(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光ファイバと干渉することがなく、平面視において、前記伝達部を包含する状態で、前記外周から離間して前記ダイヤフラムに固定された、前記ダイヤフラムのみの部分よりも剛性を高め、前記光ファイバに当接した前記伝達部が前記ダイヤフラム側に押し出されることを防止する補強部をさらに備える請求項1記載の圧力センサ。
前記光ファイバは、前記ベース部材の一方面に設けられた溝部に収容された状態で、前記ベース部材に固定される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧力センサ。
前記ダイヤフラムに圧力が付与されていない状況下において、前記伝達部は前記光ファイバに応力を作用させない状態で配置される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の圧力センサ。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、船舶、航空機等の設計では、物体の表面に作用する空気圧や水圧等の流体物理量を把握することが求められている。このような流体物理量を把握するためにシミュレーションが多用されている。また、シミュレーションの精度向上や妥当性の確認を目的として、縮小モデル(例えば、1/100モデル)や実寸モデルを使用した風洞実験によるモデル表面における空気圧の測定や、水槽実験によるモデル表面の水圧の測定が実施されている。
【0003】
このような流体物理量の測定に、FBG(Fiber Bragg Grating)部を備える光ファイバを利用した光式圧力センサが使用されている。この種の光式圧力センサは、電気式の歪みゲージを使用した圧力センサのような計測及び給電のための配線が不要であり、モデル内部に配線を配置するためにモデルに穴をあける必要がなく、モデル表面に多数のセンサを容易に配置することができるという特徴を有している。
【0004】
光式圧力センサは、例えば、特許文献1が開示するように、FBG部が接着剤によりダイヤフラムに固定された構成を有している。この構成では、ダイヤフラムにおいて圧力の変化が歪み(応力)の変化に変換され、当該歪みがFBG部における反射光の波長変化として検出される。
【0005】
また、特許文献2は、より微小な圧力変化を検知できるように、ベースフィルムの貫通孔上にFBG部を備える光ファイバを配置し、当該光ファイバに当接する状態で貫通孔を覆うようにダイヤフラムを配置した構成を開示している。また、この構成では、ベースフィルムが可撓性を有しているため、曲面等の任意の面に圧力センサを配置することが可能になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FBG部を備える光ファイバにより歪みを安定的に計測するためには、光ファイバに張力を安定して付与し続ける必要がある。しかしながら、特許文献1のように、ダイヤフラムに光ファイバを直接固定する構成では、光ファイバに付与された張力により短期的又は長期的にダイヤフラムが変形して光ファイバの張力が開放されるため、十分な測定再現性を得られないという問題がある。
【0008】
このような問題は、高剛性で変形することのないダイヤフラムを使用することで解消することができるとも思える。しかしながら、そのような対応では、微小な圧力変化でダイヤフラムが変形することがないため、微小な圧力変化を検出することは不可能である。
【0009】
また、特許文献2が開示する構成によれば、光ファイバが、ベースフィルムの貫通孔上に配置され、当該貫通孔上でダイヤフラムと接触しているため、ダイヤフラムの微小な歪み変化を検出することはできる。しかしながら、光ファイバを保持するベース部材がフィルム状であるため、特許文献1と同様、十分な測定再現性を得られないという問題がある。このような問題は、ベースフィルムを金属等の高剛性材料で構成した場合でも、ベースフィルムが可撓性を有している以上、光ファイバに付与された張力により短期的又は長期的にベースフィルムが変形し、十分な測定再現性を得られないという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献2が開示する構成では、ベースフィルムが可撓性を有するため、測定表面が曲面である場合でも、ベースフィルムを測定表面に比較的容易に貼り付けることができる。しかしながら、ベースフィルムが可撓性を有する場合、曲面にベースフィルムを貼り付けると、ベースフィルムと光ファイバ(FBG部)との位置関係、あるいは、光ファイバに付与された張力の大きさが変化してしまう。その結果、ダイヤフラムに同一の圧力が付与された状態であっても、FBG部の歪み量が異なってしまい、圧力センサの出力値が異なるという状況が発生し得る。
