(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明を適用した広角レンズユニットを説明する。
【0023】
[実施の形態1]
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズユニットの説明図である。
図1に示すように、本形態の広角レンズユニット1は、光軸L方向に複数のレンズが配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持する筒状のホルダ9とを有している。本形態において、ホルダ9は樹脂製である。広角レンズ10の画角は170°以上、例えば、190°である。広角レンズ10は、6群のレンズ群を備えている。より具体的には、広角レンズ10は、物体側(被写体側/前側)から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群51と、負のパワーを持つ第2レンズ群52と、負のパワーを有する第3レンズ群53と、正のパワーを有する第4レンズ群54と、正のパワーを有する第5レンズ群55と、正のパワーを有する第6レンズ群56とを有している。
【0024】
広角レンズ10は計7枚のレンズを有している。より具体的には、第1レンズ群51は、負のパワーをもつレンズ11(単レンズ)からなり、第2レンズ群52は、負のパワーをもつレンズ12(単レンズ)からなり、第3レンズ群53は、負のパワーをもつレンズ13(単レンズ)からなる。第4レンズ群54は、正のパワーをもつレンズ14(単レン
ズ)からなり、第5レンズ群55は、正のパワーをもつレンズ15(単レンズ)からなる。第6レンズ群56は、負のパワーをもつレンズ16と正のパワーをもつレンズ17との接合レンズからなる。
【0025】
本形態において、レンズ11、15は、ガラスレンズからなり、レンズ12、13、14、16、17はプラスチックレンズからなる。
【0026】
複数のレンズ11〜17の外径の大小関係は、以下の式
レンズ11>レンズ12、13、14>レンズ16>レンズ17>レンズ15
に示す通りであり、最も物体側に位置するレンズ11は、他のレンズより外径が大である。かかる形状に対応して、ホルダ9は、像側L2に位置する筒状の第1レンズ保持部9aと、第1レンズ保持部9aより物体側L1に位置する筒状の第2レンズ保持部9bとを備えており、第2レンズ保持部9bの外径は、第1レンズ保持部9aの外径より大になっている。
【0027】
広角レンズユニット1は、第4レンズ群54と第5レンズ群55との間(レンズ14とレンズ15との間)に絞り21を有しており、第6レンズ群56より像側L2に赤外線カットフィルタ22を有している。また、広角レンズユニット1は、第4レンズ群54と第5レンズ群55との間(レンズ14とレンズ15との間(レンズ14と絞り21との間))に円環状の板状バネ23を有している。板状バネ23は、光軸L方向に圧縮された状態にあり、光軸L方向に付勢力を発揮する。
【0028】
(ホルダ9の構成)
ホルダ9は、以下に説明する筒状の第1ホルダ40、筒状の第2ホルダ60、および筒状の第3ホルダ30を備えている。
【0029】
第1ホルダ40は、物体側L1に位置する円環状の板状部41と、板状部41から像側L2に突出した円筒状の内側筒部42と、内側筒部42より径方向の外側で板状部41から像側L2に突出した円筒状の外側筒部43とを有しており、外側筒部43の像側L2の端部は、内側筒部42の像側L2の端部より像側L2に突出している。板状部41の中央には、内側筒部42の内径より小さな内径の穴49が形成されており、かかる穴49によって、絞り21が形成されている。穴49の内面は、像側L2から物体側L1に向けて穴49を連続的に縮径させるテーパ面になっている。
【0030】
かかる第1ホルダ40において、ガラスレンズからなるレンズ15は、内側筒部42の内側に配置されており、内側筒部42の像側L2の端部に対する熱溶着によって、内側筒部42の像側L2の端部と板状部41との間に保持される。この状態で、レンズ15の外周面は、内側筒部42の内周面に接している。なお、
図1において、内側筒部42は、熱溶着前の形状で表されている。
【0031】
第2ホルダ60は、像側L2に位置する円筒状の第1筒部61と、第1筒部61より物体側L1に位置する円筒状の第2筒部62とを有している。第2筒部62の外径は、第1筒部61の外径より大であり、第2ホルダ60の外周面には、第1筒部61と第2筒部62との境界部分に像側L2に向く段部66が形成されている。また、第2筒部62の内径は、第1筒部61の内径より大であり、第2ホルダ60の内周面には、第1筒部61と第2筒部62との境界部分に物体側L1に向く段部67が形成されている。また、第1筒部61の内周面には、物体側L1に向く段部68が形成されている。
【0032】
このように構成した第2ホルダ60において、第1筒部61の像側L2の端部には赤外線カットフィルタ22が接着等の方法で固定され、第1筒部61の内側には、第6レンズ
群56が収容されている。第6レンズ群56は、レンズ16の外周側フランジ部の像側L2の面が段部68に当接している。また、第1筒部61の内径は、レンズ16の外径よりも、わずかに小か、等しいか、わずかに大であり、レンズ16(第6レンズ群56)の光軸Lに対して直交する方向の位置は、第1筒部61の内周面によって規定されている。
【0033】
