特許第6393258号(P6393258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393258
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】微細有機顔料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/02 20060101AFI20180910BHJP
   C09B 67/04 20060101ALI20180910BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20180910BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20180910BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20180910BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20180910BHJP
【FI】
   C09B67/02 B
   C09B67/04
   C09B67/20 A
   C09B67/20 F
   C09B67/20 L
   C09B67/46 B
   C09D17/00
   C09D11/322
【請求項の数】7
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-517124(P2015-517124)
(86)(22)【出願日】2014年5月14日
(86)【国際出願番号】JP2014062890
(87)【国際公開番号】WO2014185475
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2017年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-102204(P2013-102204)
(32)【優先日】2013年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-270407(P2013-270407)
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】袋井 啓宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】津留 功
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐介
(72)【発明者】
【氏名】植田 泰史
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−106260(JP,A)
【文献】 特開昭63−248864(JP,A)
【文献】 特開2009−221376(JP,A)
【文献】 特開2012−025920(JP,A)
【文献】 特開2010−163501(JP,A)
【文献】 特開2007−293061(JP,A)
【文献】 特開2003−057425(JP,A)
【文献】 特開2011−252123(JP,A)
【文献】 エマルゲン120 花王株式会社 製品安全データシート, [online],花王株式会社,2010年11月 1日,[検索日 2014.06.26], インターネット <URL:http://chemical.kao.com/jp/products/B0001920_jpja.html>
【文献】 エマルゲン430 花王株式会社 製品安全データシート, [online],花王株式会社,2009年 9月 3日,[検索日 2014.06.26], インターネット <URL:http://chemical.kao.com/jp/products/B0001953_jpja.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1及び工程2を有する、有機顔料の製造方法であって、
工程1:原料有機顔料と、水溶性無機塩粒子と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2:工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過する工程
前記水溶性有機溶媒が、アルコール性水酸基を2以上、3以下有する脂肪族化合物であり、前記工程1が、下記の工程1−1及び1−2を含み、前記有機顔料の前記原料有機顔料に対する一次粒子径比(有機顔料の一次粒子径/原料有機顔料の一次粒子径)が、0.01以上、0.9以下であり、前記水溶性無機塩粒子の平均粒子径が0.1μm以上、1000μm以下である、有機顔料の製造方法。
工程1−1:原料有機顔料と、水溶性無機塩粒子と、水溶性有機溶媒とを混合する工程
工程1−2:工程1−1で得られた混合物と、式(1)で表される化合物との混合物を混練する工程
【請求項2】
前記工程1において、前記水溶性無機塩粒子100質量部に対し0.6質量部以上10質量部以下の水を更に配合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程1において、前記原料有機顔料100質量部に対し1.5質量部以上35質量部以下の水溶性塩基性化合物を更に配合する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程1−2が、工程1−1で得られた混合物と、式(1)で表される化合物と、水及び水溶性塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種との混合物を混練する工程である、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の方法によって得られる、有機顔料と、溶媒とを分散する工程を有する、分散体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の方法によって得られる、有機顔料と、溶媒とを分散する工程を有する、インクの製造方法。
