(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二障害物検知装置は、検知ビームを照射するとともに、前記被検知体にあたって生じる反射波を受信して前記被検知体との間の距離を測定するセンサにより構成され、
前記第二障害物検知装置の前記検知ビームは上下方向に照射幅を有し、前記第二障害物検知装置は、前記検知ビームの下限照射ラインが水平面に対して平行となる前記仰角を有して前記運搬車両に設置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の障害物検出システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉱山では、管理用のパトロールカーや散水車などの小型車両と、ダンプなどの大型車両とが搬送路上に混在して走行することがある。ダンプは、管制制御の下、駐機場、積込場、放土場を予め決められた順序及び制限速度に従って走行するので、ダンプ同士、特に同一の進行方向に向かって走行中のダンプ同士の干渉リスクは概して高くない。
【0006】
これに対し、小型車両は安全監督者等が搭乗し、車両周囲や搬送路の安全確認をするためにダンプに接近する方向に走行することがあるので、ダンプの走行方向と小型車両の走行方向とが不一致となることがある。更に、小型車両とダンプとは、旋回性能、制動性能、加速性能などの運動性能が異なるので両者の挙動は異なる。加えて小型車両は管制制御の対象になっていないことがあるので、小型車両とダンプとの干渉リスクは、ダンプ同士の干渉のリスクに比べて大きくなる傾向がある。そのため、小型車両をダンプから区別して検出したいという要望がある。
【0007】
この点について特許文献1は、特性が異なる複数のレーダを用いて障害物、例えば前方車両までの距離データを得る際の測定精度を向上させることができるものの、大型車両と小型車両とを区別して検出することについては考慮されておらず、上記要望に応えることができない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、鉱山内において大型車両と小型車両とが混在して走行する際に、両者を区別して検出する障害物検出システム及び運搬車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鉱山用の運搬車両に搭載される障害物検出システムであって、前記運搬車両に設置され、被検知体までの距離を計測する第一障害物検知装置と、前記被検知体までの距離を計測する第二障害物検知装置であって、前記第一障害物検知装置の設置位置よりも前記運搬車両における高い位置に設置される前記第二障害物検知装置と、前記第一障害物検知装置及び前記第二障害物検知装置の検知結果に基づいて、前記被検知体が相対的に車体が小さい小型車両であるか、相対的に車体が大きい大型車両であるかを判定する判定処理部と、前記判定結果を外部出力する出力処理部と、を備え、前記第一障害物検知装置及び前記第二障害物検知装置は、それぞれの検知方向が水平面内において同一方向を向くように、かつ、前記大型車両及び前記小型車両を区別して判定することを所望する前記運搬車両からの判定対象距離範囲内において前記第一障害物検知装置の検知範囲及び前記第二障害物検知装置の検知範囲が鉛直面内において重ならないように高さを変えて前記運搬車両に設置され、前記判定処理部は、前記第一障害物検知装置が前記被検知体を検知した検知地点を基準として同一車両とみなせる許容範囲内において前記第二障害物検知装置も前記被検知体を検知した場合には、前記被検知体は前記大型車両であると判定し、前記第一障害物検知装置が前記被検知体を検知した地点を基準とする前記許容範囲内において前記第二障害物検知装置が前記被検知体を検知していない場合には、前記被検知体は前記小型車両であると判定する、
構成も好ましい。
【0010】
上記構成によれば、判定対象距離範囲内において、第一障害物検知装置及び第二障害物検知装置の各検知範囲は鉛直面内、即ち高さ方向において重ならないので、第一障害物検知装置のみが被検知体を検知した場合には、被検知体の高さは、第二障害物検知装置の検出範囲の高さよりも低いといえる。そこで判定処理部は、被検知体を小型車両であると判定することができる。一方、第一障害物検知装置及び第二障害物検知装置が共に被検知体を検知した際には、被検知体の高さは第一障害物検知装置の検出範囲の高さから第二障害
