特許第6393232号(P6393232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000002
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000003
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000004
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000005
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000006
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000007
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000008
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000009
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000010
  • 特許6393232-貯蔵装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393232
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20180910BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20180910BHJP
   G21C 19/06 20060101ALI20180910BHJP
   B65D 90/14 20060101ALI20180910BHJP
   F16M 13/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   G21C19/32 R
   G21F9/36 541Z
   G21C19/06 S
   G21F9/36 501H
   G21F9/36 541A
   B65D90/14
   F16M13/00 S
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-98321(P2015-98321)
(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-212053(P2016-212053A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】白谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 雅光
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−160675(JP,A)
【文献】 実開平05−077798(JP,U)
【文献】 特開2001−116887(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/051076(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/068547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/06、19/32
G21F 5/14、9/36
B65D 88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵装置であって、
貯蔵対象物を収容するための収容容器であって、収容空間を囲む周壁及びこの周壁の下部において周方向に並ぶ複数の位置で当該周壁の外周面から外向きに突出する複数の容器突出部を有するものと、
前記収容容器のための載置面を有し、前記収容容器の周壁が起立する姿勢で当該収容容器が前記載置面上に載置可能な架台と、
前記各容器突出部を少なくともその上側で拘束することにより前記収容容器を前記載置面上に固定する複数の固定装置と、を備え、
前記複数の容器突出部は、特定の水平方向であって前記架台の載置面上に前記収容容器が導入される収容容器導入方向からみて左側及び右側にそれぞれ位置する容器突出部を含み、
前記複数の固定装置は、当該左側及び右側の容器突出部をそれぞれ拘束する左側固定装置及び右側固定装置を含み、
前記左側固定装置及び右側固定装置は、それぞれ、対応する容器突出部の上側で当該容器突出部を前記収容容器導入方向と平行な方向に跨ぐように配置される拘束部材と、当該容器突出部よりも前記収容容器導入方向の奥側の位置において前記拘束部材を昇降可能に支持する第1支持部であって、前記架台上で立直して前記拘束部材を上下方向に貫通する支柱を有するものと、当該支柱回りの前記拘束部材の回動を規制する回動規制部と、前記容器突出部よりも前記収容容器導入方向の入口側の位置において前記拘束部材を昇降可能に支持する第2支持部と、前記載置面上に載置された前記収容容器の前記複数の容器突出部のうち対応する容器突出部に対して前記拘束部材を当該拘束部材の上側から押付けることにより前記収容容器を前記載置面上に固定する押付け機構と、を有し、
