(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392877
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ポリオールエステルの後処理方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/56 20060101AFI20180910BHJP
C07C 69/28 20060101ALI20180910BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20180910BHJP
【FI】
C07C67/56
C07C69/28
!C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-541837(P2016-541837)
(86)(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公表番号】特表2016-530308(P2016-530308A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2014002350
(87)【国際公開番号】WO2015036090
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】102013015289.5
(32)【優先日】2013年9月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507254975
【氏名又は名称】オクセア・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】クービチュケ・イェンス
(72)【発明者】
【氏名】クライックマン・トールステン
(72)【発明者】
【氏名】アルノルト・イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クラーマー・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュトルッツ・ハインツ
【審査官】
三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−507331(JP,A)
【文献】
特開昭55−130937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C07B 31/00− 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(II)
H−(−O−[−CR1R2−]m−)o−OH (II)
[式中、R1及びR2は、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、または炭素原子数1〜5のヒドロキシルアルキル基を意味し、mは1〜10の整数を意味し、oは、2〜15の整数を意味する]
で表されるポリオールと、使用するポリオールよりも低い沸点を有する、炭素原子数3〜20の過剰の線状または分枝状脂肪族モノカルボン酸とを、元素としてのまたはそれらの化合物の形態のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、亜鉛、ホウ素、アルミニウムもしくはスズの群から選択される、触媒としてのルイス酸の存在下に及び反応混合物100重量部に対し0.1〜5重量部の量の、高表面積のシリカゲル類(Silicagele)、シリカゲル(Kieselgel)、珪藻土、高表面積酸化アルミニウム及び酸化アルミニウム水和物、鉱物性クレー、鉱物性カーボネートまたは活性炭の群から選択される吸着剤の存在下に、生じる水を除去しながら、反応させることによって製造されたポリオールエステルの後処理のためのバッチ式方法であって、過剰のモノカルボン酸を蒸留して分離し、そして得られた粗製エステルに、その都度の圧力下に水の沸点未満の温度で水を添加し、及び、水と混合した粗製エステルを、塩基反応性化合物は使用せずに後処理し、及び難溶性転化生成物とエステル化反応中に存在する吸着剤を濾別することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
後処理すべきポリオールエステルを基準にして0.5〜5重量%の量の水を加えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水を用いた後処理が、常圧下に40〜100℃未満の温度で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水を用いた後処理が、常圧より高い圧力下に及び少なくとも100℃で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
水を用いた後処理が、10分間〜4時間の期間にわたって行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
熱または真空の発生のために使用される水蒸気の凝縮によって回収される水が後処理に使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
水を用いた後処理の後に、過酸化水素を用いた更なる処理及びその直後の水蒸気処理を行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートまたはテトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートの後処理のための、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素原子数3〜20の線状もしくは分枝状脂肪族モノカルボン酸とポリオールとを、元素周期律表の第4族〜第14族の少なくとも一種の元素を含む触媒としてのルイス酸の存在下かつ吸着剤の存在下に反応させることによって製造されたポリオールエステルを、次いで粗製エステルを、水の添加によって、各々の場合の圧力下での水の沸点より低い温度で後処理することにより、後処理する方法に関する。
【0002】
ポリオールエステルとも称される多価アルコールのエステルは、例えば可塑剤または潤滑剤などとして、広い範囲でかつ多様に工業的に使用されている。適切な出発材料の選択によって、物理的な物質特性、例えば沸点または粘度を的確に調節することができ、そして化学的特性、例えば加水分解耐性及び酸化分解に対する安定性を考慮に入れることができる。具体的な応用技術上の問題の解決策に合わせて、ポリオールエステルを的確に調整することもできる。ポリオールエステルの使用についての詳細な摘要は、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5.Auflage,1985,VCH Verlagsgesellschaft,Vol.A1,pp.305−319(非特許文献1); Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5.Auflage,1990,Vol.A15,pp.438−440(非特許文献2)またはKirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3.Auflage,John Wiley & Sons,1978,Vol.1,pp.778−787(非特許文献3); Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3.Auflage,John Wiley & Sons,1981,Vol.14,pp.496−498(非特許文献4)に記載されている。
