(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393234
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 9/02 20060101AFI20180910BHJP
F16F 7/09 20060101ALI20180910BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20180910BHJP
F16F 9/34 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
F16F9/02
F16F7/09
F16F9/32 L
F16F9/34
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-100391(P2015-100391)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-217389(P2016-217389A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077241
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 稔
(72)【発明者】
【氏名】冨田 重光
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−088028(JP,A)
【文献】
特開2012−237407(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/024037(WO,A1)
【文献】
実開昭62−194940(JP,U)
【文献】
実開平05−044740(JP,U)
【文献】
特開2015−230017(JP,A)
【文献】
特開2016−011750(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/093548(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/09
F16F 9/02
F16F 9/32− 9/34
F16F 9/02
F16J 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを備えたピストンと、このピストンを納めるシリンダーとからなり、前記ピストンの移動又は相対的な移動により制動力を生じさせる薄型ダンパーであって、
前記シリンダーは、幅側壁部と厚さ側壁部とを備え前記ピストンの移動方向に直交する向きの断面形状を扁平とする薄型で、かつ、その開放側において前記幅側壁部間に亘って一対の幅側壁部間の距離を一定に維持する連結部を有しており、
前記ロッドは、前記連結部を通過させる前記移動方向に沿った長穴を備えると共に、
前記長穴の一端を、前記ピストンによって構成させてなる、ダンパー。
【請求項2】
前記連結部は、前記幅側壁部の一方の幅方向中程の位置と前記幅側壁部の他方の幅方向中程の位置とを連結させてなる、請求項1に記載のダンパー。
【請求項3】
前記連結部を、前記幅側壁部に設けた貫通穴に通されて端部にカシメ部を形成されたピン体によって構成させてなる、請求項1又は請求項2に記載のダンパー。
【請求項4】
前記連結部を、前記幅側壁部の一方に設けた割り溝によって区分されたこの幅側壁部の一部よりなると共に、屈曲可能な薄肉基部と、前記幅側壁部の他方に形成させた被係合部に係合可能な自由端とを備えた可動片によって構成させてなる、請求項1又は請求項2に記載のダンパー。
【請求項5】
前記シリンダーは、前記幅側壁部の一方を含む第一部分と前記幅側壁部の他方を含む第二部分とを組み合わせて構成されるようになっていると共に、
前記第一部分と前記第二部分とにそれぞれ、前記組み合わせにより突き合わされて前記連結部となる突出部を形成させてなる、請求項1又は請求項2に記載のダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ピストンの作動により制動力を生じさせるダンパーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ロッド内端をピストン部とした円柱状のロッド体と、このロッド体を往復動可能に納める円筒状のシリンダー体とからなるエアダンパー装置において、ロッド体にこのロッド体をその直径方向において貫通する溝部を設けると共に、シリンダー体の開放端側にこの溝部に通されるピン体を設けさせて、シリンダー体からのロッド体の脱落を阻止するようにしたものがある(特許文献1、
図7、
図8参照)。
【0003】
