(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393152
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
B01F 1/00 20060101AFI20180910BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20180910BHJP
B01F 15/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
B01F1/00 A
B01F3/04 Z
B01F15/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-223459(P2014-223459)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-87524(P2016-87524A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 清
(72)【発明者】
【氏名】谷村 竜一
【審査官】
井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−182170(JP,A)
【文献】
特開2005−246351(JP,A)
【文献】
特開2012−157789(JP,A)
【文献】
特開2014−104441(JP,A)
【文献】
特開2012−254407(JP,A)
【文献】
特開2010−158680(JP,A)
【文献】
特開2012−120945(JP,A)
【文献】
特開2008−284109(JP,A)
【文献】
特開2013−010075(JP,A)
【文献】
特開2015−112506(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/084023(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−5/26
B01F 15/
B08B 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給源から液体が導入される液体導入菅と、
前記液体導入菅内の液体に気体を注入する気体注入部と、
前記気体注入部により前記液体導入管の液体に気体が導入された気液混合体を加圧して圧送する加圧ポンプと、
前記液体導入菅と連通し、前記加圧ポンプにより送られてきた気液混合体中の液体と気体を加圧溶解する溶解タンクと、
前記溶解タンクと連通し、溶解タンク内で気体の溶解濃度が高められた液体が導出される液体導出管と、
前記液体導出菅内の液体中に微細気泡を生成し、当該微細気泡を含む液体を噴射する微細気泡発生ノズルと、
前記液体導入菅に設けられ、前記液体供給源から前記加圧ポンプへ向かう方向に液体の流れを許し逆方向の流れを阻止する逆止弁と、
前記液体導出菅を開閉する電磁弁と、
前記電磁弁を制御し、前記加圧ポンプを停止するとき、当該電磁弁を閉状態とする一方、当該加圧ポンプを再始動するとき、前記液体導入菅、溶解タンク及び液体導出管の内部圧力が所定値よりも低い場合、前記制御部は、前記電磁弁を閉状態のまま加圧ポンプを駆動し、当該内部圧力が所定値に達してから、当該電磁弁を開状態とする制御部と、
から構成されることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記液体導入菅、溶解タンク及び液体導出管の内部圧力は、0.2〜0.4〔MPa〕とすることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄一般に用いられ、特に機械加工の部品洗浄に用いられる微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロバブルあるいはナノバブルと呼ばれる微細気泡を発生させる方法としては、気体と液体を高速旋回させ、せん断力によりマイクロ粒径のバブルを発生させる旋回流方式や、液中に圧縮した気体を一気に解放させることによりマイクロ粒径のバブルを発生させる加圧溶解方式のほかに、超音波方式、微細孔方式などが知られている。
そこで、加圧溶解方式により微細気泡を発生する装置の一例として、特許文献1(特開2012−254407号公報)に示す微細気泡発生装置がある。この微細気泡発生装置は、管路を流れる液体中に気体を加圧溶解させた後に、液槽内の液体中に微細気泡を噴出させる微細気泡発生装置であって、液体供給源から液体が供給される吸込管と、気体を吸引し、前記吸込管内の液体に気体を導入する気体導入部と、この気体導入部により前記吸込管内の液体に気体が導入された気液混合液体を加圧して圧送する加圧ポンプと、この加圧ポンプにより送られてきた気液混合液体中の液体と気体を加圧溶解させる気液溶解タンクと、この気液溶解タンクにより加圧溶解された気液溶解液体を減圧して微細気泡を発生させる気泡発生ノズルとから構成されている。
