(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のチャネルは、前記液体が充填される液体噴射チャネルと、前記液体が充填されない液体非噴射チャネルと、により構成され、前記液体噴射チャネルと前記液体非噴射チャネルとが交互に並んで配置されており、
前記ノズル孔、前記スペーサ孔および前記連通孔は、それぞれ前記液体噴射チャネルに対応する箇所のみに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
前記第1接合工程の後、前記スペーサプレートに前記スペーサ孔を形成すると共に、前記ノズルプレートに前記ノズル孔を形成することを特徴とする請求項8に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ノズルプレートの材料として使用されるポリイミドなどの樹脂材料は、温度や湿度に対する膨張、収縮の影響が大きいので、ノズル孔の加工の際やヘッドチップへの接合後に高温でキュアする際、ノズルプレートが伸縮したり、膨張したりしてしまう。このため、ノズルプレートの全長精度(ノズル孔の位置精度)が低下してしまうという課題がある。
また、ヘッドチップに被膜されたパリレン膜をアッシング処理により除去する際、オーバーアッシングにより電極の先端部(ノズルプレート側の端部)のパリレン膜が除去されてしまう場合がある。このような場合、電極が露出することになり、電極の絶縁性が損なわれるという課題がある。
【0009】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ノズル孔の加工時やヘッドチップへの接合工程時におけるノズルプレートの全長精度の低下を抑制し、且つ電極の絶縁性を確実に確保できる液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置、および液体噴射ヘッドの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る液体噴射ヘッドは、液体が噴射される複数のノズル孔を有する樹脂製のノズルプレートと、前記液体が充填される複数のチャネルを有するヘッドチップと、前記ノズルプレートの前記ヘッドチップ側の面に設けられ、前記ノズルプレートの線膨張係数よりも小さい線膨張係数のスペーサプレートと、前記ヘッドチップと前記スペーサプレートとの間に設けられ、前記ヘッドチップと前記スペーサプレートとの間を絶縁する絶縁プレートと、
前記チャネルの内面に設けられた電極と、前記電極を被覆する絶縁膜と、を備え、前記スペーサプレートに、前記ノズル孔と連通するスペーサ孔が形成され、前記絶縁プレートに、前記スペーサ孔および前記複数のチャネルのそれぞれに連通する連通孔が形成され
、前記絶縁膜が前記連通孔の内表面を被覆していることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、スペーサプレートによってノズルプレートの伸縮、膨張を抑制できるので、ノズル孔の加工時やヘッドチップへの接合工程時におけるノズルプレートの全長精度の低下を抑制できる。
また、絶縁プレートに対してスペーサプレートを接合することになるので、例えば、ヘッドチップと絶縁プレートとを固定した後に、これらヘッドチップと絶縁プレートの表面にパリレン膜を形成すれば、ヘッドチップにスペーサプレートを接合するためのアッシング処理を施す必要がなくなる。つまり、絶縁プレートにスペーサプレートを接合するためのアッシング処理を施すことになる。このため、オーバーアッシングにより、ヘッドチップのチャネルに設けられる電極が露出してしまうことを防止でき、電極の絶縁性を確実に確保できる。
【0012】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記スペーサプレートは、ステンレスにより形成されていることを特徴とする。
【0013】
ステンレスは、樹脂材と比較して非常に線膨張係数が小さい。このため、スペーサプレートによって、ノズルプレートの伸縮、膨張を、より確実に抑制できる。
また、スペーサプレートの防錆効果を高めことができると共に、耐湿性も高めることができる。
【0014】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記スペーサ孔は、前記ノズル孔の形状に対応するように円形状に形成されており、前記連通孔は、前記チャネルの断面形状に対応するように、四角状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、スペーサプレートおよび絶縁プレートを介してノズルプレートのノズル孔とヘッドチップのチャネルとを連通させるにあたり、スペーサプレートの表面積をできる限り大きくすることができる。つまり、スペーサプレートに必要以上に大きなスペーサ孔を形成することがないので、スペーサプレートの表面積をできる限り大きくすることができる。このため、スペーサプレート自体の伸縮、膨張を極力抑えることができ、この結果、ノズルプレートの伸縮、膨張を極力抑えることができる。
【0016】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記複数のチャネルは、前記液体が充填される液体噴射チャネルと、前記液体が充填されない液体非噴射チャネルと、により構成され、前記液体噴射チャネルと前記液体非噴射チャネルとが交互に並んで配置されており、前記ノズル孔、前記スペーサ孔および前記連通孔は、それぞれ前記液体噴射チャネルに対応する箇所のみに形成されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、スペーサプレートおよび絶縁プレートの加工コストを極力抑えることができる。また、ヘッドチップに設けられる電極の絶縁性を確実に確保できる一方、スペーサプレート自体の伸縮、膨張を極力抑えることができる。
【0018】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記スペーサ孔の孔径は、前記ノズル孔の孔径よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、絶縁プレートとスペーサプレートとを接着剤を用いて接合する際、余剰な接着剤をスペーサ孔に確実に溜め込むことができる。このため、接着剤によってノズル孔が塞がってしまうことを確実に防止できる。
