【実施例】
【0028】
(実施例1)
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド
【0029】
【化2】
【0030】
パートA
吉草酸無水物(6.03g)及び塩酸ピリジン(0.198g)をピリジン(8.28g)に加えた溶液を、3−アミノ−4−クロロキノリン(2.94g)をピリジン(5.0g)に加えた溶液に加え、反応液を室温で16時間攪拌した後、60℃で3時間加熱した。反応液を減圧下濃縮し、炭酸ナトリウム(15mLの10%水溶液)を加えた。反応液を30分間攪拌してから濾過した。得られた固体を水(60mL)で洗浄し、真空下で4時間乾燥して4.59gのN−(4−クロロキノリン−3−イル)バレルアミドを褐色のフレークの粗生成物として得た。この粗生成物をヘプタン(10mL)から再結晶化し、回収された生成物をソックスレー抽出によりヘプタンを16時間還流して更に精製した。ソクスレー抽出装置からの回収フラスコをフリーザー内で2時間冷却した。得られた固体を濾過により回収し、真空下で乾燥して2.00gのN−(4−クロロキノリン−3−イル)バレルアミドを白色の固体として得た。
【0031】
パートB
4−アミノ−1−ブタノール(7.68g)及びピリジン(7.00g)をジクロロメタン(100mL)に加えた溶液を氷浴中で冷やし、クロロギ酸ベンジル(14.37g)をジクロロメタン(100mL)に加えた溶液を攪拌しながら30分間かけて徐々に加えた。氷浴を外し、反応液を更に16時間攪拌した。塩酸(1.2M、200mL)を加え、各相を分離した。有機相を乾燥(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をトルエンから再結晶化し、真空下で乾燥して5.15gのベンジル(4−ヒドロキシブチル)カルバメートを得た。
【0032】
N−ヒドロキシフタルイミド(3.36g)、ベンジル(4−ヒドロキシブチル)カルバメート(4.18g)及びトリフェニルホスフィン(7.41g)をジクロロメタン(100mL)に加えた溶液を氷浴中で冷やし、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD、5.68g)をジクロロメタン(50mL)に加えた溶液の約2/3を攪拌しながら徐々に加えた。反応液の内部温度を監視し、発熱が検出されなくなった時点でDIAD溶液の添加を止めた。氷浴を外し、反応液を室温にまで昇温させた。反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をエタノール(200プルーフ、100mL)に溶解した。ヒドラジン(1.98g、35%水溶液)を加え、反応液を6時間攪拌した。反応液をフリーザー内で冷却し、得られた固体を濾去した。固体をエタノール(50mL)で洗浄した。合わせた濾液を減圧下で濃縮し、ジエチルエーテル(100mL)を加えた。不溶性の不純物を濾去し、2.0MのHClのエーテル溶液(10mL)を溶液に加えた。沈殿物が直ちに生成された。この粗生成物をトルエン(100mL)に加え、環流温度で1時間加熱した。室温にまで冷却した後、固体生成物を濾過により回収し、トルエンで洗い、真空下で乾燥して3.76gのベンジル(4−アミノオキチブチル)カルバメートを得た。
【0033】
パートC
N−(4−クロロキノリン−3−イル)バレルアミド(1.97g)、ベンジル(4−アミノオキシブチル)カルバメート(2.99g)、トリエチルアミン(0.89g)、及び2−プロパノール(40.69g)を加え合わせて、80℃で3.5時間加熱した。反応液を室温にまで冷却し、濾過してから、濾液を減圧下で濃縮した。得られた固体にジクロロメタン(20mL)を加え、混合物を20分間攪拌した。溶解しなかった固体を濾去し、20滴の塩酸(1.2M)を加えることによって弱酸性とした水を10mLずつ2回使用して濾液を洗浄した。有機画分を乾燥し、減圧下で濃縮した。この固体粗生成物をテトラヒドロフランから再結晶化して、2.56gのベンジル4−{[2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチルカルバメートを得た。
【0034】
パートD
ベンジル4−{[2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチルカルバメート塩酸塩(10.05g)をジクロロメタン(80mL)に溶解し、炭酸ナトリウム(2.02g)を30mLのH
2Oに加えた溶液で抽出した。有機層を氷浴中で冷却し、m−クロロ過安息香酸(5.93g、1.24当量)をジクロロメタン(30mL)に溶解した溶液を徐々に加えた。6時間後、水酸化アンモニウム(10mLの28〜30%水溶液)を反応液に加えた。ベンゼンスルホニルクロリド(6.96g)を10mLのジクロロメタンに加えた溶液を、激しく攪拌しながら徐々に加えた。冷却浴を外し、反応液を更に12時間攪拌した。反応液を水(100mL)で希釈し、有機画分と水性画分とを分離した。水性画分をジクロロメタン(30mL)で抽出した。合わせた有機画分を、5%炭酸ナトリウムを90mLずつ2回使用して洗浄した。
【0035】
