(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記注入針が、前記自己密閉膜を貫いて、前記自己密閉膜の外面を覆う瘢痕組織の被膜を通り抜けるのに十分な長さである、請求項1から7のいずれか1項に記載の緊急供給弁。
200kPa以下の過圧閾値、好ましくは150kPa以下の過圧閾値、より好ましくは100kPa以下の過圧閾値まで前記注入針が格納された位置にある、請求項1から11のいずれか1項に記載の緊急供給弁。
前記緊急供給弁がハウジングによって覆われ、前記ハウジングが、周囲の組織内に前記ハウジングが縫合されて埋込部位に前記ハウジングを固定することを可能にする、請求項1から12のいずれか1項に記載の緊急供給弁または請求項13に記載の機構。
中心静脈カテーテルを経由する前記正規の供給通路が復旧すると、前記可動ピストンが格納され、前記注入針が休止位置に戻る、請求項13から15のいずれか1項に記載の機構。
【背景技術】
【0002】
埋込型薬物注入装置は当該技術ではよく知られており、患者に治療薬を長期間投薬または注入するために検討されている。能動薬物注入装置は、患者の組織内に薬物を送出するポンプまたは計量システムを特徴とし、通常、電子圧力センサおよびプロセッサを含む。移動する患者に薬物治療を施す埋込型医療装置は、関連する事象に対して患者に警告する方法を有しなければならない。音響または振動信号のようないくつかの異なる警告システムは、すでに埋込型ポンプまたは他の装置と組み合わせて使用されている。
【0003】
しかしながら、特に、患者にとって重要な薬物を注入装置が提供し、その供給のいかなる中断も生命の危険につながりかねない場合には、有効な警報システムがさらにより重要である。
【0004】
一例として、肺動脈性肺高血圧症は機能障害を起こしたり生命を危うくしたりする病気であり、適切な療法をしなければ、生命予後は非常に悪い。今日まで、非経口プロスタノイド類似体が、いまでもこの病気に対処するための最も活性のある化合物に属する。このような療法はいかなる中断もなしに生涯行わなければならない。いかなる治療の中断も、致死的急性右心不全になる場合がある肺循環の高血圧クライシスにつながりかねない。外部の高精度マイクロポンプは、皮下または静脈内へ持続的に薬物を送出する投与補助器具として働く。これらのポンプ装置は、例えば、カテーテルがねじれたり、閉塞したりすることによって、きわめて重要な薬物の供給が途絶えたときに患者に警告するために、音響閉塞警報を備える。
【0005】
外部のポンプは侵襲性があり、中心静脈アクセスの場合には、カテーテル感染または敗血症の実質的な危険性につながる。今では、最近のマイクロポンプ装置は、右または左外側腰局部の皮下空間内に埋め込むことができる。これらのポンプは、体外式カテーテルにつきものの感染の危険性なしに、十分受容される静脈内薬物投与をすることができるという利点がある。毎月の補充間隔によって、患者の投薬遵守および利便性がさらに確実になる。埋込型マイクロポンプに内蔵された音響警報システムには、多くの技術的に不都合なことがある。皮膚の下で発せられる音響信号はかなり音が小さく、特に夜間は聞き逃す場合がある。その上、音響信号源は電池を必要とし、その電池は、もし短時間に閉塞を除去することができなければ急速に消耗する場合がある。電池はまた警報の発生状況が繰り返し生じる場合にも消耗するであろう。したがって、本来10年近く持続すべき埋込型ポンプ装置が、ほんの数日後に警報の電池不足のために交換しなければならない場合がある。
【0006】
実際には、さらにより重要なことは、警報は、プロスタノイドの送出が停止して起こり得る重大な結果を解消するものではなく、単に認識手段を提供するだけである。このような警報が、例えば、海外旅行中に生じた場合、生命を危うくするこの突然の治療の停止を解決するのに利用できる施設がない場合がある。
【0007】
米国特許出願公開第2009/0076485号は、2本のカテーテルを有する埋込型ポンプ用安全システムを記述しており、それは患者の組織に無防備に露出される。したがって、第2の代替のカテーテルの緊急出口は、短期間の内に、体の組織によって作られる結合組織の被膜によって包まれて塞がれ、それによって無効になる場合がある。
【0008】
米国特許出願公開第2003/216683号は、電子圧力測定システムおよび制御器を備える計量された薬物を送出するための送出装置を記述しており、それは、弁を選択的に開いて、着実に既定量の薬液を送出する。
