特許第6392853号(P6392853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392853塩素イオンを含有する再処理廃液を再循環させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392853
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】塩素イオンを含有する再処理廃液を再循環させる方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/44 20060101AFI20180910BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20180910BHJP
   B01D 61/24 20060101ALI20180910BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20180910BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20180910BHJP
   C02F 1/469 20060101ALI20180910BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B01D61/44 500
   B01D61/02 500
   B01D61/24
   B01D61/44 520
   B01D61/58
   C02F1/44 K
   C02F1/469
   C02F1/42 B
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-512404(P2016-512404)
(86)(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公表番号】特表2016-521205(P2016-521205A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】FR2014050997
(87)【国際公開番号】WO2014181054
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】1354198
(32)【優先日】2013年5月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515309704
【氏名又は名称】ユーロディア・アンデュストリ・エス・アー
【氏名又は名称原語表記】EURODIA INDUSTRIE SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】テオレイル,マルク・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ゴナン,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゲリフ,ゲラール
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−225324(JP,A)
【文献】 特開昭52−103380(JP,A)
【文献】 特開平11−192481(JP,A)
【文献】 特開2000−301005(JP,A)
【文献】 特開昭60−137489(JP,A)
【文献】 特開昭61−155898(JP,A)
【文献】 特開昭49−049869(JP,A)
【文献】 特開2002−080207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/42− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂からの塩素イオンを含む再処理廃液を再循環する方法であって、以下の工程、
(i)塩素イオンを含む再処理廃液を提供する工程、
(ii)前記再処理廃液から直接に、又は、その塩素イオン濃度を調節するための単数又は複数の工程後に、それぞれ濃度(a),(b),(b’)>0g/l,(a)>(b)となる塩素イオン濃度(g/l)を有するフラクションA,BおよびオプションとしてB’を選択する工程、
(iii)塩素イオン濃度(c)>(a)を有するフラクションCを得るために、前記フラクションBの塩素イオンを前記フラクションAに電気透析によって移動させる工程、又は、
(iv)塩素イオン濃度(b”)>(b’)を有するフラクションB”を得るべく電気透析によって前記フラクションBの塩素イオンをフラクションB’に移動させ、次に、塩素イオン濃度(c)>(a)を有するフラクションCを得るために、前記フラクションB”とAを混合する工程、
(v)オプションとして、再処理ブラインの溶液を得るべく前記フラクションCに新たなブラインを添加する工程、を有する方法。
【請求項2】
(a)は、(b)又は(b’)の1.30−10倍である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
着色加糖溶液の変色のための、イオン交換樹脂から塩素イオンを含む再処理廃液を再循環する方法であって、前記再処理廃液は、着色剤を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラクションAは、40g/l以上の塩素イオン濃度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記フラクションB、オプションとして前記フラクションB’は、60g/l以下の塩素イオン濃度を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
電気透析によって前記塩素イオンを移動させる前記工程iii)又はiv)の前に、塩素イオンと着色剤とを含む、前記フラクションAとオプションとして前記フラクションB又は前記フラクションBとB’は、ナノろ過透過物(PA1)、オプションとしてナノろ過透過物(PB1)又は(PB1)と(PB’1)、そして、フラクションAのナノろ過残留物(RA1)、オプションとして、ナノろ過残留物(RB1)又は(RB1)と(RB’1)、とを形成するために、ナノろ過工程を受ける請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ナノろ過工程を受ける前記フラクションBは、オプションとして、0g/l以上の塩素イオン濃度を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションの混合物として、前記フラクションAの前記ナノろ過残留物(RA1)を含み、オプションとして、0g/l以上の塩素イオン濃度を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションとの混合物として、前記透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)の前記塩素イオン濃度(g/l)よりも高い塩素イオン濃度