(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カウンタは、前記電動モータに流れる電流値が所定の値を超える場合、前記電動モータに流れる電流値が前記所定の値未満である場合と比べて前記カウント値をカウントアップする値を大きくする請求項1又は請求項2に記載の車両用開閉装置。
前記カウンタは、前記開閉体が途中停止状態にあるとき、前記カウント値が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値未満である場合には、一定時間毎に前記カウント値をカウントアップし、前記カウント値が前記第2の閾値以上である場合には、前記カウント値をカウントダウンする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用開閉装置。
前記カウンタは、前記電動モータの通電が停止されると、所定時間毎に前記カウント値をカウントダウンする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用開閉装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の車両用開閉装置は、車両に設けられる開閉体を開閉する車両用開閉装置であって、開閉体が所定の位置に到達した場合、電動モータに流れる電流値に基づいて、カウント値をカウントアップし、そのカウント値が閾値を超えた場合に、次回以降の開閉体の開閉動作を所定時間停止する。以下、本実施形態の車両用開閉装置について、具体的に説明する。なお、本実施形態では、例として開閉体がスライドドアである場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、開閉体がパワーウインドであってよい。
【0014】
以下、本実施形態における車両用開閉装置21について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の車両用開閉装置21を備えるワンボックスタイプの車両を示す側面図である。
図2は、本実施形態におけるスライドドア13の上面図であり、スライドドア13の装着部分の詳細を示す拡大図である。
図1及び
図2に示すように、車両11は、スライドドア13、ガイドレール14、16、17、車両用開閉装置21を備える。
図1に示すように、車両11は、ワンボックスタイプの乗用車であり、その車体12の側部には開閉体であるスライドドア13が設けられている。このスライドドア13は、車体12の側部に固定されたガイドレール(案内部材)14に案内されて、
図1中に実線で示す全閉位置と一点鎖線で示す全開位置との間で開閉自在である。したがって、乗員の乗降や荷物の積み下ろしなどを行う際にはスライドドア13を所望の開度にまで開けて使用される。また、スライドドア13には、スライドドア13の開閉動作を指令するために、開閉スイッチとしてのハンドル34が設けられている。
【0015】
図2に示すように、スライドドア13には、ローラアッシー15が設けられている。スライドドア13は、ローラアッシー15がガイドレール14に案内されることにより、車両11の前後方向に移動する。
【0016】
ガイドレール14は、湾曲部14a、直線部14b、反転プーリ18及び反転プーリ19を備える。
湾曲部14aは、ガイドレール14の車両前方側に形成されている。湾曲部14aは、車室内側に湾曲する形状である。スライドドア13は、ローラアッシー15が湾曲部14aに案内されることにより、車体12の側面と同一面に収まるように車体12の内側に引き込まれた状態で閉じられる。直線部14bは、湾曲部14aよりも車両後方位置に形成されている。直線部14bは、車体12の側部に対して平行な形状である。
ローラアッシー15は、
図2に示す部位以外にスライドドア13の前端部の上下部分(アッパー部・ロア部)にも設けられている。スライドドア13の前端部の上下部分(アッパー部・ロア部)に設けられたローラアッシー15に対応して車体12の開口部の上下部位にガイドレール16及びガイドレール17が設けられている。したがって、スライドドア13は、車体12に計3カ所において支持されている。
反転プーリ18、19は、それぞれガイドレール14の両端に設けられている。
【0017】
車両用開閉装置21は、スライドドア13を自動的に開閉する装置である。
車両用開閉装置21は、駆動ユニット22及びケーブル23(ケーブル23a、ケーブル23b)を備える。
駆動ユニット22は、ガイドレール14の車両前後方向の略中央部に隣接して車体12の内部に配置される。
ケーブル23a、ケーブル23bは、それぞれ車両後方側と前方側からローラアッシー15に接続される。駆動ユニット22は、ケーブル23a又はケーブル23bの一方のケーブルを引くことによりスライドドア13が開動作又は閉動作される。
【0018】
図3は、本実施形態における車両用開閉装置21の制御体系における概略構成の一例を示す図である。
