(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラに付着した水滴や汚れ、撮影環境等の要因によって、駐車枠を構成する短い線が車道中央線のように長い線であると誤認識し、駐車支援の精度を低下させるという問題がある。さらに、駐車支援の精度低下をもたらす要因を判定するための手段も、同時に他の要因の影響を受けるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、車載画像処理装置は、車両の周囲の路面を撮影して撮影画像を取得する撮影装置と、撮影装置により取得された撮影画像に基づいて、車両の周囲を俯瞰した様子を示す俯瞰画像を生成する画像生成部と、画像生成部によって生成された俯瞰画像を用いて、車両の周囲の路面標示を抽出する抽出部と、抽出部が路面標示を抽出する際に観測される、少なくとも、路面ノイズ、障害物ノイズおよび付着物ノイズのうち何れか1つ以上のノイズを検出する検出部と、
を備え、検出部により検出されたノイズに応じて、撮影画像の内部の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の部分俯瞰領域との何れか
を選択して、駐車枠を認識す
る。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による車載画像処理装置において、検出されたノイズに応じて、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択して、選択画像領域についてノイズの状態に応じたノイズフラグを設定するノイズフラグ設定部
と、ノイズフラグ設定部により選択された選択画像領域を用いて抽出された路面標示が駐車枠であるか否かを認識する
駐車枠認識部と、をさらに備えることが好ましい。
本発明の第3の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部がノイズを検出しない場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第4の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が線画像の輝度差に応じて路面ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の車両の近傍の路面に対応する部分撮影領域と俯瞰画像の内部の車両の近傍の路面に対応する部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第5の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が車線以外の路面標示に基づいて路面ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の車両の遠方の路面に対応する部分撮影領域を選択画像領域として選択しないことが好ましい。
本発明の第6の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が車両の周辺の立体物に基づいて障害物ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第7の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が撮影装置に付着した水滴に基づいて付着物ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の車両の遠方の路面に対応する部分撮影領域を選択画像領域として選択しないことが好ましい。
本発明の第8の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が撮影装置に付着した汚れに基づいて付着物ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の車両の近傍の路面に対応する部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第9の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が少なくとも車両の周辺の立体物と撮影装置に付着した水滴とに基づいて障害物ノイズと付着物ノイズとを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の前記車両の近傍の路面に対応する部分撮影領域と俯瞰画像の内部の車両の近傍の路面に対応する部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第10の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が少なくとも撮影装置に付着した水滴と汚れとに基づいて付着物ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択しないことが好ましい。
