(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連続搬送される搬送治具からプリフォームを搬送アームに受渡すためには、連続搬送中の搬送治具と相対して搬送アームを搬送しなければならない。特許文献1では、搬送治具を搬送するチェーンのリンクプレートに設けた突起(被係合部材208A)に向けて、待機位置で停止している搬送アームに設けられたロッド(係合部材320A)を前進駆動させ、突起にロッドを機械的に係合させている。搬送治具と共に移動する突起に押動されるロッドにより、プリフォームの受け渡しに必要な所定ストローク(特許文献1の
図5中のストロークL3)だけ、搬送アームを搬送治具と相対させて搬送している(特許文献1の
図7)。
【0005】
しかし、このような機械的係合では係合部材と被係合部材の損耗が避けられず、これらを消耗品として交換することが余儀なくされる。交換を怠り摩耗度が増大すると、他の機械部品の破損も生ずることがある。
【0006】
搬送治具よりプリフォームが受け渡された搬送アームは、チェーンとの機械的係合が解除され、次工程での受渡し位置までモーターにより搬送される(特許文献1の
図5中の移動ストロークL2)。プリフォームが受け渡されて空となった搬送アームは、モーターにより戻し距離L2だけ搬送されるが、さらにストロークL3だけ搬送して待機位置まで戻すには、モーター以外の別の駆動源や機構(特許文献1の
図6に示す部材310B,310C,311,311A,320,322)が必要となる。
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、部材の摩耗を伴う機械的な係合部材や搬送アームを戻し搬送するための駆動機構を要せずに、プリフォームを連続搬送中の搬送治具と相対させて搬送アームを搬送することができるプリフォーム搬送装置及びその方法並びにブロー成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、
プリフォームが支持された搬送治具を加熱搬送路に沿って連続搬送する連続搬送部と、
第1位置と第2位置との間で前記加熱搬送路と平行な方向に沿って搬送アームを間欠搬送し、搬送途中で前記搬送治具から前記搬送アームに前記プリフォームが受け渡される間欠搬送部と、
前記第1位置に待機していた前記搬送アームを連続搬送中の前記搬送治具に追い付かせるように前記間欠搬送部を制御する制御部と、
を有し、
前記連続搬送部は、前記搬送治具に搬送力を付与する第1モーターと、前記第1モーターの回転角を検出する第1エンコーダと、を含み、
前記間欠搬送部は、前記搬送アームに搬送力を付与する第2モーターを含み、
前記制御部は、前記第1エンコーダの出力に基づいて前記第1位置と相対する基準位置に前記搬送治具が到達する到達時を検出し、前記到達時から一定間隔で、前記搬送アームを目標位置に移動させるように前記第2モーターに指令し、各々の指令中の前記目標位置は、指令時に取得していた前記第1エンコーダの最新出力に基づいて得られる前記搬送治具の現在位置に、前記第1エンコーダでの最新出力時刻から前記第2モーターでの指令受取時刻に至る遅延時間に亘って前記搬送治具が進行した移動距離が加算された位置であるプリフォーム搬送装置に関する。
【0009】
本発明の一態様によれば、搬送治具を駆動する第1モーターの回転角を検出する第1エンコーダの出力に基づいて、制御部が、第1位置(搬送アーム待機位置)と相対する基準位置に搬送治具が到達する到達時を検出し、到達時から一定間隔で、搬送アームを目標位置に移動させるように、搬送アームを搬送起動する第2モーターに指令している。目標位置とは、搬送アームが追い付く対象である搬送治具の現在位置である。この搬送治具の現在位置は、指令時に取得していた第1エンコーダの最新出力に基づいて得られる。よって、第1エンコーダから最新出力が得られた時から制御部が受信するまでに通信遅延時間が生じる。また、第1エンコーダから最新出力を制御部が受信した後、制御部から第2モーターに指令が受信されるまでにも処理による遅延時間や通信遅延時間が生じる。よって、搬送アームの目標位置は、搬送治具の現在位置に、それらの総和の遅延時間に亘って搬送治具が進行した移動距離が加算された位置に設定している。こうして、部材の摩耗を伴う機械的な係合部材や搬送アームを戻し搬送するための駆動機構を要せずに、プリフォームを連続搬送中の搬送治具と相対させて搬送アームを搬送することができる。
【0010】