【0003】
潤滑剤としてのポリオールエステルの使用は、重大な技術的意義を持ち、そしてこれらは、特に、鉱油ベースの潤滑剤が、課せられる要求を不完全にしか満たさないような使用分野に使用される。ポリオールエステルは、特に、タービンエンジン油及び精密機械油として利用される。潤滑剤用途のためのポリオールエステルは、多くの場合に、アルコール成分としての、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、グリセリンまたは3(4),8(9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.0
2.6]デカン(TCDアルコールDMとも称される)をベースとする。
【0004】
ポリオールエステルは、可塑剤としても相当な程度で使用されている。可塑剤は、プラスチック、コーティング剤、シーリング剤、及びゴム物品(Kautschuk− und Gummiartikeln)において様々な用途がある。これらは、化学的に反応することなく、好ましくはそれらの溶解及び膨潤能力によって、高分子量熱可塑性物質と物理的に相互作用する。それによって、熱可塑性領域が、元のポリマーと比べて、より低温側に移動した均一な系が生成し、その結果として、中でも、その機械的特性が最適化され、例えば変形能力、弾性、強度が高められ、そして硬度が低下する。
【0005】
ポリオールエステルの特殊な部類の一つ(これらを簡略してG−エステルと称する)は、アルコール成分として、ジオールまたはエーテルジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールまたはより高級のプロピレングリコールを含む。それらの製造は、様々な方法で行うことができる。場合により酸性触媒の存在下でのアルコールと酸との反応の他に、プラクティスでは、G−エステルを得るために更に別の方法、中でも、ジオールと酸ハロゲン化物との反応、カルボン酸エステルとジオールとのエステル交換、及びカルボン酸へのエチレンオキシドの付加(エトキシル化)が用いられている。工業的な製造では、ジオールとカルボン酸との直接的な反応、及びカルボン酸のエトキシル化のみが、生産方法として確立しており、この際、ジオールと酸とのエステル化の方が大概は優先である。なぜならば、この方法は、特別な煩雑さ無しに慣用の化学プラントにおいて行うことができ、そして化学的に均一な生成物を生成するからである。これに対して、エトキシル化は、大規模でコスト集約的な技術的手段を必要とする。
【0006】
アルコールとカルボン酸との直接的なエステル化は、有機化学の基本的操作に属する。反応速度を高めるためには、反応は、通常は触媒の存在下に行われる。反応体の一つを過剰で使用すること及び/または反応の過程で生成した水を分離することは、平衡が、質量作用の法則に従い、反応生成物、すなわちエステル側に移動し、すなわち高い収率が達成されることを確実にする。
【0007】
エチレングリコールと脂肪酸とのエステルも含む多価アルコールのエステルの製造並びにこれらの部類の化合物の選択された代表物の特性について包括的な詳報は、Goldsmith,Polyhydric Alcohol Esters of Fatty Acids,Chem.Rev.33,257ff.(1943)(非特許文献5)に記載されている。例えば、ジエチレングリコールの、トリエチレングリコールの及びポリエチレングリコールのエステルの製造は、2.5〜8時間の反応時間にわたって、130〜230℃の温度で行われる。多価アルコールのエステル化のための適当な触媒としては、無機酸、酸性塩、有機スルホン酸、アセチルクロライド、金属または両性金属酸化物が挙げられる。反応水の除去は、同伴剤、例えばトルエンもしくはキシレンを用いて、または二酸化炭素もしくは窒素などの不活性ガスを導入することによって行われる。
【0008】
ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルの獲得及び特性については、Johnson(Edit.),Fatty Acids in Industry(1989) Kap.9,Polyoxyethylene Esters of Fatty Acid(非特許文献6)が論及しており、そして調製のための一連のヒントが記載されている。より高いジエステル濃度は、グリコールに対するカルボン酸のモル比を高めることによって達成される。反応水を除去するための適切な手段は、水を非混和性の溶媒の存在下での共沸蒸留、不活性ガスを導通しながらの加熱、または乾燥剤の存在下での真空下での反応の実行である。触媒の添加無しで済ませる場合には、より長い反応時間及びより高い反応温度が必要である。両反応条件は、触媒の使用によって軽減することができる。硫酸の他、p−トルエンスルホン酸などの有機酸、並びにポリスチレンタイプのカチオン交換体が好ましい触媒である。スズまたは鉄などの金属粉の使用も記載されている。US2,628,249(特許文献1)の教示によれば、活性炭の存在下に作業した場合、硫酸またはスルホン酸を用いた触媒作用下での色の問題を軽減できる。
【0009】
更に別の金属含有触媒として、例えばUS5,324,853A1(特許文献2)に従い、ポリオールエステルの製造のために、チタン、ジルコニウムまたはスズアルコラート、カルボキシラートまたはキレートも使用される。このような金属触媒は、高温度触媒と見なすことができる、というのも、これらは、それらの完全な活性を、一般的には180℃を超える高いエステル化温度になって初めて達成するからである。これらは、多くの場合に、エステル化反応の始めには加えられず、反応混合物が既に加熱されそして水の解裂化に部分的に反応した後に添加される。慣用の硫酸触媒と比較して必要な、より高い反応温度及びより長い反応時間にもかかわらず、このような金属含有化合物を用いた触媒作用下では、比較的低い色数を持つ粗製エステルが得られる。通例のエステル化触媒は、例えばテトラ(イソプロピル)オルトチタネート、テトラ(ブチル)オルトチタネート、テトラ(ブチル)ジルコネートまたはスズ(II)−2−エチルヘキサノエートである。
【0010】
精製されたポリオールエステル中の金属痕跡は、可塑剤または潤滑剤としてのそれらの使用を損ねる恐れがある。なぜならば、例えば、電気伝導性及び空気酸素に対する安定性が影響を受けるからである。従来技術は、エステル化触媒を良好に分離可能な二次生成物に転化するために、一連の手段を提案している。
