(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392857
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】核酸サンプルを回収するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20180910BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20180910BHJP
C12M 1/28 20060101ALI20180910BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20180910BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N1/10 NZNA
C12M1/28
C12Q1/68
【請求項の数】38
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-515112(P2016-515112)
(86)(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公表番号】特表2016-524706(P2016-524706A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】US2014039320
(87)【国際公開番号】WO2014190249
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】61/827,244
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515326033
【氏名又は名称】オッカム バイオラブス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ミンウェイ チェン
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特表平08−508395(JP,A)
【文献】
特表2007−529210(JP,A)
【文献】
特表2001−511644(JP,A)
【文献】
特開平07−103869(JP,A)
【文献】
特開平03−123837(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/003309(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/011122(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
G01N 33/48
C12M 1/26 − 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸のサンプルを回収するためのシステムであって、
内部容積部を規定する入れ物;
前記入れ物用の着脱可能なキャップであって、前記入れ物の前記内部容積部に面する内側及び前記内部容積部から離れる方向を向いた外側を有し、前記内側と前記外側とを連通するブリーザーポート及び前記内側と前記外側とを連通するサンプル接続ポートを備え、前記サンプル接続ポートが、協同する第2のインターロック要素に前記サンプル接続ポートを解除可能にロックするための第1のインターロック要素を備え、前記キャップの前記内側が、前記サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェイスを備える、キャップ;
前記入れ物キャップの前記接続インターフェイスに着脱可能に取り付けられるようになっているフィルターカラムであって、開いた第1の末端、開いた第2の末端、及び核酸を回収するための基質を含むその間の内部通路を有する、フィルターカラム;
前記入れ物キャップの前記サンプル回収ポートの前記第1のインターロック要素に接続するようになっている前記第2のインターロック要素を備える、サンプル回収容器;
開いた末端を有し、前記フィルターカラムを含めるようになっている容積を規定する輸送容器であって、前記入れ物キャップの前記接続インターフェイスから前記フィルターカラムを取り外すために前記フィルターカラムに解除可能に係合するようになっており、前記輸送容器内で前記フィルターカラムを一時的に密封するための着脱可能な蓋を更に備える、輸送容器、
を備える、システム。
【請求項2】
前記フィルターカラムの基質が、フィルター、前記フィルターの上流のフリット、及び前記フィルターの下流の保持リングを備える、請求項1に記載の回収システム。
【請求項3】
前記サンプル接続ポートが、前記キャップの前記外側から突き出ている、請求項1に記載の回収システム。
【請求項4】
前記サンプル接続ポートの前記第1のインターロック要素が、ルアーロックフィッティングの一方の末端を備える、請求項3に記載の回収システム。
【請求項5】
前記ブリーザーポートが、前記キャップの前記外側から突き出ている、請求項1に記載の回収システム。
【請求項6】
真空チャンバーを更に備え、前記真空チャンバーが、真空源に接続されるようになっている内部部分、各ウェルが前記入れ物の1つを受容するようになっている1又は複数のウェルを有する外部部分、及び前記チャンバーの前記内部部分と連通し、柔軟な導管を介して前記入れ物の前記ブリーザーポートに接続されるようになっている1又は複数の真空接続ポートを有する、請求項1に記載の回収システム。
【請求項7】
前記輸送容器中に乾燥剤を更に備え、請求項1に記載の回収システム。
【請求項8】
前記フィルターカラムが、ねじ状インターフェイスの第1の構成要素を備え、前記入れ物キャップが、前記ねじ状インターフェイスの第2の構成要素を備える、請求項1に記載の回収システム。
【請求項9】
前記フィルターカラムが、前記輸送容器の内部表面に配置された協同する第2の部材によって解除可能に係合されるようになっている、その外部表面に配置された第1の部材を更に備え、前記第2の部材が、前記入れ物キャップとのねじ接続から前記フィルターカラムを回して外す方向で前記フィルターカラムにねじれ力が印加された時に前記第1の部材に力を伝えるようになっている、請求項8に記載の回収システム。
【請求項10】
前記第1及び第2の部材がそれぞれタブを備える、請求項9に記載の回収システム。
【請求項11】
前記入れ物キャップの前記サンプル接続ポートに配置されるようになっている第1のポート、前記回収容器に接続されるようになっている第2のポート、及び前記サンプルが回収された後に前記サンプルを処置するための流体を含む流体源に接続されるようになっている第3のポートを有する三方ポートを更に備える、請求項1に記載の回収システム。
【請求項12】
前記第3のポートに接続されるようになっている流体の1又は複数の容器を更に備える、請求項11に記載の回収システム。
【請求項13】
前記流体が、前記サンプルを洗浄するための流体を含む、請求項12に記載の回収システム。
【請求項14】
前記流体がエタノールを含む、請求項13に記載の回収システム。
【請求項15】
前記回収容器が、シリンジを備え、前記三方ポートが、前記サンプル回収容器と前記入れ物との間に正の相対圧力が存在する時に前記回収容器から前記入れ物への流れのみを許すように及び前記サンプル回収容器と前記流体源との間に負の相対圧力が存在する時に前記流体源から前記回収容器への流れをのみを許すようになっている逆止め弁を備える、請求項11に記載の回収システム。
【請求項16】
複数のフィルターカラムを受容するための、前記複数のフィルターカラムを遠心するための遠心機に嵌合するようになっているサンプルホルダーを更に備える、請求項1に記載の回収システム。
【請求項17】
入れ物用の無菌の着脱可能なキャップであって、前記入れ物の内部容積部に面する内側及び前記内側とは反対側の外側を有し、前記内側と前記外側とを連通するブリーザーポート及び前記内側と前記外側とを連通するサンプル接続ポートを備え、前記サンプル接続ポートが、協同する第2のインターロック要素に前記サンプル接続ポートを解除可能にロックするための第1のインターロック要素を備え、前記キャップの前記内側が、前記サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェイスを備え、
ねじ接続によって入れ物キャップの接続インターフェイスに着脱可能に取り付けられた無菌フィルターカラムを備え、前記フィルターカラムは、開いた第1の末端、開いた第2の末端、及び核酸を回収するための基質を含むその間の内部通路を有し、前記フィルターカラムは、その外部表面に配置された第1の部材を有し、当該第1の部材は、入れ物キャップとのねじ接続から前記フィルターカラムを回して外す方向で前記フィルターカラムにねじれ力を受けるように適合されている、着脱可能なキャップ。