【0011】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであって、測定再現性がよく、微小な圧力変化を検出可能な圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明に係る圧力センサは、光ファイバ、ベース部材、ダイヤフラム及び伝達部を備える。光ファイバはFBG(Fiber Bragg Grating)部を備える。ベース部材は、一方面に開口端を備える。ベース部材には、当該開口端を横断する状態で、張力が付与された光ファイバが固定される。ベース部材は、当該張力により変形することのない剛性を有する。ダイヤフラムは、可撓性を有し、ベース部材との間に光ファイバが配置される状態で開口端に外周が支持される。伝達部は、ダイヤフラムに設けられ、付与された圧力に応じてダイヤフラムに発生する応力を、光ファイバの特定部位に集中させ
ることで、FBG部により検出可能な歪みとしてFBG部に伝達する。
【0013】
本発明の圧力センサによれば、ダイヤフラムに発生する応力が、ベース部材に固定された光ファイバの特定部位に集中するため、微小な圧力であっても光ファイバを歪ませることができる。その結果、ダイヤフラムに付与される微小な圧力変化を検出することができる。また、ベース部材は、光ファイバに付与された張力により変形することのない剛性を有するため、短期的又は長期的にダイヤフラムが変形して光ファイバの張力が開放されることもない。その結果、安定した測定再現性を確保することができる。各部の寸法を調整する必要はあるが、同一の構造で、低圧力から高圧力までを計測することができるため、例えば、縮小モデルにおいて圧力を測定する場合と、実物モデルにおいて圧力を測定する場合とで、同一構造の圧力センサを使用することができる。
【0014】
以上の圧力センサにおいて、ベース部材は、
円形の貫通孔を備える円環状の部材で構成されるとともに、ダイヤフラムと当接する面を除いて、ベース部材よりも剛性の低い保持部材に
よって封止された構成を採用することができる。この構成によれば、計測対象面に振動や変形が生じた場合でも、高剛性のベース部材にその振動や変形が伝搬して、ダイヤフラムやFBG部に伝わることを抑制することができる。
【0015】
また、以上の圧力センサにおいて、光ファイバと干渉することがなく、平面視において、伝達部を包含する状態で、外周から離間してダイヤフラムに固定された、ダイヤフラムのみの部分よりも剛性を高め
、光ファイバに当接した伝達部がダイヤフラム側に押し出されることを防止する補強部をさらに備える構成を採用することができる。あるいは、伝達部がダイヤフラムと一体で構成され、伝達部の周囲におけるダイヤフラムの厚さ
を、ダイヤフラムの外周におけるダイヤフラムの厚さよりも厚
くすることで剛性を高め、光ファイバに当接した伝達部がダイヤフラム側に押し出されることを防止する構成を採用することができる。これらの構成によれば、より微小な圧力の計測を目的としてダイヤフラムの厚さを低減した場合でも、ダイヤフラムのうねり等に起因するダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0016】
また、ベース部材は、金属、セラミック又はガラスにより構成される環状体とすることができる。また、ダイヤフラムは、樹脂膜により構成することができる。さらに、光ファイバは、ベース部材の一方面に設けられた溝部に収容された状態で、ベース部材に固定される構成を採用することもできる。
【0017】