第1筒部61と第2筒部62との境界部分の内側には、レンズ15を保持する第1ホルダ40が収容されており、第1ホルダ40の外側筒部43の像側L2の端部は、レンズ16の外周側フランジ部の物体側L1の面に当接している。また、外側筒部43の像側L2の端部と第1筒部61の内周面との間にはわずかな隙間が介在している。従って、第1ホルダ40は、光軸Lに対して直交する方向に移動可能である。
【0034】
第2筒部62の内側には、像側L2から物体側L1に向かって、レンズ14、レンズ13およびレンズ12が順に重ねて収容されている。レンズ14、レンズ13およびレンズ12は、外周側フランジ部同士が重なった状態にあり、レンズ14の外周側フランジ部の像側L2の面は、段部67に当接している。第2筒部62の内径は、レンズ14の外径、レンズ13の外径、およびレンズ12の外径より、わずかに小か、等しいか、わずかに大であり、レンズ14、レンズ13およびレンズ12の光軸Lに対して直交する方向の位置は、第2筒部62の内周面によって規定されている。
【0035】
第2筒部62の外周面には雄ねじ69が形成され、第2筒部62の物体側L1の端面には周溝65が形成されている。また、レンズ14、15の間では、第1ホルダ40とレンズ14との間に板状バネ23が配置されている。板状バネ23は、光軸L方向で圧縮された状態にあり、光軸L方向の付勢力を発揮している。
【0036】
第3ホルダ30は、第2ホルダ60の第2筒部62に対して径方向外側で重なる円筒状の筒部31と、筒部31の物体側L1の端部に形成された円環状の枠部32とを備えており、内側にレンズ11を保持している。本形態では、レンズ11の外周部分には、物体側L1に向く環状の段部110が形成されており、段部110が第3ホルダ30の枠部32に像側L2から当接している。本形態では、筒部31の内周面には、第2ホルダ60の第2筒部62の外周面に形成された雄ねじ69に止められた雌ねじ39が形成されている。
【0037】
従って、第3ホルダ30の雌ねじ39に筒部31の雄ねじ69を締めこむことにより、レンズ11は、レンズ12に押圧され、レンズ12と第3ホルダ30とによって保持されている。この状態で、レンズ11は、レンズ12〜14を像側L2に押圧し、その結果、板状バネ23は、光軸L方向で圧縮された状態となる。その際、板状バネ23は、光軸L方向の付勢力を発揮し、レンズ15を保持する第1ホルダ40およびレンズ16を段部68に向けて弾性をもって押圧する。
【0038】
(調芯用開口部)
このように構成した広角レンズユニット1において、本形態では、絞り21に物体側L1で隣り合うレンズ14(物体側レンズ)、および絞り21に像側L2で隣り合うレンズ15(像側レンズ)のうち、レンズ15(像側レンズ)が、光軸Lに直交する方向の位置調整が行われる調芯レンズである。ここで、レンズ15は、第1ホルダ40に保持されていることから、調芯の際、レンズ15は、第1ホルダ40とともに光軸Lに直交する方向の位置調整が行われる。
【0039】
このため、ホルダ9のうち、第2ホルダ60の第1筒部61には、光軸Lに対して直交する方向からみたときに、第1ホルダ40の少なくとも一部と重なる位置に調芯用開口部91が形成されている。本形態において、調芯用開口部91は、光軸Lに対して直交する方向からみたときに、第1ホルダ40の外側筒部43において像側L2に位置する部分と
重なっている。かかる調芯用開口部91は周方向の複数個所に形成されている。本形態において、調芯用開口部91は、周方向において90°間隔の4個所に形成されている。
【0040】
(広角レンズユニット1の製造方法および調芯工程)
図2は、本発明を適用した広角レンズユニット1の調芯工程でモニターしたMTFの説明図である。
【0041】
本形態の広角レンズユニット1を製造するには、まず、第2ホルダ60の内側に対して、第6レンズ群56、レンズ15を保持した第1ホルダ40、板状バネ23、レンズ14、レンズ13、およびレンズ12を順に収容する。
【0042】
次に、第2ホルダ60の第2筒部62の物体側L1の端面に形成された周溝65にゴム製のOリング99を装着した後、レンズ11を内側に保持した第3ホルダ30を第2ホルダ60の物体側L1の端部に結合させる。より具体的には、第3ホルダ30の筒部31の内周面に形成された雌ねじ39を第2ホルダ60の第2筒部62の外周面に形成された雄ねじ69に止める。その際、第3ホルダ30を締め込むことで、レンズ11〜17の光軸L方向の位置を適正に設定する。
【0043】
このように組み立てた状態で、Oリング99は、レンズ11と第2ホルダ60との間で圧縮され、第2ホルダ60と第3ホルダ30との間がOリング99によって封止される。また、第1ホルダ40とレンズ14との間では、板状バネ23が光軸L方向で圧縮され、光軸L方向の付勢力を発揮する。このため、第6レンズ群56および第1ホルダ40は、第2ホルダ60の段部68を基準に光軸L方向で位置決めされる。また、レンズ12、13、14は、段部67とレンズ11とに挟まれて光軸L方向で位置決めされる。
【0044】
本形態の広角レンズユニット1において、レンズ11〜14、16、17の中心の光軸Lに直交する方向の位置は、第2ホルダ60を基準に自動的に設定される。具体的には、レンズ11の中心の光軸Lに直交する方向の位置は、第2ホルダ60の雄ねじ69と第3ホルダ30の雌ねじ39とによって規定される。また、レンズ12〜14、16、17は、プラスチックレンズであるため、中心と外周面との位置関係は、成形時に適正に設定されるため、レンズ12〜14、16、17を第2ホルダ60の内側に収容した時点で、レンズ12〜14、16、17の中心の光軸Lに直交する方向の位置は、第2ホルダ60の内周面を基準に規定される。また、本形態では、レンズ11〜14、16、17に偏芯が存在しても、かかる偏芯を相殺するように、以下に説明する調芯工程によってレンズ15の位置を調整し、レンズ11〜14、16、17の偏芯を吸収する。