このジクロロメタン溶液を蒸留装置に移し、1−ペンタノール(50mL)を加えた。これを40℃に昇温し、ジクロロメタンを減圧下で除去した。次いで濃塩酸(50mL)を加え、反応液を攪拌し、80℃に加熱した。11時間後、溶液を室温にまで冷却し、水(100mL)で希釈した。水性画分を1−ペンタノールから分離し、この1−ペンタノールを水(25mL)で抽出した。これらの水性画分を合わせた。合わせた水性画分に1−ペンタノール(50mL)を加え、これを氷浴中で冷却した。激しく攪拌しながら固体炭酸ナトリウムを加えて、pHを9〜10とした。この混合物を分液漏斗に移し、各画分を分離した。水性画分を、1−ペンタノールを25mLずつ2回使用して抽出した。合わせた1−ペンタノール画分を硫酸ナトリウム上で乾燥後、濾過して、1−ペンタノールに溶解した1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを得た。
【0036】
1−ペンタノール(50mL)にマレイン酸(4.83g)を溶解し、これを攪拌しながら1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンの1−ペンタノール溶液に加えることによって、1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンのマレイン酸塩を調製した。得られた沈殿物を濾過により回収し、乾燥して、7.69gの1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンのビスマレイン酸塩を得た。
1H−NMR(DMSO−d6):δ 0.96(t,3H),1.44(m,2H),1.7〜1.95(m,4H),2.02(m,2H),2.8〜3.1(m,4H),δ 4.43(t,2H),6.07(s,4H),7.57(t,1H),7.73(t,1H),7.80(d,1H),8.16(d,1H)。アンモニウムプロトンのブロードピークが、δ 7.8及びδ 8.7の付近に見られる。
【0037】
別の方法として、1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンのフマル酸塩を以下の手順によって調製した。1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(6.53g)を2−プロパノール(75mL)に溶解し、脱色用炭素を加えた。反応液を加熱還流し、冷めないうちに濾過し、室温にまで冷却した。フマル酸(2.5g)を2−プロパノールに加えた溶液を加え、反応液を環流温度で5分間加熱した。室温にまで冷却すると沈殿物が形成された。生成物を濾過してから真空下で乾燥することにより、6.6gの1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンフマレートを得た。
【0038】
1H−NMR(DMSO−d6):δ 0.95(t,3H),1.42(m,2H),1.70〜1.92(m,4H),1.92〜2.10(m,2H),2.85〜3.05(m,4H),4.34(t,3H),δ 6.46(s,2H),7.30(t,1H),7.47(t,1H),7.60(d,1H),8.02(d,1H)。ブロードなアンモニウムのピークがδ 6.77に見られる。
【0039】
パートE
1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンフマレート(1.30g)をジクロロメタン(25mL)に溶解し、溶液を3×15mLの飽和炭酸ナトリウムで洗浄した。次いで有機画分を15mLの飽和塩化ナトリウムで洗浄し、MgSO
4上で乾燥した。溶液を濾過し、溶媒を減圧下で除去して、生成物を真空下で乾燥して0.79gの1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを遊離塩基として得た。
【0040】
1−(4−アミノブトキシ)−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンを、ジクロロメタン(20mL)及びメタノール(5mL)に溶解した。ステアリン酸(0.71g)を加え、反応液を攪拌してステアリン酸を溶解した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC、0.45g)を加え、反応液を周囲温度で16時間攪拌した。EDCの更なる分量(0.23g)を加え、反応液を更に24時間攪拌した。ステアリン酸(0.22g)及びEDC(0.37g)の最後の分量を加えて反応を完了させ、反応液を周囲温度で更に24時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をBiotageクロマトグラフィーシステム(Si40+M2358−1 SiGelカラム、85:15のジクロロメタン/メタノールによるアイソクラティック溶出)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。半純粋生成物を、90:10のジクロロメタン/メタノールによるアイソクラティック溶出に続いて、95:5のジクロロメタン/メタノールによるアイソクラティック溶出を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーによって更に2回精製した。生成物を含有する画分を濃縮して、1.12gのN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミドをオフホワイトのワックス状の固体として得た。
【0041】
1H−NMR(CDCl
3):δ 0.89(t,3H),1.01(t,3H),1.14〜1.42(m,28H),1.50(m,2H),1.65(m,2H),1.74〜1.94(m,4H),2.02(m,2H),2.20(t,2H),2.95(t,2H),3.40(q,2H),4.33(t,2H),5.59(t,1H),6.10(broad s,2H),7.39(m,1H),δ 7.57(m,1H),7.83(d,1H),8.07(m,1H)。