前記第2支持部は、上下方向に延びるとともに前記拘束部材に昇降可能に保持される昇降部材を含み、前記昇降部材は、その昇降により、当該昇降部材が前記架台と前記拘束部材とを上下方向に連結するように延びて当該拘束部材を昇降可能に支持する支持位置と、前記収容容器が前記載置面上に載置された状態で前記容器突出部が上下方向について占める領域である高さ領域から前記昇降部材が上下方向に退避して当該容器突出部が当該昇降部材の下側または上側を前記収容容器導入方向と平行な水平方向に通過することを許容する退避位置と、の間を移動し、
前記架台は、前記昇降部材を前記支持位置において着脱可能に保持する支持位置保持部を有する、貯蔵装置。
【請求項2】
請求項1記載の貯蔵装置であって、前記昇降部材の退避位置は、前記支持位置よりも上側の位置である、貯蔵装置。
【請求項3】
請求項2記載の貯蔵装置であって、前記架台の支持位置保持部は、前記昇降部材の下端部が挿脱可能となるように上向きに開口する保持用孔を有する、貯蔵装置。
【請求項4】
請求項3記載の貯蔵装置であって、前記昇降部材の下端部が雄ねじを有し、前記保持用孔はこれを囲む前記架台の内周面が前記雄ねじと螺合可能な雌ねじを有するねじ孔である、貯蔵装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の貯蔵装置であって、前記第2支持部は、前記昇降部材を当該昇降部材に作用する重力に抗して前記退避位置において着脱可能に保持する退避位置支持部をさらに含む、貯蔵装置。
【請求項6】
請求項5記載の貯蔵装置であって、前記退避位置支持部は、前記昇降部材のうち当該昇降部材が前記退避位置にある状態で前記拘束部材よりも上側に位置する部分に設けられた被嵌合部と、この被嵌合部の上下方向の変位を規制するように当該被嵌合部と嵌合した状態で前記昇降部材に支持されることにより当該被嵌合部の降下を阻止する嵌合部と、を含む、貯蔵装置。
【請求項7】
請求項5記載の貯蔵装置であって、前記退避位置支持部は、前記昇降部材のうち当該昇降部材が前記退避位置にある状態で前記拘束部材よりも上側に位置する部分に設けられて他の部分よりも水平方向に突出する被支持突出部と、この被支持突出部と前記拘束部材との間に介在することにより当該被支持突出部の下降を阻止するスペーサと、を含む、貯蔵装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の貯蔵装置であって、前記複数の容器突出部は、前記収容容器導入方向の入口側に位置する容器突出部をさらに含み、前記複数の固定装置は、前記左側及び右側固定装置に加え、当該入口側に位置する容器突出部を上側から拘束して載置面に固定する入口側固定装置であって、前記架台に対して着脱可能に設置されるものを含む、貯蔵装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済燃料等の貯蔵対象物を貯蔵するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済燃料等の貯蔵対象物を貯蔵するための装置として、当該貯蔵対象物を収容しながら搬送される収容容器と、この収容容器が載置される上面を有する架台と、当該架台の上面上に載置された収容容器を当該架台に固定するための固縛装置と、を備えたものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、前記収容容器に相当するキャスクに設けられた複数のトラニオンを利用して当該キャスクを架台上に固縛する装置が開示されている。前記収容容器は、円筒状の外周面を有し、前記架台の上面の中央位置に対して特定の水平方向であるキャスク導入方向に沿って導入され、また逆の方向に搬出される。前記各トラニオンは、前記キャスクの上下端部において前記キャスクを輸送するために当該キャスクの外周面から外向きに突出する。これらのトラニオンのうち、前記キャスクの下部に設けられるトラニオンは、当該キャスクの周方向に等間隔で並ぶ複数の位置、具体的には、90°間隔で並ぶ4つの位置、に設けられている。これに対して前記架台上には、前記下部のトラニオンをそれぞれ固縛するための複数の固縛装置が設けられている。
【0004】
前記各固縛装置は、対応するトラニオンを上から架台に向けて押え込むトラニオン固定金具と、このトラニオン固定金具の両端部を支持する一対の固定ボルトと、を有する。各固定ボルトは、前記架台上で起立する姿勢で当該架台に対して着脱可能に取付けられ、その支持位置で前記トラニオン固定金具を昇降可能に支持する。さらに、前記各固縛装置のうち、前記キャスク導入方向からみて左右両側に位置する固縛装置は、前記トラニオンに対して前記トラニオン固定金具が少し浮上した高さ位置で当該トラニオン固定金具及びこれにつながる一方の(入口側の)固定ボルトが他方の(奥側の)固定ボルトを中心に回動することを許容する開閉機構を有する。
【0005】
この装置によれば、前記固縛装置のうち前記キャスク導入方向の入口側の固縛装置が前記架台から取り外された状態で、前記左右の固縛装置のトラニオン固定金具が前記キャスクの中心軸から離れる方向に開くように回動することにより、前記架台上の中心位置への前記キャスクの搬入及び当該中心位置からの搬出が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−160675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載される装置では、キャスクを出し入れするために当該キャスクの突出部であるトラニオンを上から拘束する部材であるトラニオン固定金具を開閉させる必要、具体的には当該トラニオン固定金具を一方の固定ボルトを中心に垂直軸回りに回動させる必要、があるため、次のような不都合を伴う。