車両用開閉装置21は、電動モータ25、減速機26、ドラム28、位置検出部33、測定部50及び制御装置31を備える。
電動モータ25は、スライドドア13を開閉駆動する駆動源である。例えば、電動モータ25は、3相ブラシレスモータ等の正逆両方向に回転可能なモータである。電動モータ25は、制御装置31から供給される駆動信号に基づいて、回転駆動する。
【0019】
減速機26は、電動モータ25に固定され、電動モータ25の回転を減速機26により所定の回転数にまで減速する。したがって、電動モータ25の回転は、減速機26により所定の回転数にまで減速して出力軸27から出力される。
【0020】
出力軸27には、外周面に図示しない螺旋状の案内溝が形成された円筒形状のドラム28が固定されている。ドラム28には、ケーブル23が案内溝に沿って複数回巻き付けられている。したがって、電動モータ25が作動してドラム28が電動モータ25に駆動されて回転すると、スライドドア13は開閉動作する。すなわち、電動モータ25が正転すると、例えば反時計回り方向にドラム28が回転する。これにより、ケーブル23の車両後方側がドラム28に巻き取られるため、スライドドア13はケーブル23に引かれながら開方向に移動する。一方、電動モータ25が逆転すると、例えば時計回り方向にドラム28が回転する。これにより、ケーブル23の車両前方側がドラム28に巻き取られるため、スライドドア13はケーブル23に引かれながら閉方向に移動する。上述したように、スライドドア13は、ケーブル23、ドラム28、出力軸27等を介して電動モータ25に接続され、電動モータ25により開閉駆動される。なお、電動モータ25と出力軸27との間の動力伝達経路を断続するクラッチ機構を減速機26に設け、スライドドア13が手動で開閉操作されるときにはクラッチ機構を遮断状態に切り替えるようにしてもよい。また、ドラム28とスライドドア13との間に、ケーブル23の弛みを取って、ケーブル張力を一定範囲に維持するテンショナーを設けてもよい。
【0021】
位置検出部33は、スライドドア13の位置を検出する。例えば、位置検出部33は、ホールICを備えた磁気式のロータリエンコーダである。例えば、出力軸27には周方向に多数の磁極が着磁されたセンサマグネット32が固定されている。そして、センサマグネットに対向する位置に近傍するように位置検出部33であるホールIC32a、ホールIC32b及びホールIC32cが配置されている。ホールIC32a、ホールIC32b及びホールIC32cは、互いに所定の位相差を有して配置されている。したがって、位置検出部33は、ドラム28が回転しセンサマグネット32がホールIC32a、ホールIC32b及びホールIC32cの前を通過することで検出した磁束密度の変化を電気信号として互いに位相が異なる3相(U相、V相及びW相)の交番信号を生成する。そして、位置検出部33は、各相の交番信号の値が所定値を超えた(すなわち、位置検出部33が受ける磁界の強さが所定の強度を超えた)か否かで出力値がHighとLowに変化する2値のデジタル信号(パルス信号)に変換する。位置検出部33は、各相のパルス信号としてU相パルス信号、V相パルス信号及びW相パルス信号とを制御装置31に出力する。
【0022】
スライドドア13には、その車室内側と外側とにそれぞれ開閉スイッチとしての機能を有するハンドル34が設けられている。ハンドル34は、制御装置31に接続されている。ハンドル34は、乗員等により操作されると、その操作に応じた開閉指令信号を制御装置31に出力する。すなわち、ハンドル34は、乗員等の操作者により開側に操作されると、スライドドア13を開くことを指示する指令信号を制御装置31に出力する。ハンドル34は、乗員等の操作者により閉側に操作されるとスライドドア13を閉じことを指示する指令信号を制御装置31に出力する。制御装置31は、ハンドル34から供給された開閉指令信号を取得すると、開閉指令信号に基づいて電動モータ25を正転又は逆転制御する。これにより、制御装置31は、スライドドア13を開方向又は閉方向に作動させることができる。すなわち、操作者はハンドル34を操作することにより、スライドドア13を自動で開閉動作させることができる。
【0023】
測定部50は、制御装置31に接続されている。測定部50は、電動モータ25に流れる電流の値(以下、「モータ電流値」)を測定する。測定部50は、測定したモータ電流値を制御装置31に出力する。例えば、測定部50は、乗員等の操作者によりハンドル34が操作され電動モータ25が駆動された場合にモータ電流値を一定周期毎に測定し、測定したモータ電流値を制御装置31に出力する。
【0024】