【請求項18】
核酸のサンプルを回収する方法であって、
(a)
(i)内部容積部を規定する入れ物;
(ii)前記入れ物用の着脱可能なキャップであって、前記入れ物の前記内部容積部に面する内側及び前記内部容積部から離れる方向を向いた外側を有し、前記内側と前記外側とを連通するブリーザーポート及び前記内側と前記外側とを連通するサンプル接続ポートを備え、前記サンプル接続ポートが、協同する第2の手段に前記サンプル接続ポートを解除可能にロックするための第1の手段を備え、前記キャップの前記内側が、前記サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェイスを備える、キャップ;
(iii)前記入れ物キャップの前記接続インターフェイスに着脱可能に取り付けられたフィルターカラムであって、開いた第1の末端、開いた第2の末端、及び前記核酸を回収するための基質を含むその間の内部通路を有する、フィルターカラム;
(iv)前記サンプル回収ポート入れ物キャップの前記第1の手段に接続するようになっている前記第2の手段を備えるサンプル回収容器;
(v)開いた末端を有し、前記フィルターカラムを含めるようになっている容積部を規定する、輸送容器であって、前記入れ物キャップの前記接続インターフェイスから前記フィルターカラムを取り外すために前記フィルターカラムに解除可能に係合するようになっており、前記輸送容器内で前記フィルターカラムを一時的に密封するための着脱可能な蓋を更に備える、輸送容器;
を備える回収システムを用意するステップ;
(b)前記サンプル回収容器中に1容積の(a volume of)サンプル含有流体を回収するステップ;
(c)前記サンプル回収ポートを介して前記サンプル回収容器を前記入れ物に接続するステップ;
(d)前記フィルターカラムに前記サンプル回収容器から前記容積のサンプル含有流体を通すことにより、前記基質上に前記サンプルを回収し、前記入れ物に残りを回収するステップ;
(e)前記フィルターカラムに被せて前記輸送容器の開いた末端を配置して、前記フィルターカラムを前記輸送容器と係合させ、前記入れ物キャップから前記フィルターカラムを取り外すステップ;
(f)前記着脱可能な蓋で前記輸送容器を一時的に密封するステップ
を含む、方法。
【請求項19】
前記サンプル含有流体が、患者から採取した体液の抽出物を含む溶解産物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプル回収容器が、シリンジを備え、前記容積を前記フィルターカラムに通す方法が、前記シリンジのプランジャーに手動で圧力を印加することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプル回収容器が、シリンジを備え、前記容積を前記フィルターカラムに通す方法が、前記入れ物キャップの前記ブリーザーポートを真空源に取り付けた後、前記真空源を用いて前記フィルターカラムに陰圧を印加することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(d)の後に前記基質上に回収されたサンプルを、ステップ(e)を行う前に1又は複数容積の流体を前記フィルターカラムに通すことにより処置することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記処置流体が洗浄流体を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記洗浄流体が、100%エタノール又は100%アセトンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記輸送容器の中に乾燥剤を配置することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
周囲の非気候調節条件下で前記輸送容器を運搬することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(f)の完了から最大4週間後に前記核酸を更に処理することを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記更なる処理が、疾患を検出するために前記核酸を処理することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が結核である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記処理が、潜在性結核を検出するためである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記洗浄流体が、1〜10mlの100%エタノールを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記洗浄流体が、少なくとも2mlの100%エタノールを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記洗浄流体が、2〜6mlの100%エタノールを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記サンプル含有流体が、血漿又は血清を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項35】
前記回収されるサンプル含有流体の容積が1〜20mlである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記回収されるサンプル含有流体の容積が少なくとも2mlである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記回収されるサンプル含有流体の容積が2〜10mlである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記回収されるサンプル含有流体の容積が2〜5mlである、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体を参照により援用する2013年5月24日付で提出されたSYSTEM AND METHOD FOR COLLECTING A SAMPLE OF NUCLEIC ACIDというタイトルの米国仮特許出願第61/827,244号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
試験用に生物学的サンプルから核酸を回収、抽出、及び検出するための現行のシステム及び方法は通常複雑であり、技術的に訓練された人材による複数のステップが必要であり、大容積のサンプル処理のために又は輸送(shipment)のためのサンプルの処理及び安定化における相互汚染の防止のために最適化されていない。
【0003】
種々の体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、胸水、腹水、尿等は、短鎖核酸(NA)断片、すなわち無細胞核酸(cfNA)、又は循環核酸(cNA)を含む。腫瘍から内因的に生じた又は体内で胎児若しくは病原体感染から「外因的」に生じた、変化した核酸は、非常に低濃度で末梢血液中にcfNAとして存在し得、検出可能であり得、更に、通常の宿主cfNAから区別可能であり得る。試験のために血漿又は血清からそれらのcfNAを充分な量抽出するには、比較的大容積の流体を処理する必要があり、これは臨床診断状況において避けられない技術的課題を生じる。したがって、この分野において、そのような課題を解決する新規な方法に対するニーズが存在する。
【0004】
例えば結核を検出するための好ましいそのような方法が、参照により本明細書に援用する、本願の発明者によって発明された係属中の国際公開第2012135815号パンフレットに記載されている。しかし、そのような試験は、サンプルの分析に使用される高価な処理設備に容易にアクセスできない世界の地域において最も有用であり得る。したがって、当該技術分野において、後で分析を行うため、環境及びオペレーターからの汚染を防ぐため、並びに核酸を保存及び輸送するために大容積の生物学的サンプルから充分な量の核酸を捕捉することを可能にし、その結果、核酸を比較的安価な設備を用いるポイント・オブ・ケア施設で回収した後、安定化された形態で更なる処理及びアッセイのための中心的場所に輸送することができる、回収システム及び方法が必要とされている。