この特許文献1のものでは、ピン体は、その両端をシリンダー体に設けた貫通孔に圧着させてシリンダー体に組み合わされており、ピン体はロッド体の脱落を阻止する機能以上の機能は持っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−237407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のダンパーを、適切に薄型化できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ダンパーを、ロッドを備えたピストンと、このピストンを納めるシリンダーとからなり、前記ピストンの移動又は相対的な移動により制動力を生じさせる
薄型ダンパーであって、
前記シリンダーは、幅側壁部と厚さ側壁部とを備え前記ピストンの移動方向に直交する向きの断面形状を扁平とする
薄型で、かつ、その開放側において前記幅側壁部間に
亘って一対の幅側壁部間の距離を一定に維持する連結部を有してなるものとした。
【0007】
かかる構成によれば、第一に前記シリンダーの開放側の剛性を可及的に向上させることができ、第二に一対の前記幅側壁部間の距離をダンパーが所期の性能を常時発揮するように一定に維持させることができ、さらに、外力や温度変化などの環境変化によるシリンダーの変形を抑止することができる。
【0008】
前記ロッドは、前記連結部を通過させる前記移動方向に沿った長穴を備えたものとしておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。かかる長穴によってシリンダーからのピストンの抜け出しを阻止し、また、ピストン側の移動を円滑なさしめることができる。
【0009】
この場合、さらに、前記長穴の一端を、前記ピストンによって構成させることが、この発明の好ましい態様の一つとされる。このようにした場合、シリンダー内におけるピストンの移動距離を最大化することができる。
【0010】
また、前記連結部は、前記幅側壁部の一方の幅方向中程の位置と前記幅側壁部の他方の幅方向中程の位置とを連結させてなるものとすることが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【0012】
前記連結部を、前記幅側壁部に設けた貫通穴に通されて端部にカシメ部を形成されたピン体によって構成させておくこともある。
【0013】
また、前記連結部を、前記幅側壁部の一方に設けた割り溝によって区分されたこの幅側壁部の一部よりなると共に、屈曲可能な薄肉基部と、前記幅側壁部の他方に形成させた被係合部に係合可能な自由端とを備えた可動片によって構成させておくこともある。
【0014】
また、前記シリンダーを、前記幅側壁部の一方を含む第一部分と前記幅側壁部の他方を含む第二部分とを組み合わせて構成されるようにすると共に、前記第一部分と前記第二部分とにそれぞれ、前記組み合わせにより突き合わされて前記連結部となる突出部を形成させておくこともある。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、前記連結部により前記シリンダーの開放側の剛性及び一対の幅側壁部間の距離を一定に維持することができ、さらに、外力や温度変化などの環境変化によるシリンダーの変形を抑止することができ、これによりダンパーを適切に薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー(第一例)の斜視図である。
【
図3】
図3は、前記第一例を構成するピストン及びロッドの斜視図である。
【
図5】
図5は、前記第一例の要部拡大断面構成図であり、ピストンの往動時の状態を示している。
【
図6】
図6は、前記第一例の要部拡大断面構成図であり、ピストンの往動時の状態を示している。
【
図7】
図7は、前記第一例の要部拡大断面構成図であり、ピストンの復動時の状態を示している。
【
図8】
図8は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー(第二例)を構成するシリンダーの斜視構成図である。
【
図9】
図9は、前記第二例を構成するシリンダーの要部断面図である。
【
図11】
図11は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー(第三例)を構成するシリンダーの端面構成図であり、これを構成する第一部分と第二部分とを組み合わせる前の状態を示している。
【
図13】
図13は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー(第四例/
参考例)を構成するシリンダーの要部斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1〜