本発明の第11の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が少なくとも線画像の輝度差と撮影装置に付着した水滴とに基づいて路面ノイズと付着物ノイズとを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、撮影画像の内部の車両の近傍の路面に対応する部分撮影領域と、俯瞰画像の内部の車両の近傍の路面に対応する部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第12の態様によれば、第2の態様による車載画像処理装置において、検出部が少なくとも車線以外の路面標示と撮影装置に付着した汚れとに基づいて路面ノイズと付着物ノイズとを検出した場合には、ノイズフラグ設定部は、俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域の中から選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第13の態様によれば、第2乃至第12の何れか一つの態様による車載画像処理装置において、ノイズフラグ設定部が設定したノイズフラグを記憶する記憶部をさらに備え、ノイズフラグ設定部は、撮影装置により次フレームの撮影画像が取得された際には、記憶部に記憶されたノイズフラグに基づいて選択画像領域を選択することが好ましい。
本発明の第14の態様によれば、第13の態様による車載画像処理装置において、記憶部は、ノイズフラグが記憶されてから所定の時間が経過すると、該ノイズフラグを削除することが好ましい。
本発明の第15の態様によれば、第2乃至第14の何れか一つの態様による車載画像処理装置において、ノイズフラグ設定部は、選択画像領域においてノイズフラグを設定するための基準値を緩和することが好ましい。
本発明の第16の態様によれば、第1乃至第15の何れか一つの態様による車載画像処理装置において、路面ノイズは、抽出対象である路面標示または駐車枠の近傍に存在する抽出対象の非構成物であり、抽出対象の抽出に悪影響を与える駐車枠ノイズまたは白線ノイズを含んで構成されることが好ましい。
本発明の第17の態様によれば、第1乃至第15の何れか一つの態様による車載画像処理装置において、障害物ノイズは、抽出対象である路面標示または駐車枠が描かれている略平面以外の空間に存在する物体の映り込みにより抽出対象の抽出に悪影響を与える立体物ノイズを含んで構成されることが好ましい。
本発明の第18の態様によれば、第1乃至第15の何れか一つの態様による車載画像処理装置において、付着物ノイズは、撮影装置への付着物に起因する水滴ノイズまたは汚れノイズを含んで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、検出されたノイズに応じて画像領域を切換えて駐車枠を認識するので、駐車支援の精度低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態による車載画像処理装置100の構成を示すブロック図である。
図1に示す車載画像処理装置100は、車両に搭載されて使用されるものであり、カメラ1a、1b、1cおよび1dと、画像合成部2と、演算処理部3と、出力部4と、メモリ5とを備える。
【0009】
カメラ1a〜1dは、車両の周囲をそれぞれ異なる撮影範囲で撮影する電子式カメラであり、車両のボディ、バンパー、ドアミラー等の各部に設置されている。これらの各カメラの撮影範囲は、合わせて車両の全周囲をカバーできるように定められている。本実施形態では、カメラ1aは車両前方の撮影範囲を、カメラ1bは車両左側方の撮影範囲を、カメラ1cは車両右側方の撮影範囲を、カメラ1dは車両後方の撮影範囲をそれぞれ撮影するものとして説明する。カメラ1a〜1dにより所定のフレームレート間隔でそれぞれ取得された撮影画像は、画像合成部2へ出力される。
【0010】
なお、本実施形態では、4つのカメラ1a〜1dが上記のような各撮影範囲をそれぞれ撮影するものとして説明するが、車両に搭載されるカメラの個数および撮影範囲はこれに限定されない。また、各カメラを合わせた撮影範囲は、必ずしも車両の全周囲をカバーしていなくてもよい。車両の周囲を適切な範囲で撮影できれば、任意の個数のカメラを用いて、任意の撮影範囲について撮影画像を取得することができる。
【0011】
画像合成部2は、カメラ1a〜1dにより取得された各撮影画像に基づいて、車両の全周囲を俯瞰した様子を示す俯瞰画像(トップビュー画像)を合成する。この俯瞰画像は、カメラ1a〜1dの各撮影画像をその撮影方向に応じて座標変換した上で繋ぎ合わせることによって合成されるものである。画像合成部2により合成された俯瞰画像は、演算処理部3へ出力される。
