特許第6393235号(P6393235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6393235接触分解ガソリン中のアニリン類の吸着除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393235
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】接触分解ガソリン中のアニリン類の吸着除去方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 25/02 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   C10G25/02
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-101638(P2015-101638)
(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-807(P2016-807A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-103967(P2014-103967)
(32)【優先日】2014年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(74)【代理人】
【識別番号】100191330
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】松下 康一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康嗣
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102559252(CN,A)
【文献】 特開昭62−275191(JP,A)
【文献】 特開2011−195701(JP,A)
【文献】 特開昭59−206486(JP,A)
【文献】 特開2011−207723(JP,A)
【文献】 特開2005−330306(JP,A)
【文献】 特開平01−207389(JP,A)
【文献】 特開2003−226519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±10cm−1)の面積Iに対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±10cm−1)の面積Iの比(I/I)が1.0以上の固体酸を吸着材として使用することを特徴とする接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法。
【請求項2】
硫黄とアルミニウムを含有する吸着材を用いることを特徴とする請求項1に記載のアニリン類の除去方法。
【請求項3】
前記吸着材が活性白土または硫酸根アルミナであることを特徴とする請求項1または2に記載のアニリン類の除去方法。
【請求項4】
チタン含有ゼオライトを吸着材として用いることを特徴とする接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法。
【請求項5】
ゼオライトがフォージャサイト型ゼオライトであることを特徴とする請求項4に記載のアニリン類の除去方法。
【請求項6】
含有されるチタンの量は吸着材全質量に対して0.3〜3.0質量%であることを特徴とする請求項4または5に記載のアニリン類の除去方法。
【請求項7】
前記吸着材の比表面積が150m/g以上、細孔容積が0.35ml/g以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアニリン類の除去方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によるアニリン類を除去する工程を有することを特徴とする接触改質原料油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法に関する。詳細には、特定の吸着材を使用して、接触分解ガソリン中のアニリン類の除去を行うことにより、接触改質するのに好適な原料油を効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン、トルエン、及びキシレン(以下、BTX)は、ポリマー及び他の石油化学合成のために非常に重要な石油化学原料である。BTXに対する世界的な需要は常に成長している。このBTXは、主としてナフサ留分のスチームクラッキングや接触改質によって製造されている。
【0003】
ナフサの接触改質では、連続触媒再生装置を装備した接触改質装置が広く採用されている。この連続触媒再生式の接触改質装置は、常にフレッシュな触媒(再生触媒)を改質反応器に供給し、順次複数の反応器に流して劣化した触媒を触媒再生系に送り、該触媒再生系においても再生を連続的に行い、活性を回復した触媒を再び改質反応器に供給するものである。このとき、改質触媒は、活性を調節するために触媒再生中に塩素化合物で処理される。塩素化合物の塩素分は再生触媒とともに改質反応器に入る。水素雰囲気かつ高温の改質反応器内で、塩素分は、ナフサフィードなどに不純物として同伴されるか、あるいは改質反応器の雰囲気下に生成された窒素化合物と塩(塩化アンモニウム)を生成し、接触改質油とともに反応器から流出する。
