(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393043
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】量子ドット層を有する赤色ランプ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20180910BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20180910BHJP
【FI】
H01L33/50
F21V9/30
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-41948(P2014-41948)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-170938(P2014-170938A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】13/784,140
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】311006504
【氏名又は名称】オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ルオ
(72)【発明者】
【氏名】シーヨン・ツァン
(72)【発明者】
【氏名】イーミン・ツァン
【審査官】
皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−313902(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/140542(WO,A1)
【文献】
特開2013−033903(JP,A)
【文献】
特開2004−107572(JP,A)
【文献】
特開2007−103512(JP,A)
【文献】
特開2005−285800(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0113895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
F21V 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点灯装置(100)であって、
光源(101)と、
該光源(101)の頂部上に直接的又は間接的に配置される第1蛍光体層(102)と、
該第1蛍光体層(102)の頂部に直接的に配置される第1量子ドット層(103)であって、第1マトリックス材料(107)中に分散される量子ドット(106)の少なくとも一つの集団を有するものと、
該第1量子ドット層(103)の頂部上に直接的に配置される第2蛍光体層(104)と、
該第2蛍光体層(204)の頂部に直接的に配置される第2量子ドット層(205)であって、第2マトリックス材料(207)中に分散される量子ドット(208)の少なくとも一つの集団を有するものと
を備え、該第1及び第2蛍光体層(102)、(104)が、それぞれ、量子ドットでない蛍光体粒子(105)の少なくとも一つの集団を有する点灯装置。
【請求項2】
前記量子ドットでない蛍光体粒子(105)の平均直径が前記量子ドット(106)の平均直径の少なくとも20倍である、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項3】
前記量子ドットでない蛍光体粒子(105)の平均サイズが1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項4】
前記量子ドット(106)がCdS、CdSe、CdTe、CdPo、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnPo、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、PbSe、PbS、PbTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、CuInS2、CdS1-xSex、BaTiO3、PbZrO3、PbZrxTi1-xO3、BaxSr1-xTiO3、SrTiO3、LaMnO3、CaMnO3及びLa1-xCaxMnO3よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項5】
前記光源(101)が発光ダイオード、レーザーダイオード、有機発光ダイオード及び放電ランプよりなる群から選択される少なくとも一つの装置を備える、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項6】
前記発光ダイオード(101)が青色発光ダイオード及びUV発光ダイオードよりなる群から選択される装置である、請求項5に記載の点灯装置(100)。
【請求項7】
前記第1マトリックス材料(107)がポリメタクリル酸メチル、重合体、縮合硬化シリコーン、シリコーン、シリカガラス、シリカゲル及びガラスよりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項8】