【0009】
国際公開第2008/106810号は、医療装置内に一体化された液圧閉塞検出システムを開示している。
【0010】
米国特許出願公開第2012/0078181号は、貯槽および出口ポートを有するカートリッジ本体、ならびに本体に接続し、出口ポートと流体連通する貫通孔を有するマニホールドを備える注入ポンプを記述している。
【0011】
したがって、患者が確実に、できるだけ早く故障に気づく緊急システムであって、たとえ正規の供給システムに支障があっても薬物を絶え間なく供給する緊急システムを提供するという、いまだ対処されていない必要なことがなおも存在する。
【発明の概要】
【0012】
本目的は、各薬物を対象者に絶え間なく供給し、薬物の供給のいかなる中断も回避し、加えて、代替の薬物注入部位での局部的な刺激または痛みによって特徴付けられる警報で対象者に警告する、新規の緊急システムを提供する本発明によって達成される。さらに、本発明は、電池のような緊急電源を必要とせずに完全に機能する緊急システムを提供する。たとえ薬物がいかなる刺激も引き起こさなくても、本発明のシステムは、静脈送出が閉塞されても絶え間なく薬物を供給するのになお有用である。さらに、定期的なX線検査の際に、薬物が正規の静脈システムを経由して供給されているか、または、本発明のシステムによる代替の経路を経由して供給されているかを検出することができる。
【0013】
本発明は、静脈ラインが閉塞した場合に、皮下組織内に別経路で注入することによって確実に絶え間なく薬物を送出する能動緊急供給弁を提供する。これは、結合組織の隔膜を突破することできる圧力作動の注入機構によって確実に達成される。このような組織の隔膜は、長期間経つと、すべての埋込物を包み、代替の薬物移送のための保護されていない固定した出口をそれ自体で徐々に塞ぐ。
【0014】
能動緊急供給弁は、電子警報システムに冗長性を与え、簡単で頑丈な機械的な解決策によって、持続的な薬物の送出を守ることができる。しかしながら、本発明の緊急供給弁を含む機構は、追加の音響または振動警報システムをさらに含むことができる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、薬液を、それを必要とする対象者に、原位置投与することを支援するための緊急供給弁が提供され、これは、2つの出口の投与装置の概念に基づいており、正規の送出経路が不具合の場合に、ある仕組みによって第2の送出経路を作動させる。
【0016】
具体的には、本発明は、薬物流体を投与することを支援する装置を提供し、本装置は、
a.可動ピストンに接続された注入針と、
b.正規の薬物供給ラインを通ることができない薬液の増大した過圧で、ピストンを前方位置に動かすことを可能にする圧力感応システムと、
c.注入針先端の前面に配置された自己密閉膜と、
d.注入針に取り付けられた接続ユニットであって、注入針が格納状態にあるときは正規の薬物導管から遮断され、注入針が自己密閉膜を貫く前方状態にあるときは正規の薬物導管に接続される接続ユニットと
を備える。
【0017】
本発明の実施形態によれば、弁は、正規の薬物供給導管を、a)圧力感応システム、b)針を含むチャンバ、および/またはc)接続ユニットと接続する補助ラインをさらに備えている。
【0018】
本発明のさらなる実施形態によれば、弁は、注入針を含むチャンバと圧力感応システムを接続する補助ラインを備えている。
【0019】
さらなる実施形態によれば、ピストンは、正規の薬物供給ラインの流体の圧力がかかる表面を備える。
【0020】
本発明のさらなる実施形態によれば、圧力感応機構は、具体的には、ピストンを前方位置から格納する
保持ばねを備えることができる。具体的には、
保持ばねは、直接、可動ピストンに接続される、または可動ピストンと結合される。
【0021】
具体的には、薬液の過圧が増大していることによって、ピストンは圧力感応システムの抵抗に打ち勝つ。
【0022】
薬物供給圧は、薬液を絶え間なく流すために体圧より高くすることができ、それは正常な過圧P
1として定義することができる。増大した過圧はP
2として定義され、P
2>P
1である。
【0023】
さらなる実施形態によれば、通常、薬物は十分な薬物を供給するために静脈内に投与されるが、緊急供給においては、薬液は皮下に投与される。
【0024】
実施形態によれば、針は斜めに切られた先端の付いた中空針である。
【0025】
