特許第6392860号(P6392860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392860モレキュラーシーブ、その製造及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392860
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】モレキュラーシーブ、その製造及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20180910BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20180910BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C01B39/48
   B01J29/70 Z
   B01J35/10
【請求項の数】13
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2016-516882(P2016-516882)
(86)(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公表番号】特表2016-536240(P2016-536240A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】CN2014000867
(87)【国際公開番号】WO2015043114
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年3月22日
(31)【優先権主張番号】201310436076.4
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201310436460.4
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】楊為民
(72)【発明者】
【氏名】王振東
(72)【発明者】
【氏名】孫洪敏
(72)【発明者】
【氏名】張斌
(72)【発明者】
【氏名】宦明耀
(72)【発明者】
【氏名】沈震浩
(72)【発明者】
【氏名】薛明偉
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平04−504423(JP,A)
【文献】 特表平08−509197(JP,A)
【文献】 米国特許第05173281(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第1789126(CN,A)
【文献】 特開2008−094717(JP,A)
【文献】 特表2009−526739(JP,A)
【文献】 特表2009−544567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20ー39/54
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式「第1の酸化物・第2の酸化物」で示される実験化学組成を有することを特徴とするモレキュラーシーブであって、
該第2の酸化物に対する該第1の酸化物のモル比は、25〜200であり、
該第1の酸化物は、シリカ及び酸化ゲルマニウムからなる群より選択される1種以上であり
第2の酸化物は、アルミナ、酸化ホウ素、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化チタン、希土類酸化物、酸化インジウム及び酸化バナジウムからなる群より選択される1種以上であり
モレキュラーシーブが、実質的に下記表:
【表30】

に示されるX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブ。
【請求項2】
該X線回折パターンが、実質的に下記表:
【表31】

に示されるX線回折ピークを更に含む、請求項1記載のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
式「第1の酸化物・第2の酸化物」又は式「第1の酸化物・第2の酸化物・有機テンプレート・水」で示される実験化学組成を有することを特徴とするモレキュラーシーブであって、
該第2の酸化物に対する該第1の酸化物のモル比は、25〜200であり、
該第1の酸化物に対する該有機テンプレートの重量比は、0.07〜0.27であり、
該第1の酸化物に対する水の重量比は、0.02〜0.11であり、
該第1の酸化物は、シリカ及び酸化ゲルマニウムからなる群より選択される1種以上であり
第2の酸化物は、アルミナ、酸化ホウ素、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化チタン、希土類酸化物、酸化インジウム及び酸化バナジウムからなる群より選択される1種以上であり
モレキュラーシーブが、実質的に下記表:
【表32】

に示されるX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブ。
【請求項4】
該X線回折パターンが、実質的に下記表:
【表33】

に示されるX線回折ピークを更に含む、請求項3記載のモレキュラーシーブ。
【請求項5】
総細孔容積(BET法による)が、0.55〜0.90cm3/gであり、
総比表面積(BET法による)が、480〜680m2/gであり、
外部比表面積(BET法による)が、200〜400m2/gであり、かつ
該外部比表面積が、該総比表面積の45〜65%を占める、請求項1又は3記載のモレキュラーシーブ。
【請求項6】
MWWトポロジーの骨格構造を有し、その全結晶の少なくとも80%が、厚さ約5nm(TEM法による)の薄片状結晶である、請求項1又は3記載のモレキュラーシーブ。
【請求項7】
モレキュラーシーブを製造する方法であって、
結晶化条件において、第1の酸化物源、第2の酸化物源、アルカリ源、有機テンプレート、場合によるハロゲン源及び水を接触させて、モレキュラーシーブを得る工程;及び
場合により、得られた該モレキュラーシーブを焼成する工程
を含み、
該有機テンプレートは、第1の有機テンプレートと第2の有機テンプレートの組み合わせであり、
該第2の有機テンプレートに対する該第1の有機テンプレートのモル比は、0.3〜3.5であり、
該第1の酸化物源(該第1の酸化物として計算)と該第2の酸化物源(該第2の酸化物として計算)との間のモル比が、1:(0.005〜0.04)であり、
該第1の有機テンプレートは、1種以上の飽和単環式化合物であって、その環骨格が、下記式:
【化10】

のもの(数はn個)及び下記式:
【化11】

のもの(数はm個)
(式中、
及びR、各々独立に、水素及びメチルからなる群より選択され、
は、水素を表し、
数値nは、5〜8の整数を表し、
数値mは、1又は2を表す)
で作られており、
該第2の有機テンプレートは、アザアレーン及び下記式(I):
【化12】

で示される化合物からなる群より選択される1種以上であり、
該式(I)中、R、R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル及びC5−12単環式シクロアルケニルからなる群より選択され、ただし、
(1)R、R及びRのうち、最大で1つは水素を表し、かつ
(2)R、R及びRのうち、少なくとも1つは、該C5−12単環式シクロアルキルであり
アザアレーンは、モノアザ、ジアザ又はトリアザC6−20アレーンのうちの1種以上であり、その環骨格を構成する各窒素原子上に、場合により、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル、C5−12単環式シクロアルケニル及びC6−20アリールからなる群より選択される1個の置換基が更に存在する、方法。
【請求項8】
該第1の酸化物源(該第1の酸化物として計算)、該第2の酸化物源(該第2の酸化物として計算)、該アルカリ源、該有機テンプレート、該ハロゲン源及び水の間のモル比が、1:(0.005〜0.04):(0.05〜0.2):(0.2〜1.0):(0〜0.3):(10〜40)であり、
該結晶化条件が、結晶化温度145〜170℃、結晶化時間2〜5日を含み、かつ
該焼成の条件が、焼成温度400〜650℃、焼成時間3〜6時間を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1又は3に記載のモレキュラーシーブ、及びバインダーを含む、モレキュラーシーブ組成物。
【請求項10】
吸着剤、アルキル化触媒、オレフィン水和触媒、オレフィン酸化触媒、水素化分解触媒又はオレフィン異性化触媒としての、請求項1〜6のいずれか一項記載のモレキュラーシーブ、又は請求項9記載のモレキュラーシーブ組成物の使用。
【請求項11】
該第1の有機テンプレートは、ヘキサメチレンイミン(C/N比6を有する)、ピペリジン(C/N比5を有する)、2−メチルピペリジン (C/N比5を有する)及びホモピペラジン(C/N比2.5を有する)からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
該式(I)で示される化合物は、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン(C/N比10を有する)、ジシクロヘキシルアミン(C/N比12を有する)及びN−メチルジシクロヘキシルアミン(C/N比13を有する)からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
該アザアレーンは、キノリン(C/N比9を有する)、N−フェニルキノリン(C/N比15を有する)、N−シクロヘキシルピリジン(C/N比11を有する)及び6−メチルキノリン(C/N比9を有する)からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モレキュラーシーブ、特に、MWWファミリーであるSCM−1モレキュラーシーブ又はSCM−2モレキュラーシーブに関する。本発明は更に、これらのモレキュラーシーブを製造する方法及び吸着剤又は触媒としてのその使用に関する。
【0002】
背景技術
MCM−22モレキュラーシーブは、MWWトポロジーの構造を有し、また2組の独立した10員環細孔系を有している。これらの細孔系は互いに連通しておらず、そのうちの一方は、細孔径4.1Å×5.1Åである概ね楕円形の断面を有する、2次元の正弦波状細孔を含み、もう一方は、大きさが7.1Å×7.1Å×18.2Åである概ね円筒形の12員環スーパーケージを含み、このスーパーケージは、僅かに歪んだ10員環開口部(4.0Å×5.5Å)を通じて外部と連通している。更に、MCM−22モレキュラーシーブは、結晶の外部表面に位置する、椀型をした12員環セミスーパーケージを有する。
【0003】
高分解能電子顕微鏡及びシンクロトロン粉末X線回折によるMCM−22モレキュラーシーブの構造の研究に基づき、焼成によってテンプレートを除去していない、MCM−22モレキュラーシーブ前駆体粉末(MCM−22(P))と、焼成後のMCM−22モレキュラーシーブ(MCM−22(C))の間では、構造に幾分有意な違いがあることが見出されている。これらの格子パラメータの比較により、MCM−22(P)とMCM−22(C)は、同一の格子パラメータa(b)を共有し、これらは共に1.427nmであるが、MCM−22(C)では格子パラメータcが2.52nmであり、MCM−22(P)では格子パラメータcが2.68nmであることが見出されている。同一の格子パラメータa(b)は、MCM−22(P)において既に形成されている層状構造が、焼成中に変化することはないことを示している。このことに基づき、テンプレートを除去するための焼成によって、MCM−22(P)がMCM−22(C)に変換される機構は、まず、別個の層の間のテンプレートが、高温において脱着及び分解し、同時に、層状構造の表面に、シラノール基(Si−OH)が形成され、次に、表面のSi−OH基が縮合により脱水されてSi−O−Si結合となり、これによって隣接する層状構造が連結されて多層構造になる、というものであると推定される。
【0004】
MCM−22モレキュラーシーブは一般に、薄片又は薄板の形態で存在し(presents as)、その大きさは約2μm、厚さは10nm超〜数10nmである。透過型電子顕微鏡によるMCM−22モレキュラーシーブ結晶の研究において、MCM−22モレキュラーシーブの薄片状結晶は、厚さ約2.5nmの「基本ビルディング層構造(elementary building layer structure)」をオキソ架橋結合でいくつも連結して作られる多層構造を有することが見出されている。モレキュラーシーブ結晶の厚さに応じて、多層構造は種々の数、一般には5超、又は10若しくはそれ以上にまで及ぶ数の基本ビルディング層構造で作られ得る。
【0005】
MCM−22モレキュラーシーブの多層構造には、層状構造の内部及び2つの隣接する基本ビルディング層構造の間にそれぞれ位置する、2組の10員環細孔があり、分子拡散に厳密な制限を課しているが、結晶表面に位置する12員環セミスーパーケージは、分子拡散を促進する。実際、液相におけるベンゼンとエチレンのアルキル化反応を触媒するために、MCM−22モレキュラーシーブを用いると、層状構造の内部及び間の10員環細孔は、反応にアクセスできず、反応は、結晶表面にある椀型のセミスーパーケージにおいてのみ起こることが見出されている。
【0006】
MCM−22モレキュラーシーブの、別個の層の間のこれらの10員環細孔をより有効に利用し、かつその構造内の12員環スーパーケージを可能な限り露出させるため、例えば、国際公開第97/17290号は、MCM−22(P)を膨潤させる工程、及び次いで、膨潤させた該MCM−22(P)を超音波処理して、別個の基本ビルディング層構造の間の相互作用を破壊することにより、単一の基本ビルディング層構造(単層構造ともいう)をただ1つ有するITQ−2モレキュラーシーブが得られるように、該基本ビルディング層構造を分解する工程を含む方法を開発している。この分野において、このITQ−2モレキュラーシーブは、MWWトポロジーの構造を有する新規なモレキュラーシーブと同定されている。この特定の単層構造のため、ITQ−2モレキュラーシーブは、結晶の厚さが約2.5nmしかない。MCM−22モレキュラーシーブと比較すると、ITQ−2モレキュラーシーブには、層内部の10員環細孔は残っているが、円筒形の12員環スーパーケージを含む、隣接する層の間の10員環細孔は完全に破壊され、そのスーパーケージは、2つの椀型のセミスーパーケージに分割されて、完全に開放されている。よって、ITQ−2モレキュラーシーブは、その外部比表面積に関して有意に改善され(一般に約700m2g-1、これに対し、MCM−22モレキュラーシーブではわずか約100m2g-1)、分子拡散に対し制限を示さず、これにより、MCM−22モレキュラーシーブに比して有意に優れた拡散性能を示す。
【0007】
しかし、ITQ−2モレキュラーシーブには、単層のMWWトポロジーの構造が1つしかなく、このことは、1つの完全な円筒形のスーパーケージを2つの椀型のセミスーパーケージに分割することにより、MWW物質の3次元構造が完全に破壊され、そのことが、スーパーケージ内のB酸中心の、L酸中心への変換をもたらすことを示している(IR study of the acidity of ITQ-2, an "all-surface" zeolitic system, Journal of Catalysis, 214 (2003), pp.191-199)。具体的には、ITQ−2モレキュラーシーブの酸中心は、主としてL酸であり、このことは、メソポーラス物質の酸特性と類似している。ITQ−2モレキュラーシーブが、メソポーラス物質に匹敵する比表面積を有することを考慮すると、ITQ−2モレキュラーシーブの挙動は、結晶質マイクロポーラスモレキュラーシーブよりもむしろメソポーラス物質により類似したものになる可能性がある。これらの理由により、ITQ−2モレキュラーシーブについては、そのマイクロポーラス構造の破壊により、ITQ−2モレキュラーシーブは、メソポーラス物質に匹敵する拡散及び吸着性能を示し、かつ、熱安定性、水熱安定性又は触媒的形状選択性といった、典型的には結晶質マイクロポーラスモレキュラーシーブに関連する特性が奪われている。このことからみて、ITQ−2モレキュラーシーブは、酸中心の強度に対してより寛容な、又は分子拡散により厳しく制限される反応において、反応体を変換することにおいては有効である(即ち、反応体変換能力が高い)が、目的とする生成物の選択的生成においては有効でない(即ち、生成物の選択性に乏しい)。例えば、触媒として、中程度に強い又は強い酸を必要とする反応である、ベンゼンとエチレンの間での液相アルキル化反応では、ITQ−2モレキュラーシーブは、MCM−22モレキュラーシーブに比して弱い酸性度のため、この反応にはより不適である。対照的に、カプロラクタムを製造するためのシクロヘキサノンオキシムのベックマン転移反応は、拡散により制限される反応の典型的なものである。この反応では、シクロヘキサノンオキシムが、分子サイズにおいてMCM−22モレキュラーシーブの10員環開口部よりも大きいが、生成物のカプロラクタムは更に大きく、そのため、反応は主として、結晶の外部表面にある椀型の12員環セミスーパーケージで起こる。この点において、ITQ−2モレキュラーシーブは、MCM−22モレキュラーシーブに比して、遥かに多くの開放されている12員環セミスーパーケージを有しており、よってMCM−22モレキュラーシーブよりも有意に優れた触媒性能を示す。
【0008】
更に、ITQ−2モレキュラーシーブは、少なくともMCM−22モレキュラーシーブ前駆体を製造する工程並びにそうして製造されたMCM−22モレキュラーシーブ前駆体の膨潤及び超音波処理工程を必然的に含む、幾分複雑な様式で製造しなければならない。このことに関し、ITQ−2モレキュラーシーブを製造する方法は、エネルギー及び物質の大量消費という問題を抱えている。その上、膨潤条件が非常に過酷なため、モレキュラーシーブの結晶構造がひどく破壊される場合が多く、このことが、大量のケイ素の液相への損失をもたらし、その結果、ITQ−2モレキュラーシーブの収率を50%超とすることは、極めて困難である。しかも、ITQ−2モレキュラーシーブを製造する間には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)のような膨潤剤を使用しなければならない。この膨潤剤は、界面活性剤のようにも振る舞い、そのことが、そのミセルの周囲において、液相中のケイ素種のメソポーラス物質への組織化及びそれに次ぐ液相からの分離をもたらし、更にこれが製造されたITQ−2モレキュラーシーブに混入し、これによりITQ−2モレキュラーシーブの純度が低下する。メソポーラス物質は、マイクロポーラスモレキュラーシーブに比して比表面積が遥かに大きく、この不純物としてのメソポーラス物質による汚染は、最終生成物の総比表面積及び外部比表面積を増加させる可能性がある。しかし、メソポーラス物質は、非晶質という性質のため、水熱安定性に乏しく、更に酸とアルカリのいずれに対しても耐性に乏しいという特徴がある。残念ながら、従来技術ではこれまで、これらのメソポーラス物質を、製造されたITQ−2モレキュラーシーブから効率的に除去する方法を何ら開発できていない。不純物としてのこのメソポーラス物質が回避し難く存在するため、ITQ−2モレキュラーシーブの触媒性能が有意に損なわれてきた。
【0009】
実用においては、モレキュラーシーブは、良好な触媒性能(反応体変換能力及び生成物の選択性を含む)に加え、良好な再生性能を更に有することが必要とされている。もし、ITQ−2モレキュラーシーブを従来の様式、例えば高温での焼成により再生させようとするならば、その一つの単層構造及び不純物としてのメソポーラス物質による不可避の汚染のため、その表面のSi−OH及びAl−OH基が縮合により脱水され、次いでモレキュラーシーブの骨格構造の焼結及び融解が起こり、これが細孔の埋没・封鎖及び活性中心の損失をもたらして、触媒性能の有意な減少という結果に至り、新鮮触媒と同じレベルまで回復されることはありえない。
【0010】
これらの問題のため、ITQ−2モレキュラーシーブは、その最初の報告以来20年近く知られており、また多くの研究者によりその高い性能を伴って観察されているが、商業利用はこれまでにできていない。
【0011】
したがって、拡散により制限される反応の典型的なものに関してさえも、ITQ−2モレキュラーシーブに匹敵する反応体変換能力を示し、かつITQ−2モレキュラーシーブに関連する問題が除かれている、新規なモレキュラーシーブについての需要が依然として存在する。
【0012】
発明の概要
本発明者らは、従来技術に基づき、モレキュラーシーブを製造する方法に、特定の有機テンプレートの組み合わせを導入すれば、単純化された様式で、新規なモレキュラーシーブ(以降、SCM−1モレキュラーシーブ及びSCM−2モレキュラーシーブを含むものとする)を製造することができ、それが、拡散により厳しく制限される反応に関してさえも、少なくとも従来技術であるITQ−2モレキュラーシーブに匹敵する反応体変換能力を示し、かつITQ−2モレキュラーシーブに関連する問題が除かれていることを見出した。
【0013】
具体的には、本発明は、以下の態様に関する。
【0014】
1.式「第1の酸化物・第2の酸化物」で示される実験化学組成を有することを特徴とするモレキュラーシーブであって、
該第2の酸化物に対する該第1の酸化物のモル比は、20〜2000、好ましくは25〜200であり、
該第1の酸化物は、シリカ及び酸化ゲルマニウムからなる群より選択される1種以上であり、好ましくはシリカであり、
該第2の酸化物は、アルミナ、酸化ホウ素、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化チタン、希土類酸化物、酸化インジウム及び酸化バナジウムからなる群より選択される1種以上であり、好ましくはアルミナであり、
該モレキュラーシーブが、実質的に下記表:
【表1】