【0020】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、2つの前記ヘッドチップを積層したことを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、1つの液体噴射ヘッドにおけるノズル孔の数を増大させることができる。このため、液体噴射ヘッドから吐出された液体によって被記録媒体に記録を行う際、記録される文字や画像の密度を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る液体噴射記録装置は、上記に記載の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、非記録媒体に高精度な記録を行うことが可能な液体噴射記録装置を提供できる。
【0024】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法は、液体が噴射される複数のノズル孔を有する樹脂製のノズルプレートと、前記液体が充填される複数のチャネルを有するヘッドチップと、前記ノズルプレートの前記ヘッドチップ側の面に設けられ、前記ノズルプレートの線膨張係数よりも小さい線膨張係数のスペーサプレートと、前記ヘッドチップと前記スペーサプレートとの間に設けられ、前記ヘッドチップと前記スペーサプレートとの間を絶縁する絶縁プレートと、を備え、前記スペーサプレートに、前記ノズル孔と連通するスペーサ孔が形成され、前記絶縁プレートに、前記スペーサ孔および前記複数のチャネルのそれぞれに連通する連通孔が形成されている液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記ノズルプレートに前記スペーサプレートを接合する第1接合工程と、
前記チャネルの内面に電極を形成する工程と、前記ヘッドチップに前記絶縁プレートを接合する第2接合工程と、
前記電極を絶縁膜により被覆する工程と、前記第1接合工程により一体化された前記ノズルプレートおよび前記スペーサプレートのうちの前記スペーサプレートと、前記第2接合工程により一体化された前記ヘッドチップおよび前記絶縁プレートのうちの前記絶縁プレートとを接合する第3接合工程と、を有
し、前記絶縁膜が前記連通孔の内表面を被覆していることを特徴とする。
【0025】
このような製造方法とすることで、スペーサプレートによってノズルプレートの伸縮、膨張を抑制できるので、ノズル孔の加工時やヘッドチップへの接合工程時におけるノズルプレートの全長精度の低下を抑制できる。
また、絶縁プレートに対してスペーサプレートを接合することになるので、ヘッドチップと絶縁プレートの表面にパリレン膜が形成されている場合、接合のためのアッシング処理を絶縁プレートに施すことになる。このため、ヘッドチップのチャネルに設けられる電極の絶縁性を確実に確保できる。
【0026】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法は、前記第1接合工程の後、前記スペーサプレートに前記スペーサ孔を形成すると共に、前記ノズルプレートに前記ノズル孔を形成することを特徴とする。
【0027】
このような製造方法とすることで、ノズルプレートにノズル孔を加工する際、スペーサプレートによって、ノズルプレートの伸縮、膨張を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、スペーサプレートによってノズルプレートの伸縮、膨張を抑制できるので、ノズル孔の加工時やヘッドチップへの接合工程時におけるノズルプレートの全長精度の低下を抑制できる。
また、絶縁プレートに対してスペーサプレートを接合することになるので、例えば、ヘッドチップと絶縁プレートとを固定した後に、これらヘッドチップと絶縁プレートの表面にパリレン膜を形成すれば、ヘッドチップにスペーサプレートを接合するためのアッシング処理を施す必要がなくなる。つまり、絶縁プレートにスペーサプレートを接合するためのアッシング処理を施すことになる。このため、オーバーアッシングにより、ヘッドチップのチャネルに設けられる電極が露出してしまうことを防止でき、電極の絶縁性を確実に確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0031】
(液体噴射記録装置)
図1は、液体噴射記録装置の斜視図である。
液体噴射記録装置1は、いわゆるインクジェットプリンタであって、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2,3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6と、を備えている。
【0032】
なお、以下の説明において、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向、およびY方向に共に直交する方向をZ方向として説明する。ここで、液体噴射記録装置1は、X方向、Y方向が水平方向となるように、且つZ方向が重力方向上下方向となるように載置して使用されるようになっている。
すなわち、液体噴射記録装置1を載置した状態では、被記録媒体S上を液体噴射ヘッド4が水平方向(X方向、Y方向)に沿って走査するように構成されている。また、この液体噴射ヘッド4から重力方向下方(Z方向下方)に向かってインク滴が噴射され、このインク滴が被記録媒体Sに着弾するように構成されている。
【0033】
一対の搬送機構2,3は、それぞれX方向に延びて設けられたグリッドローラ20,21と、グリッドローラ20,21のそれぞれに平行に延びるピンチローラ22,23と、詳細は図示しないがグリッドローラ20,21を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構と、を備えている。
【0034】