【0045】
より具体的には、広角レンズユニット1を組み立てた後、レンズ15のみに対して、光軸Lに直交する方向の位置を調整する調芯工程を行う。より具体的には、第2ホルダ60に形成した調芯用開口部91から調芯ピン等の治具を差し込んで、第1ホルダ40を光軸Lに直交する方向に押圧する。ここで、第1ホルダ40は、板状バネ23の付勢力によって付勢されているとともに、第1ホルダ40の外側筒部43と第2ホルダ60の第1筒部61の内周面との間にはわずかな隙間が介在しているため、第1ホルダ40は、レンズ15とともに光軸Lに直交する方向に移動する。
【0046】
かかる調芯工程の際、レンズ11の側からモニター光を入射させながら、像側L2でモニター光を検出し、解像度、画角、光量分布等のモニター結果に基づいて、第1ホルダ40の位置を調整する。
【0047】
本形態では、
図2に示すように、デフォーカスを設計中心から所定量前後に振って、MTF(Modulation Transfer Function)を測定する。その結果、レンズ11〜17の全体
に偏芯がある場合、中心画角のMTF曲線でのMTFピークとなるデフォーカス位置に対して、周辺部分(周辺画角θX+、θX−、θY+、周辺画角θY−)のMTFピークとなるデフォーカス位置がずれることになる。
【0048】
そこで、
図2に示す偏芯量に基づいて、第1ホルダ40の光軸Lに対して直交する方向の位置(レンズ15の光軸Lに対して直交する方向の位置)を調整する。例えば、
図2に示す結果に基づいて、第1ホルダ40に対する光軸Lに直交するX方向の補正量Δxと、第1ホルダ40に対する光軸LおよびX方向に直交するY方向の補正量Δyとを求め、かかる補正量Δx、Δyに基づいて、第1ホルダ40をX方向およびY方向に移動させる。
【0049】
あるいは、第1ホルダ40をX方向に一定量移動させた後、再び、MTF曲線を得て、その結果に基づいて、第1ホルダ40の移動方向と移動量でMTF曲線が補正される関係を把握した上で、必要な量だけ、X方向に移動させる。また、第1ホルダ40をY方向に一定量移動させた後、再び、MTF曲線を得て、その結果に基づいて、第1ホルダ40の移動方向と移動量でMTF曲線が補正される関係を把握した上で、第1ホルダ40を必要な量だけ、Y方向に移動させる。
【0050】
このようにして調芯工程を行った後、調芯用開口部91から、第1ホルダ40と第2ホルダ60との間に接着剤を供給し、その後、接着剤を硬化させる。かかる接着剤としては、例えば、光硬化性の接着剤が用いられる。その結果、第1ホルダ40と第2ホルダ60とは、径方向外側から調芯用開口部91を介して見える位置に設けられた接着剤によって固定される。その結果、広角レンズユニット1が完成する。
【0051】
このような構成の広角レンズユニット1を監視装置や車両に搭載する際、ホルダ9の像側L2の第1レンズ保持部9aと物体側L1の第2レンズ保持部9bとの間に形成された段部66にOリングやパッキン等を配置し、像側L2への水分等の侵入を防止した状態とする。
【0052】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の広角レンズユニット1では、複数のレンズ11〜17のうち、偏芯が解像度に及ぼす影響度(偏芯感度)が大きな2つのレンズ(絞り21に物体側L1で隣り合う物体側レンズ、および絞り21に像側L2で隣り合う像側レンズ)の一方のレンズ15を、光軸Lと直交する方向に位置調整が行われる調芯レンズとする。このため、調芯対象となるレンズが1つであるため、1回の調芯作業によって、高い解像度を得ることができる。また、光軸L方向において絞り21に近い箇所のみに調芯用開口部91を設ければよいので、ホルダ9の形状等に起因して、光軸L方向の複数個所に調芯用開口部を設けることが困難である場合でも、調芯用開口部91を設ける個所を確保することができる。また、レンズ15(調芯レンズ)は、径方向外側から調芯用開口部91を介して見える位置に設けられた接着剤によりホルダ9に固定されている。すなわち、調芯用開口部91を利用して接着剤の塗布や注入を行う。このため、調芯用開口部91の他に接着剤の塗布用の開口部や注入用の開口部を設ける必要がない。
【0053】
また、本形態では、全てのレンズ11〜17が存在する状態でMTFを測定し、その結果に基づいて、レンズ15の調芯を行う。このため、レンズ15以外のレンズ11〜14、16、17の偏芯をレンズ15の調芯によって相殺することができる。従って、1回の調芯工程によって、高い解像度を得ることができる。
【0054】
また、本形態では、ガラスレンズからなるレンズ15に調芯を行う。ガラスレンズは、プラスチックレンズよりも高い屈折率の材料が用いられているため、偏芯が解像度に及ぼす影響度(偏芯感度)が大きいことから、ガラスレンズ(レンズ15)に調芯を行えば、
調芯の効果が大きい。
【0055】
また、ホルダ9は、ガラスレンズからなるレンズ15を内側に保持する第1ホルダ40と、第1ホルダ40を内側に保持する第2ホルダ60とを備えている。このため、ガラスレンズ(レンズ15)を研磨レンズとした場合、プラスチックレンズよりも形状に対する制約が大きいので、調芯レンズとしにくいが、ガラスレンズが第1ホルダ40に保持されているので、ガラスレンズの外周部分にフランジ部を設けることができない場合でも、レンズ15に対する調芯を行うことができる。
【0056】