【請求項7】
下記工程1及び工程2を含む有機顔料ペーストの製造方法であって、
工程1:原料有機顔料と、水溶性無機塩粒子と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2:工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過する工程
前記水溶性有機溶媒が、アルコール性水酸基を2以上、3以下有する脂肪族化合物であり、前記工程1が、下記の工程1−1及び1−2を含み、前記有機顔料の前記原料有機顔料に対する一次粒子径比(有機顔料の一次粒子径/原料有機顔料の一次粒子径)が、0.01以上、0.9以下であり、前記水溶性無機塩粒子の平均粒子径が0.1μm以上、1000μm以下である、有機顔料ペーストの製造方法。
工程1−1:原料有機顔料と、水溶性無機塩粒子と、水溶性有機溶媒とを混合する工程
工程1−2:工程1−1で得られた混合物と、式(1)で表される化合物との混合物を混練する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細有機顔料の製造方法、該方法によって得られる微細有機顔料、該微細有機顔料を用いる分散体の製造方法、該方法によって得られる分散体、及び当該分散体を用いるインクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録は、非常に細いノズルからインク液滴を吐出して記録部材にインクを付着させ、文字や画像等の印刷物を得る方法である。印刷物には高い印字濃度及び光沢性が求められ、またインクジェット用インクには高い吐出性が求められる。また、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターには、高いコントラスト比及び輝度が求められる。そのため、インクジェット用インク及びカラーフィルター等に用いられる顔料は、その一次粒子径が非常に小さい、微細化された顔料が用いられる。
【0003】
原料有機顔料の一次粒子径を小さくして微細有機顔料を得る方法として、ソルベントソルトミリングなどの湿式混練粉砕、乾式粉砕等が広く行われている。ソルベントソルトミリングとは、水溶性無機塩を粉砕メディアとして利用する、粉体などを微粒化するための、湿式混練による粉砕方法である。例えば、原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒とを機械的に混練することにより、顔料が粉砕され、その一次粒子径を小さくすることができる。
【0004】
特許文献1には、原料有機顔料と磨砕助剤と水溶性有機溶剤との混合物をソルベントソルトミリング法により混練する微細化有機顔料の製造方法において、混練時に特定の有機酸の金属塩を有する有機物が存在することを特徴とする微細化有機顔料の製造方法が開示されている。
特許文献2には、粗顔料フタロシアニンをポリエチレングリコールモノエーテルの燐酸エステル又は硫酸エステルの存在下で湿式摩砕処理することで、光沢性、安定性に優れる顔料組成物を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−252123号公報
【特許文献2】特開昭63−248864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ソルベントソルトミリングに代表される湿式混練は顔料の粉砕に有効な方法である。得られる有機顔料の一次粒子径がより小さくなると、インクジェット用インクやカラーフィルターとしての性能を向上させることができるため、より小さな一次粒径を有する有機顔料が得られる方法が望まれる。
また従来の方法で混練によって顔料の一次粒径を非常に小さくできた場合では、混練後の混合物を水性溶媒で洗浄する際に、顔料の一次粒子径が小さいために濾過の際に目詰まりを起こし、洗浄工程における生産性が著しく低下するという課題があった。特許文献1及び2に開示された方法では、これらの課題は解決されていない。
【0007】
本発明は、一次粒子径が非常に小さい微細有機顔料を製造でき、洗浄工程においても濾過性に優れる、微細有機顔料の製造方法、該方法によって得られる微細有機顔料、該微細有機顔料を用いる分散体の製造方法、該方法によって得られる分散体、及び当該分散体を用いるインクの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、下記工程1において、所定量の式(1)で表される化合物を用いて混練することで、洗浄工程においても濾過性に優れ、一次粒子径が非常に小さい微細有機顔料が得られることを見出した。
【0009】
本発明は、[1]〜[6]に関する。
[1]工程1及び工程2を有する、微細有機顔料の製造方法。
工程1 原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2 工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過する工程
[2][1]の方法によって得られる、微細有機顔料。
[3][2]の微細有機顔料を用いて製造される、分散体。
[4]上記工程1及び2を有する微細有機顔料ペーストの製造方法。
[5]上記[4]の製造方法により得られる微細有機顔料ペーストと、有機溶媒と、水と、を分散処理する工程3を有する分散体の製造方法。
[6]上記[5]の製造方法により得られた分散体と、水及び有機溶媒から選ばれる1種以上とを混合する工程4を有するインクの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一次粒子径が非常に小さい微細有機顔料を製造でき、洗浄工程においても濾過性に優れる、微細有機顔料の製造方法、該方法によって得られる微細有機顔料、該微細有機顔料を用いる分散体の製造方法、該方法によって得られる分散体、及び当該分散体を用いるインクの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