物検知装置の検出範囲の高さまであるといえるので、判定処理部は被検知体を大型車両であると判定することができる。これにより、大型車両と小型車両とを区別して判定することができる。そして出力処理部が判定結果を外部出力することにより、小型車両及び大型車両に応じた運搬車両の動作を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明は上記構成において、前記第二障害物検知装置が水平面に対して仰角を有して前記運搬車両に設置される、ことを特徴とする。
【0012】
これにより、第一障害物検知装置及び第二障害物検知装置の設置位置の高さを変えるだけの場合に比べて、さらに確実かつ簡易に第二障害物検知装置の検知範囲が第一障害物検知装置の検知範囲と重ならないように、第二障害物検知装置を設置することができる。
【0013】
また、本発明は上記構成において、前記第二障害物検知装置は、検知ビームを照射するとともに、前記被検知体にあたって生じる反射波を受信して前記被検知体との間の距離を測定するセンサにより構成され、前記第二障害物検知装置の前記検知ビームは上下方向に照射幅を有し、前記第二障害物検知装置は、前記検知ビームの下限照射ラインが水平面に対して平行となる前記仰角を有して前記運搬車両に設置される、ことを特徴とする。
【0014】
これにより、上下方向に照射幅を有する検知ビームを用いた第二障害物検知装置であっても、検知ビームの下限照射ラインが第一障害物検知装置の検知範囲に重ならないように設置することができる。
【0015】
また、本発明は上記構成において、前記第二障害物検知装置の前記仰角を変更する仰角変更機構と、前記仰角を変更機構に対する仰角変更指示信号を出力する駆動制御装置と、を更に備える、ことを特徴とする。
【0016】
これにより、第二障害物検知装置の仰角を能動的に変更することができる。よって、例えば道路勾配に応じて仰角を大きくすることで登り勾配ではより遠方に第二障害物検知装置の検知範囲を位置させることができ、検知精度に対する検知時の環境の影響を低減させることができる。
【0017】
また、本発明は上記構成において、前記被検知体として検知する対象となる車両の車種及び車高を関連付けた車種情報を格納する車種情報記憶部を更に備え、前記判定処理部は、前記第一障害物検知装置及び前記第二障害物検知装置の検知結果と前記車種情報とを比較して、前記被検知体の車種を判定する、ことを特徴とする。
【0018】
これにより、小型車両及び大型車両の区別だけではなく車種も判定できるので、車種に応じた運搬車両の動作制御を行うことができる。例えば、小型車両に四輪駆動車を用いたパトロールカー及び散水車が含まれる場合、パトロールカーの方が散水車よりも運動性能が高く急停車・急旋回をする可能性もあるので、より早めに運搬車両が干渉回避動作の準備を開始するといった対応をとることも可能になる。
【0019】
また本発明は、鉱山内を走行する運搬車両であって、第一位置に設けられ、被検知体までの距離を計測する第一障害物検知装置と、前記第一位置より高い第二位置に設けられ、前記被検知体までの距離を計測する第二障害物検知装置と、を備え、前記第一障害物検知装置
は、検知方向が水平面内
の一方向を向くように設置され、
前記第二障害物検知装置は、検知方向が水平面に対して仰角を有する方向を向くように設置され、前記第一位置は、前記被検知体としての小型車両と大型車両のうちの前記小型車両を検出可能な位置であり、前記第二位置は、前記大型車両のみを検出可能な位置である、ことを特徴とする。
【0020】
これにより、複数の障害物検知装置を用いて運搬車両の周辺に位置する被検知体を検出する際に、各障害物検知装置の設置位置の高さが異なることを利用して、被検知体の高さの判定が容易に行える。そして、この高さを用いて被検知体が小型車両か大型車両かを区別することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鉱山内において大型車両と小型車両とが混在して走行する際に、両者を区別して検出する障害物検出システム及び運搬車両を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。なお、以下の実施の形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0024】
また、以下の実施の形態における各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、後述する各構成、機能、処理部、処理手段等は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各構成、機能、処理部、処理手段等を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0026】