【0005】
大容積の生物学的流体から循環DNA又はRNAを単離するのに適した種々の抽出方法が知られており、例えば、QIAamp(登録商標) Circulating Nuclaic Acid Handbook(2
nd edition、02、2011、キアゲン社)に記載されているもの及び米国特許第5,234,809号(ブーム・テクノロジー社(Boom technology))に記載の改良されたスピンカラム抽出方法が挙げられる。米国特許第5,346,994号は、フェノール−クロロホルムを用いる有機液体抽出方法の技術を記載している。これらの方法はどちらも、例えば血漿又は血清検体からの、大容積での抽出に用いることができるが、有機試薬が毒性であるので、その使用は限定される。
【0006】
米国特許第7,897,378号及び同第8,158,349号は、その中をサンプルが回収容器へと通過する一対の協同する中空ボディーを備えたシステムを含み、中空ボディーの1つの中の結合材料に核酸が結合する、より大きな容積のサンプルから核酸を精製又は単離するためのデバイス及び方法を記載している。保持されたサンプルを含む中空ボディーは、洗浄のために第1の受容容器に移され、その後、精製又は単離された核酸が溶出され、更なる分析のために第2の受容容器に回収される。
【0007】
例えば、参照により本明細書に援用する米国特許第5,234,809号(ブーム社)は、多数の異なる用途に適した核酸単離方法を開示している。該特許は、核酸含有出発材料をカオトロピックバッファー及びDNA結合性の固相とインキュベートすることにより前記出発材料から核酸を単離する方法を記載している。カオトロピックバッファーは、必要であれば、出発材料の溶解及び固相への核酸の結合の両方をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明の一態様は、生物学的サンプルを処理するための方法及びシステムに関する。本明細書において、処理(processing)とは、生物学的サンプルの生体分子の溶解(lysing)、結合、洗浄、安定化、及び溶出を含む。
【0009】
一実施形態は、核酸のサンプルを回収するためのシステムを含み、システムは、内部容積部(internal volume)を規定する入れ物(receptacle)と、入れ物用の着脱可能なキャップであって、キャップ中のサンプル接続ポート(sample connection port)と流体連通(fluid communication)する接続インターフェイスを有するキャップと、入れ物キャップの接続インターフェイスに着脱可能に取り付けられるフィルターカラムと、サンプル回収容器と、輸送容器(shipment container)とを備え、入れ物用の着脱可能なキャップは、入れ物の内部容積部に面する内側及び内部容積部から離れる方向を向いた外側を有する。キャップは、内側と外側とを連通するブリーザーポート(breather port)及び内側と外側とを連通するサンプル接続ポートを有する。サンプル接続ポートは、協同する第2のインターロック要素(interlocking component)にサンプル接続ポートを解除可能にロックするための第1のインターロック要素を有する。サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェイスはキャップの内側に位置する。フィルターカラムは、開いた第1の末端、開いた第2の末端、及びその間の核酸を回収するための基質を含む内部通路(internal passage)を有する。サンプル回収容器は、入れ物キャップのサンプル回収ポートの第1のインターロック要素に接続するようになっている第2のインターロック要素を備える。輸送容器は、開いた末端を有し、フィルターカラムを含めるようになっている容積部を規定する。輸送容器は、入れ物キャップの接続インターフェイスからフィルターカラムを取り外すためにフィルターカラムに解除可能に係合するようになっている。輸送容器は更に、輸送容器内でフィルターカラムを一時的に密封するための着脱可能な蓋を備える。いくつかの実施形態では、輸送容器は乾燥剤を含む。
【0010】
フィルターカラム基質は、フィルター、フィルターの下流の支持フリット(supporting frit)、及びフィルターの上流の保持リングを備え得る。サンプル接続ポートのインターロック要素はルアーロックフィッティングを備え得る。いくつかの実施形態では、システムは、真空源に接続されるようになっている内部部分及び1又は複数のウェルを有する外部部分を有する真空チャンバーを更に備え得、各ウェルは、入れ物の1つを受容するようになっており、1又は複数の真空接続ポートがチャンバーの内部部分と連通し且つ柔軟な導管を介して入れ物のブリーザーポートに接続されるようになっている。
【0011】
いくつかの実施形態では、フィルターカラム及び入れ物キャップは、ねじ状インターフェイス(threaded interface)によって機能的に接続される。フィルターカラムは、輸送容器の内部表面に配置された第2のタブ等の協同する第2の部材が解除可能に係合するようになっている、フィルターカラムの外部表面に配置された第1のタブ等の第1の部材を有し得、これにより、第2の部材は、入れ物キャップとのねじ接続からフィルターカラムを回して外す(unscrew)方向でフィルターカラムにねじれ力が加えられた時に、第1の部材に力を伝える。
【0012】
システムは、入れ物キャップのサンプル接続ポートに配置されるようになっている第1のポート、回収容器に接続されるようになっている第2のポート、及びサンプルが回収された後にサンプルを処置(treat)するための流体を含む流体源に接続されるようになっている第3のポートを有する三方ポートを更に備え得る。エタノール等の洗浄流体等の流体の1又は複数の容器は、第3のポートに接続され得る。
【0013】
回収容器はシリンジを備え得、三方ポートは、サンプル回収容器と入れ物との間に正の相対圧力が存在する時に回収容器から入れ物への流れのみを許すようになっており且つサンプル回収容器と流体源との間に負の相対圧力が存在する時に流体源から回収容器への流れのみを許すようになっている逆止め弁(check valve)を備え得る。
【0014】
本発明の別の態様は、入れ物用の無菌の着脱可能なキャップを含み、キャップは、入れ物の内部容積部に面する内側及び内側とは反対側の外側を有し、キャップは、内側と外側とを連通するブリーザーポート及び内側と外側とを連通するサンプル接続ポートを備え、サンプル接続ポートは、協同する第2のインターロック要素にサンプル接続ポートを解除可能にロックするための第1のインターロック要素を備え、キャップの内側は、サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェイスを備える。無菌フィルターカラムが、入れ物キャップの接続インターフェイスに着脱可能に取り付けられてよく、フィルターカラムは、開いた第1の末端、開いた第2の末端、及び核酸を回収するための基質を含むその間の内部通路を有する。
【0015】
本発明の更に別の態様は、核酸のサンプルを回収する方法であって、(a)本明細書に記載の回収システムを用意するステップ;(b)サンプル回収容器に1容積の(a volume of)サンプル含有流体を回収するステップ;(c)サンプル回収ポートを介してサンプル回収容器を入れ物に接続するステップ;(d)サンプル回収容器から該容積のサンプル含有流体をフィルターカラムに通すことにより、サンプルを基質上に回収し、残りを入れ物に回収するステップ;(e)輸送容器の開いた末端をフィルターカラムに被せて配置し、フィルターカラムを輸送容器と係合させ、フィルターカラムを入れ物キャップから取り外すステップ;及び(f)着脱可能な蓋で輸送容器を一時的に密封するステップ、を含む方法を含む。サンプル含有流体は、例えば、患者から採取した体液の抽出物を含む溶解産物を含み得る。サンプル回収容器がシリンジを備える場合、該容積をフィルターカラムに通すステップは、一実施形態では、シリンジのプランジャーに圧力を手動で印加することを含んでもよく、又は別の実施形態では、入れ物キャップのブリーザーポートを真空源に取り付けた後、真空源を用いてフィルターカラムに陰圧を印加することを含んでもよい。
【0016】