前記第1及び第2蛍光体層(102)、(104)が、YAG:Ceを含む蛍光体粒子(105)を有し、前記第1量子ドット層(103)が赤色蛍光スペクトルを有する量子ドット(106)を含む、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項9】
前記第1蛍光体層(102)がガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、オルトシリケート系蛍光体、チオガレート系蛍光体、スルフィド系蛍光体及びニトリド系蛍光体よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含み、前記第2蛍光体層(104)がガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、オルトシリケート系蛍光体、チオガレート系蛍光体、スルフィド系蛍光体及びニトリド系蛍光体よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項10】
前記第1蛍光体層(102)、前記第2蛍光体層(104)及び前記第1量子ドット層(103)のそれぞれが散乱体(108)をさらに含む、請求項1に記載の点灯装置(100)。
【請求項11】
前記散乱体(108)の平均サイズが1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にあり、該散乱体(108)がTiO2及びガラスよりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項10に記載の点灯装置(100)。
【請求項12】
前記第2量子ドット層(205)の頂部に直接的に配置される第3蛍光体層(206)をさらに備える、請求項1に記載の点灯装置(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
従来型蛍光体と、光源から放射された光を異なる波長の光に変化させるための量子ドットとを含有する発光ダイオード(「LED」)ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
既存のLEDは、紫外線(「UV」)、可視又は赤外線(「IR」)波長範囲内の光を放出することができる。これらのLEDは、一般に、狭い発光スペクトルを有する。白色光などの望ましい色の光を生じさせるために、より広い発光スペクトルを発生させることのできるLEDを使用することが望ましい。LEDは、狭い発光スペクトルのため、広いスペクトルの光を生じさせるためには直接的に使用できない。蛍光体を導入して、LEDによって元々放出された光の一部を異なる波長の光に変換させることができる。変換された光と元々発光した光とを組み合わせることで、さらに望ましい出力光となる。しかし、蛍光体は、一般に、狭い吸収スペクトルを有するため、発光波長の極めて特定の範囲を有する潜在的な光源でしか使用できない。例えば、YAG:Ce蛍光体は、460ナノメートル(「nm」)の光については最適化されるが、他の波長でのLED放出光については好適ではない。1種類の蛍光体によって変換された白色光は、典型的には、低い演色評価数(「CRI」)を有するため、限定された範囲の色温度にしか到達できない。
【0003】
量子ドット(「QD」、半導体ナノ結晶としても知られている)を使用して、LEDによって放出された光を変換し、そして可視又は赤外領域内の光を生じさせることができる。量子ドットは、典型的には1nm〜20nmの直径を有し、バルクエキシトンボーア半径よりも小さなII−VI、III−V、IV−VI材料の小さな結晶である。量子閉じこめ効果のため、QDの電子状態間のエネルギー差は、QDの組成と物理的大きさとの両方の関数である。したがって、QDの光学的特性及びオプトエレクトロニック特性は、QDの物理的サイズを変更することによって調整及び調節できる。QDは、吸収の始まりの波長よりも短い波長を吸収し、かつ、吸収の始まりの波長で光を放出する。QD発光スペクトルのバンド幅は、温度依存のドップラー広がり、ハイゼンベルグの不確定性原理及びQDのサイズ分布に関連する。所定のQDについて、QDの発光帯は、そのサイズを変更することによって制御できる。したがって、QDは、従来型蛍光体では達成不可能な色の範囲を生じさせることができる。例えば、2nmのCdSe QDは、青色領域で発光し、10nmのCdSe QDは、赤色領域で発光する。
【0004】
QDのナノスケールサイズのため、QD変換層は、本質的に非散乱層である。散乱の欠如により、光は、従来型蛍光体層を通過するときよりも同じ光がQD層を通過するときの方が非常に短い光路を有する。層の厚みが不必要に高くない限り、別の波長での望ましい量の発光に変換するのには十分ではない光がQDにより吸収されるであろう。したがって、目標の色の組み合わせを達成するためには、不必要に厚いQD層又は大量のQDが必要だと考えられる。さらに、光路長は、様々な放射角度で異なる。光を赤色領域に変換させるためのQD層について、より小さな放射角度での光は、より短い光路を有し、また、赤色光の生成が少ない一方、より大きな放射角度での光は、より多くの赤色光を生じさせる。したがって、得られる出力光は、中心部では赤色成分が少なく、端部では赤色成分が多いが、これは、色の均一さの点で不利益である。
