【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1に係る電磁継電器の解体斜視図である。
図1においては、ベースカバーを外して図示している。一対の継鉄10の方向をX方向、X方向に直交する方向をY方向、紙面の手前方向をZ方向とする。以下の図面においても同様にX、YおよびZ方向を図示する。ベース50内に、電磁石20、継鉄10、接極子12、接極子カバー13、第1接触押圧部16a、第2接触押圧部16b、第1開離押圧部18a、第2開離押圧部18b、接続部材14、第1可動接点30a、第2可動接点30b、ばね32a、32b、可動端子34、ばね36a、36b、第1固定接点40a、第2固定接点40bおよび固定端子42が収納されている。
【0020】
電磁石20は、ボビン24にコイル電線22が巻かれている。コイル電線22には端子26が電気的に接続されている。電磁石20の両側には一対の継鉄10が磁気的に接続されている。一対の継鉄10のそれぞれの端部の磁極は反対である。コイル電線22に流れる電流の方向を変更すると、電磁石20の極性が反転する。このように、電磁石により継鉄10の磁極が変更可能である。接極子12は、永久磁石により磁化されており、継鉄10の磁極により、継鉄10に接触または開離する。接極子12の一部および永久磁石(不図示)は、接極子カバー13により固定されている。
【0021】
第1可動接点30aはばね32a(第1弾性体)を介し可動端子34に電気的に接続されている。第2可動接点30bはばね32b(第2弾性体)を介し可動端子34に電気的に接続されている。ばね32aおよび32bは、可動端子34と固定部39により固定されている。第1固定接点40aおよび第2固定接点40bは固定端子42に電気的に接続されている。第1可動接点30aと第1固定接点40aとが接触し、第2可動接点30bと第2固定接点40bとが接触すると、可動端子34と固定端子42との間が電気的に接続される。第1可動接点30aと第1固定接点40aとが開離し、第2可動接点30bと第2固定接点40bとが開離すると、可動端子34と固定端子42とは電気的に非導通となる。
【0022】
第1可動接点30aは、ばね32aおよび36aにより、第1可動接点30aと第1固定接点40aとが開離するように付勢されている。第1接触押圧部16aがばね32aおよび36aを−Y方向に押圧することにより、第1可動接点30aが第1固定接点40aと接触する。第1開離押圧部18aがばね32aおよび36aを+Y方向に押圧することにより、第1可動接点30aが第1固定接点40aから開離する。
【0023】
第2可動接点30bは、ばね32bおよび36bにより、第2可動接点30bと第2固定接点40bとが開離するように付勢されている。第2接触押圧部16bがばね32bおよび36bを−Y方向に押圧することにより、第2可動接点30bが第2固定接点40bと接触する。第2開離押圧部18bがばね32bおよび36bを+Y方向に押圧することにより、第2可動接点30bが第2固定接点40bから開離する。なお、上記の例では、第1弾性体としてばね32aおよび36aの複数の板状ばねを例とし、第2弾性体としてばね32bおよびばね36bの複数の板状ばねを例にしているが、第1弾性体および第2弾性体は、それぞれ第1可動接点30aおよび第2可動接点30bを付勢するものであればよい。
【0024】
接続部材14は接極子カバー13と第1接触押圧部16a、第2接触押圧部16b、第1開離押圧部18aおよび第2開離押圧部18bとを接続する。
【0025】
図2は、接極子カバーおよび接続部材を除いた電磁継電器の解体斜視図である。
図2に示すように、ベース50にベース回転軸突起52が形成されている。その他の構成は、
図1と同じであり、説明を省略する。
【0026】
図3は、ベースカバーの斜視図である。
図3に示すように、ベースカバー51には、カバー回転軸受82が形成されている。
【0027】
図4および
図5は、接極子と接続部材を示す斜視図である。
図6は、ベースおよび接極子カバーのXZ断面図である。
図4から
図6に示すように、接極子カバー13に凹部が形成され、凹部内に永久磁石17が埋め込まれている。接極子カバー13には、接極子回転軸受80および接極子回転軸突起53が形成されている。接極子回転軸受80には、