(g/l)を有する浸透残留物(RA3)又は(RB3)を形成するべく逆浸透工程を受ける請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電気透析によって前記塩素イオンを移動させる前記工程iii)又はiv)の前に、前記フラクションAの前記ナノろ過残留物(RA1)又は前記フラクションBの(RB1)は、透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)および透析ろ過残留物(RA2)又は(RB2)を形成するための前記ナノろ過工程に使用される前記膜上におけるその通過中に、水溶液、オプションとして塩素イオンを含む、少なくとも1回の洗浄を含む透析ろ過工程を受ける請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記フラクションBの前記ナノろ過透過物(PB1)、オプションとしてフラクションB’の前記ナノろ過透過物(PB’1)は、フラクションBの前記ナノろ過透過物(PB1)、オプションとして、前記ナノろ過透過物(PB’1)の前記塩素イオン濃度(g/l)よりも高い塩素イオン濃度(g/l)を有する、逆浸透残留物(RB2)、オプションとして(RB’2)を作り出すべく逆浸透工程を受ける請求項6に記載の方法。
【請求項10】
オプションとして、>0g/lの塩素イオン濃度を有する前記再処理廃液から直接の単数又は複数のフラクションとの混合物としての、前記透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)は、オプションとして前記フラクション(単数又は複数)との混合物としての、前記透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)の前記塩素イオン濃度(g/l)以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する浸透残留物(RA3)又は(RB3)を作り出すために、逆浸透工程を受ける請求項8に記載の方法。
【請求項11】
電気透析によって塩素イオンを移動させる工程iii)の前記フラクションAおよび前記フラクションBは、それぞれ、フラクションAからの前記ナノろ過透過物(PA1)と、フラクションBからの前記逆浸透残留物(RB2)又は(RB3)、あるいはフラクションAからの(RA3)を含む請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記フラクションAは、フラクションAの前記ナノろ過透過物(PA1)を含み、前記フラクションBとフラクションB’のそれぞれは、これらフラクションBおよびB’からの前記ナノろ過透過物(PB1,PB’1)、又は、これらフラクションBおよびB’からの前記逆浸透残留物(RB2,RB’2)を含む請求項6又は9に記載の方法。
【請求項13】
前記透析ろ過工程に使用される前記水溶液は、
−フラクションAの前記ナノろ過残留物(RA1)の前記塩素イオン濃度よりも低い塩素イオン濃度(g/l)を有する前記再処理廃液の単数又は複数のフラクション、および/又は
−前記フラクションBおよび/又はB’、を含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
電気透析によって塩素イオンを移動させる前記工程iii)を受けた前記フラクションBは、水を回収するために逆浸透工程を受ける請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記工程ii)の前記フラクションBおよびB’は、塩素イオン濃度(f)(g/l)を有する、前記再処理廃液からの初期フラクションFの、同じ逆浸透残留物(RF1)からの二つのフラクションである請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン交換樹脂が、陰イオン樹脂である請求項3に記載の方法
【請求項17】
前記着色剤が、ポリフェノールである請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記フラクションAは、60g/l以上の塩素イオン濃度を有する請求項4に記載の方法
【請求項19】
前記再処理廃液の単数又は複数のフラクションが、前記フラクションAのナノろ過残留物(RA1)の塩素イオン濃度の1/3以下の塩素イオン濃度を有する請求項13に記載の方法
【請求項20】
前記フラクションB、オプションとして前記フラクションB’は、10g/l以上の塩素イオン濃度を有する請求項5に記載の方法
【請求項21】
フラクションBからフラクションAへ塩素イオンを移動させるためにイオン交換樹脂から塩素イオンを含む再処理廃液を再循環させるための電気透析の使用であって、
ここで、前記フラクションAおよびBはそれぞれ塩素イオン濃度(a)および(b)を有し、(a)≧(b)>0g/lであって、前記フラクションAおよびBは、直接に、又は、前記再処理廃液の塩素イオン濃度を調節するための単数又は複数の工程の後に、互いに独立的に得られる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、塩素イオンを含む再処理廃液、特に、着色加糖溶液の変色(discoloration)用の陽イオン交換樹脂のために再処理ブラインを再循環させる方法の技術分野に関する。
【0002】
好ましくは、前記再処理廃液は、着色加糖溶液の処理から得られる再処理ブラインと着色剤を含む。これら着色剤は、特に、ポリフェノールを含む。
【0003】
イオン交換樹脂、特に、塩化物タイプの強陰イオン樹脂は、シロップ、即ち、製糖における単数又は複数の糖を含む溶液、の変色に広く使用されている。イオン交換樹脂に対する着色剤の結合機序はさまざまであるが、特に、有機酸性を有するある種の着色剤とイオン交換樹脂からの塩素イオンとの間のイオン交換、更に、樹脂のマトリックス上での疎水性着色剤の吸着を利用する。前記イオン交換樹脂の飽和後、比較的高い濃度の塩、特に、11〜13のpHで100g/l、の塩の塩溶液のある量の塩水を浸透させることによってこの樹脂の再処理が行われる。この塩溶液は、再処理ブライン(再処理塩水)とも呼ばれる。
【0004】
再処理ブラインによるイオン交換樹脂の再処理にはいくつかのメカニズムが関わり、特に、浸透圧衝撃が顕著に発生し、樹脂ビーズの内部の水がこれらビーズから流出し、再処理ブラインを希釈する。又、イオン交換、着色剤の溶解、マトリクス/着色剤疎水性相互作用の減少も観察される。
【0005】
再処理ブラインに含まれる塩素イオンの内のわずかな部分、即ち、使用される再処理ブラインの約5%から10%、のみが、イオン交換又は、塩素イオン等量によって着色された加糖溶液と等価の着色剤/有機酸の置き換えによって樹脂と実際に交換される。
【0006】
従って、前記イオン交換樹脂を含むカラムの出口において、再処理用に使用される塩の塩化物の約95%が、再処理廃液とも呼ばれる再処理溶出物中に見られる。
【0007】
これらの溶出物は、最初の再処理ブラインよりも希釈されており、オプションとして着色剤が添加されている。従って、塩素イオンの希釈により、再処理溶出物から即座に使用可能な再処理ブラインを直接回収することは不可能である。