工程1 原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記式(1)で表される化合物(以下「化合物(1)」ともいう)とを配合し、得られる混合物(以下、「混練される混合物」ともいう)を、混練する工程
工程2 工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過する工程
を有する、微細有機顔料の製造方法に関する。本発明の微細有機顔料の製造方法によれば、一次粒子径が非常に小さい微細有機顔料を製造でき、洗浄工程においても濾過性に優れるという効果が奏される。
【0012】
本発明の効果発現のメカニズムの詳細は不明であるが、以下の様に推定される。式(1)で表される化合物は、顔料に吸着しやすく、かつ水溶性の高い構造を有する。すなわち、工程1において式(1)で表わされる化合物を配合することで、水溶性有機溶剤中では前記化合物が顔料に吸着して顔料の凝集を解すため、顔料の微細化が促進される。一方、工程2においては大量の水性溶媒が混合されるため、前記化合物は水性溶媒への親和性が高いため工程1とは逆に顔料から脱離して水性溶媒に移行する。そのため、顔料は微細な一次粒子径を保ったまま凝集するため、洗浄時の濾過における目詰まりが解消される。これらの相乗効果により、微細な一次粒子径の有機顔料を高い生産性で製造することができる。但し、これらは推定であって、本発明は、これらメカニズムに限定されない。
【0013】
[原料有機顔料]
本発明において原料有機顔料とは、混練する前の有機顔料を意味する。
【0014】
原料有機顔料としては、好ましくはアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インディゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等の縮合多環系顔料、及び、ジスアゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料等のアゾ系顔料から選択される少なくとも一種を用いることができる。これらの中でも、顔料の粉砕効率及び微細有機顔料の有用性の観点から、より好ましくはキナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジスアゾ系顔料及びベンズイミダゾロン系顔料から選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
本発明の原料有機顔料は、本願発明の効果及び後述の水溶性塩基性化合物を添加することにより得られる効果をより顕著に得る観点から、好ましくは酸素原子と、水素原子と結合した窒素原子とを、分子内に有する。
原料有機顔料の有する水素原子と結合した窒素原子としては、1級アミン、2級アミン等のアミノ基、アミド、及びイミドから選ばれる少なくとも一種の官能基の窒素原子が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させる観点から、好ましくはアミノ基、より好ましくは2級アミンの窒素原子である。原料有機顔料の有する酸素原子としては、エーテル、エステル、アミド、ケトン、アルデヒド等の酸素原子が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果より発現させる観点から、好ましくはケトンの酸素原子である。また、強固な水素結合形成による微細化効果の低減を抑制する観点から、原料有機顔料は、更に好ましくはアミド基を有さない。
【0016】
本発明の原料有機顔料としては、好ましくはキナクリドン系顔料及びジケトピロロピロール系顔料から選択される少なくとも一種を用いることができる。これらの中でも本発明の効果をより発現させる観点から、より好ましくはキナクリドン系顔料である。キナクリドンはケトン基と2級アミノ基とを有し、両官能基は隣接せず、アミド基を有さないため、強固な水素結合を形成せず、本発明の微細化効果が更により発現するものと推定される。
【0017】
キナクリドン系顔料としては、C.I.P.V.19(無置換キナクリドン)、及びC.I.P.R.122(2,9−ジメチルキナクリドン)、C.I.P.R.202(2,9−ジクロロキナクリドン)、C.I.P.R.206(キナクリドンキノンと無置換キナクリドンの固溶体)、C.I.P.R.207(4,11−ジクロロキナクリドンと無置換キナクリドンの固溶体)、C.I.P.R.209(3,10−ジクロロキナクリドン)、C.I.P.O.48(キナクリドンキノンと無置換キナクリドンの固溶体)、C.I.P.O.49(キナクリドンキノンと無置換キナクリドンの固溶体)、C.I.P.V.42(キナクリドン固溶体)、C.I.P.O.49(キナクリドンキノンと無置換キナクリドンの固溶体)、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「CROMOPHTAL Jet 2BC」(キナクリドン固溶体)、DIC株式会社製「FASTGEN SUPER MAGENTA RY」(キナクリドン固溶体)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
原料有機顔料の一次粒子径は、粉砕効率の観点から、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは150nm以下であり、また、同様の観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは45nm以上、更に好ましくは60nm以上である。一次粒子径の測定方法は実施例に記載の方法による。
【0019】
[顔料誘導体]
混練される混合物に、各種の顔料誘導体が含まれていてもよい。顔料誘導体は、前記原料有機顔料化合物の誘導体が好ましい。誘導体の有する置換基としては、水酸基、カルボキシ基、カルバモイル基、スルホ基、スルホンアミド基、フタルイミドメチル基等が挙げられる。また顔料誘導体には、一般に有機顔料の単位構造ではないナフタレン系化合物、アントラキノン系化合物等の芳香族多環化合物も含まれる。これらは単独または2種類以上を混合して用いることができる。
【0020】