【0004】
塩化アンモニウムは、高温下では固体にならないが、冷却されて120℃以下の温度で固化して反応器に後続する装置や配管において析出してトラブルを引き起こす。甚だしい場合には、当該機器の運転、更にはプロセス全体の運転を一時停止し、塩析出物を除去することも必要になる。これは、通常、1年以上の連続運転をすることが前提である石油精製や石油化学などの装置産業にとって大きな損失となる。そのため、生成した塩化アンモニウムを除去する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、そもそも塩化アンモニウムを生成させないために、窒素化合物をあらかじめ低減させる方法が有効である。
【0005】
一方、重質な石油留分を接触分解することによって製造される接触分解ガソリンは、他のナフサ留分に比べ経済的に製造でき、ナフテン分やアロマ分の割合も高いため、接触改質原料として魅力的である。しかし一方で、接触分解ガソリンには硫黄分の他、窒素分が含まれるため、上記の塩化アンモニウムを生成する問題があり、接触改質原料としては好適に使用することができなかった。
【0006】
そのため、接触分解ガソリンを接触改質原料として用いる場合には、接触分解ガソリン中に含まれる硫黄分、窒素分を接触改質原料として受容できるレベルまで除去する必要がある。接触分解ガソリンの一般的な精製処理方法としては、水素化精製方法が知られている(特許文献2)。しかし、当該方法では、窒素分の低減も十分でなく、接触分解ガソリン中のオレフィン分と反応で生成した硫化水素の再結合により有機硫黄化合物(メルカプタン)が生成してしまうことから、接触改質原料として製造するには効率的ではなかった。すなわち、接触分解ガソリンを接触改質原料として好適なレベルまで精製する技術は未だ確立されていない。
【0007】
接触分解ガソリン中の窒素化合物については、アニリン類、ピリジン類などが挙げられるが、BTXすなわち炭素数6〜8の沸点範囲に相当する留分に限定すれば、アニリン類がほとんどである。したがって、アニリン類を選択的に、かつ効率的に除去できる方法が望まれていた。具体的には、接触改質装置での塩化アンモニウムの生成を起こさせないようにするために、接触分解ガソリン中に含まれる数〜数十質量ppmのアニリン類を1質量ppm以下に低減させる必要がある。従来、このような微量のアニリン類を除去する技術は、アニリン類の除去効率が十分ではないため、接触分解ガソリンの使用量が制限されたり、より高頻度でメンテナンスを行うという課題があった。
【0008】
上記水素化精製法によるアニリン類の低減方法の他に、吸着材を使用する方法も提案されている(特許文献3)。しかし、この場合、主に灯油留分を対象にしたものであるが、灯油中にはオレフィン分は含まれない。一般的に、極性分子である窒素化合物とオレフィン分子が共存した場合に、吸着阻害により、窒素化合物の吸着量および吸着速度は低下することが予想される。特に、接触分解ガソリン中の窒素化合物は数〜数十質量ppmであるのに対して、オレフィン分は数十質量%含まれており、1000倍以上多く存在しているため、圧倒的にオレフィン分の吸着が早いと予想されるため、吸着法により接触分解ガソリン中の窒素化合物を適切に低減する方法は報告されていなかった。ちなみに、オレフィン分と同様に、アロマ分についても、窒素化合物に対する吸着阻害の懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−238971号公報
【特許文献2】特開2011−195701号公報
【特許文献3】特許第4610291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、接触分解ガソリン中に含まれる微量のアニリン類を高い効率で除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、接触分解ガソリンの処理について鋭意研究した結果、特定の物性を有する酸性吸着材を用いることにより、接触分解ガソリン中に含まれる微量のアニリン類を、温和な条件で効率的に除去できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±10cm−1)の面積Iに対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±10cm−1)の面積Iの比(I/I)が1.0以上の固体酸を吸着材として使用することを特徴とする接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法である。
【0013】
また、本発明は、硫黄とアルミニウムを含有する吸着材を用いることを特徴とする接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法である。