【0008】
事実、再処理の効率は、好ましくは約100g/lである、再処理ブライン中の塩素イオンの濃度に依存する。
【0009】
塩が添加され、更に場合によっては着色剤、特にポリフェノールが添加されたこれら再処理廃液は、そのままでは分解することが非常に困難であるため、汚染性が高い。但し、着色剤は、それらが前記塩によって既に分離されている場合は、生物的処理によって分解可能である。
【0010】
前記塩、即ち、塩素イオンと、前記着色剤であるところのマクロ分子との間のサイズの違いにより、ナノろ過膜を使用してこれらの種両方を分離することは極めて容易である。
【0011】
その様な方法は1998年以降、マルセーユ製糖工場で使用された。この場合、再処理廃液のうち最も濃度の高いフラクションが選択される。このフラクションの塩力価が塩約80g/lであり、溶出物中に含有される塩の約80−90%を示す。このフラクションがナノろ過によって処理される。このナノろ過により、着色剤は、塩中において高度に濃縮されたこのフラクションからのナノろ過残留物中において10〜15倍濃縮される。塩の大半は、実際にはナノろ過膜を通過し、従って、イオン交換樹脂の次の再処理のためのベースとして使用されることになるナノろ過透過物中に再び見られる。
【0012】
前記ナノろ過透過物の塩素イオンの濃度は、濃度250g/lの新たなブラインを添加することによって80〜100g/lにまで高められ、pHが調節される。
【0013】
その塩素イオン力価がこのように再調節されたこのナノろ過透過物は、再び、再処理ブラインとして使用することができる。
【0014】
好適には、この単純な方法により、塩の80%がリサイクルされる。着色剤を豊富に含む前記ナノろ過残留物のフラクションを、水処理プラントにおいて処理されるべく再処理廃液の希釈されたフラクションと混合する。但し、この方法には、低濃度、特に、80g/lよりも明確に低く、とりわけ約10〜20g/lの濃度、の塩素イオンを含む再処理廃液の大きなフラクションは失われてしまう、という欠点がある。必要量の約20%に対応する塩は、再処理ブラインの量と濃度とを調節するべく、前記透過物中に直接濃縮される新たなブラインを添加することによって提供される。
【0015】
更に、廃液中の排出に関する益々厳しくなる基準、従って、処理される廃液の量を最大限制限する要望が存在する。
【0016】
いくつかの国、特に、水が希少な国においては、処理される廃液の量を制限し、最大量の水をリサイクルすることが必要とされている。これらの目標を達成するために、ナノろ過によって着色剤を塩から分離するために、再処理廃液のフラクションの全部を回収することから成る方法がよく知られている。
【0017】
この場合、再処理廃液の塩と着色剤とを含むフラクションが、塩から着色剤を分離するためのナノろ過処理を受けるべく回収される。それによって回収される塩の量は、溶出物中に含まれる塩のほぼ全部に相当するが、それは約50g/lの塩素イオンのものであるために、ナノろ過透過物中のその濃度は更に低くなる。再処理物の量と濃度の調節には、塩濃度を調節するために、回収されたフラクションの水を蒸発させることによる濃縮工程が必要である。この工程は、エアヒータ中で直接行うことができるが、この場合、蒸発された水は失われ、エバポレータを使用することによって、処理済み水として再利用可能な凝縮液の一部を回収することが可能となる。その濃縮法の如何にかかわらず、この処理では、大量を水を蒸発させるために多量のスチームを消費することを前提としているため、エネルギコストが高い。エバポレータが使用される場合は、水蒸気の液化に冷却塔を使用することが必要とされ、したがって、水の回収は完全ではない。従って、放出される水蒸気の液化のために必要な水の消費は生産される凝縮液の約1/3であると推定される。更に、エアゾールの分散はしばしば衛生問題の源であると考えられることから、前記空気ヒータと冷却塔の運転は時にデリケートである。最後に、塩溶液の濃縮によって起こる腐食の懸念からこのエバポレータを建設するために高価な特殊酸類を使用することが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の課題と要約
本発明は、塩素イオンを含む再処理廃液、特に、オプションとして着色剤を含む再処理ブライン、を再循環する方法であって、最大量の水を回収し、汚染流出物量を制限し、塩素イオン、特に、再処理ブライン中の塩、の回収を最大化し、同時に、前記流出物の異なるリサイクル工程のコストを最小化することを可能にする方法を提案するものである。
【0019】
本発明は、特に、前記再処理廃液からの希釈されたフラクション中に含まれる塩を経済的に回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上述した諸問題の全部又は一部を解決するものであって、その一態様に依れば、本発明は、イオン交換樹脂からの塩素イオンを含む再処理廃液を再循環する方法であって、以下の工程を有する方法に関する。即ち、
(i)塩素イオンを含む再処理廃液を提供する、
(ii)前記再処理廃液から直接に、又は、その塩素イオン濃度を調節するための単数又は複数の工程後に、それぞれ濃度(a),(b),(b’)>0g/l,(a)>(b)となる塩素イオン濃度(g/l)を有するフラクションA,BおよびオプションとしてB’を選択する、
(iii)塩素イオン濃度(c)>(a)を有するフラクションCを得るために、前記フラクションBの塩素イオンを前記フラクションAに電気透析によって移動させる、又は、
(iv)塩素イオン濃度b”>b’を有するフラクションB”を得るべく電気透析によって前記フラクションBの塩素イオンをフラクションB’に移動させ、次に、塩素イオン濃度(c)>(a)を有するフラクションCを得るために、前記フラクションB”とAを混合する、
(v)オプションとして、再処理ブラインの溶液を得るべく前記フラクションCに新たなブラインを添加する。
【0021】
電気透析によってフラクションBからフラクションAへ、又はフラクションBからフラクションB’へ塩素イオンを移動させる工程は、電気透析器にこれらのフラクションを供給する工程を含み、前記電気透析器は、それぞれ、前記フラクションBを希釈するためのイオン交換膜と、前記フラクションA又は前記フラクションB’の塩素イオンを濃縮するためのイオン交換膜とを有する。
【0022】
前記電気透析は、電気化学的方法である。電気透析器は複数のコンパートメントを有し、各コンパートメントには、本発明により、所定のフラクションが供給される。例えば、第1組のコンパートメントには、フラクションA又はBが供給され、第2組のコンパートメントには、フラクションB又はB’が供給され、これら第1組と第2組とは交互に設けられる。各コンパートメントは、イオン交換膜によって隣接するコンパートメント(単数又は複数)から分離されている。好ましくは、これらの膜は、陰イオン膜と陽イオン膜とが交互に配置されるように配設される。電界の作用により、前記陰イオン膜は陰イオンのみを透過し、前記陽イオン膜は陽イオンのみを透過する。陽イオンは電流の方向に移動し、陰イオンは電流と反対の方向に移動する。
