(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダミーチャンネルにおいて前記チャンネル列の一方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記ダミーチャンネルの位置が前記チャンネル列の一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次深くなり、
前記ダミーチャンネルにおいて前記チャンネル列の他方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記ダミーチャンネルの位置が前記チャンネル列の一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次浅くなる請求項2〜4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
前記吐出チャンネルにおいて前記チャンネル列の一方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記吐出チャンネルが前記チャンネル列の一方の端部の側から他方の端部の側に位置するに従い漸次深くなり、
前記吐出チャンネルにおいて前記チャンネル列の他方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記吐出チャンネルが前記チャンネル列の一方の端部の側から他方の端部の側に位置するに従い漸次浅くなる請求項5〜7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
前記樹脂膜パターン形成工程は、前記端部領域において、前記吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成する請求項11に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成する請求項11又は12に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記吐出溝の前記外側に、前記隔壁領域のうち前記内側の領域から前記樹脂膜を除去し前記外側の領域に前記樹脂膜を残す第三樹脂パターンを形成し、前記吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成する請求項11又は請求項12に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記樹脂膜パターン形成工程は、前記端部領域において、前記非吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記非吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成する請求項11に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記非吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記非吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成する請求項11又は15に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記非吐出溝の前記外側に、前記隔壁領域のうち前記内側の領域から前記樹脂膜を除去し前記外側の領域に前記樹脂膜を残す第三樹脂パターンを形成し、前記非吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成する請求項11又は請求項16に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、チャンネル壁103の電極105に印加する印加電圧を、チャンネル壁103の位置に応じて連続的に変化させる。そのため、駆動電圧の電位レベルが多数必要となり駆動回路が複雑になる。また、チャンネル壁103に斜め蒸着法により電極105を形成する際に、ベース部材101のサイズに対して蒸着源からの距離を十分大きくとることのできる成膜装置を用いれば、電極105の深さも均一化される。しかし、ノズル数の増加に伴ってベース部材101のサイズが大きくなり、そのため成膜室を十分大きくする必要がある。また、蒸着電源に複雑な構成が要求される。その結果、成膜装置が高価となり製造コストが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体噴射ヘッドは、隔壁を挟んで交互に配列してチャンネル列を構成する吐出チャンネル及びダミーチャンネルと、前記隔壁の側面であり前記隔壁の上端から深さ方向に位置する駆動電極と、を備え、前記チャンネル列の略中央の地点Pよりも端部の側を外側、前記チャンネル列の端部よりも前記地点Pの側を内側とし、前記チャンネル列を中央領域と前記中央領域の両側に位置する端部領域の3つの領域に分割するときに、前記端部領域の前記駆動電極は下記式(1)及び式(2)を満たすこととした。
Tce≠(Tdee+Tdie)/2・・・(1)
Tci≒(Tdei+Tdii)/2・・・(2)
Tce:前記吐出チャンネルの前記外側の側面に位置する前記駆動電極の深さ
Tci:前記吐出チャンネルの前記内側の側面に位置する前記駆動電極の深さ
Tdee:前記吐出チャンネルの前記外側に隣接する前記ダミーチャンネルの前記外側の側面に位置する前記駆動電極の深さ
Tdei:前記吐出チャンネルの前記外側に隣接する前記ダミーチャンネルの前記内側の側面に位置する前記駆動電極の深さ
Tdie:前記吐出チャンネルの前記内側に隣接する前記ダミーチャンネルの前記外側の側面に位置する前記駆動電極の深さ
Tdii:前記吐出チャンネルの前記内側に隣接する前記ダミーチャンネルの前記内側の側面に位置する前記駆動電極の深さ
【0008】
また、前記端部領域の前記駆動電極は下記式(3)を満たすこととした。
Tce>(Tdee+Tdie)/2・・・(3)
【0009】
また、前記中央領域において、前記地点Pよりも前記外側に位置する前記駆動電極は前記式(3)を満たすこととした。
【0010】
また、前記中央領域の前記駆動電極は前記式(3)と下記式(4)を満たすこととした。
Tci>(Tdei+Tdii)/2・・・(4)
【0011】
また、前記端部領域の前記駆動電極は下記式(5)を満たすこととした。
Tce<(Tdee+Tdie)/2・・・(5)
【0012】
また、前記中央領域において、前記地点Pよりも前記外側に位置する前記駆動電極は前記式(5)を満たすこととした。
【0013】
また、前記中央領域の前記駆動電極は前記式(5)と下記式(6)を満たすこととした。
Tci<(Tdei+Tdii)/2・・・(6)
【0014】
また、前記ダミーチャンネルにおいて前記チャンネル列の一方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記ダミーチャンネルの位置が前記チャンネル列の一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次深くなり、前記ダミーチャンネルにおいて前記チャンネル列の他方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記ダミーチャンネルの位置が前記チャンネル列の一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次浅くなることとした。
【0015】
また、前記吐出チャンネルにおいて前記チャンネル列の一方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記吐出チャンネルが前記チャンネル列の一方の端部の側から他方の端部の側に位置するに従い漸次深くなり、前記吐出チャンネルにおいて前記チャンネル列の他方の端部の側に位置する側面の前記駆動電極の深さは、前記吐出チャンネルが前記チャンネル列の一方の端部の側から他方の端部の側に位置するに従い漸次浅くなることとした。
【0016】
本発明の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【0017】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、アクチュエータ基板の表面に樹脂膜のパターンを形成する樹脂膜パターン形成工程と、前記アクチュエータ基板の表面に吐出溝と非吐出溝が交互に配列する溝列を形成する溝形成工程と、前記アクチュエータ基板の表面と、前記吐出溝及び前記非吐出溝の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積する電極材料堆積工程と、を備え、前記溝列の略中央の地点Pよりも端部の側を外側、前記溝列の端部よりも前記地点Pの側を内側とし、前記溝列を配列方向に中央領域と前記中央領域の両側に位置する端部領域の3つの領域に分割し、前記吐出溝と前記非吐出溝の間を隔壁領域とするときに、前記樹脂膜パターン形成工程は、前記端部領域において、前記隔壁領域のうち前記内側の領域に前記樹脂膜を残し前記外側の領域から前記樹脂膜を除去する第一樹脂パターンと、前記隔壁領域のうち前記内側の領域及び前記外側の領域のいずれにも前記樹脂膜を残す第二樹脂パターンとを交互に形成することとした。
【0018】
また、前記樹脂膜パターン形成工程は、前記端部領域において、前記吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成することとした。
【0019】
また、前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成することとした。
【0020】
また、前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記吐出溝の前記外側に、前記隔壁領域のうち前記内側の領域から前記樹脂膜を除去し前記外側の領域に前記樹脂膜を残す第三樹脂パターンを形成し、前記吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成することとした。
【0021】
また、前記樹脂膜パターン形成工程は、前記端部領域において、前記非吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記非吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成することとした。
【0022】