図2のベース回転軸突起52が挿入される。接極子回転軸突起53は、
図3のカバー回転軸受82に挿入される。
【0028】
接続部材14の先端には押圧部材が形成されている。押圧部材は、第1接触押圧部16a、第2接触押圧部16b、第1開離押圧部18aおよび第2開離押圧部18bを有する。第2接触押圧部16bが第1接触押圧部16aより−Y方向に突出するように、第2接触押圧部16bと第1接触押圧部16aとの間に段差を形成されている。これにより、ばね36aから第1接触押圧部16aまでの距離は、ばね36bから第2接触押圧部16bまでの距離より長くなる。第1開離押圧部18aが第2開離押圧部18bより+Y方向突出するように、第1開離押圧部18aと第2開離押圧部18bとの間に段差を形成されている。これにより、ばね32aから第1開離押圧部18aまでの距離は、ばね32bから第2開離押圧部18bまでの距離より短くなる。
【0029】
接極子カバー13、接続部材14並びに押圧部16a,16b、18aおよび18bは、例えば樹脂により一体成型されている。ばね32a、32b、ばね36aおよび36bは、接極子カバー13、接続部材14並びに押圧部16a,16b、18aおよび18bとは一体化されておらず、押圧部16a,16b、18aおよび18bから分離可能である。
【0030】
押圧部16aおよび16bは、第1弾性体を押圧することにより、第1可動接点30aに第1固定接点40aと接触および開離の少なくとも一方をさせ、押圧部18aおよび18bは、第2弾性体を押圧することにより、第2可動接点30bに第2固定接点40bと接触および開離の少なくとも一方をさせる。
【0031】
図7(a)および
図7(b)は、接極子の動作を示す図である。
図7(a)を参照し、継鉄10の端部10aと接極子12cおよび12dとが同じ極性であり、継鉄10の端部10bと接極子12aおよび12bとが同じ極性である場合、接極子12aと端部10aとが接触し、接極子12dと端部10bとが接触するよう接極子が回動する。
図7(b)を参照し、端部10aと接極子12aおよび12bとが同じ極性であり、端部10bと接極子12cおよび12dとが同じ極性であるの場合、接極子12cと端部10aとが接触し、接極子12bと端部10bとが接触するよう接極子が回動する。このように、継鉄10は一対設けられている。接極子12は、一対の継鉄10のそれぞれの端部10aおよび10bを挟むように設けられている。接極子カバー13が回動することにより接極子12と端部10aおよび10bとが接触または開離する。例えば、2つの接極子12を同じ形状とすることにより、コスト削減を行なうことができる。
【0032】
また、接極子回転軸突起53の位置は継鉄10の中心線上でなく、一対の接極子12の外側に配置されている。このため、接極子12の間に位置する永久磁石17の体積を十分に確保することができ、耐衝撃性に優れた継電器を提供できる。
【0033】
図8は、接極子カバーのXZ平面における断面図である。
図8の矢印78に示すように、接極子カバー13と押圧部材とを一体モールド成形した後、挿入口76から永久磁石17を挿入する。永久磁石17はモールド成型にて組み込んでもよい。しかし、この場合、モールド成型後に接極子12への着磁を行なうための設備を用いる。
図8のように、モールド成型後に永久磁石17を挿入する場合、容易に永久磁石17のサイズを変更できる。これにより、容易に着磁を行なうことができる。よって、接極子12への着磁を行なうための設備が不要となる。また、電磁継電器の性能およびコストによるシリーズ化が可能となる。永久磁石17としては、例えばサマリウムコバルト磁石を用いることができる。
【0034】
図9は、可動接点付近の斜視図である。
図10は、固定接点付近の斜視図である。
図11は、可動接点の平面図である。押圧部16aおよび16bは、第1可動接点30aを第1固定接点40aに接触させる前に第2可動接点30bを第2固定接点40bに接触させる。このように、2つの接点の接触に時間差を設ける。これにより、早く接触する接点側に、接触時のバウンスによるアーク放電の熱を担当させることができる。なお、第1弾性体および第2弾性体は、それぞれ1つのばねでもよい。