混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する顔料誘導体の含有量は、顔料の分散性及び微細化の観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、色相の変化を抑制する観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。色相の変化を抑制して顔料粒子を微細化する観点からは、顔料誘導体を実質的に含まないことが好ましい。
【0021】
[水溶性無機塩]
本発明において、混練される混合物に配合される水溶性無機塩は、粉砕効率の観点から、好ましくは金属塩、より好ましくは金属塩化物及び金属硫酸塩、更に好ましくは金属塩化物である。金属塩の金属としては、水溶性、経済性及び入手容易性の観点から、好ましくはアルカリ金属及び第2族元素から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアルカリ金属である。また、経済性及び入手容易性の観点から、より好ましくは、ナトリウム、カリウム及びマグネシウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはナトリウムである。水溶性無機塩としては、粉砕効率及び水溶性の観点から、好ましくはアルカリ金属塩化物及びアルカリ金属硫酸塩から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアルカリ金属塩化物である。また、経済性及び入手容易性の観点から、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、より好ましくは塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種、更に好ましくは塩化ナトリウムである。
【0022】
水溶性無機塩の20℃における水100gに対する溶解度は、混練工程を経て得られる混合物から水溶性無機塩を除去する観点から、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上、更に好ましくは30g以上であり、また、粉砕効率の観点から、好ましくは100g以下、より好ましくは60g以下、更に好ましくは40g以下である。
【0023】
水溶性無機塩は、水溶性有機溶媒に対して好ましくは難溶性であり、より好ましくは実質的に不溶性である。本発明に用いられる水溶性無機塩の20℃における水溶性有機溶媒100gに対する溶解度は、微細有機顔料の生産性の観点から、好ましくは10g以下、より好ましくは1g以下である。
【0024】
水溶性無機塩の形状は、取扱い性の観点から、好ましくは粒子である。また、その平均粒子径は、粉砕効率の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは700μm以下、更に好ましくは400μm以下、更により好ましくは200μm以下、更により好ましくは50μm以下、更により好ましくは20μm以下であり、また、生産性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。
【0025】
[水溶性有機溶媒]
本発明において、混練される混合物に配合される水溶性有機溶媒は、混練工程を経て得られる混合物から水溶性有機溶媒を除去する観点から、好ましくは水と任意に混和する有機溶媒である。
【0026】
水溶性有機溶媒は、安全性、経済性及び入手容易性の観点から、好ましくはアルコール性水酸基を有する脂肪族化合物である。前記アルコール性水酸基の数は、水溶性及び作業性の観点から好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、取扱い性、経済性及び入手容易性の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは2である。また、前記水溶性有機溶媒は、安全性の観点から好ましくはエーテル結合を有する。前記エーテル結合の数は、取扱い性、経済性及び入手容易性の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、また、好ましくは1以上であり、更に好ましくは1である。
【0027】
水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、2−プロパノール、1−プロパノール、イソブチルアルコール、1−ブタノール、イソペンチルアルコール、1−ペンタノール、イソヘキシルアルコール、1−ヘキサノール、及びグリセリンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。水溶性有機溶媒は、安全性、経済性及び入手容易性の観点から、好ましくはジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、並びにグリセリン、より好ましくはジエチレングリコール(以下、「DEG」ともいう)である。
【0028】
水溶性有機溶媒の沸点は、混練時の安全性及び蒸発を抑制する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは200℃以上である。また、凝固点は、作業性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下である。
【0029】
[化合物(1)]
本発明で用いられる、混練される混合物は、原料有機顔料100質量部に対して、0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物(化合物(1))が配合される。
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
【0030】
