(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393072
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ピット内のクレーンの操作方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/02 20060101AFI20180910BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20180910BHJP
F23K 3/00 20060101ALI20180910BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
F23G5/02 A
F23G5/44 BZAB
F23K3/00 302
F23G5/50 Q
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-92877(P2014-92877)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-210043(P2015-210043A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福里 豊
(72)【発明者】
【氏名】増田 孝弘
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−062906(JP,A)
【文献】
特開平09−178141(JP,A)
【文献】
特開平11−264534(JP,A)
【文献】
特開2015−139761(JP,A)
【文献】
特開平07−318033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/02
F23G 5/44
F23G 5/50
B03B 9/06
B09B 3/00
F23K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却物を受け入れる第1エリア、当該第1エリアの近傍に配置される第2エリア、および第3エリアを有するピット内におけるクレーンの操作方法であって、
前記第2エリアは焼却物の第n性状の範囲に応じた第n分割部を有し、
前記焼却物の性状に応じて、前記焼却物を前記第1エリアから前記第n分割部へ搬送し、
前記第2エリアの前記第n分割部にある焼却物を前記第3エリアへクレーンで搬送し、所望の焼却物の性状の範囲になるように、当該第3エリアで当該焼却物を混合する、クレーンの操作方法。
【請求項2】
焼却物を受け入れる第1エリアおよび当該第1エリアの近傍に配置される第2エリアを少なくとも有するピット内におけるクレーンの操作方法であって、
前記第2エリアは焼却物の第n性状の範囲に応じた第n分割部を有し、
前記第n分割部における焼却物の性状の範囲を予め設定し、
前記予め設定された焼却物の性状の範囲になるように、前記第1エリアから前記第n分割部へ前記焼却物をクレーンで搬送し、混合する、クレーンの操作方法。
【請求項3】
焼却物を受け入れる第1エリア、前記第1エリアに隣接して配置される第2エリア、および第3エリアを有するピットであって、
前記第2エリアは焼却物の第n性状の範囲に応じた第n分割部を有し、
前記第n分割部は、前記焼却物の性状に応じて、前記第1エリアから搬送される焼却物を貯留されるエリアであり、
前記第3エリアは、前記第2エリアの前記第n分割部にある焼却物がクレーンで搬送され、所望の焼却物の性状の範囲になるように、当該焼却物が混合されるエリアである、ピット。
【請求項4】
焼却物を受け入れる第1エリアと、
前記第1エリアに隣接して配置される第2エリアと、を少なくとも有するピットであって、
前記第2エリアは焼却物の第n性状の範囲に応じた第n分割部を有し、
前記第n分割部は、焼却物の性状の範囲が予め設定され、かつ前記予め設定された焼却物の性状の範囲になるように、前記第1エリアから前記第n分割部へ前記焼却物がクレーンで搬送され混合されるエリアである、ピット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉(装置)に焼却物(可燃物)を投入するためのピット内におけるクレーンの操作方法、およびそのピットに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ焼却炉の運転は、
