(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。
図1乃至
図3は、ブレーカーの構成を示している。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース7等によって構成されている。ケース7は、ケース本体(第1ケース)71とケース本体71の上面に装着される蓋部材(第2ケース)81等によって構成されている。
【0018】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24の上に載置されて、突起24に支持される。
【0019】
固定接点21は、例えば、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体71の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。端子22はケース本体71の端縁から外側に突き出されている。支持部23は、ケース本体71の内部に形成されている開口73dから露出されている。
【0020】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち
図1において上側の面)を表(おもて)面、その反対側の面を裏(うら)面として説明している。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5等についても同様である。
【0021】
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、例えば、固定片2と同等の銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。
【0022】
可動片4の一端側の先端部4eには、可動接点41が形成されている。可動接点41は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部4eに接合されている。可動片4の他端側には、外部回路と電気的に接続される端子42が形成されている。
【0023】
可動片4は、可動接点41と端子42の間に、挟持部43、第1弾性部44及び第2弾性部45を有している。挟持部43においてケース本体71と蓋部材81によって挟み込まれて可動片4が固定され、第1弾性部44が弾性変形することにより、その先端部4eに形成されている可動接点41が固定接点21に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0024】
第2弾性部45は、挟持部43と端子42との間に形成されている。本実施形態では、挟持部43と端子42との間に円形の貫通孔46及びくびれ部47を設けることにより、第2弾性部45の弾性係数は第1弾性部44の弾性係数よりも低く設定されている。ここで、弾性係数とは、応力に応じたひずみの変化率をいい、応力の方向は特に限定されない。第2弾性部45の弾性係数が第1弾性部44より低いということは、可動片4が破壊されない程度の外力が端子42に加えられたとき、第1弾性部44における変形よりも第2弾性部45における変形が大きいことになる。さらに本実施形態においては、第2弾性部45と第1弾性部44との間の挟持部43において、可動片4が強固に固定されているため、第2弾性部45に生ずる応力は第1弾性部44にはほとんど伝達されず、第1弾性部44から可動接点41にかけて変形は生じない。
【0025】
可動片4は、第1弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、第1弾性部44の裏面には、熱応動素子5に対向して一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が第1弾性部44に伝達される(
図1、
図2及び
図3参照)。
【0026】
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により動作温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の第1弾性部44が押し上げられ、かつ第1弾性部44の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら第1弾性部44を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0027】
PTCサーミスター6は、固定片2と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、固定片2は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0028】
ケース7を構成するケース本体71及び蓋部材81は、例えば、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。ケース本体71及び蓋部材81は、例えば、金型を用いた射出成形によって成形することができる。
【0029】
ケース本体71には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。ケース本体71に蓋部材81が固着されることにより、開口73a,73b,73c及び73dが閉鎖される。なお、ケース本体71に組み込まれた可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0030】
開口73bは、可動片4の第2弾性部45に対応する形状に形成されている。また、開口73bの底部には、蓋部材81の側に突出する突起74が設けられている。突起74は、可動片4がケース本体71に組み込まれる際に、可動片4の貫通孔46に挿入される。これにより、ケース本体71に対して可動片4が容易かつ正確に位置決めされる。
【0031】