【0023】
この現象によって、前記電気透析器中において、希釈コンパートメント、即ち、塩素イオン濃度が減少するコンパートメントと、濃縮コンパートメント、即ち、塩素イオン濃度が増大するコンパートメント、とを交互に配置することが可能となる。
【0024】
本発明の範囲内において、塩素イオンを含む廃液を再処理するとは、イオン、陰イオン、陽イオン、又は吸着性交換樹脂の再処理の終わりに得られる塩素イオンを含む水流のことを意味する。
【0025】
本発明の意味において、再生ブラインとは、イオン、陰イオン、陽イオン、又は吸着性交換樹脂の再処理を再処理するために使用される、塩素イオン、特に塩化ナトリウムを含む塩の水溶液、を意味する。
【0026】
前記フラクションA,BおよびオプションとしてのB’は、互いに独立的に、前記再処理廃液から直接に生じるか、もしくは生じない。
【0027】
本発明の意味において、フラクションの塩素イオン濃度を調節する工程とは、好ましくは、水蒸発、逆浸透、電気透析又は、追加のろ過、特に、透析透過から選択される任意の工程を意味する。
【0028】
特に、着色加糖溶液を変色するためのイオン交換樹脂からの再処理廃液に関して、前記再処理廃液は、前記再処理ブラインの第1リンスと、その後の通過後、そして前記イオン交換樹脂上における最終リンス後に得られる廃液である。上述したように、又は、本文に添付の図1を参照して、前記再処理廃液は、第1段階において、所与の量の水(フラクション1)を有し、次に、所与の量の着色塩水(フラクション2)、特に、約10g/lの塩成分を含むものを有し、その後、所与の量の着色ブライン水(フラクション3)、特に、約80g/lの塩素イオンを含むものを有し、その後、塩水の量(フラクション4)、特に、約10g/の塩素イオンを含むものを有し、最後に、所定量の水(フラクション5)を有する。
【0029】
本発明の範囲において、塩素イオンの濃度はリットルあたりのグラム数(g/l)で与えられる。
【0030】
前記フラクションB又はB’は、好ましくは、フラクション1−5から選択される、混合物における前記再処理廃液由来の単数又は複数のフラクションから構成することができる。
【0031】
好ましくは、前記新たなブラインは、約100g/lの塩素イオン濃度を有する。新たなブラインは、好ましくは、飽和に近い200−300g/の塩素イオンを有する溶液からの希釈によって作られる。好適には、塩を含むフラクションを蒸発によって濃縮する、従って、多量要素、即ち水を相変換によって除去する従来技術と異なり、電気透析において消費されるエネルギは、微量要素、本発明の場合は、塩素イオン、の移動(displacement)に比例する(なぜなら低い濃度のフラクションからそれと同じ又はより高い濃度のフラクションへと移動するから)。
【0032】
予め塩素イオンが含まれているフラクションに塩素イオンをエンリッチするために電気透析を使用するほうが、蒸発による前記濃縮方法よりも経済的で簡単である。電気透析において、電気エネルギの消費は移動されるイオンの量に比例し、我々のテスト条件下では、この消費は、移動した塩1キロ当たり1kWh未満であった。ブラインを20g/lから100g/lへと濃縮する場合、三重効用蒸発器の蒸気消費は、水1キロ当たり約0.25kWhであり、エネルギ消費はリサイクルされる塩キロ当たり11kWhに対応する。
【0033】
好ましくは、電気透析による塩素イオンの一つのフラクションから別のフラクションへの移動は、低濃度のフラクションから、最高濃度のフラクションへ、又は、初期において実質的に同じ濃度の二つのフラクション間であって、一方の塩素イオンが枯渇し、他方の塩素イオン濃度が増大するもの、の間で行われる。本発明の課題が可能な限り多くの塩素イオンを含む溶液を回収することにあるとすれば、あるフラクションを希釈して、その後にそれを再び濃縮することにはほとんど経済的な利益はない。
【0034】
好ましくは、フラクションB’の塩素イオン濃度(b’)は、フラクションBの塩素イオン濃度(b)以上である。好適には、前記濃度(b’)は、濃度(b)の約1−2倍である。
【0035】
一実施例において、フラクションAの塩素イオン濃度(a)は、前記塩素イオン濃度(b)又は(b’)の、約1.30−10倍、好ましくは、約1.30−8倍である。
【0036】
好ましくは、前記溶出物又は再処理廃液の濃度ピークに対応する前記フラクションAは、70〜85g/lの濃度を有する。この濃度ピークの前および/又は後のフラクションを表すフラクションBは、前記異なるフラクションに対して適用される限界により、10〜25g/lの濃度を有する。
【0037】
別の構成において、再処理廃液を再循環させる方法は、前記別実施例のずれかによる、着色加糖溶液の変色のために、イオン交換樹脂、好ましくは陰イオン交換樹脂、からの塩素イオンを含む。好適には、前記再処理廃液は、着色剤、特に、ポリフェノール、を含む。
【0038】
別構成において、前記フラクションAは、40g/l以上、好ましくは、60g/l以上の塩素イオン濃度を有する。
【0039】
好ましくは、前記フラクションAは、70g/l以上、更に好ましくは、80g/l以上の塩素イオン濃度を有する。
【0040】
別構成において、前記フラクションB、オプションとして前記フラクションB’は、60g/l以下、好ましくは、10g/l以上、更に好ましくは、30g/l以上、より好ましくは、50g/l以上、の塩素イオン濃度を有する。
【0041】
別構成において、電気透析によって塩素イオンを移動させる工程iii)又はiv)の前において、前記フラクションAそしてオプションとして前記フラクションB又は前記フラクションBおよびB’は、塩素イオンと着色剤を含み、ナノろ過透過物(PA1)、オプションとして、(PB1)又は(PB1)と(PB’1)および前記フラクションAのナノろ過残留物(RA1)、オプションとしてナノろ過残留物(RB1)又は(RB1)と(RB’1)、を形成するためのナノろ過工程を受ける。
【0042】
好ましくは、この工程は、あまり着色されていない、又は、着色剤の無い、塩素イオン濃度(a),(b)又は(b’)を有するナノろ過透過物を形成することを目的とする。
【0043】
好ましくは、前記ナノろ過残留物は、更に、それが由来する前記フラクションの初期塩素イオン濃度(a),(b)又は(b’)、を保持するが、着色剤が添加されている。
【0044】
前記ナノろ過残留物は、前記工場の廃液に送られるか、もしくは、既にそれが透析ろ過を受けている場合には、それは製糖工場の糖蜜と混合することも可能である。
【0045】
ナノろ過によるこれらの廃液の処理は、文献に既に広く記載されており、溶出物の10.5未満へのpH調節の代わりの、GE(General Electric)のタイプDLや、pH調節無しでの、Nadir社のPES10タイプ等の複数のタイプのナノろ過膜が良好な結果をもたらす。
【0046】
運転圧力は通常約20barに維持され、運転温度は使用される膜に依存し、通常50℃未満に維持されるが、あるいくつかの膜は、例えば60℃、または80℃といった、より高い温度に耐え得る。
【0047】
