(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393169
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】DC−DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
H02M3/155 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-240525(P2014-240525)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-103895(P2016-103895A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増子 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高田 幸輔
(72)【発明者】
【氏名】出口 充康
【審査官】
小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−121535(JP,A)
【文献】
特開2006−094572(JP,A)
【文献】
特開2007−074874(JP,A)
【文献】
特開2009−153278(JP,A)
【文献】
特開2015−122879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタの出力する電圧を分圧した分圧電圧と基準電圧の差を増幅して電圧VERRを出力する誤差増幅器と、
ランプ波を発生するランプ波発生回路と、
前記電圧VERRと前記ランプ波を比較し、信号PWMを出力するPWMコンパレータと、
前記信号PWMが100%DUTYになったことを検出し、100%DUTY検出信号を出力する100%DUTY検出回路と、
前記誤差増幅器の出力端子に設けられた位相補償容量及び位相補償抵抗と、
電源電圧の上昇を検出する電源電圧上昇検出回路と、
前記電圧VERRが所定の電圧より高い時に前記100%DUTY検出信号が入力されると前記電源電圧上昇検出回路の検出動作を開始する制御信号を出力し、前記電源電圧上昇検出回路の出力信号をうけて前記位相補償容量の電荷を放電する放電制御回路と、
を備えたことを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記電源電圧上昇検出回路は、
一端が電源端子と接続された容量と、
一端が前記容量の他端と接続され、他端が接地端子と接続され、前記制御信号で制御されるスイッチと、を備え、
前記スイッチと前記容量の接続点を出力端子とする、
ことを特徴する請求項1に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項3】
出力トランジスタの出力する電圧を分圧した分圧電圧と基準電圧の差を増幅して電圧VERRを出力する誤差増幅器と、
ランプ波を発生するランプ波発生回路と、
前記電圧VERRと前記ランプ波を比較し、信号PWMを出力するPWMコンパレータと、
前記信号PWMが100%DUTYになったことを検出し、100%DUTY検出信号を出力する100%DUTY検出回路と、
前記誤差増幅器の出力端子に設けられた位相補償容量及び位相補償抵抗と、
電源電圧の上昇を検出する電源電圧上昇検出回路と、
前記電圧VERRが所定の電圧より高い時に前記電源電圧上昇検出回路の出力信号をうけると前記位相補償容量の電荷を放電する放電制御回路と、を備え
前記電源電圧上昇検出回路は、前記100%DUTY検出信号が入力されると検出動作を開始する
ことを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記電源電圧上昇検出回路は、
一端が電源端子と接続された容量と、
一端が前記容量の他端と接続され、他端が接地端子と接続され、前記100%DUTY検出信号で制御されるスイッチと、を備え、
前記スイッチと前記容量の接続点を出力端子とする、
ことを特徴する請求項3に記載のDC−DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電圧を出力するDC−DCコンバータに関し、より詳しくは、出力電圧のオーバーシュートを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のDC−DCコンバータの回路図である。
従来のDC−DCコンバータは、電源端子101と、接地端子102と、基準電圧VREFを出力する基準電圧回路111と、出力端子103の出力電圧VOUTを分圧する分圧回路112と、分圧電圧VFBと基準電圧VREFを比較した結果の電圧VERRを出力する誤差増幅器110と、ランプ波VRAMPを発生するランプ波発生回路114と、電圧VERRとランプ波VRAMPを比較して信号PWMを出力するPWMコンパレータ113と、出力バッファ115と、出力トランジスタ116と、ソフトスタート回路119とからなる。
