(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393229
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ステータおよびレゾルバ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20180910BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20180910BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
H02K3/50 A
G01D5/20 110H
H02K24/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-81807(P2015-81807)
(22)【出願日】2015年4月13日
(65)【公開番号】特開2016-201944(P2016-201944A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 紘明
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−153864(JP,A)
【文献】
特開平08−126281(JP,A)
【文献】
特開2008−187779(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102769343(CN,A)
【文献】
特開2012−233806(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0187513(US,A1)
【文献】
実開昭64−045461(JP,U)
【文献】
特開2003−207370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
G01D 5/20
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁極歯が環状に配設されたステータコアと、前記複数の磁極歯のそれぞれに電線を巻回して形成した複数の巻線と、ステータコアの周方向に沿って配設された複数の接続端子とを有するステータであって、
前記巻線を複数接続することにより1相分の巻線群が形成され、前記巻線群から延びる電線は前記接続端子の一つに巻き付けられ、各接続端子の巻き終わりから延びる電線は当該接続端子の巻き始めの電線と逆方向になるように折り返されて、これら巻き始めの電線及び巻き終わりの電線は前記ステータコアの周方向において同方向に延びている、
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
回転軸に固定され外周に凹凸が設けられた磁性体からなるロータと、前記ロータの周囲において複数の磁極歯が環状に配設されたステータコア、前記複数の磁極歯のそれぞれに電線を巻回して形成した複数の巻線、及びステータコアの周方向に沿って配設された複数の接続端子を有するステータと、を備え、前記ロータと前記ステータの間のリラクタンスの変化を検出することによって前記回転軸の回転位置を検出するレゾルバであって、
複数の前記接続端子が前記ステータコアの周方向に沿って配設され、
前記巻線を複数接続することにより1相分の巻線群が形成され、前記巻線群から延びる電線は前記接続端子の一つに巻き付けられ、各接続端子の巻き終わりから延びる電線は当該接続端子の巻き始めの電線と逆方向になるように折り返されて、これら巻き始めの電線及び巻き終わりの電線は前記ステータコアの周方向において同方向に延びている、
ことを特徴とするレゾルバ。
【請求項3】
前記ステータは、複数の巻線群を有し、各巻線群の両端が巻き付けられた前記接続端子が全て近接して配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の磁極歯が環状に配設されたステータコアおよび前記複数の磁極歯のそれぞれに電線を巻回して形成される複数の巻線を有するステータ、および、当該ステータとロータとを備え、ロータとステータの間のリラクタンスの変化を検出することによって回転軸の回転位置を検出するレゾルバに関し、特に電線の交差接触点を無くすことができ、ステータの品質を高めることができるステータおよびレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
回転角センサのレゾルバには、リラクタンス型レゾルバ(例えば、特許文献1参照)、バリアブルリラクタンス型レゾルバ(以下VR型レゾルバとする。)があり、特許文献1に示すリラクタンス型レゾルバや一般的なVR型レゾルバにおいては、環状のレゾルバステータに、コイル状に巻回された励磁巻線及び出力巻線が備わっている。各巻線の両端は接続端子に接続されるが、接続端子の配置や巻線方法によっては電線同士が交差に接触してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−207370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示すように、複数の巻線を直列接続して形成された4つの巻線群aが、各両端を接続端子bに接続してブリッジ接続され、
図5において、
図4に示す接続端子A,B,C,Dをステータの周方向に図中左から順に近接して配置した場合、電線同士の交差接触点cで、振動等により電線が摩耗し断線することがある。これは接続端子の並び順を変えても改善しない。
【0005】
一方、
図6に示すように、
図4に示す接続端子A,B,C,Dをステータの径方向に近接して配置した場合、電線同士の交差接触点は無くなり、振動等により電線が摩耗し断線することは無くなる。しかし、接続端子間の間隔を確保するためにステータの外径が大きくなり、小型化の阻害や設計自由度を低下させる問題がある。さらに各巻線群の総電線長が、接続端子への渡し長の差の分だけ異なることとなり、角度検出精度が低下するという問題もある。
【0006】
したがって、ステータの品質と角度検出精度の両方を高めるためには、電線同士の交差接触点が無く、各巻線群の総電線長が同じとなる技術を考案しなければならない。
【0007】
そこで、本発明では、接続端子の配置と接続端子への電線巻線方法により、電線同士の交差接触点を無くし、各巻線群の総電線長を実質的に一致させることができるステータおよびレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステータは、複数の磁極歯が環状に配設されたステータコアと、前記複数の磁極歯のそれぞれに電線を巻回して形成した複数の巻線と、ステータコアの周方向に沿って配設された複数の接続端子とを有するステータであって、前記巻線を複数接続することにより1相分の巻線群が形成され、前記巻線群から延びる電線は前記接続端子の一つに巻き付けられ、各接続端子の巻き終わりから延びる電線は当該接続端子の巻き始めの電線と逆方向になるように折り返されて、これら巻き始めの電線及び巻き終わりの電線は前記ステータコアの周方向において同方向に延びていることを特徴とする。
