特許第6392937号(P6392937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392937
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法及び推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/16 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   G01C21/16
【請求項の数】16
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-114313(P2017-114313)
(22)【出願日】2017年6月9日
(62)【分割の表示】特願2016-160875(P2016-160875)の分割
【原出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-28528(P2018-28528A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】500257300
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 宗広
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−222936(JP,A)
【文献】 特開2015−075934(JP,A)
【文献】 特開2016−091482(JP,A)
【文献】 特開2012−242179(JP,A)
【文献】 特開2002−211265(JP,A)
【文献】 特開2014−157052(JP,A)
【文献】 特開2016−057987(JP,A)
【文献】 特開2013−142978(JP,A)
【文献】 特開2007−303856(JP,A)
【文献】 特開2015−207186(JP,A)
【文献】 特開2007−108326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G08G 1/00 − 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置され、前記移動体に対して姿勢変化可能な推定装置であって、
前記推定装置に加わった加速度を検出する検出部と、
前記移動体の速度を取得する取得部と、
前記検出部により検出された加速度の中から、前記取得部により取得された速度が変化した際に検出された加速度を選択し、選択した加速度の方向に基づいて、前記推定装置を基準とした座標系における前記移動体の移動方向を推定する推定部と、
前記検出部が検出してから所定の時間が経過する前の加速度の平均値である第1平均値と、前記所定の時間よりも短い時間が経過する前の加速度の平均値である第2平均値とを算出する算出部と、
前記第1平均値および前記第2平均値に基づいて、前記移動体に設置された前記推定装置の姿勢が変化したか否かを判定する姿勢判定部と、
を有することを特徴とする推定装置。
【請求項2】
前記取得部は、所定の位置測位システムを用いて、前記移動体の位置を特定し、特定した位置の変化に基づいて、当該移動体の速度を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記取得部は、所定の時間間隔で前記移動体の位置を特定し、新たに特定した位置と前回特定した位置との差に基づいて、前記移動体の速度を取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記取得部により取得された速度が変化した日時よりも所定の期間だけ前に前記検出部により検出されていた加速度の方向に基づいて、前記移動体の移動方向を推定する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記取得部により取得された速度の変化に基づいて、前記移動体が加速したか減速したかを特定し、前記検出部により検出された加速度の方向と、前記移動体が加速したか減速したかに基づいて、前記移動体の移動方向を推定する
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか1つに記載の推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記移動体が加速したと判定した場合には、前記検出部により検出された加速度の方向を前記移動体の移動方向とは反対の方向とし、前記移動体が減速したと判定した場合には、前記検出部により検出された加速度の方向を前記移動体の移動方向とする
ことを特徴とする請求項に記載の推定装置。
【請求項7】
所定の状態で前記検出部が検出した加速度の平均値を用いて、重力方向を特定する特定部
をさらに有し、
前記推定部は、前記移動体の移動方向として、前記重力方向に対して垂直な平面上の方向を推定する
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか1つに記載の推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記検出部により検出された加速度の方向を、前記重力方向に対して垂直な平面上の方向に変換し、変換した加速度の平均値に基づいて、前記重力方向に対して垂直な平面上における前記移動体の移動方向を推定する
ことを特徴とする請求項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記推定部は、加速度の大きさに基づいた重みづけを考慮した状態で、前記検出部により検出された複数の加速度を用いて、前記移動体の移動方向を推定する
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか1つに記載の推定装置。
【請求項10】
前記推定部は、加速度の大きさが大きい程、重みが大きくなるように重みづけを行う
ことを特徴とする請求項に記載の推定装置。
【請求項11】
前記推定部は、各加速度の大きさに基づいた重みづけを考慮した状態で、前記検出部により検出された複数の加速度の向きの平均値に基づいて、前記移動体の移動方向を推定する
ことを特徴とする請求項または10に記載の推定装置。
【請求項12】
前記取得部により取得された速度が減速した後で、前記推定部により推定された前記移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が前記検出部により検出され、その後、前記取得部より取得された速度が加速していた場合には、前記移動体が右折又は左折を行ったと判定する移動判定部
をさらに有することを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1つに記載の推定装置。
【請求項13】
前記移動判定部は、前記推定部により推定された前記移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が前記検出部により検出される前に前記速度が減速していなかった場合、または、当該加速度が前記検出部により検出された後で前記速度が加速していなかった場合は、前記移動体が曲線の道路を進行していると判定する
ことを特徴とする請求項12に記載の推定装置。
【請求項14】
前記検出部により所定の閾値を超える加速度が検出された後で、前記取得部により所定の閾値を超える速度が所定の期間を超えて取得されなかった場合は、危険な操作が行われたと判定する操作判定部
をさらに有することを特徴とする請求項1〜13のうちいずれか1つに記載の推定装置。
【請求項15】
移動体に設置され、前記移動体に対して姿勢変化可能な推定装置が実行する推定方法であって、
前記推定装置に加わった加速度を検出する検出工程と、
前記移動体の速度を取得する取得工程と、
前記検出工程により検出された加速度の中から、前記取得工程により取得された速度が変化した際に検出された加速度を選択し、選択した加速度の方向に基づいて、前記推定装置を基準とした座標系における前記移動体の移動方向を推定する推定工程と
前記検出工程で検出されてから所定の時間が経過する前の加速度の平均値である第1平均値と、前記所定の時間よりも短い時間が経過する前の加速度の平均値である第2平均値とを算出する算出工程と、
前記第1平均値および前記第2平均値に基づいて、前記移動体に設置された前記推定装置の姿勢が変化したか否かを判定する姿勢判定工程と、
を含むことを特徴とする推定方法。
【請求項16】
移動体に設置され、前記移動体に対して姿勢変化可能な推定装置を制御するコンピュータに、
前記推定装置に加わった加速度を検出する検出手順と、
前記移動体の速度を取得する取得手順と、
前記検出手順により検出された加速度の中から、前記取得手順により取得された速度が変化した際に検出された加速度を選択し、選択した加速度の方向に基づいて、前記推定装置を基準とした座標系における前記移動体の移動方向を推定する推定手順と
前記検出手順で検出されてから所定の時間が経過する前の加速度の平均値である第1平均値と、前記所定の時間よりも短い時間が経過する前の加速度の平均値である第2平均値とを算出する算出手順と、
前記第1平均値および前記第2平均値に基づいて、前記移動体に設置された前記推定装置の姿勢が変化したか否かを判定する姿勢判定手順と、
を実行させることを特徴とする推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法及び推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン等の持ち運び可能な端末装置を用いて、利用者が乗車している車両を目的地まで案内するカーナビゲーション(以下、「案内」ともいう)の技術が知られている。このような案内を行う端末装置は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを用いて、車両の現在地を特定し、地図や誘導経路を示す画面と特定した現在地とを重ね合わせて表示する。
【0003】
一方、端末装置は、トンネル内等の衛星からの信号が受信しづらい場所では、現在地を表示できなくなる。同じ課題は、GPSに限らず、外来の信号(例えば、携帯電話(セルラー)基地局からの電波や無線LAN電波、ほか)を用いた測位全般に共通する。そこで、加速度計が測定した加速度を用いて、車両の現在地を推定する自律測位の技術が考えられる。例えば、加速度計を有する装置を所定の姿勢で車両内に固定し、装置が検出した加速度から車両の走行状態を推定する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4736866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スマートフォン等の端末装置は、利用者が乗車した車の車種や端末装置を保持するホルダの利用状況等に応じて、車内での設置姿勢がその都度異なるので、車両の走行状態を容易に推定できない場合がある。
【0006】
