特許第6392993号(P6392993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392993眼科用装具のための疎水性アクリレート−アクリルアミドコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392993
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】眼科用装具のための疎水性アクリレート−アクリルアミドコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20180910BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20180910BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20180910BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20180910BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20180910BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C08F220/18
   C08F220/56
   G02B1/00
   G02C7/04
   A61L27/16
   A61L27/18
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-531899(P2017-531899)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公表番号】特表2018-502189(P2018-502189A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】US2015065506
(87)【国際公開番号】WO2016100188
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】62/092,319
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ラレド
(72)【発明者】
【氏名】アリ イー.アキネイ
(72)【発明者】
【氏名】ジアーン シュイウエイ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジンカーソン
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント グエン
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス シュルーター
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−056998(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/062151(WO,A1)
【文献】 特表2014−506814(JP,A)
【文献】 特表2005−530026(JP,A)
【文献】 特開昭61−226728(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0236375(US,A1)
【文献】 米国特許第06140438(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F20/00−22/40
C08F120/00−122/40
C08F220/00−220/40
C08L33/00−35/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)全ての重合性成分の総量に対して20重量%〜35重量%のN,Nジメチルアクリルアミド、
(b)全ての重合性成分の総量に対して60重量%〜70重量%の1種以上の式(I)
【化1】
のアリールアクリルモノマー(式中、AはH又はCHであり;Bは(CHm1又は[O(CHZ1であってm1が2〜6でありz1が1〜10であり;Yは直接結合、O、S、又はNR’であってR’はH、CH、Cn’2n’+1であってn’=1〜10、iso−OC、C又はCHであり;W1はm1+w1≦8であることを条件として0〜6であり;DはH、Cl、Br、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C、又はCHである)、
(c)重合性架橋剤、
を含有する重合性組成物の重合生成物である眼科用装具材料であって、
前記列挙した成分と全ての追加的な重合性成分との合計が100重量%であり、成分(a)及び(b)の量の合計が少なくとも90重量%であり、
乾燥状態の前記眼科用装具材料は、28〜40℃のガラス転移温度を有し、
完全に水和状態の前記眼科用装具材料は、20℃未満のガラス転移温度、589nmかつ室温(23±3℃)で測定される1.50超の屈折率、16℃〜45℃の温度で1.5重量%〜3.9重量%の平衡含水率、観察面当たり明視野微小液胞なし及び10個以下の微小液胞を有することによって特徴付けられる耐グリスニング性、1.0MPa〜60.0MPaのヤング率、90%より大きい破断伸び、並びに6.0MPa未満の25%割線係数を有する、眼科用装具材料。
【請求項2】
前記完全に水和した状態の前記装具材料が、23℃から35℃まで加熱された際に
【数1】
≦20%(T23及びT35はそれぞれ23℃及び35℃の材料の400nm〜700nmの間の平均透過率である)
特徴付けられるように実質的に透明又は透明のままでる、請求項1に記載の眼科用装具材料。
【請求項3】
前記完全に水和した状態の前記装具材料が10年分の加速劣化(平衡塩溶液中で90℃、81日間)の後に30CCT以下の表面光散乱を有する、請求項1又は2に記載の眼科用装具材料。
【請求項4】
式(I)において、Bが(CHm1であり、m1が2〜5であり、Yがなし又はOであり、w1が0又は1であり、DがHである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼科用装具材料。
【請求項5】
前記1種以上のアリールアクリルモノマーが、2−エチルフェノキシアクリレート;2−エチルフェノキシメタクリレート;フェニルアクリレート;フェニルメタクリレート;ベンジルアクリレート;ベンジルメタクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;2−フェニルエチルメタクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;3−フェニルプロピルメタクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルフェニルメタクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;4−メチルベンジルメタクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2,2−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,3−メチルフェニルエチルアクリレート;2,3−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,4−メチルフェニルエチルアクリレート;2,4−メチルフェニルエチルメタクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート;2−(フェニルチオ)エチルアクリレート;2−(フェニルチオ)エチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルメタクリレート;又はこれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼科用装具材料。
【請求項6】
前記1種以上のアリールアクリルモノマーが、2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−[2−ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;又はこれらの組み合わせである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の眼科用装具材料。
【請求項7】
前記重合性組成物が1.0重量%〜6.0重量%の前記重合性架橋剤を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の眼科用装具材料。
【請求項8】
前記重合性架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;エチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート;1,3−プロパンジオールジアクリレート;2,3−プロパンジオールジアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート;N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド;N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスメタクリルアミド;N,N’−メチレンビスアクリルアミド;N,N’−メチレンビスメタクリルアミド;CH=C(CH)C(=O)O−(CHCHO)−C(=O)C(CH)=CH(p=1〜50);CH=CHC(=O)O−(CHCHO)−C(=O)CH=CH(p=1〜50);CH=C(CH)C(=O)O(CHO−C(=O)C(CH)=CH(t=3〜20);CH=CHC(=O)O(CHO−C(=O)CH=CH(t=3〜20)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の眼科用装具材料。
【請求項9】
前記重合性組成物が重合性UV吸収剤を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の眼科用装具材料。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の眼科用装具材料を含む眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性の眼科用装具材料に関する。特には、本発明は、乾燥状態では硬くガラス状であり、水和後は、軟らかくて本質的にグリスニングがなく、高い屈折率及び他の望ましい特性を有する、アクリレート−アクリルアミドコポリマーに関する。これは、2.0mm未満の切開創を介して送達可能な湿潤充填された眼内レンズ(IOL)の製造に特に適している。
【背景技術】
【0002】
