【文献】
The Journal of Biological Chemistry,1982年,Vol.257 No.6,Page.3014-3017
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記糖は、デキストラン、シクロデキストリン、トレハロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびソルビトールからなる群より選択されることを特徴とする請求項5に記載の容器。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、血清を回収するために滅菌され、真空にされた容器であって、第一の端部および第二の端部、ならびに血液を受け入れるためのリザーバー部分を規定する少なくとも1つの内壁を含み、前記リザーバーは、トロンビンおよび少なくとも1種の凝固制御剤(coagulation controlling agent)、ならびに前記リザーバーに血液を供給するための針で突き刺し可能なクロージャーを含む容器が開示される。
【0007】
本明細書に記載するいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、約500g/mol未満の分子量を有するポリカルボン酸である。いくつかの実施形態において、ポリカルボン酸は、クエン酸塩またはイソクエン酸塩(「クエン酸塩」)である。さらなる実施形態において、ポリカルボン酸凝固制御剤の濃度は、濃縮製剤の約0.5mMから約100mMの範囲である。よりさらなる実施形態において、ポリカルボン酸凝固制御剤の濃度は、濃縮製剤の約1mMから約50mMの範囲である。
【0008】
その他の実施形態において、凝固制御剤は、プロタミン塩またはその同族体もしくは誘導体である。さらなる実施形態において、プロタミン凝固制御剤の濃度は、血液サンプルの約0.05mg/mLから約5mg/mLの範囲である。よりさらなる実施形態において、プロタミン凝固制御剤の濃度は、血液サンプルの約0.25mg/mLから約0.5mg/mLの範囲である。
【0009】
その他の実施形態において、凝固制御剤は、トロンビンの弱い競合的阻害剤である。サンプルを、阻害剤の結合に不利な条件に晒してトロンビン活性を阻害することにより、弱い阻害を元に戻すことができる。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約500g/mol未満の分子量を有する低分子物質である。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約0.1マイクロモルより大きい阻害定数を有する。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、式(I)
【0011】
の化合物であり、式中、
Rは、−NR
1R
2;−NO
2;1〜6個の炭素原子を有する置換または非置換の、直鎖または分岐鎖アルキル基;ハロゲン;−CO(O)R
1;−CO−NR
1R
2;−OH;または−OR
1からなる群より選択され、
【0012】
R
1およびR
2は、同一でもよいしまたは異なっていてもよく、水素、ハロゲン、置換または非置換の、直鎖または分岐鎖C
1〜C
10アルキル基、および−(CH
2)
x−アリールからなる群より選択してもよく、
【0013】
xは、1から10の範囲の整数である。
【0014】
さらなる典型的な実施形態において、凝固制御剤は、ベンズアミジンである。その他の典型的な実施形態において、凝固制御剤は、p−アミノベンズアミジンである。さらなる実施形態において、式(I)で示される凝固制御剤の濃度は、濃縮製剤の約0.5mMから約20mMの範囲である。さらなる追加の実施形態において、式(I)で示される凝固制御剤の濃度は、濃縮製剤の約1mMから約10mMの範囲である。
【0015】
その他の実施形態において、容器は、回収容器をさらに含み、この回収容器は、水溶性ポリマーおよび糖からなる群より選択される添加剤をさらに含む。その他の実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、多糖類、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される。さらなる実施形態において、糖は、デキストラン、トレハロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびソルビトールからなる群より選択される。
【0016】
その他の実施形態において、容器は、分離要素をさらに含む。さらなる実施形態において、分離要素は、機械式の分離要素を含む。その他の実施形態において、分離要素は、ゲル組成物を含む。さらなる実施形態において、ゲル組成物は、チキソトロープゲルを含む。さらなる追加の実施形態において、ゲル組成物は、カプセルに内包される。
【0017】
その他の実施形態において、容器は、回収された血液をさらに含む。
【0018】
本明細書においてはさらに、血液を回収する方法であって、トロンビンとトロンビンの安定化および/またはその活性の促進に十分な濃度の凝固制御剤とを含む容器を用意するステップと、前記容器に血液サンプルを添加するステップとを含む方法が開示される。
【0019】
本明細書においてはさらに、血液を回収する方法であって、トロンビンと血清サンプル中のフィブリン濃度を減少させるのに十分な濃度の凝固制御剤とを含む容器を用意するステップと、前記容器に血液サンプルを添加するステップとを含む方法が開示される。
【0020】