副次的な別構成において、ナノろ過膜工程を受ける前記フラクションBは、オプションとしては、0g/l以上、好ましくは、30g/l未満、更に好ましくは15g/l未満の塩素イオン濃度を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションとの混合物として、前記フラクションAのナノろ過残留物(RA1)を含む。
【0048】
好ましくは、前記フラクション(単数又は複数)は、上述したフラクション1−5から選択される。
【0049】
別構成において、工程iii)又はiv)の前に、フラクションA又はフラクションBの前記ナノろ過残留物(RA1)又は(RB1)は、透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)および透析ろ過残留物(RA2)又は(RB2)を形成するために前記ナノろ過工程に使用される前記膜上でのその通過中に、オプションとして塩素イオンを含む、水溶液での少なくとも一回の洗浄を含む透析ろ過工程を受ける。
【0050】
好適には、前記ナノろ過残留物の塩素イオンの一部は、本発明によりフラクションB又はB’を生成するために利用可能な前記透析ろ過透過物(PA2)を介して回収される。
【0051】
前記透析ろ過透過物(PA2)の塩素イオン濃度は、前記ナノろ過残留物(RA1)の塩素イオン濃度の2−10分の一、好ましくは、2〜8分の一、である。
【0052】
前記透析ろ過工程は、好ましくは、前記ナノろ過装置上又は、前記ナノろ過残留物(RA2)の塩分含有ができる限り少なくなるように前記塩素イオンから前記着色剤を分離することが可能な単数又は複数のろ過膜を有する装置、上で行われる。
【0053】
別構成において、前記フラクションBのナノろ過透過物(PB1)のナノろ過透過物(PB1)、オプションとして、前記フラクションB’のナノろ過透過物(PB’1)は、前記フラクションB、オプションとして、前記ナノろ過透過物(PB’1)の前記塩素イオン濃度(g/l)以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する、逆浸透残留物(RB2)、オプションとして(RB’2)を作り出すべく逆浸透工程を受ける。
【0054】
好適には、前記逆浸透工程は、前記フラクション(PB1)そしてオプションとして前記フラクション(PB’1)を塩素イオンを濃縮し、水を回収することを可能にする。
【0055】
逆浸透は、圧力勾配の作用下における半選択性膜を介する置換による液相分離方法である。半選択性膜は、それが分離する二つの媒体間におけるある種の物質の移動を許容する膜である。逆浸透装置は、更に、モジュールとも呼ばれる支持体と、逆浸透のための少なくとも1つの高圧(20〜80bar)ポンプと、両液を所望の温度に維持するための熱交換器とを有する。本発明による前記逆浸透工程は、連続的に行ってもよいしバッチ式に行うことも可能である。前記逆浸透膜は、最も一般的には、セルロースアセテート又は合成ポリマー(ポリアミド、ポリスルホン)中で作られる。
【0056】
それらは、一般的には、螺旋状のモジュールとして構成されるが、ポリマーを紡ぐことによって得られる平面、筒状又は中空ファイバとして構成することも可能である。
【0057】
好ましくは、この工程のために、処理される前記フラクションのpHと温度とを、保持される膜の使用の範囲に対応するべく調節する必要がある。例えば、もしもGE(General Electric)のADタイプの螺旋膜のモジュールが使用されるならば、2〜9のpHと55℃未満の温度となる。ある種の浸透膜は、より制約の少ない使用範囲を有するかもしれない。
【0058】
一実施例において、オプションとして、0g/l以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションとの混合物としての、前記透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)は、オプションとして、0g/l以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する前記再処理廃液からの単数又は複数のフラクションとの混合物としての、前記透析ろ過透過物(PA2)又は(PB2)の前記塩素イオン濃度(g/l)以上の塩素イオン濃度(g/l)を有する浸透残留物(RA3)または(RB3)を作り出すために逆浸透工程を受ける。
【0059】
好ましくは、前記フラクション(単数又は複数)は、30g/l未満、より好ましくは15g/l未満、の塩素イオン濃度を有する。
【0060】
好ましくは、前記フラクション(単数又は複数)は、上述したフラクション1−5から選択される。
【0061】
この逆浸透工程によって更に、水の回収が可能となる。
【0062】
別構成において、それぞれ電気透析によって塩素イオンを移動させるための工程iii)における前記フラクションAおよび前記フラクションBは、フラクションAからのナノろ過透過物(PA1)と、フラクションBからの逆浸透残留物(RB3)又は(RB2)あるいはフラクションAからの(RA3)を含む。
【0063】
別構成において、前記フラクションAは、フラクションAのナノろ過透過物(PA1)を含み、フラクションBおよびフラクションB’は、それぞれ、フラクションBおよびフラクションB’からの前記ナノろ過透過物(PB1,PB’1)、又はフラクションBおよびB’からの逆浸透残留物(RB2,RB’2)のいずれかを含む。
【0064】
別構成において、前記透析ろ過工程に使用される前記水溶液は、以下を含む、
【0065】
−フラクションAの前記ナノろ過残留物(RA1)の前記塩素イオン濃度の300%、未満、好ましくは、少なくとも300%、の塩素イオン濃度(g/l)を有する前記再処理廃液の単数又は複数のフラクション、および/又は
−前記フラクションBおよび/又はB’。
【0066】
前記ナノろ過残留物から前記着色剤を除去するために使用される前記水は、好ましくは、前記再処理廃液からリサイクルされる。
【0067】
別構成において、電気透析によって塩素イオンを移動させるための前記工程iii)を受けた前記フラクションBは、次に、フラクションDに対応して、前記再処理廃液から水を回収し、その塩素イオン濃度を高め、その後、オプションとして、それを前記電気透析工程に戻すために逆浸透工程を受ける。
【0068】
一実施例において、工程ii)における前記フラクションBおよびB’は、塩素イオンの濃度(f)(g/l)の、前記再処理廃液由来の初期フラクションFの同じ逆浸透残留物(RF1)からの二つのフラクションである。
【0069】
第2の態様による本発明の課題は、フラクションBからフラクションAへ塩素イオンを移動させるためにイオン交換樹脂から塩素イオンを含む再処理廃液を再循環させるための電気透析の使用であって、ここで、前記フラクションAおよびBはそれぞれ塩素イオン濃度(a)および(b)を有し、(a)≧(b)>0g/lであって、前記フラクションAおよびBは、互いに独立的に、直接に、又は、前記再処理廃液の塩素イオン濃度を調節するための単数又は複数の工程の後に得られる。
【0070】