さらに、以上の圧力センサにおいて、ダイヤフラムに圧力が付与されていない状況下において、伝達部は光ファイバに応力を作用させない状態で配置される構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測定再現性がよく、微小な圧力変化を検出可能な圧力センサを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
図1は、本実施形態における圧力センサ1の全体構成の一例を示す概略構成図である。また、
図2は、本実施形態における圧力センサ1の一例を示す概略平面図である。さらに、
図3は、
図2に示すA−A線に沿う概略断面図である。
【0021】
図1〜
図3に示すように、圧力センサ1は、ベース部材11、光ファイバ12、ダイヤフラム13、伝達部14及び保持部材19を備える。なお、
図1では、内部構造を示すため、保持部材19は外形のみを点線で示している。同様に、
図1及び
図2では、内部構造を示すため、ダイヤフラム13は外形のみを破線で示している。
【0022】
本実施形態では、ベース部材11は、光ファイバ12の直径よりも大きな厚みを有する円盤状の板材の中央部に円形の貫通孔15が形成された円環状の形態を有しており、貫通孔15の開口端がベース部材11の両面に露出している。
【0023】
ベース部材11の一方面(ここでは、上面)には直径方向に沿って、光ファイバ12を収容する溝部16が形成されている。ベース部材11において対向する円環部分に設けられた溝部16は同一直線状に配置されている。各溝部16には、光ファイバ12の直径よりもわずかに大きい幅の部分と、当該幅よりも広い幅を有する幅広部17が設けられている。なお、幅広部17を設けることは必須ではない。
【0024】
光ファイバ12は、貫通孔15を横断する状態で各溝部16に収容されるとともに、張力(プリテンション)が付与された状態でベース部材11に固定される。固定方法は特に限定されないが、本実施形態では、幅広部17に充填された紫外線硬化型接着剤により光ファイバ12がベース部材11に固定されている。本実施形態では、幅広部17だけでなく、溝部16の全体にわたって接着剤が充填されている。なお、
図1〜
図3では、接着剤の図示を省略している。
【0025】
本実施形態では、溝部16は、光ファイバ12の直径と同程度の均一な深さを有している。また、幅広部17は、
図3に示すように、溝部16よりもわずかに深く形成されている。これにより、幅広部17では、光ファイバ12の下方側にも接着剤を回り込ませることができる。溝部16の底面は、ベース部材11の上面及び下面と平行に形成されており、光ファイバ12を溝部16の底面に接触する状態で固定することで、光ファイバ12を、ベース部材11の上面及び下面と平行な同一面内に配置することができる。なお、溝部16の底面は、光ファイバ12の外周に整合する曲面で構成することもできる。
【0026】
ベース部材11は、光ファイバ12に付与された張力により、短期的及び長期的に変形することのない剛性を有する。ベース部材11の材質は、特に限定されない。例えば、金属、セラミック又はガラスにより構成することができる。ここでは、ベース部材11は金属により構成されている。
【0027】
光ファイバ12は、特定のブラッグ波長を有するFBG(Fiber Bragg Grating)部18を備える。FBG部18の長さは、貫通孔15の直径より長くてもよく、また、貫通孔15の直径より短くてもよい。FBG部18は、両側がベース部材11に固定された光ファイバ12の部分に、少なくともその一部が配置されていればよい。上述のように、本実施形態では、光ファイバ12は溝部16の全体にわたってベース部材11に固定されている。したがって、本実施形態では、両側がベース部材11に固定されている光ファイバ12の部分は、貫通孔15上に配置された光ファイバ12の部分になる。なお、特に限定されないが、本実施形態では、FBG部18は、貫通孔15の直径の1/3程度の長さで構成されており、平面視において、貫通孔15の中心(ベース部材11の中心)に配置されている。図中では、便宜上、FBG部18を黒塗りにより表現している。
【0028】