小切開創白内障手術の進歩に伴って、人工レンズにおける使用に好適な、軟らかくて折り畳める材料の開発に一層の重点が置かれてきている。概してこれらの材料は、ヒドロゲル、シリコーン、及びアクリルの3つのカテゴリーのうちの1つに分類される。
【0003】
一般的に、ヒドロゲル系材料は比較的低屈折率であり、そのため所定の屈折力を得るために厚いレンズ光学部が必要とされることから、他の材料と比べて望ましくない。従来のシリコーン系材料は一般的にヒドロゲルよりも高い屈折率を有しているが、折り畳まれた状態で目の中に配置された後に勢いよく開きがちである。勢いよく展開すると、角膜内皮を傷つける可能性及び/又は天然の水晶体嚢を破裂させる可能性がある。アクリル系材料は、典型的には高屈折率であり、従来のシリコーン系材料よりもゆっくり又は制御可能に開くことから望ましい。
【0004】
眼内レンズに好適なアクリル系材料は、一般的に軟らかくて疎水性であり、5重量%未満の平衡含水率を有している。例えば米国特許第4834750号明細書、米国特許第5,290,892号明細書、米国特許第5,331,073号明細書、米国特許第5,693,095号明細書、米国特許第5,922,821号明細書、米国特許第6241766号明細書、米国特許第6245106号明細書、米国特許第6313187号明細書、米国特許第6,353,069号明細書、米国特許第6528602号明細書、米国特許第6653422号明細書、米国特許第6703466号明細書、米国特許第6780899号明細書、米国特許第6806337号明細書、米国特許第6872793号明細書、米国特許第7585900号明細書、米国特許第7652076号明細書、米国特許第7714039号明細書、米国特許第7790824号明細書、米国特許第7790825号明細書、米国特許第7799845号明細書、米国特許第7847046号明細書、米国特許第8058323号明細書、米国特許第8,362,177号明細書、米国特許第8,466,209号明細書、米国特許第8,449,610号明細書、米国特許第8,557,892号明細書(これらの全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているものを参照のこと。しかしながら、軟らかくて疎水性のアクリル系材料は粘着性である場合がある。折り畳み可能な眼内レンズとしての使用を目的とした材料においては、表面の粘着性の程度は一般的には弱められることが望ましい。粘着性の材料は、製造、取り扱い、及び展開が難しくなり得る。レンズの製造又は取り扱いを容易にするため、折り畳み又は変形を容易にするため、並びにレンズの展開時間を短縮するために、粘着性を低下させることを目的とした試みが行われてきた。例えば米国特許第5,603,774号明細書には、軟らかいアクリル系材料の粘着性を低下させるためのプラズマ処理方法が開示されている。米国特許第6,241,766号明細書、米国特許第6,245,106号明細書、米国特許第7,585,900号明細書、米国特許第7,714,039号明細書、及び米国特許第8,362,177号明細書には、軟らかいアクリル系材料の粘着性を低下させるための親水性成分又は添加剤の使用が開示されている。
【0005】
また、軟らかい疎水性アクリル系材料は、生体内で形成されるグリスニング(又は微小液胞(microvacuole))を有しやすく、眼内レンズの光学性能に悪影響が生じ得る。グリスニングはIOL材料の基質内に存在する水の微小内包物であり、これはIOL材料とIOL材料の中の水との間の屈折率の差のため見ることができる。ポリエチレングリコール(PEG)含有重合性成分(モノマー及び/又は架橋剤)(米国特許第5,693,095号明細書、米国特許第6,353,069号明細書、及び米国特許第8,449,610号明細書)が、疎水性アクリル系配合物の耐グリスニング性を向上させるために使用できることが報告されている。しかし、アクリル系材料の屈折率に対するその悪影響を最小限にするためには、多くの場合、少量のPEGジメタクリレート又はPEGモノ−(メタ)アクリレート濃度が必要とされる。PEGジメタクリレート又はPEGモノ−(メタ)アクリレートを添加すると、得られるコポリマーの弾性率及び引張強度も低下する傾向にある。
【0006】
米国特許第6,140,438号明細書には、軟らかい疎水性アクリル系材料の耐グリスニング性を改良するための親水性モノマーの使用、及び軟らかい疎水性アクリル系材料の柔軟性及び形状回復特性を改良するためのアルキル(メタ)アクリレートの使用が開示されている。
【0007】
米国特許第6,329,485号明細書、及び米国特許第6,657,032号明細書には、含水率が約5〜30重量%であり、2種の主要なモノマー(1種は芳香族高屈折率モノマーであり、1種は芳香族高屈折率モノマーよりも多い量の親水性(メタ)アクリレートモノマー(例えばヒドロキシエチルメタクリレート))を含有する組成物から形成される、軟らかくて折り畳み可能なヒドロゲルレンズ材料が開示されている。
【0008】
米国特許第6,852,793号明細書には、1種以上のコポリマーと1種以上の親水性モノマー(好ましくはN,N−ジメチルアクリルアミド)との重合、及び任意選択的には1種以上の芳香族系モノマー、疎水性モノマー、若しくはこれらの組み合わせも併せた重合によって製造される、含水率が約4.5〜15重量%であり、約1.45以上の比較的高い屈折率を有し、約80%以上の比較的高い伸びを有するポリマー組成物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、湿潤充填されたIOLの製造に適した、疎水性アクリレート/アクリルアミドコポリマー系材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は一部には、室温での乾燥状態においては硬くてガラス状であるが、水和すると軟らかく高度に変形可能になり(90%を超える破断伸び(最大歪み)、約60MPa以下のヤング率、6.0MPa未満の25%割線係数)、1.50を超える屈折率、4.5重量%未満の平衡含水率(EWC)、及び温度変化により生じるグリスニングに対する高い耐性(明視野グリスニングなし及び最小限の暗視野グリスニング)を有するアクリレート/アクリルアミドコポリマー材料を得るために、アクリルアミドとアクリレートモノマーとを共重合させることが可能であるという発見に基づく。これらの室温での乾燥状態における硬くてガラス状の形態のため、疎水性アクリル系材料の表面粘着性に関連する製造及び取り扱いの問題を大幅に低減又は解消することができる。高い耐グリスニング性、高い屈折率、並びに高い柔軟性及び変形性を有する対象の材料は、微小切開創用途に適している。本発明は一部には、疎水性アクリレート/アクリルアミド材料が、最小限の経年劣化を有するように(10年分の加速劣化(Alconからの平衡塩溶液、BSS中で90℃、81日間)の後の30CCT単位(コンピューター適合テープ単位)未満の低い表面光散乱によって特徴づけられる)、及び材料を室温(例えば23℃)から35℃に加熱した際に観察される潜在的なヘイズが最小限であるか存在しないように、製造し得るという発見にも基づく。本出願においては、用語「最小限の又は存在しない潜在的なヘイズ」又は「実質的に低減又は消失した潜在的なヘイズの問題」とは、水和した材料が23℃から35℃まで加熱された際に実質的に透明のままである(すなわち、
【数1】
≦20%(T23及びT35はそれぞれ23℃及び35℃の材料の400nm〜700nmの間の平均透過率である)である)ことを意味する。比較的高濃度のアクリルアミドモノマーを有するアクリレート/アクリルアミド共重合性材料は、比較的低い臨界溶液温度(LCST)を有し得ると考えられる。水和状態のこのような材料が室温からLCSTより高い温度(例えば35℃)まで加熱されると相分離が生じる場合があり、これは材料を濁らせて透明性を失わせる。この潜在的なヘイズの問題は、湿潤充填されたIOL材料としてのアクリレート/アクリルアミドコポリマーの使用を妨げ得る。この潜在的なヘイズの問題を最少にするか解消することで、対象の材料は、微小切開創用途のための、湿潤充填された耐グリスニング性の高屈折率IOLの製造に適する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書で使用される用語及び実験室手順は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられている。これらの手順のためには、当該技術分野及び様々な一般的な文献で示されているものなどの従来の方法が使用されている。用語が単数形で示されている場合、本発明者らは用語の複数形も意図している。本明細書で使用される用語及び以下で述べる実験室手順は当該技術分野で周知のものであり、一般的に用いられている。
【0012】
本明細書で使用される「約」は、「約」として言及されている数が、その列挙されている数のプラス又はマイナス1〜10%の列挙されている数を含むことを意味する。
【0013】
「任意選択的な」又は「任意選択的には」は、引き続いて記載されている事象又は状況が生じても生じなくてもよく、またその記載に事象又は状況が生じる場合と生じない場合が含まれることを意味する。
【0014】
別途指示されていない限り、全ての成分量は%(w/w)基準(「重量%」)で示されている。
【0015】
用語「アルキル」は、直鎖又は分岐のアルカン化合物から1つの水素原子を取り除くことによって得られる一価のラジカルを指す。アルキル基(ラジカル)は、有機化合物中でもう1つの基と1つの結合を形成する。
【0016】
用語「アルキレン二価基」又は「アルキレンジラジカル」又は「アルキルジラジカル」は同じ意味で、アルキルから1つの水素原子を取り除くことによって得られる二価のラジカルを指す。アルケン二価基は、有機化合物中で他の基と2つの結合を形成する。
【0017】
用語「アルコキシ」又は「アルコキシル」は、直鎖又は分岐のアルキルアルコールのヒドロキシル基から水素原子を取り除くことによって得られる一価のラジカルを指す。アルコキシ基(ラジカル)は、有機化合物中でもう1つの基と1つの結合を形成する。
【0018】
本出願において、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルに関しての用語「置換された」は、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルの1つの水素原子を置換する、ヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、−NH、スルフヒドリル(−SH)、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ(アルキルスルフィド)、C〜Cアクリルアミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジ−C〜Cアルキルアミノ、ハロゲン原子(Br又はCl)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を含む、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルを意味する。