例えば、端末装置は、端末装置を基準とした軸方向の加速度を検出する加速度計を有するので、端末装置の設置姿勢に基づいて、検出された加速度の方向を車両の移動方向を基準とした方向に変換する。そして、端末装置は、方向を変換した加速度を用いて、車両の移動方向や速度を推定し、推定した移動方向や速度から車両の現在地を特定する。しかしながら、端末装置は、設置姿勢が不明である場合や、設置姿勢が変化した場合は、加速度の方向を変換することができず、走行状態の推定精度が悪化する。
【0007】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、端末装置の設置姿勢によらず、容易に走行状態を推定できる推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係る推定装置は、移動体に対して姿勢変化可能な推定装置である。推定装置は、推定装置に加わった加速度を検出する検出部と、移動体の速度を取得する取得部と、検出部により検出された加速度の中から、取得部により取得された速度が変化した際に検出された加速度を選択し、選択した加速度の方向に基づいて、推定装置を基準とした座標系における移動体の移動方向を推定する推定部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、端末装置の設置姿勢によらず、車両の走行状態を推定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る端末装置が発揮する作用効果の一例を説明するための図である。
図2図2は、実施形態に係る端末装置が有する機能構成の一例を説明する図である。
図3図3は、実施形態に係るGPS速度データベースに登録される情報の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る加速度データベースに登録される情報の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る平均値データベースに登録される情報の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る端末装置が実行する案内処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
図7図7は、実施形態に係る端末装置が実行する取得処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る端末装置が実行する検出処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係る端末装置が実行する推定処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係る端末装置が取得する加速度の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る端末装置が移動方向を推定する処理の過程の一例を示す図である。
図12図12は、実施形態に係る端末装置が設置姿勢の変化を検出する処理の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願に係る推定装置、推定方法及び推定プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ。)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る推定装置、推定方法及び推定プログラムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位及び処理には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0012】
また、以下の説明では、推定装置が実行する処理として、利用者が乗車した車両を目的地まで案内するカーナビゲーションの一例について説明するが、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、推定装置は、利用者が歩行している場合や列車等、車両以外の交通手段を利用している場合にも、以下に説明する処理を実行し、利用者を目的地まで案内する処理を実行してもよい。
【0013】
〔1.移動状態の概要〕
まず、図1を用いて、推定装置の一例である端末装置10が判定する移動態様の概念について説明する。図1は、実施形態に係る端末装置が発揮する作用効果の一例を説明するための図である。例えば、端末装置10は、スマートフォン、タブレット端末やPDA(Personal Digital Assistant)等の移動端末、ノート型PC(Personal Computer)等の端末装置であり、移動通信網や無線LAN(Local Area Network)等のネットワークNを介して、任意のサーバと通信可能な端末装置である。
【0014】
また、端末装置10は、利用者が乗車した車両C10を目的地まで案内するカーナビゲーションの機能を有する。例えば、端末装置10は、利用者から目的地の入力を受付けると、利用者を目的地まで誘導するための経路情報を、図示を省略したサーバ等から取得する。例えば、経路情報には、車両C10が利用可能な目的地までの経路、経路に含まれる高速道路の情報、経路上の渋滞情報、案内の目印となる施設、画面上に表示する地図の情報、案内時に出力する音声や地図等の画像等のデータが含まれる。
【0015】
また、端末装置10は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを用いて、端末装置10の位置(以下、「現在地」と記載する。)を所定の時間間隔で特定する測位機能を有する。そして、端末装置10は、経路情報に含まれる地図等の画像を液晶画面やエレクトロルミネッセンス、LED(Light Emitting Diode)画面等(以下、単に「画面」と記載する。)に表示すると共に、特定した現在地をその都度地図上に表示する。また、端末装置10は、特定した現在地に応じて、左折や右折、使用する車線の変更、目的地への到着予定時間等を表示、若しくは、端末装置10や車両C10のスピーカー等から音声により出力する。
【0016】
ここで、衛星測位システムでは、複数の衛星から発信された信号を受信し、受信した信号を用いて、端末装置10の現在地を特定する。このため、端末装置10は、トンネルの中やビル群に挟まれた場所等、衛星から発信された信号を適切に受信できない場合には、現在地を特定することができない。また、端末装置10に案内を実現させるアプリケーション等は、車両C10から速度や移動方向等の情報を取得する機能を有していない。このため、加速度を測定する加速度センサを端末装置10に設置し、加速度センサが測定した加速度に基づいて、端末装置10の現在位置を推定する手法が考えられる。例えば、加速度センサが測定した加速度に基づいて、端末装置10の移動速度や移動方向等を推定する推定処理や、端末装置10が移動しているか停止しているかを判定する停止判定を行う手法が考えられる。
【0017】
より具体的な例を説明する。例えば、端末装置10は、衛星から発信された信号を適切に受信できない場合には、車両C10がトンネル等に入ったと判定し、最後に特定した車速および移動方向でそのまま推定位置を進める。また、端末装置10は、測定した加速度に基づいて、車両C10が停止しているか否かを判定し、車両C10が停止していると判定した場合には、推定位置の移動を停止させる。一方、端末装置10は、車両C10が停止していないと判定した場合には、測定した加速度を用いて、移動体である車両C10の移動速度を推定し、推定した移動速度で移動しているものとして、案内を継続する。
【0018】
〔1−1.速度推定技術の一例〕
ここで、車両C10の移動速度を推定する速度推定技術の一例について説明する。なお、ここで示す技術は、本発明の前段階となる技術の一例であるが、本来の従来技術に属するものではない。すなわち、ここで示す技術は、本出願人が開発、試験、研究等のために秘密裡に実施している技術であり、いわゆる公知、公用または文献公知など秘密を脱した技術ではない。
【0019】
例えば、図1の(A)に示すように、端末装置10は、画面の短尺方向をx軸とし、画面の長尺方向をy軸とし、画面に対して垂直な方向をz軸として、各xyz軸方向の加速度を測定する。例えば、端末装置10は、画面を正面とした際に、正面側を+z軸方向、背面側を−z軸方向とし、端末装置10の利用時において画面上側を+x軸方向、画面下側を−x軸方向、画面左側を+y軸方向、画面右側を−y軸方向とする端末座標系における加速度を測定する。
【0020】
一方、図1の(B)に示すように、利用者が使用する車両C10の移動方向や速度は、車両C10が進行する方向をZ軸とし、Z軸に対して垂直な平面上において、車両C10が進行する際に左折若しくは右折する方向をY軸方向とし、車両C10の上下方向をX軸方向とする車両座標系で表される。例えば、車両C10の移動方向や速度は、車両C10の上方向を+X軸方向、下方向(すなわち、地面側)を−X軸方向、左折する方向を+Y軸方向、右折する方向を−Y軸方向、車両C10の後ろ方向を+Z軸方向、前方向を−Z軸方向とする車両座標系で表される。
【0021】
ここで、車両座標系と、端末座標系とは、端末装置10の設置姿勢等に応じたずれを有することとなる。そこで、端末装置10は、例えば、端末座標系で測定した加速度を用いて、重力方向、すなわち、車両座標系の−X軸方向を推定し、車両C10が加減速する際や移動方向を変化させる際に生じた加速度の分散を用いて車両C10の移動方向を特定し、推定した基準方向と移動方向とに基づいて、端末座標系で測定した加速度を車両座標系に変換する回転行列を求める。そして、端末装置10は、回転行列を用いて、端末座標系の加速度を車両座標系の加速度に変換し、変換後の加速度を用いて、車両C10が停止しているか否かの停止判定や、車両C10の移動速度の推定を実行する。
【0022】
例えば、端末装置10は、変換後の加速度の各軸方向における振幅、振動数、平均値、標準偏差、最大値、最小値等の情報を特徴量として収集する。また、端末装置10は、車両C10の速度が所定の閾値以上である際に取得された特徴量については、走行中の特徴量として蓄積し、車両C10の速度が所定の閾値以下である際に取得された特徴量については、停止中の特徴量として蓄積する。
【0023】
そして、端末装置10は、蓄積した特徴量を用いて、車両C10が停止しているか否かを判定する停止判定モデル(例えばサポートベクトルマシン(SVM:Support Vector Machine)等による)を学習し、学習した停止判定モデルを用いて、トンネル等の衛星測位システムが使用できない場合に、車両C10が停止しているか否か判定する。そして、端末装置10は、車両C10が停止していないと判定した場合には、車両座標系で取得された加速度のうち、移動方向を含む面上の加速度の値の積分値に基づいて、車両C10の移動速度を推定する。
【0024】
しかしながら、このような技術では、車両C10が移動する際に生じた加速度の分散を用いて車両C10の移動方向を特定するので、回転行列を求めるために、車両C10が何度も加速や減速を行う必要があり、回転行列を求めるまでに時間がかかってしまう。この結果、例えば、案内を開始してから回転行列を求める前に車両C10がトンネルに入った場合は、回転行列を求めることができず、停止判定を開始できないという問題がある。また、このような技術では、車両C10の移動方向を決定する際に、ある一定期間のデータを用いる。このため、移動方向を決定する際に用いたデータの質によっては、精度よく移動方向を決定づけることができない可能性もある。
