(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0016】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造について>
本実施の形態の半導体装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
図2は、
図1の半導体装置の一部を拡大して示した部分拡大断面図である。
【0017】
本実施の形態の半導体装置は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子、フラッシュメモリ、不揮発性半導体記憶装置)を備えた半導体装置である。
図1には、不揮発性メモリを構成するメモリ素子(記憶素子)MCが形成された領域であるメモリ素子形成領域の要部断面図が示されている。なお、
図1は、メモリ素子MCを構成するゲート電極MGの延在方向(
図1の紙面に垂直な方向)に垂直な断面が示されている。また、
図2には、
図1のうち、半導体基板SBとゲート電極MGとそれらの間の絶縁膜MZ,OX1とが拡大して示されている。
【0018】
メモリ素子MCは、電荷蓄積部にトラップ性絶縁膜(電荷を蓄積可能な絶縁膜)を用いたものである。また、メモリ素子MCは、nチャネル型のトランジスタ(すなわちnチャネル型のMISFET)であるとして説明するが、導電型を反対にして、pチャネル型のトランジスタ(すなわちpチャネル型のMISFET)とすることもできる。
【0019】
図1に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)SBには、素子を分離するための素子分離領域(図示せず)が形成されており、この素子分離領域で分離(規定)された活性領域に、p型ウエルPWが形成されている。p型ウエルは、p型不純物が導入されたp型の半導体領域である。p型ウエルPWは、主としてメモリ素子形成領域の半導体基板SBに形成されている。メモリ素子形成領域のp型ウエルPWには、
図1に示されるようなメモリ素子MCが形成されている。
【0020】
以下、メモリ素子形成領域に形成されたメモリ素子MCの構成を具体的に説明する。
【0021】
図1に示されるように、メモリ素子MCは、半導体基板SB上(すなわちp型ウエルPW上)に形成された絶縁膜MZと、絶縁膜MZ上に形成されたゲート電極MGと、ゲート電極MGの側壁上に形成されたサイドウォールスペーサSWと、半導体基板SBのp型ウエルPW中に形成されたソースまたはドレイン用のn型の半導体領域(EX,SD)とを有している。すなわち、p型ウエルPWの表面上には、電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜として機能する絶縁膜MZを介して、ゲート電極MGが形成されている。
【0022】
絶縁膜MZは、半導体基板SB(p型ウエルPW)とゲート電極MGとの間に介在しており、ゲート絶縁膜として機能する膜であるが、内部に電荷蓄積部を有する絶縁膜である。この絶縁膜MZは、複数の絶縁膜を積層した積層絶縁膜である。具体的には、絶縁膜MZは、酸化アルミニウム膜AOX1(第1絶縁膜、ボトム絶縁膜)と、酸化アルミニウム膜AOX1上に形成されたハフニウムシリケート膜HSO(第2絶縁膜)と、ハフニウムシリケート膜HSO上に形成された酸化アルミニウム膜AOX2(第3絶縁膜、トップ絶縁膜)との積層膜からなる。酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2とは、いずれも絶縁膜である。
【0023】
酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる絶縁膜MZにおいて、酸化アルミニウム膜AOX1は、ボトム絶縁膜とみなすことができ、酸化アルミニウム膜AOX2は、トップ絶縁膜とみなすことができる。このため、絶縁膜MZは、ボトム絶縁膜である酸化アルミニウム膜AOX1とトップ絶縁膜である酸化アルミニウム膜AOX2との間に、ハフニウムシリケート膜HSOが介在した構造を有している。
【0024】
絶縁膜MZは、半導体基板SB(p型ウエルPW)の表面(シリコン面)上に直接的に形成する(すなわち界面層OX1を省略する)こともできる。しかしながら、絶縁膜MZと半導体基板SB(p型ウエルPW)との間の界面、すなわち、酸化アルミニウム膜AOX1と半導体基板SB(p型ウエルPW)との間の界面に、薄い酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる絶縁性の界面層(絶縁層、絶縁膜)OX1を設ければ、より好ましい。すなわち、絶縁膜MZと半導体基板SB(p型ウエルPW)との間に、薄い酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる界面層OX1が介在していれば、より好ましい。酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる界面層OX1を設けることで、ゲート絶縁膜と半導体基板(のシリコン面)との界面をSiO
2/SiまたはSiON/Si構造にし、この界面におけるトラップ準位などの欠陥数を減らして、駆動能力や信頼性を向上させることができる。
【0025】
なお、図面を見やすくするために、
図1では、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図2の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる。
【0026】
絶縁膜MZのうち、ハフニウムシリケート膜HSOは、電荷蓄積機能を有する絶縁膜である。すなわち、絶縁膜MZのうち、ハフニウムシリケート膜HSOは、電荷を蓄積するための絶縁膜であり、電荷蓄積層(電荷蓄積部)として機能する。つまり、ハフニウムシリケート膜HSOは、絶縁膜MZ中に形成されたトラップ性絶縁膜である。このように、本実施の形態においては、トラップ準位を有する絶縁膜(電荷蓄積層)として、ハフニウムシリケート膜HSOを採用している。このため、絶縁膜MZは、その内部に電荷蓄積部(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を有する絶縁膜とみなすことができる。
【0027】
絶縁膜MZのうち、ハフニウムシリケート膜HSOの上下に位置する酸化アルミニウム膜AOX2と酸化アルミニウム膜AOX1は、電荷ブロック層または電荷閉じ込め層として機能することができる。ゲート電極MGと半導体基板SB(p型ウエルPW)との間の絶縁膜MZにおいて、ハフニウムシリケート膜HSOを酸化アルミニウム膜AOX2と酸化アルミニウム膜AOX1とで挟んだ構造とすることで、ハフニウムシリケート膜HSOへの電荷の蓄積が可能となる。
【0028】
メモリ素子形成領域に形成された絶縁膜MZは、メモリ素子MCのゲート絶縁膜として機能し、電荷保持(電荷蓄積)機能を有している。従って、絶縁膜MZは、メモリトランジスタの電荷保持機能を有するゲート絶縁膜として機能できるように、少なくとも3層の積層構造を有し、電荷ブロック層として機能する外側の層(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1,AOX2)のポテンシャル障壁高さに比べ、電荷蓄積部として機能する内側の層(ここではハフニウムシリケート膜HSO)のポテンシャル障壁高さが低くなる。これは、本実施の形態のように、絶縁膜MZを、酸化アルミニウム膜AOX1と、酸化アルミニウム膜AOX1上のハフニウムシリケート膜HSOと、ハフニウムシリケート膜HSO上の酸化アルミニウム膜AOX2とを有する積層膜とすることで達成できる。
【0029】
絶縁膜MZは、電荷蓄積層(ここではハフニウムシリケート膜HSO)をトップ絶縁膜とボトム絶縁膜とで挟んだ積層構造を有しており、ここでは、トップ絶縁膜として酸化アルミニウム膜AOX2を用い、ボトム絶縁膜として、酸化アルミニウム膜AOX1を用いている。酸化アルミニウム膜AOX2の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのトップ絶縁膜として用いることもできる。また、酸化アルミニウム膜AOX1の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのボトム絶縁膜として用いることもできる。
【0030】
絶縁膜MZのトップ絶縁膜とボトム絶縁膜のそれぞれのバンドギャップは、トップ絶縁膜とボトム絶縁膜との間の電荷蓄積層(ここではハフニウムシリケート膜HSO)のバンドギャップよりも大きい必要がある。そうすることで、トップ絶縁膜とボトム絶縁膜とが、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能することができる。酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、およびハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)は、ハフニウムシリケート膜のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有しているため、絶縁膜MZのトップ絶縁膜またはボトム絶縁膜として採用することができる。
【0031】
但し、絶縁膜MZのボトム絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX1が最も好ましく、絶縁膜MZのトップ絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX2が最も好ましい。絶縁膜MZのボトム絶縁膜およびトップ絶縁膜として酸化アルミニウム膜AOX1および酸化アルミニウム膜AOX2を用いれば、ボトム絶縁膜およびトップ絶縁膜が電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として、より的確に機能できるとともに、ボトム絶縁膜およびトップ絶縁膜の誘電率を、より的確に高くすることができる。
【0032】
酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2とは、それぞれ酸化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高い絶縁材料膜、いわゆるHigh−k膜(高誘電率膜、高誘電率絶縁膜)である。なお、本願において、High−k膜、高誘電率膜、高誘電率絶縁膜、あるいは高誘電率ゲート絶縁膜と言うときは、酸化シリコン(SiO
x、代表的にはSiO
2)よりも誘電率(比誘電率)が高い膜を意味する。
【0033】
また、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2は、いずれも高誘電率絶縁膜であり、酸化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高いが、窒化シリコンと比べても、誘電率(比誘電率)が高い。すなわち、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2は、それぞれ、窒化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高い。
【0034】
ハフニウムシリケート膜HSOは、Hf(ハフニウム)とSi(シリコン、ケイ素)とO(酸素)とを主成分として含有する絶縁材料からなる。すなわち、ハフニウムシリケート膜HSOは、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とで構成された絶縁材料膜であり、HfSiO膜と表記することもできる。
【0035】
そして、ハフニウムシリケート膜HSOの組成は、次のようになっている。ハフニウムシリケート膜HSOにおいて、Hf(ハフニウム)とSi(シリコン)の合計の原子数に占めるHf(ハフニウム)の原子数の割合が、77〜91原子%の範囲内にある。すなわち、ハフニウムシリケート膜HSOにおいて、Hf(ハフニウム)の原子数を、Hf(ハフニウム)の原子数とSi(シリコン)の原子数との和で割った値が、0.77〜0.91の範囲内にある。つまり、ハフニウムシリケート膜HSOにおいて、Hf(ハフニウム)の原子数をN
Hfとし、Si(シリコン)の原子数をN
Siとしたときに、0.77≦N
Hf/(N
Hf+N
Si)≦0.91が成り立つ。別の言い方をすれば、ハフニウムシリケート膜HSOの組成(組成比)をHf
xSi
yO
zと表記したときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。つまり、ハフニウムシリケート膜HSOにおけるHf(ハフニウム)とSi(シリコン)とO(酸素)の原子比(原子数の比)をx:y:zとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。従って、ハフニウムシリケート膜HSOにおけるHf(ハフニウム)とSi(シリコン)との原子比をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。なお、xとyとzは、整数であっても、整数でなくてもよい。ハフニウムシリケート膜HSOの組成を、このような範囲に設定したのは、トラップ性絶縁膜を高誘電率絶縁膜にするとともに、トラップ電荷密度を高めるためであり、それについては後でより詳細に説明する。
【0036】
このような絶縁膜MZについて、まとめると次のようになる。
【0037】
本実施の形態では、半導体基板SBとゲート電極MGとの間に、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜MZが介在しており、この絶縁膜MZは、積層絶縁膜であり、第1絶縁膜(ボトム絶縁膜)と、その第1絶縁膜上の第2絶縁膜と、その第2絶縁膜上の第3絶縁膜(トップ絶縁膜)とを有している。酸化アルミニウム膜AOX1が第1絶縁膜に対応し、ハフニウムシリケート膜HSOが第2絶縁膜に対応し、酸化アルミニウム膜AOX2が第3絶縁膜に対応している。中間層である第2絶縁膜は高誘電率絶縁膜であるが、第1絶縁膜と第3絶縁膜も高誘電率絶縁膜であれば、より好ましい。中間層である第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)は、電荷蓄積機能を有する絶縁膜であり、いわゆるトラップ性絶縁膜である。ここで、トラップ性絶縁膜とは、電荷の蓄積が可能な絶縁膜を指す。トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜は、本実施の形態では、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とを構成元素として含有しており、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)の原子比(原子数の比)をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つことが好ましい。なお、xとyは、整数であっても、整数でなくてもよい。
【0038】
トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜の上下に位置する第3絶縁膜と第1絶縁膜とは、トラップ性絶縁膜に電荷を閉じ込めるための電荷ブロック層または電荷閉じ込め層として機能することができる。このため、第1絶縁膜と第3絶縁膜のそれぞれのバンドギャップは、トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜のバンドギャップよりも大きいことが望ましい。ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とを構成元素として含有する第2絶縁膜よりもバンドギャップを大きくすることを考慮すると、第1絶縁膜と第3絶縁膜とは、酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜、酸窒化アルミニウム膜、アルミニウムシリケート膜またはハフニウムアルミネート膜などを用いることができる。このうち、酸化アルミニウム膜が、第1絶縁膜および第3絶縁膜として最も好ましい。すなわち、第1絶縁膜として酸化アルミニウム膜AOX1は好適であり、第3絶縁膜として酸化アルミニウム膜AOX2は好適である。また、トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜は、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とを構成元素として含有しているが、ハフニウムシリケート膜(すなわちHfSiO膜)であれば、更に好適である。このため、第2絶縁膜として、ハフニウムシリケート膜HSOは好適である。
【0039】
ゲート電極MGは、導電膜からなるが、ここではシリコン膜により形成されており、このシリコン膜は、好ましくはポリシリコン(多結晶シリコン)膜である。ゲート電極MGを構成するシリコン膜は、好ましくは、n型不純物が導入されたドープトポリシリコン膜とすることができる。
【0040】
他の形態として、ゲート電極MGを、メタルゲート電極とすることもできる。その場合、ゲート電極MGは、金属膜により構成される。ゲート電極MGを構成する金属膜としては、例えば、窒化チタン(TiN)膜、窒化タンタル(TaN)膜、窒化タングステン(WN)膜、炭化チタン(TiC)膜、炭化タンタル(TaC)膜、炭化タングステン(WC)膜、窒化炭化タンタル(TaCN)膜、チタン(Ti)膜、タンタル(Ta)膜、チタンアルミニウム(TiAl)膜またはアルミニウム(Al)膜などを用いることができる。なお、ゲート電極MGを構成する金属膜は、金属伝導を示す導電膜であり、単体の金属膜(純金属膜)や合金膜に限定されず、金属伝導を示す金属化合物膜(窒化金属膜や炭化金属膜など)であってもよい。また、ゲート電極MGをメタルゲート電極とする場合、積層膜によりゲート電極MGを形成することもできるが、その積層膜の最下層は金属膜(金属伝導を示す導電膜)とする。また、その積層膜は、複数の金属膜(金属伝導を示す導電膜)の積層膜とすることもでき、あるいは、金属膜(金属伝導を示す導電膜)とその金属膜上のシリコン膜(多結晶シリコン膜)との積層膜とすることもできる。すなわち、ゲート電極MGを、金属膜(金属伝導を示す導電膜)とその金属膜上のシリコン膜(多結晶シリコン膜)との積層膜により形成することもできる。
【0041】