また、前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記非吐出溝の前記外側に前記第二樹脂パターンを形成し、前記非吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成することとした。
【0023】
また、前記樹脂膜パターン形成工程は、前記中央領域において、前記非吐出溝の前記外側に、前記隔壁領域のうち前記内側の領域から前記樹脂膜を除去し前記外側の領域に前記樹脂膜を残す第三樹脂パターンを形成し、前記非吐出溝の前記内側に前記第一樹脂パターンを形成することとした。
【0024】
また、前記溝形成工程は、前記吐出溝を前記アクチュエータ基板の一方端から他方端の手前まで形成する工程であり、前記アクチュエータ基板の表面にカバープレートを接合するカバープレート接合工程と、前記アクチュエータ基板の端面にノズルプレートを接着するノズルプレート接着工程と、を更に備えることとした。
【0025】
また、前記溝形成工程は、前記吐出溝を前記アクチュエータ基板の一方端の手前から他方端の手前まで形成する工程であり、前記アクチュエータ基板の表面にカバープレートを接合するカバープレート接合工程と、前記アクチュエータ基板の裏面にノズルプレートを接着するノズルプレート接着工程と、を更に備えることとした。
【0026】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、アクチュエータ基板の表面に吐出溝と非吐出溝が交互に配列する溝列を形成する溝形成工程と、前記アクチュエータ基板の表面と、前記吐出溝及び前記非吐出溝の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積する第一の電極材料堆積工程と、前記溝列の略中央の地点Pよりも端部の側を外側、前記溝列の端部よりも前記地点Pの側を内側とし、前記溝列を中央領域と前記中央領域の両側に位置する端部領域の3つの領域に分割するときに、前記端部領域に含まれる前記非吐出溝又は前記吐出溝のいずれか一方を遮蔽するマスクを設置し、前記吐出溝又は前記非吐出溝の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積する第二の電極材料堆積工程と、を備え、前記第二の電極材料堆積工程における前記アクチュエータ基板の表面の法線に対する前記電極材料の入射角は、前記第一の電極材料堆積工程における前記アクチュエータ基板の表面の法線に対する前記電極材料の入射角よりも小さいこととした。
液体噴射ヘッドの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明による液体噴射ヘッドは、隔壁を挟んで交互に配列してチャンネル列を構成する吐出チャンネル及びダミーチャンネルと、隔壁の側面であり隔壁の上端から深さ方向に位置する駆動電極と、を備え、チャンネル列の略中央の地点Pよりも端部の側を外側、チャンネル列の端部よりも地点Pの側を内側とし、チャンネル列を中央領域と中央領域の両側に位置する端部領域の3つの領域に分割するときに、端部領域の駆動電極は下記式(1)及び式(2)を満たすこととした。
Tce≠(Tdee+Tdie)/2・・・(1)
Tci≒(Tdei+Tdii)/2・・・(2)
ここで、Tce:吐出チャンネルの外側の側面に位置する駆動電極の深さ、Tci:吐出チャンネルの内側の側面に位置する駆動電極の深さ、Tdee:吐出チャンネルの外側に隣接する前記ダミーチャンネルの外側の側面に位置する駆動電極の深さ、Tdei:吐出チャンネルの外側に隣接する前記ダミーチャンネルの内側の側面に位置する駆動電極の深さ、Tdie:吐出チャンネルの内側に隣接するダミーチャンネルの外側の側面に位置する駆動電極の深さ、Tdii:吐出チャンネルの内側に隣接するダミーチャンネルの内側の側面に位置する駆動電極の深さ、とする。これにより、多数の電位レベルの駆動電圧を使用することなく吐出チャンネルの両隔壁の変位量のばらつきを低減させ、記録品質を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<液体噴射ヘッド>
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1の説明図である。
図1(a)は、液体噴射ヘッド1のチャンネル列CR方向の断面模式図であり、
図1(b)は、端部領域Aeにおける吐出チャンネルCを挟むダミーチャンネルDの駆動電極6の説明図であり、
図1(c)は、チャンネル(吐出チャンネルCとダミーチャンネルD)の基板位置と駆動電極6の電極深さの間の関係を表すグラフである。
【0030】
図1(a)に示すように、液体噴射ヘッド1は、隔壁3を挟んで交互に配列してチャンネル列CRを構成する吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDと、隔壁3の側面であり隔壁3の上端から深さ方向に位置する駆動電極6とを備える。そして、チャンネル列CRの略中央の地点Pよりも端部の側を外側、チャンネル列CRの端部よりも地点Pの側を内側とする。従って、地点Pよりも左端部の側と右端部の側はいずれも外側であり、左右の端部の側から地点Pの側はいずれも内側である。更に、チャンネル列CRを中央領域Acと、中央領域Acを挟んで両側に位置する端部領域Aeの3つの領域に分割する。このとき、端部領域Aeの駆動電極6は下記式(2)及び式(3)を満たす。従って、当然、式(1)が満たされる。
Tce≠(Tdee+Tdie)/2・・・(1)
Tci≒(Tdei+Tdii)/2・・・(2)
Tce>(Tdee+Tdie)/2・・・(3)
更に、中央領域Acの駆動電極6は上記式(2)と下記式(7)を満たす。
Tce≒(Tdee+Tdie)/2・・・(7)
【0031】
ここで、Tceは、吐出チャンネルCの外側の側面に位置する駆動電極6の深さであり、以下、吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceと言う。Tciは、吐出チャンネルCの内側の側面に位置する駆動電極6の深さであり、以下、吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciと言う。Tdeeは、吐出チャンネルCの外側に隣接するダミーチャンネルDの外側の側面に位置する駆動電極6の深さであり、以下、外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeと言う。Tdeiは、吐出チャンネルCの外側に隣接するダミーチャンネルDの内側の側面に位置する駆動電極6の深さであり、以下、外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiという。Tdieは、吐出チャンネルCの内側に隣接するダミーチャンネルDの外側の側面に位置する駆動電極6の深さであり、以下、内ダミーチャンネル外駆動電極6dieの深さTdieという。Tdiiは、吐出チャンネルCの内側に隣接するダミーチャンネルDの内側の側面に位置する駆動電極6の深さであり、以下、内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiと言う。
【0032】
つまり、左右の端部領域Aeにおいて、吐出チャンネルCの外側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出チャンネルCの両側に隣接するダミーチャンネルDの外側の側面に位置する駆動電極6の平均深さよりも深い。これに対し、吐出チャンネルCの内側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出チャンネルCの両側に隣接するダミーチャンネルDの内側の側面に位置する駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。また、中央領域Acにおいて、吐出チャンネルCの外側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出チャンネルCの両側に隣接するダミーチャンネルDの外側の側面に位置する駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。更に、吐出チャンネルCの内側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出チャンネルCの両側に隣接するダミーチャンネルDの内側の側面に位置する駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。これにより、多数の電位レベルの駆動電圧を使用することなく、吐出チャンネルCの両隔壁3の変位量のばらつきを低減させ、記録品質を向上させることができる。
【0033】
以下、具体的に説明する。吐出チャンネルCは左右の隔壁3と上下の第一基板Pa及び第二基板Pbにより囲まれる。同様に、ダミーチャンネルDは左右の隔壁3と上下の第一基板Pa及び第二基板Pbにより囲まれる。吐出チャンネルCとダミーチャンネルDは隣接して交互に配列し、チャンネル列CRを構成する。隔壁3は圧電体材料、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)やチタン酸バリウム(BaTiO
3)からなるセラミックスを使用することができる。圧電体材料は、下方から上方に、又は上方から下方に一様に分極処理が施される。また、深さが略1/2で反対方向に分極処理が施される、所謂シェブロン型の圧電体材料を使用することができる。第一基板Pa又は第二基板Pbは隔壁3を構成する圧電体材料と同一の材料、或いは異なる材料を使用することができる。例えば、一枚の圧電体材料からなるアクチュエータ基板の表面をダイシングブレードにより研削加工して吐出チャンネルC用の吐出溝4とダミーチャンネルD用の非吐出溝5とを隔壁3を挟んで交互に形成し、底部にアクチュエータ基板を残し、これを第二基板Pbとする。吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDは、紙面奥方向に所定の長さ、例えば3mm〜8mmを有し、チャンネル列CR方向のチャンネル幅は20μm〜100μmであり、チャンネル深さは100μm〜400μmである。駆動電極6は金属材料や半導体材料からなる導電材料を用い、斜め蒸着法により形成する。例えば、Ti、Ni、Al、Au、Ag、Si、C、Pt、Ta、Sn、In等を使用することができる。
図1に示す吐出チャンネルCとダミーチャンネルDは、チャンネル列CR方向の幅が同じである。
【0034】