公知のように、FBG部18はブラッグ波長により規定される波長の光を反射する。FBG部18は光ファイバのコアに所定の間隔で配置された複数の回折格子により構成され、ブラッグ波長は光ファイバの屈折率と回折格子の配置間隔との積に比例する。したがって、FBG部18に応力が作用してFBG部18を構成する回折格子の間隔が拡がると、FBG部18により反射される光の波長は大きくなる。また、応力によりFBG部18が圧縮されFBG部18を構成する回折格子の間隔が狭まると、FBG部18により反射される光の波長は小さくなる。波長の変化は、光ファイバ12の一端に接続された光源及び計測器により取得される。なお、複数の圧力センサ1を直列接続して使用する場合は、各圧力センサ1のFBG部18のブラッグ波長は互いに異なる波長に設定される。これにより、反射光の波長に基づいて反射光の反射位置を容易に区別することができる。
【0029】
また、ベース部材11は、ダイヤフラム13が当接する面を除いて、ベース部材11よりも剛性の低い保持部材19に当接する構成になっている。すなわち、ベース部材11の下面、側面が保持部材19に囲まれている。本実施形態では、保持部材19は、平面視において、長手方向が光ファイバ12の配置方向を向いた瞳型状の外形を有している。保持部材19の上面とベース部材11の上面とは面一に構成されており、当該上面にダイヤフラム13が固定される。そのため、光ファイバ12も保持部材19内に封止されている。このような構造は、例えば、保持部材19の一部を構成する、平面視において瞳形状のシート部材上に、光ファイバ12を固定したベース部材11を配置し、ベース部材11の周囲のシート部材上に保持部材19の一部を構成する液体状の樹脂材料を導入して硬化させることで実現できる。このような構成では、例えば、ベース部材11下方の保持部材19(シート部材)の材質と、ベース部材11周囲の保持部材19の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。保持部材19の材質として、例えば、紫外線硬化型接着剤や封止剤のような金属等と比較して剛性の低い(柔軟性を有する)樹脂系材料を使用することができる。なお、圧力センサ1の防水性を高める観点では、保持部材19は防水性を有する材質であることが好ましい。
【0030】
ダイヤフラム13は、貫通孔15の開口端であるベース部材11の円環部分に外周が固定支持されている。したがって、光ファイバ12は、ダイヤフラム13とベース部材11との間に配置されることになる。特に限定されないが、本実施形態では、ダイヤフラム13は、平面視において、ベース部材11の外形より大きな直径を有しており、ベース部材11の上面だけでなく、保持部材19の上面にも固定されている。
【0031】
ダイヤフラム13は、ダイヤフラム13に付与される圧力の変化を歪み(応力)の変化に変換する機能を有する。ダイヤフラム13は、可撓性を有する材料(例えば、樹脂膜)により構成することができる。特に限定されないが、本実施形態では、ダイヤフラム13は、ポリイミドフィルムにより構成されている。ダイヤフラム13とベース部材11及び保持部材19との間の固定方法は特に限定されない。例えば、紫外線硬化型接着剤により固定することができる。
【0032】
伝達部14は、ダイヤフラム13に固定されている。当該固定は、紫外線硬化型接着剤により実現することができる。伝達部14は、ダイヤフラム13に付与された圧力に応じてダイヤフラム13に発生する応力を、光ファイバ12の特定部位に集中させる機能を有する。伝達部14は、光ファイバ12に対しては固定されていない。本実施形態では、伝達部14は、平面視において、貫通孔15の中心に配置された円柱体により構成されている。当該円柱体は、光ファイバ12の配置方向と直交する方向に向けて配置されている。当該伝達部14は、光ファイバ12と点接触することで、ダイヤフラム13に発生する応力を貫通孔15の中心に位置する光ファイバ12の部分に集中させる。なお、本実施形態では、伝達部14として光ファイバ12と同一の外径を有する光ファイバの小片を使用している。
【0033】
計測対象物への圧力センサ1の固定には、接着剤や両面テープ等、公知の任意の手法を採用することができる。
【0034】