液体供給手段5は、インクが収容された液体収容体25と、液体収容体25と液体噴射ヘッド4とを接続する液体供給管26と、を備えている。液体収容体25は、複数設けられており、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク25Y,25M,25C,25Bが並べて設けられている。インクタンク25Y,25M,25C,25BのそれぞれにはポンプモータMが設けられており、インクを、液体供給管26を通じて液体噴射ヘッド4へ押圧移動できる。液体供給管26は、液体噴射ヘッド4を支持するキャリッジユニット62の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースから成る。
【0035】
なお、液体収容体25は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク25Y,25M,25C,25Bに限られるものではなく、さらに多色のインクを収容したインクタンクを備えていてもよい。
【0036】
走査手段6は、X方向に延びて設けられた一対のガイドレール60,61と、一対のガイドレール60,61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62をX方向に移動させる駆動機構63と、を備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60,61の間に配設された一対のプーリ64,65と、一対のプーリ64,65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67と、を備えている。
【0037】
一対のプーリ64,65は、一対のガイドレール60,61の両端部間にそれぞれ配設されており、X方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は、一対のガイドレール60,61間に配設されており、この無端ベルト66に、キャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには、複数の液体噴射ヘッド4が搭載されている。具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクに個別に対応する液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4BがX方向に並んで搭載されている。
【0038】
(液体噴射ヘッド)
図2は、液体噴射ヘッドの斜視図である。なお、液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4Bは、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明では、まとめて液体噴射ヘッド4として説明する。
同図に示すように、液体噴射ヘッド4は、下部ベース72上に固定され、被記録媒体S(
図1参照)に対してインク滴を噴射する吐出部70と、吐出部70に電気的に接続され、この吐出部70の駆動を制御する駆動制御部80と、駆動制御部80を固定する縦ベース73と、吐出部70と液体供給管26との間に、それぞれ接続部13,14を介して介在された液体流通部12とを有している。
【0039】
そして、液体供給管26から流入されるインクが、液体流通部12を通って吐出部70に供給されるようになっている。液体流通部12は、圧力緩衝器として機能しており、液体供給管26を介してインクが供給されると、インクを内部の貯留室内に一旦貯留した後、所定量のインクを吐出部70に供給する。なお、下部ベース72と縦ベース73は、一体成形としてもよい。
【0040】
吐出部70は、下部ベース72に固定されており、液体流通部12に接続部14を介して接続された流路部材71と、電圧が印加されることによりインクを液滴として被記録媒体Sへと噴射させる第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32と、第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32のZ方向の下端面(最下面)に設けられた絶縁プレート101、スペーサプレート102、およびノズルプレート35(
図3、
図4参照)と、を有している。
【0041】
図3は、吐出部の斜視図、
図4は、吐出部の分解斜視図、
図5は、
図3のA−A線に沿う断面図である。
図3〜
図5に示すように、吐出部70は、ノズルプレート35に、複数のノズル孔(第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34a)からなるノズル列(第1ノズル列33および第2ノズル列34)が2列に亘って形成されるように、2つのヘッドチップ31,32(第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32)が積層されている。そして、各ヘッドチップ31,32、絶縁プレート101、スペーサプレート102およびノズルプレート35が一体化された状態で、ノズルキャップ36によって支持されている。
【0042】
第1ヘッドチップ31は、後述する吐出チャネル43aの長手方向(Z方向)端部に臨む第1ノズル孔33aからインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされ、第1アクチュエータプレート41および第1カバープレート42がX方向に積層されて構成されている。
【0043】
第1アクチュエータプレート41は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されたプレートであり、その分極方向が厚さ方向(X方向)に沿って設定されている。この第1アクチュエータプレート41のX方向における一方の主面41a(第1カバープレート42側に位置する面)には、Y方向に間隔をあけて複数のチャネル43が並設されている。これら複数のチャネル43は、一方の主面41a側に開口した状態でZ方向に沿って直線状に延びる溝部であり、Z方向の一端部が第1アクチュエータプレート41の下端面で開口している。これら複数のチャネル43の間には、断面矩形状でZ方向に延びる駆動壁44が形成され、この駆動壁44によって各チャネル43はそれぞれ区分けされている。
【0044】
また、複数のチャネル43は、インクが充填される吐出チャネル43aと、インクが充填されないダミーチャネル43bと、に大別される。そして、これら吐出チャネル43aとダミーチャネル43bは、Y方向に交互に並んで配置されている。吐出チャネル43a内面には、蒸着等により駆動電極48a(