以下非限定的に記載され、下記の図面によって図示される、6つの実施例の説明を読むことによって本発明はより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、溶出物又は再処理廃液の異なるフラクションの塩濃度(g/l)を概略図示している。
図2図2は、本発明による第1の方法の異なる工程を概略図示している。
図3図3は、本発明による第2の方法の異なる工程を概略図示している。
図4図4は、本発明による第3の方法の異なる工程を概略図示している。
図5図5は、本発明による第4の方法の異なる工程を概略図示している。
図6図6は、本発明による第5の方法の異なる工程を概略図示している。
図7図7は、本発明による第6の方法の異なる工程を概略図示している。
【発明を実施するための形態】
【0072】
発明の詳細な説明
図1は、再処理時のカラムから出た直後の溶出プロファイルを図示している。溶出物又はフラクションの塩の約80%から90%が、再処理に必要な量に対応する量中に見られるが、その塩価は約80g/lであり、これはフラクションNo.3に対応する。前記溶出物の塩の10〜20%が、このピークの前後の希釈フラクション中に見られる、これはフラクションNo.2とNo.4に対応する。
【0073】
本発明による6種類の方法例は、Rohm&HaasのFPA90タイプの陰イオン樹脂30Lを含むカラムの通過時に、800icumsaから90icumsaへ変色された60brixの黒砂糖の溶液の変色後に使用される再処理廃液に対して使用される。作業温度は80℃であり、スループットは60リットル/時間である。着色剤で飽和した前記樹脂は、ソーダを添加することによってそのpHが13に調節された塩溶液を100g/lで通過させることによって高温条件下(80℃)で再処理された。前記変色カラムを再処理するために、下記の処理を行う。
【0074】
−54リットルの再処理、即ち、1.8BV
−60リットルの置換、即ち2BV
−30リットルの最終濯ぎ、即ち1BV
前記値BVは、再処理される樹脂の量に対応する。
【0075】
図2に図示されている第1の方法例1は、塩素イオンを含む前記再処理廃液からのフラクションA及びBの直接の選択を含む。これらのフラクションAおよびBは、そのそれぞれの塩素イオン濃度(a)および(b)が約80g/lと10g/lである。
【0076】
この具体例において、前記フラクションAは、図1に図示の再処理廃液の溶出プロファイルにおいてフラクションNo.3に対応する。それが対応するフラクションBは、図1に図示の溶出プロファイルの、フラクションNo.2および/又はフラクションNo.4に対応する。
【0077】
前記フラクションAおよびBは、それぞれナノ透過物PA1とPB1およびナノ残留物RA1とRB1を形成するべくナノろ過を受ける。
【0078】
処理されるフラクション(単数又は複数)を10.5未満のpH値に調節して、GE(General Electric)のタイプDK又はDLの螺旋状膜でのナノろ過によって良好な結果が得られている。NadirのPES10タイプの膜も使用可能である。後者は、pHと温度とに対してより耐性が高く、それらはそのフラクションを回復するためにpH11.5〜13.5、約60℃の温度で運転することを可能にする。
【0079】
次に、フラクションBのナノろ過透過物PB1は、逆浸透残留物RB2を形成するとともに再処理廃液から水を回収するために、この透過物の塩素イオンを濃縮するために逆浸透工程を受ける。
【0080】
フラクションAのナノろ過透過物PA1と、フラクションBのナノろ過透過物の逆浸透残留物RB2とは電気透析工程を受け、それによって残留物RB2の塩素イオンは前記透過物PA1へと移動して後者を濃縮してPA1の塩素イオン濃度よりも高い塩素イオン濃度(c)を有するフラクションCを得る。この具体例において、前記フラクションCは約90−100g/lの塩素イオン濃度を有する。
【0081】
電気透析から得られる希釈された塩素イオンのフラクションDは、再処理廃液から水を回収するべく逆浸透工程を受ける。前記残留物RDは、その後、前記初期フラクションBと混合してもよいし、あるいは、更に、電気透析工程中に前記残留物RB2と混合してもよい。
【0082】
オプションとして、前記フラクションDは、前記フラクションBのナノろ過透過物、即ちPB1との混合物として前記逆浸透工程に再循環することができる。
【0083】
以下、図3を参照して第2の方法例2について詳細に説明する。前記カラムの出口において、廃液はそれらの導電性に応じて仕分けされ、濃度を高めるために塩ピークの収集を減少させた。フラクションNo.2は、25リットルであり、僅かに着色され、かつ、25g/l濃度の塩、即ち、625gの塩、の塩度を有する。フラクションAに対応するフラクションNo.3は、48リットルであり、前記色と前記導電性ピークとに対応する。フラクションNo.3は79.4g/lの塩の濃度、即ち、3,811gの塩、を有する。
【0084】
ここでいっしょに収集されたフラクションNo.1,4および5は、71リットルであり、弱い色と、低い導電性と、9.8g/lの塩の濃度、即ち、696gの塩、を有する。
【0085】
再処理に使用された5,400gの塩の内、5,132g、即ち、塩の95%、が前記フラクションNo.2および3の混合物中の82%と、前記フラクションNo.1,4および5中の13%を含む、前記溶出物中に回収される。フラクションNo.3のナノろ過の最後に得られる透過物PA1は、約79.5g/lの塩の濃度を有する。
【0086】
フラクションNo.2は着色されているがその塩度はあまり高くない。フラクションNo.2は、フラクションNo.3のナノろ過の残留物RA1との混合物中で、フラクションNo.3のナノろ過後のナノろ過によって処理される。それによって39.3g/lの透過物PB1が回収される。フラクションNo.2と残留物RA1との混合物は、本発明によるフラクションBに対応する。
【0087】
これによって得られた最終残留物RB1を、3g/lの脱塩残留物RB2と、10g/lの透過物PB2とを得るべく透析によって水で徐々に洗浄する。
【0088】
フラクションEに対応するフラクション1,4および5を、前記透過物PB2と混合する。15−16g/lの塩のこの混合物を次に、約49g/lの残留物RB3と、処理済み水として再循環可能な、0.5g/l未満の低塩含有率の透過物PB3とを作るべく逆浸透によって3.3倍濃縮する。好ましくは、前記塩の99%が透過物PB2中に回収される。次に、一方においては前記浸透残留物RB3と、他方においては前記透過物PA1とが、電気透析で処理される。加えられる電流の作用により、前記残留物RB3はミネラル除去されるのに対して、前記ナノろ過透過物PA1は、エンリッチフラクションCを形成するべく塩がエンリッチ(豊富に)される。使用された電気透析制御装置は、50の電気透析セルを備えるEurodiaのEUR6タイプのものであった。各セルは、AMXタイプの陰イオン膜と、Aston−corpのNeoseptaブランドのCMXタイプの陽イオン膜とから成る。前記制御装置は、特に、前記膜、DC電流発生装置、ブライン回路、および透過物回路を含む電気透析スタックから成る。
【0089】