<第一実施形態>
第一実施形態は、複数の障害物検知装置を一組にしてダンプトラックの前方に高さを変えて取り付け、これらの障害物検知装置の検知結果を基に被検知体が小型車両であるか大型車両であるかを判定する実施形態である。以下、
図1を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る障害物検出システムを搭載したダンプの概略構成を示す図である。
【0027】
図1に示す鉱山用ダンプ(以下「ダンプ」と略記する。大型車両に相当)100は、一般的なトラックやバスに比べて格段に大きな車幅(たとえば9m程度)と車高(たとえば7m程度)を有している。一方、鉱山で管理用などに良く用いられている四輪駆動車などの軽車両(小型車両に相当)の車高はおおよそ2m弱である。従って、ダンプの車高は、小型車両の車高に対して数倍の違いがある。鉱山ではこのように車高が大きく異なる車両が混在して走行しているため、ダンプ100に小型車両を検知するための障害物検出システムが搭載されている。
【0028】
より詳しくは、ダンプ100には、障害物検出システムに含まれる複数の障害物検知装置111、112と、これらの障害物検知装置111、112の検知結果に基づいて、被検知体の検出処理を行う検出処理装置120と、が備えられる。複数の障害物検知装置111、112は、各障害物検知装置111、112の検知方向が水平面内において同一方向(本実施形態では前方)に向けられ、ダンプ100の上下方向の異なる位置に鉛直線状に並べて設置される。そして、顕出処理装置120はこれら二つ障害物検知装置111、112を組にし、これらを協働させて被検知体の大きさを検知する。
【0029】
本実施形態では、上記障害物検知装置111、112としてミリ波レーダ装置を例に挙げて説明するが、ミリ波レーダ装置に限らず、障害物検知装置の周囲にある被検知体までの距離を測定できる障害物検知装置であれば、その種類を問わない。以下の説明では、ダンプ100の低い位置に設置された障害物検知装置111を下側レーダ111と称し、ダンプ100の高い位置に設置された障害物検知装置112を上側レーダ112と称する。
【0030】
下側レーダ111は、走行面から2m前後の高さ、即ち小型車両の車高と同程度の高さに設置される。下側レーダ111から照射される検知レーダは、地面近くに照射される。よって、下側レーダ111の照射範囲(検知範囲)131は、地面近く、より詳しくは走行面から高さ2m近くに設定される。
【0031】
一方、上側レーダ112は、レーダの照射範囲(検知範囲)132に小型車両が含まれない高さに設置される。本実施形態では、ダンプ100の車両前部の構造物101、例えばラジエータグリルや固定枠などを含むラジエータアッセンブリの下端部に下側レーダ111を、上端部に上側レーダ112を設置する。すなわち下側レーダ111及び上側レーダ112は、ラジエータアッセンブリを挟んで鉛直線上に並べて設置される。ラジエータグリルや固定枠などを含むラジエータアッセンブリの上端部は、走行面から5m前後の高さになるので、上側レーダ112も走行面から5m前後の高さに設置される。それゆえ
図1のように車両前部の構造物101の上端に上側レーダ112を設置すると、上側レーダ112の照射範囲132は、走行面を基準として比較的高い位置に設けられる。この高さは、小型車両の上端部よりも高い位置になるので、照射範囲132には小型車両が含まれない。
【0032】
よって、下側レーダ111から上側レーダ112の方向に順にレーダの被検知体検知距離(以下「検知距離」と略記する)を確認していけば、被検知体の高さは、被検知体が検知されなくなった上側レーダの設置高さ未満であるという判定できる。そこで、検出処理装置120は、下型レーダ111及び上側レーダ112が共に同一車両とみなせる検知距離範囲(以下「許容範囲」という)内において被検知体を検出すると大型車両であると判定し、下側レーダ111のみが許容範囲内において被検知体を検知すると小型車両であると判定する。
【0033】
図2及び
図3を参照して下側レーダ111及び上側レーダ112のレーダの照射状態と被検知体の大きさ(高さ)との関係について説明する。
図2は、下側レーダ及び上側レーダが共に被検知体を検知している状態を示す図である。
図3は、下側レーダのみが被検知体を検知している状態を示す図である。
【0034】
図2に示すように、被検知体200が自車両(ダンプ100)と同程度に大きい車両の場合、下側レーダ111及び上側レーダ112は共に被検知体を検知する。