(2)本発明の一態様では、前記制御部は、前記移動距離を、前記遅延時間に相当する一定時間に、前記搬送治具の速度を乗算して算出することができる。ここで、遅延時間は予め測定することができ、第1エンコーダと制御部との間の通信距離、制御部での処理時間、制御部と第2モーターとの間の通信距離が一定であれば、遅延時間も一定である。また、搬送治具の速度も測定することができ、速度が変動する場合は平均速度等を用いることができる。
【0011】
(3)本発明の一態様では、前記連続搬送部は、前記搬送治具を搬送する、複数のリンクが連結された無端チェーンと、前記第1モーターにより駆動されて前記無端チェーンに噛み合う駆動スプロケットと、をさらに有し、指令により前記第1位置にある前記搬送アームを前記搬送治具に追い付かせる同調駆動期間に前記無端チェーンが前記基準位置から移動する距離は、一リンクの支点間のリンク長の1/4未満に設定することができる。
【0012】
ここで、連続搬送部が無端チェーンと駆動スプロケットを設ける場合、駆動スプロケットの山から山(または谷から谷)にチェーンのリンクが係合する間に、リンク長手方向は直線走行路に対して交差することになるので、チェーン速度は正弦波のように変化する。ただし、移動距離の計算に用いる搬送治具の速度とは、同調駆動期間中の速度であるので、同調駆動期間が短ければ搬送治具の速度変動は小さくなる。また、無端チェーンと駆動スプロケットとの噛み合い関係は装置によって一義的に定まる。同調駆動期間にチェーンが基準位置から移動する距離が、無端チェーンの一リンクの支点間のリンク長の1/4未満に設定されれば、速度変動を示す正弦波の2つのピークの少なくとも一つは同調駆動期間外となる。よって、搬送治具の速度変動が小さくなり、搬送アームをより正確に目標位置に移動制御することができる。なお、同調駆動期間にチェーンが基準位置から移動する距離は、無端チェーンの一リンクの支点間のリンク長の好ましくは1/5以下〜1/8以下に設定することができる。
【0013】
(4)本発明の一態様では、前記制御部は、前記同調駆動期間における前記無端チェーンの平均速度に基づいて前記移動距離を算出することができる。上述の通り、同調駆動期間におけるチェーンの速度変動を小さくすれば、同調駆動期間におけるチェーンの平均速度を用いても速度誤差は小さくなるので、より正確な位置制御が可能となる。
【0014】
(5)本発明の一態様では、前記搬送治具は、前記プリフォームの口部を下向きとして倒立状態で前記プリフォームを支持する昇降可能な搬送台を含むことができる。前記間欠搬送部は、前記搬送アームを前記搬送台に対して進退させる進退駆動部を含み、前記同調駆動期間の終期は、前記進退駆動部により前記搬送アームが前進されて前記プリフォームの前記口部を保持した後であって、前記搬送台が下降した時に設定することができる。
【0015】
搬送アームがプリフォームの口部を保持した後であって、搬送台が下降した時に、プリフォームは搬送治具から搬送アームに完全に受け渡されたことになる。同調駆動期間の終期を搬送台が下降した時に設定することで、プリフォームが搬送アームに完全に受け渡されるまで、搬送治具と相対して搬送アームを搬送することができる。なお、同調駆動期間終了後に搬送アームの搬送速度は速く設定されれば、プリフォームを受け取った搬送アームが後続のプリフォーム(搬送治具)と干渉することはない。
【0016】
(6)本発明の一態様では、前記制御部は、前記同調駆動期間の終了後から、前記進退駆動部により前記搬送アームが後退されるまでの期間を追加同調駆動期間として前記間欠搬送部を制御し、前記追加同調駆動期間に前記制御部から出力される指令中の前記移動距離は、前記同調駆動期間における前記無端チェーンの平均速度に基づいて算出されることができる。
【0017】
同調駆動期間の終了後、プリフォームを受け取った搬送アームが後退されるまで追加同調駆動期間が設定されると、搬送アームの後退中も搬送アームは搬送治具と相対して移動されるので、プリフォームを受け取った搬送アームが後続のプリフォーム(搬送治具)と干渉することはない。この際、同調駆動期間と追加同調駆動期間とのトータル期間中におけるチェーンの速度変動は、同調駆動期間中におけるチェーンの速度変動よりも大きい。そのため、追加同調駆動期間に制御部から出力される指令中の移動距離は、同調駆動期間におけるチェーンの平均速度に基づいて算出している。このようにしても、追加同調駆動期間に亘って搬送アームは搬送治具とほぼ相対して移動させることができる。こうすると、加熱搬送路上にて先行する搬送治具にプリフォームが残存していても、後退された搬送アームの間欠搬送経路に支障はない。よって、受け渡し不良により加熱搬送路に残存するプリフォームが、搬送アームに保持されて間欠搬送されるプリフォームと干渉することがない。
【0018】