【0008】
1)前記トラニオン固定金具は、前記キャスクのトラニオンに上から押し付けられることにより当該キャスクを架台上に拘束するものであるから、高い強度が求められ、従って当該トラニオン固定金具の重量及び慣性モーメントは一般に大きい。このようなトラニオン固定金具をみだりに垂直軸回りに回動させることは、取扱い上、また安全上、好ましいとはいえない。
【0009】
2)前記トラニオン固定金具がこれに対応するトラニオンの直上の位置から外側に大きく回動してしまうと、当該トラニオンの正規の固定位置が不明になる。このことは、前記架台上への前記キャスクの位置決めを難しくする。
【0010】
以上の課題は、前記のようなキャスクに限らず、複数の突出部を有して貯蔵対象物を収容する収容容器、当該収容容器が載置される架台、及び前記突出部を上から拘束する拘束部材を有して前記収容容器を前記架台上に固定する固定装置を備えた貯蔵装置について広く生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決することが可能な貯蔵装置を提供することを目的とする。
【0012】
本発明が提供する貯蔵装置は、貯蔵対象物を収容するための収容容器であって、収容空間を囲む周壁及びこの周壁の下部において周方向に並ぶ複数の位置で当該周壁の外周面から外向きに突出する複数の容器突出部を有するものと、前記収容容器のための載置面を有し、前記収容容器の周壁が起立する姿勢で当該収容容器が前記載置面上に載置可能な架台と、前記各容器突出部を少なくともその上側で拘束することにより前記収容容器を前記載置面上に固定する複数の固定装置と、を備える。前記複数の容器突出部は、特定の水平方向であって前記架台の載置面上に前記収容容器が導入される収容容器導入方向からみて左側及び右側にそれぞれ位置する容器突出部を含み、前記複数の固定装置は、当該左側及び右側の容器突出部をそれぞれ拘束する左側固定装置及び右側固定装置を含む。前記左側固定装置及び右側固定装置は、それぞれ、対応する容器突出部の上側で当該容器突出部を前記収容容器導入方向と平行な方向に跨ぐように配置される拘束部材と、当該容器突出部よりも前記収容容器導入方向の奥側の位置において前記拘束部材を昇降可能に支持する第1支持部であって、前記架台上で立直して前記拘束部材を上下方向に貫通する支柱を有するものと、当該支柱回りの前記拘束部材の回動を規制する回動規制部と、前記容器突出部よりも前記収容容器導入方向の入口側の位置において前記拘束部材を昇降可能に支持する第2支持部と、前記載置面上に載置された前記収容容器の前記複数の容器突出部のうち対応する容器突出部に対して前記拘束部材を当該拘束部材の上側から押付けることにより前記収容容器を前記載置面上に固定する押付け機構と、を有する。前記第2支持部は、上下方向に延びるとともに前記拘束部材に昇降可能に保持される昇降部材を含む。前記昇降部材は、その昇降により、当該昇降部材が前記架台と前記拘束部材とを上下方向に連結するように延びて当該拘束部材を昇降可能に支持する支持位置と、前記収容容器が前記載置面上に載置された状態で前記容器突出部が上下方向について占める領域である高さ領域から前記昇降部材が上下方向に退避して当該容器突出部が当該昇降部材の下側または上側を前記収容容器導入方向と平行な水平方向に通過することを許容する退避位置と、の間を移動する。前記架台は、前記昇降部材を前記支持位置において着脱可能に保持する支持位置保持部を有する。
【0013】
この装置によれば、所定の容器突出部に押付けられる拘束部材の垂直軸回りの回動を要することなく、前記架台の載置面上への収容容器の載置及び前記容器突出部を利用した前記収容容器の固定と、当該載置面からの前記収容容器の脱着と、を容易に行うことができる。
【0014】
具体的に、前記左側及び右側固定装置の第2支持部の昇降部材がそれぞれ前記退避位置にあり、かつ、当該左側及び右側固定装置の拘束部材がそれぞれ前記容器突出部を拘束する位置よりも上側の位置に浮上した状態で、前記退避位置にある前記昇降部材の下側または上側を前記収容容器の容器突出部が前記収容容器導入方向に沿って通過するようにしながら当該収容容器が前記載置面上に導入されることが可能である。その後、当該載置面上に当該収容容器が載置された状態で、前記昇降部材が前記退避位置から前記支持位置へ移動するように上昇または下降して前記架台の支持位置保持部に保持され、前記押付け機構が前記拘束部材を前記容器突出部に上側から押付けることにより、前記左側固定装置及び右側固定装置はそれぞれの容器突出部を介して前記収容容器を前記載置面上に固定することができる。
【0015】
逆に、前記押付け機構が前記拘束部材の押付けを解除して当該拘束部材がその下側の容器突出部から浮上し、前記第2支持部の昇降部材が前記架台の支持位置保持部による保持から離脱して退避位置まで上昇または下降することにより、前記昇降部材の下側または上側を前記容器突出部が通過するようにしながら前記載置面上から前記収容容器が前記収容容器導入方向と逆の方向に搬出されることが可能である。
【0016】
この収容容器の導入及び搬出に際し、前記回動規制部は、一般には大きな重量を有する前記拘束部材の垂直軸回りの回動を規制することにより、作業効率及び安全性の向上を可能にするとともに、当該拘束部材がその下側の容器突出部の正規の固定位置から水平方向に変位するのを規制することによって、当該変位に起因して前記容器突出部の正規の固定位置が不明確になることを防ぐ。換言すれば、前記拘束部材の垂直軸回りの回動を規制しながら前記収容容器の搬出を行って前記拘束部材を前記容器突出部の正規の固定位置の直上またはこれに近い位置に保つことにより、前記収容容器の搬入の際の当該収容容器の位置決めを容易にすることができる。また、当該回動規制は、前記昇降部材が前記退避位置から前記支持位置に移動する際に当該昇降部材が前記架台の支持位置保持部に保持されることをより確実にする。