としては、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基等が挙げられ、粉砕効率及び、工程2における濾過速度(以下、「濾過性」ともいう)の観点から、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはアルキル基である。Rとしては、粉砕効率及び濾過性の観点から、好ましくは2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基及びジスチレン化フェニル基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはラウリル基、ステアリル基及びオレイル基から選ばれる少なくとも1種であり、経済性及び入手容易性の観点から、更に好ましくはステアリル基である。
【0031】
の炭素数は、粉砕効率及び濾過性の観点から、8以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、また、同様の観点から、24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
【0032】
mは、化合物(1)の製造容易性の観点から、30以下であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、また、濾過性の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、また、好ましくは0以上であり、更に好ましくは0である。
nは、粉砕効率、濾過性及び水性溶媒による洗浄性の観点から、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、また、粉砕効率及び化合物(1)の取扱い性の観点から、70以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。
【0033】
m+nは、粉砕効率及び濾過性の観点から、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、また、粉砕効率、並びに化合物(1)の取扱い性及び製造容易性の観点から、70以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。
【0034】
m/(m+n)は、濾過性及び水性溶媒による洗浄性の観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下であり、また、好ましくは0以上であり、更により好ましくは0である。
【0035】
なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。
PO及びEOが存在する場合、POとEOの付加形態は、例えば、ランダム、ブロックが挙げられ、好ましくは、ブロックである。ブロックとしては、POとEOの付加順序は任意に選択でき、ジブロック、トリブロック等を挙げることができ、好ましくはジブロックである。
PO及びEOが存在する場合、粉砕効率及び製造容易性の観点から、好ましくはEOの酸素原子とAが結合し、より好ましくは、ROの酸素原子とPOの炭素原子が結合し、EOの酸素原子とAが結合する。
【0036】
Aは、粉砕効率及び濾過性の観点から、好ましくは水素原子、−SO又は−POであり、より好ましくは水素原子又は−SOであり、濾過性の観点からは、更に好ましくは−SOであり、化合物(1)の製造容易性の観点からは、更に好ましくは水素原子である。Xは、粉砕効率の観点からは、好ましくはNa、K又はNHであり、より好ましくはNa又はNHであり、濾過性の観点からは、好ましくはNa、K又はNHOHであり、より好ましくはNa又はNHOHであり、粉砕効率及び濾過性の観点からは、好ましくはNa又はKであり、粉砕効率、濾過性、経済性及び入手容易性の観点からは、好ましくはNaである。
【0037】
混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する化合物(1)の配合量は、粉砕効率の観点から0.8質量部以上であり、好ましくは1.2質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは4.5質量部以上であり、また、粉砕効率、濾過性及び経済性の観点から、18.0質量部以下であり、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは9.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下である。
【0038】
混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する化合物(1)の含有量は、粉砕効率の観点から0.8質量部以上であり、好ましくは1.2質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは4.5質量部以上であり、また、粉砕効率、濾過性及び経済性の観点から、18.0質量部以下であり、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは9.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下である。
【0039】
[水]
本発明の混練される混合物は、顔料の微粒化の観点から、好ましくは水が配合され、より好ましくは水溶性無機塩100質量部に対して、0.6質量部以上10質量部以下の水が配合される。0.6質量部以上の水を配合することにより、粉砕メディアとなる水溶性無機塩の表面の粘性を高め、粉砕効率が高まると考えられる。また、10質量部以下の水を配合することにより、水溶性無機塩の形状を保って粉砕メディアとしての機能を保つことにより、粉砕効率が高まると考えられる。
【0040】
混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の配合量は、粉砕効率の観点から好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、より更に好ましくは1.3質量部以上、より更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、同様の観点から好ましくは7.0質量部以下であり、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である。