【0025】
また、利用者は、サービスエリア等で端末装置10を所持して下車する場合がある。この結果、端末装置10の姿勢が変化した場合は、回転行列が変化するため、改めて移動方向を特定し、特定した移動方向と基準方向とに基づいて回転行列を求め直す必要がある。しかしながら、このような処理を実行した場合にも、移動方向が特定されるまでは、停止判定を開始することができない。また、道路が傾斜している場合には、端末座標系と車両座標系とにずれが生じるため、誤差が生じやすい。
【0026】
なお、端末座標系で測定した加速度を座標変換せずに加速度の平均値を算出し、算出した平均値の特徴量から停止判定モデルを学習する手法も考えられる。しかしながら、このような手法においては、端末装置10の設置姿勢が不明であるため、案内を開始する度に停止判定モデルを必ず学習する必要がある。また、このような手法を用いた場合であっても、端末装置10の設置姿勢が変化すると、改めて停止判定モデルを学習する必要があり、また、道路が傾斜している場合には、誤差が生じやすい。
【0027】
〔2.実施形態に係る端末装置10が実行する判定処理について〕
そこで、端末装置10は、以下の判定処理を実行する。例えば、端末装置10は、車両C10等、端末装置10が設置された移動体における加速度を検出する。また、端末装置10は、移動体の速度を取得する。そして、端末装置10は、取得された速度が変化した際に検出されていた加速度の方向に基づいて、移動体の移動方向を推定する。
【0028】
以下、図を用いて、上述した判定処理を実現する端末装置10の機能構成及び作用効果の一例を説明する。
【0029】
〔2−1.機能構成の一例〕
図2は、実施形態に係る端末装置が有する機能構成の一例を説明する図である。図2に示すように、端末装置10は、通信部11、記憶部12、複数の加速度センサ13a〜13c(以下、総称して「加速度センサ13」と記載する場合がある。)、GPS受信アンテナ14、出力部15、制御部16を有する。通信部11は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部11は、ネットワークNと有線または無線で接続され、端末装置10と、端末装置10から目的地を受信すると、目的地までの経路を示す経路情報を配信する配信サーバとの間で情報の送受信を行う。
【0030】
記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。また、記憶部12は、案内を実行するために用いる各種のデータである案内情報データベース12a、GPS速度データベース12b、加速度データベース12c、および平均値データベース12dを有する。
【0031】
案内情報データベース12aは、端末装置10が案内を行う際に用いる各種のデータが登録される。例えば、案内情報データベース12aには、図示を省略したサーバ等から受信した目的地までの経路情報が格納される。また、案内情報データベース12aには、案内において出力される各種の画像や音声データ等が格納される。
【0032】
GPS速度データベース12bには、GPS等といった任意の測位システムを用いて取得された車両C10の速度であるGPS速度が登録される。より具体的には、GPS速度データベース12bには、GPSを用いて所定の時間間隔(例えば、1秒)で取得された車両C10の位置の差分から算出されたGPS速度が登録される。なお、以下の説明では、端末装置10は、車両C10の位置の差分からGPS速度を取得する例について説明するが、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、端末装置10は、ドップラー効果を利用して、GPS衛星から受信する信号から車両C10の速度を取得してもよい。例えば、端末装置10は、GPS衛星から受信する信号(搬送波)の波数変化に基づいて、車両C10の速度を取得してもよい。
【0033】
例えば、図3は、実施形態に係るGPS速度データベースに登録される情報の一例を示す図である。図3に示すように、GPS速度データベース12bには、「日時」、「速度」、および「変化量」といった項目を有する情報が登録される。ここで「日時」とは、対応付けられた「速度」で車両C10が移動していると推定される日時を示す情報である。より具体的には、「日時」は、対応付けられた「速度」が示すGPS速度を算出する際に用いた2つのGPS信号のいずれかを受信した日時、または、2つのGPS信号の受信日時の中央値である。このような「日時」は、対応付けられた「速度」が示す速度で車両C10が移動していた日時を示す情報である。
【0034】
また、「速度」とは、GPS速度を示す情報であり、例えば、ある日時に受信したGPS信号が示す位置と、そのGPS信号の直前に受信したGPS信号が示す位置との距離を、各GPS信号を受信した時間間隔で除算することにより算出された車両C10の移動速度が登録される。また、「変化量」とは、対応付けられた「速度」と、前回取得された「速度」との差分、すなわち、GPS速度の変化量を示す情報である。
【0035】
例えば、図3に示す例では、GPS速度データベース12bには、日時「2016/10/1/10:00:15」、速度「30km/h」、および変化量「N/A」とが対応付けて登録されている。このような情報は、日時「2016/10/1/10:00:15」における車両C10のGPS速度として、速度「30km/h」が取得されている旨を示す。また、図3に示す例では、GPS速度データベース12bには、日時「2016/10/1/10:00:16」、速度「32km/h」、および変化量「2km/h/s」とが対応付けて登録されている。このような情報は、日時「2016/10/1/10:00:16」における車両C10のGPS速度として、速度「32km/h」が取得されており、前回取得された速度、すなわち、日時「2016/10/1/10:00:15」における速度「30km/h」との差分が変化量「2km/h/s」である旨を示す。ここで、変化量「2km/h/s」とは、1秒当たり、2km/hの割合で加速が行われた旨を示す。
【0036】
加速度データベース12cには、端末装置10が有する加速度センサ13が測定した加速度が想定される。より具体的には、加速度データベース12cには、所定の時間間隔(例えば、0.02秒)で加速度センサ13が測定した加速度が、所定の期間の間だけ保持される。
【0037】
例えば、図4は、実施形態に係る加速度データベースに登録される情報の一例を示す図である。図4に示すように、加速度データベース12cには、「日時」、「加速度」、および「平均値」といった項目を有する情報が登録される。ここで、図4に示す「日時」とは、対応付けられた加速度が測定された日時を所定の間隔ごとに示す情報である。また、「加速度」とは、対応付けられた日時に検出された加速度を示す情報である。また、「平均値」とは、対応付けられた加速度の平均値、すなわち、対応付けられた「日時」が示す日時に検出された加速度の平均値である。
【0038】
例えば、加速度センサ13が、1秒間に50回の割合(すなわち、0.02秒間隔)で加速度を測定する場合には、任意の1秒間の間に測定された50個の加速度と、その加速度の平均値と、各加速度が測定された日時の中央値とが対応付けられた状態で、加速度データベース12cに登録されることとなる。より具体的には、図4に示す例では、加速度データベース12cには、日時「2016/10/1/10:00:15」、加速度「加速度#1−1」〜「加速度#1−3」、および平均値「平均値#1」とが対応付けて登録されている。このような情報は、加速度「加速度#1−1」〜「加速度#1−3」が測定された日時の中央値が日時「2016/10/1/10:00:15」であり、加速度「加速度#1−1」〜「加速度#1−3」の平均値が平均値「平均値#1」である旨を示す。なお、図4には、「加速度#1−1」や「平均値#1」等といった概念的な値を記載したが、実際には、加速度や平均値を示す値が登録されることとなる。
【0039】
平均値データベース12dは、後述する処理によって加速度データベース12cから収集された平均値である収集平均値が登録される。例えば、図5は、実施形態に係る平均値データベースに登録される情報の一例を示す図である。図5に示すように、平均値データベース12dには、「収集平均値ID(Identifier)」、および「収集平均値」といった項目を有する情報が登録される。ここで、「収集平均値ID」は、収集平均値を識別する識別子であり、「収集平均値」は、加速度データベース12cから収集された平均値である収集平均値である。
【0040】
例えば、図5に示す例では、平均値データベース12dには、収集平均値ID「1」と収集平均値「平均値#1」とが対応付けて登録されている。このような情報は、収集平均値として、加速度データベース12cから平均値「平均値#1」が収集されている旨を示す。
【0041】
図2に戻り、説明を続ける。加速度センサ13は、所定の時間間隔で、端末装置10に係る加速度の大きさと方向とを測定する。例えば、加速度センサ13aは、端末座標系におけるx軸方向の加速度を測定する。加速度センサ13bは、端末座標系におけるy軸方向の加速度を測定する。加速度センサ13cは、端末座標系におけるz軸方向の加速度を測定する。すなわち、端末装置10は、各加速度センサ13a〜13cが測定した加速度を端末座標系の各軸方向の加速度とすることで、端末装置10に対する加速度の向きと大きさとを示すベクトルを取得することができる。
【0042】
GPS受信アンテナ14は、GPS等の衛星測位システムに用いられる信号を衛星から受信するためのアンテナである。また、出力部15は、案内を行う際に地図や現在地を表示するための画面や、音声を出力するためのスピーカーである。なお、加速度センサ13やGPS受信アンテナ14は、所定のハードウェアにより実現される。
【0043】
制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によって、端末装置10内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムが、RAM等の記憶領域を作業領域として実行されることにより実現される。図2に示す例では、制御部16は、案内実行部17、音声出力部18、画像出力部19、移動状態判定部20(以下、総称して各処理部17〜20と記載する場合がある。)を有する。また、移動状態判定部20は、検出部21、特定部22、変換部23、取得部24、推定部25、および判定部26を有する。
【0044】
なお、制御部16が有する各処理部17〜20の接続関係は、図2に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。また、各処理部17〜20は、以下に説明するような案内処理の機能・作用(例えば図1)を実現・実行するものであるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。すなわち、以下の案内処理の機能・作用を実現・実行することができるのであれば、端末装置10は、任意の機能単位で案内処理を実現・実行して良い。
【0045】
〔2−2.案内処理における作用効果の一例〕
