特許第6392828号(P6392828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392828膨張型シール部材を備える撓み性外骨格マスク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392828
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】膨張型シール部材を備える撓み性外骨格マスク
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   A61M16/06 A
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2016-218338(P2016-218338)
(22)【出願日】2016年11月8日
(62)【分割の表示】特願2014-516945(P2014-516945)の分割
【原出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-60798(P2017-60798A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/500,578
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504298349
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、ジョン、スミス
(72)【発明者】
【氏名】ブレット、ジョン、ハダート
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、ジェームズ、アダムズ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、アレクサンダー、ボブソン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー、ジェームズ、ベレスフォード、シャープ
(72)【発明者】
【氏名】トロイ、バーステン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー、ジェームズ、オルセン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、ロジャー、スティーブンソン
(72)【発明者】
【氏名】ロヒート、パテル
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 カナダ国特許出願公開第02785582(CA,A1)
【文献】 特表2008−541955(JP,A)
【文献】 特表2008−502380(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02267648(GB,A)
【文献】 特表2013−515536(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/60479(WO,A1)
【文献】 特表2007−516750(JP,A)
【文献】 特表2009−520579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
A62B 7/00−18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクアセンブリを含むインタフェースアセンブリであって、
前記マスクアセンブリは、内骨格と、シール部材と、外骨格とを含み、前記内骨格は中央部分を含み、前記中央部分の境界が肩部を画定する溝によって定められ、前記シール部材は、前記内骨格の少なくとも一部の上に重なるとともに当該マスクアセンブリの着用者の顔面に接触するように設けられ、前記シール部材は開口部を含み、前記内骨格の前記中央部分の少なくとも一部が前記シール部材の前記開口部を貫通し、前記外骨格は前記シール部材の少なくとも一部の上に重なり、前記外骨格は開口部を画定するリムを含み、前記リムと前記肩部が嵌合して前記内骨格を前記外骨格に固定し、このとき前記シール部材が前記内骨格と前記外骨格の間に挟まれた状態で前記内骨格と前記外骨格の間に固定され、
前記内骨格の前記中央部分の少なくとも一部が前記外骨格の前記開口部を貫通し、前記内骨格の前記中央部分が開口部を有し、呼吸チューブコネクタが前記内骨格の前記中央部分の前記開口部に固定され、前記マスクアセンブリは、前記マスクアセンブリを前記内骨格の前記中央部分の前記開口部の軸線に沿って前方から見たときに、水平に延びる平面の周囲よりも縦方向の中心平面の周囲での撓み性が高い、インタフェースアセンブリ。
【請求項2】
前記内骨格の前記中央部分が開口部を含み、窒息防止弁が前記内骨格の前記中央部分の前記開口部に固定される、請求項1に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項3】
前記内骨格の前記中央部分が第一の開口部と第二の開口部を含み、呼吸チューブコネクタが前記第一の開口部に固定され、窒息防止弁が前記第二の開口部に固定される、請求項1に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項4】
前記シール部材が、着用者の口の開口部と鼻の開口部をほぼ取り囲むように構成された顔面接触フランジを含む、請求項1に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項5】
前記外骨格が、着用者の少なくとも鼻の先端を取り囲むように構成される、請求項1に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項6】
前記マスクアセンブリを前記内骨格の前記中央部分の前記開口部の軸線に沿って前方から見たときに、前記マスクアセンブリの上側部分がほぼ三角形であり、前記マスクアセンブリの下側部分がほぼU字形である、請求項1に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項7】
前記マスクアセンブリを前記内骨格の前記中央部分の前記開口部の軸線に沿って前方から見たときに、前記マスクアセンブリの寸法が側辺から側辺の長さよりも上から下の長さほうが長い、請求項6に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項8】
前記シール部材が、前記シール部材の前記開口部の境界を定めるフランジを含み、前記シール部材の前記フランジが前記内骨格の前記溝の中に位置付けられ、嵌合する前記内骨格と前記外骨格によって前記溝の中に固定される、請求項1に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項9】
複数の取付部材が前記外骨格に固定される、請求項1に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項10】
前記複数の取付部材のうちの少なくとも1つがテーパピンを含む、請求項9に記載のインタフェースアセンブリ。
【請求項11】
前記マスクアセンブリを前記内骨格の前記中央部分の前記開口部の軸線に沿って前方から見たときに、前記テーパピンが、実質的に縦方向の正中面に対してほぼ平行に延びる、請求項10に記載のインタフェースアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年12月23日に出願された米国仮特許出願第61/289641号明細書と2010年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/391514号明細書の優先権の利益を主張した、2010年12月22日に出願された国際出願第PCT/IB2010/003466号パンフレットの一部継続出願であり、これら各々の内容全体を参照によって本願に援用し、本願に添付するものとする。
【0002】
本発明は概して、改良された患者インタフェースに関し、これは特に、ただしそれだけではないが、患者インタフェースの使用者または着用者、たとえば患者に人工呼吸療法を提供するために使用される。具体的には、本発明の実施形態の特定の特徴、態様は、このようなインタフェースのマスクアセンブリと、このマスクアセンブリを患者に固定するために使用されるヘッドギアアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸装置の分野においては、患者の鼻および/または口を覆い、顔の鼻および/または口領域の周囲を密閉し、インタフェース内を陽圧にして、患者が消費するためのガスを供給する各種の呼吸インタフェースがある。
【0004】
インタフェースは、供給されている呼吸ガスが著しく漏出する可能性を低減させるために、顔面と効果的に密着しなければならない。多くのインタフェースにおいて、良好な密着状態を実現するには、患者に大きな不快感を強い、一時的にしか成功せず、および/または患者へのインタフェースのフィッティングに長時間を要さざるを得ないことが多い。
【0005】
患者にとっての不快感に関して、この問題は急性期医療の環境では最も重大である。このような環境では、患者はインタフェースを何時間も、または場合により何日間も装着したままにする必要がある。多大な不快感があれば、患者はすすんで望ましい期間だけマスクの使用に耐えようとしなくなる。
【0006】
多くの構成において、良好に密着しても、それが一時的に過ぎない場合があり、それは患者の顔が歪むと効果的に密着できなくなるからである。たとえば、患者が横向きで寝ているとき、ヘッドギアは片側が引っ張られ、反対側が緩んだ状態となる。このように、非対称の負荷により、ヘッドギアおよび関連のいずれかの呼吸チューブの正味トルクを受けて、頭の軸に関するインタフェースの軸が捻じれる可能性がある。軸の捻じれは、インタフェースの片側で漏れが発生する原因となりうる。これに加えて、横向きに寝ている患者はまた、密着部周辺(たとえば、鼻領域)の顔の輪郭が歪むこともあり、これがさらに漏れにつながることもある。
【0007】
最後に、急性期の状況では呼吸治療を確立できる速度が重要である。したがって、いくつかのヘッドギア構成では、満足な密閉状態を迅速に確立することができることが、現在の構成を改善できる領域として特定されている。
【0008】
患者の顔面へのインタフェースの密着と、ヘッドギアを用いたインタフェースの患者の顔面への固定の両方を改良できることがわかった。
【0009】
インタフェースはたとえば病院で長期間にわたり、または睡眠中に装着される場合があるため、快適さを最大限にしながらも、その一方では依然として、顔面に正しく位置付け、適切に密着させるのに十分な圧力をインタフェースにかけ続けることによって著しい漏れの可能性を低減させるべきである。たとえば、いかなる漏れも、好ましくは約15L/分未満である。病院現場では、インタフェースの着用中に患者の意識がない可能性もある。快適さを増すことで、患者による治療コンプライアンスが高まり、一般によりよい治療成績が得られる。
【0010】
インタフェースおよび関連のヘッドギアは、その正しい脱装着ができるだけ簡単であることが好ましい。特に、1つのヘッドギア設計で患者の、広い範囲にわたる頭の大きさ、形状、ヘアスタイルに対応でき、その一方ではまた、動作が簡単であることも望ましい。
これは特に、スタッフが定常的にインタフェースおよび関連のヘッドギアのフィッティングと取り外しを行う病院現場で当てはまる。好ましくは、インタフェースは様々な顔の形状と大きさにも対応する。
【0011】
患者の観点からもまた、インタフェースは、可能であれば特定の利点を提供するべきである。たとえば、患者は眼鏡をかけたいと思うこともあり、それによって鼻領域の上方の間隙が重要となりうる。これに加えて、患者は人と話したいと思うこともあり、したがって、インタフェースを外さずにより聞こえやすくすることのできるインタフェースの改善が重要でありうる。さらに、患者は一般に、インタフェースが著しく視界に入らないことを望む。それゆえ、より高さの低いインタフェースが望ましい。最後に、快適さの観点から、患者は、ガスが目に向かって漏れることが少なく、材料の臭いが少ないと同時に、音量も低いインタフェースとヘッドギアの構成を望むであろう。
【0012】
臨床的に医療従事者は、密着性が十分であるインタフェースによってインタフェースによる圧力が皮膚にほぼ均等に分散し、点負荷や過剰な圧力勾配の可能性が低減されることを望む。このような特徴は、患者の皮膚に刺激を与える可能性を低減できる。これに加えて、二酸化炭素を流すことによって二酸化炭素の再呼吸の可能性を低下させることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、改良された患者インタフェースおよび/または、患者インタフェースを患者に固定するための改良されたヘッドギア装置を提供し、または少なくとも大衆および医療界に有益な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書において、特許明細書、その他の外部文献またはその他の情報源に言及した場合、これは一般に考察の背景の提供を目的としている。別段の明確な記載がないかぎり、このような外部文献への言及は、かかる文献、またはかかる情報源が、いずれかの法域において、先行技術であるとも、当業界の通常の一般的な知識の一部をなすことを認めているとも解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書中で使用されている「含む(comprising)」という用語は、「少なくともその一部を含む」という意味である。本明細書中の、「含む」という用語を含む各々の記述を解釈する際、その用語の前に置かれる1つまたは複数の特徴以外のものもまた存在してもよい。「含む」の変化形(comprise、comprises)も同様に解釈するものとする。
【0016】
本発明の特定の実施形態はまた、個別または集合的に本願の明細書の中で言及され、または明示される部品、要素、特徴および、前記部品、要素または特徴のうちのいずれか、またはいずれか2つ以上のあらゆる組み合わせの中に存在すると、広く言うことができ、本明細書中で具体的な整数が明記され、それと均等とされるものが、本発明が関係する業界で知られている場合、かかる、周知の均等物もまた、個別に明示されているかのように、本明細書に含められるとみなすものとする。
【0017】
本発明は上記の中に存在し、かつ、以下に例のみが挙げられている構成もまた想定する。
【0018】
一態様において、インタフェースアセンブリはマスクアセンブリを含む。マスクアセンブリは内骨格(endoskeleton)を含む。内骨格は中央部分を含む。中央部分は、肩部を画定する溝によってその境界が定められる。シール部材が内骨格の少なくとも一部の上に重なる。シール部材は開口部を含む。内骨格の中央部分の少なくとも一部は、シール部材の開口部を通して前方に露出する。外骨格(exoskeleton)が、シール部材の少なくとも一部の上に重なる。外骨格は、開口部を画定するリムを含む。リムと肩部が嵌合して内骨格が外骨格に固定され、内骨格と外骨格の間にシール部材が固定される。内骨格の中央部分の少なくとも一部が、外骨格の開口部を通じて前方に露出する。
【0019】
いくつかの実施形態において、内骨格の中央部分は開口部を含み、呼吸チューブコネクタが内骨格の中央部分の開口部に固定される。いくつかの実施形態において、内骨格の中央部分は開口部を含み、窒息防止弁が内骨格の中央部分の開口部に固定される。いくつかの実施形態において、内骨格の中央部分は第一の開口部と第二の開口部を含み、呼吸チューブコネクタが第一の開口部に固定され、窒息防止弁が第二の開口部に固定される。いくつかの実施形態において、シール部材は、着用者の口の開口部と鼻の開口部をほぼ取り囲むように構成された顔面接触フランジを含む。いくつかの実施形態において、外骨格は、着用者の少なくとも鼻の先端を取り囲むように構成される。いくつかの実施形態において、マスクアセンブリの上側部分はほぼ三角形であり、マスクアセンブリの下側部分はほぼU字形である。いくつかの実施形態において、マスクアセンブリの寸法は側辺から側辺の長さより上から下の長さのほうが長い。いくつかの実施形態において、マスクアセンブリは、ほぼ水平に延びる平面よりほぼ縦方向の中央平面の周囲で撓み性が高い。いくつかの実施形態において、シール部材は、シール部材の開口部の境界を定めるフランジを含み、シール部材のフランジは内骨格の溝の中に位置付けられ、嵌合する内骨格と外骨格によって溝の中に固定される。いくつかの実施形態において、複数の取付部材が外骨格に固定される。いくつかの実施形態において、複数の取付部材のうちの少なくとも1つはテーパピンを含む。いくつかの実施形態において、テーパピンは、実質的に縦方向の正中面に対してほぼ平行に延びる。
【0020】
一態様において、ヘッドギアアセンブリは、半剛性のフレームと、軸方向に比較的非弾性のストラップの第一の集合を含む。軸方向に比較的弾性のストラップの第一の集合が軸方向に比較的非弾性のストラップの第一の集合に固定される。非弾性のストラップの第一の集合と弾性のストラップの第一の集合はフレームの第一の位置に固定される。軸方向に比較的非弾性のストラップの第二の集合がフレームの、第一の位置から離れた第二の位置に固定される。
【0021】
いくつかの実施形態において、このヘッドギアアセンブリは本明細書で開示されるマスクアセンブリのいずれとも使用できる。いくつかの実施形態において、非弾性のストラップの第一の集合と弾性のストラップの第一の集合は半剛性フレームに枢動可能に接続される。いくつかの実施形態において、非弾性のストラップの第二の集合は単一構成要素から一体に形成され、非弾性のストラップの第二の集合は半剛性フレームの第二の位置の下に重なり、それによって非弾性のストラップの第二の集合は患者と半剛性フレームの間に介在することになる。いくつかの実施形態において、その単一構成要素の寸法は半剛性フレームより大きく、それによってその単一構成要素によりタブを画定でき、また、その単一構成要素は半剛性フレームの1つまたは複数の縁辺を覆うことができる。いくつかの実施形態において、比較的非弾性のストラップの第一の集合と比較的非弾性のストラップの第二の集合の少なくとも一方は取付開口部を含み、この取付開口部はエンボス加工部によって取り囲まれる。いくつかの実施形態において、取付開口部は1つまたは複数の穴を含む。いくつかの実施形態において、取付開口部は1つまたは複数の十字型の穿孔を含む。いくつかの実施形態において、ヘッドギアアセンブリは、本明細書で開示されるマスクアセンブリのいずれかと組み合わされる。
【0022】
一態様において、インタフェースアセンブリはマスクアセンブリを含む。マスクアセンブリはシール部材を含む。シールアセンブリは顔面接触面を含む。顔面接触面の少なくとも一部は粗面を含む。rmsが少なくとも約18マイクロメートルである粗面。
【0023】
いくつかの実施形態において、粗面のrmsは約18マイクロメートル〜約70マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、粗面のrmsは約50マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、シール部材は顔面接触面を含み、顔面接触面の少なくとも一部は粗面を含み、粗面のrmsは少なくとも約18マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、粗面のrmsは約18マイクロメートル〜約70マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、粗面のrmsは約50マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、インタフェースアセンブリは本明細書に開示されるヘッドギアアセンブリのいずれかと共に使用される。いくつかの実施形態において、インタフェースアセンブリの粗面は、本明細書で開示されるその他のインタフェースアセンブリの他の特徴のいずれかと組み合わされる。
【0024】
一態様において、インタフェースアセンブリは、シール部材に連結されたマスク本体を含む。マスク本体は、外側前方に面する表面と、内側後方に面する表面を含む。通路がマスク本体を通って延びる。窒息防止弁が通路内に位置付けられる。窒息防止弁は少なくとも1つの内側部材と少なくとも1つの外側部材の間に挟まれる。
【0025】
いくつかの実施形態において、その少なくとも1つの内側部材は、マスク本体の少なくとも一部と一体に形成される部材を含む。いくつかの実施形態において、その少なくとも1つの内側部材は、マスク本体の少なくとも一部とモノリシックの構造である支柱を含む。いくつかの実施形態において、支柱は内骨格の少なくとも一部とモノリシックの構造である。いくつかの実施形態において、窒息防止弁は外側部材に据えられ、外側部材はマスク本体に固定される。いくつかの実施形態において、外側部材はマスク本体の内骨格に固定されるインサートを含む。いくつかの実施形態において、外側部材は少なくとも部分的に通路内に受けられる。いくつかの実施形態において、外側部材はマスク本体にスナップ式に嵌め込まれる。いくつかの実施形態において、外側部材は通路内にスナップ式に嵌め込まれる。いくつかの実施形態において、外側部材はマスク本体の、実質的に剛性の部分に固定される。いくつかの実施形態において、インタフェースアセンブリは本明細書で開示されるいずれかのインタフェースアセンブリの他の特徴のいずれかと組み合わされる。
いくつかの実施形態において、インタフェースアセンブリは本明細書で開示されるいずれかのヘッドギアアセンブリと組み合わされる。
【0026】
ここで、本発明の上記およびその他の特徴、態様、利点を、いくつかの好ましい実施形態の図面を参照しながら説明するが、これらの実施形態は例示のためであり、本発明を限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成された患者インタフェースおよび/またはヘッドギアと共に使用可能な加湿気道陽圧システムの概略図である。
図2】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェース本体の側面図である。図の本体は、使用者に装着された状態で示されているが、ヘッドギアまたは呼吸チューブは取り付けられていない。
図3図2のインタフェース本体の斜視図である。
図4図2のインタフェース本体のシール部材の外側の正面斜視図である。
図5図2の本体のインタフェースのシール部材の内側の背面斜視図である。
図6】シール部材の一部の概略断面図であり、シール部材の湾曲と膨張の態様を示す。
図7】シール部材の湾曲に関する特性のグラフ表示である。
図8】シール部材の一部の概略断面図であり、シール部材の別の湾曲と膨張の態様を示す。
図9】シール部材のプリロードに関する特性のグラフ表示である。
図10図2のインタフェース本体の支持部材の外側の正面斜視図である。
図11図2のインタフェース本体の支持部材の内側の背面斜視図である。
図12】支持部材の撓み性とシール部材の撓み性の相互作用に関する特性のグラフ表示である。
図13図2のインタフェース本体の変形形態を概して含み、本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたヘッドギアを使って使用者に装着された他のインタフェースの正面斜視図である。図のインタフェースは、呼吸チューブまたは供給導管が取り付けられた状態で示されている。
図14】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースの正面斜視図であり、呼吸ガス流入ポートがインタフェースの下側部分に配置され、流入ポートは使用者の顎の付近に位置付けられるようになされている。
図15】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースの上面図であり、インタフェースは1つまたは複数の屈曲モードで示されている。
