【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上述した諸問題の全部又は一部を解決するものであって、その一態様に依れば、本発明は、イオン交換樹脂からの塩素イオンを含む再処理廃液を再循環する方法であって、以下の工程を有する方法に関する。即ち、
(i)塩素イオンを含む再処理廃液を提供する、
(ii)前記再処理廃液から直接に、又は、その塩素イオン濃度を調節するための単数又は複数の工程後に、それぞれ濃度(a),(b),(b’)>0g/l,(a)>(b)となる塩素イオン濃度(g/l)を有するフラクションA,BおよびオプションとしてB’を選択する、
(iii)塩素イオン濃度(c)>(a)を有するフラクションCを得るために、前記フラクションBの塩素イオンを前記フラクションAに電気透析によって移動させる、又は、
(iv)塩素イオン濃度b”>b’を有するフラクションB”を得るべく電気透析によって前記フラクションBの塩素イオンをフラクションB’に移動させ、次に、塩素イオン濃度(c)>(a)を有するフラクションCを得るために、前記フラクションB”とAを混合する、
(v)オプションとして、再処理ブラインの溶液を得るべく前記フラクションCに新たなブラインを添加する。
【0021】
電気透析によってフラクションBからフラクションAへ、又はフラクションBからフラクションB’へ塩素イオンを移動させる工程は、電気透析器にこれらのフラクションを供給する工程を含み、前記電気透析器は、それぞれ、前記フラクションBを希釈するためのイオン交換膜と、前記フラクションA又は前記フラクションB’の塩素イオンを濃縮するためのイオン交換膜とを有する。
【0022】
前記電気透析は、電気化学的方法である。電気透析器は複数のコンパートメントを有し、各コンパートメントには、本発明により、所定のフラクションが供給される。例えば、第1組のコンパートメントには、フラクションA又はBが供給され、第2組のコンパートメントには、フラクションB又はB’が供給され、これら第1組と第2組とは交互に設けられる。各コンパートメントは、イオン交換膜によって隣接するコンパートメント(単数又は複数)から分離されている。好ましくは、これらの膜は、陰イオン膜と陽イオン膜とが交互に配置されるように配設される。電界の作用により、前記陰イオン膜は陰イオンのみを透過し、前記陽イオン膜は陽イオンのみを透過する。陽イオンは電流の方向に移動し、陰イオンは電流と反対の方向に移動する。
【0023】
この現象によって、前記電気透析器中において、希釈コンパートメント、即ち、塩素イオン濃度が減少するコンパートメントと、濃縮コンパートメント、即ち、塩素イオン濃度が増大するコンパートメント、とを交互に配置することが可能となる。
【0024】
本発明の範囲内において、塩素イオンを含む廃液を再処理するとは、イオン、陰イオン、陽イオン、又は吸着性交換樹脂の再処理の終わりに得られる塩素イオンを含む水流のことを意味する。
【0025】
本発明の意味において、再生ブラインとは、イオン、陰イオン、陽イオン、又は吸着性交換樹脂の再処理を再処理するために使用される、塩素イオン、特に塩化ナトリウムを含む塩の水溶液、を意味する。
【0026】
前記フラクションA,BおよびオプションとしてのB’は、互いに独立的に、前記再処理廃液から直接に生じるか、もしくは生じない。
【0027】
本発明の意味において、フラクションの塩素イオン濃度を調節する工程とは、好ましくは、水蒸発、逆浸透、電気透析又は、追加のろ過、特に、透析透過から選択される任意の工程を意味する。
【0028】
特に、着色加糖溶液を変色するためのイオン交換樹脂からの再処理廃液に関して、前記再処理廃液は、前記再処理ブラインの第1リンスと、その後の通過後、そして前記イオン交換樹脂上における最終リンス後に得られる廃液である。上述したように、又は、本文に添付の
図1を参照して、前記再処理廃液は、第1段階において、所与の量の水(フラクション1)を有し、次に、所与の量の着色塩水(フラクション2)、特に、約10g/lの塩成分を含むものを有し、その後、所与の量の着色ブライン水(フラクション3)、特に、約80g/lの塩素イオンを含むものを有し、その後、塩水の量(フラクション4)、特に、約10g/の塩素イオンを含むものを有し、最後に、所定量の水(フラクション5)を有する。