また、旋回流方式により微細気泡を発生する場合には、専用のノズルを使用し、例えば特許文献2(特開2010−158680号公報)に示す旋回式微細気泡発生装置の付加装置を、上記微細気泡発生装置の気泡発生ノズルに装着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−254407号公報
【特許文献2】特開2010−158680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の微細気泡発生装置では、加圧ポンプを停止すると、気液溶解タンクを含め流路全体の内部圧力が低下してしまう。このため、加圧ポンプの運転再開直後では流路全体の内部圧力が所定の値に達しておらず、最初に噴射される液体は、微細気泡の含有率が低下してしまう問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、運転開始後に最初に噴射される液体であっても微細気泡を多く含む微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の微細気泡発生装置は、液体供給源から液体が導入される液体導入菅と、前記液体導入菅内の液体に気体を注入する気体注入部と、前記気体注入部により前記液体導入管の液体に気体が導入された気液混合体を加圧して圧送する加圧ポンプと、
前記液体導入菅と連通し、前記加圧ポンプにより送られてきた気液混合体中の液体と気体を加圧溶解する溶解タンクと、
前記溶解タンクと連通し、溶解タンク内で気体の溶解濃度が高められた液体が導出される液体導出管と、前記液体導出菅内の液体中に微細気泡を生成し、当該微細気泡を含む液体を噴射する微細気泡発生ノズルと、前記液体導入菅に設けられ、前記液体供給源から前記加圧ポンプへ向かう方向に液体の流れを許し逆方向の流れを阻止する逆止弁と、前記液体導出菅を開閉する電磁弁と、前記電磁弁を制御し、前記加圧ポンプを停止するとき、当該電磁弁を閉状態とする
一方、当該加圧ポンプを再始動するとき、前記液体導入菅、溶解タンク及び液体導出管の内部圧力が所定値よりも低い場合、前記制御部は、前記電磁弁を閉状態のまま加圧ポンプを駆動し、当該内部圧力が所定値に達してから、当該電磁弁を開状態とする制御部と、から構成されることを特徴とする。
【0008】
なお、前記液体導入管、溶解タンク及び液体導出管の内部圧力は、0.2〜0.4〔MPa〕とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微細気泡発生装置によれば、加圧ポンプを停止しても流路全体の内部圧力が維持されるので、加圧ポンプの運転再開後に、最初に噴射される液体であっても微細気泡を多く含ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】微細気泡発生装置の全体構成を示す図である。
【
図2】制御部と他のセンサ等の部材との信号のやりとりを説明するための図である。
【
図3】制御部による圧力制御のタイミングチャートを示す図である。
【
図4】溶解タンクの内部圧力を0.2MPa及び0.4MPaに設定したときに、噴射液1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡個数についての粒径別分布を示すグラフである。
【
図5】溶解タンクの内部圧力を0.6MPa及び0.8MPaに設定したときに、噴射液1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡個数についての粒径別分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る微細気泡発生装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、微細気泡発生装置10の全体構成を示す図である。同図に示すように、微細気泡発生装置10は、溶解タンク1と、液体導入部2と、気体注入部3と、液体導出部4と、制御部5(
図2参照)を備える。
【0012】
溶解タンク1は、水9と空気の混合体が収容される圧力容器であり、水9に空気中の酸素を溶解させて、水9の酸素濃度を高めるためのタンクである。水9は、ここでは工業用水であり、液体導入部2により溶解タンク1内に供給される。溶解タンク1に設けられているLS1Lは、溶解タンク1内の9の水位が下がったときの下限を検出するためのセンサであり、LS1Uは、水位が上がったことを検出するためのセンサである。また、溶解タンク1には、溶解タンク1の内部圧力を測定するための圧力センサPS1が設けてある。各センサの検出に基づく制御内容については、後述する。