【0012】
演算処理部3は、カメラ1a〜1dにより取得された撮影画像または画像合成部2により合成された俯瞰画像に基づいて所定の演算処理を行うことにより、車両周囲の駐車枠を認識する。この演算処理部3が行う演算処理の内容については、後で詳しく説明する。演算処理部3による駐車枠の認識結果は、出力部4へ出力される。メモリ5は、演算処理部3による演算結果等を一時的に記憶するための揮発性の記憶媒体である。
【0013】
出力部4は、演算処理部3による駐車枠の認識結果に基づいて、車両周囲の駐車枠に対する駐車枠情報を出力する。たとえば、車両に対する駐車枠の方向や駐車枠までの距離を示す情報を駐車枠情報として出力する。この駐車枠情報は、車載画像処理装置100と接続されている上位の車両制御装置(不図示)へと出力され、車両の駐車支援や走行制御等に利用される。一例として、周囲に駐車場が存在する状況であることを自動で認識し、例えば駐車場環境である場合には、モニタに自動周囲の俯瞰映像を自動で切り替えて表示することができる。これにより、公道において駐車場であると誤検出する状況を抑制し、適切なタイミングでユーザへの提示映像を切り替えることができるようになる。
【0014】
また、出力部4は、演算処理部3による駐車枠の認識結果に基づいて、自車からの相対的な位置情報として駐車枠情報を出力する。たとえば、駐車枠の左右枠線の端点座標、駐車枠線の角度および切片といった、実環境中における駐車枠の位置情報を出力する。この駐車枠情報は、車載画像処理装置100と接続されている上位の車両制御装置(不図示)へと出力され、車両の駐車支援や走行制御に利用される。たとえば、自車から駐車枠までの相対的な位置姿勢に基づいて、駐車枠までの走行経路を計算し、ドライバーによるブレーキやシフトポジション変更のタイミングや、舵角の操作量を検知することによって、駐車支援を行うことが可能となる。これにより、車庫入れ等の運転操作に不慣れなドライバーにとっても、短時間で駐車動作が完了できるようになる。
【0015】
さらには、自車から駐車枠までの相対的な位置姿勢に基づいて、駐車枠までの走行経路を計算し、自動で車両の前進・後退・旋回の制御量を計算し、その計算結果に従って車両運動を自動制御してもよい。これにより、車庫入れ等の運転操作に不慣れなドライバーにとっても、安全かつ正確に駐車動作を完了できるようになる。
【0016】
図2は、画像合成部2により合成された俯瞰画像とカメラ1aにより撮影された車両前方の撮影画像を合わせた表示画像の例を示す図である。
図2において、左側の画像21は俯瞰画像を示し、右側の画像22は車両前方の撮影画像を示している。
【0017】
俯瞰画像21は、車両の前方、左側方、右側方および後方にそれぞれ対応する4つの画像領域21a、21b、21cおよび21dにより構成されている。これらの画像領域の各画像は、
図1のカメラ1a〜1dによってそれぞれ撮影された画像に基づいて作成されたものである。画像領域21a内には、駐車枠線23の一部が表示されている。この駐車枠線23は、撮影画像22にも表示されている。
【0018】
以上説明したような画像は、たとえば車両内に設置された不図示の表示モニタにおいて表示される。なお、撮影画像22として表示される画像は、車両の進行方向に応じて切り替えられることが好ましい。たとえば、車両のシフトレバーを前進方向に切り替えたときには、車両が前進していると判断して、カメラ1aにより撮影された車両前方の撮影画像を表示する。一方、車両のシフトレバーを後退方向に切り替えたときには、車両が後退していると判断して、カメラ1dにより撮影された車両後方の撮影画像を表示する。このようにすれば、車両の進行方向に応じた適切な撮影画像を車両の運転者に提示し、駐車時などの運転操作支援を行うことができる。
【0019】
次に、演算処理部3が行う演算処理の内容について説明する。
図3は、演算処理部3が行う演算処理の制御ブロック図である。
図3に示すように、演算処理部3は、線抽出部301、ノイズ検出部302、駐車枠認識部303およびノイズフラグ設定部304の各制御ブロックを機能的に有する。演算処理部3では、たとえば、これらの各制御ブロックに対応してメモリに記録されているプログラムをマイクロコンピュータで実行することにより、
図3の各制御ブロックを実現している。
【0020】
画像合成部2により合成された俯瞰画像は、演算処理部3において線抽出部301、ノイズ検出部302および駐車枠認識部303に入力される。線抽出部301は、入力された俯瞰画像から車両の走行面に描かれた線を線画像として抽出する。たとえば、俯瞰画像を横方向に探索したときの輝度変化が所定のしきい値以上であるエッジ点を特徴点として抽出し、各特徴点をその位置関係や前回処理時からの移動量および移動方向等に基づいてグループ分けすることで、車両の走行面に描かれた線を抽出することができる。なお、ここで抽出される線には、道路上に描かれた各種の道路標示線(車道中央線、車線境界線、車道外側線、横断歩道等)や、駐車場に描かれた駐車枠線などが含まれる。線抽出部301による線抽出結果は、ノイズ検出部302および駐車枠認識部303へ出力される。