図1の太線の範囲において運転が可能である。一般的にごみ質は、低質ごみ(ごみの低位発熱量の低いごみ)から高質ごみ(ごみの低位発熱量の高いごみ)まである。焼却負荷率は、ごみ質に応じて70%〜115%が一般的である。
【0003】
一般的に、焼却されるごみは、そのごみ質が季節や収集品目によって大きく変動する。そのため燃焼を安定させるために、ピット(ごみピット)でごみを混合、攪拌して、ごみ質を均一化処理した後で、焼却炉へそのごみ(ごみ質を均一化したごみ)を投入する。安定焼却をさせるため(
図1の太線の範囲内での運転を維持させるため)、ごみ質の均一化が通常行われている。
【0004】
また、近年、ごみ焼却処理場は、ごみを安定して焼却する機能に加えて、ごみを焼却処理して得られるエネルギーを発電電力として有効利用するエネルギー創出工場としての役割がある。必要な発電電力をごみ焼却により得ることが求められており、その発電電力は電力需要によって変化する。電力需要は、例えば夜間よりも昼間のほうが大きく、休日と平日、季節によっても大きく変動する。その需要に応じてごみ焼却による発電量を幅広く変動させることができれば、エネルギー創出工場としての役割を強化できる。
【0005】
従来では、ごみピットにおいて、ごみ質が均一になるように攪拌することを最優先させているため、ごみの発電量(=ボイラ蒸発量)の多寡は焼却処理量の多寡により決定される。例えば、電力需要の少ない夜間には焼却処理量を少なくして対応する。すなわち
図1の焼却可能範囲において図の上下方向(焼却負荷率方向)に変動させて運転対応する。
【0006】
特許文献1は、メタンガス化施設から発生する選別残渣と脱水残渣等と焼却物として焼却する際に、焼却物のごみ質を均一化するために選別残渣と脱水残渣を攪拌混合し貯留することを記載している。また、特許文献2は、ピット内を区画に分割し、区画ごとのごみ質を記憶しておき、次のごみ投入の際に、前回投入したごみ質に近い位置のごみを選択して投入することで燃焼を安定させることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5291508
【特許文献2】特開2001−33019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ごみピットのごみの攪拌方法は、クレーン運転員による運転経験、熟達度に依存するところが大きく、攪拌にばらつきがあるので、常に均一なごみ質の調整は困難である。
【0009】
また、従来ごみピットは、
図4に示す通り、その役割に応じて、受入エリア、混合・攪拌エリア、投入エリア(投入前の貯留エリア)に分け、収集車等で搬入されたごみを受入エリアで受入れ、受け入れたごみをクレーンで混合・攪拌エリアに積み替えるとともに、混合攪拌エリアでごみのごみ質が均一になるように十分攪拌する。攪拌後のごみを投入エリアにクレーンで積み替え、移動させてから焼却炉に投入する。
【0010】
ここで、ごみ質の幅広い性状のごみをピット全体(少なくとも、混合・攪拌エリアおよび投入ごみエリア)において均質になるように混合・攪拌するため、均一に混合されるまでに必要なクレーンの操作回数(混合回数)が多くなり、攪拌作業に要する時間を長時間必要とし、攪拌に伴うクレーン消費電力が大きくなる(全体のエネルギー効率を低下する)。
【0011】
また、十分に混合・攪拌を行うためには、そのエリア(混合に必要な面積)を十分に取る必要があるが、配置制約上十分にそのエリアを設けることが難しい場合には、ごみの攪拌が困難(または、頻繁なクレーン操作作業が必要)になり、ごみの均質化が難しく、ごみの安定焼却処理も困難になる。
【0012】
ごみ質を均一にすることを前提にして、電力需要に応じて焼却負荷量を変動させてごみ発電量を変化させる従来の発電量の負荷変動に対する焼却炉の運転方法は、電力需要の変動に十分に対応しているとは言い難い。
【0013】
ごみピットに貯留されたごみを燃料ととらえ、その燃料を効率よく発電(焼却処理)するために、発電量(=ボイラの蒸発量)の変動幅を大きくとることができれば、需要への対応性が高まる。しかし、従来の均質なごみの投入量を変動させた運転では、発電量の変動幅(蒸発量大きく変動させる運転)が十分とは言えない。
【0014】