ゲート電極MGをメタルゲート電極とした場合には、ゲート電極MGの空乏化現象を抑制し、寄生容量をなくすことができるという利点を得られる。また、メモリ素子MCの小型化(ゲート絶縁膜の薄膜化)も可能になるという利点も得られる。
【0042】
ゲート電極MGの側壁上には、側壁絶縁膜としてサイドウォールスペーサ(側壁絶縁膜、サイドウォール)SWが形成されている。サイドウォールスペーサSWは、絶縁膜により形成されており、例えば、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜、あるいはそれらの積層膜により形成されている。
【0043】
メモリ素子形成領域のp型ウエルPWには、メモリ素子MC用のLDD(Lightly doped Drain)構造のソース・ドレイン領域(ソースまたはドレイン用の半導体領域)として、n
−型半導体領域(エクステンション領域、LDD領域)EXとそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域(ソース・ドレイン領域)SDとが形成されている。n
+型半導体領域SDは、n
−型半導体領域EXよりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深い。
【0044】
n
−型半導体領域EXはゲート電極MGに自己整合的に形成され、n
+型半導体領域SDはゲート電極MGの側壁上に設けられたサイドウォールスペーサSWに自己整合的に形成されている。このため、低濃度のn
−型半導体領域EXはゲート電極MGの側壁上のサイドウォールスペーサSWの下に形成され、高濃度のn
+型半導体領域SDは低濃度のn
−型半導体領域EXの外側に形成されている。すなわち、n
−型半導体領域EXは、ゲート電極MGの側壁上に形成されたサイドウォールスペーサSWの下に位置して、チャネル形成領域とn
+型半導体領域SDとの間に介在している。
【0045】
半導体基板SB(p型ウエルPW)における、ゲート電極MGの下の領域が、チャネルが形成される領域、すなわちチャネル形成領域となる。ゲート電極MG下の絶縁膜MZの下のチャネル形成領域には、しきい値電圧調整用の半導体領域(p型半導体領域またはn型半導体領域)が必要に応じて形成されている。
【0046】
メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW)において、チャネル形成領域を挟んで互いに離間する領域に、n
−型半導体領域EXが形成され、n
−型半導体領域EXの外側(チャネル形成領域から離れる側)に、n
+型半導体領域SDが形成されている。つまり、n
−型半導体領域EXは、チャネル形成領域に隣接しており、n
+型半導体領域SDは、チャネル形成領域からn
−型半導体領域EXの分だけ離間し(チャネル長方向に離間し)、かつn
−型半導体領域EXに接する位置に形成されている。
【0047】
n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MGの表面(上面)上には、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術を用いて、金属シリサイド層SLが形成されていれば、より好ましい。金属シリサイド層SLは、コバルトシリサイド層、ニッケルシリサイド層または白金添加ニッケルシリサイド層などとすることができる。
【0048】
他の形態として、ゲート電極MGをメタルゲート電極とした場合には、ゲート電極MG上に金属シリサイド層SLを形成できる場合と形成できない場合とがある。例えば、ゲート電極MGを金属膜(金属伝導を示す導電膜)とその金属膜上のシリコン膜(多結晶シリコン膜)との積層膜とした場合には、そのシリコン膜上にサリサイド技術を用いて金属シリサイド層SLを形成することができる。一方、ゲート電極MG全体を金属膜(金属伝導を示す導電膜)の単層膜または積層膜により形成した場合は、ゲート電極MG上には金属シリサイド層SLはサリサイド技術を用いても形成されない。
【0049】
次に、メモリ素子MCよりも上層の構造について説明する。
【0050】
半導体基板SB上には、ゲート電極MGおよびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL1が形成されている。絶縁膜IL1は、酸化シリコン膜の単体膜、あるいは、窒化シリコン膜と該窒化シリコン膜上に該窒化シリコン膜よりも厚く形成された酸化シリコン膜との積層膜などからなる。絶縁膜IL1の上面は平坦化されている。
【0051】
絶縁膜IL1にはコンタクトホール(開口部、貫通孔)CTが形成されており、コンタクトホールCT内に、導電体部(接続用導体部)として導電性のプラグPGが埋め込まれている。
【0052】
プラグPGは、コンタクトホールCTの底部および側壁(側面)上に形成された薄いバリア導体膜と、このバリア導体膜上にコンタクトホールCTを埋め込むように形成された主導体膜とで形成されているが、図面の簡略化のために、
図1では、プラグPGを構成するバリア導体膜と主導体膜(タングステン膜)とを一体化して示してある。なお、プラグPGを構成するバリア導体膜は、例えば、チタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜とすることができ、プラグPGを構成する主導体膜は、タングステン膜とすることができる。
【0053】
コンタクトホールCTおよびそれに埋め込まれたプラグPGは、n
+型半導体領域SDの上部や、ゲート電極MGの上部などに形成される。コンタクトホールCTの底部では、半導体基板SBの主面の一部、例えばn
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部や、ゲート電極MG(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部などが露出される。そして、その露出部(コンタクトホールCTの底部の露出部)にプラグPGが接続される。なお、
図1においては、n
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部が、コンタクトホールCTの底部で露出して、そのコンタクトホールCTを埋めるプラグPGと電気的に接続された断面が示されている。
【0054】
プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上には配線(配線層)M1が形成されている。配線M1は、例えばダマシン配線(埋込配線)であり、絶縁膜IL1上に形成された絶縁膜IL2に設けられた配線溝に埋め込まれている。配線M1は、プラグPGを介して、n
+型半導体領域SDまたはゲート電極MGなどと電気的に接続される。なお、
図1においては、配線M1の例として、n
+型半導体領域SDにプラグPGを介して電気的に接続された配線M1が示されている。更に上層の配線および絶縁膜も形成されているが、ここではその図示および説明は省略する。また、配線M1およびそれよりも上層の配線は、ダマシン配線(埋込配線)に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。
【0055】
メモリ素子MCは、内部に電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)を備えた電界効果トランジスタである。メモリ素子MCは、絶縁膜MZ中の電荷蓄積層(電荷蓄積部)であるハフニウムシリケート膜HSOに電荷を蓄積または保持することにより、情報の記憶が可能である。
【0056】
例えば、メモリ素子MCの書き込み動作時には、絶縁膜MZ中のハフニウムシリケート膜HSOに電子を注入することによりメモリ素子MCを書き込み状態とする。また、メモリ素子MCの消去動作時には、絶縁膜MZ中のハフニウムシリケート膜HSOから電子を引き抜くか、あるいは絶縁膜MZ中のハフニウムシリケート膜HSOにホール(正孔)を注入することにより、メモリ素子MCを消去状態とする。メモリ素子MCの読み出し動作時には、メモリ素子MCのしきい値電圧が書き込み状態と消去状態とで異なることを利用して、メモリ素子MCが書き込み状態と消去状態のいずれの状態であるかを判別することができる。
【0057】
<半導体装置の製造工程について>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0058】
図3および
図4は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図5〜
図16は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、上記
図1に相当する領域の断面図が示されている。
【0059】
半導体装置を製造するには、
図5に示されるように、まず、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)SBを用意(準備)する(
図3のステップS1)。それから、半導体基板SBの主面に、活性領域を規定(画定)する素子分離領域(図示せず)を形成する。この素子分離領域は、酸化シリコンなどの絶縁膜からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法などを用いて形成することができる。例えば、半導体基板SBの主面に素子分離用の溝を形成した後、この素子分離用の溝内に、例えば酸化シリコンなどからなる絶縁膜を埋め込むことで、素子分離領域を形成することができる。
【0060】
次に、
図6に示されるように、メモリ素子形成領域の半導体基板SBにp型ウエルPWを形成する(
図3のステップS2)。
【0061】
p型ウエルPWは、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を半導体基板SBにイオン注入することなどによって形成することができる。p型ウエルPWは、半導体基板SBの主面から所定の深さにわたって形成される。
【0062】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板SBの表面の自然酸化膜を除去することによって、半導体基板SBの表面を洗浄して清浄化する。これにより、半導体基板SB(p型ウエルPW)の表面(シリコン面)が露出される。
【0063】
次に、半導体基板SBの表面上に、すなわちp型ウエルPWの表面上に、絶縁層として、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる界面層(絶縁層、絶縁膜)OX1を形成する(
図3のステップS3)。
【0064】
界面層OX1の膜厚は薄く、好ましくは0.5〜2nm、例えば1nm程度とすることができる。界面層OX1が酸化シリコン膜の場合は、例えば熱酸化法などを用いて界面層OX1を形成することができる。また、界面層OX1を酸窒化シリコン膜とする場合は、例えば、N
2OとO
2とH
2とを用いた高温短時間酸化法、あるいは、酸化シリコン膜を形成した後にプラズマ中で窒化処理(プラズマ窒化)を行う手法などにより、界面層OX1を形成することができる。
【0065】
ステップS3で界面層OX1を形成してから、この界面層OX1上に絶縁膜MZを形成することで、ゲート絶縁膜と半導体基板(のシリコン面)との界面をSiO
2/SiまたはSiON/Si構造にし、この界面におけるトラップ準位などの欠陥数を減らして、駆動能力や信頼性を向上させることができる。
【0066】
次に、
図7に示されるように、半導体基板SBの主面上に、すなわち界面層OX1上に、絶縁膜MZを形成する(
図3のステップS4)。絶縁膜MZは、メモリ素子MCのゲート絶縁膜用の絶縁膜であり、内部に電荷蓄積部を有する絶縁膜である。
【0067】
なお、図面を見やすくするために、
図7では、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2とからなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図7において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、酸化アルミニウム膜AOX1と、酸化アルミニウム膜AOX1上のハフニウムシリケート膜HSOと、ハフニウムシリケート膜HSO上の酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる。
【0068】
このため、ステップS4の絶縁膜MZ形成工程は、酸化アルミニウム膜AOX1形成工程と、ハフニウムシリケート膜HSO形成工程と、酸化アルミニウム膜AOX2形成工程とを含んでいる。ステップS4では、酸化アルミニウム膜AOX1形成工程の後にハフニウムシリケート膜HSO形成工程が行われ、更にその後に酸化アルミニウム膜AOX2形成工程が行われる。ステップS4は、具体的には、次のようにして行うことができる。
【0069】
すなわち、ステップS4では、まず、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち界面層OX1上に、第1絶縁膜として酸化アルミニウム膜AOX1を形成する。酸化アルミニウム膜AOX1は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法またはCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法などを用いて形成することができる。酸化アルミニウム膜AOX1の膜厚は、好ましくは1〜6nm、例えば4nm程度とすることができる。酸化アルミニウム膜AOX1は、代表的にはAl
2O
3膜であるが、Al(アルミニウム)とO(酸素)の原子比は、2:3以外の場合もあり得る。
【0070】
それから、ステップS4では、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち酸化アルミニウム膜AOX1上に、第2絶縁膜としてハフニウムシリケート膜HSOを形成する。ハフニウムシリケート膜HSOは、例えば、ALD法またはCVD法などを用いて形成することができる。ハフニウムシリケート膜HSOの膜厚は、好ましくは2〜15nm、例えば10nm程度とすることができる。
【0071】
ハフニウムシリケート膜HSO膜は、ハフニウム(Hf)とシリコン(ケイ素、Si)と酸素(O)とで構成された絶縁材料膜(すなわちHfSiO膜)である。また、ハフニウムシリケート膜HSO膜は、HfSiO膜と表記することもできるが、HfとSiとOの原子比は1:1:1ではなく、ハフニウムシリケート膜HSOにおけるHf(ハフニウム)とSi(シリコン)の原子比をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。
【0072】
それから、ステップS4では、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわちハフニウムシリケート膜HSO上に、第3絶縁膜として酸化アルミニウム膜AOX2を形成する。酸化アルミニウム膜AOX2は、例えば、ALD法またはCVD法などを用いて形成することができる。酸化アルミニウム膜AOX2の膜厚は、好ましくは4〜12nm、例えば8nm程度とすることができる。酸化アルミニウム膜AOX2は、代表的にはAl
2O
3膜であるが、Al(アルミニウム)とO(酸素)の原子比は、2:3以外の場合もあり得る。
【0073】
このようにしてステップS4が行われ、メモリ素子形成領域において、半導体基板SB(p型ウエルPW)上に、界面層OX1、酸化アルミニウム膜AOX1、ハフニウムシリケート膜HSOおよび酸化アルミニウム膜AOX2が下から順に積層された状態となる。酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2とは、いずれも高誘電率絶縁膜であり、酸化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高く、また、窒化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高い。
【0074】
ハフニウムシリケート膜HSOの組成は、次のようになっている。すなわち、ハフニウムシリケート膜HSOにおいて、Hf(ハフニウム)とSi(シリコン)の合計の原子数に占めるHf(ハフニウム)の原子数の割合が、77〜91原子%の範囲内にある。つまり、ハフニウムシリケート膜HSOにおいて、Hf(ハフニウム)の原子数をN
Hfとし、Si(シリコン)の原子数をN
Siとしたときに、0.77≦N
Hf/(N
Hf+N
Si)≦0.91が成り立つ。別の言い方をすれば、ハフニウムシリケート膜HSOの組成(組成比)をHf
xSi
yO
zと表記したときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。つまり、ハフニウムシリケート膜HSOにおけるHf(ハフニウム)とSi(シリコン)とO(酸素)の原子比をx:y:zとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。従って、ハフニウムシリケート膜HSOにおけるHf(ハフニウム)とSi(シリコン)の原子比をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。なお、xとyとzは、整数であっても、整数でなくてもよい。
【0075】
ハフニウムシリケート膜HSOの組成は、ハフニウムシリケート膜HSOを形成する際のガスの種類や流量などを調整することなどにより、制御することができる。
【0076】
なお、上述のように、ステップS4で、酸化アルミニウム膜AOX1の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのボトム絶縁膜として形成することも可能である。また、酸化アルミニウム膜AOX2の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのトップ絶縁膜として形成することも可能である。
【0077】
次に、熱処理(アニール処理)を行う(
図3のステップS5)。このステップS5の熱処理は、絶縁膜MZを構成する各膜(酸化アルミニウム膜AOX1、ハフニウムシリケート膜HSO、酸化アルミニウム膜AOX2)の結晶化、特にハフニウムシリケート膜HSOの結晶化のために行われる。すなわち、ステップS5は、結晶化のための熱処理であり、結晶化アニール処理とみなすこともできる。ステップS5の熱処理により、ハフニウムシリケート膜HSOを結晶化することができる。
【0078】