以上の圧力センサ1では、ダイヤフラム13の歪みを計測するのではなく、ダイヤフラム13の歪みに応じて伝達部14により増幅して伝えられた歪み(応力)を計測する。したがって、ダイヤフラム13に発生する応力が、ベース部材11に固定された光ファイバ12の特定部位に集中するため、微小な圧力であっても光ファイバ12を歪ませることができる。その結果、ダイヤフラム13に付与される微小な圧力変化を検出することが可能になる。
【0035】
また、ベース部材11は、光ファイバ12に付与された張力により変形することのない剛性を有するため、短期的又は長期的にダイヤフラム13が変形して光ファイバ12の張力が開放されることもない。その結果、安定した測定再現性を確保することができる。
【0036】
さらに、ベース部材11を環状体とすることで、圧力センサ1のサイズを必要最小限とすることができ、また、ベース部材11の周囲に比較的柔らかい保持部材19で覆われているため、計測対象面が曲面であっても圧力センサ1を比較的容易に貼り付けることができる。このように曲面に貼り付けた場合であっても、ベース部材11と光ファイバ12(FBG部18)との位置関係が変わることがなく、光ファイバ12に付与された張力の大きさも変化しない。そのため、可撓性のベースフィルムを使用した場合のように、圧力センサの出力値が異なるという状況は発生しない。
【0037】
加えて、ベース部材11の周囲に保持部材19を配置しているため、計測対象面に振動や変形が生じた場合でも、ダイヤフラム13やFBG部18にその振動や変形が伝わることを抑制できるため、圧力センサ1の誤計測を防止することができる。
【0038】
また、各部の寸法を調整する必要はあるが、圧力センサ1によれば、同一の構造で、低圧力から高圧力までを計測することができるため、例えば、縮小モデルにおいて圧力を測定する場合と、実物モデルにおいて圧力を測定する場合とで、同一構造の圧力センサを使用することができる。例えば、低圧力を測定する場合、貫通孔15の直径を6mm程度、伝達部14である円筒体の直径を0.15mm程度にすることができる。円環部分の幅や厚さは、任意に設計することができる。また、高圧力を測定する場合、各部の寸法を定数倍にすればよい。
【0039】
なお、
図1〜
図3では、伝達部14が光ファイバ12を押し下げる状態で当接した様子を図示しているが、ダイヤフラム13に圧力が付与されていない場合、伝達部14が光ファイバ12に応力を作用させない状態で配置してもよい。
【0040】
また、上述の例では、ダイヤフラム13と伝達部14とを個別の部材としているが、伝達部14はダイヤフラム13と一体に形成されてもよい。
【0041】
以上で説明した構成において、より微小な圧力変動を検知可能にするためには、ダイヤフラム13の膜厚を薄くする必要がある。しかしながら、上述のように、光ファイバ12の特定部分に伝達部14が当接する構成では、ダイヤフラム13の膜厚を薄くすると、ダイヤフラム13の強度が低下する結果、光ファイバ12に当接した伝達部14がダイヤフラム13側に押し出されてダイヤフラム13を変形させる状況が発生し得る。この場合、伝達部14はダイヤフラム13に発生した応力を、光ファイバ12に適切に伝えることができなくなる。また、以上のような状態でダイヤフラム13の変形が固定化した場合、その後に圧力を正常に計測することができなくなる。
【0042】
そこで、以下では、ダイヤフラム13の膜厚を薄くする場合に特に好適な構成について説明する。
図4は、本実施形態における圧力センサ2の全体構成の一例を示す概略構成図である。また、
図5は、本実施形態における圧力センサ2の一例を示す概略平面図である。さらに、
図6は、
図5に示すB−B線に沿う概略断面図である。
【0043】
図4〜
図6に示すように、圧力センサ2は、補強部21をさらに備える点で、圧力センサ1の構成と異なる。他の構成は圧力センサ1と同一であり、圧力センサ1と同様の作用効果を奏する構成要素には同一の符号を付している。なお、
図4では、内部構造を示すため、保持部材19は外形のみを点線で示している。また、
図4及び
図5では、ダイヤフラム13及び補強部21は外形のみを点線で示している。
【0044】