図13に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるダンパーは、これを構成するピストンPの移動又は相対的な移動に制動力を生じさせるものであって、典型的には、制動対象となる可動部など(図示は省略する)を備える物品に組み合わされて、かかる制動対象の移動に対し前記制動力を作用させてかかる制動対象の移動を、ゆっくりとしたもの、高級感をもったもの、節度をもったもの、ないしは、突飛なものにしないように、するために用いられるものである。
【0018】
かかるダンパーは、ロッド1を備えたピストンPと、このピストンPを納めるシリンダーSとからなる。典型的には、かかるダンパーは、ロッド1及びシリンダーSのいずれか一方を前記制動対象側に直接あるいは間接に連係させ、これらの他方をかかる制動対象を移動可能に支持する側に直接あるいは間接に連係させることで、かかる制動対象を備えた物品に組み合わされる。
【0019】
前記シリンダーSは、一端を開放させ、かつ、他端を閉塞させた筒状を呈している。図示は省略するが、シリンダーSは両端を共に開放させた筒状体の一端を別部品によって閉塞させた構成としても構わない。かかるシリンダーSは、厚さを顕著に小さくした扁平筒状を呈している。より具体的には、かかるシリンダーSは、幅側壁部7と厚さ側壁部8とを備え前記ピストンPの移動方向xに直交する向きの断面形状、すなわち、その筒軸に直交する断面形状を、実質的に扁平の四角形状としている。
【0020】
前記厚さ側壁部8は、シリンダーSの外側を湾曲外側とする湾曲を持った形状となっている。
【0021】
シリンダーSの閉塞端9の外側には、前記連係のためのブラケット部10が形成されている。
【0022】
また、かかるシリンダーSは、その開放側において前記幅側壁部7間に亘る連結部12を有している。これにより、前記シリンダーSは扁平筒状であるが、第一にその開放側の剛性を可及的に向上させることができ、第二に一対の前記幅側壁部7間の距離をダンパーが所期の性能を常時発揮するように一定に維持させることができる。
【0023】
図1〜
図7に示される第一例、
図8〜
図10に示される第二例、
図11及び
図12に示される第三例では、前記連結部12は、前記幅側壁部7の一方の幅方向中程の位置と前記幅側壁部7の他方の幅方向中程の位置とを連結させたものとなっている。特に、前記第一例、第二例、第四例にあっては、連結部12はシリンダーSの一対の前記幅側壁部7、7間の距離を拡げる向きの変形の抑止機能も有している。
【0024】
前記第一例では、前記連結部12は、前記幅側壁部7に設けた貫通穴7aに通されて端部にカシメ部120cを形成されたピン体120によって構成されている。第一例では、ピン体120は、円板状の頭部120aと、円柱状の軸部120bとを備えている。一対の前記幅側壁部7、7にはそれぞれ、前記軸部120bは通過させるが頭部120aは通過させない大きさの貫通穴7aが形成されている。この第一例では、前記ロッド1には、このように構成される連結部12の脚部を通過させる前記ピストンPの移動方向xに沿った長穴1bが形成されている。この第一例にあっては、シリンダーS内に前記ピストンP及びロッド1の少なくともピストンP側に位置される箇所を納め、一対の前記幅側壁部7、7の貫通穴7a及び前記長穴1bに前記軸部120bを挿通させた状態から、幅側壁部7の他方の貫通穴から突き出された前記軸部120bの端部をカシメて貫通穴7aよりも太径のカシメ部120cを形成させることで、シリンダーSに連結部12を形成させている。
【0025】
前記第二例では、前記連結部12は、前記幅側壁部7の一方に設けた割り溝7bによって区分されたこの幅側壁部7の一部よりなると共に、屈曲可能な薄肉基部121aと、前記幅側壁部7の他方に形成させた被係合部7eに係合可能な自由端121bとを備えた可動片121によって構成されている。可動片121は、前記シリンダーSの筒軸に沿った一対の長穴状の第一貫通穴7c、7cと、この一対の第一貫通穴7c、7cにおける前記閉塞端9側に位置される穴端間に亘る第二貫通穴7dとによって区分された前記幅側壁部7の一方の一部によって構成されている。前記一対の第一貫通穴7c、7cにおける前記シリンダーSの開放端11側に位置される穴端間には前記幅側壁部7の外面に溝が形成されており、これにより、可動片121は、前記シリンダーSの開放端11側を薄肉基部121aとしている。前記被係合部7eは、前記可動片121の薄肉基部121aの直下位置において前記幅側壁部7の他方に設けた前記可動片121の自由端121bを受入可能な貫通穴によって構成されている。この第二例にあっても、前記ロッド1には、このように構成される連結部12の可動片121を通過させる前記ピストンPの移動方向xに沿った長穴1bが形成されている。この第二例にあっては、シリンダーS内に前記ピストンP及びロッド1の少なくともピストンP側に位置される箇所を納めた状態から、前記薄肉基部121aを弾性変形させながら可動片121をシリンダーSの内方に向けて押し込み操作すると可動片121の自由端121bがその端末121cをやや弾性変形させながら前記被係合部7eに入り込みその後の弾性復帰によりこの被係合部7eの入り口側の段差部7fに係合し、これによってシリンダーSに連結部12を形成させるようになっている。