ステップS5の熱処理の熱処理温度は、好ましくは800〜1050℃の範囲内、例えば950℃程度とすることができ、熱処理時間は、例えば5秒程度とすることができる。
【0079】
また、ステップS5では、半導体基板SBに対して熱処理を行うが、熱処理装置としては、例えばランプアニール装置などを用いることができる。
【0080】
他の形態として、ステップS5の熱処理(結晶化のための熱処理)を、他の工程段階、例えば、後述のシリコン膜PS形成直後(すなわち後述のシリコン膜PS形成後でシリコン膜PSのパターニング工程前)に行うこともでき、また、後述のソース・ドレイン領域形成後の活性化アニールに兼ねさせることもできる。
【0081】
但し、ステップS5の熱処理(結晶化のための熱処理)は、酸化アルミニウム膜AOX2形成直後(すなわち酸化アルミニウム膜AOX2形成後で後述のシリコン膜PS形成前)に行うか、あるいは、ハフニウムシリケート膜HSO形成直後(すなわちハフニウムシリケート膜HSO形成後で酸化アルミニウム膜AOX2形成前)に行えば、より好ましい。そうすることにより、ハフニウムシリケート膜HSOのトラップ電荷密度の増大効果を、より大きくすることができる。
【0082】
なお、ステップS5の熱処理は、絶縁膜MZを構成する各膜の結晶化、特にハフニウムシリケート膜HSOの結晶化のために行うため、少なくとも、ハフニウムシリケート膜HSOを形成した後に行う必要がある。
【0083】
次に、
図8に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち絶縁膜MZ上に、ゲート電極MG形成用の導電膜として、シリコン膜PSを形成する(
図3のステップS6)。
【0084】
シリコン膜PSは、多結晶シリコン膜からなり、CVD法などを用いて形成することができる。シリコン膜PSの膜厚は、好ましくは30〜200nm、例えば100nm程度とすることができる。成膜時はシリコン膜PSをアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理でアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜とすることもできる。
【0085】
また、シリコン膜PSは、成膜時に不純物を導入するか、あるいは成膜後に不純物をイオン注入することなどにより、不純物が導入されて低抵抗の半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。メモリ素子形成領域におけるシリコン膜PSは、好ましくは、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物が導入されたn型のシリコン膜である。シリコン膜PSの成膜時にn型不純物を導入する場合には、シリコン膜PSの成膜用のガスにドーピングガス(n型不純物添加用のガス)を含ませることで、n型不純物が導入されたシリコン膜PSを成膜することができる。また、シリコン膜PSの成膜後にシリコン膜PSにイオン注入で不純物を導入する場合は、シリコン膜PS全体に対してイオン注入を行うか、あるいはイオン注入阻止マスクとしてのフォトレジスト層をシリコン膜PS上に形成してから、メモリ素子形成領域のシリコン膜PSに対してイオン注入を行うことができる。いずれにしても、メモリ素子形成領域のシリコン膜PSは、不純物が導入されて低抵抗の半導体膜とされている。
【0086】
次に、
図9に示されるように、シリコン膜PSをフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、ゲート電極MGを形成する(
図3のステップS7)。このステップS7のパターニング工程は、例えば次のようにして行うことができる。
【0087】
すなわち、まず、シリコン膜PS上にフォトレジストパターン(図示せず)をフォトリソグラフィ法を用いて形成する。このフォトレジストパターンは、メモリ素子形成領域におけるゲート電極MG形成予定領域に形成される。それから、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて、シリコン膜PSをエッチング(好ましくはドライエッチング)してパターニングする。その後、このフォトレジストパターンを除去し、
図9には、この状態が示されている。
【0088】
このようにして、ステップS7でシリコン膜PSがパターニングされ、
図9に示されるように、パターニングされたシリコン膜PSからなるゲート電極MGが形成される。つまり、メモリ素子形成領域では、ゲート電極MGとなる部分以外のシリコン膜PSがエッチングされて除去されることで、ゲート電極MGが形成される。ゲート電極MGは、絶縁膜MZ上に形成される。すなわち、パターニングされたシリコン膜PSからなるゲート電極MGが、p型ウエルPWの表面上に、絶縁膜MZ(界面層OX1および絶縁膜MZ)を介して形成される。
【0089】
また、他の形態として、ゲート電極MGをメタルゲート電極とする場合は、シリコン膜PSの代わりに、金属膜を用いるか、あるいは、金属膜とその金属膜上のシリコン膜との積層膜を用いるなど、すればよい。この場合、ゲート電極MGは、金属膜がパターニングされたものか、あるいは、金属膜とその金属膜上のシリコン膜との積層膜がパターニングされたものとなる。なお、ここで言う金属膜は、金属伝導を示す導電膜のことであり、単体の金属膜(純金属膜)や合金膜に限定されず、金属伝導を示す金属化合物膜(窒化金属膜や炭化金属膜など)であってもよい。
【0090】
次に、
図10に示されるように、絶縁膜MZのうち、ゲート電極MGで覆われずに露出する部分をエッチングによって除去する(
図3のステップS8)。このステップS8では、好ましくはウェットエッチングを用いることができる。エッチング液としては、例えばフッ酸溶液などを用いることができる。
【0091】
ステップS8では、ゲート電極MGの下に位置する絶縁膜MZは、除去されずに残存して、メモリ素子MCの高誘電率ゲート絶縁膜となる。すなわち、ゲート電極MGの下に残存する絶縁膜MZが、メモリ素子MCのゲート絶縁膜(電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜)となり、高誘電率ゲート絶縁膜として機能する。つまり、ステップS8で、ゲート電極MGの下に残存してゲート電極MGと半導体基板SB(p型ウエルPW)との間に介在する絶縁膜MZが、メモリ素子MCのゲート絶縁膜(電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜)となり、高誘電率ゲート絶縁膜として機能する。なお、界面層OX1を形成していた場合は、ゲート電極MGの下に残存する絶縁膜MZと半導体基板SB(p型ウエルPW)との間に界面層OX1が介在することになり、この界面層OX1と絶縁膜MZとの積層膜が、メモリ素子MCのゲート絶縁膜として機能することになる。
【0092】
また、ステップS7でシリコン膜PSをパターニングする際のドライエッチングによってゲート電極MGで覆われない部分の絶縁膜MZの一部がエッチングされる場合もあり得る。すなわち、ステップS7でシリコン膜PSをパターニングする際のドライエッチングと、ステップS8のエッチング(好ましくはウェットエッチング)とにより、ゲート電極MGで覆われない部分の絶縁膜MZが除去される場合もあり得る。
【0093】
なお、図面を見やすくするために、
図10でも、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2とからなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図10において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、酸化アルミニウム膜AOX1と、酸化アルミニウム膜AOX1上のハフニウムシリケート膜HSOと、ハフニウムシリケート膜HSO上の酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる。
【0094】
次に、
図11に示されるように、イオン注入法などにより、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW)にn
−型半導体領域EXを形成する(
図3のステップS9)。
【0095】
すなわち、ステップS9では、メモリ素子形成領域におけるp型ウエルPWのゲート電極MGの両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物をイオン注入することにより、n
−型半導体領域EXを形成する。このn
−型半導体領域EXを形成するためのイオン注入の際には、ゲート電極MGがマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるため、n
−型半導体領域EXは、ゲート電極MGの側壁に自己整合して形成される。従って、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW)において、ゲート電極MGの両側(ゲート長方向での両側)にn
−型半導体領域EXが形成されることになる。
【0096】
次に、
図12に示されるように、ゲート電極MGの側壁上に、側壁絶縁膜として、絶縁膜からなるサイドウォールスペーサSWを形成する(
図4のステップS10)。
【0097】
ステップS10のサイドウォールスペーサSW形成工程は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、半導体基板SBの主面全面上に、ゲート電極MGを覆うように、サイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜を形成する。このサイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜、あるいはそれらの積層膜などからなり、CVD法などを用いて形成することができる。それから、このサイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜を、異方性エッチング技術によりエッチバック(エッチング、ドライエッチング、異方性エッチング)する。これにより、
図12に示されるように、ゲート電極MGの側壁上に選択的にサイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜が残存して、サイドウォールスペーサSWが形成される。
【0098】
次に、イオン注入法などにより、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW)にn
+型半導体領域SDを形成する(
図4のステップS11)。
【0099】
すなわち、ステップS11では、メモリ素子形成領域におけるp型ウエルPWのゲート電極MGおよびサイドウォールスペーサSWの両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物をイオン注入することにより、n
+型半導体領域SDを形成する。このn
+型半導体領域SDを形成するためのイオン注入の際には、ゲート電極MGとその側壁上のサイドウォールスペーサSWとがマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるため、n
+型半導体領域SDは、ゲート電極MGの側壁上のサイドウォールスペーサSWの側面に自己整合して形成される。従って、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW)において、ゲート電極MGとその側壁上のサイドウォールスペーサSWとからなる構造体の両側(ゲート長方向での両側)にn
+型半導体領域SDが形成されることになる。n
+型半導体領域SDは、n
−型半導体領域EXよりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深い。
【0100】
このようにして、n
−型半導体領域EXとそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域SDとにより、メモリ素子形成領域の半導体基板SB(p型ウエルPW)に、メモリ素子MCのソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)として機能するn型の半導体領域が形成される。n
+型半導体領域SDは、n
−型半導体領域EXよりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深い。
【0101】
また、ゲート電極MGを構成するシリコン膜は、n
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程やn
+型半導体領域SD形成用のイオン注入工程でn型の不純物が導入され得る。
【0102】
次に、ソースまたはドレイン用の半導体領域(n
−型半導体領域EXおよびn
+型半導体領域SD)などに導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う(
図4のステップS12)。ステップS12の熱処理は、例えば、900℃〜1100℃の熱処理温度で、不活性ガス雰囲気中、より好ましくは窒素雰囲気中で行うことができる。
【0103】
このようにして、メモリ素子MCが形成される。ゲート電極MGがメモリ素子MCのゲート電極として機能し、ゲート電極MGの下の絶縁膜MZ(およびその下の界面層OX1)が、メモリ素子MCのゲート絶縁膜として機能する。そして、メモリ素子MCのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n
+型半導体領域SDおよびn
−型半導体領域EXにより形成される。
【0104】
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)プロセスにより、金属シリサイド層SLを形成する(
図4のステップS13)。金属シリサイド層SLは、次のようにして形成することができる。
【0105】
まず、必要に応じてエッチング(例えば希フッ酸などを用いたウェットエッチング)を行う。これにより、n
+型半導体領域SDの上面(表面)とゲート電極MGの上面とを清浄化(露出)させる。このときのエッチングは、自然酸化膜を除去する程度の軽いエッチングとすることができる。それから、
図13に示されるように、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MGの各上面(表面)上を含む半導体基板SBの主面全面上に、ゲート電極MGおよびサイドウォールスペーサSWを覆うように、金属膜MEを形成(堆積)する。金属膜MEは、単体の金属膜(純金属膜)または合金膜とすることができ、例えばコバルト(Co)膜、ニッケル(Ni)膜、または、ニッケル白金合金膜などからなる。金属膜MEは、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0106】
次に、半導体基板SBに対して熱処理を施すことによって、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MGの各上層部分(表層部分)を金属膜MEと反応させる。これにより、
図14に示されるように、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MGの各上部(上面、表面、上層部)に、シリコンと金属の反応層である金属シリサイド層SLがそれぞれ形成される。金属シリサイド層SLは、例えばコバルトシリサイド層(金属膜MEがコバルト膜の場合)、ニッケルシリサイド層(金属膜MEがニッケル膜の場合)、または、白金添加ニッケルシリサイド層(金属膜MEがニッケル白金合金膜の場合)とすることができる。ここで、白金添加ニッケルシリサイドとは、白金を含有するニッケルシリサイド、すなわちニッケル白金シリサイドに対応している。その後、未反応の金属膜MEを除去する。
図14には、この段階の断面図が示されている。未反応の金属膜MEを除去した後に、更に熱処理を行うこともできる。
【0107】
このように、いわゆるサリサイドプロセスを行うことによって、金属シリサイド層SLを形成することができる。n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MGの上部に金属シリサイド層SLを形成することによって、ソース、ドレインやゲート電極の抵抗(拡散抵抗やコンタクト抵抗など)を低抵抗化することができる。
【0108】
また、ゲート電極MGをメタルゲート電極にするとともに、ゲート電極MG全体を金属(金属伝導を示す導体)により形成した場合は、ゲート電極MG上には金属シリサイド層SLは形成されない。
【0109】
次に、
図15に示されるように、半導体基板SBの主面全面上に、ゲート電極MGおよびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜(層間絶縁膜)IL1を形成(堆積)する(
図4のステップS14)。
【0110】
絶縁膜IL1は、酸化シリコン膜の単体膜、あるいは、窒化シリコン膜と該窒化シリコン膜上に該窒化シリコン膜よりも厚く形成された酸化シリコン膜との積層膜などからなり、例えばCVD法などを用いて形成することができる。絶縁膜IL1の形成後、必要に応じてCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法などを用いて絶縁膜IL1の上面を平坦化する。
【0111】
次に、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜IL1上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁膜IL1をドライエッチングすることにより、絶縁膜IL1にコンタクトホール(開口部、貫通孔)CTを形成する(
図4のステップS15)。コンタクトホールCTは、絶縁膜IL1を貫通するように形成される。
【0112】
次に、コンタクトホールCT内に、接続用の導電体部として、タングステン(W)などからなる導電性のプラグPGを形成する(
図4のステップS16)。
【0113】
プラグPGを形成するには、例えば、コンタクトホールCTの内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜IL1上に、バリア導体膜を形成する。このバリア導体膜は、例えば、チタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜からなる。それから、このバリア導体膜上にタングステン膜などからなる主導体膜をコンタクトホールCTを埋めるように形成してから、絶縁膜IL1上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグPGを形成することができる。なお、図面の簡略化のために、