以下、図6に示すフローチャートを用いて、各処理部17〜20が実行・実現する案内処理の内容について説明する。図6は、実施形態に係る端末装置が実行する案内処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【0046】
まず、案内実行部17は、利用者から目的地が入力されたか否かを判定する(ステップS101)。そして、案内実行部17は、目的地が入力された場合は(ステップS101:Yes)、図示を省略した外部のサーバから経路情報を取得する(ステップS102)。ここで、案内実行部17は、GPSが使えるか否かを判定する(ステップS103)。
【0047】
例えば、案内実行部17は、GPS受信アンテナ14が衛星からの信号を受信できない場合や、信号を受信できた衛星の数が所定の閾値よりも少ない場合等には、GPSが使用できないと判定し(ステップS103:Yes)、移動状態判定部20により推定された車両C10の移動方向や速度から現在位置を取得する(ステップS104)。例えば、案内実行部17は、移動状態判定部20により推定された現在地を取得する。なお、移動状態判定部20が車両C10の現在地を推定する処理の具体的な内容については、後述する。
【0048】
一方、案内実行部17は、GPSが使えると判定した場合は(ステップS103:No)、GPSを用いて現在地を特定する(ステップS105)。そして、案内実行部17は、音声出力部18や画像出力部19を制御し、GPSを用いた現在地若しくは推定した現在地を用いて、案内を出力する(ステップS106)。例えば、音声出力部18は、案内実行部17からの制御に従って、現在地や車両C10が進むべき方向等を示す音声を出力部15から出力する。また、画像出力部19は、案内実行部17からの制御に従って、現在地と周辺の地図とを重ねた画像や、車両C10が進むべき方向等を示す画像を出力部15から出力する。
【0049】
続いて、案内実行部17は、現在地が目的地の周辺であるか否かを判定する(ステップS107)。そして、案内実行部17は、現在地が目的地の周辺であると判定した場合は(ステップS107:Yes)、音声出力部18や画像出力部19を制御して案内の終了を示す終了案内を出力し(ステップS108)、処理を終了する。一方、案内実行部17は、現在地が目的地の周辺ではないと判定した場合は(ステップS107:No)、ステップS103を実行する。なお、案内実行部17は、目的地が入力されていない場合は(ステップS101:No)、入力されるまで待機する。
【0050】
〔2−3.取得処理における作用効果の一例〕
次に、図7に示すフローチャートを用いて、取得部24が実行・実現する取得処理の内容について説明する。図7は、実施形態に係る端末装置が実行する取得処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【0051】
例えば、取得部24は、所定の時間間隔(例えば、1秒)で、図7に示す取得処理を実行する。まず、取得部24は、GPSを用いて端末装置10の位置、すなわち、車両C10の位置を特定する(ステップS201)。そして、取得部24は、前回GPSを用いて特定した位置と、ステップS201にて特定した位置との差分に基づいて、GPS速度を算出する(ステップS202)。
【0052】
また、取得部24は、前回算出したGPS速度と新たに算出したGPS速度との差分を変化量として算出する(ステップS203)。なお、例えば、取得部24は、t秒おきにGPS速度を算出する場合、前回算出したGPS速度と新たに算出したGPS速度との差分をtで除算した値を変化量としてもよい。そして、取得部24は、ステップS201にて車両C10の位置を特定した日時と、算出したGPS速度と、算出した変化量とを対応付けてGPS速度データベース12bに登録する(ステップS204)。すなわち、取得部24は、所定の位置測位システムを用いて、移動体である車両C10の位置を所定の時間間隔で特定し、特定した位置の変化に基づいて、移動体である車両C10の速度を取得する処理を実行する。
【0053】
例えば、取得部24は、図1中(D)に示すように、1秒間隔でGPS情報を取得し、取得したGPS情報が示す位置の差分から、1秒間隔で、GPS速度#1、GPS速度#2、GPS速度#3を取得する。そして、取得部24は、GPS速度#1とGPS速度#2とから変化量#1を算出し、GPS速度#2とGPS速度#3とから変化量#2を算出する。
【0054】
なお、取得部24は、OBD(On-Board diagnostics)端子等、車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から情報を取得するための一般的な規格を介して、車両C10の速度を取得してもよい。また、取得部24は、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信技術を用いて、車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から、車両C10の移動速度を取得してもよい。このように、車両C10が有する制御装置から速度を直接取得した場合、GPSを用いて移動速度を推定した場合と比較して、速度の精度を向上させるとともに、遅延を抑えることができる。このため、端末装置10は、後述する推定処理において、車両C10の移動方向の推定精度を向上させることができる。
【0055】
〔2−4.検出処理における作用効果の一例〕
次に、図8に示すフローチャートを用いて、検出部21、特定部22、および変換部23が実行する検出処理の流れの一例を説明する。図8は、実施形態に係る端末装置が実行する検出処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【0056】
例えば、検出部21は、加速度センサ13から加速度を取得する(ステップS301)。具体的には、加速度センサ13が所定の時間間隔で、端末座標系の(x、y、z)軸方向ごとに測定した加速度の大きさを取得する。また、検出部21は、所定の期間の間に加速度センサ13が測定した加速度の大きさの平均値を、端末座標系の各軸方向ごとに算出する(ステップS302)。例えば、検出部21は、加速度センサ13が20ミリ秒ごと(すなわち、1秒間に50回の割合)で検出した端末座標系の加速度を1秒分収集する。そして、検出部21は、収集した各加速度のx軸方向の値の平均値x、y軸方向の値の平均値y、z軸方向の値の平均値z、をそれぞれ算出し、算出した各軸方向の平均値からなるベクトル(x、y、z)を平均ベクトルGとする。
【0057】
続いて特定部22は、検出部21によって算出された加速度に基づいて、基準方向を特定する(ステップS303)。より具体的には、特定部22は、図1中(C)に示すように、検出部21によって算出された加速度の平均値からなる平均ベクトルGの方向を、基準方向とする。
【0058】
続いて、変換部23は、端末座標系の所定の軸方向を特定部22が設定した基準方向に一致させる回転行列を算出する(ステップS304)。そして、変換部23は、算出した回転行列を用いて、検出部21により端末座標系で取得された加速度の各成分を変換する(ステップS305)。すなわち、変換部23は、検出部21によって取得された加速度を、車両座標系ではなく、基準方向を基準とする座標系の加速度に変換する。
【0059】
例えば、特定部22は、加速度の平均ベクトルGの方向を基準方向として設定する。そして、変換部23は、端末座標系の−x軸方向と平均ベクトルGの方向とが一致するような回転行列をC1変換式として算出する。ここで、車両C10が停止している場合等では、平均ベクトルGの方向が重力加速度の方向と一致すると予測される。そこで、変換部23は、端末座標系の−x軸方向と平均ベクトルGの方向とを一致させることで、端末座標系の−x軸方向と車両座標系のX軸方向とを一致させる。
【0060】
なお、変換部23は、SVMやGPS速度等を用いて、車両C10が停止しているか否かを判定し、車両C10が停止していると判定された際に加速度センサ13が取得した加速度の平均ベクトルGの方向を基準方向としてもよい。また、変換部23は、端末座標系の−x軸方向と平均ベクトルGの方向とが一致するような回転行列であれば、任意の回転行列を採用してよい。すなわち、変換部23は、y軸方向やz軸方向を任意の方向へと回転させる回転行列を採用してよい。また、以下の説明では、端末座標系の−x軸方向と平均ベクトルGの方向とを一致させるC1変換式を用いて、加速度センサ13が測定した加速度の座標系を変換する処理をC1変換と記載する場合がある。
【0061】
そして、変換部23は、C1変換を行った加速度におけるYZ平面上の平均値を算出し、算出した平均値を加速度を測定した日時とともに所定の期間の間、保持する(ステップS306)。例えば、変換部23は、検出部21によって取得された加速度を、y軸とY軸、z軸とZ軸とが一致していない座標系(基準方向を基準とする座標系)の加速度にC1変換する。また、変換部23は、所定の期間内(例えば、1秒)の間に検出された加速度のうちYZ平面上、すなわち、x軸方向とは垂直な面上の加速度を抽出する。
【0062】
そして、変換部23は、抽出した加速度と、各加速度が検出された日時と、抽出した加速度の平均値とを対応付けて加速度データベース12cに登録する。例えば、変換部23は、ある1秒間の起点、終点または中央点となる日時と、その1秒間の間に測定された加速度のYZ平面上における加速度と、その加速度の平均値とを対応付けて加速度データベース12cに登録する。
【0063】
このように、変換部23は、図1中(E)に示すように、測定した加速度に回転行列を適用し、YZ平面上における加速度の平均値#1、平均値#2、平均値#3を取得する。すなわち、端末装置10は、GPS情報からGPS速度を算出して変化量を算出するとともに、加速度センサ13が検出した加速度の平均値を所定の時間間隔で算出する。
【0064】
なお加速度センサ13が測定した加速度に対して、上述したC1変換を行った場合、端末座標系のx軸と車両座標系のX軸とを一致させることができるものの、端末座標系のy軸やz軸を車両座標系のY軸やZ軸に一致させることが必ずしもできない。そこで、端末装置10は、後述する推定処理により、加速度から車両C10の移動方向を推定し、推定した移動方向に基づいて、端末座標系のy軸やz軸を車両座標系のY軸やZ軸に一致させる回転行列をC2変換式として算出する。
【0065】
〔2−5.推定処理における作用効果の一例〕
次に、図9に示すフローチャートを用いて、推定部25、および判定部26が実行する推定処理の流れの一例を説明する。図9は、実施形態に係る端末装置が実行する推定処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【0066】
例えば、推定部25は、GPS速度データベース12bを参照し、変化量が所定の閾値を超えた日時を特定する(ステップS401)。すなわち、推定部25は、GPS速度を用いて、加速や減速等により車両C10に所定の閾値よりも大きな加速度がかかったと推定される日時を特定する。このようなタイミングで検出された加速度の情報には、加速や減速により生じた加速度の大きさや方向、すなわち、車両C10の移動方向を示す情報が含まれると予測される。そこで、推定部25は、特定した日時において検出された加速度を用いて、以下の処理を実行することにより、車両C10の移動方向を推定する。より具体的には、推定部25は、取得された速度の変化量が所定の閾値を超えた際に検出された加速度の方向に基づいて、車両C10の移動方向を推定する。