に示されるX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブ。
【0015】
2.該X線回折パターンが、実質的に下記表:
【表2】

に示されるX線回折ピークを更に含む、該いずれか一態様記載のモレキュラーシーブ。
【0016】
3.式「第1の酸化物・第2の酸化物」又は式「第1の酸化物・第2の酸化物・有機テンプレート・水」で示される実験化学組成を有することを特徴とするモレキュラーシーブであって、
該第2の酸化物に対する該第1の酸化物のモル比は、20〜2000、好ましくは25〜200であり、
該第1の酸化物に対する該有機テンプレートの重量比は、0.03〜0.38、好ましくは0.07〜0.27であり、
該第1の酸化物に対する水の重量比は、0〜0.15、好ましくは0.02〜0.11であり、
該第1の酸化物は、シリカ及び酸化ゲルマニウムからなる群より選択される1種以上であり、好ましくはシリカであり、
該第2の酸化物は、アルミナ、酸化ホウ素、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化チタン、希土類酸化物、酸化インジウム及び酸化バナジウムからなる群より選択される1種以上であり、好ましくはアルミナであり、
該モレキュラーシーブが、実質的に下記表:
【表3】

に示されるX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブ。
【0017】
4.該X線回折パターンが、実質的に下記表:
【表4】

に示されるX線回折ピークを更に含む、該いずれか一態様記載のモレキュラーシーブ。
【0018】
5.総細孔容積(BET法による)が、0.5cm3/g以上、好ましくは0.55〜0.90cm3/gであり、
総比表面積(BET法による)が、450m2/g以上、好ましくは480〜680m2/gであり、
外部比表面積(BET法による)が、185m2/g以上、好ましくは200〜400m2/gであり、かつ
該外部比表面積が、該総比表面積の40%以上、好ましくは45〜65%を占める、該いずれか一態様記載のモレキュラーシーブ。
【0019】
6.MWWトポロジーの骨格構造を有し、その全結晶の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%が、厚さ約5nm(TEM法による)の薄片状結晶である、該いずれか一態様記載のモレキュラーシーブ。
【0020】
7.モレキュラーシーブを製造する方法であって、
結晶化条件において、第1の酸化物源、第2の酸化物源、アルカリ源、有機テンプレート、場合によるハロゲン源及び水を接触させて、モレキュラーシーブを得る工程;及び
場合により、得られた該モレキュラーシーブを焼成する工程
を含み、
該有機テンプレートは、第1の有機テンプレートと第2の有機テンプレートの組み合わせであり、
該第2の有機テンプレートに対する該第1の有機テンプレートのモル比は、0.1〜5.0、好ましくは0.3〜3.5、より好ましくは0.4〜1.5であり、
該第1の有機テンプレートは、1種以上のアザ単環式C5−15シクロアルカン(好ましくはC6−10シクロアルカン、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロデカン)、好ましくは、1種以上のモノアザ、ジアザ又はトリアザ単環式C5−15シクロアルカン(好ましくはC6−10シクロアルカン、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロデカン)、より好ましくは、1種以上の飽和単環式化合物であって、その環骨格が、下記式:
【化1】

のもの(数はn個)及び下記式:
【化2】

のもの(数はm個)
(式中、
及びRは、各々独立に、水素、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択されてよく、好ましくは、各々独立に、水素及びメチルからなる群より選択され、最も好ましくは水素であり、
は、水素を表し、
数値nは、4〜12の整数、好ましくは、5〜8の整数を表し、
数値mは、1〜3の整数、好ましくは1又は2を表す)
で作られており、より好ましくは、ヘキサメチレンイミン(C/N比6を有する)、ピペリジン(C/N比5を有する)、2−メチルピペリジン (C/N比5を有する)及びホモピペラジン(C/N比2.5を有する)からなる群より選択される1種以上であり、
該第2の有機テンプレートは、アザアレーン及び下記式(I):
【化3】