注入針の最適の長さは専門家によって容易に決定することができ、緊急供給弁の寸法に依存する。具体的には、注入針は、前方位置に動かされたとき、先端近辺にある自己密閉膜を貫くのに十分な長さを有する。より具体的には、先端は、休止位置にあるときには自己密閉膜に密着するが自己密閉膜を貫かず、前方位置にあるときには自己密閉膜および自己密閉膜の外面の周りの瘢痕組織の被膜を通り抜けるように設計される。これは、約3から5mmの余剰長さによって達成することができる。
【0026】
本発明のさらなる実施形態では、緊急供給弁は、接続ユニットのための開口の後ろに配置される1つまたは複数のシールリングを備える。
【0027】
実施形態によれば、自己シール膜は高分子材料から作ることができ、具体的には、高分子材料は、シリコンおよびポリウレタンから選択された少なくとも1つの高分子材を含むことができる。
【0028】
ある実施形態では、限定するものではないが、
保持ばねおよび注入針などの金属部品は非帯磁性材料から作られる。
【0029】
さらなる実施形態によれば、緊急供給弁に結合された薬物供給ラインの増大した過圧によって、ピストンは前方位置に動き、それによって弁は代替の投与モードに切り替わる。増大した過圧は、静脈注入装置または出口ポートの閉塞による場合がある。
【0030】
本発明のある実施形態では、薬物供給導管と緊急供給弁とを接続する補助ラインが設けられ、それは、導管の一部とすることができ、または、特に、それに接続され密閉される。
【0031】
さらなる実施形態では、注入針は、200kPa以下の過圧閾値、特に150kPa以下の過圧閾値、特に100kPa以下の過圧閾値まで休止位置にある。
【0032】
さらなる実施形態によれば、針は、200kPaを超えて増大する過圧、特に150kPaを超えて増大する過圧、特に100kPaを超えて増大する過圧によって前方に動かされが、増大する圧力は250kPaを超えない。
【0033】
さらなる実施形態によれば、一旦、針が押されて隔壁または膜を抜けて皮下組織に入ると、具体的には、注入針が前方位置にあるとき、接続ユニットは正規の注入導管につながる。本発明はまた、埋込型圧力ポンプおよび供給ユニットを備える機構または装置を提供し、供給ユニットは、
a)出力ラインと、
b)出力ラインまたは補助ラインに接続される、本発明の実施形態による緊急供給弁と
を備え、出力ラインは薬物を絶え間なく静脈を通して対象者に供給し、緊急供給弁は、代替の投与モードによって薬物を投与し、弁はポンプと中心静脈アクセス点との間に配置される。
【0034】
本発明の実施形態によれば、本発明の緊急供給弁、または緊急供給弁を含む機構は、ハウジングによって覆われ、ハウジングは、周囲の組織内にいくつかの点でハウジングが縫合されて埋込部位にハウジングを固定することを可能にする。
【0035】
さらなる実施形態によれば、上記のポンプは電源および再充填可能な薬物収容貯槽をさらに備えることができ、特に、上記のポンプは、自己密閉予備口を含んで出力ラインの洗浄を可能にし、それによって、緊急供給弁を再設定することを可能にする。
【0036】
さらなる実施形態によれば、中心静脈カテーテルを経由する正規の供給通路が復旧すると、注入針はその休止位置に戻る。
【0037】
本発明はまた、機構内の緊急供給弁を使用することによって、薬物を必要とする対象者に投与する方法を提供する。
【0038】
実施形態によれば、緊急供給弁による皮下投与の際に、薬物の投与によって軽度から中程度の局部的な痛みまたは刺激を引き起こし、それによって、個人に、特に、絶え間ない薬物の供給が維持されている間に医者に診てもらうように警告する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、正規の薬物導管から薬液を、それを必要とする対象者に、原位置投与することを支援するための緊急供給弁を提供し、緊急供給弁は、
a.可動ピストン(2)に接続された注入針(1)と、
b.薬液が正規の薬物供給導管(5)を通ることができないとき、貯蔵されている薬液の増大した過圧により、ピストン(2)を前方位置に押し込む圧力感応システムと、
c.針先端の前面の自己密閉膜(3)と、
d.注入針および可動ピストンに接続され、針が前方位置にあるとき、薬物が正規の薬物導管(5)に接続して流れるようにする接続ユニット(4)と
を備える。
【0041】
さらなる実施形態によれば、本発明は、正規の薬物導管から薬液を、それを必要とする対象者に、原位置投与することを支援するための緊急供給弁を提供し、緊急供給弁は、