【0014】
また、本発明は、前記吸着材が活性白土または硫酸根アルミナであることを特徴とする前記記載のアニリン類の除去方法である。
【0015】
また、本発明は、チタン含有ゼオライトを吸着材として用いることを特徴とする接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法である。
【0016】
また、本発明は、ゼオライトがフォージャサイト型ゼオライトであることを特徴とする前記記載のアニリン類の除去方法である。
【0017】
また、本発明は、含有されるチタンの量は吸着材全質量に対して0.3〜3.0質量%であることを特徴とする前記記載のアニリン類の除去方法である。
【0018】
また、本発明は、前記吸着材の比表面積が150m/g以上、細孔容積が0.35ml/g以上であることを特徴とする前記記載のアニリン類の除去方法である。
【0019】
さらに、本発明は、前記記載の方法によるアニリン類を除去する工程を有することを特徴とする接触改質原料油の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特定の吸着材を用いることにより接触分解ガソリン中に含まれる数〜数十質量ppmという微量のアニリン類を効率的に吸着除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳述する。
【0022】
本発明における接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法は、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±10cm−1)の面積Iに対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±10cm−1)の面積Iの比(I/I)が1.0以上の固体酸を吸着材として使用することを特徴する。
【0023】
上記固体酸のI/Iは、1.0以上であり、好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上である。上記比率が1.0未満の場合、すなわちブレンステッド酸に対するルイス酸の比率が高いと、π結合を起こしやすいルイス酸点により、芳香環やオレフィンに強吸着してしまい、目的とするアニリン類の吸着を阻害してしまうため、好ましくない。一方、ブレンステッド酸点はアニリン類の窒素原子との相互作用により、アニリン類の選択的吸着するため好ましい。
【0024】
ルイス酸量とブレンステッド酸量の割合は、一般に、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)により相対比較することができる。ルイス酸点に起因する吸光度のピークは1450±10cm−1に、ブレンステッド酸点に起因する吸光度のピークは1540±10cm−1に、ルイス酸とブレンステッド酸との両方に起因する吸光度のピークは1490±10cm−1に検出される。従って、ルイス酸点(1450±10cm−1)の面積をI、ブレンステッド酸点(1540±10cm−1)の面積をIとすると、ルイス酸量に対するブレンステッド酸量の比I/Iを相対比較することで、酸性質の違いが分かる。
【0025】
本発明における接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法は、硫黄とアルミニウムを含有する吸着材、あるいはチタン(Ti)を含有するゼオライトを吸着材として用いることを特徴とする。
【0026】
まず、硫黄とアルミニウムを含有する吸着材について以下説明する。
硫黄とアルミニウムを含有する吸着材としては、活性白土および硫酸根アルミナから選ばれる固体酸性を有する吸着材が好ましい。
活性白土及び硫酸根アルミナは、極性物質に対する吸着力が強く、そのため、アニリン類を強固に吸着し、接触分解ガソリンからアニリン類をより効率的に除去できる。
【0027】
硫酸根アルミナは、酸化アルミニウム(アルミナ)に硫酸根を形成する成分を含有させた後、焼成することにより製造することができる。
【0028】
アルミナは、結晶構造が異なる多数の種類があり、本発明においてはいずれの結晶構造のアルミナも使用可能であるが、スピネル又はスピネル類似構造のγ−アルミナを用いることが好ましい。特に吸着活性を向上させるために硫酸根を担持させる場合、結晶性の無い活性アルミナでは、固体超強酸性が発現しにくいが、γ−アルミナは硫酸根を強力に取り込み、良好な固体超強酸性を発現する。活性アルミナで固体超強酸性が発現しにくい原因は不明であるが、表面が硫酸により溶解することが考えられる。また、α−アルミナなどでは、比表面積が低く、吸着材としての性能が低い。
【0029】
吸着材としては比表面積が大きいことが高い吸着性能を得るためには重要であることから、用いるアルミナとしては、比表面積が200m/g以上、さらには300m/g以上のγ−アルミナが特に好ましい。
また、吸着材の割れを生じないために、破壊強度は3.0kg/ペレット以上であることが好ましく、3.5kg/ペレット以上がより好ましい。