本明細書においてはさらに、血液を回収する方法であって、トロンビンとトロンビンを安定化させるのに十分な濃度の凝固制御剤とを含む容器を用意するステップと、前記容器に血液サンプルを添加するステップとを含む方法が開示される。
【0021】
上述の方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、約500g/mol未満の分子量を有するポリカルボン酸である。上述の方法のいくつかの実施形態において、ポリカルボン酸は、クエン酸塩である。いくつかの実施形態において、凝固制御剤の濃度は、濃縮製剤の約0.5mMから約100mMの範囲である。
【0022】
上述の方法において、凝固制御剤は、上述したようなプロタミン塩またはその同族体もしくは誘導体であり、上述した濃度で存在する。いくつかの実施形態において、凝固制御剤の濃度は、血液サンプルの約0.05mg/mLから約5mg/mLの範囲である。
【0023】
いくつかの実施形態において、凝固制御剤は、トロンビンの弱い競合的阻害剤である。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約500g/mol未満の分子量を有する低分子物質である。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約0.1マイクロモルより大きい阻害定数を有する。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、上述した式(I)で示される化合物である。
【0024】
前記方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、上述した濃度の、上述したようなp−アミノベンズアミジンである。いくつかの実施形態において、式(I)で示される凝固制御剤の濃度は、濃縮製剤の約0.5mMから約20mMの範囲である。
【0025】
前記方法のいくつかの実施形態において、回収容器は、上述した水溶性ポリマーおよび糖からなる群より選択される添加剤をさらに含む。
【0026】
本明細書においてはさらに、血液を回収する方法であって、トロンビンとトロンビン活性を促進するのに十分な濃度の凝固制御剤とを含む容器を用意するステップと、前記容器に血液サンプルを添加するステップとを含む方法が開示される。上述の方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、上述した濃度の、上述のプロタミン塩またはその同族体もしくは誘導体である。
【0027】
上述の方法のいくつかの実施形態において、本方法は、容器に、約500g/mol未満の分子量を有するポリカルボン酸、またはトロンビンの弱い競合的阻害剤の少なくとも一方を提供することをさらに含む。上述の方法のいくつかの実施形態において、本方法は、容器に、約500g/mol未満の分子量を有するポリカルボン酸、およびトロンビンの弱い競合的阻害剤の両方を提供することをさらに含む。上記回収方法のいくつかの実施形態において、ポリカルボン酸は、上記で定義したような、上述した濃度のクエン酸塩である。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約500g/mol未満の分子量を有する低分子物質である。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約0.1マイクロモルより大きい阻害定数を有する。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、上述した式(I)で示される化合物である。上記回収方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、前記濃度の、前記p−アミノベンズアミジンである。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記制御方法のための回収容器は、水溶性ポリマーおよび糖からなる群より選択される添加剤をさらに含む。
【0029】
本明細書においてはさらに、血液を回収する方法であって、トロンビンと血液サンプル中のフィブリン濃度を減少させるのに十分な濃度の凝固制御剤とを含む容器を用意するステップと、前記容器に血液サンプルを添加するステップとを含む方法が開示される。
【0030】
上記回収方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、上述した濃度の、上述したような約500g/mol未満の分子量を有するポリカルボン酸である。
【0031】
上記回収方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、上述した濃度の、上述したようなプロタミン塩またはその同族体もしくは誘導体である。
【0032】
上記回収方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、上述した式(I)で示される化合物である。
【0033】
上記回収方法のいくつかの実施形態において、凝固制御剤は、前記濃度の、上述したようなp−アミノベンズアミジンである。上記回収方法のいくつかの実施形態において、回収容器は、水溶性ポリマーおよび糖からなる群より選択される添加剤をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書では、トロンビンの作用を強化する、促進する、安定化する、促進する、または制御する(以下、「凝固を制御する」と称する)ための方法、装置、およびキットを記載する。トロンビンの作用を強化する、促進する、または制御するとは、血液サンプル単独またはトロンビンもしくはトロンビン様物質(以下、「トロンビン」)が添加された血液よりも十分および/または迅速に血液が凝固または血栓形成すると予想されることを意味する。より具体的に言えば、フィブリノーゲンをフィブリンに変換するトロンビンの能力を安定化する、促進する、もしくは別の方法で制御するための方法および装置、ならびに/または別の方法で血液サンプル(例えば血清)中の不溶性フィブリンおよび/もしくはフィブリノーゲンの量を減少させるための方法および装置を記載する。