【0019】
概して本発明は、室温(たとえば23℃)での乾燥状態では硬くてガラス状であるが、完全な水和状態では軟らかくて非常に変形しやすく、高い屈折率及びグリスニングに対する高い耐性を有し、経年劣化による表面光散乱が少ない、眼科用装具材料に関する。本発明の眼科用装具は、潜在的なヘイズを最小限しか有さないか、全く有さない。すなわち、完全に水和した状態のこの材料が23℃から35℃まで加熱された際に実質的に透明又は透明のままである(すなわち、
【数2】
≦20%(T23及びT35はそれぞれ23℃及び35℃の材料の400nm〜700nmの間の平均透過率である)である)。
【0020】
本発明の眼科用装具材料は、
(a)全ての重合性成分の総量に対して約20重量%〜約35重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN,Nジメチルアクリルアミド、
(b)全ての重合性成分の総量に対して約51重量%〜約78重量%(好ましくは約54重量%〜約75重量%、より好ましくは約60重量%〜約70重量%)の1種以上の式(I)
【化1】
のアリールアクリルモノマー(式中、AはH又はCH(好ましくはH)であり;Bは(CHm1又は[O(CHZ1であってm1が2〜6でありz1が1〜10であり;Yは直接結合、O、S、又はNR’であってR’はH、CH、Cn’2n’+1であってn’=1〜10、iso−OC、C又はCHであり;W1はm1+w1≦8であることを条件として0〜6であり;DはH、Cl、Br、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C、又はCHである)、
(c)重合性架橋剤、
を含有する重合性組成物の重合生成物であって、
列挙した成分と任意の追加的な重合性成分との合計が100重量%であり、成分(a)及び(b)の量の合計が少なくとも約80重量%(好ましくは少なくとも約85重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%)であり、
乾燥状態の眼科用装具材料は、23℃より高いガラス転移温度(好ましくは25℃超、より好ましくは約28℃〜約40℃)を有し、完全に水和状態の眼科用装具材料は、20℃未満(好ましくは18℃未満、より好ましくは15℃未満)のガラス転移温度、589nmかつ室温(23±3℃)で測定される1.50(好ましくは1.51、より好ましくは1.52)超の屈折率、16℃〜45℃の温度で4.5重量%未満(好ましくは約1重量%〜約4.2重量%、より好ましくは約1.5重量%〜約3.9重量%)の平衡含水率、観察面当たり明視野微小液胞なし及び約10個以下の微小液胞を有することによって特徴付けられる耐グリスニング性、約1.0MPa〜約60.0MPa(好ましくは約2.0MPa〜約55.0MPa、より好ましくは約3.0MPa〜約50.0MPa)のヤング率、90%(好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%)より大きい破断伸び、6.0MPa未満(好ましくは約5.5MPa未満、より好ましくは約5.0MPa未満)の25%割線係数、及び、10年分の加速劣化(Alconからの平衡塩溶液、BSS中で90℃、81日間)の後の約30CCT以下の表面光散乱を有する。
【0021】
本発明によれば、本発明の装具材料は、乾燥状態で23℃より高い(好ましくは25℃超、より好ましくは約28℃〜約40℃)ガラス転移温度(Tg)を有するはずであるが、完全な水和状態では20℃未満(好ましくは18℃未満、より好ましくは15℃未満)のガラス転移温度を有する。
【0022】
IOLにおける使用のためには、本発明の完全に水和状態の装具材料は、これらから作られる装具が微小切開創用途のために柔軟で高度に変形できるように、好ましくは十分な強度、低い剛性、及び低い25%割線係数を示す。したがって、本発明の眼科用装具材料は、90%超(好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%)の伸び(%破断歪み);約1.0MPa〜約60.0MPa(好ましくは約2.0MPa〜約55.0MPa、より好ましくは約3.0MPa〜約50.0MPa)のヤング率;及び6.0MPa未満、(好ましくは約5.5MPa以下、より好ましくは5.0MPa以下)の25%割線係数を有するであろう。そのような特性を有するそのような材料から作られるレンズは、通常折り畳んだ際に、ひび、割れ、又は裂けを生じないであろう。ポリマー試料の伸びは、全長20mm、グリップ領域の長さ11mm、全幅2.49mm、狭隘部の幅0.833mm、フィレット半径8.83mm、及び厚さ0.9mmであるダンベル形状の引張試験片で決定される。試験は、50ニュートンのロードセルを有するInstron Material Tester(型番4442又は同等の物)を使用して、周囲条件(23±2℃、相対湿度50±5%)の試料に対して行われる。グリップの距離は11mmに設定され、クロスヘッド速度は50mm/分に設定され、試料は破断まで引っ張られる。伸び(歪み)は、元のグリップ距離に対する破断時の変位の割合として報告される。破断歪みは、元のグリップ距離に対する破断時の変位の割合として報告される。破断応力は、初期面積が一定のままであると仮定して、試料に対する最大荷重で、典型的には試料の破断時の荷重で計算される。ヤング率は、線形弾性領域における応力−歪み曲線の瞬時の傾きから計算される。50%割線係数は、0%の歪みと50%の歪みとの間の応力−歪み曲線上に引かれた直線の傾きとして計算される。100%割線係数は、0%の歪みと100%の歪みとの間の応力−歪み曲線上に引かれた直線の傾きとして計算される。試験される材料は本質的に軟らかいエラストマーであることから、これらをInstron機に取り付けるとこれらはねじれる傾向にある。材料試料のたるみを取るために、試料に予荷重がかけられる。これはたるみの低減に役立ち、またより一貫性のある測定値を与える。試料が望ましい値(典型的には0.03〜0.05N)まで予荷重がかけられた時点で歪みがゼロに設定され、試験が開始される。
【0023】
本発明の装具材料は、好ましくは16℃〜45℃の温度範囲にわたって4.5重量%以下(好ましくは約1重量%〜約4.2重量%、より好ましくは約1.5重量%〜約3.9重量%)の平衡含水率を更に有する。装具材料は、45℃の水中で平衡化され、引き続いて周囲温度(約22℃)まで冷却された際に、顕微鏡検査で検出されるようなBF微小液胞を生成せず最大でも10個のDF微小液胞しか生じないような、耐グリスニング性を好ましくは有する。
【0024】
式(I)のアリールアクリルモノマーは、当該技術分野で公知の方法によって製造することができる。例えば、望ましいモノマーの共役アルコールを、反応容器中で、メチルアクリレート、テトラブチルチタネート(触媒)、及び4−ベンジロキシフェノールなどの重合阻害剤と結合させることができる。その後、容器を加熱して反応を促進し、反応を完結させるために反応副生成物を留去することができる。別の合成スキームには、アクリル酸を共役アルコールに添加してカルボジイミドで触媒させること、又は、塩化アクリル及びピリジン若しくはトリエチルアミンなどの塩基と共役アルコールとを混合することが含まれる。
【0025】
式(I)の好適なアリールアクリルモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、2−エチルフェノキシアクリレート;2−エチルフェノキシメタクリレート;フェニルアクリレート;フェニルメタクリレート;ベンジルアクリレート;ベンジルメタクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;2−フェニルエチルメタクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;3−フェニルプロピルメタクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルフェニルメタクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;4−メチルベンジルメタクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2,2−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,3−メチルフェニルエチルアクリレート;2,3−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,4−メチルフェニルエチルアクリレート;2,4−メチルフェニルエチルメタクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート;2−(フェニルチオ)エチルアクリレート;2−(フェニルチオ)エチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルメタクリレート;又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
好ましい式(I)のアリールアクリルモノマーは、Bが(CHm1であり、m1が2〜5であり、Yがなし又はOであり、W1が0又は1であり、DがHであるものである。最も好ましいのは2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンゾイロキシエチルアクリレート;3−ベンゾイルオキシプロピルアクリレート;2−[2−(ベンゾイルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;及びこれらの対応するメタクリレートである。
【0027】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、好ましくは約51重量%〜約78重量%(好ましくは約54重量%〜約75重量%、より好ましくは約60重量%〜約70重量%)の1種以上の式(I)のアリールアクリルモノマーを含有する。
【0028】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、好ましくは約20重量%〜約35重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN,−ジメチルアクリルアミドを含有する。