なお、本発明でいう破壊強度とは、木屋式錠剤破壊強度測定器(富山産業株式会社)等の圧縮強度測定器により測定されるものをいう。
【0030】
本発明において用いるアルミナとしては、本発明の効果が得られる範囲において、アルミニウム以外の他の金属成分を含んでいてもよい。他の金属としては、ジルコニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、カリウム、錫、ガリウムなどが挙げられる。例えば、アルミニウムと上記他の金属との複合酸化物及び/又は含水複合酸化物でもよいし、アルミナと上記他の金属の単独の酸化物及び/又は含水酸化物との混合物でもよい。
本発明においては、アルミナ単独のものに限らず、上記したようなアルミナと他の金属酸化物との複合酸化物等についても、これらを総称してアルミナという。
【0031】
本発明でいうアルミナにおけるアルミニウム酸化物と他の金属酸化物との含有割合については、アルミニウム酸化物の含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が特に好ましく、50質量%以上が最も好ましい。アルミニウム酸化物の含有量が10質量%以上で所望の吸着性能が得られ、また安価であることから、アルミニウム酸化物の含有量が高いほど経済的な面からも好ましい。
【0032】
硫酸根を含有するアルミナ(硫酸根アルミナ)の調製方法は、アルミナに硫酸を含浸して焼成する含浸法、アルミニウム水酸化物及び/又は水和酸化物からなるアルミナ源と硫酸アンモニウムなどからなる固体の硫酸源とを混合して焼成する混練法でも構わない。さらに硫酸根アルミナは、アルミン酸ソーダと硫酸アルミニウムとの中和沈殿及び洗浄により、水酸化アルミニウム(擬ベーマイト)を調製する際に、硫黄分を残存させることにより得ることもできる。中でも、アルミナに、特にγ−アルミナに硫酸水溶液または硫酸アンモニウムを含浸する含浸法が簡便な上に安定した性能が得られるので好ましい。
なお、上記のようにアルミナの製造過程において硫黄分が残留している場合は、含浸法や混練法などにより更に硫酸源を添加することなくそのまま使用しても良い。硫酸源を添加すればなお好ましい。
【0033】
含浸法の場合、アルミナは含浸前に乾燥することが好ましい。乾燥後に吸水率を測定し、吸水率に対して一定の硫酸水溶液を含浸すると、一定の性状の硫酸根アルミナを再現性良く調製できる。また、吸水率と同程度の体積の硫酸水溶液を含浸すると、硫酸根の付着ムラを少なくすることができる。
【0034】
含浸する硫酸水溶液の濃度は、0.01〜6mol/Lが好ましい。6mol/Lを超える高濃度の硫酸水溶液を用いると、焼成後に残存する硫酸根の量が過剰となる可能性があり、脱離しやすい不安定な硫酸根が形成される。0.01mol/L未満では、所望の吸着性能が得られないので硫酸根を担持する意味がない。
【0035】
以上のように調製した硫酸根アルミナを焼成して固体酸とする。この固体酸は接触分解ガソリン中のアニリン類の吸着除去剤として、好適に使用することができる。焼成は500℃以上の温度で行い、好ましくは600〜980℃、より好ましくは650〜900℃、さらに好ましくは700〜800℃で行う。500℃未満では硫酸が弱く吸着した不安定な硫酸根が残存するために、吸着性能が高くならない。一方、980℃よりも高いと比表面積の低下が著しく、やはり吸着性能が高くならない。
【0036】
焼成は、例えばロータリーキルンを用いて空気を流しながら行うことができる。空気を流通すると、硫酸成分が再吸着することを防止できるため、不安定な硫酸根の形成を低減できる。空気の流量は0.1〜30L/分が好ましく、0.5〜20L/分が特に好ましい。0.1L/分より小さいと硫酸成分や水分の再吸着防止効果が少なく、30L/分より大きいと均一な温度とすることが難しい。また、ロータリーキルンを用いると硫酸根の付着ムラを低減できる。
【0037】
硫酸根アルミナにおけるアルミナ含有量は95〜99.5質量%が好ましく、95.5〜99質量%がより好ましく、96〜97質量%がさらに好ましい。
硫黄含有量としては、吸着材全量基準で、0.5〜5質量%が好ましく、1〜4.5質量%がより好ましく、3〜4質量%がさらに好ましい。硫黄の含有量が0.5質量%未満では所望の吸着性能が得られず、5質量%より多いと選択性の低下を招いたり、吸着材の強度を低下させたりするため好ましくない。
【0038】
本発明においては、吸着材として、上記した硫酸根アルミナの他、活性白土も使用することができる。活性白土は、モンモリロン石を主体とするいわゆるベントナイトや酸性白土などを硫酸などで酸処理を施して活性を強めたものである。
【0039】
本発明における接触分解ガソリンからのアニリン類の除去方法としては、前記した硫黄とアルミニウムを含有する吸着材の他、チタンを含有するゼオライトも吸着材として用いることができる。
次に、Tiを含有するゼオライトについて以下説明する。
【0040】
本発明に係るTiを含有するゼオライトは、担体としてのゼオライトと、このゼオライトに導入された活性金属としてのチタンとを含む。ゼオライトは、フォージャサイト型のゼオライトである。フォージャサイト型のゼオライトとしては、X型、Y型あるいはUSY型のゼオライトを挙げることができる。また、ゼオライトは、Y型ゼオライト及びUSY型ゼオライトを含むことが好ましい。これにより、吸着材の脱窒素性能をより向上させることができる。