【0021】
ノイズ検出部302は、入力された撮影画像の全領域と俯瞰画像の全領域との少なくとも1つ以上を用いて、ノイズの有無を検出する。本実施の形態においては、ノイズ検出部302が、駐車枠ノイズ、白線ノイズ、立体物ノイズ、水滴ノイズおよび汚れノイズを検出する場合を例示するが、ノイズ検出部302が検出するノイズは上記の例に限定されるものではない。
【0022】
ノイズ検出部302は、公知の技術を用いて、西日や照明光等の影響により駐車枠を構成する2本の駐車枠線の輝度値もしくは色のいずれか1つ以上が大きく異なる場合、すなわち、線抽出部301により抽出された異なる線画像同士の輝度値または色差値の差分が所定値を超える場合に、駐車枠ノイズとして検出する。ノイズ検出部302は、公知の技術を用いて、抽出された線画像の近傍に、駐車枠を構成する駐車枠線以外の路面標示が検出された場合には、白線ノイズとして検出する。ノイズ検出部302は、公知の技術を用いて、異なる時刻に相当する俯瞰画像間の差分画像に基づいて立体物を検出した場合には、検出した立体物を立体物ノイズとする。
【0023】
ノイズ検出部302は、公知の技術を用いて、複数の撮影画像間において上部の画像領域を利用して水滴検出を行い、検出した水滴を水滴ノイズとする。ノイズ検出部302は、公知の技術を用いて、異なるタイミングで撮影された時間的に前後する複数の撮影画像の差分を抽出することにより、カメラ1a〜1dのレンズに付着した付着物を汚れノイズとして検出する。
【0024】
画像全体を処理対象とすると、西日や照明光が強い場合や、雨・汚れといった付着物が付着している場合に、上記の各ノイズの算出は影響を受けてしまう。そこで、ノイズ検出部302は、まず画面全体でノイズ検出を実行する。ノイズ検出部302により特定のノイズが検出された場合には、ノイズフラグ設定部304において、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域とのいずれか1つ以上の領域を選択的に利用して、再度ノイズ検出を実行する。ノイズフラグ設定部304は、再度検出したノイズの状態に応じたノイズフラグを設定して、駐車枠認識部303へ出力する。なお、以下の説明では、部分撮影領域と部分俯瞰領域とを総称する場合には、部分画像領域と呼ぶ。
【0025】
駐車枠認識部303は、ノイズフラグ設定部304による検出結果に応じて、線抽出部301により抽出された線が駐車枠線であるか否かを判断する。駐車枠認識部303は、抽出された線画像が駐車枠線であると判断すればそれに対応する駐車枠の認識結果を
図1の出力部4へ出力する。
【0026】
図4〜
図8に、部分画像領域を例示する。
図4は、斜線を付して示す俯瞰画像の近傍俯瞰領域R1が部分画像領域である例を示す。近傍俯瞰領域R1は、自車両を基点として、たとえば0m〜1.5mの範囲の近傍の路面に対応した部分俯瞰領域である。
図5は、斜線を付して示す俯瞰画像の外周俯瞰領域R2が部分画像領域である例を示す。外周俯瞰領域R2は、自車両を基点として、たとえば1.5mの範囲より遠方の路面に対応した部分俯瞰領域である。
【0027】
図6は、斜線を付して示す撮影画像の近傍撮影領域R3が部分画像領域である例を示す。近傍撮影領域R3は、たとえば自車両の前方0.5m〜8mの範囲の近傍の路面に対応した部分撮影領域である。
図7は、斜線を付して示す撮影画像の遠方撮影領域R4が部分画像領域である例を示す。遠方撮影領域R4は、たとえば自車両の前方8m以遠の範囲の遠方の路面に対応する部分撮影領域である。
図8は、斜線を付して示す撮影画像の外周撮影領域R5が部分画像領域である例を示す。外周撮影領域R5は、たとえば自車両の中心部からの幅が3m以遠の範囲の路面に対応する部分撮影領域である。
【0028】
図9は、ノイズ検出部302により検出されたノイズと、ノイズフラグ設定部304が選択画像領域として選択する部分画像領域との対応関係を模式的に示す。
図9は、上記の駐車枠ノイズ、白線ノイズ、立体物ノイズ、水滴ノイズおよび汚れノイズのうち抽出された線画像に対して検出されたノイズについてはフラグが「1」に設定され、検出されていないノイズについてはフラグが「0」に設定された場合を示している。さらに、
図9は、検出されたノイズに応じてノイズフラグ設定部304が選択する部分画像領域を「○」、選択しない部分画像領域を「−」で示す。
【0029】