また、レンズ14、15の間には、光軸方向に付勢力を発揮する板状バネ23が配置されており、板状バネ23は、レンズ15(調芯レンズ)に対して光軸L方向の付勢力を印加している。このため、複数のレンズ11〜15を重ねて配置した状態でもレンズ15が可動であるので、調芯工程を行うことができる。また、調芯後、第1ホルダ40と第2ホルダ60との間に供給した接着剤によって第1ホルダ40を固定する場合でも、接着剤が硬化するまでの間、第1ホルダ40は、板状バネ23による付勢力に印加されているため、接着剤が硬化時に起因する接着剤のヒケによる第1ホルダのズレが起きてしまうことを防止できる。
【0057】
また、調芯用開口部91は、第2ホルダ60において像側L2に位置する第1筒部61に形成されている。このため、ホルダ9の像側L2の第1レンズ保持部9aと物体側L1の第2レンズ保持部9bとの間に形成された段部66にOリングやパッキン等を配置して広角レンズユニット1を監視装置や車両に搭載した際、水分等が調芯用開口部91からホルダ9の内側に侵入しないという利点がある。
【0058】
[実施の形態2]
(全体構成)
図3は、本発明の実施の形態2に係る広角レンズユニットの説明図であり、
図3(a)、(b)は、広角レンズユニットの断面図、および調芯工程の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0059】
図3(a)に示すように、本形態の広角レンズユニット1も、実施の形態1と同様、光軸L方向に複数のレンズ11〜17が配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持する樹脂製のホルダ9とを有している。広角レンズ10の画角は170°以上、例えば、190°である。本形態においても、実施の形態1と同様、レンズ11、15は、ガラスレンズからなり、レンズ12、13、14、16、17はプラスチックレンズからなる。
【0060】
ここで、複数のレンズ11〜17の外径の大小関係は、以下の式
レンズ11>レンズ12、13>レンズ16>レンズ17>レンズ14>レンズ15
に示す通りであり、最も物体側に位置するレンズ11は、他のレンズより外径が大である。かかる形状に対応して、ホルダ9は、像側L2に位置する筒状の第1レンズ保持部9aと、第1レンズ保持部9aより物体側L1に位置する筒状の第2レンズ保持部9bとを備えており、第2レンズ保持部9bの外径は、第1レンズ保持部9aの外径より大になっている。
【0061】
(ホルダ9の構成)
ホルダ9は、以下に説明する筒状の第1ホルダ40、筒状の第2ホルダ60、および筒状の第3ホルダ30を備えている。また、第2ホルダ60は、内側ホルダ70と、内側ホルダ70の径方向外側に固定された外側ホルダ80とを備えている。
【0062】
まず、第1ホルダ40は、実施の形態1と同様、物体側L1に位置する円環状の板状部41と、板状部41から像側L2に突出した円筒状の内側筒部42と、内側筒部42より径方向の外側で板状部41から像側L2に突出した円筒状の外側筒部43とを有しており、外側筒部43の像側L2の端部は、内側筒部42の像側L2の端部より像側L2に突出している。板状部41の中央には、内側筒部42の内径より小さな内径の穴49が形成されており、かかる穴49によって、絞り21が形成されている。第1ホルダ40において、ガラスレンズからなるレンズ15は、内側筒部42の内側に配置され、内側筒部42の像側L2の端部に対する熱溶着によって、レンズ15は、内側筒部42の像側L2の端部と板状部41との間に保持される。この状態で、レンズ15の外周面は、内側筒部42の内周面に接している。なお、
図3において、内側筒部42は、熱溶着前の形状で表されている。
【0063】
本形態では、第1ホルダ40の板状部41の物体側L1の面には、絞り21を中心とする円形の凹部44が形成されており、かかる凹部44にレンズ14が配置されている。レンズ14の厚さは、凹部44の深さより小であり、レンズ14の物体側L1は、凹部44から物体側L1に突出していない。
【0064】
ここで、凹部44の底部とレンズ14の外周側フランジ部との間には円環状の板状バネ23が配置されている。板状バネ23は、光軸L方向で圧縮された状態にあり、光軸L方向の付勢力を発揮する。なお、板状バネ23は、レンズ14とレンズ13との間に配置されていてもよい。
【0065】
第2ホルダ60において、内側ホルダ70は、像側L2の第1筒部61と、第1筒部61より物体側L1に位置する第2筒部63とを有している。第2筒部63の外径は、第1筒部61の外径よりわずかに大であり、第2ホルダ60の外周面には、第1筒部61と第2筒部63との境界部分に像側L2に向く段部66が形成されている。第2筒部63の内径は、第1筒部61の内径と等しい。また、第1筒部61の内周面には、物体側L1に向く段部68が形成されている。
【0066】
第2ホルダ60において、内側ホルダ70の第2筒部63の外周面には円筒状の外側ホルダ80が接着等の方法で固定されている。外側ホルダ80の外周面には雄ねじ69が形成され、外側ホルダ80の物体側L1の端面には、内周縁に沿って環状段部64が形成されている。
【0067】
このように構成した内側ホルダ70において、第1筒部61の像側L2の端部には赤外線カットフィルタ22が接着等の方法で固定され、第1筒部61の内側には、第6レンズ群56が収容されている。ここで、第6レンズ群56は、レンズ16の外周側フランジ部の像側L2の面が段部68に当接している。また、第1筒部61の内径は、レンズ16の外径よりもわずかに小か、等しいか、わずかに大であり、レンズ16(第6レンズ群56)の光軸Lに対して直交する方向の位置は、第1筒部61の内周面によって規定されている。
