(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記のように触媒ユニットをエンジン本体に近づけると、エンジン本体からの排気が触媒ユニットに流入する際に、排気の流れる方向と直交する方向について排気が偏って流入するおそれが高くなることに気付いた。排気が触媒ユニットに偏って流入すると、偏らずに流入する場合と比べて、触媒ユニットによる浄化性能が低下する。
【0005】
排気の偏りをなくすために、触媒ユニットとエンジン本体の間の排気管に設ける湾曲部の形状を工夫することも考えられる。しかし、この場合、排気の流入の偏りをなくす目的のために湾曲部の形状の自由度が制限されることになる。湾曲部の形状の自由度が制限されると、これによって触媒ユニットの配置や排気管の配管も制限を受ける。この場合、エンジンユニットが設けられた車両等の大型化を招くおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、触媒ユニットに排気が偏って流入することによる浄化性能の低下を抑制しつつ、触媒ユニットの配置の自由度を向上できるエンジンユニット及び鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンジンユニットは、内部に燃焼室が形成されたエンジン本体と、金属製の平たい箔及び波型の箔を含み、前記平たい箔と前記波型の箔が互いに重ね合わされつつ巻き取られた担体と、前記担体に担持された触媒とを有し、前記担体における巻き取りの中心軸に沿った排気浄化用の複数本の浄化流路が前記平たい箔と前記波型の箔の間に形成された触媒ユニットと、前記エンジン本体の前記燃焼室からの排気を前記触媒ユニットを経て大気への排出口まで導く流路が形成された排気通路であって、前記エンジン本体から前記触媒ユニットまでの流路長が前記触媒ユニットから前記排出口までの流路長より小さくなるように前記触媒ユニットが内部に配置された排気通路と、を備え、前記複数本の浄化流路のうち、前記中心軸を中心とした巻き取りの中心部に形成された中央流路における、前記中心軸に沿った軸方向について前記エンジン本体側の一端から中央までの部分である上流部分の流路断面積と比べて、前記複数本の浄化流路のうち、前記中心部より外側に形成された外側流路における前記上流部分の流路断面積が小さく、
前記平たい箔の端部が前記中央流路に配置されており、前記中央流路において、前記軸方向について前記中央から他端までの部分である下流部分の少なくともいずれか一部の流路断面積が、前記上流部分の流路断面積よりも小さくなり、且つ、排気が流通可能であるように、前記中央流路の前記下流部分を絞る絞り部が形成されて
おり、前記絞り部は、互いの間に間隙が形成された2つの突起部を有し、前記平たい箔の端部が前記間隙に配置されるように、前記他端側から前記中心部に前記2つの突起部が挿入されている。
【0008】
本発明者は、エンジン本体からの排気が偏って触媒ユニットに流入する理由について鋭意研究したところ、以下の知見に到達した。仮に、エンジン本体からの排気が、その流れる方向と直交する方向について十分に広がるとすると、排気が偏らずに触媒ユニットに流入しやすい。また、エンジン本体からの排気が複数の配管から1本の配管に合流して触媒ユニットへと流入する場合、各配管からの排気が十分混合された後で触媒ユニットへと流入するのであれば、排気が偏らずに触媒ユニットに流入しやすい。
【0009】
しかしながら、エンジン本体から触媒ユニットまでの流路長が触媒ユニットから大気への排出口までの流路長より小さい本発明の排気管のように、エンジン本体から触媒ユニットまでの距離が比較的小さいと、触媒ユニットに流入するまでに排気が十分に広がらなかったり、各配管からの排気が十分混合されなかったりする。これにより、排気の流れる方向と直交する方向について排気が十分に広がらず、中央に偏って触媒ユニットに流入したり、複数の配管からの排気が各配管の延長線に沿ったまま、それぞれ偏って触媒ユニットに流入したりする。
【0010】
これに対して、本発明に係る担体は、巻き取りの中心部よりも外側にある外側流路の流路断面が巻き取りの中心部にある中央流路の流路断面より小さい。このように、触媒ユニットに形成された浄化流路の流路断面を小さくすることで、流路抵抗を大きくする。これによって触媒ユニットに流入する排気の流速が低下する。排気の流速が低下することにより、触媒ユニットに流入するまでに排気が広がりやすくなったり、各配管からの排気が混合しやすくなったりするため、触媒ユニットに排気が偏って流入することを抑制できる。
【0011】
しかし、本発明の担体は、金属製の平たい箔と波型の箔が互いに重ね合わされつつ巻き取られることにより、巻き取りの中心軸に沿った排気浄化用の複数本の浄化流路が形成されている。このような構造によると、製造上、外側流路の流路断面を小さくした際、中央流路においては流路断面積が相対的に大きくなりやすい。この場合、中央流路においては、外側流路と比べて流路抵抗が小さくなるので、排気の流速を低下できず、排気の偏りの原因となるおそれがある。
【0012】
これに対し、本発明は、排気が流通可能であるように中央流路の下流部分を絞る絞り部を形成した。そして、この絞り部により、中央流路の下流部分の少なくともいずれか一部の流路断面積を上流部分の流路断面積よりも小さくした。これにより、中央流路においても流路抵抗を大きくすることができるため、中央流路が排気の偏りの原因となりにくい。