(7)本発明の一態様では、前記間欠搬送部は、前記第2モーターの回転角を検出する第2エンコーダをさらに含むことができる。前記制御部は、前記第1エンコーダからの最新出力に基づいて求められる前記搬送治具の位置と、前記第2エンコーダからの最新出力に基づいて求められる前記搬送アームの位置と、の間の距離が所定値以下になった時に、前記搬送治具から前記搬送アームに前記プリフォームを受け渡す動作を開始することができる。
【0019】
搬送アームが搬送治具に追い付いたか否かは、搬送治具の位置と搬送アームの位置との間の距離が所定値以下になったか否かで判定できる。搬送アームが搬送治具に追い付いたことが判定された後であれば、搬送治具から搬送アームにプリフォームを受け渡す動作を開始しても、受け渡し不良が生ずることはない。
【0020】
(8)本発明の他の態様は、上述した(1)〜(7)のいずれかに記載のプリフォーム搬送装置を有するブロー成形装置に関する。このブロー成形装置によれば、加熱されたプリフォームをブロー成形部に円滑に搬送することができ、しかも部材の摩耗を伴う機械的な係合部材や搬送アームを戻し搬送するための駆動機構を要しない。
【0021】
(9)本発明のさらに他の態様は、
第1モーターの駆動力を用いて、プリフォームが支持された搬送治具を加熱搬送路に沿って連続搬送する第1工程と、
第2モーターの駆動力を用いて、第1位置と第2位置との間で前記加熱搬送路と平行な方向に沿って搬送アームを間欠搬送する第2工程と、
前記搬送アームの搬送途中で前記搬送治具から前記搬送アームに前記プリフォームが受け渡す第3工程と、
を有し、
前記第2工程は、前記第1位置に待機していた前記搬送アームを連続搬送中の前記搬送治具に追い付かせる同調駆動工程を含み、
前記同調駆動工程は、
前記第1モーターの回転角を検出する第1エンコーダの出力に基づいて前記第1位置と相対する基準位置に前記搬送治具が到達する到達時を検出する工程と、
前記到達時から一定間隔で、前記搬送アームを目標位置に移動させるように前記第2モーターに指令する工程と、
を含み、
各指令中の前記目標位置は、指令時に取得していた前記第1エンコーダの最新出力に基づいて得られる前記搬送治具の現在位置に、前記第1エンコーダでの最新出力時刻から前記第2モーターでの指令受取時刻に至る遅延時間に亘って前記搬送治具が進行した移動距離が加算された位置であるプリフォーム搬送方法に関する。
【0022】
本発明のさらに他の態様に係るプリフォーム搬送方法においても、部材の摩耗を伴う機械的な係合部材や搬送アームを戻し搬送するための駆動機構を要せずに、プリフォームを連続搬送中の搬送治具と相対させて搬送アームを搬送することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について、比較例を参照して詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0025】
1.プリフォーム搬送装置及びブロー成形装置
本実施形態のプリフォーム搬送装置100は、
図1に示す例えばコールドパリソン方式のブロー成形装置1の一部として構成される。ブロー成形装置1は、外部より供給されるプリフォーム例えば広口プリフォーム10を受け入れ、受け入れられた広口プリフォーム10を加熱し、加熱された広口プリフォーム10を容器例えば広口容器にブロー成形するものである。
【0026】
広口プリフォーム10は、
図2に示すように、胴部12に対して比較的に大きい口部11を備えることから、広口プリフォーム10は水平面HR上で倒立姿勢にて自立させることができる。口部11の外周面にはねじ山が形成され、口部11の開口端面11Aから離れた位置、例えば口部11と胴部12との境界にて外方に突出するフランジ13が形成される。倒立状態のプリフォーム10の中心軸14は水平面HRに直交する。
【0027】
予め射出成形された広口プリフォーム10は、ブロー成形装置1に取付けられる外部機器であるシューター20を介してブロー成形装置1に供給される。シューター20の出口より一列で連続供給される広口プリフォーム10は、スターホイール110の回転により一つずつ分離されてブロー成形装置1に搬入される。
【0028】
ブロー成形装置1には、加熱搬送路120を備えた加熱部(連続搬送部)200と、間欠搬送部300と、ブロー成形部400とが設けられている。加熱部200は、広口プリフォーム10の胴部12を、口部11を下向きとした倒立状態で、無端状の加熱搬送路120に沿って連続搬送して加熱する。ブロー成形部400は、N(Nは自然数で、本実施形態ではN=2)個の広口プリフォーム10を、口部11を上向きとした正立状態で同時にブロー成形して容器に成形する。間欠搬送部300は、N個のプリフォームを、加熱部200からブロー成形部400に間欠搬送する。加熱部(連続搬送部)200と間欠搬送部300と制御部600(