【0067】
例えば、推定部25は、特定した日時よりも所定の期間だけ前に測定された加速度の平均値を加速度データベース12cから抽出する(ステップS402)。すなわち、推定部25は、取得された速度が変化した際に検出されていた加速度の方向に基づいて、移動体である車両C10の移動方向を推定する。ここで、GPSを用いて車両C10の移動速度を取得した場合、所定の遅延(例えば、2秒程度)が生じる場合がある。例えば、日時「A」に車両C10が速度「B」で移動していた場合、GPSを用いて車両C10の移動速度を取得すると、日時「A」よりも2秒程度遅延した際の日時における車両C10の速度として、速度「B」が測定されることとなる。そこで、推定部25は、特定した日時よりも所定の期間だけ前に測定された加速度から算出された平均値を加速度データベース12cから抽出する。
【0068】
例えば、推定部25は、図1中(F)に示すように、変化量の値が所定の閾値を超えた時刻からGPS速度の遅延を考慮した時刻だけ前に検出された加速度の平均値を抽出する。例えば、推定部25は、変化量#2の値が所定の閾値を超えている場合には、変化量#2が取得された日時、例えば、GPS速度#2とGPS速度#3とが取得された日時の中央値を特定し、特定した中央値よりも2秒前に取得された加速度から算出された平均値が平均値#1であると特定する。このような場合、推定部25は、平均値#1を加速度データベース12cから抽出する。
【0069】
より具体的な例を挙げると、推定部25は、GPS速度データベース12bを参照し、2km/h/s以上、若しくは、−2km/h/s以下となる変化量と対応付けられた日時、すなわち、所定の閾値以上、加減速が行われた日時を特定する。例えば、図3に示す情報がGPS速度データベース12bに登録されている場合、推定部25は、変化量「18km/h/s」と対応付けられた日時「2016/10/1/10:00:17」を特定する。このような場合、推定部25は、GPSの遅延を考慮して、特定した日時「2016/10/1/10:00:17」から2秒前の日時「2016/10/1/10:00:15」を算出し、算出した日時「2016/10/1/10:00:15」と対応付けられた加速度の平均値を加速度データベース12cから抽出する。例えば、図4に示す情報が加速度データベース12cに登録されている場合、推定部25は、日時「2016/10/1/10:00:15」と対応付けられた加速度の平均値「平均値#1」を抽出する。すなわち、推定部25は、日時「2016/10/1/10:00:15」と対応付けられた加速度を、GPS速度を大きく変化させた加減速による加速度の平均値として抽出する。
【0070】
なお、端末装置10は、車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から、車両C10の移動速度を取得する場合、車両C10の移動速度をほぼリアルタイムで取得することができる。そこで、推定部25は、車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から車両C10の移動速度が取得されている場合には、車両C10の速度の変化量が所定の閾値を超えた時刻と同時刻に検出された加速度や、車両C10の速度の変化量が所定の閾値を超えた時刻と同時期に検出された加速度の平均値を抽出してもよい。
【0071】
ここで、車両C10が加速した場合には、車両座標系においてZ軸方向の加速度が検出され、車両C10が減速した場合には、車両座標系において−Z軸方向の加速度が検出されると考えられる。そこで、推定部25は、取得された速度の変化に基づいて、移動体である車両C10が加速したか減速したかを特定し、検出された加速度の方向と、移動体が加速したか減速したかに基づいて、移動体の移動方向を推定する。より具体的には、推定部25は、GPS速度が減速を示す場合(例えば、変化量の値が負である場合)は、抽出した平均値の符号を反転させることで(ステップS403)、加速度データベース12cから抽出した加速度の方向を揃える。すなわち、推定部25は、車両C10が加速したと判定した場合には、検出された加速度の方向を移動体の移動方向とは反対の方向とし、車両C10が減速したと判定した場合には、検出された加速度の方向を移動体の移動方向とする。
【0072】
そして、推定部25は、抽出した平均値を平均値データベース12dに登録する(ステップS404)。すなわち、推定部25は、車両C10が所定の閾値以上加速したり減速したりした際に検出されたと推定される加速度であって、重力方向に対して垂直な平面上の加速度を収集平均値として平均値データベース12dに登録する。なお、推定部25は、平均値データベース12dに所定の数の収集平均値が登録されている場合には、登録された日時や、算出元となる加速度を測定した日時が最も古い収集平均値を削除し、新たに抽出した平均値を収集平均値として平均値データベース12dに登録してもよい。また、推定部25は、絶対値が所定の閾値よりも大きいGPS速度の変化量が測定される度に、上述した処理を実行してもよい。
【0073】
そして、推定部25は、平均値データベース12dに登録された平均値の平均値に基づいて、車両C10の移動方向を推定する(ステップS405)。ここで、加速度データベース12cに登録された平均値は、重力方向に対して垂直な面上の加速度、すなわち、YZ平面上の平均値である。そこで、推定部25は、平均値データベース12dに登録された平均値のさらに平均値を算出することで、車両C10が直線の加速を行う際に生じる加速度の方向、すなわち、車両座標系におけるZ軸方向の加速度の方向を特定する。
【0074】
すなわち、推定部25は、車両C10の移動方向として、重力方向に対して垂直な平面上の方向を推定する。より具体的には、変換部23は、検出された加速度の方向を、重力方向に対して垂直な平面上の方向にC1変換する。そして、推定部25は、変換された加速度の平均値に基づいて、重力方向に対して垂直な平面上における車両C10の移動方向を推定する。そして、推定部25は、推定した車両C10の移動方向に基づいて、端末座標系を車両座標系へと変換する座標変換式(すなわち、C1変換された加速度を車両座標系へと変換する座標変換式)をC2変換式として算出する(ステップS406)。その後、判定部26は、C2変換式を用いて、加速度センサが測定した加速度を端末座標系から車両座標系へと変換し、変換後の加速度に基づいて、車両C10の移動状態を推定する(ステップS407)。
【0075】
例えば、推定部25は、図1中(G)に示すように、減速か加速かに応じて平均値の向きを補正するとともに、継続して平均値を収集する。また、推定部25は、図1中(H)に示すように、収集した平均値の平均値、すなわち、平均値データベース12dに登録された平均値の平均値をさらに算出し、算出した平均値に基づいて、車両C10の移動方向を推定し、推定した車両C10の移動方向に基づいて、C2変換式を算出する。
【0076】
例えば、図10は、実施形態に係る端末装置が取得する加速度の一例を示す図である。なお、図10に示す例では、図10中(A)〜(C)に示すように、C1変換した加速度をYZ平面上にプロットした図面を記載した。例えば、図10中(A)に示す図面は、GPS速度の変化量が所定の閾値を超えた期間(例えば、1秒)に生じたと推定される複数の加速度をC1変換し、C1変換した加速度をYZ平面上にプロットした図面である。ここで、C1変換では、車両C10の移動方向が不明なため、Z軸を中心とした回転方向が正確ではない。このため、図10中(A)に示すように、車両C10の加速や減速時に生じた加速度をC1変換し、YZ平面上にプロットすると、加速度とZ軸とにずれが生じるとともに、−Z軸方向とZ軸方向とのどちらが移動方向であるかが不明確となる。
【0077】
そこで、端末装置10は、C1変換した加速度のYZ平面上における平均値を用いて、車両C10の移動方向を特定する。例えば、端末装置10は、図10中(B)に示すように、C1変換した加速度を、その加速度が測定された期間ごとに平均値を算出する。すると、端末装置10は、図10中(B)に示すように、加速によって生じる加速度の方向の平均値と、減速によって生じる加速度の方向の平均値とを得ることができる。
【0078】
そして、端末装置10は、図10中(B)に示す加速度の平均のうち、減速によって生じた加速度の方向をYZ平面上で反転させる。例えば、端末装置10は、図10中(C)に示すように、GPS速度の変化量が負である際に生じたと推定される加速度の平均値の向きを、X軸を中心として、YZ平面上でπだけ回転させる。そして、端末装置10は、図10中(D)に示すように、各加速度の向きの平均値を算出し、算出した平均値の方向を、車両C10の加速によって生じる加速度の向き、すなわち、+Z軸方向とする。この結果、端末装置10は、X軸方向を中心としたZ軸とz軸との間の角度αを得ることができる。なお、端末装置10は、図10中(C)に示す平均値と、+Z軸方向との間の角度をそれぞれ算出し、算出した角度の平均値をX軸方向を中心としたZ軸とz軸との間の角度αとしてもよい。
【0079】
そして、判定部26は、C2変換式を用いて、加速度センサ13が測定した加速度から、車両C10の移動方向と速度とを算出する。例えば、推定部25は、加速度センサ13が測定した加速度のC1変換を行い、C1変換後の加速度にC2変換式を適用した場合に加速度センサが測定した加速度を端末座標系から車両座標系へと変換するようなC2変換式を生成する。
【0080】
そして、判定部26は、C2変換後の加速度を用いて、車両C10の移動方向を推定する。例えば、判定部26は、+Z軸方向の加速度が測定された場合は、車両C10が加速していると判定し、−Z軸方向の加速度が検出された場合は、車両C10が減速していると判定する。また、判定部26は、移動方向である−Z軸方向とは垂直な+Y軸方向の加速度が測定された場合は、車両C10が右折したと判定し、−Y軸方向の加速度が測定された場合は、車両C10が左折したと判定する。
【0081】
また、判定部26は、変換後の加速度を用いて、車両C10の移動速度を算出する。具体的には、判定部26は、車両C10の停車時における加速度のZ軸成分の平均値を原点(0)として、加速度のZ軸成分の積分値を、車両C10の移動速度とする。 なお、判定部26は、積分値を採用することにより生じる誤差の蓄積を解消するため、車両C10が移動していないと判定された場合は、積分値を0に補正してもよい。例えば、判定部26は、車両C10の停止時における加速度の特徴量を学習したSVMを用いて、車両C10が停止しているか否かを判定し、車両C10が停止していると判定した場合は、積分値を0に補正してもよい。このように判定部26は、加速度センサ13が測定した加速度を用いて、車両C10の移動速度や移動方向の推定を行う。
【0082】
〔2−6.処理の流れの一例〕
次に、図11を用いて、端末装置10が移動方向を推定する処理の過程の一例について説明する。図11は、実施形態に係る端末装置が移動方向を推定する処理の過程の一例を示す図である。例えば、端末装置10は、図11中(A)に示すように、1秒間間隔でGPS情報の計測を行うとともに、図11中(B)に示すように1秒間の間に50回程度の割合で、端末座標系による加速度の計測を行う。
【0083】