駆動電極6は、後に詳しく説明するが、導電材料の斜め蒸着法により形成する。本実施形態では、第一基板Paを隔壁3の上端面に接合する前に、吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDの間の隔壁3の上端面に樹脂膜を形成し、次に、隔壁3の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積する。この場合に、2つの端部領域Aeにおいては、吐出チャンネルCを構成する2つの隔壁3のうち、内側(地点P側)に位置する隔壁3の上端面(隔壁領域)の内側には樹脂膜を残し、外側(端部側)からは樹脂膜を除去するとともに、外側に位置する隔壁3の上端面には内側(地点P側)と外側(端部側)の両方で樹脂膜を残す。中央領域Acにおいては、吐出チャンネルCを構成する2つの隔壁3の両方の上端面に内側(地点P側)と外側(端部側)の両方で樹脂膜を残す。そして、上端面の右斜め上方から斜め蒸着法により導電材料を堆積し(一回目の斜め蒸着)、次に、左斜め上方から斜め蒸着法により導電材料を堆積する(二回目の斜め蒸着)。これにより、端部領域Aeにおいて、吐出チャンネルCの外側の側面に堆積する電極材料は、樹脂膜を残して形成した電極材料よりも、除去された樹脂膜の厚さ分、溝の深さ方向に深く堆積する。なお、具体的には後述するが、吐出チャンネルCの外側の側面に堆積する電極材料は、同じ吐出チャンネルCの内側の側面に堆積する電極材料よりも、樹脂膜の厚さ分深く堆積する場合があってもよい。次に、樹脂膜を除去して駆動電極6を形成する。一回目の斜め蒸着により堆積した電極材料が吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDの左側の側面の駆動電極6となり、二回目の斜め蒸着により堆積した電極材料が吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDの右側の側面の駆動電極6となる。なお、各吐出チャンネルC及び各ダミーチャンネルDは左右の隔壁3の間隔(溝幅)が同じである。
【0035】
その結果、端部領域Aeにおいては、吐出チャンネルCの吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceは、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeと内ダミーチャンネル外駆動電極6dieの深さTdieの平均深さより深く、式(3)を満たす。一方、吐出チャンネルCの吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciは、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiと内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiの平均深さとほぼ同じであり、式(2)を満たす。また、中央領域Acにおいては、吐出チャンネルCの吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceは、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeと内ダミーチャンネル外駆動電極6dieの深さTdieの平均深さにほぼ等しく、式(7)を満たす。同様に、吐出チャンネルCの吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciは、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiと内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiの平均深さにほぼ等しく、式(2)を満たす。
【0036】
本実施形態では、吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDの深さが360μmである。チャンネル列CRの略中央の地点P(0mm)近傍の基板位置において、各チャンネルの一回目及び二回目の斜め蒸着により形成する駆動電極6の電極深さは約130μmである。斜め蒸着の際に隔壁3の上端面に残す樹脂膜の膜厚を約20μmとしている。そのため、端部領域Aeにおいては、吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceは外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeや内ダミーチャンネル外駆動電極6dieのTdieよりも約20μm深い。
【0037】
図1(c)は、駆動電極6の電極深さとチャンネルの基板位置の間の関係を表す。横軸が吐出チャンネルC又はダミーチャンネルDの基板位置(単位mm)を表し、縦軸が駆動電極6の電極深さを表す。地点P(0mm)の左側の領域(−領域)において、隔壁3の外側の側面(左側面)に位置する吐出チャンネル内駆動電極6ci、外ダミーチャンネル内駆動電極6dei及び内ダミーチャンネル内駆動電極6diiは、上方の実線で表すように、外側から内側にかけて(+側に向けて)駆動電極6の深さが次第に浅くなる。隔壁3の内側の側面(右側面)に位置する外ダミーチャンネル外駆動電極6dee及び内ダミーチャンネル外駆動電極6dieは、下方の実線で表すように、外側から内側にかけて駆動電極6の深さが次第に深くなる。これに対し、吐出チャンネル外駆動電極6ceは、中央領域Acにおいては外ダミーチャンネル外駆動電極6deeや内ダミーチャンネル外駆動電極6dieと同様の実線に示す深さを有するが、端部領域Aeにおいては破線で示すように、外ダミーチャンネル外駆動電極6deeや内ダミーチャンネル外駆動電極6dieよりも約20μm深い。なお、本実施形態では、中央領域Acと端部領域Aeの境界を、吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceと吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciが等しくなる位置として、隔壁3の変形量の基板内ばらつきを低減している。
【0038】
各駆動電極6及びその深さは、地点Pを通りチャンネル列CR方向に垂直な平面に関して面対称の関係を有する。従って、地点Pよりも右側の端部領域Aeの各駆動電極6は、
図1(b)を左右反転したものとなる。また、ダミーチャンネルDにおいてチャンネル列CRの一方の端部(左端部)の側に位置する駆動電極6の深さTd1は、ダミーチャンネルDの位置が一方の端部(左端部)から他方の端部(右端部)に変化するに従い漸次深くなり、チャンネル列CRの他方の端部(右端部)の側に位置する駆動電極6の深さTd2は、ダミーチャンネルDの位置がチャンネル列CRの一方の端部(左端部)から他方の端部(右端部)に変化するに従い漸次浅くなる。そして、地点PにおいてダミーチャンネルDの両駆動電極6の深さがほぼ等しくなる(Td1≒Td2)。
【0039】
隔壁3は、隔壁3を挟む駆動電極6に電圧を印加することにより厚み滑り変形する。隔壁3の厚み滑り変形量は隔壁3に印加する電圧の印加面積が広いほど大きい。隔壁3に印加する電圧の印加面積は隔壁3を挟む2つの駆動電極6の重なり面積により定まるので、結局、隔壁3を挟む2つの駆動電極6のうち、電極深さの浅い駆動電極6により厚み滑り変形量が定まる。従って、
図1(b)に示す場合は、吐出チャンネルCの左側の隔壁3の厚み滑り変形量は吐出チャンネル外駆動電極6ceにより定まり、右側の隔壁3の厚み滑り変形量は内ダミーチャンネル外駆動電極6dieにより定まる。即ち、隔壁3の駆動電極6は浅いほうの駆動電極6が実効的な電極深さとなる。なお、吐出チャンネルCの変形量は左側の隔壁3の変形量と右側の隔壁3の変形量の和により表される。従って、各吐出チャンネルCの変形量のばらつきを低減させるためには、各吐出チャンネルCの左右の隔壁3の変形量の和のばらつきを低減させることである。言い換えると、吐出チャンネルCの変形量は、左側の隔壁3を挟む2つの駆動電極6のうち浅いほうの駆動電極6の電極深さと右側の隔壁3を挟む2つの駆動電極6のうち浅いほうの駆動電極6の電極深さとの合計の値(平均深さ)に依存するので、各吐出チャンネルCの変形量のばらつきを低減させるためには、この合計の値(平均深さ)のばらつきを低減させることである。
【0040】
図2及び
図3を用いて、端部領域Aeにおいて駆動電極6の深さが式(2)と式(3)を満たし、中央領域Acにおいて駆動電極6の深さが式(2)と式(7)を満たすことによる効果を説明する。
【0041】
図2は、吐出チャンネルCの基板位置と隔壁3の最大変位量の関係を表すグラフである。実線が本実施形態の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合、破線が従来の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合のシミュレーション結果である。縦軸が隔壁3の水平方向の最大変位量を表し、横軸がチャンネルの基板位置を表す。吐出チャンネルCについて、一方(外側)の隔壁3の水平方向の最大変位量をΔd1とし、他方(内側)の隔壁3の水平方向の最大変位量をΔd2として、平均変位量Δdm=(Δd1+Δd2)/2とする。
【0042】
図2に示すように、本実施形態における液体噴射ヘッド1の隔壁3の平均変位量Δdmと従来法の平均変位量Δdmを比較すると、中央領域Acでは本実施形態の平均変位量Δdmと従来法の平均変位量Δdmはほぼ等しい。これに対して、両端部領域Aeでは、本発明の平均変位量Δdmのほうが従来法の平均変位量Δdmよりも大きい。また、吐出チャンネルCの位置が外側(両端部)に向かうに従って平均変位量Δdmは漸次減少するが、本発明のほうが従来法よりも平均変位量Δdmの減少勾配が小さい。更に、基板内における平均変位量Δdmの最大値と最小値の差をみると、本発明では約0.12×10
-8mであるのに対して従来法では0.17×10
-8mと大きい。即ち、本発明の駆動電極6は、隔壁3の平均変位量Δdmの基板内ばらつきが従来法よりも低減し、吐出チャンネルCの基板位置にかかわらず、液滴の吐出条件、例えば液滴量や液滴の吐出速度が均等化し、記録品質を向上させることができる。
【0043】