【0041】
ゼオライトは、SiO/Alモル比が5以上25以下である。SiO/Alモル比を5以上とすることで、ゼオライトの疎水性を高めて脱窒素対象である液体有機化合物中の水分などがゼオライトに吸着することを抑制することができる。水分などのゼオライトへの吸着を抑制することで、窒素化合物のゼオライトへの吸着を促進させることができる。また、ゼオライト中のアルミニウムが、活性金属としてのチタンのイオン交換サイトとなる。このため、SiO/Alモル比を25以下とすることで、所望の窒素吸着に必要なチタンの量をより確実に確保することができる。
SiO/Alモル比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法による組成分析により測定することができる。
【0042】
チタンは、例えばイオン交換法を用いてゼオライトに導入される。チタンは、吸着材の全質量に対して0.3質量%以上〜3.0質量%以下の量でゼオライトに導入されることが好ましい。導入されるチタンの量を0.3質量%以上とすることで、窒素吸着点を確保して吸着材の脱窒素性能をより確実に発揮させることができる。また、導入されるチタンの量を3.0質量%以下とすることで、水酸化チタン等の脱窒素に寄与しないチタン含有物質がゼオライトに導入されることを抑制することができる。これにより、窒素吸着サイトへの窒素の吸着が当該チタン含有物質によって阻害されることを抑制することができる。
ゼオライトに導入されるチタンの量は、ICP発光分光分析法により測定することができる。
【0043】
上述した吸着材を製造する方法としては、イオン交換法を採用することができる。具体的には、未成形、例えば粉末状のゼオライト、あるいはゼオライトの成形体が用意される。そして、このゼオライトをチタンイオンによりイオン交換する工程が実施される。
【0044】
イオン交換処理が施されるゼオライトとしては、ナトリウム型ゼオライト、アンモニウム型ゼオライト、プロトン型ゼオライトあるいはこれらの組み合わせ等を用いることができる。プロトン型ゼオライトが用いられる場合、まずはゼオライト中のイオン交換サイトにある水素(H)イオンがナトリウム(Na)イオンに交換される。例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの水溶液とゼオライトとを混合することで、水素イオンからナトリウムイオンへのイオン交換を行うことができる。具体的には、ナトリウムイオン濃度:0.005〜4.0mol/kgの溶液にゼオライトを添加し、10〜70℃の温度範囲において、0.5〜10時間、必要に応じて撹拌しながらイオン交換反応を行う。反応終了後、固形物をろ過などの手段で分離し、水などで洗浄した後、50〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度で乾燥処理する。このイオン交換処理は繰り返し行うことができる。
【0045】
続いて、ゼオライト中のナトリウムイオンをチタンイオンに交換する工程が実施される。例えば、硫酸チタンなどの水溶液とゼオライトとを混合することで、ナトリウムイオンからチタンイオンへのイオン交換を行うことができる。具体的には、チタンイオン濃度:0.001〜0.5mol/kg、pH:0.3〜3のイオン交換溶液にゼオライトを添加し、10〜70℃の温度範囲において、0.5〜10時間、必要に応じて撹拌しながらイオン交換反応を行う。反応終了後、固形物をろ過などの手段で分離し、水などで洗浄した後、50〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度で乾燥処理する。このイオン交換処理は繰り返し行うことができる。また、乾燥後のゼオライトに、200〜600℃、好ましくは300〜500℃で、数時間程度の焼成処理を施してもよい。水素イオンからナトリウムイオンを経てチタンイオンにイオン交換することで、イオン交換の効率を高めることができる。
【0046】
未成形のゼオライトを用いる場合には、イオン交換工程を経たゼオライトにバインダーを混合して成形する成形工程が実施される。バインダーとしては、吸着材の製造において用いられる従来公知のものを使用することができる。このようなバインダーとしては、例えばアルミナ、シリカ、粘土鉱物など、もしくはこれらの前駆体が挙げられる。ゼオライトとバインダーの混合物の成形は、押出成形、打錠成形、転動成形、スプレードライなど、従来公知の成形方法を用いることができる。以上の工程により、吸着材を製造することができる。なお、プロトン型ゼオライト中の水素イオンが直接チタンイオンに交換されてもよい。ナトリウム型ゼオライトあるいはアンモニウム型ゼオライトが用いられる場合には、ナトリウムイオンあるいはアンモニウムイオンとチタンイオンとのイオン交換により、吸着材が製造される。
【0047】