【0036】
本明細書で記載する一実施形態によれば、装置は、そのなかに(1)所定量のトロンビン(またはトロンビン様の物質)、および(2)所定量の少なくとも1種の凝固制御剤を含む容器を有する装置である。トロンビンおよび凝固制御剤は、血液サンプルと混合するために存在し、好ましくはそれが回収されたときに即座に混合するために存在する。しかしながら、トロンビンまたは凝固制御剤はどちらも、その回収後にサンプルに添加されてもよい。
【0037】
用語「血液サンプル」は、本明細書で用いられる場合、少なくともある程度の凝固が可能な血液成分を含むあらゆる生体サンプルを意味する。いくつかの実施形態において、血液サンプルは、全血である。その他の実施形態において、血液サンプル(例えば血清)は、全血サンプルから1または複数の血液の成分を遠心分離によって予め除去することにより抽出される。さらにその他の実施形態において、血液サンプルは、血漿濃縮物である。
【0038】
容器は、あらゆるサンプル回収装置を包含していてもよく、このようなあらゆるサンプル回収装置としては、チューブ、例えば試験管、および遠沈管;閉鎖系の採血装置、例えば回収バッグ;注射器、特にプレフィルドシリンジ;カテーテル;マイクロウェル、およびその他のマルチウェルプレート;アレイ;管材料;実験用容器、例えばフラスコ、スピナーフラスコ、ローラーボトル、バイアル、顕微鏡スライド、顕微鏡スライドの組立品、カバーガラス、フィルム、および多孔質基板、ならびに組立品;ピペット、およびピペットチップなど;組織およびその他の生体サンプルの回収容器、例えば、ランセット、毛細管、およびBecton Dickinsonより入手可能なMicrotainer(登録商標)ブランドの製品など;Becton Dickinsonより入手可能なVacutainer(登録商標)ブランドの静脈血採血チューブ、例えば、予めトロンビンが共にパッケージ化されたチューブなど;ならびに生体サンプルの保持に適したその他のあらゆる容器、加えてサンプルの移動に関する容器および要素が挙げられる。それらが本明細書で概説される基準を満たしていれば、これらの容器のどれにでも凝固制御剤を導入することができる。
【0039】
容器は、本発明の基準を満たしてれば、プラスチックまたはガラスで構成されていてもよい(すなわちそれらから製造してもよい)。いくつかの実施形態において、容器は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、セルロース性材料、ポリテトラフルオロエチレンで構成され、さらにその他のフッ素化ポリマーも使用することができる。その他の実施形態において、容器は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ、アクリル系樹脂、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリメタクリレート、PEEK、ポリイミド、およびフルオロポリマー、例えばPTFE Teflon(登録商標)、FEP Teflon(登録商標)、Tefzel(登録商標)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF、および過フルオロアルコキシ樹脂で構成される。またシリカガラスなどのガラス製品も、容器を製造するのに使用される。一つの典型的なガラス製品は、Corning Glass、Corning、N.Y.より入手可能なPYREX(登録商標)である。本発明の実施形態に従ってセラミック容器を使用してもよい。またセルロース系製品、例えば紙や強化された紙製の容器も、容器材料として役立つ可能性がある。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、容器は、トロンビンまたは凝固制御剤の少なくとも1種で前処理され、すぐ使用できる形態にパッケージ化される。その他の実施形態において、容器は、トロンビンおよび凝固制御剤の両方で前処理される。典型的には、パッケージ化された容器は滅菌され、さらに滅菌包装材料でもパッケージ化される。パッケージ化された集合体(または「キット」)は、使用、貯蔵、運搬、および/または取り扱いのための説明書を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の一部として使用されるトロンビンは、例えば、天然起源および合成起源などあらゆる源に由来するものでもよい。いくつかの実施形態において、ウシトロンビンが使用される。その他の実施形態において、その他の種由来のトロンビンが使用される。さらにその他の実施形態において、組換えトロンビンが使用される。組換えトロンビンを改変して、改変されていないトロンビンと比較して改善された安定性を有するようにしてもよいし、または他の血液成分による不活性化に対して耐性を有するようにしてもよい。好ましい実施形態において、トロンビンは、アルファ−トロンビンである。アルファ−トロンビンは当業者公知であり、本明細書で詳細に記載される。容器で使用されるトロンビンの濃度は、約0.1から約100ユニット(u)/ミリリットル(血液の体積)(u/ml)の範囲である。いくつかの実施形態において、容器で使用されるトロンビンの濃度は、約1から約20ユニット/ミリリットル(血液の体積)の範囲である。
【0042】