【0013】
さらに、中央流路の下流部分を絞ることとしたため、下記の理由により、排気の偏りのおそれがさらに抑制される。仮に、中央流路の上流部分を絞ったとすると、排気がそもそも上流部分にすら流入しにくくなる。この場合、中央流路に流入しようとした排気の流れは、中央流路の一端付近に到達すると、中央流路から離れる方向に流れの方向を変えるおそれがある。そうすると、排気は中央流路に流入しなくなるのみならず、中央流路に近い浄化流路にも流入しにくくなる。よって、排気の流入が一部の浄化流路に偏るおそれが生じる。これについて、本発明では、中央流路の下流部分を絞ることとした。このため、上流部分を絞る場合と比べて排気が中央流路の上流部分に流入しやすい。したがって、排気の流入が一部の浄化流路に偏りにくい。
【0014】
以上の通り、本発明は、触媒ユニット自体の構成によって排気の流入を偏りにくくしたので、排気管に設ける湾曲部の形状の自由度を損なうことなく排気の流入の偏りを抑制できる。よって、排気の流入の偏りによる浄化性能の低下を抑制しつつ、触媒ユニットの配置の自由度を向上することができる。
【0015】
また、本発明においては、
前記絞り部は、前記排気通路の下流側から見て、前記絞り部の上流側における前記中央流路の径より大きい部分を前記担体の外部に有し、前記大きい部分から前記2つの突起部が突出していることが好ましい。また、本発明においては、前記大きい部分を貫通すると共に前記間隙と連通した貫通孔が前記絞り部に形成されていることが好ましい。また、本発明においては、前記絞り部に、前記絞り部より上流の流路と前記絞り部より下流の流路とを連通させる複数本の連通路が形成されていることが好ましい。これによると、複数本の連通路により、流路の絞りの度合いを調整できる。
【0016】
また、本発明においては、前記絞り部が、前記絞り部より上流の流路と前記絞り部より下流の流路とを連通させる貫通孔が形成された金属製の筒部材を有しており、前記筒部材が、前記平たい箔及び前記波型の箔の少なくともいずれかの表面にろう付けによって接合されていることが好ましい。これによると、筒部材を中央流路の壁面にろう付けすることで絞り部を形成するので、簡易に絞り部を設けることができる。
【0017】
本発明の鞍乗型車両は、前記エンジンユニットと、前記エンジンユニットを支持する車体フレームと、ライダーシートと、前記ライダーシートより前方に配置されたハンドルと、を備えている。
【0018】
鞍乗型車両は装置や部品を設けるスペースに限りがある。したがって、触媒ユニットの配置の自由度が確保できないと、触媒ユニット自体やその他の構成の設置場所を確保するために車両が大型化するおそれがある。かかる鞍乗型車両に本発明を適用することで、触媒ユニットの浄化性能を確保しつつその配置の自由度を確保できるため、車両の大型化を有効に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、自動二輪車1を例に挙げて説明する。自動二輪車1には、本発明に係るエンジンユニット100が設けられている。また、自動二輪車1は、本発明に係る鞍乗型車両の一例である。
【0021】
なお、以下の説明において、前後方向とは、自動二輪車1の後述するライダーシート11に着座したライダーRから視たときの車両前後方向のことである。左右方向とは、ライダーシート11に着座したライダーRから視たときの車両左右方向(車幅方向)のことである。図中の矢印F方向と矢印B方向は、前方と後方を表している。図中の矢印U方向と矢印D方向は、上方と下方を表している。図中の矢印L方向と矢印R方向は、右方と左方を表している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、スクータ型の自動二輪車である。自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4とを備えている。車体フレーム4は、全体として前後方向に延びた形態である。
【0023】
車体フレーム4は、その前部にヘッドパイプ4aを有する。ヘッドパイプ4aには、ステアリングシャフト5が回転可能に挿入されている。ステアリングシャフト5の上端部は、ハンドルユニット6に連結されている。また、ステアリングシャフト5の下端部は、一対のフロントフォーク7に連結されている。フロントフォーク7の下端部は、前輪2を支持している。
【0024】
車体フレーム4の上部には、シート8が支持されている。車体フレーム4のうちシート8よりも前方には、足載せ板9が支持されている。車体フレーム4には、車体フレーム4などを覆う車体カバー10が支持されている。車体カバー10は、足載せ板9の前端と後端から上方に延びる形態を有する。
【0025】
車体フレーム4には、スイング式のエンジンユニット100と燃料タンク(図示せず)が搭載されている。燃料タンクは、シート8の下方に配置されており、シート8と車体カバー10によって覆われている。
【0026】
エンジンユニット100は、エンジン12(エンジン本体)と、エンジン12からの排気を大気へと排出する排気装置101とを有している。排気装置101は、エンジン12の排気口に接続された上流排気管16と、エンジン12からの排気を浄化する触媒が設置された触媒設置部110と、触媒設置部110を通じて上流排気管16と連通した下流排気管17と、マフラー18とを有している。
【0027】
エンジン12は、