で示される化合物からなる群より選択される1種以上であり、
該式(I)中、R、R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル及びC5−12単環式シクロアルケニルからなる群より選択され、ただし、
(1)R、R及びRのうち、最大で1つは水素を表し、かつ
(2)R、R及びRのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)は、該C5−12単環式シクロアルキル又は該C5−12単環式シクロアルケニルであり、より好ましくは、R、R及びRのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)は、該C5−12単環式シクロアルキルであり、
該式(I)で示される化合物は、より好ましくは、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン(C/N比10を有する)、ジシクロヘキシルアミン(C/N比12を有する)及びN−メチルジシクロヘキシルアミン(C/N比13を有する)からなる群より選択される1種以上であり、
該アザアレーンは、アザC6−20アレーン(好ましくは、C6−14アレーン、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びフェナントレン)のうちの1種以上であり、その環骨格を構成する各窒素原子上に、場合により、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル、C5−12単環式シクロアルケニル及びC6−20アリールからなる群より選択される1個の置換基が更に存在し、
該アザアレーンは、好ましくは、モノアザ、ジアザ又はトリアザC6−20アレーン(好ましくは、C6−14アレーン、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びフェナントレン)のうちの1種以上であり、より好ましくは、キノリン(C/N比9を有する)、N−フェニルキノリン(C/N比15を有する)、N−シクロヘキシルピリジン(C/N比11を有する)及び6−メチルキノリン(C/N比9を有する)からなる群より選択される1種以上である、方法。
【0021】
8.該アザ単環式シクロアルカンが、2超、より好ましくは2.5以上のC/N比を有し、
該式(I)で示される化合物が、10以上、12以上又は13以上のC/N比を有し、
該アザアレーンが、9以上、10以上又は11以上のC/N比を有する、該いずれか一態様記載の方法。
【0022】
9.該第1の酸化物源(該第1の酸化物として計算)、該第2の酸化物源(該第2の酸化物として計算)、該アルカリ源、該有機テンプレート、該ハロゲン源及び水の間のモル比が、1:(0.0005〜0.05):(0.01〜0.3):(0.05〜1.4):(0〜0.5):(5〜100)、好ましくは1:(0.005〜0.04):(0.05〜0.2):(0.2〜1.0):(0〜0.3):(10〜40)であり、
該結晶化条件が、結晶化温度140〜180℃、好ましくは145〜170℃、結晶化時間1〜6日、好ましくは2〜5日を含み、かつ
該焼成の条件が、焼成温度300〜800℃、好ましくは400〜650℃、焼成時間1〜10時間、好ましくは3〜6時間を含む、該いずれか一態様記載の方法。
【0023】
10.該いずれか一態様記載のモレキュラーシーブ、又は該いずれか一態様記載の方法に従って製造されたモレキュラーシーブ:及び
バインダー
を含む、モレキュラーシーブ組成物。
【0024】
11.吸着剤、アルキル化触媒、オレフィン水和触媒、オレフィン酸化触媒、水素化分解触媒又はオレフィン異性化触媒としての、該いずれか一態様記載のモレキュラーシーブ、該いずれか一態様記載の方法に従って製造されたモレキュラーシーブ、又は該いずれか一態様記載のモレキュラーシーブ組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例I−1で製造されたSCM−1モレキュラーシーブ及び比較例I−1で製造されたMCM−22モレキュラーシーブのX線回折(XRD)パターンを示す。図1によれば、SCM−1モレキュラーシーブのXRDパターンにおいては、MCM−22モレキュラーシーブのそれと比較すると、d−間隔値21.04Å及び9.10Åのそれぞれに、明瞭な回折ピークが存在するが、d−間隔値30.00Å、8.83Å、6.00Å、4.92Å、4.64Å、3.20Å、3.10Å又は3.00Åにおいては、回折ピークが全く存在せず、d−間隔値4.20Å〜3.67Åの範囲にわたり、重なり合う回折ピークが存在する。
図2図2は、実施例II−1で製造されたSCM−2モレキュラーシーブ及び比較例II−1で製造されたMCM−22モレキュラーシーブのX線回折(XRD)パターンを示す。図2によれば、SCM−2モレキュラーシーブのXRDパターンにおいては、MCM−22モレキュラーシーブのそれと比較すると、d−間隔値13.84Å及び9.27Åに、明瞭な回折ピークが存在するが、d−間隔値30.00Å、6.00Å、4.92Å、4.64Å、3.20Å、3.10Å又は3.00Åにおいては、回折ピークが全く存在しない。
図3図3aは、実施例I−1で製造されたSCM−1モレキュラーシーブの薄片状結晶のTEM断面像を示す(薄片状結晶の厚さの測定を容易にするため、薄片状結晶の面でサイズが最小のものを観察した);図3bは、比較例I−1で製造されたMCM−22モレキュラーシーブの薄片状結晶のTEM断面像を示す(薄片状結晶の厚さの測定を容易にするため、薄片状結晶の面でサイズが最小のものを観察した)。図3aによれば、SCM−1モレキュラーシーブは、各々典型的なMWWトポロジーの構造を有する、2個の基本ビルディング層構造からできており、厚さは全体で約5nmしかない。図3bによれば、MCM−22モレキュラーシーブは多層構造を有し、層の数は5超であり、厚さは全体で約20nmである。
【0026】
技術的効果
本発明によるモレキュラーシーブは、MWWトポロジーの構造を有するが、その特定のXRD回折パターンが示すように、MCM−22モレキュラーシーブ又はITQ−2モレキュラーシーブとは層構造に関して有意に異なる。
【0027】
本発明によるモレキュラーシーブは、特定の「二重」基本ビルディング層構造を有するが、これは、MWWトポロジーの構造における12員環セミスーパーケージを可能な限り露出させ、また同時に、別個の層の間の、円筒形12員環スーパーケージを含む10員環細孔を保持しており、このことにより、触媒反応において、高い反応体変換能力(即ち、高い反応体変換率)並びに生成物の高い選択性及び良好な安定性の両者を示す。
【0028】
本発明によるモレキュラーシーブは、拡散により厳しく制限される反応(例えば、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転移反応)に関してさえもなお、ITQ−2モレキュラーシーブに比して、少なくともそれに匹敵するか、又はそれに勝る反応体変換能力を示す。
【0029】
本発明によるモレキュラーシーブは、安定な骨格構造を有し、炭素沈着への耐性において堅固であり(即ち、触媒反応における炭素沈着の傾向が低い)、このことにより、ITQ−2モレキュラーシーブに比して有意に延長された耐用期間を有する。
【0030】
本発明によるモレキュラーシーブは、失活した後で、高温での焼成により再生させることができ、この再生により、その触媒性能を新鮮触媒と同じレベルまで容易に回復させることができ、このことにより、所望の再生性能又はリサイクル性能を示す。
【0031】
本発明によるモレキュラーシーブを製造する方法は、単純化された製造手順、出発物質を容易に入手できること、より少ない運転工程数、温和な運転条件及びそれによるエネルギーと物質のより少ない消費を特徴とし、したがって工業的適用に非常に適している。
【0032】
本発明によるモレキュラーシーブを製造する方法は、より少ない運転工程数及びより少ない物質の損失を特徴とし、このことが、80%超、好ましくは90%以上、或いはほぼ100%にさえなるモレキュラーシーブ収率をもたらす。
【0033】
本発明によるモレキュラーシーブを製造する方法は、単純な結晶化系、温和な結晶化条件、単純かつ制御可能な結晶化手順を特徴とし、このことにより、目的とするモレキュラーシーブ生成物を、比較的高純度で、有害な不純物を気にすることなく得ることができる。
【0034】
本発明によるモレキュラーシーブは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、厚さが均等な(平均の厚さは約5nm)薄片状結晶として存在し、非結晶物(不純物としての)含有量が極めて低く(好ましくは10%以下、更には1%以下)、よって結晶純度が極めて高く、このことが、その触媒性能の十分な開発を促進する。
【0035】
本発明によるモレキュラーシーブにおいては、外部比表面積が、総比表面積の40%以上を占め、これはMCM−22モレキュラーシーブの場合(一般には約20%)よりも有意に高く、このことにより、MCM−22モレキュラーシーブよりも有意に優れた反応体変換能力を示す。
【0036】
本発明によるモレキュラーシーブは、特に、ベンゼンとエチレンの液相アルキル化反応、又はベンゼンとプロピレンの液相アルキル化反応に関して、優れた触媒性能を伴う所望の酸触媒能力を示す。
【0037】
本発明によるモレキュラーシーブは、ベンゼンのアルキル化反応を触媒する際に用いる場合、相対的に低い反応温度しか必要とせず、反応体変換率が高く、生成物の選択性が高く、運転が安定している。
【0038】
発明を実施するための具体的な形態
以降、次の具体的な実施態様を参照して本発明をより詳細に記載する。ただし、本発明の保護の範囲は、これらの具体的な実施態様に限定されると解されるべきではなく、むしろ添付された請求の範囲によって決められるべきであることに注意すべきである。
【0039】
本明細書において引用される全ての文書(相互参照された又は関連する、特許又は出願を含む)はここに、明示的に除外され又は他の形で限定されていない限り、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする。いかなる文書の引用も、その文書が、本明細書において開示若しくは請求されている任意の発明に関する従来技術であること、又は、その文書が、単独で、若しくは他の参考文献との組み合わせにおいて、任意のそのような発明を教示し、示唆し、又は開示していることの自白ではない。
【0040】
更に、本書におけるある用語の意味又は定義が、参照によって組み入れられた文書における同じ用語の意味又は定義と相反する限度までは(to the extent)、本書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が優先されなければならない(govern)。
【0041】
本明細書に関し、用語「ハロ」等はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0042】
本明細書に関し、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキルとしては、メチル、エチル又はプロピルを例示し得、C2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルとしては、ビニル、アリル又はプロペニルを例示し得る。
【0043】
本明細書に関し、モレキュラーシーブであって、その製造の間にその細孔に充填された、水及び金属イオン以外の任意の他の物質(例えば、有機テンプレート又はハロゲン)を、細孔から除去する前のものを、「前駆体」と称する。
【0044】
本明細書に関し、総比表面積とは、試料の単位質量当たりの総面積を指し、これには内部表面積と外部表面積が含まれる。ポルトランドセメント又はある種の粘土鉱物の粉末のように、無孔性物質は、外部表面積のみを有するが、石綿繊維、珪藻土又はモレキュラーシーブのように、多孔性物質は、外部表面積と内部表面積を有する。多孔性物質においては、直径2nm未満の細孔の表面積を内部表面積と称し、総表面積から内部表面積を減算して得られる表面積を外部表面積と称する。試料の単位質量当たりの外部表面積を、外部比表面積と称する。
【0045】
本明細書に関し、細孔容積とは、多孔性物質(例えばモレキュラーシーブ)の単位質量当たりの細孔の容積を指す。総細孔容積とは、モレキュラーシーブの単位質量当たりの全ての細孔(一般に、細孔径50nm未満の細孔のみを含める)の容積を指す。微細孔容積とは、モレキュラーシーブの単位質量当たりの全ての微細孔(一般に、細孔径2nm未満の細孔を指す)の容積を指す。
【0046】
本明細書に関し、モレキュラーシーブのXRDデータ中、w、m、s、vsは、回折ピークの強度を示し、wは「弱い」、mは「中程度」、sは「強い」、vsは「非常に強い」を指し、これは当該分野において周知である。一般に、wは20未満の値;mは20〜40の値;sは40〜70の値;vsは70超の値を示す。
【0047】
特に断らない限り、本明細書で言及するパーセント、部、比などは、いずれも重量基準である。
【0048】
本発明の第1の実施態様によれば、関連するのはSCM−1モレキュラーシーブである。このSCM−1モレキュラーシーブは、式「第1の酸化物・第2の酸化物」で示される実験化学組成を有する。モレキュラーシーブは時に(特に、その製造直後)、ある量の水を含んでいることが知られているが、水の有無は本モレキュラーシーブのXRDパターンを実質的に変化させないので、本発明では、この量がどれほどであり得るかを特定又は同定しない。このことに関し、該実験化学組成は、実際にはこのモレキュラーシーブの無水化学組成を示している。更に、該実験化学組成が、SCM−1モレキュラーシーブの骨格の化学組成を示していることは明らかである。
【0049】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブにおいて、該第2の酸化物に対する該第1の酸化物のモル比は、一般には20〜2000、好ましくは25〜200である。
【0050】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブにおいて、該第1の酸化物は、シリカ(SiO)及び酸化ゲルマニウムからなる群より選択される1種以上であり、シリカが好ましい(preference is given to silica)。
【0051】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブにおいて、該第2の酸化物は、アルミナ(Al)、酸化ホウ素、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化チタン、希土類酸化物、酸化インジウム及び酸化バナジウムからなる群より選択される1種以上であり、アルミナが好ましい。
【0052】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブは、実質的に下記表:
【表5】

に示されるX線回折パターンを有する。
【0053】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブのX線回折パターンは、好ましくは、実質的に下記表:
【表6】

に示されるX線回折ピークを更に含む。
【0054】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブは、多数の他の物質(特に、MCM−22モレキュラーシーブ)及びいくつかの多層物質とは完全に異なり、かつそれらと完全に区別される、新規な結晶構造を有している。先に述べたことであるが、XRDパターンが示す通り、SCM−1モレキュラーシーブのXRDパターンにおいては、d−間隔値21.04Å及び9.10Åの付近に、明瞭な回折ピークが存在するが、d−間隔値30.00Å、8.83Å、6.00Å、4.92Å、4.64Å、3.20Å、3.14Å又は2.99Åの付近には、回折ピークが全く存在せず、d−間隔値4.20Å〜3.67Åの範囲にわたり、重なり合う回折ピークが存在する。
【0055】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブの総細孔容積は、一般には0.5cm3/g以上、好ましくは0.55〜0.90cm3/gであり、ここで、微細孔容積は、一般には0.06cm3/g以上、好ましくは0.08〜0.20cm3/gである。
【0056】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブの総比表面積は、一般には450m2/g以上、好ましくは480〜680m2/gである。
【0057】
本発明の第1の実施態様によれば、SCM−1モレキュラーシーブの外部比表面積は、一般には185m2/g以上、好ましくは200〜400m2/gであり、かつ、該外部比表面積は、一般には該総比表面積の40%以上、好ましくは45〜65%を占める。
【0058】
本発明の第1の実施態様によれば、XRDパターンが示す通り、SCM−1モレキュラーシーブは、MWWトポロジーの骨格構造を有する。
【0059】
本発明の第1の実施態様によれば、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、SCM−1モレキュラーシーブの全結晶の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%が、厚さ約5nm(例えば、5±0.8nm)の薄片状結晶であり、このことにより、ほぼ純粋な結晶性モレキュラーシーブとして存在する。したがって、SCM−1モレキュラーシーブにおいては、非結晶物(不純物としての)が極めて低い含有量、例えば、一般には20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下という非結晶物含有量で含まれる。
【0060】
本発明の第2の実施態様によれば、関連するのはSCM−2モレキュラーシーブである。SCM−2モレキュラーシーブは、式「第1の酸化物・第2の酸化物」で示される実験化学組成(又は、骨格の化学組成)を有する。一般に、SCM−2モレキュラーシーブは、その製造直後、その組成に有機テンプレート及び水を更に含み得る(一般には、細孔に含まれ、又は充填されている)。このことに関し、SCM−2モレキュラーシーブは一般に、式「第1の酸化物・第2の酸化物・有機テンプレート・水」で示される実験化学組成を有し得る。
【0061】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブにおいて、該第2の酸化物に対する該第1の酸化物のモル比は、一般には20〜2000、好ましくは25〜200である。
【0062】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブにおいて、該第1の酸化物に対する該有機テンプレートの重量比は、一般には0.03〜0.38、好ましくは0.07〜0.27である。
【0063】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブにおいて、該第1の酸化物に対する水の重量比は、一般には0〜0.15、好ましくは0.02〜0.11である。
【0064】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブにおいて、該第1の酸化物は、シリカ及び酸化ゲルマニウムからなる群より選択される1種以上であり、シリカが好ましい。
【0065】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブにおいて、該第2の酸化物は、アルミナ、酸化ホウ素、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化チタン、希土類酸化物、酸化インジウム及び酸化バナジウムからなる群より選択される1種以上であり、アルミナが好ましい。
【0066】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブは、実質的に下記表:
【表7】

に示されるX線回折パターンを有する。
【0067】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブのX線回折パターンは、好ましくは、実質的に下記表:
【表8】