【0041】
混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の含有量は、粉砕効率の観点から、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、更により好ましくは1.3質量部以上、更により好ましくは1.5質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である。
【0042】
本発明で混練される混合物に配合される水は、水道水、イオン交換水、地下水、及び蒸留水から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、微細有機顔料の品質を保つ観点から、好ましくはイオン交換水である。
【0043】
[水溶性塩基性化合物]
本発明の混練される混合物には、顔料の微粒化の観点から、好ましくは水溶性塩基性化合物が配合され、より好ましくは原料有機顔料100質量部に対し1.5質量部以上35質量部以下の水溶性塩基性化合物が配合される。1.5質量部以上の水溶性塩基性化合物を配合することにより、界面活性剤との相乗効果を発揮し、又は顔料の分子間水素結合を切断し、粉砕効率が高まると考えられる。また、35質量部以下の水溶性塩基性化合物を配合することにより、洗浄効率を高め、排水負荷を軽減でき、また、微細有機顔料の品質を向上できると考えられる。
【0044】
水溶性塩基性化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;アンモニア、金属の水酸化物、酸化物及び炭酸塩等の無機塩基性化合物;及びこれらの混合物等が挙げられ、取扱い性及び粉砕効率の観点から、好ましくは無機塩基性化合物である。無機塩基性化合物としては、経済性及び入手容易性の観点から、好ましくはアルカリ金属の、水酸化物及び炭酸塩、並びにカルシウム及びマグネシウムの、酸化物及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1種であり、粉砕効率の観点から、より好ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であり、微細有機顔料の品質向上の観点から、更に好ましくは水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種、更により好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0045】
混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する水溶性塩基性化合物の配合量は、粉砕効率の観点から、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは4.0質量部以上、より更に好ましくは5.5質量部以上、より更に好ましくは7.0質量部以上であり、また、経済性及び微細有機顔料の品質向上の観点から、好ましくは35質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、より更に好ましくは12質量部以下、より更に好ましくは9質量部以下である。
【0046】
前記水溶性塩基性化合物を配合する場合は、粉砕効率の観点から、より好ましくは前述した水を配合し、更に好ましくは水溶性無機塩100質量部に対して、0.6質量部以上10質量部以下の水を配合する。0.6質量部以上の水を配合することにより、粉砕メディアとなる水溶性無機塩の表面の粘性を高めることに加え、界面活性剤との相乗効果を発揮し、又は水溶性塩基性化合物を電離させて顔料の分子間水素結合を切断し、粉砕効率が高まると考えられる。また、10質量部以下の水を配合することにより、水溶性無機塩の形状を保って粉砕メディアとしての機能を保つことに加え、界面活性剤との相乗効果を発揮し、又は水に対する水溶性塩基性化合物の濃度を高くして顔料の分子間水素結合の切断を促進し、粉砕効率が高まると考えられる。
【0047】
前記水溶性塩基性化合物を配合する場合は、混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の配合量は、粉砕効率の観点から好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、より更に好ましくは1.3質量部以上、より更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、同様の観点から好ましくは7.0質量部以下であり、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である。
【0048】
混練される混合物中における、水と水溶性塩基性化合物との合計に対する水溶性塩基性化合物の配合量は、粉砕効率の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは22質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、また、経済性及び混練後の洗浄性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0049】
[工程1]
工程1(以下、「混練工程」ともいう)は、原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の化合物(1)とを配合し、得られる混合物を混練する工程である。前記混合物には、好ましくは水及び水溶性塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種を更に配合し、より好ましくは水を更に配合し、更に好ましくは水及び水溶性塩基性化合物を更に配合する。混練工程を経て得られる混合物(以下、「混練後の混合物」ともいう)は、一次粒子径の小さい微細な有機顔料を含有する。
【0050】