また容器は、少なくとも1種の凝固制御剤も含む。何らかの特定の理論に縛られることは望まないが、凝固制御剤は、以下のうち少なくとも1種、すなわち(1)トロンビンを少なくとも部分的に安定化させること;(2)血液サンプル(例えば血清)中の不溶性フィブリンおよび/またはフィブリノーゲンの量を少なくとも部分的に減少させること;または(3)トロンビンの作用を少なくとも部分的に促進することを達成できると考えられる。
【0043】
本明細書で記載する一実施形態において、凝固制御剤は、プロタミンまたはその塩もしくは水和物である。上述の特許請求された本発明の基準を満たすのであれば、どのようなプロタミンまたはその誘導体を使用してもよい。いくつかの実施形態において、プロタミンは、サケ精子から誘導され、配列番号1で特定される配列を有する。(配列番号1:PRRRRSSSR PVRRRRRPRVSRRRRRRGGR RRR)。加えてその他の関連する源由来のプロタミン配列も、それらが極めて類似した配列を有し、さらに望ましい特性を有する可能性があるため、考慮に入れることができる。何らかの特定の理論に縛られることは望まないが、プロタミンは、トロンビンを安定化させるか、またはその活性を促進する可能性があると考えられる。
【0044】
本明細書で記載する一実施形態において、凝固制御剤は、活性部位で弱く競合する(従って可逆的な)トロンビン阻害剤である。このような阻害剤を添加することにより、採血装置とトロンビンを含む製剤とをパッケージ化した組合せの貯蔵期間中にトロンビンを安定化させると考えられる。何らかの特定の理論に縛られることは望まないが、活性部位で弱く競合する阻害剤は、その自己破壊的な自己消化活性を遅延させることによりトロンビンを安定化させると考えられる。血液で希釈されると、弱い阻害剤がトロンビンから解離することにより、それが血栓の形成に関わる前に、それらがサンプル中によりよく自然に分散するようになると考えられる。
【0045】
いくつかの実施形態において、活性部位で弱く競合するトロンビン阻害剤は、約500g/mol未満の分子量を有する低分子物質である。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約0.1マイクロモルより大きい阻害定数(Ki)を有する。その他の実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、約0.1マイクロモルから約1000マイクロモルの範囲の阻害定数を有する。いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、式(I)で示される化合物を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、活性部位で弱く競合する阻害剤は、例えば上述の式(I)で示されるような、置換または非置換のベンズアミジンである。
【0047】
一実施形態において、式(I)で示される化合物は、ベンズアミジンである。さらにその他の実施形態において、凝固制御剤は、p−アミノベンズアミジン、メタ−アミノベンズアミジン、およびオルト−アミノベンズアミジンからなる群より選択される。
【0048】
本明細書で記載するその他の実施形態において、凝固制御剤は、約500g/mol未満の分子量を有する低分子量のポリカルボン酸化合物(またはその塩)である。例えば、適切なポリカルボン酸化合物は、式C(O)OH−R
1−R
2(C(O)OH)−R
3−C(O)OHで示されるものであってもよく、式中R
1、R
2、およびR
3は、同一でもよいしまたは異なっていてもよく、置換または非置換の脂肪族基または芳香族基であってもよく、R
1、R
2またはR
3のいずれかは、様々な数の追加のカルボン酸基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ポリカルボン酸化合物は、クエン酸ナトリウムである。その他の実施形態において、ポリカルボン酸化合物は、イソクエン酸塩である。
【0049】
何らかの特定の理論に縛られることは望まないが、クエン酸塩は、アルファ−トロンビンを、それが切断されて比較的活性が低い形態(例えばベータ−トロンビンまたはガンマ−トロンビン)に変換される速度を減少させることにより安定化させると考えられる。加えて、ここでも特定の理論に縛られることは望まないが、クエン酸塩は、TRIS緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液またはHEPES緩衝液のいずれか1種と組合せて、アルファ−トロンビンよりも比較的良好にアルファ−トロンビンを安定化させることができると考えられる。
【0050】
一実施形態において、クエン酸塩の凝固制御剤は、水溶性ポリマーおよび糖からなる群より選択される追加の成分と組合される。典型的な水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、多糖、およびポリエチレングリコールが挙げられる。典型的な糖類としては、デキストラン、シクロデキストリン、トレハロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびソルビトールが挙げられる。実際には、追加の成分(複数可)は、医薬製剤分野の当業者によく知られている一般的な医薬品賦形剤から選択することができる。
【0051】
何らかの特定の理論に縛られることは望まないが、水溶性ポリマーは、採血装置の表面に製剤を噴霧適用しやすくするための結合剤として作用する可能性があると考えられる。
【0052】