【0029】
本発明の範囲において、塩素イオンの濃度はリットルあたりのグラム数(g/l)で与えられる。
【0030】
前記フラクションB又はB’は、好ましくは、フラクション1−5から選択される、混合物における前記再処理廃液由来の単数又は複数のフラクションから構成することができる。
【0031】
好ましくは、前記新たなブラインは、約100g/lの塩素イオン濃度を有する。新たなブラインは、好ましくは、飽和に近い200−300g/の塩素イオンを有する溶液からの希釈によって作られる。好適には、塩を含むフラクションを蒸発によって濃縮する、従って、多量要素、即ち水を相変換によって除去する従来技術と異なり、電気透析において消費されるエネルギは、微量要素、本発明の場合は、塩素イオン、の移動(displacement)に比例する(なぜなら低い濃度のフラクションからそれと同じ又はより高い濃度のフラクションへと移動するから)。
【0032】
予め塩素イオンが含まれているフラクションに塩素イオンをエンリッチするために電気透析を使用するほうが、蒸発による前記濃縮方法よりも経済的で簡単である。電気透析において、電気エネルギの消費は移動されるイオンの量に比例し、我々のテスト条件下では、この消費は、移動した塩1キロ当たり1kWh未満であった。ブラインを20g/lから100g/lへと濃縮する場合、三重効用蒸発器の蒸気消費は、水1キロ当たり約0.25kWhであり、エネルギ消費はリサイクルされる塩キロ当たり11kWhに対応する。
【0033】
好ましくは、電気透析による塩素イオンの一つのフラクションから別のフラクションへの移動は、低濃度のフラクションから、最高濃度のフラクションへ、又は、初期において実質的に同じ濃度の二つのフラクション間であって、一方の塩素イオンが枯渇し、他方の塩素イオン濃度が増大するもの、の間で行われる。本発明の課題が可能な限り多くの塩素イオンを含む溶液を回収することにあるとすれば、あるフラクションを希釈して、その後にそれを再び濃縮することにはほとんど経済的な利益はない。
【0034】
好ましくは、フラクションB’の塩素イオン濃度(b’)は、フラクションBの塩素イオン濃度(b)以上である。好適には、前記濃度(b’)は、濃度(b)の約1−2倍である。
【0035】
一実施例において、フラクションAの塩素イオン濃度(a)は、前記塩素イオン濃度(b)又は(b’)の、約1.30−10倍、好ましくは、約1.30−8倍である。
【0036】
好ましくは、前記溶出物又は再処理廃液の濃度ピークに対応する前記フラクションAは、70〜85g/lの濃度を有する。この濃度ピークの前および/又は後のフラクションを表すフラクションBは、前記異なるフラクションに対して適用される限界により、10〜25g/lの濃度を有する。
【0037】
別の構成において、再処理廃液を再循環させる方法は、前記別実施例のずれかによる、着色加糖溶液の変色のために、イオン交換樹脂、好ましくは陰イオン交換樹脂、からの塩素イオンを含む。好適には、前記再処理廃液は、着色剤、特に、ポリフェノール、を含む。
【0038】
別構成において、前記フラクションAは、40g/l以上、好ましくは、60g/l以上の塩素イオン濃度を有する。
【0039】
好ましくは、前記フラクションAは、70g/l以上、更に好ましくは、80g/l以上の塩素イオン濃度を有する。
【0040】
別構成において、前記フラクションB、オプションとして前記フラクションB’は、60g/l以下、好ましくは、10g/l以上、更に好ましくは、30g/l以上、より好ましくは、50g/l以上、の塩素イオン濃度を有する。
【0041】
別構成において、電気透析によって塩素イオンを移動させる工程iii)又はiv)の前において、前記フラクションAそしてオプションとして前記フラクションB又は前記フラクションBおよびB’は、塩素イオンと着色剤を含み、ナノろ過透過物(PA1)、オプションとして、(PB1)又は(PB1)と(PB’1)および前記フラクションAのナノろ過残留物(RA1)、オプションとしてナノろ過残留物(RB1)又は(RB1)と(RB’1)、を形成するためのナノろ過工程を受ける。
【0042】
