(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転ムラ情報生成部は、前記回転ムラ情報と前記回転ムラ制御情報とのうち少なくとも一方を記憶する回転ムラ情報記憶部をさらに有する、請求項3に記載のモータ駆動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置を用いた電子機器について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成の概略を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、ブラシレスモータ20(以下、単にモータ20という)を例えば正弦波駆動により駆動させるように構成されている。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、モータ20に正弦波駆動信号を出力してモータ20の電機子コイルLu,Lv,Lwに周期的に正弦波状の駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。
【0020】
モータ駆動制御装置1は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有するモータ駆動部2と、制御回路部3と、FG信号生成部(回転状態検出部の一例)4と、回転ムラ情報生成部5とを有している。なお、
図1に示されている構成要素は、モータ駆動制御装置1全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、
図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0021】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、モータ駆動部2と、制御回路部3と、回転ムラ情報生成部5とが集積化されパッケージ化された集積回路装置(IC)である。なお、モータ駆動制御装置1の一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0022】
インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bとともに、モータ駆動部2を構成する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える電機子コイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路2aは、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、電機子コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている。
【0023】
プリドライブ回路2bは、制御回路部3による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。プリドライブ回路2bは、駆動制御信号Sdに基づいて出力信号を生成する。出力信号としては、例えば、インバータ回路2aの各スイッチ素子に対応するVuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlの6種類が出力される。これらの出力信号が出力されることで、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される。
【0024】
本実施の形態において、制御回路部3は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力してモータ駆動部2を制御することで、モータ20の駆動制御を行う。
【0025】
FG信号生成部4は、FG信号(回転状態検出情報の一例)Sfを検出して、制御回路部3及び回転ムラ情報生成部5に出力する。FG信号Sfは、モータ20の回転速度に対応する回転速度情報として制御回路部3に入力されると共に、モータ20の回転ムラを測定するための回転状態検出情報として回転ムラ情報生成部5に入力される。
【0026】
すなわち、回転速度情報としてのFG信号Sfは、周期単位の回転速度情報である。後述するように、制御回路部3は、この情報と目標速度信号EXCとに基づいてモータ20の速度誤差を検出し、モータ20の速度制御を実施する。
【0027】