図9に示す事例Aでは、ノイズ検出部302によりノイズが検出されず、全てのノイズについてフラグが「0」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1、外周俯瞰領域R2、近傍撮影領域R3、遠方撮影領域R4および外周撮影領域R5の何れかを選択画像領域として選択して駐車枠の認識を行うことを示している。この場合、抽出された線画像には他のノイズ算出に影響を与えるようなノイズが検出されていないので、ノイズフラグ設定部304が部分画像領域のうちの何れかを用いたとしても、適切にノイズフラグを出力させることが可能であり、駐車枠認識部303において駐車枠の誤認識の発生を低減できる。なお、抽出された線画像が車道中央線のように長い線に対応するものであるか、駐車枠線のように短い線に対応するものであるかを判別するためには、自車両から遠方を撮影した画像(たとえば遠方撮影領域R4)を選択画像領域とすることが好ましい。
【0030】
事例Bは、駐車枠ノイズについてのフラグのみが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1、近傍撮影領域R3および外周撮影領域R5の何れかを選択画像領域として選択することを表している。換言すると、ノイズフラグ設定部304は、遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しない。上述したように、駐車枠ノイズは抽出した線画像の輝度値が大きく異なる場合に検出される。このため、自車両から遠くに離れるに従って2本の線の輝度差がより拡大し、同一の駐車枠を構成する駐車枠線であるのか否かの判別がつきにくくなる。このため、駐車枠ノイズが検出されている場合には、ノイズフラグ設定部304は、自車両の近傍を撮影した部分画像領域を使用してノイズフラグの設定を行うことにより、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、駐車枠認識部303における誤認識の発生を抑制している。
【0031】
事例Cは、白線ノイズについてのフラグのみが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1、外周俯瞰領域R2、近傍撮影領域R3および外周撮影領域R5の何れかを選択画像領域してノイズフラグ算出を行うことを表している。換言すると、ノイズフラグ設定部304は、遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しない。上述したように、白線ノイズは道路標示等が検出された場合に検出される。このため、文字等の複雑なペイントが路上に描かれた駐車場において、自車両から遠方の部分画像領域を用いた場合、ペイントを駐車枠線と誤認識する可能性が考えられる。本実施の形態では、ノイズフラグ設定部304は、遠方撮影領域R4を駐車枠線認識に用いないので、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、路面標示等を駐車枠線として認識する不具合の発生を抑制できる。
【0032】
事例Dは、立体物ノイズについてのフラグのみが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1、外周俯瞰領域R2、近傍撮影領域R3、遠方撮影領域R4および外周撮影領域R5の何れかを選択画像領域として選択してノイズフラグ算出を行うことを示している。この場合、自車両の近傍を撮影した画像を使用した場合であっても、自車両の遠方を撮影した画像であっても立体物が原因となって駐車枠が誤認識される可能性は低いと考えられる。このため、ノイズフラグ設定部304がいずれの部分画像領域を用いたとしても、駐車枠の誤認識の発生を低減できる。
【0033】
事例Eは、水滴ノイズについてのフラグのみが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1、外周俯瞰領域R2、近傍撮影領域R3および外周撮影領域R5の何れかを選択画像領域として選択してノイズフラグ算出を行うことを示している。水滴ノイズは、撮影画像の上部領域の画像情報に基づいて、水滴が付着している場合に検出される。すなわち、撮影画像の上部領域の画像情報の信頼性が低いことを示している。水滴ノイズが検出されている場合、遠方撮影領域R4は水滴の付着により駐車枠線についての正確な情報が取得しにくいと考えられる。本実施の形態では、ノイズフラグ設定部304は、遠方撮影領域R4を駐車枠認識のために選択しないので、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、駐車枠認識の精度を高めることができる。
【0034】