図16】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成された他のインタフェースの正面斜視図である。インタフェースは、片側にだけ示されたヘッドギアストラップと共に描かれている。
図17】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースの正面斜視図である。インタフェースは、ヘッドギアストラップがない状態で描かれている。
図18】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成された支持部材を備える、図16と17のインタフェースと同様のインタフェースの一部の正面図である。
図19】本発明の特定の特徴、態様、利益に従って配置され、構成された支持部材を備える、図16と17のインタフェースと同様のインタフェースの一部の正面図である。
図20】本発明の特定の特徴、態様、利益に従って配置され、構成された支持部材を備える、図16と17のインタフェースと同様のインタフェースの一部の正面図である。
図21】本発明の特定の特徴、態様、利益に従って配置され、構成された支持部材を備えるインタフェースの正面斜視図である。
図22】本発明の特定の特徴、態様、利益に従って配置され、構成されたヘッドギアを使って使用者に装着された、図2のインタフェース本体を含むインタフェースの正面斜視図である。図のインタフェースは、呼吸チューブまたは供給導管が取り付けられた状態で示されている。
図23】呼吸チューブまたは供給導管がエルボコネクタでインタフェースに接続されている、本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースとヘッドギアの側面図である。
図24】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースの背面斜視図である。図のインタフェースは、拡散ポートを備えるプレナムスペースを含む。
図25】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースの背面斜視図である。図のインタフェースはサイクロン流誘起構成を含む。
図26】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースとヘッドギアの側面図である。
図27】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたヘッドギアを使って使用者に取り付けられた、図2のインタフェース本体の変形形態を概して含む別のインタフェースの正面斜視図である。図のインタフェースは、呼吸チューブまたは供給導管が取り付けられた状態で示されている。
図28】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースとヘッドギアの側面図である。図のヘッドギアは、一体型の弾性および非弾性ストラップを含む。
図29】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースとヘッドギアの側面図である。図のヘッドギアは、一体型の弾性および非弾性ストラップと背骨状部材を含む。
図30】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたヘッドギアの斜視図である。
図31】使用者に装着中の、インタフェースと図30のヘッドギアの斜視図である。
図32(a)-(d)】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースとヘッドギアのフィッティングのための一連のステップを示す。
図33(a)-(d)】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成されたインタフェースとヘッドギアのフィッティングのための一連のステップを示す。
図34図30の接続ストラップと第一のストラップ部の接合部を示し、第一のストラップ部が接続ストラップの少なくとも一部を覆うように延び、緊張の緩和と補強を行う。
図35】インタフェース・ヘッドギアアセンブリにより皮膚に加えられる圧力と、インタフェースからの漏出率の間の関係のグラフ表示である。
図36】圧力と漏出率の関係を調べるための試験システムの概略図である。
図37】本発明の特定の特徴、態様、利点に従って配置され、構成された、マスクアセンブリとヘッドギアアセンブリを含むインタフェースアセンブリの斜視図である。
図38図37のマスクアセンブリの拡大斜視図である。
図39図37のマスクアセンブリの正面図である。
図40図37のマスクアセンブリの背面斜視図であり、窒息防止弁と呼吸チューブが所定の位置から外されている状態で示されている。
図41図40に示されるマスクアセンブリの分解斜視図である。
図42図40に示されるマスクアセンブリの分解側面図である。
図43図37のマスクアセンブリと共に使用される内骨格の側面図である。
図44図37のマスクアセンブリの内骨格と外骨格の正面図であり、内骨格と外骨格が比較のために並べられている。
図45図37のヘッドギアアセンブリのフレームの、フレームを平らにした状態の平面図である。
図46図37の外骨格に関する、ヘッドギアアセンブリのストラップの差し込み角度を示す断面図である。
図47】内骨格と、ケージアセンブリを備える窒息防止弁の分解斜視図である。
図48図47のアセンブリの分解背面斜視図である。
図49図47のアセンブリの上面分解図である。
図50図47のアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
システムの全体像
図1を参照すると、加湿気道陽圧(PAP)システム100が示されており、患者Pまたはその他の使用者が患者インタフェース102を通じて、加湿、加圧されたガスを受けている。PAPシステム100は、持続、可変、またはバイレベル気道陽圧またはその他、いずれの適当な呼吸療法の形態とすることもできる。構成によっては、PAPシステム100は病院内人工呼吸器またはその他、いずれの適当な呼吸療法の形態とすることも、またはそれを含めることもできる。用途によっては、インタフェース102は非加湿型PAPシステムにも使用できる。
【0029】
インタフェース102は、たとえば加湿ガス輸送路を画定する導管または吸気用呼吸チューブ104につながる。導管104は加熱手段または加熱ワイヤ(図示せず)を含んでいてもよく、これはガスまたは導管の壁を加熱することによって導管内の加熱ガスの凝結を減少させる。
【0030】
導管104は、加湿室108の出口106につながる。加湿室108は好ましくは、ある量の水110を含む。加湿室108は好ましくは、プラスチック材料で形成される。構成によっては、加湿室は熱伝達率の高い基部(たとえば、アルミニウムの基部またはその他)を有し、これが加湿器114の加熱板112と直接接触する。
【0031】
加湿器114は適当なコントローラ116を含む。コントローラ116はいずれの適当なコントローラまたは制御手段であってもよく、電子コントローラとすることができる。
コントローラ116は、関連するメモリに記憶されたコンピュータソフトウェアの命令を実行するマイクロプロセッサに基づくコントローラを含んでいてもよい。
【0032】
コントローラ116は、たとえば、ただしこれに限定されないが、システム100の使用者が、たとえば、ただしこれらに限定されないが、患者Pに供給されるガスの湿度および/または温度の所望のレベルを表す数値(たとえば、事前設定値、入力値またはその他)を設定するのに使用できる使用者入力手段118(たとえば、ダイヤル、ボタン、その他)等の入力源からの入力を受信する。コントローラはまた、他の入力源(たとえば、コネクタ124を通じた温度および/または流速センサ120、122や、加熱板温度センサ126)からの入力を受信してもよい。
【0033】
使用者入力手段118を用いて入力可能な使用者の設定による湿度および/または温度の数値およびその他の入力に応答して、コントローラ116は、加湿室108内のある量の水110を加熱するために、いつ、どれだけエネルギーを加熱板112に供給するべきかを決定する。加湿室108内のある量の水110が加熱されると、加湿室108の、ある量の水110の表面より上の空間内に水蒸気がたまり始める。
【0034】
水蒸気は、ガス供給ブロワ128またはその他の適当なガス供給手段から供給されるガス(たとえば、空気)の流れであって、入口130から加湿室108に入るガスの流れと共に加湿室108の出口106から出る。患者の口から吐き出されたガスは、図1においては直接周囲環境中に流れ、あるいは治療が人工呼吸器によって提供される場合は、吐き出されたガスは呼気用呼吸チューブ(図示せず)を介して人工呼吸器に戻される。
【0035】
ブロワ128は、可変圧力調整器、可変圧力調整手段または、可変速度ファン132を含み、これはブロワの入口134から空気またはその他のガスを吸い込む。可変速度ファン132の速度は、コントローラ136が、コントローラ136への入力と、使用者入力手段138(たとえば、ダイヤル、ボタン、その他)を用いた、使用者の設定による、所定の、または事前設定された圧力またはファン速度の数値に応答して制御する。構成によっては、コントローラ136の機能をコントローラ116が実行してもよい。
【0036】
患者インタフェース102は一般に、マスクおよび関連のヘッドギアを含む。後述の患者インタフェースは、患者が速やかな人工呼吸治療を必要とすることの多い病院やその他の救急現場において特に有益である。これに加えて、このような現場での患者は、人工呼吸治療を長期間にわたり、しばしば期間中中断されずに受けることが多い。したがって、インタフェースは患者に速やかに装着されるように設計され、インタフェースはより快適となるように設計される。好ましくは、インタフェース・ヘッドギアアセンブリはまず、約25秒未満で装着でき、その一方で、インタフェースを通じた設定供給圧が約15cmHOのときの漏出率が約20L/分未満である。これに加えて、図35に示されるように、インタフェース・ヘッドギアアセンブリは好ましくは、インタフェースを通じた設定供給圧が約15cmHOのときに、漏出率が約15L/分未満、皮膚表面圧力が約22.5mmHg未満である。22.5mmHgの皮膚表面圧力は、長期間の治療による圧迫潰瘍の進行の可能性を低下させることにおいて臨床的に有意であることがわかっている。
約15L/分の漏出率は、加圧ガスの供給に使用される機器の安定性にとって妥当であることがわかっている。構成によっては、皮膚表面圧力を約18mmHg未満、漏出率を約11L/分未満とすることができる。
【0037】
図36を参照して、皮膚表面圧力と漏出率の測定方法を説明する。図36に示されるように、1つまたは複数のセンサ150を被験者Pの顔面に位置付けることができる。1つまたは複数のセンサ150は、インタフェース102の接触領域に沿って位置付けることができる。好ましくは、1つまたは複数のセンサ150は、治療中に圧迫潰瘍を進行させやすい領域(たとえば、頬骨から目の下と鼻梁を横切って延びる領域)に沿って位置付けられる。センサ150は圧力を感知するようになされる。構成によっては、センサ150は圧力トランスデューサである。好ましくは、センサ150は、約0mmHg〜約100mmHgの動作範囲を有する圧力トランスデューサである。より好ましくは、センサ150は、約0mmHg〜約50mmHgの動作範囲を有する圧力トランスデューサである。
センサ150はまた、好ましくは薄膜圧力トランスデューサである。構成によっては、センサ150の厚さは約0.5mm以下である。
【0038】
センサ150を被験者の顔面に位置付けて、インタフェース102を被験者の顔に、インタフェースがセンサ150の上に載るように取り付けることができる。圧力源128のスイッチを入れ、加圧ガスがインタフェース102を通じて被験者に供給されるようにすることができる。好ましくは、ガスは分析のために約15cmHOまで加圧される。インタフェース102は、ヘッドギアアセンブリ700によって加えられる張力で所定の位置に固定できる。好ましくは、ヘッドギアアセンブリ700を使って、インタフェースと被験者の顔面の目の領域との間の漏れを約ゼロまで低下させるのに十分な張力を加える。
試験のために、システム内にバイアス流を起こす穴を設けず(すなわち、システム内のバイアス流を起こす穴をすべて塞ぎ)、どのような漏れも通常インタフェースと被験者との間のみで発生するようにする。
【0039】
インタフェースが張力で被験者の顔面に当てられ、圧力源から約15cmHOの圧力のガスが供給されている状態で、被験者は呼吸を止め、加圧されたガスがインタフェース102と被験者Pの顔面との間の密着部から漏れるようにする。流量計152を使って漏出率を測定できる。流量計152は人工呼吸器またはその他の陽圧ガス供給源と一体であっても、または流量計152は別の構成要素であってもよい。好ましくは、流量計152は約0L/分〜約200L/分の範囲で動作可能である。
【0040】
加圧ガスの漏出中、インタフェースと被験者の顔面の間の漏出率と圧力をモニタすることができる。ピーク漏出率とピーク圧力を記録した後、ヘッドギアアセンブリ700により提供される張力を調節(たとえば、増大)でき、その他のデータセットを取得することができる。複数のデータポイントを用いて、そのインタフェースについての皮膚圧力と漏出率を反映した安全使用可能範囲(performance envelope)を導き出すことができる。複数の被験者を使って、複数の読取り値を収集することができる。
【0041】
露出させた鼻マスク
ここで図2を参照すると、図のインタフェース102はインタフェース本体200を含み、これは通常、柔軟なシール部材202と、支持部材204と、を含む。図2において、インタフェース102は患者Pに載せられた状態で示されており、ヘッドギアまたは呼吸チューブ接続手段は取り付けられていない。後述のように、インタフェース102の外観の少なくとも一部は好ましくは、少なくとも1つの人の顔要素を実質的に再現したものの外観を有する。構成によっては、インタフェース102の外観の少なくとも一部は、少なくとも人の鼻を実質的に再現したものを含む。
【0042】
図2に示されるように、図のインタフェース102は、患者Pまたはその他の使用者の鼻Nと口の両方を覆うフルフェイスマスクである。インタフェース102は、用途に応じた大きさとすることができる。換言すれば、インタフェース102は、約2歳児から上の様々な年齢の患者またはその他の使用者による使用に対応できる、各種の大きさで提供できる。インタフェース102は、患者の顎から鼻梁までの測定値に基づく大きさとすることができる。好ましくは、連続するインタフェースの各サイズで対応可能な大きさ範囲は、約3mm〜約7mmだけ重なる。より好ましくは、サイズ間の重複は約5mmである。
たとえば、3種のインタフェースサイズを顎から鼻梁までの測定値を基準として提供でき、すなわち、その測定値が約110mmまでの人用の小またはサイズ1、その測定値が約105m〜約130mmの人用の中またはサイズ2、その測定値が約125mm〜約145mmの人用の大またはサイズ3である。有利な点として、測定値の範囲が1つのサイズから次のサイズの間で重複することにより、その重複部分に当てはまる1人の人がそれらのサイズを2つとも使用でき、これによって患者がサイズ間のギャップに当てはまることがなくなる。他の測定方法も使用できる。
【0043】
インタフェース102の外面は好ましくは、手になじむ形状であり、それによってインタフェース102を患者に取り付ける人物による操作性が改善する。好ましくは、図のインタフェース102の形状により、医療従事者はフィッティング中にインタフェース102の顎の領域を持つように誘導される。この位置を持つことによって、インタフェース102のフィッティング中に医療従事者の手が、患者の目の領域に近づかないことになり、これは、フィッティング中に患者をよりリラックスさせることができる。これに加えて、鼻を再現した突出部分は患者への正しい位置付けを明瞭に示し、正しい位置に関する重要な視覚的および触覚的手掛かりを提供し、これによってマスクの装着と使用が非常に容易で直感的となる。
【0044】
好ましくは、インタフェース102は高さが低く、顔面の高低にほぼ適合する。これによって、患者によるマスクへの意識が最小限となり、また圧縮可能な内部空間が極小化され、これによってインタフェース102は人工呼吸器での使用に特に適したものとなる。
高さの低いインタフェース102は好ましくは、患者の視線から外れ、患者の周辺視覚にわずかな影響しか与えない。これに加えて、先行技術と比較して、高さの低いインタフェース102では、インタフェース内に画定される圧縮可能な空間が小さくなり、その一方で、再呼吸の可能性のあるCOの体積も減少し、そのどちらも、より望ましいインタフェース構成と改善されたインタフェース性能をもたらす。
【0045】
柔軟なシール部材
ここで図2、4、5を参照すると、柔軟なシール部材202はインタフェース200の、患者Pの顔面と接触する構成要素である。シール部材202は好ましくは、膨張型または風船様シールのタイプである。膨張型または風船様シールのタイプは、使用時にインタフェース102に供給されるシステム圧力または空気流が、内側に延びるフランジ、スカート、またはその他同様の部材を患者の顔面へと付勢して、実質的な密閉状態を形成するように作用するシールのタイプである。それゆえ、膨張型または風船様シールのタイプは、ヘッドギアからのインタフェース保持力のみを利用して、患者の顔にクッションを当てて、そのクッションを患者の顔要素に密着させるのに十分な力で押し付け、または変形させるシールのタイプとは異なる。
【0046】
適当な膨張型または風船様効果を提供するために、図のシール部材202は、周辺縁206と、周辺縁206から内側に延びる密着フランジ208と、を含む。好ましくは、密着フランジ208は周辺縁206の全部または実質的に全部から内側に延びる。後述のように、周辺縁206は好ましくは、丸まった縁辺を含む。
【0047】
図5を参照すると、図の密着フランジ208は延長面210を含み、その少なくとも一部が患者Pの顔の皮膚表面と接触することになる。延長面210は、その一方の端部が周辺縁206に接続されて、ポケット状の構造を画定し、これが空気供給手段からの空気と圧力を捕捉して、インタフェース本体200のフランジ208を患者Pの顔面に向かって所望の程度まで付勢する。密着フランジ208は、図のシール部材202の密着部212の少なくとも一部を画定できる。密着部212は使用時に患者に面し、または患者に最も近くなる。図6を参照すると、図のシール部材202の密着部212は、湾曲した縁辺またはアールの付いた縁辺により画定可能な周辺縁206においてシール部材202の包囲部214に接続できる。
【0048】
好ましくは、密着部212は包囲部214より実質的に柔軟である。密着部212は、たとえば、ただしこれに限定されないが、包囲部214と同じ材料で形成できるが、密着部212の厚さを包囲部214より薄くすることができる。いくつかの実施形態において、密着部212には包囲部214に関して異なる材料、たとえばシリコーン、熱可塑性エラストマ、または発泡材(たとえば、スキン層を含む連続気泡または独立気泡)を用いてもよい。使用時には、密着部212は患者Pの顔面に載り、膨張型シールの内圧とヘッドギアの保持圧を受けて、密着部212が患者Pの顔面に押し付けられ、周辺縁206の内側に有効な密着部が作られる。
【0049】
図4を参照すると、周辺縁206は一連の半径Rによって画定可能な形状を含む。半径Rは、湾曲した周辺縁206の外面に合わせて画定することができる。それゆえ、湾曲した周辺縁206の最も外側部分は一連の半径Rによって画定される平面図の形状を有する。これに加えて、図6に示されるように、湾曲した周辺縁206は厚さ(t)と内側半径(R)によって画定できる。図7は、特定の区分における周辺縁206の湾曲部の内側半径に対するその特定の区分における周辺縁の壁厚の比(R/t)(以下、壁比という)と、周辺縁206の特定の区分の特定の半径Rに対する周辺縁のその特定の区分における周辺縁206の湾曲部の内側半径の比(R/R)(以下、湾曲比(roller over ratio)という)との間の望ましい関係を示す。図のように、壁比が約4以下の場合、シール部材202の周辺縁206は、その特定の区分において、所望のように湾曲せずに潰れる可能性があることがわかった。これに加えて、壁比が約7以上であると、その特定の区分において硬すぎて、所望の湾曲が起こらない可能性のある構成となることがわかった。さらに、半径比が約10以上であると、シール部材202のその特定の区分は直線的すぎて、所望の湾曲が起こらないことがわかった。それゆえ、図7に網掛けで示される領域は、周辺縁206に関する所望の湾曲が可能な領域である。周辺縁206は、これが平面図において一連の半径によって画定されるため、所望の湾曲可能性を有する領域内に位置付けられる様々な区分を有していてもよい。好ましくは、周辺縁206の少なくとも上側部分(すなわち、使用時に、ほぼ目の方向に漏れるであろう部分)は、所望の湾曲可能性を有する領域内に完全に含まれるような寸法で構成される。換言すれば、好ましくは、これらの区分は次の2つの等式、(1)4≦(R/t)≦7と、(2)(R/R)<10を満たす。構成によっては、少なくとも、シール部材202の鼻部と、シール部材202の、頬骨に向かって延びる横方向の延長部分は、少なくともこれらの区分が所望の湾曲可能性を有する領域内に含まれ、上記の等式を満たすような寸法(すなわち、湾曲半径、平面半径、壁厚)で構成される。構成によっては、少なくともシール部材202のうち、ヘッドギア取付位置と交差するほぼ水平な平面より上にある部分は、少なくともこれらの区分が所望の湾曲可能性を有する領域内に含まれ、上記の等式を満たすような寸法(すなわち、湾曲半径、平面半径、壁厚)で構成される。構成によっては、シール部材202の周辺全体が、各区分が所望の湾曲可能性を有する領域内に含まれ、上記の等式を満たすような寸法(すなわち、湾曲半径、平面半径、壁厚)で構成される。
【0050】
好ましくは、密着部212は、シール部材212が包囲部214に関して鋭角をなす程度まで内側に湾曲する。さらに、図8を参照すると、フランジ208が患者Pの皮膚表面と接触した状態で示されている。図のように、フランジ208のうち、図の配置において周辺縁206から最も遠くに位置付けられる端である第一の接触点216に関して、半径Rの始点は約0mm〜約40mm以上の距離218の地点とすることができる。図9のグラフに示されているように、周辺縁206の周囲の位置を問わず、(1)距離218(すなわち、第一の接触点216と半径Rの始点との間の距離)と、(2)フランジ208と皮膚表面との間の角度であるプリロード角度θとの間に関係があると考えられる。プリロード角度は図9のグラフに示されるようにすることができ、このグラフは経験的に作成されている。この関係によれば、フランジ208はスムーズに湾曲して、患者Pの顔面に押し付けられることができる。図9に示されているように、患者Pの皮膚上の接触長さを長くすると接触角をより小さくすることができ、これは、接触長さが長いとフランジの自由端の突出度合を縮小できることを示している。反対に、フランジの自由端がより突出すると、より短い接触長さにわたって十分な密着が得られる。構成によっては、長さ218は、患者の顔面形状の変化に基づいて選択できる。換言すれば、またあくまでも例として、多様な使用者群のためのワンサイズのマスクを実現するために、フランジは、顔の寸法のばらつきが最も大きい顎領域においてより長く、フランジは、同じ人種において寸法における形状のばらつきがより少ない鼻領域ではより短い。鼻梁の寸法は人種によって異なる可能性がある。所望の長さを決定したところで、漏出の可能性を低減させるための角度を決定できる。
【0051】
上述したように、第一の接触点216は、フランジ208の端が少なくともいくつかの場所において外側に突出するために生じる。いくつかの実施形態において、フランジ208の自由端はインタフェース本体200のうち、患者Pの顔面と最初に接触する面である。フランジ208の距離218は好ましくは、患者の顔面に向かって約0mm〜約10mmだけ延びる。いくつかの実施形態において、突出は約3mm〜7mmである。