に示されるX線回折ピークを更に含む。
【0068】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブは、多数の他の物質(特に、MCM−22モレキュラーシーブ)及びいくつかの多層物質とは完全に異なり、かつそれらと完全に区別される、新規な結晶構造を有している。先に述べたことであるが、XRDパターンが示す通り、SCM−2モレキュラーシーブのXRDパターンにおいては、d−間隔値13.84Å及び9.27Å付近に、明瞭な回折ピークが存在するが、d−間隔値30.00Å、8.83Å、6.00Å、5.54Å、4.92Å、4.25Å、3.75Å、3.20Å又は3.14Å付近には、回折ピークが全く存在しない。
【0069】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブの総細孔容積は、一般には0.5cm3/g以上、好ましくは0.55〜0.90cm3/gであり、ここで、微細孔容積は、一般には0.06cm3/g以上、好ましくは0.08〜0.20cm3/gである。
【0070】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブの総比表面積は、一般には450m2/g以上、好ましくは480〜680m2/gである。
【0071】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブの外部比表面積は、一般には185m2/g以上、好ましくは200〜400m2/gであり、かつ、該外部比表面積は、一般には該総比表面積の40%以上、好ましくは45〜65%を占める。
【0072】
本発明の第2の実施態様によれば、該有機テンプレートとしては、以降において、本発明によるモレキュラーシーブを製造する方法に関連して記載されるものを例示し得る。具体的には、該有機テンプレートは、一般には第1の有機テンプレートと第2の有機テンプレートの組み合わせである。
【0073】
本発明によれば、該組み合わせにおいて、該第2の有機テンプレートに対する該第1の有機テンプレートのモル比は、一般には0.1〜5.0、好ましくは0.3〜3.5、より好ましくは0.4〜1.5である。
【0074】
本発明によれば、該第1の有機テンプレートは、アザ単環式シクロアルカンであってよい。「アザ単環式シクロアルカン」とは、有機化学における従来の様式で理解されるものであり、例えば、単環式シクロアルカンの環上の炭素原子を窒素原子で置換して得られる化合物、より具体的には、モノアザシクロヘキサン(ピペリジン)又は1,4−ジアザシクロヘプタン(ホモピペラジン)を指し得る。アザ単環式シクロアルカンとしては、モノアザ、ジアザ又はトリアザ単環式シクロアルカンを例示し得る。シクロアルカンとしては、C5−15シクロアルカンを例示し得るが、C6−10シクロアルカン、具体的には、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロデカンが好ましい。更に、該アザ単環式シクロアルカンの環骨格を構成する各炭素原子上には、場合により、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基が更に存在していてよい。該アザ単環式シクロアルカンとしては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0075】
本発明によれば、該アザ単環式シクロアルカンとして、飽和単環式化合物であって、その環骨格が、下記式:
【化4】

のもの(数は合計でn個)及び下記式:
【化5】

のもの(数は合計でm個)で作られているものを更に例示し得る。本明細書において、R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択され、好ましくは、各々独立に、水素及びメチルからなる群より選択され、最も好ましくは水素であり、そしてRは、水素を表す。数値nは、4〜12の整数、好ましくは、5〜8の整数を表す。数値mは、1〜3の整数、好ましくは1又は2を表す。該飽和単環式化合物としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0076】
本発明の好ましい実施態様によれば、該アザ単環式シクロアルカン又は該飽和単環式化合物において、環骨格を構成する窒素原子の総数に対する、環骨格を構成する炭素原子(即ち、存在する場合、置換基(例えば、前記R及びR)の炭素原子は含まない)の総数の比(即ち、C/N比)は、一般には2超、好ましくは2.5以上である。
【0077】
本発明によれば、該第1の有機テンプレートとして、具体的には、ヘキサメチレンイミン(C/N比6を有する)、ピペリジン(C/N比5を有する)、2−メチルピペリジン(C/N比5を有する)及びホモピペラジン(C/N比2.5を有する)を例示し得る。
【0078】
本発明によれば、該第2の有機テンプレートは、アザアレーン及び下記式(I):
【化6】

で示される化合物からなる群より選択される1種以上である。
【0079】
本発明によれば、該式(I)において、R、R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル及びC5−12単環式シクロアルケニルからなる群より選択される。C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキルとしては、C1−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル、C1−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル又はC1−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルを例示し得、具体的には、メチル、エチル、プロピル及びブチルを例示し得る。C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニルとしては、C2−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル、C2−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル又はC2−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニルを例示し得、具体的には、ビニル、プロペニル、アリル及びブテニルを例示し得る。C5−12単環式シクロアルキルとしては、C6−10単環式シクロアルキル又はC6−8単環式シクロアルキルを例示し得、具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルを例示し得るが、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが好ましい。該単環式シクロアルキルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基を、更に有していてよい。C5−12単環式シクロアルケニルとしては、C6−10単環式シクロアルケニル又はC6−8単環式シクロアルケニルを例示し得、具体的には、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタテトラエニル、シクロノネニル及びシクロデセニルを例示し得る。該単環式シクロアルケニルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基を、更に有していてよい。
【0080】
本発明によれば、該式(I)において、要件(1)は、R、R及びRのうち、最大で1つが水素を表すことであり、要件(2)は、R、R及びRのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)が、該C5−12単環式シクロアルキル及び該C5−12単環式シクロアルケニルから選択されることである。該要件(2)として、R、R及びRのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)が、該C5−12単環式シクロアルキルであることが、より好ましい。
【0081】
本発明の好ましい実施態様によれば、該式(I)で示される化合物において、窒素原子の総数に対する、炭素原子(存在する場合、置換基の炭素原子は含まない)の総数の比(即ち、C/N比)は、一般に、10以上、12以上又は13以上である。
【0082】
本発明によれば、該式(I)で示される化合物として、具体的には、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン(C/N比10を有する)、ジシクロヘキシルアミン(C/N比12を有する)及びN−メチルジシクロヘキシルアミン(C/N比13を有する)を例示し得る。
【0083】
本発明によれば、該式(I)で示される化合物として、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0084】
本発明によれば、「アザアレーン」とは、有機化学における従来の様式で理解されるものであり、例えば、アレーンの環上の炭素原子を窒素原子で置換して得られる化合物、具体的には、モノアザベンゼン(ピリジン)又はモノアザナフタレン(キノリン又はイソキノリン)を指し得る。アザアレーンとしては、モノアザ、ジアザ又はトリアザアレーンを例示し得る。該アレーンとしては、C6−20アレーンを例示し得るが、C6−14アレーン、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びフェナントレンが好ましい。該アザアレーンの環骨格を構成する各炭素原子上には、場合により、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)が更に存在していてよい。更に、該アザアレーンの環骨格を構成する各窒素原子上には、場合により、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル、C5−12単環式シクロアルケニル及びC6−20アリールからなる群より選択される(1個の)置換基(置換基Bと称する)が更に存在していてよい。C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキルとしては、C1−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル、C1−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル又はC1−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルを例示し得、具体的には、メチル、エチル、プロピル及びブチルを例示し得る。C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニルとしては、C2−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル、C2−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル又はC2−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニルを例示し得、具体的には、ビニル、プロペニル、アリル及びブテニルを例示し得る。C5−12単環式シクロアルキルとしては、C6−10単環式シクロアルキル又はC6−8単環式シクロアルキルを例示し得、具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルを例示し得るが、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが好ましい。該単環式シクロアルキルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)を、更に有していてよい。C5−12単環式シクロアルケニルとしては、C6−10単環式シクロアルケニル又はC6−8単環式シクロアルケニルを例示し得、具体的には、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタテトラエニル、シクロノネニル及びシクロデセニルを例示し得る。該単環式シクロアルケニルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)を、更に有していてよい。C6−20アリールとしては、C6−14アリール又はC6−10アリールを例示し得、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントレニルを例示し得る。該アリールは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)を、更に有していてよい。
【0085】
本発明の好ましい実施態様によれば、該アザアレーンにおいて、窒素原子の総数に対する、炭素原子(置換基A(存在する場合)の炭素原子は含まないが、置換基B(存在する場合)のそれは含む)の総数の比(即ち、C/N比)は、一般に、9以上、10以上又は11以上である。
【0086】
本発明によれば、該アザアレーンとして、具体的には、キノリン(C/N比9を有する)、N−フェニルキノリン(C/N比15を有する)、N−シクロヘキシルピリジン(C/N比11を有する)及び6−メチルキノリン(C/N比9を有する)を例示し得る。
【0087】
本発明によれば、該アザアレーンとして、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0088】
本発明の第2の実施態様によれば、XRDパターンが示す通り、SCM−2モレキュラーシーブは、MWWトポロジーの骨格構造を有する。
【0089】
本発明の第2の実施態様によれば、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、SCM−2モレキュラーシーブの全結晶の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%が、厚さ約5nm(例えば、5±0.8nm)の薄片状結晶であり、このことにより、ほぼ純粋な結晶性モレキュラーシーブとして存在する。
【0090】
本発明の第2の実施態様によれば、SCM−2モレキュラーシーブを焼成して、細孔に充填された有機テンプレートや水が存在すれば除去してもよく、このことにより、第1の実施態様のSCM−1モレキュラーシーブを得る。本明細書において、焼成は、当該分野において従来知られる任意の様式で行ってよく、例えば、焼成温度は、一般には300〜800℃、好ましくは400〜650℃であり、一方、焼成時間は、一般には1〜10時間、好ましくは3〜6時間である。更に、焼成は、一般には酸素含有雰囲気下、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行う。
【0091】
本発明によれば、製造に用いる出発物質によるが、該SCM−1モレキュラーシーブ又は該SCM−2モレキュラーシーブは、その組成に、一般に細孔に含まれ又は充填されている成分として、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属陽イオンのような、金属陽イオンを更に含有し得る。金属陽イオンの含有量は、例えば、該第1の酸化物に対する金属陽イオンの重量比が、一般には0〜0.02、好ましくは0.0002〜0.006であるような含有量であるが、これに限定されない。
【0092】
本発明によれば、製造に用いる出発物質によるが、該SCM−1モレキュラーシーブ又は該SCM−2モレキュラーシーブは、その組成に、一般に細孔に含まれ又は充填されている成分として、ハロゲンを更に含有し得る。ハロゲンの含有量は、例えば、該第1の酸化物に対するハロゲンの重量比が、一般には0〜0.15、好ましくは0〜0.03であるような含有量であってよいが、これに限定されない。
【0093】
本発明によれば、該SCM−1モレキュラーシーブ又は該SCM−2モレキュラーシーブは、以下の方法に従って製造し得る。このことに鑑みて、本発明は更に、モレキュラーシーブを製造する方法であって、結晶化条件において、第1の酸化物源、第2の酸化物源、アルカリ源、有機テンプレート及び水を接触させる工程(以降、接触工程と称する)を含む方法に関する。
【0094】
本発明によれば、該方法において、該接触工程は、当該分野において従来知られる任意の様式で行ってよく、該第1の酸化物源、該第2の酸化物源、該アルカリ源、該有機テンプレート及び水を混合し、次いで混合物を、結晶化条件において結晶化させる方法を例示し得る。
【0095】
本発明によれば、該方法において、該第1の酸化物源として、当該分野において従来この目的で用いられる任意の酸化物源を用いることができる。例えば、該第1の酸化物がシリカである場合、該第1の酸化物源として、ケイ酸、シリカゲル、シリカゾル、ケイ酸カリウム、水ガラス又はテトラアルコキシシランを例示し得る。該第1の酸化物が酸化ゲルマニウムである場合、該第1の酸化物源として、テトラアルコキシゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、硝酸ゲルマニウムを例示し得る。該第1の酸化物源としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0096】
本発明によれば、該方法において、該第2の酸化物源として、当該分野において従来この目的で用いられる任意の酸化物源を用いることができ、これには、該第2の酸化物中の金属の、対応する酸化物、水酸化物、アルコキシド、オキソ金属酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩、硫酸塩、ハロゲン化物及び硝酸塩が含まれるが、これらに限定されない。例えば、該第2の酸化物がアルミナである場合、該第2の酸化物源として、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム塩、カオリン又はモンモリロナイトを例示し得る。該第2の酸化物が酸化ホウ素である場合、該第2の酸化物源として、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂、Bを例示し得る。該第2の酸化物が酸化鉄である場合、該第2の酸化物源として、硝酸鉄(III)、塩化鉄(III)、酸化鉄(III)を例示し得る。該第2の酸化物が酸化ガリウムである場合、該第2の酸化物源として、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム、酸化ガリウムを例示し得る。該第2の酸化物が酸化チタンである場合、該第2の酸化物源として、テトラアルコキシチタン、チタニア、硝酸チタンを例示し得る。該第2の酸化物が希土類酸化物である場合、該第2の酸化物源として、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イットリウム、酸化セリウム、硝酸ランタン、硝酸ネオジム、硝酸イットリウム、硫酸アンモニウムセリウムを例示し得る。該第2の酸化物が酸化インジウムである場合、該第2の酸化物源として、塩化インジウム、硝酸インジウム、酸化インジウムを例示し得る。該第2の酸化物が酸化バナジウムである場合、該第2の酸化物源として、塩化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム、二酸化バナジウム、硫酸バナジルを例示し得る。該第2の酸化物源としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0097】
本発明によれば、該方法において、該アルカリ源として、当該分野において従来この目的で用いられる任意のアルカリ源を用いることができ、これには、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を陽イオンとして含有する無機アルカリ、特にNaOH及びKOHが含まれるが、これらに限定されない。該アルカリ源としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0098】
本発明によれば、該方法において、該有機テンプレートは、第1の有機テンプレートと第2の有機テンプレートの組み合わせであってよい。
【0099】
本発明によれば、該組み合わせにおいて、該第2の有機テンプレートに対する該第1の有機テンプレートのモル比は、一般には0.1〜5.0、好ましくは0.3〜3.5、より好ましくは0.4〜1.5である。
【0100】
本発明によれば、該第1の有機テンプレートは、アザ単環式シクロアルカンであってよい。「アザ単環式シクロアルカン」とは、有機化学における従来の様式で理解されるものであり、例えば、単環式シクロアルカンの環上の炭素原子を窒素原子で置換して得られる化合物、より具体的には、モノアザシクロヘキサン(ピペリジン)又は1,4−ジアザシクロヘプタン(ホモピペラジン)を指し得る。アザ単環式シクロアルカンとしては、モノアザ、ジアザ又はトリアザ単環式シクロアルカンを例示し得る。シクロアルカンとしては、C5−15シクロアルカンを例示し得るが、C6−10シクロアルカン、具体的には、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロデカンが好ましい。更に、該アザ単環式シクロアルカンの環骨格を構成する各炭素原子上には、場合により、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基が更に存在していてよい。該アザ単環式シクロアルカンとしては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0101】
本発明によれば、該アザ単環式シクロアルカンとして、飽和単環式化合物であって、その環骨格が、下記式:
【化7】