【0042】
(実施例2)
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)のワクチンアジュバント活性を、組換えヘマグルチニン1(HA)によって免疫したマウスで評価した。IgG2a抗原特異的抗体反応を5つの異なる調製物(1.HA単独(コントロール)、2.HA+レシキモド(比較調製物)、3.HA+ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)中で製剤化した実施例1の化合物(リポソーム製剤)、3.HA+実施例1の化合物、5.HA+DOPC(コントロール)を用いて測定した。
【0043】
実施例1の化合物及びレシキモドは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の水性懸濁液として個別に調製した。DOPCリポソーム製剤中で製剤化した実施例1の化合物は、以下のように調製した。実施例1の化合物のストック溶液を、クロロホルム中10mg/mLの濃度で調製した。ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)のストック溶液をやはり、クロロホルム中10mg/mLの濃度で調製した。それぞれのストック溶液の一定分量を合わせて、DOPC及び実施例1の化合物をそれぞれ10:1の質量比で含有する溶液を得た。溶液を乾燥状態まで風乾し、プローブ超音波処理によって滅菌PBS中に再懸濁した。
【0044】
それぞれ5匹のマウスからなる各マウス群に10μgのHA抗原のPBS溶液を単独で、又は1mg/kgの表1に示した化合物と組み合わせて皮下に免疫した。DOPCコントロールの動物には、実施例1の化合物とともに調製したのと同量のDOPCを投与した。最初の免疫化の2週間後及び4週間後に、同じ組み合わせによってマウスを追加免疫した。免疫の7週間後にマウスから血液採取し、HA特異的IgG2Aの力価を測定した。この測定は、HAをコーティングしたマイクロタイタープレート中で標準的な血清ELISAにより、血清試料を連続希釈することにより行った。IgG2aのデータは、エンドポイント(ベースラインの2倍)が得られた血清の希釈度として示したものであり、1群当たり5匹のマウスについての幾何平均である。
【0045】
【表1】
【0046】
(実施例3)
抗原依存性インターフェロンγ(IFN−γ)反応を、実施例2においてIgG2a抗体反応を測定したものと同じ動物から樹立した脾臓細胞培養物で測定した。動物から脾臓を摘出し、5匹の動物からなる各動物群について加え合わせて2つのプールとし、破砕して単一の細胞懸濁液として、96穴マイクロタイタープレートに播種した。各プールについて、コントロールとしてのPBSチャレンジの3つのウェル、及び10mgのHAチャレンジの3つのウェルを置いた。この後、培養物を37℃で72時間インキュベートした。この後、培地を取り出し、産生されたインターフェロンγをELISAアッセイにより測定した(pg/mL)(表2)。IFNγのデータは、各プールについて3重の測定値を用いた幾何平均値として示す。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例4)
全身性腫瘍壊死因子(TNF)の形成をインビボで誘導するN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)の効果をマウスで評価した。全身性TNFの誘導を、4つの異なる調製物(1.PBS(コントロール)、2.レシキモド(比較調製物)、3.ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)中で製剤化したレシキモド(比較調製物)、4.ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)中で製剤化した実施例1の化合物(リポソーム))を用いて測定した。
【0049】
ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)リポソーム中で製剤化した実施例1の化合物は、実施例2で述べたようにして調製した。DOPC中で製剤化したレシキモドは、DOPC中の実施例1の化合物と同様にして調製した。このレシキモド調製物は、PBS中の水性懸濁液として調製した。
【0050】
1mg/Kgの各試験化合物(すなわちレシキモド又は実施例1の化合物)を含有する調製物を、マウスの皮下に注射した。投与の1時間後及び3時間後にマウスから血液採取し、ELISAアッセイにより血清中の全身性TNFを測定した(pg/mL)。結果は、5匹の動物からなる各動物群について得られた幾何平均として示す。表3のデータは、異なる製剤によるレシキモドの皮下注射によって全身性TNF反応が誘導されるのに対して、N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)は全身性TNF反応を誘導しないことを示している。このことは、全身性のTNFによる副作用を伴わずに局所的な免疫系の強化作用を与えるうえで重要でありうる。
【0051】
【表3】
【0052】
(実施例5)
それぞれ5匹のマウスからなる各マウス群に、10μgのHA抗原を単独で、又は増加する量の表4に示されるN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)/DOPCとともに皮下に免疫した。最初の免疫化の2週間後及び4週間後に、同じ組み合わせによってマウスを追加免疫した。免疫の7週間後にマウスから血液採取し、HA特異的IgG2aの力価を測定した。この測定は、HAコーティングしたマイクロタイタープレート中で標準的な血清ELISAにより、血清試料を連続希釈することにより行った。IgG2aのデータは、エンドポイント(ベースラインの2倍)が得られた血清の希釈度であり、1群当たり5匹のマウスについての幾何平均である。