事例Fは、立体物ノイズおよび水滴ノイズについてのフラグが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1および近傍撮影領域R3の何れかを選択画像領域として選択してノイズフラグ算出を行うことを示している。この場合、水滴の付着に伴って情報の精度が低下している遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しないので、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、駐車枠の認識精度の低下を防止できる。
【0035】
事例Gは、汚れノイズについてのフラグのみが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1、外周俯瞰領域R2および近傍撮影領域R3の何れかを選択画像領域として選択してノイズフラグ算出を行うことを示している。付着した汚れによる影響は、自車両の近傍を撮影した部分画像領域よりも自車両の遠方を撮影した部分画像領域の方が大きい。本実施の形態では、遠方撮影領域R4や外周撮影領域R5のように自車両から遠方の路面に対応する部分画像領域を選択画像領域として選択しないので、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、付着した汚れに伴う駐車枠の誤認識の発生を抑制できる。
【0036】
事例Hは、水滴ノイズおよび汚れノイズについてのフラグが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、何れの部分画像領域も選択しないことを示している。換言すると、ノイズフラグ設定部304は、選択画像領域の選択を禁止する。撮影装置1a〜1dに水滴と汚れとが付着している場合、撮影画像に含まれる情報の精度は低くなる。このような場合には、ノイズフラグ設定部304は、選択画像領域の選択を行わないので、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、情報精度の低い画像に基づいて駐車枠が誤って認識されることを防止できる。
【0037】
事例Iは、駐車枠ノイズおよび水滴ノイズについてのフラグが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1および近傍撮影領域R3の何れかを選択画像領域として選択してノイズフラグ算出を行うことを示している。この場合、水滴の付着に伴って情報の精度が低下している遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しないので、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、駐車枠線の認識精度の低下を防止できる。
【0038】
事例Jは、白線ノイズおよび汚れノイズについてのフラグが「1」に設定された場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1および外周俯瞰領域R2の何れかを選択画像領域として選択してノイズフラグ算出を行うことを示している。付着した汚れの影響を受けやすく、かつ路面上に描かれた道路標示等を駐車枠として誤認識しやすい自車両から遠方を撮影した遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しないので、適切にノイズフラグを出力することが可能であり、駐車枠が誤って認識されることを防止できる。
【0039】
図10のフローチャートを用いて、車載画像処理装置100の動作を説明する。
図10のフローチャートに示す各処理は、演算処理部3によりプログラムを実行して行われる。このプログラムは、メモリ(不図示)に格納されており、演算処理部3により起動され、実行される。
【0040】
ステップS101では、画像合成部2により合成された俯瞰画像を入力してステップS102へ進む。ステップS102では、入力された俯瞰画像を横方向に検索したときの輝度変化や色差変化に基づいて、車両の走行面に描かれた線に対応する線画像を抽出してステップS103へ進む。ステップS103では、ステップS102にて抽出された線画像に対してノイズの有無を検出し、ステップS104へ進む。ステップS104では、ステップS103の結果に応じて部分画像領域を選択画像領域として選択してステップS107へ進む。ステップS107では、選択画像領域に対してノイズ検出を実行し、検出したノイズの状態に応じたノイズフラグを設定してステップS105へ進む。
【0041】
ステップS105では、ステップS107で設定されたノイズフラグに応じて、ステップS102で抽出された線画像が駐車枠を構成する駐車枠線であるか否かを判断し、駐車枠線であると判断するとステップS106にて認識結果を出力部4へ出力して処理を終了する。
【0042】
上述した実施の形態による車載画像処理装置100によれば、次の作用効果が得られる。