警告部60は、スピーカ(又はブザー)等の音声発生部を含み、指令信号によるスライドドア13の開閉操作が禁止されていることを操作者に報知する。指令信号によるスライドドア13の開閉操作が禁止されるのは、電動モータ25に過電流が流れることで電動モータ25が過熱し焼損することを防止するためである。報知が実行される際に出力される音は、例えば、音声メッセージ又はブザー音である。また、警告部60は、音声メッセージとブザー音とを交互に発生してもよい。なお、警告部60は、LED(light emitting diode)等の発光体でもよい。
【0025】
制御装置31は、ハンドル34から供給される開閉指令信号に基づいて電動モータ25の回転駆動を制御する。制御装置31は、スライドドア13の開閉動作を制御することにより電動モータ25に過電流が流れることで電動モータ25のコイルが過熱し焼損することを防止する。過電流が流れる場合としては、例えば、スライドドア13の閉動作時において、スライドドア13と車体12との間に異物が挟み込むことでスライドドア13が一定時間停止した場合や操作者によりスライドドア13を高頻度に開閉動作された場合である。制御装置31は、電動モータ25の温度を推定し、電動モータ25が過熱状態になる前に、指令信号によるスライドドア13の開閉操作を禁止する。
【0026】
図4は、本実施形態における制御装置の概略構成の一例を示す図である。
制御装置31は、制御部310、記憶部320、報知部330及び駆動部340を備える。
制御部310は、位置検出部33から供給されるパルス信号と測定部50から供給されるモータ電流値とに基づいて電動モータ25の温度を推定する。
制御部310は、ハンドル34から供給される指令信号に基づいて、電動モータ25を正転又は逆転させることを指示する制御信号を駆動部340に出力する。駆動部340は図示しない複数のスイッチング素子によって構成され、制御部310は、位置検出部33から供給されるU相、V相、W相パルス信号のパターンに応じて、複数のスイッチング素子のうち、特定のスイッチング素子をオン制御し、パルス信号の切り替わりに応じてオン制御するスイッチング素子を切り替える制御を行う。これにより電動モータ25の回転方向および回転速度を制御している。ただし、制御部310は、電動モータ25の温度が所定の温度以上になると判定した場合、指令信号を取得しても制御信号を駆動部340に出力しない。例えば、所定の温度とは、電動モータ25が過熱状態となる温度である。
【0027】
制御部310は、第1カウンタ311、第2カウンタ312及び判定部313を備える。
第1カウンタ311は、指令信号によるスライドドア13の開閉操作が開始されると(又はパルス信号が出現すると)、位置検出部33から供給されるパルス信号のパルス数をカウントする。すなわち、第1カウンタ311は、スライドドア13が所定の位置(例えば、全開位置)となったときを基準として、パルス信号を取得する毎にカウント値N
1をインクリメントする。したがって、制御部310は、カウント値N
1に基づいてスライドドア13の位置を検出することができる。
【0028】
第2カウンタ312は、スライドドア13が計測位置に到達した場合に、電動モータ25に流れる電流値に基づいて、カウント値N
2をカウントアップする。カウント値N
2は、電動モータ25の温度に対応する値である。カウントアップする値は、電動モータ25に流れる電流値に基づいて予め設定される。これにより、制御部310は、カウント値N
2に基づいて電動モータ25の温度を推定することができる。以下に、詳細を説明する。
【0029】
第2カウンタ312は、スライドドア13の位置が予め設定された測定位置に到達した場合、測定部50から供給されるモータ電流値を取得する。測定位置は、モータ電流値が安定する位置であり、ガイドレール14の直線部14bに設けられている。すなわち、第2カウンタ312は、第1カウンタ311のカウント値N
1が測定位置に対応するカウント値N
th1となった場合、測定部50から供給されるモータ電流値を取得する。なお、正確なモータ電流値を取得するには、カウント値N
th1はある一定の幅を有していることが好ましい。すなわち、第2カウンタ312は、第1カウンタ311のカウント値N
1がカウント値N
th1以上且つカウント値N
th2以下であるときのモータ電流値を取得する。
【0030】
図5は、本実施形態におけるカウント値N
1とモータ電流値との関係の一例を示した図である。
図5に示すように、例えば、スライドドア13の位置がガイドレール14の全開位置にある場合、カウント値N
1が0である。スライドドア13の位置がガイドレール14の全閉位置にある場合、カウント値N
1が780である。
指令信号によりスライドドア13が開動作又は閉動作した場合、モータ電流値は、領域Aにおけるピーク(カウント値N
1=200)及び領域Bにおけるピーク(カウント値N
1=760)の2つのピークが存在する。領域Aは、スライドドア13が湾曲部14aの位置を移動しているときの電流値を示し、領域Bのピークは、スライドドア13が全閉位置の近傍の位置を示す。また、領域Cは、スライドドア13が直線部14bの位置を移動しているときの電流値を示す。