【0005】
次の文献が知られている:米国特許第6,890,777号(Bawendi);米国特許出願公開第2008/0173886号(Cheon)、同2007/0246734号(Lee)、同2010/0123155号(Pickett)及び同2007/0221947号(Locascio);並びに文献「Optical thin−film materials with low refractive index for broadband elimination of Fresnel reflection」,Xi外,
Nature Photonics,第1巻,pp.176−179(2007年3月1日オンライン公開)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6890777号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0173886号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0246734号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0123155号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0221947号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Optical thin−film materials with low refractive index for broadband elimination of Fresnel reflection」,Xi外,Nature Photonics,第1巻,pp.176−179(2007年3月1日オンライン公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概要
本発明の目的は、従来型蛍光体と、量子ドットと、所望の色及び出力光の均一性を制御しかつ達成するための確実な手段とを有する点灯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、光を放射するための点灯装置100を提供する。光を放射するための点灯装置100は、光源101と、該光源101の頂部に直接的又は間接的に配置される第1従来型蛍光体層102と、該第1蛍光体層102の頂部に直接的に配置される第1量子ドット層103と、該第1量子ドット層103の頂部に直接的に配置される第2従来型蛍光体層104とを備える。該第1量子ドット層103は、第1マトリックス材料107内に分散される量子ドット106の少なくとも一つの集団を備える。第1及び第2従来型蛍光体層102、104のそれぞれは、従来型蛍光体粒子105の少なくとも一つの集団を備える。
【0010】
本発明の別の態様によれば、従来型蛍光体粒子105の平均直径が量子ドット106の平均直径の少なくとも20倍である、点灯装置100を提供する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、従来型蛍光体粒子105の平均サイズが1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある点灯装置100を提供する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、量子ドット106が次の材料の1種以上:CdS、CdSe、CdTe、CdPo、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnPo、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、PbSe、PbS、PbTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、CuInS
2、CdS
1-xSe
x、BaTiO
3、PbZrO
3、PbZr
xTi
1-xO
3、Ba
xSr
1-xTiO
3、SrTiO
3、LaMnO
3、CaMnO
3又はLa
1-xCa
xMnO