図5参照)がチャネル43のZ方向全体に亘って形成されている。ダミーチャネル43bの内面には、蒸着等によりダミー電極48b(
図5参照)がチャネル43のZ方向全体に亘って形成されている。
【0045】
また、第1アクチュエータプレート41のX方向における一方の主面41aは、Z方向の上部が第1電極引出部45とされている。この第1電極引出部45に後述の第1フレキシブル基板93が接続されている。そして、駆動電極48aおよびダミー電極48bは、第1フレキシブル基板93を介して電圧が印加されることにより、圧電滑り効果により駆動壁44を変形させ、吐出チャネル43a内の容積を変化させる。
【0046】
第1カバープレート42は、一方の主面42aが第1アクチュエータプレート41の一方の主面41a上のうち、第1電極引出部45を避けた位置に接合されている。第1カバープレート42は、他方の主面42b(第1アクチュエータプレート41とは反対側に位置する面)に形成された凹状の共通インク室46と、共通インク室46および吐出チャネル43aをそれぞれ連通させる複数のスリット47と、を有している。
【0047】
共通インク室46は、第1カバープレート42のうち、チャネル43のZ方向における他端部に位置する部分に形成されたY方向に沿って長い長方形の開口である。共通インク室46には、上述した流路部材71内に連通しており、流路部材71内のインクが流通するように構成されている。
スリット47は、共通インク室46のうち、吐出チャネル43aに対応する位置に形成され、共通インク室46内と吐出チャネル43a内とを連通しており、共通インク室46に貯留されたインクが各吐出チャネル43aに流通するように構成されている。
【0048】
一方、第2ヘッドチップ32は、第2アクチュエータプレート51および第2カバープレート52がX方向に積層されて構成されている。なお、第2ヘッドチップ32のうち、上述した第1ヘッドチップ31と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
第2アクチュエータプレート51の一方の主面51aには、上述した第1アクチュエータプレート41のチャネル43と同ピッチでY方向に間隔をあけて複数のチャネル43が配設されている。第2アクチュエータプレート51の吐出チャネル43aおよびダミーチャネル43bは、第1アクチュエータプレート41の吐出チャネル43aおよびダミーチャネル43bに対して互い違いに並んでいる。したがって、本実施形態の吐出部70では、第1アクチュエータプレート41の吐出チャネル43aと、第2アクチュエータプレート51の吐出チャネル43aと、が千鳥状に配置されている。
【0050】
また、第1アクチュエータプレート41および第2アクチュエータプレート51は、他方の主面41b,51b同士が接合されている。さらに、第2アクチュエータプレート51の一方の主面51aのうち、第1アクチュエータプレート41の第1電極引出部45と対向する位置は、第2電極引出部55とされている。この第2電極引出部55に後述の第2フレキシブル基板94が接続されている。そして、第2アクチュエータプレート51の駆動電極48aおよびダミー電極48bは、第2フレキシブル基板94を介して電圧が印加されることにより、圧電滑り効果により駆動壁44を変形させ、吐出チャネル43a内の容積を変化させる。
【0051】
第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32のZ方向の下端面(最下面)には、絶縁プレート101が設けられている。絶縁プレート101は、厚みが約10μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状とされている。そして、絶縁プレート101は、第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32のZ方向の下端面の形状に対応するようにZ方向からみた平面視外形が長方形状に形成されている。
【0052】
また、絶縁プレート101には、第1アクチュエータプレート41および第2アクチュエータプレート51のそれぞれに形成されている吐出チャネル43aに対応する位置に、連通孔101aが配置されている。各連通孔101aは、絶縁プレート101をZ方向に貫通するように、且つ吐出チャネル43aの形状に対応するように四角状に形成されている。このように構成された絶縁プレート101は、第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32のZ方向の下端面に、接着剤または熱溶着によって固定されている。
【0053】
ノズルキャップ36は、Z方向から見た平面視外形が長方形状に形成されており、その上面が下部ベース72(
図2参照)の下面に突き当たった状態で固定される。
また、ノズルキャップ36には、Z方向に貫通する嵌合孔36aが形成されており、第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32が嵌合孔36a内にまとめて嵌合されている。この際、ノズルキャップ36の下端面は、絶縁プレート101のZ方向下側の面(各ヘッドチップ31,32とは反対側の面)と面一となるように組み合わされている。
【0054】
ノズルプレート35は、厚みが約50μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状とされ、ノズルキャップ36および絶縁プレート101に、スペーサプレート102を介して接合されている。また、ノズルキャップ36および絶縁プレート101とスペーサプレート102、並びに、スペーサプレート102とノズルプレート35は、それぞれ接着剤または熱溶着によって接合されている。
なお、本実施形態のノズルプレート35は、ノズルキャップ36のほぼ全面に亘って設けられており、その外周部分が下部ベース72とZ方向で重なるようになっている。
【0055】
また、ノズルプレート35には、Y方向に間隔をあけて並設された複数のノズル孔(第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34a)からなるノズル列(第1ノズル列33および第2ノズル列34)が2列配設されている。