図2に示すように、燃焼室21と、燃焼室21と接続された吸気通路22及び排気通路23とを有している。燃焼室21内には燃料を混合させる中空の空間が形成されている。燃焼室21は吸気通路22及び排気通路23と接続されている。吸気通路22には、図示しない領域に配置されたエアクリーナを通じて外気が導入される。また、吸気通路22内には燃料タンクからの燃料が噴射される。燃焼室21内には、吸気バルブ25の開閉に伴って、吸気通路22から燃料と空気の混合気が流入する。燃焼室21内の混合気は、ピストン28によって圧縮されると共に、点火プラグ27によって点火される。これにより、燃焼室21内で燃料が燃焼する。燃料が燃焼すると、燃焼室21内の燃焼ガスが膨張し、これによってピストン28が下降する。ピストン28が下降すると、コンロッド29を通じてピストン28と接続されたクランク30が回転する。クランク30の回転による駆動力は、図示しないバルブ駆動機構によって吸気バルブ25及び排気バルブ26に伝達される。燃焼室21内の燃焼ガスは排気バルブ26の開閉に伴って排気通路23へと排気される。
【0028】
上流排気管16、下流排気管17及びマフラー18内には、排気流路16a、17a及び18aが形成されている。排気流路16aは、排気通路23を通じて燃焼室21内の空間と連通している。排気流路16aは、排気通路23と接続した部分から上流排気管16に沿って湾曲しつつ、触媒設置部110へと延びている。排気流路17aは、触媒設置部110を通じて排気流路16aと連通している。排気流路17aは前後方向に延びており、その後端は排気流路18aと接続している。排気流路18aは、マフラー18内で、前方に向かったり後方に向かったりして折れ曲がりつつ、マフラー18の後端に形成された排出口18bと接続されている。なお、
図2においては、排気流路18aの前後方向についての折れ曲がりを、マフラー18の幅方向についての折れ曲がりとして模式的に示している。エンジン12における排気通路23の出口から触媒設置部110内に設けられた後述の触媒本体111(触媒ユニット)までの排気流路の流路長L1は、触媒本体111からマフラー18の後端における排出口18bまでの排気流路の流路長L2より小さい。「流路長」とは、流路に沿った長さを意味する。流路長L1は、排気流路16aの流路長と、触媒設置部110の排気の入り口から触媒本体111の排気の入り口までの流路長との合計の大きさに相当する。また、流路長L2は、触媒本体111の排気の出口から触媒設置部110の排気の出口までの流路長と、排気流路17a及び18aの流路長との合計の大きさに相当する。エンジン12からの排気は、排気流路16aを通じて触媒設置部110に流入する。この排気は、触媒設置部110を通過する際に浄化される。触媒設置部110において浄化された排気は、さらに排気流路17a及び18aを通り、排出口18bから大気へと排出される。このように、排気装置101は、エンジン12から大気へと排気を導く流路が形成された本発明における排気通路を有している。本実施形態における排気通路は、排気装置101において、排気流路16a、触媒設置部110内の流路、並びに、排気流路17a及び18aを画定する流路壁からなる通路全体に対応する。本実施形態において「上流」及び「下流」は、エンジン12から排気流路16a、触媒設置部110内の流路、排気流路17a及び18aを経て排出口18bに向かう排気の流れにおける「上流」及び「下流」を示すものとする。
【0029】
エンジン12の後部には、
図1に示すように、変速機13が連結している。変速機13は、Vベルト式無段変速機である。変速機13は、エンジン12および後輪3の左方に配置されている。エンジン12の前部は、前方と左右両側方から車体カバー10によって覆われている。エンジン12の前端部は、ピボット軸4bを介して車体フレーム4に揺動可能に支持されている。変速機13の後端部は、後輪3を支持している。また、変速機13と車体フレーム4との間にはリヤサスペンション14が取り付けられている。
【0030】
以下、触媒設置部110について、
図3〜
図5を参照しつつより詳細に説明する。触媒設置部110に設置されている触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)の3物質を酸化または還元することで除去する、いわゆる三元触媒である。触媒設置部110は、
図3に示すように、その前端において前方の上流排気管16と接続されている。また、触媒設置部110は、その後端において後方の下流排気管17と接続されている。したがって、触媒設置部110の前部は上流側に配置され、触媒設置部110の後部は下流側に配置されていることになる。つまり、上流排気管16からの排気は前方から触媒設置部110に流入し、後方に向かって触媒設置部110を通過すると共に、下流排気管17へと後方に向かって流出する。
【0031】
触媒設置部110は、触媒本体111と、触媒本体111を収容した外筒部112と、外筒部112を収容した前半収容部113及び後半収容部114とを有している。これらの部材は、ろう付けや拡散接合によって互いに接合されている。前半収容部113は、前方に向かって窄まった筒形状を有している。前半収容部113は、前方及び後方のそれぞれに向かって開口している。前半収容部113の前端が上流排気管16と接続されている。後半収容部114は、後方に向かって窄まった筒形状を有している。後半収容部114は、前方及び後方のそれぞれに向かって開口している。後半収容部114の後端が下流排気管17と接続されている。前半収容部113と後半収容部114は、広い方の開口において互いに接続されている。前半収容部113と後半収容部114の全体で、触媒本体111及び外筒部112を収容する1個の容器を構成している。