図15では、プラグPGを構成するバリア導体膜および主導体膜(タングステン膜)を一体化して示してある。
【0114】
コンタクトホールCTおよびそれに埋め込まれたプラグPGは、n
+型半導体領域SDおよびゲート電極MGの上部などに形成される。コンタクトホールCTの底部では、半導体基板SBの主面の一部が露出される。例えば、n
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部、ゲート電極MG(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部などが露出される。なお、
図15においては、n
+型半導体領域SD(の表面上の金属シリサイド層SL)の一部が、コンタクトホールCTの底部で露出して、そのコンタクトホールCTを埋めるプラグPGと電気的に接続された断面が示されている。
【0115】
次に、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上に第1層目の配線である配線(配線層)M1を形成する(
図4のステップS17)。この配線M1を、ダマシン技術(ここではシングルダマシン技術)を用いて形成する場合について説明する。
【0116】
まず、
図16に示されるように、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上に、絶縁膜IL2を形成する。絶縁膜IL2は、複数の絶縁膜の積層膜で形成することもできる。それから、フォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜IL2の所定の領域に配線溝(配線用の溝)を形成した後、配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜IL2上にバリア導体膜を形成する。このバリア導体膜は、例えば、窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜などからなる。それから、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成して、銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の主導体膜(銅めっき膜およびシード層)とバリア導体膜をCMP法により除去して、配線溝に埋め込まれた銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。
図16では、図面の簡略化のために、配線M1は、バリア導体膜、シード層および銅めっき膜を一体化して示してある。
【0117】
配線M1は、プラグPGを介して、メモリ素子MCのソース・ドレイン領域(n
+型半導体領域SD)や、メモリ素子MCのゲート電極MGなどと電気的に接続される。
【0118】
その後、デュアルダマシン法などにより2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。また、配線M1およびそれよりも上層の配線は、ダマシン配線に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。
【0119】
以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0120】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の半導体装置は、半導体基板SBと、半導体基板SB上に形成された、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)と、そのゲート絶縁膜上に形成された、メモリ素子MC用のゲート電極MGとを有している。このメモリ素子MCのゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)は、第1絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)と、その第1絶縁膜上の第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)と、その第2絶縁膜上の第3絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)とを有している。この第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)は、電荷蓄積機能を有する高誘電率絶縁膜(すなわち高誘電率膜からなるトラップ性絶縁膜)であり、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有している。第1絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)および第3絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)のそれぞれのバンドギャップは、第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)のバンドギャップよりも大きい。第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)におけるハフニウムとシリコンの原子比(原子数の比)をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つ。なお、xとyは、整数であっても、整数でなくてもよい。
【0121】
本実施の形態の半導体装置は、不揮発性メモリを有する半導体装置である。すなわち、本実施の形態の半導体装置は、メモリ素子MCを有しており、そのメモリ素子MCのゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)は、電荷蓄積機能を有する絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を含んでいる。この電荷蓄積機能を有する絶縁膜に電荷を蓄積または保持することにより、情報の記憶が可能である。
【0122】
本実施の形態の半導体装置の主要な特徴のうちの一つは、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)における電荷蓄積機能を有する絶縁膜(トラップ性絶縁膜)が、高誘電率絶縁膜であり、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有していることである。
【0123】
メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)におけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有する高誘電率絶縁膜とすることで、トラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)のEOT(酸化膜換算膜厚)を抑制しながら、トラップ性絶縁膜の物理的膜厚を大きく(厚く)することができる。ハフニウムとシリコンと酸素とを含有する高誘電率絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)は、窒化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高い。メモリ素子用のゲート絶縁膜におけるトラップ性絶縁膜は、電荷保持特性を向上させる観点で、物理的膜厚を厚くしておくことが望ましい。
【0124】
電荷は、トラップ性絶縁膜中のトラップ準位に離散的にトラップ(捕獲)されるが、トラップ性絶縁膜に電子あるいは正孔を注入してメモリ素子の閾値電圧を制御する間に、電荷がトラップ性絶縁膜の内部を移動する。但し、トラップ性絶縁膜中におけるトラップされる位置がトラップ性絶縁膜の表面(上面および下面)から遠いほど、トラップ性絶縁膜中にトラップされた電荷はトラップ性絶縁膜から抜けにくくなる。すなわち、トラップ性絶縁膜が厚い程、トラップ性絶縁膜中において、トラップ性絶縁膜の表面から遠い位置に電荷をトラップすることができるため、トラップ性絶縁膜にトラップされた電荷がトラップ性絶縁膜から抜けにくくなる。トラップ性絶縁膜から電荷が抜けにくくなると、メモリ素子(メモリセル)の電荷保持特性が向上する。従って、トラップ性絶縁膜の物理膜厚は厚くしておく方が望ましい。
【0125】
そこで、本実施の形態では、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)におけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有する高誘電率絶縁膜とすることで、トラップ性絶縁膜のEOTを抑制しながら、トラップ性絶縁膜の物理的膜厚を大きく(厚く)することができる。これにより、メモリ素子の電荷保持特性を向上させることができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0126】
また、トラップ性絶縁膜のEOTを抑制できることで、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)のEOTを抑制できるため、動作電圧(書き込み電圧または消去電圧)の低減などが可能になる。また、メモリ素子の動作速度の向上を図ることができる。また、消費電力を低減することができる。また、低い駆動電圧でもデータの書き込み時間や消去時間を短縮させることができるため、データ処理速度を高めることができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0127】
また、本実施の形態では、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)を、高誘電率ゲート絶縁膜とすることが、より好ましい。すなわち、メモリ素子のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)は、第1絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)と、その第1絶縁膜上の第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)と、その第2絶縁膜上の第3絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)とを有しているが、それら第1絶縁膜、第2絶縁膜および第3絶縁膜を、それぞれ高誘電率絶縁膜とすることが好ましい。つまり、メモリ素子MCのゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)は、電荷蓄積機能を有する第2高誘電率絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を、第3高誘電率絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)と第1高誘電率絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)とで挟んだ積層構造を有していることが好ましい。これら第1高誘電率絶縁膜と第2高誘電率絶縁膜と第3高誘電率絶縁膜は、いずれも、酸化シリコンより誘電率が高い高誘電率絶縁膜である。
【0128】
本実施の形態とは異なり、メモリ素子用のゲート絶縁膜として高誘電率ゲート絶縁膜を採用せずに、メモリ素子用のゲート絶縁膜として、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜と酸化シリコン膜との積層膜(すなわちONO膜)を用いる場合を比較例として仮定する。ここで、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とを順に積層した積層膜を、ONO(Oxide-Nitride-Oxide)膜と称する。ONO膜は、窒化シリコン膜を酸化シリコン膜で挟んだ積層膜とみなすこともできる。
【0129】
メモリ素子用のゲート絶縁膜として、ONO膜を採用した場合は、誘電率が比較的低いことから、ゲート絶縁膜のEOT(Equivalent Oxide Thickness:酸化膜換算膜厚)が大きくなってしまう。このため、ゲート絶縁膜のEOTが大きくなることで動作電圧が高くなる懸念がある。また、ゲート絶縁膜のEOTを小さくするために物理的膜厚を薄くしようとすると、リークによる保持特性(リテンション特性)の劣化が生じる懸念がある。これらは、半導体装置の性能を低下させてしまう。
【0130】
本実施の形態では、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)として、高誘電率ゲート絶縁膜を採用することにより、高誘電率ゲート絶縁膜を採用しない場合(すなわちONO膜を採用した場合)に比べて、誘電率が高い分、ゲート絶縁膜のEOTを小さくすることができる。これにより、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)の各膜のEOTを抑制しながら物理的膜厚を増加させることができるため、リークによる保持特性(リテンション特性)の劣化を防止し、保持特性の向上を図ることができる。また、メモリ素子MC用のゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜MZ)の各膜の物理的膜厚を確保しながらEOTを低減できるため、リークによる保持特性(リテンション特性)の劣化を防止しながら、動作電圧(書き込み電圧または消去電圧)の低減などが可能になる。また、メモリ素子の動作速度の向上を図ることができる。また、消費電力を低減することができる。また、低い駆動電圧でもデータの書き込み時間や消去時間を短縮させることができるため、データ処理速度を高めることができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0131】
上述のように、トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)の上下に位置する第3絶縁膜と第1絶縁膜とは、それぞれ、トラップ性絶縁膜に電荷を閉じ込めるための電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能できるように、トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有している必要がある。この観点で、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜として、酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を好適に用いることができる。
【0132】
そして、上述のように、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜についても、誘電率が高いことが好ましい。そうすることで、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜のEOTを抑制しながら第1絶縁膜および第3絶縁膜の物理的膜厚を増加させることができるため、上述のように、リークによる保持特性(リテンション特性)の劣化を防止し、保持特性の向上を図ることができる。また、第1絶縁膜および第3絶縁膜の物理的膜厚を確保しながらEOTを低減できるため、上述のように、メモリ素子の動作電圧の低減や動作速度の向上などを図ることができる。この観点で、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜として、酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を用いることがより好ましく、これにより、第1絶縁膜および第3絶縁膜の誘電率を的確に高めることができる。酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、およびハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)は、いずれも高誘電率絶縁膜であり、酸化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高いが、窒化シリコンと比べても、誘電率が高い。
【0133】
更に、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜が最も好ましい。すなわち、第1絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX1が最も好ましく、第3絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX2が最も好ましい。電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜として、酸化アルミニウム膜AOX1および酸化アルミニウム膜AOX2を用いれば、第1絶縁膜および第3絶縁膜が、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として、より的確に機能することができ、また、第1絶縁膜および第3絶縁膜の誘電率を、より的確に高くすることができる。すなわち、電荷蓄積機能を有する第2絶縁膜に、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有する高誘電率絶縁膜(好ましくはハフニウムシリケート膜)を用いる場合には、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)としての機能の観点と、誘電率を高くするという観点で、第1絶縁膜および第3絶縁膜のそれぞれに酸化アルミニウム膜を用いることが最も好ましい。
【0134】