図7にて後述する)とで、プリフォーム搬送装置100が構成される。
【0029】
耐熱容器を成形する場合には、ブロー成形部400は、一次ブロー成形部410と二次ブロー成形部420とを含むことができる。一次ブロー成形部410は、正立状態のN個のプリフォーム10を一次ブロー型411内にて一次ブロー成形してN個の一次ブロー成形品を形成し、かつ、加熱された一次ブロー型411にてN個の一次ブロー成形品が加熱される。一次ブロー型411から取り出されて収縮されたN個の一次ブロー成形品は、二次ブロー成形部420の二次ブロー型421内にて正立状態で二次ブローされ、かつ、加熱された二次ブロー型421にて加熱されて、耐熱性を有するN個の最終成形品(二次ブロー成形品)が成形される。本実施形態では、一次ブロー型411及び二次ブロー型421の型締め機構430を共用している。ブロー成形装置1にはさらに、正立状態のN個の最終成形品を取り出す取出し部500を設けることができる。
【0030】
2.プリフォーム搬送措置
次に、プリフォーム搬送措置1001に含まれる加熱部(連続搬送部)200と間欠搬送部300とについて説明する。
【0031】
2.1.加熱部
加熱部(連続搬送部)200は加熱搬送路120を含む。加熱搬送路120は、第1,第2スプロケット121,122に架け渡された無端チェーン123を有する。チェーン123を構成する各リンク123Aには、
図3(A)に示すように、広口プリフォーム10を倒立状態で支持する搬送治具130が第1ピッチP1で固定されている。
図3(A)では、一リンク123Aの支点間のリンク長Lと第1ピッチP1とが等しい。
【0032】
搬送治具130は、チェーン123に自転可能に支持された自転軸131の上端に、広口プリフォーム10の口部11に形成された下向き開口に嵌入され、広口プリフォーム10を載置する搬送台132を有する。
【0033】
自転軸131の上端は、
図3(A)(B)に示すようにボルト131Aとすることができる。この場合、搬送台132はボルト131Aと締結されるナットを有する。もしくは、自転軸131の上端にボルト締結用のナット孔を設け、搬送台132をボルト131Aにより自転軸131に結合させる方式でもよい。これにより、口部11のサイズが異なる広口プリフォーム10を成形する場合には、そのサイズに合った搬送台132に交換して、自転軸131と結合させることができる。
【0034】
本実施形態の搬送治具130は、自転軸131の下端に、自転駆動用の部材、例えば、円盤(摩擦板)133が固定されている。自転動作をより確実にするため、円盤133の代わりに、通常用いられるスプロケットを代用しても良い。
【0035】
本実施形態では、
図4に示す搬送治具130の押し上げ機構150を、例えば
図1に示すスターホイール110の中心と第1スプロケット121の中心とを結ぶ線上であって、広口プリフォーム10の搬送路の直下に設けている。この押し上げ機構150は、チェーン123により搬送される複数の搬送治具130の一つを押し上げて、倒立状態の広口プリフォーム10の口部11に搬送治具130の一部を嵌入させるものである。
【0036】
押し上げ機構150は、
図4に示すように、例えばエアーシリンダ152により進退駆動されるロッド154に固定された押し上げ部156を有する。押し上げ部156は、搬送治具130の下端に設けられた円盤133を押し上げることで、搬送治具130全体を押し上げる。
図7にて鎖線で示す位置から実線で示す位置に円盤133が押し上げられることで、広口プリフォーム10は搬送治具130に保持される。
【0037】
押し上げ部156で押し上げられた円盤133は、搬送治具130の搬送に伴い押し上げ部156上を滑って移動する。押し上げ部156を通過した後の位置には、加熱搬送路120に例えば可動接触部160を配置することもできる。この場合、押し上げ部156で押し上げられた円盤133は、搬送治具130の搬送に伴い押し上げ部156上を滑って移動し、
図4に示す2つの可動接触部160を経由して、固定接触部222(
図5参照)に案内される。
【0038】
加熱部(連続搬送部)200の加熱搬送路120は、上流側の第1直線搬送路120Aと下流側の第2直線搬送路120Bとを有する(
図1)。加熱搬送路120(第1,第2直線搬送路120A,120B)には、
図5に示す加熱機構が配置されている。この加熱機構として、