【0013】
液体導入部2は、加圧ポンプ21と、ストレーナ22と、逆止弁23と、液体導入管24を備える。加圧ポンプ21と、ストレーナ22と、逆止弁23は、液体導入管24の途中に設けられており、液体導入管24の一端は、水槽7に接続され、液体供給管24の他端は溶解タンク1の頂部の開口11に接続されており、水槽7の水9を溶解タンク1に供給する供給路を構成する。
【0014】
加圧ポンプ21が駆動されると、加圧ポンプ21により水槽7内の水9が液体導入管24内に吸い込まれる。液体導入管24内に吸い込まれた水9は、矢印aで示す方向に流れ、ストレーナ22を通過する際に濾過された後、逆止弁23を通過する。逆止弁23は、矢印bで示す方向にだけ水9の流れを許し、その逆の方向には流れを阻止するものであり、逆止弁23を通過した後の水9は、気体注入部3により、水9と空気との混合体となる。この混合体は、矢印cで示す方向に流れ、加圧ポンプ21で例えば0.3〔MPa〕程度の圧力まで加圧されて、矢印dで示す方向に流れて溶解タンク1に送られる。
【0015】
気体注入部3は、気体導入管31と、電磁弁32と、逆止弁33と、気体吸入口34を備える。気体導入管31は、液体導入管24と交流地点Aで合流し、気体吸入口34から吸入した空気を前記液体導入管24へ送り込むための導入路であり、前記加圧ポンプにより矢印eで示す方向に空気を送り出す。そして、合流地点Aで空気と水9との混合体が生成される。また、気体導入管31には、電磁弁32と、逆止弁33が設けられている。逆止弁33は、矢印fで示す方向にだけ空気の流れを許し、その逆の方向には空気及び水9の流れを阻止するものである。電磁弁32は、液体導入管31の気体の流路を開閉することにより、気体吸入口34から液体導入管24への空気の導出とその禁止とを切り替える。
【0016】
液体導出部4は、液体導出管41と、液体導出管41に設けられる電磁弁42と、微細気泡発生ノズル43を備える。液体導出管41は、一端が溶解タンク1の底部に設けられた開口(図示せず)に接続され、矢印gで示す方向へ溶解タンク1内の空気と水9の混合体が流れる。液体導出管41の他端には微細気泡発生ノズル43が接続される。電磁弁42は、液体導出管42の液体の流路を開閉することにより、溶解タンク1から微細気泡生成ノズル43への液体の導出とその禁止とを切り替える。電磁弁42が開状態のときには、矢印hで示す方向へ空気と水9の混合体が流れ、微細気泡生成ノズル43から微細気泡を含む液体が噴射される。なお、微細気泡生成ノズル43は、旋回流方式により微細気泡を発生するように構成された周知のものであり、例えば特開2010−158680号公報に示す旋回式微細気泡発生装置の付加装置を用いる。
【0017】
図2は、制御部5と他のセンサ等の部材との信号のやりとりを説明するための図であり、
図3は、制御部5による圧力制御のタイミングチャートを示す図である。
図2に示すように、制御部5は、液面下限検出センサLS1L、液面上限検出センサLS1U及び圧力センサPS1の信号を受け付け、受け付けた信号に基づき、電磁弁32及び電磁弁42の開閉を制御する。また、制御部5は、操作部からの動作指示信号を受け付け、圧力ポンプ21の作動を制御する。ここでは、加圧ポンプ21の動作指示信号は、操作部に設けられたスイッチなどが操作者により操作されたことにより発せられる。
【0018】
図3に示すように、時点T1において、加圧ポンプ駆動指示信号を受けると、圧力ポンプ21の運転を開始するとともに、液面下限検出センサLS1L、液面上限検出センサLS1U及び圧力センサPS1の信号を受け付ける。このとき、溶解タンク1の内部圧力が所定値(例えば、0.3MPa)に達していない場合は、電磁弁42は、閉状態を維持する。これにより、溶解タンク1の内部圧力が上昇する。また、溶解タンク1内に水9が所定量収容されていない場合は、電磁弁32は、閉状態を維持する。これにより、溶解タンク1内の水位が上昇する。
【0019】
時点T2において、溶解タンク1の水位が下限値まで上昇して、水9の液面が液面下限検出値センサLS1Lにより検出されると、液面下限検出センサLS1LからON信号が出力される。このON信号を受け付けると、水9が溶解タンク1内に所定量収容されたとして、電磁弁32には、間欠運転指示信号が発せられ、電磁弁32は1秒間隔で開閉を繰り返す。開状態のタイミングでは、気体吸入口34から空気が吸引されるため、空気と水9の混合体が溶解タンク1に供給される。一方、閉状態のタイミングでは、空気の吸引が遮断されるため、水9だけが溶解タンク1に供給される。