のもの(数は合計でn個)及び下記式:
【化8】

のもの(数は合計でm個)からできているものを更に例示し得る。本明細書において、R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択され、好ましくは、各々独立に、水素及びメチルからなる群より選択され、最も好ましくは水素であり、そしてRは、水素を表す。数値nは、4〜12の整数、好ましくは、5〜8の整数を表す。数値mは、1〜3の整数、好ましくは1又は2を表す。該飽和単環式化合物としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0102】
本発明の好ましい実施態様によれば、該アザ単環式シクロアルカン又は該飽和単環式化合物において、環骨格を構成する窒素原子の総数に対する、環骨格を構成する炭素原子(即ち、存在する場合、置換基(例えば、前記R及びR)の炭素原子は含まない)の総数の比(即ち、C/N比)は、一般には2超、好ましくは2.5以上である。
【0103】
本発明によれば、該第1の有機テンプレートとして、具体的には、ヘキサメチレンイミン(C/N比6を有する)、ピペリジン(C/N比5を有する)、2−メチルピペリジン(C/N比5を有する)及びホモピペラジン(C/N比2.5を有する)を例示し得る。
【0104】
本発明によれば、該第2の有機テンプレートは、アザアレーン及び下記式(I):
【化9】

で示される化合物からなる群より選択される1種以上である。
【0105】
本発明によれば、該式(I)において、R、R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル及びC5−12単環式シクロアルケニルからなる群より選択される。C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキルとしては、C1−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル、C1−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル又はC1−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルを例示し得、具体的には、メチル、エチル、プロピル及びブチルを例示し得る。C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニルとしては、C2−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル、C2−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル又はC2−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニルを例示し得、具体的には、ビニル、プロペニル、アリル及びブテニルを例示し得る。C5−12単環式シクロアルキルとしては、C6−10単環式シクロアルキル又はC6−8単環式シクロアルキルを例示し得、具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルを例示し得るが、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが好ましい。該単環式シクロアルキルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基を、更に有していてよい。C5−12単環式シクロアルケニルとしては、C6−10単環式シクロアルケニル又はC6−8単環式シクロアルケニルを例示し得、具体的には、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタテトラエニル、シクロノネニル及びシクロデセニルを例示し得る。該単環式シクロアルケニルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基を、更に有していてよい。
【0106】
本発明によれば、該式(I)において、要件(1)は、R、R及びRのうち、最大で1つが水素を表すことであり、要件(2)は、R、R及びRのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)が、該C5−12単環式シクロアルキル及び該C5−12単環式シクロアルケニルから選択されることである。該要件(2)として、R、R及びRのうち、少なくとも1つ(好ましくは、少なくとも2つ)が、該C5−12単環式シクロアルキルであることが、より好ましい。
【0107】
本発明の好ましい実施態様によれば、該式(I)で示される化合物において、窒素原子の総数に対する、炭素原子(存在する場合、置換基の炭素原子は含まない)の総数の比(即ち、C/N比)は、一般に、10以上、12以上又は13以上である。
【0108】
本発明によれば、該式(I)で示される化合物として、具体的には、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン(C/N比10を有する)、ジシクロヘキシルアミン(C/N比12を有する)及びN−メチルジシクロヘキシルアミン(C/N比13を有する)を例示し得る。
【0109】
本発明によれば、該式(I)で示される化合物として、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0110】
本発明によれば、「アザアレーン」とは、有機化学における従来の様式で理解されるものであり、例えば、アレーンの環上の炭素原子を窒素原子で置換して得られる化合物、具体的には、モノアザベンゼン(ピリジン)又はモノアザナフタレン(キノリン又はイソキノリン)を指し得る。アザアレーンとしては、モノアザ、ジアザ又はトリアザアレーンを例示し得る。該アレーンとしては、C6−20アレーンを例示し得るが、C6−14アレーン、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びフェナントレンが好ましい。該アザアレーンの環骨格を構成する各炭素原子上には、場合により、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)が更に存在していてよい。更に、該アザアレーンの環骨格を構成する各窒素原子上には、場合により、C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキル、C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニル、C5−12単環式シクロアルキル、C5−12単環式シクロアルケニル及びC6−20アリールからなる群より選択される(1個の)置換基(置換基Bと称する)が更に存在していてよい。C1−12直鎖状又は分岐鎖状アルキルとしては、C1−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル、C1−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル又はC1−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルキルを例示し得、具体的には、メチル、エチル、プロピル及びブチルを例示し得る。C2−12直鎖状又は分岐鎖状アルケニルとしては、C2−10直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル、C2−6直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニル又はC2−4直鎖状若しくは分岐鎖状アルケニルを例示し得、具体的には、ビニル、プロペニル、アリル及びブテニルを例示し得る。C5−12単環式シクロアルキルとしては、C6−10単環式シクロアルキル又はC6−8単環式シクロアルキルを例示し得、具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルを例示し得るが、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが好ましい。該単環式シクロアルキルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)を、更に有していてよい。C5−12単環式シクロアルケニルとしては、C6−10単環式シクロアルケニル又はC6−8単環式シクロアルケニルを例示し得、具体的には、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタテトラエニル、シクロノネニル及びシクロデセニルを例示し得る。該単環式シクロアルケニルは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)を、更に有していてよい。C6−20アリールとしては、C6−14アリール又はC6−10アリールを例示し得、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントレニルを例示し得る。該アリールは、場合により、1個以上(例えば、1〜5個、1〜3個又は1個)の、C1−4直鎖状又は分岐鎖状アルキル及びC2−4直鎖状又は分岐鎖状アルケニルからなる群より選択される置換基(以降、置換基Aと称する)を、更に有していてよい。
【0111】
本発明の好ましい実施態様によれば、該アザアレーンにおいて、窒素原子の総数に対する、炭素原子(置換基A(存在する場合)の炭素原子は含まないが、置換基B(存在する場合)のそれは含む)の総数の比(即ち、C/N比)は、一般に、9以上、10以上又は11以上である。
【0112】
本発明によれば、該アザアレーンとして、具体的には、キノリン(C/N比9を有する)、N−フェニルキノリン(C/N比15を有する)、N−シクロヘキシルピリジン(C/N比11を有する)及び6−メチルキノリン(C/N比9を有する)を例示し得る。
【0113】
本発明によれば、該アザアレーンとして、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0114】
本発明によれば、該方法において、必要であれば、更にハロゲン源を導入することが許容され、このことにより、モレキュラーシーブ生成物の組成にハロゲンが導入される。該ハロゲン源としては、無機ハロゲン源、具体的には、HF、NaCl、NHF、KF、又は有機ハロゲン源、具体的には、ハロC1−3アルカン、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ヨードメタンを例示し得る。該ハロゲン源としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。
【0115】
本発明によれば、該方法において、該第1の酸化物源(該第1の酸化物として計算)、該第2の酸化物源(該第2の酸化物として計算)、該アルカリ源、該有機テンプレート、該ハロゲン源及び水の間のモル比が、一般には1:(0.0005〜0.05):(0.01〜0.3):(0.05〜1.4):(0〜0.5):(5〜100)、好ましくは1:(0.005〜0.04):(0.05〜0.2):(0.2〜1.0):(0〜0.3):(10〜40)である。
【0116】
本発明によれば、該方法において、該結晶化条件が、結晶化温度140〜180℃、好ましくは145〜170℃、結晶化時間1〜6日、好ましくは2〜5日を含む。
【0117】
本発明によれば、該方法において、接触工程又は結晶化の完結時に、当該分野において従来知られる任意の分離方法を用いて、得られた反応混合物から、最終生成物としてモレキュラーシーブ(これは一般にはSCM−2モレキュラーシーブに対応しており、モレキュラーシーブ前駆体と称する場合もある)を単離してよい。分離方法としては、得られた反応混合物を濾過し、洗浄し、次いで乾燥させる方法を例示し得る。
【0118】
本発明によれば、該方法において、濾過、洗浄及び乾燥は、当該分野において従来知られる任意の様式で行うことができる。具体的には、濾過としては、得られた反応混合物を単純に吸引濾過する方法を例示し得る。洗浄としては、濾液がpH値7〜9、好ましくは8〜9に達するまで、脱イオン水で洗浄する方法を例示し得る。乾燥温度としては、40〜250℃の温度、好ましくは60〜150℃の温度を例示し得、乾燥時間としては、8〜30時間の時間、好ましくは10〜20時間の時間を例示し得る。乾燥は、常圧又は減圧下で行うことができる。
【0119】
本発明によれば、該方法において、必要であれば、得られたSCM−2モレキュラーシーブを焼成し、該有機テンプレート及び存在していれば水を除去してもよく、このことにより焼成されたモレキュラーシーブを得、一般にはこれが前記SCM−1モレキュラーシーブに対応している。
【0120】
本発明によれば、該方法において、焼成は、当該分野において従来知られる任意の様式で行うことができ、例えば、焼成温度は、一般には300〜800℃、好ましくは400〜650℃であり、一方、焼成時間は、一般には1〜10時間、好ましくは3〜6時間である。更に、焼成は、一般には酸素含有雰囲気下、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行う。
【0121】
本発明によれば、該SCM−1モレキュラーシーブ、該SCM−2モレキュラーシーブ又は本発明の方法に従って製造されたモレキュラーシーブ(これら全てを本発明によるモレキュラーシーブと称する)は、必要であれば、当該分野において従来知られる様式で、例えば、イオン交換又は溶液浸漬(これらの方法の詳細については、例えば、米国特許第3140249号及び米国特許第3140253号を参照)によって、イオン交換してもよく、これによって、その組成中の金属陽イオン(例えば、それがどのようにして製造されたかにもよるが、Naイオン又はKイオン)の全部又は一部を、他の陽イオンで置換する。他の陽イオンとしては、水素イオン、他のアルカリ金属イオン(Kイオン、Rbイオンを含む)、アンモニウムイオン(NHイオン、第4級アンモニウムイオン(例えば、テトラメチルアンモニウムイオン及びテトラエチルアンモニウムイオン)を含む)、アルカリ土類金属イオン(Mgイオン、Caイオンを含む)、Mnイオン、Znイオン、Cdイオン、貴金属イオン(Ptイオン、Pdイオン、Rhイオンを含む)、Niイオン、Coイオン、Tiイオン、Snイオン、Feイオン及び/又は希土類金属イオンを例示し得る。
【0122】
本発明によるモレキュラーシーブは、必要であれば、Si/Al比が高まるよう希酸溶液等で処理し、又は、モレキュラーシーブ結晶の酸浸食に対する耐性が高まるよう水蒸気で処理してもよい。
【0123】
本発明によれば、本方法は、モレキュラーシーブを製造するための従来の水熱プロセスの基本的な反応原理に従っており、そのため、ITQ−2モレキュラーシーブを製造する方法に比べると、より少ない運転工程数、単純化された結晶化系、温和な結晶化条件及び単純かつ制御可能な結晶化手順、そしてそれによるエネルギーと物質のより少ない消費(これは低い製造コストを示す)、一般には80%超、時には90%以上、又はほぼ100%にさえなる、有意に高いモレキュラーシーブ生成物収率を特徴とする。更に、本発明によるモレキュラーシーブは、極めて低下した不純物の含有量を特徴とし、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、製造直後のモレキュラーシーブ生成物(例えば、SCM−1モレキュラーシーブ又はSCM−2モレキュラーシーブ)の全結晶の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%が、厚さ約5nm(例えば、5±0.8nm)の薄片状結晶であり、このことにより、ほぼ純粋な結晶性モレキュラーシーブとして存在する。したがって、これらのモレキュラーシーブにおいては、非結晶物(不純物としての)が極めて低い含有量、例えば、一般には20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下という非結晶物含有量で含まれる。
【0124】
何らかの理論に結びついているわけではないが、本発明によるモレキュラーシーブは、その厚さが、MCM−22モレキュラーシーブを構成する基本ビルディング層構造のそれ(約2.5nm)の2倍であることから、「二重」基本ビルディング層構造を有すると考えられる。本モレキュラーシーブの二重基本ビルディング層構造は、「MWWトポロジーの構造における12員環セミスーパーケージを、10員環細孔を保持しつつ、可能な限り露出させる」という、以前の従来技術では決して達成されていないゴールが、本発明によってようやく達成されたほどの特徴的なものであり、従来技術では決して得られていない新規な構造であると確認せざるを得ないものである。