a.可動ピストン(2)に接続された注入針(1)と、
b.薬液が正規の薬物供給導管(5)を通ることができないとき、特に、薬液の過圧が増大していることによって、ピストンが圧力感応システムの抵抗に打ち勝つとき、貯蔵されている薬液の増大した過圧により、ピストン(2)が前方位置に動くことを可能にする圧力感応システムと、
c.針先端の前面の自己密閉膜(3)と、
d.注入針および可動ピストンに接続され、針が前方位置にあるとき、薬物が正規の薬物導管(5)に接続して流れるようにする接続ユニット(4)と
を備える。
【0042】
針を前方位置に動かすと、自己密閉膜が穿刺され、薬物流体は針を通って投与することができる。
【0043】
ある実施形態では、緊急供給弁は、弁のすべての要素を収容するハウジング内に組み込むことができる、または、直接、カテーテルラインに一体化することができる。供給弁がハウジング内にある場合、ハウジングは、薬物供給システムに直接接続または固定することができ、したがって、いかなる接続要素もねじれたり塞いだりする可能性が避けられる。
【0044】
本発明による「ハウジング」という用語は、埋込みに適用可能であると知られている任意の材料より作ることができる、任意の形状または大きさの任意のケース、被覆、殻、またはカバーを意味することができる。具体的には、ハウジングは円筒形状とすることができる。ハウジングは、薬物供給ラインと接続するための1つまたは複数の開口を含むことができる。
【0045】
本発明の実施形態によれば、ハウジングは、
a.可動ピストン(2)に接続された注入針(1)と、
b.薬液の増大した過圧で、ピストンが前方位置に動ことを可能にする
保持ばね(8)であって、特に、薬液の正常な過圧の存在中に、ピストンが前方位置に動くのを防ぐ
保持ばねと、
c.針先端の前面に配置された自己密閉膜(3)と、
d.針に取り付けられた接続ユニット(4)であって、針が格納状態にあるときは、正規の薬物導管から遮断され、針が前方状態で膜を貫くときは、正規の薬物導管に接続する接続ユニットと、任意選択で
e.少なくとも1つが
保持ばねを保護する2つのシールリング(6および7)と、
f.針を含むチャンバ(9および10)と
保持ばねを含むチャンバ(11)とを相互接続する補助ラインと
を含む。
【0046】
本発明のさらなる実施形態によれば、ハウジングは、
a.薬物供給ラインのための開口と、
b.可動ピストン(2)に接続された注入針(1)を有するチャンバと、
c.薬液の増大した過圧で、ピストンが前方位置に動くことを可能にする
保持ばね(8)であって、特に、薬液の正常な過圧の存在中に、ピストンが前方位置に動くのを防ぐ
保持ばねを含むチャンバと、
d.針先端の前面に配置された自己密閉膜(3)と、
e.針に取り付けられた接続ユニット(4)であって、針が格納状態にあるときは、正規の薬物導管から遮断され、針が前方状態で膜を貫くときは、正規の薬物導管に接続する接続ユニットと、任意選択で
f.少なくとも1つが
保持ばねを保護する2つのシールリング(6および7)と、
g.針を含むチャンバ(10)と
保持ばねを含むチャンバ(11)とを相互接続する補助ラインと
を含む。
【0047】
代替として、本体と、可動ピストンに接続された注入針と、針先端の前面の自己密閉膜と、針に取り付けられ、針が前方位置にあるときは、注入針を正規の薬物導管に接続して薬物流体が出力ラインから自由に流れることを可能にする接続ユニットとを備え、かつ、ピストンを前方位置から格納するための圧力感応機構を備える装置が本発明によって提供される。
【0048】
接続ユニットは、例えば、チューブ、ホース、またはパイプとすることができる。具体的には、ユニットは剛性、または半剛性であり、特に、注入装置用として知られている材料から作られる。具体的には、医療システムに適するプラスチックまたは任意の高分子材から作ることができる。
【0049】
正規の薬物ラインは、薬物を静脈系統、例えば、中心静脈内に直接供給する薬物導管である。
【0050】
ある実施形態では、正規の薬物導管は補助ラインに接続され、補助ラインは、正規の薬物導管および/または圧力感応システムを含むチャンバおよび/または休止位置にあるときの針を含むチャンバと、針が前方位置にあるときの接続ユニットとの間で、薬物が流れることを可能にする。
【0051】
補助ラインは、特に、緊急供給装置の部分を正規の薬物導管と接続する分岐チューブを備えることができる。