【0056】
第1ノズル列33は、ノズルプレート35をZ方向に貫通する複数の第1ノズル孔33aを有し、これら第1ノズル孔33aがY方向に間隔をあけて一直線上に並んで構成されている。第1ノズル孔33aは、ノズルプレート35におけるZ方向の下側の面に向かって徐々に先細りとなるように円錐台状に形成されている。また、第1ノズル孔33aは、上述した第1アクチュエータプレート41の吐出チャネル43aに対応する位置に形成されている。
【0057】
一方、第2ノズル列34は、ノズルプレート35をZ方向に貫通する複数の第2ノズル孔34aを有し、上述した第1ノズル列33と平行に配設されている。また、第2ノズル孔34aも、ノズルプレート35におけるZ方向の下側の面に向かって徐々に先細りとなるように円錐台状に形成されている。さらに、各第2ノズル孔34aは、上述した第2アクチュエータプレート51の吐出チャネル43aに対応する位置に形成されている。
【0058】
スペーサプレート102は、厚みが約10μm程度のステンレス材からなるシート状とされている。そして、スペーサプレート102は、ノズルプレート35の形状に対応するように、Z方向からみた平面視外形が長方形状に形成されている。
また、スペーサプレート102には、ノズルプレート35の第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34aに対応する箇所に、スペーサ孔102aが配置されている。このスペーサ孔102aは、スペーサプレート102をZ方向に貫通するように、且つ各ノズル孔33a,34aの形状に対応するように円形状に形成されている。
【0059】
したがって、第1アクチュエータプレート41および第2アクチュエータプレート51のそれぞれに形成されている各ダミーチャネル43bは、ノズルプレート35の第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34aには連通しておらず、絶縁プレート101、スペーサプレート102、およびノズルプレート35により下方から覆われている。
一方、第1アクチュエータプレート41および第2アクチュエータプレート51のそれぞれに形成されている各吐出チャネル43aは、絶縁プレート101の連通孔101aおよびスペーサプレート102のスペーサ孔102aを介し、それぞれ対応する第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34aに連通されている。
【0060】
ここで、スペーサプレート102に形成されているスペーサ孔102aの孔径は、各ノズル孔33a,34aのスペーサプレート102側の孔径よりも大きく、且つ吐出チャネル43aの溝幅とほぼ同等になるように設定されている。これにより、ノズルプレート35とスペーサプレート102とを接着剤により接合する場合、およびスペーサプレート102と絶縁プレート101とを接着剤により接合する場合、余った接着剤をスペーサ孔102aに溜め込むことができる。なお、吐出部70の製造方法についての詳細は後述する。
【0061】
(駆動制御部)
図6は、吐出部と駆動制御部とが接続された状態を示す斜視図である。なお、
図6に図示する吐出部70は、
図3、
図4に示す吐出部70と同一構造であるが、
図6における説明を分かりやすくするために、簡略化している。
【0062】
図2、
図6に示すように、駆動制御部80は、回路基板81と、回路基板81と吐出部70とを電気的に接続するための接続基板82と、を備えている。
回路基板81は、いわゆるガラスエポキシ基板であって、Z方向に長くなるようにX方向からみて略長方形状に形成されている。回路基板81の外周部には、複数のビス孔83が形成されている。ビス孔83に不図示のビスを挿入し、このビスを縦ベース73に固定することにより、縦ベース73に回路基板81が固定される。
【0063】
回路基板81の一面(縦ベース73に回路基板81を取り付けた状態で、縦ベース73とは反対側の面)81aには、長手方向(Z方向)の略中央に、第1接続部84が実装されている。第1接続部84は、回路基板81と第1ヘッドチップ31とを電気的に接続するためのものである。
また、回路基板81の一面81aには、長手方向の下部(吐出部70側の端部)に、第2接続部85が実装されている。第2接続部85は、回路基板81と第2ヘッドチップ32とを電気的に接続するためのものである。
【0064】
また、回路基板81の一面81aには、第1接続部84の上側(吐出部70とは反対側)に、第1ドライバIC86が実装されている。第1ドライバIC86は、第1ヘッドチップ31を駆動するための駆動信号を生成するものである。第1ドライバIC86と第1接続部84は、回路基板81上に敷設されている配線87により電気的に接続されている。
さらに、第1接続部84と第2接続部85との間には、第2ドライバIC88が実装されている。第2ドライバIC88は、第2ヘッドチップ32を駆動するための駆動信号を生成するものである。第2ドライバIC88と第2接続部85は、配線89により電気的に接続されている。
【0065】
また、回路基板81の一面81aには、長手方向上端部に外部機器接続用コネクタ91が実装されている。外部機器接続用コネクタ91は、不図示の外部制御機器と電気的に接続され、この外部制御機器の制御信号が入力されるようになっている。外部機器接続用コネクタ91と、第1ドライバIC86および第2ドライバIC88は、回路基板81上に敷設されている配線92により電気的に接続されている。
【0066】
このように構成された回路基板81と吐出部70とを電気的に接続するための接続基板82は、第1フレキシブル基板93と第2フレキシブル基板94とにより構成されている。第1フレキシブル基板93は、第1接続部84と第1ヘッドチップ31とを電気的に接続するためのものであって、僅かに撓んだ状態で配置されている。そして、第1フレキシブル基板93の一端が第1接続部84に接続され、他端が第1ヘッドチップ31の第1電極引出部45に接続されている。
【0067】
第2フレキシブル基板94は、第2接続部85と第2ヘッドチップ32とを電気的に接続するためのものであって、僅かに撓んだ状態で配置されている。そして、第2フレキシブル基板94の一端が第2接続部85に接続され、他端が第2ヘッドチップ32の第2電極引出部55に接続されている。