【0035】
また、
図9から
図11に示すように、第1可動接点30aは、第2可動接点30bより小さい。第1固定接点40aは、第2固定接点40bより小さい。相対的に大きい第2固定接点40bと第2可動接点30bが、相対的に小さい第1固定接点40aと第1可動接点30aより先に接触するため、接点体積の大きい接点対にて接触時のバウンスによるアーク放電の熱を担当させることができる。大きい接点は小さい接点よりも熱の許容量が大きいため、溶着による故障を回避することができる。
【0036】
さらに、押圧部18aおよび18bは、第1可動接点30aを第1固定接点40aから開離させた後に第2可動接点30bを第2固定接点40bから開離させる。このように、2つの接点の開離に時間差を設ける。これにより、開離の際は小さい接点が先に開離(この時は電流は遮断されない)し、その後大きい接点が開離(この時に電流が遮断される)することになり、開離時のアーク放電についても熱容量の大きい接点で担当させることが可能になる。大きい接点は、接触・開離時に発生するアーク放電を担うが、小さい接点はアーク放電を担わないため、ダメージを受けず、結果として接点接触時の接点接触抵抗を低減させる効果が期待できる。
【0037】
さらに、第1接触押圧部16aは、第1可動接点30aを第1固定接点40aに接触させるために第1弾性体を押圧する。第2接触押圧部16bは、第2可動接点30bを第2固定接点40bに接触させるために第2弾性体を押圧する。ばね36a(第1弾性体)から第1接触押圧部16aまでの距離は、ばね36b(第2弾性体)から第2接触押圧部16bまでの距離より長い。これにより、2つの接点の接触に時間差を設けることができる。
【0038】
さらに、第1開離押圧部18a(第1開離部)は、第1可動接点30aを第1固定接点40aから開離させるために第1弾性体を押圧する。第2開離押圧部18b(第2開離部)は、第2可動接点30bを第2固定接点40bから開離させるために第2弾性体を押圧する。ばね32a(第1弾性体)から第1開離押圧部18aまでの距離は、ばね32b(第2弾性体)から第2開離押圧部18bまでの距離より短い。これにより、2つの接点の開離に時間差を設けることができる。
【0039】
さらに、
図11に示すように、第1可動接点30aと第1弾性体の固定箇所86との間における第1弾性体の幅W1aは、第2可動接点30bと第2弾性体の固定箇所86との間における第2弾性体の幅W1bより広い。これにより、最初に接触する接点用の第1弾性体のたわみを大きくしローリング効果をより発揮することができる。
【0040】
さらに、
図11に示すように、第1接触押圧部16aが接触する部分(位置)の第1弾性体の幅W2aは、第2接触押圧部16bが接触する部分(位置)の第2弾性体の幅W2bより狭い。これにより、最初に接触する接点用の第1弾性体のたわみを大きくしローリング効果をより発揮することができる。
【0041】
さらに、
図9および
図11に示すように、ばね32aおよび36aは、第1可動接点30aと固定箇所86との間において、V字に湾曲する湾曲部60aおよび62aを有する。ばね32bおよび36bは、第2可動接点30bと固定箇所86との間において、V字に湾曲する湾曲部60bおよび62bを有する。これにより、弾性体のたわみを確保することができる。
【0042】
さらに、ばね32aおよび36aは、湾曲部60aおよび62aに開口64を有する。これにより、弾性体のたわみを確保することができる。
【0043】
さらに、
図9に示すように、第1弾性体は、ばね36a(第3弾性体)と、ばね36aと重なるように配置されるばね32b(第4弾性体)との2つのばねを有する。
図9の例では、ばね36aは第1接触押圧部16aにより押圧され、ばね36bは第1開離押圧部18aにより押圧される。第2弾性体は、ばね32a(第5弾性体)と、ばね32aと重なるように配置されるばね32b(第6弾性体)との2つのばねを有する。
図9の例では、ばね32aは第2接触押圧部16bにより押圧され、ばね32bは第2開離押圧部18bにより押圧される。弾性体が複数の板ばねを有することにより、通電電流を大きくできる。また、ばね32aおよび32bをばね36aおよび36bより厚くする。これにより、弾性体を接触時に柔らかく、開離に硬くできる。