図5に示すように、スライドドア13の位置が全開位置から湾曲部14aまでの位置、及び全閉位置の近傍では、モータ電流値は安定せず変動する。一方、スライドドア13の位置が直線部14bの位置にある場合、モータ電流値は安定する。したがって、直線部14bの任意の位置を測定位置として、例えば、カウント値N
th1が495、カウント値N
th2が505に設定される。
【0031】
第2カウンタ312は、カウント値N
1及びモータ電流値に基づいてカウント値N
2に予め設定された値をカウントアップ又はカウントダウンする。以下に、本実施形態における第2カウンタ312のカウントアップする条件を説明する。
第2カウンタ312は、以下に列挙する(1)〜(4)の条件においてカウント値N
2に予め設定された複数の値のいずれかをカウントアップする。なお、以下に示すカウント値N
2にカウントアップする値(以下、「カウントアップ値」という。)は一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)測定位置におけるモータ電流値I
1が閾値I
th以上である場合、カウント値N
2に3をカウントアップし、閾値I
th未満である場合、カウント値N
2に1をカウントアップする。
(2)スライドドア13が測定位置に到達できなかった場合、カウント値N
2に3をカウントアップする。
(3)スライドドア13が途中停止状態であり、且つカウント値N
2が閾値N
a以下である場合、途中停止状態の経過時間に応じてカウント値をカウントアップする。
(4)途中停止状態からのスライドドア13の動作方向が前回と異なる場合、カウント値N
2をカウントアップする。
【0032】
上記(1)を説明する。第2カウンタ312は、カウント値N
1がカウント値N
th1以上且つカウント値N
th2(>N
th1)以下であるときのモータ電流値I
1が予め設定された閾値I
th以上である場合、カウント値N
2に3をカウントアップする。一方、第2カウンタ312は、カウント値N
1がカウント値N
th1以上且つカウント値N
th2以下であるときのモータ電流値I
1が予め設定された閾値I
th未満である場合、カウント値N
2に1をカウントアップする。例えば、閾値I
thは、電動モータ25の温度の上昇率とモータ電流値との関係から決定される値であり、電動モータ25の温度の上昇率が高い場合のモータ電流値である。
【0033】
上記(2)を説明する。第2カウンタ312は、所定の時間内にカウント値N
1がカウント値N
th1(又はカウント値N
th2)に達しない場合には、カウント値N
2に3をカウントアップする。所定の時間内にカウント値N
1がカウント値N
th1(又はカウント値N
th2)に達しない場合とは、スライドドア13の開動作又は閉動作において、操作者が手動でスライドドア13を止める操作や異物の挟み込みによりスライドドア13が測定位置に到達できなかった場合を示す。その際、スライドドア13は、全閉位置及び全開位置以外のガイドレール14の位置に停止させられる。したがって、制御装置31は、スライドドア13がガイドレール14を自由落下するのを防止するために、位置検出部33から供給されるパルス信号の切り替わりによる駆動部340の複数のスイッチング素子の切替制御を行わず、特定のスイッチング素子に対するオン制御を維持する制御を行い、すなわち電動モータ25に対して一相通電することで、スライドドア13の停止させる保持力を電動モータ25に発生させる。なお、電動モータ25の一相通電によりスライドドア13が停止している状態を途中停止状態という。
【0034】
上記(3)を説明する。スライドドア13が途中停止状態である場合、電動モータ25の一相通電により電動モータ25に電流が流れているため、電動モータ25は発熱する。そのため、第2カウンタ312は、スライドドア13が途中停止状態であり、且つカウント値N
2が閾値N
a以下である場合、途中状態の経過時間に応じてカウント値N
2をカウントアップする。例えば、第2カウンタ312は、途中状態の経過時間とカウントアップ値との関係を示す一相通電上昇マップから、現在の途中状態の経過時間に応じたカウントアップ値を取得する。一相通電上昇マップにおいて、経過時間が長くなるほど、カウントアップ値が大きくなるように設定されている。一相通電上昇マップのカウントアップ値は、途中状態の経過時間と一相通電により電動モータ25が温度上昇値との関係に基づいて決定される。例えば、閾値N
aは、一相通電時の電動モータ25の飽和温度(以下、「一相通電飽和温度」という。)に対応するカウント値N
2である。
【0035】
上記(4)を説明する。第2カウンタ312は、スライドドア13が途中停止状態から前回のスライドドア13の動作方向と異なる方向に移動する場合、カウント値N
2をカウントアップする。すなわち、第2カウンタ312は、スライドドア13の開動作→途中停止状態→スライドドア13の閉動作、又はスライドドア13の閉動作→途中停止状態→スライドドア13の開動作の場合、2回目の閉動作又は開動作(途中停止状態からの動作)では上記(1)、(2)の条件に従ってカウント値N