【0035】
一方、
図3のように被検知体300が小型車両である場合は、下側レーダ111のレーダ照射範囲131に被検知体300が含まれるが、上側のレーダ112のレーダ照射範囲132に被検知体300は含まれない。従って検出処理装置120は、下側レーダ111のみが被検知体300を検出していることから被検知体300の大きさ(高さ)を、走行面から上側レーダ112の照射範囲131の高さ未満と判定することができる。この場合は被検知体が小型車両であると判定できる。
【0036】
上側レーダ112及び下側レーダ111は、高さを変えてダンプ100に取り付けられるが、上側レーダ112から照射される検知ビームの下限照射ラインが水平面に対してほぼ平行となるように、上側レーダ112に仰角を持たせてダンプ100に取り付けてもよい。下側レーダ111及び上側レーダ112としてミリ波レーダ装置を用いる場合、電波(検知ビーム)を発して被検知体を検知するため、電波の指向性の広がりによって上下方向への検知幅を有する。検知ビームの上下の検知幅が広くなってしまうと、上側レーダ112の検知範囲と下側レーダの検知範囲とが上下方向(高さ方向)において重なる範囲が生じることがある。すると、重なる範囲で検知された被検知体の高さを、上側レーダ112の検知の有無を用いて大型車両か小型車両かに弁別することが難しくなる。
【0037】
そこで、検知ビームの上下方向の検知幅は、水平面内におけるダンプの位置を基準として被検知体を検知したい所望の検知距離範囲(以下「判定対象距離範囲」という)内において、上側レーダ112及び下側レーダ111の検知範囲が重ならないように設定されることが望ましい。ここでいう判定対象距離範囲とは、例えば運搬車両が被検知体を検知してから干渉回避動作を開始すると干渉を回避できる程度に近く、また被検知体を検知しても回避動作の要否を判定することが全く不要な程度には遠くはない程度であり、運搬車両の速度や制動距離等を考慮して決めることができる。
【0038】
ミリ波レーダの検知幅の一例として、例えば水平面に対して±4度程度の角度範囲でレーダアンテナの利得が大きいように設計されてもよい。この場合、ミリ波レーダは、主に上下±4度程度の角度範囲からなる検知範囲を有することになる。
【0039】
また、レーザスキャナのように光学式のセンサと異なり、電波を用いるセンサでは、レーダの上下方向の検知幅はある角度を持つことになるため、上側のレーダの照射範囲132が遠方に行くに従って上下幅が広くなっていき、最終的には下側のレーダの照射範囲131と重複する恐れがある。
【0040】
そこで、上側のレーダ112を上下の検知角度幅を上限として仰角を持つように配置することにより、下方の被検知体の検知を抑制する。好ましくは、一組の障害物検知装置の内の一番下側のレーダよりも上方に設置される全てのレーダは、仰角を持たせて設置されることが望ましい。
【0041】
さらに好ましくは、上側レーダ112の検知ビーム幅の下限角が水平になるような仰角を持つように配置する。上記の例では例えば上側レーダ112を上方に4度傾けて配置すると、上側レーダ112の検知ビーム下限は水平面と平行となり、上側レーダ112の照射範囲132は水平面より下側へは弱くしか照射されないため、被検知他の検知範囲を明確に限定することが可能になる。
【0042】
以上のように上側レーダが仰角を持たせてダンプに設置されることにより、被検知体の大きさの分離が容易になり、より遠方までの広範囲の領域で被検知体の大きさの検知が可能になるという効果がある。
【0043】
図1乃至
図3では、上側レーダ112に仰角を持たせてダンプ100に取り付けた状態を示すが、上側レーダ112及び下側レーダ111を共に水平方向に向けても、高低差及び検知幅を調整することで、高さ方向に検知範囲の重なり範囲が生じないようにすることができる。
【0044】
次に
図4を参照して、本実施形態に係る障害物検出システム110の内部構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る障害物検出システムの内部構成を示す機能ブロック図であって、(a)は有人ダンプに搭載される障害物検出システムを示し、(b)は自律走行ダンプに搭載される障害物検出システムを示す。
【0045】