本実施の形態の半導体装置の主要な特徴のうちの他の一つは、電荷蓄積機能を有する第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)が、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有しており、この第2絶縁膜におけるハフニウムとシリコンの原子比をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つことである。なお、xとyは、整数であっても、整数でなくてもよい。
【0135】
Hfを含有する絶縁膜であるHf系絶縁膜は、電荷蓄積機能を有する高誘電率絶縁膜として好適である。このため、酸化アルミニウム膜と酸化ハフニウム膜と酸化アルミニウム膜とを順に積層した積層膜(すなわちAHA膜)をメモリ素子用のゲート絶縁膜として用い、酸化ハフニウム膜を、電荷蓄積機能を有する絶縁膜、すなわちトラップ性絶縁膜として機能させることができる。しかしながら、トラップ性絶縁膜におけるトラップ電荷密度(トラップ可能な電荷の面密度)は、できるだけ大きい方が好ましい。ここで、酸化アルミニウム膜と酸化ハフニウム膜と酸化アルミニウム膜とを順に積層した積層膜を、AHA(Aluminium oxide - Hafnium oxide - Aluminium oxide)膜と称することとする。AHA膜は、酸化ハフニウム膜を酸化アルミニウム膜で挟んだ積層膜とみなすこともできる。
【0136】
本発明者の検討によれば、以下のことが分かった。ONO膜をメモリ素子用のゲート絶縁膜として採用した場合について、トラップ性絶縁膜(ここではONO膜における窒化シリコン膜)におけるトラップ電荷密度を評価したところ、2.1×10
−6C/cm
2程度であった。それに対して、このONO膜と同等の物理的膜厚を有するAHA膜を、メモリ素子用のゲート絶縁膜として採用した場合について、トラップ性絶縁膜(ここではAHA膜における酸化ハフニウム膜)におけるトラップ電荷密度を評価したところ、3.2×10
−6C/cm
2程度であった。このため、メモリ素子用のゲート絶縁膜として、AHA膜を採用することにより、ONO膜を採用した場合に比べて、トラップ電荷密度を1.5倍程度に増加させることができる。しかしながら、トラップ性絶縁膜におけるトラップ電荷密度は、できるだけ大きい方が好ましい。
【0137】
また、ONO膜と同等の物理的膜厚を有するAHA膜を、メモリ素子用のゲート絶縁膜として採用した場合、ONO膜のEOTに比べて、AHA膜のEOTは小さくなる(例えば半分程度になる)。このため、メモリ素子用のゲート絶縁膜としてAHA膜などの高誘電率ゲート絶縁膜を採用した場合は、ONO膜を採用した場合に比べて、ゲート絶縁膜中の蓄積電荷量が同じであれば、メモリ素子の書き込み時と消去時でのしきい値電圧の差が小さくなってしまう。メモリ素子を有する半導体装置の性能向上のためには、メモリ素子に記憶された情報を正確かつ容易に読み出せるように、メモリ素子の書き込み時と消去時でのしきい値電圧の差は大きいことが好ましい。メモリ素子の書き込み時と消去時でのしきい値電圧の差を大きくするためには、メモリ素子用のゲート絶縁膜において、トラップ性絶縁膜におけるトラップ電荷密度を大きくして、書き込み時にゲート絶縁膜中に蓄積される電荷量を大きくすることが有効である。このため、メモリ素子用のゲート絶縁膜としてAHA膜などの高誘電率ゲート絶縁膜を採用する場合は、トラップ性絶縁膜におけるトラップ電荷密度をできるだけ大きくすることが、メモリ素子を有する半導体装置の性能向上を図る上で、重要である。例えば、メモリ素子用のゲート絶縁膜としてAHA膜などの高誘電率ゲート絶縁膜を採用する場合は、メモリ素子の書き込み時と消去時でのしきい値電圧の差をゲート絶縁膜にONO膜を採用した場合と同程度にするには、高誘電率ゲート絶縁膜のトラップ電荷密度を、ONO膜のトラップ電荷密度の2倍程度以上にすることが望ましい。
【0138】
そこで、本実施の形態では、メモリ素子MCのゲート絶縁膜におけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)として、Hf(ハフニウム)を含むHf系絶縁膜を用いるが、Si(シリコン)を所定の濃度、含有させている。すなわち、メモリ素子MCのゲート絶縁膜において、トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)が、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とを含有している。そして、この第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)におけるハフニウム(Hf)とシリコン(Si)の原子比をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つようにしている。なお、xとyは、整数であっても、整数でなくてもよい。このようにすることで、
図17などを参照して以下に説明するように、トラップ性絶縁膜である第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)のトラップ電荷密度を高めることができる。
【0139】
図17は、酸化アルミニウム膜とハフニウムシリケート膜と酸化アルミニウム膜とを順に積層した積層膜を、メモリ素子のゲート絶縁膜として採用した場合について、ハフニウムシリケート膜におけるHf(ハフニウム)濃度C
Hf/(Hf+Si)と、ハフニウムシリケート膜におけるトラップ電荷密度Q
trapとの相関を示すグラフである。
図17のグラフの横軸は、ハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)に対応し、
図17のグラフの縦軸は、ハフニウムシリケート膜におけるトラップ電荷密度Q
trapに対応している。なお、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)の単位を%で表しているが、これは原子%のことである。
【0140】
ここで、トラップ電荷密度Q
trapは、トラップ可能な電荷の面密度に対応しており、例えば、Q
trap=3×10
−6C/cm
2の場合は、1cm
2当たり3×10
−6C(クーロン)の電荷をトラップ(捕獲)できることを意味している。
図17では、ハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)を、36.3%、53.9%、65.0%、70.9%、76.7%、79.5%、81.7%、82.7%、87.1%、91.3%、100%とした場合のそれぞれについてトラップ電荷密度Q
trapを調べ、その結果を黒丸(●)でプロットしてある。
図17のグラフにおいて、各黒丸(●)に対して付された%表示の数値は、その黒丸(●)におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)に対応している。
【0141】
Hf濃度の測定は、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)を用いて行うことができる。
【0142】
また、
図17のグラフの横軸は、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)に対応しているが、このHf濃度C
Hf/(Hf+Si)は、ハフニウムシリケート膜における、Hf(ハフニウム)とSi(シリコン)の合計の原子数に占めるHf(ハフニウム)の原子数の割合を原子%で示した値である。すなわち、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)は、ハフニウムシリケート膜において、Hf(ハフニウム)の原子数を、Hf(ハフニウム)の原子数とSi(シリコン)の原子数との和で割った値を、%表示(原子%)で示した値である。別の言い方をすれば、ハフニウムシリケート膜の組成(組成比)をHf
xSi
yO
zと表記したときに、x/(x+y)の値を%表示で示したものが、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)である。このため、C
Hf/(Hf+Si)=79.5%の場合は、ハフニウムシリケート膜の組成(組成比)をHf
xSi
yO
zと表記したときにx/(x+y)=0.795となることに対応している。
【0143】
なお、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%である場合は、Hf
xSi
yO
zにおけるyがゼロである場合、すなわちSi(シリコン)を含有していない場合に対応しているため、トラップ性絶縁膜は、ハフニウムシリケート膜ではなく酸化ハフニウムということになる。すなわち、C
Hf/(Hf+Si)=100%は、Si(シリコン)を含有しない酸化ハフニウムに対応している。
【0144】
また、
図17のグラフにおいて、参考として、ONO膜をメモリ素子のゲート絶縁膜として採用した場合のONO膜中の窒化シリコン膜におけるトラップ電荷密度Q
trapを、白丸(○)で示すとともに、その白丸(○)に対して「ONO膜」と付してある。
【0145】
図17のグラフからも分かるように、ハフニウムシリケート膜におけるトラップ電荷密度Q
trapを高めるためには、ハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)を77〜91原子%の範囲内(すなわち77原子%≦C
Hf/(Hf+Si)≦91原子%)に設定することが極めて有効である。
【0146】
すなわち、
図17のグラフに示されるように、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が77原子%よりも小さいときは、トラップ電荷密度Q
trapのHf濃度C
Hf/(Hf+Si)に対する依存性はそれ程大きくはなく、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)の増加とともにトラップ電荷密度Q
trapが比較的なだらかに増加している。しかしながら、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が77原子%以上になると、トラップ電荷密度Q
trapは急激に増加し、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が約82原子%のときに、トラップ電荷密度Q
trapはピーク値(最大値)を示す。このピーク値のトラップ電荷密度Q
trapは5.5×10
−6C/cm
2であり、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100原子%の場合(すなわちハフニウムシリケート膜ではなく酸化ハフニウム膜の場合)のトラップ電荷密度Q
trapが3.2×10
−6C/cm
2であることに比べて、トラップ電荷密度Q
trapが大きく増大している。また、このピーク値のトラップ電荷密度Q
trapは、ONO膜を採用した場合のトラップ電荷密度Q
trapである2.1×10
−6C/cm
2に比べても十分に大きく、2倍以上になっている。
【0147】
そして、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が約82原子%のときに、トラップ電荷密度Q
trapがピーク値(最大値)を示した後、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)を更に増加させると、トラップ電荷密度Q
trapは減少する。Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が91原子%よりも大きくなると、トラップ電荷密度Q
trapは低い値となり、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が77原子%未満のときのトラップ電荷密度Q
trapの値とあまり変わらなくなる。つまり、
図17のグラフに示されるように、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)の値が77〜91原子%の範囲は、それ以外の範囲に比べて、トラップ電荷密度Q
trapが特異的に増加している。すなわち、
図17のグラフに示されるように、トラップ電荷密度Q
trapは、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が77〜91原子%となる範囲で特異的に増加しており、79〜87原子%の範囲でトラップ電荷密度Q
trapが最も高くなっている。
【0148】
従って、トラップ電荷密度Q
trapを向上させるためには、ハフニウムシリケート膜(HSO)におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)を77〜91原子%の範囲内とする(すなわち77原子%≦C
Hf/(Hf+Si)≦91原子%とする)ことが極めて有効であり、その範囲内でも特に、79〜87原子%とする(すなわち79原子%≦C
Hf/(Hf+Si)≦87原子%とする)ことが最も有効である。
【0149】
そこで、本実施の形態では、メモリ素子MCのゲート絶縁膜におけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)として、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とを含有する絶縁膜を用い、この絶縁膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)を77〜91原子%の範囲内にしている。これは、この絶縁膜において、Hf(ハフニウム)とSi(シリコン)の原子比をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つようにすることと同義である。なお、xとyは、整数であっても、整数でなくてもよい。また、このHf濃度C
Hf/(Hf+Si)を79〜87原子%の範囲内にすれば、更に好ましく、これは、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とを含有するトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)において、Hf(ハフニウム)とSi(シリコン)の原子比をx:yとしたときに、0.79≦x/(x+y)≦0.87が成り立つことに対応している。
【0150】
これにより、メモリ素子MCのゲート絶縁膜におけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)について、トラップ電荷密度(Q
trap)を高めることができ、それによって、メモリ素子を有する半導体装置の性能を向上させることができる。例えば、メモリ素子のゲート絶縁膜に蓄積できる電荷量を大きくすることができるので、メモリ素子の書き込み時と消去時でのしきい値電圧の差を大きくすることができる。このため、メモリ素子に記憶された情報を、より正確かつ容易に読み出すことができるようになる。また、面密度であるトラップ電荷密度(Q
trap)を高くすれば、メモリ素子の寸法を小さくしても、メモリ素子のゲート絶縁膜に蓄積する電荷量を確保することができるようになる。このため、半導体装置の小型化にも有利となる。
【0151】
また、メモリ素子用のゲート絶縁膜として高誘電率ゲート絶縁膜を採用した場合は、メモリ素子の書き込み時と消去時でのしきい値電圧の差が小さくなりやすい。それに対して、本実施の形態では、上述のようにメモリ素子のゲート絶縁膜におけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)のトラップ電荷密度(Q
trap)を高めることができるため、メモリ素子用のゲート絶縁膜として高誘電率ゲート絶縁膜を採用しても、メモリ素子の書き込み時と消去時でのしきい値電圧の差を、十分に確保することができる。このため、メモリ素子用のゲート絶縁膜として高誘電率ゲート絶縁膜を用いたことによる効果を享受しながら、その高誘電率ゲート絶縁膜におけるトラップ性絶縁膜のトラップ電荷密度を高めたことによる効果も得ることができる。
【0152】
図18は、Si基板(単結晶シリコンからなる半導体基板)上に、下から順に酸化アルミニウム膜とハフニウムシリケート膜と酸化アルミニウム膜とを積層した積層膜からなるゲート絶縁膜を形成し、そのゲート絶縁膜上にポリシリコンゲート電極を形成した場合の、断面TEM写真を示す説明図である。ここで、ポリシリコンゲート電極とは、ポリシリコンからなるゲート電極のことである。また、TEM(Transmission Electron Microscope)とは、透過型電子顕微鏡のことである。
【0153】
図18の(a)は、トラップ性絶縁膜であるハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)が54原子%の場合に対応し、
図18の(b)は、トラップ性絶縁膜であるハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)が80原子%の場合に対応している。
図18の(c)は、ハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100原子%の場合、すなわち、トラップ性絶縁膜が、ハフニウムシリケート膜ではなく酸化ハフニウム膜の場合に対応している。
【0154】
図18の(a)と(b)と(c)のそれぞれにおいて、上側のTEM写真が、Si基板と下層側の酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)とトラップ性絶縁膜と上層側の酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)とポリシリコンゲート電極(ポリSi膜)との積層構造の断面を示すTEM写真である。また、
図18の(a)と(b)と(c)のそれぞれにおいて、下側のTEM写真が、トラップ性絶縁膜の断面の一部を拡大して示したTEM写真である。ここで、
図18の(a)の場合と(b)の場合は、トラップ性絶縁膜はハフニウムシリケート膜に対応し、
図18の(c)の場合は、トラップ性絶縁膜は酸化ハフニウム膜に対応している。
【0155】
図18の(a)の場合は、トラップ性絶縁膜は、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が54原子%のハフニウムシリケート膜であるが、このトラップ性絶縁膜はアモルファス状態であった。一方、
図18の(b)の場合は、トラップ性絶縁膜は、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が80原子%のハフニウムシリケート膜であるが、このトラップ性絶縁膜は、一部(