【0068】
第1筒部61と第2筒部63との境界部分の内側には、レンズ15を保持する第1ホルダ40が収容されており、第1ホルダ40の外側筒部43の像側L2の端部は、レンズ16の外周側フランジ部の物体側L1の面に当接している。また、第1筒部61の内径は、第1ホルダ40の外側筒部43の外周よりも、わずかに小か、等しいか、わずかに大であり、第1ホルダ40の中心軸に対して直交する方向の位置は、第1筒部61の内周面によって規定されている。
【0069】
第2筒部63の内側には、像側L2から物体側L1に向かって、レンズ14、レンズ13およびレンズ12が順に重ねて収容されており、レンズ14は、板ばね23とともに第1ホルダ40の板状部41の物体側L1の面に形成された凹部44に配置されている。第1ホルダ40の物体側L1には、凹部44の外周側で物体側L1に突出した凸部46が形成されており、凸部46は、レンズ13の外周側フランジ部に接している。この状態で、レンズ14は、板ばね23でレンズ13の外周側フランジ部に押圧され、レンズ14の外周側フランジ部とレンズ13の外周側フランジ部とが当接している。第2筒部63の内径は、レンズ13の外径およびレンズ12の外径よりわずかに小か、等しいか、わずかに大であり、レンズ13およびレンズ12の光軸Lに対して直交する方向の位置は、第2筒部63の内周面によって規定されている。また、レンズ12の外周側端面は、内側ホルダ70の被写体側端面で熱溶着され、レンズ12が像側に向けて押圧されて固定される。これに対して、レンズ14は、外径が凹部44の内径よりわずかに小さく、光軸Lに対して直交する方向に移動可能である。
【0070】
第3ホルダ30は、第2ホルダ60の外側ホルダ80に対して径方向外側で重なる円筒状の筒部31と、筒部31の物体側L1の端部に形成された円環状の枠部32とを備えており、内側にレンズ11を保持する。レンズ11の外周部分には、物体側L1に向く環状の段部110が形成されており、段部110が第3ホルダ30の枠部32に像側L2から当接している。また、筒部31の内周面には、第2ホルダ60の外側ホルダ80の外周面に形成された雄ねじ69に止められた雌ねじ39が形成されている。
【0071】
(調芯用開口部)
このように構成した広角レンズユニット1において、本形態では、絞り21に物体側L1で隣り合うレンズ14(物体側レンズ)、および絞り21に像側L2で隣り合うレンズ15(像側レンズ)のうち、レンズ14(物体側レンズ)が、光軸Lに直交する方向の位置調整が行われる調芯レンズである。
【0072】
このため、ホルダ9のうち、第2ホルダ60の内側ホルダ70の第2筒部63、および第1ホルダ40において凸部46と周方向で隣り合う部分には、光軸Lに対して直交する方向からみたときにレンズ14の少なくとも一部と重なる位置に調芯用開口部92が形成されており、かかる調芯用開口部92は、第2ホルダ60の外側ホルダ80によって径方向外側から塞がれている。本形態において、調芯用開口部92は、周方向の複数個所に形成されている。本形態において、調芯用開口部92は、周方向において90°間隔の4個所に形成されている。
【0073】
(広角レンズユニット1の製造方法および調芯工程)
本形態の広角レンズユニット1を製造するには、
図3(b)に示すように、第2ホルダ60の内側ホルダ70の内側に対して、第6レンズ群56、レンズ15を保持した第1ホルダ40、板状バネ23、レンズ14、レンズ13、およびレンズ12を順に収容する。
【0074】
その際、内側ホルダ70に収容された第6レンズ群56、レンズ15を保持した第1ホルダ40、板状バネ23、レンズ14、レンズ13は、レンズ12によって押圧される。その結果、第1ホルダ40とレンズ14との間では、板状バネ23が光軸L方向で圧縮され、光軸L方向の付勢力を発揮する。このため、第6レンズ群56および第1ホルダ40は、第2ホルダ60の段部68を基準に光軸L方向で位置決めされる。次に、レンズ11と同様なレンズ構成を有する透光性の治具90を、中心軸を光軸に合致させた状態で光軸L方向がレンズ11と同じ位置になるよう位置決めさせる。
【0075】
次に、レンズ14のみに対して、光軸Lに直交する方向の位置を調整する調芯工程を行う。より具体的には、内側ホルダ70に形成した調芯用開口部92から調芯ピン等の治具
を差し込んで、レンズ14を光軸Lに直交する方向に押圧する。ここで、レンズ14は、板状バネ23の付勢力によって固定されているとともに、レンズ14と凹部44の内周面との間にはわずかな隙間が介在しているため、レンズ14は、光軸Lに直交する方向に移動する。
【0076】
かかる調芯工程の際も、実施の形態1と同様、治具90の側からモニター光を入射させながら、像側L2でモニター光を検出し、MTFを測定する。そして、MTFの測定結果に基づいて、レンズ14をX方向およびY方向に移動させる。
【0077】
このようにして調芯工程を行った後、調芯用開口部92から、レンズ14と内側ホルダ70との間に接着剤を供給し、その後、接着剤を硬化させる。その結果、レンズ14と内側ホルダ70とは、径方向外側から調芯用開口部92を介して見える位置に設けられた接着剤によって固定される。
【0078】
次に、