【0053】
【表4】
【0054】
(実施例6)
抗原依存性インターフェロンγ(IFN−γ)反応を、実施例5においてIgG2a抗体反応を測定したものと同じ動物から樹立した脾臓細胞培養物で測定した。動物から脾臓を摘出し、5匹の動物からなる各動物群について加え合わせて2つのプールとし、破砕して単一の細胞懸濁液として、96穴マイクロタイタープレートに播種した。各プールについて、コントロールとしてのPBSチャレンジの3つのウェル、及び10mgのHAチャレンジの3つのウェルを置いた。この後、培養物を37℃で72時間インキュベートした。この後、培地を取り出し、産生されたインターフェロンγをELISAアッセイによって測定した(pg/mL)(表5)。IFNγのデータは、各プールについて3重の測定値を用いた幾何平均値として示す。
【0055】
【表5】
【0056】
(実施例7)
ヒト末梢血単核球(PBMC)の腫瘍壊死因子(TNF)産生を誘導するN−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)の能力を測定した。ヒト末梢血単核球をヒト提供者より調製し、96穴マイクロタイタープレートに播種した。実施例1の化合物を以下の濃度、すなわち30、10、3.3、1.1、0.37、0.13、0.043、及び0.014μMで各ウェルに加えた。この後、細胞を37℃で一晩インキュベートした。培地を取り出し、TNFの濃度(ng/mL)をELISAアッセイによって測定した(表6)。
【0057】
【表6】
【0058】
(実施例8)
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)のウイルス防御活性を、マウス適応株H1N1 A/Puerto Rico/8/34(米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(バージニア州、マナサス)より入手)を鼻腔内感染させたBalb/c雄性マウス(チャールズリバー社(Charles River)マサチューセッツ州、ウィルミントン)で評価した。感染の4週間前にそれぞれ10匹のマウスからなる各マウス群を、1.PBS、2.10μgのHA、又は3.10μgのHA+DOPCリポソームに加えた0.1mg/Kgの実施例1の化合物でそれぞれ免疫した。感染の2週間前に、同じ各群をそれらの対応する免疫化投与量によって追加免疫した。マウスの生存率を鼻腔内感染後11日間にわたって監視し、そのデータを表7に毎日の生存率(%)として示した。第1群の1匹のマウス、及び第2群の2匹のマウスにおいて、感染後、最初の3日間に体重減少が認められないことによって判定されるように、感染を確立できなかった。したがって、5日目には、第1群は9匹のマウスから構成され、第2群は8匹のマウスから構成されており、第3群及び第4群はそれぞれ10匹のマウスから構成されていた。
【0059】
【表7】
【0060】
(実施例9)
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)の免疫賦活化活性を、マウス予防的抗腫瘍免疫モデルにおいて評価した。C57/Bl雄性マウスの各群(チャールズリバー社(CharlesRiver)、マサチューセッツ州ウィルミントン)を免役し、1)PBS、2)20μgのオボアルブミン、又は3)20μgのオボアルブミン+1.0mg/Kgの実施例1の化合物により2週間隔で2回、追加免疫した。最後の追加免疫の1週間後、各マウスに4E5 B16Ovaメラノーマ腫瘍細胞を皮内注射した。腫瘍注射の11日後にマウスを屠殺し、腫瘍の長径及び短径を測定し、2つの測定値の積を求めた。各群について、平均腫瘍サイズをmm
2+/−標準偏差(s.d.)で求めた。結果を表8に示す。
【0061】
【表8】
【0062】
(実施例10)
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)の用量節約作用を、異なる量のHAを実施例1の化合物と一緒に、又は実施例1の化合物なしで免疫したマウスで評価した。5匹のBalb/c雄性マウスの各マウス群(チャールズリバー社(Charles River)マサチューセッツ州、ウィルミントン)に、1μg、5μg、又は15μgのHAを0.1mg/kgの実施例1の化合物と一緒に、又は実施例1の化合物なしで免疫した。免疫の2週間後及び4週間後に、同じ調製物でマウスを追加免疫した。最後の追加免疫の3週間後にマウスから血液採取し、HAでコーティングしたマイクロタイタープレート中で、標準的な血清ELISAアッセイを用いた血清試料の連続希釈を行うことによりHA特異的IgG1及びIgG2aを測定した。IgG1及びIgG2aのデータを表9にエンドポイント(ベースラインの2倍)が得られた血清の希釈度として示したが、これは1群当たり5匹のマウスについての幾何平均である。0.1mg/Kgの実施例1の化合物をHAに加えることにより、この抗原に対する抗体反応は大幅に増強された。
【0063】
【表9】
【0064】
(実施例11)