図18の(b)の下側のTEM写真において点線の楕円で囲まれた部分)が結晶化していた。そして、
図18の(c)の場合は、トラップ性絶縁膜は、酸化ハフニウム膜であるが、このトラップ性絶縁膜は、全体が結晶化していた。
【0156】
図19は、トラップ性絶縁膜であるハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)を変えた場合の、X線回折の結果を示す説明図である。
図19の横軸はX線回折におけるX線の入射角に対応し、
図19の縦軸は回折強度に対応している。
図19では、ハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)が65.4%の場合と、72.5%の場合と、76.7%の場合と、81.7%の場合と、87.1%の場合と、91.3%の場合と、100%の場合とについて、それぞれX線回折の結果が示されているが、図面を見やすくするために、縦軸方向にずらして回折パターン同士が重ならないようにしている。
図19において、各回折パターンの横に付された%表記の数値は、その回折パターンを調べた膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)の値である。なお、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)の単位を%で表しているが、これは原子%のことである。また、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%である場合は、Siを含有していない場合に対応しているため、トラップ性絶縁膜はハフニウムシリケート膜ではなく酸化ハフニウムということになる。
【0157】
図19からも分かるように、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が65.4%の場合と72.5%の場合と76.7%の場合では、X線回折のピークは見られず、ハフニウムシリケート膜がアモルファス状態にあることを示している。一方、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合と87.1%の場合と91.3%の場合と100%の場合では、X線回折のピークが観察され、ハフニウムシリケート膜(但しHf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%の場合は酸化ハフニウム膜)が結晶化していることを示している。
【0158】
また、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合と87.1%の場合とでは、X線回折パターンのピーク位置はほぼ同じである。このため、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合と87.1%の場合とでは、ハフニウムシリケート膜の結晶構造(結晶相)はほぼ同じであると考えられ、後述するように斜方晶(オルソロンビック)のHfO
2の結晶構造とほぼ同じと考えられる。
【0159】
しかしながら、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%の場合、すなわち酸化ハフニウム膜の場合は、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合および87.1%の場合とは、X線回折パターンのピーク位置が相違している。このため、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%の場合の結晶構造(結晶相)は、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合および87.1%の場合の結晶構造(結晶相)とは相違していると考えられ、後述するように単斜
晶のHfO
2の結晶構造とほぼ同じであると考えられる。
【0160】
また、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が91.3%の場合の回折パターンは、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合および87.1%の場合の回折パターン(すなわち斜方晶の回折パターン)に、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%の場合の回折パターン(すなわち単斜晶の回折パターン)が混在したような回折パターンとなっている。このため、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が91.3%の場合、ハフニウムシリケート膜は、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合および87.1%の場合と同様の結晶相(すなわち斜方晶の結晶相)に、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%の場合の結晶相(すなわち単斜晶の結晶相)が混じったものとなっていると考えられる。
【0161】
図20は、トラップ性絶縁膜であるハフニウムシリケート膜におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)を変えた場合の、X線回折の結果を示す説明図である。
図20の横軸はX線回折におけるX線の入射角に対応し、
図20の縦軸は回折強度に対応している。
図20では、
図19におけるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)が65.4%の場合と81.7%の場合と100%の場合の3つの回折パターンを取り出して示すとともに、斜方晶(オルソロンビック)のHfO
2の場合の回折ピーク位置を3つの回折パターンの下側に示し、単斜
晶のHfO
2の場合の回折ピーク位置を3つの回折パターンの上側に示してある。
【0162】
図20からも分かるように、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が65.4%の場合は、X線回折のピークは見られず、ハフニウムシリケート膜がアモルファス状態にあることを示している。一方、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が81.7%の場合は、斜方晶(オルソロンビック)のHfO
2の回折ピーク位置に相当する位置にピークを有する回折パターンとなっており、ハフニウムシリケート膜の結晶構造が、斜方晶(オルソロンビック)のHfO
2の結晶構造とほぼ同じであることを示している。Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が100%の場合、すなわち酸化ハフニウム膜の場合は、単斜
晶のHfO
2の回折ピーク位置に相当する位置にピークを有する回折パターンとなっており、酸化ハフニウム膜の結晶構造が、単斜
晶のHfO
2の結晶構造とほぼ同じであることを示している。
【0163】
これらの
図18と
図19と
図20とを合わせて考えると、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が77〜91%の範囲内にある場合は、ハフニウムシリケート膜には、単斜
晶の酸化ハフニウム結晶はほとんど生成されずに、斜方晶(オルソロンビック)の酸化ハフニウム結晶が生成されていると考えられる。一方、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が77%未満の場合は、ハフニウムシリケート膜はアモルファス状態となり、また、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が91%よりも大きくなると、単斜
晶の酸化ハフニウム結晶が生成されると考えられる。このため、トラップ電荷密度Q
trapが高くなるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)の範囲と、斜方晶(オルソロンビック)の酸化ハフニウム結晶が生成されるHf濃度C
Hf/(Hf+Si)の範囲とが、ほぼ一致しており、いずれも77%≦C
Hf/(Hf+Si)≦91%となる範囲である。このことから、Hf濃度C
Hf/(Hf+Si)が77〜91%の範囲内にある場合は、斜方晶(オルソロンビック)の酸化ハフニウム結晶が生成され、これがトラップ電荷密度Q
trapの増加に寄与しているものと推察される。
【0164】
このように、本実施の形態では、メモリ素子のゲート絶縁膜におけるトラップ性絶縁膜が、ハフニウム(Hf)とシリコン(Si)と酸素(O)とを含有し、このトラップ性絶縁膜におけるハフニウム(Hf)とシリコン(Si)の原子比をx:yとしたときに、0.77≦x/(x+y)≦0.91が成り立つようにすることで、トラップ性絶縁膜のトラップ電荷密度を高めることができる。これにより、メモリ素子を有する半導体装置の性能を向上させることができる。
【0165】
また、ハフニウムシリケート膜HSOを結晶化させることでハフニウムシリケート膜HSOのトラップ電荷密度Q
trapが増加しているため、上記ステップS5の熱処理の熱処理温度をある程度高くしてハフニウムシリケート膜HSOの結晶成長を促進させることが好ましい。この観点で、上記ステップS5の熱処理の熱処理温度は、800℃以上が好ましく、これにより、ハフニウムシリケート膜HSOのトラップ電荷密度を、より的確に高めることができる。一方、上記ステップS5の熱処理の熱処理温度を高くすると、トラップ電荷密度の向上効果を高められるが、熱処理温度が高すぎると、半導体基板SBとゲート絶縁膜との界面の特性が劣化する懸念がある。この観点で、上記ステップS5の熱処理の熱処理温度は、1050℃以下にすれば更に好ましく、これにより、半導体基板SBとゲート絶縁膜との界面の特性が劣化するのを的確に防止することができる。従って、上記ステップS5の熱処理の熱処理温度は、800〜1050℃の範囲内に設定することが、より好ましい。
【0166】
(実施の形態2)
上記実施の形態1は、シングルゲート型のメモリ素子に適用した場合について説明した。本実施の形態2は、スプリットゲート型のメモリ素子に適用した場合について説明する。
【0167】
図21は、本実施の形態2の半導体装置の要部断面図であり、不揮発性メモリのメモリセル領域の要部断面図が示されている。
図22は、メモリ素子MC1の等価回路図である。なお、
図21では、絶縁膜IL1,IL2、コンタクトホールCT、プラグPGおよび配線M1については、図示を省略している。
【0168】
図21に示されるように、半導体基板SBには、メモリトランジスタおよび制御トランジスタからなる不揮発性メモリのメモリ素子(メモリセル)MC1が形成されている。実際には、半導体基板SBには、複数のメモリ素子MC1がアレイ状に形成されている。
【0169】
図21および
図22に示されるように、本実施の形態2の半導体装置における不揮発性メモリのメモリ素子(メモリセル)MC1は、スプリットゲート型のメモリ素子(メモリセル)であり、制御ゲート電極CGを有する制御トランジスタとメモリゲート電極MG1を有するメモリトランジスタとの2つのMISFETを接続したものである。
【0170】
ここで、電荷蓄積部(電荷蓄積層)を含むゲート絶縁膜およびメモリゲート電極MG1を備えるMISFETをメモリトランジスタといい、また、ゲート絶縁膜および制御ゲート電極CGを備えるMISFETを制御トランジスタという。なお、制御トランジスタは、メモリセル選択用トランジスタであるため、選択トランジスタとみなすこともできる。メモリトランジスタは、記憶用トランジスタである。
【0171】
以下に、メモリ素子MC1の構成を具体的に説明する。
【0172】
図21に示されるように、不揮発性メモリのメモリ素子MC1は、半導体基板SBのp型ウエルPW1中に形成されたソースおよびドレイン用のn型の半導体領域MS,MDと、半導体基板SB(p型ウエルPW1)の上部に形成された制御ゲート電極CGと、半導体基板SB(p型ウエルPW1)の上部に形成されて制御ゲート電極CGと隣合うメモリゲート電極MG1とを有している。そして、不揮発性メモリのメモリ素子MC1は、更に、制御ゲート電極CGおよび半導体基板SB(p型ウエルPW1)間に形成された絶縁膜(ゲート絶縁膜)GIと、メモリゲート電極MG1および半導体基板SB(p型ウエルPW1)間とメモリゲート電極MG1および制御ゲート電極CG間とに形成された絶縁膜ZFとを有している。
【0173】
制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG1は、それらの対向側面の間に絶縁膜ZFを介した状態で、半導体基板SBの主面に沿って延在し、並んで配置されている。制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG1は、半導体領域MDおよび半導体領域MS間の半導体基板SB(p型ウエルPW1)の上部に絶縁膜GIまたは絶縁膜ZFを介して形成されており、半導体領域MS側にメモリゲート電極MG1が位置し、半導体領域MD側に制御ゲート電極CGが位置している。但し、制御ゲート電極CGは絶縁膜GIを介し、メモリゲート電極MG1は絶縁膜ZFを介して、半導体基板SB上に形成されている。
【0174】
制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1とは、間に絶縁膜ZFを介在して互いに隣合っている。絶縁膜ZFは、メモリゲート電極MG1と半導体基板SB(p型ウエルPW1)の間の領域と、メモリゲート電極MG1と制御ゲート電極CGの間の領域の、両領域にわたって延在している。
【0175】
制御ゲート電極CGと半導体基板SB(p型ウエルPW1)の間に形成された絶縁膜GI、すなわち制御ゲート電極CGの下の絶縁膜GIが、制御トランジスタのゲート絶縁膜として機能する。絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜などにより形成することができる。
【0176】
また、メモリゲート電極MG1と半導体基板SB(p型ウエルPW1)の間の絶縁膜ZF、すなわちメモリゲート電極MG1の下の絶縁膜ZFが、メモリトランジスタのゲート絶縁膜(内部に電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜)として機能する。絶縁膜ZF(特に絶縁膜MZ)は、その内部に電荷蓄積部(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を有する絶縁膜とみなすことができる。なお、メモリゲート電極MG1と半導体基板SB(p型ウエルPW1)との間の絶縁膜ZFは、メモリトランジスタのゲート絶縁膜として機能するが、メモリゲート電極MG1と制御ゲート電極CGとの間の絶縁膜MZは、メモリゲート電極MG1と制御ゲート電極CGとの間を絶縁(電気的に分離)するための絶縁膜として機能する。
【0177】
絶縁膜ZFは、上記実施形態1の上記界面層OX1に相当する絶縁膜OX1aと、上記実施の形態1と同様の構成を有する絶縁膜MZとの積層膜である。すなわち、絶縁膜ZFは、絶縁膜OX1aと絶縁膜OX1a上の絶縁膜MZとの積層膜からなる。つまり、上記実施形態1の上記界面層OX1と上記絶縁膜MZとを合わせたものが、絶縁膜ZFに対応している。
【0178】
つまり、上記実施の形態1では、界面層OX1と絶縁膜MZとの積層膜が半導体基板SB(p型ウエルPW)とゲート電極MGとの間に介在していた。一方、本実施の形態2では、界面層OX1に相当する絶縁膜OX1aと絶縁膜MZとの積層膜である絶縁膜ZFが、メモリゲート電極MG1と半導体基板SB(p型ウエルPW1)の間と、メモリゲート電極MG1と制御ゲート電極CGの間に介在している。
【0179】
絶縁膜MZの構成については、本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。簡単に述べると、絶縁膜MZは、酸化アルミニウム膜AOX1と、酸化アルミニウム膜AOX1上に形成されたハフニウムシリケート膜HSOと、ハフニウムシリケート膜HSO上に形成された酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる。酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2のそれぞれの組成、誘電率および機能などについては、上記実施の形態1と同様である。簡単に述べると、ハフニウムシリケート膜HSOは、電荷蓄積機能を有する絶縁膜、すなわちトラップ性絶縁膜であり、酸化アルミニウム膜AOX2と酸化アルミニウム膜AOX1とは、電荷ブロック層または電荷閉じ込め層として機能する絶縁膜である。
【0180】
なお、図面を見やすくするために、
図21では、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図21において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる。
【0181】
また、上記実施の形態1でも述べたように、本実施の形態2においても、酸化アルミニウム膜AOX1の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのボトム絶縁膜として用いることができる。また、酸化アルミニウム膜AOX2の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのトップ絶縁膜として用いることができる。
【0182】
但し、上記実施の形態1と同様、本実施の形態2でも、絶縁膜MZのボトム絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX1が最も好ましく、絶縁膜MZのトップ絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX2が最も好ましい。
【0183】
上記界面層OX1と同様に、絶縁膜OX1aは、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。本実施の形態2において、絶縁膜OX1aを省略することもできるが、絶縁膜OX1aを形成した方がより好ましい。酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜OX1aを設けることで、メモリトランジスタのゲート絶縁膜と半導体基板(のシリコン面)との界面をSiO