【0125】
本発明によれば、モレキュラーシーブの基本ビルディング層構造の中間に、種々の有機種(単一の種よりも)が同時に入るように、異なる有機テンプレートの特定の組み合わせを用い、このことが、本発明によるSCM−1モレキュラーシーブ又はSCM−2モレキュラーシーブと、従来技術のMCM−22モレキュラーシーブの間の微細構造の差の原因となっている。更に、X線回折(XRD)を用いてこれらのモレキュラーシーブそれぞれの特徴づけを行うと、先に考察したように、それらの間の微細構造の差が、XRDパターンにおける複数の回折ピークの差によって具体化されている。何らかの理論に結びついているわけではないが、これらの回折ピークの差(特に、c−軸方向の薄層(lamella)の重なり又は重なった厚さを特徴づけているそれらの回折ピーク)は、本発明によるモレキュラーシーブが、層構造に関してMCM−22モレキュラーシーブ又はITQ−2モレキュラーシーブとは異なるということを、明白に(expressively)示していると考えられる。更に、微細構造の差はまた、比表面積のような特性パラメータの差によって具体化されている。例えば、本発明によるモレキュラーシーブの外部比表面積は、一般には総比表面積の40%以上を占めており、これは、従来技術のMCM−22モレキュラーシーブのそれ(一般には約20%)よりも有意に高い。
【0126】
本発明によるモレキュラーシーブは、総比表面積及び外部比表面積が比較的大きく、したがって、例えば、気相又は液相で用いて、複数の成分でできている混合物から、少なくとも1つの成分を単離するための、吸着剤としての使用に特に適している。
【0127】
本発明によるモレキュラーシーブは、MWWトポロジーの構造における12員環セミスーパーケージを可能な限り露出させ、また同時に、10員環細孔を保持しており、したがって、高い反応体変換能力及び生成物の高い選択性の両者を示し得る、有機化合物変換反応における触媒としての使用に特に適している。有機化合物変換反応としては、エチルベンゼンを製造するための、ベンゼンとエチレンの液相アルキル化反応、イソプロピルベンゼンを製造するための、ベンゼンとプロピレンの液相アルキル化反応、ブテン異性化反応、ナフサクラッキング反応、エタノールとベンゼンのアルキル化反応、シクロヘキセン水和反応を例示し得る。触媒としては、アルキル化触媒、オレフィン水和触媒、オレフィン酸化触媒、水素化分解触媒又はオレフィン異性化触媒を例示し得る。
【0128】
本発明によるモレキュラーシーブは、拡散により厳しく制限される反応(例えば、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転移反応)に関してさえもなお、ITQ−2モレキュラーシーブに比して、少なくともそれに匹敵するか、又はそれに勝る反応体変換能力を示し得るものであり、このことにより、ITQ−2モレキュラーシーブの元々の利点を最大限に保持している。
【0129】
本発明によるモレキュラーシーブは、ベンゼンのアルキル化反応を触媒する際に用いる場合、相対的に低い反応温度しか必要とせず、反応体変換率が高く、生成物の選択性が高く、運転が安定している。
【0130】
本発明によるモレキュラーシーブは、安定な骨格構造を有し、炭素沈着への耐性において堅固であり(即ち、触媒反応における炭素沈着の傾向が低い)、したがって、延長された耐用期間で、活性を有意に損失することなく、触媒として機能し得る。
【0131】
本発明によるモレキュラーシーブは、失活した後で、高温での焼成により造作なく再生させることができ、この再生により、その触媒性能を実質的に新鮮触媒と同じレベルまで回復させることができる。本明細書において、焼成の条件は、以下を含む:焼成温度は、一般には300〜800℃、好ましくは400〜650℃であり、一方、焼成時間は、一般には1〜10時間、好ましくは3〜6時間である。更に、焼成は、一般には酸素含有雰囲気下、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行う。
【0132】
本発明によるモレキュラーシーブは、例えば、粉末、粒子又は成形物(例えば、細片(strip)、クローバー(clover))といった、任意の物理的形態で存在し得る。これらの物理的形態は、当該分野において従来知られる任意の様式で得ることができ、これについては特に限定されない。
【0133】
本発明によるモレキュラーシーブは、他の物質を合わせてよく、これによりモレキュラーシーブ組成物を得る。これらの他の物質としては、活性物質及び不活性物質を例示し得る。活性物質としては、合成ゼオライト及び天然ゼオライトを例示し得、不活性物質(一般にはバインダーと称する)としては、粘土、白土、シリカゲル及びアルミナを例示し得る。これらの他の物質としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。これらの他の物質の量としては、当該分野において従来用いられる任意の量を用いることができ、これについては特に限定されない。
【0134】
本発明によれば、本モレキュラーシーブ又はモレキュラーシーブ組成物は更に、触媒担体、又は触媒用の担体成分として用いてもよく、当該分野において従来知られる様式(例えば、溶液浸漬)で、これに活性成分が担持され得る。活性成分には、活性金属成分(Ni、Co、Mo、W又はCuを含む)、活性無機補助剤(例えば、F、P)及び有機化合物(例えば、有機酸又は有機アミン)が含まれるが、これらに限定されない。活性成分としては、1種、又は2種以上(それらの間の比は任意)の混合物を用いることができる。活性成分の量としては、従来の任意の量を特に限定なく用いることができる。
【0135】
本発明によれば、SCM−2モレキュラーシーブ、又はSCM−2モレキュラーシーブを含むモレキュラーシーブ組成物は一般に、吸着剤又は触媒としての使用の前に、焼成して細孔内に有機テンプレートや水が存在すれば除去する。本明細書において、焼成は、当該分野において従来知られる任意の様式で行ってよく、例えば、焼成温度は、一般には300〜800℃、好ましくは400〜650℃であり、一方、焼成時間は、一般には1〜10時間、好ましくは3〜6時間である。更に、焼成は、一般には酸素含有雰囲気下、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行う。
【0136】
実施例
以下の実施例は、本発明を限定するというよりも、本発明をより詳細に説明することを意図するものである。
【0137】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブの総細孔容積、微細孔容積、総比表面積及び外部比表面積は、窒素吸着−脱着法(即ち、BET法)により測定した。具体的には、物理吸着装置(例えば、TriStar 3000a physical adsorption instrument(Micromeritics Instrument Corp USA))を用いて、モレキュラーシーブの窒素物理吸着及び脱着等温線を得、次いでBETの式及びt−プロットの式を適用して計算を行った。SCM−1モレキュラーシーブについての試験条件は、試験温度−169℃で、試験前に、減圧下に300℃で10時間、モレキュラーシーブの前処理というものであり、一方、SCM−2モレキュラーシーブについての試験条件は、試験温度−169℃で、試験前に、空気雰囲気下に550℃で5時間、モレキュラーシーブの加熱処理、次いで減圧下に300℃で10時間、モレキュラーシーブの前処理というものである。
【0138】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブのX線回折(XRD)パターンは、X線粉末回折装置(例えば、D8 Advance powder diffractometer(Bruker Corporation Germany))にて、Cu−Kα線源及びニッケルフィルターを用いて標準的方法で測定した。
【0139】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブの透過型電子顕微鏡(TEM)写真は、透過型電子顕微鏡(例えば、G2F30 transmission electron microscope(FEI Corporation Holland)、作動電圧300kV)を用い、倍率100000倍で得た。
【0140】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブにおける、第2の酸化物に対する第1の酸化物のモル比は、誘導結合プラズマ原子発光分析(例えば、725-ES inductively coupled plasma atomic emission spectrometer(Varian Corporation USA))により測定した。
【0141】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブにおける、水の含有量又は有機テンプレートのそれは、熱重量分析(例えば、SDT Q600 simultaneous thermal analyzer(TA Corporation USA)を用い、酸素雰囲気下、25℃から開始して、加熱速度10℃/分で800℃に加熱して、試料の熱重量分析曲線を得る)により測定した。
【0142】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブの収率は、下記式:
[焼成後のモレキュラーシーブの総重量/第1の酸化物及び第2の酸化物の合計供給量]×100(%)
により計算した。
【0143】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブの結晶の厚さは、次のようにして測定した:透過型電子顕微鏡(例えば、G2F30 transmission electron microscope(FEI Corporation Holland)、作動電圧300kV)を用い、倍率100000倍で、無作為に選択した観察野について、モレキュラーシーブを観察し、この観察野内の、厚さ5±0.8nmの各薄片状結晶を同定してその厚さを測定し、次いでそれらの厚さの平均数を計算した。該操作を合計10回繰り返した。これら10個の平均数の平均を、結晶の厚さとした。
【0144】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブの相対結晶度は、次のようにして測定した:MCM−22モレキュラーシーブを参照物質とし、そのX線回折パターン中の、2θ=7.2°、25.0°及び26.0°付近の、MWWトポロジーの構造における特徴的な3本の回折ピークを同定し、これら3本の回折ピークの合計絶対ピーク強度をA(参照)と称し、試験モレキュラーシーブの対応する3本の回折ピークの合計絶対ピーク強度をBと称し、そして、試験モレキュラーシーブの相対結晶度を、(B/A)×100(%)として計算した。100%から相対結晶度を減ずることにより、この試験モレキュラーシーブの非結晶物含有量を得た。以下の実施例及び比較例において、比較例I−1で製造したMCM−22モレキュラーシーブを参照物質として用いた。
【0145】
以下の実施例及び比較例を含む本明細書に関し、モレキュラーシーブの耐用期間は、次のようにして測定した:同一の反応条件下で、同量のモレキュラーシーブを触媒として用い、同一の反応時間で連続して反応を行い、反応体変換率の低下が著しいほど、このモレキュラーシーブの耐用期間は短い。
【0146】
以下の実施例は、SCM−1モレキュラーシーブの製造を説明するものである。
【0147】
実施例I−1
まず、アルミン酸ナトリウム(Al43.0重量%、NaO 35.0重量%) 12.64gを水 362.40gに溶解し、次いで撹拌下に、以下の有機テンプレート:
ヘキサメチレンイミン水溶液(ヘキサメチレンイミン含有量80.0重量%) 39.68g、ジシクロヘキシルアミン 101.54g
を添加し、最後に、シリカゾル(シリカ含有量40.0重量%) 240gを添加し、ここで、出発物質間のモル比は次の通りであった:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.09
ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.2
ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.35
水/シリカ=18。
【0148】
得られたものを均一になるまで混合し、ステンレス反応器に入れ、次いで撹拌下、150℃で4日間結晶化させ、結晶化が完結したら、濾過・洗浄して乾燥させ、モレキュラーシーブ前駆体を得た。次いで、該前駆体を、空気雰囲気下に550℃で5時間焼成して、モレキュラーシーブを得た。
【0149】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−1に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に示す通りであり、そのTEM像は、図3aに示す通りであった。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.68cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は524m2・g-1であり、外部比表面積は248m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の47.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比29.3であり、モレキュラーシーブ収率92%、結晶の厚さ5.4nm、相対結晶度92.2%、非結晶物含有量7.8%であることが明らかになった。
【0150】
【表9】
【0151】
実施例I−2
まず、アルミン酸ナトリウム(Al43.0重量%、NaO 35.0重量%) 12.64gを水 362.40gに溶解し、次いで撹拌下に、以下の有機テンプレート:
ヘキサメチレンイミン水溶液(ヘキサメチレンイミン含有量80.0重量%) 39.68g、ジシクロヘキシルアミン 145.06g
を添加し、最後に、シリカゾル(シリカ含有量40.0重量%) 240gを添加し、ここで、出発物質間のモル比は次の通りであった:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.09
ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.2
ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.50
水/シリカ=18。
【0152】
得られたものを均一になるまで混合し、ステンレス反応器に入れ、次いで撹拌下、150℃で108時間結晶化させ、結晶化が完結したら、濾過・洗浄して乾燥させ、モレキュラーシーブ前駆体を得て、次いで、該前駆体を、空気雰囲気下に550℃で5時間焼成して、モレキュラーシーブを得た。
【0153】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−2に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.76cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は533m2・g-1であり、外部比表面積は257m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の48.2%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比28.6であり、モレキュラーシーブ収率82%、結晶の厚さ5.1nm、相対結晶度81.9%、非結晶物含有量18.1%であることが明らかになった。
【0154】
【表10】
【0155】
実施例I−3
シリカ/アルミナ=100、NaOH/シリカ=0.20、ホモピペラジン/シリカ=0.35、ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.20、水/シリカ=20とし、150℃で72時間結晶化させた以外は、実施例I−1と同様にした。