図5に示すように、フレーム220の上に、加熱搬送路120の中心線L1を挟んだ両側の一方にはヒーター部230が、他方には反射部240が配置されている。ヒーター部230は、広口プリフォーム10の胴部12を加熱する複数の棒状ヒーター232を高さ方向にて異なる位置に有する。また、フレーム220には、搬送治具130の円盤133の下面と接触する固定接触部222が形成されている。広口プリフォーム10を保持した搬送治具130が、
図5の紙面の垂直方向にチェーン123によって搬送されると、搬送治具130と共に搬送される摩擦板例えば円盤133が固定接触部222と摩擦接触する。それにより、円盤133には接触部222から回転力が付与され、チェーン123に自転可能に支持された自転軸131が自転される。
【0039】
加熱搬送路120に沿って自転しながら搬送される広口プリフォーム10に対して、ヒーター部230からの輻射熱線と、その輻射熱線を反射部240で反射した熱線とが入射され、広口プリフォーム10の胴部12の全体を均一に加熱することができる。
【0040】
2.2.間欠搬送部
間欠搬送部300は、第2直線搬送路120Bと平行に設けられたアーム走行部に沿って移動する各N個の第1〜3搬送アーム301〜303を有する。加熱搬送路120から倒立状態の広口プリフォーム10を受け取る第1搬送アーム301は、反転部310により180度回転されて、広口プリフォーム10の開口端面11Aを上向きとする正立状態に反転する。第1搬送アーム301の駆動機構と、第2,第3搬送アーム302,303の駆動機構とは異なる。各駆動機構は、モーターにより回転される駆動プーリと従動プーリとを含み、それらの間にベルトが架け渡されて構成することができる。第1搬送アーム301は第1ベルトに固定されて、加熱搬送路120と一次ブロー成形部410との間を往復駆動される。第2,第3搬送アーム302,303は第2ベルトに固定されることで、第2搬送アーム302は一次・二次ブロー成形部410,420間を、第3搬送アーム303は二次ブロー成形部420及び取出し部500の間を、それぞれ同一距離だけ往復駆動される。
【0041】
N個の第1搬送アーム301は、
図6にて後述する第2モーター603にて搬送駆動される途中で、進退駆動部605により進退駆動される。N個の第1搬送アーム301は、2つのチャック片がバネによって常時閉じ方向に付勢されている。N個の第1搬送アーム301が加熱搬送路120に向けて前進されると、プリフォーム10の口部11と当接して押し広げられ、口部11をチャックすることができる。
【0042】
一方、加熱搬送路120では、
図5に示す固定接触部222に円盤122が支えられて、プリフォーム10を保持する搬送台132が上昇位置に維持されて搬送されるが、駆動スプロケット121の上流域から下流域にかけて固定接触部222が存在しない。よって、固定接触部222が存在しない領域では、搬送治具130の搬送台132は降下している。N個の第1搬送アーム301によりプリフォーム10が保持される位置よりも上流側では、搬送治具130の搬送台132は降下される。それにより、プリフォーム10は搬送治具130から第1搬送アーム301へと受け渡され、その後に第1搬送アーム301の定常搬送によりブロー成形位置に搬送される。この定常搬送駆動は、
図6に示す進退駆動部605により第1搬送アーム301を後退駆動する前後のいずれであっても良い。
【0043】
加熱部200から広口プリフォーム10を受け取るN個の第1搬送アーム301は第1ピッチP1(加熱ピッチ=ブロー成形ピッチ)で固定しても良いし、第1ピッチP1よりも大きい第2ピッチP2(ブロー成形ピッチ)にピッチ変換しても良い。第2,第3搬送アーム301,303のピッチは、第1搬送アーム301のピッチに応じて第1ピッチP1または第2ピッチP2に固定される。さほど高い生産量が要求されない広口容器の成形機としては、機械構成が簡略化され低コストにつながるピッチ固定式の方が望ましい。例えば、第1〜第3搬送アーム301〜303は2個の搬送アームを固定可能である。同時ブロー成形個数が2個の場合は2つの搬送アームを用い、同時ブロー成形個数が1個の場合は1個の搬送アームのみ利用することができる。加熱部200の搬送治具130もまた同様に考えられる。2個同時に広口容器を製造する場合は搬送治具130に空きなくプリフォーム10を配置し(P1=L)、1個のみ製造の時は一つ置きにプリフォーム10を配置する(P1=2L)。この際、搬送治具130の搬送速度Vは、プリフォーム10のサイズを考慮して適宜変更するとより好ましい。
【0044】
3.プリフォーム搬送装置の制御系
次に、プリフォーム搬送装置100の制御系について説明する。
図6は、プリフォーム搬送装置100の制御系ブロック図である。なお、
図6中の機械要素121,123Aの相対的サイズは実際とは異なる。また、