そこで、上記問題に鑑みて、本発明は、ごみピット内における均質なごみの混合(攪拌)を効率的に行え、かつ全体のエネルギー効率を向上させることができるクレーンの操作方法を提供する。また、電力の需要変動に対応できるごみ質のごみを貯留できるエリアをもつピットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、焼却物を受け入れる第1エリアおよび当該第1エリアの近傍に配置される第2エリアを少なくとも有するピット内におけるクレーンの操作方法であって、
前記第2エリアは焼却物の第n性状の範囲に応じた第n分割部を有し、
前記焼却物の性状に応じて、前記焼却物をそれぞれ前記第1エリアから前記第n分割部へ搬送する。
【0016】
この構成によって、焼却による発電量を変動させるにあたり、焼却物(ごみ)の性状(ごみ質)に応じて、焼却物の第n性状の範囲が設定された第n分割部を有する第2エリアで貯留を行う。nは1、2、3・・である。例えば、第1性状の範囲の焼却物は第1分割部に、第2性状の範囲の焼却物は第2分割部にそれぞれ搬送され貯留される。第2エリア全体が均一になるようにクレーンを稼働させないため、ピットにおけるクレーンの稼働率を低くできる。そして、必要な発電量(=蒸発量)を得るために、適切な焼却物(ごみ)を焼却炉に供給し、発電量の多寡を
図1の焼却可能範囲(太線)において、図の左右方向(ごみ質)に変動させた運転を行う。よって、ピット内における均質なごみの混合(攪拌)を効率的に行え、かつ全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0017】
焼却物の性状の測定方法(測定装置)は、例えば、焼却物を受入エリアに搬入する時にクレーンまたはピット天井に取り付けられた撮像装置による画像処理、クレーンでごみを掴んだ時に計測される重量および体積から算出される比重(クレーンで掴んだ時の予め設定される体積、重量計で計測される重量、水分量(例えば非接触型水分計で測定)の内1種類または2種類以上のデータに基づいて、ごみの発熱量(予測値)を、情報処理装置を用いて算出することができる。また、算出された発熱量にさらに、実験値または実稼働の値を考慮して発熱量を補正設定することもできる。例えば、第2エリアは第1分割部、第2分割部、第3分割部を有する。第1分割部は第1発熱量範囲、第2分割部は第2発熱量範囲、第3分割部は第3発熱量範囲に設定され、クレーンで掴んだ焼却物の発熱量に応じて、対応する発熱量範囲の分割部へ当該焼却物をクレーンでそのまま搬送する。
【0018】
上記発明の実施形態において、第1エリアの焼却物から、低質の焼却物(低ごみ質の焼却物)をクレーンで第2エリアの低質エリア部(第1分割部)に搬送する。第1エリアの焼却物から、高質の焼却物(高ごみ質の焼却物)をクレーンで第2エリアの高質エリア部(第2分割部)に搬送する。ごみ質を低質と高質の2種類に区分けする。
【0019】
また、別の実施形態において、第1エリアの焼却物から、低質の焼却物(低ごみ質の焼却物)をクレーンで第2エリアの低質エリア部(第1分割部)に搬送する。第1エリアの焼却物から、基準質の焼却物(基準ごみ質の焼却物)をクレーンで第2エリアの基準エリア部(第3分割部)に搬送する。第1エリアの焼却物から、高質の焼却物(高ごみ質の焼却物)をクレーンで第2エリアの高質エリア部(第2分割部)に搬送する。ごみ質を低質、基準、高質の3種類に区分けする。例えば、低質エリア部の発熱量の範囲は、例えばHu<7250kJ/kg未満、基準エリア部の発熱量範囲は、例えば7250kJ/kg≦Hu<8750kJ/kg、高質エリア部の発熱量範囲は、例えば8750kJ/Kg≦Huである。別例として、焼却物の発熱量に応じて4つ以上の区分けもできる。
【0020】
焼却物の性状は、発熱量が挙げられるが、その代替として、水分や物理組成(例えば、紙類、プラスチック類、厨芥ごみ等の比率)が挙げられる。
【0021】
また、上記発明の実施形態において、前記第1エリア、第2エリアに加え第3エリアを有し、前記第2エリアの前記第n分割部にある焼却物を前記第3エリアへクレーンで搬送し、所望の焼却物の性状の範囲(発熱量の範囲)になるように、当該第3エリアで当該焼却物を混合する。例えば、第2エリアの第n分割部(n=1、2、・・)の焼却物の内、1種類または2種類以上の分割部にある焼却物を第3エリアにクレーンで搬送し、平らに載置し、順次積層していく。このように積層することで、複数の焼却物を混合する。すなわち、所定の発熱量(性状)になるように第3エリアへの搬送および混合を行える。例えば、低質エリア(第1分割部)の低質ごみと基準エリア(第3分割部)の基準ごみをそれぞれ第3エリアにクレーンで搬送し混合を行い、基準ごみより低いごみ質のごみ(低質ごみよりも高いごみ質のごみ)を製造できる。高質エリア(第2分割部)の高質ごみと基準エリア(第3分割部)の基準ごみをそれぞれ第3エリアにクレーンで搬送し混合を行い、基準ごみより高いごみ質のごみ(高質ごみよりも低いごみ質のごみ)を製造できる。