図3は、吐出チャンネルCの基板位置と隔壁3の変位面積の関係を表すグラフである。実線が本発明の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合、破線が従来の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合のシミュレーション結果である。縦軸が変位面積比を表し、横軸がチャンネルの基板位置を表す。変位面積とは隔壁3の変形量を吐出チャンネルCの断面積に換算した量であり、変位面積比は基板位置が中央の地点Pに対応する隔壁3の変位面積により規格化している。吐出チャンネルCについて、一方(外側)の隔壁3の変位面積をΔs1とし、他方(内側)の隔壁3の変位面積をΔs2として、平均変位面積Δsm=(Δs1+Δs2)/2とする。
図3から容易に理解できるように、平均変位面積Δsmの最大値と最小値の差が、本発明の駆動電極6は従来の駆動電極6と比較して小さく、平均変位面積Δsmの基板内ばらつきが大幅に低減する。例えば、基板の両端(−54mm、+54mm)に位置する吐出チャンネルCの場合、本発明の駆動電極6は従来の駆動電極6と比較して隔壁3の平均変位面積Δsmが約43%改善する。
【0044】
本実施形態では、端部領域Aeに位置する吐出チャンネルCとダミーチャンネルDの各駆動電極6の深さが式(3)と式(2)を満たすが、これに代えて、下記式(5)と式(2)を満たすようにしても同じ効果を得ることができる。従って、この場合も当然式(1)が満たされる。
Tce<(Tdee+Tdie)/2・・・(5)
Tci≒(Tdei+Tdii)/2・・・(2)
即ち、吐出チャンネルCの吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceを、この吐出チャンネルCに隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeと内ダミーチャンネル外駆動電極6dieの深さTdieの平均深さよりも浅くする。また、吐出チャンネルCの吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciを、この吐出チャンネルCに隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiと内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiの平均深さとほぼ同じ深さとする。つまり、
図1において、隔壁3と駆動電極6を変えずに吐出チャンネルCとダミーチャンネルDを入れ替えることと同じである。吐出チャンネルCとダミーチャンネルDを入れ替えても隔壁3の変形量は変わらないので、隔壁3の平均変位量Δdmの基板内ばらつきが従来法よりも低減し、吐出チャンネルCの基板位置にかかわらず、液滴の吐出条件、例えば液滴量や液滴の吐出速度が均等化し、記録品質を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態において中央領域Acと端部領域Aeの境界を、吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceと吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciが等しくなる位置としているが、本発明はこれに限定されない。例えば、中央領域Acと端部領域Aeの境界位置を、本実施液体の位置よりも外側又は内側にずらしても、
図2及び
図3から明らかなように、平均変位量Δdmや平均変位面積Δsmの基板内ばらつきが従来例よりも低減する。例えば、チャンネル列CRの略中央の地点Pから端部までの距離を1としたときに、中央領域Acと端部領域Aeの境界は、地点Pから外側に2/5〜2/3の範囲とすることが好ましい。ただし、この範囲は、端部領域Aeにおける電極深さの差ΔT=Tce−(Tdee+Tdie)/2の大きさによって変化する。具体的には、斜め蒸着の前に隔壁3の上端面に設置する樹脂膜の厚みによって変化する。
【0046】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の模式的な分解斜視図である。液体噴射ヘッド1はエッジシュート型である。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0047】
図4に示すように、液体噴射ヘッド1は、アクチュエータ基板2と、アクチュエータ基板2の上面USに接合するカバープレート10と、アクチュエータ基板2の前方端面に接着するノズルプレート13とを備える。アクチュエータ基板2は圧電体材料からなり、例えばPZTやBaTiO
3のセラミックスを使用することができる。アクチュエータ基板2は、下方から上方、又は上方から下方に一様に分極処理が施される。アクチュエータ基板2は、上面USに隔壁3を挟んで交互に配列して溝列MRを構成する吐出溝4と非吐出溝5と、隔壁3の側面であり隔壁3の上端から深さ方向に位置する駆動電極6とを備える。
【0048】
吐出溝4は、アクチュエータ基板2の前方端から後方端の手前まで延在し、非吐出溝5は、アクチュエータ基板2の前方端から後方端までストレートに延在する。吐出溝4は、アクチュエータ基板2の前方端面に開口し、後方端の側は吐出溝4の底面から上面USに切り上がる傾斜面を成し、上面USにおいて終端する。非吐出溝5は、アクチュエータ基板2の前方端面と後方端面に開口する。アクチュエータ基板2は、後方端の近傍の上面USに、共通端子15aと個別端子15bを備える。共通端子15aは、吐出溝4の両側面に位置する駆動電極6と電気的に接続し、個別端子15bは、吐出溝4を挟む2つの非吐出溝5の吐出溝4側の側面に位置する2つの駆動電極6を電気的に接続し、共通端子15aよりも後方端の側に位置する。なお、
図4に示す吐出溝4及び非吐出溝5は端部領域Aeに対応しており、隔壁3は、上端面(上面US)の吐出溝4側に共通端子15aと連続する電極8を備える。
【0049】
カバープレート10は、液室11と液室11の底面からアクチュエータ基板2側に貫通する複数のスリット12を備える。カバープレート10は、共通端子15a、個別端子15b及び非吐出溝5の後方側の一部を露出させてアクチュエータ基板2の上面USに接合する。各スリット12はそれぞれ吐出溝4の後方側に連通する。従って、液室11は各スリット12を介してそれぞれの吐出溝4に連通し、非吐出溝5とは連通しない。ノズルプレート13は、各吐出溝4に対応する位置にノズル14を備え、アクチュエータ基板2及びカバープレート10の前方端面に接着する。各ノズル14はそれぞれ吐出溝4に連通する。吐出溝4はカバープレート10とノズルプレート13により囲まれて吐出チャンネルCを、非吐出溝5はカバープレート10により覆われてダミーチャンネルDを構成する。また、溝列MRはチャンネル列CRに対応する。カバープレート10としてPZTセラミックスやBaTiO
3セラミックス材料又はプラスチック材料を使用することができる。ノズルプレート13として、ポリイミドフィルム等のプラスチック材料や金属材料を使用することができる。
【0050】
チャンネル列CRと同様に、溝列MRの図示しない略中央の地点Pよりも端部の側を外側、溝列MRの端部よりも地点Pの側を内側とし、溝列MRを図示しない中央領域Acと中央領域Acの両端に位置する図示しない端部領域Aeに分割する。
ここで、溝列MR(チャンネル列CR)の端部領域Aeにおいて、吐出溝4(吐出チャンネルC)の外側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5(ダミーチャンネルD)の外側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さよりも深い。これに対し、端部領域Aeにおいて、吐出溝4の内側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5の内側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。
また、溝列MR(チャンネル列CR)の中央領域Acにおいて、吐出溝4の外側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5の外側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。更に、中央領域Acにおいて、吐出溝4の内側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5の内側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。
【0051】
液体噴射ヘッド1は次のように駆動する。液室11に液体を供給すると、液体は各スリット12を介して各吐出溝4に流入する。そして、共通端子15aと個別端子15bに駆動電圧を供給すると(通常、共通端子15aをGNDに接続し、個別端子15bに駆動電圧を印加する)、まず、吐出溝4の2つの隔壁3が厚み滑り変形して吐出溝4(吐出チャンネルC)の容積を増加させて液室11から液体を取り込み、次に、吐出溝4の容積を減少させ、或いは元の容積に戻してノズル14から液滴を吐出する。本発明の駆動電極6の構成によれば、隔壁3の平均変位量Δdmや平均変位面積Δsmの基板内ばらつきが低減する。その結果、吐出チャンネルCの基板位置に関し液滴の吐出条件を均等化することができる。
【0052】
なお、本実施形態において、隔壁3と駆動電極6を変えずに吐出溝4と非吐出溝5とを入れ替えてもよい。また、溝列MRの略中央の地点Pから端部までの距離を1としたときに、中央領域Acと端部領域Aeの境界は、地点Pから外側に2/5〜2/3の範囲とすることが好ましい。ただし、この範囲は、端部領域Aeにおける電極深さの差ΔT=Tce−(Tdee+Tdie)/2の大きさによって変化する。具体的には、斜め蒸着の前に隔壁3の上端面に設置する樹脂膜の厚みによって変化する。
【0053】
(第三実施形態)
図5は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の説明図である。
図5(a)は液体噴射ヘッド1の模式的な分解斜視図であり、
図5(b)は吐出溝4の断面模式図である。液体噴射ヘッド1はサイドシュート型である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0054】