ループで1,000l/hの連続的再循環を両製品、前記浸透残留物RB3および透過物PA1のそれぞれに対して維持し、温度は好ましくは約25℃に維持される。次に、前記電気透析スタックの端子にDC電圧を加える。電流の作用によって、塩が徐々に残留物RB3コンパートメントから透過物PA1回路へと移動する。この具体例において、46ボルトの一定電圧を加えることによって、強度は安定維持されるが、前記残留物RB3の導電性が76mS/cmから5.4mS/cmへ減少するにつれて、それは33アンペアから20アンペアへと規則的に減少する。同時に、前記透過物PA1の導電性は、24分間で、113mS/cmから149mS/cmへと増大する。テストの最後において、両回路は空になり、分析されて、下記の表1に記載されているような材料バランスが得られる。
【0090】
【表1】
【0091】
この具体例において、平均強度は31アンペアである。24分間で、1.2kgの塩と4.6リットルの水とが一方の回路から他方の回路に移動し、ここで、電流密度は548アンペア/m、18.3equiv./h/m、即ち、90%のファラデー収量、に対応する塩の移動流、である。循環ポンプの消費を考慮に入れると、前記作業の電気消費量は移動した塩kg当たり0.54kWhとなる。これによって、前記フラクションCを得るべく、前記ナノろ過透過物PA1の最終濃度を、NaCl79.5から113g/lへと増加させることが可能であった。この構成において、比較的濃度の低いフラクションRB3の塩の91%が最も濃度の高いフラクションPA1へと移動する。塩の移動と同時に、移動する塩kg当たり3.8Lに対応する水の移動も観察される。
【0092】
適用される装置運転のそれぞれのシェア係数を使用することによって、材料バランスを構築し、この方法によって提供される利点を評価することが可能となる。この例において、前記溶出物中を塩化物を測定すると、再処理時に与えられる塩の95%、即ち、使用される180g/lに対する171g/lの樹脂に等価、が144Lの収集される溶出物中に再び見られる。
【0093】
前記ナノろ過において、塩の78%が、再び前記透過物PA1中に見られ、前記透過物PB1と透析ろ過透過物PB2中には21.5%、0.5%未満が最終残留物D中に残る。
【0094】
前記逆浸透において、前記透過物PB3中の塩の損失はこの段階で処理される塩の1%である。
【0095】
電気透析に使用される浸透残留物RB3に含まれる塩の90%以上が濃縮フラクションPA1へ移動するが、この残留物からの前記一部ミネラル除去されたフラクションDが、浸透残留物RB3の約10%、即ち、収集される全部の塩の約2.7%、の塩の損失の主要源である。この塩は、この残留物Dを逆浸透装置に再循環することによって回収可能である。
【0096】
これにより、溶出物中に得られた塩の96%以上が、ナノろ過と、逆浸透処理と電気透析との組み合わせによって回収可能である。
【0097】
以後、図4を参照して本発明による第3の方法例について詳述するが、この方法は、フラクションBに対するナノろ過工程を有さず、更に、透過物PB1とフラクションDに対して行われる逆浸透工程も有さない点において、第1の方法例と異なる。
【0098】
この第3の方法例において、カラムの出口において、溶出物は、それらの塩含有量に依存する導電性に応じて仕分けされ、これによって、図1に図示されているもののような溶出プロファイルを確立することが可能となる。
【0099】
フラクション1、12リットルは、そのまま再使用可能な質を有する。
フラクション2、10リットルは、僅かに着色され、塩を含有する。
フラクション3、50リットルは、前記色および導電性ピークに対応する。
フラクション4、20リットルは、弱い色と低い導電性である。
フラクション5、20リットルは、僅かに塩を含有する廃液である。
【0100】
本発明のフラクションAに対応するフラクションNo.3は、従って、HClを添加することによってpH10へと調節され、その後、透過物PA1と残留物RA1とをFCV10.5で得るために、GEのタイプDLの膜の螺旋状の2.5”エレメントを備える制御装置を使用してナノろ過によって処理される。ナノろ過透過物PA1は79.5g/lに等しい塩含有量を有する。約20g/lの塩濃度を有する本発明によるフラクションBを形成するべく前記フラクション2と4を混合する。次に、一方においてフラクション2と4、他方においてはナノろ過透過物PA1を、電気透析で処理する。加えられる電流の作用により、前記フラクションBはミネラル除去されるのに対して、前記ナノろ過透過物PA1は塩がエンリッチされる。使用された電気透析制御装置は、50の電気透析セルを備えるEurodiaのEUR6タイプのものであった。各セルは、AMXタイプの陰イオン膜と、Aston−corpのNeoseptaブランドのCMXタイプの陽イオン膜とから成る。前記制御装置は、特に、前記膜、DC電流発生装置、フラクションBのための回路、透過物PA1のための回路を含む電気透析スタックから成る。
【0101】
ループで1,000l/hの連続的再循環を両製品、前記フラクションBおよび前記透過物のそれぞれに対して維持し、温度は好ましくは約22℃に維持される。次に、前記電気透析スタックの端子にDC電圧を加える。電流の作用によって、塩が徐々にフラクションBのコンパートメントから透過物PA1の回路へと移動する。この具体例において、46ボルトの一定電圧を加えることによって、前記フラクションBの導電性が33mS/cmから1.2mS/cへと減少するにつれて強度は23アンペアから4.3アンペアへと規則的に減少する。同時に、前記透過物PA1の導電性は、22分間で、104mS/cmから124mS/cmへと増大する。テストの最後において、両回路は空になり、分析すると下記の表2に記載されているような材料バランスが得られる。
【0102】
【表2】
【0103】
この具体例において、平均強度は16.3アンペアである。22分間で、556gの塩と2.4リットルの水とが一方の回路から他方の回路に移動する。290アンペア/mの電流密度で、9.3equiv./h/mに対応する塩移動流、即ち、85%のファラデー収量が観察される。循環ポンプの消費を考慮に入れると、前記作業の電気消費量は移動した塩kg当たり0.62kWhとなる。これによって、前記フラクションCに対応するナノろ過透過物PA1の最終濃度を、NaCl72.3g/lから89g/lへと増加させることが可能であった。このテストは、電気透析に使用されるフラクションの塩の99%が、最終透過物Cにおいて、90g/lに近い濃度で回収されること、そして、これを新たな濃縮ブラインを添加することによるその濃度調節の代わりに、樹脂の再生のために再循環することが可能である、ということを示している。
【0104】
図5に図示される本発明による第4の方法例4は、塩素イオンを含む再処理廃液、特に、着色加糖溶液の変色のためのイオン交換樹脂からの再処理廃液、からフラクションAを選択する第1の工程を有する。
【0105】
具体的には、このフラクションAは、図1に図示される前記再処理廃液の溶出プロファイル上のフラクション3に対応する。この具体例において、フラクションAは約80g/lの塩素イオン濃度を有する。
【0106】