【0052】
さらに具体的には、補助ライン(9)は、針を有するチャンバと
保持ばねを含むチャンバとを接続する。
【0053】
さらなる実施形態では、圧力感応機構は、薬液の増大した過圧が正常になったとき、ピストンを前方位置から格納して休止位置に固定する。
【0054】
圧力感応システムは、可動ピストンに接続された
保持ばね、または戻しばね(8)を備えて、ピストンを注入針とともにその休止位置に動かすように助ける。
保持ばねは非帯磁性材料で作ることが好ましく、それによって、埋込物を入れられた対象者に対する診断手段として磁気共鳴を使用する際のあらゆる問題が避けられる。さらに具体的には、ばねは非鉄金属より構成され、さらに具体的には、チタンよりなる。
【0055】
緊急供給弁は、Oリングとも呼ばれる、1つの、特に、2つのシールリング、任意選択で、3つ以上のシールリング(6、7)を備えることができる。具体的には、第2のシールリング(7)は、
保持ばね(8)を含む空間を保護、かつ密封または閉止する。任意選択で、3つ以上の、具体的には3、4、5、または6つ以上のシールリングが供給弁装置に存在することができる。
【0056】
シールリングは、針が前方位置にあるときに薬物が流れることを可能にする接続ユニットのための開口と、圧力感応システムとの間に配置するのが好ましい。
【0057】
本発明による「過圧」という用語は、連続的に薬物を供給するために必要な、体圧より高い薬物導管圧力を意味する。具体的には、過圧の閾値は200kPa以下特に、過圧の閾値は150kPa以下までであり、特に、過圧の閾値は100kPa以下までである。
【0058】
「増大した過圧」という用語は、200kPaより高い圧力、特に、150kPaより高い圧力、特に100kPaより高い圧力を意味するが、増大する圧力は250kPaを超えない。
【0059】
正規の薬物送出ライン、具体的には出力ラインでの増大した過圧に対して、緊急供給システム内の圧力は増大し、ピストンは注入針とともに前方位置へと動かされる。それによって、接続ユニットは、シールリング間の休止位置から正規の薬物導管の予備開口の方へ、前方へ動かされ、したがって、薬物を、密閉膜を穿刺する注入針を経由して供給することができる。代替の経路を経由して薬物を供給することによって、圧力は下がり、ピストンおよび針は休止位置の方へ格納され、接続ユニットが第1のシールリングによって閉止されると代替の供給は停止するであろう。正規の供給が引き続いて妨げられている場合には、圧力は再び増大し、注入針を前方へ動かすプロセスが繰り返される。正規の供給システムの閉塞が解消されるまで、このプロセスを繰り返すことができる。
【0060】
したがって、正規の薬物送出システムの過圧が増大した場合、薬液は、薬物供給導管(5)を通ってチャンバ内に送出され、
保持ばねの抵抗に抗して、ピストンおよび針を前方位置内に動かす。ピストンの前面の気体または液体は、補助ライン(9)を経由して
保持ばねを含むチャンバ内に逃げる、または押し出される。針が隔壁を貫くと、ライン(5)および(4)は接続されて連通し、薬液は組織内に投与される。
【0061】
中心静脈カテーテルを経由する正規の供給通路が復旧すると、薬物供給の正常な圧力もまた戻り、それによって、ピストンは格納されて注入針はその休止位置に戻る。
【0062】
緊急供給弁の上部は、自己密閉膜が配置される部分として画定され、弁の下部は圧力感応システムが配置される部分として画定される。
【0063】
本発明による「前方へ」という用語は、注入針が、注入針先端の前面に位置決めされた自己密閉膜の方へ動かされることを意味する。本発明による「前方位置」または「前方状態」という用語は、注入針の先端が自己密閉膜を突き出たときの注入針の位置を意味し、また、結合組織が対象者の組織体によって展開される場合には、さらに結合組織の被膜を突き出たときの注入針の位置を意味する。
【0064】
「休止位置」または「基本位置」または「引込位置」という用語は、注入針が、その休止位置に格納されて、または戻されて自己密閉膜を突き出ないことを意味する。したがって、針は、接続ユニットを経由する薬物の供給への接続がない位置にある。
【0065】
本発明の実施形態によれば、注入針は、先端部、具体的には斜めに切られた先端の付いた管状本体を有する中空針である。したがって、貫くときに膜のいかなる材料も針は切り抜かず、単に割るだけである。したがって、針が、自己密閉貫通膜などの膜を貫くとき、いかなる物質も薬物送出通路に入ったり、それを塞いだりしない。