図4の(a)、(b)に示すように、障害物検出システム110は、検出処理装置120と、下側レーダ111及び上側レーダ112とを含む。検出処理装置120は、下側レーダ111及び上側レーダ112の検知結果を基に、被検知体の検出及びその被検知体の大きさ(高さ)を判定する判定処理部121と、判定処理部121の判定結果を外部出力するための処理を行う出力処理部122とを含む。検出処理装置120は、CPU(Central Processing Unit)等の演算・制御装置、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を含むハードウェアと、検出処理装置120により実行されるソフトウェアとを含んで構成され、これらが協働することで検出処理装置120の機能が実現される。
【0046】
ダンプ100がオペレータの運転操作に従って走行する有人ダンプである場合には、
図4の(a)に示すように、出力処理部122は視覚でオペレータに対して判定結果を通知するモニタ123や、音声でオペレータに対して判定結果を通知する警告音発生装置124に対し判定結果を出力する処理を行う。
図4では説明の便宜のため、モニタ123、警告音発生装置124の両方を図示しているが、どちらか一方だけを備えてもよい。
【0047】
ダンプ100が無線ネットワークを介して通信接続された管制装置からの指示に従って自律走行する自律走行ダンプである場合には、
図4の(b)に示すように、出力処理部122は、ダンプ100に搭載された無線装置125を経由して管制装置に対して判定結果を示す検知情報を送信する処理を行う。更に、出力処理部122は、自律走行ダンプに備えられた車両制御装置126に対して判定結果を出力し、車両制御装置126が判定結果を参照して自律走行ダンプに備えらえた制動装置(不図示)を駆動制御してもよい。これにより、管制装置の管制制御の対象とならない小型車両との干渉回避動作を、検出処理装置120からの出力結果を用いて実行することが可能となる。
【0048】
次に
図5を参照して、本実施形態に係る障害物検出システム110の処理内容について説明する。
図5はグルーピング処理の一例を示す図であって、(a)は水平面上における被検知体の位置を示し、(b)は鉛直面内における被検知体の位置を示す。
図6は、障害物検出システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まず、
図5を参照して、検出処理装置120における大型車両と小型車両との判定処理について説明する。以下の説明において、下側レーダ111又は上側レーダ112のそれぞれが被検知体を検知した位置を検知地点という。また、
図5の(a)、(b)において、○は下側レーダ111が検知した検知地点を示し、△は上側レーダ112が検知した検知地点を示す。更に
図5の(a)、(b)のうち、符号501は下側レーダ111が検出した検知地点のうち、検知距離が最小となる地点(以下「最近検知地点」という)を示す。
【0050】
判定処理部121は、最近検知地点を基準とし、同一車両と見做せる距離範囲(以下「許容範囲」という)内にある検知地点を、一つのグループとしてまとめるグルーピング処理を行う。この許容範囲は、被検知体の形状や自車両の走行中の車体の揺れなどに起因して生じる検知距離誤差を吸収することで、異なる検知地点を同一車両を検知したと見做すための距離範囲である。図中のGRL_1は、最近検知地点501を基準として生成された検知地点のグループを示す。また図中のGRL_2は、GRL_1に含まれない検知地点の内、検知距離が短い検知地点502を基準として生成されたグループを示す。
【0051】
同様に図中のGRH_1は、上側レーダ112の検知地点の内、最近検知地点を基準として生成されたグループを示す。
【0052】
図5の(a)に示すように水平面上においてGRL_1に相当する検知距離において上側レーダ112は被検知体を検知していない。従って、
図5の(b)に示すようにGRL_1内の検知地点が示す検知距離d1では、高さ方向の検知結果は下側レーダ111のレーダ照射範囲(検知範囲)だけである。従って、この場合、被検知体の高さは上側レーダ112の照射範囲の高さ未満である。検知距離d1における上側レーダ112の照射範囲は、レーダの上下角度から幾何学的に演算して求められることもできるが、上側レーダ112が検知できない被検知体の高さは、上側レーダ112の設置位置の高さ未満とみなして処理を簡略化してもよい。この場合、GRL_1は、車高5m未満の被検知体と判定できる。そして車高5m以上を大型車両、5m未満を小型車両と弁別するという基準を設けることで、判定処理部121は、GRL_1の被検知体を小型車両と判定することができる。
【0053】
図5の(a)においてGRL_2と同一車両と見做せる許容範囲内において、上側レーダ112はGRH_1で示される被検知体を検知している。この場合、