混練工程においては、バッチ式及び連続式、並びに常圧、加圧及び減圧式等の、種々の混練機を用いることができる。前記混練機としては2本ロール、3本ロール、多軸ロール等のロールミル;1軸、2軸等の押出機;プラネタリーミキサー等の攪拌型が挙げられる。攪拌型としては、株式会社井上製作所製「トリミックス」等が、押出機としては、株式会社栗本鐵工所製「KRCニーダー」、浅田鉄工株式会社製「ミラクルK.C.K」等が挙げられる。
【0051】
混練時の混合物の温度は、粉砕効率及び水の蒸発を抑制する観点から好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下であり、また、冷却の負荷を低減する観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上である。
【0052】
混練工程の時間は、顔料を微細化する観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは15時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
【0053】
(工程1−1及び工程1−2)
混練工程としては、例えば本発明の原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、化合物(1)とを前記混練機等に充填し、混練を行う方法が挙げられる。混練工程は、混練される混合物中の化合物(1)の組成分布を均一にする観点から、好ましくは本発明の原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒とを混合する工程(以下「工程1−1」ともいう)と、工程1−1で得られた混合物と化合物(1)と、任意で配合される水及び水溶性塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種との混合物を混練する工程(以下「工程1−2」ともいう)を有する。作業性の観点から、更に好ましくは工程1−1と工程1−2とは同一の混練機にて行う。
水及び水溶性塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種を配合する場合、工程1−2は、好ましくは、工程1−1で得られた混合物と、化合物(1)と、水及び水溶性塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種との混合物を混練する工程である。
【0054】
前記工程1−1の時間は、混練される混合物中の組成分布を均一にする観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは20分以上であり、また、生産性の観点から好ましくは1時間以下である。
【0055】
前記工程1−2の時間は、顔料を微細化する観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは15時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
【0056】
混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する水溶性無機塩の配合量は、粉砕効率の観点から、好ましくは100質量部以上、より好ましくは300質量部以上、更に好ましくは400質量部以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは3000質量部以下、より好ましくは1000質量部以下、更に好ましくは800質量部以下である。
【0057】
混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する水溶性有機溶媒の配合量は、粉砕効率の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは100質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは200質量部以下である。
【0058】
(工程1−3)
本発明の微細有機顔料の製造方法は、好ましくは下記工程1−3を更に含む。
工程1−3:上記工程1又は、工程1−1及び工程1−2の混練後の混合物と、ポリマーとを混練する工程
工程1−3においては、更に有機溶媒を加えてもよい。
工程1−3で使用する混練機、混練温度等の混練条件は、上記工程1で例示される条件と同様の条件が好ましい。
工程1−3における混練時間は、顔料の分散性の観点から、好ましくは0.25時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは0.75時間以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは2時間以下である。
【0059】
(ポリマー)
顔料の分散安定性のため、ポリマーが用いられる。ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられ、水分散体の保存安定性の観点から、好ましくはビニル系ポリマーであり、より好ましくはビニル化合物、ビニリデン化合物及びビニレン化合物から選ばれる1種以上のビニル系モノマーの付加重合により得られるビニル系ポリマーである。
当該ポリマーは、分散性の観点から、アニオン性ポリマーが好ましい。ここで、「アニオン性」とは、未中和の物質を、純水に分散又は溶解させた場合、pHが7未満となること、又は物質が純水に不溶であり、pHが明確に測定できない場合には、純水に分散させた分散体のゼータ電位が負となることをいう。
【0060】
当該ポリマーとしては、好ましくは、(a)アニオン性モノマー(以下「(a)成分」ともいう)と、(b)疎水性モノマー(以下「(b)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)の共重合により得られるビニル系ポリマーである。
前記ビニル系ポリマーは、好ましくは(a)成分由来の構成単位と(b)成分由来の構成単位を有する。
【0061】
〔アニオン性モノマー:(a)成分〕