吸着材は、通常、成形体として用いられるので、製造段階で、例えば焼成に先立って、焼成による収縮を見込んで成形することが好ましい。形状としては、特に限定するものではないが、硫黄化合物の濃度勾配を大きくするため、流通式の場合には吸着材を充填した容器前後の差圧が大きくならない範囲で小さい形状が好ましく、球状、円柱状、円筒状、三つ葉状、四つ葉状などが挙げられ、リング状やサドル状であってもよく、特には球状、円柱状、四つ葉状が好ましい。球状の場合の大きさは、直径が0.5〜5mm、特には1〜3mmが好ましい。円柱状の場合には、直径が0.1〜4mm、特には0.12〜2mmで、長さは直径の0.5〜5倍、特には1〜2倍が好ましい。
【0048】
本発明に係る吸着材は、比表面積が150m/g以上であることが好ましく、より好ましくは200m/g以上、さらに好ましくは250m/g以上である。また、細孔直径10Å以上0.1μm未満の細孔容積は、硫黄化合物の細孔内拡散速度を大きくするために、0.35ml/g以上であることが好ましく、0.4ml/g以上がより好ましく、0.5ml/g以上が特に好ましい。細孔直径0.1μm以上の細孔容積は、成形体の機械的強度を高くするために、0.3ml/g以下であることが好ましく、0.25ml/g以下とすることがより好ましい。
なお、ここでいう比表面積および細孔容積は窒素吸着法により測定される。窒素吸着法は簡便で、一般に用いられており、様々な文献に解説されている。例えば、鷲尾一裕:島津評論、48(1)、35−49(1991)、ASTM D 4365−95などである。
【0049】
上記のようにして得た硫酸根アルミナは、長期間放置し、大気に触れて吸湿すると吸着性能は低下する。このような場合は、空気雰囲気下、好ましくは空気気流下に、200℃以上、特には300℃以上、さらには500℃以上の高温で加熱処理した後に使用する。この前処理(乾燥処理)を行うと吸着性能が高くなる。500℃以上の高温で前処理することにより固体酸点に吸着している水分を除去することができる。なお、製造した後、吸湿しない前に使用する場合は、製造時において500〜980℃で焼成されているので、上記の500℃以上の加熱処理を省くことができる。
【0050】
本発明のアニリン類の除去方法の被処理物である接触分解ガソリンは、接触分解装置から得られるものであるが、その接触分解装置、接触分解用原料油、接触分解触媒、運転条件は特に限定されるものでなく、公知の任意の製造工程を採用できる。
接触分解装置は、無定形シリカアルミナ、ゼオライトなどの触媒を使用して、軽油から減圧軽油までの石油留分の他、重油間接脱硫装置から得られる間脱軽油、重油直接脱硫装置から得られる直脱重油、常圧残さ油などを接触分解して高オクタン価ガソリン基材を得る装置である。例えば、石油学会編「石油精製プロセス」(講談社サイエンティフィック、1998年)に記載のあるUOP接触分解法、フレキシクラッキング法、ウルトラ・オルソフロー法、テキサコ流動接触分解法などの流動接触分解法、RCC法、HOC法などの残油流動接触分解法などのプロセスが知られており、本発明においては、これらのいずれの装置から得られた接触分解ガソリンでも好適に用いることができる。
【0051】
接触分解ガソリンの性状については、接触分解装置、接触分解用原料油の性状、接触分解触媒、運転条件、分留条件などにより、一概には言えないが、おおよそ、5%留出温度が25〜130℃、95%留出温度が130〜210℃、ナフテン分が5〜25容量%、アロマ分が10〜45容量%、密度(15℃)が0.740〜0.800g/cm、硫黄分が5〜150質量ppm、全窒素分が1〜100質量ppm、そのうちアニリン類が窒素分として1〜50質量ppmの範囲の性状を有している。
【0052】
本発明においては、上記性状範囲の接触ガソリンのいずれをも用いることができるが、好ましくは5%留出温度が70〜130℃、より好ましくは75〜120℃、さらに好ましくは80〜110℃であり、95%留出温度が130〜200℃、より好ましくは140〜190℃、さらに好ましくは150〜180℃であり、ナフテン分が10〜20容量%、アロマ分が20〜40容量%、密度(15℃)が0.750〜0.790g/cm、硫黄分が10〜100質量ppm、より好ましくは10〜50質量ppm、全窒素分が5〜50質量ppm、より好ましくは5〜30質量ppm、そのうちアニリン類が窒素分として1〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmのものである。
【0053】
なお、接触分解ガソリン中に含まれる窒素分は、ニトリル類、ピロール類、ピリジン類、並びに、アニリン類等の有機窒素化合物から構成される。ここでアニリン類とは、アニリン及びアニリンのアルキル等の置換誘導体をいい、アニリン類の量はこれらの合計量である。これらの有機窒素化合物は、原子発光検出器(AED)や化学発光窒素検出器(NCD)を備えたガスクロマトグラフィー(GC―AEDやGC―NCD)等の分析方法により定性・定量することができる。
【0054】
本発明に係る吸着材を用いるアニリン類の吸着方法は特に限定されるものではなく、バッチ式、回分式、流通式などのいずれの方法を採用することができるが、実用的には流通式が好ましい。
【0055】