他方、回転状態検出情報としてのFG信号Sfは、モータ20の毎回の回転状態を示す情報である。回転ムラ情報生成部5において、この情報が演算処理されることにより、モータ20の回転ムラが測定される。
【0028】
なお、FG信号Sfに代えて、又はFG信号Sfと共に、他の検出信号が回転速度情報や回転状態検出情報として用いられるように構成されていてもよい。他の検出信号としては、例えば、ホールセンサ(ホール素子やホールICなど)を用いて生成できるものなどが挙げられる。
【0029】
図2は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1の回路構成を示す図である。
【0030】
制御回路部3には、FG信号Sfと、目標速度信号EXCと、回転ムラ制御情報(回転ムラ情報に基づく情報の一例)Scが入力される。制御回路部3は、FG信号Sfと、目標速度信号EXCと、回転ムラ制御情報Scとに基づいて、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路2bに出力する。制御回路部3は、モータ20が目標速度信号EXCに対応する目標速度に追従するように駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力することで、モータ20の回転制御を行う。モータ駆動部2は、駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に正弦波駆動信号を出力し、モータ20を駆動させる。
【0031】
目標速度信号EXCは、例えば、上位装置50のクロック端子から出力されたクロック信号である。目標速度信号EXCは、モータ20の目標回転速度に対応する周期の信号である。換言すると、目標速度信号EXCは、モータ20を何Hz(rpm)で回転させるかを指示するための、モータ20の回転速度の目標値(目標速度)に対応する情報である。
【0032】
FG信号Sfは、FG信号生成部4により生成された、ロータの回転数に対応する回転速度情報である。本実施の形態において、モータ20のロータの側にある基板には、FG信号Sfを生成するためのコイルパターンであるFGパターン4aが形成されている。FG信号生成部4は、FGパターン4aの誘起電圧に従って、FG信号Sfを生成する。
【0033】
なお、制御回路部3には、上位装置50から、例えばスタートストップ信号、ブレーキ信号や、回転方向設定信号などが入力されるが、それらの図示は省略している。
【0034】
制御回路部3は、速度制御回路31と、正弦波生成回路32とを含んでいる。
【0035】
速度制御回路31には、目標速度信号EXCと、回転速度情報としてのFG信号Sfと、回転ムラ制御情報Scとが入力される。速度制御回路31は、目標速度信号EXCとFG信号Sfとの比較結果に応じて、モータ20を目標速度に追従するように制御するトルク指令信号Stを生成する。具体的には、例えば、1000Hzのクロック信号が目標速度信号EXCとして入力されると、速度制御回路31は、ロータが1000Hzで回転させるように調整する。入力されたFG信号Sfが例えば1005Hzであり(ロータの回転速度)、目標速度信号EXCが1000Hzであるとき、回転速度のずれ(本例では5Hz)に基づいてトルク指令の調整が行われ(フィードバック制御)、回転速度が制御される。
【0036】
正弦波生成回路32には、トルク指令信号Stが入力される。正弦波生成回路32は、トルク指令信号Stに基づいて駆動制御信号Sdを生成し、モータ駆動部2に出力する。これにより、モータ20がトルク指令信号Stに対応するトルク指令値で回転するように駆動される。
【0037】
回転ムラ情報生成部5は、回転ムラ測定回路51と、回転ムラ低減回路52と、回転ムラ情報記憶部53とを備えている。回転ムラ情報生成部5は、回転状態検出情報をもとに、回転ムラ情報を生成する(後述する回転ムラ情報生成ステップに相当する)。
【0038】
回転ムラ測定回路51には、回転状態検出情報としてのFG信号Sfが入力される。回転ムラ測定回路51は、FG信号Sfについて演算処理を行うことにより、速度誤差や速度変動率とは異なるモータ20のフラッタ特性を示す回転ムラ(単位として、パーセントで表される)を測定する。回転ムラ測定回路51は、回転ムラの測定結果である回転ムラ測定値(回転ムラ情報の一例)Swを出力する。回転ムラ測定値Swは、回転ムラ低減回路52と、回転ムラ情報記憶部53とに入力される。
【0039】
回転ムラ低減回路52は、回転ムラ測定値Swに基づいて、回転ムラを低減するための最適化されたゲイン/進角情報を含む回転ムラ制御情報Scを生成する。回転ムラ制御情報Scは、回転ムラ情報記憶部53と、制御回路部3の速度制御回路31とに入力される。