(1)車載画像処理装置100は、車両の周囲の路面を撮影して撮影画像を取得するカメラ1a〜1dと、カメラ1a〜1dにより取得された撮影画像に基づいて、車両の周囲を俯瞰した様子を示す俯瞰画像を生成する画像合成部2と、演算処理部3とを備える。演算処理部3は、画像合成部2によって生成された俯瞰画像を用いて、車両の周囲の路面上の車線に対応する線画像を抽出する線抽出部301と、抽出された線画像におけるノイズを検出するノイズ検出部302と、ノイズ検出部302により検出されたノイズに応じて、撮影画像の内部の部分画像領域と俯瞰画像の内部の部分俯瞰領域との何れかに基づいて、ノイズフラグを設定するノイズフラグ設定部304と、ノイズフラグ設定部304により設定されたノイズフラグと線抽出部301により抽出された線画像から駐車枠を認識する駐車枠認識部303とを含む。具体的には、ノイズフラグ設定部304は、検出されたノイズに応じて、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択し、選択画像領域を用いてノイズフラグを設定する。設定されたノイズフラグに基づいて、駐車枠認識部303は抽出された線画像が駐車枠であるか否かを認識する。したがって、検出されたノイズに応じて、適した部分画像領域を選択することができるので、駐車枠の誤認識の発生を抑制して駐車支援の精度を向上させることができる。
【0043】
(2)ノイズ検出302が線画像の輝度差に応じて駐車枠ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、撮影画像のうち車両の近傍の路面に対応する部分画像領域である近傍撮影領域R3と、俯瞰画像のうち車両の近傍の路面に対応する部分画像領域である近傍俯瞰領域R1との中から選択画像領域を選択する。車両近傍の部分画像領域を用いることにより、2本の線画像の輝度差の拡大に伴う同一の駐車枠を構成する駐車枠線であるか否かの判別が困難になる不具合の発生を抑制して、駐車枠の認識精度を向上させることができる。
【0044】
(3)ノイズ検出部302が車線以外の路面標示に基づいて白線ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、撮影画像の遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しないようにした。文字等の複雑なペイントが路上に描かれた駐車場において、自車両から遠方の撮影画像を用いた場合、ペイントを駐車枠を構成する駐車枠線と誤認識する可能性が考えられる。本実施の形態では、遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しないので、路面標示等を駐車枠線として認識する不具合の発生を抑制して、駐車支援の精度を向上できる。
【0045】
(4)ノイズ検出部302が車両周辺の立体物に基づいて立体物ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域との中から選択画像領域を選択するようにした。自車両の近傍を撮影した画像を使用した場合であっても、自車両の遠方を撮影した画像であっても、立体物が原因となって駐車枠が誤認識される可能性は低い。したがって、駐車枠認識部303がいずれの部分画像領域を用いたとしても、駐車枠線の誤認識の発生を低減できる。
【0046】
(5)ノイズ検出部302が撮影装置1a〜1dに付着した水滴に基づいて水滴ノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、遠方撮影領域R4の選択を禁止するようにした。この場合、撮影画像において、水滴ノイズが検出された部分画像領域に対応する画像情報を用いることなく駐車枠の認識を行うので、精度よく駐車支援を実行できる。
【0047】
(6)ノイズ検出部302が撮影装置1a〜1dに付着した汚れに基づいて汚れノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍撮影領域R3と近傍俯瞰領域R1および外周俯瞰領域R2との中から選択画像領域を選択するようにした。したがって、付着した汚れによる影響が大きい自車両の遠方を撮影した部分画像領域を選択画像領域として選択しないので、付着した汚れに伴う駐車枠の誤認識の発生を抑制できる。
【0048】
(7)ノイズ検出部302が車両周辺の立体物と撮影装置1a〜1dに付着した水滴とに基づいて立体物ノイズと水滴ノイズとを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍撮影領域R3と近傍俯瞰領域R1との中から選択画像領域を選択するようにした。したがって、水滴の付着に伴って情報の精度が低下している遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しないので、駐車枠の認識精度の低下を防止できる。
【0049】