【0066】
装置は、埋込み後、通常、埋込物をその位置にしっかりと保持する結合組織被覆によって包まれる。これらの結合組織被覆は、異物を隔離することを生理学的に意味し、したがって、皮下空間内に別経路を作って非効率な静脈薬物送出をしようとするいかなる単純なバイパス機構も妨げる。したがって、効率的なバイパスはこの自然の隔膜を確実に突破することができなければならない。本発明による緊急供給弁に使用される注入針は、膜を貫いて結合組織の隔膜を通り抜けるのに十分な長さでなければならない。注入針は約3から5mmの余剰長さが好ましいが、針はまた5mmより長く、具体的には、約5.5、6、6.5、または7mmとすることもできる。
【0067】
「余剰長さ」という用語は、密閉膜を突き出る針の部分の長さを意味する。
【0068】
本発明の実施形態によれば、緊急供給弁に使用され、また任意選択で、薬物を人体の外から薬物貯槽内に再充填するための注入口にも使用される自己密閉膜は、高分子材料より作られる。具体的には、自己密閉材料は、好ましくはシリコンまたはポリウレタンを含む高分子材料から作ることができる。他の生体適合性高分子材料も同様に用いることができる。
【0069】
自己密閉材料はまた、複合材料とすることができる。例示的には、そのような複合材料は、少なくとも1つの外形を形作る層、および外層内に含まれる自己密閉性軟質材料を含むことができる。したがって、外層は軟質材料のための殻を形成し、上記の高分子のうちの1つなどの生体適合性高分子材から作ることができ、また、自己密閉性軟質材料はゲルとすることができる。
【0070】
さらなる実施形態によれば、針は、200kPa以下の過圧閾値、特に150kPa以下の過圧閾値、特に100kPa以下の過圧閾値まで休止位置に留まる。さらなる実施形態によれば、針は、200kPaを超えて増大する過圧、特に150kPaを超えて増大する過圧、特に100kPaを超えて増大する過圧で前方に動かされるが、増大する圧力は250kPaより高くない。
【0071】
具体的には、圧力感応システムまたは機構は、格納ばねであり、ピストンに接続され、各過圧時に針を休止位置または前方位置に保つように設計される。正規の薬物送出ラインの閉塞の解消に続いて圧力が下がると、
保持ばねはピストンを引き戻し、それによって、中空の針をその基本の休止位置内に、具体的には、自己密閉膜の後ろに戻す。緊急弁はこのようにその機能性を維持し、外科的な交換処置を不必要にする。
【0072】
本発明はまた、ポンプおよび供給ユニットを備える機構または装置あるいは埋込型システムを提供し、供給ユニットは、出力ラインおよび本発明の緊急供給弁で構成され、出力ラインは薬物を絶え間なく静脈を通して対象者に供給し、緊急供給弁は、静脈経路が閉塞されたときに代替の投与経路によって、具体的には、皮下経路によって薬物を投与し、緊急供給弁は、具体的には、埋込型圧力ポンプと、具体的にはマイクロポンプと、中心静脈アクセス点との間に配置される。
【0073】
「出力ライン」という用語は、ポンプから鎖骨下静脈などの中心静脈アクセスへ皮下を通るシリコンまたはポリウレタンから作られたカテーテルシステムまたはカテーテルラインを意味する。
【0074】
「対象者」という用語は、人または動物、具体的に哺乳類を含む。対象者は、絶え間ない薬物の供給を必要とする任意の個人または患者とすることができる。
【0075】
ポンプは任意の埋込型ポンプとすることができ、特に、薬液を含む密閉された貯槽を含む。
【0076】
ポンプおよび緊急弁は、カテーテルラインによって近接して互いに接合するのが好ましく、特に、腹筋膜に固定することができる。それによって、正規の中心静脈供給経路が不具合の場合に、緊急弁は、代替の皮下薬物送出の選択肢を与えることによって、ポンプの貯槽から中心静脈カテーテルラインへ適切に吐出することを守る。
【0077】
ポンプは、薬物を体の外からポンプの貯槽内に注入するために、自己密閉材料より作られた隔壁を含む充填口を有する。貯槽はチタンのベローズとすることができる。ベローズは、薬物とガス圧チャンバとの間の可撓性のある境界を提供する。ポンプに充填すると、貯槽の下に貯められたガスが加圧される。その後、薬物はポンプの貯槽にかかる一定のガス圧力によって送出される。埋め込むことができる任意のポンプが、本発明のシステムに使用することができる。特に、上記のポンプは、カテーテルラインの洗浄を可能にする自己密閉の予備口を含む。