【0003】
従来のDC−DCコンバータの動作について説明する。
電源端子101に電圧VDDが印加されると、誤差増幅器110は分圧電圧VFBと基準電圧VREFとを比較して、電圧VERRを出力する。PWMコンパレータ113は、電圧VERRとランプ波VRAMP比較し、出力バッファ115に信号PWMを出力する。出力バッファ115は、ソフトスタート回路119の出力信号の制御下において、信号PWMを出力トランジスタ116に出力する。ソフトスタート回路119は、電源端子101に電圧VDDが印加されると、出力が徐々に上昇する機能を有する。従って、出力バッファ115が徐々に出力トランジスタ116をオンすることによって、DC−DCコンバータの出力電圧VOUTのオーバーシュートは抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−55692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のDC−DCコンバータは、以下のような課題を有している。
電源電圧VDDがDC−DCコンバータの出力設定電圧よりも低い場合、誤差増幅器110が出力する電圧VERRは電源電圧VDDに近い値になっていて、PWMコンパレータ113は100%DUTY状態、即ち出力トランジスタ116はスイッチングされずに常にオン状態になっている。この状態から電源電圧VDDが急激に上昇すると、電圧VERRが定常値に戻るまでの時間に、DC−DCコンバータの出力電圧VOUTがオーバーシュートしてしまう。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、PWMコンパレータ113が100%DUTY状態であっても、出力電圧VOUTのオーバーシュートを防止することが出来るDC−DCコンバータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の課題を解決するために、本発明のDC−DCコンバータは以下のような構成とした。
PWMコンパレータの100%DUTY状態を検出する100%DUTY検出回路と、電源電圧の上昇を検出する電源電圧上昇検出回路と、誤差増幅器の出力電圧を低下させる放電制御回路と、を備え、100%DUTY状態であって誤差増幅器の出力電圧が所定の電圧をより高いときに電源電圧上昇検出信号が出力されると誤差増幅器の出力電圧を低下させるDC−DCコンバータ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のDC−DCコンバータは、上述のように構成したので、電源電圧がDC−DCコンバータの所望の出力電圧よりも低い電圧から正常な電圧に上昇したときでも、出力電圧にオーバーシュートが発生しないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のDC−DCコンバータの回路図である。
【
図2】100%DUTY検出回路の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明のDC−DCコンバータの動作を示す図である。
【
図4】本実施形態のDC−DCコンバータの他の例を示す回路図である。
【
図5】
図4に係るDC−DCコンバータの動作を示す図である。
【
図6】従来のDC−DCコンバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態のDC−DCコンバータの回路図である。
本実施形態のDC−DCコンバータ100は、電源端子101と、接地端子102と、基準電圧VREFを出力する基準電圧回路111と、出力端子103の出力電圧VOUTを分圧する分圧回路112と、分圧電圧VFBと基準電圧VREFを比較した結果の電圧VERRを出力する誤差増幅器110と、ランプ波VRAMPを発生するランプ波発生回路114と、電圧VERRとランプ波VRAMPを比較して信号PWMを出力するPWMコンパレータ113と、出力バッファ115と、出力トランジスタ116と、100%DUTY検出回路118と、電源電圧上昇検出回路120と、放電制御回路121と、位相補償容量Ccと位相補償抵抗Rcを備えた位相補償回路117とを備えている。
【0011】
100%DUTY検出回路118は、入力端子をPWMコンパレータ113の出力端子と接続され、出力端子を放電制御回路121の入力端子と接続する。
電源電圧上昇検出回路120は、電源端子101と接地端子102の間に直列に接続されたスイッチ131と容量130を備え、それらの接続点をnodeAとする。
【0012】