【0029】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、好ましくは重合性架橋剤を更に含有する。架橋剤は、2つ以上の不飽和基を有する任意の末端エチレン性不飽和化合物であってもよい。好適な架橋剤としては、例えば:エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;エチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート;1,3−プロパンジオールジアクリレート;2,3−プロパンジオールジアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート;N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド;N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスメタクリルアミド;N,N’−メチレンビスアクリルアミド;N,N’−メチレンビスメタクリルアミド;CH=C(CH)C(=O)O−(CHCHO)−C(=O)C(CH)=CH(p=1〜50);CH=CHC(=O)O−(CHCHO)−C(=O)CH=CH(p=1〜50);CH=C(CH)C(=O)O(CHO−C(=O)C(CH)=CH(t=3〜20);及びCH=CHC(=O)O(CHO−C(=O)CH=CH(t=3〜20)が挙げられる。好ましい架橋剤モノマーは、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、又はN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドである。
【0030】
通常、架橋剤成分の総量は約1.0重量%〜約6.0重量%、好ましくは約1.5重量%〜約5.0重量%、より好ましくは約2.0重量%〜約4.0重量%である。
【0031】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、N−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシプロピルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される(好ましくはN−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される)1種以上の疎水性アクリルアミド成分を更に含有していてもよい。疎水性アクリルアミド成分は、平衡塩溶液中での10年分の加速劣化(90℃、81日間)の後の表面光散乱を更に低減するために添加できると考えられている。
【0032】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを更に含有していてもよい。2−ヒドロキシエチルメタクリレートも、平衡塩溶液中での10年分の加速劣化(90℃、81日間)の後の表面光散乱を更に低減するために添加できると考えられている。
【0033】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、ポリ(エチレングリコール)含有(PEG含有)重合性成分を更に含有していてもよい。PEG含有重合性成分も、本発明の完全に水和状態のアクリレート/アクリルアミド共重合材料を室温(RT)から35℃まで加熱した際に生じる潜在的なヘイズの問題を更に低減するか解消するために添加することができると考えられている。
【0034】
本発明によれば、PEG含有重合性成分は、上述したような1つ若しくは2つの末端重合性基を有する直鎖のポリ(エチレングリコール)であってもよく、又は上述したような3つ以上の末端重合性基を有する分岐ポリ(エチレングリコール)であってもよい。そのようなPEG含有重合性成分は、1つ以上の末端官能基(例えばヒドロキシル、アミノ、又はカルボキシル基)を有する市販のポリエチレングリコールから当該技術分野で公知の方法に従って合成することができる。通常、1つ以上のヒドロキシル末端基を有するポリ(エチレングリコール)はテトラヒドロフラン中に溶解され、トリエチルアミン又はピリジンの存在下で塩化メタクロイル又は無水メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸誘導体で処理される。反応は、90%超のヒドロキシル基が対応するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに変換されるまで進行する。ポリマー溶液は濾過され、ポリマーはジエチルエーテル中への析出によって単離される。アミン及びカルボン酸が末端のポリエチレングリコールは、適切な(メタ)アクリル酸誘導体を使用して同様の方法で官能化される。
【0035】
好ましくは、本発明で使用されるPEG含有重合性成分は式(II)
【化2】
によって表される(式中、AはH又はCHであり;Q及びQ’は互いに独立に直接結合、O、NH、又はC(=O)NHCHCHOであり;X及びX’は互いに独立に直接結合、O、NH、OC(=O)NH、又はNHC(=O)NH(好ましくは直接結合又はO)であり;R及びR’は互いに独立に直接結合、又は(CH(好ましくは直接結合)であり;p=1〜3であり;GはH、C〜Cアルキル、(CHm2NH、(CHm2COH、又はR’−X’−Q’−C(=O)CA=CH(好ましくはC〜Cアルキル又はR’−X’−Q’−C(=O)CA=CH)であり;m2=2〜6であり;G=H、C〜Cアルキル、(CHm2NH、又は(CHm2COHの場合はn2=45〜225であり;それ以外はn2=51〜225である(好ましくはG=C〜Cアルキルの場合はn2=45〜180であり、それ以外はn2=51〜225である))。
【0036】
式(II)のPEG含有重合性成分は、当該技術分野で公知の方法によって製造することができる。例えば、これらは上述の手順に従って、又は米国特許第8,449,610号明細書(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載の通りに合成することができる。
【0037】
本発明の装具材料中に含まれる式(II)のPEG含有重合性成分の総量は、装具材料の重合性成分の総量の約1重量%〜約5重量%(好ましくは約2重量%〜約5重量%、より好ましくは約2重量%〜約4重量%)であるが、そのような量は1種の式(II)のPEG含有重合性成分を含んでいてもよいし、式(II)のPEG含有重合性成分の組み合わせを含んでいてもよい。式(II)のPEG含有重合性成分は、2,000〜10,000ダルトン、好ましくは2,000〜8,000ダルトン、より好ましくは2,000〜6,000ダルトン、最も好ましくは2,500〜6,000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0038】
上述した重合性成分に加えて、本発明の眼科用装具材料は、重合性UV吸収材(又はUV吸収剤)、重合性着色染料、シロキサンモノマー、及びこれらの組み合わせなどの(ただしこれらに限定されない)、他の成分も含んでいてもよい。
【0039】
重合性紫外線(UV)吸収剤も本発明の材料中に含まれていてもよい。重合性UV吸収剤は、UV光(すなわち約380nmより短波長の光)を吸収し、任意選択的には高エネルギー紫色光(HVEL)(すなわち380nm〜440nmの波長を有する光)も吸収する任意の化合物であってもよいが、440nmより長波長の可視光をあまり吸収しない。UV吸収化合物はモノマー混合物の中に組み込まれ、モノマー混合物が重合する際にポリマーマトリックス中に取り込まれる。任意の適切な重合性UV吸収剤を本発明で使用することができる。本発明で使用される重合性UV吸収剤は、ベンゾフェノン部位又は好ましくはベンゾトリアゾール部位を含む。重合性ベンゾフェノン含有UV吸収剤は、米国特許第3,162,676号明細書及び米国特許第4,304,895号明細書(これらの全体は参照により本明細書に援用される)に記載の手順に従って合成することができ、あるいは販売業者から入手することができる。重合性ベンゾトリアゾール含有UV吸収剤は、米国特許第3,299,173号明細書、米国特許第4,612,358号明細書、米国特許第4,716,234号明細書、米国特許第4,528,311号明細書、米国特許第8,153,703号明細書、及び米国特許第8,232,326号明細書(これらの全体は参照により本明細書に援用される)に記載の手順に従って合成することができ、あるいは販売業者から入手することができる。
【0040】
好ましい重合性ベンゾフェノン含有UV吸収剤の例としては、これらに限定されないが、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシアルコキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシアルコキシベンゾフェノン、アリル−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−アクリロイルエトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン(UV2)、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン(UV7)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
好ましい重合性ベンゾトリアゾール含有UV吸収剤及びUV/HEVL吸収剤の例としては、これらに限定されないが、2−(2−ヒドロキシ−5−ビニルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルアミドメチル−5−tert オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピル−3’−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−1)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−5)、3−(5−フルオロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−2)、3−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−3)、3−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−4)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メチル−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−6)、2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−7)、4−アリル−2−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−6−メトキシフェノール(WL−8)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−5’[3’’−(4’’−ビニルベンジルオキシ)プロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、フェノール,2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−エテニル−(UVAM)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2−プロペン酸、2−メチル−,2