2/SiまたはSiON/Si構造にし、この界面におけるトラップ準位などの欠陥数を減らして、駆動能力や信頼性を向上させることができる。
【0184】
また、製造工程上、絶縁膜OX1aは、半導体基板SB(p型ウエルPW1)とメモリゲート電極MG1との間と、メモリゲート電極MG1と制御ゲート電極CGとの間に形成されている。しかしながら、絶縁膜OX1aが、半導体基板SB(p型ウエルPW1)とメモリゲート電極MG1との間には形成されているが、メモリゲート電極MG1と制御ゲート電極CGとの間には形成されていない場合も許容できる。
【0185】
半導体領域MSおよび半導体領域MDは、ソースまたはドレイン用の半導体領域である。すなわち、半導体領域MSは、ソース領域またはドレイン領域の一方として機能する半導体領域であり、半導体領域MDは、ソース領域またはドレイン領域の他方として機能する半導体領域である。ここでは、半導体領域MSはソース領域として機能する半導体領域、半導体領域MDはドレイン領域として機能する半導体領域である。半導体領域MS,MDは、n型の不純物が導入された半導体領域よりなり、それぞれLDD構造を備えている。すなわち、ソース用の半導体領域MSは、n
−型半導体領域EX1(エクステンション領域)と、n
−型半導体領域EX1よりも高い不純物濃度を有するn
+型半導体領域SD1(ソース領域)とを有している。また、ドレイン用の半導体領域MDは、n
−型半導体領域EX2(エクステンション領域)と、n
−型半導体領域EX2よりも高い不純物濃度を有するn
+型半導体領域SD2(ドレイン領域)とを有している。
【0186】
半導体領域MSは、ソースまたはドレイン用の半導体領域であり、メモリゲート電極MG1とゲート長方向(メモリゲート電極MG1のゲート長方向)に隣接する位置の半導体基板SBに形成されている。また、半導体領域MDは、ソースまたはドレイン用の半導体領域であり、制御ゲート電極CGとゲート長方向(制御ゲート電極CGのゲート長方向)に隣接する位置の半導体基板SBに形成されている。
【0187】
メモリゲート電極MG1および制御ゲート電極CGの互いに隣接していない側の側壁上には、絶縁体(絶縁膜)からなるサイドウォールスペーサSWが形成されている。
【0188】
ソース部のn
−型半導体領域EX1はメモリゲート電極MG1に対して自己整合的に形成され、n
+型半導体領域SD1はメモリゲート電極MG1の側壁上のサイドウォールスペーサSWに対して自己整合的に形成されている。このため、製造された半導体装置においては、低濃度のn
−型半導体領域EX1は、メモリゲート電極MG1の側壁上のサイドウォールスペーサSWの下方に形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD1は、低濃度のn
−型半導体領域EX1の外側に形成されている。従って、低濃度のn
−型半導体領域EX1は、メモリトランジスタのチャネル領域に隣接するように形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD1は、低濃度のn
−型半導体領域EX1に隣接し、メモリトランジスタのチャネル領域からn
−型半導体領域EX1の分だけ離間するように形成されている。
【0189】
ドレイン部のn
−型半導体領域EX2は制御ゲート電極CGに対して自己整合的に形成され、n
+型半導体領域SD2は制御ゲート電極CGの側壁上のサイドウォールスペーサSWに対して自己整合的に形成されている。このため、製造された半導体装置においては、低濃度のn
−型半導体領域EX2は、制御ゲート電極CGの側壁上のサイドウォールスペーサSWの下方に形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD2は、低濃度のn
−型半導体領域EX2の外側に形成されている。従って、低濃度のn
−型半導体領域EX2は、制御トランジスタのチャネル領域に隣接するように形成され、高濃度のn
+型半導体領域SD2は、低濃度のn
−型半導体領域EX2に隣接し、制御トランジスタのチャネル領域からn
−型半導体領域EX2の分だけ離間するように形成されている。
【0190】
メモリゲート電極MG1下の絶縁膜MZの下にメモリトランジスタのチャネル領域が形成され、制御ゲート電極CG下の絶縁膜GIの下に制御トランジスタのチャネル領域が形成される。
【0191】
n
+型半導体領域SD1,SD2の上部とメモリゲート電極MG1の上部と制御ゲート電極CGの上部には、サリサイド技術などにより、金属シリサイド層SLが形成されている。
【0192】
また、
図21では図示を省略しているが、後述の
図34に示されるように、半導体基板SB上には、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG1およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL1が形成されている。そして、絶縁膜IL1にはコンタクトホールCTが形成され、コンタクトホールCT内にプラグPGが埋め込まれている。プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上には絶縁膜IL2および配線M1が形成されている。
【0193】
次に、本実施の形態2における不揮発性メモリの動作例について、
図23を参照して説明する。
【0194】
図23は、本実施の形態の「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
図23の表には、「書込」、「消去」、「読出」時のそれぞれにおいて、
図21と
図22に示すようなメモリセル(選択メモリセル)のメモリゲート電極MG1に印加する電圧Vmg、ソース領域(半導体領域MS)に印加する電圧Vs、制御ゲート電極CGに印加する電圧Vcg、ドレイン領域(半導体領域MD)に印加する電圧Vd、及びp型ウエルPW1に印加する電圧Vbが記載されている。なお、
図23の表に示したものは電圧の印加条件の好適な一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、本実施の形態2では、メモリトランジスタの絶縁膜ZF中の電荷蓄積層(電荷蓄積部)であるハフニウムシリケート膜HSOへの電子の注入を「書込」、ホール(hole:正孔)の注入を「消去」と定義する。
【0195】
書込み方式は、いわゆるSSI(Source Side Injection:ソースサイド注入)方式と呼ばれる、ソースサイド注入によるホットエレクトロン注入で書込みを行う書込み方式(ホットエレクトロン注入書込み方式)を用いることができる。例えば
図23の「書込」の欄に示されるような電圧を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルの絶縁膜ZF中のハフニウムシリケート膜HSO中に電子を注入することで書込みを行う。この際、ホットエレクトロンは、2つのゲート電極(メモリゲート電極MG1および制御ゲート電極CG)間の下のチャネル領域(ソース、ドレイン間)で発生し、メモリゲート電極MG1の下の絶縁膜ZF中の電荷蓄積層(電荷蓄積部)であるハフニウムシリケート膜HSOにホットエレクトロンが注入される。注入されたホットエレクトロン(電子)は、絶縁膜ZF中のハフニウムシリケート膜HSO中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込み状態となる。
【0196】
消去方法は、いわゆるBTBT方式と呼ばれる、BTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)によるホットホール注入により消去を行う消去方式(ホットホール注入消去方式)を用いることができる。すなわち、BTBT(バンド間トンネル現象)により発生したホール(正孔)を電荷蓄積部(絶縁膜ZF中のハフニウムシリケート膜HSO)に注入することにより消去を行う。例えば
図23の「消去」の欄に示されるような電圧を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加し、BTBT現象によりホール(正孔)を発生させ電界加速することで選択メモリセルの絶縁膜ZF中のハフニウムシリケート膜HSO中にホールを注入し、それによってメモリトランジスタのしきい値電圧を低下させる。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0197】
読出し時には、例えば
図23の「読出」の欄に示されるような電圧を、読出しを行う選択メモリセルの各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MG1に印加する電圧Vmgを、書込み状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と消去状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧との間の値にすることで、書込み状態と消去状態とを判別することができる。
【0198】
次に、本実施の形態2の半導体装置の製造方法について説明する。
【0199】
図24〜
図34は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0200】
図24に示されるように、まず、上記実施の形態1と同様の半導体基板SBを用意する。それから、半導体基板SBの主面に、活性領域を規定する素子分離領域(図示せず)を形成する。
【0201】
次に、
図25に示されるように、メモリセル形成領域の半導体基板SBにp型ウエルPW1を形成する。p型ウエルPW1は、イオン注入法により形成することができ、半導体基板SBの主面から所定の深さにわたって形成される。
【0202】
次に、希釈フッ酸洗浄などによって半導体基板SB(p型ウエルPW1)の表面を清浄化した後、半導体基板SBの主面(p型ウエルPW1の表面)に、制御トランジスタのゲート絶縁膜用の絶縁膜GIを形成する。それから、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち絶縁膜GI上に、制御ゲート電極CG形成用の導電体膜としてシリコン膜PS1を形成(堆積)してから、このシリコン膜PS1をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、パターニングされたシリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CGを形成する。
【0203】
シリコン膜PS1は、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)からなり、CVD法などを用いて形成することができるが、成膜時はシリコン膜PS1をアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理でアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜とすることもできる。シリコン膜PS1は、n型不純物が導入されて低抵抗率とされている。シリコン膜PS1は、成膜時の段階ではノンドープのシリコン膜とし、成膜後に不純物をイオン注入で導入することができる。このため、制御ゲート電極CGは、n型のドープトポリシリコン膜により形成される。
【0204】
メモリセルを形成する領域において、制御ゲート電極CGで覆われた部分以外の絶縁膜GI(すなわちゲート絶縁膜となる部分以外の絶縁膜GI)は、シリコン膜PS1のパターニング工程で行うドライエッチングや、あるいはそのドライエッチング後にウェットエッチングを行うことによって除去され得る。
【0205】
次に、洗浄処理を行って、半導体基板SBの主面を清浄化処理した後、
図24に示されるように、半導体基板SBの主面全面に、すなわち、半導体基板SBの主面(表面)上と制御ゲート電極CGの表面(上面および側面)上に、メモリトランジスタのゲート絶縁膜用の絶縁膜ZFを形成する。
【0206】
この絶縁膜ZFは、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる絶縁膜OX1aと、絶縁膜OX1a上の絶縁膜MZとの積層膜からなる。
【0207】
なお、図面を見やすくするために、
図26では、酸化アルミニウム膜AOX1とハフニウムシリケート膜HSOと酸化アルミニウム膜AOX2とからなる絶縁膜MZを、単に絶縁膜MZとして図示している。実際には、
図26において点線の円で囲まれた領域の拡大図に示されるように、絶縁膜MZは、酸化アルミニウム膜AOX1と、酸化アルミニウム膜AOX1上のハフニウムシリケート膜HSOと、ハフニウムシリケート膜HSO上の酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる。従って、絶縁膜ZFは、絶縁膜OX1aと、絶縁膜OX1a上の酸化アルミニウム膜AOX1と、酸化アルミニウム膜AOX1上のハフニウムシリケート膜HSOと、ハフニウムシリケート膜HSO上の酸化アルミニウム膜AOX2との積層膜からなる。
【0208】
このため、絶縁膜ZF形成工程は、絶縁膜OX1a形成工程と、酸化アルミニウム膜AOX1形成工程と、ハフニウムシリケート膜HSO形成工程と、酸化アルミニウム膜AOX2形成工程とを含んでいる。絶縁膜GI形成工程の後に酸化アルミニウム膜AOX1形成工程が行われ、その後にハフニウムシリケート膜HSO形成工程が行われ、更にその後に酸化アルミニウム膜AOX2形成工程が行われる。酸化アルミニウム膜AOX1形成工程と、ハフニウムシリケート膜HSO形成工程と、酸化アルミニウム膜AOX2形成工程とについては、本実施の形態2も上記実施の形態1と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。本実施の形態2においても、上記ステップS5の熱処理と同様の熱処理(結晶化のための熱処理)を行うことが望ましい。また、絶縁膜OX1a形成工程についても、例えば、上記実施の形態1の界面層OX1形成工程と同様の手法を用いることができる。なお、上述したように、絶縁膜OX1aの形成を省略することもできるが、絶縁膜OX1aも形成した方がより望ましい。
【0209】
従って、本実施の形態2では、絶縁膜ZF形成工程として、上記実施の形態1の上記ステップS3,S4,S5と同様の工程を行うが、半導体基板SBの主面(表面)上だけでなく、制御ゲート電極CGの表面(上面および側面)上にも絶縁膜ZFが形成される点が、上記実施の形態1と相違している。
【0210】
また、上記実施の形態1でも述べたように、本実施の形態2においても、酸化アルミニウム膜AOX1の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのボトム絶縁膜として形成することができる。また、酸化アルミニウム膜AOX2の代わりに、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を、絶縁膜MZのトップ絶縁膜として形成することができる。
【0211】
次に、
図27に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち絶縁膜ZF上に、制御ゲート電極CGを覆うように、メモリゲート電極MG1形成用の導電体膜としてシリコン膜PS2を形成(堆積)する。
【0212】
シリコン膜PS2は、多結晶シリコン膜からなり、CVD法などを用いて形成することができる。成膜時はシリコン膜PS2をアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理でアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜とすることもできる。シリコン膜PS2は、n型不純物が導入されて低抵抗率とされている。シリコン膜PS2の成膜後のイオン注入でシリコン膜PS2にn型不純物を導入することもできるが、シリコン膜PS2の成膜時にシリコン膜PS2にn型不純物を導入することもできる。
【0213】
次に、異方性エッチング技術により、シリコン膜PS2をエッチバック(エッチング、ドライエッチング、異方性エッチング)する。このエッチバック工程では、シリコン膜PS2の堆積膜厚の分だけシリコン膜PS2を異方性エッチングによりエッチバックすることで、制御ゲート電極CGの両方の側壁上に(絶縁膜ZFを介して)シリコン膜PS2をサイドウォールスペーサ状に残し、他の領域のシリコン膜PS2を除去する。これにより、
図28に示されるように、制御ゲート電極CGの両方の側壁のうち、一方の側壁上に絶縁膜ZFを介してサイドウォールスペーサ状に残存したシリコン膜PS2により、メモリゲート電極MG1が形成され、また、他方の側壁上に絶縁膜ZFを介してサイドウォールスペーサ状に残存したシリコン膜PS2により、シリコンスペーサPS2aが形成される。メモリゲート電極MG1は、絶縁膜ZF上に、制御ゲート電極CGと絶縁膜ZFを介して隣り合うように形成される。シリコン膜PS2のエッチバック工程を行ってメモリゲート電極MG1およびシリコンスペーサPS2aを形成すると、メモリゲート電極MG1とシリコンスペーサPS2aで覆われていない領域の絶縁膜ZFが露出される。
【0214】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、メモリゲート電極MG1が覆われかつシリコンスペーサPS2aが露出されるようなフォトレジストパターン(図示せず)を半導体基板SB上に形成してから、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとしたドライエッチングにより、シリコンスペーサPS2aを除去する。その後、このフォトレジストパターンを除去し、
図29には、この段階が示されている。このエッチング工程により、
図29に示されるように、シリコンスペーサPS2aが除去されるが、メモリゲート電極MG1は、フォトレジストパターンで覆われていたので、エッチングされずに残存する。
【0215】
次に、
図30に示されるように、絶縁膜ZFのうち、メモリゲート電極MG1で覆われずに露出する部分をエッチング(例えばウェットエッチング)によって除去する。この際、メモリゲート電極MG1の下とメモリゲート電極MG1および制御ゲート電極CG間とに位置する絶縁膜ZFは、除去されずに残存し、他の領域の絶縁膜ZFは除去される。
図30からも分かるように、メモリゲート電極MG1と半導体基板SB(p型ウエルPW1)の間の領域と、メモリゲート電極MG1と制御ゲート電極CGの間の領域の、両領域にわたって絶縁膜ZFが連続的に延在している。