【0052】
有利な点として、フランジ208は患者の顔面に向かって出るため、フランジ208の自由端またはフランジ208の他の部分は、患者の顔面と接触した後、通常の位置から内側に湾曲し(すなわち、内側に曲げられ)、その量はマスクが患者の顔面とより関密に接触するように付勢されるのにつれて漸進的に増大する。それゆえ、フランジには装着中にプリロードがかけられ、これによってシールは多様な顔の骨格と高低によりよく適合でき、ひいては、インタフェース本体200の密閉性能が改善する。
【0053】
図のシール部材202は膨張型または風船様シールのタイプであるため、シール部材202は皮膚への圧力を極小化する役割を果たす。これに加えて、シール部材202は、圧力を分散させ、圧力分布が過剰に局所化する可能性を低減させる役割を果たす。換言すれば、図のシール部材202は点負荷または過剰な圧力勾配の可能性を低くする。
【0054】
図2を再び参照すると、シール部材202は患者Pの鼻Nと口を取り囲んでいるように示されている。シール部材202は、図4と5に示されるように、人の鼻を実質的に再現したものとなるような形状の鼻部220を含む。好ましくは、鼻部220はシール部材202の上側部分である。図の構成では、鼻部220の少なくとも外面が、人の鼻を実質的に再現したものを含むような形状である。好ましくは、鼻部220の外面と内面は人の鼻を実質的に再現したものを含むような形状である。特に、図の構成では、鼻部220は鼻の形状の実施質的部分を再現している。それゆえ、鼻部220は鼻の形状の大部分を再現している。
【0055】
いくつかの実施形態において、シール部材202の鼻部220は、鼻全体またはほとんど鼻全体を再現している。図の実施形態の鼻の形状は、特定の患者に適合するのではなく、一般化された鼻の形状となる。図の鼻部220は鼻梁222を含む。図の鼻部はまた、鼻翼224またはその他同様の要素を含んでいてもよい。好ましくは、鼻部220は、人の鼻を再現し、人の鼻と類似する(semblance)のに十分な要素を模倣する。しかしながら、いくつかの実施形態において、シール部材202は、人の鼻を受けることができるが、鼻の外観を実質的に再現したものとはならないようなポケットまたは鼻用空間226を形成する形状の部分を含んでいてもよい。換言すれば、シール部材202はたとえば、ただしこれらに限定されないが、立方体の形状に近い、または実質的に半円柱の形状の鼻部を有することができる。
【0056】
鼻部220の中に画定される鼻用空間226は好ましくは、一般的な鼻より大きく、鼻部220の内部の中に様々な使用者の鼻を収容できる。好ましくは、シール部材202は中隔突出部228を含む。中隔突出部228は、中隔領域の中で前方に(すなわち、着用したときに顔と反対に)延び、シール部材202の内側の、患者の鼻中隔の領域に拡張凹部を画定する。シール部材202はまた、好ましくは、上唇の中心の付近に位置付けられた上唇突出部230を含む。中隔突出部228と上唇突出部230の1つまたは複数を提供することによって、鼻用空間226はこれらの位置において拡張され、シール部材202の中の隙間が大きくなる。
【0057】
図5を参照すると、図のシール部材202の密着部212は一般的な顔の形状に実質的に適合するような形状とすることができる。図の構成において、フランジ208を含む密着部212は中空領域232を含む。中空領域232は患者の顎を収容できる。中空領域232は、フランジ208の一部に沿って顎を受けることができる。引き続き図5を参照すると、フランジ208を含む図の密着部212はまた、鼻梁のための谷部234も含む。谷部234は、ほぼC字形またはU字形の湾曲壁を含むことができる。
【0058】
引き続き図5を参照すると、フランジ208を含む図の密着部212は、患者の顎の付近に位置する中空領域232と患者の鼻梁の付近に位置する谷部234との間に延びる、湾曲した頬部236を含む。湾曲した頬部236は、中空領域232の付近に繋がることができる。これに加えて、谷部234は湾曲した頬部236間に延び、構成によっては、これらを分離し、接続する。
【0059】
図4は、シール部材202の外側の図である。この外側の図は、包囲部214をよりよく示している。図の構成では、シール部材202には頬部238と、顎部240と、鼻部220が組み込まれている。頬部238は好ましくは、鼻部220から横方向に外側に広がる。使用時に、頬部238は鼻領域から外側に、患者の頬骨突起に向かって延びる。頬部238はまた、側部239とともに顎部240に向かって下方に延びる。それゆえ、頬部238は口角の外側の位置において、患者の下顎に向かって延びる。
【0060】
再び図4と5を参照すると、シール部材202は、シール部材の外面から内面へと延びる開口部242を画定する。開口部242は、インタフェース本体200の使用中に患者の口が位置付けられることになる位置に、またはそれより下に位置付けることができる。
いくつかの実施形態において、開口部242は鼻用空間226より下に位置付けられる。
開口部242は、中隔突出部228より下に位置付けられると説明できる。開口部242はさらに、上唇突出部230より下に位置付けられると説明できる。さらに、開口部242は、患者の顎を収容する中空領域232より上に位置付けられると説明できる。それゆえ、開口部242は、患者の口の予想位置と患者の顎の先端との間に位置付けることができる。開口部242は好ましくは、シール部材202の正中面に沿って位置付けられ、この正中面はほぼ、シール部材202を右半分と左半分に二分割する。後述の理由により、図の開口部242はシール部材の、ほぼ平坦な平面部244の上にある。
【0061】
支持部材
再び図2を参照すると、支持部材204はシール部材202の一部と重複する。支持部材204は柔軟なシール部材202より実質的に剛性であり、それによって支持部材204は柔軟なシール部材202を支持する。しかしながら、支持部材204は依然として、ある程度撓み性があり、支持部材204は好ましくは完全に剛性ではない。構成によっては、支持部材204はたとえば、ただしこれらに限定されないが、厚さ約1mmのポリプロピレンまたはポリエチレンプラスチック材料のシートと同等の硬さである。
【0062】
図のように、支持部材204は周辺縁250を含む。周辺縁250は、シール部材202の周辺縁206と同様の形状を有していてもよいが、切欠き252が広がり、広がっている距離が周辺縁205の長さの中に含まれる場合、周辺縁250の長さは好ましくは、シール部材の周辺縁206より短い。換言すれば、支持部材204の周辺の全長は好ましくは、シール部材202の周辺の全長より短い。シール部材202の周辺に鼻部220の上側部分が含まれることによって、支持部材の周辺の全長は(切欠き252の寸法を含んでいても)、支持部材204の周辺縁206の全長より短い。
【0063】
構成によっては、シール部材202は、すべての位置において支持部材204より外にはみ出す。図6に示されるように、半径Rは、支持部材204の周辺縁250からシール部材202の湾曲部の外面までの間に画定される間隔ROが約3mm〜約6mmとなるように画定できる。
【0064】
図10と11に示されるように、図の支持部材204は高低差のある板状の外観を含む。換言すれば、支持部材204は立体であるが、起伏の程度は高くない形態を有する。好ましくは、支持部材204の起伏の最大深さは、平均的な成人用インタフェースのインタフェースサイズにおいて約50mmおよび約65mm未満である。
【0065】
周辺縁250の、そうでなければほぼスムーズで連続的な外観は、上側切欠き252によって中断される。切欠き252は患者の鼻領域に位置付けられる。それゆえ、図2に示される実施形態では、支持部材204は人の鼻に似た部分を含まない。人の鼻の部分を含まないことによって、支持部材204は改善されたバルク撓み性(bulk flexibility)を有する。その代わりに、人の鼻の形状はインタフェース本体200のシール部材202または他のいずれかの構成要素によって画定される。切欠き252により、支持部材204の撓み性が増す。それゆえ、頬骨の角度が異なると、支持部材204が若干撓んで患者によりよくフィットする。
【0066】
図の構成において、シール部材202の鼻部220は支持部材204の上側切欠き252から突出する。図に示された支持部材204の切欠き252の形状は鼻部220シール部材204の形状を収容するものである。切欠き252は、支持部材204の鼻部を取り除くことによって、支持部材204は前後の曲率が最小限の形状となる(すなわち、支持部材204は形成された状態で、高さが低く、起伏の深さが浅い)。
【0067】
全体的な印象では、図の構成はフルフェイスインタフェースを提供し、これは人の形状に似ていながら、シール部材202の包囲部214を支持することによってシール部材202の膨張の制御を助ける機能を果たす。使用時のインタフェースの外観は、部分的に人に近く、これによって患者と、インタフェースを使用中の患者を見る人々の感情的な反応が改善される。重要な点として、これは患者によるインタフェースの受入を改善し、それによってコンプライアンスも改善される。
【0068】
切欠き252は好ましくは、支持部材204の周辺縁250から内側に延びる凹部を画定する。図の構成では、切欠き252はインタフェース本体200の中心または少なくとも支持部材204の中心に向かって内側に延びる。切欠き252は、中隔を収容するための、切欠き延長部251を含んでいてもよい。希望に応じて、切欠き252を他の適当な形状とすることもできる。構成によっては、切欠き252は、上唇の中央部分をさらに収容するための支持部材204の内側の谷部を画定する隆線253の上に位置付けてもよい。
【0069】
図の支持部材204において、切欠き252の側面には、切欠き252によって分離される1対の上方延長部254がある。好ましくは、上方延長部254は支持部材204の最上部を画定する。より好ましくは、上方延長部254は、非常に撓み性の高いシール部材202の部分を除き、インタフェース本体200の最上部を画定する。
【0070】
図2を参照すると、患者Pの鼻Nが破線で示されている。鼻Nは、シール部材202の鼻部220によって画定される空間226の中に突出し、その一方で支持部材204の切欠き252は鼻Nの下の位置において正中面と交差する。支持部材204の上方延長部254は鼻の基部Bをより上まで延びる。図の構成において、上方延長部254は、インタフェース本体200の、患者Pの鼻Nの先端を収容するように設計された部分より上まで延びている。
【0071】
切欠き252の側方辺縁は鼻Nの外側縁に沿って延び、それによって柔軟なシール部材202は頬骨に沿って延びることができ、また支持部材204は頬骨領域においてシール部材202を補強できる。患者Pの頬骨の上にインタフェース本体200を支持することによって、患者Pが体験する快適さの程度が大幅に改善される。
【0072】
上方延長部254はまた、安定化機能を提供し、少なくとも部分的に、患者の顔の中央部分に図のマスクを安定化させるための手段を画定する。特に、上方延長部254は頭がい骨の上顎骨の位置に大まかに対応し、またはそれと重複する。
【0073】
支持部材204は、人の顔の一般的な下側部分にほぼ適合する。したがって、また図10と11を参照すると、支持部材204の外面256はほぼ凸状の外観を有し、その一方で、支持部材204の内面258はほぼ凹状の外観を有する。支持部材204の内面258は、シール部材202の外面にほぼ適合する。支持部材204の顎部260は、支持部材204の内面258に沿って中空の凹面を含むことができる。これに加えて、1対の頬部262の各々は支持部材の内面258に沿った中空の凹面を含む。
【0074】
支持部材204の周辺縁250はほぼ頬部262の外側から顎部260の外側に延び、患者の顎の線の内側にほぼ追従する。したがって、図の支持部材204の周辺縁250は患者Pの顎まで延びる。好ましくは、支持部材204の下側部分264は、患者Pの顎の下に引っ掛かる。患者Pの顎の下に引っ掛かることによって、支持部材204は、シール部材202が患者Pの顔のこの領域を密閉するのを支援する。図の支持部材204は、シール部材202を裏打ちし、シール部材202包囲部214によって画定される空間を補強する、ある範囲にわたる材料を画定する。構成によっては、支持部材204は、シール部材202の一部をほぼ取り囲む補強リムを画定する。
【0075】
図2と3に示されるように、インタフェース本体200は概して、使用者の顔の下半分の一般的形状を再現する。インタフェース本体200は、上端において鼻を覆うことができる。構成によっては、インタフェース本体200は、鼻軟骨の上に延び、両目間に位置付けられる骨である鼻骨の少なくとも一部と重複するようになされる。少なくともシール部材202は、着用者の頬骨に向かって外側に延びる翼状部を含んでいてもよく、それによってシール部材202は頬骨に追従するように外側に延びる。インタフェース本体200は、顎の線に追従して延び、支持部材204の下側部分264が顎の下に引っ掛かる地点に至る。
【0076】
引き続き図10と11を参照すると、支持部材204はまた、ほぼ中心に位置する開口部266を含む。開口部266は、ほぼ切欠き252の下に位置付けられる。好ましくは、開口部266はインタフェース本体200の正中面に沿って位置付けられ、これは図のインタフェース本体200を実質的に対称な左半分と右半分の両側に分割する平面である。図の構成では、開口部266と切欠き252はどちらも正中面に沿って位置付けられている。正中面は、開口部266と切欠き252と交差し、好ましくは二等分する。
【0077】
支持部材204の開口部266は好ましくは、位置の点で、シール部材202を貫通して画定される開口部242に対応する。開口部242は、図4と5により明瞭に示されている。開口部242は、シール部材202の顔側に画定される空間への呼吸ガスの入口と出口の位置となる。開口部242は、平らな平面部244に設置されることによって、供給用呼吸チューブをシール部材202に好都合に接続し、密閉しやすくなる。支持手段204はまた、開口部266の領域において、供給用呼吸チューブの接続手段(たとえば、エルボコネクタまたはその他の構成のコネクタ)を支持するように構成されていてもよい。
【0078】
架橋部
図13を参照すると、支持部材204のいくつかの実施形態はまた、架橋部300を含んでいてもよく、これは少なくとも、切欠き252の領域においてシール部材202を覆うように延びる。それゆえ、いくつかの実施形態において、架橋部300は鼻部220の領域でシール部材202の周辺縁206の付近に位置付けられてもよい。架橋部300はこの領域において、膨張するシール部材202のための追加の支持手段となることができる。追加の支持手段は、鼻の脇に沿って空気が漏れる可能性を低減させるのに有益となりえ、この空気の漏れは空気をほぼ患者の目の付近へと導く可能性がある。
【0079】
図14を参照すると、この実施形態の架橋部300は、シール部材202の周辺縁206の付近でシール部材202を覆うように延びる。図14に示される架橋部300は好ましくは、約5mm〜6mmの幅である。図14の実施形態では、支持部材204とシール部材202の撓み性が増大し、これによって着用者の顔の形状に対する適合性がより大きくなる。換言すれば、支持部材204の曲げ剛性が低くなり、それによってインタフェース200は、ヘッドギアのストラップにより加えられる保持力を受けると撓み、その一方で架橋部300が鼻部220において、またはその付近でシール部材202を支持する。
架橋部は、鼻梁においてシール部材202が歪む可能性を低下させるのに役立ち、このような歪みは、ほぼ目の付近へと導かれる空気の漏出の原因となりうる。
【0080】
引き続き図14を参照すると、マスクの反対側が静止した状態に保持されている間に横方向に負荷302がかけられると、インタフェース200は正中面周囲で撓む。図の実施形態において、撓むことによってインタフェース200の全体の幅が縮小する。力302は、インタフェース200の頬部262の付近の位置にかけられる。好ましくは、力302が約1Nの大きさであるとき、力302の方向に対してほぼ平行に測定した場合、それによって少なくとも4mm、またはより好ましくは少なくとも約5mmの変位が生じる。
ヘッドギアは概して、矢印の方向に力302をかけないが、インタフェース本体200には上記の撓みが見られることがわかった。また、撓みは、シール部材202が広い範囲の顔面形状によりよく密着するのに役立ちうることもわかった。
【0081】
好ましくは、撓みまたは屈曲は正中面付近で起こる。いくつかの実施形態において、インタフェース200は、インタフェース200の顎骨領域と比較して(すなわち、下側部分)と比較して、インタフェース200の頬部領域(すなわち、上側部分)でより撓み性が高く、または変形可能である。このような撓み領域の違いは、切欠き252によって実現される。このそれゆえ、切欠き252を利用して、解剖学的なばらつきがより大きいと予想され、顔が不快に対してより敏感な頬骨領域において、より大きく変形可能なインタフェースを提供できる。
【0082】
ここで図15を参照すると、インタフェース200は、使用時に一般的に遭遇するヘッドギアからの力を受けて、最大約20度まで撓むことができる。たとえば、図15はシール部材202と支持部材204を含むインタフェース200を示している。支持部材204は好ましくは、実質的に正中面Mの周囲で十分に撓んで変形する。図15において上から下に見た図から示されているインタフェース200は、図14では斜視図で、また図23では側面図で示されている。図のように、図のインタフェース200は、図15の上から下に見た図から、ほぼ三角形の外観を有する。これに加えて、この図の中の三角形の底辺308に沿って凹部306が形成されている。もちろん、凹部306は患者の鼻の少なくとも一部を収容するように構成される。図23の側面図では、インタフェース200はほぼ四角錐または角錐台の形状を有する。構成によっては、横から見たときに、インタフェースに沿って大きな凹部は認められない。図の構成により、ほぼ水平にのびる平面の周囲の撓み性と比較して、ほぼ縦方向の正中面の周囲の撓み性のほうが有意により大きいインタフェースが得られる。さらに、図の構成により、上から下までの長さが最も外側の頬部から最も外側の頬部までの幅より長く、その上側周囲面310がほぼ三角形であり(すなわち、頬部間に延びる周囲面の上側部分が前から見るとほぼ三角形である)、その下側円周面312がほぼ三角形である(すなわち、頬部間に延びる円周面の下側部分が前から見るとほぼ三角形である)インタフェースが得られる。上側周囲面がほぼ三角形であり、下側周辺面がほぼ三角形であり、それと共に鼻部と顎部が頬部に関して窪んでいることにより、水平に延びる平面の周囲の撓み性と比較して、縦方向の正中面の周囲の撓み性が有意に高い構成が得られる。
【0083】
図15に示されているように、インタフェース200の左側を固定して運動の可能性を低減させ、力304を加える。好ましくは、力304は、ほぼ頬骨部に対応する、インタフェース200の略最も広い地点に加える。力304が加わると、インタフェース200は好ましくは、角度αが角度βに変化する(すなわち、角度の変化がα−βとなる)ように変形する。一実施形態において、力304が3Nの大きさで加わると、αからβへの変化は少なくとも約10度である。より具体的な実施形態において、使用時のインタフェースについて一般的なストラップの力によって、略α−β=10°〜50°の変形が生じうると考えられる。別の実施形態において、ストラップが4本使用されると仮定して、ストラップ1本につき約1.5N〜約15Nという一般的なストラップの力で、α−βは少なくとも約10°〜30°である。
【0084】
一実施形態において、1Nの大きさの力304は少なくとも約5mmだけインタフェース200を変形させることができる。別の実施形態において、3Nの大きさの力304は、インタフェース200を約5mm〜約50mmだけ変形させることができる。また別の実施形態において、3Nの大きさの力304は、約15mm〜約25mmだけインタフェース200を変形させることができる。
【0085】
使用時に、支持部材204の歪みは、インタフェースの形状を開閉するために起こしてもよい。いくつかの実施形態において、インタフェース200をある量だけ開くために加えられる力は、同じ量だけインタフェース200を閉じるために加えられる力より小さくてもよい。たとえば、一実施形態において、力304と反対方向に加えられる力(すなわち、開く力)の大きさが1Nであると、インタフェース200を少なくとも約3mm変形させることができる。別の実施形態では、3Nの大きさの開く力により、インタフェース200は約3mm〜約25mm変形できる。また別の実施形態において、3Nの大きさの開く負荷により、インタフェースは約10mm〜約20mm変形できる。
【0086】
図12を参照すると、支持部材204の撓み係数とシール部材202の撓み係数を相互に関係付けることができる。図12のグラフに示されるように、シール部材202を形成する材料の撓み係数は好ましくは、約15MPa未満である。約15MPaを有意に超えるレベルでは、シール部材202は硬すぎ、すなわちは剛性が高すぎることがわかった。
これに対して、支持部材204の撓み係数は好ましくは、約480MPa未満である。約480MPaを有意に超えるレベルでは、支持部材204は硬すぎ、すなわち剛性が高すぎることがわかった。これに加えて、支持部材24の曲げ弾率性は好ましくは約50MPaを上回る。これに加えて、約50MPaを有意に下回る場合、支持部材204は過剰に撓む。最後に、支持部材204とシール部材202の両方に望ましい撓み特性の画定において、所望の相互関係は図12に示される網掛け範囲内に見られることがわかった。
【0087】
撓み性のインタフェース支持手段
従来、インタフェースを患者の顔面に密着する能力は、患者の顔面形状に適合させる難しさが障害となっていた。インタフェースを患者の特定の顔面形状に正確に適合させることができないことにより、インタフェースのシールと患者の顔面との間に過剰な漏れが発生する。先行技術のインタフェースの構成では、ヘッドギアをきつくすることによって、インタフェース上の力のベクトルは、患者の顔面のシール接触面に不均一な負荷がかかるものとなりうる。シール接触面に不均一な負荷がかかると、ある箇所での圧力点と別の箇所での圧力不足が生じる可能性がある。圧力点は患者の皮膚に刺激を与える可能性があり、その一方で、圧力不足の箇所は漏れにつながる可能性がある。
【0088】
図16〜21を参照すると、インタフェース200が患者の顔に適合し、より均一にそれと密着する能力を高めるような構造を提供するインタフェース200の複数の実施形態が示されている。この構造ではまた、インタフェース200が様々な顔の形状に適合する能力も高くなる。好ましくは、インタフェース200に複合的な構成を適用することによって、シールの圧力の分散を格段に均等とすることができる。それゆえ、インタフェース200は撓んだりよじれたりして、異なる顔面形状に対応でき、その一方で、シール部材202が支持部材204と顔との間で膨張し、または風船様になることができ、それによって、ヘッドギアをフィッティングするための力がシール部材と皮膚との間でインタフェースにより均一に分散される。
【0089】
図16に示されるように、患者インタフェース200は、前述のような柔らかい柔軟なシール部材202と、支持部材204と、を含む。シール部材202は、使用時に鼻と口を覆い、シール部材202の周辺縁206に沿って、顔の周囲と密着するようになされている。ほとんどの部分について、図16に示されるインタフェース200は、図2に示され、この図に関して説明されたインタフェース200と同じである。特に、後述の図16〜21の特徴はたとえば、本願の別の箇所に含まれる説明に従って配置され、構成されるインタフェース200に利用できる。
【0090】