【0011】
DE102009048775A1(特許文献3)に記載の作業方法によれば、ポリオールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化を、吸着剤の存在下にルイス酸触媒を用いて行う。粗製エステルの仕上げ処理の間に、水蒸気を用いて処理し、この際、それの過程でなおも存在するルイス酸触媒が破壊される。吸着剤と一緒に濾過することによって、触媒二次生成物を簡単に除去できる。水蒸気処理は、一般的に100〜250℃の温度で0.5〜5時間の期間にわたって行われる。作業温度に達するまでの加熱期間の間は、粗製エステルのあまりに強すぎる熱負荷を避けるために、非常に穏やかに進める必要がある。特に、例えばトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールなどのエーテルジオールをベースとするポリオールエステルの製造では、水蒸気処理の条件は、エーテル鎖が不所望に分解して副生成物となるのを防止するために的確に調節するべきである。更に、ルイス酸触媒の破壊のための水蒸気処理は時間集約的であり、そして反応器体積及び時間当たりに達成される生成物生産能力を損ねる。
【0012】
水を添加し、次いでアルカリ剤で処理することによって、ルイス酸触媒を良好に分離可能な二次生成物に転化することも同様に知られている。DE3012203(特許文献4)に開示される作業方法によれば、粗製エステルを、粗製エステル量を基準に5〜50重量%の水と混合し、次いで加熱する。水を用いて熱処理することによって、ルイス酸触媒の良好に結晶化した二次生成物が形成する。水処理に次いで、アルカリを用いた処理を行う。
WO2007/095262A2(特許文献11)は、再生可能な原料から得られた1,3−プロパンジオールと、分子中に8〜40個の炭素原子を含む脂肪酸との、金属含有触媒の存在下でのエステル化を論じている。反応の終了後に、水を用いた処理によって触媒を除去することができる。
【0013】
DE102009060865A1(特許文献5)からは、スズ化合物の存在下で行われるポリオールエステルの製造方法が知られている。得られた粗製エステルは、水を添加して後処理される。水性相を分離した後、ポリオールエステルを場合により収着剤で処理する。
【0014】
DE4002949A1(特許文献6)は、金属含有触媒の存在下での連続的なエステル化によって得られた粗製エステル化混合物の仕上げ処理のための方法を開示している。未転化のアルコールを留去した後、反応混合物を冷却し、活性炭と混合し、そして残留アルコールを、活性炭の存在下に水蒸気または窒素でストリッピングする。
【0015】
US5,324,853A1(特許文献7)からの作業方法によれば、粗製エステル化混合物を水性ソーダ溶液及び場合により活性炭と混合する。この作業方法によって、金属化合物は不溶性の固形物に加水分解され、そして粗製エステル生成物の更なる仕上げ処理の前にこれを濾別することができる。
【0016】
ルイス酸触媒、例えばチタンもしくはスズ含有触媒の存在下での多塩基性カルボン酸とモノアルコールとの反応によって得られる粗製エステル混合物の仕上げ処理においても、従来技術は、触媒除去のために水処理を推奨している。US5,434,294(特許文献8)によれば、粗製エステルを、水性アルカリ性溶液で80〜150℃の温度で処理し、次いで吸着剤に通して濾過する。DE1945359(特許文献9)に記載された仕上げ処理方法では、粗製エステルを先ずアルカリで処理し、そして遊離のアルコールを水蒸気蒸留によって除去する。次いで、生成物を、水の沸点未満の温度に冷却し、その後、仕上げ処理すべき生成物を基準に少なくとも0.5重量%の水と混合する。この水処理を用いて、良好に濾過可能な触媒二次生成物の沈殿物が得られる。
【0017】
エステル化反応の終了後に、触媒二次生成物の形のルイス酸触媒の十分な分離を保証するために、従来技術は、塩基反応性化合物の処理と結びついた、吸着剤の存在下での水蒸気処理、またはその都度の圧力下で水の沸点未満の温度での水を用いた処理を教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】US2,628,249
【特許文献2】US5,324,853A1
【特許文献3】DE102009048775A1
【特許文献4】DE3012203
【特許文献5】DE102009060865A1
【特許文献6】DE4002949A1
【特許文献7】US5,324,853A1
【特許文献8】US5,434,294
【特許文献9】DE1945359
【特許文献10】DE102010027458A1
【特許文献11】WO2007/095262A2
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5.Auflage,1985,VCH Verlagsgesellschaft,Vol.A1,pp.305−319
【非特許文献2】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5.Auflage,1990,Vol.A15,pp.438−440
【非特許文献3】Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3.Auflage,John Wiley & Sons,1978,Vol.1,pp.778−787
【非特許文献4】Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3.Auflage,John Wiley & Sons,1981,Vol.14,pp.496−498
【非特許文献5】Goldsmith,Polyhydric Alcohol Esters of Fatty Acids,Chem.Rev.33,257ff.(1943)
【非特許文献6】Johnson (Edit.),Fatty Acids in Industry(1989) Kap.9,Polyoxyethylene Esters of Fatty Acid
【非特許文献7】Roempp’s Chemie−Lexikon,8.Auflage,Franck’sche Verlagshandlung 1983,Band 3,H−L
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、水蒸気処理は時間の消費が多くそしてその条件は的確に調節すべきであり、並びに塩基、例えば水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウムを用いた処理によって、粗製エステルの仕上げ処理の過程で再び除去する必要のある余分な塩が持ち込まれるために、時間集約的な度合いは低いが、同時に望ましいポリオールエステルを十分な品質で提供し、そのため残留酸価、水含有率、ヒドロキシル価及び金属残留含有率などの要求される規格値を確実に守ることができ及びポリオールエステルが非常に多方面に使用できる、ポリオールエステルの後処理のための方法への要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