【0017】
前記昇降部材の退避位置は、前記支持位置よりも下側の位置、つまり、架台の内部の位置、に設定されてもよいが、当該退避位置が前記支持位置よりも上側の位置に設定されることは、前記架台の内部の構造を複雑にすることなく、また拘束部材から昇降部材を離脱させることなく、前記拘束部材の上側の空間を利用して前記昇降部材を前記容器突出部が占める高さ領域から上側に退避させることを可能にする。
【0018】
この場合、前記架台の支持位置保持部は、前記昇降部材の下端部が挿脱可能となるように上向きに開口する保持用孔を有するものによって構成されることが可能である。さらに、前記昇降部材の下端部が雄ねじを有し、前記保持用孔の内周面が前記雄ねじと螺合可能な雌ねじを有するものでは、前記昇降部材が前記支持位置から不用意に上下するのを確実に阻むことができる。
【0019】
一方、前記昇降部材の退避位置が前記支持位置よりも上側にある場合、前記第2支持部は、前記昇降部材を当該昇降部材に作用する重力に抗して前記退避位置において着脱可能に保持する退避位置支持部をさらに含むことが好ましい。当該退避位置支持部としては、前記昇降部材のうち当該昇降部材が前記退避位置にある状態で前記拘束部材よりも上側に位置する部分に設けられた被嵌合部と、この被嵌合部の上下方向の変位を規制するように当該被嵌合部と嵌合した状態で前記昇降部材に支持されることにより当該被嵌合部の降下を阻止する嵌合部と、を含むものや、前記昇降部材のうち当該昇降部材が前記退避位置にある状態で前記拘束部材よりも上側に位置する部分に設けられて他の部分よりも水平方向に突出する被支持突出部と、この被支持突出部と前記拘束部材との間に介在することにより当該被支持突出部の下降を阻止するスペーサと、を含むものが、好適である。
【0020】
前記複数の固定装置は、前記左側固定装置及び右側固定装置以外の固定装置を含んでもよい。例えば、前記複数の容器突出部が、前記収容容器導入方向の入口側に位置する容器突出部を含む場合、前記複数の固定装置は、前記左側及び右側固定装置に加え、当該入口側に位置する容器突出部を上側から拘束して載置面に固定する入口側固定装置であって、前記架台に対して着脱可能に設置されるものを含んでもよい。当該入口側固定装置は、前記架台から脱着されることにより、当該入口側固定装置の配設位置を通って前記収容容器が前記収容容器導入方向に沿って前記載置面上の載置位置に導入されることを可能にする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、複数の容器突出部を有して貯蔵対象物を収容する収容容器、当該収容容器が載置される架台、及び前記容器突出部を上から拘束する拘束部材を有して前記収容容器を前記架台上に固定する固定装置を備えた貯蔵装置であって、前記拘束部材の垂直軸回りの回動を伴うことなく、前記架台に対する前記収容容器の搬入及び搬出を容易にし、かつ、当該架台上に当該収容容器を固定することが可能なものが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る貯蔵装置の要部を示す斜視図である。
図2】前記貯蔵装置を構成するキャスクの正面図である。
図3】前記キャスクの底面図である。
図4図1に示される貯蔵装置における左側及び右側固定装置において第2支持部の昇降部材が退避位置にある状態を示す断面正面図である。
図5図1に示される貯蔵装置における左側及び右側固定装置において第2支持部の昇降部材が支持位置にありかつ拘束部材が前記キャスクのトラニオンよりも上側に位置する状態を示す断面正面図である。
図6図1に示される貯蔵装置における左側及び右側固定装置において第2支持部の昇降部材が支持位置にありかつ前記拘束部材が前記トラニオンに押付けられた状態を示す断面正面図である。
図7図4のVII−VII線に沿った断面図である。
図8図4のVIII−VIII線に沿った断面図である。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る貯蔵装置における左側及び右側固定装置において第2支持部が退避位置にある状態を示す断面正面図である。
図10図9のX−X線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明される実施の形態では、使用済燃料を貯蔵する装置が開示されるが、本発明に係る貯蔵装置の貯蔵対象物は使用済燃料に限定されない。本発明は、種々の貯蔵対象物を貯蔵する装置について広く適用が可能である。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る貯蔵装置の要部を示す。この貯蔵装置は、使用済燃料を収容するための収容容器であるキャスク10と、このキャスク10が載置可能な載置面22を有する架台20と、複数の固定装置と、を備える。
【0025】
前記キャスク10は、図2及び図3に示すような周壁12、底壁13及び上蓋14を有する。前記周壁12は、前記使用済燃料の収容空間を囲む円筒状をなし、キャスク10の基本姿勢、すなわち前記載置面22上に載置される際の姿勢、において上下方向に延びる形状を有する。換言すれば、キャスク10はその周壁12の中心軸が上下方向に延びる姿勢で前記載置面22上に載置される。前記底壁13及び前記上蓋14は、前記周壁12の下端及び上端がそれぞれ囲む開口を塞ぐように当該周壁12に装着される。