追加の支持部材404がシール部材202または支持部材204の上に設置されて、シール部材202を支持する。支持部材404とシール部材202は壁が薄く、シール部材202が支持部材404の下にぴったりと適合するように相補的な形状となるように形成される。好ましくは、少なくとも一実施形態において、支持部材404とシール部材202の外側の輪郭または形状は実質的に、一般的な顔の高低に追従し、それによってインタフェース200が比較的低い高さの構成要素を含む。いくつかの実施形態において、患者インタフェース200は大きさと寸法において、より一般的であってもよい。
【0091】
支持部材404は、支持部材404に接続された中央ハブ部470を含む。構成によっては、中央ハブ部470は、シール部材202に直接接続することができる。ハブ部470から、複数の変位可能部材472、すなわち「指状片」が外側に放射状に延び、これらは端部においてスペース490で離間されている。変位可能部材472は好ましくは、ハブ部470から片持ち式であり、周辺縁206に向かって外側に延びる。変位可能部材472は好ましくは、その下のシール部材202に剛性に接合または結合されず、それによってシール部材202または、支持部材204がある場合は、支持部材204と変位可能部材472との間で相対的な摺動運動が発生する。
【0092】
いくつかの実施形態において、変位可能部材472は片持ち式ではなく、弾性的に蝶着されていてもよい。このような構成では、変位可能部材472は、(インタフェース200の着用時に、顔に対して)実質的に前から後ろの方向に、相互に関して移動可能であり、それによってヘッドギアによって加えられ、ハブ部470に作用する力がインタフェース200を顔に向けて付勢する。
【0093】
好ましくは、変位可能部材472は、柔らかい柔軟なシール部材202より有意に硬い材料で作製される。たとえば、インタフェースのフレームに使用されるどのような一般的なポリマ材料も適当であり、たとえば、ただしこれらに限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリカーボネートがある。1つの変形によれば、変位可能部材472は、キャッチャミットのように、隣接する指状片472の隣接する側方辺間にわたる弾性材料を含んでいてもよい。換言すれば、弾性材料からなる網目材が隣接する指状片472間にわたっていてもよい。
【0094】
複数の変位可能部材472は、中央ハブ470に加えられる負荷を、インタフェース200のより広い表面積にわたって分散させる機能を果たし、それによってより局所化された力を供給して、シール部材202の周辺縁206を使用者の顔へと押し付ける。特に、変位可能な指状片472がハブ470から片持ち式になっているため、また変位可能な指状片472が自由端で有意に前後運動するため、変位可能部材472を含む支持部材404は、顔に適合でき、広い範囲の顔面形状と十分に密着できる。下のシール部材202に関する少なくとも変位可能部材470の自由端474における摺動運動は、部材472が、使用者の顔の形状の差に応じて、下のシール部材202の若干異なる部分に圧力を加えることができるような機構となる。このような構成は、あるシールが広い範囲の顔面形状への適合性を広げることができる。
【0095】
着用者の顔が比較的平坦である場合、よりよく密着させることがより容易である。しかしながら、使用者の顔が前後変動の大きい形状である場合、変位可能部材472の自由端474が、比較的中央にあるハブ470から離れた位置に局所的な圧迫力を加え、それによってヘッドギアからの力がハブ470から自由端474へと伝達される。
【0096】
構成によっては、複数のハブ部470をインタフェース上の中心からずれた位置に配置してもよく、各ハブ部470はそこから延びる変位可能部材472を有する。たとえば、顎と左右の頬は使用者の顔に負荷を与えるのに好ましい位置であり、インタフェースは、これらの位置の1つまたは複数にハブ部470を含んでいてもよい。
【0097】
ここで図18を参照すると、別の支持部材480を図16と17に示される支持部材404に適用することができる。構成によっては、支持部材480を支持部材404に固定して、積層型の構造を形成することができる。支持部材480は、複数の変位可能部材482を含むことができ、これらは相互に関して、および/または別の支持部材480の少なくとも内側ハブ部484に関して移動可能である。好ましくは、別の支持部材480の指状片482は、支持部材404の指状片472の上に載る。図の構成は、支持部材404と追加の支持部材480の同じ数の変位可能部材を示しているが、変位可能部材の数と配置はこれとは異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、別の支持部材480に関連する複数の変位可能部材は、シール部材402の上に直接載っていてもよい。
【0098】
当然のことながら、組み合わせが含まれる実施形態を構成してもよい。換言すれば、複数の指状部のいくつか(支持部材または別の支持部材のどちらのものでもよい)は、シールの上に直接載っていても、他の指状片の上に載っていてもよい。たとえば、図16に示されるインタフェース200に含まれる支持部材204は、シール部材402と支持部材404(および/または別の支持部材(図示せず))の間に割り込んでいる。この実施形態では、支持部材(および/または別の支持部材)の自由端474は支持部材204の上に載り、それが今度は下のシール部材402に圧力を加える。支持部材204は、負荷力をさらにシール部材402全体に広げ、および/またはより柔らかいシール部材402を支持する役割を果たす。
【0099】
図19に示される代替的な実施形態において、支持部材(および/または別の支持部材)の自由端474は、その下の柔軟なシール部材202の上に直接載っていてもよい。図20に示される実施形態において、指状片の自由端474は、その下の、別の支持部材の変位可能部材482の上に載っている。その他のどのような適当な変形形態も使用できる。
【0100】
上記の説明では、変位可能部材によって顔面とのフィットを改善し、および/または密着性を改善できインタフェースシールのタイプの数例のみを挙げた。その他の構成も可能である。変位可能部材の数、間隔、幅は違っていてもよい。これに加えて、図16〜21に示されている例示的実施形態はすべて、平面図においてほぼ円形の支持部材(および別の支持部材)を示し、および/または中央位置からほぼ放射状の変位可能部材を示しているが、他の形状も可能である。たとえば、中央のほぼ円形のハブではなく、直線的またはほぼ長方形のハブを利用してもよい。このような実施形態では、変位可能部材474は、たとえば、ただしこれに限定されないが、図21に示されているような「葉状」の構造または木の枝のように外側に放射状であってもよい。このような実施形態において、ハブは、インタフェースを着用するときに使用者の正中矢状面と実質的に整合することが好ましい場合もある。これに加えて、ハブは、構造の「幹」を実質的に硬くするために、1つまたは複数の半剛性の補強リブ492を含んでいてもよい。幹補強リブ492を含めることによって、ある方向への曲げに抵抗する梁部が提供される。
【0101】
別の代替的実施形態において、変位可能部材は厚さを変化させて構成してもよく、それによって前後方向への曲げに関して、片持ち部分の硬さが調整される。たとえば、指状片の材料の厚さを自由端に向かって薄くしてもよい。同様に、指状片は、図示されているような実質的に長方形の平面形状を有していても、そうでなくてもよい。たとえば、変位可能部材の幅を自由端に向かって狭くしてもよく、または所望のレベルの変位を提供するために、異なる形状を有していてもよい。
【0102】
別の代替的実施形態において、上記の実施形態で説明した変位可能部材の自由端はさらに、シール部材の上、またはその下にある別の支持部材の上に自由端が載る特徴を含んでいてもよい。たとえば、圧縮可能材料のパッドを自由端とシール表面の間に、圧縮可能パッドがシール部材の上に載るように配置してもよい。他の例において、自由端を、自由端とシール部材との間の接触点において丸くしてもよい。あるいは、自由端はシール上に載る柔軟な部材を含んでいてもよい。柔軟な部材は、たとえば発泡材でも、または複数の小さな圧縮可能フープ構造であってもよい。
【0103】
以上は、前述のような鼻を再現したインタフェースと一緒に使用可能なインタフェース支持手段の例を説明した。このインタフェース支持手段は、柔らかい柔軟なシールを有する他のインタフェース構成にも使用できる。たとえば、シールと変位可能支持部材の間に支持本体を設ける必要はない。少なくとも一実施形態において、この構成が好ましい。換言すれば、変位可能支持部材は、特定の位置において柔軟なシールに直接作用し、インタフェースシールを使用者の顔面に押し付ける。同様に、このインタフェース支持手段の用途は、いずれの1つのヘッドギア構成にも限定されない。このインタフェース支持手段の一般的な目的は、ヘッドギアヘッドギアにより実質的に1カ所に加えられる力を広い領域に分散させることであり、したがって、開示されている構成は、局所化された力をインタフェース本体に分散させるための手段を画定できる。具体的には、このインタフェース支持手段は力を広い領域に分散させ、および/または広い範囲の前後方向への顔の高低差にも対応できる。
【0104】
呼吸チューブの接続
ここで、図14と22を参照すると、呼吸チューブ500が少なくとも2種類の方法でインタフェース200に接続されている様子が示されている。呼吸チューブとインタフェースとの間の後述の接続は交換可能である。これに加えて、後述の接続はいずれも、開示されているインタフェースのいずれにも使用できる。
【0105】
まず図22を参照すると、図の呼吸チューブ500は呼吸チューブコネクタにエルボコネクタ504で接続されている。呼吸チューブコネクタは、シール部材202の開口部242の中に嵌め込み、それと密閉状態にすることができる。呼吸チューブコネクタが開口部242に固定されているため、呼吸チューブコネクタは、支持部材204に形成された開口部266を通って延びる。
【0106】
いくつかの構成において、スナップフィット式配置が提供され、この場合、コネクタの半剛性部分がシール部材202の開口部242を通ってシール部材202の片側から突出し、その一方で、コネクタの別の半剛性部分を最初の半剛性部材の中にスナップ式に嵌めることができる。構成によっては、他のいずれかの適当な接合方法を使って、柔らかい、柔軟なシール部材202の上にボスを形成してもよく、コネクタをこのボスに接続できる。エルボ504をコネクタに接続することができる。
【0107】
図22において、インタフェース本体200は、呼吸チューブ500がエルボ504でコネクタに接続された状態で示されており、このコネクタはシール部材202に、またはシール部材202と支持手段204に接続されてもよい。スイベル502により、エルボ504がインタフェース本体200に関して回転でき、それによって供給導管500はインタフェース本体200に関して異なる方向を向くことができ、その結果、たとえば、ただしこれに限定されないが、使用者が動いているときの快適さが改善される。別のスイベル506をエルボ504と呼吸チューブ500の間に設置してもよい。
【0108】
本明細書で説明するインタフェースはまた、導管500が短く、Yピースに接続される双方向流人工呼吸器にも使用できる。これに加えて、たとえばCPAP機器により提供される一方向流システムでは、エルボ504に、またはシール部材202の鼻梁付近の領域に適当な換気穴を設けてもよい。さらに、スイベル502ではなく、玉継手型の接続手段を設けて、呼吸チューブ500とインタフェース本体200の間の関節運動を可能にすることができる。
【0109】
構成によっては、たとえば図14に示されるように、インタフェース本体200は窒息防止弁520を含んでいてもよい。窒息防止弁520はインタフェース本体に関連付けてもよく、またはいくつかの実施形態では、たとえば、これらに限定されないが、呼吸導管接続部またはエルボコネクタに組み込んでもよい。
【0110】
エルボ504を使った接続は、使用に適しているものの、呼吸ガスがインタフェース本体200に実質的に水平に入ることになる。したがって、呼吸ガスが患者の口に直接誘導される。このように配置にはいくつかの欠点があることがわかっている。たとえば、患者は呼吸ガスが直接自分の顔または口にまっすぐに向かうことで、不快さを感じることもある。これに加えて、エルボコネクタ504はインタフェース本体200の正面に取り付けられ、患者の顔面からある距離だけ外側に突出する。シール部材202が鼻と接するインタフェース本体200の頂上部(すなわち、インタフェース本体200の鼻部220)は、患者これとの解剖学的ばらつきが大きいため、密着させにくい部分である。その結果、鼻梁が、インタフェースからの漏出がよく発生する部位である。インタフェース本体200にトルクが加わると、この領域の密着の問題がさらに大きくなる可能性がある。この効果を補償するために、ヘッドギアを過剰に締めて、インタフェース本体200を患者の顔にきつく押し付けることが一般的である。過剰に締めることは不快感につながる可能性があり、これは非常に好ましくない。
【0111】
引き続き図14を参照すると、この実施形態において、呼吸チューブ500との接続は短い撓み性チューブ522で行うことができ、これは呼吸チューブに直接つながり、患者の顎の付近において、ある角度(着用者の顎から下方に向かう)でインタフェース本体200の中に入る。それゆえ、ガスは上方および患者の口と鼻に向かう方向でインタフェースに入る。換言すれば、チューブ522は下方に、患者と反対方向に延びる。
【0112】
撓み性チューブ522は、ポート525を通ってインタフェース本体につながる。ポート525は、通常の位置において前を向いたときに、患者の口を通って直接外側に延びる線より下に位置する。好ましくは、導管522は、ポート525を通り、垂直線から約0°〜約70°の角度でインタフェース本体200に入る。構成によっては、進入角度は約50°〜約60°である。好ましくは、進入角度は約55°である。
【0113】
好ましくは、ガスポート525は患者の顎の付近(すなわち、患者の下唇と顎の先端との間)に配置される。このポートの位置は、有利な点として、ポート525を、インタフェース本体200の前面に取付機構、たとえば穴、柱状突起、ループ、クリップおよびその他のためのより大きなスペースができるように位置付ける。これに加えて、このポートの位置はまた、窒息防止弁520を口の前方に配置するためのより大きなスペースを提供する。さらに、呼吸ガス進入ポート525を、使用時にインタフェースの内側の最も低い点の付近に位置付けることによって、吐しゃ物を有効に排出できる。
【0114】
チューブ522を短くすることよって、非常に撓み性が高くなり、患者インタフェース200と呼吸チューブ500の間の接続部の位置がインタフェースのそのものから離れるため、患者が自然に頭を動かすことができる。患者インタフェース200と呼吸チューブ500の間の接続は、周知のタイプの剛性コネクタを通じて実現できる。これらのコネクタを患者の顎と頸から離して位置付けることによって、特に頭を前方に傾けるときの患者の頭の可動性が改善される。
【0115】
加圧ガスをインタフェース本体に供給するために、他のいずれの適当な技術も使用できる。
【0116】
インタフェース流量制御
ここで図24と25を参照し、インタフェース本体200の中の流れの拡散と制御について説明する。インタフェース本体200はいずれの適当な方法で構成してもよく、図の構成では、インタフェース本体200は、たとえば、ただしこれに限定されないが、シール部材202によってインタフェース200の中に画定される空間600を含む。シール部材202はいずれの適当な方法でも構成でき、これにはたとえば、ただしこれに限定されないが、本願で開示されるものが含まれる。使用時には、シール部材202は患者の顔と接触し、密着する。顔に密着すると、シール部材202は空気またはガスが空間600から漏れる可能性を低減させる。
【0117】
呼吸チューブまたは他の短い撓み性チューブ104はいずれかの適当な方法でインタフェース本体200につながり、これにはたとえば、ただしこれに限定されないが、本願に記載されるものが含まれる。呼吸チューブ104は呼吸ガスを進入ポート602に供給する。進入ポート602は好ましくは、インタフェース本体200のうち、患者の顎の付近に配置されることになる領域内に配置される。より好ましくは、進入ポート602は、呼吸ガスが患者の顔に直接向けられるのではなく、上方に傾いた方向に誘導されるように構成される。
【0118】
図24を参照すると、シール部材202の中に画定される空間600は、仕切り壁604によって区画化することができる。仕切り壁604は、いずれの適当な方法でも空間600の中に形成できる。仕切り壁604は好ましくは、ボス606または他の適当な取付構造によって空間600の中に取り付けられ、または支持される。このような構成では、仕切り壁604は、仕切り壁604の周辺縁608によって画定される境界内に含まれる位置に取り付けられる。図の構成では、周辺縁608の全体がシール部材202の内壁または空間600を画定するインタフェースのその他の壁から離間される。
【0119】
仕切り壁604は内壁からずらすことができ、それによって、仕切り壁604と内壁の間にギャップが画定される。仕切り壁604は好ましくは、空間600の全体的な形状に略追従し、それによって仕切り壁604と内壁の間のほぼ一定のギャップによりプレナムスペースが画定される。好ましくは、空間600の仕切り壁604と内壁の間のギャップは約10ミリメートル未満である。より好ましくは、ギャップは約3ミリメートル〜約6ミリメートルである。構成によっては、ポート602からの流れと仕切り壁の間の進入角度は約30°〜約80°である。構成によっては、進入角度は約50°〜約70°である。好ましくは、進入角度は約60°である。
【0120】
拡散ポートまたは拡散出口610を、仕切り壁604の周辺縁608と内壁の間の空間によって画定することができる。構成によっては、仕切り壁はほぼ円形であり、その直径は約30mm〜約100mmである。構成において、直径は約40mm〜約80mmである。仕切り壁の周辺縁608は好ましくは、シール部材202の外周の付近まで延びるような大きさとされ、そのように位置付けられる。より好ましくは、仕切り壁604の周辺縁608は、フランジ208によって画定される延長面210と重複する領域まで延びる。
【0121】
仕切り壁604はまた、好ましくは空間600の下側部分の中に収容される。より好ましくは、仕切り壁604の上側周辺612はインタフェース本体200の頬骨の高さに、またはそれより下に位置付けられる。さらにより好ましくは、仕切り壁604の上側周辺612は、鼻部220のための切欠き252の最も下の部分とほぼ整列する。したがって、上側周辺612はほぼ患者の鼻と同じ位置に位置付けることができる。
【0122】
図の実施形態において、拡散出口610は実質的に、または完全に、仕切り壁604全体の周囲で連続している。構成によっては、拡散出口610は仕切り壁604の上側周辺612のみに沿って画定できる。構成によっては、拡散出口610は上側周辺612に沿った領域を含み、それによって拡散出口610は、呼吸ガスが着用者の頬骨領域を覆うように実質的に接線方向に流れるようにする上側拡散ポート部を含む。
【0123】
しかしながら、構成によっては、仕切り壁604はシール部材202の内面の高低に追従せず、したがって仕切り壁604と、シール部材202の内面との間に画定されるギャップは実質的に一定である。
【0124】
進入ポート602は呼吸チューブからのガスを、空間600内に画定されるプレナムスペースの中に供給する。進入ポート602は、仕切り壁604とシール部材202の内面または、シール部材202がインタフェース本体200の特定の領域において支持部材204と置き換えられる場合は支持部材204の内面との間に画定されるプレナムチャンバへと続く。それゆえ、進入ポート602を通じて供給されるガスは概して、仕切り壁604によって、患者の口の中に直接流れないようにされる。その代わりに、ガス流は仕切り壁604に衝突し、薄いプレナムチャンバを通じて偏向される。
【0125】
空間600と仕切り壁604を画定する薄い壁が着用者の顔の高低に略沿っている場合、その結果として拡散される呼吸ガス流は実質的に顔の表面に対して接線方向となる。拡散された呼吸ガス流は、空間内壁と仕切り壁604の周辺608との間のギャップにより画定される拡散ポート610を通ってプレナムチャンバから出る。
【0126】
プレナムチャンバは、患者への呼吸ガス流を仕切り壁の縁辺の周囲で分散させる手段として機能し、その際、流れに対する抵抗を実質的に増大させない。膨張型または風船様シールを取り入れたインタフェースにおいては、流れを進入ポート602の軸に沿って継続させるのではなく、流れを進入ポート602から半径方向に外側に誘導する拡散ポート610が、流れをシール部材202の周辺に向かって、好ましくはそこに当たるように誘導し、これはフランジ208を患者の顔に密着させるのを助ける。
【0127】
構成によっては、仕切り壁604は、多数の異なる位置(たとえば、少なくとも2カ所以上)で支持できる。仕切り壁604は、拡散ポート610が仕切り壁604の周辺縁608に沿って、および/または上側周辺612に沿って個別の領域を含むような方法で支持でき、これらの領域は連続的な開放ポートではない。換言すれば、拡散ポート610は、仕切り壁604の周辺608の実質的に全体の周囲に延びる連続的な開口部でなくてもよい。
【0128】
好ましくは、拡散ポート610の総断面積は呼吸ガス進入ポート602の断面積より大きい。このような構成では、ガス流速は進入ポート602から拡散ポート610に向かって低下する。好ましくは、拡散ポート610の断面積は進入ポート602の断面積の少なくとも2倍である。さらにより好ましくは、拡散ポート610の断面積は進入ポート602の断面積の2倍〜5倍である。断面積が増大することによって、換気同調性の問題の発生と患者に対する噴射の作用が軽減する。たとえば、ガス流を拡散させ、および/または低速化することと、ガス流を着用者の皮膚に対して接線方向に向けることによって、患者の体験はより快適となる。
【0129】
構成によっては、仕切り壁604は1つまたは複数の小さな穴を含んでいてもよい。穴によって、幾分かの弱い呼吸ガスが口に直接向かって流れる。さらに、構成によっては、プレナムチャンバは流れを誘導するための特徴、たとえば仕切りまたはその他を含んでいてもよく、これは流れを顔の特定の領域に集中させるのを助ける。たとえば、通常、治療中の熱さや不快感に寄与するような、患者の受容体領域から遠くに流れを誘導できる。これに加えて、構成によっては、流れを患者の受容体領域に向かうように誘導でき、これは顔の周囲の流れを感じさせ、それによって息ができない感覚や空気流の欠如の感覚を軽減することができる。用途によっては、流れを誘導するための特徴を使って、流れを鼻から遠くに誘導することができる。流れを誘導するための特徴は、空間の内面および/または仕切り壁904に関連付けてもよい。
【0130】
好ましくは、インタフェース本体200はまた、窒息防止弁520も含む。弁520は、構成によっては、仕切り壁を支持するボス606の中に組み込んでもよい。これに加えて、構成によっては、仕切り壁604を撓ませ、動かし、または枢動させることができ、それによって、入って来た流れは仕切り壁604によって拡散し、その一方で呼気はポートへと直接送られる。
【0131】
いくつかの実施形態において、インタフェース本体200に1つまたは複数の圧力モニタポート(図示せず)を設けてもよく、これはインタフェース本体200の外面に配置される。圧力モニタポートは、プレナムチャンバを通って延び、ガス空間600へと開放していてもよい。換言すれば、ポートの開口部は好ましくは、ガス空間600の中の、仕切り壁604と空間の内面との間に画定されるプレナムチャンバの外側の位置に位置付けられる。より好ましくは、ポートの開口部は仕切り壁604の、プレナムチャンバと反対側に、仕切り壁604に沿って位置付けられる。圧力モニタポートをバッフル壁または仕切り壁604の背後で、かつ患者の顔の前に設置することによって、圧力モニタの精度を向上させることができる。このように設置することにより、人工呼吸器と一緒に使用した場合の呼吸トリガまたはその他も改善される。