【0032】
外筒部112は、触媒本体111を収容する円筒状の部材である。外筒部112の内径は円柱形の触媒本体111がちょうど納まる大きさである。外筒部112の前後方向の長さは触媒本体111の長さより若干大きい。上流排気管16からの排気は、
図3に示すように、前半収容部113内に流入すると共に外筒部112内へと流入し、さらに触媒本体111へと向かう。なお、
図3に示す構成を有する触媒設置部110の代わりに、別の構成を有する触媒設置部が設けられていてもよい。例えば、外筒部112の代わりに、触媒本体111と前後方向にほぼ同じ長さの外筒部が用いられてもよい。この場合、上流排気管16からの排気は、前半収容部113内に流入した後、触媒本体111内に直接流入する。また、外筒部が複数層に形成されていてもよい。例えば、外筒部112と前半収容部113及び114との間に、1層以上の別の外筒部が設けられていると共に、この別の外筒部に外筒部112が挿入されていてもよい。また、前半収容部113と後半収容部114とが接続されておらず、外筒部112が外部に露出していてもよい。この場合、例えば、外筒部112の前端部と前半収容部113の後端部とが接続されていると共に、外筒部112の後端部と後半収容部114の前端部とが接続されていればよい。これに加えて、外筒部が複数層に形成されていてもよい。
【0033】
触媒本体111は円柱形の概略形状を有している。触媒本体111は、
図4(a)に示すように、複数層に形成された環状部121と、環状部121の層同士の間で波状に形成された波状部122とを含んでいる。環状部121及び波状部122は、渦巻き状に配置されている。具体的には、環状部121及び波状部122は、渦巻きの中心軸X(
図4(a)(b)及び
図5(a)参照)から、中心軸Xと直交する径方向ρについて外側に向かって交互に配置されている。
図4(b)に示すように、環状部121における中心軸X付近の部分である端部121aは平板状に形成されている。環状部121は、端部121aにおける
図4(b)中の右端から
図4(b)中の上方に向かって折れ曲がり、そこから端部121aを中心に環状に延びている。波状部122は、環状部121における端部121aの右端の折れ曲がりが形成された位置付近を始端点として、環状部121の層同士の間で渦巻き状に配置されている。
【0034】
環状部121及び波状部122は、平箔121xと波箔122xを有する担体120と、担体120の表面を被覆するコーティング層121y及び122yとから形成されている。
図4(c)及び
図5(b)に示すように、環状部121は、金属製の平たい箔である平箔121xと、平箔121xの両面に被覆されたコーティング層121yとを含んでいる。波状部122は、金属製の波型の箔である波箔122xと、波箔122xの両面に被覆されたコーティング層122yとを含んでいる。コーティング層121y及び122yは、それぞれ、貴金属とコーティング剤とを混合した混合材料からなる。貴金属は、排気中に含まれる炭化水素等における酸化反応又は還元反応を促進する触媒として機能する。つまり、コーティング層121y及び122yは、それぞれ、本発明における「担体に担持された触媒」を有している。
【0035】
環状部121と波状部122の間には、排気を浄化する流路である浄化流路111a〜111cが形成されている。触媒本体111は、本発明における触媒ユニットに対応する。浄化流路111a〜111cへと上流側から流入した排気は、浄化流路111a〜111cを通り、これらの流路の下流側へと流出する。
【0036】
環状部121及び波状部122は、以下のように作製されている。まず、平箔121xと波箔122xが互いに重ね合わされた後、平箔121xの端部121xa(
図6(c)参照)が支持されつつ回転させられることにより、端部121aに沿った中心軸Xを中心に平箔121xと波箔122xが一体に巻き取られる。これによって担体120が形成される。つまり、中心軸Xは、渦巻きの中心軸であるのみならず、平箔121x及び波箔122xを巻き取る際の巻き取りの中心軸でもある。なお、端部121xaは、平箔121xにおける、
図4(b)に示す端部121aに対応する部分である。次に、担体120において、平箔121xと波箔122xの間に形成される空間内に、貴金属を含有するコーティング液が流し込まれることで、平箔121x及び波箔122xの表面にコーティング液が塗布される。そして、熱処理によって平箔121x及び波箔122xの表面にコーティング液が焼き付けられることで、コーティング層121y及び122yが形成される。
【0037】
触媒本体111における渦巻きの中心部123は、平箔121x及び波箔122xの1周目の巻き取りによって形成された部分に対応する。この中心部123には浄化流路111a及び111bが形成されている。浄化流路111a及び111bは、中心部123において、触媒本体111より上流の流路と触媒本体111より下流の流路とを接続する流路である。浄化流路111a及び111bの後端(下流端)には後述の絞り部130が形成されている。浄化流路111a及び111bにおいて、絞り部130より上流の部分は、中心部123によって画定されている。浄化流路111a及び111bにおいて、絞り部130が形成されている領域は、後述の通り、中心部123と、絞り部130に形成された溝132c及び貫通孔131aとによって画定されている。浄化流路111a及び111bは、端部121aによって互いに仕切られている。