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチルエステル、Norbloc)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−[3’−メタクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV13)、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(3’−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−5−トリフルオロメチル−2H−ベンゾトリアゾール(CF−UV13)、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV6)、2−(3−アリル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV9)、2−(2−ヒドロキシ−3−メタリル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV12)、2−3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(3’’−ジメチルビニルシリルプロポキシ)−2’−ヒドロキシ−フェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV15)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16A)、2−メチルアクリル酸3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]−プロピルエステル(16−100,CAS#96478−15−8)、2−(3−(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−5−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)フェノキシ)エチルメタクリレート(16−102);フェノール,2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−メトキシ−4−(2−プロペン−1−イル)(CAS#1260141−20−5);2−[2−ヒドロキシ−5−[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]−3−tert−ブチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール;フェノール,2−(5−エテニル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−,ホモポリマー(9CI)(CAS#83063−87−0)が挙げられる。
【0042】
より好ましくは、重合性UV吸収剤は2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(2−メチルアリル)フェノール(oMTP)、3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−メトキシ−2−ベンズ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)フェノキシ]プロピルメタクリレート(UV13)、及び2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチルメタクリレート(Norbloc 7966)、又はこれらの組み合わせである。
【0043】
紫外線吸収材料に加えて、本発明のコポリマーから作られる眼科用装具は、米国特許第5,470,932号明細書及び米国特許第8,207,244号明細書に開示されている黄色染料などの着色染料も含んでいてもよい。
【0044】
本発明のコポリマーは、従来の重合方法によって合成される。たとえば、1種以上の式(I)のモノマーと、N,N−ジメチルアクリルアミドと、架橋剤との望ましい比率の混合物が、UV吸収剤、黄色染料、及び従来の熱開始剤(又は光開始剤)などの任意の他の重合性成分と共に調製される。混合物はその後望ましい形状のモールドに入れることができ、重合は開始剤を活性化するために熱的に(すなわち加熱により)又は光化学的(すなわち化学線照射、例えばUV照射及び/又は可視光照射)に行われる。好ましくは、混合物は熱的に硬化される。
【0045】
好ましい実施形態においては、熱的硬化には、約20分かけての室温(23±2℃)から約80℃への温度傾斜、約80℃で1時間の硬化、及び約20分での100℃への昇温及び約100℃で約2時間の硬化が含まれる。スラブは好ましくはこの好ましい硬化の実施形態に従って製造される。
【0046】
もう1つの好ましい実施形態においては、熱的硬化には約100℃で約3時間の硬化が含まれる。これは表面散乱及びバルクヘイズを低減し易いことから、IOLは好ましくはこの好ましい硬化の実施形態に従って製造される。
【0047】
好適な熱開始剤の例としては、これらに限定されないが、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)などのアゾニトリル;過酸化ベンゾイルなどの過酸化物;Perkadox16(ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート)などのペルオキシカーボネート等が挙げられる。好ましい開始剤はAIBNであり、より好ましくはLuperox A98(過酸化ジベンゾイル)である。Luperox A98は、特にウエハーのプラズマ処理なしでの早期剥離の抑止に関し、AIBNよりも優れていることが見出された。
【0048】
重合が光化学的に行われる場合、モールドは重合を開始することが可能な波長の化学線照射に対して透明である必要がある。例えばベンゾフェノン型又はビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)光開始剤などの従来の光開始剤化合物も、重合を促進するために入れることができる。好適な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocur及びIrgacur型の光開始剤(好ましくはDarocur 1173(登録商標)、Darocur 2959(登録商標)、及びIrgacure 819(登録商標)、並びに約400〜約550nmの領域の光を含む光源を用いた照射でフリーラジカル重合を開始することができるゲルマニウム系NorrishタイプI光開始剤である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。ゲルマニウム系NorrishタイプI光開始剤の例としては、米国特許第7,605,190号明細書(この全体は参照により本明細書に援用される)に記載のアシルゲルマニウム化合物である。
【0049】
本発明の眼科用装具材料が硬化した後、材料の未反応成分をできるだけ多く取り除くために、これらは適切な溶媒中で抽出される。適切な溶媒の例としては、アセトン、メタノール、及びシクロヘキサンが挙げられる。抽出に好ましい溶媒はアセトンである。
【0050】
開示された眼科用装具材料で作られたIOLは、比較的小さな切開創を通り抜けることが可能な小さな断面積になるように巻くか折り曲げることができる、任意の設計のものであってもよい。例えば、IOLは、シングルピース又はマルチピース設計として公知のものであってもよい。典型的には、IOLは光学部と少なくとも1つの支持部とを含む。光学部はレンズとして機能する部分であり、支持部は光学部に取り付けられており光学部を眼の中の適切な場所で保持するアームのようなものである。光学部と支持部は同じ材料のものでも異なる材料のものであってもよい。マルチピースレンズは、光学部と支持部が別個に作られ、その後に支持部が光学部に取り付けられるためそのように呼ばれている。シングルピースレンズにおいては、光学部と支持部は一片の材料から形成される。その後、材料に応じて支持部が材料から切り出されるか旋盤加工されることでIOLが製造される。
【0051】
IOLに加え、本発明の眼科用装具材料は、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜内レンズ、角膜インレー又は角膜リング、及び緑内障フィルトレーションデバイスなどの他の装具における使用にも適している。
【0052】
これらの装具材料は、表面粘着性が低く屈折率が高い眼内レンズを形成するために使用することができる。これらの材料で作られるレンズは軟らかく、透明であり、比較的小さい切開創から眼の中に挿入することができ、挿入後に元の形状に回復することができる。
【0053】
具体的な用語、装具、及び方法を使用して本発明の様々な実施形態を述べてきたが、そのような記述は例示のみを目的としている。使用されている言葉は限定ではなく記述のための言葉である。以降の請求項に記述されている本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなしに当業者によって変更及び変形がなされ得ることを理解すべきである。また、様々な実施形態の態様は、以下に示すように、全体若しくは一部が入れ替えられてもよく、あるいは任意の方法で組み合わせることができ、及び/又は一緒に使用することができる。
【0054】
1.(a)全ての重合性成分の総量に対して約20重量%〜約35重量%のN,Nジメチルアクリルアミド、
(b)全ての重合性成分の総量に対して約51重量%〜約78重量%の1種以上の式(I)
【化3】
のアリールアクリルモノマー(式中、AはH又はCH(好ましくはH)であり;Bは(CHm1又は[O(CHZ1であってm1が2〜6でありz1が1〜10であり;Yは直接結合、O、S、又はNR’であってR’はH、CH、Cn’2n’+1であってn’=1〜10、iso−OC、C又はCHであり;W1はm1+w1≦8であることを条件として0〜6であり;DはH、Cl、Br、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C、又はCHである)、
(c)重合性架橋剤、
を含有する重合性組成物の重合生成物である眼科用装具材料であって、
列挙した成分と全ての追加的な重合性成分との合計が100重量%であり、
成分(a)及び(b)の量の合計が少なくとも約80重量%であり、
乾燥状態の眼科用装具材料はより高いガラス転移温度を有し、
完全に水和状態の眼科用装具材料は、20℃未満のガラス転移温度、589nmかつ室温(23±3℃)で測定される1.50超の屈折率、16℃〜45℃の温度で4.5重量%未満の平衡含水率、観察面当たり明視野微小液胞なし及び約10個以下の微小液胞を有することによって特徴付けられる耐グリスニング性、約1.0MPa〜約60.0MPaのヤング率、90%より大きい破断伸び、並びに6.0MPa未満の25%割線係数を有する、眼科用装具材料。
【0055】
2.完全に水和した状態の装具材料が、23℃から35℃まで加熱された際に実質的に透明又は透明のままである(すなわち、