図5の(b)に示すように被検知体の高さは、上側レーダ112の設置位置高さ以上ある。従って、判定処理部121は、被検知体を大型車両と判定する。
【0054】
次に
図6の各ステップ順に沿って、第一実施形態に係る障害物検出システムの処理の流れについて説明する。
【0055】
ダンプ100のエンジンが始動すると、下側レーダ111及び上側レーダ112が被検出体の距離計測処理を開始する(S601)。下側レーダ111及び上側レーダ112のそれぞれの検知結果は、検出処理装置120の判定処理部121に出力される。
【0056】
判定処理部121は、下側レーダ111及び上側レーダ112から検知結果を取得すると(S602/Yes)、下側レーダ111の検知結果のうち、最近検知地点を検索する(S603)。
【0057】
次いで判定処理部121は、最近検知地点を基準とし、同一車両と見做せる許容範囲内にある検知地点を、一つのグループとしてまとめる(S604)。
【0058】
判定処理部121は、上側レーダ112についても、最近検知地点を検索し(S605)、許容範囲の検知地点のグルーピングを行う(S606)。なお、本実施形態では、ステップS603、S604の後にステップS605、ステップS606を実行すると説明したが、ステップS605、ステップS606の後にステップS603、S604を実行してもよい。また、ステップS603、S605の最近検知地点の検索を実行した後(ステップS603、S605の順序は問わない)、ステップS604、S606のグルーピング処理を実行していもよい(ステップS604、S606の順序は問わない)。
【0059】
次に判定処理部121は、下側レーダ111の最近検知地点を基準とする検知地点グループ(下側検知地点グループ)と、上側レーダ112の最近検知地点を基準とする検知地点グループ(上側検知地点グループ)との差が規定値以上であるかを判定する(S607)。規定値以上、即ち上側検知地点グループが遠方にあれば(S607/Yes)、上側検知地点グループが示す被検知体は、下側検知地点グループとは別体の被検知体であるか、もしくは当該高さでは検知されなかったこととなる。よって、判定処理部121は、被検知体の高さが上側レーダ112の設置高未満である、即ち被検知体は小型車両と判定する(S608)。出力処理部122は、この判定結果を外部出力する。
【0060】
一方、上側検知地点グループ及び下側検知地点グループの差が規定値以内であれば(S607/No)、下側レーダ111及び上側レーダ112の双方で被検知体を検知したこと意味するので、判定処理部121は、被検知体の高さを自車両と同程度の高さを持つもの、即ち大型車両であると判定する(S609)。出力処理部122は、この判定結果を外部出力する。その後、ステップS601へ戻り、再度下側レーダ111及び上側レーダ112による被検知体までの距離測定を行う。そして、新たな検知結果に対して上述の処理が実行される。この一連の処理は、ダンプ100のエンジンが停止するまで繰り返される。
【0061】
本実施形態によれば、複数の障害物検出装置を、水平面内において検知範囲を同じ向きに向かせると共に、検知範囲の高さが小型車両と大型車両との高さの区別がつくようにダンプに設置し、両障害物検知装置の検知結果を基に小型車両及び大型車両を弁別して判定するので、ダンプとは挙動が異なる小型車両を検出することができる。これにより、小型車両に対する干渉回避動作を行うことができ、鉱山内において小型車両と大型車両とが混走する際の安全性を向上させることができる。
【0062】
上記第一実施形態では、一組のレーダをダンプの前面における車幅方向中央部に備えたが、ダンプの正面前方に車幅方向に間隔を空けて複数組のレーダを配置してカーブの先にある障害物など、車両正面以外にある障害物も検出できるようにしてもよい。
図7を参照して、上記他例について説明する。
図7は、ダンプ正面に複数組の障害物検知装置を設置した状態を示すダンプの上面図である。
【0063】
図7に示すダンプ100は、ダンプ前面の車幅方向中央に中央上側レーダ701(この下に設置される下側レーダは不図示)を、ダンプ前面の右端部に右上側レーダ702、ダンプ前面の左端部に左上側レーダ703(右上側レーダ702、左上側レーダ703の下に設置される各下側レーダは不図示)を備える。符号731、732、733は、中央上側レーダ701、右上側レーダ702、及び左上側レーダ703の各検知範囲を示す。そして、各レーダの組について先の
図6の処理を繰り返せば良い。
【0064】
ダンプ前面の左右端部それぞれに一対のレーダを設置することで、レーダの照射範囲732、733を追加でき、より広範囲を検知できる。