図5に示すように、液体噴射ヘッド1は、アクチュエータ基板2と、アクチュエータ基板2の上面USに接合するカバープレート10と、アクチュエータ基板2の下面LSに接着するノズルプレート13とを備える。アクチュエータ基板2は、隔壁3を挟んで交互に配列して溝列MRを構成する吐出溝4と非吐出溝5と、隔壁3の側面であり隔壁3の上端から深さ方向に位置する駆動電極6とを備える。吐出溝4と非吐出溝5は、x方向(溝方向)に細長く、y方向に交互に配列して溝列MR(チャンネル列CR)を構成する。吐出溝4及び非吐出溝5はアクチュエータ基板2の板厚方向に貫通する。吐出溝4は、アクチュエータ基板2のx方向の一方端の手前から他方端の手前まで延在する。溝の長手方向において、吐出溝4は、中央部が上面USのx方向に細長い形状で開口し、両端部は下面LSから上面USに末広がりの傾斜面を成す。溝の長手方向において、非吐出溝5は、アクチュエータ基板2の溝方向の一方端から他方端まで延在する。非吐出溝5は、中央部が吐出溝4と同形状を有し、両端部が上面USから一定の深さを有する。つまり、非吐出溝5は、上面USの一方端から他方端にかけて細長い形状で開口する。吐出溝4の両側面に位置する駆動電極6は−x側の端部手前から+x側の端部手前まで延在する。非吐出溝5の両側面に位置する駆動電極6は、−x側の端部が吐出溝4の駆動電極6の−x側の端部とほぼ同じ位置であり、+x側は非吐出溝5の端部まで延在する。
【0055】
アクチュエータ基板2は、+x側の端部近傍の上面USに共通端子15aと個別端子15bを備える。共通端子15aは、吐出溝4の開口部の近傍に位置し、吐出溝4の両側面に位置する駆動電極6と電気的に接続する。個別端子15bは、共通端子15aよりも+x側の端部の側に位置し、吐出溝4を挟む2つの非吐出溝5の吐出溝4側の側面に位置する2つの駆動電極6と電気的に接続する。なお、
図5に示す吐出溝4及び非吐出溝5は端部領域Aeに対応しており、隔壁3は、上端面(上面US)の吐出溝4側に共通端子15aと連続する電極8を備える。
【0056】
カバープレート10は2つの液室11a、11bを備え、アクチュエータ基板2の上面USに、共通端子15a及び個別端子15bを露出させて接合する。一方の液室11aは吐出溝4の−x側の端部にスリット12aを介して連通し、他方の液室11bは吐出溝4の+x側の端部にスリット12bを介して連通する。2つの液室11a、11bは非吐出溝5とは連通しない。ノズルプレート13はノズル14を備える。ノズルプレート13は、吐出溝4及び非吐出溝5の下面LS側の開口部を塞いでアクチュエータ基板2の下面LSに接着する。ノズル14は下面LSに開口する吐出溝4に連通する。吐出溝4はカバープレート10とノズルプレート13により囲まれて吐出チャンネルCを、非吐出溝5はカバープレート10とノズルプレート13により覆われてダミーチャンネルDを構成する。y方向に配列する溝列MRはチャンネル列CRを構成する。
【0057】
アクチュエータ基板2としてPZTやBaTiO
3などのセラミックスを使用することができる。カバープレート10としてPZTセラミックスや他のセラミックス材料又はプラスチック材料を使用することができる。ノズルプレート13として、ポリイミドフィルム等のプラスチック材料や金属材料を使用することができる。駆動電極6は金属材料や半導体材料からなる導電材を用い、斜め蒸着法により形成する。例えば、Ti、Ni、Al、Au、Ag、Si、C、Pt、Ta、Sn、In等を使用することができる。チャンネルの長さはx方向に3mm〜8mm、チャンネルの幅は20μm〜100μm、チャンネルの深さhは100μm〜400μmである。
【0058】
ここで、吐出溝4(吐出チャンネルC)及び非吐出溝5(ダミーチャンネルD)の対向する側面に位置する2つの駆動電極6の深さは第二実施形態と同様である。
即ち、溝列MR(チャンネル列CR)の端部領域Aeにおいて、吐出溝4(吐出チャンネルC)の外側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5(ダミーチャンネルD)の外側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さよりも深い。これに対し、端部領域Aeにおいて、吐出溝4の内側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5の内側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。
また、溝列MR(チャンネル列CR)の中央領域Acにおいて、吐出溝4の外側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5の外側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。更に、中央領域Acにおいて、吐出溝4の内側の側面に位置する駆動電極6の深さは、吐出溝4の両側に隣接する非吐出溝5の内側の側面に位置する2つの駆動電極6の平均深さとほぼ等しい。
【0059】
液体噴射ヘッド1は次のように駆動する。外部から液室11a(又は液室11b)に液体を供給し、各吐出溝4(吐出チャンネルC)に液体を充填する。更に、液体は、各吐出溝4から液室11b(又は液室11a)に流出し、液室11b(又は液室11a)から外部に排出する。つまり、液体は循環する。そして、共通端子15aと個別端子15bの間に駆動電圧を供給すると、まず、吐出溝4の2つの隔壁3を厚み滑り変形させて吐出チャンネルC(吐出溝4)の容積を増加させ、液室11a、11bから液体を取り込む。次に、吐出チャンネルCの容積を減少させ、或いは元の容積に戻して、ノズル14から液滴を吐出する。本発明の駆動電極6の構成によれば、隔壁3の平均変位量Δdmや平均変位面積Δsmの基板内ばらつきが低減する。その結果、吐出チャンネルCの基板位置に関し液滴の吐出条件、例えば液滴量や液滴の吐出速度を均等化することができる。
【0060】
なお、本実施形態において、隔壁3と駆動電極6を変えずに吐出溝4と非吐出溝5とを入れ替えてもよい。また、溝列MRの略中央の地点Pから端部までの距離を1としたときに、中央領域Acと端部領域Aeの境界は、地点Pから外側に2/5〜2/3の範囲とすることが好ましい。ただし、この範囲は、端部領域Aeにおける電極深さの差ΔT=Tce−(Tdee+Tdie)/2の大きさによって変化する。具体的には、斜め蒸着の前に隔壁3の上端面に設置する樹脂膜の厚みによって変化する。
【0061】
(第四実施形態)
図6は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1のチャンネルの基板位置と駆動電極6の電極深さの間の関係を表すグラフである。第一実施形態と異なる点は、中央領域Acの駆動電極6である。その他の構成は第一実施形態と同様である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0062】
チャンネル列CRの中央領域Acにおいて、略中央の地点Pよりも外側に位置する駆動電極6は式(2)及び式(3)を満たす。具体的には、
図1(b)を参照して、吐出チャンネルCの吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceは、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeと内ダミーチャンネル外駆動電極6dieの深さTdieの平均深さより深く、式(3)を満たす。一方、吐出チャンネルCの吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciは、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiと内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiの平均深さとほぼ同じ深さであり、式(2)を満たす。吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDの各駆動電極6は、地点Pを通りチャンネル列CR方向に垂直な平面に関して面対称の関係を有する。つまり、地点Pよりも右側の各駆動電極6は、地点Pよりも左側の各駆動電極6を左右反転したものとなる。そのため、チャンネル列CRの全ての領域において、式(2)及び式(3)の関係を満たすことになる。また、ダミーチャンネルDにおいてチャンネル列CRの一方の端部の側に位置する駆動電極6の深さTd1は、ダミーチャンネルDの位置が一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次深くなり、チャンネル列CRの他方の端部の側に位置する駆動電極6の深さTd2は、ダミーチャンネルDの位置がチャンネル列CRの一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次浅くなる。そして、地点PにおいてダミーチャンネルDの両駆動電極6の深さがほぼ等しくなる(Td1≒Td2)。
【0063】
図7及び
図8を用いて本実施形態の効果を説明する。
図7は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1の吐出チャンネルCの基板位置と隔壁3の最大変位量の関係を表すグラフである。実線が本実施形態の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合、破線が従来の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合のシミュレーション結果である。吐出チャンネルCについて、一方(外側)の隔壁3の水平方向の最大変位量をΔd1とし、他方(内側)の隔壁3の水平方向の最大変位量をΔd2として、平均変位量Δdm=(Δd1+Δd2)/2とする。
【0064】
図7に示すように、中央領域Acにおいては、本発明の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmのほうが従来の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmより小さい。一方、端部領域Aeにおいては、本発明の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmのほうが従来の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmよりも大きい。
図7から明らかなように、本発明の駆動電極6は、隔壁3の平均変位量Δdmの基板内ばらつきが従来の駆動電極6よりも低減する。その結果、吐出チャンネルCの基板位置に関し液滴の吐出条件、例えば液滴量や液滴の吐出速度を均等化することができ、記録品質を向上させることができる。
【0065】