それ故、本発明
は、以下の一般式(II)
H−(−O−[−CR
1R
2−]
m−)
o−OH (II)
[式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル、エチルもしくはプロピル、または炭素原子数1〜5のヒドロキシルアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基を意味し、mは1〜10の整数、好ましくは1〜8の整数、特に1、2、3または4を意味し、oは、2〜15の整数、好ましくは2〜8の整数、特に2、3、4または5を意味する]
で表されるポリオールと、
使用するポリオールよりも低い沸点を有する、炭素原子数3〜20の
過剰の線状または分枝状脂肪族モノカルボン酸とを、元素としてのまたはそれらの化合物の形のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、亜鉛、ホウ素、アルミニウムもしくはスズの群から選択される、触媒としてのルイス酸の存在下に及び反応混合物100重量部に対し0.1〜5、好ましくは0.5〜1.5重量部の量の吸着剤の存在下に、生じる水を除去しながら、反応させることによって製造されるポリオールエステルの後処理のためのバッチ式方法であって、
過剰のモノカルボン酸を蒸留して分離し、そして得られた粗製エステルに、その都度の圧力下に水の沸点未満の温度で水を添加し、及び、水と混合した粗製エステルを、塩基反応性化合物を回避しながら後処理し、及び難溶性転化生成物とエステル化反応中に存在する吸着剤を濾別することを特徴とする方法をその趣旨とする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
出発化合物としてのポリオール及び脂肪族モノカルボン酸との間の反応は、使用材料に依存して、約120〜180℃の範囲で起こり、次いで様々に設計された方法で終了させることができる。
【0023】
エステル化反応の一つの設計では、先ず、室温から出発して、最大280℃までの温度、好ましくは230℃までの温度に加熱し、そして反応水の除去を容易にするために、一定に維持した温度下に圧力を、常圧から出発して段階的に低めていく。1段階、2段階または3段階以上の圧力段階の選択、並びに各々の段階で調節すべき
圧力の選択は、広い範囲で変えることができ、そして各々の条件に適合させることができる。例えば、第一段階では、圧力を、常圧から出発して先ず600hPaまで低下させ、次いで反応を、300hPaの圧力下に終了させることができる。これらの圧力の記載は、有利に遵守される基準値である。
【0024】
圧力を変化させる他、同様に温度も、エステル化反応中に室温から出発して一段階、二段階またはそれ以上の段階で変化させることができ、そうして一定に調節された圧力下に温度を段階毎に、通常は最大280℃の温度まで高める。しかし、段階毎に上昇する温度を最大で280℃まで加熱すること及び圧力も段階毎に低めることが適切であることが判明した。例えば、エステル化反応は、室温から開始して第一段階において190℃までの温度で行うことができる。同様に、反応水の排除を加速するために600hPaまでの低められた圧力が適用される。190℃の温度段階に達したら、圧力をもう一度300hPaまで下げ、そしてエステル化反応を230℃までの温度で終了させる。これらの温度及び圧力の記載は、合目的的に遵守される基準値である。個々の段階において調節すべき温度及び圧力条件、段階の数、並びに単位時間当たりの各々の温度上昇または圧力低下速度は幅広い範囲で変えることができ、そして原料化合物及び反応生成物の物理的性質に応じて適合され、この際、第一段階の温度及び圧力条件は常圧及び室温から出発して調節される。温度を二段階で高め及び圧力を二段階で低下させることが特に有利であることが判明した。
【0025】
調節すべき圧力の下限は、原料化合物及び生成した反応生成物の物理的性質、例えば沸点及び蒸気圧に依存し、そしてプラント装備によっても決定される。常圧から出発して、この限界値の範囲内で、段階毎に低下する圧力を用いて段階的に作業することができる。分解生成物の生成、中でも色を害する作用をする分解生成物の生成を避けるために、温度の上限、通常は280℃を遵守するべきである。温度段階の下限は反応速度によって決定され、この反応速度は、許容可能な時間内でエステル化反応を完了させるために十分に速いものでなければならない。この限界値の範囲内で、段階毎に高まる温度を用いて段階的に作業することができる。
【0026】
温度、反応時間、印加すべき圧力または使用すべき触媒などの各々の反応条件は、十分な反応速度において、着色性成分の形成の陰を薄くし、そしてポリオールエステルの分解反応をできるだけ回避するために、各々のポリオールエステルに合わせて調整すべきである。特にエーテルジオール、例えばトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールをベースとするポリオールエステルの場合は、温度、反応時間及び触媒の種類及び量などの反応条件が、各々のポリオールエステルに的確に調節されないと、エーテル骨格の強められた分解が起こる恐れがある。
【0027】
エステル化では、ポリオールを、使用したポリオールよりも低い沸点を有しそして続く粗製エステルの仕上げ処理において蒸留して簡単に分離できる過剰のモノカルボン酸と反応させることができる。脂肪族モノカルボン酸は、ポリオールのエステル化すべきヒドロキシル基のモル当たりで、10〜50%モル過剰で、好ましくは20〜40%モル過剰で使用される。
【0028】
生成した反応水は、エステル化反応の間に、過剰のモノカルボン酸と一緒に反応容器から留去し、そして下流の相分離器に送り、そこでモノカルボン酸と水とが、それらの溶解性に応じて分離する。反応容器と相分離器との間には、同様に、理論棚段数が1〜25、好ましくは2〜10、特に3〜6の分留塔を設置でき、この分留塔では、水を豊富に含む画分が塔頂を介して相分離器に案内され、そしてモノカルボン酸を豊富に含む画分は、塔底を介して反応容器に還流される。
【0029】
場合によっては、使用したモノカルボン酸は、反応条件下に水と共沸混合物も形成し、そして同伴剤として反応水を除去することができる。水の生成量から、反応の経過を追跡することができる。分離した水はプロセスから除去され、他方で、相分離器からのモノカルボン酸は反応容器に再び還流される。共沸混合物形成剤の役割を担う他の有機溶剤、例えばヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンまたはキシレン異性体混合物の添加は排除されないが、幾つかの例外的なケースに限られる。共沸混合物形成剤は、エステル化反応の最初から既に、または比較的高い温度に達した後に、加えることができる。理論的に期待できる水量が生じた時または、例えばDIN53240に従い決定したヒドロキシル価が、固定値未満に低下した時、反応を終了しそして粗製エステルの仕上げ処理を開始する。