図3(a)に示すように、内側ホルダ70の第2筒部63の外周面に円筒状の外側ホルダ80を接着等の方法で固定する。その結果、調芯用開口部92は、外側ホルダ80によって径方向外側から塞がれる。その後、レンズ11を内側に保持した第3ホルダ30を第2ホルダ60の物体側L1の端部に結合させる。より具体的には、第3ホルダ30の筒部31の内周面に形成された雌ねじ39に外側ホルダ80の外周面に形成された雄ねじ69を締め付けてレンズ11を光軸L方向の像側L2に押圧する。その結果、レンズ11は像側L2でホルダ60の被写体側端面か、レンズ12の外周側フランジ部のいずれかに当接し、固定される。その結果、広角レンズユニット1が完成する。その際、環状段部64にOリング99を装着しておく。
【0079】
かかる広角レンズユニット1において、Oリング99は、レンズ11と第2ホルダ60(外側ホルダ80)との間で圧縮され、レンズ11と第2ホルダ60との間がOリング99によって封止される。また、第1ホルダ40とレンズ14との間では、板状バネ23が光軸L方向で圧縮され、光軸L方向の付勢力を発揮する。このため、第6レンズ群56および第1ホルダ40は、第2ホルダ60の段部68を基準に光軸L方向で位置決めされる。
【0080】
このような構成の広角レンズユニット1を監視装置や車両に搭載する際、ホルダ9の像側L2の第1レンズ保持部9aと物体側L1の第2レンズ保持部9bとの間に形成された段部66にOリングやパッキン等を配置し、像側L2への水分等の侵入を防止した状態とする。
【0081】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の広角レンズユニット1でも、実施の形態1と同様、複数のレンズ11〜17のうち、偏芯が解像度に及ぼす影響度(偏芯感度)が大きな2つのレンズ(絞り21に物体側L1で隣り合う物体側レンズ、および絞り21に像側L2で隣り合う像側レンズ)の一方のレンズ(レンズ14)を、光軸Lと直交する方向に位置調整が行われる調芯レンズとする。このため、調芯対象となるレンズが1つであるため、1回の調芯作業によって、高い解像度を得ることができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0082】
また、本形態では、レンズ11を除くレンズ12〜17が存在する状態でMTFを測定し、その結果に基づいて、レンズ14の調芯を行う。このため、レンズ11、14以外のレンズ12、13、15〜17の偏芯をレンズ14の調芯によって相殺することができる。このため、少ない回数の調芯作業によって、高い解像度を得ることができる。また、レンズ11は、偏芯の解像度に対する影響が小さいので、レンズ11以外のレンズ12〜1
7のMTFの測定結果に基づいて調芯を行っても高い解像度を得ることができる。
【0083】
また、本形態では、第2ホルダ60を内側ホルダ70と外側ホルダ80とに分割したため、内側ホルダ70のうち、外側ホルダ80が径方向外側から被さる第2筒部63に調芯用開口部92を形成することができる。このため、第2ホルダ60の物体側L1の端部に雄ねじ69を形成する場合でも、調芯用開口部92を形成する個所を確保することができる。また、調芯用開口部92は、外側ホルダ80によって径方向外側から塞がれる。このため、ホルダ9の像側L2の第1レンズ保持部9aと物体側L1の第2レンズ保持部9bとの間に形成された段部66にOリングやパッキン等を配置して広角レンズユニット1を監視装置や車両に搭載した際、水分等が調芯用開口部92からホルダ9の内側に侵入しないという利点がある。
【0084】
[実施の形態3]
(全体構成)
図4は、本発明の実施の形態3に係る広角レンズユニットの説明図であり、
図4(a)、(b)は、広角レンズユニットの断面図、および調芯工程の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1、2と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0085】
図4(a)に示すように、本形態の広角レンズユニット1も、実施の形態1と同様、光軸L方向に複数のレンズ11〜17が配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持する樹脂製のホルダ9とを有している。広角レンズ10の画角は170°以上、例えば、190°である。本形態においても、実施の形態1と同様、レンズ11、15は、ガラスレンズからなり、レンズ12、13、14、16、17はプラスチックレンズからなる。
【0086】
ここで、複数のレンズ11〜17の外径の大小関係は、実施の形態2と同様、以下の式
レンズ11>レンズ12、13>レンズ16>レンズ17>レンズ14>レンズ15
に示す通りであり、最も物体側に位置するレンズ11は、他のレンズより外径が大である。かかる形状に対応して、ホルダ9は、像側L2に位置する筒状の第1レンズ保持部9aと、第1レンズ保持部9aより物体側L1に位置する筒状の第2レンズ保持部9bとを備えており、第2レンズ保持部9bの外径は、第1レンズ保持部9aの外径より大になっている。
【0087】
(ホルダ9の構成)
ホルダ9は、以下に説明する筒状の第1ホルダ40、筒状の第2ホルダ60、および筒状の第3ホルダ30を備えている。第1ホルダ40は、実施の形態1、2と同様、物体側L1に位置する円環状の板状部41と、板状部41から像側L2に突出した円筒状の内側筒部42と、内側筒部42より径方向の外側で板状部41から像側L2に突出した円筒状の外側筒部43とを有しており、外側筒部43の像側L2の端部は、内側筒部42の像側L2の端部より像側L2に突出している。板状部41の中央には、内側筒部42の内径より小さな内径の穴49が形成されており、かかる穴49によって、絞り21が形成されている。第1ホルダ40において、ガラスレンズからなるレンズ15は、内側筒部42の内側に配置され、内側筒部42の像側L2の端部に対する熱溶着によって、レンズ15は、内側筒部42の像側L2の端部と板状部41との間に保持される。この状態で、レンズ15の外周面は、内側筒部42の内周面に接している。なお、