なお、第2フレキシブル基板94を、
図5に2点鎖線で示すように略U字状に湾曲させて配置してもよい。
【0068】
(吐出部の製造方法)
次に、
図7〜
図9に基づいて、吐出部70の製造方法について説明する。
図7〜
図9は、吐出部の製造工程を説明する工程図である。
まず、
図7(a)に示すように、後にノズルプレート35となるポリイミド等のフィルム材からなるシート基材111に、後にスペーサプレート102となるステンレスシート112を、接着剤または熱溶着によって接合する(第1接合工程)。
【0069】
なお、接着剤によってシート基板111とステンレスシート112とを接合する場合、接着剤を用いて両者111,112を貼り合せた後、高温でキュアする。これにより、シート基板111とステンレスシート112とが接合される。一方、熱溶着の場合、シート基板111とステンレスシート112とを貼り合せた後、シート基板111を加熱、加圧し、両者111,112を接合する。
ここで、接着剤または熱溶着の何れの手段を用いる場合も、シート基板111が加熱されることになる。しかしながら、シート基材111と比較して線膨張係数の小さいステンレスシート112との接合であるため、このステンレスシート112によってシート基材111の伸長や膨張が抑制される。
【0070】
続いて、
図7(b)に示すように、ステンレスシート112にエッチング加工を施し、スペーサ孔102aを形成する。これにより、スペーサプレート102が完成する。
【0071】
次に、
図7(c)に示すように、シート基材111にレーザ加工を施し、第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34aを形成する。これにより、ノズルプレート35が完成する。なお、レーザ加工におけるレーザ光は、各ノズル孔33a,34aを円錐台状に形成すべく(
図5参照)、ステンレスシート112のスペーサ孔102aを介して照射される。
ここで、シート基材111は、レーザ加工を施すことにより加熱され、伸長や膨張しようとするが、シート基材111と比較して線膨張係数の小さいスペーサプレート102が接合されているので、スペーサプレート102によってシート基材111の伸長や膨張が抑制される。このため、シート基材111に、精度よく第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34aが形成される。
【0072】
一方、スペーサプレート102およびステンレスシート112の製造と並行して、各ヘッドチップ31,32および絶縁プレート101を製造する。
まず、
図8(a)に示すように、複数のチャネル43を形成した第1アクチュエータプレート41および第2アクチュエータプレート51のそれぞれの駆動壁44に、駆動電極48aおよびダミー電極48bを形成する。そしてこの後、第1アクチュエータプレート41の他方の主面41bと第2アクチュエータプレート51の他方の主面51bとを接合する。
【0073】
さらに、第1アクチュエータプレート41の一方の主面41aに第1カバープレート42を接合すると共に、第2アクチュエータプレート51の一方の主面51aに第2カバープレート52(
図3、
図4参照)を接合する。これにより、第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32が完成する。
なお、各アクチュエータプレート41,51の複数のチャネル43は、各アクチュエータプレート41,51に不図示のダイシングブレード等によって切削加工を施すことにより、形成される。
【0074】
続いて、
図8(b)に示すように、第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32のZ方向の下端面に、接着剤または熱溶着によって絶縁プレート101を接合する(第2接合工程)。
なお、絶縁プレート101に形成される連通孔101aは、レーザ加工等により形成される。連通孔101aを形成するタイミングとしては、各ヘッドチップ31,32に絶縁プレート101を接合する前に形成してもよいし、各ヘッドチップ31,32に絶縁プレート101を接合した後でもよい。
【0075】
各ヘッドチップ31,32に絶縁プレート101を接合する前に、この絶縁プレート101に連通孔101aを形成する場合、以下の点に注意が必要である。すなわち、連通孔101aと各ヘッドチップ31,32の吐出チャネル43aとが重なるように、各ヘッドチップ31,32に対する絶縁プレート101の位置決めを精度よく行わなければならない点に注意が必要である。
一方、各ヘッドチップ31,32に絶縁プレート101を接合した後、この絶縁プレート101に連通孔101aを形成する場合、前述の方法と比較して以下の利点がある。すなわち、絶縁プレート101における吐出チャネル43aに対応する位置に、連通孔101aを形成すればよい。このため、各ヘッドチップ31,32に対する絶縁プレート101の位置決め精度が要求されないという利点がある。
【0076】
次に、
図8(c)に示すように、各ヘッドチップ31,32と絶縁プレート101とが一体化された状態で、これらヘッドチップ31,32および絶縁プレート101の表面に、気相合成法等により有機系膜であるパリレン膜Pを形成する(被膜形成工程)。
このパリレン膜Pにより、各アクチュエータプレート41,42に形成された駆動電極48aおよびダミー電極48bが被覆される。すなわち、ヘッドチップ31,32および絶縁プレート101の表面とは、外表面は勿論のこと、各アクチュエータプレート41,51と各カバープレート42,52とにより囲まれたチャネル43内(内表面)も含んでいる。
【0077】
次に、
図8(d)に示すように、絶縁プレート101におけるスペーサプレート102との接合面101bと、第1電極引出部45および第2電極引出部55(
図3参照)とに被覆されたパリレン膜Pを、アッシング処理を施して除去する(被膜除去工程)。これにより、各ヘッドチップ31,32および絶縁プレート101が完成する。
【0078】
