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−037383号公報
【特許文献2】特開2010−092405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2記載の構成では、ユーザプログラムと負荷トルクを示すグラフとが別々の領域に表示されており、両者の対応関係を把握するには丁寧な対照作業が必要であるため、直感的な把握が困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものであり、加工プログラムに実行時の各種データをオーバレイ表示することにより、加工プログラムと実行時の各種データとの対応関係を直感的に把握できる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態にかかる情報処理装置は、1以上のブロックからなるNC加工プログラムと、前記NC加工プログラムに基づいて動作する工作機械の物理的状態と、を表示する情報処理装置において、前記ブロックを実行中に、前記工作機械の前記物理的状態を示すデータを取得する加工運転部と、実行中であった前記ブロック及び前記データを対応付けて格納するデータベースと、前記データベースを参照し、前記ブロックを前記データの
値の大きさに応じて色を多段階に変化させ、かつ時間経過に応じて前記色による描画領域を変えて描画して、前記NC加工プログラムを表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【0010】
他の実施の形態にかかる情報処理装置では、前記表示部は、前記ブロックの表示領域のサイズを、前記ブロックの実行時間に応じて変動させることを特徴とする。
【0011】
他の実施の形態にかかる情報処理装置では、前記表示部は、前記ブロックの表示領域のサイズを、前記ブロックの実行時間に関わらず決定することを特徴とする。
【0012】
他の実施の形態にかかる情報処理装置では、前記表示部は、前記ブロックの表示領域を、前記ブロックに対応付けられた前記データの数に応じて分割し、前記分割された領域夫々を前
記色を用いて描画することを特徴とする。
【0013】
他の実施の形態にかかる情報処理装置では、前記加工運転部はさらに、前記データを取得する際、前記工作機械の工具の座標値を共に取得し、前記データベースはさらに、前記データ及び前記工具の座標値を対応付けて格納し、前記表示部はさらに、前記データベースを参照し、前記工作機械の工具経路を、前
記色を用いて描画することを特徴とする。
【0014】
他の実施の形態にかかる情報処理装置では、前記表示部は、前記ブロックの背景色を前
記色を用いて描画することを特徴とする。
【0015】
他の実施の形態にかかる情報処理装置では、前記表示部は、前記ブロックに代えて、前記ブロックの近傍に設けられたインジゲータを前
記色を用いて描画することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加工プログラムに実行時の各種データをオーバレイ表示することにより、加工プログラムと実行時の各種データとの対応関係を直感的に把握できる情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来のNC加工プログラム及びデータの表示方法の一例を示す図である。
【
図2】従来のNC加工プログラム及びデータの表示方法の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる情報処理装置100の構成を示す図である。
【
図4】データベース120におけるデータの格納形態の一例を示す図である。
【
図5】実施例1における表示部130の表示形態を示す図である。
【
図6】実施例2における表示部130の表示形態を示す図である。
【
図7】実施例3における表示部130の表示形態を示す図である。
【
図8】実施例4における表示部130の表示形態を示す図である。
【
図9】実施例1における表示部130の表示形態を示す図である。
【
図10】実施例2における表示部130の表示形態を示す図である。
【
図11】データベース120におけるデータの格納形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図3は、本発明の実施の形態にかかる情報処理装置100の構成を示すブロック図である。情報処理装置100は、加工運転部110、データベース120、表示部130を含む。情報処理装置100は、典型的には中央情報処理装置(CPU)が記憶装置に格納されたプログラムに従って所定の処理を実行することにより上述の各構成要素を論理的に実現するコンピュータである。情報処理装置100は、典型的にはパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、又は数値制御装置である。情報処理装置100は、単一のコンピュータにより実現されても良く、複数のコンピュータ上での分散処理により実現されても良い。