3を含む点灯装置100を提供する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、光源101が発光ダイオード(「LED」)、レーザーダイオード、有機発光ダイオード、又は放電ランプを備える点灯装置100を提供する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、発光ダイオード101が青色発光ダイオード又はUV発光ダイオードである点灯装置100を提供する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、第1マトリックス材料107がポリメタクリル酸メチル、重合体、縮合硬化シリコーン、シリコーン、シリカガラス、シリカゲル、又はガラスを含む点灯装置100を提供する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、第1及び第2従来型蛍光体層102、104がYAG:Ceを含む従来型蛍光体粒子105を含み、第1量子ドット層103が赤色蛍光スペクトルを有する量子ドット106を含む、点灯装置100を提供する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、第1従来型蛍光体層102がガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、オルトシリケート系蛍光体、チオガレート系蛍光体、スルフィド系蛍光体又はニトリド系蛍光体を含み、第2従来型蛍光体層104がガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、オルトシリケート系蛍光体、チオガレート系蛍光体、スルフィド系蛍光体又はニトリド系蛍光体を含む、点灯装置100を提供する。
【0018】
本発明の別の態様によれば、第1従来型蛍光体層102、第2従来型蛍光体層104及び第1量子ドット層103が散乱体108を含有する、点灯装置100を提供する。
【0019】
本発明の別の態様によれば、散乱体108の平均サイズが1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある点灯装置100を提供する。この散乱体108は、好ましくはTiO
2又はガラスを含む。
【0020】
本発明の別の態様によれば、点灯装置200を提供する。この点灯装置200は、第2従来型蛍光体層204上に直接配置される第2量子ドット層205をさらに備える。この第2量子ドット層205は、第2マトリックス材料207内に分散される量子ドット208の少なくとも一つの集団を含む。第3従来型蛍光体層206は、第2量子ドット層205の頂部上に直接配置される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、光を放射するための点灯装置400を提供する。この光を放射するための点灯装置400は、光源401と、該光源401の頂部に直接的又は間接的に配置される波長シフト性蛍光体層402とを備える。この波長シフト性蛍光体層402は、マトリックス材料405内に分散される量子ドット404の少なくとも一つの集団と、マトリックス材料405内に分散される従来型蛍光体粒子403の少なくとも一つの集団とを含む。従来型蛍光体粒子403の平均直径は、量子ドット404の平均直径の少なくとも20倍である。
【0022】
本発明の別の態様によれば、従来型蛍光体粒子403の平均サイズが1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある点灯装置400を提供する。
【0023】
本発明の別の態様によれば、量子ドット404は、次の材料の1種以上:CdS、CdSe、CdTe、CdPo、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnPo、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、PbSe、PbS、PbTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、CuInS
2、CdS
1-xSe
x、BaTiO
3、PbZrO
3、PbZr
xTi
1-xO
3、Ba
xSr
1-xTiO
3、SrTiO
3、LaMnO
3、CaMnO
3又はLa
1-xCa
xMnO
3を含む点灯装置400を提供する。
【0024】
本発明の別の態様によれば、光源401が発光ダイオード、レーザーダイオード、有機発光ダイオード、又は放電ランプを含む点灯装置400を提供する。
【0025】
本発明の別の態様によれば、発光ダイオード401が青色発光ダイオードである点灯装置400を提供する。
【0026】
本発明の別の態様によれば、マトリックス材料405がポリメタクリル酸メチル、重合体、縮合硬化シリコーン、シリコーン、シリカガラス、シリカゲル、又はガラスを含む点灯装置400を提供する。
【0027】
本発明の別の態様によれば、従来型蛍光体粒子403がYAG:Ceを含み、量子ドット404が赤色蛍光スペクトルを有する点灯装置400を提供する。
【0028】
本発明の別の態様によれば、従来型蛍光体粒子403がガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、オルトシリケート系蛍光体、チオガレート系蛍光体、スルフィド系蛍光体、又はニトリド系蛍光体を含む点灯装置400を提供する。
【0029】
本発明の別の態様によれば、波長シフト性蛍光体層402が散乱体408を含む点灯装置400を提供する。
【0030】
本発明の別の態様によれば、散乱体408の平均サイズが1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある点灯装置400を提供する。散乱体408はTiO