蓋部材81には、必要に応じてカバー片がインサート成形によって埋め込まれていてもよい。カバー片は、上述した銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片は、蓋部材81のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。カバー片の外面側には、樹脂が配されている。
【0032】
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体71の開口73a,73b,73c及び73d等を塞ぐように、蓋部材81が、ケース本体71に装着される。その後、ケース本体71と蓋部材81とは、例えば超音波溶着によって固着される。
【0033】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点41は接触し、可動片4の第1弾性部44などを通じてブレーカー1の両端子22、42間は導通している。可動片4の第1弾性部44と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点41を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0034】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の第1弾性部44が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0035】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の第1弾性部44の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、
図2に示す導通状態に復帰する。
【0036】
図4は、固定片2が埋設されたケース本体71を示している。ケース本体71には、蓋部材81に固着される第1固着面75が設けられている。第1固着面75は、収容凹部73すなわち開口73a,73b及び73cの周囲に連続して形成されている。
【0037】
第1固着面75は、陥没部76を有している。陥没部76は、可動片4の先端部4e(
図1参照)に対向する領域において、その周辺領域75aから陥没する。本実施形態では、第1固着面75は、陥没部76と周辺領域75aとの間で、階段状の段差を有している。陥没部76と周辺領域75aとの間には、両者をつなぐ斜面が形成されていてもよい。
【0038】
第1固着面75には、周辺領域75aから陥没する陥没部76が形成されているので、第1固着面75と蓋部材81との溶着の際に、溶融した樹脂の大部分は陥没部76に収容される。これにより、ケース本体71の開口73aへの樹脂のはみ出しである樹脂ばりが抑制され、電流遮断動作時の可動片4と樹脂ばりとの干渉が回避される。従って、可動片4の円滑な動作が担保され、良好な電流遮断動作を確保できるようになる。
【0039】
図5は、蓋部材81の内面側を示している。蓋部材81には、可動片4及び熱応動素子5を収容するための収容凹部82と、ケース本体71に固着される第2固着面83とが設けられている。収容凹部82は、第2固着面83から陥没して形成されている。収容凹部82は、平面視で可動片4の先端部4e及び熱応動素子5に対応する形状に形成されている。
【0040】
第2固着面83は、ケース本体71と蓋部材81とが固着されたとき、第1固着面75に対向するように連続して形成されている。これにより、第2固着面83は、収容凹部82の周囲に連続して形成される。ケース本体71の第1固着面75と蓋部材81の第2固着面83とが超音波溶着されることにより、ケース本体71と蓋部材81とが固着され一体となる。
【0041】
図5に示されるように、第2固着面83には、その周辺領域から突出する突出部84が設けられるのが望ましい。突出部84は、第2固着面83の外端縁の近傍に設けられている。突出部84は、第2固着面83の外端縁に沿ってリブ状に連続して設けられている。
【0042】
図6及び7は、ケース本体71に蓋部材81が固着される工程を示している。
図6(a)及び7(a)では、ケース本体71に蓋部材81が装着される工程が、
図6(b)及び7(b)では、ケース本体71に蓋部材81が固着される工程がそれぞれ示されている。なお、
図6(b)及び7(b)においては、溶融前の突出部84が二点鎖線の仮想線で示されている。
【0043】
図6及び7に示されるように、第2固着面83に突出部84が設けられることにより、ケース本体71に蓋部材81が装着されたとき、最初に突出部84の頂部が第1固着面75に当接する。これにより、突出部84の頂部に作用する圧力が高まり、突出部84の頂部と第1固着面75との間で発生する摩擦熱が増加する。その結果、突出部84の樹脂が容易に溶融し、第1固着面75と第2固着面83との固着が良好となる。
【0044】
図6(b)及び7(b)に示される固着工程では、主として突出部84の樹脂が溶融することによって生じた樹脂85が、第1固着面75と第2固着面83との間に流れ込む。流れ込んだ樹脂85の端縁部には、樹脂85のはみ出しである樹脂ばり85a及び85bが形成されている。
【0045】
既に述べたように、ブレーカー1ではケース本体71の第1固着面75に陥没部76が設けられているので、突出部84の樹脂が溶融することによって流動する樹脂85は陥没部76に収容され、樹脂ばり85a及び85bの発生が抑制される。第1固着面75に対する陥没部76の落差は、第2固着面83に対する突出部84の突出し量に応じて適宜設定することができる。
図6に示される例では、樹脂ばり85aがケース本体71の側壁の内面から開口73aの側に僅かに突出する程度に、陥没部76及び突出部84が設定されている。陥没部76及び突出部84は、樹脂ばり85aがケース本体71の側壁の内面から陥没部76の側に僅かに陥没する程度に、設定されていてもよい。
【0046】
ケース本体71の第1固着面75に陥没部76が設けられている構成は、製品のブレーカー1に痕跡として残る。例えば、蓋部材81の樹脂85が流れ込み硬化した部位とケース本体71の陥没部76の底部を構成していた部位との境界は、筋状の痕跡としてブレーカー1に残り、ルーペ、拡大鏡、望遠鏡等を用いることにより、確認されうる。
【0047】