【0030】
ポリオールとモノカルボン酸とのエステル化のための触媒としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、亜鉛、ホウ素、アルミニウムまたはスズの群から選択されるルイス酸が使用され、これらは、元素として微細な形態でまたは好ましくは化合物の形で使用され、そして固形または液状の形で使用することができる。本発明の意味においてルイス酸という用語は、例えばRoempp’s Chemie−Lexikon,8.Auflage,Franck’sche Verlagshandlung 1983,Band 3,H−L(非特許文献7)に説明されるように、電子孔を有するこのような元素または化合物の一般的の通常の定義と解される。適当な化合物は、例えば、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、スズカルボキシラート、例えば2−エチルヘキサン酸スズ(II)、シュウ酸スズ(II)、酢酸スズ(II)または酢酸スズ(IV)、スズ(IV)アルコラート、例えばスズ酸テトラ(メチル)、スズ酸テトラ(エチル)、スズ酸テトラ(プロピル)、スズ酸テトラ(イソプロピル)、スズ酸テトラ(イソブチル)、または有機スズ化合物、例えばブチルスズマレエートまたはジブチルスズジラウレートである。
【0031】
適したチタン化合物には、アルコラート、例えばオルトチタン酸テトラ(メチル)、オルトチタン酸テトラ(エチル)、オルトチタン酸テトラ(プロピル)、オルトチタン酸テトラ(イソプロピル)、オルトチタン酸テトラ(ブチル)、オルトチタン酸テトラ(イソブチル)、オルトチタン酸テトラ(ペンチル)またはオルトチタン酸テトラ(2−エチルヘキシル);アシラート、例えばヒドロキシチタンアセテート、ヒドロキシチタンブチレートまたはヒドロキシチタンペンタノエート;カルボキシラート、例えば酢酸チタン(IV)、プロピオン酸チタン(IV)、酪酸チタン(IV)、ペンタン酸チタン(IV)または2−エチルヘキサン酸チタン(IV);またはキレート、例えばテトラエチレングリコールチタネートまたはテトラプロピレングリコールチタネートが挙げられる。対応するジルコニウムまたはハフニウム化合物も首尾良く使用でき、例えばオルトジルコニウム酸テトラ(メチル)、オルトジルコニウム酸テトラ(エチル)、オルトジルコニウム酸テトラ(プロピル)、オルトジルコニウム酸テトラ(イソプロピル)、オルトジルコニウム酸テトラ(ブチル)、オルトジルコニウム酸テトラ(イソブチル)、オルトジルコニウム酸テトラ(ペンチル)またはオルトジルコニウム酸テトラ(2−エチルヘキシル)などがある。
【0032】
ホウ酸並びにホウ酸エステル、例えばホウ酸トリメチルエステル、ホウ酸トリエチルエステル、ホウ酸トリプロピルエステル、ホウ酸トリイソプロピルエステル、ホウ酸トリブチルエステルまたはホウ酸トリイソブチルエステルも同様に適している。
【0033】
また同様に、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、カルボン酸アルミニウム、例えば酢酸アルミニウムまたはステアリン酸アルミニウム、またはアルミニウムアルコレート、例えばアルミニウムトリブチラート、アルミニウムトリ−sec.−ブチラート、アルミニウムトリ−tert.−ブチラート、またはアルミニウムトリイソプロピラートも適している。
【0034】
酸化亜鉛、硫酸亜鉛及びカルボン酸亜鉛、例えば酢酸亜鉛二水和物またはステアリン酸亜鉛、及び酢酸鉄(II)または鉄(III)水酸化物酸化物も触媒として使用できる。
【0035】
触媒は、既に最初から反応混合物に加えてもよいし、または後になってから初めて、例えば反応水の分離が始まった時に、高められた温度下に安全策に注意しながら加えることができる。この際、触媒は一度にまたは少しずつ加えることができる。エステル化反応の終わり頃に更に残量の触媒を添加することが特に望ましい。
【0036】
添加されるエステル化触媒の量は、不足量で添加された出発化合物、合目的的にはポリオールを基準に1×10
−5〜20モル%、特に0.01〜5モル%、特に0.01〜2モル%である。より多量の触媒の場合は、ポリオールエステルの解裂反応を考慮する必要がある。
【0037】
特にエーテルジオール、例えばトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールをベースとするポリオールエステルの製造の場合には、反応の終了頃に高い触媒濃度を使用の時及び遊離のヒドロキシル基の最後の残りの転化の段階において、エーテル鎖の増強された解裂が危惧され、そのためこの場合には、反応温度または印加するべき圧力を適合させる必要がある。選択された触媒濃度が高いほど、一般的により低い反応温度及び印加すべき圧力を選択すべきであり、そして最適化された温度及び圧力プロファイルに従って作業するべきである。触媒濃度が低すぎる場合には、妥当な反応時間内で許容可能な転化率が観察されない程にエステル化速度が遅くなる。
【0038】
エステル化触媒の添加は液状または固体の形で行うことができる。固形触媒、例えば酸化スズ(II)、酸化亜鉛もしくは鉄(III)水酸化物酸化物は、エステル化反応の終了後に、更なる仕上げ処理の間に分離される。エステル化触媒が、エステル化反応の終了後に反応混合物中になおも溶解された状態で存在する液状化合物、例えばオルトチタン酸テトラ(イソプロピル)またはオルトチタン酸テトラ(ブチル)として加える場合には、これらの化合物は、本発明による後処理法によって難溶性転化生成物へと転換され、これは、エステル化反応中に存在した吸着剤と一緒に、濾過により簡単な方法で分離できる。
【0039】
エステル化は、吸着剤の存在下に行われる。この際、化学的な実務において実験室でも工業的プラントでも通常使用される、多孔性の大表面積の固形の材料が使用される。
このような材料は、
高表面積のシリカゲル類(Silicagele)(シリカキセロゲル)、シリカゲル(Kieselgel)、珪藻土、高表面積酸化アルミニウム及び酸化アルミニウム水和物、
鉱物性クレー、鉱物性カーボネート、または活性炭である。特に、活性炭が好適であることが実証された。一般的に、吸着剤は微細に反応溶液中に懸濁され、これは、強力な攪拌によってまたは不活性ガスの導入によって動かされる。それによって、液体相と吸着剤との密な接触が達成される。吸着剤の量は広範囲で自由であり得、そして個々の要求に対して相応して調節できる。液状反応混合物100重量部を基準にして、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部の吸着剤が使用される。
【0040】