N−(4−{[4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]オキシ}ブチル)オクタデカンアミド(実施例1の化合物)の局所的インビボ活性を4匹のBalb/c雄性マウス(チャールズリバー社(Charles River))からなる各マウス群で評価し、レシキモドの活性と比較した(比較化合物)。実施例1の化合物又はレシキモドの溶液を別々のマウス群4群に皮下注射して、投与の1時間後、3時間後、6時間後、及び18時間後の時点で評価を行った。いずれの化合物の最終用量も1.0mg/kgとした。各時点においてマウスから血液採取し、屠殺して、流入領域の腋窩リンパ節及び上腕リンパ節を摘出して、RNA保存液(RNAlater試薬、アンビオン社(Ambion Corporation)、テキサス州オースチン)に入れた。血清試料をELISAによりTNFタンパク質濃度(pg/mL)について分析し、このサイトカインの全身的な存在の指標とした。流入領域のリンパ節を処理して、定量的PCR(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)(カリフォルニア州、カールスバッド)より入手した7900HTサーモサイクラー)によってTNFのmRNA遺伝子発現の測定を行った。示したデータ(表10)は、各群についての平均±標準偏差(s.d.)である。血清TNF濃度の「検出されず」のレベルは10pg/mL未満である。実施例1の化合物の注射後、血清中にTNFタンパク質が検出されることなく流入領域のリンパ節においてTNFのmRNA遺伝子発現が誘導されたことは、実施例1の化合物のサイトカイン誘導作用がもっぱら局所的であることを示している。
【0065】
【表10】
【0066】
したがって、本発明は、式Iの化合物、並びにその医薬組成物及び製剤を提供するものである。一部の実施形態では、式Iの化合物は、リポソームに基づく製剤中に取り込まれる。こうした製剤と混合されるか、又はこうした製剤と別々にではあるが組み合わせて投与される抗原を取り込ませることもできる。例えば、抗原を自己組織化するリポソーム粒子の内腔内に入れて製剤化することができる。こうしたリポソームには、所望のサイズ及び直径の安定した粒子を形成するのに最も適した割合のこうした物質の複合材料が含まれる。サイズは、ウイルス病原体を模倣するためのサブミクロンの範囲、及び細菌抗原を模倣するためのミクロンサイズのものとすることができる。これらのサイズは、粒子の組成及び製剤の処理によって調整することができる。
【0067】
本明細書に開示される方法の特定の実施形態では、式Iの化合物(例えば、本明細書に開示される医薬組成物中の)は、局在化した組織領域、例えば腫瘍塊中に投与される。これらの実施形態の一部では、式Iの化合物は、リポソーム製剤として腫瘍塊などの局在化した組織に投与される。癌ワクチンを含ませることもできる。
【0068】
「局在化した組織領域」とは一般的に身体の比較的小さな部分、例えば10体積%未満、しばしば1体積%未満である。例えば、例えば固体腫瘍又は癌性臓器などのサイズに応じて、局在化した組織領域は一般的に、おおよそ約500立方cm(cm
3)以下、しばしば約100cm
3未満、及び多くの場合で10cm
3以下である。特定の用途では、局在化した組織領域は、1cm
3以下である(例えば、小型の腫瘍小結節、ウイルス病変、又はワクチン接種部位において)。しかしながら特定の場合では、局在化した組織領域は、例えば腹腔全体内に転移した癌を治療するために、最大で数リットルの特に大きな領域である場合もある。局在化した組織領域は、例えば、癌、ウイルス感染した病変、若しくは臓器、又はワクチン接種部位である場合もある。これは例えば、固体腫瘍、リンパ組織、細網内皮系、骨髄、粘膜組織などでありうる。局在化した組織領域は、例えば、乳癌腫瘍、胃癌腫瘍、肺癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、結腸直腸癌腫瘍、腎細胞癌腫瘍、膵臓癌腫瘍、基底細胞癌腫瘍、子宮頸癌腫瘍、メラノーマ癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、又は膀胱癌腫瘍であってよい。局在化した組織領域への式Iの化合物の送達は、例えば、超音波、MRI、及びリアルタイムX線透視法(蛍光透視法)と組み合わせることができる。
【0069】
本明細書に開示される医薬組成物及び方法の一部の実施形態では、医薬組成物は、抗原に対する免疫反応を生じるような有効な量の抗原を更に含む。一部の実施形態では、抗原はワクチンである。ワクチンには、生の又は弱毒化されたウイルス性及び細菌性免疫原、並びに不活化されたウイルス性、腫瘍由来、原生動物、生物由来、真菌性、及び細菌性免疫原、トキソイド、毒素、多糖類、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、細胞ワクチン(例えば、樹状細胞を使用したもの)、DNAワクチン、組換えタンパク質、糖タンパク質、及びペプチドなどの、体液性及び/又は細胞性免疫反応を引き起こすために投与される任意の物質が含まれる。代表的なワクチンとしては、癌、BCG、コレラ、伝染病、チフス、A、B及びC型肝炎、A及びB型インフルエンザ、パラインフルエンザ、ポリオ、狂犬病、はしか、流行性耳下腺炎、風疹、黄熱病、破傷風、ジフテリア、ヘモフィルス−インフルエンザb型、結核、髄膜炎菌及び肺炎球菌ワクチン、アデノウイルス、HIV、水痘、サイトメガロウイルス、デング熱、ネコ白血病、家禽ペスト、HSV−1及びHSV−2、豚コレラ、日本脳炎、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、パピローマウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、炭疽病、及び黄熱病に対するワクチンが挙げられる。例えば、国際特許出願公開第02/24225号(トムセン(Thomsen)ら)に開示されるワクチンを参照されたい。