【0009】
本発明のレゾルバは、回転軸に固定され外周に凹凸が設けられた磁性体からなるロータと、前記ロータの周囲において複数の磁極歯が環状に配設されたステータコア、前記複数の磁極歯のそれぞれに電線を巻回して形成した複数の巻線、及びステータコアの周方向に沿って配設された複数の接続端子を有するステータと、を備え、前記ロータと前記ステータの間のリラクタンスの変化を検出することによって前記回転軸の回転位置を検出するレゾルバであって、複数の前記接続端子が前記ステータコアの周方向に沿って配設され、前記巻線を複数接続することにより1相分の巻線群が形成され、前記巻線群から延びる電線は前記接続端子の一つに巻き付けられ、各接続端子の巻き終わりから延びる電線は当該接続端子の巻き始めの電線と逆方向になるように折り返されて、これら巻き始めの電線及び巻き終わりの電線は前記ステータコアの周方向において同方向に延びていることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記ステータは、複数の巻線群を有し、各巻線群の両端が巻き付けられた接続端子が全て近接して配置されている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、接続端子に接続される電線同士の交差接触を無くすことにより、交差接触点で、振動等により電線が摩耗し断線することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のステータの接続端子の巻線状態を示す図である。
【
図2】本発明のステータの配設パターンの一例を示す図である。
【
図3】本発明のステータの配設パターンの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施可能な巻線構造の一例を示す図である。
【
図5】従来のステータの接続端子の巻線状態を示す図である。
【
図6】従来のステータの接続端子の他の巻線状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
図1は、
図4に示す巻線構造を、本発明により実施したリラクタンス型レゾルバにおけるステータ10とロータ20を示しており、特にステータ10の接続端子bの巻線状態を示している。
【0014】
ロータ20は、回転軸に固定され外周に凹凸が設けられた磁性体から形成されている。ステータ10は、複数の磁極歯としての歯部1〜7(その他の歯部の図示は省略)が環状に配設されたステータコア11と、ステータコア11の周方向に沿って、この周方向に略平行に一列に配設された複数の接続端子bとを備えている。ステータ10の各接続端子bは、
図5と同様、各接続端子bの間隔を十分に保ちつつも、互いに近接して配置されている。
【0015】
図1に示されている、各接続端子bより伸びる2本の電線は、各接続端子bの巻き始めに接続される巻線と、当該接続端子bの巻き終わりから延びる電線である。そして、各接続端子bの巻き終わりから延びる電線は、当該接続端子bの巻き始めに接続される電線と、当該接続端子bにおいて逆方向になるように折り返されており、これら巻き始めの電線及び巻き終わりの電線は、ステータコア11の周方向において同じ方向に配線されている。
【0016】
次に、巻き始めの電線及び巻き終わりの電線の配線方向について詳しく説明する。
図1に示されている接続端子bを左から順にA,C,B,Dと符号付けし、仮に電線の巻き始めを、接続端子Aとすると、当該接続端子Aの巻き終わりから延びる電線は、反時計回りに渡される。そして、ステータ10に備えた歯部に巻回されて巻線を作成していき、作成した複数の巻線を直列接続させて1つの巻線群aを形成して、最終的に接続端子B,Dのどちらかに、反時計回り方向より接続される。この時、接続先をどちらにしても構わない。それは、近接して配置された接続端子bは、片側2つをブリッジ接続の対角の2端とし、残り2つを他の対角の2端としている。つまり接続端子Aは接続端子B,Dと接続されており、接続端子B,Dのどちらを先に接続端子Aと接続するかというだけである。
【0017】
本説明では接続端子Bを先に接続したとして説明を続ける。接続端子Bの巻き終わりから延びる電線は、接続端子Bの巻き始めに接続される電線と、逆方向になるように折り返されて、時計回りに渡される。そして、上記同様巻線群aを形成して、最終的に接続端子Cに時計回り方向より接続される。
【0018】
上記巻線方法を
図2,3において説明する。まず、
図2に示すように接続端子Aの巻き終わりから延びる電線は、ステータコア11の周囲を反時計回りに渡され、ステータコア11に備えた歯部3に巻回されて巻線3aを作成する。次に再度反時計回りに渡され、今度はステータ10に備えた歯部7に巻回されて巻線7aを作成する。これを複数回繰り返し、作成した複数の巻線を直列接続し1相分の巻線群aを形成して、最終的に接続端子Bに反時計回り方向より接続する。
【0019】
次に接続端子Bの巻き終わりから延びる電線は、
図3に示すように接続端子Bの巻き始めに接続される電線と、逆方向になるように折り返されて、ステータコア11の周囲を時計回りに渡され、巻線群aを形成して、最終的に接続端子Cに時計回り方向より接続する。
【0020】
そして、接続端子Cの巻き終わりから延びる電線は、接続端子Aの巻き終わりから延びる電線と同様に反時計回りに渡され、巻線群aを形成して最終的に接続端子Dに反時計回り方向より接続される。
【0021】
今度は、接続端子Dの巻き終わりから延びる電線は、接続端子Bの巻き終わりから延びる電線と同様に反時計回りに渡され、巻線群aを形成して最終的に接続端子Aに時計回り方向より接続される。なお、他の歯部においても電線が巻回されて巻線が形成され、巻線3a、7aと同様に電線が接続端子bに接続されている。
【0022】
このように電線の巻線方法と接続端子の位置を変えることにより、接続端子に接続される電線同士の交差接触を無くすことが可能となる。交差接触することがないので、振動等により電線が摩耗し断線することも抑制できる。また、ステータコア11の周囲において、接続端子bを基点として、電線を時計回り方向と反時計回り方向との対称的に配線しているので、各巻線群の総電線長が同じとなり、角度検出精度の低下を抑制できる。
【0023】
なお、電線の巻き始めをどの接続端子からにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、様々な数の歯数を持つレゾルバに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 ステータ、11 ステータコア、20 ロータ、a 巻線群、b,A,B,C,D 接続端子、c 交差接触点。