その他の実施形態において、クエン酸塩の凝固制御剤は、界面活性剤と組合される。適切な界面活性剤の例としては、「シロキサンアルコキシレート」として知られている化合物のクラスに属するものが挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態において、トロンビンを含むクエン酸塩溶液のpHは、約5.5から約7.5の範囲である。
【0054】
いくつかの実施形態において、クエン酸塩の凝固制御剤は、その他の塩、緩衝液またはタンパク質を含む。その他の実施形態において、クエン酸塩溶液は、その他の塩、緩衝液またはタンパク質を実質的に含まない。さらにその他の実施形態において、クエン酸塩溶液は、アルブミン、塩化ナトリウム、またはTRIS−HClのうち少なくとも1種を含まない。
【0055】
当業者であれば、本明細書で示される指針に基づいて本明細書で記載する使用に適した凝固制御剤の適切な濃度を選択することができると予想される。当然ながら、必要とされる凝固制御剤の濃度は、サンプルチューブに提供されるトロンビンの量、使用されるトロンビンのタイプ、容器に製剤を適用する方法、血液サンプルの体積、および回収された血液サンプルのタイプに応じて様々であってもよい。また様々な濃度の異なる凝固制御剤の混合物を使用して、望ましい結果をもたらすこともできる。例えばトロンビンをプロタミンおよび式(I)で示される化合物の両方と組合せて、望ましい作用を提供することもできる。同様に、トロンビンをプロタミンおよびポリカルボン酸の両方と組合せてもよい。そのようなものとして、トロンビンおよび凝固制御剤を含む装置は、サンプルのタイプ、および目的とする使用に応じてカスタマイズすることができる。
【0056】
トロンビンを含むサンプルにプロタミンが添加されるいくつかの実施形態において、プロタミンは、血液サンプル中に分散される場合、約0.25mg/mLから約5mg/mLの範囲の濃度で存在する。トロンビンを含むサンプルにプロタミンが添加されるその他の実施形態において、プロタミンは、血液サンプル中に分散される場合、約0.25mg/mLから約0.5mg/mLの範囲の濃度で存在する。
【0057】
いくつかの実施形態において、トロンビンの弱い競合的阻害剤は、上述の阻害定数値の約1から約200倍の範囲の濃度で存在する。トロンビンを含む製剤に式(I)で示される化合物が添加されるいくつかの実施形態において、式(I)で示される化合物は、採血装置の表面上に(例えば噴霧によって)適用して乾燥させるための液状のトロンビン製剤中に、約0.5mMから約20mMの範囲の濃度で存在する。トロンビンを含む製剤に式(I)で示される化合物が添加されるその他の実施形態において、式(I)で示される化合物は、採血装置の表面上に(例えば噴霧によって)適用して乾燥させるための液状のトロンビン製剤中に、約1mMから約10mMの範囲の濃度で存在する。
【0058】
トロンビンを含む製剤にクエン酸塩が単独で、または追加の成分と組合せて添加されるいくつかの実施形態において、クエン酸塩は、採血装置の表面上に(例えば噴霧によって)適用して乾燥させるための液状のトロンビン製剤の約0.5mMから約100mMの範囲の濃度で存在する。トロンビンを含む製剤にクエン酸塩が単独で、または追加の成分と組合せて添加されるその他の実施形態において、クエン酸塩は、採血装置の表面上に(例えば噴霧によって)適用して乾燥させるための液状のトロンビン製剤の約1mMから約50mMの範囲の濃度で存在する。
【0059】
凝固制御剤はいずれも、単独で用いてもよいし、または、緩衝液と組合せて用いてもよい。緩衝液は当業者公知であり、本発明で使用するのに容易に適合させることができる。
【0060】
凝固制御剤、トロンビン、およびあらゆる添加剤または緩衝液は、容器のどの表面に配置されていてもよい。トロンビンおよび凝固制御剤は、同じ表面に配置されてもよいし、または異なる表面に配置されてもよく、混合されていてもよいし、または互いに分離していてもよい(便宜上、トロンビンまたは凝固制御剤の併用に言及される場合、それらを別々に含むことも考えるべきである)。またこのような装置を閉じるためにトロンビンおよび/または凝固制御剤をストッパーおよびシール上に配置してもよいし、またはこのような装置内に置かれた機械的な挿入物またはその他の挿入物上に配置されてもよい。トロンビンおよび/または凝固制御剤は、容器のどこかの少なくとも1つの内壁に沿って配置されるか、またはリザーバー部分内の任意の場所に配置される。トロンビンまたは凝固制御剤の配置は、数々の変数によって決定され、このような変数としては、例えば、適用の様式、使用される具体的な凝固制御剤、容器の内部体積および内圧、および容器に送られる生体サンプルの体積などが挙げられる。
【0061】
トロンビン、凝固制御剤、および添加剤または緩衝液は、当業界公知のあらゆる方法によって容器に適用することができる。トロンビンと凝固制御剤とは、同じ手段で適用してもよいし、または異なる手段で適用してもよい。同様に、これらは、一緒に適用してもよいし、または別々に適用してもよい。例えば、トロンビンおよび/または凝固制御剤(複数可)を表面上に(液体、粉末またはゲルとして)噴霧して、噴霧乾燥させ、容器内壁の表面上に緩く分配してもよいし、または凍結乾燥してもよい。一実施形態において、トロンビンおよび/または凝固制御剤は、溶液の状態であり、容器に噴霧されるか、または別の方法で置かれる。その後、このような溶液は、例えば凍結乾燥などの当業界公知の方法によって凍結乾燥してもよい。例えば溶液を凍結し、続いて凍結後に真空にしながら同時にゆっくり暖めると、回収チューブ中に凍結乾燥粉末が残る。凍結乾燥する前に、例えばPVPまたはトレハロースのような賦形剤などの添加剤をトロンビンおよび/または凝固制御剤に添加して、結果得られた安定剤を容器中でペレット化してもよい。あるいは、トロンビンおよび/または凝固制御剤、例えばゲル状または液状のトロンビンおよび/または凝固制御剤は、例えば、容器のリザーバー部分に位置づけてもよい。典型的には、望ましい量のトロンビンおよび/または凝固制御剤を容器に配するために、固体状のトロンビンおよび/または凝固制御剤を再溶解させて、適切な量の液体を容器に分配する。この液体は、容器の底部に噴霧乾燥して堆積させてもよいし、またはその後凍結乾燥してもよい。その他の態様において、トロンビンおよび/または凝固制御剤を液体または固体のエアロゾルに形成して、容器内部の1または複数の表面上に噴霧する。