特定の実施形態では、基質に回収されたサンプルは、ステップ(d)の後、ステップ(e)を行う前に、フィルターカラムにエタノール等の脱水洗浄流体等の1又は複数容積の流体を通すことにより更に処置されてもよい。更に、輸送容器中に乾燥剤を提供してもよい。脱水されて乾燥剤で乾燥を維持されたサンプルは、周囲の非気候調節条件下で運搬されてもよく、ステップ(f)の完了後の更なる処理の前に4週間まで安定であり得る。このような方法は、小さな、離れた、及び/又は周辺部の診療所等の最小限の設備の医療環境で回収核酸を処理するのに並びに疾患を検出するため、例えば潜在性結核を検出するための回収サンプルの更なる分析のために設備のより良い中央検査室に回収されたサンプルを輸送するのに特に有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の一態様に係る好ましい入れ物キャップの実施形態の平面図である。
【
図1B】
図1Aの好ましい入れ物キャップの斜視側面図である。
【
図1C】
図1Aの好ましい入れ物キャップの横断側面図である。
【
図2A】
図1の好ましい入れ物キャップに取り付ける好ましいフィルターカラムを示す図である。
【
図2B】
図2Aの好ましいフィルターカラムの断面を示す図である。
【
図3】
図2Aのフィルターカラム及び
図1の入れ物キャップがどのように互いに接続されるかを示すそれらの分解組立図である。
【
図4】好ましい入れ物に取り付けられた
図1Aの入れ物キャップを示す図である。
【
図5】複数の
図4の好ましい入れ物を保持するための好ましい真空チャンバーのデザインを示す図である。
【
図6B】好ましい入れ物キャップ1Aから好ましいフィルターカラムを回して取り外すために
図6Aの好ましい輸送容器がどのようにフィルターカラムに嵌合(fit)するかを示す図である。
【
図6D】
図6Cの好ましい輸送容器上部分によって密封された6Aの好ましい輸送容器底部分の断面図である。
【
図7A】水性形態の溶解液を含む溶解容器を示す図である。
【
図7B】乾燥形態の溶解液を含む7Aの溶解容器を示す図である。
【
図8A】それぞれHC及びLTBIのドナーのヒト血漿からの抽出物についてプライマー対HB2M11、HPPIA11、及びIS6110によるヒト遺伝子B2M、PPIA、及びTB遺伝子IS6110の断片のRT−qPCR及びqPCR増幅曲線を示す図である。
【
図8B】それぞれHC及びLTBIのドナーのヒト血漿からの抽出物についてプライマー対HB2M11、HPPIA11、及びIS6110によるヒト遺伝子B2M、PPIA、及びTB遺伝子IS6110の断片の増幅産物融解曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の一態様は、核酸のサンプルを回収するためのシステムである。好ましいシステムは、内部容積部を規定する、
図4の入れ物400のような入れ物を備える。好ましい形状で示しているが、本発明は入れ物の如何なる特定のサイズ及び形にも限定されない。入れ物は、入れ物の内部容積部に面する内側107及び内部容積部から離れる方向を向いた外側102を有する、
図1A〜1Cに示されている好ましい実施形態のような着脱可能なキャップ101を有する。
図1Aはキャップの外側を示している。キャップは、通路(passageway)106を介して内側と外側とを連通するオスルアースリップ接続部等のブリーザーポート105、及び通路104を介して内側と外側とを連通するサンプル接続ポート103を有する。サンプル接続ポートは、シリンジ等のサンプル移送容器(sample transfer container;図示せず)の協同する第2のインターロック要素にサンプル接続ポートを解除可能にロックするための、ルアーロック接続部120等の第1のインターロック要素を備える。ポート120及び105はどちらも、ルアーフィッティングキャップ又は栓(図示せず)により容易に開け閉めすることができる。液体を動かすためにポート120に接続されたシリンジのプランジャーに下向きの圧力が印加された時、置換された空気が入れ物400を出られるようにポート105が開く。接続されたソース(これもシリンジであってよい)から液体を動かすために真空を用いる場合、ポート105が真空源に接続される。キャップの内側は、サンプル接続ポート103と流体連通する接続インターフェイス108を備える。キャップは、オスねじ部(図示せず)を有する入れ物にねじ込まれるようにメスねじ部110が形成されていてよいが、キャップと入れ物との任意の機能的接続を用いることができる。
【0019】
図2A及び2Bに示される好ましいフィルターカラム200のような、シリカゲルメンブレン、焼結多孔質ガラスフリット、又はガラス繊維ろ紙等の固相抽出マトリックスが内側にあるフィルターカラムが、入れ物キャップの接続インターフェイスに着脱可能に取り付けられるようになっている。例えば、
図1Cに示されるように、接続インターフェイス108は、フィルターカラム200上のオスねじ部220と結合(mate)するメスねじ部109を有し得る。フィルターカラムは開いた末端202及び204並びに核酸を回収するための基質212を含むその間の内部通路206を有する。フィルターカラムは、流体が容器又は入れ物に保持されるようにフィルターカラム中に流体が保持されることなく流体がそれを通過するようにデザインされているので、「中空ボディー」とも呼ばれ得る。フィルターカラム基質212は、多孔質フリット214に隣接してよく、保持リング210が、フィルターカラムのネック部に隣接した位置に基質及びフリットを保持するようにカラムの内側に対して摩擦係合を作り出し得る。
【0020】
基質212は、固体マトリックスを備えたカラム結合マトリックスを備え得、流体はこのマトリックスを通過できる。特定の態様では、マトリックスはバッファー溶液に曝される表面積が最大化されることによりマトリックスの結合能が最大化されるように高度に多孔性である。マトリックスは種々の材料でできていてよい。特定の具体的な実施形態では、結合マトリックスは、ガラス繊維、シリカビーズ、シリカゲル、焼結多孔質ガラスフリット等の(主にSiO2で形成された)シリカ材料であり得る。例えば、ワットマン社(ニュージャージー州)により生産されるタイプGF/A、GF/B、GF/C、GF/D、及びGF/Fガラス繊維フィルター等のシリカマトリックスの多くの商業的販売業者が知られている。そのようなフィルターは、核酸分子の精製における使用について特に知られている。別の実施形態では、特定の生体分子の抽出及び分離に適したイオン交換、アフィニティー、及び表面改変マトリックス等の種々の固体マトリックスが適用され得る。結合マトリックスは、核酸結合材料の粒子又は繊維が埋め込まれ得る任意の材料であり得る。マトリックス材料は一般的に液体に対して透過性であり、そのためサンプルはマトリックスを通過でき、核酸は核酸結合材料と接触及び結合し、サンプルの他の成分はマトリックスを過ぎ去り得る。結合マトリックスは、ケイ酸質材料(siliceous material)、シリカゲル、ガラス、ゼオライト、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、カオリン、ゼラチン状シリカ(gelatinous silica)、磁気粒子、焼結多孔質ガラスフリット、及びセラミックス又は高分子支持材料からなる群から選択される材料を含む、当該技術分野で公知の任意の支持材料(support material)を含み得る。核酸結合材料は、特定の条件下で核酸が結合する(典型的には、非共有結合)が、それらの条件下でサンプル中の他の物質は結合しない、任意の材料であり得る。核酸結合は通常可逆的であり、その後、条件を変えることにより材料から再度核酸を溶出させることができる。
【0021】
一実施形態では、カラム200は、ボカ・サイエンティフィック社(Boca Scientific;フロリダ州)から入手可能なMobicolカラムに似た形状であり得、又はその特別に改変された又は特別に製造されたバージョンであり得る。そのような形状のデザインは、微量遠心機を用いて遠心することができ、シリンジを用いて大容積のサンプルを容易に処理することが可能である。多孔質フリット214は、ポアサイズが10〜90μmの不活性プラスチックを含み得る。固体抽出マトリックス(基質)は、GF/Dろ紙(ワットマン社、ニュージャージー州)を含み得、例えばカラムの内径に嵌合するディスクへとろ紙をパンチングすることにより作られる。2層以上のフィルターディスクをフリットの上に置いてもよい。フィルターディスクが動くのを防止するために、PTFE(テフロン(登録商標)等)でできた又はポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)等のプラスチックでできたリング等のバックアップリング(リングストア社(Ring−Store)、ワシントン州)をフィルターディスクの上に置いてもよい(
図2Aに見られるように)。
【0022】