【数3】
≦20%(T23及びT35はそれぞれ23℃及び35℃の材料の400nm〜700nmの間の平均透過率である)である)、発明1に記載の眼科用装具材料。
【0056】
3.完全に水和した状態の装具材料が、10年分の加速劣化(平衡塩溶液中で90℃、81日間)の後に約30CCT以下の表面光散乱を有する、発明1又は2に記載の眼科用装具材料。
【0057】
4.式(I)において、Bが(CHm1であり、m1が2〜5であり、Yがなし又はOであり、w1が0又は1であり、DがHである、発明1〜3のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0058】
5.前記1種以上のアリールアクリルモノマーが、2−エチルフェノキシアクリレート;2−エチルフェノキシメタクリレート;フェニルアクリレート;フェニルメタクリレート;ベンジルアクリレート;ベンジルメタクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;2−フェニルエチルメタクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;3−フェニルプロピルメタクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルフェニルメタクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;4−メチルベンジルメタクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2,2−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,3−メチルフェニルエチルアクリレート;2,3−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,4−メチルフェニルエチルアクリレート;2,4−メチルフェニルエチルメタクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート;2−(フェニルチオ)エチルアクリレート;2−(フェニルチオ)エチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルメタクリレート;又はこれらの組み合わせである、発明1〜4のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0059】
6.前記1種以上のアリールアクリルモノマーが、2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;又はこれらの組み合わせである、発明1〜5のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0060】
7.重合性組成物が約54重量%〜約75重量%(より好ましくは約60重量%〜約70重量%)の前記1種以上の式(I)のアリールアクリルモノマーを含有する、発明1〜6のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0061】
8.重合性組成物が約20重量%〜約30重量%(より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN,Nジメチルアクリルアミドを含有する、発明1〜7のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0062】
9.成分(a)と(b)の量の合計が少なくとも約85重量%(より好ましくは少なくとも約90重量%)である、発明1〜8のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0063】
10.重合性組成物が約1.0重量%〜約6.0重量%、好ましくは約1.5重量%〜約5.0重量%、より好ましくは約2.0重量%〜約4.0重量%の重合性架橋剤を含有する、発明1〜9のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0064】
11.重合性架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;エチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート;1,3−プロパンジオールジアクリレート;2,3−プロパンジオールジアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート;N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド;N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスメタクリルアミド;N,N’−メチレンビスアクリルアミド;N,N’−メチレンビスメタクリルアミド;CH=C(CH)C(=O)O−(CHCHO)−C(=O)C(CH)=CH(p=1〜50);CH=CHC(=O)O−(CHCHO)−C(=O)CH=CH(p=1〜50);CH=C(CH)C(=O)O(CHO−C(=O)C(CH)=CH(t=3〜20);CH=CHC(=O)O(CHO−C(=O)CH=CH(t=3〜20)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される(好ましくは1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される)、発明10に記載の眼科用装具材料。
【0065】
12.成分(a)と(b)の量の合計が少なくとも約85重量%(より好ましくは少なくとも約90重量%)である、発明1〜11のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0066】
13.乾燥状態の眼科用装具材料が、25℃より高い(より好ましくは約28℃〜約40℃)ガラス転移温度を有する、発明1〜12のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0067】
14.完全に水和した状態の眼科用装具材料が、18℃未満(より好ましくは15℃未満)のガラス転移温度を有する、発明1〜13のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0068】
15.完全に水和した状態の眼科用装具材料が、589nmかつ室温(23±3℃)で測定される1.51超(より好ましくは1.52超)の屈折率を有する、発明1〜14のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0069】
16.完全に水和した状態の眼科用装具材料が、16℃〜45℃の温度で約1重量%〜約4.2重量%(より好ましくは約1.5重量%〜約3.9重量%)の平衡含水率を有する、発明1〜15のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0070】
17.完全に水和した状態の眼科用装具材料が、約2.0MPa〜約55.0MPa(より好ましくは約3.0MPa〜50.0MPa)のヤング率を有する、発明1〜16のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0071】
18.完全に水和した状態の眼科用装具材料が、少なくとも約100%(より好ましくは少なくとも約110%)の破断伸びを有する、発明1〜17のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0072】
19.完全に水和した状態の眼科用装具材料が、約5.5MPa以下(より好ましくは約5.0MPa以下)の25%割線係数を有する、発明1〜18のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0073】
20.重合性組成物が、
(i)ヒドロキシエチルメタクリレート;
(ii)約1重量%〜約5重量%(好ましくは約2重量%〜約5重量%、より好ましくは約2重量%〜約4重量%)の式(II)
【化4】
のポリ(エチレングリコール)含有重合性成分(式中、AはH又はCHであり;Q及びQ’は互いに独立に直接結合、O、NH、又はC(=O)NHCHCHOであり;X及びX’は互いに独立に直接結合、O、NH、OC(=O)NH、又はNHC(=O)NH(好ましくは直接結合又はO)であり;R及びR’は互いに独立に直接結合、又は(CH(好ましくは直接結合)であり;p=1〜3であり;GはH、C〜Cアルキル、(CHm2NH、(CHm2COH、又はR’−X’−Q’−C(=O)CA=CH(好ましくはC〜Cアルキル又はR’−X’−Q’−C(=O)CA=CH)であり;m2=2〜6であり;G=H、C〜Cアルキル、(CHm2NH、又は(CHm2COHの場合はn2=45〜225であり;それ以外はn2=51〜225である(好ましくはG=C〜Cアルキルの場合はn2=45〜180であり、それ以外はn2=51〜225である));
(iii)N−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシプロピルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される(好ましくはN−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される)1種以上の疎水性アクリルアミド成分;並びに
(iii)これらの組み合わせ;
からなる群から選択される少なくとも1種の成分を更に含有する、発明1〜19のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0074】
21.式(II)のPEG含有重合性成分が、2,000〜10,000ダルトン、好ましくは2,000〜8,000ダルトン、より好ましくは2,000〜6,000ダルトン、最も好ましくは2,500〜6,000ダルトンの数平均分子量を有する、発明20に記載の眼科用装具材料。
【0075】
22.重合性組成物が重合性UV吸収剤を含有する、発明1〜21のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0076】
23.重合性UV吸収剤が、2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(2−メチルアリル)フェノール、N−[2−[4−ヒドロキシ−3−[2−(2−メチルフェニル)ジアゼニル]フェニル]エチル]メタクリルアミド、又はこれらの組み合わせである、発明1〜21のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0077】
24.発明1〜23のいずれか1つに記載の眼科用装具材料を含む、又はこれから本質的になる、眼内レンズ。
【0078】
25.発明1〜23のいずれか1つに記載の眼科用装具材料を含む、又はこれから本質的になる、湿潤充填された眼内レンズ。