【0062】
いくつかの実施形態において、容器は、全血サンプルを患者から直接引き出して血液サンプルを回収時に即座に凝固させるようになっているため、血清回収チューブとして使用される。このような装置は、採血のために、真空にされたシステムであってもよい。あるいはこのような装置は、採血のために部分的に真空にされたシステムであってもよいし、または真空にされないシステムであってもよい。真空にされたシステムの適切な例は、閉鎖されたチューブである。手動の注射器による引き抜きは、部分的に真空にされたシステムと真空にされないシステム両方の適切な例である。また真空にされないシステムは、自動の引き抜きシステムを含んでいてもよい。
【0063】
図1は、典型的な血液容器10を示し、血液容器10は、内部チャンバー14の境界を定める容器12を含む。図示された実施形態において、容器12は、側壁16、閉鎖された下端部18、および開口した上端部20を有する中空のチューブである。任意選択で、容器チャンバー14内には分離部材13が提供される。分離部材13は、サンプルの成分を例えば遠心分離によって分離するのに役立つ。容器12は、適切な体積の生体液、好ましくは血液が回収されるような寸法に作られている。滅菌製品が求められる場合、開口した端部20を覆って容器12を閉じるためのクロージャー22が好ましい。従来のチューブの場合、通常はねじ蓋で十分である。真空にされた回収チューブの場合、必要な貯蔵期間中に真空を保つために、ぴったりとフィットするエラストマー製のプラグが一般的に用いられる。クロージャー22は、容器12を効果的に閉じて、チャンバー14中に生体サンプルを保持することができるシールを形成する。クロージャー22は、様々な形態のうちどの形態であってもよく、このような形態としては、これらに限定されないが、ゴムのクロージャー、HEMOGARD(登録商標)クロージャー、金属製シール、金属帯で縛ったゴムのシール、および様々なポリマーおよび設計のシールが挙げられる。クロージャー22の上に保護用のシールド24があってもよい。また容器12は、本発明に係るトロンビンおよび/または凝固制御剤も含む。容器は、トロンビンおよび/または凝固制御剤の一方または両方を含んでいてもよい。当然ながら、トロンビンおよび/または凝固制御剤のうち他方は、サンプル回収前に添加されてもよいし、またはサンプル回収後に添加されてもよい。
【0064】
容器12は、ガラス、プラスチックまたは本明細書に記載するその他の適切な材料から製造することができる。プラスチック材料は、酸素不透過性の材料であってもよいし、または酸素不透過性または半透性の層を含んでいてもよい。あるいは容器12は、水および空気透過性のプラスチック材料から製造してもよい。
【0065】
チャンバー14中の圧力は、生体サンプルから予め決められた体積がチャンバー14に引き込まれるように選択される。クロージャー22は、当業界で知られているようにして、針26またはその他のカニューレで穴が開けられ、容器12に生体サンプルが導入されるようになっていてもよい。好ましくは、クロージャー22は、再シール可能である。クロージャー22に適した材料としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ハロブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、およびポリクロロプレンが挙げられる。
【0066】
容器12の適切な例としては、単層のチューブおよび多層のチューブが挙げられる。適切な容器12のより具体的な例は、参照によりその全体が本発明に組み込まれているCohenの米国特許第5,860,937号明細書で開示されている。
【0067】
一例として、本発明に係る装置を作製する有用な過程の一つは、容器を得ること;容器にトロンビンおよび/または凝固制御剤を添加すること;トロンビンおよび/または凝固制御剤を乾燥または凍結乾燥すること;容器を真空にすること;および容器を滅菌することを含む。トロンビンおよび/または凝固制御剤は、液状で容器に分配されてもよい。回収容器にトロンビンおよび/または凝固制御剤を添加する前または後に、所望に応じて容器に分離部材が追加されてもよい。適切な凍結乾燥/真空化過程の例は、以下に示す通りである:そこにトロンビンおよび/または制御剤が堆積した容器を、約−40℃の温度で、約760mmの圧力で、約6から8時間凍結させ;容器を、−40℃から約25℃への温度勾配で、約0.05mmの圧力で、約8から10時間乾燥させ;続いて容器を、約25℃の温度で、約120mmの圧力で、約0.1時間真空にする。いくつかの実施形態において、滅菌技術は、コバルト60の放射線による放射線を配備する。
【0068】
いくつかの実施形態において、血液成分を分離するための分離部材13(例えば、機械式の分離要素、ゲル、または例えば、ろ紙などのその他の分離部材)を有するサンプル回収チューブが使用される。このような態様において、チューブの内部および/または分離部材の外部は、トロンビンおよび/または凝固制御剤で処理されていてもよい。このようなケースにおいて、トロンビンおよび/または凝固制御剤は、分離媒体の外表面上で噴霧乾燥および/または凍結乾燥されてもよい。
【0069】