【0038】
径方向ρについて中心部123の外側には、複数本の浄化流路111cが形成されている。浄化流路111cは、径方向ρについて、中央流路に対応する浄化流路111a及び111bの外側に位置しており、本発明における外側流路に対応している。複数本の浄化流路111cは、径方向ρについて中心部123より外側であって担体120の外表面より内側の領域において、
図4(a)に示すように、メッシュ状に密に配置されている。各浄化流路111cは、
図4(a)及び
図4(b)に示すように流路断面が三角形の形状を有しており、
図5(a)に示すように中心軸Xに沿っている。浄化流路111cは、流路断面が小さく形成されている。例えば、流路断面の三角形の一辺は1〜2mm程度である。一方、浄化流路111a及び111bにおける、後述の絞り部130より上流の部分の径(中心部123の内径)は4〜5mm程度である。このように、浄化流路111cは、浄化流路111a及び111bと比べて流路断面積が小さい。
【0039】
浄化流路111a及び111bにおける、後述の絞り部130より上流の部分を画定する壁面と、浄化流路111cを画定する壁面とは、環状部121のコーティング層121y及び波状部122のコーティング層122yの各表面からなる。浄化流路111a〜111cを通過する排気は、コーティング層121y及び122yに含まれる貴金属によって酸化反応又は還元反応が促進される。これにより、排気の浄化が促進される。
【0040】
浄化流路111a及び111bには、
図5(a)に示すように、各流路を絞る絞り部130が形成されている。絞り部130は、浄化流路111a及び111bにおける、中心軸Xに沿った方向(以下、X方向とする)についてエンジン12から遠い方の端部(後端部)に形成されている。したがって、絞り部130は、浄化流路111a及び111bにおける下流部分、つまり、X方向について中央から下流端(後端)までの部分を絞っている。これに対し、浄化流路111a及び111bにおいて、上流部分、つまり、X方向についてエンジン12側の端部(前端部)から中央までの部分には流路を絞る部材が設けられていない。
【0041】
絞り部130は、
図6(a)及び
図6(b)並びに
図7に示すように、円盤状の円盤部131と、円筒の概略形状を有する円筒部132とを有している。円盤部131の径は円筒部132の径より一回り大きい。円筒部132は、溝132cが形成されることによって2つの突起部133及び134に分割されている。突起部133と突起部134の間には環状部121の端部121aが配置されている。円筒部132の前部132aは、前方に向かうほど先が細くなっている。円筒部132の後部132bの径は、浄化流路111a及び111bにおける絞り部130より上流の部分の径(中心部123の径)よりわずかに小さい。
【0042】
絞り部130には環状の貫通孔131aが形成されている。貫通孔131aは、円盤部131と円筒部132の根元部を前後方向について貫通している。貫通孔131aは正面視において、環状の円盤部131の中心に配置されている。貫通孔131aは、溝132cを通じて浄化流路111a及び111bのそれぞれにおける絞り部130より上流の部分と連通している。したがって、この上流の部分から流れてきた排気は、
図7に示すように、溝132c及び貫通孔131aを通じ、下流の排気流路17aへと流通する。つまり、浄化流路111a及び111bは、絞り部130が形成された領域においては、溝132c及び貫通孔131aと、中心部123における環状部121(端部121aを含む)とによって画定されている。溝132c及び貫通孔131aと環状部121とによって画定された流路は、浄化流路111a及び111bにおける絞り部130より上流の部分よりも流路断面積が小さい。すなわち、浄化流路111a及び111bは、絞り部130によって絞られている。なお、溝132c及び貫通孔131aは、本発明における連通路に対応する。
【0043】
絞り部130は、
図6(c)に示すように、金属製の基材130x(筒部材)と基材130xの表面に被覆されたコーティング層130yとを含んでいる。基材130xは、絞り部130を一回り小さくした形状の筒状の部材である。基材130xには、基材130xを前後方向に貫通する貫通孔130xaが形成されている。貫通孔130xaの内表面にはコーティング層130yが形成される。そして、このコーティング層130yによって溝132c及び貫通孔131aが画定されている。溝132c及び貫通孔131aは、上述の通り、絞り部130より上流の流路と絞り部130より下流の流路とを連通させる。このため、貫通孔130xaは、本発明における、筒部材に形成された貫通孔に対応する。基材130xにおいて、円筒部132の後部132bに対応する部分の外周面と平箔121xの表面とはろう付けによって互いに接合されている。
【0044】