このような場合、端末装置10は、図11中(C)に示すように、加速度の平均値を所定の時間間隔で算出し、算出した加速度の平均値の方向を基準方向と見做すことで、端末座標系のx軸方向を車両座標系のX軸方向へと変換するC1変換を行うC1変換式(回転行列)を所定の時間間隔で導出する。そして、端末装置10は、図11中(D)に示すように、測定した加速度をC1変換式を用いて変換するC1変換を実行する。
【0084】
続いて、端末装置10は、図11中(E)に示すように、C1変換後の加速度から、YZ平面上における平均値を算出する。また、端末装置10は、図11中(F)に示すように、GPS情報に基づいて算出されたGPS速度の変化量が所定の閾値を超える際に取得したと推定される平均値を抽出する。例えば、端末装置10は、図11中(G)に示すように、GPS速度の取得に関する遅延量を考慮し、GPS速度の変化量が所定の閾値を超えたと判定された時刻から所定の期間(例えば、2秒)だけ前の加速度から算出された平均値を抽出する。
【0085】
そして、端末装置10は、図11中(H)に示すように、抽出した平均値を用いて、端末座標系から車両座標系へと変換するC2変換式を導出する。より具体的には、端末装置10は、GPS速度の変化量が所定の閾値を超える度に、新たなC2変換式の導出を行う。この結果、端末装置10は、初期設定の際は、迅速に車両C10の移動方向を推定し、C1変換式やC2変換式を導出するとともに、一定の時間間隔でC1変換式やC2変換式の更新を行うので、推定精度を維持することができる。
【0086】
〔2−7.数式の一例〕
次に、数式を用いて、推定部25が端末座標系を車両座標系へと変換するC2変換式を算出する処理の一例を説明する。なお、推定部25が実行する処理は、以下の数式が示す処理に限定されるものではない。例えば、推定部25は、一次変換を表現した数式を用いて、端末座標系から車両座標系への座標変換を行ってもよい。
【0087】
例えば、端末座標系の各軸をxyz軸とし、車両座標系の各軸をXYZ軸とする。係る場合、車両座標系を端末座標系へと変換する処理は、以下の式(1)で表される。なお、式(1)では、x軸を中心とした回転角度をα、y軸を中心とした回転角度をβ、z軸を中心した回転角度をγとし、x軸を中心とした回転による座標変換を行う回転行列をR(α)、y軸を中心とした回転による座標変換を行う回転行列をR(β)、z軸を中心とした回転による座標変換を行う回転行列をR(γ)とした。
【0088】
【数1】
【0089】
また、回転行列R(α)、回転行列R(β)、および回転行列R(γ)(以下、総括して「各回転行列」と記載する場合がある。)は、以下の式(2)〜(4)で表すことができる。
【0090】
【数2】
【0091】
【数3】
【0092】
【数4】
【0093】
ここで、平均ベクトルGの方向は、−X軸方向の加速度であるから、車両座標系では、以下の式(5)で表すことができる。
【0094】
【数5】
【0095】
一方、端末座標系で検出された各軸方向の平均ベクトルGを(a、a、a)と記載する。かかる場合、a、a、aは、式(5)で示す平均ベクトルGを各回転行列で変換した値となるので、以下の式(6)が成り立つ。
【0096】
【数6】
【0097】
この結果、式(6)におけるz軸方向の値より、式(7)を得る。
【0098】
【数7】
【0099】
また、平均ベクトルGの大きさを考慮した規格化により、式(8)が成り立つため、式(6)におけるx軸およびy軸方向の値から、式(9)を得る。この結果、端末装置10は、式(7)および式(9)から、y軸回りの回転角βを特定することができる。
【0100】
【数8】
【0101】
【数9】
【0102】
ここで、式(9)に示す値の符号による場合分けを行うと、式(6)の解として以下の式(10)〜(13)を得ることができる。
【0103】
【数10】
【0104】
【数11】
【0105】
【数12】
【0106】
【数13】
【0107】
一方、端末座標系を車両座標系へと変換する処理は、式(1)に示す座標変換の逆変換であるため、以下の式(14)で表される。
【0108】
【数14】
【0109】
また、βとγの値は式(10)〜(13)から導出済みであるので、端末座標系の加速度a、a、aのうちy軸およびz軸のみを回転させ、端末座標系のx軸を車両座標系のX軸に一致させるC1変換は、式(15)で示すことができる。
【0110】
【数15】
【0111】
ここで、端末装置10は、移動方向を決める加速度、すなわち、GPS速度が大きく変化した際に生じたと推定される加速度のYZ平面上における方向を算出し、算出した方向がZ軸方向に一致するように、x軸(C1変換後は、X軸と同一)回りの回転角αを算出すればよい。例えば、GPS速度が大きく変化した際に生じたと推定される加速度をサンプルとした場合、y軸方向の加速度のサンプルをy、z軸方向の加速度のサンプルをzとし、YZ平面上に投影した加速度のサンプルの成分をy’、z’とすると、式(16)を得る。
【0112】
【数16】
【0113】
ここで、y軸方向とz’軸方向との間の回転角をθとすると、αは、以下の式(17)で表すことができ、θの正弦および余弦は、以下の式(18)、式(19)で示すことができる。
【0114】
【数17】
【0115】
【数18】
【0116】
【数19】
【0117】
ここで、式(17)〜(19)から、y’の値は、以下の式(20)に示すように零となる。より具体的には、式(17)より以下の式(21)、式(22)が成り立つ。この結果、式(18)および式(19)の左辺を式(21)、式(22)を用いてαの式に変換し、式(16)に代入すると、式(20)が成立する。
【0118】
【数20】
【0119】
【数21】
【0120】
【数22】
【0121】
以上の計算結果をまとめると、以下の式(23)で示されるC1変換式は、以下の式(24)で示すことができる。
【0122】
【数23】
【0123】
【数24】
【0124】
また、C1変換を行った加速度をX軸を中心として回転させることで、C2変換を行うC2変換式は、以下の式(25)で示すことができる。
【0125】
【数25】
【0126】
〔3.変形例〕
上述した実施形態に係る端末装置10は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、以下では、上記の端末装置10の他の実施形態について説明する。
【0127】
〔3−1.重みづけについて〕
ここで、上述した推定処理では、加速度の向きに基づいて車両C10の移動方向を推定した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、端末装置10は、加速度の大きさを考慮して、車両C10の移動方向を推定してもよい。例えば、車両C10の走行時において大きな加速や減速が生じた場合は、車両C10が直進していたと予測される。例えば、信号交差点で停止し、その後加速した場合や、急ブレーキを行った場合には、大きな加減速、ひいては、大きな加速度が測定されると予測されるが、このような状態においては、車両C10は、直進状態であると予測される。このため、所定の閾値よりも大きな加速度は、所定の閾値よりも小さな加速度よりも、車両C10の移動方向を推定する際により信頼できるデータとなる。
【0128】
そこで、端末装置10は、加速度の大きさに基づいた重みづけを考慮した状態で、検出された複数の加速度を用いて、移動体である車両C10の移動方向を推定してもよい。より具体的には、端末装置10は、加速度の大きさが大きい程、重みが大きくなるように各加速度に対する重みづけを行って、車両C10の移動方向を推定してもよい。
【0129】
例えば、端末装置10は、車両C10の移動方向を推定する際に用いる加速度の平均値を算出する場合、すなわち、加速度センサ13が検出した加速度をC1変換し、C1変換後の加速度の平均値を算出する際に、加速度の大きさに応じた重みづけを行ってもよい。より具体的な例を挙げると、例えば、C1変換した加速度のベクトルをa(数式中では、aを太字で示した。以下同様。)と記載した場合、端末装置10は、以下の式(26)に示すように、ベクトルaにベクトルaのノルムである|a|と、所定の重み係数wとを積算した値を、ベクトルaの値として平均値を算出してもよい。
【0130】
【数26】
【0131】
また、端末装置10は、各加速度の大きさに基づいた重みづけを考慮した状態で、複数の加速度の向きの平均値に基づいて、移動体である車両C10の移動方向を推定してもよい。すなわち、端末装置10は、GPS速度の変化量が所定の閾値よりも大きくなった際に取得された加速度の平均値、すなわち、平均値データベース12dに登録された平均値からX軸を中心とした回転方向を算出する際に、各平均値の大きさに基づいた重みづけを考慮してもよい。例えば、平均値データベース12dに登録された平均値のベクトルをベクトルaとし、ベクトルaの向きと、−Z軸方向との間の角度をθiとした場合、端末装置10は、以下の式(27)に示す式を用いて、−Z軸方向と各平均値との間の角度の平均値を算出し、車両C10の移動方向を推定してもよい。
【0132】
【数27】
【0133】
なお、上述した式(26)、式(27)は、あくまで一例であり、端末装置10は、加速度の大きさに基づいた重みづけを考慮して、車両C10の移動方向を推定するのであれば、任意の式を採用してよい。また、上述した重みづけの処理は、例えば、図2に示す推定部25によって実現される。
【0134】
〔3−2.姿勢の検出機能について〕
ここで、端末装置10がスマートデバイス等の移動端末装置等により実現される場合、利用者は、端末装置10を用いた検索処理を行ったり、端末装置10を所持したまま車両C10から下車する等といった行為を行うと予測される。このため、端末装置10の設置姿勢は、変化する恐れがある。しかしながら、端末装置10は、設置姿勢が変化したにも関わらず、設置姿勢が変化する前のC1変換式やC2変換式を用いて車両C10の移動方向や移動速度を推定した場合には、移動方向や移動速度の推定精度を悪化させてしまう。
【0135】
そこで、端末装置10は、設置姿勢の変化を検出する手段を有し、設置姿勢の変化を検出した場合には、C1変換式やC2変換式を算出し直し、算出し直したC1変換式やC2変換式を用いて、端末座標系の加速度を車両座標系の加速度に変換してもよい。より具体的には、端末装置10は、検出されてから所定の時間が経過する前の加速度の平均値である第1平均値と、所定の時間よりも短い時間が経過する前の加速度の平均値である第2平均値とを算出する。例えば、端末装置10は、設置姿勢が変化しない間継続的に計算される長期的な平均加速度(以下、「長期平均」と記載する。)と、一定間隔(例えば1秒)ごとに計算する加速度平均(以下、「短期平均」と記載する。)とを算出する。
【0136】
そして、端末装置10は、第1平均値および第2平均値の差、すなわち、長期平均と短期平均との差に基づいて、端末装置10の設置姿勢が変化したか否かを判定してもよい。例えば、図12は、実施形態に係る端末装置が設置姿勢の変化を検出する処理の一例を説明する図である。例えば、図12中(A)に示すように、所定の期間の間、設置姿勢の変化が生じなかった場合には、点線の矢印で示した長期平均と、実線の矢印で示した短期平均との向きがほぼ一致すると予測される。一方、図12中(B)に示すように、端末装置10の設置姿勢が変化した場合には、点線の矢印で示した長期平均と、実線の矢印で示した短期平均との向きが乖離すると予測される。