また容器12は、血清回収または調製のための容器であってもよい。このような容器は、トロンビンおよび/または凝固制御剤に加えて、ヒトの全血または動物の全血から血清を分離するための要素を含む。全血から血清を分離する要素は、例えばゲル製剤または機械式の媒体などの分離部材であってもよい。いくつかの実施形態において、ゲルは、チキソトロープの高分子ゲル製剤である。このようなゲルは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、例えば、ポリエステル、ポリアクリル酸ベースのゲル、またはシリコーンベースのゲルが挙げられる。
【0070】
本発明での使用に適したその他の市販の採血用チューブとしては、以下に示すもの、すなわちVACUTAINER(登録商標)ブランドのSST(商標)チューブ、カタログ番号367983、367977、および367986(ただしこれらに限定されない);VACUTAINER(登録商標)ブランドの血清チューブ、カタログ番号367812、および367815(ただしこれらに限定されない)、VACUTAINER(登録商標)ブランドのトロンビンチューブ、カタログ番号367755、および366525(ただしこれらに限定されない)、VACUTAINER(登録商標)ブランドのRSTチューブ、カタログ番号368771または368774(ただしこれらに限定されない)、ならびにMICROTAINER(登録商標)ブランドの血清および血清セパレーターチューブのいずれかが挙げられ、これらは全て、Becton,Dickinson and Company、Franklin Lakes、N.J.によって販売されており、全ての登録商標および商標は、Becton,Dickinson and Companyに属する。上述したように、本明細書に記載する凝固剤と併用するために、真空にされた、または真空にされていないあらゆる適切な回収装置が考慮される。当然ながら、当業者であれば、本発明に従ってあらゆる容器を使用に適するように改造することが可能である。
【0071】
その他の実施形態によれば、少なくとも2つの容器を有するキットは、本明細書に記載するトロンビンおよび凝固制御剤を含む。例えば、本キットは、第一の回収チューブ、例えばそのなかに分離要素を有する血漿を分離するチューブと、回収された血漿を試験するための、例えば回収された血漿を第一の回収チューブに流し込むか、または別の方法で分配するための第二のチューブとを有する。任意選択で、本キットは、第二のチューブが血漿を吸い込むには低い圧になると予想される流し込みまたはその他の危険な移動作業の必要性をなくするために、チューブからチューブへ移動させる装置を含んでいてもよい。このようなキットを使用するものは、第一のチューブでサンプルを回収し、遠心分離を行って、または遠心分離を行わないで血液成分を凝固させ、対象のサンプルを第二の試験用チューブに移動させ、試験を行うと予想される。第二の試験用チューブは、所望の試験に応じて様々なサイズを有していてもよい。また本キットはさらに、包装材および/または使用説明書を含んでいてもよい。
【0072】
一実施形態において、生体サンプルを回収し貯蔵するためのキットは、第一の滅菌され、真空にされた容器(この第一の容器は、そのなかにトロンビンおよび少なくとも1種の凝固制御剤、ならびに針で突き刺し可能なクロージャーを有する);および第二の容器(この第二の容器も、凝固制御剤を有する)を有する。
【0073】
本明細書に記載のその他の実施形態によれば、血液成分の凝固または血栓形成を促進もしくは強化する方法であって、トロンビンおよび凝固制御剤を、(i)トロンビンの活性を安定化および/または促進するか、または(ii)サンプル中の可溶性フィブリンの量を減少させるのに十分な濃度で含む容器を用意するステップと、容器に全血サンプルを添加するステップとを含む方法が記載されている。
【0074】
典型的な方法は、血液サンプルを得るステップと、サンプルをトロンビンおよび凝固制御剤を含む容器に導入するステップとを含む。いくつかの実施形態において、血液サンプルは、患者から引き出されて、その間にまったく処理工程を介在させずに容器に直接送られる。特定の動作理論に固執するつもりはないが、例えば全血サンプルを回収する場合のように生体サンプルを患者から直接回収すること、およびすでにトロンビンおよび凝固制御剤を含む(すなわちこれらの物質で前処理した)容器にサンプルを直接導入することは、トロンビンの作用を安定化もしくは促進すること、または別の方法で制御すること、またはサンプル中に存在する可溶性フィブリンの量を減少させることに実質的に役立つと考えられる。記載した方法は、本明細書において開示された容器、添加剤、および追加の抗凝血薬のいずれかと共に有利に用いられる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
血清サンプル中のフィブリン塊に対するプロタミンの軽減作用
まず硫酸プロタミンを約0.5Mの塩酸に約250mg/mLの濃度で再懸濁した。次にこの溶液を5Nの水酸化ナトリウムで約pH6まで滴定した。持続的なプロタミンの低いpHへの曝露は加水分解を引き起こして活性が失われると考えられているため、この約pH6までの滴定は即座に行われた。また、プロタミン溶液を製造するのにより希薄な塩酸溶液を使用することが可能であることも考えられる。
【0076】
次にプロタミン溶液を、約pH6.0で、約20mg/mLのシロキサンアルコキシレート界面活性剤、および2mg/mLのポリビニルピロリドン(PVP)を含む約40mMのクエン酸ナトリウム中の約1250U/mLのトロンビン溶液と約1:1の比率で混合した。
【0077】