【0022】
また、上記発明の実施形態において、前記第n分割部における焼却物の性状の範囲を予め設定し、前記予め設定された焼却物の性状の範囲になるように、前記第1エリアから前記第n分割部へ前記焼却物をクレーンで搬送し、混合する。
【0023】
例えば、第1エリアから焼却物を運ぶ際に、予め設定された焼却物の性状の範囲(発熱量の範囲が低い範囲、基準範囲、高い範囲など)になるようにクレーンで搬送および混合を行うことで、低質のごみを製造し、または高質のごみを製造できる。例えば、第1回搬送の第1焼却物の第1発熱量を算出し、この第1発熱量がどの分割部の発熱量範囲内かを判定し、クレーンが、判定された分割部へ搬送する、例えば、第1分割部へ搬送し平らに載置する。次いで、第2回搬送の第2焼却物の第2発熱量を算出し、この第2発熱量がどの分割部の発熱量範囲内かを判定し、クレーンが、判定された分割部へ搬送する。発熱量の算出と判定は情報処理装置、専用装置などで構成できる。例えば、第1分割部へ搬送し第1焼却物の上に積層する。このように積層することで、第1焼却物と第2焼却物を混合する。そして、混合した第1、第2焼却物の発熱量は、両者の発熱量の平均値になる。この平均値は第1分割部に設定された発熱量の範囲内である。
【0024】
また、上記発明の実施形態において、第2エリアの各分割部のごみをそれぞれ第3エリアにクレーンで搬送し混合を行う。これによって、均質なごみを製造することもできる。従来のように発電量の負荷変動に対して、焼却量(投入量)を変動させて焼却炉を運転する方法も可能である。このとき、ピット全体ではなく第3エリアにおいてごみが均質になるようにクレーンを稼働させるため、さらに、第2エリアにおいて既知となったごみ質を踏まえたクレーン操作が可能なため、ピット内における均質なごみの混合(攪拌)を効率的に行え、かつ全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0025】
他の本発明のピットは、
焼却物を受け入れる第1エリアと、
前記第1エリアの近傍に配置される第2エリアと、を少なくとも有するピットであって、
前記第2エリアは焼却物の第n性状の範囲に応じた第n分割部を有し、
前記第n分割部は、前記焼却物の性状に応じて、前記第1エリアから搬送される焼却物を貯留されるエリアである。
【0026】
この構成によって、上記クレーンの操作方法の発明と同様の効果を得る。焼却による発電量を変動させるにあたり、焼却物(ごみ)の性状(ごみ質)に応じて、焼却物の第n性状の範囲が設定された第n分割部を有する第2エリアで貯留を行う。nは1、2、3・・である。例えば、第1性状の範囲の焼却物は第1分割部に、第2性状の範囲の焼却物は第2分割部にそれぞれ搬送され貯留される。これにより、ピットにおけるクレーンの稼働率を低くできる。そして、必要な発電量(=蒸発量)を得るために、適切な焼却物(ごみ)を焼却炉に供給し、発電量の多寡を
図1の焼却可能範囲(太線)において、図の左右方向(ごみ質)に変動させた運転を行う。よって、ピット内におけるごみの混合(攪拌)を効率的に行え、かつ全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0027】
上記発明の実施形態において、前記第1エリア、第2エリアに加えて第3エリアをさらに有し、前記第3エリアは、前記第2エリアの前記第n分割部にある焼却物がクレーンで搬送され、所望の焼却物の性状の範囲になるように、当該焼却物が混合されるエリアである。
【0028】
また別の実施形態において、前記第n分割部は、焼却物の性状の範囲が予め設定され、かつ前記予め設定された焼却物の性状の範囲になるように、前記第1エリアから前記第n分割部へ前記焼却物がクレーンで搬送され混合されるエリアである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ごみ発熱量と焼却負荷率の関係を示す図である。
【
図2】実施形態1のピット利用形態の平面図である。
【
図3】実施形態2のピット利用形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態1)
本発明に係る実施形態1のクレーン操作方法について説明する。