2又はガラスを含む。
【0031】
次の図面(同様の数字は同様の部品を示す)と共に読むべき次の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に従う点灯装置の略図である。
【
図2】
図2は、本発明の別の実施形態に従う点灯装置の略図である。
【
図3】
図3は、本発明の別の実施形態に従う点灯装置の略図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態に従う点灯装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
好ましい実施形態の詳細な説明
本実施形態を、その他の目的及びさらなる目的、利点及び能力と共によく理解するために、上記図面と共に次の開示及び添付した特許請求の範囲を参照されたい。
【0034】
現時点で本発明の好ましい実施形態と見なされるものを示しかつ説明するが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲に規定される範囲から逸脱することなく様々な変更及び改変をなし得ることは明らかである。
【0035】
図1を参照すると、第1の実施形態に従うランプなどの点灯装置100が示されている。点灯装置100は、LED、レーザーダイオード、有機LED又は放電ランプ、好ましくは1個以上のLEDであることができる光源を備える。ランプ100は、当該技術分野において知られているように、補正電圧をLED101に供給するための電源に連結可能な駆動電子機器(図示しない)を備える。点灯装置100は、演色評価数(「CRI」)の高い白色光といった広域スペクトル出力光を生じさせる。この広域スペクトル出力光は、実質的に均一の色及び強度を有する。この広帯域出力光は、光源により発生した元の光のいくらかを、量子ドット及び従来型蛍光体を使用して、波長がより長い光に変換させることによって生じる。従来型蛍光体のみを使用した場合に存在すると思われる波長の不足を、量子ドットを使用することで補う。これにより、より高いCRIを有する広域スペクトル出力光が生じる。
【0036】
図1に示すように、青色LEDチップ101が光源であり、好ましくは約430〜485nmの波長で光を放射するGaInN LEDチップである。第1従来型蛍光体層102は、このLEDチップ101の頂部上に直接的に存在する。用語「直接的に」とは、従来型蛍光体層102が青色LEDチップ101の表面と直接接触した状態にあることを意味する。第1従来型蛍光体層102は、LEDチップ101から放射された青色光のいくらかを450nm〜750nmの広域発光スペクトルを有する黄色領域に変換するためにY
3Al
5O
12:Ce
3+などのクールホワイト蛍光体粒子105を含有する。用語「クールホワイト蛍光体」とは、青色LEDチップ101から放射された青色光とクールホワイト蛍光体によって変換された黄色光との組み合わせにより、4500Kよりも高い相関色温度(「CCT」)の出力白色光を形成するもののことを意味する。蛍光体粒子105は、シリコーンやPMMAなどの重合体母材に混合され、そしてスクリーン印刷によって所望の厚さ(例えば、数十ミクロン〜数百ミクロン)のシートに成形される。第1量子ドット層103は、第1従来型蛍光体層102の頂部上に存在する。この第1量子ドット層103は、550nm〜750nmの赤色蛍光スペクトルを有する、マトリックス材料107内に分散された量子ドット106を含有する。CdSe又はZnSの乾燥量子ドット106の計算量を秤量し、続いてドラフト下で密封チャンバー内にある実験室用フラスコなどの容器中においてトルエンなどの有機溶媒に希釈する。縮合硬化シリコーンやポリメタクリル酸メチル(PMMA)(これらに限定されない)などの未硬化重合体母材109の計算量をフラスコに添加し、そしてベース重合体が溶媒に均一に溶解するまで完全に混合させる。この混合溶液を、上記第1従来型蛍光体層102上に回転塗布、印刷・プロット又はスペード塗布(spade application)によって被覆する。量子ドット被膜を、重合体硬化条件の要件に応じて室温、高温又はUV暴露の条件下で乾燥させて第1量子ドット層103を形成させる。上記のように作製された第2従来型蛍光体層104を、シリコーンなどの接着剤を使用して第1量子ドット層103の頂部に結合させて層102、103及び104を有する層状構造を形成させる。その後、この層状構造を所望の形状に切断し、そしてシリコーンなどの接着剤を使用して青色LEDチップ101の頂部に直接的に結合させる。第2従来型蛍光体層104は、青色LEDチップ101から放射された青色光のいくらかを黄色領域に変換させるために、第1従来型蛍光体層102と同じクールホワイト蛍光体105を含有することができる。
【0037】
従来型蛍光体粒子105の平均直径は、量子ドットの平均直径の20倍以上であることができる。従来型蛍光体層102、104の両方における従来型蛍光体粒子105は、層を通して移動する光が顕著なエネルギー損失なしに従来型蛍光体粒子105によって散乱する程度に十分大きい。好ましくは、従来型蛍光体粒子105の平均直径は、市販の従来型LED蛍光体粒子に一般的なサイズ分布である1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある。