得られた試薬をろ過して、20μLの1回量で13×100mmのポリエチレンテレフタレート(PET)チューブに噴霧した。次にチューブを強制熱風によって乾燥させ、真空にし、栓をした。
【0078】
チューブを新たに吸引したヒト血液で充填し、(無作為に)約1から約3.5分で自然に凝固させ、遠心分離した。得られた血清を視覚的評価によって、血清区画中の「フィブリン塊」の存在について0から3の尺度(3が最も重度である)でスコア付けした。
図2で示されるように「フィブリン塊」に関する結果が示された。フィブリン塊がないこと(「ゼロ」の評価)から、凝固反応が迅速で十分であり、遠心分離工程の前に全てのフィブリン(フィブリノーゲン)が沈殿したことが示された。
【0079】
図2で示されるように、約0.5mg/mLの濃度のプロタミンは、チューブ性能を劇的に改善した。プロタミン添加により、約5U/mLまたは約10U/mLのトロンビンのいずれかを含むチューブのうち目に見えるフィブリン塊を生じたチューブは8本中1本のみであった。これは、プロタミンを含まないチューブとは対照的であり、約5U/mLのトロンビンを含むとき8本のうち7本が目に見える塊を生じ、約10U/mLのトロンビンを含むとき8本のうち6本が目に見える塊を生じた。従って、すでにトロンビンを含む血液サンプル容器にプロタミン凝固制御剤を添加することは、このような塊が形成される傾向(遠心分離の前に、フィブリノーゲンに対するトロンビンの作用が不十分であることに起因すると考えられる)を軽減すると考えられる。
【0080】
(実施例2)
プロタミンがトロンビンの凝固作用を促進する
約pH6の約20mMのクエン酸塩中のトロンビンおよびプロタミンの溶液を、再溶解された市販の凍結乾燥したヒト血漿と約1:1の比率で混合し、スタゴコンパクト(Stago Compact)凝固解析装置で試験した。得られた凝固時間を、所定のトロンビン濃度におけるトロンビン濃度とプロタミン濃度との関数として測定した。
図3のグラフに列挙した濃度は、血漿と混合する前のトロンビン/プロタミン溶液を示す。
【0081】
結果から、プロタミン濃度を増加させると凝固時間が短くなることが示された。そのようなものとして、プロタミンの添加は、トロンビンの凝固活性を強化すると考えられる。何らかの特定の理論に縛られることは望まないが、プロタミンは、(1)トロンビンの酵素作用を直接促進すること;(2)血漿中の内因性阻害剤によるトロンビンの不活性化を防ぐこと;(3)フィブリンの沈殿を促進すること、またはこれらの作用の種々の組合せによって凝固時間を早めると仮定される。
【0082】
(実施例3)
トロンビンおよびプロタミンによって促進された安定性の結果
トロンビン(約1250U/mL)、プロタミン(約125mg/mLまたは約62.5mg/mL)、およびシロキサンアルコキシレート界面活性剤の混合物を、約pH6.0で、約20mMのクエン酸塩中で調製した。この混合物約20μLを13×100mmのPETチューブに噴霧した。チューブを強制熱風によって乾燥させ、真空にし、冷蔵庫で保存した。研究の開始時に、チューブの栓をはずし、前もって約50℃および約45%の相対湿度に平衡化した制御環境下のチャンバー中に置いた。様々な時間間隔で、チューブを取り出しスタゴコンパクト凝固解析装置でトロンビン活性について評価した。
図4に結果を示す。エラーバーは、5回反復した場合のトロンビン活性に関する95%信頼区間を示す。
図4から明らかに、トロンビン活性は、プロタミンを含むほうがプロタミンを含まない場合よりも長期にわたり優れていることが示される。
【0083】
その後のタイムポイントにおけるトロンビン活性を最初の値に対して標準化し、得られた曲線を使用して、各製剤の相対的な安定性を比較することができる(
図5を参照)。図から、硫酸プロタミン含有製剤を含む血液サンプルが、プロタミン非含有トロンビン製剤と組合された血液サンプルよりも安定であったことが観察される。
【0084】
(実施例4)
トロンビンおよびp−アミノベンズアミジンによって促進された安定性の結果
凝固制御剤のp−アミノベンズアミジンを評価して、それが安定性を高めた条件下で噴霧されたトロンビンの安定性を改善するかどうかを決定した。何らかの特定の理論に縛られることは望まないが、p−アミノベンズアミジンは、室温でもトロンビンの自己消化的な分解が急速になり得る極めて高い湿度の条件下でも、噴霧乾燥されたトロンビンを安定化すると考えられる。
【0085】
トロンビンを、約pH6.1で、約5mMのクエン酸塩またはイソクエン酸塩中で調製した。p−アミノベンズアミジンを約3mMの濃度で添加した。この溶液約16μLを13×100mmのPETチューブに噴霧した。チューブを強制熱風によって乾燥させ、真空にした。次にシールしたチューブを前もって約43℃および約75%の相対湿度に平衡化した制御環境下のチャンバー中に置いた。様々な時間間隔でチューブを取り出しスタゴコンパクト凝固解析装置でトロンビン活性について評価した。
図6および
図7に結果を示す。エラーバーは、5回反復した場合のトロンビン活性に関する95%信頼区間を示す。図中のデータから、凝固制御剤のp−アミノベンズアミジンは、パッケージ化された製品の状態で、使用前におけるトロンビンの安定性を(クエン酸塩単独と比較して)長期にわたり保持することが示される。
【0086】
本明細書に記載された本発明を具体的な実施形態に関して記載したが、当然のことながら、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる説明である。従って、当然のことながら、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の本質および範囲から逸脱することなく、説明的な実施形態に多数の改変を施すことが可能であり、さらにその他の配置も考慮されるものとする。