【0156】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−3に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.88cm3g-1であり、微細孔容積は0.13cm3g-1であり、総比表面積は583m2・g-1であり、外部比表面積は313m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の53.7%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比90.5であり、モレキュラーシーブ収率81%、結晶の厚さ5.6nm、相対結晶度84.4%、非結晶物含有量15.6%であることが明らかになった。
【0157】
【表11】
【0158】
実施例I−4
シリカ/アルミナ=50、NaOH/シリカ=0.07、ホモピペラジン/シリカ=0.33、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン/シリカ=0.50とし、150℃で3日間結晶化させた以外は、実施例I−1と同様にした。
【0159】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−4に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.80cm3g-1であり、微細孔容積は0.11cm3g-1であり、総比表面積は511m2・g-1であり、外部比表面積は224m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の43.8%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比46.1であり、モレキュラーシーブ収率85%、結晶の厚さ5.1nm、相対結晶度77.9%、非結晶物含有量22.1%であることが明らかになった。
【0160】
【表12】
【0161】
実施例I−5
シリカ/アルミナ=26、KOH/シリカ=0.25、ヘキサメチレンイミン/シリカ=1.0、N−メチルジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.60、水/シリカ=16とし、150℃で30時間結晶化させた以外は、実施例I−1と同様にした。
【0162】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−5に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.66cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は501m2・g-1であり、外部比表面積は232m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の46.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比26.3であり、モレキュラーシーブ収率85%、結晶の厚さ5.7nm、相対結晶度85.7%、非結晶物含有量14.3%であることが明らかになった。
【0163】
【表13】
【0164】
実施例I−6
シリカ/アルミナ=40、KOH/シリカ=0.2、ピペリジン/シリカ=0.8、キノリン/シリカ=0.65、水/シリカ=17とし、150℃で60時間結晶化させた以外は、実施例I−1と同様にした。
【0165】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−6に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.62cm3g-1であり、微細孔容積は0.13cm3g-1であり、総比表面積は496m2・g-1であり、外部比表面積は227m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の45.8%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比39.7であり、モレキュラーシーブ収率89%、結晶の厚さ5.5nm、相対結晶度92.7%、非結晶物含有量7.3%であることが明らかになった。
【0166】
【表14】
【0167】
実施例I−7
シリカ/アルミナ=40、KOH/シリカ=0.2、ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.2、ピペリジン/シリカ=0.2、ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.4、水/シリカ=19とし、150℃で4日間結晶化させた以外は、実施例I−1と同様にした。
【0168】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−7に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.71cm3g-1であり、微細孔容積は0.14cm3g-1であり、総比表面積は561m2・g-1であり、外部比表面積は271m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の48.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比39.0であり、モレキュラーシーブ収率88%、結晶の厚さ5.5nm、相対結晶度89.8%、非結晶物含有量10.2%であることが明らかになった。
【0169】
【表15】
【0170】
実施例I−8
シリカ/アルミナ=40、KOH/シリカ=0.12、ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.23、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン/シリカ=0.35、ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.05、水/シリカ=19とし、150℃で80時間結晶化させた以外は、実施例I−1と同様にした。
【0171】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表I−8に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.75cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は518m2・g-1であり、外部比表面積は240m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の46.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比40.4であり、モレキュラーシーブ収率81%、結晶の厚さ5.3nm、相対結晶度82.9%、非結晶物含有量17.1%であることが明らかになった。
【0172】
【表16】
【0173】
実施例I−9
実施例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0174】
上記のようにして製造した触媒 0.3gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとエチレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:エチレン重量空間速度3.0h-1、エチレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度205℃、反応圧力3.5MPa。運転を24時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率98%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)90.6%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)9.0%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.2%、残りは副生物。運転を120時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率90%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)88.1%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)9.3%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%、残りは副生物。運転を10日間続けると、エチレン変換率は80%以下に低下し、そこで触媒を取り出すと、黒色の外観となっており、再生を行うため空気雰囲気下に550℃で5時間焼成した。再生触媒を、前記反応条件下で、ベンゼンとエチレンの液相アルキル化反応に再利用した。運転を24時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率97%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)90.3%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)9.1%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%、残りは副生物。このことは、触媒の活性が新鮮触媒と同じレベルまで回復したことを示すものである。
【0175】
実施例I−10
実施例I−2で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0176】
上記のようにして製造した触媒 0.3gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとエチレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:エチレン重量空間速度5.0h-1、エチレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度195℃、反応圧力3.5MPa。運転を24時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率98%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)93.6%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)5.9%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.1%、残りは副生物。
【0177】
実施例I−11
実施例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0178】
上記のようにして製造した触媒 0.3gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとプロピレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:プロピレン重量空間速度5.0h-1、プロピレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度170℃、反応圧力3.0MPa。運転を30時間続けると、反応結果は以下の通りである:プロピレン変換率97%、イソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)85%、ジイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)14.3%、トリイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)0.4%、残りは副生物。運転を120時間続けると、反応結果は以下の通りである:プロピレン変換率91%、イソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)83.2%、ジイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)15.1%、トリイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%、残りは副生物。
【0179】
実施例I−12
実施例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させた。次いで、乾燥させた試料を打錠(圧力15MPa)し、篩過して20〜40メッシュの生成物を試料として回収し、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0180】
シクロヘキサノンオキシム 0.1g、ベンゾニトリル(benzontrile) 10g(溶媒として)及び上記のようにして製造した触媒 0.1gを、還流冷却器を取り付けた50mLフラスコに順次添加し、130℃で2時間反応させて、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転移反応を行った。反応結果は以下の通りである:シクロヘキサノンオキシム変換率67.3%、カプロラクタムに対する選択性79.5%。
【0181】
実施例I−13
実施例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いで、乾燥させた試料を打錠(圧力15MPa)し、篩過して20〜40メッシュの生成物を試料として回収し、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0182】
上記のようにして製造した触媒 0.1gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでビフェニルとプロピレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:ビフェニル流速1.36mol/h、プロピレンに対するビフェニルのモル比4.0、反応温度250℃。運転を10分間続けると、ビフェニル変換率は3.7%であった。運転を2時間続けると、ビフェニル変換率はほぼ0に低下した。触媒を取り出し、再生を行うため空気雰囲気下に550℃で5時間焼成し、再生触媒を、前記反応条件下で、ビフェニルとプロピレンのアルキル化反応に再利用した。運転を10分間続けると、ビフェニル変換率は3.6%であり、このことは、触媒の活性が新鮮触媒と同じレベルまで回復したことを示すものである。
【0183】
比較例I−1
米国特許第4954325号の実施例1と同様にして、MCM−22モレキュラーシーブを製造した。製造したMCM−22モレキュラーシーブのXRDスペクトルデータは、表I−9に示す通りであり、そのXRDパターンは、図1に示す通りであり、そのTEM像は、図3bに示す通りであった。該MCM−22モレキュラーシーブに関する測定により、総細孔容積は0.46cm3g-1であり、微細孔容積は0.18cm3g-1であり、総比表面積は485m2・g-1であり、外部比表面積は120m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の24.7%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比29.1であり、相対結晶度100.0%、非結晶物含有量0.0%であることが明らかになった。
【0184】
【表17】
【0185】
比較例I−2
テンプレートが、単一種のテンプレート:ピペリジンであり、かつ次のようにした以外は、実施例I−1と同様にした:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.15
ピペリジン/シリカ=0.2
水/シリカ=18。
【0186】
製造したモレキュラーシーブのXRDスペクトルデータは、表I−10に示す通りである。そのXRDパターンは、図1とは全く異なる。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.13cm3g-1であり、微細孔容積は0.10cm3g-1であり、総比表面積は285m2・g-1であり、外部比表面積は31m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の10.9%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比28.1であることが明らかになった。
【0187】
【表18】