【0079】
上述の開示によって当業者は発明を実施できるようになるであろう。具体的な実施形態及びその利点をより理解できるようにするために、以降の非限定的な実施例を参照することが提案される。しかしながら、以降の実施例を本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0080】
実施例1
モールドのアルゴンプラズマ処理
早期剥離挙動を改善するために、注型の前に全てのSN60WFモールドをアルゴンプラズマ(AST RF プラズマチャンバー)で処理した。プラズマチャンバーのパラメーターは、60ワットの順方向電力、300mTorrの圧力、及び100ml/分の気体流量であった。モールドは15秒処理し、その後注型の前に正確に30分寝かせたままにした。
【0081】
ポリマーの作製
配合物を最初に窒素で1分間パージし、それから30秒間減圧で脱気して全ての気泡を除去した。これらは注型時に0.2μmの孔径(及び任意選択的には1.0μmの孔径)を有するPTFEフィルターを通してろ過した。各セットは、注型に約10分要した。全てのレンズを105℃に保持されている予熱したオーブンに入れ、その後105℃で3時間硬化させた。迅速硬化させると良好な品質のスラブが得られないことから、同じ配合物由来のスラブは、周囲温度から70℃まで20分でオーブンを加熱して1時間硬化し、それから105℃まで20分で昇温させて2時間硬化することによって昇温硬化した。≦30%(重量部)のDMAAを有する配合物は、連続的に撹拌しながら室温でアセトンで抽出した。≧30%(重量部)のDMMAを有する試料はメタノールで抽出した。これは、35%(重量部)及び40%(重量部)のDMAAを有する試料はアセトンに浸すとすぐに割れてしまったためである。抽出サイクルは、1時間の浸漬3回と最終すすぎとから構成された。その後、試料を24時間空気乾燥し、次いで更に24時間70℃で減圧乾燥した。抽出可能物はレンズ及びスラブについて測定した。秤量誤差の可能性を減らすために、全てのレンズを一緒に秤量した(メタノール及びアセトン中での膨潤比及び%抽出可能物を記録した)。
【0082】
全ての試料は、バイアル中、平衡塩溶液(BSS)の中で、120psiの圧力及び120℃で30分オートクレーブ処理した。
【0083】
早期剥離評価
モールドからの取り出しの前に、モールドから早期剥離したレンズの数を決定するために全てのSN60WFモールドを調査した。調査は、標準検査方法の使用訓練を受けた者によって行った。
【0084】
洗浄評価
SN60WFレンズをモールドから取り出して光学部を打ち抜いた。その後、これらをマイクロチューブの中に入れて洗浄評価を行った。
【0085】
微小液胞試験
SN60WFレンズに対して45℃〜21℃のΔTの暗視野微小液胞試験を行った。試料をBSS中で48時間45℃に保持し、その後取り出して室温(約21℃)にする。2時間後、試料を暗視野モードで約250×の倍率のOlympus BX60顕微鏡を使用して調べる。各レンズは3つの異なる領域で評価し、最も高いDF MVが約1000×1000・mの撮像領域の範囲内でカウントされる。
(シンボルエラー)
【0086】
再現性調査についての試験は、45℃〜37℃のΔTの明視野微小液胞試験について行った。
【0087】
スリットランプでのヘイズ評価
表面のヘイズを評価するために、SN60WFレンズをスリットランプによって調べた。試験は、レンズを24時間BSSの中で水和させた後に行った。各レンズの前眼部及び後眼部のピークヘイズ強度(PHI)は30°の角度で決定した。
【0088】
表面散乱及びバルクヘイズ試験
表面散乱及びバルクヘイズ試験の準備では、SN60WFレンズを無菌状態でBSSで満たしたクリンプトップバイアルの中にそれぞれ入れた。これらを90℃で0、40、及び81日間寝かせた。これは35℃での0、5、及び10年に相当する。評価はPROC−0005403に従って、Nidek EAS 1000 Scheimpflugによって行った。
【0089】
Scheimpflug画像取得システムをIOLの一貫性のある表面光散乱(SLS)分析用に設定した。試験するIOLを保持し、室温で空気又は平衡塩溶液(BSS,Alcon Laboratories,Inc.)で満たすことができる、目的に合うように設計された黒眼模型を組み立てた。模型眼球及びIOLの画像は、200Wのフラッシュ、10.00mmのスリット長、0.08mmのスリット幅、及び光線路から45°の固定カメラ角度位置、の設定を使用してEAS−1000前眼部解析装置(Nidek Co.Ltd.)を用いて取得した。表面光散乱濃度測定は、0(最小強度)から255(最大強度)の範囲でコンピューター適合テープ(CCT)単位で測定した。SLS濃度測定値は、IOL光学部の中心に対して直交する線の軸に沿って、IOLの前眼部表面及び後眼部表面について測定した。ピーク散乱強度は、光学部ゾーンの中央3.0mm以内の3本の軸に沿った前眼部表面及び後眼部表面について測定することで1つのIOLにつき6回の測定を行い、これらをその後平均化した。表面光散乱は乾燥、湿潤(平衡塩溶液中で約2分間後)、及び水和(平衡塩溶液中で24時間後)状態のIOLで測定した。
【0090】
送達試験
5つのNG2001の正味形状のレンズをIOL送達試験グループに供した。これらのレンズは標準的なAcrySofのサイクルと一致する出力条件及び圧力条件の1分間のプラズマサイクルでプラズマ処理した。送達試験は、1.5mmのポリカーボネートNGIOL送達システムを用いて行った。
【0091】
それぞれ以下のとおりの処方である2つのIOLについて、Monarch−III Dカートリッジによる注入送達試験を行った。Monarch−III Dカートリッジを開け、Viscoatで満たした。1つの配合物由来の40DのSA60ATのIOL(40ジオプトリのモールド中で成型したIOL)を、カートリッジ使用説明書に従ってカートリッジの中に装填した。カートリッジをMonarch−III Dハンドピースの中に入れ、プランジャーをねじ山の作動点まで前進させ、その後IOLがかみ合うまで更にゆっくり前進させた。IOLは、カートリッジ先端を通して水の皿まで前進させた。IOLを観察し、光学部が開く時間及び支持部が光学部から完全に離れるまでの時間を決定した。
【0092】
また、注入で生じるあらゆる損傷について、30×の倍率の顕微鏡でIOLを観察した。更に、カートリッジ先端を、先端頂部における圧迫痕又はあらゆる破損についても観察した。IOLの損傷又はカートリッジ先端の損傷が観察されなかった場合に、送達は合格とみなされた。IOL又は先端の損傷は送達試験の失敗を意味した。
【0093】
引張試験
得られた材料の引張特性を測定するために、試験する各材料のスラブ試料から小型のドッグボーンを8〜12個切り取り、微量遠心分離バイアルの中でBSS中で水和させ、水浴中で18℃に平衡化した。温度制御式引張試験は、Instron5943材料試験機に取り付けたBioplus環境チャンバーを使用して行った。Bioplusチャンバーは、温度制御された水浴を循環させることによって18℃に制御した。小型のドッグボーンを試験する直前に18℃の水浴から取り出し、引張試験機のクロスヘッドに置いた。Biopulsチャンバーをクロスヘッドの上に上げ、試料をBiopulsチャンバーの中で2分間更に平衡化させた。小型のドッグボーンは50mm/分の速度で破断点まで引っ張り、引張特性を測定した。1つの材料処方につき8〜12回の試験の平均から、引張強度(極限引張応力)、破断伸び(最大歪み)、ヤング率及び割線係数の値を決定した。
【0094】
歩留まりの評価
レンズを評価した。検査官が各レンズを調べ、表面ヘイズのレベル、並びにレンズが表面ヘイズ及び欠陥の検査に合格であるか否かを決定した。表面ヘイズレベルは1〜5の数字でグレード分けした。これは、1=なし、2=非常に軽度、3=軽度、4=中程度、5=重度、の基準に相当する。表面ヘイズの合格/不合格の基準は、ヘイズの均一性及びレベルに基づいた。全てのグレード5のレンズは即座に不合格とみなした。それ未満の任意のグレードは、ヘイズが均一だった場合には合格とすることができた。レンズ欠陥検査は、表面及び埋没粒子以外の、光学部の中で見出される全ての生じ得る欠陥について調べた。程度に関わらず何等かの欠陥が見出された場合にレンズは検査に不合格とされた。
【0095】
平衡含水率
%抽出可能物測定の後、同じ試料をガラスバイアルの中に入れ、平衡塩溶液(BSS,Alcon)中に浸し、少なくとも24時間45℃の水浴の中に入れた後、取り出して再秤量することで%平衡含水率(EWC)を決定した。いくつかの事例では、含水率はMV試験の前後の試料を秤量することで決定した。
【0096】
ガラス転移温度
乾燥状態又は完全に水和状態の材料のガラス転移温度(Tg)は、10℃/分で示差走査熱量測定法によって測定し、熱流束曲線の転移の中点で決定した。
【0097】
屈折率(RI)
材料の屈折率は、589nm、35℃でBausch&Lomb屈折率計(Cat.#33.46.10)を使用して測定した。試験スラブ試料は脱イオン水又はBSSの中で最低でも24時間水和させ、拭き取って乾燥させ、その後試料台に乗せた。測定は台に乗せてから5分以内に行った。
【0098】
潜在的なヘイズ
潜在的なヘイズは、Schott KL 2500 LCD光源を使用して定性的に測定した。IOL又は長方形の試験スラブ(1×2×0.1cm)をBSS中で最低でも24時間水和させた。水和させた試料をその後35℃の水浴に浸し、潜在的なヘイズの存在を判定するために試料をx、y及びz方向に回転させながら最も高い強度で照射した。概して、35℃で5分以内に脱イオン水又はBSS中で材料が著しく濁り、且つ35Cの浴中で1時間より長く濁ったままである場合に、水和材料は許容できないレベルの潜在的なヘイズを有すると見なされる。ほとんどの場合においては、ヘイズは永久的なものではなく、35℃での分子の再配向によって材料は透明になる。許容できるレベルの潜在的なヘイズを有する材料は、通常約30分以内の35℃での加熱で透明になる。潜在的なヘイズを有さないと見なされる材料は、35℃の浴に入れられた場合にヘイズの増加を示さない。
【0099】
透明度
試料の透明度は、Dolan−Jenner Fiber−Liteファイバー光照明装置(190型)を使用して乾燥レンズ及び水和レンズについて定性的に評価した。相対的なヘイズを測定するために、試料をx、y、及びz方向に回転させながら水和レンズを光路に置いた。
【0100】
材料
PEA=2−フェニルエチルアクリレート;
DMAA=N,N−ジメチルアクリルアミド;
BDDA=1,4−ブタンジオールジアクリレート;
oMTP(o−メチルアリルチヌビンp)=2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(2−メチルアリル)フェノール;
AL8739=N−[2−[4−ヒドロキシ−3−[2−(2−メチルフェニル)ジアゼニル]フェニル]エチル]メタクリルアミド;
AIBN=アゾ−ビス−(iso−ブチルニトリル);
Luperox A98=過酸化ジベンゾイル;
SN60WF=充填孔を有する、接合されたスナップフィット式のポリカーボネート又はポリプロピレンのIOLのモールド、20.0ジオプトリ