【0019】
加工運転部110は、NC加工プログラムを実行して工作機械を稼働させ、実行中、例えばNC加工プログラムに含まれるブロック毎に各種データを取得し、取得した各種データを取得時刻と対応付けてデータベース120に格納する処理を行う。各種データとは、例えばサーボにかかる負荷、切削速度、騒音レベル等、NC加工プログラムの実行に伴って生じる種々の物理的事象を観察し得る指標を含む情報である。
【0020】
図4は、加工運転部110がデータベース120に格納するデータのフォーマットの一例である。この例では、データベース120の情報は、NC加工プログラムに含まれる1以上のブロックにそれぞれ対応する1以上のエントリにより構成されている。各エントリには、そのブロックを実行中に取得された各種データの値が、取得時刻と対になって格納されている。
【0021】
表示部130は、各種データが格納されたデータベース120を参照し、NC加工プログラムの各ブロックに、当該ブロックを実行中に取得された各種データをオーバレイ(重畳)して表示する。具体的には、例えば各種データを色に変換し、変換された色でNC加工プログラムの文字又は背景等を彩色することによりオーバレイ表示を行う。以下、表示部130の実現方法を幾つか例示する。
【0022】
<実施例1>
図5に、実施例1による描画例を示す。実施例1は、加工ブロック毎のデータの強弱を背景色の配色で表現すること、及び、データの観測時間に応じて背景色描画領域の大きさが変動することが特徴である。
【0023】
ステップ11:ブロックごとに描画情報を計算する
表示部130は、NC加工プログラムに含まれるブロック毎に、当該ブロックに対応付けられた全てのデータについて、ステップ11にかかる計算を実行する。
【0024】
表示部130は、観測時間あたりの背景色描画領域の幅を定義する。例えば表示部130は、1秒あたり3cm幅の背景色描画領域を用いる旨の定義を予め図示しない記憶領域内に保持する。
【0025】
表示部130は、データの観測時間に応じた背景色描画領域の幅を計算する。例えば表示部130は、あるデータの取得時間(より具体的には、例えば当該データの取得時刻から次のデータ取得時刻までの時間)が32msecであった場合、上述の定義(1秒あたり3cm幅)に基づき、背景色描画領域の幅を9.6mmと算出する。
【0026】
表示部130は、データに応じた背景色を計算する。まず表示部130は、データの最小値と最大値を定義する。例えば、最小値=0、最大値=15と定義する。次に表示部130は、データの最小値及び最大値に対応する背景色を定義する。例えば、最小値=RGB(0,255,255)、最大値=RGB(0,0,0)と定義する。表示部130は、これらの定義を予め図示しない記憶領域内に保持しておく。そして表示部130は、データが最小値以下の場合、最小値に対応する背景色を採用する。データが最大値以上の場合、最大値に対応する背景色を採用する。データが最小値と最大値の間の場合、背景色を線形的に計算する。例えば、データが5(最大値の33%)であれば、背景色はRGB(0,170,170)と算出できる。
【0027】
ステップ12:NC加工プログラム表示画面に背景色を描画する
表示部130は、NC加工プログラムに含まれるブロック毎に、背景色描画処理を行う。表示部130はまず、ブロックに対応するデータ毎に、ステップ11で計算した幅及び色を用いて背景色描画領域を描画する。そして、これらの背景色描画領域を時系列に連ねることによって、1ブロックに対応する背景色描画領域を形成する。
【0028】
図9を用いて具体的に説明する。ブロック1の実行中に6つのデータが取得され、それぞれのデータは観測時間が32msecであったものとする。このとき、ブロック1の背景は、9.6mm幅の6つの背景色描画領域を連ねて構成される。そしてそれぞれの背景色描画領域は、データの値に応じた色で彩色される。また、ブロック2の実行中には4つのデータが取得され、それぞれのデータは観測時間が32msecであったので、ブロック2の背景は、9.6mm幅の4つの背景色描画領域を連ねて構成され、各背景色描画領域はデータの値に応じた色で彩色されている。
【0029】
実施例1によれば、実行時間の長さが背景色描画領域の大きさに反映されるので、加工中の各種データの変動を正確な時間感覚で把握することが可能である。
【0030】
<実施例2>
図6に、実施例2による描画例を示す。実施例2は、加工ブロック毎のデータの強弱を背景色の配色で表現すること、及び、データの観測時間に関わらずブロック毎の背景色描画領域の大きさが同じであることが特徴である。換言すれば、実施例1に示したような背景色描画領域が、加工ブロック毎に一定の大きさに圧縮して表示される。
【0031】
ステップ21:ブロックごとに描画情報を計算する
表示部130は、NC加工プログラムに含まれるブロック毎に、当該ブロックに対応付けられた全てのデータについて、ステップ21にかかる計算を実行する。
【0032】
表示部130は、ブロックあたりの背景色描画領域の幅を定義する。例えば表示部130は、加工ブロック1つあたり3cm幅の背景色描画領域を用いる旨の定義を予め図示しない記憶領域内に保持する。