フラクションAは、ナノろ過透過物PA1とナノろ過残留物RA1とを形成するためにナノろ過工程を受け、PA1とRA1とは、共に、80g/lの塩素イオン濃度を有するが、透過物PA1はもはや着色されていないか、又は、着色剤を含まない。
【0107】
次に前記フラクションAの前記ナノろ過残留物RA1は、透析ろ過工程を受け、この間に、前記残留物RA1は、オプションとして塩素イオンを含む水で洗浄される。この透析ろ過工程に使用される前記水は、前記フラクションAのナノろ過残留物RA1の塩素イオン濃度の、300%、未満、好ましくは、少なくとも300%、の塩素イオン濃度(g/l)を有する再処理廃液の単数又は複数のフラクションを含むことができる。
【0108】
前記透析ろ過透過物PA2は、好ましくは、変色されているか、もしくは、着色剤を含まない。それに対して前記透析ろ過残留物RA2は、着色されている。前記透析ろ過透過物PA2と透析ろ過残留物RA2とは、この具体例では、約10g/lの塩素イオン濃度を有する。
【0109】
次に、前記透析ろ過透過物PA2は、その塩素イオン濃度を高めるべく逆浸透処理工程を受け、この具体例では、約45g/lの含有量を有する。前記透析ろ過透過物PA2の逆浸透残留物は、参照符号RA3で示されている。この逆浸透工程は、更に、前記再処理廃液から水を発生させることも可能にする。
【0110】
尚、前記透析ろ過工程は、好ましくは、前記ナノろ過装置上で行われ、従って、同じナノろ過膜上で行われることに注意すべきである。
【0111】
電気透析によって塩素イオンを移動するための前記工程が、本発明による前記フラクションBを形成する前記逆浸透残留物RA3と、前記フラクションAのナノろ過透過物PA1との間で行われる。
【0112】
これにより、前記電気透析工程は、前記フラクションPA1の塩素イオン濃度よりも高い塩素イオン濃度(c)を有するフラクションCを形成するべく、比較的低い濃度のフラクションRA3の塩素イオンを最も高い塩素イオン濃度の前記フラクションPA1へと移動させることを可能にする。
【0113】
前記電気透析工程から得られるフラクションDは、塩素イオン希釈され、前記透析ろ過工程用の洗浄水において再循環することができる。
【0114】
図6に図示されている本発明による第5の方法例は、塩素イオンを含む再処理廃液、特に、着色加糖溶液の変色のために使用されるイオン交換樹脂からの再処理廃液、から直接のフラクションAの選択を含む。
【0115】
この具体例において、このフラクションは、図1に図示される前記再処理廃液の溶出プロファイル上の、糖のミネラル除去の分野における再処理廃液のフラクション3に対応し、従って、約80g/lの塩素イオン濃度を有する。
【0116】
この方法は、更に、図1に図示される溶出プロファイル上の、グローバルフラクションEに対応するものとして引用されるフラクション2および/又は4の選択も含む。
【0117】
このフラクションEの塩素イオン濃度は、この具体例においては、30g/l未満、好ましくは、約10g/lの塩素イオン、である。
【0118】
前記フラクションAは、ナノろ過透過物PA1とナノろ過残留物RA1とを形成するためにナノろ過工程を受ける。
【0119】
このナノろ過工程は、上述した図2および図3に図示の第1および第2の方法例(1,2)に関して記載したものと同じ技術的作用、特に、前記透過物PA1からの着色剤の除去の能力、を有する。
【0120】
前記ナノろ過残留物RA1は、透析ろ過工程、好ましくは、前記ナノろ過装置上における、後続の工程によって前記再処理廃液のリサイクルされた塩素イオンをオプションとして含む、洗浄水、による、透析ろ過工程を受ける。
【0121】
これにより、前記透析ろ過透過物PA2は、前記ナノろ過残留物RA1と比較して少なくとも4倍、好ましくは、前記残留物RA1の塩素イオン濃度での前記残留物と比較して、この例では少なくとも8倍希釈される。
【0122】
好ましくは、これによって得られる透析ろ過透過物は約10g/lの塩素イオン濃度を有し、変色している。
【0123】
オプションとして上述したフラクションEに添加される、前記透析ろ過透過物PA2は、それらの塩素イオン濃度を高め、前記再処理廃液からの水を回収するために逆浸透処理を受ける。
【0124】
これによって得られる逆浸透残留物RA3は、この具体例においては約50g/lの濃度を有する。
【0125】
従って、前記逆浸透残留物RA3は、本発明によるフラクションBに対応する。
【0126】
前記逆浸透残留物RA3と前記ナノろ過透過物PA1とは、電気透析工程を受け、そこで、塩化物フラクションRA3の塩素イオンが前記フラクションPA1に向けてそれをエンリッチするために移動し、それによって、前記フラクションPA1のそれよりも高い塩素イオン濃度を有するフラクションCを形成する。
【0127】
前記電気透析工程の最後に得られる塩素イオン希釈された前記フラクションDは、洗浄水として前記透析ろ過工程において再循環される。
【0128】
好ましくは、前記フラクションCの塩素イオン濃度は、約90〜100g/lである。
【0129】
図7に図示されている第6の方法例6は、塩素イオンを含む再処理廃液、特に、加糖着色溶液の変色のためのイオン交換樹脂からの再処理廃液、のフラクションFの選択を提供する。
【0130】
この具体例において、このフラクションFは、図1に図示の溶出プロファイルに図示された前記フラクション1および2に対応する。
【0131】
このフラクションFは、逆浸透残留物RF1においてその塩素イオン含有量を高めるべく逆浸透処理を受け、好ましくは、前記残留物RF1は、50g/l以上の塩素イオンの含有率を有する。
【0132】
この逆浸透残留物RF1は、本発明のよる二つのフラクション、それぞれ、BおよびB’へと分離される。これらフラクションBおよびB’は同じ逆浸透残留物RF1から由来するものであるので、ほぼ同じ塩素イオン濃度を有する。
【0133】
これらのフラクションBおよびB’は、電気透析工程を受け、そこで、フラクションB’の塩素イオンがフラクションBへと移動して、より高い塩素イオン濃度のフラクションB”を形成する。
【0134】
前記フラクションB”の塩素イオン濃度(b”)は、フラクションBの塩素イオン濃度(b)よりも高い。
【0135】
フラクションB”の塩素イオン濃度は、この具体例においては、約90〜100g/lである。
【0136】
次に、塩素イオン濃度(c)を有するフラクションCを形成するために、前記フラクションB”は、塩素イオンを有する再処理廃液から直接得られるフラクションAと混合される。
【0137】
フラクションAが、加糖され着色された溶液の変色のためのイオン交換樹脂からの再処理廃液からのものである場合、フラクションAは、まず、ナノろ過透過物PA1を形成するためにナノろ過工程を受ける。
【0138】
後者の場合、次に、前記フラクションB”は、前記ナノろ過透過物PA1と混合される。
【0139】
前記方法1〜6に関して記載したフラクションCの塩素イオン濃度は、新たなブラインを加えることによって、100g/lへと調節することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7