ポリプロピレンスラブモールド NG2001=ポリカーボネート又はポリプロピレンの正味形状がIOLのモールド、30.0ジオプトリ
【0101】
実施例2
湿潤充填配合物のために利用可能な限界を決定するために、比較的幅広い限度を有する混合物設計を計画した。20%〜40%のDMAA量及び2〜4%のBDDA量を試験し、中央値(3%のBDDAで30%のDMAA)では2回繰り返した。混合物のDOE(実験計画)を形成し、Minitab15統計ソフトウェアで分析した。10個の試料の完全なDOEは表1に示されており、応答は表2に列挙されている。全ての配合物には1%のAIBN、1.8%のoMTP、及び0.04%のAL8739が含まれていた。これらは105℃で予熱したオーブン中で3時間、迅速硬化させた。全ての試験に同じオーブンを使用した。スラブは実施例1に記載の通りに昇温硬化した。全てのレンズはAcrySofのサイクルでプラズマ処理した。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
高いDMAA及び高いBDDAの配合物のいくつか(42−1、42−4、及び42−7)はこの応答についてのデータを全く有さなかったことから、100%割線係数測定は分析できなかった。
【0105】
洗浄、抽出可能物、早期剥離の結果、及びスリットランプによる表面ヘイズ測定は表3にまとめられている。これらの応答は、対応するデータが組成物によって変動せず、全ての試料で同様に見えたことから、DOEで使用されなかった。例えば、早期剥離はウエハーのプラズマ処理によって防止できることから、試料の組成に関わらず全ての試料が高い成功率で早期剥離に合格した(>80%合格)。同様に、全ての試料が乾燥状態でガラス状であることから洗浄が容易であるため、粒子洗浄についての成功率も高かった(>80%が洗浄された)。42−10(中央値の配合物の1つ)のみが50%の洗浄を示した。これは主に埋め込まれている粒子に起因する。洗浄評価時には粒子の除去及びヘイズのみが調査されたことに注意が必要である。擦り傷などの他の表面検査は評価されなかった。しかし、検査者は全ての試料について、高いレベルの擦り傷に気づいた。最後に、42−9(30°ヘイズが約10±9PHI)を除いては全ての配合物で非常に低いスリットランプヘイズが測定された。しかし、レンズの1つのうちの1つの表面だけ非常に高いヘイズ(約17PHI)を有しており、その結果大きい標準偏差を有する高い平均値となった。そうしないで高い値を異常値として処理した場合、平均のヘイズは2±2PHIとなる。5年時の表面光散乱(SS)及びバルクヘイズ(BH)の結果は、DOE試験を行った際には得られなかった。しかし、約20CCTのSSと約7PHIのBHとを有する最も低い組成の端(42−3、2%のBDDAで20%のDMAA)の1つを除いて全ての試料が低いSSとBHとを有していたことから、これはDOEの結果に大きな違いを生じさせなかった。この特定の試料は最も大きな潜在的なヘイズも有しており、これは表4で報告されているDOE分析で使用された。
【0106】
【表3】
【0107】
Minitab15統計ソフトウェアを使用してDOEを形成し、分析した。DOE回帰分析の結果は表4にまとめられている。暗視野のMV、潜在的なヘイズ、周囲温度と35℃との間の含水率の変化、送達力、並びに表面及び引張特性は組成に大きく依存することが分かり、これらを応答として使用した。重要な結果は表5にまとめられている。潜在的なヘイズの観察は、0がなし、0.5がかすかなヘイズ、2がわずかなヘイズであり、10が強いヘイズに相当するとしてスケール化した。PEA*DMAAとPEA*BDDAとの間の相互作用が有意であることが分かったが、DMAA*BDDAには認められなかった。
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
DOEの結果、表6に選択され最適化された配合物となった。
【0111】
【表6】
【0112】
表に示されている最適化された配合物の結果は次の通りである。EWC%が3.5重量%であり、水和屈折率が1.54であり、完全な水和状態でのガラス転移温度が11.5℃である。
【0113】
実施例3
上の表6で示されている選択され最適化された配合物を、3回の同一のバッチを繰り返してこの配合物がロバストであるかどうかを決定した。最適化された湿式充填配合物に対する硬化条件の影響を調べるために、再現試験時、配合物のバッチを2つに分け、1つのグループを熱的に迅速硬化し、残り半分を熱的に昇温硬化した。更に、レンズの望ましい展開挙動のためにプラズマ処理が必要かどうかを調べるために、同じバッチ由来のプラズマ処理した試料と処理していない試料の両方で送達試験を行った。
【0114】
表7に送達試験の結果が記載されている。例えば、配合物42−6(実施例2)についてのDOE試験の送達力は18.8±1.2Nである。ベースライン(空のカートリッジ)についての最大の力の範囲は16.1〜16.2Nであった。
【0115】
【表7】
【0116】
最適化された配合物の全ての再現は、約20Nの送達力で一貫しており、これはファンネル基準の最大値である。しかし、30個のIOLの中でプラズマ処理していないレンズのうちの1つだけ60秒以上の展開時間を示したことを除いては、プラズマ処理していない試料であっても表面の問題及び支持部の貼り付きは認められなかった。ノズルの損傷は観察されなかった。
【0117】
最適化された湿潤充填物に対しても、洗浄、潜在的なヘイズ、早期剥離、表面散乱、バルク及び表面ヘイズ、重量測定による抽出可能物、並びに暗視野MVについての試験を行った。結果は表8にまとめられている。早期剥離については15秒間Ar−プラズマ処理したGen1ウエハーでは問題はなかった。全ての再現物で潜在的なヘイズは観察されなかった。洗浄性は、通常6つのロットのうちの4つで60%よりも良好であった。2つのロットは洗浄試験で不合格であった。これは主に埋め込まれている粒子及び極度の擦り傷に起因する。抽出可能物は、全ての迅速硬化及び昇温硬化した試料について、メタノール中で抽出した場合に約2%であった。MV性能は良好であった。予想外にも、30°でのスリットランプ測定で全ての試料について比較的高い表面ヘイズが測定された。典型的なAcrySofレンズは18PHIのレベルの表面ヘイズを有する。しかし、4番目のロット(74−4RC及びQC)由来のn=6のIOLは、それぞれ3.8及び3.2PHIの表面ヘイズを示した。更に、最適化DOE試料の10個全てが非常に低い表面ヘイズを有していた。
【0118】
【表8】
【0119】
全ての再現試験の引張機械特性は互いに似ていることが分かり、また表9で報告されている最も近いDOE試料(42−6、実施例2)に匹敵することも分かった。
【0120】
【表9】
【0121】
上の全てのデータに基づくと、最適化された配合物は再現性があり、ロバストであり、全ての基準に合格したことが明らかになった。
【0122】
実施例4
送達力を減らすことを目的として材料を柔らかくするために、表6で示されている最適化された配合物と比較してより多い及びより少ないDMAA(24〜30%)量、並びにより少ない架橋剤(1.5〜3.5%)量を調査した(処方については表10を参照のこと)。概して、DMAAが多く架橋剤が少ない試料については、室温範囲(16〜25℃)での実施でわずかだけ係数の減少が測定された。表10に送達力の測定及び潜在的なヘイズの評価が報告されている。42−11、17−3及び4、並びに42−8(DOE試料の1つ)などの改良配合物のいくつかは、20Nよりも低い送達力を有していた。これらの改良配合物はその後2人の外科医によって送達された。どちらの外科医も最適化された配合物と改良された配合物の送達性能を差別化することはできなかった。
【0123】
【表10】
【0124】
実施例5
最適化された湿潤充填配合物に対して開始剤スクリーニング試験も行った。開始剤スクリーニングの結果、特にモールド処理なしで早期剥離が懸念される場合に、AIBNと比較して、Luperox A98(過酸化ジベンゾイル、Mwt=242)が湿潤充填配合物のためのより良い開始剤であることが分かった。
【0125】
最適化された処方と選択された開始剤とを用いて、チームは最適化された硬化及び開始剤組成の選択を進めた。硬化温度及び開始剤濃度の2つの因子のみしか存在しないため、完全な因子設計で2回のDOEを行った。Luperox A98濃度を変化させつつ(0.75%−1.25%−1.75%)、1つのDOEは昇温硬化について試験し、他方は迅速硬化について行った。DOEは表11に示されおり、応答は表12に列挙されている。昇温硬化のために、周囲温度からそれぞれ20、34、及び38分で指定されたT(75、85、又は95℃)まで上がり1時間、その後100℃で2時間となるように、オーブンをプログラムした。迅速硬化に関しては、オーブンを指定温度(75、88、又は101℃)まで予熱して1時間、その後100℃で2時間とした。処方及び硬化の条件の一部として実際の早期剥離を調べるために、いずれのモールドに対してもアルゴンプラズマ処理を行わなかった。
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
Minitab16統計ソフトウェアを使用してDOEを形成し、分析した。昇温硬化及び迅速硬化のDOEについての重要な分析結果は表13及び14にそれぞれ示されている。表面FLE検査の結果は、3つのカテゴリー:表面目視ヘイズレベル、%表面合格率、及び擦り傷を不合格とみなさない場合の%表面合格率、で使用した。また、いくつかのレンズは、比較的高温の101℃での迅速硬化の際に気泡が生成したため不合格であった。
【0129】
【表13】
【0130】
【表14】
【0131】
表15に、所定の応答が95%の信頼水準内で応答によって有意に影響を受けるかについて、両方のDOEのパレート図の結果がまとめられている。88℃以上では迅速硬化によっては良好な品質のスラブが製造されないことに留意すべきである。
【0132】
【表15】
【0133】
表16に、硬化DOEの最適条件がまとめられている。昇温硬化DOEでは、0.75%のA98及び77.5℃までの加熱が望ましい条件と思われることが明らかになった。迅速硬化DOEの結果は、統計学的にほとんど有意ではなかったものの、データは、約98℃の高い硬化温度と1%の開始剤濃度とを組み合わせると若干良い性能になることを示した。しかし、いくつかのレンズは101℃での硬化の際に気泡が生成したため脱落した。5年時点の表面散乱(SS)及びバルクヘイズ(BH)の結果が明らかになり、表17及び表18に示されている。昇温硬化と迅速硬化の両方で同様のSS及びBHの結果を示した。これらの結果に基づくと、周囲温度から77.5℃まで20分かけてから3時間、そして開始剤濃度が0.75%のA98である昇温硬化が推奨される。これは主に、より良いスリットランプヘイズの結果が測定され、気泡を生成し得る迅速硬化に比べて良好なスラブが製造されることによる。それ以外の残りの特性は同様であることが分かった。
【0134】
【表16】
【0135】
【表17】
【0136】
【表18】