【0026】
また、前記第三例では、前記シリンダーSは、前記幅側壁部7の一方を含む第一部分S’と前記幅側壁部7の他方を含む第二部分S”とを組み合わせて構成されるようになっている。この第三例では、前記シリンダーSは、前記厚さ側壁部8の厚さ方向中程の位置において、前記第一部分S’と前記第二部分S”とに分割されている。第一部部と第二部分S”とは、前記厚さ側壁部8の一方に形成された薄肉部Saを介して連接され、この薄肉部Saを弾性変形させながら第一部分S’の幅側壁部7と第二部分S”の幅側壁部7とが平行となるようにとじ合わせると前記薄肉部Saと反対の側において突き合わされて前記厚さ側壁部8の他方が形成されるようになっている。この突き合わされる箇所Sbにおいて第一部部と第二部分S”とを気密状態に溶着する。そして、この第三例にあっては、前記第一部分S’と前記第二部分S”とにそれぞれ、前記組み合わせにより突き合わされて前記連結部12となる突出部122が形成されている。前記第一部分S’及び第二部分S”の突出部12はそれぞれ、その先端となる上段122aと下段122bと両者間の段差122cとを持った階段状をなし、前記とじ合わせにより第一部分S’の上段122aが第二部分S”の下段122bに接し、第一部分S’の下段122bが第二部分S”の上段122aに接し、柱状の連結部12が形成されるようになっている。この第三例にあっても、前記ロッド1には、このように構成される連結部12を通過させる前記ピストンPの移動方向xに沿った長穴1bが形成されている(
図12)。この第三例にあっては、シリンダーS内に前記ピストンP及びロッド1の少なくともピストンP側に位置される箇所を納め、かつ、前記突出部が前記長穴1bを通過するように前記とじ合わせをなすことにより、シリンダーSに連結部12を形成させるようになっている。
【0027】
これら第一例〜第三例にあっては、前記連結部12によってシリンダーSとピストンP側との組み合わせ状態を維持できると共に、ピストンP側の移動をガイドするようになっている。
【0028】
一方、
図13に示される第四例にあっては、前記連結部12は二箇所に設けられており、この二箇所の前記連結部12、12によって前記ロッド1を挟むようにしている。この第四例にあっては、前記連結部12は、シリンダーSの幅方向中程の位置を挟んだ両側にそれぞれ前記連結部12が設けられている。そして、この二箇所の連結部12の間の距離がロッド1の幅寸法と実質的に同一で後述のピストンPのその移動方向xに直交する向きの寸法よりも小さくなるようにしてある。図示の例では、この第四例の連結部12は前記第一例の連結部12と同様のピン体120によって構成されている。この第四例にあっては、かかる二箇所の連結部12、12により、第一にシリンダーSの開放側の剛性をより向上させることができ、第二に一対の前記幅側壁部7、7間の距離をダンパーが所期の性能を常時発揮するようにより強固に一定に維持させることができ、第三に前記連結部12によってシリンダーSとピストンP側との組み合わせ状態を維持できると共に、ピストンP側の移動をガイドすることができる。この第四例にあっては、前記ロッド1には第一例〜第三例における長穴1bは必要とされない。なお、図示は省略するが、前記連結部12を、シリンダーSの幅方向中程の位置を挟んだ片側にのみ設け、一箇所の連結部12によってピストンPの組み合わせ状態を維持するようにすることもできる。
【0029】
なお、前記第二例〜第四例のロッド1及びピストンPの構成は、第一例と同一又は実質的に同一であるので、以下では第一例を示す
図1〜
図7に基づいてその説明をすることとする。
【0030】
前記ロッド1は、前記ピストンPの移動方向に長い棒状をなしている。ロッド1における前記シリンダーS外に位置される外端には前記連係のためのブラケット部1aが形成されている。
【0031】
また、前記ロッド1は、前記連結部12を通過させる前記移動方向に沿った長穴1bを備えている。また、この実施の形態にあっては、前記長穴1bの一端を、前記ピストンPによって構成させている。具体的には、この実施の形態にあっては、前記長穴1bの一端となるシリンダーS内に常時位置される長穴1bの閉塞された穴端の一方は、前記ピストンPの一部を構成する後述の第二フランジ5内に位置されている。これにより、この実施の形態にあっては、かかる長穴1bによってシリンダーSからのピストンPの抜け出しを阻止し、また、ピストンP側の移動を円滑なさしめると共に、シリンダーS内におけるピストンPの移動距離を最大化するようになっている。
【0032】
前記ピストンPは、前記シリンダーSの内壁に対するシール部材2と、前記ピストンPに対して摺動可能に備えられると共に前記シリンダーSの内壁に所定の摩擦力をもって接するスライダ3とを備えている。
【0033】