2をカウントアップする。なお、1回目のスライドドア13の動作及び途中停止状態においては、第2カウンタ312は、上記(1)〜(3)の条件でカウント値N
2をカウントアップする。ただし、スライドドア13の開動作→途中停止状態→スライドドア13の閉動作、又はスライドドア13の閉動作→途中停止状態→スライドドア13の開動作の場合、カウント値N
2がカウントアップされる値の合計値は、4までとする。例えば、第2カウンタ312は、スライドドア13の開動作→途中停止状態→スライドドア13の閉動作の場合、スライドドア13の開動作でカウント値N
2に3をカウントアップした場合、スライドドア13の閉動作ではモータ電流値I
1の値にかかわらずカウント値N
2に1をカウントアップする。なお、スライドドア13が途中停止状態から前回のスライドドア13の動作方向と同じ方向に移動する場合、2回目の閉動作又は開動作(途中停止状態からの動作)ではカウント値N
2をカウントアップしない。
【0036】
以下に、本実施形態における第2カウンタ312のカウントダウンする条件を説明する。
第2カウンタ312は、以下に列挙する(5)〜(7)の条件においてカウント値N
2に対して予め設定された複数の値のいずれかをカウントダウンする。なお、以下に示すカウント値N
2をカウントダウンする値(以下、「カウントダウン値」という。)は一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
(5)スライドドア13が途中停止状態であり、且つカウント値N
2が閾値N
aを超える場合、途中状態の経過時間に応じてカウント値をカウントダウンする。
(6)スライドドア13がフリー停止状態である場合、フリー停止状態の経過時間に応じてカウント値をカウントダウンする。
(7)カウント値N
2がリセットされた場合、カウント値N
2を所定のカウント数N
b(>N
a)にし、カウント値N
2をカウントダウンする。
【0037】
上記(5)を説明する。スライドドア13が途中停止状態である場合、電動モータ25の一相通電により電動モータ25に電流が流れている。ただし、カウント値N
2が閾値N
aを超えている場合に、すなわち、電動モータ25の温度が一相通電飽和温度よりも高い場合に一相通電を実施すると電動モータ25の温度は一相通電飽和温度になるように下がる。したがって、第2カウンタ312は、スライドドア13が途中停止状態であり、且つカウント値N
2が閾値N
aを超える場合、途中状態の経過時間に応じてカウント値N
2をカウントダウンする。ただし、第2カウンタ312は、カウント値N
2が閾値N
aになった場合は、カウント値N
2をカウントダウンしない。例えば、第2カウンタ312は、途中状態の経過時間とカウントダウン値との関係を示す一相通電下降マップから、現在の途中状態の経過時間に応じたカウントダウン値を取得する。一相通電下降マップにおいて、経過時間が長くなるほど、カウントダウン値が大きくなるように設定されている。一相通電下降マップのカウントダウン値は、途中状態の経過時間と一相通電時での電動モータ25の放熱曲線との関係に基づいて決定される。
【0038】
上記(6)を説明する。制御装置31は、スライドドア13が全閉位置、又は全開位置にある場合、電動モータ25に通電しない。したがって、第2カウンタ312は、電動モータ25が通電されていない場合、電動モータ25の温度が下がるため経過時間に応じてカウント値をカウントダウンする。なお、電動モータ25が通電されていないときのスライドドア13の状態をフリー停止状態という。例えば、第2カウンタ312は、フリー停止状態の経過時間とカウントダウン値との関係を示すフリー停止状態下降マップから、現在のフリー停止状態の経過時間に応じたカウントダウン値を取得する。フリー停止状態下降マップにおいて、経過時間が長くなるほど、カウントダウン値が大きくなるように設定されている。フリー停止状態下降マップのカウントダウン値は、フリー停止状態の経過時間と通電されていない場合での電動モータ25の放熱曲線との関係に基づいて決定される。
【0039】
上記(7)を説明する。車両11に搭載されたバッテリ(不図示)が取り外され、制御装置31に対する電源の供給が停止された場合、カウント値N
2の値が失われる場合がある。したがって、制御装置31は、制御装置31に対する電源の供給が開始された場合に、カウント値N
2を所定のカウント数N
bにセットし、カウント値N
2をカウントダウンする。なお、カウントダウン値は、上記(5)又は上記(6)の条件により求められる。
【0040】
判定部313は、開動作又は閉動作が終了する毎に、第2カウンタ312のカウント値N
2を読み取る。判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c(>N
a)以上か否かを判定する。本実施形態では、閾値N