【0040】
回転ムラ情報記憶部53は、メモリである。回転ムラ情報記憶部53は、入力された回転ムラ測定値Swと回転ムラ制御情報Sc(最適ゲイン/最適進角の定数)とを記憶する。なお、回転ムラ情報記憶部53は、回転ムラ測定値Swと回転ムラ制御情報Scとのいずれか一方を記憶するように構成されていてもよい。回転ムラ情報記憶部53としては、従来ゲイン情報や進角情報を格納するために用いられているメモリを用いることができる。
【0041】
本実施の形態においては、必要に応じて、回転ムラ情報記憶部53に格納された回転ムラ測定値Sw及び回転ムラ制御情報Scを外部に出力可能である。回転ムラ測定値Swは、出力端子T1から出力され、回転ムラ制御情報Scは、出力端子T2から出力される。
【0042】
なお、制御回路部3は、回転ムラ情報生成部5から回転ムラ制御情報Scが入力されたときには、必要に応じて、回転ムラ制御情報Scに基づいて、駆動制御信号Sdに回転ムラ制御情報Scを含むようにすることができる(駆動信号生成ステップに相当する)。これにより、回転ムラ情報生成部5の動作に応じて、モータ20の回転ムラが低減されるように、制御回路部3によりモータ20の駆動が制御される。言い換えると、モータ駆動部2は、駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20の回転ムラが低減されるように、モータ20を駆動させる(モータ駆動ステップに相当する)。
【0043】
図3は、回転ムラ測定回路51の構成の一例を示すブロック図である。
【0044】
図3に示されるように、FG信号Sfは、エッジ選択回路51aに入力される。エッジ選択回路51aは、パルス信号であるFG信号Sfの立上りエッジと、立下りエッジとを選択する。その処理結果に基づいて、TV変換回路51bは、FG信号Sfのパルス幅の時間を電圧に変換する。変換結果は、フィルタ回路51cに含まれるハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、CRフィルタを通して、絶対値回路51dに入力される。絶対値回路51dは、電圧のマイナス値をプラス値に変換して出力する。ピークホールド回路51eは、ピーク値を保持して出力する。
【0045】
このように、回転ムラ測定回路51は、モータの速度誤差や速度変動率を検出するのではなく、FG信号Sfを用いて実際の回転ムラそのものを表す回転ムラ測定値Swを生成する。生成された回転ムラ測定値Swは、回転ムラ測定回路51から出力される。
【0046】
なお、回転ムラ測定回路51は、ハードウエアとソフトウエアとのいずれを用いて構成されていてもよい。ハードウエア回路の場合は、アナログ回路で構成することができるが、本実施の形態のように集積回路化されている場合には、ロジック回路を用いて構成される。
【0047】
また、フィルタ回路51cについては、ロジック回路として構成する場合には、ゲート規模が大きい掛け算回路を多用する必要がある。そのため、掛け算等の計算処理は、マイクロコンピュータを用いたソフトウエアによる処理を行うようにすることが好ましい。
【0048】
例えば、一般にモータの回転ムラを評価するために用いられるワウフラッタ(wow flutter)測定器の機能を集積回路上に搭載することにより、回転ムラ測定回路51が構成されるようにすればよい。回転ムラの測定方式としては、
図3を用いて説明した上記の測定方式に限定されず、種々のものを採用することができる。
【0049】
図4は、回転ムラ低減回路52の構成の一例を示すブロック図である。
図5は、ゲイン情報と進角情報との最適化について説明するタイミングチャートである。
【0050】
図4に示されるように、回転ムラ低減回路52は、測定値保持回路52aと、比較回路52bと、条件変更回路52cとが設けられている。回転ムラ低減回路52は、ゲイン情報や進角情報についての条件を変動させ、最も回転ムラが低減されるゲイン情報と進角情報との組合せを選択し、その情報を含む回転ムラ制御情報Scを出力する。このような動作は、ハードウエアとソフトウエアとのいずれの構成により行われてもよい。
【0051】
まず、条件変更回路52cが、回転ムラ制御情報Scを変化させる。すなわち、ゲイン情報と進角情報とを変化させる。ここでは、例えば、
図5に示される条件aが設定される。条件aでは、ゲインが6dBで、進角が5度である。
【0052】