流通式の場合、接触させる条件としては、圧力は、常圧〜1MPaG、特には常圧〜0.1MPaGが好ましい。吸着処理中にガスが発生することは無いので圧力を高くする必要は無く、均一な流れとなる圧力であれば十分である。
流量は、LHSVで0.001〜50hr−1、特には0.01〜20hr−1が好ましい。LHSVが大きいと、吸着速度(液相から固相への移動速度)に比べて液相自体の移動速度が大きくなり、液相が吸着層出口に到達するまでにアニリン類が除去しきれず、除去されないアニリン類を含有したまま出口から流出される問題が生じやすくなる。一方、LHSVが小さすぎると、大量の吸着材が必要とされるので、装置が巨大になってしまい、経済的に不利になる。
【0056】
接触分解ガソリン中の微量の水分などの含酸素化合物が吸着性能を低下させる場合もあるので、吸着材と接触させる前に、モレキュラーシーブなどの脱水剤により、接触分解ガソリンをあらかじめ脱水処理することも有効である。
【0057】
本発明の方法では、上記接触分解ガソリンと上記吸着材とを接触させ、吸着材にアニリン類を吸着させてアニリン類を除去する。ここで、接触分解ガソリンと吸着材とを接触させる条件としては、温度が−10〜150℃、好ましくは0〜90℃、より好ましくは5〜60℃の範囲である。温度が−10℃未満であると、冷却にエネルギーを要し、省エネルギーの観点から好ましくなく、一方、温度が150℃より高いと、物理吸着性能が低下するので好ましくない。
【0058】
本発明の方法から得られた、アニリン類が除去された接触分解ガソリンは、単独あるいは他のナフサ類と混合されて、接触改質の原料に使用することができる。接触改質を行う接触改質装置や、その運転条件は特に限定されるものではなく、公知の任意の製造装置、運転条件を採用できる。接触改質装置は、白金アルミナ触媒や白金にレニウム、ゲルマニウム、すず、イリジウムなどの第二の金属を添加したバイメタリックアルミナ触媒などを使用して、主に脱硫ナフサを処理して高オクタン価ガソリン基材であるリフォーメートやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を得るために広く用いられている装置である。例えば石油学会編「石油精製プロセス」(講談社サイエンティフィック、1998年)に記載のあるUOPプラットフォーミングプロセス、レニフォーミングプロセス、EREパワーフォーミングプロセス、マグナフォーミングプロセスなどがある。
【0059】
接触改質装置で得られたBTXを高濃度に含む留分は、引き続き関連装置(抽出装置、不均化装置、トランスアルキル化装置、吸着装置等)において、目的とする化合物に変換または分離される。これらの処理を経て、付加価値の高いBTXのような基礎石油化学品留分が得られる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
UOP社製擬ベーマイトアルミナ(Versal−250)に硫酸アンモニウム(関東化学株式会社製)水溶液を混合し、得られた混合物を押し出し成型し、130℃で乾燥した。乾燥後、空気流通下、725℃で1時間焼成し、吸着材Aを得た。
得られた吸着材Aには、硫黄元素として3.8質量%含まれていた。
【0062】
水澤化学工業株式会社製活性白土(ガレオナイト251)を吸着材Bとして用いた。硫黄元素として0.5質量%、アルミニウム元素として5.7質量%含まれていた。
【0063】
30%硫酸チタン水溶液(和光純薬社製)を蒸留水で希釈して、0.011mol/kgチタン水溶液を調製した。また、SiO/Alモル比が14であるH−USY型ゼオライト粉末(東ソー社製、商品名:HSZ−360HUA)に、バインダーとしてUOP製擬ベーマイトアルミナ20質量%を添加し、円柱形のペレット(直径1mm、長さ3〜4mm)に成形した。また、水酸化ナトリウムを蒸留水で希釈して、1.5mol/kg水酸化ナトリウム水溶液を調製した。そして、このH−USY型ゼオライト5gに水酸化ナトリウム水溶液42gを添加し、30℃で2時間撹拌した。これにより、H−USY型ゼオライトの水素イオンをナトリウムイオンに交換し、Na−USY型ゼオライトの成形体を得た。次いで、このNa−USY型ゼオライトの成形体5gに、硫酸チタン水溶液168gを添加した。これにより、Na−USY型ゼオライトのナトリウムイオンをチタンイオンに交換して、Ti−USY型ゼオライトの成形体を得た。続いて、30℃で2時間撹拌した。その後、この成形体を蒸留水で10回洗浄し、120℃で12時間乾燥した。さらに、もう一度同様にチタンイオン交換を行い、同様に撹拌、洗浄することで吸着材Cを得た。吸着材Cには0.9質量%のTiが含まれていた。
【0064】
SASOL社製擬ベーマイトアルミナを押し出し成型し、130℃で乾燥した。乾燥後、空気流通下、600℃で1時間焼成し、吸着材Dを得た。
【0065】
水酸化ジルコニウム(MEL社製)、UOP社製擬ベーマイトアルミナ粉及びメタタングステン酸アンモニウム(日本無機化学工業株式会社製)を混合し、得られた混合物を押出し成型し、130℃で乾燥した。乾燥後、空気流通下、800℃で焼成し、吸着材Eを得た。
得られた吸着材Eに占める各元素の割合は、ジルコニウム元素として43質量%、タングステン元素として13質量%、アルミニウム元素として13質量%であった。