図示の例では、前記ピストンPは、シリンダーSの閉塞端9に向き合う第一フランジ4と、この第一フランジ4との間で前記シール部材2とスライダ3を保持する第二フランジ5とを備えている。第二フランジ5は、第一フランジ4の後方、つまり、シリンダーSの開放端11側に位置される。第一フランジ4及び第二フランジ5はいずれも、ピストンPの移動方向x、つまり、シリンダーSの筒軸に沿った方向に直交する向きの断面外郭形状を、同じ向きでのシリンダーSの断面内郭形状と、相補となる形状としており、これによりピストンPはシリンダーSの内壁に案内されてシリンダーSの筒軸に沿った方向に往復動するようになっている。
【0034】
より具体的には、第二フランジ5は前記ロッド1の内端に形成されている。第一フランジ4は前記ロッド1と別体のヘッドパーツ6に形成されている。ヘッドパーツ6は、板面をシリンダーSの幅側壁部7に向き合わせた板状の胴部6aを有している。この胴部6aにおけるシリンダーSの閉塞端9に向けられた側にこの胴部6aを巡る各位置においてこの胴部6aの外面よりもフランジ端を外側に位置させた前記第一フランジ4が一体的に形成されている。また、この胴部6aにおけるシリンダーSの開放端11に向けられた端部であって、かかるシリンダーSの筒軸上に位置される箇所には、頭部6cと頸部6dとからなり、頸部6dを介して胴部6aに一体化された雄ジョイント部6bが形成されている。第二フランジ5における前記シリンダーSの筒軸上に位置される箇所には、前記雄ジョイント部6bの頭部6cを受け入れ保持する第一凹所5bと、前記雄ジョイント部6bの頸部6cを受け入れ保持すると共に第二フランジ5におけるシリンダーSの閉塞端9に向けられた端部において外方に開放された第二凹所5cとからなる雌ジョイント部5aが形成されている。この実施の形態にあっては、それぞれ、扁平のリング状をなす前記シール部材2とスライダ3をヘッドパーツ6の胴部6aを取り巻くようにヘッドパーツ6と組み合わせた状態から、ヘッドパーツ6の雄ジョイント部6bを第二フランジ5の雌ジョイント部5aにはめ込むことで、かかる第一フランジ4と第二フランジ5との間にシール部材2とスライダ3を保持させてなるピストンPが形成されるようになっている。
【0035】
シール部材2は、典型的には、ゴムやゴム状弾性を備えたプラスチックから構成され、扁平なリング状を呈している。前記ヘッドパーツ6の胴部6aを前記雄ジョイント部6bの側からシール部材2の内側に挿通することで、かかるヘッドパーツ6とシール部材2とが組み合わされる。図示の例では、シール部材2は、前記第一フランジ4に対する前端面2aと、ヘッドパーツ6の外面に対する内面部2bと、シリンダーSの内壁に対する外面部2cとを有している。また、シール部材2におけるシリンダーSの開放端11側に向けられた側には、前記内面部2bと外面部2cとの間に周回溝2dが形成されている。この周回溝2dを挟んだ外面側は、シール部材2の全周方向に亘ってシリンダーSの開放端11側に向けて延出されており、これによりシール部材2はスカート状部2eを備えており、ピストンPの移動方向xにおいてシール部材2の外面部2cは内面部2bよりも寸法を大きくしている。シール部材2の外面部2cは、前記前端面2aからスカート状部2eの端末2fに向かうに連れて次第にシール部材2を太くさせる向きに傾斜している。また、シール部材2の前端面2aには、周回突条2gが形成されている。
【0036】
スライダ3は、典型的には、プラスチックから構成され、扁平なリング状を呈している。前記のようにヘッドパーツ6とシール部材2とを組み合わせた状態から、ヘッドパーツ6の胴部6aを前記雄ジョイント部6bの側からスライダ3の内側に挿通することで、かかるヘッドパーツ6とスライダ3とが組み合わされる。図示の例では、スライダ3は、ピストンPの移動方向xに直交する断面内郭形状を同じ向きでの前記ヘッドパーツ6の胴部6aの断面外郭形状と相補となる形状とした短寸筒状のベース3aと、このベース3aの外側に一体に形成されたリップ3dとを備えてなる。リップ3dは、図示の例では、ベース3aを取り巻くように形成された周回ひれ状体となっている。リップ3dは、前記ベース3aにおけるシール部材2側に位置される前端3bとシリンダーSの開放端11側に位置される後端3cとの間において、このベース3aの外面部に一体化された基部3eを持つと共に、この基部3eからシリンダーSの開放端11側に向けて延び出す延出部3fを備えている。基部3eと延出部3fとの間には肩部3hが形成されている。延出部3fは、前記肩部3hからその端末3gに向かうに連れて次第にベース3aとの距離を大きくする傾斜を持っている。
【0037】
前記第一フランジ4と第二フランジ5との間において、シール部材2とスライダ3は、共にピストンPの移動方向xに沿った若干の移動を許容された状態で保持されている。シール部材2の外面部2cはその全周に亘ってシリンダーSの内壁に接し、スライダ3の延出部3fもその全周に亘ってその端末3g側でシリンダーSの内壁に接するようになっている。また、スライダ3のベース3aの前端3bと前記リップ3dの基部3eとの間にある箇所はシール部材2のスカート状部2eの内側に位置し、また、スライダ3のリップ3dの肩部3hはシール部材2のスカート状部2eの端末2fに向き合うようになっている(