【0026】
前記キャスク10は、さらに、複数のトラニオン16を有する。各トラニオン16は、前記周壁12の外周面から半径方向の外向きに突出する容器突出部であり、当該トラニオン16を用いてキャスク10の吊り上げ及び輸送が行われる。具体的には、前記周壁12の上部及び下部において周方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ前記トラニオン16が設けられる。この実施の形態では、前記上部及び下部において、周方向に等間隔で並ぶ4つの位置、つまり90°間隔で並ぶ位置、にそれぞれ前記トラニオン16が設けられる。
【0027】
前記架台20は、この実施の形態では、上から見て略正方形の板状をなし、そのうちの一方の面が前記載置面22として上を向く姿勢で地盤上に設置される。載置面22は、前記キャスク10の底部の外周よりも十分大きい形状を有し、当該載置面22の中心と前記基本姿勢にある前記キャスク10の中心軸とが合致する位置に当該キャスク10の正規の載置位置が設定されている。
【0028】
前記複数の固定装置は、前記キャスク10の下部のトラニオン16を利用して当該キャスク10を前記載置面22上の前記載置位置に固定するものであり、それぞれが対応するトラニオン16を上側から拘束する機能を有する。これらの固定装置の配置は、予め定められたキャスク導入方向に基いて設定される。当該キャスク導入方向は、特定の水平方向であって、当該キャスク導入方向に沿って前記キャスク10が前記基本姿勢(周壁12の中心軸が上下方向に延びる姿勢)のまま吊り下げられながら前記架台20の外側から当該架台20の前記載置位置まで導入される方向である。具体的に、この実施の形態に係るキャスク導入方向は、図1に矢印で示されるように、前記架台20の特定の角部21と前記載置面22の中心とを結ぶ方向に設定されている。
【0029】
前記複数の固定装置は、前記キャスク10の下部の4つのトラニオン16のうちの2つが前記キャスク導入方向からみてその左側及び右側に位置して残りの2つが前側と後ろ側に位置する姿勢で当該キャスク10が前記載置面22上に導入されることを前提に配置される。具体的に、当該複数の固定装置は、左側固定装置31、右側固定装置32、入口側固定装置33及び奥側固定装置34を含み、これらの固定装置31,32,33,34は、前記トラニオン16のうち前記キャスク導入方向からみて左側、右側、入口側(手前側)及び奥側に位置するトラニオン16をそれぞれ拘束するように、配置される。
【0030】
前記各固定装置31〜34のうち、前記左側固定装置31及び前記右側固定装置32は、それぞれ、図4図6に示すような拘束部材40と、この拘束部材40を昇降可能に支持する第1支持部50及び第2支持部60と、回動規制部と、押付け機構と、を有する。
【0031】
前記拘束部材40は、対応するトラニオン16の上側に配置され、前記押付け機構によって当該トラニオン16に対して架台20の載置面22の側すなわち下側に押付けられることにより、当該トラニオン16を拘束する。従って、この拘束部材40は、前記トラニオン16から受ける反力に対抗するための高い強度を保有すべく、重厚な構造を有し、前記第1及び第2支持部50,60の重量よりも大きな重量(例えば50〜100kg)を有する。
【0032】
拘束部材40は、前記トラニオン16の上側で当該トラニオン16を前記キャスク10の径方向と直交する跨ぎ方向、すなわち前記キャスク導入方向と平行な方向、にまたぐように配置される。拘束部材40はその跨ぎ方向の両端部である第1端部41及び第2端部42を有し、第1端部41及び第2端部42は前記トラニオン16からみてキャスク導入方向の奥側及び入口側にそれぞれ位置する。前記拘束部材40のうち前記跨ぎ方向の中間部の下面は、前記トラニオン16と嵌合可能となるように上向きに凹む嵌合凹部46を構成する。
【0033】
前記第1支持部50は、前記拘束部材20を水平方向に拘束して上下方向に案内する支柱52と、前記拘束部材20をその下側で支持する支持機構54と、を有する。
【0034】
前記支柱52は、略円柱状をなし、前記架台20の載置面22から上方に延びるように、当該架台20に立設される。具体的に、支柱52は、下端部52a及び上端部52bを有し、これらの端部52a,52bは雄ねじが形成された外周面を有する。前記架台20には、前記載置面22上で上向きに開口するねじ孔24が設けられ、このねじ孔24に前記下端部52aがねじ込まれることにより、支柱52は前記載置面22上で立直した状態で固定される。
【0035】
前記拘束部材40の第1端部41には、これを上下方向に貫通する支柱挿通孔47が形成されている。この支柱挿通孔47に前記支柱52の上部が挿通されている。これにより、支柱52は、前記拘束部材40を水平方向に拘束しながら上下方向に案内することが可能である。
【0036】
前記支持機構54は、前記載置面22と前記拘束部材40の下面との間に介在することにより当該拘束部材40を昇降可能に支持するもので、この実施の形態ではスペーサ55及び圧縮コイルばね56と、を含む。スペーサ55は、円筒状をなし、前記支柱52の下部を囲むように前記載置面22上に載置される。前記圧縮コイルばね56は、前記スペーサ55の上端と前記拘束部材40の下面との間に介在するように前記支柱52の周囲に配置され、その上下方向の圧縮弾性変形によって前記拘束部材40の昇降を許容するとともに、当該圧縮コイルばね56の弾発力によって前記拘束部材40を上向きに付勢する。