(8)ノイズ検出部302が撮影装置1a〜1dに付着した水滴と汚れとに基づいて水滴ノイズと汚れノイズを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、撮影画像の内部の複数の部分撮影領域と俯瞰画像の内部の複数の部分俯瞰領域とから選択画像領域を選択しないようにした。撮影装置1a〜1dに水滴と汚れとが付着している場合、撮影画像に含まれる情報の精度は低くなる。このような場合には、いずれの部分画像領域をも選択画像領域として選択しないので、情報の精度が低い画像に基づいて、駐車枠が誤って認識されることを防止できる。
【0050】
(9)ノイズ検出部302が線画像の輝度差と撮影装置1a〜1dに付着した水滴とに基づいて駐車枠ノイズと水滴ノイズとを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍撮影領域R3と、近傍俯瞰領域R1との中から選択画像領域を選択するようにした。この場合、上記の(2)および(5)の場合と同様に、駐車枠の認識精度が低い遠方撮影領域R4は選択画像領域として選択されないので、駐車枠が誤って認識されることを防止できる。
【0051】
(10)ノイズ検出部302が車線以外の路面標示と撮影装置1a〜1dに付着した汚れとに基づいて白線ノイズと汚れノイズとを検出した場合には、ノイズフラグ設定部304は、近傍俯瞰領域R1と外周俯瞰領域R2と中から選択画像領域を選択するようにした。したがって、付着した汚れの影響を受けやすく、かつ路面上に描かれた道路標示等を駐車枠線として誤認識しやすい自車両から遠方を撮影した遠方撮影領域R4を選択画像領域として選択しないので、駐車枠が誤って認識されることを防止できる。
【0052】
以上で説明した実施の形態による車載画像処理装置を、以下のように変形できる。
(変形例1)
ノイズフラグ設定部304が部分画像領域の選択を行わないものについても、本発明の一態様に含まれる。この場合、駐車枠認識部303は、近傍俯瞰領域R1、外周俯瞰領域R2、近傍撮影領域R3、遠方撮影領域R4および外周撮影領域R5のそれぞれを用いて駐車枠の認識を行い、ノイズ検出部302の検出結果に応じて認識結果を選択するようにしてもよい。たとえば
図9に示す事例Bの場合には、近傍俯瞰領域R1を用いた認識結果、近傍撮影領域R3を用いた認識結果および外周撮影領域R5を用いた認識結果のいずれかを選択して、出力部4へ出力すればよい。
【0053】
(変形例2)
実施の形態における車載画像処理装置100においては、
図10のフローチャートに示すように、ステップS103でのノイズ検出と、ステップS107でのノイズフラグ設定とを順次実行することによって、1フレーム中で部分画像領域を選択し、その領域に対してノイズフラグを算出していた。西日や照明光による影響が強い状況や、雨・汚れ等の付着物の存在は、毎フレームごとに完全に異なるわけではなく、一定期間の間、実質的に同一であることが多い。この特徴を利用して、ノイズ検出およびノイズフラグ設定の実行結果をメモリ5に記憶し、次フレームにおける処理の際には、記憶されているノイズ検出およびノイズフラグ設定の結果を読み出して、駐車枠認識部303へ出力してもよい。すなわち、
図11のフローチャートに示すように、ステップS104にて部分画像領域が選択された後、ステップS108にてメモリ5からノイズ検出結果およびノイズフラグ設定結果を読み出して、ステップS105へ進めばよい。この結果、処理負荷の軽減を図ることができる。
【0054】
(変形例3)
さらに、上記の変形例2の場合において、一定時間が経過するごとに、メモリ5に記憶されているノイズ検出およびノイズフラグ設定結果をクリア(削除)して、再度ノイズ検出およびノイズフラグ設定を実行してもよい。この結果、たとえば事例Hに示すように、全ての部分画像領域をノイズフラグ設定のために使用しないようにした場合であっても、一定時間が経過すると復帰させることができる。
【0055】
(変形例4)
上述した実施の形態および変形例1〜3においては、あるノイズが検出された場合に、処理領域を変更することによってノイズの出力を抑制する態様を説明した。領域を使用しないことによってノイズの出力を抑制するものに代えて、ノイズフラグ設定部304が対応する選択画像領域でノイズフラグを有効にするための閾値(基準値)を緩和し、ノイズが検出されている場合にはノイズフラグが容易に有効になるようにするものについても本発明の一態様に含まれる。この結果、ノイズ検出の結果によって選択画像領域のノイズフラグが有効になりやすくなるため、駐車枠認識がされにくくなり、駐車枠が誤って認識されることを防止できる。
【0056】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0057】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2012年第259067号(2012年11月27日出願)