冒頭に記載したポリオールエステルの品質基準のために、反応水を除去しながらのエステル化段階での及び粗製エステルの仕上げ処理でのプロセスステップは非常に本質的なプロセス上の特徴である。というのも、これらのプロセスステップの調整は、最終生成物の官能的及び光学的特性並びに触媒の残留含有率に本質的な程度で影響を及ぼすからである。特に、最適化されたプロセスの実行によって、エーテルジオール、例えばトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールをベースとするポリオールエステルは、高い純度並びに低い色数及び高い色安定性をもって得られる。これに対して、原料である多価アルコール及び脂肪族モノカルボン酸の構造は、ポリオールエステルを用いて可塑化されたプラスチック材料の機械的及び熱的特性にとって決定的であり、そして潤滑剤の加水分解及び酸化安定性に影響を及ぼす。
【0041】
反応の終了後に生じる反応混合物は、目的の反応生成物としてのポリオールエステルの他に
、未転化の出発物質、特に、
エステル化反応においてモノカルボン酸過剰で作業されるためになおも過剰の脂肪族モノカルボン酸を含む。通常は、先ず、未転化で過剰に存在する出発化合物を、合目的的には減圧をかけながら、留去する。
【0042】
次いで、その都度の圧力下で水の沸点未満で粗製エステルに水を加える。水の添加量は、比較的少なく、そして反応混合物を基準に0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%である。この際、過剰の出発化合物の分離後、
及び過剰のモノカルボン酸を蒸留して分離した後に、反応混合物を常圧下に40〜100℃未満、好ましくは60〜90℃の範囲の温度に冷却しそして水を添加することが推奨される。反応混合物を基準とした水の添加量は比較的少ないため、添加された水は例外的な場合にのみ予熱される。続く水処理は、40〜100℃未満、好ましくは60〜90℃の温度範囲で、10分間〜4時間、好ましくは30分間〜2時間の期間にわたって、強力な攪拌、循環によってまたは不活性ガスの導入によって、行われる。水処理では、既に粗製エステル中に導入された熱エネルギー、例えばエステル化反応の間に導入された加熱エネルギーまたは過剰の出発化合物の蒸留による分離の間に供給された熱エネルギーを利用する。時折は、40〜100℃未満、好ましくは60〜90℃の温度範囲を水処理の間に維持するために、水処理の間にも、なおも追加的に熱エネルギーが供給される。
【0043】
水の添加は、同様に常圧を超える高められた圧力下に行うことができる。上記の水の添加量及び処理時間は、常圧作業モードに相当する。処理温度は、少なくとも100℃であり、そして印加した圧力によって決定される。温度の上限は、印加した圧力下で水の沸点未満まで調節でき、好ましくは100〜150℃である。
【0044】
驚くべきことに、比較的低い温度で、本発明による作業法に従い水で後処理することによって、ルイス酸触媒は、10分間〜4時間、好ましくは30分間〜2時間の比較的短い反応時間の後に既に、難溶性で簡単に分離できる転化生成物にほぼ完全に変換されることが見出された。
【0045】
ルイス酸触媒を水蒸気処理を用いて二次生成物に転化するDE102009048775A1(特許文献3)から既知の方法に対して、本発明によれば、バッチ式の方法の実行において、製造プラントにおける粗製エステルの滞留時間を大きく短縮でき、それ故、所望のポリオールエステルの空時収量を大きく高めることができる。水蒸気処理は、比較的高い温度、好ましくは150〜220℃の温度でも行われ、そのため、特に処理時間が長い場合には、望ましくない分解反応及び色数の悪化が起こる恐れがある。エーテルジオール、例えばトリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールをベースとするポリオールエステルの製造の場合には特に、熱負荷が過度になると、エーテル鎖の望ましくない分解が予期され得る。それ故、同様に水蒸気処理の間にも、酸反応性化合物を放出しながらのエステル基の解裂が起こる恐れがあり、そのため、例えばDIN EN ISO3682/ASTM D 1613に従い決定した、中和価または酸価の規格値を確実に遵守するために、塩基反応性物質を用いた後続の処理が必要である。それで、DE102009048775A1(特許文献3)では、水蒸気処理の間のポリオールエステルの過度の熱負荷を回避し、それによって分解反応及び色数の悪化を抑止するために、作業温度に達するまでの加熱時間の間、作業を非常に穏やかに進めることが、明らかに指摘されている。
【0046】
これらの欠点は、その都度の圧力下での水の沸点未満の温度での水を用いた本発明による処理によって回避できる。比較的短い処理時間及び比較的低い処理温度の故に、色数の悪化及びエステル基の解裂及びエーテルジオールのエステル化の場合にはエーテル基の解裂のリスクが少なくなり、そのため、粗製エステルの更なる仕上げ処理方法の間の、塩基反応性試薬を用いた処理を無しで済ませることができる。それによって、次いで塩の形で分離する必要のあるアルカリイオン、例えば水酸化ナトリウムの導入が有利に避けられる。アルカリイオンの残分は、目的のポリオールエステルの単離挙動に不利に影響を与える。それ故、本発明による後処理方法では、酸価または中和価を低下させるための塩基反応性化合物の使用が省略される。
【0047】
本発明による後処理の更に別の形態の一つでは、熱または減圧の発生に使用される水蒸気の凝縮によって回収される水が使用される。エステル化プラントの操業に使用されそして回収されるこの水は、凝縮水ともしばしば称される。この方法形態では、新鮮な水の使用、それ故、追加的な排水の発生は避けられる。凝縮水は高められた温度下でも生じ、そしてこの凝縮水は、必要な処理温度において、前述の追加的な加熱無しで粗製エステルに混合することができる。
【0048】
水を用いた本発明による後処理法によって、ルイス酸触媒が加水分解され、そして不溶性の触媒二次生成物に変換される。ルイス酸触媒の使用によって導入されそして粗製エステル中に溶解している混在物の残留含有率、例えばチタン含有率は、ASTM D 5185に従う分析決定法によって経時的に追跡される。この混在物の残留含有率が規定の限界値未満まで低下したら、粗製エステルを更に仕上げ処理する。
【0049】
一つの方法形態では、先ず粗製エステルから、不溶性の触媒二次生成物及び吸着剤を濾別し、次いで乾燥する。
【0050】
濾過は、慣用の濾過装置中で、常温でまたは120℃までの温度で行われる。濾過は、慣用の濾過助剤、例えばセルロース、ケイ酸ゲル、珪藻土または木粉によって援助することができる。しかし、それらの使用は、例外的なケースに限られる。
【0051】
その後、例えば高められた温度下に不活性ガスを生成物中に導通することによって、ポリオールエステルの乾燥を行う。乾燥処置を援助するために、水蒸気を追加的に導入することもできる。高められた温度下で、同時に減圧をかけることもでき、そして場合によっては不活性ガスを生成物中に導通することもできる。不活性ガスの作用無しで、高められた温度下のみでまたは低められた圧力下のみで作業することもできる。各々の乾燥条件、例えば温度、圧力及び時間は、簡単な予備実験によって求めることができる。一般的に、80〜250℃、好ましくは100〜180℃の範囲の温度、及び0.2〜500hPa、好ましくは1〜200hPa、特に1〜20hPaの圧力で作業される。場合によっては水蒸気の導入と一緒に乾燥することによって、出発化合物、例えばモノカルボン酸の残部、及び水が除去される。