【0078】
埋込型マイクロポンプは、通常、注入液が装置に注入されるときにベローズによって圧縮される炭化水素ガスで作動する。一旦、これらのポンプに充填されると、薬液を、100kPaまでの圧力で、特に200kPaまでの圧力で中心静脈カテーテル内に押し出すことができる。中心静脈圧力は、本来、約0.2〜0.5kPaである。これは、通常の環境下では、その差圧は中心静脈ラインを常に開放し機能するように保つことを意味する。例外的な環境下でカテーテルがねじれると、能動緊急供給弁と中心静脈アクセス点との間のラインの閉塞が生じ、それによって注入圧力が増大する。緊急供給弁の圧力が増大してピストンを前方に動かす結果として、中空針がシリコン膜とともに結合組織の被膜を通り抜け、それによって、皮下経路を通る代替の薬物供給のための信頼性が高いバイパスが生成される。患者のほとんどは、皮下注入部位で局部的な痛みと刺激を受けるので、数分から数時間以内に正規の静脈経路の障害が明らかとなる。緊急弁が作動したかどうかは、X線制御のもとで、
保持ばねの伸張状態によって最終的に明らかになる。装置の機構は、ポンプから静脈アクセス点まで向かうカテーテル内にいかなる弁または機械部品も必要とせず、または有しない。これによって、ポンプの予備アクセス点を介してカテーテルの簡単な洗浄が可能となる。ポンプの予備口を介してカテーテルを再開放する手順がうまくいけば、正規の静脈注入通路が再構築される。以前閉塞した静脈アクセスラインが再構築されて開通すると、復帰した基本圧力状態により、弁は機械的に自動で戻り、それにより、患者は外科的な装置の修正をする負担を負わなくても済む。
【0079】
本発明による緊急供給弁またはこの弁を含む機構は、特に、周囲の組織内にいくつかの点で埋込物が縫合されて埋込物を埋込部位に固定するのを可能にするハウジングを備える。
【0080】
ハウジングは、チタン、タンタル、ステンレス鋼、プラスチック、セラミックなどの生体適合性があり、密閉性のある任意の材料から製造することができる。
【0081】
正規の中心静脈経路を介する埋込型ポンプによる薬物送出は、患者には気づかれない。その代わりに、緊急供給弁が作動すると、薬物が皮下沈着し、それによって、通常、注入部位で局部的な刺激または痛みが伴う。この場合、通常は無害な副作用が患者に対して、医者に診てもらうように警告する。薬物は、少なくとも次のポンプの再充填までの期間、埋め込まれた薬物貯槽中で安定していなければならない。これは、通常、少なくとも4週間の期間である。
【0082】
薬物は、具体的には、プロスタグランジンまたはプロスタノイド類似体、例えば、限定するものではないが、トレプロスチニル、イロプロスト、シカプロスト、ベラプロスト、または誘導体、またはその薬理的に許容される塩のグループから、あるいは、PDE5阻害薬、例えば、限定するものではないが、シルデナフィル、タダラフィルなどのグループから、エンドセリン受容体拮抗薬、例えば、限定するものではないが、アンブリセンタン、ボセンタン、アクテリオン−1、シタキセンタンのグループから、あるいは、可溶性グアニル酸シクラーゼから選択することができる。
【0083】
静脈内および皮下に投与することができる非経口プロスタノイド類似体は、本発明に従って使用するには好ましい薬物である。
【0084】
ある実施形態によれば、緊急供給弁は、肺動脈性肺高血圧症の静脈内治療のための埋込型システムに使用することができる。
【0085】
本発明はまた、緊急供給弁を上記のような設定で使用することによって、薬物を、それを必要とする対象者に投与するための方法を提供する。特に、本システムは、緊急供給弁による皮下投与の際に、薬物の投与によって軽度から中程度の痛みまたは刺激を引き起こして、対象者に医者に診てもらうように警告する警報を設定するための方法を提供する。
【0086】
本発明はさらに以下の項目を備える。
1.薬液を必要とする対象者に正規の薬物導管から原位置投与することを支援するための緊急供給弁であって、
a)可動ピストンに接続された注入針と、
b)正規の薬物供給導管を通ることができない薬液の増大した過圧でピストンを前方位置に押し出す圧力感応システムと、
c)注入針先端の前面に配置された自己密閉膜と、
d)注入針に取り付けられた接続ユニットであって、注入針が格納状態にあるときは正規の薬物導管から遮断され、注入針が自己密閉膜を貫く前方状態にあるときは正規の薬物導管に接続される接続ユニットと