絞り部130は以下のように作製されている。基材130xにおいて、円筒部132の後部132bに対応する部分の外周が、ろう箔材(不図示)によって覆われる。そして、平箔121xと波箔122xが上記のように巻き取られた後、コーティング液が塗布される前に、平箔121xの1周目の巻き取り部分(中心部123に対応する部分)に、基材130xのろう箔材で覆われた部分が差し込まれる。次に、基材130xが差し込まれた担体120に熱処理が施されることにより、基材130xと平箔121xがろう付けされる。このように基材130xと平箔121xがろう付けされた後、担体120の内部に貴金属を含むコーティング液が流し込まれると共に、熱処理が施される。これによって、平箔121x及び波箔122xの表面にコーティング層121y及び122yが形成されると共に、基材130xの表面にも貴金属を含むコーティング層130yが形成される。このため、絞り部130の内表面(溝132cの内表面及び貫通孔131aの内表面)は、コーティング層130yの表面からなる。
【0045】
以上説明した本実施形態においては、エンジン12の排気通路23の出口から触媒本体111までの流路長L1が、触媒本体111からマフラー18の後端の排出口18bまでの流路長L2より小さい。つまり、エンジン12から触媒本体111までの距離が比較的小さい。これにより、エンジン12から排出された排気を比較的高い温度で触媒本体111の金属触媒に接触させることができる。よって、触媒が早期に活性化する。
【0046】
しかしながら、本発明者は、上記の触媒本体111のような触媒ユニットをエンジン12に近づけると、エンジン12からの排気が触媒ユニットに流入する際に、排気の流れる方向と直交する方向について排気が偏って流入する場合があることに気付いた。排気が触媒ユニットに偏って流入すると、偏らずに流入する場合と比べて、触媒ユニットによる浄化性能が低下する。このような偏りをなくすために、触媒ユニットとエンジン12の間の排気管に設ける湾曲部の形状を工夫することも考えられる。しかし、湾曲部の形状を工夫することのみで偏りをなくすこととすると、湾曲部の形状の自由度が制限されることになる。湾曲部の形状の自由度が制限されると、これによって触媒ユニットの配置や排気管の配管も制限を受ける。この場合、自動二輪車全体の大型化を招くおそれもある。また、排気の偏りをなくすために湾曲部の形状を工夫すると、設計が困難になったり、形状が複雑になりすぎたりするおそれもある。湾曲部の形状を工夫するのみでは排気の偏りを抑制し切れない場合もある。
【0047】
本発明者は、エンジン12からの排気が偏って触媒ユニットに流入する理由について鋭意研究したところ、以下の知見に到達した。仮に、エンジン12からの排気が、その流れる方向と直交する方向について十分に広がるとすると、排気が偏らずに触媒ユニットに流入しやすい。また、エンジン12からの排気が複数の配管から1本の配管に合流して触媒ユニットへと流入する場合、各配管からの排気が十分混合された後で触媒ユニットへと流入するのであれば、排気が偏らずに触媒ユニットに流入しやすい。
【0048】
しかしながら、エンジン12から触媒本体111までの流路長L1が触媒本体111から大気への排出口18bまでの流路長L2より小さい本実施形態のように、エンジン12から触媒本体111までの距離が比較的小さいと、触媒ユニットに流入するまでに、排気の流れる方向と直交する方向について排気が十分に広がらず、中央に偏って触媒ユニットに流入する。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る触媒本体111は、上記のとおり、浄化流路111cにおける流路断面積が比較的小さく形成されている。例えば、浄化流路111cの上流部分における流路断面積は、浄化流路111a及び111bの上流部分における流路断面積と比べて小さい。このように浄化流路111cの流路断面が小さいことで、浄化流路111cの流路抵抗が大きくなっている。これにより、触媒本体111より上流の排気流路において、触媒設置部110に流入する排気の流速が低下する。排気の流速が低下することにより、触媒本体111より上流において、触媒本体111に流入するまでに排気が広がりやすい。したがって、触媒本体111に排気が偏って流入することが抑制される。
【0050】
しかし、本発明の担体120は、平箔121xと波箔122xが互いに重ね合わされて巻き取られることにより形成されている。具体的には、平箔121xの端部121xaが支持されつつ回転させられることにより、平箔121xと波箔122xが巻き取られている。このため、環状部121の端部121aは、巻き取り作業のための支持に必要な大きさとして、ある程度の大きさにならざるを得ない。そして、1周目の巻き取りによって形成されている中心部123の大きさは、端部121aより大きくなる。したがって、中心部123に形成される浄化流路111a及び111bも、ある程度の大きさになりやすい。よって、浄化流路111cの流路断面を小さくするほど、浄化流路111a及び111bは浄化流路111cに対して流路断面積が相対的に大きくなりやすい。この場合、浄化流路111a及び111bにおいては、浄化流路111cと比べて流路抵抗が小さくなるので、排気の流速を低下できず、排気の偏りの原因となるおそれがある。
【0051】
これに対し、本実施形態は、排気が流通可能であるように浄化流路111a及び111bの下流部分を絞る絞り部130を形成した。よって、絞り部130が設けられた箇所は、流路断面積が上流部分の流路断面積よりも小さくなる。これにより、浄化流路111a及び111bにおいても流路抵抗を大きくすることができるため、浄化流路111a及び111bが排気の偏りの原因となりにくい。