【0052】
代替的な方法形態の一つでは、粗製エステルは、先ず、不溶性触媒生成物及び吸着剤の存在下に乾燥し、次いで濾過することができる。
【0053】
幾つかのケースでは、水処理の後で及び好ましくは濾過の後及び乾燥の前に、得られたポリオールエステルを過酸化水素を用いた処理に、例えばDE102010027458A1(特許文献10)に記載の方法に従い過酸化水素水溶液を用いた処理に付すことを有利であることが証明し得る。この場合には、その後に、場合により乾燥及び精密濾過と共に、水蒸気処理を行う。水蒸気処理は、過酸化物系化合物の破壊に及び導入された水の除去に役立ち、そして一般的に常圧下に行われる。但し、合目的的に400hPaまでの軽い減圧の使用は排除されない。水蒸気処理は、一般的に100〜250℃、好ましくは150〜220℃、特に170〜200℃の温度で行われる。これは、通常は、0.5〜5時間の期間にわたって行われる。
【0054】
色が明るく、またその他の規格、例えば含水率、残留酸含有率、触媒成分の残留含有率及びモノエステルの残留含有率を満たすポリオールエステルが得られる。
【0055】
エステル化反応のための原料として使用される多価アルコールまたはポリオールは
次の一般式(II)を満たす。
H−(−O−[−CR
1R
2−]
m−)
o−OH (II)
式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル、エチルもしくはプロピル、または炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基を意味し、mは1〜10の整数、好ましくは1〜8の整数、特に1、2、3または4を意味し、oは2〜15の整数、好ましくは2〜8の整数、特に2、3、4または5を意味する。
【0056】
エステル化反応において色の明るいポリオールエステルに転化することができるポリオールとしては、
例えばジ−トリメチロールプロパンまたはジ−ペンタエリトリトールが適している。
【0057】
他のポリオールとしては、エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコール
のオリゴマー、特にエーテルジオールのジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールまたはジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコールが考慮される。エチレン−及びプロピレングリコールは、工業的に生産されている化学品である。それらの製造のための基礎物質は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドであり、それらを加圧下に水と加熱することによって1,2−エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコールが得られる。ジエチレングリコールは、エチレングリコールのエトキシル化によって得られる。トリエチレングリコールは、テトラエチレングリコールと同様に、エチレングリコールを製造するためのエチレンオキシドの加水分解において副生成物として生ずる。どちらの化合物も、エチレングリコールとエチレンオキシドとを反応させることによっても合成できる。ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びより高級のプロポキシル化生成物は、1,2−プロピレングリコールにプロピレンオキシドを複数回付加して得ることができる。
【0058】
色が明るいポリオールエステルを得るためには、エステル化反応に、分子中に3〜20個の炭素原子を有する線状または分枝状の脂肪族モノカルボン酸を使用する。多くの場合において飽和酸が好ましいものの、可塑剤または潤滑剤の各々の使用分野に依存して、不飽和カルボン酸も、エステル合成の反応成分として使用できる。ポリオールエステルの構成要素としてのモノカルボン酸の例は、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−ペンタン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、n−ヘキサン酸、2−エチル酪酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、2−メチルオクタン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−メチルウンデカン酸、イソウンデカンカルボン酸、トリシクロデカンカルボン酸及びイソトリデカンカルボン酸である。該新規方法は
、オリゴマー性エチレングリコール並びにオリゴマー性プロピレングリコールと、C4〜C13もしくはC5〜C10モノカルボン酸とのポリオールエステルの後処理のために、並びにジ−トリメチロールプロパンをベースとするポリオールエステルの後処理に特に有効であることが判明した。
【0059】
エチレングリコール並びにそれのオリゴマーのポリオールエステルは、全ての慣用の高分子量熱可塑性物質のための可塑剤として優れて適している。これらは、多層もしくは複合ガラスの製造のための中間層としてグリコールエステルと混合されるポリビニルブチラールへの添加物として使用されることが特に有効であることが判明した。これらは同様に、コーティング材として様々な用途がある、プラスチックの水性分散液中の凝集剤(coalescence agent)または成膜助剤としても使用できる。本発明による後処理方法によれば、優れた色特性を持つポリオールエステルが簡単な方法で製造でき、これは、他の品質要求、例えば少ない臭い、低い酸価及び低い触媒汚染をも満たす。本発明による方法は、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3G8エステル)、テトラエチレングリコールージ−n−ヘプタノエート(4G7エステル)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3G6エステル)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7エステル)またはテトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4G8エステル)の後処理に特に適している。
【0060】
本発明による方法は、化学的技術に典型な反応装置中でバッチ式に行われる。攪拌タンクカスケードも含む攪拌タンク、または反応管が有効であることが判明した。
【0061】
以下の例では、本発明による方法をより詳しく説明する。
【実施例】
【0062】
例1:
後で水処理を行うトリエチレングリコール−ジ−2ーエチルヘキサノエート(3G8エステル)の製造