【0132】
仕切り壁604は、患者が話すことに関連する音響を大幅に改善することがわかった。
ずらされた仕切り壁604によって画定されるプレナムチャンバはインタフェースの音響を改善することがわかっており、これによって患者の話す声がより聞こえやすくなる。これに加えて、インタフェースへの流れを拡散することにより、患者は話す際に鼻および/または口の中への噴射を克服する必要がない。換言すれば、患者は話すために、人工呼吸器から入ってくる呼吸を克服する必要がない。
【0133】
さらに、気流が拡散するため、仕切り壁604により提供されるプレナムチャンバ構成が、空間600内の結露を減少させるのに役立ちうる。これに加えて、本願において開示される流れを拡散させるための装置は、インタフェースの表面にたまる不要な水蒸気、水滴、移動する水分が堆積する可能性を低減させることがわかった。空気流の拡散によって、凝縮した水または液体を空間600から直接流し、ポートまたはその他の回収または排水位置へと誘導することができる。
【0134】
ここで図25を参照すると、別の流れ拡散構成がその中に描かれている。この構成では、インタフェース本体200の中に入る呼吸ガスは空間600の周囲で旋回し、サイクロン運動を生成し、これは好ましくは、実質的に患者の顔の表面に対して接線方向である。
【0135】
インタフェース本体200は、ガス空間600を含む。シール部材202は顔と接触し、空間600を顔に対して実質的に密閉するように構成される。呼吸ガス進入ポート602は顎の付近に配置される。呼吸チューブは、本願の別の箇所で説明したように、ガスを呼吸ガス進入ポート602へと供給する。
【0136】
呼吸ガス進入ポートは、ガス旋回構造620の中に位置付けることができる。旋回構造620は、インタフェース空間壁に対して実質的に垂直に延びる、実質的に円筒形の壁622を含む。換言すれば、患者が直立しているとき、円筒壁622は実質的に患者の口の前の位置で前方に突出する。実質的に円錐形の壁624が円筒壁622と同軸的に延び、旋回空間626が円筒壁622と円錐壁624の間に画定される。円錐壁624は、円錐壁624と円柱壁622の間のギャップが、より大きく、インタフェースの着用者により近くなるような角度である。
【0137】
使用時には、呼吸ガスが円錐壁624のポート602を通って旋回空間626の中に入る。ポート602は、壁622、624の軸からずれており、それによってガス流は旋回空間626に、図のようにずれて、略接線方向に入る。その結果、ガスは図の環状の旋回空間626の周囲で反時計回り方向に流れ、回転流を構築する。傾斜した円錐壁624は回転流を患者に向かって(すなわち、図25の紙面から外に出る方向に)付勢する。流れが回転し、患者に向かって移動すると、ガス流が円錐壁624の最上部から離れ、その結果、弧を描く刃のようになった空気(sweeping blade of air)が外側に、患者の顔に向かって移動する。その結果としての着用者の顔を横切る流れは拡散し、好ましくは、旋回構造に入るガスの流れより低速で移動する。構成によっては、患者の顔に向かう空気の流れは約8m/s未満である。構成によっては、患者の顔に向かう流れは約6.5m/s未満である。前述のプレナムチャンバの実施形態と同様に、患者にとっての快適さが改善される。
【0138】
ヘッドギア
インタフェース本体200は、いずれの適当なヘッドギアアセンブリ700でも患者に固定できる。ここで、何種類かのヘッドギアアセンブリについて図面を参照しながら説明する。
【0139】
まず図26を参照すると、ヘッドギアアセンブリ700は、加圧ガスの流れを患者Pとインタフェース本体200の間に導入することによって生じる動きに対してインタフェース本体200を拘束するために使用されることがわかる。力のベクトルR1は、インタフェース本体200の形状と、インタフェース本体200の中へのガスの流れから発生する。平衡力ベクトルE1が反対方向に延びると想定できる。理想的には、1本のストラップでも、その1本のストラップを平衡力ベクトルE1の作用線に沿って位置付けるかぎり、インタフェース本体200を顔に固定するために使用できる。顎を捕捉することが望ましいと考えると、保持線LRもまた想定できる。保持線LRは、耳の最上部に沿って、またインタフェース本体200の領域の中心を通って延びる。
【0140】
好ましくは、インタフェース本体200は基本的に、患者の顔の少なくとも3つの部分、すなわち左側頬骨、右側頬骨、顎の上で支持される。好ましくは、インタフェース本体200のストラップ取付位置は、上側ストラップのための頬骨の縦の位置と下側ストラップのための顎領域に略対応する。このような構成によって、ヘッドギアが患者の顔の上にインタフェースを保持するための対称的な力パターンが提供される。
【0141】
後述するヘッドギアアセンブリ700のいくつかは、ほぼ保持線LRに沿って延びる1本のストラップを含むことができるが、他のヘッドギアアセンブリ700は2本以上のストラップを含む(たとえば、図13、16、22、23,26、27)。たとえば、図16の構成では、ヘッドギアアセンブリ700は、インタフェース本体200を使用者の顔に固定するために、インタフェース本体200から2つの方向に延びるストラップを含む。このストラップは、便宜上片側にのみ示されているが、同様のストラップをインタフェース本体の反対側に使用し、または同じストラップをインタフェース本体200の両側に延ばすことができる。
【0142】
ここで図13、22、27を参照すると、患者にインタフェース本体200を取り付けるために使用可能なヘッドギアアセンブリ700の別の例が示されている。これらのヘッドギアアセンブリ700は例示のために提供され、他のタイプのヘッドギアも同様に適当でありうる。
【0143】
スロットおよび面ファスナ
図22の例において、ヘッドギアアセンブリ700は、上側ストラップ702と下側ストラップ704を含む。上側ストラップ702は、患者の後頭部の、耳より上の周囲に延びる。下側ストラップ704は、患者の首の後ろの、耳より下の周囲に延びる。
【0144】
各ストラップ702、704は、インタフェース本体200の支持部材204に固定される。ストラップ702、704は、クリップに通すことによって支持部材204に固定されてもよい。しかしながら、構成によっては、ストラップ702、704は、支持部材204を貫通するように形成できるスロット706で支持部材204に固定してもよい。
特に、ストラップ702、704の自由端708をスロット706に通すことができる。
ストラップ702、704の自由端708は、たとえば、これに限定されないが、ベルクロ(登録商標)またはその他の面ファスナによってストラップの残りの部分に折り返して固定することができる。その他の適当な終端処理方式も使用できる。
【0145】
構成によっては、上側ストラップ702を支持部材204の下側領域に固定でき、その一方で、下側ストラップ704を支持部材204の上側領域に固定できる。このような構成では、ストラップ702、704は患者の側頭部で交差する。
【0146】
ストラップ部一体型のインタフェース本体
図13を参照すると、図の支持部材204は一体型の延長ストラップ部、たとえば上側延長ストラップ部710と下側延長ストラップ部712を含む。各延長ストラップ部710、712は、ストラップ(たとえば、上側ストラップ702と下側ストラップ704)を固定するための手段で終了してもよい。このような手段は、スロット714の形態で提供することができる。その他の手段もまた可能である。たとえば、上側および下側ヘッドギアストラップ702、704の端と一体型ストラップ部710、712の端に、適当な相補的コネクタ、バックル、穴またはその他を設けてもよい。
【0147】
1点調節
図27は、ヘッドギアアセンブリ700をより簡単に調節できるヘッドギアアセンブリ700の別の構成を示している。インタフェース本体200の所望の位置付けおよび/または引張に調節することが望ましい。調節を可能にするための現在のアプローチは、たとえば、ただしこれらに限定されないが、図22と13に関して説明した面ファスナのような調節可能な機構の組み合わせを使用する。調節可能な機構の組み合わせは、インタフェース本体202の2つ、3つ、4つまたはそれより多い数の個別の固定点に接続される。
各固定点との各接続部は別々の工程で調節する必要があり、これによって、ほぼ対称にインタフェース本体200を位置付け、負荷をかけることが困難となる。
【0148】
図27を参照すると、図のヘッドギアアセンブリ700と調節システムは、ヘッドギアアセンブリ700とインタフェース本体200の間の少なくとも1つのスライド式接続手段を取り入れている。好ましくは、この少なくとも1つのスライド式接続手段は、上側ストラップ702とインタフェース本体200の上側部分との間の上側スライド式接続手段と、下側ストラップ704とインタフェース本体200の下側部分の間の下側スライド式接続手段を含む。
【0149】
スライド式接続手段は、インタフェース本体200の外面を横切る紐716を含んでいてもよい。紐716は、インタフェース本体200の両側でヘッドギアストラップ702、704と繋がる。紐716は、支持部材204の外面上のスライドクリップ718の中にスライド可能に固定することができる。好ましくは、紐716とクリップ718のために選択される材料によって低摩擦接触が可能となり、その結果、クリップ718に関して紐716が容易に相対運動またはスライドできる。構成によっては、紐716をホースまたはチューブの内腔の中に完全にまたは部分的に収容することによって、スライド機構を保護し、および/または異物(たとえば毛髪)が調節機構に絡まる可能性を低くすることができる。
【0150】
クリップ718は好ましくは、紐716を捕捉して、紐716がクリップ718またはインタフェース本体200から外れる可能性を低減させる。捕捉されているが、スライド可能な紐716によって、たとえば、インタフェースアセンブリ200を頭または顔から外したときに、ヘッドギアとインタフェース本体200を接続されたままにすることができる。好ましくは、クリップ718によって、希望に応じてインタフェース本体200を紐716から外すことができ、そうでないとき、および通常の使用時には、紐716は取り付けられたままとなる。
【0151】
クリップ718は好ましくは、紐716を、鼻部220の高さより下の位置でインタフェース本体200を横切るように案内する位置に設置される。クリップ718はまた、下側ストラップ704の端間をスライド可能に連結するために使用してもよい。下側クリップ718は、インタフェース本体200の下側部分を横切るように紐716を案内する。
【0152】
構成によっては、クリップ718は1つまたは複数の回転する滑車輪を含んでいてもよく、これはさらに摩擦を軽減させ、スライド可能性(すなわち、紐716とインタフェース本体200との間の相対的運動)を向上させる。この点に関して、「スライド式」という用語は、紐716とインタフェース本体200の間の相対的運動を広く説明するために使用されている。紐716の回路内の摩擦を低くすることによって、たとえば、ただしこれに限定されないが、インタフェース本体200および/またはヘッドギアアセンブリ700が使用中に顔または頭の上で移動しても、紐716を、紐716によって画定されるループ回路のどこにおいても引っ張られた状態に保持することができる。
【0153】
図27を参照すると、1本のスライド式調節紐716は、インタフェース本体200とのスライド式接続部718を通り、ヘッドギアアセンブリ700の左右の側方部でスライド式接続部720を通る。調節紐716の2つの端は留め具722でまとめることができる。調節紐716の端724は、横方向に相互に反対に引っ張り、調節紐716を、留め具722を通じてさらに引っ張ることができ、これによって調節紐716のループの長さが短くなり、また、患者へのフィットがきつくなる(すなわち、張力が増す)。留め具722は、十分な張力が加わると調節紐716を通過させることができる。留め具722は、いずれの適当な形態であってもよい。構成によっては、留め具722は、引込式のキーリング型構成要素、クランプ、ジャムクリート、カムトクリート、ホイール、またはスキーバインディング型のラチェット機構またはその他のどのような適当な調節機構を含んでいてもよい。
【0154】
構成によっては、調節紐716の一端のみが、留め具722を通じて調節可能である。
調節紐716の反対の端は、固定し、または留めることができる。構成によっては、調節紐716の反対の端は、たとえば、これらに限定されないが、留め具722、インタフェース本体200、ストラップの1つまたは複数、またはインタフェース本体200と留め具722に固定される。
【0155】
構成によっては、留め具722には、それがループ内のどれだけの引張に抵抗できるかに関する所定の、または調節可能な限界があってもよい。構成によっては、留め具の引張限度を使って、保持システムが使用者の顔にどれだけの力を加えることができるかの限度を設定するこができる。留め具722はまた、支持部材204に回転可能に固定された車輪であってもよく、調節紐716がこの車輪の周囲に巻き回され、車輪を一方向に回転させると調節紐716により画定されるループが締まり、車輪を反対方向に回転させると調節紐716により画定されるループが緩む。この実施形態では、ラチェットおよび釈放機構を組み込んで、車輪の調節が行われていないときに(すなわち、釈放機構がロックされている)、紐716を所定の位置に保持することができる。
【0156】
構成によっては、インタフェース本体200と紐716のループは1つのクリップ718だけを含んでいてもよく、これは支持部材204の上側部分に沿って位置付けられる。
好ましくは、1つのクリップ718は正中面に沿って、またはかなりその近くに位置付けられる。構成によっては、いくつかのクリップ718をインタフェース本体200に沿って分散させてもよく、紐716は、いくつかのクリップ718の一部のみを通って延びるようにかけてもよい。このようにして、紐716により画定されるループの形状を変化させることができる。その結果、ヘッドギアストラップ部720に向かって延びる紐716の角度を制御でき、紐716により画定されるループを、患者の耳またはその他の解剖学的特徴の周囲にかけて、快適さおよび/またはフィットを改善できる。
【0157】
前述のように、図27に示され、前述したヘッドギアアセンブリ700は、インタフェースとヘッドギアの接続部のための単一かつ単純な調節手段を特徴とする。換言すれば、単一の調節点は、患者インタフェースの有効サイズを縮小および/または増大させて、大きさや解剖学的形状の異なる使用者にフィットさせるのに有効である。これに加えて、単一の調節点だけで、インタフェースの張力を調節できる。具体的には、図の構成における単一の調節点により、紐716の張力の調節中および調節後にインタフェースとヘッドギアを顔の上に対称に位置付けたままにすることができ、その一方ではまた、使用中および、膨張するシールの加圧中に、幾分かの滑動が可能となる。
【0158】
紐716を特徴とするインタフェース本体200とヘッドギア700の利点の1つは、インタフェース本体200および/またはヘッドギアアセンブリ700の調節を、ヘッドギアアセンブリ700とインタフェース200が頭と顔に装着したまま行うことができる点である。これはインタフェース本体200とヘッドギアアセンブリ700の使いやすさを大幅に改善し、簡単な調節が可能となり、これによって患者の快適さが増す。インタフェース本体200の素早い脱装着と調節によって、治療をできるだけ早く始めることができる。さらに、この調節システムは様々なヘッドギア構成と、多様な患者インタフェースに使用できる。
【0159】
装着容易なヘッドギア
図26は、素早く、簡単に患者に取り付け、および/または患者または医療従事者の少なくとも一方が調節可能なヘッドギアアセンブリ700を示す。
【0160】
ほとんどのインタフェース本体では、ただし、特に膨張型のシールを含むインタフェース本体200では、ヘッドギアアセンブリ700は好ましくは、わずかしか伸張しない。
換言すれば、ヘッドギアアセンブリ700は、それがインタフェース本体200に接続されたとき、好ましくはまったく伸張しないか、事実上まったく伸張しない。しかしながら、膨張型シールを有するインタフェースは、特に適当なレヘルの張力でインタフェース本体200を患者の顔の前に引っ張って装着するのが特に困難な場合がある。たとえば、呼吸ガス流がインタフェース本体200に供給されない状態でインタフェース本体200を患者に装着する際、インタフェース本体200を快適に患者の顔の上に保持するためにかける張力は、呼吸ガスが供給されたときに実質的な漏出の可能性を低減させるには十分でないこともある。
【0161】
図26を参照すると、患者Pには口と鼻を覆うようにインタフェース本体200が位置付けられている。ヘッドギアアセンブリ700は、インタフェース本体200の各側に2本ずつのほぼ非弾性の接続ストラップ730と、インタフェース本体200の各側に2本ずつのほぼ弾性の接続ストラップ732を含む。接続ストラップ730、732は、インタフェース本体をヘッドギアアセンブリ700の残りの部分に接続する。
【0162】
非弾性接続ストラップ730は一方の端で、包囲型のヘッドギア734を含むいずれかの適当なヘッドギア700に固定され、非弾性接続ストラップ730は好ましくは、非弾性接続ストラップ730の長さを変えることのできる(すなわち、インタフェース本体200とヘッドギア734の間の接続長を調節できる)調節機構736でインタフェース本体200に接続される。用途によっては、調節機構736は、インタフェース本体200ではなく、非弾性接続ストラップ730の、ヘッドギア734に繋がる端に配置してもよい。いずれの場合も、調節機構736は好ましくは、患者の頭が枕またはその他の構造物の上に載せられているときでも操作できる位置に位置付けられ、それによって調節機構736は患者Pの頭を動かさずに操作できる。
【0163】
調節機構736は、いずれの適当な構造を含んでいてもよい。構成によっては、調節機構736は、インタフェース本体200に固定され、そこに非弾性接続ストラップ730が通される摩擦留め具を含む。摩擦留め具は、接続ストラップ730を把持するように付勢された摩擦要素によって動作でき、接続ストラップが摩擦留め具を通過する可能性が低減される。調節が必要なときには、摩擦部材を接続ストラップ730から外すことができ、それによってストラップ730を希望に合わせて長くすることができる。摩擦留め具は、片手で容易に操作可能な単純な機構736を提供する。構成によっては、調節機構736はたとえば、ただしこれらに限定されないが、ラダーロック、バックル、ラチェット、クランプ、カムクリート、または柱と穴の係合を含んでいてもよい。
【0164】
様々な種類の調節機構736を設置して、比較的非弾性の接続ストラップ730の長さを調節することができる。たとえば、摩擦留め具と各種の形態のカムクリートが、接続ストラップ730がロープ、コードまたはその他である構成に特に適していることもあるが、他の形態の調節も、特に接続ストラップ730が半剛性である場合には、より適当であることもある。たとえば、スキーバインドディング型のラチェット機構またはその他のクランプロック機構も、場合に応じて使用できる。
【0165】
構成によっては、調節機構736は少なくとも2つのモードを有するロック式のものである。第一の、ロックモードでは、実質的に非弾性の接続ストラップ730の長さを長くすることができない。ロック解除モードでは、ストラップ730の長さを両方向に調節する(すなわち、長くし、短くする)ことができる。構成によっては、ストラップ730の長さは、それぞれの調節機構736がロックモードにあるときに、短くはできるが、長くはできない。
【0166】
構成によっては、ロックモードは、それぞれのストラップ730を長く、および短くするための調節をしにくくするように動作可能であってもよい。構成によっては、調節機構736の全部をインタフェース本体200に配置する。好ましくは、調節機構736の全部をインタフェース本体200の前方に向かう表面に設置する。このように調節機構736を位置付けることにより、患者Pの後頭部がたとえば枕で支えられているままでも、ストラップ730の長さ調節を容易に行うことができる。
【0167】
比較的弾性の上側および下側接続ストラップ732は、比較的非弾性の接続ストラップ730と平行に配置することができ、それによって、両方の集合のストラップ730、732がインタフェース本体200とヘッドギア734の間に延びる。換言すれば、比較的弾性の接続ストラップ732は、一方の端がヘッドギア734に固定され、反対の端でインタフェース本体200に固定される。比較的弾性のストラップ732の接続位置は実質的に、比較的非弾性のストラップ730の接続位置と一致していてもよい。しかしながら、構成によっては、接続位置はずれていてもよく、それによって非弾性および弾性ストラップ730、732はそれぞれ、ヘッドギア734とインタフェース本体200に異なる位置で接続される。
【0168】
比較的弾性の接続ストラップ732は好ましくは、伸張性(すなわち、伸縮性)を有する。構成によっては、比較的弾性のストラップ732の長さは、伸張していないときの長さの約1.5倍〜約3倍に伸ばすことができる。好ましくは、比較的弾性のストラップ732の長さは、伸張していない、すなわち弛緩したときの長さの約2倍まで伸ばすことができる。好ましくは、比較的弾性のストラップ732の長さは、ストラップ材料を伸ばすこと以外の方法では調節できない。
【0169】
比較的弾性のストラップ732と比較的非弾性のストラップ730を平行に配置することによって、2段階のフィッティング工程が容易となる。比較的弾性のストラップ732によって大まかなフィッティングを行ってから、比較的非弾性のストラップを使って最終的なフィッティングを行う。急性期医療の応用によっては、呼吸治療をできるだけ早く患者に提供することが望ましい。治療を迅速に開始するために、好ましいフィッティング手順では、まずインタフェース本体200を患者Pの顔に当てて保持してから、ヘッドギアアセンブリ700の患者Pの頭の周囲へのフィッティングを行う。フィッティング方法によっては、フィッティング手順は実質的に患者の頭に沿って(すなわち、実質的に患者の正中矢状面に合わせて)行われる。
【0170】
インタフェース本体200の患者Pへのフィッティング方法は、(1)片方の手でインタフェース本体200を、反対の手でヘッドギアアセンブリ700を持つステップと、(2)できるだけ早く治療を提供するために、インタフェース本体200を、患者の口と鼻を覆うように位置付けるステップと(すなわち、治療用の空気流が出始める)、(3)略所望のヘッドギア位置となるまで、ヘッドギアアセンブリ700を患者の頭に回して後方に引っ張るステップと、(4)比較的弾性のストラップ732によってヘッドギアアセンブリ700を頭部に、またインタフェース本体200を顔に保持するのに十分な張力が提供され、その一方で比較的非弾性の接続手段は弛緩したままである状態で、インタフェース本体200および/またはヘッドギアアセンブリ700から手を離すステップと、(5)ヘッドギアアセンブリ700とインタフェース本体200を、比較的非弾性のストラップ730を使って最終的に調節するステップと、を含んでいてもよい。最終調節では、比較的非弾性のストラップ730の長さを調節し、調節機構736を使って所望のレベル/長さに固定することにより、比較的非弾性のストラップ730の長さを所望のレベルまで緊張させることができる。
【0171】