【0052】
さらに、浄化流路111a及び111bの下流部分を絞ることとしたため、下記の理由により、排気の偏りのおそれがさらに抑制される。仮に、浄化流路111a及び111bの上流部分を絞ったとすると、排気がそもそも上流部分にすら流入しにくくなる。例えば、浄化流路111a及び111bの前端に絞り部を設けたとすると、排気流路16aから浄化流路111a及び111bに流入しようとした排気は、浄化流路111a及び111bの前端に設けられた絞り部の壁に衝突し、流れる向きを変えてしまう。また、浄化流路111a及び111bの上流部分における内部のいずれかに絞り部が設けられている場合も、上流部分の流路抵抗が大きくなることから、上流部分に排気が流入しにくくなる。
【0053】
このように、浄化流路111a及び111bの上流部分に絞り部が設けられていると、浄化流路111a及び111bに流入しようとした排気の流れは、浄化流路111a及び111bから離れる方向に流れの方向を変えるおそれがある。そうすると、排気は浄化流路111a及び111bに流入しなくなるのみならず、浄化流路111a及び111bに近い浄化流路111cにも流入しにくくなる。よって、排気の流入が一部の浄化流路111cに偏るおそれが生じる。
【0054】
一方、本実施形態では、浄化流路111a及び111bの上流部分でなく、下流部分を絞ることとした。このため、上流部分を絞る場合と比べて排気が浄化流路111a及び111bの上流部分に流入しやすい。したがって、排気の流入が一部の浄化流路111cに偏りにくい。
【0055】
以上の通り、本発明は、触媒本体111自体の構成によって排気の流入を偏りにくくしたので、排気管に設ける湾曲部の形状の自由度を損なうことなく排気の流入の偏りを抑制できる。よって、排気の流入の偏りによる浄化性能の低下を抑制しつつ、触媒本体111の配置の自由度を向上することができる。例えば、本実施形態のように上流排気管16に湾曲を設ける場合にも、湾曲の形状や配置を決めるに当たって、排気の流入の偏りをなくす目的による制限が生じにくい。したがって、触媒本体111の配置にも制限が生じにくい。
【0056】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。また、上述の実施形態及び以下に説明する変形例は相互に組み合わせて実施することができる。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、平箔121x及び波箔122xが巻き取りの中心軸Xを中心に巻き取られている。しかし、平箔121x及び波箔122xが2本の中心軸を中心に巻き取られてもよい。
図8の担体220はその一例であり、中心軸X1及びX2のそれぞれを中心に、平箔121x及び波箔122xがS字状に巻き取られている。具体的には、複数枚の平箔121x及び複数枚の波箔122xが積層された後、これによって形成される積層体の最も外側に配置された2枚の平箔121xに中心軸X1及びX2が設定される。そして、設定された2つの中心軸X1及びX2のそれぞれを中心に巻き取られることで、担体220が形成される(特開昭62−273051号参照)。上述の実施形態と同様、担体220内にはさらに、金属触媒を含有するコーティング層が形成される。本変形例における浄化流路211a〜211cは、このコーティング層の表面によって画定される。中心軸X1及びX2のそれぞれにおいて、巻き取りの中心部に形成される浄化流路211a及び211bは、巻き取りの中心部の外側に形成される浄化流路211cと比べて上流部分の流路断面積が大きくなる場合がある。したがって、浄化流路211a及び211bは、その外側の浄化流路211cと比べ、流路抵抗が小さくなる。このため、担体220に流入する排気に偏りが生じるおそれがある。
【0058】
そこで、中心軸X1及びX2のそれぞれにおいて、浄化流路211a及び211bの下流部分のいずれかに絞り部130を設ける。これによって、浄化流路211a及び211bのいずれにおいても、排気の流入の偏りが生じにくくなる。このため、排気の流入の偏りによる浄化性能の低下を抑制しつつ、触媒ユニットの配置の自由度を向上することができる。なお、浄化流路211a及び211bの両方に絞り部130が設けられてもよいし、いずれか一方のみに設けられてもよい。
【0059】
また、上述の実施形態に係る絞り部130の代わりに、
図9に示す絞り部230が用いられてもよい。絞り部230は、円盤状の円盤部231と半球状の半球部232とを有している。半球部232は、円盤部231から前方へと突出している。絞り部230には、前方に向かって凹んだ凹部230aが形成されている。半球部232には、担体120に取り付けられた際に環状部121の端部121aが配置される溝232aが形成されている。また、半球部232の前部には、前後方向について半球部232を貫通する貫通孔232bが形成されている。凹部230aはこの貫通孔232bを通じて前方に向かって開口している。絞り部230の半球部232は中心部123に挿入されている。絞り部230の表面には、金属触媒を含有したコーティング層が形成されている。浄化流路111a及び111cにおいて、絞り部230より上流の部分から流れてきた排気は、貫通孔232b及び凹部230aを通じ、下流の排気流路16aへと流通する。浄化流路111a及び111bは、貫通孔232b及び凹部230aの部分において、これらより上流の部分よりも流路断面積が小さくなっている。すなわち、浄化流路111a及び111bは、絞り部230によって絞られる。