【0033】
表示部130は、ブロックに対応するデータの個数と、当該ブロックについて予め定められた背景色描画領域の幅から、1つのデータに対応する背景色描画領域の幅を計算する。例えば表示部130は、あるブロックに対応して6つのデータが格納されている場合、上述の定義(1ブロックあたり3cm幅)の16.6%にあたる0.5cmを、1つのデータに対応する背景色描画領域の幅として算出する。
表示部130は、実施例1と同様にしてデータに応じた背景色を計算する。
【0034】
ステップ22:NC加工プログラム表示画面に背景色を描画する
表示部130は、実施例1と同様にして、1ブロックに対応する背景色描画領域を形成する。
【0035】
図10を用いて具体的に説明する。ブロック1の背景色描画領域は3cmに固定されているものとする。また、ブロック1の実行中に6つのデータが取得されたものとする。このとき、ブロック1の背景は、0.5mm幅の6つの背景色描画領域を連ねて構成される。そしてそれぞれの背景色描画領域は、データの値に応じた色で彩色される。
【0036】
実施例2によれば、背景色描画領域をブロック毎に圧縮して表示できるので、各種データの変動傾向の全体を見通すことが可能である。
【0037】
<実施例3>
図7に、実施例3による描画例を示す。実施例3は、NC加工プログラムの背景色描画領域が、複数の列に分割されている点に特徴がある。それぞれの列の背景色は、ある測定回において取得されたデータを、実施例2の態様で描画したものである。すなわち、実施例3にかかる表示形態は、複数の測定回、例えば異なる日時において取得されたデータをそれぞれ表す背景色描画領域を、列方向に並べて構成されている。
図7の例では、5つの異なる日に取得されたデータを並べて表示している。
【0038】
実施例3によれば、例えば季節変動や経年劣化による工作機械の動作の変化を観察することが可能となる。また、同じ工作機械から複数の測定回で取得されたデータではなく、複数の工作機械から同時又は異なる任意のタイミングで取得されたデータを並べて表示することも有用である。これにより、設置環境等による工作機械の動作の変化を観察することが可能となる。
【0039】
<実施例4>
実施例4は、実施例1乃至3いずれか1つの方法により背景色を描画することに加え、工具経路を描画する際の配色によりデータの強弱を表現することを特徴とするものである。
図8に、実施例4における工具経路の描画例を示す。
【0040】
ステップ41:運転実行時の工具の座標値、及び当該座標値におけるデータを記録する
加工運転部110は、NC加工プログラムを実行して工作機械を稼働させ、随時各種データを取得し、取得した各種データをデータ取得時点における工具の座標値と対応付けてデータベース120に格納する処理を行う。
【0041】
図11は、加工運転部110がデータベース120に格納するデータのフォーマットの一例である。この例では、運転中に取得されたデータの値が、各データの取得時点における工具の座標値と対になって格納されている。
【0042】
ステップ42:描画情報を計算する
表示部130は、全てのデータについて、実施例1と同様に背景色を計算する。
【0043】
ステップ43:工具経路を描画する
表示部130は、ステップ42で計算した背景色を用いて工具経路を描画する。より具体的には、例えばある時点で取得されたデータに基づき算出された色を用いて、当該時点における工具の座標値から、次の時点の工具の座標値に至る工具経路を描画する。
【0044】
実施例4によれば、NC加工プログラムだけでなく、工具経路にもデータの強弱が反映されるため、各種データの変動をより直感的に把握することが可能である。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0046】
例えば、上述の実施の形態では、各種データの収集先である工作機械は1台であることを前提としているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。情報処理装置100は、複数の工作機械から各種データを収集することも可能である。この場合、加工運転部110は、各種データを工作機械毎に分別してデータベース120に格納することが好ましい。また、表示部130は、工作機械毎に一連の描画処理を実行することが好ましい。
【0047】
また、上述の実施の形態では、表示部130は、データの強弱に応じてNC加工プログラムの背景色を変動させたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば表示部130は、背景色に代えて、フォントの色、大きさ、太さ又は種類を変えても良い。あるいは、NC加工プログラムの表示領域の近傍に色表示可能なインジゲータ(典型的にはカラーバー等)を設け、NC加工プログラムの背景色に代えて、インジゲータの色を変更するよう構成しても良い。
【符号の説明】
【0048】
100 情報処理装置
110 加工運転部
120 データベース
130 表示部