好ましくは、この工程は、あまり着色されていない、又は、着色剤の無い、塩素イオン濃度(a),(b)又は(b’)を有するナノろ過透過物を形成することを目的とする。
【0043】
好ましくは、前記ナノろ過残留物は、更に、それが由来する前記フラクションの初期塩素イオン濃度(a),(b)又は(b’)、を保持するが、着色剤が添加されている。
【0044】
前記ナノろ過残留物は、前記工場の廃液に送られるか、もしくは、既にそれが透析ろ過を受けている場合には、それは製糖工場の糖蜜と混合することも可能である。
【0045】
ナノろ過によるこれらの廃液の処理は、文献に既に広く記載されており、溶出物の10.5未満へのpH調節の代わりの、GE(General Electric)のタイプDLや、pH調節無しでの、Nadir社のPES10タイプ等の複数のタイプのナノろ過膜が良好な結果をもたらす。
【0046】
運転圧力は通常約20barに維持され、運転温度は使用される膜に依存し、通常50℃未満に維持されるが、あるいくつかの膜は、例えば60℃、または80℃といった、より高い温度に耐え得る。
【0047】
副次的な別構成において、ナノろ過膜工程を受ける前記フラクションBは、オプションとしては、0g/l以上、好ましくは、30g/l未満、更に好ましくは15g/l未満の塩素イオン濃度を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションとの混合物として、前記フラクションAのナノろ過残留物(RA1)を含む。
【0048】
好ましくは、前記フラクション(単数又は複数)は、上述したフラクション1−5から選択される。
【0049】
別構成において、工程iii)又はiv)の前に、フラクションA又はフラクションBの前記ナノろ過残留物(RA1)又は(RB1)は、透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)および透析ろ過残留物(RA2)又は(RB2)を形成するために前記ナノろ過工程に使用される前記膜上でのその通過中に、オプションとして塩素イオンを含む、水溶液での少なくとも一回の洗浄を含む透析ろ過工程を受ける。
【0050】
好適には、前記ナノろ過残留物の塩素イオンの一部は、本発明によりフラクションB又はB’を生成するために利用可能な前記透析ろ過透過物(PA2)を介して回収される。
【0051】
前記透析ろ過透過物(PA2)の塩素イオン濃度は、前記ナノろ過残留物(RA1)の塩素イオン濃度の2−10分の一、好ましくは、2〜8分の一、である。
【0052】
前記透析ろ過工程は、好ましくは、前記ナノろ過装置上又は、前記ナノろ過残留物(RA2)の塩分含有ができる限り少なくなるように前記塩素イオンから前記着色剤を分離することが可能な単数又は複数のろ過膜を有する装置、上で行われる。
【0053】
別構成において、前記フラクションBのナノろ過透過物(PB1)のナノろ過透過物(PB1)、オプションとして、前記フラクションB’のナノろ過透過物(PB’1)は、前記フラクションB、オプションとして、前記ナノろ過透過物(PB’1)の前記塩素イオン濃度(g/l)以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する、逆浸透残留物(RB2)、オプションとして(RB’2)を作り出すべく逆浸透工程を受ける。
【0054】
好適には、前記逆浸透工程は、前記フラクション(PB1)そしてオプションとして前記フラクション(PB’1)を塩素イオンを濃縮し、水を回収することを可能にする。
【0055】
逆浸透は、圧力勾配の作用下における半選択性膜を介する置換による液相分離方法である。半選択性膜は、それが分離する二つの媒体間におけるある種の物質の移動を許容する膜である。逆浸透装置は、更に、モジュールとも呼ばれる支持体と、逆浸透のための少なくとも1つの高圧(20〜80bar)ポンプと、両液を所望の温度に維持するための熱交換器とを有する。本発明による前記逆浸透工程は、連続的に行ってもよいしバッチ式に行うことも可能である。前記逆浸透膜は、最も一般的には、セルロースアセテート又は合成ポリマー(ポリアミド、ポリスルホン)中で作られる。
【0056】
それらは、一般的には、螺旋状のモジュールとして構成されるが、ポリマーを紡ぐことによって得られる平面、筒状又は中空ファイバとして構成することも可能である。