【0137】
そこで、端末装置10は、図12中(C)に示すように、長期平均のベクトルと短期平均のベクトルとの間の角度θの値が所定の閾値を超えた場合は、姿勢が変化したと判定する。例えば、端末装置10は、第1平均値と第2平均値とのコサイン積の値が「0.8」を超えた状態が所定の期間の間継続した場合は、端末装置10の設置姿勢が変化したと判定してもよい。例えば、端末装置10は、長期平均のベクトルをa、短期平均のベクトルをa、長期平均と短期平均との間の角度をθとした場合、以下の式(28)を用いて、長期平均と短期平均とのコサイン積(すなわち、内積)の値を算出し、算出した値が所定の閾値以下である場合には、端末装置10の設置姿勢が変化したと判定してもよい。
【0138】
【数28】
【0139】
なお、例えば、端末装置10は、端末装置10の設置姿勢が変化したと判定した場合には、GPS速度データベース12b、加速度データベース12c、および平均値データベース12dに登録されていた情報を消去し、新たにGPS速度やGPS速度の変化量、加速度センサ13が検出した加速度等を収集する。また、端末装置10は、収集した加速度の平均値から、重力方向を推定し、推定した重力方向に応じた新たなC1変換式を算出する。そして、端末装置10は、GPS速度の変化量が所定の閾値を超えた際の加速度に基づいて、車両C10の移動方向を推定し、推定した移動方向に基づいて、新たなC2変換式を算出すればよい。
【0140】
このように、端末装置10は、移動体における加速度を検出し、検出してから所定の時間が経過する前の加速度の平均値である第1平均値と、所定の時間よりも短い時間が経過する前の加速度の平均値である第2平均値とを算出する。そして、端末装置10は、第1平均値および第2平均値に基づいて、端末装置10の姿勢が変化したか否かを判定する。このため、端末装置10は、容易に端末装置10の設置姿勢が変化したかを判定することができる。なお、上述した設置姿勢の変化を検出する処理は、例えば、図2に示す判定部26により実現されてもよく、例えば、図2に示す各部21〜26とは独立して設けられる算出部や姿勢判定部等といった機能構成により実現されてもよい。端末装置10がこのような機能構成を有する場合、算出部は、第1平均値と第2平均値とを算出する。そして、姿勢判定部は、算出部により算出された第1平均値および第2平均値に基づき、端末装置10の姿勢が変化したか否かを判定する。
【0141】
〔3−3.カーブと右左折の判別について〕
ここで、端末装置10は、C2変換式を用いて端末座標系の加速度を車両座標系の加速度に変換し、車両座標系の加速度に基づいて、車両C10の移動方向を推定する。例えば、端末装置10は、Y軸方向の加速度に基づいて、車両C10が右あるいは左に旋回したことを推定することができる。しかしながら、Y軸方向の加速度のみでは、一定速でカーブを曲がっているのか、交差点を曲がっているのかの判別が困難となってしまう。
【0142】
ここで、端末装置10を用いて、案内処理のみならず、運転が適切であるか否かの診断(以下、「運転力診断」と記載する。)を行う場合、端末装置10は、カーブを曲がっているのか、交差点を曲がっているのかを区別して詳細な分析を行うのが望ましい。ここで、交差点を曲がる場合は、右折や左折の前に所定の閾値よりも大きな減速が行われ、右折や左折の後に所定の閾値よりも大きな加速が行われると予測される。一方、カーブを曲がっている場合には、大きな減速や加速が行われないと考えられる。
【0143】
そこで、端末装置10は、車両C10の速度が減速した後で、移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出され、その後、車両C10の速度が加速していた場合には、移動体である車両C10が右折又は左折を行ったと判定してもよい。また、端末装置10は、移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出される前に速度が減速していなかった場合、または、移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出された後で速度が加速していなかった場合は、移動体である車両C10が曲線の道路を進行していると判定してもよい。
【0144】
例えば、端末装置10は、C2変換後の加速度からY軸方向の加速度を特定する。続いて、端末装置10は、Y軸方向の加速度が所定の閾値を超えた場合には、Y軸方向の加速度が所定の閾値を超えた日時を基準日時として特定し、基準日時の直前の数秒間を直前期間とし、基準日時の直後の数秒間を直後期間とする。そして、端末装置10は、直前期間や直後期間における車両C10の速度の変化量を、GPS速度を用いて算出する。なお、端末装置10は、かかる算出を行う場合には、GPS速度を取得する際に生じる遅延を考慮してよい。また、端末装置10は、OBD等を用いて、車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から情報を取得するための一般的な規格を介して、車両C10の速度を取得し取得した速度から、直前期間や直後期間における車両C10の速度の変化量を算出してもよい。
【0145】
そして、端末装置10は、直前期間において車両C10の速度が所定の閾値よりも減速しており、かつ、直後期間において車両C10の速度が所定の閾値よりも加速している場合には、車両C10が右折または左折を行ったと判定する。一方、端末装置10は、直前期間において車両C10の速度が所定の閾値よりも減速していなかった場合や、直後期間において車両C10の速度が所定の閾値よりも加速していなかった場合には、車両C10がカーブを曲がったと判定する。
【0146】
そして、端末装置10は、車両C10が右折または左折を行ったか、或いは、車両C10がカーブを曲がったか否かに応じて、運転力診断を行えばよい。例えば、端末装置10は、車両C10が右折または左折を行ったと判定した際に、基準日時において測定した加速度の値が所定の閾値よりも大きい場合には、急な右折や左折を行ったものとして、利用者に対して注意を促すメッセージを出力してもよい。また、端末装置10は、車両C10が右折または左折を行ったと判定した際に、直後期間における加速が所定の閾値よりも大きい場合には、利用者に対して注意を促すメッセージを出力してもよい。
【0147】
このように、端末装置10は、移動体における加速度を検出する。また、端末装置10は、移動体の速度を取得する。そして、端末装置10は、取得された速度が減速した後で、移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出され、その後、取得された速度が加速していた場合には、移動体が右折又は左折を行ったと判定する。移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出される前に、取得された速度が減速していなかった場合や、移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出された後で、取得された速度が加速していなかった場合には、移動体が曲線の道路を進行していると判定する。
【0148】
なお、渋滞などで一定の減速、加速が検出できない場合も考えられるが、そのようなケースでは、そもそも問題となる運転操作ではないので無視して良いと考えられる。そこで、端末装置10は、例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)等の道路交通情報通信システムの情報に基づいて、車両C10が渋滞に巻き込まれているか否かを判定し、渋滞に巻き込まれている場合には、車両C10が右折または左折を行ったか、或いは、車両C10がカーブを曲がったか否かといった判定処理を行わずともよい。なお、上述した設置姿勢の変化を検出する処理は、例えば、図2に示す判定部26により実現されてもよく、例えば、図2に示す各部21〜26とは独立して設けられる移動判定部等といった機能構成により実現されてもよい。
【0149】
〔3−4.急制動について〕
また、急加速や急減速は危険な運転操作の一つであるため、運転力診断においては、このような、急加速や急減速を検出できることが望ましい。しかしながら、一般道から高速道路に乗り換える場合、高速道路へ合流する際は急加速する場合がある。このため、単純に急加速や急減速が行われた場合に、危険な運転操作が行われたと判定した場合には、運転力診断の精度が悪化してしまう。
【0150】
ここで、一般道から高速道路に乗り換えた場合には、急加速後に、加速後の速度が一定時間(例えば、10分)以上継続すると予測される。そこで、端末装置10は、加速度センサ13が測定した加速度や、GPS速度の変化量、車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から取得した速度等に基づいて、所定の閾値以上の加速、すなわち、急加速が生じたか否かを判定する。そして、端末装置10は、急加速が生じたと判定した場合には、加速度センサ13が測定した加速度や、GPS速度の変化量、車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から取得した速度等に基づいて、急加速後に所定の速度(例えば、時速80km以上)が所定の期間(例えば、10分間)だけ継続したか否かを判定する。そして、端末装置10は、急加速後に所定の速度が所定の期間だけ継続した場合には、危険な運転操作が行われなかったものとしてもよい。
【0151】
また、トンネルなどでは、急加速時にGPS速度が取得できない場合も考えられる。そこで、端末装置10は、GPS速度を取得できない場合には、加速度センサ13が検出した加速度に基づいて、一定の減速が所定の期間の間発生したか否かを判定し、一定の減速が所定の期間の間発生しなかった場合には、危険な運転操作が行われなかったものとしてもよい。
【0152】
このように、端末装置10は、加速度センサ13により所定の閾値を超える加速度が検出された後で、所定の閾値を超える速度が所定の期間を超えて取得されなかった場合は、危険な操作が行われたと判定してもよい。また、端末装置10は、GPS速度等、移動体の速度を取得できない場合には、加速度センサ13により検出された加速度に基づいて、移動体が減速したか否かを判定し、所定の期間が経過するまでの間に移動体が減速した場合は、危険な操作が行われたと判定してもよい。そして、端末装置10は、所定の閾値を超える加速度が検出された後で、所定の閾値を超える速度が所定の期間を超えて取得された場合には、移動体が高速移動用の道路を走行していると判定してもよい。
【0153】
このように、端末装置10は、加速度、GPS速度、または車両C10が有する情報系や制御系の制御装置から取得した速度等、任意の手法を用いて、車両C10の速度を取得する。また、端末装置10は、車両C10の速度の変化量が所定の閾値を超えた場合は、車両C10が所定の期間の間、減速を行ったか否かを判定する。そして、端末装置10は、車両C10が所定の期間の間、減速を行わなかった場合には、危険な運転操作が行われていないと判定し、減速を行った場合は、危険な運転操作が行われたと判定する。なお、上述した設置姿勢の変化を検出する処理は、例えば、図2に示す判定部26により実現されてもよく、例えば、図2に示す各部21〜26とは独立して設けられる操作判定部等といった機能構成により実現されてもよい。