放電制御回路121は、nodeAの電圧で制御されるスイッチ135と、ランプ波の波高値より多少高い第二の基準電圧VREF2を発生する第二の基準電圧回路132と、第二の基準電圧VREF2と電圧VERRを比較するコンパレータ133と、コンパレータ133の出力と100%DUTY検出回路118の検出信号を入力するNAND134と、を備える。
【0013】
スイッチ135は、一端が接地端子102と接続され、他端が位相補償回路117の容量Ccと抵抗Rcとの接続点と接続されている。NAND134は、放電制御信号を電源電圧上昇検出回路120のスイッチ131に出力する。
【0014】
図2は、100%DUTY検出回路118の一例を示す回路図である。
100%DUTY検出回路118は、容量201と、定電流回路202と、スイッチ203とを備え、スイッチ203の制御端子が入力端子、定電流回路202とスイッチ203の接続点が出力端子である。定電流回路202は、容量201を充電するように接続される。スイッチ203は、容量201を放電するように接続される。
【0015】
100%DUTY検出回路118は、定電流回路202によって容量201が充電され、スイッチ203によって容量201が放電される。スイッチ203は、信号PWMによって制御される。従って、信号PWMがHiとLoを繰り返している通常の動作状態では、容量201は放電され、出力端子はLoの状態を維持する。そして、信号PWMが100%DUTYになってHiを維持すると、容量201は放電されないので、容量201の電圧が反転回路の閾値を越えたときに、出力端子はHiを出力する。即ち、100%DUTY検出回路118は、100%DUTY検出状態になる。
【0016】
次に、本実施形態のDC−DCコンバータの動作を説明する。
図3は、本実施形態のDC−DCコンバータの動作を示す図である。
時刻T1までは、電源電圧VDDは、DC−DCコンバータの所望の出力電圧VOUTtarよりも低い電圧になっていて、分圧電圧VFBは基準電圧VREFよりも低い電圧になっている。誤差増幅器110の出力電圧VERRはHiであり、ランプ波VRAMPと交差しないので信号PWMはHi状態を維持する。従って、出力トランジスタ116はオン状態なので、出力電圧VOUTは電源電圧VDDである。このとき、100%DUTY検出回路118は、100%DUTY検出状態であり、出力はHiとなる。また、コンパレータ133の反転入力である第二の基準電圧VREF2よりも電圧VERRは高いので、コンパレータ133の出力はHiである。従って、100%DUTY検出回路118の出力とコンパレータ133の出力とを入力とするNAND134の出力はLoとなり、電源電圧上昇検出回路120のスイッチ131はオフとなっている。また、nodeAはスイッチ131がオンの時の接地電位を維持している。
【0017】
時刻T1から時刻T2の間では、電源電圧VDDが徐々に上昇すると、電源電圧上昇検出回路120のnodeAは、容量130のカップリングにより電源電圧VDDに追従して上昇する。nodeAが上昇することで放電制御回路121のスイッチ135がnodeAに追従するようにオンし、位相補償容量Ccの電荷を放電し、電圧VERRを下降させる。
【0018】
時刻T2において、電圧VERRが基準電圧VREF2よりも低い電圧になると、コンパレータ133の出力がLoとなる。NAND134の出力がHiとなり、電源電圧上昇検出回路120のスイッチ131をオンさせるので、nodeAは接地電位になる。従って、放電制御回路121は、スイッチ135がオフして位相補償容量Ccの放電を停止する。即ち、誤差増幅器110は、入力される分圧電圧VFBに応じた電圧VERRを出力する。
【0019】
時刻T3において、電圧VERRがランプ波VRAMPと交差し、PWMコンパレータ113の出力VPWMは矩形波になり、DC−DCコンバータのスイッチング動作が開始される。出力電圧VOUTは、電源電圧VDDの上昇中に電圧VERRが正常値に近い値になっているため、比較的緩やかに所望の出力電圧VOUTの値に近づく。従って、電源電圧VDDが正常値に復帰しても、出力電圧VOUTにオーバーシュートは発生しない。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のDC−DCコンバータによれば、電源電圧VDDがDC−DCコンバータの所望の出力電圧よりも低い電圧から、即ちPWMコンパレータ113が100%DUTY状態になっている状態から、正常な電源電圧に復帰したときでも、出力電圧VOUTのオーバーシュートを防止することが出来る。
【0021】
図4は、本実施形態のDC−DCコンバータの他の例を示す回路図である。