cはカウント数N
bと同じ値に設定されている。
判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c以上である場合、電動モータ25が過熱状態にあると判定し、指令信号を取得しても制御信号を駆動部340に出力しない。すなわち、制御部310は、指令信号によるスライドドア13の開閉動作を禁止する。判定部313は、スライドドア13の開閉動作を禁止したことを示す禁止信号を報知部330に出力する。なお、判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c未満になった場合、指令信号によるスライドドア13の開閉動作の禁止を解除する。したがって、判定部313は、指令信号を取得した場合、制御信号を駆動部340に出力する。判定部313は、指令信号によるスライドドア13の開閉動作の禁止を解除した場合、報知部330に対する禁止信号の出力を停止する。なお、閾値N
cは、実際に電動モータ25が過熱状態となる温度よりも低い温度に対応するカウント値N
2に設定されることが望ましい。
【0041】
報知部330は、判定部313から供給される禁止信号に基づいて操作者にスライドドア13の開閉動作を禁止したことを報知する。例えば、報知部330は、スライドドア13の開閉動作を禁止したことを示す音声メッセージ情報又はブザー音情報を警告部60に出力する。
【0042】
駆動部340は、判定部313から供給から供給される制御信号に基づいて電動モータ25に駆動信号を出力することで電動モータ25を回転駆動させる。
【0043】
以下に、本実施形態における制御装置31の動作について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態における制御装置31の動作の処理フローを説明する図である。なお、以下に説明する場合において、初期状態として、カウント値N
2が閾値N
c未満である。
【0044】
ステップS101において、ハンドル34は、乗員等により操作されると、その操作に応じた開閉指令信号を制御装置31に出力する。制御装置31は、ハンドル34から供給された開閉指令信号を取得すると、開閉指令信号に基づいて電動モータ25を正転又は逆転制御する。
【0045】
ステップS102において、第1カウンタ311は、指令信号によるスライドドア13の開閉操作が開始されると(又はパルス信号が出現すると)、位置検出部33から供給されるパルス信号のパルス数をカウントする。
【0046】
ステップS103において、第1カウンタ311は、スライドドア13が所定の位置となったときを基準として、パルス信号を取得する毎にカウント値N
1をインクリメントする。
【0047】
ステップS104において、第2カウンタ312は、スライドドア13の位置が予め設定された測定位置に到達した場合、測定部50から供給されるモータ電流値を取得する。第2カウンタ312は、上記(1)〜(7)に従って、カウント値N
2に予め設定された値をカウントアップ又はカウントダウンする。
【0048】
ステップS105において、制御装置31は、スライドドア13が全閉位置又は全開位置に到達すると、指令信号による開閉動作を終了する。
【0049】
ステップS106において、判定部313は、第2カウンタ312のカウント値N
2を読み取る。判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c以上か否かを判定する。判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c以上である場合、電動モータ25が過熱状態にあると判定し、ステップS107の処理を実行する。判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c未満である場合、電動モータ25が過熱状態ではないと判定し、ステップS112の処理を実行する。
【0050】
ステップS107において、判定部313は、指令信号によるスライドドア13の開閉動作を禁止する。判定部313は、スライドドア13の開閉動作を禁止したことを示す信号を報知部330に出力する。
【0051】
ステップS108において、判定部313は、スライドドア13の開閉動作を禁止したことを示す禁止信号を報知部330に出力する。報知部330は、禁止信号を取得すると、スライドドア13の開閉動作を禁止したことを示す音声メッセージ情報又はブザー音情報を警告部60に出力する。警告部60は、音声メッセージ情報又はブザー音情報に基づいて、音声メッセージ又はブザー音を出力する。
【0052】
ステップS109において、判定部313は、第2カウンタ312のカウント値N