モータ20が駆動されると、そのときの回転ムラ測定値Swが回転ムラ測定回路51から入力される。ここで、ワウフラッタが0.5パーセントである回転ムラ測定値Swが入力された場合を想定する。そうすると、次のように回転ムラ低減回路52が動作する。
【0053】
測定値保持回路52aは、回転ムラ測定値Swを保持する。
【0054】
条件変更回路52cは、回転ムラ制御情報Scについて、条件aから条件bに変更する。条件bでは、ゲインが6dBで、進角が10度である。そうすると、ワウフラッタが0.4パーセントになる。
【0055】
回転ムラ測定値Swは、比較回路52bに入力される。
【0056】
比較回路52bは、入力された回転ムラ測定値Swと測定値保持回路52aで保持されている回転ムラ測定値Swとを比較する。比較した結果、小さい方の回転ムラ測定値Swが測定値保持回路52aで保持され、条件変更回路52cは、そのときの条件になるように、回転ムラ制御情報Scを必要に応じて変更する。すなわち、条件aから条件bに変更されて、ワウフラッタが0.5パーセントから0.4パーセントになったとき、小さい方のワウフラッタ0.4パーセントが保持され、条件bでの回転ムラ制御情報Scが出力される。
【0057】
このような条件の変更と回転ムラ測定値Swの比較とが、
図5に示されるように用意された全部の条件(条件a〜p)について繰り返される。すなわち、条件a〜pのそれぞれの場合の、回転ムラ測定値Swすなわちワウフラッタの値が求められる。
【0058】
図5に示される例では、条件h(ゲインが12dB、進角が20度)において、ワウフラッタが最小(0.1パーセント)になる。この条件が、最も回転ムラが低減される、最適化された最適ゲイン情報及び最適進角情報として決定され、保持される。これにより、最適ゲイン情報及び最適進角情報を含む回転ムラ制御情報Scが出力される。
【0059】
このようなゲイン情報と進角情報との最適化に関する動作を、回転ムラ情報生成部5において行われる動作として、フローチャートを参照して説明すると、以下のようになる。
【0060】
図6は、回転ムラ情報生成部5においてゲイン情報と進角情報との最適化に関する動作を説明するフローチャートである。
【0061】
モータ駆動制御装置1では、回転ムラ情報生成ステップとして、例えば、
図6に示されるような処理が回転ムラ情報生成部5において行われることにより、ゲイン及び進角の最適化を自動的に行うことができる。
【0062】
ステップS11からステップS13までの処理と、ステップS15からステップS18までの処理とが、回転ムラ低減回路52において行われる。ステップS14の処理は、回転ムラ測定回路51において行われる。
【0063】
ここでは、例えば、目標速度信号が1000Hzであって、ゲイン情報(ゲイン値)の採りうる値が6dB、12dB、18dB、24dBであって、進角情報(進角値)の採りうる値が、5度、10度、15度、20度である場合を想定する。
【0064】
図6に示されるように、ステップS11において、ゲイン値が設定される。ゲイン値は、初期値G0が6dBであり、その後、nが1増加する毎に、6dBずつ増加される。
【0065】
ステップS12において、進角値が設定される。進角値は、初期値A0が5度であり、その後、mが1増加する毎に、5度ずつ増加される。
【0066】
ステップS13において、条件変更回路52cは、設定したゲイン値と進角値とを回転ムラ制御情報Scとして出力する。制御回路部3においては、この回転ムラ制御情報Scに基づいて、モータ20の駆動が制御される。
【0067】
ステップS14において、回転ムラ測定回路51で、回転ムラが測定される。回転ムラ測定値Swが回転ムラ測定回路51から出力される。
【0068】
ステップS15において、比較回路52b及び測定値保持回路52aは、前回の回転ムラ測定値Swと今回出力された回転ムラ測定値Swとを比較して、値が小さい方の条件を保持する。
【0069】
ステップS16において、条件変更回路52cは、進角値が、所定の最終値(本例では、20度)に到達したか否かを判別する。最終値でなければ、ステップS12に戻り、進角値だけを変化させてステップS13からステップS15の処理が行われる。
【0070】
ステップS16において進角値が最終値であれば、ステップS17において、ゲイン値が、所定の最終値(本例では、24dB)に到達したか否かを判別する。最終値でなければ、ステップS11に戻り、ゲイン値を変化させた上で、各進角値についてステップS13からステップS15の処理が行われる。
【0071】