【0037】
なお、前記支持機構54は本発明において必須のものではない。例えば、固定ピン等の位置決め部材を用いて拘束部材40がトラニオン16よりも高い位置に保持されてもよい。
【0038】
前記左側及び右側固定装置31,32は、さらに、前記支柱52回りの前記拘束部材40の回動を規制する回動規制部を有する。この実施の形態に係る回動規制部は、図7にも示すように、前記支柱52の外周面から突出するように当該支柱52に固定されたキー70と、前記支柱挿通孔47の一部を構成して前記キー53が嵌入可能な形状を有するキー溝47a、により構成される。この回動規制部は、その他、支柱52の一部に形成された異形断面(円形以外の断面:例えば正方形)をもつ部分と、拘束部材40に形成されて前記支柱52と嵌合するように前記異形断面に対応した断面をもつ支柱挿通孔と、の組み合わせによっても構成されることができる。あるいは、前記載置面22上にストッパが立設されてこのストッパが前記拘束部材40と当接することにより当該拘束部材40の回動を規制してもよい。
【0039】
前記第2支持部60は、昇降軸62と、嵌合具64と、を有する。昇降軸62は、図5及び図6に示される支持位置と図4に示される退避位置との間で移動するように昇降可能な昇降部材であり、前記嵌合具64は、当該昇降軸62を前記退避位置に保持する退避位置保持部を構成する
前記昇降軸62は、上下方向に延びる略円柱状をなすとともに、外周面に雄ねじが形成された下端部62a及び上端部62bを有する。一方、前記拘束部材40の第2端部42にはこれを上下方向に貫通する昇降軸挿通孔48が形成されている。この昇降軸挿通孔48は、当該昇降軸挿通孔48に前記昇降軸62がほぼ隙間なく挿通されるのを可能にする円形断面を有する。この挿通により、前記昇降軸62は、前記拘束部材40を上下方向に貫通し、かつ、この状態で昇降可能に前記拘束部材40に保持されている。
【0040】
前記昇降軸62は、前記支持位置において、前記架台20と前記拘束部材40とを上下方向に連結するように延びる。詳しくは、前記架台20において前記昇降軸62に対応する位置に保持用孔であるねじ孔26が形成され、このねじ孔26に前記昇降軸62の下端部がねじ込まれることにより、当該昇降軸62が前記支持位置に保持される。前記昇降軸62は、この支持位置において、前記架台20の上面から上向きに延びるように立直し、かつ、前記拘束部材40を上下方向に貫通することで当該拘束部材40の水平方向の動きを拘束するとともに相対的な昇降を許容する。
【0041】
前記昇降軸62を前記支持位置に保持するための保持用孔は、前記ねじ孔26に限らず、当該保持用孔を囲む架台20の内周面が雌ねじをもたない単なる孔でもよい。しかし、当該内周面に雌ねじが形成された前記ねじ孔26と前記昇降軸62の下端部62aとの螺合は、架台20に対する当該昇降軸62の相対的な上下動を確実に抑止して当該昇降軸62による前記拘束部材40の支持をより安定させることができる。
【0042】
前記退避位置は、前記支持位置よりも上側の位置であって、図4に示されるように、前記昇降軸62の下端部62aが前記ねじ孔26から上側に離脱し、かつ、前記載置面22上に載置される前記キャスク2の左右トラニオン2aの高さ領域Ahよりも前記下端部62aが上側に位置するまで前記昇降軸62が前記高さ領域Ahから上側に退避する位置である。
【0043】
前記嵌合具64は、前記昇降軸62のうち当該昇降軸62が退避位置にある状態で前記拘束部材40の上面よりも上側に位置する特定部分62dと嵌合しながら当該拘束部材40の上に載せられることにより、当該昇降軸62をこれに作用する重力に抗して前記退避位置に保持する。
【0044】
具体的に、前記特定部分62dの外周面には、前記下端部62aからさらに延長された雌ねじが形成され、これにより当該部分62dは被嵌合部を構成する。
【0045】
一方、前記嵌合具64は、図8に示すような一対の半割り部材66a,66bに分割された嵌合部材66と、ヒンジ67と、締結具68と、を有する。嵌合部材66は、前記特定部分62dの雄ねじと嵌合可能な雌ねじが形成された内周面66dを有し、当該特定部分62dと当該内周面66dとの嵌合によって両者間の上下方向の相対変位を規制する。前記ヒンジ67は、前記一対の半割り部材66a,66bの一方の端部同士を回動可能に連結する。すなわち、当該半割り部材66a,66bを開閉可能に相互連結する。前記締結具68は、前記両半割り部材66a,66bのうち前記ヒンジ67と反対側において径方向に突出するように形成された突出部66cを相互に締結して当該半割り部材66a,66bを閉じた状態に保持する。
【0046】
前記嵌合部材66が前記半割り部材66a,66bに分割されて開閉可能であることは、前記退避位置にある昇降軸62の前記特定部分62dに対してその径方向の外側から両半割り部材66a,66bをアプローチさせてその内周面66dを前記特定部分62dの外周面に嵌合し、その嵌合状態で前記締結具68で閉じ状態を保持することを可能にする。このようにして前記特定部分62dと嵌合された嵌合部材66は、前記拘束部材40の上に載置されることにより、前記昇降軸62を前記退避位置に保持することができる。
【0047】