図6以降に示す例では、N=1本の第1搬送アーム301の搬送制御について説明するが、複数の第1搬送アーム301の搬送制御も同一である。
図6において、プリフォーム搬送装置100の制御を司る制御部600が設けられている。加熱部(連続搬送部)200には、駆動側スプロケット121の連続駆動源である第1モーター601と、第1モーター601の回転角を検出する第1エンコーダ602とが設けられている。間欠搬送部300には、第1搬送アーム301の間欠駆動源である第2モーター603と、第2モーター603の回転角を検出する第2エンコーダ604と、第1搬送アーム301の進退駆動部である例えばエアーシリンダ605とが設けられている。なお、第1搬送アーム301の駆動機構は、第2モーター603により回転される駆動プーリ606と従動プーリ607とを含み、プーリ606,607間にベルト608が架け渡されて構成することができる。第1搬送アーム301及び進退駆動部605はベルト608に固定されて、加熱搬送路120と対向する第1位置(待機位置)と一次ブロー成形部410のブロー成形位置(第2位置)との間を往復駆動(間欠駆動)される。
【0045】
制御部600は、第1,第2エンコーダ602,604からの出力に基づいて、第2モーター603を駆動制御して、停止位置に待機している搬送アームを連続搬送中の搬送治具に追い付かせる制御(同調駆動制御と言う)を行う。同調駆動制御が実施される期間を、同調駆動期間T1と称し、同調駆動期間T1中の動作工程を同調駆動工程と称する。また、制御部600は、第1,第2エンコーダ602,604からの出力に基づいて第1搬送アーム301の進退駆動を制御することができる。
【0046】
3.1.第1実施形態
図7は、同調駆動制御の第1実施形態を示すフローチャートである。制御部600は、所定の動作クロック(例えば一周期が3mS程度)に従って、第1,第2エンコーダ602,604からの出力を受信し、第2モーター603及び進退駆動部605に指令を出力するものとする。第1モーター601は定速で連続回転しているものとする。
【0047】
図7において、制御部600は動作クロックに従って第1エンコーダ602の出力を受信する(ステップ1)。第1エンコーダ602の出力(第1モーター601の回転角)に基づいて求まる搬送治具130の現在位置が、
図6に示す第1搬送アーム301の待機位置(第1位置)に相対する基準位置P0に到達したか否かが判定される(
図7のステップ2)。
図7のステップ2での判定がYESになるまで
図7のステップ1が繰り返される。
【0048】
搬送治具130の現在位置が、
図6に示す第1搬送アーム301の待機位置(第1位置)P0に到達した時(ステップ2がYES)に、制御部600は同調駆動期間T1を開始し、同調駆動期間T1の開始を判断した時の動作クロックを時刻t0と定義する(
図7のステップ3)。また、時刻toでの第1エンコーダ602からの出力に基づいて求められる搬送治具130の現在位置P1(t0)=基準位置P0とする。なお、これ以降の搬送治具130または第1搬送アーム301の現在位置とは、それぞれ
図6基準位置P0からの距離で定義される位置とする。また、同調駆動期間T1の開始位置は基準位置P0であり、同調駆動期間T1の終了位置は基準位置P0から距離L1(後述する
図8参照)とする。本実施形態では、加熱搬送路120上で搬送治具130が降下する位置が、基準位置P0から距離L1に設定されていて、同調駆動期間T1の終了位置は搬送治具130が降下する位置としているからである。
【0049】
次に、制御部600は、第2モーター603に対して、時刻t0の動作クロックで第1搬送アーム301が到達すべき目標位置Px(tn)(最初の目標位置はPx(t0)である)を指令する(
図7のステップ4)。最初の目標位置Px(t0)=P1(t0)+V・Tである。ここで、Vは同調駆動期間T1中の搬送治具130の速度である。同調駆動期間T1中の搬送治具130の速度が変動する場合には、同調駆動期間T1中の搬送治具130の平均速度とすることができる。Tは
図6に示す遅延時間である。遅延時間Tは、予め測定することができ、第1エンコーダ602と制御部600との間の通信距離、制御部600での処理時間、制御部600と第2モーター603との間の通信距離が一定であれば、遅延時間Tも一定である。
【0050】
次に速度Vについて考察する。同調駆動期間T1中の搬送治具130の速度Vは、例えばプーリと平ベルトとを用いた駆動方式で、平ベルトに滑りも伸縮も生じない場合は一定とみなすことができる。ただし、本実施形態の加熱部(連続搬送部)200は、搬送治具130を搬送するために、複数のリンク123Aが連結された無端チェーン123と、第1モーター601により駆動されて無端チェーン123に噛み合う駆動スプロケット121と、を有する。