図2はピット1の利用形態の平面図である。ピット1は、ごみ(焼却物)を受け入れる受入エリア(第1エリア)11と、受入エリア11に隣接して配置される貯留エリア(第2エリア)12と、受入れエリア11から遠位でかつ貯留エリア12の近位にある混合エリア(第3エリア)13を有する。
【0031】
貯留エリア12は、低質のごみ(焼却物)範囲を貯留するための低質エリア部(第1分割部)121、基準のごみ範囲を貯留するための基準エリア部(第3分割部)122、高質のごみ範囲を貯留するための高質エリア部(第2分割部)123を有する。
【0032】
受入エリア11にあるごみをクレーンで掴んだ際に、掴まれたごみの発熱量を求める。求めた発熱量に応じて、対応する低質、基準、高質、いずれかのエリア部へごみをクレーンでそのまま搬送する。
【0033】
発熱量は、ごみの種類(燃えるごみ、プラスチック、生ごみ、それら混合物など)、比重、水分量から、コンピュータを用いて算出される。ごみの種類は、例えば、クレーンに設置された撮像部で撮像した画像をコンピュータで画像処理し、予めメモリに記憶されているごみ種を判定するためのサンプル画像と比較することで決定される。比重は、例えば、クレーンでごみを掴める体積および掴んだごみの重さを重量計で測定して得られる。水分量は、例えば、非接触型水分計により測定し得られる。また、ごみ質を求める手段は、クレーンでごみを掴んだ際に求めることに限らず、例えば、特許第5361595号にあるように、ごみを収集車両からごみピットの受入エリアにごみを投入する際の画像を用いてもよい。
【0034】
混合エリア13では、低質エリア部121、基準エリア部122または高質エリア部123にあるごみがクレーンで搬送され、所望のごみ発熱量(性状)の範囲になるように、当該ごみが混合されるエリアである。混合方法は、クレーンでごみを広げて載置し、その上にごみを広げて積層していき、積層された多層のごみを作成する。この方法によりごみ質が平均化されたものとなる。
【0035】
(実施形態2)
本発明に係る実施形態2のクレーン操作方法について説明する。
図3はピット1の利用形態の平面図である。ピット1は、ごみ(焼却物)を受け入れる受入エリア(第1エリア)11と、受入エリア11に隣接して配置される混合エリア(第3エリア)16を有する。
【0036】
混合エリア16では、低質エリア部161および高質エリア部162を有する。受入エリア11にあるごみがクレーンで搬送され、低質または高質のごみ発熱量(性状)の範囲になるように、低質エリア部161または高質エリア部162に、クレーンでごみを平らに載置し、その上にごみを平らに積層していく。この積層された多層のごみによって、ごみ質が平均化されたものとなる。
【0037】
(クレーンの稼働率の実験例)
本発明は、ピット内のごみをすべて均一にせず、必要なごみ質に応じてごみの混合を行うため、クレーンの運転時間を大幅に削減でき、消費電力を低減できる。以下にクレーンによるごみの混合について示す。従来の方法と比較するため、
図4の混合攪拌エリアで均一になるようにごみを攪拌する場合と、実施形態1において
図2の混合エリア13において均一になるようにごみを攪拌する場合を想定する。
【0038】
従来、ごみピットに受入れられるごみは性状が幅広く、低位発熱量を指標として低質ごみ〜高質ごみ(中央が標準ごみ)に幅広く分布し、低質ごみ〜高質ごみまでの出現頻度が90%の正規分布に従って出現するとされている。安定・安全にごみを焼却処理するため、ごみの性状をごみピットでごみクレーンを用いて十分に攪拌し、均一な性状に攪拌・混合してから焼却炉に投入する。
【0039】
以下にクレーンによりごみの混合について従来方法(
図4)を簡素化して示す。ごみ質を低質ごみ(5000kJ/kg)、基準ごみ(8000kJ/kg)、高質ごみ(11000kJ/kg)とし、低質ごみ〜高質ごみ間における出現頻度が90%の正規分布の出現頻度になるとする。そこで、ごみ質を500kJ/Kgごとに代表ごみ質を定め、各々の代表ごみ質を下記表1のように、13種類の代表ごみ質がそれぞれの頻度で出現すると仮定する。
【0041】
ここで、クレーンによるごみの混合を以下のように表現する。3種類のそれぞれ均一なごみ質と仮定したごみをそれぞれクレーンで1回づつ掴み、混合エリア13に広げて移動させ、3層のごみ層をもつ混合ごみを作成する。実際には3層のごみになるが、これをクレーンで掴んで焼却炉へ投入することを想定し、均一に混ざったものになる(ごみ質が平均化された)と仮定する。13種類のごみ質から3つのごみを選択(例えば、5000、7000、9500kJ/kgとする)して混合すると、混合後のごみ質は、(5000+7000+9500)÷3=7167kJ/kgとなり、本混合が起こる確率はそれぞれの代表ごみ質の出現頻度が表1の分布に従うとして、0.6581×0.09390×0.07791=4.814×10