前記押付け機構は、図5のように前記第1支持部50の支持機構54によってトラニオン16の上側に支持された前記拘束部材40を当該支持機構54の圧縮コイルばね56の弾発力に抗して当該トラニオン16に押付けることにより、前記キャスク10を前記載置面22上に固定する。この実施の形態に係る押付け機構は、前記支軸52及び前記昇降軸62の上端部52b,62bと、これらの上端部52b,62bの外周面に形成された雄ねじと螺合可能な雌ねじを有する一対のナット72と、を含む。当該一対のナット72は、前記支軸52及び前記支持位置にある昇降軸62の上端部52b,62bにそれぞれ螺合された状態で締め付け方向(すなわち下方向)に変位するように回転操作されることにより、前記圧縮コイルばね56の弾発力に抗して拘束部材40の第1及び第2端部41,42をそれぞれ押し下げて当該拘束部材40の嵌合凹部46をトラニオン16の上面に圧接させる。
【0048】
なお、前記支柱52及び前記昇降軸62の最上端には、被操作部52c,62cがそれぞれ設けられている。これらの被操作部52c,62cは、前記支柱52の下端部52a及び前記昇降軸62の下端部62aをそれぞれ架台20のねじ孔24,26にねじ込むための工具を用いた回転操作を受ける
前記入口側固定装置33及び奥側固定装置34は、前記左側及び右側固定装置31,32の拘束部材40及び第1支持部50と同等の拘束部材40及び第1支持部50を有するが、前記左側及び右側固定装置31,32の第2支持部60に代えて支柱82のみからなる第2支持部80を有する。支柱82は、前記第1支持部50の支柱52と同様に、架台20に設けられたねじ孔26に対して着脱可能に螺合される下端部と、押付け機構を構成するナット72が螺合可能な上端部と、を有するとともに、前記拘束部材40の第2端部42を上下方向に貫通することにより、当該第2端部42を水平方向について拘束ながら上下方向に案内する。
【0049】
従って、入口側及び奥側固定装置33,34では、前記支柱52の下端部52a及びこれと同等の前記支柱82の下端部が架台20のねじ孔24,26に対して着脱されることにより、当該入口側及び奥側固定装置33,34全体が架台20に対して着脱されることができる。このうち、架台20からの前記入口側固定装置33の着脱は、後述のように、当該入口側固定装置33の配設位置を通るようにして前記拘束部材40が前記キャスク導入方向に沿って載置面22上に導入されることを可能にし、また逆に当該載置面22上から搬出されることを可能にする。一方、奥側固定装置34は必ずしも架台20に対して着脱される必要はない。
【0050】
以上説明した貯蔵装置によれば、従来の装置と異なり、重量の大きい拘束部材40の垂直軸回りの回動を伴うことなく、前記架台の載置面上への収容容器の載置及び固定と、当該載置面からの前記収容容器の脱着と、を容易に行うことができる。具体的には次のとおりである。
【0051】
まず、1)入口側固定装置33が架台20から取り外され、2)前記左側固定装置31及び右側固定装置32の第2支持部60の昇降軸62がそれぞれ図4に示すような退避位置にあり、かつ、3)前記入口側固定装置33を除く各固定装置31,32,34の第1支持部50の支持機構54が拘束部材40を正規の拘束位置(当該拘束部材40がトラニオン16を拘束すべき位置)よりも上側の位置に保持した状態で、左側及び右側固定装置31,32の前記昇降軸62の下端部62aの上側を前記トラニオン16がそれぞれ前記キャスク導入方向に沿って通過するようにしながらキャスク10が前記架台20の載置面22上の設置位置まで導入されることが可能である。このキャスク10の導入のための搬送手段は特に限定されない。当該キャスク10は、クレーンで吊り下げられてもよいし、台車に載せられて搬送されてもよい。いずれの場合も、キャスク10は、架台20の上面よりも少し高い位置で水平方向に搬送されることが可能であり、このことは高い安全性の確保を可能にする。
【0052】
前記のようにして載置面22上に前記キャスク10が載置された状態で、前記嵌合具64の嵌合部材66が開かれてその嵌合による昇降軸62の特定部分62dの保持が解除され、当該昇降軸62が降ろされてその下端部62aがねじ孔26にねじ込まれることにより当該昇降軸62が図5に示す支持位置に保持されると、当該昇降軸62と前記第1支持部50の支柱52との双方で前記拘束部材40を水平方向について拘束する状態が形成される。この状態で、前記支柱52の上端部52b及び前記昇降軸62の上端部62bにそれぞれ螺着されたナット72が回転操作されて次第に下降し、前記昇降部材40を前記支持機構54の圧縮コイルばね56の弾発力に抗して押し下げて、図6に示すように当該昇降部材40の嵌合凹部46を前記トラニオン16の上面に圧接させることにより、前記左側固定装置31及び右側固定装置32は、それぞれ、これらに対応するトラニオン16を架台20側に拘束することができる。
【0053】
一方、前記の操作と並行して、あるいは前後して、入口側固定装置33が架台20に装着され、この入口側固定装置33及び奥側固定装置34について前記と同様のナット72の締め付け操作が行われて各拘束部材40が対応するトラニオン16に押付けられる(押し下げられる)ことにより、計4つのトラニオン16を介してキャスク10が前記載置面22上に固定されることができる。
【0054】
また、キャスク10は、前記と逆の順序で、前記載置面22上から搬出されることが可能である。具体的には、1)ナット72を緩めて前記圧縮コイルばね56の弾発力による前記拘束部材40の浮上を許容すること、2)入口側固定装置33を架台20から取り外すこと、及び3)第2支持部60の昇降軸62の下端部62aをねじ孔26から離脱させて当該昇降軸62を退避位置まで上昇させ、その特定部分62dに嵌合具64を嵌合して当該昇降軸62を当該退避位置に保持すること、が行われることにより、前記導入時と同様、前記昇降軸62の下端部62aの下側を前記トラニオン16が通過するようにしながら前記載置面22上から前記キャスク10が前記キャスク導入方向と逆の方向に搬出されることが可能になる。