ステップS17においてゲイン値が最終値であれば、ステップS18において、回転ムラが最も小さい値となる条件が決定される。すなわち、その時点で保持されている条件が、最適ゲイン値及び最適進角値となる。条件変更回路52cは、その最適化された条件のゲイン値と進角値とを含む回転ムラ制御情報Scを出力する。これにより、最適化された回転ムラ制御情報Scに基づいて、制御回路部3によりモータ20の駆動制御が行われる。
【0072】
なお、最適化のために変動させる回転ムラ制御情報Scの変動幅は、上述に限られるものではない。広い幅で変動させて最適化を行えるようにすることにより、モータ20の使用条件の幅を広くすることができ、広い用途においてモータ20の回転ムラを抑制させる制御を行うことができる。
【0073】
図7は、モータ駆動制御装置1による回転ムラの低減結果の具体例を説明する図である。
【0074】
図7においては、目標速度信号EXCが500Hz以上で変化するときの、それぞれの目標速度信号EXCにおけるワウフラッタの推移(実線)を示す図である。
図7における破線は、許容されるワウフラッタの上限値の例を示す。最小値と最大値とは、その回転速度における、ゲイン情報と進角値情報とを変動させたときにワウフラッタが変化する幅を示すものである。
【0075】
図7に示されるように、本実施の形態においては、上述のように、フラッタ特性を示す回転ムラが最小になるように、ゲイン情報と進角情報とが最適化されて、最適化されたゲイン情報と進角情報とに基づいて、制御回路部3がモータ20の駆動を制御する。したがって、どの速度域でも、常にワウフラッタが最小になるようにしてモータ20が駆動される。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態においては、回転ムラ測定機能がモータ駆動制御装置1に内蔵されているので、専用の回転ムラ測定器を必要とせずに、どのような使用環境においても簡易に回転ムラを測定できる。そして、回転ムラの低減された状態でのモータ20の回転制御を行うことができる。
【0078】
従来、モータ設計者は、要求される回転ムラの規格(例えば、「ワウフラッタが0.20%以下であること」など)を満足させるため、ゲイン情報や進角情報を最適化することが必要であった。モータ駆動制御装置1では、回転ムラを低減するためのゲイン情報と進角情報との最適化を自動的な処理で行うことができる。すなわち、従来、モータ設計者が行っていた、最適化に関する負担の重い人的作業工程を、モータ駆動制御装置1自体が担うことになる。モータ設計者は、要求されるモータ20の使用環境でモータ20を駆動させるだけで、そのモータ20に対するゲイン/進角の最適化を自動的に行うことができる。したがって、モータ設計者の設定作業にかかる工数を大幅に削減することができる。その結果、モータ20が用いられる装置やその回転数等の使用条件に応じて、回転ムラが小さいモータ20を容易に提供することができる。
【0079】
量産するモータ20の種類に応じて、最適化したゲイン情報や進角情報を出力できるようにすることで、使用条件の幅を広げることができる。
【0080】
同じモデルのモータ20でも、低速回転であって高負荷な環境や、高速回転であって低負荷な環境等、様々な条件で使用される。本発明のモータ駆動制御装置を用いれば、それぞれの条件に対応して、回転ムラが低くなるように自動的に最適化できる。そのため、1種類のモータ20及びモータ駆動制御装置1を用意するだけで、幅広い状況においてモータ20を利用することができる。したがって、モータ20の生産管理や在庫管理等を行いやすくなる。
【0081】
モータの出荷後、ユーザが使用している環境下でも、自動的にゲイン情報や進角情報の最適化が行われる。したがって、モータが使用される装置や用途の変更、使用条件の変更等があっても、ゲイン情報や進角情報を設定し直す手間が不要になる。
【0082】
回転ムラ情報生成部は、他の回路とともに、ロジック回路で構成されたりソフトウエア処理などを行うように構成されたりすることにより集積化されている。したがって、モータ駆動制御装置1の小型軽量化や低価格化をすることができる。
【0084】
必要に応じて、回転ムラ測定値Swは、そのままモータ駆動制御装置1の外部に出力できるようにしてもよい。また、必要に応じて、回転ムラ制御情報Scは、そのままモータ駆動制御装置1の外部に出力できるようにしてもよい。このとき、出力方法としては、数値表示であったり、デジタル値のパラレル出力又はシリアル出力であったり、アナログ値出力であったりしてもよい。これによれば、モータ20のユーザは、専用の計測器や計測環境を準備することなく、モータ20の回転ムラの状況を把握することができる。