【0057】
好ましくは、この工程のために、処理される前記フラクションのpHと温度とを、保持される膜の使用の範囲に対応するべく調節する必要がある。例えば、もしもGE(General Electric)のADタイプの螺旋膜のモジュールが使用されるならば、2〜9のpHと55℃未満の温度となる。ある種の浸透膜は、より制約の少ない使用範囲を有するかもしれない。
【0058】
一実施例において、オプションとして、0g/l以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションとの混合物としての、前記透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)は、オプションとして、0g/l以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションとの混合物としての、前記透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)の前記塩素イオン濃度(g/l)以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する浸透残留物(RA3)または(RB3)を作り出すために逆浸透工程を受ける。
【0059】
好ましくは、前記フラクション(単数又は複数)は、30g/l未満、より好ましくは15g/l未満、の塩素イオン濃度を有する。
【0060】
好ましくは、前記フラクション(単数又は複数)は、上述したフラクション1−5から選択される。
【0061】
この逆浸透工程によって更に、水の回収が可能となる。
【0062】
別構成において、それぞれ電気透析によって塩素イオンを移動させるための工程iii)における前記フラクションAおよび前記フラクションBは、フラクションAからのナノろ過透過物(PA1)と、フラクションBからの逆浸透残留物(RB3)又は(RB2)あるいはフラクションAからの(RA3)を含む。
【0063】
別構成において、前記フラクションAは、フラクションAのナノろ過透過物(PA1)を含み、フラクションBおよびフラクションB’は、それぞれ、フラクションBおよびフラクションB’からの前記ナノろ過透過物(PB1,PB’1)、又はフラクションBおよびB’からの逆浸透残留物(RB2,RB’2)のいずれかを含む。
【0064】
別構成において、前記透析ろ過工程に使用される前記水溶液は、以下を含む、
【0065】
−フラクションAの前記ナノろ過残留物(RA1)の前記塩素イオン濃度の300%、未満、好ましくは、少なくとも300%、の塩素イオン濃度(g/l)を有する前記再処理廃液の単数又は複数のフラクション、および/又は
−前記フラクションBおよび/又はB’。
【0066】
前記ナノろ過残留物から前記着色剤を除去するために使用される前記水は、好ましくは、前記再処理廃液からリサイクルされる。
【0067】
別構成において、電気透析によって塩素イオンを移動させるための前記工程iii)を受けた前記フラクションBは、次に、フラクションDに対応して、前記再処理廃液から水を回収し、その塩素イオン濃度を高め、その後、オプションとして、それを前記電気透析工程に戻すために逆浸透工程を受ける。
【0068】
一実施例において、工程ii)における前記フラクションBおよびB’は、塩素イオンの濃度(f)(g/l)の、前記再処理廃液由来の初期フラクションFの同じ逆浸透残留物(RF1)からの二つのフラクションである。
【0069】
第2の態様による本発明の課題は、フラクションBからフラクションAへ塩素イオンを移動させるためにイオン交換樹脂から塩素イオンを含む再処理廃液を再循環させるための電気透析の使用であって、ここで、前記フラクションAおよびBはそれぞれ塩素イオン濃度(a)および(b)を有し、(a)≧(b)>0g/lであって、前記フラクションAおよびBは、互いに独立的に、直接に、又は、前記再処理廃液の塩素イオン濃度を調節するための単数又は複数の工程の後に得られる。
【0070】
以下非限定的に記載され、下記の図面によって図示される、6つの実施例の説明を読むことによって本発明はより良く理解されるであろう。