図6Eに完全に組み立てられた形態で示されている好ましい容器650等の、オープナー及び輸送容器は、底部分600及び結合する上部分610を備える。協同する底部分及び上部分は、輸送のためにフィルターカラムを含めるようになっている容積部を規定する。輸送容器の底部分600は、開いたトップを有し、入れ物キャップの接続インターフェイスからフィルターカラムを取り外すためにフィルターカラムに解除可能に係合するようになっている。例えば、フィルターカラムは、
図6Aのノッチ602によって係合される
図2Aに示されるタブ222を有し得る。封入された輸送容器は、核酸、特にRNAの加速分解(加水分解)を生じさせ得る汚染及び湿気を防ぐために環境から密封される。封入された輸送容器は、
図6C及び6Dの容器の上部に描かれている乾燥剤612等の顆粒又はビーズ状のシリカゲル等の、乾燥(dryness、desiccation)状態を誘導又は維持する予めパッケージングされた乾燥剤をその中に更に備え得る。乾燥剤の位置は、容器の下部にあってもよく、如何なる特定の位置又は形態にも限定されない。乾燥剤は、乾燥を作り出して維持するための当該技術分野で公知の任意の好適な材料を含み得、そのような材料としては、モンモリロナイトクレイ、塩化リチウム、活性アルミナ、アルカリアルミノシリケート、DQ11ブリケット(Briquette)、シリカゲル、モレキュラーシーブ、硫酸カルシウム、又は酸化カルシウムが含まれるが、これに限定されない。乾燥剤は、いくつかのシリカゲルで知られているように、無水(乾燥)から水和(湿った)状態に移る時に徐々に色が変わる湿気インジケーターを含み得る。
【0023】
ルアーロックフィッティングを有するキャップの外側から突き出したサンプル接続ポートを用いて示しているが、本発明は如何なる特定の種類のインターロック接続にも限定されず、如何なる特定の形態のサンプル接続ポートにも限定されない。サンプル接続ポートとサンプル容器との間のある種のロック係合(locking engagement)が好ましいが、任意の種類の可逆的ロック係合が用いられ得る。サンプル移送容器は示されていないが、協同するルアーロックフィッティングを有する標準的シリンジであり得る。したがって、好ましい方法では、シリンジを入れ物キャップとインターロックさせ、シリンジのプランジャーを押し下げて、カオトロピック試薬及びアルコール等の結合試薬の存在下で核酸を含む溶液をフィルターカラムに通過させる。こうして、核酸はフィルター212に保持され、ろ液は入れ物400へと通過する。前述した通り、シリンジのプランジャーはポート105を開いて手動で押し下げられてもよく、真空によってシリンジから溶液が空になるにつれてシリンジのプランジャーが押し下げられるように真空源をポート105に取り付けてもよい。
【0024】
カオトロピック試薬は、タンパク質又は核酸の2次、3次、及び/又は4次構造を変化させるが少なくともそれらの1次構造には影響しない物質として当該技術分野で周知である。例としては、チオシアン酸グアニジン、塩酸グアニジン、NaI、KI、チオシアン酸ナトリウム、又はこれらの物質の組合せが挙げられる。カオトロピック試薬は、液体の水の規則的構造を乱し、DNA又はRNAをこの水溶液からガラス表面へと結合させる。いくつかの条件下で、エタノール又はイソプロピルアルコール等のアルコールを含めると、表面へのNAの結合が促進される。イオン強度を改変するために、NaCl、KCl、又はCaCl2等の物質が溶液中に存在してもよい。カオトロピック条件下でガラス表面にDNA及びNAが結合する特性は、他の生物学的材料を含む溶液からそれらを単離するために用いられる。ガラス表面への結合は可逆的であり、例えば、カオトロピック試薬の濃度を下げた又はカオトロピック試薬を完全に除去した場合、DNA又はRNAを再度溶離させることができる。
【0025】
したがって、回収システムは、
図5に描かれているような真空チャンバー500を更に備えてよい。真空チャンバーは、通路540を介して真空チャンバーの内部容積部と連通する真空源に、例えば接続ポート530を介して、接続されるようになっている。真空チャンバー500の外側は複数のウェル520を有し、各ウェルは入れ物400の1つを受容するようになっている。複数の真空接続ポート510がチャンバーの内部部分と連通し、柔軟な導管(図示せず)を介して入れ物キャップ101のブリーザーポート105に接続されるようになっている。したがって、例えば、複数のウェルに入れ物を入れて各入れ物キャップを真空ポート510のいずれかに接続することができ、こうして、真空により、複数のサンプル移送容器中のサンプル含有流体が複数のフィルターカラムでろ過されて複数の入れ物に入る。真空チャンバー中の複数のウェルを用いて示しているが、真空チャンバーはウェルを1個だけ有してもよく、描かれているより多い又は少ないウェルを有してもよい。真空チャンバーの真空ポートは着脱可能なキャップ又はバルブを有してよく、それにより、入れ物ウェル中の入れ物に全部より少ない真空ポートを接続してチャンバーを用いることができる。
【0026】
回収システムは、予め処方された溶解試薬を含む溶解容器(
図7A及び7B)、液体検体(血清、血漿)を溶解容器に移すための第1のシリンジ、及び溶解産物を抽出デバイスに移すための第2のシリンジを更に備え得る。各シリンジは、好ましくは、安全な(とがっていない)金属又はプラスチック製の針を含み、シリンジを用いて流体が抽出される関連容器の底に届くのに充分な長さであり、比較的速い液体流が可能な充分な大きさの内径(ID)である。溶解試薬は、例えば、少なくとも以下を含み得る:トリトンX100又はBJ58等の非イオン性洗剤、又は非イオン性洗剤とラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン洗剤との組合せ、プロテイナーゼK等のプロテアーゼ、塩化リチウム、グアニジン、チオシアン酸グアニジン、尿素等の塩又はカオトロピック剤、ジチオスレイトール(DTT)等の還元剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート化剤、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)等のバッファー。グアニジン及びチオシアン酸グアニジンがモル濃度で強力なDNase及びRNase阻害活性を有することは周知である。溶解試薬は、溶液であってもよく、例えば凍結乾燥(lyophilization、freeze−drying)による乾燥形態(脱水)であってもよく、又は溶解容器内のスプレーコーティングであってもよい。
【0027】
血液、血漿、血清、痰、唾液、尿、脳脊髄液(CSF)、胸水、腹腔液、滑液等の水性流体の形態の検体は、直接又は更なる水と共に、ピペッティングにより又は比較的長い針を具備する第1のシリンジ等のサンプル移送容器(前述、図示せず)により、溶解容器に加えられ得る。水性流体が溶解容器に加えられる時、サンプル流体は溶解液と混ざるか乾燥した溶解試薬を再水和して完全なサンプル溶解バッファーミックスを形成する。好ましい検体は血漿又は血清であり、回収される血漿又は血清の好ましい容積は1〜20ml、より好ましくは少なくとも2ml、更により好ましくは2〜10ml、最も好ましくは2〜5mlである。
【0028】
膿、細胞懸濁液、及び組織等の高粘度形態又は半固体及び固体形態のその他の検体は、サンプル容積と溶解溶液の最適な比率を維持するために、乾燥した溶解試薬を再水和させるのに必要な量の更なる水と共に溶解容器に加えられ得る。
【0029】
溶解プロセスにおけるインキュベーションは、湯浴又はヒートブロックに溶解容器を置くことによる高温(周囲温度又は室温より高い温度)で加速され得る。溶解のための高温は、例えば消化酵素がプロテイナーゼKの場合、50〜65℃であり得る。サンプル溶解完了のためのインキュベーション期間は通常5分〜4時間、より好ましくは、10〜30分であるが、本発明は如何なる特定のインキュベーション時間にも限定されない。
【0030】
短時間のインキュベーション後のサンプル溶解完了後、結合抽出溶液容器(図示せず)から、ピペッティング、流し込み(pouring)、又はシリンジにより、結合抽出溶液が溶解容器中に加えられ得る。
【0031】
水性サンプル溶解結合抽出流体の完全な混合物は、抽出処理のために、シリンジ(図示せず)等のサンプル移送容器によって入れ物に移される。入れ物は、廃物(waste)回収容器としての役割を果たし、行われる抽出及び洗浄プロセスの全ての廃液を回収する。
【0032】
好ましい実施形態では、抽出後、回収されたサンプルは以下によって更に処理され得る:
1.下流での利用を妨げ得る又は阻害し得る生物学的サンプルからの汚染を排除するため及び抽出及び溶解バッファー由来の塩を除去するための、洗浄バッファーを用いた洗浄。好ましい実施形態では、比較的大きな容積が単一の洗浄ステップで用いられ得る。好ましい容積は、1〜10ml、より好ましくは1〜5ml、最も好ましくは2〜4mlであり得る。対照的に、従来の手法では通常、遠心機のサイズによって要求されるカラムのサイズの制約のため、2つの異なる洗浄バッファーを用い、典型的にはそれぞれ1ml未満で、2つの洗浄ステップを行う。
2.汚染物質を更に除去するため及びマトリックスを脱水するための、水を含まない脱水洗浄を用いた、例えば100%エタノール(好ましい)又は100%アセトンを用いたすすぎ。ここでも、cNAの保存のために、比較的大きな容積を用いてマトリックスを脱水する。エタノール又はアセトン洗浄液の好ましい容積は1〜10ml、より好ましくは少なくとも2ml、最も好ましくは2〜6mlである。やはり対照的に、従来の手法では通常、前述したサイズ制限のため、1ml未満が用いられる。いくつかの従来の手法はエタノール、アセトン、又は他の脱水洗浄を全く用いないこともある。
【0033】
フィルターカラム上のタブ及び輸送容器上の結合するノッチを用いて示されているが、輸送容器上に配置された協同する第2の部材によって解除可能に係合されるようになっており、入れ物キャップとのねじ接続からフィルターカラムを回して外すのに充分な力をフィルターカラムに伝えられる、フィルターカラム上に配置された任意の部材が設けられてよい。同様に、フィルターカラムと入れ物キャップとの間のねじ接続を用いて示されているが、任意の種類のインターロック接続が用いられ得、そのようなシステムの各要素は、好ましくは無菌的にキャップからフィルターカラムを取り外すために輸送容器とフィルターカラムとの間の任意の種類の協同を利用してよい。
【0034】
回収システムは、サンプル移送容器と入れ物キャップのサンプル回収ポートとの間に配置された三方弁を有し得る。そのような三方弁は、入れ物キャップのサンプル接続ポートに配置されるようになっている第1のポート、移送容器に接続されるようになっている第2のポート、及びサンプルが回収された後にサンプルを処置するためのエタノールを含む洗浄流体等の流体を含む流体源に接続されるようになっている第3のポートを有し得る。核酸を回収するためのキットは、所望のレベルの洗浄、安定化、又は他の種類の処置を達成するために必要な量の流体を含み得る。一実施形態では、回収容器はシリンジを備えてよく、三方弁は、サンプル移送容器と入れ物との間に正の相対圧力が存在する時に移送容器から入れ物への流れのみを許し、サンプル移送容器と流体源との間に負の相対圧力が存在する時に流体源から移送容器中への流れのみを許すようになっている、逆止め弁を備えてよい。したがって、シリンジのプランジャーが押し下げられた時、流体がフィルターカラムを通って放出され、シリンジのプランジャーが引かれた時、接続された流体源から流体がシリンジを満たす。したがって、シリンジを用いて押す、引く、押すという反復的動きは、元のサンプルを放出し、洗浄流体をシリンジ中へと引き、洗浄流体を入れ物へと放出し得る。したがって、プランジャーを反復的に押して引くことにより、所望される回数の洗浄ステップが行われ得る。
【0035】
フィルターカラムは、複数のフィルターカラムを受容する1つのサンプルホルダー(図示せず)内に嵌合するサイズであってよく、一度の複数のフィルターカラムを遠心するための遠心機に嵌合するようになっていてよく、例えば、限定されないが、半自動的又は全自動的な処理及び取扱いのための96ウェルフォーマットに嵌合するようなサイズであってよい。
【0036】
回収システムは、特定の種類の試験を行うために必要な材料の1又は複数を備えたキットの一部として販売されてもよく、そのようなものとしては以下が挙げられるが、これに限定されない:患者から流体サンプルを抽出するための手段(例えば、血液、血清、血漿、又は他の体液を引き抜くための針及びシリンジ)、流体サンプル中の細胞又は粒子を破壊するための溶解、所望の期間サンプル及び溶解溶液を保持するための溶解容器、前述した入れ物と結合するための前述したサンプル移送容器(例えばシリンジ又は他のチューブ)、フィルターカラムが中に取り付けられた前述の入れ物キャップ、任意の洗浄流体又は輸送のためにサンプルを調製又は安定化するために必要な他の種類の処置流体、及び前述の輸送容器。
【0037】
別の実施形態では、上記の種々の部品が別個に販売されてもよい。理想的には、ほとんどの種類の試験、特に上記で言及した結核検出方法で、サンプル又はサンプル含有流体を患者から抽出した時から核酸がフィルターカラム中の基質に沈着するまで、それに接触する全ての部品は、無菌であるべき又は任意の他のソースに由来する、例えばオペレーター又は環境に由来する核酸によって汚染されないべきであり、急速に核酸を分解する一般に存在するDNAse及びRNAseによって汚染されないべきである。本明細書に記載の種々の容器、シリンジ、及び入れ物は、実験室/ヘルスケア分野において周知の標準的な構成要素であってよい。しかし、接続されたフィルターカラムを有する画期的な入れ物キャップは、この特定の回収システムのために特化している。
【0038】
したがって、本発明の別の態様は、入れ物用の無菌の着脱可能なキャップを含み得、キャップは、入れ物の内部容積部に面する内側及び内側とは反対側の外側を有し、キャップは、内側と外側とを連通するブリーザーポート及び内側と外側とを連通するサンプル接続ポートを備え、サンプル接続ポートは、協同する第2のインターロック要素にサンプル接続ポートを解除可能にロックする第1のインターロック要素を備え、キャップの内側は、サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェイスを備える。上記の着脱可能なキャップは別個に販売されてよく、又は別の実施形態では、入れ物キャップの接続インターフェイスに着脱可能に取り付けられた本明細書に記載の無菌フィルターカラムまでそろえて販売されてもよい。
【0039】
本明細書に記載のシステムの全部品は、熱可塑性プラスチック射出成形等の当該技術分野で公知の任意の方法により作製され得る。好ましい熱可塑性プラスチックとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)が含まれるが、本発明は作製のための如何なる特定の材料又は方法にも限定されない。
【0040】
本明細書に記載のシステムを用いるための好ましい方法は以下のように行われ得る。
(a)生物学的サンプル中の複合体、細胞、又は他の粒子から核酸を放出させるためにカオロトピック剤、塩、及びアルコール等の沈殿剤を含む溶解バッファー及び結合バッファーで処置及びインキュベートされてよい1容積の(a volume of)サンプル含有流体を容器に回収すること。粗溶解産物はサンプル移送容器(例えばシリンジ)に移されてもよく、あるいは、回収ステップが好適なサンプル移送容器中で行われてもよい;
(b)サンプル回収ポートを介してサンプル移送容器を入れ物に接続すること;
(c)該容積の(the volume of)サンプル含有流体をサンプル移送容器からフィルターカラムに通すことにより、粗溶解サンプル中の核酸を基質上に回収し、残りを入れ物に回収すること;
(d)洗浄バッファーを用いてカラム中の核酸結合フィルターマトリックスを洗浄すること。
(e)カラムに1容積の(a volume of)溶媒、好ましくは100%のエタノール又はアセトンを通過させることにより、核酸結合マトリックスを脱水(及び同時に更に洗浄及び脱塩)すること。
(f)輸送容器底部分をフィルターカラムに被せて配置し、フィルターカラムを輸送容器と係合させ、フィルターカラムを入れ物キャップから取り外すこと;
(g)輸送容器上部分及び輸送容器底部分を結合することにより輸送容器を一時的に密封すること。密封された輸送容器は、好ましくは、顆粒又はビーズのシリカゲル等の吸湿剤(乾燥剤)のポケットを含む。
【0041】
比較的安定なDNA分子と異なり、RNA分子は、RNA中のホスホジエステル結合に隣接する2’ヒドロキシル基が塩基触媒加水分解及び酵素触媒加水分解の両方において分子内求核剤として作用する能力のため、より分解され易い。
【0042】
洗浄ステップ(d)は、1又は複数容積の処置流体をフィルターカラムに通すことにより、基質上に回収されたサンプルを処置することを含み得る。例えば、処置は、輸送のために核酸のサンプルを安定化すること、例えば、エタノールを含む流体等の洗浄流体を用いたサンプルの洗浄を含み得る。サンプル移送容器がシリンジを備える一実施形態では、該容積をフィルターカラムに通す方法は、シリンジのプランジャーに手動で圧力を加えることを含み得る。サンプル移送容器がシリンジを備える別の実施形態では、該容積をフィルターカラムに通す方法は、入れ物キャップのブリーザーポートを真空源に取り付け、その後、真空源を用いてフィルターカラムに陰圧を印加することを含み得る。そのような方法は、