を備える緊急供給弁。
2.薬液を必要とする対象者に正規の薬物導管から原位置投与することを支援するための緊急供給弁であって、
a.可動ピストン(2)に接続された注入針(1)と、
b)薬液が正規の薬物供給導管(5)を通ることができないとき、特に、薬液の過圧が増大していることによって、ピストンが圧力感応システムの抵抗に打ち勝つとき、貯蔵されている薬液の増大した過圧により、ピストン(2)が前方位置に動くことを可能にする圧力感応システムと、
c)注入針先端の前面の自己密閉膜(3)と、
d)注入針および可動ピストンに接続され、注入針が前方位置にあるとき、薬物が正規の薬物導管(5)に接続して流れるようにする接続ユニット(4)と
を備える緊急供給弁。
3.注入針を含むチャンバと圧力感応システムとを接続する補助ラインをさらに備える項目1または2の緊急供給弁。
4.正規の薬物供給導管を、a)圧力感応システム、b)注入針を含むチャンバ、およびc)接続ユニットと接続する補助ラインをさらに備える項目1または2の緊急供給弁。
5.可動ピストンが、正規の薬物供給ラインの流体の圧力がかかる表面を備える、項目1から4の緊急供給弁。
6.圧力感応機構がピストンを前方位置から格納する、項目1から5のいずれか1つによる緊急供給弁。
7.圧力感応システムが、可動ピストンに接続された
保持ばねである、項目1から6のいずれか1つによる緊急供給弁。
8.薬物が皮下に投与される、項目1から7による緊急供給弁。
9.針が斜めに切られた先端の付いた中空針である、項目1から8による緊急供給弁。
10.注入針が、自己密閉膜を貫いて、埋込物の周りの瘢痕組織の被膜を通り抜けるのに十分な長さであり、注入針は3から5mmの余剰長さが好ましい、項目1から9のいずれか1つによる緊急供給弁。
11.接続ユニットのための開口の後ろに配置される1つまたは複数のシールリングを備える項目1から10のいずれか1つによる緊急供給弁。
12.自己密閉膜が高分子材料から作られる、項目1から11のいずれか1つによる緊急供給弁。
13.高分子材料が、シリコンおよびポリウレタンを含む材料のグループから選択される少なくとも1つの高分子材を含む、項目1から12のいずれか1つによる緊急供給弁。
14.
保持ばねおよび注入針などの金属部品が非帯磁性材料から作られる、項目1から13のいずれか1つによる緊急供給弁。
15.薬物供給ラインの増大した圧力が、緊急供給弁に結合された静脈カテーテルの閉塞によるものである、項目1から14のいずれか1つによる緊急供給弁。
16.200kPa以下の過圧閾値、特に150kPa以下の過圧閾値、特に100kPa以下の過圧閾値まで針が休止位置にある、項目1から15のいずれか1つによる緊急供給弁。
17.針が、200kPaを超えて増大する過圧、特に150kPaを超えて増大する過圧、特に100kPaを超えて増大する過圧で前方に動かされる、項目1から16のいずれか1つによる緊急供給弁。
18.針が前方位置にある場合、接続ユニットが正規の注入導管につながる、項目1から17のいずれか1つによる緊急供給弁。
19.埋込型圧力ポンプおよび供給ユニットを備える機構であって、供給ユニットが、出力ラインおよび項目1から18のいずれか1つによる緊急供給弁を備え、出力ラインが薬物を絶え間なく静脈を通して対象者に供給し、緊急供給弁が、任意選択で、代替の投与モードによって薬物を投与し、緊急供給弁がポンプと中心静脈アクセス点との間に配置される、機構。
20.緊急供給弁がハウジングによって覆われ、ハウジングは、周囲の組織内にハウジングが縫合されて埋込部位にハウジングを固定することを可能にする、項目1から18のいずれか1つによる緊急供給弁、または項目19による機構。
21.上記のポンプが、電源および再充填可能な薬物収容貯槽をさらに備える、項目19または20による機構。
22.上記のポンプが、カテーテルラインの洗浄を可能にする自己密閉予備口を含む、項目19から21のいずれか1つによる機構。
23.中心静脈カテーテルを経由する正規の供給通路が復旧すると、ピストンは格納され、注入針はその休止位置に戻る、項目19から22のいずれか1項による機構。
24.項目1から23のいずれか1つに設定された緊急供給弁を使用することによって、薬物を、それを必要とする対象者に投与する方法。
25.緊急供給弁による皮下投与の際に、薬物の投与によって軽度から中程度の局部的な痛みまたは刺激を引き起こして、対象者に医者に診てもらうように警告する、項目24による方法。