【0154】
〔3−5.処理間隔について〕
また、上述した端末装置10は、上述した取得処理や推定処理、案内処理等を任意の時間間隔で実行して良い。また、端末装置10は、取得処理、推定処理、案内処理を任意の粒度に分割し、分割した各処理を独立して任意の時間間隔で実行してもよい。例えば、端末装置10は、加速度の取得、GPS速度の取得、変化率の算出、加速度のC1変換やC2変換、加速度の平均値の算出、車両C10の移動方向の推定等を、それぞれ独立したタイミングで実行してもよい。
【0155】
〔3−6.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本出願における機能構成、データ構造、フローチャートに示す処理の順序や内容などは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置や処理実行などの順序、具体的内容などは適宜変更可能である。例えば、上述した案内処理や判定処理は、上記実施形態で例示したように端末装置10が実現する以外にも、スマートフォンのアプリなどが実現する端末における装置、方法やプログラムとして実現することもできる。
【0156】
また、端末装置10を構成する各処理部17〜20を、さらにそれぞれ独立した装置で実現する構成も一般的である。また、移動状態判定部20を構成する各部21〜26をそれぞれ独立した装置で実現する構成であってもよい。同様に、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)で呼び出すことで、上記実施形態で示した各手段を実現するなど、本発明の構成は柔軟に変更できる。さらに、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず物理的な電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。
【0157】
例えば、端末装置10は、端末装置10と通信可能な配信サーバとが協調して上述した案内処理を実行してもよい。例えば、配信サーバは、各部21〜26を有し、端末装置10が検出した加速度やGPS速度を用いて、上述した検出処理、取得処理、推定処理等を実行し、車両C10の移動方向の推定や、車両C10の移動速度の推定等を端末装置10に配信し、利用者の案内を実行させてもよい。
【0158】
〔4.効果〕
上述したように、端末装置10は、移動体における加速度を検出する。また、端末装置10は、移動体の速度を取得する。そして、端末装置10は、取得された速度が変化した際に検出されていた加速度の方向に基づいて、移動体の移動方向を推定する。例えば、端末装置10は、取得された速度の変化量が所定の閾値を超えた際に検出された加速度の方向に基づいて、移動体の移動方向を推定する。
【0159】
このように、端末装置10は、加速や減速が行われた際に加速度センサ13が測定した加速度を利用して、車両C10の移動方向を推定するので、車両C10の移動方向を短期間に精度よく推定することができる。また、端末装置10は、車両C10の移動方向を精度よく特定することができるので、加速、減速、右左折の判定、更には車両C10の速度推定(停止判定も含む)を迅速、正確に行なうことができる。また、端末装置10は、端末装置10の設置姿勢の推定を迅速、正確に行うことができる。また、端末装置10は、加速や減速が行われた際に加速度センサ13が測定した加速度を利用して、車両C10の移動方向の推定を繰り返し行うので、端末座標系と車両座標系とのずれに伴う誤差を軽減することができる。
【0160】
また、端末装置10は、自装置に設置された加速度センサ13が測定した加速度やGPS信号を用いて、車両C10の移動方向をスタンドアローンで推定することができる。この結果、端末装置10は、例えば、車両C10の移動方向を推定するサーバ装置や、車両C10自体の制御装置等から、車両C10の移動方向を取得せずとも良いので、これらのサーバ装置や制御装置との間で通信するデータ量を削減することができる。
【0161】
また、端末装置10は、車両C10に端末装置10を所定の設置姿勢で設置せずとも、車両C10の移動方向を精度よく推定することができるので、端末装置10を所定の設置姿勢に保つホルダを不要とすることができる。また、端末装置10は、ホルダのメーカーやホルダの向きの固定を不要とすることができる。
【0162】
また、端末装置10は、所定の位置測位システムを用いて、移動体の位置を特定し、特定した位置の変化に基づいて、移動体の速度を取得する。例えば、端末装置10は、所定の時間間隔で移動体の位置を特定し、新たに特定した位置と前回特定した位置との差に基づいて、移動体の速度を取得する。このため、端末装置10は、車両C10の制御装置等から速度を取得する機能を有さずとも、スタンドアローンで車両C10の移動方向を推定することができる。
【0163】
ここで、民生用のGPS等には、予め所定の誤差が含まれている場合がある。このため、GPSが示す位置をそのまま用いて、車両C10の移動方向を推定した場合には、GPSの誤差よりも車両C10が大きく移動しなければ、推定精度が悪化してしまう。しかしながら、端末装置10は、GPSが示す位置に基づいて、GPS速度を算出し、算出したGPS速度の変化量に基づいて、車両C10の加速や減速を判定する。そして、端末装置10は、車両C10の加速や減速にともなう加速度に基づいて、車両C10の移動方向を推定するので、例えば、案内処理の開始時に行う初期調整の時間を短縮するとともに、精度良く車両C10の移動方向を推定することができる。
【0164】
また、端末装置10は、取得された速度が変化した日時よりも所定の期間だけ前に検出されていた加速度の方向に基づいて、移動体の移動方向を推定する。すなわち、端末装置10は、GPS速度の遅延を考慮して、速度が所定の閾値を超えた際に検出された加速度の方向に基づいて、移動体の移動方向を推定する。このため、端末装置10は、GPS速度を用いた場合であっても、車両C10の移動方向を精度良く推定することができる。
【0165】
また、端末装置10は、取得された速度の変化に基づいて、移動体が加速したか減速したかを特定し、検出された加速度の方向と、移動体が加速したか減速したかとに基づいて、移動体の移動方向を推定する。例えば、端末装置10は、移動体が加速したと判定した場合には、検出された加速度の方向を移動体の移動方向とは反対の方向とし、移動体が減速したと判定した場合には、検出された加速度の方向を移動体の移動方向とする。このため、端末装置10は、車両C10の加速によって生じた加速度のみならず、車両C10の減速によって生じた加速度に基づいて、車両C10の移動方向を推定することができるので、車両C10の移動方向を精度良く推定することができる。
【0166】
また、端末装置10は、所定の状態で検出した加速度の平均値を用いて、重力方向を特定する。そして、端末装置10は、移動体の移動方向として、重力方向に対して垂直な平面上の方向を推定する。例えば、端末装置10は、検出された加速度の方向を、重力方向に対して垂直な平面上、すなわちYZ平面上の方向に変換し、変換した加速度の平均値に基づいて、YZ平面上における移動体の移動方向を推定する。このため、端末装置10は、車両C10の加速度を長期間測定せずとも、重力方向を特定することができるので、重力方向を基準とした車両C10の移動方向を迅速に推定することができる。
【0167】
また、端末装置10は、加速度の大きさに基づいた重みづけを考慮した状態で、検出された複数の加速度を用いて、移動体の移動方向を推定する。例えば、端末装置10は、加速度の大きさが大きい程、重みが大きくなるように重みづけを行う。また、端末装置10は、各加速度の大きさに基づいた重みづけを考慮した状態で、検出された複数の加速度の向きの平均値に基づいて、移動体の移動方向を推定する。この結果、端末装置10は、車両C10の移動方向を精度良く推定することができる。
【0168】
また、端末装置10は、移動体に設置されており、検出してから所定の時間が経過する前の加速度の平均値である第1平均値(すなわち、長期平均)と、所定の時間よりも短い時間が経過する前の加速度の平均値である第2平均値(すなわち、短期平均)とを算出する。そして、端末装置10は、第1平均値および第2平均値に基づいて、端末装置10の設置姿勢が変化したか否かを判定する。具体的には、端末装置10は、第1平均値と第2平均値とのコサイン積の値が、所定の期間の間、所定の閾値以下となった場合には、設置姿勢が変化したと判定する。この結果、端末装置10は、設置姿勢の変化を迅速に検出することができるので、C1変換式やC2変換式の更新を迅速に行うことができる結果、車両C10の移動状態を精度良く推定することができる。
【0169】
また、端末装置10は、取得された速度が減速した後で、推定された移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出され、その後、取得された速度が加速していた場合には、移動体が右折又は左折を行ったと判定する。また、端末装置10は、推定された移動体の移動方向とは異なる方向の加速度が検出される前に速度が減速していなかった場合、または、加速度が検出された後で速度が加速していなかった場合は、移動体が曲線の道路を進行していると判定する。このため、端末装置10は、運転力診断において、車両C10が右左折した場合とカーブした道を走行している場合とを切り分けることができる。
【0170】
また、端末装置10は、所定の閾値を超える加速度が検出された後で、所定の閾値を超える速度が所定の期間を超えて取得されなかった場合は、危険な操作が行われたと判定する。この結果、端末装置10は、運転力診断において、車両C10が高速道路に乗るために加速を行ったのか否かを適切に判定することができる。
【0171】
また、端末装置10は、移動体の速度を取得できない場合には、検出された加速度に基づいて、移動体が減速したか否かを判定し、所定の期間が経過するまでの間に移動体が減速した場合は、危険な操作が行われたと判定する。また、端末装置10は、所定の閾値を超える加速度が検出された後で、所定の閾値を超える速度が所定の期間を超えて取得された場合には、移動体が高速移動用の道路を走行していると判定する。このため、端末装置10は、GPS等が利用できない場合にも、スタンドアローンで運転力診断を実現することができる。また、端末装置10は、運転力診断を行う外部サーバ等との間の通信量を削減することができる。
【0172】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0173】
また、上記してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、移動状態判定部は、移動状態判定手段や移動状態判定回路に読み替えることができる。
【符号の説明】
【0174】
11 通信部
12 記憶部
13 加速度センサ
14 GPS受信アンテナ
15 出力部
16 制御部
17 案内実行部
18 音声出力部
19 画像出力部
20 移動状態判定部
21 検出部
22 特定部
23 変換部
24 取得部
25 推定部
26 判定部
図1
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