図4のDC−DCコンバータ100は、電源端子101と、接地端子102と、基準電圧VREFを出力する基準電圧回路111と、出力端子103の出力電圧VOUTを分圧する分圧回路112と、分圧電圧VFBと基準電圧VREFを比較した結果の電圧VERRを出力する誤差増幅器110と、ランプ波VRAMPを発生するランプ波発生回路114と、電圧VERRとランプ波VRAMPを比較し信号PWMを出力するPWMコンパレータ113と、出力バッファ115と、出力トランジスタ116と、100%DUTY検出回路118と、電源電圧上昇検出回路120と、放電制御回路121aと、位相補償回路117とを備えている。
【0022】
100%DUTY検出回路118は、入力端子をPWMコンパレータ113の出力端子に接続し、反転出力端子を電源電圧上昇検出回路120のスイッチ131の制御端子に接続される。
【0023】
放電制御回路121aは、ランプ波の波高値より多少高い第二の基準電圧VREF2を発生する第二の基準電圧132と、第二の基準電圧132と電圧VERRを比較するコンパレータ133と、非反転入力端子がnodeAと接続され、オフセット電圧Vosを有する反転入力端子が接地端子102と接続されたコンパレータ136と、コンパレータ133の出力とコンパレータ136の出力とをAND演算するAND137と、AND137の出力nodeBで制御されるスイッチ135を備える。
【0024】
次に、
図4のDC−DCコンバータの動作を説明する。
図5は、
図4に係るDC−DCコンバータの動作を示す図である。
時刻T1までは、電源電圧VDDは、DC−DCコンバータの所望の出力電圧VOUTtarよりも低い電圧になっていて、分圧電圧VFBは基準電圧VREFよりも低い電圧になっている。誤差増幅器110の出力電圧VERRはHiであり、ランプ波VRAMPと交差しないので信号PWMはHi状態を維持する。従って、出力トランジスタ116はオン状態なので、出力電圧VOUTは電源電圧VDDである。このとき、100%DUTY検出回路118は、100%DUTY検出状態であり、反転出力はLoとなる。電源電圧上昇検証回路120のスイッチ131は、100%DUTY検出回路の出力信号を受けてオフとなる。また、nodeAはスイッチ131がオンの時の電圧接地電位を維持している。即ち、放電制御回路121aのコンパレータ136の出力はLoとなっている。また、コンパレータ133の反転入力である第二の基準電圧VREF2よりも電圧VERRは高いので、コンパレータ133の出力はHiである。従って、AND137の出力nodeBはLoであり、スイッチ135はオフとなっている。
【0025】
時刻T1から時刻T2の間では、電源電圧VDDが徐々に上昇すると、電源電圧上昇検出回路120のnodeAは、容量130のカップリングにより電源電圧VDDに追従して上昇する。nodeAの電圧が上昇してコンパレータ136のオフセット電圧Vosより高くなると、コンパレータ136の出力はHiとなる。また、コンパレータ133の出力は、Hiを維持している。即ち、AND137の出力nodeBはHiとなる。従って、放電制御回路121aのスイッチ135がオンするので、位相補償容量Ccの電荷を放電し、電圧VERRを下降させる。
【0026】
時刻T2において、電圧VERRが基準電圧VREF2よりも低い電圧になると、コンパレータ133の出力がLoとなる。AND137の出力nodeBはLoとなり、位相補償容量Ccの放電を停止する。即ち、誤差増幅器110は、入力される分圧電圧VFBに応じた電圧VERRを出力する。
【0027】
時刻T3において、電圧VERRがランプ波VRAMPと交差し、PWMコンパレータ113の出力VPWMは矩形波になり、DC−DCコンバータのスイッチング動作が開始される。出力電圧VOUTは、電源電圧VDDの上昇中に電圧VERRが正常値に近い値になっているため、比較的緩やかに正常な出力電圧VOUTの値に近づく。従って、電源電圧VDDが正常値に復帰しても、出力電圧VOUTにオーバーシュートは発生しない。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のDC−DCコンバータによれば、電源電圧VDDがDC−DCコンバータの所望の出力電圧よりも低い電圧から、即ちPWMコンパレータ113が100%DUTY状態になっている状態から、正常な電圧に復帰したときでも、出力電圧VOUTのオーバーシュートを防止することが出来る。
【0029】
なお、本発明は、電圧モードのDC−DCコンバータの回路を用いて説明したが、電流モードのDC−DCコンバータであっても適用することが出来き、同様の効果が得られる。電流モードの場合は、
図3の動作説明の図において、三角波で説明したランプ波VRAMPは、出力トランジスタ116の電流を帰還した電圧である。
【符号の説明】
【0030】
110 誤差増幅器
111、132 基準電圧回路
112 分圧回路
113 PWMコンパレータ
114 ランプ波発生回路
115 出力バッファ
116 出力トランジスタ
117 位相補償回路
118 100%DUTY検出回路
120 電源電圧上昇検出回路
121、121a 放電制御回路
133、136 コンパレータ
202 電流源