比較的弾性の接続ストラップ732を比較的非弾性の接続ストラップ730と平行に配置することによって、ヘッドギアアセンブリ700を、比較的非弾性ストラップ730の最終調節の前に人が介入せずに所定の位置に留まるように装着できる。比較的弾性のストラップ732により、インタフェース本体200とヘッドギアアセンブリ700の間を大きく移動させて、ヘッドギアアセンブリ700を患者Pの頭と耳の周囲にごく簡単に装着することが可能となる。比較的弾性のストラップ732により提供される保持力は好ましくは、フィッティング中に、インタフェース本体200を患者の顔に、ヘッドギアアセンブリ700を患者の頭に保持するのに十分である。インタフェース本体を顔に適正に密着させるのに十分な張力を比較的弾性のストラップ732で提供する必要はないが、構成によっては、比較的弾性のストラップ732によって提供される弾性保持力を、使用中にインタフェース本体200を顔に密着できるように十分なレベルとすることが可能である。
それでもなお、その構成が、広い範囲にわたる患者の頭の大きさに容易に対応できることが好ましい。
【0172】
比較的非弾性の接続ストラップ730は、ストラップ730を所望の張力/長さに調節した後に、換気中にヘッドギアアセンブリ700が伸びてしまう可能性を低減させるために提供される。弾性ストラップがわずかに伸張しても、マスク内の圧力が若干低下する原因となりうる。若干の圧力低下によって人工呼吸器が応答する可能性があり、それによってヘッドギアまたはヘッドギアとインタフェースの間の接続が弾性的に伸張した結果、ガス供給がパルス状となりうる。この理由により、ヘッドギアおよびヘッドギアとインタフェースの間の接続手段が実質的に非弾性であることが望ましい。膨張型シールを有するインタフェース本体に使用する場合、比較的非弾性の接続ストラップ730の所望の張力/長さは、ガスがインタフェース本体へと流れている間およびシール部材202が膨張している間に設定できる。
【0173】
上記の実施形態では、インタフェース本体200とヘッドギアアセンブリ700の間の接続は、インタフェース本体200の両側の上側および下側ストラップの両方によって行われているが、平行な弾性および非弾性ストラップ732、730の単一の集合またはストラップをインタフェース本体200の片側にのみ設置してもよい。構成によっては、平行な弾性および非弾性ストラップ配置を、各側の上側または下側ストラップ集合の一方のみに提供し、他方には1本のストラップ(弾性または非弾性のいずれか)を提供することもできる。構成によっては、平行な弾性および非弾性ストラップ配置をインタフェース本体の片側のみに提供することができ、もう一方の側は1本のストラップのみ(弾性または非弾性のいずれか)とする。
【0174】
これに加えて、構成によっては、平行な弾性および非弾性ストラップ732、730の配置は、上側および下側ストラップを持たず、1つの高さのストラップのみの構成で提供することができる。構成によっては、上側ストラップをインタフェース本体の下側領域に固定してもよく、その一方で、下側ストラップを上側領域に固定してもよい。このような構成において、ストラップは患者の側頭部で交差する。
【0175】
インタフェース本体200の患者Pへのフィッティングを行う上記の方法は例に過ぎず、変更し、逆転させることさえ可能である。たとえば、ヘッドギアアセンブリ700をまず患者Pの頭に装着してから、ストラップとインタフェース本体200を患者Pの頭の周囲で伸ばし、インタフェース本体200が略所定の位置になるようにしてもよい。最後に、通常、ガス流をインタフェース本体へと供給しながら、比較的非弾性の接続ストラップ730を適当な長までに締めることができる。
【0176】
それゆえ、構成によっては、ほぼ非弾性の接続ストラップ703を、インタフェース本体200とヘッドギアアセンブリ700を患者の頭の周囲に容易に装着できるように十分である、より長い長さに調節する。次に、一方の手でインタフェース本体200を持ち、反対の手でヘッドギアアセンブリ700を持つ。ヘッドギアアセンブリ700を一方の手で頭に大まかに位置付ける。反対の手でインタフェース本体200をヘッドギアアセンブリ700から反対に引っ張ることによって、ヘッドギアアセンブリ700の比較的弾性のストラップ732を伸張させる。インタフェース本体200をヘッドギアアセンブリ700から反対に引っ張られた状態で、インタフェース本体200を患者の顔の前で下方に移動させ、口と鼻の周囲に装着する。手を離すと、比較的弾性のストラップ732が、インタフェース本体200を患者の顔に保持し、ヘッドギアアセンブリ700を患者の頭の所定に位置に保持するのに十分な保持力を提供し、その間、比較的非弾性の接続ストラップ730は弛緩した状態のままである。ヘッドギアアセンブリ700とインタフェース本体200の調節を完了させるために、比較的非弾性の接続ストラップ730を、調節機構736を通じて引っ張り、比較的非弾性の接続ストラップ730を適当な長さ/張力になるようにする。
【0177】
図28を参照し、比較的非弾性の接続ストラップ740が比較的弾性の接続ストラップ742と少なくとも部分的に一体化されている、別の構成を説明する。図の比較的非弾性の接続ストラップ740は、実質的に非伸縮性のストラップを含み、一方の端がヘッドギア734に固定される。実質的に非伸縮性の接続ストラップ740は、反対の端で、接続ストラップ740の長さを調節できる調節機構744を介してインタフェース本体200に接続される。図の構成では、弾性接続ストラップ742は、一方の端から他方の端まで延びる通路746を含み、その中に比較的非弾性の接続ストラップ740が配置される。
調節機構744は、摩擦留め具またはその他のあらゆる適当な調節機構を含むことができ、これにはたとえば、ただしこれらに限定されないが、本願の他の箇所で説明したものが含まれる。調節機構は好ましくは、インタフェース本体200に取り付けられるが、希望に応じて別の場所に位置付けることもできる。図28に示される実施形態の利点は、構成がコンパクトであり、視覚的に障害とならず、ストラップが絡まる可能性が低いことである。
【0178】
当然のことながら、この実施形態は、ヘッドギア734とインタフェース本体200の間に上側および下側ストラップまたは1つの高さのみのストラップを含んでいてもよい。
図28の実施形態は、比較的非弾性の接続ストラップ740のための、摩擦留め具744またはその他適当な調節機構によるロックモードを含む。ロック解除モードでは、比較的非弾性の接続ストラップ740を長くしたり、短くしたりすることができる。ロックモードでは、接続ストラップ740の長さが固定されるか、あるいは長くすることができない。インタフェース本体200のフィッティング時に、接続ストラップ740とそれぞれの調節機構744は伸び過ぎ制限効果を提供し、これによってインタフェース本体200とヘッドギア734の間の距離が長くなる可能性が低くなり、その一方で、大まかなフィッティング中は、より弾性の高い接続ストラップ742によって一時的な保持力が提供される。
【0179】
前述の実施形態と同様に、図28に示される構成は、まずインタフェース本体か、まずヘッドギアアセンブリか、いずれからでも装着できる。好ましいフィッティング手順では、前述のように、インタフェース本体とヘッドギアフセンブリを実質的に順番に装着し、直ちに治療を提供するために、インタフェース本体を患者の顔に設置することから始める。
【0180】
構成によっては、比較的非弾性の接続部材740は図29において破線で示されているように、通路746を通って延びる、実質的に圧縮不能/屈曲不能な背骨状部材748に置き換えても、またはそれで補ってもよい。この実施形態において、背骨状部材748は、インタフェース本体200とヘッドギア734とを接続し、これは概して、伸張と、圧縮または屈曲のどちらにも抵抗する。このような構成では、背骨状部材748は好ましくは半剛性であり、それによってこれは概して屈曲と圧縮力に抵抗し、その結果、ヘッドギアは全体の形状を保持できる。
【0181】
特に半剛性ヘッドギアアセンブリに関連して、形状保持、すなわち自立的な性質によって、アセンブリ全体の装着を直感的に行えるようになることがわかった。具体的には、接続手段および/またはヘッドギア部材が自立型であり、それらが立体形状を保持する場合、ヘッドギアは、あったとしてもわずかな説明だけで、正しい向きに装着できる。自立型の構成では、スラトップが絡まりにくければ、アセンブリ全体の装着に必要な時間が短縮される。
【0182】
背骨状部材748の半剛性の性質により、インタフェース本体200とヘッドギア734との間の接続の長さを簡単な工程で短くすることができる。たとえば、背骨状部材748がロープやコードの代わりに使用する場合、ロック解除位置での調節機構744との接続の長さは、弾性接続ストラップ742の保持力に応答して「自動的に」短くなる傾向がある。この特徴はさらに、システムの脱装着に使用される手順をさらに簡素化するのに役立つ。
【0183】
半剛性ヘッドギア
ここで、患者インタフェース200と使用するための別のヘッドギアの実施形態を、図30〜32を参照しながら説明する。図の構成において、ヘッドギアアセンブリ700は半剛性ヘッドギアアセンブリ800を含む。図30に示されるようなヘッドギアアセンブリの利点は、不使用時に、ヘッドギアアセンブリを実質的に立体の形態に維持できる点であることがわかった。その結果、ヘッドギアアセンブリの患者の頭へのフィッティングが直感的に行われ、ほとんど説明せず、またはフィッティング前に絡まることなく、常に同様に、正確に実行できる。
【0184】
本明細書において「半剛性」という用語は、ヘッドギアアセンブリが、組み立てられたヘッドギアアセンブリが立体形状を取り、設計時に想定されたそのヘッドギアの装着対象の患者の頭と略同じ寸法であるのに十分に硬く、その一方で、患者の骨格にほぼ適合するのに十分な撓み性があることを示す。たとえば、ヘッドギアアセンブリのその他の構成要素(たとえば、ストラップ)のいくつかもまた、部分的または全体的に「半剛性」であってもよく、これによってその構成要素は実質的に「自立型」で、立体形状を保持できる。
「半剛性」のヘッドギアアセンブリとは、ヘッドギアアセンブリの個々の構成要素が半剛性であることを意味するものではない。たとえば、自立型ヘッドギアアセンブリが取る実質的な立体形状は、主としてヘッドギアアセンブリの後方および最上部に関係していてもよい。これに加えて、「半剛性」ヘッドギアアセンブリは、患者の頭に設置したときに、耳の前方と耳の上に延びる半剛性領域を含んでいてもよい。
【0185】
図のヘッドギアアセンブリ800は概して、患者の頭に係合するようになされた第一のストラップ部802を含む。図の第一のストラップ部802は概して、3つの小部分または領域、すなわち下側後方領域804と、側方領域806と、クラウン部812と、を含む。構成によっては、少なくとも第一のストラップ802を、内面と外面に対照的な色を使って形成することができ、それによって、そのように着色されたあらゆる部分の捩れが容易にわかる。
【0186】
下側後方領域804は、使用者の後頭部と係合するようになされる。好ましくは、下側後方領域804は頭と外後頭隆起またはそれより下の位置で係合するようになされる。下側後方領域804は、後頭部周囲の距離にわたり、各側頭部へと延びる。構成によっては、下側後方領域804は、患者の外耳道を通る水平面より下、約25度の位置に配置されるようになされた長さ方向の中心を含む。
【0187】
各側頭部において、第一のストラップ802は左側方および右側方領域806へと上方に延びる。側方領域806はほぼ上外側に(すなわち、上方と外側に)延びる。側方領域806は、患者の耳の後ろに延びるようになされる。好ましくは、側方領域806はまた、患者の乳様突起の後ろに延びるようになされる。第一のストラップ部802の左右の側方領域806の各々は、弓状部808へと延び、またはこれを含む。弓状部808は、上方と前方に曲がる。弓状部808は、患者の各々の耳を超えて延びるようになされる。好ましくは、弓状部808はそれぞれの端部810で終了する。端部810は好ましくは、患者の耳の前方に位置するようになされる。構成によっては、第一のストラップ部802の側方領域806と弓状部808は、柔らかい内側クッション部を含んでいないが、患者の頭/毛髪と直接接触する単一の自立的な弾力材を含んでいてもよい。
【0188】
第一のストラップ部802のクラウン部812は、側方領域806の弓状部808につながる。クラウン部812は、構成によっては、耳の前方に位置付けることができる。好ましくは、クラウン部812は、耳からほぼ縦方向に位置付けられる。より好ましくは、クラウン部812の長さ方向の中心は、外耳道と交差する垂直面から後方に約13mmだけ離間されるようになされる。構成によっては、クラウン部812は、第一の区間814と第二の区間816を含み、第一の区間814と第二の区間816が結合されてクラウン部812を形成する。第一の区間814は左側弓状部808の頂点から上方に延び、その一方で、第二の区間816は右側弓状部808の頂点から上方に延びる。好ましくは、クラウン部812は、自立的な弾力材で形成される。構成によっては、クラウン部812は裏打ち、たとえば柔らかいクッションを有する裏打ち層を含まない。
【0189】
第一の区間814と第二の区間816は、いずれの適当なコネクタ818で接続することもできる。コネクタ818は、第一と第二の区間814、816が調節可能に接続される調節機構を含むことができる。コネクタ818の調節機構は好ましくは、その裏面が実質的に平坦であり、快適さが改善される。好ましくは、調節機構は小さなサイズのばらつきに合わせて調節可能であり、それによってある範囲の大きさに対応できる。たとえば、コネクタ818は、第一の区間814に一連の離間された穴と、第二の区間816に設けられた、上方に突出する1つまたは複数の柱状突起を含んでいてもよい。構成によっては、穴と柱状突起は、1つ、2つ、3つまたはそれより多い数の可能な位置により約20mm間隔での調節を可能にする。このタイプの調節機構により、クラウン部812の長さは、柱状突起を適当な穴に押し込むことによって簡単に調節できる。
【0190】
構成によっては、第一と第二の区間814、816は一体に形成され(すなわち、クラウン部812は、弓状部808に永久的に、または半永久的に接続された1本のストラップである)、構成によっては、第一と第二の区間814、816は調節不能に接続されるが、図の構成では、ヘッドギアアセンブリ800は調節することによって患者に合わせてカスタム化できる。
【0191】
引き続き図30を参照すると、少なくとも弓状部808は好ましくは、顕著な変形や変位に抵抗するのに十分に硬い。換言すれば、弓状部は、負荷が端部810またはその付近に前方方向に加えられたときに、弓状部が開くのに抵抗できる硬さである。加えられる負荷は、たとえば、ただしこれらに限定されないが、ヘッドギアアセンブリ800が患者に装着されて、インタフェース本体200の使用中に、呼吸ガスが患者に供給されるときに経験されうるストラップの張力に対応する。好ましくは、端部810は、負荷に耐えるのに十分な強度を有するように構成され、式、[(t)/12]TS>2400に適合する屈曲挙動を示し、式中、tは材料の厚さ、wはストラップの幅、TSはストラップの形成に使用される材料の引張強度である。好ましくは、少なくともヘッドギアアセンブリ800の第一のストラップ部802の各部分(すなわち、弓状部808、側方領域806、クラウン部812、下側後方領域804)は、2つの式、(1)[(w)/3]FM<6250(tは材料の厚さ、wはストラップの幅、FMはストラップの形成に使用される材料の撓み係数である)と、(2)[(w)/12]TS<24(tは材料の厚さ、wはストラップの幅、TSはストラップの形成に使用される材料の引張強度)を満たすように構成される。これに加えて、ストラップの幅は好ましくは、少なくとも25mmである。構成によっては、ストラップの幅は約30mmである。構成によっては、ストラップの厚さは約1mmである。
【0192】
図30を再び参照すると、左下ストラップ820と右下ストラップ822は各々、下側後方領域804のそれぞれの側から延びる。左下ストラップ820と右下ストラップ822は好ましくは、下側後方領域804から前方に延びる。より好ましくは、左および右下ストラップ820、822は、患者の耳の下の位置で前方に延びるようになされる。
【0193】
左および右下ストラップ820、822は半剛性材料で形成しても、または適合可能材料からなり、半剛性でなくてもよい。本明細書で使用される場合、半剛性材料とは、成形プラスチックまたはシート材料を含んでいてもよく、これにはたとえば、ただしこれらに限定されないが、均質プラスチック材料と接着式不織繊維材料が含まれる。下ストラップ820、822が半剛性である場合、これらは少なくとも下側後方領域804と一体に形成されることが好ましい。しかしながら、構成によっては、下ストラップ820、822は別々に形成でき、下側後方領域804に永久的に、半永久的に、または取り外し可能に固定できる。好ましくは、右よび左下ストラップ820、822は、使用時には、患者の頭および/または首の後ろの周囲に延びる一体の構成要素として形成される。一体の構成要素は、下側後方領域804と一体に形成でき、または下側後方領域804と別に形成して下側後方領域にあらゆる適当な方法で固定してもよい。右および左下ストラップ820、822を1つの部品として形成することにより、有利な点として、故障モードにおいて下側後方領域804からストラップ820、822の一方が外れて、インタフェース本体200が患者の顔から離れる可能性が低減するが、これは、一体のストラップ820、822が下側後方領域804から外れたとしても、一体のストラップ820、822は患者の首または頭の後方の周囲に固定されたままであるからである。
【0194】
左上ストラップ824と右上ストラップ826はそれぞれ、それぞれの端部810から延びる。好ましくは、上ストラップ824,826は患者の側頭部の前方に、およびその周囲に延びる。より好ましくは、上ストラップ824、826は、患者の目よりほぼ下の領域に延びるようになされる。上ストラップ824、826はインタフェース本体200につながる。
【0195】
構成によっては、上ストラップ824、826は第一のストラップ部802とは別に形成される。上ストラップ824、826は半剛性材料で、または適合可能および/または柔軟な材料で作製できる。構成によっては、上ストラップ824、826は、柔らかいクッション(すなわち、患者の頭と対向する面のクッション)とほぼ非弾性の部分(すなわち、クッションの、患者の頭と反対側にある)を含む積層構造で形成することができる。
このような構成は、図30に示されている。下ストラップ820、822または上ストラップ824、826のいずれが積層構造を含んでいてもよく、それによって、ストラップ部は、ストラップの少なくとも患者の頭/顔と接触する内側に柔らかいクッション要素を含む。好ましくは、少なくとも下ストラップ820、822と、構成によっては上ストラップ824、826もまた、各ストラップの穴からの約15Nの最大負荷を支持するように構成される。ストラップは、より大きい負荷を支持するように構成できるが、約15Nの最大負荷を支持することによって、マスクが加圧されたときに遭遇する力に対抗できる強度を有する小型のストラップが提供される。それゆえ、ストラップは好ましくは、インタフェース200への加圧により発生する力に対抗できる大きさである。
【0196】
本明細書においてヘッドギアとストラップに関して使用される場合、「柔らかい」とは、材料の手触りを説明するために使われており、これは触覚的な反応によって評価される材料の質を意味する。これに加えて、本明細書においてヘッドギアとストラップに関して使用される場合、「適合可能な」とは、材料が患者の解剖学的特徴(たとえば、顔要素の周囲)に適合する能力を説明するために使われている。より具体的には、「柔らかい」および/または「適合可能な」材料の少なくとも1つの要素を含むストラップは、「半剛性」および/または軸方向に非弾性でもありうる。
【0197】
上ストラップ824、826のそれぞれの端部810への取付は、いずれの適当な方法で行ってもよい。構成によっては、取付は、図31に例が示されているように、上ストラップ824、826が回転軸828の周囲で回転できるような継手で行われる。回転軸828は、端部810の、垂直線から約33度の位置にある平面が交差する地点に配置することができる。構成によっては、この平面はクラウン部812によって画定される平面の前方約33度の位置にある。しかしながら、構成によっては、上ストラップ824、826は、それ以外の方法で第一のストラップ部802と接続されてもよい。構成によっては、上側ストラップ824、826は、第一のストラップ部802の弓状部808と一体に形成することができる。
【0198】
図34に関して、下ストラップ820、822と下側後方ストラップ804との間の結合部を、図30の実施形態のように一体化することができる。図34に示されているように、ストラップと下側部分は、撓み領域836を設けて、その幅に沿ってある程度屈曲でき(用紙の平面内での運動を示す矢印850参照)、軸の長さに沿ってある程度回転できる(矢印852参照)ように構成することができる。これらの運動は、ストラップ820、822を患者の骨格に適合させるのに役立ち、その一方で、撓み領域836を持たない構成と比較して、厚み方向への屈曲を大きく増大させない。図34に示されるように、撓み領域は溝領域を含んでいてもよく、これは材料を除去された部分を有し、それによって撓み領域836は曲げたり、捩じったりできる椎骨のような外観となり、ストラップ820、822が患者の骨格によりよく適合し、その一方で第一のストラップ部802によって補強される。さらに、ストラップ820、822は、患者に補強部が食い込むか、患者に硬い角が当たる可能性を低減させることができる。補強部は、ストラップ820、822にいずれかの適当な方法で取り付けることもでき、たとえば、ただしこれらに限定されないが、オーバモールド、溶接、糊付け、接着、融合、またはその他がある。
【0199】
構成によっては、図30に示されるように、上記の第一のストラップ部802は、クラウン部812の第一と第二の区間814、816が相互に結合されたときに立体的なヘッドギア形状を取る1つの平坦な部材から形成することができる。構成によっては、第一のストラップ部802と下ストラップ820、822は1つの平坦な部材から形成される。
構成によっては、第一のストラップ部802、下ストラップ820、822、上ストラップ824、826のすべてが、1つの平坦な部材から形成される。構成によっては、第一のストラップ部802と上ストラップ824、826のすべてが、1つの平坦な部材から形成される。構成によっては、第一のストラップ部802は第一の単一の平坦な部材から形成され、第一と第二の下ストラップ820、822は第二の単一の平坦な部材から形成される。第一と第二の単一の平坦な部材は、いずれの適当な方法でも相互に固定できる。
さらに、構成によっては、ヘッドギアアセンブリの1つまたは複数の部分(たとえば、第一のストラップ部802)を、立体の構成要素として、成形またはその他の方法で形成できる。
【0200】
平坦な部材は自立的、弾力性、実質的に非弾性の材料、たとえば、ただしこれらに限定されないが、サントプレーン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、発泡ポリオレフィンまたは不織ポリマ材料等であってもよい。構成によっては、平坦な部材は、ポリエチレンまたはポリプロピレン系で形成される。その材料は、低密度ポリエチレン、たとえばダウレックス(Dowlex)2517とすることができ、これは引張降伏強さが9.65MPa、引張破断強さが8.96MPa、撓み係数が234MPa−2%の直線状低密度ポリエチレンである。平坦な部材は好ましくは、ヘッドギアアセンブリ800が、ヘッドギアアセンブリ800の向きに関係なく、その自重を受けても実質的に形状保持するような材料で形成される。構成によっては、ストラップは、30Nの引張負荷を受けたときの伸張が約6mmを超えない。構成によっては、ストラップは、30Nの引張負荷を受けた時の伸張が約3mmを超えない。
【0201】
構成によっては、ストラップまたは平坦な部材の1つまたは複数は、不織ポリオレフィン(NWP)から形成でき、これはポリオレフィンと接着(たとえば、オーバモードまたは積層)される。このような構成では、オーバモールドによるポリオレフィン材料は基本(principle)形状保持特性を提供する。これに加えて、より柔らかいNWP材料は、皮膚と接触し、所望の快適さレベルを提供するようになされる。さらに、NWP材料は、所望の荷重負荷特性、たとえば所望の引張荷重負荷特性を提供するのに役立つ可能性がある。構成によっては、下ストラップ820、822は柔らかい材料、たとえば、ただしこれに限定されないが、不織ポリマを含んでいてもよい。