ここで、ヘッドチップ31,32に絶縁プレート101が設けられているので、ヘッドチップ31,32とノズルプレート35(スペーサプレート102)とを接合するにあたり、ヘッドチップ31,32のZ方向の下端面をアッシング処理する必要がない。このため、絶縁プレート101に対するアッシング処理が多少オーバーアッシングとなってしまった場合であっても、各アクチュエータプレート41,42に形成されている駆動電極48aおよびダミー電極48bのうち、Z方向の下端側が露出してしまうことを防止できる。
なお、アッシング処理としては、光励起アッシングやプラズマアッシング等が挙げられる。
【0079】
続いて、
図9(a)、
図9(b)に示すように、スペーサプレート102と、絶縁プレート101とを、接着剤または熱溶着によって接合する(第3接合工程)。そして、ノズルキャップ36(
図3、
図4参照)を取り付けて吐出部70が完成する。
ここで、絶縁プレート101にノズルプレート35を直接接合するのではなく、スペーサプレート102を介した形で絶縁プレート101にノズルプレート35を接合している。このため、スペーサプレート102によって、接合工程時に生じる熱によりノズルプレート35が伸長したり膨張したりしてしまうことを抑制できる。また、絶縁プレート101とスペーサプレート102とを接着剤により接合する場合、この接合時に余った接着剤は、スペーサプレート102のスペーサ孔102aに溜まり込む。
【0080】
このように、上述の実施形態では、ヘッドチップ31,32とノズルプレート35との間に、絶縁プレート101とスペーサプレート102とを介装させている。
これにより、予めノズルプレート35にスペーサプレート102を接合させる(第1接合工程)と共に、ヘッドチップ31,32に絶縁プレート101を接合させ(第2接合工程)、この後にヘッドチップ31,32とノズルプレート35とを一体化させる(第3接合工程)ことができる。このため、ノズルプレート35にノズル孔(第1ノズル孔33a、第2ノズル孔34a)を形成する際、および、ヘッドチップ31,32(絶縁プレート101)とノズルプレート35(スペーサプレート102)とを接合する際、これらの作業をノズルプレート35単体で行う場合と比較してノズルプレート35の全長精度(各ノズル孔33a,34aの位置精度)の低下を抑制できる。
【0081】
また、絶縁プレート101を設けることにより、パリレン膜Pの形成(被膜形成工程)、およびパリレン膜Pの除去(被膜除去工程)を、ヘッドチップ31,32に絶縁プレート101を接合した後(第2接合工程後)に行うことができる。このため、各アクチュエータプレート41,51のチャネル43に設けられる駆動電極48aおよびダミー電極48bの所望の箇所を、パリレン膜Pにより確実に被覆することができる。よって、駆動電極48aおよびダミー電極48bの絶縁性を確実に確保できる。
【0082】
また、スペーサプレート102をステンレス材によって形成することにより、ノズルプレート35と比較して線膨張係数を非常に小さくできる。また、スペーサプレート102の防錆効果を高めることができると共に、耐湿性も高めることができる。
さらに、スペーサプレート102に形成されるスペーサ孔102aは、ノズル孔33a,34aの形状に対応するように円形状に形成されている。このため、スペーサプレート102および絶縁プレート101を介してノズルプレート35のノズル孔33a,34aとヘッドチップ31,32の吐出チャネル43aとを連通させるにあたり、スペーサプレート102の表面積をできる限り大きくすることができる。
つまり、スペーサプレート102に必要以上に大きなスペーサ孔102aを形成しないので、スペーサプレート102の表面積をできる限り大きくすることができる。よって、スペーサプレート102自体の伸縮、膨張を極力抑えることができ、この結果、ノズルプレート35の伸縮、膨張を極力抑えることができる。
【0083】
一方、絶縁プレート101に形成されている連通孔101aは、吐出チャネル43aの形状に対応するように四角状に形成されている。このため、吐出チャネル43a内のインクを、効率よくスペーサプレート102のスペーサ孔102aに供給できる。このため、ヘッドチップ31,32とノズルプレート35との間に絶縁プレート101やスペーサプレート102を介装した場合であっても、吐出部70によるインクの吐出効率の低減を防止できる。
【0084】
また、絶縁プレート101に形成されている連通孔101aおよびスペーサプレート102に形成されているスペーサ孔102aは、それぞれヘッドチップ31,32の吐出チャネル43aに対応する箇所のみに形成されており、ダミーチャネル43bに対応する箇所には形成されていない。
このため、絶縁プレート101やスペーサプレート102の加工コストを極力抑えることができる。また、ヘッドチップ31,32に設けられる駆動電極48aおよびダミー電極48bの絶縁性を確実に確保できる一方、スペーサプレート102自体の伸縮、膨張を極力抑えることができる。
【0085】
さらに、スペーサプレート102に形成されているスペーサ孔102aの孔径は、各ノズル孔33a,34aのスペーサプレート102側の孔径よりも大きく、且つ吐出チャネル43aの溝幅とほぼ同等になるように設定されている。このため、ノズルプレート35とスペーサプレート102とを接着剤により接合する場合、およびスペーサプレート102と絶縁プレート101とを接合する際に余った接着剤を、スペーサ孔102aに溜め込むことができる。この結果、接着剤によってノズル孔33a,34aが塞がってしまうことを確実に防止できる。
【0086】
また、吐出部70は、ノズルプレート35に、複数のノズル孔(第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34a)からなるノズル列(第1ノズル列33および第2ノズル列34)が2列に亘って形成されるように、2つのヘッドチップ31,32(第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32)が積層されている。このため、1つの液体噴射ヘッド4におけるノズル孔の数を増大させることができる。このため、液体噴射ヘッド4から吐出されたインクによって被記録媒体Sに記録を行う際、記録される文字や画像の密度を向上させることができる。
【0087】