2を読み取る。判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c以上か否かを判定する。判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c以上である場合、電動モータ25がまだ過熱状態にあると判定し、ステップS107の処理を再度実行する。判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c未満である場合、電動モータ25が過熱状態ではないと判定し、ステップS110の処理を実行する。
【0053】
ステップS110において、判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c未満である場合、指令信号によるスライドドア13の開閉動作の禁止を解除する。すなわち、判定部313は、指令信号を取得した場合、制御信号を駆動部340に出力する。
【0054】
ステップS111において、判定部313は、指令信号によるスライドドア13の開閉動作の禁止を解除した場合、報知部330に対する禁止信号の出力を停止する。これにより、警告部60は、音声メッセージ又はブザー音の出力を停止する。
【0055】
ステップS112において、判定部313は、カウント値N
2が閾値N
c未満である場合、指令信号によるスライドドア13の開閉動作を許可する。すなわち、判定部313は、指令信号を取得した場合、制御信号を駆動部340に出力する。
【0056】
上述したように、本実施形態の車両用開閉装置21は、スライドドア13が測定位置に到達した場合、モータ電流値に基づいてカウント値N
2をカウントアップする。そして、車両用開閉装置21は、カウント値N
2が閾値N
c(第1の閾値)を超えた場合に、次回以降のスライドドア13の開閉動作を所定時間停止する。これにより、サーミスタ等の焼損保護素子や温度測定するセンサを使用することなく、モータの焼損を防止することができる。また、車両用開閉装置21は、スライドドア13の開閉動作をカウントするため、特別な計算式が必要なく演算負荷が少ない。
【0057】
また、上述したように、本実施形態の車両用開閉装置21は、測定位置をガイドレール14の直線部14bとする。これにより、車両用開閉装置21は、安定したモータ電流値を取得することができる。
【0058】
また、上述したように、本実施形態の車両用開閉装置21は、モータ電流値が閾値I
thを超える場合、モータ電流値が閾値I
th未満である場合と比べてカウント値N
2に対してカウントアップする値を大きくする。これにより、カウント値N
2による電動モータ25の温度推定の精度を向上させることができる。
【0059】
また、上述したように、本実施形態の車両用開閉装置21は、スライドドア13が途中停止状態にあるとき、カウント値N
2が閾値N
cよりも小さい閾値N
a(第2の閾値)未満である場合には、一定時間毎にカウント値N
2をカウントアップし、カウント値N
2が閾値N
a以上である場合には、カウント値N
2をカウントダウンする。これにより、カウント値N
2による電動モータ25の温度推定の精度を向上させることができる。
【0060】
また、上述したように、本実施形態の車両用開閉装置21は、電動モータ25の通電が停止されると、所定時間毎にカウント値N
2をカウントダウンする。これにより、カウント値N
2による電動モータ25の温度推定の精度を向上させることができる。
【0061】
上述の実施形態において、車両用開閉装置21は、カウント値N
2が閾値N
c以上である場合、指令信号によるスライドドア13の開閉動作を禁止したが、挟み込み検知時、ドアクローザ動作時又は車両11が動いている(車速あり)ときの閉動作時においては、カウント値N
2が閾値N
c以上であっても、指令信号によるスライドドア13の開閉動作を禁止しない。すなわち、車両用開閉装置21は、挟み込みを検知した場合、スライドドア13の反転動作を禁止しない。車両用開閉装置21は、モータの動力によりスライドドア13を半ドア状態から全閉状態へ強制的に移動させるドアクローザが動作しているとき、カウント値N
2が閾値N
c以上である場合には、指令信号によるスライドドア13の閉動作を禁止せずに、スライドドア13を反転動作させる。車両用開閉装置21は、車両11が動いているときのスライドドア13の閉動作を禁止しない。これにより、スライドドア13の動作を阻害せずにモータの焼損を防止する車両用開閉装置を提供することができる。
【0062】
上述の実施形態において、車両用開閉装置21は、スライドドア13の途中停止状態が所定時間経過した場合、一相通電から回生ブレーキに切り替えて、スライドドア13の減速力を弱めながらスライドドア13を全閉させてもよい。車両用開閉装置21は、回生ブレーキ時において、カウント値N
2を所定のカウントダウン値でカウントダウンする。
【0063】
上述した実施形態における制御部310をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0064】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。