【0202】
ヘッドギアアセンブリ800の上記の実施形態は、高さが低く、適合可能なヘッドギアアセンブリ800を提供し、これはほとんど、または実質的にまったく伸張しない。たとえば、ヘッドギアアセンブリの引張弾性率は、約10kPaより大きくすることができる。より好ましくは、ヘッドギアアセンブリの引張弾性率は、約20kPaより大きくすることができる。第一のストラップ部802(すなわち、後頭部および頭頂部と係合する部分)に少なくとも半剛性材料を使用することで、組み立て後のヘッドギアは自立する立体形状を保持できる。この特徴は、本願に記載の特徴と併せて、ほとんど、またはまったく説明せずに直感的に装着できるヘッドギアアセンブリが得られる。特に、フィッティング速度は既存のヘッドギア設計より大幅に高速化されることがわかった。
【0203】
特に図30を参照すると、図の下ストラップ820、822と図の上ストラップ824、826は一連の調節穴830を含み、これはヘッドギアアセンブリ800をインタフェース本体200の各種の構成にフィットさせるための調節機構となる。インタフェース本体200は好ましくは、ストラップ820、822、824、826の穴830と係合するようになされた柱状突起832を含む。製造中、穴は好ましくは、レーザカットを使って形成され、これは穴周辺の材料を焼灼するため、単純な製造方法で穴の耐久性を大幅に増大させることができる。図の取付および調節機構の様式は実践において有効であり、説明をほとんどまたはまったく必要としない直感的なソリューションを提供する。特に、調節/インタフェース本体200への接続が行われる場所は、有利な点として、インタフェース本体の表面上に位置付けられる。好ましくは、調節/インタフェース本体200への接続が行われる場所は、支持部材204の横方向に延びる部分に位置付けられ、これはインタフェース本体200の外面に形成される。このような場所によって、患者の頭がたとえば枕の上に載っている間にも容易にアクセスでき、フィッティング/調節が容易にできる。換言すれば、ストラップの調節は耳の前方および、より好ましくは、インタフェースの最後方の面より前の位置で行うことができる。調節はまた、穴830によって画定される位置の数が限られているため、左右のストラップ長さの調節のバランスを正しくする役割も果たす。上および/または下ストラップ(820、822、824、826)に設けられた穴830は、非常に容易に数え、または視覚的にマッチさせることができ、それによってヘッドギアが対称にフィッティングされるように仕向けられる。さらに、たとえば図22のスロットと面ファスナ要素を使用した場合に見られるような、引っ張っている間のストラップの折り返しがないため、フィッティング中にストラップ820、822、824、826に加えられる可能性のある力は有意に小さい。換言すれば、図30〜32に示される取付および調節機構では増倍効果(multiplier effect)が生じえない。
【0204】
これに加えて、図のストラップ820、822、824、826は、半剛性の構成により、自然に前方に出る傾向がある。構成によっては、図のストラップ820、822、824、826の一部のみが半剛性構造で形成される。この部分は、ストラップが患者の頭の背後に隠れたり、絡まったりするのを防止できるように、横または前方に出ることができる。これに加えて、構成によっては、接続される下ストラップ820、822の部分と下側後方領域804の部分が半剛性であり、その一方で、遠位端(すなわち、ストラップ820、822の、インタフェース本体200に繋がる端)は実質的により撓み性で、それ以外は軸方向に比較的非弾性のままである。ストラップ820、822、824、826の前方に出る性質によって、穴830をインタフェース本体200の取付用柱状突起832と位置付け、整列させるのを直感的かつ簡単に行うことができる。ストラップ820、822、824、826がある患者にとって比較的長い場合、ストラップ820、822、824、826は柱状突起832が通される穴830より前方に大きく飛び出す可能性がある。このような状況では、前方に飛び出した分のストラップ820、822、824、826を折り返し、別の穴830に柱状突起832を通すことが可能である。その結果、余った長さのストラップがインタフェース本体の上に保持される、すっきりとした構成となる。
【0205】
一実施形態において、上ストラップ824、826と患者インタフェース200との間の取付は半永久的であることが好ましい。このような実施形態でのフィッティング工程をここで、特に図32A〜32Dを参照しながら説明する。図32Aにおいて、直ちに呼吸治療を提供するために、医療従事者がインタフェース本体200を持ってこれを患者の顔に載せる。インタフェース本体200を顔に載せる際、インタフェース本体は前述の密着フランジ208を含んでいる。フランジ208は、患者の顎を収容し、および/またはその上に位置付けられるような凹部を含む。それゆえ、インタフェース本体200を顔に載せる際、顎を凹部の中に位置付け、その後、インタフェース本体200の残りの部分を顔と接触させる。インタフェース本体が顔の所定の位置にある状態で、医療従事者は反対の手で、インタフェース本体に上ストラップ824、826によって連結されているヘッドギアアセンブリ800を持ち、このヘッドギアアセンブリ800を患者の頭の上へと持ち上げる。図32Bに示されるように、医療従事者はヘッドギアアセンブリ800を患者の後頭部に沿って引き下げる。下ストラップ820、822は半剛性の構造であるために、ある程度絡まらない状態のまま、側頭部付近に出る。これに加えて、インタフェース本体200を上ストラップ824、826によって緩く顔に当てて保持する。図32Cに示されるように、医療従事者は下ストラップ820、822を、適当な穴830に柱状突起832を嵌めることによってインタフェースアセンブリに接続する。希望に応じて、上ストラップを図32Dに示されるように調節できる。上ストラップ820、822および/または下ストラップ824、826に最終調節を加えて、最終的なフィッティングを完了させることができる。当然のことながら、上記のステップは必ずしも記載された順序で行う必要はない。
【0206】
特に図31を参照すると、ヘッドギアアセンブリ800は実質的に非弾性の上ストラップ824、826を含み、これらはヘッドギアアセンブリ800に回転軸828で固定される。反対の端において、実質的に非弾性の接続ストラップ824、826は、ストラップ824、826の長さを変えられる調節機構でインタフェース本体200に接続することができる。たとえば、インターフェース本体200とヘッドギアアセンブリ800との間の接続の長さは、インタフェース本体200の柱状突起832をストラップ824、826の各々の適当な穴830に嵌めることによって調節できる。左右の上ストラップ824、826の各々は、伸張可能な弾性ストラップ834を含むことができ、これは一方の端でヘッドギアアセンブリ800に、反対の端でインタフェース本体200にいずれかの適当な方法で固定される。好ましくは、平行なストラップ(すなわち、平行な弾性および非弾性ストラップ)が使用される場合、2本のストラップを相互に異なる色にし、弾性および非弾性ストラップの色を変える。弾性および非弾性ストラップ824、826、834を平行に配置することによって、前述のような2段階のフィッティング工程が容易になる。大まかなフィッティングを弾性ストラップ834で行うことができ、その後、最終的な非弾性フィッティングを、非弾性ストラップ824、826を使って行う。構成によっては、下ストラップ820、822を上述のものと同様に構成できる。
【0207】
ヘッドギア
図33は、別のヘッドギアアセンブリ900を含む。ヘッドギアアセンブリ900は、前述のもののような様々な患者インタフェースに使用できる。具体的には、図のヘッドギアアセンブリ900は、前述の患者インタフェース200の構成に特に適している。ヘッドギアアセンブリ900は、不器用な人にとっても、容易に脱装着できるように構成されている。これに加えて、図のヘッドギアアセンブリ900は、患者の耳の下または後方に延びるストラップがないため、装着と取り外しが特に容易で快適に行える。患者の耳の下に延びるストラップがあるヘッドギアアセンブリでは、これらのストラップが、取り外しまたは装着中に患者の耳に引っ掛かる可能性がある。
【0208】
図のヘッドギアアセンブリ900は、患者の頭頂部の上に延びるクラウンストラップ902を含む。クラウンストラップ902は好ましくは、患者の頭の曲線と実質的に同一平面である。好ましくは、クラウンストラップ902はほぼ耳の背後の位置において患者の頭頂部に位置付けられるようになされる。
【0209】
クラウンストラップ902は、サイドバーン部904を含むことができる。サイドバーン部904は、ほぼ縦方向に延びるクラウンストラップ902から延びる。好ましくは、サイドバーン部904は耳のほぼ上の位置においてクラウンストラップ902から延びる。サイドバーン部は、耳に関して下方と前方に延びる。サイドバーン部904は好ましくは、患者の耳の下の前方位置で終了する。
【0210】
ヘッドギアアセンブリ900はさらに、バックストラップ906を含む。ストラップ906は、患者の耳のほぼ上の位置において、枢動軸908でクラウンストラップ902に枢動可能に接続できる。枢動軸908の位置は好ましくは、ほぼ縦方向に延びるクラウンストラップ902とサイドバーン部904の間の接続部の付近にある。
【0211】
枢動軸908によって、バックストラップ906は2つの動作状態の間で枢動できる。
図33Aに示されている第一の動作状態では、バックストラップ906を上方に枢動させて、患者の後頭部から外すことによって、ヘッドギアアセンブリ900を簡単に取り外すことができる。図33Bに示されている第二の動作状態では、バックストラップ906を下方に旋回させることができ、それによってバックストラップ906の下側後方部が患者の後頭部と係合する。好ましくは、バックストラップ906の下側後方部は、外後頭突起において、またはそれより下の位置で患者の頭と係合するように構成される。
【0212】
バックストラップ906とクラウンストラップ902にはロック機構を設けることができ、これは、バックストラップ906を下側の位置、すなわち実質的に図33Bに示されている位置にロックするように動作できる。構成によっては、ロック機構は戻り止めおよびそれと協働する突起を含み、これらをそれぞれクラウンストラップとバックストラップの一方に関連付けることができる。戻り止めと突起は好ましくは、ヘッドギアアセンブリ900の両面に配置された、対応するセットに反映される。
【0213】
構成によっては、クラウンストラップ902に突起を設けることができ、その一方で、バックストラップ906にそれと協働する戻り止めを設ける。バックストラップ906を図33Bに示される位置まで下げると、戻り止めが突起と整列して、バックストラップ906がその位置にロックされ、それによってバックストラップ906がインタフェース本体200をストラップで患者の顔に引き付けることができる。
【0214】
バックストラップ906を解放して、ヘッドギアアセンブリ900を容易に取り外すことができるようにするために、突起は、付勢されたばねとすることができ、突起が戻り止めから外れるまで付勢ばねに押し付けることによって解放できる。あるいは、バックストラップ906は、ロック機構を克服するが、これに損傷を与えない力で持ち上げることができる。その他にも多数の適当なロック機構をヘッドギアアセンブリ900に使用できる。
【0215】
図のヘッドギアアセンブリ900のサイドバーン部904は取付点916、918を提供でき、そこからストラップ920、922(すなわち、それぞれ上と下のストラップ)をインタフェース本体200に取り付けることができる。構成によっては、ヘッドギアアセンブリ900は、インタフェース本体200とヘッドギアアセンブリ900との間に、サイドバーン部904の各側に1本のみのストラップを含むことができる。構成によっては、上ストラップ920をインタフェース本体200の下側部分に接続することができ、その一方で、下ストラップ922をインタフェース本体200の上側部分と接続して、十字型にすることができる。
【0216】
構成によっては、ストラップ920、922の1つまたは複数を伸縮性の弾性材料で形成できる。構成によっては、ストラップ920、922の1つまたは複数を実質的に非弾性の材料で形成できる。クラウンストラップ902とサイドバーン部904は、半剛性の自立的材料で形成でき、それによってヘッドギアアセンブリ900は、実質的に立体形状を取ることができ、ほぼ絡まない。これに加えて、バックストラップ906を半剛性の、実質的に自立的な材料で形成できる。構成によっては、この材料はたとえば、ただしこれに限定されないが、適合可能であり、かつ半剛性の部分の積層構造を含むことができる。
【0217】
クラウンストラップ902の少なくとも一部とサイドバーン部904は、患者の快適さを改善するためにクッションを含むことができる。バックストラップ906もまた、クッションの少なくとも一部を含むことにより、患者の快適さをさらに改善できる。クッションは、ヘッドギアの、患者の皮膚および/または毛髪に隣接する内側に少なくとも1層のクッション材を提供する、いずれの適当な構成であってもよい。構成によっては、クッションは発泡材またはその他の柔らかい材料の柔らかい層とすることができる。構成によっては、半剛性のヘッドギア要素は、柔らかい材料で完全に、または部分的に包囲することができ、またはたとえば、ただしこれに限定されないが、柔らかい材料でオーバモールドすることもできる。
【0218】
ここで図37を参照すると、そこにはインタフェースアセンブリ1010が示されている。図のインタフェースアセンブリ1010は一般に、マスクアセンブリ1012とヘッドギアアセンブリ1014を含む。図のアセンブリ1010について以下により詳しく説明するが、マスクアセンブリ1012は前述のいずれの方法でも構成でき、ヘッドギアアセンブリ1014は前述のいずれの方法でも構成でき、マスクアセンブリ1012とヘッドギアアセンブリ1014は前述のいずれの方法でも結合できる。それゆえ、本明細書のいずれかの箇所に記載されたマスクアセンブリとヘッドギアアセンブリをミックスし、適合させることが可能である。
【0219】
図38を参照すると、図のマスクアセンブリ1012は概して、着用者の顔に接触するようになされたマスクシール1020を含む。マスクアセンブリ1012はまた、内骨格1022と外骨格1024も含み、これらの間にマスクシール1020の少なくとも一部が挟まれる。前述の構成と同様に、図のマスクアセンブリ1012は、着用者の鼻と口の両方を覆うように構成される。それゆえ、図のマスクアセンブリ1012は着用者の口の開口部と鼻の開口部を取り囲むように構成される。しかしなから、前述の構成の多くとは異なり、図のマスクは好ましくは、着用者の鼻の実質的部分を取り囲む。
【0220】
図のマスクアセンブリ1012は、用途に応じた大きさとすることができる。好ましくは、マスクアセンブリ1012は、約2歳からそれより上の様々な年齢の着用者による使用に対応できるように、各種の大きさで提供される。マスクアセンブリ1012は、着用者の顎から鼻梁までの測定値に基づいた大きさとすることができる。好ましくは、マスクアセンブリ1012の大きさ範囲を提供でき、マスクアセンブリの連続する各サイズは約3mm〜約7mmだけ重複する。より好ましくは、大きさ範囲は約5mm重複させることができる。たとえば、3種のマスクアセンブリサイズを以下のような顎から鼻梁までの測定値の基準に基づくものとすることができ、すなわち、(1)測定値が約110mmまでの人用の小またはサイズ1、(2)測定値が約105m〜約130mmの人用の中またはサイズ2、(3)測定値が約125mm〜約145mmの人用の大またはサイズ3である。
【0221】
図39を参照すると、マスクアセンブリ1012は好ましくは、ほぼ垂直の中心平面Vの周囲で実質的に対称に構成される。図のマスクアセンブリ1012は、第一の最も外側の頬部1030から第二の最も外側の頬部1032までより、上から下の方が長い。さらに、図のマスクアセンブリ1012は、ほぼ三角形の上側部分1034(すなわち、上側部分1034は、前から見たときにほぼ三角形の、頬部1030、1032間に延びる周辺面を有する)と、ほぼU字形または幾分三角形の下側部分1036(すなわち、下側部分1036は、前から見たときにほぼU字形または実質的に三角形の、頬部間に延びる周辺面を含む)と、を含む。
【0222】
端がほぼ三角形であり、上下の方が長い寸法であることから、図のマスクアセンブリ1012は、前述のマスクアセンブリと同様に、正中面または中心平面Vの周囲で撓み性がある。特に、図のマスクアセンブリ1012は好ましくは、垂直中心平面Vの周囲の方が、いずれのほぼ水平に延びる平面の周囲よりも撓み性が有意に高い。換言すれば、中心平面Vに沿って位置付けられる上側部分1034と下側部分1036において形成される長さと点は、中心平面Vの周囲で撓みやすくするのに役立つ。反対に、U字形の脚を形成する、実質的に平行な側辺は、マスクアセンブリ1012が下側部分1036の水平面の周囲で撓みにくくする。
【0223】
マスクシール
マスクシール1020は好ましくは、膨張型のシールを含み、これは前述のシールと同様の湾曲挙動を見せる。次に図41を参照すると、図のマスクシール1020は概して、前方に配置される外面1040を含む。外面は、好ましくはフランジ1044によって囲まれる開口部1042を画定する。図の開口部1042はほぼ卵形の形状であり、縦方向に長い寸法を有する。図の構成のフランジ1044は厚さが増大する。
【0224】
図40に示されるように、図のマスクシール1020はまた、後方に配置される密着部を含み、これは周辺縁1052から内側に延びる顔面接触フランジ1050を含む。前述のように、マスクシール1020は好ましくは、膨張型または風船様シールタイプである。マスクシール1020は前述のように構成することができる。
【0225】
好ましくは、マスクシール1020はシリコーン、熱可塑性エラストマ、または発泡材(たとえば、スキン層を含む連続気泡または独立気泡)で形成される。より好ましくは、マスクシール1020はシリコーンまたは熱可塑性エラストマ(TPE)で形成される。
【0226】
マスクシール1020の形成においては、マスクシール1020の製造に使用されるコアとキャビティのセットが作られる。好ましくは、コアとキャビティのセットの少なくとも一部は粗面仕上げを含み、これはマスクシール1020に表面粗さを付与し、それ自体は着用者の顔とマスクシール1020の間の相互作用を改善する。いずれの適当な技術でも、粗面仕上げの形成に使用できる。たとえば、粗面仕上げは、たとえば、ただしこれらに限定されないが、酸エッチング、スパークエロージョン、または機械加工もしくは機械微細加工によって形成できる。構成によっては、粗面仕上げは、砥粒またはその他適当な材料を用いた噴射加工で形成できる。構成によっては、マスクシール1020の成形に使用されるコアおよび/またはキャビティ要素の少なくとも一部を、平均粒径約200マイクロメートルの材料を用いた噴射加工によって粗面化する。好ましくは、マスクシール1020の成形に使用されるコアおよび/またはキャビティ要素の少なくとも一部を、平均粒径約1mmより大きい材料を用いた噴射加工によって粗面化する。より好ましくは、マスクシール1020の成形に使用されるコアおよび/またはキャビティ要素の少なくとも一部を、平均粒径約1.8mmの材料(たとえば、ステンレススチール弾)を用いた噴射加工で粗面化する。より大きな平均粒径では、より粗い表面が得られる。
【0227】
表面がより粗くなると、マスクシール1020と着用者の皮膚との間の摩擦係数が小さくなる。表面粗さの増大、およびそれに対応するマスクシール1020の表面テクスチャによる摩擦係数の低下は、長期間にわたると皮膚潰瘍の原因となりうる、皮膚の擦過を軽減すると考えられる。そのため、表面粗さの増大(たとえば、rms粗さが少なくとも約18マイクロメートル)によりもたらされる低い摩擦係数は、たとえば、ただしこれらに限定されないが、図4、6、7に関して前述した湾曲するシールに見られるようなフランジに特に有用である。好ましくは、少なくともマスクシール1020のうち、使用者の皮膚と接触すると予想される部分にテクスチャ加工を施す。構成によっては、マスクシール1020の、テクスチャ加工された表面の二乗平均平方根(rms)は、少なくとも約18マイクロメートルである。他の構成では、マスクシール1020の、テクスチャ下降された表面のrmsは約18マイクロメートル〜約70マイクロメートルである。1つの構成では、マスクシール1020の、テクスチャ加工された表面のrmsは約50マイクロメートルである。
【0228】
外骨格
図38を再び参照すると、図のマスクアセンブリ1012の外骨格1024はほぼ、マスクシール1020の大部分と重複する。図38の構成において、外骨格1024は着用者の鼻の少なくとも一部と重複する。より好ましくは、図の外骨格1024は概して、少なくとも鼻の先端を取り囲むように構成される。さらにより好ましくは、図の実施形態の外骨格1024は、鼻梁のすぐ下の位置まで鼻を取り囲むように構成される。
【0229】
外骨格1024は、いずれの適当な材料でも形成できる。好ましくは、外骨格1024はポリプロピレンまたはポリエチレンで形成される。1つの構成では、外骨格1024は高密度ポリエチレンで形成される。高密度ポリエチレンは、ポリプロピレンまたはポリカーボネート等、より剛性の材料と比較したときに、マスクアセンブリの撓み性が改善される。
【0230】
外骨格1024は、風船様のマスクシール1020をある程度補強しながら、マスクアセンブリ1012に所望のレベルの撓み性を提供するのに十分な柔軟性を保つ。好ましくは、外骨格1024とマスクシール1020の重複は、着用者の鼻梁を覆い、着用者の顔の両側の涙管の付近までを所望の程度に密閉するのに役立つ。
【0231】
図41を参照すると、外骨格1024は好ましくは、リム1062によって画定される開口部1060を含む。開口部1060は好ましくは、ほぼ卵形であり、マスクシール102の中に画定される開口部1042と同様である。好ましくは、リム1062は、外骨格の曲線的な外観と、ほぼ同一平面である。換言すれば、リム1062は、そうでなければ曲線的な外骨格1024に、台地とよく似た、実質的に平坦な面を画定する。より具体的には、図42に示されるように、図の構成では、側面図におけるリム1062の湾曲によって、下側部分1061は、外骨格1022の前方を向く表面とほぼ平行になり、上側部分1063はその面に対してほぼ垂直となる。好ましくは、リムの側面もまた、外骨格1022の前方を向く面とほぼ平行である。構成によっては、リムの1カ所以外はすべて、外骨格の表面に対してほぼ平行である。
【0232】
外骨格1024は、外面1064を含む。外面1064は好ましくは、複数の取付部材1066を含む。取付部材1066は、いずれかの適当な方法で外骨格1024に固定できる。図の構成では、取付部材1066は外骨格と一体に成形される。
【0233】
図の外骨格1024は、取付部材1066を含む。図42に示されるように、図の取付部材1066は好ましくは、マスクアセンブリ1012を側面図で見たときに、図のマスクアセンブリ1012から実質的に水平に延びる。また、図39に示されるように、取付部材1066はまた、好ましくは、ほぼ垂直な中心平面または正中面Vに対して実質的に平行に延びる。構成によっては、取付部材1066はヘッドギアアセンブリ1014によって加えられる引張力に対してほぼ平行に延びる。
【0234】