−4となる。同様に、13種類のごみを総当たりで選択して混合し、混合後のごみ質が6750≦Hu<7250kJ/kgとなる確率は、1.238×10
−1となる。この数値を1回混合後の代表ごみ質7000kJ/kgの出現頻度を仮定する。1回混合後のそれぞれの代表ごみ質の出現頻度を表2の「出現頻度(1回混合後)」の列に示す。さらに、1回混合後のごみを3つ選択し、混合させるとそれぞれの代表ごみ質の出現頻度は表2の「出現頻度(2回混合)」の列に示す。混合を行うことで(混合回数を増やすことで)出現頻度の分布が中央に近づく(分布が小さくなる)ことが表2に示される。
【0043】
上記表2より、混合を進めるにつれ平均的なごみ質(基準ごみ質)である8000kg/kJ(7750kJ/kg以上8250kJ/kg未満)の出現頻度が、混合前で0.10903、1回混合後で1.979×10
-1、2回混合後で3.411×10
-1と大きくなり、混合により基準ごみ質へと、ごみ質が均一化されていくことが分かる。しかしながら、従来法では、2回混合で8000kJ/kgの出現頻度が34%程度にしかならず、ピット内すべてのごみを均一化するためにはさらに混合・攪拌をクレーンで行う必要がある。
【0044】
これに対し、実施形態1では、クレーンでごみを掴む際にごみ質を求めることができるため、受入れエリアから貯留エリアへごみを移動させる際に、ごみ質に応じた貯留エリア例えば、低質エリア部(Hu<7250kJ/kg)、基準エリア部(7250kJ/kg≦Hu<8750kJ/kg)、高質エリア部(8750kJ/kg≦Hu)の3つへごみを移動する。すなわち、低質エリア部には代表ごみ質5000、5500、6000、6500、7000kJ/kgの5つから3つのごみを選択して混合後貯留されるものとする。例えば、5000、5000、5500の3つのごみを選択し混合すると、平均ごみ質は(5000+5000+5500)÷3=5167kJ/kgとなり、その出現頻度は0.06581×0.06581×0.04286=1.856×10
−4となる。これが、1回混合後の代表ごみ質5000kJ/kg(Hu<5250kJ/kg)の出現頻度に含まれるとする。同様に、5000、5500、6000、6500、7000kJ/kgの5種類の代表ごみ質から総当たりで3つのごみを選択し、混合することで1回混合後の低質エリア部の出現頻度が求められる。同様に、1回混合後の基準エリア部の出現頻度は、代表ごみ質が7500、8000、8500kJ/kgの3種類のごみの総当たりから、1回混合後の高質エリア部の出現は、代表ごみ質9000、9500、10000、10500、11000kJ/kgの5種類のごみの総当たりからそれぞれ混合することで求めることができる。以上の操作を1回目の混合とし、1回混合後の各代表ごみ質の出現頻度を表3の「出現頻度(1回混合後)」に示す。次に、2回目の混合は、低質、基準、高質の各エリア部から1種類ずつごみを選択して混合し、これを2回目の混合とする。2回目の混合による、各代表ごみ質の出現頻度を表3の「出現頻度(2回混合後)」の列に示す。2回目の混合で、最もごみ質が低くなるごみ質の選択方法は、低質、基準、高質の各エリアよりそれぞれ5000、7000、9000kJ/kgを選択するため、この時の平均ごみ質(5000+7000+9000)÷3=7000kJ/kg、となるためそれ未満のごみ質(代表ごみ質5000、5500、6000、6500kJ/kg)の出現頻度は0になる。同様に、9500、10000、10500、11000kJ/kgの代表ごみ質の出現頻度も0になる。
【0046】
2回の混合で8000kg/kJ(7750kJ/kg≦Hu<8250kJ/kg未満)のごみ質の出現頻度が7.265×10
−1となり、従来の3.411×10
−1と比較して効率よくごみを均質にできることがわかる。以上より、本発明により、少ないクレーン操作回数で効率よくごみを均質化させ、ごみクレーンの稼働率を削減でき、その稼働に伴う消費電力を削減できることがわかる。
【符号の説明】
【0047】
1 ピット
11 受入エリア
12 貯留エリア
13 混合エリア
16 混合エリア
121 低質エリア部
122 基準エリア部
123 高質エリア部