【0065】
<第二実施形態>
第二実施形態は、障害物検知装置の検知結果を基に被検知体の車種を判定する実施形態である。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同様の構成及び処理ステップには、第一実施形態の説明で用いた符号と同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0066】
図8は、第二実施形態に係る障害物検出システムの内部構成を示す機能ブロック図であって、(a)は有人ダンプに搭載される障害物検出システムを示し、(b)は自律走行ダンプに搭載される障害物検出システムを示す。
【0067】
第二実施形態に係る障害物検出システム110aは、第一実施形態に係る障害物検出システム110の構成に加え、被検知体の候補となる車両の車種及び車高を対応付けた車種情報を記憶する車種情報記憶部127を備える。
図9を参照して車種情報の一例について説明する。
図9は、車種情報記憶部に記憶される車種情報を示すテーブルである。
【0068】
図9に示す車種テーブル900には、3つの車種と各車種の車高とが関連づけて記憶される。車種1は、例えば航則車に用いられる車種で車高h1は2m未満の値であるとする。車種2は、例えば散水車であり車高h2は2m以上5m未満の値であるとする。車種3は、例えば大型ダンプトラックを用いた運搬車両であり、車高h3は5m以上の値であるとする。判定処理部121は、この車種テーブル900を用いて被検知体の車種を判定する。以下、
図10を参照して、第二実施形態に係る被検知体の判定処理について説明する。
図10は、第二実施形態に係る障害物検出システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
第二実施形態においても第一実施形態のステップS601乃至ステップS606までの処理を行う。続いて判定処理部121は、ステップS604で生成した下側検知地点グループ及びステップS606で生成した上側検知地点グループの順に検知結果を高さ方向に走査して、被検知体の車高を算出する(S1001)。そして判定処理部121は車種テーブル900と算出した車高とを照合し、被検知体の車種を特定する(S1002)。出力処理部122は特定結果を外部出力する。
【0070】
本実施形態によれば、小型車両及び大型車両の区別だけでなく車種を判定できる。これにより、同じ小型車両であっても車種によって異なる運動特性に応じた対応を、運搬車両が実行することが可能となる。例えば、小型車両に四輪駆動車を用いたパトロールカー及び散水車が含まれる場合、パトロールカーの方が散水車よりも運動性能が高く急停車・急旋回をする可能性もあるので、より早めに運搬車両が干渉回避動作の準備を開始するといった対応をとることも可能になる。
【0071】
<第三実施形態>
第三実施形態は、上側レーダの取り付け角度(仰角の角度)を変更可能に取り付ける実施形態である。以下、
図11乃至
図13を参照して第三実施形態について説明する。
図11は、仰角変更機構の概略構成を示す図である。
図12は、第三実施形態に係る障害物検出システムに含まれる障害物検知装置の取り付け角度を示す図である。
図13は、第三実施形態に係る障害物検出システムの内部構成を示す機能ブロック図であって、(a)は有人ダンプに搭載される障害物検出システムを示し、(b)は自律走行ダンプに搭載される障害物検出システムを示す。
【0072】
第三実施形態に係る障害物検出システムでは、上側レーダ112の仰角を変更するための仰角変更機構を含む。この仰角変更機構は、
図11に示すように、上側レーダ112を取り付けるためのベース板154と、このベース板154の一端に取り付けられるヒンジ151と、このヒンジ151を支点としてベース板を上下方向に回動させる駆動装置としてのステッピングモータからなるヒンジ駆動装置152と、を有している。上側レーダ112の仰角θは、ヒンジ駆動制御装置160から出力されるパルス数を調整することで、所望の角度に変更することができる。これにより、上側レーダ112の照射範囲132は、破線で示した領域に対して上向きに変えることで、上側レーダ112の検知範囲の位置をより遠方に位置させることができる。また、上側レーダ112が被検知体を検知した際に仰角を変化させて高さ方向に検知ビームを走査させることにより、被検知体の高さをより詳細に検知することができる。
【0073】