【0070】
式Iの化合物を抗原とともに、例えば本発明に基づく医薬組成物中に混合して、同時に送達することができる。こうした医薬組成物は、式Iの化合物をリポソーム中に含みうる。これにより、式Iの化合物は、例えば抗原提示細胞に抗原と同時、又はほぼ同時に到達することが可能となる。他の実施形態では、式Iの化合物と抗原とを別々に、又は同時、若しくはほぼ同時に投与してもよい。ワクチンアジュバント(例えば、式Iの化合物などのIRM化合物)と抗原とを免疫細胞に同時に送達することにより、その抗原に対する免疫反応が増強され、抗原特異的な免疫記憶が向上する。最適な送達は、例えば、アジュバントと抗原が同時に抗原提示細胞内で処理される場合に生じうる。
【0071】
上記に具体的に述べた送達方法以外に、式Iの化合物(例えば、本明細書に開示される医薬組成物中の)は、他の任意の適当な方法(例えば、腸管内又は腸管外)によって投与することができる。本明細書で用いるところの腸管内とは、経口摂取によるものを含む消化管を経由する投与のことを指す。腸管外とは、経鼻投与(例えば、吸入による経粘膜投与)、局所投与、眼内投与、及び頬側投与を含む、消化管を経由するもの以外の投与法のことを指すが、実際には、例えば従来の針注射、マイクロニードルアレイを使用した注射、又は他の任意の公知の注射法を用いた注射(例えば、静脈内、筋内、皮下、腫瘍内、又は経皮注射)のことを通常は指す。
【0072】
式Iの化合物は、患者への投与に適した任意の医薬組成物として与えることができるものであり、医薬組成物中に任意の適当な形態(例えば、溶液、懸濁液、エマルション、又は任意の混合物の形態)で存在してよい。医薬組成物は、薬学的に許容される任意の賦形剤、担体、又は分散媒とともに製剤化することができる。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は水を含む(例えば、リン酸又はクエン酸緩衝食塩水)。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、油分(例えば、コーンオイル、ゴマ油、スクアレン、綿実油、大豆油、又はサフラワー油)を含む。医薬組成物は更に、皮膚浸透促進剤、着色剤、香料、香味料、保湿剤、増粘剤、懸濁化剤、界面活性剤、及び分散剤などの1以上の添加剤を含んでもよい。
【0073】
上記に具体的に述べた抗原以外に、本開示の医薬組成物及び方法は、例えば混合物として、又は別々に投与される他の更なる活性物質を含みうる。このような更なる物質としては、化学療法剤、細胞毒性物質、抗体、抗ウイルス剤、サイトカイン、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)アゴニスト、又は更なる免疫反応調節物質が含まれる。式Iの化合物とともに送達することが可能なTNFRアゴニストとしては、同時係属中の米国特許出願公開第2004/0141950号(ノエル(Noelle)ら)に開示されるものなどの、CD40受容体アゴニストが挙げられる。本発明のIRM調製物と組み合わせて使用するための他の活性成分としては、例えば米国特許出願公開第2003/0139364号(クリーグ(Krieg)ら)に開示されるものが挙げられる。
【0074】
一部の実施形態では、本発明に基づく医薬組成物は、従来の局所投与製剤(例えば、クリーム、軟膏、エアロゾル製剤、非エアロゾルスプレー、ジェル、又はローション)でありうる。適当な製剤の種類については、例えば、米国特許第5,238,944号(ウィック(Wick)ら)、米国特許第5,939,090号(ビュールライン(Beaurline)ら)、米国特許第6,245,776号(スワジンスキー(Skwierczynski)ら)、欧州特許第0394026号(シュルツ(Schultz))、及び米国特許出願公開第2003/0199538号(スワジンスキー(Skwierczynski)ら)に述べられている。
【0075】
式Iの化合物は、上記に述べたようにTNF−αの産生を誘導することが示されている。TNFの産生を誘導する能力は、式Iの化合物が、多くの異なる機序で免疫反応を調節しうる免疫反応調節物質として有用であることを示すものであり、式Iの化合物を様々な疾患の治療に有用とするものである。式Iの化合物の投与によってその産生が誘導されうる他のサイトカインとしては、一般的に、I型インターフェロン(例えばINF−α)、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、MIP−1、MCP−1、及び各種の他のサイトカインが挙げられる。他の作用の中でもとりわけ、これら及び他のサイトカインはウイルスの産生及び腫瘍細胞の増殖を阻害するものであるため、式Iの化合物はウイルス性疾患及び腫瘍性疾患の治療に有用である。したがって、本発明は、動物におけるサイトカイン生合成を誘導する方法であって、動物に式Iの化合物の有効量(例えば医薬組成物中の)を投与することを含む、方法を提供するものである。サイトカイン生合成を誘導するために式Iの化合物が投与される動物は疾患(例えば、ウイルス性疾患又は腫瘍性疾患)を有していてもよく、本化合物の投与によって治療法を与えることができる。また、式Iの化合物は、式Iの化合物の投与によって予防的治療が与えられるように、動物が疾患を得る前に動物に投与することもできる。
【0076】