攪拌機、内部温度計及び水分離器を備えた加熱可能な四つ首フラスコ中に、1.66モルのトリエチレングリコール及び4.33モルの2−エチルヘキサン酸を仕込んだ。総重量を基準に0.025重量%のチタン触媒Tyzor(登録商標)TPT及びトリエチレングリコールの仕込み量を基準に1重量%の活性炭を加えた後、反応混合物を、600hPaで、220℃の温度に加熱し、そして生じた反応水を除去した。この段階で二時間の反応時間の後に、圧力を400hPaに低め、そして温度を220℃に維持した。反応の経過は、水分離器を介して排出された反応水の連続的な計量、並びに試料採取及び試料のガスクロマトグラフィ検査によって追跡した。総反応時間は7時間であった。次いで、過剰の2−エチルヘキサン酸を、110〜210℃の塔底温度及び1hPaの圧力下に蒸留して除去した。
【0063】
粗製エステルを基準に3重量%の水を加えた後、粗製生成物を90℃で60分間にわたり攪拌し、次いで濾過した。チタン含有率が0.5ppmの検出限界未満のトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートが得られた(チタン含有率の決定はASTM D 5185に従う)。ガスクロマトグラフィ検査の結果(重量%)並びに測定された中和価(DIN EN ISO3682/ASTM D 1613)を以下の表1に纏めて記す。
【0064】
【表1】
【0065】
例2:
水を用いた後処理; 様々な水量及び処理時間の比較
以下の試験では、例1に従い製造したトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを使用し、これは、過剰の2−エチルヘキサン酸の分離の後に、80ppmの比較的高いチタン含有率を有した。粗製エステルを基準とした後処理に使用した水量、使用した処理時間及び求められたガスクロマトグラフィ含有率(重量%)並びにDIN ISO6271に従うハーゼン色数及びASTM D 5185に従うチタン含有率を以下の表に纏めて記す。
【0066】
【表2】
【0067】
高いTi含有率を0.5ppm未満(検出限界)の値まで減少させるためには、90℃で1時間の処理時間で、粗製エステル量を基準として3重量%の水量で十分であることが示される。更に、この水処理はハーゼン色数に有利な影響を持ち、これを、使用材料の46単位から、28単位(試験2−C)に低下させることができる。
【0068】
新鮮な水の代わりに、熱または真空の発生のために使用した水蒸気の凝縮によって回収された水(しばしば凝縮水とも称される)も同様に、粗製エステル中のチタンの減少のために使用できる。
【0069】
以下の表3には、凝縮水を用いた粗製エステルの処理の条件並びにASTM D 5185に従い求めたチタン含有率を示す。
【0070】
【表3】
【0071】
表3の結果が示すように、凝縮水を使用した場合にも、処理された粗製エステル中のチタン残留含有率を大きく減少させることができる。
【0072】
例3:
過酸化水素水溶液を用いた追加的な後処理及びその直後の水蒸気処理
この設定の試験では、水処理の後に検出限界未満のチタン残留含有率を有するが、ハーゼン色数に関して満足できないトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3G8エステル)を、30%濃度過酸化水素水溶液を用いた後処理に付した。使用された過酸化水素量は、処理した粗製エステルを基準に無水で0.1重量%であった。過酸化水素処理の後、その直後に水蒸気処理を、その後に乾燥を行った。使用した反応条件、ガスクロマトグラフィにより求めた組成(重量%)、並びに求められた特性値を、以下の表3に纏めて記す。
【0073】
【表4】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
次の一般式(I)
R(OH)n (I)
[式中、Rは、炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の脂肪族または環状脂肪族炭化水素残基を意味し、そしてnは、2〜8の整数、好ましくは2、3、4、5または6を意味する]
または、以下の一般式(II)
H−(−O−[−CR1R2−]m−)o−OH (II)
[式中、R1及びR2は、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル、エチルもしくはプロピル、または炭素原子数1〜5のヒドロキシルアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基を意味し、mは1〜10の整数、好ましくは1〜8の整数、特に1、2、3または4を意味し、oは、2〜15の整数、好ましくは2〜8の整数、特に2、3、4または5を意味する]
で表されるポリオールと、炭素原子数3〜20の線状または分枝状脂肪族モノカルボン酸とを、元素としてのまたはそれらの化合物の形態のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、亜鉛、ホウ素、アルミニウムもしくはスズの群から選択される、触媒としてのルイス酸の存在下に及び反応混合物100重量部に対し0.1〜5、好ましくは0.5〜1.5重量部の量の吸着剤の存在下に、生じる水を除去しながら、反応させることによって製造されたポリオールエステルの後処理のためのバッチ式方法であって、得られた粗製エステルに、その都度の圧力下に水の沸点未満の温度で水を添加し、及び、水と混合した粗製エステルを、塩基反応性化合物は使用せずに後処理し、及び難溶性転化生成物とエステル化反応中に存在する吸着剤を濾別することを特徴とする、前記方法。
2.
各々後処理すべきポリオールエステルを基準にして0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%の量の水を加えることを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.
水を用いた後処理が、常圧下に40〜100℃未満の温度、好ましくは60〜90℃の温度で行われることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
4.
水を用いた後処理が、常圧より高い圧力下に及び少なくとも100℃で行われることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
5.
水を用いた後処理が、10分間〜4時間の期間、好ましくは30分間〜2時間の期間にわたって行われることを特徴とする、上記1〜4のいずれか一つに記載の方法。
6.
熱または真空の発生のために使用される水蒸気の凝縮によって回収される水が後処理に使用されることを特徴とする、上記1〜5のいずれか一つに記載の方法。
7.
水を用いた後処理の後に、過酸化水素を用いた更なる処理及びその直後の水蒸気処理を行うことを特徴とする、上記1〜6のいずれか一つに記載の方法。
8.
トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートまたはテトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートの後処理のための、上記1〜8のいずれか一つに記載の方法。