【0038】
第1及び第2従来型蛍光体層102、104における光の多重等方散乱プロセスのため、光は2つの従来型蛍光体層102、104間を行ったり来たりし、それにより量子ドット層103を通して複数回移動する。この現象は、量子ドット層103の光の吸収と変換を向上させ、所望の色を達成するのに必要な量子ドット層を薄くし又は量子ドット粒子を少なくすることを可能にする。さらに、これら2つの従来型蛍光体層102、104間における多重散乱事象のため、光の散乱の光路及び角度はランダム化され、しかもこれらの層への入射角やこれらの層から外への放射角とは無関係である。第1量子ドット層103の頂部上にある第2従来型蛍光体層104内でのこれらの散乱事象は、該第1量子ドット層103から来る光の方向にかかわらず、放射角の確率をさらに平均化する。したがって、所定の放射角で放射される光線(すなわち光子)について、それぞれの層の平均光路長、すなわち、従来型蛍光体及び量子ドットによって変換される平均確率は、放射角とは無関係である。従来型蛍光体及び量子ドットによって所定の放射角で変換される出力光のパーセンテージは、放射角とは無関係である。これは、より均一な色分布を有する出力光をもたらす。したがって、不均一の色分布の問題が実質的に低減し又はほぼなくなる。
【0039】
随意に、従来型蛍光体層及び量子ドット層102、103、104は、散乱をさらに向上させるために、所定の光散乱体108をさらに含むことができる。蛍光体層102、104及び量子ドット層103のいずれか一つが散乱体108を含有することができ、これらの層の2つ以上がこれを含有することができ、あるいは3つの層全てがこれを含有することができる。散乱体108は、TiO
2粒子又はガラスビーズから作製できる。散乱体108の好ましい平均サイズは、1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内とすることができる。
【0040】
従来型蛍光体層102、104は、知られている様々な方法で製造できる。例えば、従来型蛍光体粒子105は、プラスチック材料又は重合体材料に混合できる。その後、この混合物を印刷、押出又はプレスして所望の厚みのフィルムにする。このフィルムを、用途に応じて所望の形状に切断する。別の例では、Al
2O
3などの透光性セラミック粉末と蛍光体粉末とを混合させる。その後、この混合物を、高温及び高圧下において型内で焼結させて、所望の厚み及び形態を有するフィルムを形成させる。さらに別の例では、特定のモルパーセントの希土類元素を含有するマザーガラスを非常に高温で処理し、その後、所望の厚みを有するプレートに成形又はプレスする。さらに別の例では、蛍光体粉末とガラス粉末とを混合させる。この混合物を加熱し軟化させて融合材料を得る。その後、この融合材料を固化させて所望の厚みを有する蛍光体分散ガラスを得る。
【0041】
量子ドット層103は様々な方法で製造できる。計算量の市販の乾燥量子ドット、例えば、Ocean NanoTech社製のCdSe又はZnS量子ドットを秤量し、そしてドラフト下で密封チャンバー内にある実験室用フラスコなどの容器中においてクロロホルム、イソプロピルアルコール又はトルエン(これらに限定されない)などの有機溶媒に希釈する。計算量の未硬化母材、例えば、限定されないが、縮合硬化シリコーン又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)をこのフラスコに添加し、そしてこのベース重合体が溶媒に均一に溶解するまで完全に混合させる。この混合溶液を、基材(従来型蛍光体層を含む)上に回転塗布、印刷・プロット又はスペード塗布により被覆する。この混合溶液を、重合体硬化条件の要件に応じて、室温、高温又はUV暴露などの条件下で乾燥させる。また、母材は、別の重合体、シリコーン、シリカガラス、シリカゲル、又はガラスとすることもできる。
【0042】
YAG:Ce蛍光体をシリコーンと35〜65重量%で混合させることができる。従来型蛍光体層102、104の厚みは、40〜75μmであることができる。蛍光体が希薄であればあるほど、目標のCCT下で十分な光変換に必要な蛍光体層は厚くなる。CdSe又はCdS量子ドットをシリコーンと10〜40重量%で混合させることができる。量子ドット層103の厚みは、50μm〜数百μmであることができる。量子ドットが希薄であればあるほど、目標のCCT下で十分な光変換に必要な量子ドット層は厚くなる。
【0043】
別の実施形態では、点灯装置200は、
図2に示すように、追加の従来型蛍光体層及び量子ドット層を備える。例えば、点灯装置200は、第2従来型蛍光体層204の頂部上に直接ある第2量子ドット層205を備える。この第2量子ドット層205は、第2マトリックス材料207内に分散される量子ドット208の少なくとも一つの集団を含む。この第2量子ドット層は、第1量子ドット層203と同じ又は同様の化学組成を有することができる。点灯装置200は、第2量子ドット層205の頂部に直接ある第3従来型蛍光体層206を備える。この第3従来型蛍光体層は、第1又は第2従来型蛍光体層202、204と同じ化学組成を有することができる。点灯装置200の構造は、頂部に同じように追加の量子ドット層及び従来型蛍光体層を備えるように拡張できる。