さらに、ノズルプレート35にノズル孔(第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34a)を形成するにあたり、まず、ノズルプレート35(シート基材111)にスペーサプレート102(ステンレスシート112)を接合し、その後にノズル孔を形成するようにしている。このため、スペーサプレート102によって、ノズル孔を形成する際のノズルプレート35の伸長や膨張が抑制され、精度よくノズル孔を形成することができる。
【0088】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、絶縁プレート101は、厚みが約10μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状とされている場合について説明した。また、スペーサプレート102は、厚みが約10μm程度のステンレス材からなるシート状とされている場合について説明した。しかしながら、各プレート101,102の厚さは10μmに限られるものではない。とりわけ、スペーサプレート102については、ノズルプレート35の伸長や膨張を抑制できれば、できる限り薄く形成することが望ましい。
【0089】
また、絶縁プレート101は、絶縁性を有する材料で形成されていればよく、スペーサプレート102は、ノズルプレート35よりも線膨張係数の小さい材料で形成されていればよい。例えば、絶縁プレート101としては、ポリイミドの他に、ガラス等の材料が挙げられる。また、スペーサプレート102としては、ステンレス材の他に、アルマイト処理を施したアルミ材等が挙げられる。
【0090】
また、上述の実施形態では、絶縁プレート101の連通孔101aは、吐出チャネル43aの形状に対応するように四角状に形成されている場合について説明した。さらに、スペーサプレート102のスペーサ孔102aは、各ノズル孔33a,34aの形状に対応するように円形状に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、連通孔101aおよびスペーサ孔102aは、絶縁プレート101およびスペーサプレート102を介し、ノズルプレート35の各ノズル孔33a,34aとヘッドチップ31,32の各吐出チャネル43aとが連通されるように形成されていればよい。
【0091】
さらに、上述の実施形態では、ノズルプレート35となるポリイミド等のフィルム材からなるシート基材111に、スペーサプレート102となるステンレスシート112を、接着剤または熱溶着によって接合し、その後スペーサ孔102aを形成し、続いて各ノズル孔33a,34aを形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、予めシート基材111に各ノズル孔33a,34aを形成してノズルプレート35とすると共に、予めステンレスシート112にスペーサ孔102aを形成してスペーサプレート102としてもよい。そして、その後、ノズルプレート35とスペーサプレート102とを接合した後、スペーサプレート102と絶縁プレート101とを接合してもよい。
このような方法とした場合であっても、ヘッドチップ31,32とノズルプレート35とを一体化する際(第3接合工程)、ノズルプレート35の伸長や膨張を抑制することができるので、ノズルプレート35の全長精度の低下を抑制できる。
【0092】
また、上述の実施形態では、各アクチュエータプレート41,51の複数のチャネル43は、各アクチュエータプレート41,51に不図示のダイシングブレード等によって切削加工を施すことにより、形成される場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、複数のチャネル43を、プレス加工やエッチング加工等により形成してもよい。
【0093】
さらに、上述の実施形態では、吐出部70は、ノズルプレート35に、複数のノズル孔(第1ノズル孔33aおよび第2ノズル孔34a)からなるノズル列(第1ノズル列33および第2ノズル列34)が2列に亘って形成されるように、2つのヘッドチップ31,32(第1ヘッドチップ31および第2ヘッドチップ32)が積層されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、2つのヘッドチップ31,32を積層せずに、1つのヘッドチップで吐出部を構成してもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、液体噴射記録装置1の一例として、いわゆるインクジェットプリンタを挙げて説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
さらに、上述の実施形態では、液体噴射ヘッド4が複数搭載された複数色用の液体噴射記録装置1について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、液体噴射ヘッド4が一つの単色用としてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態で用いられるインクとしては、水性インクや油性インク、UVインク、微細金属粒子インク、炭素インク(カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン)等、種々の材料を用いることができる。なお、上述したインクのうち、水性インクや油性インク、UVインクは複数色用の液体噴射記録装置1に好適に用いられ、微細金属粒子インク、炭素インクは単色用の液体噴射記録装置1に好適に用いられる。
【0096】
さらに、上述の実施形態では、エッジシュートタイプのヘッドチップ31,32を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、チャネル43の長手方向中央に臨むノズル孔からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプとしてもよい。
サイドシュートタイプの場合、各アクチュエータプレート41,51へのチャネル43の形成と、絶縁プレート101への連通孔101aへの形成とを、同時に行うことも可能である。
また、上述の実施形態では、各アクチュエータプレート41,51に設けられる駆動電極48aの絶縁性を確保するために、絶縁膜としてパリレン膜を採用した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、駆動電極48aの絶縁性を確保できる膜であればよい。