【0055】
当該キャスク10の導入及び搬出において前記昇降軸62が前記ねじ孔26から脱している間、キー70及びキー溝47aを含む回動規制部は前記支柱52回りの前記拘束部材40の回動を規制する。このことは、作業効率及び安全性の向上に寄与する。さらに、当該拘束部材40の回動の規制は、当該変位によって前記トラニオン16の正規の固定位置が不明確になることの回避を可能にする。換言すれば、前記キャスク10の搬出時にも前記拘束部材40を水平方向には動かさずに前記トラニオン16の拘束位置の直上に位置させておくことが可能である。このことは、次のキャスク10の搬入の際の当該キャスク10の位置決めを容易にする。また、当該回動規制は、昇降軸62が支持位置へ下降する際に当該昇降軸62が架台20のねじ孔26にねじ込まれることを確実に可能にする。
【0056】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような実施の形態を含む。
【0057】
(1)退避位置保持部について
前記昇降軸62を前記退避位置に保持するための退避位置保持部は、前記嵌合具64に限られない。例えば、第2の実施の形態として、図9及び図10に示すようなスペーサ69が用いられてもよい。
【0058】
このスペーサ69は、前記退避位置にある前記昇降軸62のうち前記拘束部材40よりも上側の位置において他の部分よりも径方向の外向きに突出する被支持突出部と、前記拘束部材40と、の間に介在することにより、当該退避位置からの当該昇降軸62の降下を阻止するものである。図に示される例では、前記昇降軸62の上端部62bに装着されるナット72が前記被支持突出部として利用され、このナット72の下面と前記拘束部材40の上面との間に前記スペーサ69が介設されている。
【0059】
図10に示されるように、前記スペーサ69は、前記嵌合具64の嵌合部材66と同様、一対の半割り部材69a,69bに分割され、その一方の端部同士がヒンジ67により回動可能すなわち開閉可能に連結され、他方の端部に突出部69cが形成されてこれらの突出部69cが締結具68により締結されることが可能である。前記ヒンジ67及び突出部69cは、前記スペーサ69が長い場合、図9に示すように当該スペーサ69の長手方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ設けられることが、望ましい。あるいは当該スペーサ69が長手方向について複数の部材に分割されてもよい。
【0060】
退避位置保持部は、あるいは、前記昇降軸62の適当な部位に形成された孔に差し込まれる固定ピンであってもよい。しかし、前記嵌合具64や前記スペーサ69は、昇降部材である昇降軸62に孔等の加工による当該昇降軸62の強度の低下を伴うことなく、当該昇降軸62を前記退避位置に保持することができる利点がある。
【0061】
前記退避位置保持部は、あるいは、適宜省略されることも可能である。
【0062】
(2)退避位置について
昇降部材の退避位置は、当該昇降部材の支持位置の下側に設定されてもよい。つまり、当該退避位置は、当該昇降部材が拘束部材から下方に離脱して当該昇降部材の上端の上側を容器突出部が通過することを許容する位置に設定されてもよい。例えば、架台の上面から拘束部材までの上下方向の距離が短く(つまり拘束部材の位置が低く)、これに比べて架台の厚みが大きい場合には、前記昇降部材の少なくとも一部が前記架台の内部に埋まる位置に前記退避位置が設定されてもよい。この場合、支持位置保持部は、前記架台の内部の退避位置から支持位置まで浮上した昇降部材を当該支持位置で保持するものであればよい。例えば、当該支持位置保持部は、前記嵌合具62と同様の嵌合具であって前記昇降部材のうち前記架台の上面よりも上側の特定部位と嵌合してその相対的な上下方向の変位を規制しながら前記架台の上面に載置されるものにより、構成されることが可能である。
【0063】
ただし、第1及び第2の実施の形態のように前記退避位置が前記支持位置よりも上側の位置である場合は、架台の内部の構造を複雑にすることなく、また拘束部材から昇降部材を離脱させることなく、拘束部材の上側の空間を利用して昇降部材を支持位置から退避させることができる利点がある。
【0064】
(3)左側及び右側固定装置以外の固定装置について
本発明において、左側及び右側固定装置以外の固定装置の要否は、収容容器の大きさや重量に応じて適宜決定されることができる。例えば、収容容器が比較的軽量で小さい場合、左側及び右側固定装置のみで当該収容容器の固定が行われてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 キャスク(収容容器)
12 周壁
16 トラニオン(容器突出部)
20 架台
22 載置面
26 ねじ孔(支持位置保持部)
31,35 左側固定装置
32,36 右側固定装置
33 入口側固定装置
34 奥側固定装置
40 拘束部材
47 支柱挿通孔
47a キー溝(回動規制部を構成)
48 昇降軸挿通孔
50 第1支持部
52 支柱
52a 支柱の下端部
52b 支柱の上端部(押付け機構を構成)
60 第2支持部
62 昇降軸
62a 昇降軸の下端部
62b 昇降軸の上端部(押付け機構を構成)
64 嵌合具
69 スペーサ
70 キー(回動規制部を構成)
72 ナット(押付け機構を構成)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10