【0188】
比較例I−3
テンプレートが、単一種のテンプレート:ジシクロヘキシルアミンであり、かつ次のようにした以外は、実施例I−1と同様にした:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.09
ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.35
水/シリカ=18。
【0189】
得られた生成物のXRDパターンには、明瞭な回折ピークが観察されなかった。
【0190】
比較例I−4
焼成工程を省略し、このことによりMCM−22モレキュラーシーブ前駆体を得た以外は、米国特許第4954325号の実施例1と同様にして、MCM−22モレキュラーシーブを製造した。該モレキュラーシーブ前駆体 100g(水及び有機物を除去した後における熱重量損失が18.8%であり、その結果、実際の前駆体の重量は81.2gとなる)及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMABr) 570gを秤量し、25重量%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)水溶液 1000g及び水 1400gからなる溶液にこれを添加し、80℃の一定温度で16時間撹拌し、1時間超音波処理し、次いで、10重量%硝酸溶液を用いて、pH値が2以下になるまで調整した。そして、得られた混合物を洗浄してあらゆる界面活性剤を除去し、次いで遠心分離して固体を得た。乾燥後、該固体を空気雰囲気下に550℃で6時間焼成して、有機物を除去した。得られたITQ−2モレキュラーシーブのXRDスペクトルデータは、表I−11に示す通りであった。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.82cm3g-1であり、微細孔容積は0.02cm3g-1であり、総比表面積は750m2g-1であり、外部比表面積は675m2g-1であり、外部比表面積は総比表面積の90.0%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比31.8であり、生成物重量35g(生成物収率43.1%)、結晶の厚さ2.5nm、相対結晶度52.5%、非結晶物含有量47.5%であることが明らかになった。
【0191】
【表19】
【0192】
比較例I−5
比較例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0193】
上記のようにして製造した触媒 0.3gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとエチレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:エチレン重量空間速度3.0h-1、エチレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度205℃、反応圧力3.5MPa。運転を24時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率92.2%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)92.6%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)7.1%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%。運転を120時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率80.5%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)85.5%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)10.6%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.4%、残りは副生物。運転を10日間続けると、エチレン変換率は70%以下に低下し、そこで触媒を取り出すと、黒色の外観となっており、そこで、再生を行うため空気雰囲気下に550℃で5時間焼成した。再生触媒を、前記反応条件下で、ベンゼンとエチレンの液相アルキル化反応に再利用した。運転を24時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率91.4%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)87.3%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)7.4%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%、残りは副生物。
【0194】
比較例I−6
比較例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0195】
上記のようにして製造した触媒 0.3gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとプロピレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:プロピレン重量空間速度5.0h-1、プロピレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度170℃、反応圧力3.0MPa。運転を30時間続けると、反応結果は以下の通りである:プロピレン変換率93%、イソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)83%、ジイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)15.6%、トリイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)0.4%、残りは副生物。運転を120時間続けると、反応結果は以下の通りである:プロピレン変換率85%、イソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)81.3%、ジイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)15.9%、トリイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)0.4%、残りは副生物。
【0196】
比較例I−7
比較例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いで、乾燥させた試料を打錠(圧力15MPa)し、篩過して20〜40メッシュの生成物を試料として回収し、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0197】
シクロヘキサノンオキシム 0.1g、ベンゾニトリル 10g(溶媒として)及び上記のようにして製造した触媒 0.1gを、還流冷却器を取り付けた50mLフラスコに順次添加し、130℃で2時間反応させて、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転移反応を行った。反応結果は以下の通りである:シクロヘキサノンオキシム変換率36.9%、カプロラクタムに対する選択性77.2%。
【0198】
比較例I−8
比較例I−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させた。次いで、乾燥させた試料を打錠(圧力15MPa)し、篩過して20〜40メッシュの生成物を試料として回収し、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0199】
上記のようにして製造した触媒 0.1gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでビフェニルとプロピレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:ビフェニル流速1.36mol/h、プロピレンに対するビフェニルのモル比4.0、反応温度250℃。運転を10分間続けると、ビフェニル変換率は1.9%であった。運転を2時間続けると、ビフェニル変換率はほぼ0に低下した。触媒を取り出し、再生を行うため空気雰囲気下に550℃で5時間焼成した。再生触媒を、前記反応条件下で、ビフェニルとプロピレンのアルキル化反応に再利用した。運転を10分間続けると、ビフェニル変換率は1.8%であった。
【0200】
比較例I−9
比較例I−4で製造されたモレキュラーシーブ 25gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 10gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0201】
上記のようにして製造した触媒 0.3gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとエチレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:エチレン重量空間速度3.0h-1、エチレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度205℃、反応圧力3.5MPa。運転を24時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率71.6%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)85.8%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)13.7%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%、残りは副生物。運転を120時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率57.3%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)87.5%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)11.6%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.4%、残りは副生物。運転を10日間続けると、エチレン変換率は40%以下に低下した。触媒を取り出すと、黒色の外観となっており、再生を行うため空気雰囲気下に550℃で5時間焼成した。再生触媒を、前記反応条件下で、ベンゼンとエチレンの液相アルキル化反応に再利用した。運転を24時間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率62.4%で、活性は劇的に低下し、このことは、触媒の活性が新鮮触媒と同じレベルまで回復し得なかったことを示すものである。
【0202】
比較例I−10
比較例I−4で製造されたモレキュラーシーブ 25gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 10gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0203】
上記のようにして製造した触媒 0.3gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとプロピレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:プロピレン重量空間速度5.0h-1、プロピレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度170℃、反応圧力3.0MPa。運転を30時間続けると、反応結果は以下の通りである:プロピレン変換率74%、イソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)87%、ジイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)12.1%、トリイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%、残りは副生物。運転を120時間続けると、反応結果は以下の通りである:プロピレン変換率61%、イソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)87.3%、ジイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)11.9%、トリイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)0.3%、残りは副生物。
【0204】
比較例I−11
比較例I−4で製造されたモレキュラーシーブ 8gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させた。次いで、乾燥させた試料を打錠(圧力15MPa)し、篩過して20〜40メッシュの生成物を試料として回収し、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0205】
シクロヘキサノンオキシム 0.1g、ベンゾニトリル 10g(溶媒として)及び上記のようにして製造した触媒 0.1gを、還流冷却器を取り付けた50mLフラスコに順次添加し、130℃で2時間反応させて、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転移反応を行った。反応結果は以下の通りである:シクロヘキサノンオキシム変換率65.5%、カプロラクタムに対する選択性79.1%。
【0206】
比較例I−12
比較例I−4で製造されたモレキュラーシーブ 8gを秤量し、濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させた。次いで、乾燥させた試料を打錠(圧力15MPa)し、篩過して20〜40メッシュの生成物を試料として回収し、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0207】
上記のようにして製造した触媒 0.1gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでビフェニルとプロピレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:ビフェニル流速1.36mol/h、プロピレンに対するビフェニルのモル比4.0、反応温度250℃。運転を10分間続けると、ビフェニル変換率は4%であった。運転を2時間続けると、ビフェニル変換率はほぼ0に低下した。触媒を取り出し、再生を行うため空気雰囲気下に550℃で5時間焼成した。再生触媒を、前記反応条件下で、ビフェニルとプロピレンのアルキル化反応に再利用した。運転を10分間続けると、ビフェニル変換率は2.8%で、活性は劇的に低下し、このことは、触媒の活性が新鮮触媒と同じレベルまで回復し得なかったことを示すものである。
【0208】
以下の実施例は、SCM−2モレキュラーシーブの製造を説明するものである。
【0209】
実施例II−1
まず、アルミン酸ナトリウム(Al43.0重量%、NaO 35.0重量%) 12.64gを水 362.40gに溶解し、次いで撹拌下に、以下の有機テンプレート:
ヘキサメチレンイミン水溶液(ヘキサメチレンイミン含有量80.0重量%) 39.68g、ジシクロヘキシルアミン 101.54g
を添加し、最後に、シリカゾル(シリカ含有量40.0重量%) 240gを添加し、ここで、出発物質間のモル比は次の通りであった:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.09
ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.2
ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.35
水/シリカ=18。
【0210】
得られたものを均一になるまで混合し、ステンレス反応器に入れ、次いで撹拌下、150℃で4日間結晶化させ、結晶化が完結したら、濾過・洗浄して乾燥させ、モレキュラーシーブを得た。
【0211】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−1に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に示す通りであった。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.68cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は524m2・g-1であり、外部比表面積は248m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の47.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比29.3、水/シリカ重量比0.07、有機テンプレート/シリカ重量比0.15であり、モレキュラーシーブ収率92%、結晶の厚さ5.4nmであることが明らかになった。
【0212】
【表20】
【0213】
実施例II−2
まず、アルミン酸ナトリウム(Al43.0重量%、NaO 35.0重量%) 12.64gを水 362.40gに溶解し、次いで撹拌下に、以下の有機テンプレート:
ヘキサメチレンイミン水溶液(ヘキサメチレンイミン含有量80.0重量%) 39.68g、ジシクロヘキシルアミン 145.06g
を添加し、最後に、シリカゾル(シリカ含有量40.0重量%) 240gを添加し、ここで、出発物質間のモル比は次の通りであった:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.09
ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.2
ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.50
水/シリカ=18。
【0214】
得られたものを均一になるまで混合し、ステンレス反応器に入れ、次いで撹拌下、150℃で108時間結晶化させ、結晶化が完結したら、濾過・洗浄して乾燥させ、モレキュラーシーブを得た。
【0215】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−2に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.76cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は533m2・g-1であり、外部比表面積は257m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の48.2%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比28.6、水/シリカ重量比0.06、有機テンプレート/シリカ重量比0.17であり、モレキュラーシーブ収率82%、結晶の厚さ5.1nmであることが明らかになった。
【0216】
【表21】
【0217】
実施例II−3
シリカ/アルミナ=100、NaOH/シリカ=0.20、ホモピペラジン/シリカ=0.35、ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.2、水/シリカ=20とし、150℃で72時間結晶化させた以外は、実施例II−1と同様にした。
【0218】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−3に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.88cm3g-1であり、微細孔容積は0.13cm3g-1であり、総比表面積は583m2・g-1であり、外部比表面積は313m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の53.7%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比90.5、水/シリカ重量比0.05、有機テンプレート/シリカ重量比0.15であり、モレキュラーシーブ収率81%、結晶の厚さ5.6nmであることが明らかになった。
【0219】
【表22】
【0220】
実施例I−4
シリカ/アルミナ=50、NaOH/シリカ=0.07、ホモピペラジン/シリカ=0.33、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン/シリカ=0.50、水/シリカ=24とし、150℃で3日間結晶化させた以外は、実施例II−1と同様にした。
【0221】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−4に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.80cm3g-1であり、微細孔容積は0.11cm3g-1であり、総比表面積は511m2・g-1であり、外部比表面積は224m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の43.8%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比46.1、水/シリカ重量比0.06、有機テンプレート/シリカ重量比0.16であり、モレキュラーシーブ収率85%、結晶の厚さ5.1nmであることが明らかになった。
【0222】
【表23】
【0223】
実施例II−5
シリカ/アルミナ=26、KOH/シリカ=0.25、ヘキサメチレンイミン/シリカ=1.0、N−メチルジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.60、水/シリカ=16とし、150℃で30時間結晶化させた以外は、実施例II−1と同様にした。
【0224】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−5に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.66cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は501m2・g-1であり、外部比表面積は232m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の46.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比26.3、水/シリカ重量比0.05、有機テンプレート/シリカ重量比0.18であり、モレキュラーシーブ収率85%、結晶の厚さ5.7nmであることが明らかになった。
【0225】
【表24】
【0226】
実施例II−6
シリカ/アルミナ=40、KOH/シリカ=0.2、ピペリジン/シリカ=0.8、キノリン/シリカ=0.65、水/シリカ=17とし、150℃で60時間結晶化させた以外は、実施例II−1と同様にした。
【0227】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−6に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.62cm3g-1であり、微細孔容積は0.13cm3g-1であり、総比表面積は496m2・g-1であり、外部比表面積は227m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の45.8%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比39.7、水/シリカ重量比0.07、有機テンプレート/シリカ重量比0.17であり、モレキュラーシーブ収率89%、結晶の厚さ5.5nmであることが明らかになった。
【0228】
【表25】
【0229】
実施例II−7
シリカ/アルミナ=40、KOH/シリカ=0.2、ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.2、ピペリジン/シリカ=0.2、ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.4、水/シリカ=19とし、150℃で4日間結晶化させた以外は、実施例II−1と同様にした。
【0230】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−7に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.71cm3g-1であり、微細孔容積は0.14cm3g-1であり、総比表面積は561m2・g-1であり、外部比表面積は271m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の48.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比39.0、水/シリカ重量比0.07、有機テンプレート/シリカ重量比0.16であり、モレキュラーシーブ収率88%、結晶の厚さ5.5nmであることが明らかになった。
【0231】
【表26】
【0232】
実施例II−8
シリカ/アルミナ=40、KOH/シリカ=0.12、ヘキサメチレンイミン/シリカ=0.23、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン/シリカ=0.35、ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.05、水/シリカ=19とし、150℃で80時間結晶化させた以外は、実施例II−1と同様にした。
【0233】
モレキュラーシーブ生成物のXRDスペクトルデータは、表II−8に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に類似している。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.75cm3g-1であり、微細孔容積は0.12cm3g-1であり、総比表面積は518m2・g-1であり、外部比表面積は240m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の46.3%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比40.4、水/シリカ重量比0.06、有機テンプレート/シリカ重量比0.15であり、モレキュラーシーブ収率81%、結晶の厚さ5.3nmであることが明らかになった。
【0234】
【表27】
【0235】
実施例II−9
実施例II−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、空気又は酸素雰囲気下に550℃で5時間加熱し、次いで濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0236】
上記のようにして製造した触媒 1.0gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとエチレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:エチレン重量空間速度3.0h-1、エチレンに対するベンゼンのモル比2.0、反応温度205℃、反応圧力3.0MPa。運転を4日間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率98%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)90.6%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)9.0%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.2%、残りは副生物。
【0237】
実施例II−10
実施例II−2で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、空気又は酸素雰囲気下に550℃で5時間加熱し、次いで濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0238】
上記のようにして製造した触媒 1.0gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとエチレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:エチレン重量空間速度5.0h-1、エチレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度195℃、反応圧力3.5MPa。運転を5日間続けると、反応結果は以下の通りである:エチレン変換率98%、エチルベンゼンに対する選択性(重量)93.6%、ジエチルベンゼンに対する選択性(重量)5.9%、トリエチルベンゼンに対する選択性(重量)0.1%、残りは副生物。
【0239】
実施例II−11
実施例II−1で製造されたモレキュラーシーブ 50gを秤量し、空気又は酸素雰囲気下に550℃で5時間加熱し、次いで濃度1mol/Lの硝酸アンモニウム溶液で4回交換処理し、濾過し乾燥させ、次いでアルミナ 20gと十分に混合し、次いで5重量%の硝酸を添加し、混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出成型し、次いで120℃で乾燥させ、空気雰囲気下に520℃で6時間焼成して、所望の触媒を製造した。
【0240】
上記のようにして製造した触媒 1.0gを秤量して固定床反応器に装填し、次いでベンゼンとプロピレンの混合物を導入した。反応条件は以下の通りである:プロピレン重量空間速度5.0h-1、プロピレンに対するベンゼンのモル比3.0、反応温度170℃、反応圧力3.0MPa。運転を48時間続けると、反応結果は以下の通りである:プロピレン変換率97%、イソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)85%、ジイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)14.3%、トリイソプロピルベンゼンに対する選択性(重量)0.4%、残りは副生物。
【0241】
比較例II−1
米国特許第4954325号の実施例1と同様にして、MCM−22モレキュラーシーブを製造した。製造したMCM−22モレキュラーシーブのXRDスペクトルデータは、表II−9に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2に示す通りであった。該MCM−22モレキュラーシーブに関する測定により、総細孔容積は0.46cm3g-1であり、微細孔容積は0.18cm3g-1であり、総比表面積は485m2・g-1であり、外部比表面積は120m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の24.7%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比29.1であることが明らかになった。
【0242】
【表28】
【0243】
比較例II−2
テンプレートが、単一種のテンプレート:ピペリジンであり、かつ次のようにした以外は、実施例II−1と同様にした:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.15
ピペリジン/シリカ=0.2
水/シリカ=18。
【0244】
製造したモレキュラーシーブのXRDスペクトルデータは、表II−10に示す通りであり、そのXRDパターンは、図2とは全く異なる。該モレキュラーシーブ生成物に関する測定により、総細孔容積は0.13cm3g-1であり、微細孔容積は0.10cm3g-1であり、総比表面積は285m2・g-1であり、外部比表面積は31m2・g-1であり、外部比表面積は総比表面積の10.9%を占め、組成は、シリカ/アルミナモル比28.1であることが明らかになった。
【0245】
【表29】

【0246】
比較例II−3
テンプレートが、単一種のテンプレート:ジシクロヘキシルアミンであり、かつ次のようにした以外は、実施例II−1と同様にした:
シリカ/アルミナ=30
NaOH/シリカ=0.09
ジシクロヘキシルアミン/シリカ=0.35
水/シリカ=18。
【0247】
得られた生成物のXRDパターンには、明瞭な回折ピークが観察されなかった。
【0248】
本発明の特定の実施態様を説明及び記載してきたが、本発明の本質及び範囲を逸することなく、種々のその他の変更及び修正を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、添付の請求の範囲において、本発明の範囲内のそのような変更及び修正のすべてを対象とすることが意図される。
図1
図2
図3a
図3b