【0044】
さらに、ばね32aおよび32bは、電流経路となる。このため、ばね32aおよび32bは、導電性の高い材料が用いられる。一方、ばね36aおよび36bをばね32aおよび32bとは別に設けることにより、36aおよび36bにばね性の高い材料を用いることができる。ばね32aおよび32bとしては、導電性の高いCu−Cr系合金またはCu−Fe系等の銅合金を用いることができる。ばね36aおよび36bとしては、ばね性の高いCu−Sn系合金等のりん青銅を用いることができる。さらに、ばね36aおよび36bとして、導電性が高くかつばね性も高いCu−Cr−Zr−Si系合金を用いることにより、電流通電時の電磁継電器の温度上昇を抑制できる。また、繰り返し動作によるばねの耐性を向上させることができる。なお、ばね32aおよび32bにCu−Cr−Zr−Si系合金を用いてもよい。
【0045】
さらに、可動端子34と固定端子42とが
図1に示すように配置されるため、第1可動接点30aに流れ込むまたは第1可動接点30aから流れ出る電流方向70と、第1固定接点40aに流れ込むまたは第1固定接点40aから流れ出る電流方向72と、は同じ方向である。第2可動接点30bに流れ込むまたは第2可動接点30bから流れ出る電流方向70と、第2固定接点40bに流れ込むまたは第2固定接点40bから流れ出る電流方向72と、は同じ方向である。
【0046】
すなわち、第1可動接点30aおよび第2可動接点30bに、可動端子34から流れ込む電流の方向70と、第1固定接点40aおよび第2固定接点40bから固定端子42に流れ出る電流の方向72と、は同じ方向である。または、第1可動接点30aおよび第2可動接点30bから可動端子34に流れ出る電流の方向(方向70と逆方向)と、第1固定接点40aおよび第2固定接点40bに固定端子42から流れ込む電流の方向(方向72と逆方向)と、は同じ方向である。
【0047】
システムの異常等により大電流(例えば数千A)が流れる場合、電流方向70と72とが反対方向であると、アンペールの右ねじの法則により接点間に電磁反発力が生じる。このため、接触状態であった接点が開離する方向に力が働き、接点が乖離するとアーク放電が発生して、接点溶着が生じる可能性がある。しかし、実施例1によれば、電流方向70と72とが同じ方向であるため、大電流が流れても、接点が開離することを抑制できる。
【0048】
また、
図1のように、固定端子42と可動端子34とを接点から見て互いに異なる位置(+X側および−X側)から−Y方向に引き出す。これにより、固定端子42と可動端子34とを接点の同じ側(例えば接点の−X側)から−Y方向に引き出す場合に比べ、固定端子42と可動端子34とを短くできる。さらに、湾曲部60a、60b、62aおよび62bを設けるスペースを設けることができる。
【0049】
軽度の接点溶着が発生した場合、接極子カバー13の回動軸が傾き、回動が阻害される。そうすると、本来は開離可能な軽度の溶着の場合でも開離することが困難になってしまう。実施例1によれば、
図2から
図6に示すように、接極子カバー13に接極子回転軸受80および接極子回転軸突起53が形成されている。接極子回転軸受80に、ベース回転軸突起52が挿入される。接極子回転軸突起53は、カバー回転軸受82に挿入される。これにより、接極子カバー13が効率よく回動することができる。よって、接点の溶着を抑制できる。
【0050】
さらに、開離押圧部18aおよび18bがばね32aおよび32bから開離している際のばね32aおよび32bから開離押圧部18aおよび18bまでの距離は、接触押圧部16aおよび16bがばね32aおよび32bから開離している際のばね32aおよび32bから接触押圧部16aおよび16bまでの距離より長い。これにより、開離押圧部18aおよび18bがばね32aおよび32bに接触する際には、速度を有する開離押圧部18aおよび18bがばね32aおよび32bに衝突する。この衝撃により、接点を引き剥がすことができる。よって、接点の溶着故障をより抑制できる。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。