【0051】
駆動スプロケット121と噛み合い始めた無端チェーン123の一リンク123Aは、
その後続の他の一リンク123Aとの連結角度が徐々に変化するので、各リンク123Aに固定された搬送治具130の速度Vは変動する。この速度Vの変動を、搬送治具の速度の変動を示す特性図である
図8に示す。
図8は、搬送治具130が無端チェーン123の一リンク123Aの支点間のリンク長Lだけ移動する間の速度Vの変動を示している。
図8に示すように、駆動スプロケット121の山から山(または谷から谷)に無端チェーン123の一リンク123Aが係合する間に、搬送治具130の速度Vは正弦波のように変化する。ここで、無端チェーン123と駆動スプロケット121との噛み合い関係は、加熱搬送路120に依存してプリフォーム搬送装置100毎に一義的に定まる。よって、
図3の速度Vの特性も一義的に定まる。
【0052】
一方、同調駆動期間T1に無端チェーン123の一リンク123Aが基準位置P0から移動する距離L1は、速度Vに依存して短くすることができる。
図8に示すように、例えば距離L1を無端チェーン123の一リンク123Aの支点間のリンク長L(本実施形態ではLは130mm程度)の1/4未満に設定することができる。こうすると、速度変動を示す正弦波の2つのピークの少なくとも一つは同調駆動期間T1外となる。よって、同調駆動期間T1中での搬送治具130の速度Vの変動が小さくなり、上述した指令により第1搬送アーム301をより正確に目標位置に移動制御することができる。なお、同調駆動期間T1にチェーンが基準位置P0から移動する距離L1は、無端チェーン123の一リンクの支点間のリンク長Lの好ましくは1/5以下〜1/8以下(本実施形態では数十mm以下〜十数mm以下)に設定することができる。なお、本実施形態では同調駆動期間T1の長さは10mS程度である。
【0053】
次の動作クロックが入力されたら(
図7のステップ5がYES)、
図7のステップ6でtnをtn+1に更新する。次の動作クロックに従って、制御部600は第1エンコーダ602の出力を受信する(
図7ステップ7)。第1エンコーダ602の最新出力により、制御部600は搬送治具130の位置P1(tn)をP1(tn+1)=P1(t1)に更新する(
図7ステップ7)。
【0054】
次に、制御部600は、搬送治具130の現在位置P1(tn)が、搬送台132がプリフォーム10の口部11から離脱される搬送台132の降下位置(
図8に示す基準位置P0+距離L1の位置)に到達したか否かを判定する(
図7のステップ8)。
【0055】
次に、
図7のステップ8での判定がNOであれば、制御部600は、第2モーター603に対して、時刻t1の動作クロックで第1搬送アーム301が到達すべき次の目標位置Px(tn)=Px(t1)を指令する(
図7のステップ6)。目標位置Px(tn)=P1(tn)+V・Tである。以降は、
図7のステップ5に戻り、
図7のステップ8での判定がYESとなるまで、
図7のステップ5からステップ9が繰り返される。
【0056】
図7のステップ8での判定がYESとなると、同調駆動期間T1は終了される(
図7のステップ10)。それにより、制御部600は第2モーター603の動作を上述した定常動作(ブロー成形部400に向けての搬送動作)に切り換える(
図7のステップ11)。
【0057】
図9は、制御部600による進退駆動部605の制御動作フローチャートである。先ず、制御部600は、
図7に示すステップ3での判定がYESとなって、tn=t0となる同調駆動期間T1が開始されたか否かを判定する(
図9のステップ1)。その後、時刻t0より後の動作クロックが入力されたら(
図7のステップ及び
図9のステップ2がYES)、
図9のステップ3でtnをtn+1に更新する(
図9の最初のステップ3ではtn=t1となる)。時刻t1の動作クロックに従って、制御部600は第1,第2エンコーダ602,604の出力を受信する(
図9ステップ4)。第1エンコーダ602の最新出力により、搬送治具130の現在位置P1(tn)=P1(t1)となる。第2エンコーダ604の最新出力により、第1搬送アーム301の現在位置P2(tn)=P2(t1)となる。
【0058】
次に、制御部600は搬送治具130の現在位置P1(tn)と第1搬送アーム301の現在位置P2(tn)との間の距離の差分の絶対値がしきい値αを下回ったか否かを判定する(
図9のステップ5)。|P1(tn)−P2(tn)|≧αであれば(
図9のステップ5の判定がNO)、
図9のステップ2からステップ5が繰り返される。
【0059】