図8は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1の吐出チャンネルCの基板位置と隔壁3の変位面積の関係を表すグラフである。実線が本発明の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合、破線が従来の液体噴射ヘッドの駆動電極6を用いる場合のシミュレーション結果である。縦軸が変位面積比を表し、横軸がチャンネルの基板位置を表す。変位面積比は基板位置が中央の隔壁3の変位面積により規格化している。吐出チャンネルCについて、一方(外側)の隔壁3の変位面積をΔs1とし、他方(内側)の隔壁3の変位面積をΔs2として、平均変位面積Δsm=(Δs1+Δs2)/2とする。
図8から明らかなように、平均変位面積Δsmの最大値と最小値の差が、本発明の駆動電極6は従来の駆動電極と比較して小さく、平均変位面積Δsmの基板内ばらつきが大幅に低減する。例えば、基板の両端(−54mm、+54mm)に位置する吐出チャンネルCの場合、本発明の駆動電極6は従来の駆動電極と比較して隔壁3の平均変位面積Δsmが約36%改善する。その結果、吐出チャンネルCの基板位置にかかわらず、液滴の吐出条件、例えば液滴量や液滴の吐出速度が均等化し、記録品質を向上させることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、端部領域Ae及び中央領域Acの全領域に位置する吐出チャンネルCとダミーチャンネルDの各駆動電極6が式(2)及び式(3)を満たすが、これに代えて、全領域に位置する吐出チャンネルCとダミーチャンネルDが式(5)と式(2)を満たすようにしても同じ効果を得ることができる。これは、隔壁3と駆動電極6を変えずに吐出チャンネルCとダミーチャンネルDを入れ替えることと同じである。また、本実施形態の駆動電極6を第二及び第三実施形態の液体噴射ヘッド1に適用することができる。
【0067】
(第五実施形態)
図9は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッド1のチャンネルの基板位置と駆動電極6の電極深さの間の関係を表すグラフである。第一及び第四実施形態と異なる点は、中央領域Acの駆動電極6である。その他の構成は第一及び第四実施形態と同様である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0068】
チャンネル列CRの中央領域Acにおいて、略中央の地点Pよりも外側に位置する駆動電極6は式(3)と下記式(4)を満たす。
Tci>(Tdei+Tdii)/2・・・(4)
具体的には、
図1(b)を参照して、吐出チャンネルCの吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTce(
図9において破線で示す)は、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeと内ダミーチャンネル外駆動電極6dieの深さTdieの平均深さ(
図9においていずれも実線で示す)より深く、式(3)を満たす。一方、吐出チャンネルCの吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciは、隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiと内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiの平均深さより深く、式(4)を満たす。吐出チャンネルC及びダミーチャンネルDの各駆動電極6は、地点Pを通りチャンネル列CR方向に垂直な平面に関して面対称の関係を有する。つまり、地点Pよりも右側の各駆動電極6は、地点Pよりも左側の各駆動電極6を左右反転したものとなる。
【0069】
なお、2つの端部領域Aeにおいては、第一実施形態と同様に、各駆動電極6は、式(2)及び式(3)の関係を満たす。また、ダミーチャンネルDにおいてチャンネル列CRの一方の端部の側に位置する駆動電極6の深さTd1は、ダミーチャンネルDの位置が一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次深くなり、チャンネル列CRの他方の端部の側に位置する駆動電極6の深さTd2は、ダミーチャンネルDの位置がチャンネル列CRの一方の端部から他方の端部に変化するに従い漸次浅くなる。そして、地点PにおいてダミーチャンネルDの両駆動電極6の深さがほぼ等しくなる(Td1≒Td2)。
【0070】
図10及び
図11を用いて本実施形態の効果を説明する。
図10は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッド1の吐出チャンネルCの基板位置と隔壁3の最大変位量の関係を表すグラフである。実線が本実施形態の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合、破線が従来の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合のシミュレーション結果である。吐出チャンネルCについて、一方(外側)の隔壁3の水平方向の最大変位量をΔd1とし、他方(内側)の隔壁3の水平方向の最大変位量をΔd2として、平均変位量Δdm=(Δd1+Δd2)/2とする。
【0071】
図10に示すように、中央領域Acにおいては、本発明の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmと従来の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmはほぼ同様となる。一方、端部領域Aeにおいては、本発明の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmのほうが従来の液体噴射ヘッド1の平均変位量Δdmよりも大きい。更に、
図10から、平均変位量Δdmの最大値と最小値の差が、従来の駆動電極6が0.3×10
-8m以上であるのに対して、本発明の駆動電極6が概ね0.1×10
-8mであり、小さい。
【0072】
図11は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッド1の吐出チャンネルCの基板位置と隔壁3の変位面積の関係を表すグラフである。実線が本発明の液体噴射ヘッド1の駆動電極6を用いる場合、破線が従来の液体噴射ヘッドの駆動電極6を用いる場合のシミュレーション結果である。縦軸が変位面積比を表し、横軸がチャンネルの基板位置を表す。変位面積比は基板位置が中央の隔壁3の変位面積により規格化している。吐出チャンネルCについて、一方(外側)の隔壁3の変位面積をΔs1とし、他方(内側)の隔壁3の変位面積をΔs2として、平均変位面積Δsm=(Δs1+Δs2)/2とする。
図11から明らかなように、平均変位面積Δsmの最大値と最小値の差が、本発明の駆動電極6は従来の駆動電極と比較して小さく、平均変位面積Δsmの基板内ばらつきが大幅に低減する。例えば、基板の両端(−54mm、+54mm)に位置する吐出チャンネルCの場合、本発明の駆動電極6は従来の駆動電極と比較して隔壁3の平均変位面積Δsmが約36%改善する。
【0073】
なお、本実施形態では、中央領域Acに位置する各駆動電極6が式(3)及び式(4)を満たし、端部領域Aeに位置する各駆動電極6が式(2)と式(3)を満たすが、これに代えて、中央領域Acに位置する駆動電極6が式(5)と下記式(6)を満たし、端部領域Aeに位置する駆動電極6が式(5)と式(2)を満たすようにしても同じ効果を得ることができる。
Tci<(Tdei+Tdii)/2・・・(6)
式(6)は、吐出チャンネルCの吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciは、吐出チャンネルCに隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiと内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiの平均深さよりも浅くする。これは、隔壁3と駆動電極6を変えずに吐出チャンネルCとダミーチャンネルDを入れ替えることと同じである。また、本実施形態の駆動電極6を第二及び第三実施形態の液体噴射ヘッド1に適用することができる。
【0074】
なお、チャンネル列CRの略中央の地点Pから端部までの距離を1としたときに、中央領域Acと端部領域Aeの境界は、地点Pから外側におおよそ0〜0.9の範囲とすることが好ましい。ただし、この範囲は、端部領域Aeにおける電極深さの差ΔT=Tce−(Tdee+Tdie)/2の大きさによって変化する。具体的には、斜め蒸着の前に隔壁3の上端面に設置する樹脂膜の厚みによって変化する。
【0075】
<液体噴射ヘッドの製造方法>
本発明に係る液体噴射ヘッド1の基本的な製造方法は、樹脂膜パターン形成工程S1と、溝形成工程S2と、電極材料堆積工程S3とを備える。樹脂膜パターン形成工程S1はアクチュエータ基板2の表面に樹脂膜7のパターンを形成する。溝形成工程S2は、アクチュエータ基板2の表面に吐出溝4と非吐出溝5が交互に配列する溝列MRを形成する。電極材料堆積工程S3は、アクチュエータ基板2の表面と、吐出溝4及び非吐出溝5の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積する。ここで、溝列MRの略中央の地点Pよりも端部の側を外側、溝列MRの端部よりも地点Pの側を内側とし、溝列MRを配列方向に中央領域Acと中央領域Acの両側に位置する端部領域Aeの3つの領域に分割する。また、吐出溝4と非吐出溝5の間を隔壁領域Rwとする。そして、樹脂膜パターン形成工程S1は、端部領域Aeにおいて、隔壁領域Rwのうち内側の領域に樹脂膜7を残し外側の領域から樹脂膜7を除去する第一樹脂パターンRj1と、隔壁領域Rwのうち内側の領域及び外側の領域のいずれにも樹脂膜7を残す第二樹脂パターンRj2とを溝列MR方向に交互に形成する。これにより、2回の斜め蒸着法により必要な深さの駆動電極6と共通端子15a及び個別端子15bを同時に形成することができる。更に、吐出チャンネルCを構成する両隔壁3の変位量の基板内ばらつきを低減させ、記録品質の向上した液体噴射ヘッド1を製造することができる。以下、具体的に説明する。
【0076】
(第六実施形態)
図12〜
図17は、本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法の説明図である。
図12は本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法の工程図である。
図13はアクチュエータ基板2の部分上面模式図である。
図14(a)はアクチュエータ基板2の部分上面模式図であり、
図14(b)はアクチュエータ基板2の溝列MR方向の部分断面模式図である。