【0066】
Zeolyst社製ZSM−5(SiO/Al=250)とUOP社製擬ベーマイトアルミナを、乾燥重量として80:20になるように混合し、得られた混合物を押出し成型し、130℃で乾燥した。乾燥後、空気流通下、600℃で焼成し、吸着材Fを得た。
【0067】
吸着材Dに、それぞれPとして5質量%および10質量%(ともに乾燥重量)となるように、リン酸(関東化学株式会社製)を担持し、130℃で乾燥した。乾燥後、空気流通下、500℃で1時間焼成し、吸着材Gおよび吸着材Hを得た。
【0068】
それぞれの吸着材の比表面積、細孔容積および吸着除去試験結果を表1に示す。原料炭化水素油は、接触分解ガソリンを想定し、ノルマルヘプタン34質量%、1−オクテン28質量%、パラキシレン37質量%、2−メチルチオフェン1860質量ppmおよびアニリン1550質量ppmの混合油を用いた。各吸着材に対する原料炭化水素油の質量比率(液/固比)を240として、原料炭化水素油に吸着材を浸せきし、常圧、20℃にて24時間静置し、炭化水素油の全成分分析をガスクロマトグラフィーにより分析した。浸せき前後の炭化水素油中のアニリンの値から、次の式により吸着除去したアニリンの割合をアニリン除去率[%]として算出した。
アニリン除去率[%]=100×(S1−S2)/S1
式中、S1及びS2は、それぞれ浸せき前及び浸せき後の炭化水素油中のアニリン含有量を示す。
同様に、脱オレフィン率と脱アロマ率は、それぞれ1−オクテンとパラキシレンの浸せき前後の変化量から算出した。
【0069】
各種吸着材の比表面積および細孔容積について、表1に示した。
【0070】
ルイス酸量とブレンステッド酸量の割合は、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)装置(Agilent Technologies社製Cary670)により分析した。試料約0.0015gを10mmφのディスク状に成型し、セルに固定して、500℃で1時間真空排気した後、30℃に冷却して真空下でリファレンスの測定を行い、100℃に昇温して5分間ピリジンを吸着させた。150℃に昇温し、1時間真空排気を行うことで物理吸着していたピリジンを除去した後に、30℃に冷却して真空下でサンプルの測定を行い、得られたデータとリファレンスデータを用いてフーリエ変換により吸光度表示した。ルイス酸点に起因する吸光度のピークは1450±10cm−1に、ブレンステッド酸点に起因する吸光度のピークは1540±10cm−1に、ルイス酸とブレンステッド酸との両方に起因する吸光度のピークは1490±10cm−1に検出された。ルイス酸点(1450±10cm−1)のピーク面積をI、ブレンステッド酸点(1540±5cm−1)のピーク面積をIとし、ルイス酸量に対するブレンステッド酸量の比I/I等を表1に示した。
【0071】
浸せき式吸着除去試験におけるアニリン除去率を表2に示す。表2より、本発明の吸着方法(実施例1〜3)によれば、非常に温和なプロセス条件においても、高いアニリン除去率を得られることが分かる。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
吸着材AおよびBについては、接触分解ガソリンにおける脱窒素能力も評価した。接触分解ガソリンの性状は、沸点範囲として、5%留出温度:100.0℃、95容量%留出温度:129.5℃、密度(15℃)0.7562g/ml、芳香族分21.4容量%、飽和分54.5容量%、オレフィン分24.1容量%、硫黄分29質量ppm、及び窒素分2.2ppm以下であった。液体部分の窒素分については、JIS K2609に記載の微量電量滴定法に準拠して測定した。
【0075】
吸着材に対する接触分解ガソリンの質量比率(液/固比)を4あるいは240として、接触分解ガソリン中に吸着材を浸せきし、常圧、20℃にて一定時間静置した。
吸着材Aを用いて、液/固比=4で24時間静置した場合(実施例4)、生成油中の窒素分として0.09質量ppm(脱窒素率:96%)となり、接触改質原料として十分使用できるレベルにある。続いて加速条件として、吸着材Aを用いて、液/固比=240で24時間静置した場合(実施例5)、72時間静置した場合(実施例6)では、それぞれ生成油中の窒素分として1.6質量ppm(脱窒素率:27%)、1.4質量ppm(脱窒素率:36%)となった。同様に、吸着材Bを用いて、液/固比=240で24時間静置した場合(実施例7)、生成油中の窒素分として1.5質量ppm(脱窒素率:32%)となった。液固比として240という短接触時間の条件においても、有効な脱窒素率が得られることが示され、常温・常圧の温和な条件であるにもかかわらず、接触分解ガソリン中に含まれる窒素分の除去にも有効であり、経済性においても有効な技術である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、石油精製プロセスにおいて、重質油から得られる比較的コストの安い接触分解ガソリンを接触改質装置の原料油として利用でき、低コストでオクタン価の高いガソリン基材や高付加価値のBTXに代表されるアルキルベンゼン類を製造できる。