図5に示されている真空チャンバーのウェルの1つの中に入れ物を置き、入れ物キャップのブリーザーポートを隣接する真空ポートに接続することにより行われ得る。
【0043】
下流の核酸アッセイの準備ができた時、例えば少量の溶出バッファー又は純水をフィルター(固体マトリックス)に加えて結合核酸を放出させ、カラムに圧力を印加することにより又は好ましくは遠心により別の小さな容器中に溶出液を回収することにより、ファイラーカラム中の基質に結合した核酸を放出させてフィルターカラムから溶出させる。
【0044】
如何なる特定の使用にも限定されないが、前述の回収システムは、以下に概略を述べるように結核の検出方法との関連で特に有用であり得る。しかし、システム及び方法は、胎児遺伝子障害、腫瘍診断、及びLTBIのような深部組織における感染症の早期診断方法等の、診断にcfNAの回収を利用する任意の方法との関連で特に有用であり得る。要約すると、システム及び方法は、宿主の体から区別可能なNA情報の変化を含むNA材料の評価に基づく任意の方法との関連で特に有用であり得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、抽出及び保存が重要な分野で特に有用である。血中における低濃度のcfNAの検出では、試薬が添加された時に総容積が容易に20〜50mlに達するので、比較的大容積のサンプル(2〜5〜10ml)が必要であり、これは既存のプロセスを用いて取り扱う又は自動化するのが困難な容積である。RNAはその安定性のため、問題を生じる。したがって、方法及びシステムは、体液中の低濃度のcfNA、特にRNAの検出に基づくプロセスに特によく適している。
【実施例】
【0045】
実施例1−MOEデバイスの構築
図4に示されているようにフィルターカラム200のプロトタイプを構築した。Mobicolフィルターカラムはボカ・サイエンティフィック社(フロリダ州)から供給され、多孔質フィルターフリット214をカラム中に嵌めた。好適なサイズの吸収マトリックスディスク212を、GF/Dガラス繊維ろ紙(ワットマン社、ニュージャージー州)からパンチングし、多孔質フィルターの上に挿入した後、テフロン製のバックアップリング216(theoringstore.com)を吸収マトリックスディスクの上に密接させて置いて組立品を固定した。ルアーロック接続部を上に有するキャップをフィルターカラムにねじ込んで密封した。次いで、組み立てられたフィルターカラムを有するキャップを空の50mlプラスチック製使い捨て遠心管にねじ込んで密封した。以後、本明細書中で、前述のデバイス全体をMOE(手動操作抽出:Manually Operated Extraction)デバイスと呼ぶ。MOEフィルターカラムを下に有するルアーロックキャップは、50mlのプラスチック製使い捨て遠心管にねじ込まれて密封される。以下の実施例で用いられる複数のMOEフィルターデバイスも同じように構築することができる。
【0046】
実施例2−仔ウシ血清からの無細胞核酸の抽出
本実験では、市販の凍結仔ウシ血清(BCS)を、これは経済的で充分なソースであり、天然起源のウシ無細胞核酸を含むので、実験的モデル生体材料として用いた。検出された核酸配列に関して、このBCSの定量的結果の解釈は、このロットに限定されるべきである。使用したBCS、HyClone(商標)仔ウシ血清(Cat. SH30072.03)はフィッシャーサイエンティフィック社(マサチューセッツ州)により供給された。到着後、BCSを振盪しながら室温で解凍した。完全に解凍された後、BCSを分注(aliquot)し、使用時まで再度凍結した。一貫性を得るために、全てのBCSのアリコートは室温で使用直前に1度だけ解凍した。
【0047】
QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit(cat. 55114、キアゲン社、米国、カリフォルニア州)を製造業者の指示書に従って用いてBCS中のcfNAを基準として抽出した。本発明のデバイス及び手順を完全に手動操作での抽出下で試験するため及び比較のために、キットに含まれるQiagen Miniカラム(QMカラム)の代わりにMOEフィルターカラムを用いた。更に、MOEフィルターカラムの使用中、抽出及び洗浄手順は、MOEカラム上のルアーロックキャップに接続したプラスチック製の使い捨てルアーロックシリンジを用いて行われ、手で操作され、一方、Qiagen Miniカラムの使用中は、キットのユーザー・マニュアルに指示されている通り、液体をピペッティングで移し、電気真空ポンプに接続したバキュームマニホールドQIAvac 24 Plus(キアゲン社、米国、カリフォルニア州)を用いて抽出・洗浄手順を補助した。
【0048】
解凍したBCS(各2ml)の4つのアリコートを、溶解バッファーACL及びProteinase Kを含む50mlの遠心管(それぞれQM及びMOEとラベル)に加え、60℃で30分間インキュベートした。取扱説明書の指示に従い、好適な量の結合バッファーACB及びイソプロパノールを各チューブに加えた。溶解産物混合物の総容積は約8mlであった。
【0049】
2つの異なる抽出カラムを用いた回収率を比較するために、60bpの短い2本鎖DNAを含む2μlの「TB−DNA」溶液(1.5×10
6コピー/μl)をQMチューブ及びMOEチューブのそれぞれの1つにスパイクし、それぞれQM−TB及びMOE−TBとラベルした。「TB−DNA」溶液は、ゲノムMycobacterium tuberculosis株h37Rvから、IS6110遺伝子断片のPCR増幅産物を用いて調製される。異種DNA対照(宿主にとって外来性)としてこのdsDNAをBCS中にスパイクした。こうして、4つのチューブをそれぞれQM、QM+TB、MOE、及びMOE+TBとラベルした。
【0050】
QMチューブ中のACB溶解産物混合物は、QMカラムをバキュームマニホールドに接続する延長チューブ(extension tube)に移された。イソプロパノール含有ACW1及びACW2洗浄バッファーを用いた抽出及び洗浄手順を、ピペッティング及び真空化により完了した。
【0051】
MOEチューブ中のACB溶解産物混合物は、長針を取り付けた20mlのルアーロックシリンジ中に抜き取った。その後、針を外し、50ml遠心管(400)上のキャップ101のルアーロックコネクターにシリンジをしっかりとねじ込んだ。手の圧力でシリンジ中の溶解産物混合物を押してMOEフィルターカラム中の結合マトリックスを通過させた。洗浄バッファーACW1及びACW2も、より小さいシリンジを用いてMOEフィルターカラムに移して通過させた。本発明で使用されるシリンジの容積は、シリンジ中で液相が占める容積に加えて、フィルターマトリックス中及びカラム中に残っている液体残渣をできるだけ押し出せるように充分な空気相が確保されるのに充分な大きさであるべきである。
【0052】
両方のカラムにおいて吸収されたcNA断片を、高速遠心(15,000g)により60μlのバッファーAVE中に溶出させた。溶出液はすぐに用いるか、凍結して保存した。
【0053】
抽出された無細胞mRNAを含む溶出物の一部を、製造業者のプロトコールに従ってM−MLV Reverse Transcriptase(cat. M170、プロメガ社、ウィスコンシン州)及びcDNAに対するランダムプライマーを用いて逆転写した。SIBO(商標)−SYBR qPCR混合物キット(デラウェア州のOccam Biolabs社から市販)を用いた定量的リアルタイムPCRによりcfDNA及びcf−mRNAの量を決定した。他の市販のSYBR qPCRキット、例えばSYBR(登録商標) Premix DimerEraser(商標)(Perfect Real Time、タカラ−クロンテック社、カリフォルニア州)、Power SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix(ライフテクノロジーズ社、カリフォルニア州)、及びiQ(商標) SYBR(登録商標) Green Supermix 2x Real−Time PCR Mix(バイオ・ラッド社、カリフォルニア州)もこの目的に用いることができる。qPCRアッセイに用いたプライマー対を表1に示す。M. tuberculosis遺伝子IS6110の外来性配列及びB. B.Taurusミトコンドリア遺伝子Nd2の内因性配列を標的とするこれらのプライマーは、短いDNA配列を増幅するように特異的にデザインされている。RT−qPCRアッセイにおいて、一般的に使用されるハウスキーピング遺伝子B2M(ベータ−2−ミクログロブリン)の異なる配列を標的とするフォワードプライマー及びリバースプライマーは、大きなサイズのイントロンを挟んだ異なるエキソンに相補的であるようにデザインされている。したがって、mRNAから逆転写される短いcDNAのみが増幅及び検出され、混入したゲノムDNAは増幅及び検出されない。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