図15はアクチュエータ基板2の溝列MR方向の部分断面模式図である。
図16(a)はアクチュエータ基板2の溝列MR方向の部分断面模式図であり、
図16(b)はアクチュエータ基板2の部分上面模式図である。
図17は液体噴射ヘッド1の吐出溝4方向の縦断面模式図である。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0077】
図12及び
図13に示すように、樹脂膜パターン形成工程S1において、アクチュエータ基板2の表面に樹脂膜7のパターンを形成する。ここで、アクチュエータ基板2の表面に吐出溝4と非吐出溝5を形成するときに、吐出溝4と非吐出溝5の間の隔壁3となるべき領域を隔壁領域Rwとする。2つの端部領域Aeにおいて、隔壁領域Rwのうち内側(地点P側)の領域に樹脂膜7を残し、外側(端部側)の領域から樹脂膜7を除去する第一樹脂パターンRj1と、隔壁領域Rwのうち内側の領域及び外側の領域のいずれにも樹脂膜7を残す第二樹脂パターンRj2とを溝列MRの配列方向に交互に形成する。より具体的には、2つの端部領域Aeにおいて、吐出溝4の外側に第二樹脂パターンRj2を形成し、吐出溝4の内側に第一樹脂パターンRj1を形成する。一方、中央領域Acにおいては、隔壁領域Rwをすべて第二樹脂パターンRj2により形成する。また、吐出溝4の後方側の領域であり、共通端子15aを形成するべき領域と、その後方側の個別端子15bを形成するべき領域から樹脂膜を除去する。
【0078】
ここで、アクチュエータ基板2は、例えばPZTセラミックスやBaTiO
3セラミックスなどの圧電体材料を使用する。アクチュエータ基板2は、全体が圧電体材料であってもよいし、隔壁3を形成する領域が圧電体材料で、他の領域が非圧電体材料であってもよい。アクチュエータ基板2の圧電体材料は、基板表面の法線方向に予め分極処理を施しておく。樹脂膜7は、感光性樹脂膜、例えばレジストフィルムをアクチュエータ基板2の表面に貼り付け、フォトリソグラフィ工程によりパターンを形成する。樹脂膜7は、例えば10μm〜50μmの範囲の厚さとする。なお、樹脂膜7の厚さをDjとし、非吐出溝5の内側の駆動電極6の深さをTdi、外側の駆動電極6の深さをTdeとして、Tdi=Dj+Tdeとなる位置を、中央領域Acと端部領域Aeの境界とすることができる。
【0079】
次に、
図12及び
図14に示すように、溝形成工程S2において、アクチュエータ基板2の表面に隔壁3を挟んで吐出溝4と非吐出溝5が交互に配列する溝列MRを形成する。吐出溝4は、前方の端面となる位置から後方の端面となる位置の手前まで形成する。非吐出溝5は、前方の端面となる位置から後方の端面となる位置までストレートに形成する。端部領域Aeの隔壁3は、吐出溝4の外側に第二樹脂パターンRj2を備え、吐出溝4の内側に第一樹脂パターンRj1を備える。中央領域Acの全ての隔壁3は、第二樹脂パターンRj2を備える。吐出溝4と非吐出溝5は、例えば外周にダイヤモンド等の研削用の砥粒を埋め込んだダイシングブレードを用いて研削して形成することができる。吐出溝4と非吐出溝5は溝幅を20μm〜100μm、溝の深さを100μm〜400μmとし、同じ溝幅に形成することができる。なお、
図14(b)に示すように、右側の端部領域Aeの樹脂膜7のパターンは、左側の端部領域Aeの樹脂膜7と、地点Pを通り溝列MR方向に垂直な平面に関して面対称の形状を有する。
【0080】
次に、
図12及び
図15に示すように、電極材料堆積工程S3において、アクチュエータ基板2の表面と、吐出溝4及び非吐出溝5の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積して電極8を形成する。中央領域Acの地点Pにおいて吐出溝4又は非吐出溝5の概ね1/2の深さまで電極材料を堆積する。電極材料として、例えばTi、Ni、Al、Au、Ag、Si、C、Pt、Ta、Sn、In等の金属材料や半導体材料を用いることができる。まず、第一の斜め蒸着法では、アクチュエータ基板2の溝列MRについて略中央の地点Pの表面の法線に対し、溝列MR方向に角度θ傾いた右斜め上方から導電材料の一回目の斜め蒸着を行う。次に、第二の斜め蒸着法では、溝列MRの略中央の地点Pの法線を中心軸として180°回転して二回目の斜め蒸着を行う。
図15においては、法線に対し溝列MR方向に角度θ傾いた左斜め上方から導電材料の二回目の斜め蒸着を行うことになる。このとき、溝列MRにおける吐出溝4と非吐出溝5の位置に応じて蒸着角度は連続的に変化し、入射角はθ’>θ>θ”の関係となる。そのため、吐出溝4と非吐出溝5の位置が溝列MRの左から右に変化するに従い、各溝の左側の側面の電極8の深さが次第に深くなり、右側の側面の電極8の深さが次第に浅くなる。なお、端部領域Aeの吐出溝4の内側(地点P側)の隔壁3は上端面に第一樹脂パターンRj1を備える。第一樹脂パターンRj1は吐出溝4側に樹脂膜7が無く、吐出溝4の外側の側面に堆積する電極8の深さは、隣接する非吐出溝5の外側の側面に堆積する電極8の深さよりも樹脂膜7の厚さ分深くなる。
【0081】
次に、
図12及び
図16に示すように、樹脂膜除去工程S4において、樹脂膜7を除去し、同時に樹脂膜7の上面に堆積した導電材料(電極8)も除去する(リフトオフ法)。その結果、吐出溝4及び非吐出溝5の両側面に堆積した電極8が駆動電極6として残り、アクチュエータ基板2の表面に堆積した電極8が共通端子15aと個別端子15bとして残る。また、第一樹脂パターンRj1が設置された隔壁3の吐出溝4側の上端面には電極8が残り、この電極8は共通端子15aと電気的に接続する。
【0082】
従って、第一実施形態において説明したように、端部領域Aeにおいて、吐出溝4と非吐出溝5の駆動電極6の深さは、吐出チャンネルCの吐出チャンネル外駆動電極6ceの深さTceが、吐出チャンネルCに隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル外駆動電極6deeの深さTdeeと内ダミーチャンネル外駆動電極6dieの深さTdieの平均深さよりも深く、式(3)を満たす。また、端部領域Aeにおいて、吐出チャンネルCの吐出チャンネル内駆動電極6ciの深さTciは、吐出チャンネルCに隣接する2つのダミーチャンネルDの外ダミーチャンネル内駆動電極6deiの深さTdeiと内ダミーチャンネル内駆動電極6diiの深さTdiiの平均深さとほぼ等しく、式(2)を満たす。また、中央領域Acにおいては、各駆動電極6の深さは式(2)と式(7)を満たす。
【0083】
また、共通端子15aは吐出溝4の両側面に位置する駆動電極6と電気的に接続する。なお、
図16(b)に示すように、端部領域Aeに位置する吐出溝4の吐出チャンネル内駆動電極6ciは隔壁3の上端に堆積する電極8と連続し、共通端子15aに電気的に接続するので、配線抵抗が低下する。個別端子15bは、吐出溝4に隣接する非吐出溝5の吐出溝4側の側面に位置する駆動電極6と電気的に接続する。また、樹脂膜除去工程S4は、アクチュエータ基板2の表面を研削することによって樹脂膜7を除去することができる。この場合は、共通端子15aと個別端子15bを樹脂膜除去工程S4の後に形成する必要がある。
【0084】
次に、
図12及び
図17に示すように、カバープレート接合工程S5において、アクチュエータ基板2の表面(上面US)にカバープレート10を接合する。カバープレート10は液室11と、液室11の底面からアクチュエータ基板2側に貫通する複数のスリット12を備える。各スリット12は各吐出溝4の後方側の端部にそれぞれ連通する。次に、ノズルプレート接着工程S6において、ノズルプレート13をアクチュエータ基板2及びカバープレート10の前方端面に接着する。ノズルプレート13は複数のノズル14を備え、各ノズル14はアクチュエータ基板2の前方端面に開口する各吐出溝4にそれぞれ連通する。吐出溝4と、カバープレート10と、ノズルプレート13により吐出チャンネルCを構成する。非吐出溝5とカバープレート10によりダミーチャンネルDを構成する。このようにして
図4に示す液体噴射ヘッド1を製造することができる。これにより、吐出チャンネルCの両隔壁3の変形量のばらつきを低減させ、記録品質の向上を図ることができる。
【0085】
吐出チャンネルCの両隔壁3の変形量のばらつきを低減させるためには、吐出溝4の外側の側面に堆積する電極8の深さと、隣接する非吐出溝5の外側の側面に堆積する電極8の深さとの差を一定にすることが望ましい。本実施例の製造方法によれば、その深さの差を均一な膜厚を持つ樹脂膜で制御することができる。その結果、容易かつ安定に、記録品質の高い液体噴射ヘッドを実現することができる。
【0086】
なお、樹脂膜パターン形成工程S1は、中央領域Acにおいて、吐出溝4の外側に第二樹脂パターンRj2を形成し、吐出溝4の内側に第一樹脂パターンRj1を形成すれば、第四実施形態の液体噴射ヘッド1を作成することができる。つまり、中央領域Acにおいても端部領域Aeと同様に、各駆動電極6が式(2)及び式(3)を満たす液体噴射ヘッド1を製造することができる。
【0087】
また、この第四実施形態の場合、中央領域Acにおいて、略中央の地点Pに対応する吐出溝4又は非吐出溝5の両隔壁3は、例外として、内側と外側の両方に第一樹脂パターンRj1を形成しても、内側と外側の両方に第二樹脂パターンRj2を形成しても構わない。つまり、本件発明では略中央の地点Pを基準として、吐出溝4と非吐出溝5を「外側」と「内側」と分けて定義したが、略中央の地点Pに対応する吐出溝4又は非吐出溝5は、溝列MRのちょうど真ん中に位置する吐出溝4又は非吐出溝5として、例外的に他の吐出溝4又は他の非吐出溝5と区別して、駆動電極6を形成する深さを選択的に取り扱うことが可能である。
【0088】
また、樹脂膜パターン形成工程S1は、中央領域Acにおいて、吐出溝4の外側に、隔壁領域Rwのうち内側の領域から樹脂膜7を除去し外側の領域に樹脂膜7を残す第三樹脂パターンRj3を形成し、吐出溝4の内側に第一樹脂パターンRj1を形成する。これにより、第五実施形態の液体噴射ヘッド1を製造することができる。つまり、中央領域Acにおいて、各駆動電極6が式(3)と式(4)を満たし、端部領域Aeにおいて、各駆動電極6が式(2)と式(3)を満たす。
【0089】
また、樹脂膜パターン形成工程S1は、端部領域Aeにおいて、非吐出溝5の外側に第二樹脂パターンRj2を形成し、非吐出溝5の内側に第一樹脂パターンRj1を形成してもよい。この場合は、第六実施形態の吐出溝4(吐出チャンネルC)の各駆動電極6と非吐出溝5(ダミーチャンネルD)の各駆動電極6とを入れ替えることと同じであり、第六実施形態の液体噴射ヘッド1と同様の効果を得ることができる。
【0090】