【0020】
時点T3において、溶解タンク1内に水9が所定量収容され、かつ溶解タンク1内の圧力が所定値まで上昇すると、電磁弁42には、開放指示信号が発せられ、電磁弁42は開状態となり、微細気泡生成ノズル43から当該微細気泡を含む液体が噴射される。
【0021】
時点T4において、噴射の最中に何らかの不具合で、溶解タンク1の水位が上限値まで上昇して、水9の液面が液面上限検出センサLS1Uにより検出されると、液面上限検出センサLS1UからON信号が出力される。このON信号を受け付けると、溶解タンク9内の水量が所定量を超過したとして、電磁弁32には、開放指示信号が発せされ、電磁弁32は間欠運転を停止し開状態となる。これにより、溶解タンク1へ供給される空気の割合が高くなるので、結果的に溶解タンク1の水位が下降する。
【0022】
時点T5において、溶解タンク1の水位が下降して、水9の液面が液面上限検出センサLS1Uにより検出されなくなると、液面上限検出センサLS1UからOFF信号が出力される。このOFF信号を受け付けると、溶解タンク9内の水量が所定量に戻ったとして、再び、電磁弁32には、間欠運転指示信号が発せられ、電磁弁32は1秒間隔で開閉を繰り返す。
【0023】
時点T6において、噴射の最中に何らかの不具合で、溶解タンク1の水位が下限値まで下降して、水9の液面が液面下限検出センサLS1Lにより検出されなくなると、液面下限検出センサLS1LからOFF信号が出力される。このOFF信号を受け付けると、溶解タンク9内の水量不足として、電磁弁32には、閉鎖指示信号が発せされ、電磁弁32は間欠運転を停止し閉状態となる。これにより、溶解タンク1へ供給される水9の割合が高くなるので、結果的に溶解タンク1の水位が上昇する。
【0024】
時点T7において、溶解タンク1の水位が上昇して、水9の液面が液面下限検出センサLS1Lにより検出されると、液面上限検出センサLS1LからON信号が出力される。このON信号を受け付けると、溶解タンク9内の水量が所定量に戻ったとして、再び、電磁弁32には、間欠運転指示信号が発せられ、電磁弁32は1秒間隔で開閉を繰り返す。
【0025】
時点T8において、加圧ポンプ停止指示信号を受け付けると、圧力ポンプ21の運転を停止して、電磁弁32及び電磁弁42には、閉鎖指示信号が発せられ、電磁弁32及び電磁弁42は、閉状態となる。これにより、微細気泡発生装置10全体の内部圧力が所定値に維持される。
【0026】
時点T9において、微細気泡生成ノズル43から微細気泡を含む液体の噴射を再開すべく、加圧ポンプ再駆動指示信号を受けると、圧力ポンプ21の運転を再開するとともに、液面下限検出センサLS1L、液面上限検出センサLS1U及び圧力センサPS1の信号を受け付ける。このとき、溶解タンク1の内部圧力が所定値(例えば、0.3MPa)に維持されており、電磁弁42には、開放指示信号が発せられる。また、溶解タンク1内に水9が所定量収容されている場合は、電磁弁32には、間欠運転指示信号が発せられる。万一、溶解タンク1の内部圧力が所定値になっていない場合には、電磁弁42は溶解タンク1の内部圧力が所定値に達するまで閉状態を維持し、溶解タンク1内に水9が所定量収容されている場合には、電磁弁32は溶解タンク1内に水9が所定量収容されるまで閉状態を維持する。
【0027】
図4及び
図5は、溶解タンク1の内部圧力を0.2MPa(
図4の上図)、0.4MPa(
図4の下図)、0.6MPa(
図5の上図)及び0.8MPa(
図5の下図)にそれぞれ設定したとき、微細気泡生成ノズル43から噴射される液1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡個数についての粒径別分布を示すグラフである。この結果は、溶解タンク1の内部圧力が0.2MPa〜0.4MPaのときに、10μmの微細気泡の個数が多く分布していることを示すものであり、つまり、マイクロ径の微細気泡を多く生成することができる。
【0028】
上記微細気泡発生装置10によれば、加圧ポンプ21を停止しても装置の流路全体の内部圧力が維持されるので、加圧ポンプ21の運転再開直後から良質な微細気泡を安定して供給することができる。特に、内部圧力を0.2MPa〜0.4MPaに設定することで、マイクロ径の微細気泡を多く生成することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 溶解タンク
2 液体導入部
3 液体導出部
4 気体注入部
5 制御部
7 水槽
9 水
21 加圧ポンプ
23,33 逆止弁
24 液体導入管
32,42 電磁弁
41 液体導出管
43 微細気泡生成ノズル