図4において、内側筒部42は、熱溶着前の形状で表されている。
【0088】
本形態では、第1ホルダ40の板状部41の物体側L1の面には、絞り21を中心とする円形の凹部44が形成されており、かかる凹部44にレンズ14が配置されている。レ
ンズ14の厚さは、凹部44の深さより小であり、レンズ14の物体側L1の部分は、凹部44から物体側L1に突出していない。また、凹部44の底部とレンズ14の外周側フランジ部との間には板状バネ23が配置されている。板状バネ23は、光軸L方向で圧縮された状態にあり、光軸L方向の付勢力を発揮する。
【0089】
本形態において、レンズ16の物体側L1の面には、外周部分に環状凹部160が形成されている。また、第1ホルダ40において、外側筒部43は、レンズ16の物体側L1の面より像側L2に向けて突出し、環状凹部160内に嵌ってレンズ16を保持している。このようにして、第1ホルダ40には、外側筒部43の像側L2の端部によって、レンズ15(ガラスレンズ)を保持する部分より像側L2に突出して第1ホルダ40より像側に位置するレンズ16を保持する像側筒部48が構成されている。
【0090】
ここで、第1ホルダ40は、板状部41の外径が外側筒部43の外径より大であり、板状部41の凹部44より径方向外側部分には、物体側L1に向けて突出する凸部46が形成され、かかる凸部46より外周側からは、物体側L1に向けて円筒状の物体側筒部45が突出している。このため、凸部46と物体側筒部45との間には、物体側L1に向いた平面を有する段部47が形成されている。物体側筒部45の内側には、第1ホルダ40より物体側L1に位置するレンズ12、13が保持されている。物体側筒部45の内径は、レンズ13の外径およびレンズ12の外径よりもわずかに小か、等しいか、わずかに大であり、レンズ13およびレンズ12の光軸Lに対して直交する方向の位置は、物体側筒部45の内周面によって規定されている。また、レンズ13の外周側フランジ部は、段部47の平面に当接し、光軸L方向で位置決めされている。また、レンズ12の物体側L1側の外周端面は、内側ホルダ70の被写体側端面で熱溶着され、レンズ12が像側に向けて押圧されて固定される。
【0091】
第2ホルダ60は、像側L2の第1筒部61と、第1筒部61より物体側L1に位置する第2筒部62とを有している。第2筒部62の外径は、第1筒部61の外径よりわずかに大であり、第2ホルダ60の外周面には、第1筒部61と第2筒部62との境界部分に像側L2に向く段部66が形成されている。第2筒部62の内径は、第1筒部61の内径より大きく、第2筒部62の内周面には、物体側L1に向く段部67が形成されている。また、第1筒部61の内周面には、物体側L1に向く段部68が形成されている。
【0092】
第2ホルダ60において、第2筒部62の外周面には雄ねじ69が形成され、第2筒部62の物体側L1の端面には、内縁に沿って環状段部64が形成されている。
【0093】
このように構成した第2ホルダ60の第1筒部61の像側L2の端部には赤外線カットフィルタ22が接着等の方法で固定され、第1筒部61の内側には、第6レンズ群56が収容されている。ここで、第6レンズ群56は、レンズ16の外周側フランジ部の像側L2の面が段部68に当接している。また、第1筒部61の内径は、レンズ16の外径と等しいか、レンズ16の外径よりわずかに小か、等しいか、わずかに大であり、レンズ16(第6レンズ群56)の光軸Lに対して直交する方向の位置は、第1筒部61の内周面によって規定されている。
【0094】
第1筒部61と第2筒部62との境界部分の内側には、レンズ15を保持する第1ホルダ40が収容されており、第1ホルダ40の外側筒部43の像側L2の端部(像側筒部48)にはレンズ16が保持されている。
【0095】
第2筒部62の内側には、第1ホルダ40においてレンズ12、13を保持した物体側筒部45が嵌っている。ここで、第2筒部62の内径は、第1ホルダ40の物体側筒部45の外径よりわずかに小か、等しいか、わずかに大であり、第1ホルダ40の光軸Lに対
して直交する方向の位置は、第2筒部62の内周面によって規定されている。また、レンズ14は、第1ホルダ40の板状部41の物体側L1の面に形成された凹部44に配置されている。ここで、ホルダ40の物体側L1の部分の段部47は、凹部44から物体側L1に突出しており、凸部46(段部47)がレンズ13の外周側フランジ部と当接している。この状態で、レンズ14は、板ばね23でレンズ13の外周側フランジ部に押圧され、レンズ14の外周側フランジ部と、レンズ13の外周側フランジ部とが当接している。
【0096】
第3ホルダ30は、第2ホルダ60の外側ホルダ80に対して径方向外側で重なる円筒状の筒部31と、筒部31の物体側L1の端部に形成された円環状の枠部32とを備えており、内側にレンズ11を保持する。本形態では、レンズ11の外周側フランジ部は、ホルダ40の物体側端面か、ホルダ60の物体側端面か、あるいは、レンズ12の外周側フランジ部のいずれかに当接し、レンズ11の外周側フランジ部は、第3ホルダ30の外周部分において物体側L1に向く環状の段部110と当接し、この状態で、第3ホルダ30の筒部31の内周面に設けられた雌ねじ69を、第2ホルダ60の第2筒部62の外周面に形成された雄ねじ69に締め付けることで、レンズ11が固定されている。