サイトカインの産生を誘導する能力以外に、式Iの化合物は自然免疫反応の他の側面にも影響しうる。例えば、ナチュラルキラー細胞の活性が刺激されうるが、これはサイトカイン誘導による作用と考えられる。式Iの化合物のIRM活性にはマクロファージの活性化も含まれうるが、これにより一酸化窒素の分泌及び更なるサイトカインの産生が刺激される。式Iの化合物のIRM活性には、T細胞によるサイトカイン産生の誘導、特定の抗原に特異的なT細胞の活性化、及び/又は樹状細胞の活性化も含まれうる。更に、式Iの化合物のIRM活性には、Bリンパ球の増殖及び分化が含まれうる。式Iの化合物のIRM活性は、獲得免疫反応にも影響しうる。例えば、IRM活性には、1型Tヘルパー(T
H1)によるサイトカインIFN−γの産生の誘導、及び/又は2型Tヘルパー(T
H2)によるサイトカインIL−4、IL−5及び/又はIL−13の産生の阻害が含まれうる。
【0077】
式Iの化合物の投与によって治療することが可能な代表的な状態としては、
(a)アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、HSV−I、HSV−II、CMV、又はVZV)、ポックスウイルス(例えば、天然痘若しくはワクシニアなどのオルソポックスウイルス、又は伝染性軟属腫)、ピコルナウイルス(例えば、ライノウイルス又はエンテロウイルス)、オルソミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、コロナウイルス(例えばSARS)、パポバウイルス(例えば、性器疣贅、尋常性疣贅、又は足底疣贅を引き起こすものなどのパピローマウイルス)、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス又はデングウイルス)、又はレトロウイルス(例えば、HIVなどのレンチウイルス)による感染によって引き起こされる疾患などのウイルス性疾患;
(b)例えば、エシェリキア属、エンテロバクター属、サルモネラ属、スタフィロコッカス属、シゲラ属、リステリア属、エアロバクター属、ヘリコバクター属、クレブシラ属、プロテウス属、シュードモナス属、ストレプ卜コッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属、ニューモコッカス属、ナイセリア属、クロストリジウム属、バチルス属、コリネバクテリウム属、マイコバクテリウム属、カンピロバクター属、ビブリオ属、セラチア属、プロビデンシア属、クロモバクテリウム属、ブルセラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、又はボルデテラ属の細菌による感染によって引き起こされる疾患などの細菌性疾患; (c)クラミジア、真菌性疾患(例えば、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラスマ症、又はクリプトコッカス髄膜炎)、又は寄生虫疾患(例えば、マラリア、ニューモシスチスカリニ肺炎、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、及びトリパノソーマ感染)などの他の感染症;
(d)上皮内腫瘍、子宮頚部異形成、日光角化症、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、腎細胞癌、カポジ肉腫、メラノーマ、白血病(例えば、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、及びヘアリーセル白血病)、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、及び他の癌などの腫瘍性疾患;
(e)アトピー性皮膚炎又は湿疹、好酸球増加、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、オメン症候群などのT
H2媒介性アトピー性疾患;
(f)全身性エリテマトーデス、原発性血小板血症、多発性硬化症,円板状エリテマトーデス、及び円形脱毛症などの特定の自己免疫疾患;並びに、
(g)ケロイド形成及び他の種類の瘢痕化の阻害などの創傷修復に関連する疾患(例えば、慢性創傷を含む創傷治癒の促進)が挙げられる。
【0078】
式Iの化合物の抗ウイルス及び抗腫瘍活性の機序は、様々な重要なサイトカイン(例えば、少なくとも1種類の腫瘍壊死因子、インターフェロン、及びインターロイキン)の誘導による免疫反応の増強によるところが大きいものと思われる。こうした化合物は、特定の単球/マクロファージ由来のサイトカインの速やかな放出を刺激することが示されており、また、B細胞を刺激して、これらのIRM化合物の抗ウイルス及び抗腫瘍活性における重要な役割を担う抗体を分泌させることが可能である。
【0079】
上記に述べた疾患の治療においては、式Iの化合物は、例えば上記に述べた活性物質のような他の治療法及び他の手術(例えば、ケモアブレーション、レーザーアブレーション、クライオセラピー、及び外科的切除)と組み合わせて使用することができる。
【0080】