補強部21は、平面視において、伝達部14を包含する状態かつダイヤフラム13の外周から離間してダイヤフラム13に固定される。ここで、ダイヤフラム13の外周とは、ダイヤフラム13とベース部材11とが固定された部分である。本実施形態では、補強部21は、平面視において、貫通孔15と同軸に配置されている。補強部21は、貼り付けた部分の剛性をダイヤフラム13のみの部分に比べて高める作用を有している。
【0045】
補強部21は、ダイヤフラム13のいずれの面に配置してもよい。ダイヤフラム13の光ファイバ12側に配置する場合、
図6に示すように、補強部21はダイヤフラム13と伝達部14との間に配置される。この場合、まず、ダイヤフラム13に補強部21が固定され、次いで、当該補強部21に伝達部14が固定される。また、この場合、補強部21は、ダイヤフラム13に圧力が作用した場合でも、光ファイバ12と干渉することがない状態で配置される。すなわち、補強部21は、光ファイバ12と干渉することがない径に設計される。
【0046】
補強部21には、任意の材質を使用することができる。例えば、ガラスプレートやポリイミドフィルム等を使用することができる。補強部21の固定には、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用することができる。
【0047】
図7は、補強部21の効果を示す図である。
図7において、横軸はダイヤフラム13に付与される圧力に対応する。縦軸は、ブラッグ波長のシフト量に対応する。
図7では、補強部21が存在しない圧力センサ1の構成において、ダイヤフラム13の膜厚を薄くした場合のデータを破線で示している。また、補強部21を備える圧力センサ2の構成において同一膜厚のダイヤフラム13を適用した場合のデータを実線で示している。
【0048】
図7に示すように、補強部21が存在しない場合、ダイヤフラム13に付与される圧力が相対的に低いときは、圧力の増大にほぼ比例してブラッグ波長のシフト量が増大する。しかしながら、圧力がさらに大きくなると、ダイヤフラム13に付与される圧力が増大しても、ブラッグ波長のシフト量は増大しなくなる。これは、光ファイバ12に当接した伝達部14がダイヤフラム13側に押し出されてダイヤフラム13を変形させている状態に対応する。
【0049】
一方、補強部21が存在する場合、ダイヤフラム13に付与される圧力が相対的に低いときから、相対的に高い領域の全体にわたって、圧力の増大にほぼ比例してブラッグ波長のシフト量が増大している。また、圧力に対するブラッグ波長のシフト量の増加率も増大しており、補強部21が存在しない場合に比べて、測定感度も向上していることが理解できる。これは、補強部21が、光ファイバ12に当接した伝達部14がダイヤフラム13側に押し出されることを防止する効果とともに、伝達部14の作用による応力集中を増強する効果を奏することに起因している。
【0050】
なお、
図4〜
図6の例では、補強部21とダイヤフラム13とを個別の部材としているが、補強部21はダイヤフラム13及び伝達部14と一体に形成されてもよい。
図8は、このようなダイヤフラム31を備える圧力センサ3を示す概略断面図である。圧力センサ3は、ダイヤフラム31の構造が上述の圧力センサ2の構成と異なる。他の構成は圧力センサ2と同一であり、圧力センサ2と同様の作用効果を奏する構成要素には同一の符号を付している。
【0051】
図8に示すように、ダイヤフラム31は、伝達部32の周囲33におけるダイヤフラム31の厚さが、ダイヤフラム31の外周におけるダイヤフラム31の厚さよりも厚くなっている。そのため、伝達部32を包含する部分の剛性を、膜厚の薄い周縁部よりも高めることができる。その結果、上述の圧力センサ2と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として貫通孔15の形状を円形とし、かつベース部材11の外形を円形としたが、貫通孔の形状は多角形であってもよく、ベース部材の外形も任意の形状とすることができる。
【0053】
また、ベース部材11は貫通孔15に代えて、下面が閉塞された凹部を備える構成であってもよい。さらに、保持部材19は、ベース部材11の下面側のみに形成されてもよく、また、保持部材19を備えない構成とすることもできる。