結果は、同じバッファー、すなわちQIAamp circulating NAキットのACL、ACB、ACW1、ACW2、及びAVEを用いた場合、本発明の一実施形態に係る手動シリンジ操作手順を用いたMOEフィルターカラム及び真空ポンプを用いて処理されたQiagen Miniカラムの両方が同等のcfNDA及びcfRNA抽出効率を示すことを示している。結果は更に、末梢循環中のmRNA断片が内因性標準として及び生物学的検体の品質管理に用いられ得ることを示している。
【0057】
実施例3
本実施例では、MOEフィルターカラムのみを以下のバッファー及びプロトコールで用いた:
バッファー:
溶解バッファー(LB):4Mチオシアン酸グアニジン(GITC)、8%トリトンX100、100μl/ml LBのQiagen Proteinase K(cat. 19131、キアゲン社、カリフォルニア州)を含む。
結合バッファー(BB):3M GITC、40%イソプロパノール(IPA、終濃度)を含む。非常によく混合する。
洗浄バッファー(WB):10mM Tris、2mM EDTA、10mM NaCl、70%エタノール、pH7.0を含む。
溶出バッファー:Qiagen Buffer AVE(QIAamp Circulating Nucleic Acidキットに含まれる)。
プロトコール:
1.溶解:長針を付けた10mlシリンジで、2mlの解凍したBCSを、2mlのLBを含む50mlのプラスチック製の遠心管へと抜き取り、ボルテックスでよく混合し、60℃のヒートブロック中で30分間インキュベートする。室温で冷却する。
2.結合:10mlのBBをサンプル溶解産物チューブへと抜き取り、ボルテックスで混合し、室温に10分間維持する。
3.結合及び抽出:50ml溶解産物チューブの全内容物を、長針を付けた20〜30mlのルアーロックシリンジ中へと抜き取り、約5mlの空気がシリンジ中に抜き取られるまで続け、ルアーロックシリンジを、ラックにしっかりと取り付けた組み立てられたMOEデバイス400のキャップ上のメスルアーロックコネクターにねじ込む。シリンジ中の全ての液体及び空気がフィルターカラムを通過するまでシリンジのプランジャーを押し下げる。廃物をMOEデバイスの50mlチューブ中に回収する。この手順には1〜2分かかり得る。20mlシリンジを回して外す。
4.4mlのWBを10mlのルアーロックシリンジ中に抜き取り、プランジャーを押してWBをカラムに通す。10mlシリンジを回して外す。
5.4mlの100%エタノールを10mlシリンジ中に抜き取り、プランジャーを押してエタノールをカラムに通す。
6.MOEデバイスのキャップを回して外し、フィルターカラムをキャップから取り外す。1.5〜2mlのRNase及びDNaseを含まない微小遠心管にカラムを挿入し、カラム中のエタノール残渣を完全に風乾する。
7.100μlの溶出バッファーAVEをフィルターカラム中の吸収マトリックスに直接加え、取扱い中の汚染を防ぐためにフィルターカラムにキャップをねじ込む。結合したNAが再度水和されて吸収マトリックスから放出されるまで10〜30分待つ。
8.カラムが中に挿入されたマイクロチューブを15,000〜20,000Gで3分間遠心する。溶出液を回収して、下流での利用に用いるか、−20〜−80℃で保存する。
【0058】
本実験中、2mlのLBを6本の50ml遠心管に加え、次いで2mlのBCSを加えた。更に、2μlの10倍希釈「TB−DNA」溶液(1.5×10
5コピー/μl)を各溶解チューブにスパイクした。以下の手順はステップ6まで上記プロトコールに従ってなされた。
【0059】
ステップ6の後、6個のMOEカラムを、3セットの同一複製物(A及びB)に分け、各セットをMOE−0wk、MOE−2wk、及びMOE−4wkとラベルし、これは、それぞれその後の処置が、なし、2週間、4週間であることを示している。
【0060】
その後の処置を以下の通り行った:MOE−0wkとラベルされたセットはすぐに上記手順のステップ7に供し、MOE−2wk及びMOE−4wkとラベルされたセットは、シリカゲル乾燥剤のパケット、Minipax(登録商標)吸収剤パケット(cat. Z163554、0.5g/パケット、シグマ アルドリッチ社、ミズーリ州)と共に新しい50ml遠心管中に維持された。50mlチューブをしっかりと閉じ、パラフィルム(VWR社、ペンシルベニア州)を巻いて確実に完全に密封した。中にフィルターカラムが入った密封チューブを、室温にそれぞれ2週間(MOE−2wk)及び4週間(MOE−4wk)曝した。暴露の終わりに、2セットを開け、フィルターカラムを上記手順のステップ7で処理した。
【0061】
ステップ8の後、全溶出液を実施例2と同様にqPCR及びRT−qPCRでアッセイした。結果を表3に示す。
【0062】
カラムからすぐに溶出させたサンプルのCt値を室温に2週間及び4週間曝した後に溶出させたサンプルと比較することにより、驚くべきことに、qPCR及びRT−qPCRで調べた種々のcfNA断片種の全てにおいて、量が、したがって完全性(増幅可能)が、ほぼ同じであることが見出された。対照的に、ステップ7の後のフィルターカラムを通常の湿度及び室温に数日曝した場合、吸収されたcfNA、特にRNA種は分解され、増幅可能でなかった(非掲載データ)。
【0063】
この驚くべき発見は、抽出後、フィルターマトリックス上の吸収されたcfNA、特に脆弱なcfRNAを安定化して室温でよく保存できることを意味している。多孔質吸収マトリックスに大容積のエタノール(この場合は4ml)を流すことにより、更に、吸収されたNAを乾燥剤と閉環境で脱水状態に維持することにより、RNAが効果的に分解から保護される。吸収されたNAの単純で経済的な処置により、生物学的検体の取扱い、貯蔵、及び運搬のための容易な方法が実現される。
【0064】
【表3】
【0065】
実施例4:ヒト末梢血液中における病原体特異的核酸配列の検出
新鮮なヒト末梢血液を、2名の成人対象(健康対照及び潜在性結核感染の疑い対象;それぞれHC及びLTBI)から採取した。LTBI対象は、PPD皮膚テスト陽性と判定され、TB低負担国(low−burden country)に25年住んでいるが、最近、最後の2年間に、TB高負担国でのTB接触歴がある。最後の2年間の間に、対象はCT X線検査により3回、喀痰スミアテストにより4回、及びTB培養により3回検査された。これらのテストは全て陰性であったが、ツベルクリン皮膚テスト(PPD)は陰性から陽性(1.8cm)に転換した。対象は結核に関連する症状を示さなかった。対象は、医療従事者によりLTBIであると推定された。LTBI診断にはいくつかの大きな障害があることがよく知られており、特に、現在の技術を用いて体内の細菌感染症の直接的証拠を得る手段はない。このケースでは、LTBI診断のためのその他の更なるテストは行われていなかった。
【0066】
遠心(2000g、10分)により全血から血漿を分離した。実施例3と同じ手順でcNAを抽出した。一般的に使用されるハウスキーピング遺伝子B2M(ベータ−2−ミクログロブリン)及びPPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼA、又はシクロフィリンA)並びにND4(ミトコンドリアNDA中の、NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4)の3つのプライマー対、並びに推定LTBI対象に由来する末梢血液中のTB特異的DNA断片を検出するためのTB IS6110−65を用いたqPCR及びRT−qPCRを用いて血漿中のヒト内因性cNA断片を検出及び定量した。
【0067】
実施例4で使用したプライマーを表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
結果を表5及び
図8に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
本明細書で具体的な実施形態を参照して発明を図解及び説明しているが、本発明は記載されている詳細に限定されない。むしろ、本発明から逸脱することなく請求項の均等物の範囲内で詳細の種々の改変がなされ得る。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]