第2固着面83の突出部84に替えて、ケース本体71の第1固着面75に突出部(図示せず)が設けられていてもよい。第1固着面75に設けられる突出部の形状は、例えば、突出部84と同等することができる。この場合にあっても、ケース本体71と蓋部材81との超音波溶着の際に、最初に突出部の頂部が第2固着面83に当接し、上記と同様に、突出部の樹脂が容易に溶融し、第1固着面75と第2固着面83との固着が良好となる。
【0048】
図4に示されるように、ケース本体71には、階段状に曲げられた固定片2がインサートされ、かつ複数の開口73a,73b,73c及び73dが形成されているので、ケース本体71は複雑な構成を有している。このため、ケース本体71の第1固着面75に突出部が設けられる場合、ケース本体71を成形するための金型が過度に複雑となり、その精度を高めるのが困難となる。これに対して、
図5に示されるように、蓋部材81の構成は簡素であるため、突出部84が蓋部材81の第2固着面83に設けられる構成の場合には、蓋部材81を成形するための金型は過度に複雑化することがなく、その精度を容易かつ安価に確保することができる。
【0049】
また、第1固着面75及び第2固着面83は、突出部を除いて構成されていてもよい。この場合においても、第1固着面75及び第2固着面83を構成する樹脂は、溶融して陥没部76に収容される。
【0050】
図6に示されるように、本実施形態では、陥没部76は、平面視で突出部84と重複する領域を含み、かつ突出部84よりも可動片4の先端部4eの側から固定片2の端子22の側に亘って形成されている。これにより、突出部84の樹脂が溶融することによって発生する樹脂ばり85aが抑制される。
【0051】
すなわち、陥没部76は、突出部84よりも可動片4の先端部4eの側に形成されているのが望ましい。かかる陥没部76によって、ケース7の内側に設けられている開口73aの側すなわち可動片4の先端部4eの側にはみ出す樹脂ばり85aが抑制され、電流遮断動作時の可動片4と樹脂ばり85aとの干渉が回避されうる。
【0052】
さらに、陥没部76は、突出部84よりも固定片2の端子22の側に形成されているのTが望ましい。かかる陥没部76によって、ケース7の外側すなわち可動片4の先端部4eの側にはみ出す樹脂ばり85bが抑制され、ケース7の成形精度が高められる。
【0053】
図5に示されるように、本実施形態では、可動片4の先端部4e(
図1等参照)に対向する領域で、その周辺領域よりも突出高さの低い突出部84aが形成されていてもよい。かかる突出部84aによって、可動片4の先端部4eに対向する領域において、溶融する樹脂85の体積が減少するので、樹脂ばり85a及び85bの発生が抑制される。
【0054】
以上のように、本第1発明に係る実施形態のブレーカー1によれば、ケース本体71には、第1固着面75が開口73a,73b,73cの周囲に連続して形成され、樹脂製の蓋部材81には、第2固着面83が第1固着面75に対向して連続して形成される。第1固着面75と第2固着面83とが固着されることにより、可動片4及び熱応動素子5が収容されているケース本体71と蓋部材81とが一体化される。
【0055】
第1固着面75には、可動片4の先端部4eに対向する領域において、その周辺領域75aから陥没する陥没部76が形成されているので、第1固着面75と第2固着面83との固着の際に溶融した樹脂85は、陥没部76に収容される。これにより、ケース本体71の開口73aへの樹脂ばり85aの突出が抑制され、電流遮断動作時の可動片4と樹脂ばり85aとの干渉が回避される。従って、可動片4の円滑な動作が担保され、良好な電流遮断動作を確保できるようになる。
【0056】
以下、第2発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。
図8は、第2発明のブレーカーに適用される蓋部材81Aを示している。蓋部材81Aは、第2固着面83に陥没部86を有している点で、第1発明の蓋部材81とは異なる。陥没部76を有するケース本体71と陥没部86を有する蓋部材81Aとを組み合わせることによって、ケース7が構成される形態であってもよいし、陥没部76を有していないケース本体と蓋部材81Aとを組み合わせることによって、ケース7が構成される形態であってもよい。第2発明のブレーカーのうち、以下で説明されてない部分については、上述した第1発明のブレーカー1の構成が採用されうる。
【0057】
陥没部86は、可動片4の先端部4eに対向する領域に設けられている。陥没部86は、その周辺領域から陥没して形成されている。これにより、第2固着面83は、陥没部86と周辺領域83aとの間で、階段状の段差を有している。陥没部86と周辺領域83aとの間には、両者をつなぐ斜面が形成されていてもよい。
【0058】
第2固着面83には、周辺領域83aから陥没する陥没部86が形成されているので、第2固着面83とケース本体71との溶着の際に、溶融した樹脂の大部分は、陥没部86に収容される。これにより、蓋部材81の収容凹部82及びケース本体71の開口73aへの樹脂のはみ出しである樹脂ばりが抑制され、電流遮断動作時の可動片4と樹脂ばりとの干渉が回避される。従って、可動片4の円滑な動作が担保され、良好な電流遮断動作を確保できるようになる。
【0059】
本第2発明に係るブレーカーにあっても、第2固着面83の突出部84に替えて、ケース本体71の第1固着面75に突出部が設けられていてもよい。この場合にあっても、ケース本体71と蓋部材81Aとの超音波溶着の際に、最初に突出部の頂部が第2固着面83に当接し、上記と同様に、突出部の樹脂が容易に溶融し、第1固着面75と第2固着面83との固着が良好となる。
【0060】
第1発明のブレーカー1における陥没部76と同様に、陥没部86は、平面視で突出部84と重複する領域を含み、かつケース本体71と蓋部材81Aとが固着されたとき、突出部84を挟んで可動片4の先端部4eの側から固定片2の端子22の側に亘って形成されている。これにより、突出部84の樹脂が溶融することによって発生する樹脂ばり85a及び85b(
図6参照)が抑制される。
【0061】