【0097】
(調芯用開口部)
このように構成した広角レンズユニット1において、本形態では、絞り21に物体側L1で隣り合うレンズ14(物体側レンズ)、および絞り21に像側L2で隣り合うレンズ15(像側レンズ)のうち、レンズ14(物体側レンズ)が、光軸Lに直交する方向の位置調整が行われる調芯レンズである。
【0098】
このため、ホルダ9のうち、第1ホルダ40の物体側筒部45には、凸部46に対して周方向にずれた個所に、光軸Lに対して直交する方向からみたときにレンズ14の少なくとも一部と重なる位置に調芯用開口部93が形成されており、かかる調芯用開口部93は、第2ホルダ60の第2筒部62によって径方向外側から塞がれている。本形態において、調芯用開口部93は、周方向の複数個所に形成されている。本形態において、調芯用開口部93は、周方向において90°間隔の4個所に形成されている。
【0099】
(広角レンズユニット1の製造方法および調芯工程)
本形態の広角レンズユニット1を製造するには、
図4(b)に示すように、第1ホルダ40の内側にレンズ15を保持した状態とするとともに、像側筒部48によって第6レンズ群56を保持した状態とする。また、第1ホルダ40の物体側筒部45の内側に、板状バネ23、レンズ14、レンズ13およびレンズ12を順に収容した後、レンズ12をホルダ60の被写体側端面で熱溶着する。その際、レンズ12により、第1ホルダ40の物体側筒部45の内側に収容されたレンズ13、レンズ14および板状バネ23を押圧する。その結果、第1ホルダ40とレンズ14との間では、板状バネ23が光軸L方向で圧縮され、光軸L方向の付勢力を発揮する。
【0100】
次に、レンズ11と同様なレンズ構成を有する透光性の治具90を、レンズ11と位置が同じくなるように配置する。
【0101】
次に、レンズ14のみに対して、光軸Lに直交する方向の位置を調整する調芯工程を行う。より具体的には、第1ホルダ40の物体側筒部45に形成した調芯用開口部93から調芯ピン等の治具を差し込んで、レンズ14を光軸Lに直交する方向に押圧する。ここで、レンズ14は、板状バネ23の付勢力によって固定されているとともに、レンズ14と凹部44の内周面との間にはわずかな隙間が介在しているため、レンズ14は、光軸Lに直交する方向に移動する。
【0102】
かかる調芯工程の際も、実施の形態1と同様、治具90の側からモニター光を入射させ
ながら、像側L2でモニター光を検出し、MTFを測定する。そして、MTFの測定結果に基づいて、レンズ14をX方向およびY方向に移動させる。
【0103】
このようにして調芯工程を行った後、調芯用開口部93から、レンズ14と第1ホルダ40との間に接着剤を供給し、その後、接着剤を硬化させる。その結果、レンズ14と第1ホルダ40とは、径方向外側から調芯用開口部93を介して見える位置に設けられた接着剤によって固定される。
【0104】
次に、
図4(a)に示すように、第2ホルダ60の内側に第1ホルダ40を収容し、接着等の方法で固定する。その結果、調芯用開口部93は、第2ホルダ60の第2筒部62によって径方向外側から塞がれる。その後、レンズ11、第3ホルダ30および第2ホルダ60を、物体側L1の端部に結合させる。より具体的には、レンズ11を第2ホルダ60の物体側端面に乗せ、第3ホルダ30を被写体側から被せて、第3ホルダ30の筒部31の内周面に形成された雌ねじ39を第2ホルダ60の第2筒部62の外周面に形成された雄ねじ69に締めこむ。その結果、広角レンズユニット1が完成する。その際、環状段部64にOリング99を装着しておく。
【0105】
かかる広角レンズユニット1において、Oリング99は、レンズ11と第2ホルダ60(外側ホルダ80)との間で圧縮され、レンズ11と第2ホルダ60との間がOリング99によって封止される。
【0106】
このような構成の広角レンズユニット1を監視装置や車両に搭載する際、ホルダ9の像側L2の第1レンズ保持部9aと物体側L1の第2レンズ保持部9bとの間に形成された段部66にOリングやパッキン等を配置し、像側L2への水分等の侵入を防止した状態とする。
【0107】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の広角レンズユニット1でも、実施の形態1と同様、複数のレンズ11〜17のうち、偏芯が解像度に及ぼす影響度(偏芯感度)が大きな2つのレンズ(絞り21に物体側L1で隣り合う物体側レンズ、および絞り21に像側L2で隣り合う像側レンズ)の一方のレンズ(レンズ14)を、光軸Lと直交する方向に位置調整が行われる調芯レンズとする。このため、調芯対象となるレンズが1つであるため、1回の調芯作業によって、高い解像度を得ることができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0108】
また、本形態では、第1ホルダ40によってレンズ12〜17を保持したため、第1ホルダ40のうち、第2ホルダ60の第2筒部62が径方向外側から被さる物体側筒部45に調芯用開口部93を形成することができる。このため、第2ホルダ60の物体側L1の端部に雄ねじ69を形成する場合でも、調芯用開口部93を形成する個所を確保することができる。また、調芯用開口部92は、第2ホルダ60の第2筒部62によって径方向外側から塞がれる。このため、ホルダ9の像側L2の第1レンズ保持部9aと物体側L1の第2レンズ保持部9bとの間に形成された段部66にOリングやパッキン等を配置して広角レンズユニット1を監視装置や車両に搭載した際、水分等が調芯用開口部93からホルダ9の内側に侵入しないという利点がある。