【0044】
別の実施形態では、光源は、約375〜400nmの波長で光を放射する近紫外線LEDチップとすることができる。従来型蛍光体層は、紫外線LEDチップから放射された紫外線光を可視光に変換するために、(Sr、Ca)
5(PO
4)
3Cl:Eu、BaMgAl
10O
17:Eu、(Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu、(Ba,Ca,Mg)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu、BaMgSi
4O
10:Eu
2+ (これらに限定されない)などの青色蛍光体、及びSrGa
2S
4:Eu、Zn
2GeO
4:Mn、BaMgAl
10O
17:Eu,Mn(これらに限定されない)などの緑色蛍光体を含有することができる。量子ドット層は、赤色蛍光スペクトルを有する量子ドットを含有する。
【0045】
別の実施形態を
図3に示している。第1従来型蛍光体層302は、LEDチップ301の頂部に間接的に配置される。用語「間接的に」とは、蛍光体層がLEDチップの表面と直接接触した状態にあるのではなく、LEDチップから所望の間隔であることを意味する。したがって、この蛍光体はリモート蛍光体である。第1従来型蛍光体層302とLEDチップ301との間に重合体、樹脂、カプセル化材料、ガス又は真空が存在することができる。好ましいカプセル化材料305はシリコーンである。第1量子ドット層303は、第1従来型蛍光体層302の頂部に直接存在する。第2従来型蛍光体層304は、量子ドット層の頂部上に直接存在する。第2従来型蛍光体層304は、第1従来型蛍光体層302における蛍光体と同じ蛍光体を含有することができる。302、303及び304を含有する層状構造を、シリコーンなどの接着剤を使用してカプセル化材料305の頂部に結合させることができ、或いはLEDチップ301上に補強リングなどの機械取付装置を使用して所定の間隔で機械的に取り付けることができる。随意に、点灯装置300は、より多くの従来型蛍光体層及び量子ドット層を備えることができる。
【0046】
図4を参照すると、所定の実施形態に従う、ランプなどの点灯装置400が示されている。点灯装置400は、LED、レーザーダイオード、有機LED又は放電ランプ、好ましくは1個以上のLEDであることができる光源を備える。
図4に示すように、LEDチップ401は、光源、好ましくは約430〜485nmの波長で光を放射する青色GaInN LEDチップである。
【0047】
従来型蛍光体粒子403と量子ドット404との両方を含有する波長シフト性蛍光体層402がLEDチップ401の頂部に直接配置されている。CdSe又はZnSの乾燥量子ドットの計算量を秤量し、その後、ドラフト下で密封チャンバー内にある実験用フラスコ中においてトルエンなどの有機溶媒に希釈する。縮合硬化シリコーン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(これらの限定されない)などの未硬化重合体母材の計算量をこのフラスコに添加し、そしてこのベース重合体が溶媒に均一に溶解するまで完全に混合させて混合物#1を形成させる。その一方で、従来型蛍光体粉末の計算量を量子ドット混合物の場合と同じタイプの重合体母材に均一に混合させて混合物#2を形成させる。その後、混合物#2を、混合物#1を含有するフラスコに注意深く注ぎ、その後撹拌して混合物#1と完全に混合させる。その後、この混合溶液を、ガラスやプラスチックといった透明基材上に回転塗布、スクリーン印刷又はスペード塗布により被覆し、続いて所望の硬化温度で乾燥させて所望の厚さを有する均一な層を形成させる。このシートを所望の形状に切断し、そしてLEDチップの頂部にシリコーンやPMMAなどの接着剤により結合させることができる。従来型蛍光体粒子403及び量子ドット404をマトリックス材料405中に分散させる。従来型蛍光体粒子403の平均直径は量子ドット404の平均直径の少なくとも20倍である。従来型蛍光体粒子403は、層を通して移動する光が顕著なエネルギー損失なしに従来型蛍光体粒子403により散乱する程度に十分大きい。好ましくは、従来型蛍光体粒子403の平均直径は、1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある。
【0048】
波長シフト性蛍光体層402中にある従来型蛍光体粒子による光の多重等方散乱により、光の散乱の光路及び角度がランダム化される。ランダム化された光路の全長は、波長シフト性蛍光体層402の厚さよりも実質的に大きい。この現象は、量子ドットの光の吸収と変換を向上させ、所望の色を達成するのに必要な層を薄くし又は量子ドット粒子を少なくする。さらに、多重散乱事象は、散乱光の角度、すなわち、層402から外の放射角をランダム化する。したがって、所定の放射角で放射される光線(すなわち光子)について、層402における平均光路長及び従来型蛍光体と量子ドットとによって変換される平均確率は放射角とは無関係である。これは、より均一な色分布を有する出力光をもたらす。したがって、不均一色分布の問題が実質的に低減し、或いはほとんどなくなる。