【0216】
次に、イオン注入法などを用いてn型の不純物を、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG1をマスク(イオン注入阻止マスク)として用いて半導体基板SB(p型ウエルPW1)に導入することで、
図31に示されるように、n
−型半導体領域(不純物拡散層)EX1,EX2を形成する。
【0217】
この際、n
−型半導体領域EX1は、メモリゲート電極MG1の側壁(絶縁膜ZFを介して制御ゲート電極CGに隣接している側とは反対側の側壁)に自己整合して形成される。また、n
−型半導体領域EX2は、制御ゲート電極CGの側壁(絶縁膜ZFを介してメモリゲート電極MG1に隣接している側とは反対側の側壁)に自己整合して形成される。n
−型半導体領域EX1とn
−型半導体領域EX2とは、同じイオン注入工程で形成することができるが、異なるイオン注入工程で形成することも可能である。
【0218】
次に、
図32に示されるように、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG1の側壁(絶縁膜ZFを介して互いに隣合う側とは反対側の側壁)上に、側壁絶縁膜として、絶縁膜からなるサイドウォールスペーサSWを形成する。サイドウォールスペーサSWは、例えば、半導体基板SBの主面全面上に、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG1を覆うように、サイドウォールスペーサSW形成用の絶縁膜を形成してから、この絶縁膜を、異方性エッチング技術によりエッチバックすることにより、形成することができる。サイドウォールスペーサSWは、制御ゲート電極CGの側壁のうち、絶縁膜ZFを介してメモリゲート電極MG1に隣接している側の側壁とは反対側の側壁上と、メモリゲート電極MG1の側壁のうち、絶縁膜ZFを介して制御ゲート電極CGに隣接している側の側壁とは反対側の側壁上とに形成される。
【0219】
次に、イオン注入法などを用いてn型の不純物を、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG1とそれらの側壁上のサイドウォールスペーサSWとをマスク(イオン注入阻止マスク)として用いて半導体基板SB(p型ウエルPW1)に導入することで、n
+型半導体領域SD1,SD2を形成する。
【0220】
この際、n
+型半導体領域SD1は、メモリゲート電極MG1の側壁上のサイドウォールスペーサSWに自己整合して形成され、n
+型半導体領域SD2は、制御ゲート電極CGの側壁上のサイドウォールスペーサSWに自己整合して形成される。これにより、LDD構造が形成される。n
+型半導体領域SD1とn
+型半導体領域SD2とは、同じイオン注入工程で形成することができるが、異なるイオン注入工程で形成することも可能である。
【0221】
このようにして、n
−型半導体領域EX1とそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域SD1とにより、メモリトランジスタのソース領域として機能するn型の半導体領域MSが形成され、n
−型半導体領域EX2とそれよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域SD2とにより、制御トランジスタのドレイン領域として機能するn型の半導体領域MDが形成される。
【0222】
次に、ソースおよびドレイン用の半導体領域(n
−型半導体領域EX1,EX2およびn
+型半導体領域SD1,SD2)などに導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う。
【0223】
このようにして、不揮発性メモリのメモリ素子MC1が形成される。
【0224】
次に、上記実施の形態1で説明したようなサリサイドプロセスを行うことにより、
図33に示されるように、金属シリサイド層SLを形成する。金属シリサイド層SLは、n
+型半導体領域SD1,SD2、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MG1の上部に形成することができ、それによって、ソース、ドレインや各ゲート電極(CG,MG1)の抵抗を低抵抗化することができる。
【0225】
以降の工程は、本実施の形態2も、上記実施の形態1と基本的には同じである。
【0226】
すなわち、
図34に示されるように、半導体基板SBの主面全面上に、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG1およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL1を形成する。絶縁膜IL1の形成後、必要に応じてCMP法などを用いて絶縁膜IL1の上面を平坦化する。それから、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いて、絶縁膜IL1にコンタクトホールCTを形成してから、上記実施の形態1と同様にしてコンタクトホールCT内に導電性のプラグPGを形成する。それから、上記実施の形態1と同様に、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL1上に絶縁膜IL2を形成してから、この絶縁膜IL2に配線溝を形成した後、配線溝内に配線M1を形成する。
【0227】
その後、デュアルダマシン法などにより2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。また、配線M1およびそれよりも上層の配線は、ダマシン配線に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。
【0228】
以上のようにして、本実施の形態2の半導体装置が製造される。
【0229】
本実施の形態2の半導体装置の主要な特徴のうちの一つは、メモリトランジスタのゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜ZFまたは絶縁膜MZ)における電荷蓄積機能を有する絶縁膜(トラップ性絶縁膜)が、高誘電率絶縁膜であり、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有していることである。すなわち、メモリトランジスタのゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜ZFまたは絶縁膜MZ)は、第1絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)と、その第1絶縁膜上の第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)と、その第2絶縁膜上の第3絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)とを有している。そして、その第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)は、電荷蓄積機能を有する高誘電率絶縁膜(すなわち高誘電率膜からなるトラップ性絶縁膜)であり、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有している。なお、第1絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)および第3絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)のそれぞれのバンドギャップは、第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)のバンドギャップよりも大きい。
【0230】
本実施の形態2では、メモリトランジスタのゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜ZFまたは絶縁膜MZ)におけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有する高誘電率絶縁膜とすることで、トラップ性絶縁膜のEOTを抑制しながら、トラップ性絶縁膜の物理的膜厚を大きく(厚く)することができる。これにより、上記実施の形態1でも説明したように、メモリ素子の電荷保持特性を向上させることができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。なお、ハフニウムとシリコンと酸素とを含有する高誘電率絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)は、窒化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高い。
【0231】
また、トラップ性絶縁膜のEOTを抑制できることで、メモリトランジスタのゲート絶縁膜(ここでは絶縁膜ZFまたは絶縁膜MZ)のEOTを抑制できるため、動作電圧(書き込み電圧または消去電圧)の低減などが可能になる。また、メモリ素子の動作速度の向上を図ることができる。また、消費電力を低減することができる。また、低い駆動電圧でもデータの書き込み時間や消去時間を短縮させることができるため、データ処理速度を高めることができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0232】
また、本実施の形態2では、メモリトランジスタのゲート絶縁膜を、高誘電率ゲート絶縁膜とすることが、より好ましい。すなわち、メモリトランジスタのゲート絶縁膜は、第1絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)と、その第1絶縁膜上の第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)と、その第2絶縁膜上の第3絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)とを有しているが、それら第1絶縁膜、第2絶縁膜および第3絶縁膜を、それぞれ高誘電率絶縁膜とすることが好ましい。つまり、メモリトランジスタのゲート絶縁膜は、電荷蓄積機能を有する第2高誘電率絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)を、第3高誘電率絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)と第1高誘電率絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)とで挟んだ積層構造を有していることが好ましい。これら第1高誘電率絶縁膜と第2高誘電率絶縁膜と第3高誘電率絶縁膜は、いずれも、酸化シリコンより誘電率が高い高誘電率絶縁膜である。
【0233】
本実施の形態2とは異なり、メモリトランジスタのゲート絶縁膜としてONO膜を採用した場合は、誘電率が比較的低いことから、ゲート絶縁膜のEOTが大きくなってしまう。
【0234】
本実施の形態2では、メモリトランジスタのゲート絶縁膜として、高誘電率ゲート絶縁膜を採用したことにより、高誘電率ゲート絶縁膜を採用しない場合(すなわちONO膜を採用した場合)に比べて、誘電率が高い分、ゲート絶縁膜のEOTを小さくすることができる。このため、メモリトランジスタのゲート絶縁膜の各膜のEOTを抑制しながら物理的膜厚を増加させることができる。これにより、リークによる保持特性(リテンション特性)の劣化を防止し、保持特性の向上を図ることができる。また、メモリトランジスタのゲート絶縁膜の各膜の物理的膜厚を確保しながらEOTを低減させることができる。これにより、リークによる保持特性(リテンション特性)の劣化を防止しながら、動作電圧の低減などが可能になる。また、動作速度の向上を図ることができる。また、消費電力を低減することができる。また、低い駆動電圧でもデータの書き込み時間や消去時間を短縮させることができるため、データ処理速度を高めることができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0235】
また、本実施の形態2のメモリ素子MC1においては、絶縁膜MZは、半導体基板SB(p型ウエルPW1)とメモリゲート電極MG1との間だけでなく、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間にも延在している。このため、絶縁膜MZが高誘電率絶縁膜であることにより、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間に介在する絶縁膜のEOTを抑制しながら物理的膜厚を増加させることができるため、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間の耐圧を向上させることができる。
【0236】
すなわち、本実施の形態2と、メモリトランジスタのゲート絶縁膜に高誘電率ゲート絶縁膜を採用しない場合(すなわちONO膜を採用した場合)とを、ゲート絶縁膜のEOTが同じであると仮定した比べたときに、ゲート絶縁膜の物理的膜厚は本実施の形態2の方が厚くなるため、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間に介在する絶縁膜の厚みも、本実施の形態2の方が厚くなる。制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間に介在する絶縁膜の物理的膜厚が厚くなることは、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間の耐圧が高くなることにつながる。このため、本実施の形態2では、絶縁膜MZが高誘電率絶縁膜であることにより、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間に介在する絶縁膜のEOTを抑制しながら物理的膜厚を増加させることができるため、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MG1との間の耐圧を向上させることができる。
【0237】
また、本実施の形態2では、絶縁膜MZが高誘電率絶縁膜であることにより、半導体基板SB(p型ウエルPW1)とメモリゲート電極MG1との間に介在する絶縁膜のEOTを抑制しながら物理的膜厚を増加させることができるため、メモリゲート電極MG1とソース領域(半導体領域MS)との間の耐圧を向上させることができる。
【0238】
メモリトランジスタのゲート絶縁膜において、電荷蓄積機能を有する第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)の上下に位置する第3絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX2)と第1絶縁膜(ここでは酸化アルミニウム膜AOX1)とは、それぞれ、電荷ブロック層として機能できるように、第2絶縁膜のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有している必要がある。このことは、本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様である。このため、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜として、酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜(SiON膜)、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を好適に用いることができる。
【0239】
そして、本実施の形態2においても、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜は、誘電率が高いことが好ましく、そうすることで、第1絶縁膜および第3絶縁膜のEOTを抑制しながら第1絶縁膜および第3絶縁膜物理的膜厚を増加させることができるため、上述のような効果を的確に得ることができる。この観点で、本実施の形態2においても、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜として、酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜(AlON膜)、アルミニウムシリケート膜(AlSiO膜)、またはハフニウムアルミネート膜(HfAlO膜)を用いることがより好ましく、これにより、第1絶縁膜および第3絶縁膜の誘電率を的確に高めることができる。
【0240】
更に、本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として機能する第1絶縁膜および第3絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜が最も好ましい。すなわち、第1絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX1が最も好ましく、第3絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜AOX2が最も好ましい。これにより、第1絶縁膜および第3絶縁膜が、それぞれ電荷ブロック層(または電荷閉じ込め層)として、より的確に機能することができ、また、第1絶縁膜および第3絶縁膜の誘電率を、より的確に高くすることができる。
【0241】
また、本実施の形態2の半導体装置の主要な特徴のうちの他の一つは、電荷蓄積機能を有する第2絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)の組成についてであるが、これについては、上記実施の形態1と同様であり、これにより、上記実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0242】
すなわち、本実施の形態2においても、メモリトランジスタにおけるトラップ性絶縁膜(ここではハフニウムシリケート膜HSO)の組成を、上記実施の形態1と同様とすることで、トラップ性絶縁膜のトラップ電荷密度を高めることができる。これにより、不揮発性メモリを有する半導体装置の性能を向上させることができる。
【0243】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。