|P1(tn)−P2(tn)|<αであれば(
図9のステップ5の判定がYES)であれば、制御部600は進退駆動部605に指令して第1搬送アーム301を前進駆動させる。つまり、搬送治具130に第1搬送アーム301が追い付いたことから、搬送治具130から第1搬送アーム301へのプリフォーム10の受け渡し動作が開始される。
【0060】
その後の動作クロックが入力されたら(
図9のステップ7がYES)、
図9のステップ8でtnをtn+1に更新する。時刻tnの動作クロックに従って、制御部600は第1602の出力を受信する(
図9ステップ9)。第1エンコーダ602の最新出力により、搬送治具130の現在位置P1(tn)はP1(tn+1)に更新される。
【0061】
次に、制御部600は、求められた搬送治具130の現在位置P1(tn)が、搬送台132がプリフォーム10の口部11から離脱される搬送台132の降下位置(
図8に示す基準位置P0+距離L1の位置)に到達したか否かを判定する(
図9のステップ10)。
図9のステップ7からステップ10は、
図9のステップ10での判定がYESとなるまで繰り返される。
図9のステップ10での判定がYESとなると、制御部600は進退駆動部605を制御して、第1搬送アーム301を後退駆動させる(
図9のステップ11)。
【0062】
なお、本実施形態では、
図7のステップ11にて第1搬送アーム301を定常動作させる開始時期は、
図9のステップ11にて第1搬送アーム301を後退駆動させる前であっても後であっても良い。加熱搬送路120の直線走行領域の上流側プリフォーム10は、前サイクルにてブロー成形部400に搬送されている。よって、第1搬送アーム301を後退駆動させる前に第1搬送アーム301をブロー成形部400に向けて搬送しても、搬送されるプリフォームと干渉するものは存在しない。ただし、搬送される第1搬送アームが加熱搬送路120の上流側の搬送治具130と干渉を防止するため、搬送台132の加工ストロークを確保しておく必要がある。
【0063】
3.2.第2実施形態
図10は、同調駆動期間T1及び追加同調駆動期間T2を有する第2実施形態の動作フローチャートである。
図10では、
図7のステップ8とは異なるステップ8の制御内容を実施する以外は、
図7と同一である。
図10のステップ8では、第1搬送アーム301が後退移動が終了したか否かを判定している。
図10のステップ8での判定がYESとなるには、
図9のステップ11にて第1搬送アーム301の後退移動が終了していることが必要である。換言すれば、第2実施形態では、
図8に示す基準位置P0から搬送台132の降下位置(P0+L1)まで搬送治具130の搬送される期間である同調駆動期間T1に加えて、搬送台132の降下位置(P0+L1)から第1搬送アーム301の後退終了位置(
図8に示すP0+L2の位置)まで搬送治具130の搬送される期間である追加同調駆動期間T2を有する。
【0064】
同調駆動期間T1の終了後、プリフォーム10を受け取った第1搬送アーム301が後退されるまで追加同調駆動期間T2が設定されると、第1搬送アーム301の後退中も第1搬送アーム301は搬送治具130と相対して移動される。よって、プリフォーム10を受け取った第1搬送アーム301が後続のプリフォーム10または搬送治具130と干渉することはない。また、後退された第1搬送アーム301をブロー成形部400に向けて搬送開始することで、加熱搬送路120上にて先行する搬送治具130にプリフォーム10が残存していても、第1搬送アーム301が先行のプリフォーム10と干渉することはない。
【0065】
ここで、
図8に示すように、同調駆動期間T1(P0〜P0+L1)と追加同調駆動期間T2(P0+L1〜P0+L2)とのトータル期間中における搬送治具130の速度変動は、同調駆動期間T1(P0〜P0+L1)中における搬送治具130の速度変動よりも大きい。そのため、追加同調駆動期間T2に制御部600から出力される指令中の移動距離は、同調駆動期間T1における搬送治具130の平均速度Vに基づいて算出している。このようにしても、追加同調駆動期間T2(P0+L1〜P0+L2)に亘って第1搬送アーム301は搬送治具130とほぼ相対して移動させることができる。要は、追加同調駆動期間T2(P0+L1〜P0+L2)に亘って、後続のプリフォーム10と第1搬送アーム301とが干渉しなければよい。
【0066】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、本発明は広口プリフォーム以外のプリフォームを用いたプリフォーム搬送装置や、耐熱容器でない容器を成形するブロー成形装置にも適用可能である。