図39を参照すると、第一のほぼ水平な平面P1と第二のほぼ水平な平面P2は破線で示されている。好ましくは、2つの平面P1、P2の位置は概して、図26に示されるように、力の平面によって二等分される。図39に示されるように、前から見たときに、第一の面積A1は、第一のほぼ水平な平面P1より高い位置に画定され、第二の面積A2は、第二のほぼ水平な平面P2より低い位置に画定される。好ましくは、第一の面積A1は第二の面積A2と同じである。これに加えて、上側取付部材1066は好ましくは、ストラップが着用者の目の領域に入る可能性を低減できるように低く位置付けられる。構成によっては、取付部材1066は、マスクに結合したときにストラップが交差しないように、垂直中心平面Vから横方向に十分外側に位置付けられる。構成によっては、取付部材1066は外骨格1024の最も外側の縁辺の近くに位置付けられる。
【0235】
取付部材1066は、いずれかの適当な形状を有することができる。図の構成において、取付部材1066は概してテーパが付けられ、それによってこれらは外面1064から遠ざかるにつれて狭くなる。換言すれば、取付部材1066の1つまたは複数はテーパピンとすることができる。このような構成は、ヘッドギアアセンブリ1014をマスクアセンブリ1012に連結するのを助ける。構成によっては、取付部材1066はほぼ円筒形とすることができる。好ましい構成において、取付部材は広がった頭部を含まない。広がった頭部は、インタフェースアセンブリのフィッティング中、着用者の顔により大きな圧力を加える可能性がある。したがって、広がった頭部は、使用可能ではあるが、より好ましくない。
【0236】
内骨格
マスクアセンブリ1012はまた、内骨格1022を含む。内骨格はいずれかの適当な材料で形成できる。しかしながら、好ましくは、内骨格1022はポリプロピレンで形成される。好ましくは、内骨格1022の少なくとも中央部分は実質的に剛性である。
【0237】
図の内骨格1022は、外骨格1024によってほぼ取り囲まれるが、内骨格1022の少なくとも一部は、外骨格1024を通って延びる。図の構成では、内骨格1022の中央部分1070が外骨格1024の開口部1060を貫通する。より好ましくは、内骨格1022の中央部分1070は、外骨格1024の開口部1060と、マスクシール1020の開口部1042を貫通する。構成によっては、中央部分1070は壁がより厚く、それによって中央部分1070の剛性は内骨格1022の周囲の部分に関して、より大きい。
【0238】
図の中央部分1070はほぼ長方形または卵形の形状を含む。好ましくは、中央部分1070は、マスクシール1020の開口部1042と外骨格1024の開口部1060の少なくとも一方の中に延び、および/またはそれを貫通する大きさおよび構成とされる。
【0239】
ここで図43図44を参照すると、溝1072を画定する逃げ溝1076が好ましくは、中央部分1070を包囲し、または実質的に包囲する。肩部1074を、中央部分1070の少なくとも一部に沿って、溝1072によって画定できる。図の溝1072は中央部分1070をほぼ取り囲み、中央部分1070を取り囲む1つの肩部1074を形成しているが、複数の異なる溝1072および/または肩部1074を使って内骨格1024の第一の部分を内骨格1024の第二の部分から分離することができる。
【0240】
逃げ溝1076は好ましくは、中央部分1070の周辺に沿って変化する。換言すれば、図の構成において、逃げ溝1076は図の構成の底部において、および側に沿って、最上部より顕著である。たとえば、ただしこれに限定されないが、逃げ溝1076は、中央部分1070の底部で約2mm〜約3mm、その最上部で約0mmとすることができる。
構成によっては、逃げ溝は周辺の全周にわたって設けてもよく、これによって一度組み立てると組み立てるのがより難しい構成となる。逃げ溝が周辺の全周にわたって設けられている場合、逃げ溝の大きさは場所によって異なっていてもよい。逃げ溝の大きさを変えることによって、製品を組み立てるのに必要な力のほか、製品を分解するのに必要な力が変化しうる。
【0241】
好ましくは、逃げ溝1076によって、内骨格と、外骨格の開口部1060を画定するリム1062とをスナップ式に嵌合させやすくなる。それゆえ、内骨格と外骨格は好ましくは、相互に嵌合する。たとえば、リム1062の底部を、肩部1074の下の、逃げ溝1076により画定される領域に滑り込ませることができる。次に、外骨格1024を内骨格1022に押し付けることによって、リム1062の残りの部分が肩部1074に沿って、逃げ溝1076により画定される領域に滑り込み、その結果、リム1062が肩部1074の上の位置にスナップ式に嵌る。
【0242】
図44を参照すると、外骨格1024のリム1062は好ましくは、長さXL、幅XW、周囲長さXPを有する。このような外骨格の寸法は、図の構成においては、リム1062の最も内側の部分に沿って画定される。内骨格1022の肩部1074も、長さNL、幅NW、周辺長さNPを有する。周辺長さは、図の構成の包囲長さである。たとえば、リムが真円であれば、周辺長さはその円周である。図の構成では、内骨格の長さと外骨格の長さの差は、内骨格の幅と外骨格の幅の差より小さい(すなわち、NL−XL<NW−XW)。これに加えて、図の構成において、外骨格の周辺長さXPは内骨格の周辺長さNPより短い。これらの関係は、内骨格1022と外骨格1024とをスナップ式に嵌合させるのに役立つ。
【0243】
図の構成において、マスクシール1020の中の開口部1042を画定するフランジ1044は溝1072の中またはこれに沿って位置付けられ、それによってフランジ1044を内骨格1022と外骨格1024の間にきつく挟むことができる。マスクシール1020を内骨格1022と外骨格1024の間にきつく挟むことによって、マスクシール1020内からの漏出を減少させ、または排除できる。これに加えて、マスクシール1020を次に、内骨格の前面と外骨格の背面の間に固定する。内骨格は実質的に、外骨格が重なるマスクシール1020の部分と同じ部分の下に位置付けることができる。
【0244】
図43図44を引き続き参照すると、内骨格1022により、弁開口部1080と呼吸接続開口部1082を位置付けることのできる領域が提供される。より具体的には、内骨格1022の中央部分1070に開口部1080、1082を設けることができる。内骨格は開口部1080、1082を提供するため、外骨格1024とマスクシール1020の一方または両方は好ましくは、内骨格の少なくともこの部分と重複しない。
【0245】
弁開口部1080に、好ましくは、窒息防止弁1084が組み込まれる。図の構成では、少なくとも1つ、好ましくは2つの支柱1086が開口部1080の中に延びる。支柱1086は取付部材1088につながる。取付部材1088は弁1084を受け、これは好ましくは、正しく挿入すると取付部材1088の中にロックされる抜け止め付の軸(barbed stem)を有する単一部品要素を含む。図の構成では、取付部材1088はリング状である。窒息防止弁1084の取付には、他の方法を使用してもよい。
【0246】
図40を参照すると、呼吸チューブコネクタ1090がマスクアセンブリ1012の残りの部分から取り外された状態で示されている。図の呼吸チューブコネクタ1090は、軸部1092と球状部1094を含む。球状部1094は、開口部1082の中に画定されるソケット1096に受けられる。具体的には、図の構成では、軸部1092を開口部1082の中に、球状部1094がソケット1096の所定の位置に嵌るまで挿入できる。このような構成によって、軸部1094が内骨格1022に関して旋回および枢動できる。
【0247】
図の呼吸チューブコネクタは、入口端1100と出口端1102を有する。出口端1102は好ましくは、入口端1100と比較して、より大きな水力直径を有する。出口端1102に、入口端1100より大きな水力直径を持たせることによって、コネクタ1090を通るガスまたは流体の流れは入口端1100から出口端1102に向かって低速となる。
【0248】
ヘッドギアアセンブリ
図37を再び参照すると、ヘッドギアアセンブリ1014は、フレーム1110と、軸方向に比較的非弾性のストラップの第一の集合1112と、軸方向に比較的弾性のストラップの第一の集合1114と、軸方向に比較的非弾性のストラップの第二の集合1116と、を含む。前述のように、軸方向に比較的弾性のストラップの第一の集合1114は好ましくは、フレーム1110とマスクアセンブリ1012に固定され、それによってインタフェースアセンブリ1010の着用者への大まかなフィッティングを非常に迅速に行うことができる。換言すれば、軸方向に比較的弾性のストラップ1114は、フレーム1110とマスクアセンブリ1112の間に延び、伸張してマスクの当初の位置付けと大まかなフィッティングを可能にし、弾性ストラップ1114はまた、最終的なフィッティング中にマスクアセンブリ1112の位置を保持するのを助ける。その後、軸方向に比較的非弾性のストラップの第一と第二の集合1112、1116を使って、インタフェースアセンブリに適した最終的な張力レベルとすることができる。
【0249】
ここで図45を参照すると、図のフレーム1110は装着ように構成される前の状態で示されている。フレーム1110は、好ましくは半剛性であり、それによってこれは、組み立てられたときに、設計時にそのフレームの装着対象とされた着用者の頭と略同じ寸法の立体形状をとるのに十分に硬く、その一方で、着用者の骨格にほぼ適合するのに十分な撓み性を有する。構成によっては、フレーム1110は、ポリエチレンまたは熱可塑性ゴムから形成される。構成によっては、フレームは、シール部材に関して前述した方法でテクスチャ加工された表面である、1つまたは複数の表面を有することができる。
【0250】
図のフレーム1110は、第一の上側アーム部1120と、第二の上側アーム部1122と、第一のクラウンストラップ部1124と、第二のクラウンストラップ部1126と、を含む。好ましくは、第一の上側アーム部1120と第二の上側アーム部は相互につながる。より好ましくは、第一の上側アーム部1120と第二の上側アーム部1122は、着用者の後頭部に位置付けられることになる領域で相互につながる。第一と第二の上側アーム部は、着用者の外後頭突起付近の位置から前方および上方に着用者の耳の上の位置まで巻かれるように構成される。図の構成では、第一と第二の上側アーム部1120、1122は一体に形成される。しかしながら、構成によっては、第一と第二のアーム部1120、1122は別々に形成して、相互に接続することもできる。
【0251】
第一の上側アーム1120の端と第二の上側アーム1122の端の各々は、柱状突起1130を含む。柱状突起1130は、好ましくはほぼ同一平面の頭部1132と中央穴1134を含む。他の構成も希望に応じて使用できる。
【0252】
図37を参照すると、第一のクラウンストラップ部1124と第二のクラウンストラップ部1126は、それぞれ第一と第二の上側アーム1120、1122から延びる。好ましくは、第一と第二のクラウンストラップ部1124、1126は、相互に接続され、このように接続されると、着用者の頭頂部の上に延びるように構成される。図の構成では、第一のクラウンストラップ部1124は一連の穴1140を含み、その一方で、第二のクラウンストラップ部1126はバックル1142と1つまたは複数の柱状突起1144を含む。第一のクラウンストラップ部1124の端はバックル1142に通すことができ、柱状突起を対応する穴1140に挿入して、クラウンストラップ部1124、1126を相互に固定できる。
【0253】
先述のように、フレーム1110は、第一と第二の非弾性ストラップ1112、1116と弾性ストラップ1114によってマスクアセンブリ1012に接続することができる。1つの構成では、弾性ストラップ1114と第一の非弾性ストラップ1112は、相互に固定される部分を有する。ストラップは、いずれかの適当な方法で相互に固定できる。
たとえば、ストラップは機械的に固定しても(たとえば、面ファスナ、穴と柱状突起、またはスナップフィット)、溶接してもよい。ストラップ1112、1114を固定することは、フィッティング中に第一の非弾性ストラップ1112の動きを制限する役割を果たし、それによって第一の非弾性ストラップ1112が着用者の顔に垂れ下がりにくくなる。ストラップ1112、1114の固定部分は好ましくは、柱状突起1130においてフレーム1110に固定される。固定部分を柱状突起1130に取り付けることによって、固定部分が分離しても、ストラップ1112、1114はどちらも柱状突起1130に接続されたままとなる。これに加えて、ストラップ1112、1114は柱状突起1130および/またはフレーム1110に関して枢動可能である。
【0254】
第二の非弾性ストラップ1116は好ましくは、単一のモノリシック部品で形成される。非弾性ストラップ1116は、着用者の後頭部からマスクアセンブリ1012まで巻かれるように構成される。好ましくは、第二の非弾性ストラップ1116は、着用者の耳のほぼ下の位置において、マスクアセンブリ1012へと延びる。第二の非弾性ストラップ1116は、いずれかの適当な方法でフレーム1110に固定できる。構成によっては、第二の非弾性ストラップ1116をフレーム1110の一部にくぐらせることができる。
他の構成では、第二の非弾性ストラップ1116をフレーム1110の一部に超音波溶接することができる。
【0255】
好ましくは、第二の非弾性ストラップ1116は、フレーム1110の少なくとも一部の下に重なる。図の構成では、第二の非弾性ストラップ1116とフレーム1110の間の接合部における拡大部1150。拡大部1150は、上側タブ1152と下側タブ1154含むことができる。構成によっては、上側タブ1152は下側タブ1154より大きい。上側タブ1152は、有利な点として、フレームを着用者の頭の所定の位置に引っ張るために使用でき、またフレームを着用者の頭から引き外すために使用できる指当て面となる。タブ1152、1154の一方または両方はまた、フレーム1110の縁辺を包むように構成され、それによってフレーム1110の縁辺を着用者の皮膚と直接接触しないように保護できる。
【0256】
前述のように、弾性ストラップ1114は、フレーム1110とマスクアセンブリ1012に接続できる。構成によっては、弾性ストラップ1114は、マスクアセンブリ1012に接着、融着、成形、溶接またはその他の方法で永久的に固定される。1つの構成では、弾性ストラップ1114は、取付部材1066の上側の集合の付近において、外骨格に固定される。
【0257】
上側および下側非弾性ストラップ1112、1116は好ましくは、一連の開口部またはその他1160を含む。開口部1160は、穴であってもよく、または十字型の穿孔またはその他であってもよい。開口部1160は取付部材1066を受け、マスクシール1020と着用者の顔面との間に異なるレベルの負荷が加わるようにする。好ましくは、非弾性ストラップ1112、1116のうち、一連の開口部またはその他1160を取り囲む領域を熱によってエンボス加工し、補強領域1170を画定することができる。材料をエンボス加工することによって、開口部1160またはその他を補強できる。その他適当な技術で開口部を補強することもできる。たとえば、はと目、プラスチック補強材、より厚い材料またはその他も使用できる。
【0258】
図46を参照すると、下側の非弾性ストラップ1116を取付部材1066に固定したとき、下側非弾性ストラップ1116は好ましくは、それぞれの取付部材1066の内面1172と90度未満の角度αを成す。同様に、図46に示されるように、上側非弾性ストラップ1112を取付部材1066に固定したとき、上側非弾性ストラップ1112は好ましくは、それぞれの取付部材1066の内面1174と90度未満の角度βを成す。
【0259】
前述の他の構成と同様に、図のストラップ1112、1116は、半剛性の構成のために自然に前方に出る傾向がある。構成によっては、図のストラップ1112、1116の一部のみが半剛性の構造で形成される。この部分は、ストラップが患者の頭の背後に隠れたり、絡まったりすることがないように、十分に横方向または前方に出ることができる。
【0260】
好ましくは、ストラップ1112、1116は、頭の形状に適合するのに十分な撓み性を有し、その一方で、依然として前方に出るのに十分に硬く、または剛性である。構成によっては、ストラップ1112、1116は、積層された不織ポリプロピレン構造で形成される。好ましくは、積層された不織ポリプロピレン構造は、柔らかい不織ポリプロピレン間に挟まれた硬い積層体を含む。構成によっては、不織ポリエチレンテレフタレートまたは不織ポリエチレンを、柔らかい不織ポリプロピレンの代わりに使用できる。1つの構成において、積層構造は4つの積層シートを含み、2つの外側のシートは70gsmのPE/PETバイコム、2つの内側シートは100gsmの不織PPEである。
【0261】
前に出るストラップ1112、1116の性質により、開口部1160のインタフェース本体の取付用柱状突起1066との位置付けと整合が直感的かつ容易となる。さらに、前に出るストップによってインタフェースアセンブリのフィットの調節をマスクの前方で調節することが可能となる。
【0262】
ここで図47を参照すると、窒息防止弁2084が内骨格2022の中に画定された通路2085の中に捕捉される、他の構成が示されている。好ましくは、インサート2087が通路2085の少なくとも一部を閉じ、それによって弁2084が通路2085の中で、インサート2087と少なくとも1つの支柱2086の間に捕捉される。インサートという用語が使用されているが、この構成要素は、通路に挿入しなくてもよく、弁2084が外から通路の中に固定されるように、通路の関連する端の上に単純に載せ、またはその他の方法でこれに被せるだけでもよい。図の構成では、2つの支柱2086が取付部材2088で結合され、支柱2086と取付部材2088とが通路2085全体に広がる。
構成によっては、マスクは、弁2084がインサート(たとえば、インサート2087)とマスク本体の一部(たとえば、2つの支柱2086)の間に挟まれる構造を含む。
【0263】
図50に示されるように、2つの支柱2086は好ましくは、通路2085を画定する壁2091より後方にある。支柱2086が弓状であるため、弁2084が使用者の顔のより近くに移動し、これは、マスク内に収容される空気の内側容量を減少させるのに役立つ。さらに、このような構成は、より高さの低い構成を提供するのに役立つ。構成によっては、マスク本体のうち、弁の周囲のサンドイッチ構造の一部を形成する部分が、マスク本体と一体に形成される。好ましくは、支柱2086はマスク本体を取り囲む部分(たとえば、内骨格2022)と一体に形成される。換言すれば、好ましくは、支柱2086はマスク本体の少なくとも一部とモノリシックな構造である。より好ましくは、支柱2086は内骨格2022とモノリシックな構造である。
【0264】
インサート2087は外面2101を含み、これは通路2085を画定する壁2091の中に受けられる。好ましくは、外面2101は面2103を含み、これは図の通路2085を取り囲み、支柱2086の基部に形成される凹部2105と係合する。凹部2105と面2103は、インサート2087を内骨格2022内の所定の位置にロックする。
インサート2087を内骨格2022に固定する、他のいずれの適当な方法も使用できる。
【0265】
図のインサート2087はまた、弁2084の柱状突起2109を受ける開口部2107を含む。好ましくは、柱状突起2109は戻り止めを有する形状であり、それによって柱状突起2109を実質的にインサート2087に固定できる。弁2084をインサート2087に固定するための他のいずれの適当な方法も使用できる。構成によっては、弁2084をマスク本体(たとえば、内骨格2022の支柱2086またはその他の部分)に固定できる。換言すれば、弁2084はインサート2087に取り付けられ、インサート2087に据えられるが、弁は、マスク本体(たとえば、内骨格2022の一部)に取り付けながらも、インサート2087に据えることもでき、弁は、マスク本体に取り付け、マスク本体に据えることもでき、または弁は、インサートに取り付け、マスク本体に据えることもできる。換言すれば、弁2084は、マスク本体またはインサートのいずれに取り付けることもでき、弁2084はマスク本体またはインサートのいずれに接触させて据えることもできる。好ましくは、弁2084をインサート2087に固定してから、インサートをマスク本体に固定することができる。より好ましくは、弁2084をインサート2087に固定してから、インサートを内骨格2022に固定することができる。さらにより好ましくは、弁2084をインサート2087に固定してから、インサートを内骨格2022の中の、実質的に剛性の、または実質的に撓み性のない部分に固定することができる。インサート2087をマスク本体の実質的に剛性の、または実質的に撓み性のない部分(たとえば、内骨格2022の中央部分)に取り付けることによって、インサート2087をより確実にマスク本体に接続できる。
【0266】
図の弁2084はまた、凹部2111を含む。凹部2111は、取付部材2088に形成されたセンタリングボス2113の少なくとも一部を受ける。凹部2111とセンタリングボス2113との協働によって、弁2084がインサート2087と支柱2086と取付部材2088の間に固定されるときに、弁2084が通路2085の中の中央位置に保持される。
【0267】
さらに、図のインサートは、弁2084の外側リップ2117を収容する端凹部2115を含む。これに加えて、段差2119が支柱2086の基部に形成される。段差2119は、インサート2087を通路2085の中に挿入できる深さを制限し、インサート2087の端に当たってこれを支持することができ、それによってインサート2087の面2103が凹部2103に当たって押し戻される。
【0268】
図47に示さるように、インサート2087はまた、通路2121を含み、弁2084により通された空気がその中を流れることができる。図の通路2121はほぼ環状である。構成によっては、通路2121は1つまたは複数の開口部によって画定できる。他のいずれの適当な通路を弁と大気との間に画定してもよい。
【0269】
好ましくは、図の弁2084はインサート2087によって内骨格2022の中に捕捉される。したがって、弁2084は、使用中に内骨格2022から分離しにくくなる。構成によっては、弁2084は、外骨格に、内骨格2022と外骨格の組み合わせに、またはインタフェースのその他の構成要素に取り付けてもよい。好ましくは、インサート2087は、マスク本体の周辺部分と同一平面か、その中に窪むかいずれかであり、その結果、インサート2087をマスク本体から取り外すことが、不可能ではないとしても困難となる。より好ましくは、インサート2087は大きく突出する面を含まず、その結果、インサートを取り外すためにインサート2087に手を掛けることが、不可能ではないとしても、困難となる。
【0270】
本発明の上記の説明は、その好ましい形態を含む。付属の特許請求項によって暫定的に示される本発明の範囲から逸脱することなく、改変を加えることができる。具体的には、当然のことながら、本発明は多数の患者インタフェース(マスク)の発明のほか、多数のヘッドギアの発明や調節システムを記している。明細書には、各種のインタフェースの実施形態を各種のヘッドギアの実施形態と組み合わせた多数の例を示しているが、本発明のありとあらゆる可能性が明示されているわけではない。要素のありとあらゆる組み合わせが、単独でも組み合わせても、または本発明の一部としても利用されうる。同様に、他のよく知られているヘッドギアとインタフェースの設計もまた、それぞれ本発明のインタフェースとヘッドギアの設計とともに使用してもよい。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9
図10
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図30
図31
図32(a)-(d)】
図33(a)-(d)】
図34
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図40
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