【0049】
随意に、波長シフト性蛍光体層402は、散乱をさらに向上させるために光散乱体408をさらに含有することができる。散乱体408は、TiO
2粒子又はガラスビーズから作製できる。散乱体408の好ましい平均サイズは、1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内である。
【0050】
所定の実施形態では、波長シフト性蛍光体層402は、LEDチップの頂部に間接的に配置できる。波長シフト性蛍光体層とLEDチップとの間には重合体、樹脂、カプセル化材料、ガス又は真空が存在することができる。好ましいカプセル化材料はシリコーンである。
【0051】
ここで説明する好ましい実施形態は、ガーネット系蛍光体から作られた従来型蛍光体についてのものであるが、この実施形態は、シリケート系蛍光体、オルトシリケート系蛍光体、チオガレート系蛍光体、スルフィド系蛍光体、又はニトリド系蛍光体などの他の従来型蛍光体にまで拡張できる。ここで説明する好ましい実施形態は、従来型蛍光体の方法に関するものであるが、この実施形態は、当業者の技術常識内の他の蛍光体の製造方法にまで拡張できる。
【0052】
ここで説明する好ましい実施形態は、PMMAなどの重合体マトリックス中においてCdSe又はZnSで作製された量子ドットに関するものであるが、この実施形態は、CdS、CdSe、CdTe、CdPo、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnPo、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、PbSe、PbS、PbTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、CuInS
2、CdS
1-xSe
x、BaTiO
3、PbZrO
3、PbZr
xTi
1-xO
3、Ba
xSr
1-xTiO
3、SrTiO
3、LaMnO
3、CaMnO
3又はLa
1-xCa
xMnO
3の化学組成を有する他の量子ドットにまで拡張できる。この実施形態は、コロイド合成、高度エピタキシャルナノ結晶(advanced epitaxial nanocrystals)、イオン注入、リソグラフィー技術、ウイルス集合又は電気化学的アセンブリなどの製造方法によって製造された量子ドットにまで拡張できる。ここで説明した好ましい実施形態は、量子ドット層の製造方法を記載するが、その実施形態は、当業者の技術常識内にある他の量子ドット層の製造方法にまで拡張できる。
【0053】
ZnS量子ドットの合成例は次のとおりである。元素硫黄及びオレイルアミンを小瓶に添加し、そして硫黄が溶解するまで超音波処理する。オレイン酸亜鉛、オレイン酸及びオレイルアミンをフラスコに添加し、そして窒素下において200℃で加熱する。この硫黄溶液をフラスコ内の溶液に注入し、そしてフラスコを300℃で1時間加熱する。その後、この溶液を70℃に冷却する。この冷却溶液にアセトンを添加し、完全に撹拌する。メタノールを溶液に添加してナノ結晶を沈殿させる。この混合物を遠心分離し、そして上澄みをデカンテーションで除去する。沈殿物をアセトンで洗浄し、そしてヘキサンに再分散させる。
【0054】
本発明の原理をここで説明してきたが、当業者であれば、この説明は単なる例示であり、その範囲に関する限定としてなされたものではないことを理解すべきである。ここで説明した実施形態に対応する符号は、図面に示した本願所定の主題の例に対する便利な参照の手段として特許請求の範囲でも提供できる。しかしながら、これらの符合は、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。ここで示しかつ説明した例示実施形態の他に、本発明の範囲内で他の実施形態も予期される。当業者による改変及び置換は、本発明の範囲内にあると見なされ、特許請求の範囲の記載による限られた例外であるとすべきものではない。
【符号の説明】
【0055】
次のものは、本明細書で使用した符号の非限定的なリストである:
100 点灯装置
101 光源
102 第1従来型蛍光体層
103 第1量子ドット層
104 第2従来型蛍光体層
105 蛍光体粒子
106 量子ドット
107 マトリックス材料
108 散乱体
200 点灯装置
201 光源
202 第1従来型蛍光体層
203 第1量子ドット層
204 第2従来型蛍光体層
205 第2量子ドット層
206 第3従来型蛍光体層
207 第2マトリックス材料
208 量子ドット
300 点灯装置
301 光源
302 第1従来型蛍光体層
303 第1量子ドット層
304 第2従来型蛍光体層
305 カプセル化材料
400 点灯装置
401 光源
402 波長シフト性蛍光体層
403 従来型蛍光体粒子
404 量子ドット
405 マトリックス材料
408 散乱体