サイトカイン生合成を誘導するうえで有効な化合物の量とは、単球、マクロファージ、樹状細胞及びB細胞などの1以上の細胞の種類に、例えば、IFN−α、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−1O及びIL−12などの1以上のサイトカインを、これらのサイトカインのバックグラウンドレベルよりも高い量で産生させるのに充分な量である。正確な量は、当該技術分野では周知の因子によって変化するが、約100ナノグラム/キログラム(ng/kg)〜約50ミリグラム/キログラム(mg/kg)、実施形態によっては約10マイクログラム/キログラム(μg/kg)〜約5mg/kgの用量であると予想される。本発明は更に、動物のウイルス感染症の治療方法、及び動物の腫瘍性疾患の治療方法であって、動物に本発明の化合物又は医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法を提供する。ウイルス感染を治療又は阻害するための有効量とは、非処理のコントロール動物と比較してウイルス性病変、ウイルス量、ウイルス産生速度、及び致死率などのウイルス感染症の1以上の症状の低減を引き起こす量である。こうした治療において有効な正確な量は、当該技術分野では周知の因子によって変化するが、約100ng/kg〜約50mg/kg、実施形態によっては約10μg/kg〜約5mg/kgの用量であると予想される。腫瘍性状態を治療するうえで有効な化合物又は医薬組成物の量とは、腫瘍のサイズ又は腫瘍病巣の数の低減をもたらす量である。この場合もやはり、正確な量は、当該技術分野では周知の因子によって変化するが、約100ng/kg〜約50mg/kg、実施形態によっては約10μg/kg〜約5mg/kgの用量であると予想される。本発明の方法は、任意の適当な患者に対して行うことができる。適当な患者としては、ヒト、ヒト以外の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、又はウシなどが挙げられる。
【0081】
例えば、本発明の実施に適した製剤の組成、本発明に基づく方法において有効な式Iの化合物の正確な量、及び投与レジメンは、担体の性質、患者の免疫系の状態(例えば、抑制されている、不全である、刺激されているなど)、式Iの化合物の投与方法、及び製剤が投与される種などの当該技術分野で周知の因子によって変化する。したがって、すべての可能な応用例について有効な、式Iの化合物を含む製剤の組成、有効量を構成する式Iの化合物の量、又は投与レジメンを一般的に記載することは現実的ではない。しかしながら、当業者であれば、こうした因子を充分に考慮することで、適切な製剤、式Iの化合物の量、及び投与レジメンを容易に決定することが可能である。
【0082】
一部の実施形態では、本発明の方法は、式Iの化合物を例えば約0.0001%〜約20%(特に断らないかぎり、本明細書で与えられるすべての比率(%)は、全製剤に対する重量/重量比率である。)の化合物の濃度を有する製剤として患者に投与することを含むが、実施形態によっては、式Iの化合物は、この範囲の外側の濃度で化合物を与える製剤を用いて投与される場合もある。一部の実施形態では、本方法は、約0.01%〜約1%の式Iの化合物を含む製剤、例えば約0.1%〜約0.5%の式Iの化合物を含む製剤を患者に投与することを含む。
【0083】
一部の実施形態では、本発明の方法は、例えば約100ng/kg〜約50mg/kgの用量を与えるのに充分な化合物を患者に投与することを含むが、実施形態によっては、本方法は、この範囲の外側の用量で化合物を投与することによって行うこともできる。これらの実施形態の一部のものでは、本方法は、約10μg/kg〜約5mg/kgの用量、例えば約100μg/kg〜約1mg/kgの用量を与えるのに充分な化合物を患者に投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の方法は、例えば約0.01mg/m
2〜約10mg/m
2の用量を与えるのに充分な化合物を投与することを含みうる。また、用量は、治療計画の開始の直前に得られた実際の体重を用いて計算してもよい。このようにして計算された用量では、体表面積(m
2)を、下記のデュボイ法を使用して治療計画を開始する前に計算する。すなわち、m
2=(体重(kg)
0.425×身長(cm)
0.725)×0.007184。
【0084】
本明細書に開示される方法の一部の実施形態では、式Iの化合物は例えば週1回〜複数回投与することができるが、実施形態によっては、本発明の方法は、式Iの化合物をこの範囲の外側の頻度で投与することによって行うこともできる。一部の実施形態では、式Iの化合物は、月約1回〜週約5回投与することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物は週1回投与される。
【0085】
式Iの化合物は、高濃度のサイトカインを誘導する一方で化合物の全身濃度は低くなるように製剤化することができるため、望ましくない全身副作用を最小限に抑えつつ、増強された局所免疫反応を与えるのに極めて有用であると考えられる。このことは、腫瘍への直接投与及び/又はワクチンアジュバントなどの多くの用途において有益となりうる。
【0086】
本発明の目的及び利点について上記の実施例によって説明したが、記載した本発明の特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不要に限定するものとして解釈されてはならない。
【0087】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容を、恰もそれぞれが個々に援用されたのと同様にしてそれらの全容を援用するものである。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な改変及び変更が当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではない点、また、こうした実施例及び実施形態はあくまで例示を目的として示されるにすぎないのであって、本発明の範囲は本明細書において以下に記載する特許請求の範囲によってのみ限定されるものである点は理解すべきである。