図12に示すように、ダンプ100bの前方に登り勾配路がある場合、検知距離によってはサイズの小さい小型車両であっても上側レーダ112が検知してしまい、判定処理部121が大型のダンプと誤認してしまう可能性がある。このような場合においても、例えば鉱山内の搬送路における勾配地図のような情報を予め持っておき、前方の搬送路の勾配の度合いによって上側レーダ112の仰角を調整することで、上記の問題を回避できる。
【0074】
次に
図13を参照してヒンジ駆動制御装置160の内部構成について説明する。
図13の(a)、(b)に示すようにヒンジ駆動制御装置160は、ヒンジ駆動装置152に対する制御信号を出力する駆動制御部161、及びダンプ110が走行する搬送路の地図情報を格納する地図情報記憶部162を含む。ヒンジ駆動制御装置160は、CPU等の演算・制御装置、ROMやRAM、HDD等の記憶装置を含むハードウェアと、検出処理装置120により実行されるソフトウェアとを含んで構成され、これらが協働することでヒンジ駆動制御装置160の機能が実現される。
【0075】
駆動制御部161は、地図情報記憶部162及び位置取得装置170に電気的に接続される。そして、駆動制御部161は位置取得装置170からダンプ100の現在位置情報を取得し、地図情報記憶部162の地図情報(位置座標や道路勾配が記載されている)を参照し、現在走行している路面の勾配を読取り、その勾配に応じ、登り勾配が大きいときは仰角がより大きな角度になるようにヒンジ151の開度を算出し、登り勾配がよりゆるやかなときは仰角がより小さな角度になるようにヒンジ151の開度を算出する。そして、駆動制御部161は、その算出値に応じてヒンジ151の開度を変更する指示信号(パルス数)をヒンジ駆動装置152に対して出力する。
【0076】
以上のように本実施形態によれば、上側レーダの仰角を勾配に応じて能動的に可変することにより、被検知体の高さの検出精度に対する路面の勾配の影響をより低減することができる。その結果、路面の勾配に関わらず的確に大きさの分離が容易になり、勾配路においても小型車両をより的確に検出することができる。
【0077】
以上、本発明を実施するための実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成は上記各実施の形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、上記実施形態では下側レーダ及び上側レーダの最近検知地点を基準とする下側検知地点グループ及び上側検知地点グループの比較のみを行うことで、ダンプに最も近い被検知体についてのみ大型車両又は小型車両の弁別(第一実施形態)、または車種の特定(第二実施形態)を行ったが、下側レーダ及び上側レーダに含まれるすべての検知地点についてのグルーピングを行い、これらを基に、すなわち、下側レーダ及び上側レーダが検知したすべての被検知体を対象として大型車両又は小型車両の弁別、または車種の特定を行ってもよい。この処理例について
図13を参照して説明する。
図14は、その他の実施形態に係る障害物検出システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0078】
図14に示すように、既述のステップS601からステップS604までの処理を実行した後において、下側レーダの検知結果に最近検知地点とは異なる他の検知地点が含まれている場合(S1401/Yes)には、ステップS603へ戻り、次にダンプから近い検知地点を検索してからグルーピング処理を行う(S604)。この処理を、下側レーダの検知結果からグルーピングされていない検知地点がなくなるまで繰り返し(S1401/No)、ステップS605、S606の処理を実行する。
【0079】
ステップS606の処理後において、上側レーダの検知結果に最近検知地点とは異なる他の検知地点が含まれている場合(S1402/Yes)には、ステップS605へ戻り、次にダンプから近い検知地点を検索してからグルーピング処理を行う(S606)。この処理を、上側レーダの検知結果からグルーピングされていない検知地点がなくなるまで繰り返す(S1402/No)。
【0080】
ステップS607の判定処理において、全ての下側検知地点グループについて検知距離の差が規定値以上となる上側検知地点グループの有無を判定する。あれば(S607/Yes)大型車両と判定し(S608)、なければ(S607/No)小型車両と判定する(S609)。これにより、下側レーダ及び上側レーダが検知したすべての被検知体についての大型車両又は小型車両の弁別が行える。なお、上記ステップS1401、S1402を
図10の処理に追加することですべての被検知体に対する車種特定も行える。