【0085】
例えば、回転ムラの測定結果を外部に出力するようにしておけば、いつでも回転ムラ測定値Swを入手できるようになる。したがって、外部に出力されない場合と比較して、製品の付加価値を高めることができる。
【0086】
具体的には、例えば、回転ムラが大きいことを示す回転ムラ測定値Swが出力されている場合は、モータ20の交換時期やメンテナンス時期が到来していると判断するようにするなど、回転ムラ測定値Swを利用した付加機能を有する装置を開発することができる。また、駆動中の回転ムラ測定値Swを常に取得できるため、回転ムラの管理・制御が可能になり、モータ20の性能向上を促進させることができる。
【0087】
このような回転ムラ測定結果の出力機能は、ユーザ側で、製品の性能クラス分けを行う際の判断基準として有効に利用できる。例えば、回転ムラの小さいモータ20は高級機であり、回転ムラの大きいモータ20は低級機であるというように分類することができる。
【0088】
また、例えば画像形成装置にモータ20が用いられる場合、色ムラの発生リスクに関して動作モードを分け、それに応じて動作させることもできる。例えば、回転ムラが小さい駆動方法により、色ムラを小さくする最上級印刷モードや、回転ムラを小さくする制御を行わない駆動方法により、色ムラが大きくなる可能性がある通常印刷モードなど、それぞれの動作モードでモータ20を駆動させることができる。他の種の装置にモータ20が用いられる場合も、同様である。
【0089】
回転ムラ低減回路52や回転ムラ情報記憶部53が設けられた上で、その動作自体や情報の出力動作を有効にするか無効にするかが切り替えられるようにしてもよい。これにより、ゲイン情報や進角情報を外部で行うような構成が採用されている場合など、より広い用途に応じて、モータ20を駆動させることができるようになる。
【0090】
[モータ20及びモータ駆動制御装置1の提供方法の説明]
【0091】
なお、モータ20及びモータ駆動制御装置1は、次のように2通りの方法で提供されればよい。
【0092】
すなわち、第1の方法として、予め、回転ムラ制御情報Sc(最適ゲイン/最適進角の定数)が設定されるようにしてもよい。例えば、評価・検討工程においては、最適な定数を回転ムラ情報生成部5により出力し、モータ設計者が最適な定数を管理する。そして、モータ20の量産フェーズにおいては、最適な回転ムラ制御情報Scが制御回路部3に出力されるように設定し、回転ムラ低減回路52の回転ムラの自動設定機能を無効にした状態で、ユーザに出荷する。ユーザは、最適化された定数の設定が完了したモータ20を用いて、回転ムラが少ないモータ20を用いることができる。
【0093】
また、第2の方法として、最適定数が常時自動的に設定されるようにしてもよい。この場合、ユーザが使用する条件で、最も回転ムラが抑えられるように回転ムラ低減回路52が定数の自動設定を行うようにされた状態で、モータ20及びモータ駆動制御装置1がユーザに出荷される。これにより、ユーザがモータ20を使用するたび、最適な定数の設定が自動的に行われることになる。
【0095】
モータ駆動制御装置は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0096】
回転ムラ低減回路や回転ムラ情報記憶部は設けられていなくてもよい。この場合、上述のように、回転ムラの測定結果である回転ムラ測定値がモータ駆動制御装置の外部に出力され、それに基づいて生成された回転ムラ制御情報がモータ駆動制御装置に入力されるようにしてもよい。制御回路部は、外部から入力された回転ムラ制御情報に基づいて、駆動制御信号を生成することで、上述の実施の形態と同様にモータの駆動制御を行うことができる。
【0097】
モータの駆動方式は、通常の正弦波駆動に限定されず、矩形波による駆動方式や、台形波による駆動方式や、正弦波に特殊な変調をかけた駆動方式などであってもよい。
【0098】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0099】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限定されず、他の相数のブラシレスモータであってもよい。また、モータの種類も特に限定されない。
【0100】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。
【0101】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。