【0060】
また、上述の実施形態に係る絞り部130の代わりに、
図10に示す絞り部330が用いられてもよい。絞り部330は、絞り部130において、貫通孔131aの代わりに貫通孔331〜334が設けられたものである。貫通孔331及び334は、円盤部131並びに突起部133及び134に形成されており、絞り部330の上流の流路と下流の流路を連通させる。貫通孔332及び333は円盤部131及び円筒部132の根元に形成されており、溝132cを通じて絞り部330の上流の流路と下流の流路を連通させる。このように、絞り部330には、絞り部330より上流の流路と下流の流路を連通させる複数本の連通路が形成されている。絞り部330は、絞り部130と同様に担体120に形成されている。この場合、浄化流路111a及び111bは、絞り部330によって絞られる。なお、絞り部330のように複数本の連通路を絞り部に形成する場合、かかる複数本の連通路を浄化流路111cと同程度に細かく形成するのは困難である。このことから、複数本の連通路が形成された絞り部330のような絞り部を浄化流路111a及び111bの上流端(前端)に取り付けると、絞り部の連通路の開口率が浄化流路111cの開口率より小さくなりやすい。このため、絞り部において流路抵抗が大きくなり、浄化流路111a及び111bやその周辺の浄化流路111cの上流部分に排気が流入しにくくなる。よって、絞り部330も上述の実施形態と同様、浄化流路111a及び111bの下流部分に形成することが必要となる。
【0061】
また、上述の実施形態では、燃焼室21からの排気を触媒設置部110に流入させる排気管として、1本の上流排気管16のみが設けられている。しかし、複数本の排気管がエンジンに接続されており、この複数本の排気管が1本に合流して触媒設置部110に接続されてもよい。この場合、エンジン12から触媒ユニットまでの流路長が比較的短い(L1<L2)上述の実施形態のような構成によると、複数の排気管からの排気が合流した後にうまく混合されず、各排気管の延長線に沿ったまま、それぞれ偏って触媒ユニットに流入するおそれがある。これに対し、触媒ユニットとして上述の触媒本体111が用いられると、浄化流路111cの流路断面積が小さいため、触媒本体111に流入する排気の流速が低下する。これにより、触媒本体111に至るまでに各排気管からの排気が混合されやすくなる。よって、触媒本体111に排気が偏って流入することが抑制される。また、浄化流路111a及び111bの下流部分に絞り部130が形成されていることから、排気が偏って流入することがさらに抑制される。
【0062】
上述の実施形態では、絞り部130が、浄化流路111a及び111bの下流部分の後端部に配置されている。これについて、下流部分の少なくともいずれか一部の流路断面積が上流部分の流路断面積より小さくなるように絞り部が形成されていれば、本発明の範囲である。よって、絞り部130が下流部分の中央付近に配置されていてもよいし、下流部分の前端部に設けられていてもよい。また、上述の実施形態においては、浄化流路111a及び111bの下流部分に設けられた絞り部は絞り部130のみであるが、絞り部130のような流路を絞る部材が浄化流路111a及び111bの下流部分の複数箇所に設けられてもよい。なお、「下流部分の少なくともいずれか一部の流路断面積が上流部分の流路断面積より小さい」とは、上流部分における最小の流路断面積よりも、下流部分の少なくともいずれかにおける流路断面積が小さいという意味である。
【0063】
また、「中央流路における上流部分の流路断面積と比べて、外側流路における上流部分の流路断面積が小さい」とは、中央流路の上流部分における最小の流路断面積よりも、外側流路の上流部分における最大の流路断面積が小さいという意味である。上述の実施形態では、浄化流路111a及び111bの上流部分には、絞り部130のような流路を絞る部材が形成されていない。そして、外側流路に対応する浄化流路111cの上流部分の流路断面積は、中央流路に対応する浄化流路111a及び111bの上流部分の流路断面積と比べて小さくなっている。
【0064】
なお、本明細書において「好ましい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいが、これに限定されるものではない」ということを意味するものである。また、「…してもよい」という用語は非排他的なものであって、「…してもよいが、これに限定されるものではない」ということを意味するものである。また、「XがY方向に延びる」とは、XがY方向について連続して存在することを示す。また、「XがY1からY2まで延びる」とは、XがY1からY2まで連続して存在することを示す。また、「流路長」とは、流路に沿った長さを意味する。
【0065】
本実施形態に係る車両は、上述の自動二輪車1に限定される訳ではない。本発明は、スポーツ型、オフロード型、モペット型等の他の型式の自動二輪車に採用されてもよい。また、エンジンユニット100は、三輪車、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))等の自動二輪車以外の鞍乗型車両に使用されてもよい。さらに、エンジンユニット100が自動車に採用されてもよい。