図4〜
図6)。
【0038】
そして、この実施の形態にあっては、前記制動力発生時に、前記スライダ3が前記シール部材2に圧接して、前記シール部材2における前記シリンダーSの内壁に接する部分が前記シリンダーSの外側に向けて変形するようになっている。
【0039】
図示の例では、ピストンPがシリンダーSの閉塞端9から離れる向きに往動するときピストンPと閉塞端9との間に形成されるチャンバーCが負圧となり、これにより前記制動力の一部となる圧力変化による抵抗が生じるようになっている(
図4、
図5)。また、このとき、前記スライダ3がシール部材2を前記のように変形させてシール部材2とシリンダーSとの間の摩擦力を増大させ、これにより前記制動力の一部となる摩擦抵抗が生じるようになっている(
図4、
図5)。
【0040】
図示の例では、ピストンPが往動されるときは、スライダ3は前記リップ3dの形状によりこの往動方向に移動し難くなるため、スライダ3の肩部3hがシール部材2のスカート状部2eの端末2fに圧接され、シール部材2の前端面2aに形成された周回突条2gが第一フランジ4に密着されてこの前端面2aと第一フランジ4との間がシールされると共に、スカート状部2eが外側に向けて変形されてシール部材2の外面部2cとシリンダーSの内壁との間がシールされる(
図4、
図5)。これにより、図示の例では、ピストンPが往動されるときは、チャンバーCに対する通気は、ピストンPを構成するヘッドパーツ6におけるシリンダーSの筒軸上に位置される箇所において、第一フランジ4の縁部から胴部6aにおけるシリンダーSの開放端11に向けられた端部に亘って形成された溝6e(
図2、
図5参照)により形成される通気路に限定され、前記圧力変化による抵抗が生じるようになっている。また、シール部材2のスカート状部2eの前記外側に向けた変形により、前記摩擦抵抗が生じるようになっている。すなわち、前記スライダ3は、前記シール部材2に対し前記ロッド1側から圧接される圧接部を備えており、図示の例では前記肩部3hがこの圧接部として機能するようになっている。
【0041】
この実施の形態にあって、前記ピストンPの作動速度に応じて、前記シール部材2の変形量が増加するようになる。したがって、この実施の形態にかかるダンパーは、制動対象となる制動対象の移動速度に応じて制動力を変化させる速度応答型ないしは荷重応答型のダンパーとなる。
【0042】
この実施の形態にかかるダンパーでは、前記制動力は前記圧力変化による抵抗と前記摩擦抵抗とから賄われることから、前記制動対象の移動をその全過程において適正に制御することができる。すなわち、この実施の形態にかかるダンパーによれば、前記制動対象が移動の過程で停止したり、さらには移動の途中から移動前の位置に向けて勝手に復動を始めたりするなどの事態が生じることが可及的に防止できる。また、この実施の形態にかかるダンパーは、前記シリンダーSの断面積を小さくしても所望の制動力を発生し易く、小型化、薄型化し易い特長を有している。
【0043】
一方、図示の例では、ピストンPがシリンダーSの閉塞端9に近づく向きに復動するときは、前記チャンバーCが正圧になり難く、かつ、このときは前記摩擦抵抗も小さくなるようになっている(
図7)。図示の例では、ピストンPが複動されるときは、シール部材2とスライダ3は第二フランジ5側に移動して第一フランジ4とシール部材2の前端面2aとの間に隙間yが形成されると共に、前記リップ3dの形状によりスライダ3はピストンPの復動方向に移動しやすくなるためスライダ3はシール部材2に圧接されることなく、シール部材2とシリンダーSの内壁との間の摩擦抵抗も増加されない。チャンバーCに対しては、前記溝6eにより形成される通気路に加え、第一フランジ4とシール部材2の前端面2aとの間の隙間yを通じても連絡がなされる。また、図示の例では、シール部材2の外面に、ピストンPの移動方向xに沿った溝2hが形成されており、この溝2hはチャンバーC側の溝端を開放させ、シリンダーSの開放端11側の溝端を閉塞させているが、ピストンPの復動時はチャンバーC側の圧力増加によりこの溝2hの形成位置でシール部材2の一部が内向きに変形し、この溝2hを通じてもチャンバーCから排気がなされるようになっている。これにより、図示の例では、ピストンPが復動するときはダンパーは格別の制動力を生じないようになっている。
【0044】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施形態を含むものである。
【符号の説明】
【0045】
P ピストンP
H ハウジング
1 ロッド1
7 幅側壁部
8 厚さ側壁部
x 移動方向
12 連結部