また、樹脂膜パターン形成工程S1は、中央領域Ac及び端部領域Aeにおいて、非吐出溝5の外側に第二樹脂パターンRj2を形成し、非吐出溝5の内側に第一樹脂パターンRj1を形成してもよい。この場合は、第四実施形態の吐出チャンネルCの各駆動電極6とダミーチャンネルDの各駆動電極6とを入れ替えることと同じであり、第四実施形態の液体噴射ヘッド1と同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、樹脂膜パターン形成工程S1は、端部領域Aeにおいて、非吐出溝5の外側に第二樹脂パターンRj2を形成し、非吐出溝5の内側に第一樹脂パターンRj1を形成するとともに、中央領域Acにおいて、非吐出溝5の外側に第三樹脂パターンRj3を形成し、非吐出溝5の内側に第一樹脂パターンRj1を形成してもよい。この場合は、第五実施形態の液体噴射ヘッド1の吐出チャンネルCの各駆動電極6とダミーチャンネルDの各駆動電極6とを入れ替えることと同じであり、第五実施形態の液体噴射ヘッド1と同様の効果を得ることができる。また、エッジシュート型の液体噴射ヘッド1に代えて、第三実施形態のサイドシュート型の液体噴射ヘッド1を本実施形態の製造方法により製造することができる。
【0092】
(第七実施形態)
図18〜
図20は、本発明の第七実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法の説明図である。
図18は、本発明の第七実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法の工程図である。
図19は、アクチュエータ基板2の部分上面模式図である。
図20は、アクチュエータ基板2の部分断面模式図である。第六実施形態と異なる点は、樹脂膜パターン形成工程S1において第一〜第三樹脂パターンRj1、Rj2、Rj3を形成せず、電極材料堆積工程S3において4回の斜め蒸着により導電材料を堆積する点である。以下、第六実施形態と異なる点について説明する。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0093】
図18及び
図19に示すように、樹脂膜パターン形成工程S1において、アクチュエータ基板2の表面に樹脂膜7のパターンを形成する。ここで、共通端子15a及び個別端子15bを形成する領域から樹脂膜7を除去し、吐出溝4及び非吐出溝5を形成する領域に樹脂膜7を残す。次に、溝形成工程S2において、アクチュエータ基板2の表面に隔壁3を挟んで吐出溝4と非吐出溝5が交互に配列する溝列MRを形成する。具体的には第六実施形態の溝形成工程S2と同様なので、説明を省略する。
【0094】
次に、
図18及び
図20(a)に示すように、第一の電極材料堆積工程S31において、アクチュエータ基板2の表面と、吐出溝4及び非吐出溝5の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積する。まず、一回目の斜め蒸着では、アクチュエータ基板2の溝列MRの略中央の地点Pの法線に対し、溝列MR方向に角度θ傾いた右斜め上方から導電材料の斜め蒸着を行う(電極材料の入射角θ)。次に、二回目の斜め蒸着では、アクチュエータ基板2を溝列MRの略中央の地点Pの法線を中心軸として180°回転して斜め蒸着を行う。
図20(a)においては、法線に対して溝列MR方向に角度θ傾いた左斜め上方から導電材料の斜め蒸着を行うことになる(電極材料の入射角θ)。この際、溝列MRにおける吐出溝4と非吐出溝5の位置に応じて入射角は連続的に変化し、入射角はθ’>θ>θ”の関係となる。そのため、吐出溝4と非吐出溝5の位置が溝列MRの左から右に変化するに従い、各溝の左側の側面の電極8の深さが次第に深くなり、右側の側面の電極8の深さが次第に浅くなる。
【0095】
次に、
図18及び
図20(b)に示すように、第二の電極材料堆積工程S32において、アクチュエータ基板2の表面上にマスク17を設置して斜め蒸着法により導電材料を堆積する。ここで、溝列MRの略中央の地点Pよりも端部の側を外側、溝列MRの端部よりも地点Pの側を内側とし、溝列MRを中央領域Acと中央領域Acの両側に位置する端部領域Aeの3つの領域に分割する。そして、第二の電極材料堆積工程S32において、端部領域Aeに含まれる非吐出溝5又は吐出溝4のいずれか一方を遮蔽するマスク17を設置し、吐出溝4又は非吐出溝5の側面に斜め蒸着法により電極材料を堆積する。
【0096】
具体的には、第二の電極材料堆積工程S32において、中央領域Acと右の端部領域Aeに含まれる吐出溝4及び非吐出溝5と、左の端部領域Aeに含まれる非吐出溝5をマスク17により遮蔽し、左の端部領域Aeに含まれる吐出溝4の外側の側面に三回目の斜め蒸着により導電材料を堆積する。この三回目の斜め蒸着法では、アクチュエータ基板2の表面の法線に対し、溝列MR方向に角度φ傾いた右斜め上方から導電材料の斜め蒸着を行う(電極材料の入射角φ)。
【0097】
次に、中央領域Acと左の端部領域Aeに含まれる吐出溝4及び非吐出溝5と、右の端部領域Aeに含まれる非吐出溝5をマスク17により遮蔽し、右の端部領域Aeに含まれる吐出溝4の外側の側面に四回目の斜め蒸着により導電材料を堆積する。この四回目の斜め蒸着法では、三回目の斜め蒸着法の終了後に地点Pの法線方向を中心軸としてアクチュエータ基板2を180°回転して四回目の斜め蒸着を行う。
図20(b)においては、法線に対し溝列MR方向に入射角φ傾いた左斜め上方から導電材料を堆積することになる(電極材料の入射角φ)。ここで、第二の電極材料堆積工程S32におけるアクチュエータ基板2の表面の法線に対する入射角φは、第一の電極材料堆積工程S31におけるアクチュエータ基板2の表面の法線に対する角度θ’よりも小さい(φ<θ’)。そのため、側面に堆積する電極8の深さはより深くなる。斜め蒸着法における入射角θ’、φを適切に設定することにより、第一実施形態の液体噴射ヘッド1において説明したように、2つの端部領域Aeにおいて、式(1)、式(2)及び式(3)の関係を満たす各駆動電極6を作成することができる。
【0098】
次に、
図18及び
図20(c)に示すように、樹脂膜除去工程S4において、樹脂膜7を除去し、同時に樹脂膜7の上面に堆積した導電材料も除去する。その結果、吐出溝4及び非吐出溝5の両面に電極8が駆動電極6として残り、アクチュエータ基板2の上面USの電極8が共通端子15a及び個別端子15bとして残る。以下、カバープレート接合工程S5及びノズルプレート接着工程S6は第六実施形態と同様なので説明を省略する。
【0099】
なお、第二の電極材料堆積工程S32において、中央領域Acと右の端部領域Aeに含まれる吐出溝4及び非吐出溝5と、左の端部領域Aeに含まれる吐出溝4をマスク17により遮蔽し、左の端部領域Aeに含まれる非吐出溝5の外側の側面に三回目の斜め蒸着により導電材料を堆積する。次に、アクチュエータ基板2を地点Pの法線を中心軸として180°回転して四回目の斜め蒸着により導電材料を堆積する。これにより、端部領域Aeに含まれる各駆動電極6は式(2)と式(5)の関係を満たし、第一実施形態の液体噴射ヘッド1と同様の効果を得ることができる。
【0100】
また、第二の電極材料堆積工程S32において、地点Pよりも一方の外側に含まれる非吐出溝5又は吐出溝4のいずれか一方を遮蔽し、地点Pよりも他方の外側に含まれる吐出溝4と非吐出溝5を遮蔽するマスク17を設置して三回目の斜め蒸着により電極材料を堆積する。次に、アクチュエータ基板2を地点Pの法線を中心軸として180°回転して四回目の斜め蒸着により電極材料を堆積する。これにより、地点Pよりも外側に位置する各駆動電極6は式(2)と式(3)、又は、式(5)と式(2)の関係を満たし、第四実施形態の液体噴射ヘッド1と同様の効果を得ることができる。
【0101】
また、第二の電極材料堆積工程S32において、一方の端部領域Aeと中央領域Acに含まれる非吐出溝5又は吐出溝4のいずれか一方を遮蔽し、他方の端部領域Aeに含まれる吐出溝4及び非吐出溝5を遮蔽するマスク17を設置して三回目の斜め蒸着により電極材料を堆積する。次に、アクチュエータ基板2を地点Pの法線を中心軸として180°回転して四回目の斜め蒸着により電極材料を堆積する。これにより、端部領域Aeに位置する各駆動電極6は式(2)と式(3)を満たし、中央領域Acに位置する各駆動電極6は式(3)と式(4)を満たす。又は、端部領域Aeに位置する各駆動電極6は式(2)と式(5)を満たし、中央領域Acに位置する各駆動電極6は式(5)と式(6)を満たす。従って、第五実施形態の液体噴射ヘッド1と同様の効果を得ることができる。
【0102】
なお、本件発明では、略中央の地点Pは、吐出溝4に対応するように記載したが、この記載に限られず、略中央の地点Pは、非吐出溝5に対応しても構わない。また、複数の溝を含む溝列MRの配列方向において厳密な中央の位置は吐出溝4又は非吐出溝5に対応しても構わないし、隔壁3に対応しても構わない。中央の位置が隔壁3に対応する場合は、その周囲に位置する吐出溝4又は非吐出溝5を略中央の地点Pに対応する溝として取り扱うものとする。
【0103】
<液体噴射装置>
(第八実施形態)
図21は本発明の第八実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。液体噴射装置30は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給し、液体噴射ヘッド1、1’から液体を排出する流路部35、35’と、流路部35、35’に連通する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は既に説明した第一〜第七実施形態のいずれかを使用する。
【0104】
液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0105】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに回転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39を備えている。
【0106】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0107】
なお、本実施形態は、移動機構40がキャリッジユニット43と被記録媒体44を移動させて記録する液体噴射装置30であるが、これに代えて、キャリッジユニットを固定し、移動機構が被記録媒体を二次元的に移動させて記録する液体噴射装置であってもよい。つまり、移動機構は液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させるものであればよい。