すなわち、陥没部86は、ケース本体71と蓋部材81Aとが固着されたとき、突出部84よりも可動片4の先端部4eの側に形成されているのが望ましい。かかる陥没部86によって、ケース7の内側すなわち可動片4の先端部4eの側にはみ出す樹脂ばり85aが抑制され、電流遮断動作時の可動片4と樹脂ばり85aとの干渉が回避されうる。
【0062】
さらに、陥没部86は、突出部84よりも固定片2の端子22の側に形成されているのが望ましい。かかる陥没部86によって、ケース7の外側すなわち可動片4の先端部4eの側にはみ出す樹脂ばり85bが抑制され、ケース7の成形精度が高められる。
【0063】
以上のように、本第2発明に係る実施形態のブレーカーによれば、ケース本体71には、第1固着面75が開口73a,73b,73cの周囲に連続して形成され、樹脂製の蓋部材81Aには、第2固着面83が第1固着面75に対向して連続して形成される。第1固着面75と第2固着面83とが固着されることにより、可動片4及び熱応動素子5が収容されているケース本体71と蓋部材81Aとが一体化される。
【0064】
第2固着面83には、可動片4の先端部4eに対向する領域において、その周辺領域83aから陥没する陥没部86が形成されているので、第1固着面75と第2固着面83との固着の際に溶融した樹脂85は、陥没部86に収容される。これにより、ケース本体71の開口73aへの樹脂ばり85aの突出が抑制され、電流遮断動作時の可動片4と樹脂ばり85aとの干渉が回避される。従って、可動片4の円滑な動作が担保され、良好な電流遮断動作を確保できるようになる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、固定接点21を有する固定片2と、先端部4eに可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより可動接点41が固定接点21から離反するように可動片4を作動させる熱応動素子5と、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73a,73b,73cを有する樹脂製のケース本体71と、開口73a,73b,73cを閉鎖するためにケース本体71に固着される樹脂製の蓋部材81等とを備えたブレーカー1等において、少なくとも以下の構成を備えていればよい。
【0066】
すなわち、少なくとも、ケース本体71には、蓋部材81に固着される第1固着面75が開口73a,73b,73cの周囲に連続して形成され、蓋部材81には、ケース本体71に固着される第2固着面83が第1固着面75に対向して連続して形成され、第1固着面75は、可動片4の先端部4eに対向する領域において、その周辺領域75aから陥没する陥没部76を有していればよい。
【0067】
また、少なくとも、ケース本体71には、蓋部材81Aに固着される第1固着面75が開口73a,73b,73cの周囲に連続して形成され、蓋部材81Aには、ケース本体71に固着される第2固着面83が第1固着面75に対向して連続して形成され、第2固着面83は、可動片4の先端部4eに対向する領域において、その周辺領域83aから陥没する陥没部86を有していればよい。
【0068】
また、本発明は種々の変形が可能である。例えば、ケース7は、二次的なインサート成形等により、樹脂等で密封されていてもよい。この場合、固定片2の端子22及び可動片4の端子42が、回路基板等のランドに固定され導通可能なように、ケース7の外側に形成された樹脂から露出していればよい。
【0069】
また、ケース本体71と蓋部材81との固着手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に固着される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。この場合、陥没部76又は86に接着剤が収容され、ケース本体71の開口73aへの余分な接着剤のはみ出しが抑制され、電流遮断動作時の可動片4と接着剤との干渉が回避される。また、ケース7は、ケース本体71と蓋部材81等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって構成されていればよい。
【0070】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、小型化を図ることができる。
【0071】
また、固定片2、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び収容凹部73等の形状も、
図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。
【0072】
また、特開2005−203277号公報に示されるような、挟持部43又はその近傍において、可動片4が端子42の側のアームターミナルと可動接点41の側の可動アームに構造的に分離されている形態に、本発明を適用してもよい。また、アームターミナルと可動アームとが溶接等によって固定されていてもよい。この場合において、挟持部43、第2弾性部45及び端子42は、固定片2等と共にケース本体71にインサート成形されていてもよい。
【0073】
さらにまた、本発明は、特開2006−331705号公報に示されるような、2つの可動接点(同文献中、第1の接点141、第2の接点142)を有する形態にも適用可能である。
【0074】
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。
図9は2次電池パック500を示す。2次電池パック500は、2次電池501と、2次電池501の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。
図10は電気機器用の安全回路502を示す。安全回路502は2次電池501の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。ブレーカー1を備えた2次電池パック500又は安全回路502によれば、良好な電流遮断動作を確保できる2次電池パック500又は安全回路502を製造できる。