(a)成分は、本発明に用いるポリマーを構成するモノマー成分として好ましく用いられる。(a)成分由来の構成単位は、静電反発により顔料を水分散体中で安定に分散させると考えられる。
(a)成分としては、アニオン性基として、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基を有するモノマー等が挙げられ、顔料の分散安定性の観点から、好ましくはカルボキシ基を有するモノマー、より好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上である。
【0062】
〔疎水性モノマー:(b)成分〕
(b)成分は、ポリマーを構成するモノマー成分として好ましく用いられる。(b)成分由来の構成単位は、顔料表面へのポリマーの吸着を促進させることにより、顔料の分散安定性に寄与すると考えられる。
(b)成分としては、ポリマーの製造容易性の観点から、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート及びエチレン性二重結合を有する芳香族化合物(以下、「芳香族モノマー」ともいう)から選ばれる1種以上であり、顔料の分散安定性の観点から、より好ましくは芳香族モノマーである。
【0063】
前記芳香族モノマーとしては、ポリマーの製造容易性の観点から、好ましくはスチレン系モノマー及び芳香族基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。
スチレン系モノマーとしては、入手容易性の観点から、より好ましくはスチレンである。
芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、入手容易性の観点から、より好ましくはベンジル(メタ)アクリレートである。本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を示す。
【0064】
〔その他のモノマー成分〕
モノマー混合物は、分散安定性の観点から、(a)成分及び(b)成分以外の、その他のモノマー成分を含んでもよい。その他のモノマー成分としては、例えば、下記一般式(c1)で表される化合物、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上のマクロマー等が挙げられる。
【0065】
【化1】
【0066】
式(c1)中、Rc1は水素原子又はメチル基、Rc2は炭素数2又は3のアルカンジイル基、nは(Rc2O)で示される構成単位の平均構成単位数を示す1以上100以下の数、Rc3は水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を示す。
マクロマーとしては、市販品として、東亞合成株式会社製「AS−6(S)」、「AN−6(S)」、「HS−6(S)」等が挙げられる。
上記(a)成分、(b)成分、及びその他のモノマー成分は、それぞれ単独で又は2種以上を用いることができる。
【0067】
当該ポリマー中における(a)成分及び(b)成分に由来する構成単位の好ましい含有量は、次のとおりである。
(a)成分由来の構成単位の含有量は、インクの保存安定性の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
(b)成分由来の構成単位の含有量は、インクの印字濃度向上の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0068】
(ポリマーの製造)
前記ポリマーは、例えばモノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。モノマー混合物中における上記(a)成分及び(b)成分の好ましい含有量は、前述のポリマー中における(a)成分及び(b)成分に由来する構成単位の好ましい含有量と同じである。
重合法としては溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いる溶媒としては、ポリマーの製造容易性、及び顔料の分散性の観点から、好ましくは炭素数4以上8以下の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上、より好ましくは炭素数4以上8以下のケトン、更に好ましくはメチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)である。
重合においては、公知の重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。重合開始剤としては、好ましくはアゾ化合物、より好ましくは2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)であり、重合連鎖移動剤としては、好ましくはメルカプタン類、より好ましくは2−メルカプトエタノールである。
【0069】
好ましい重合条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、重合温度は50℃以上80℃以下が好ましく、重合時間は1時間以上20時間以下であることが好ましい。重合は、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行われることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
ポリマーの重量平均分子量は、顔料の分散安定性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは1万以上であり、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、更に好ましくは30万以下、更により好ましくは20万以下である。
【0070】
上記ポリマーの市販品としては、BASFジャパン株式会社製「ジョンクリル」シリーズの「67」、「68」、「678」、「680」、「682」、「683」、「690」、「819」等が挙げられる。
【0071】
(中和剤)
本発明においては、前記ポリマーがアニオン性基を有する場合、中和剤を用いて、前記アニオン性基を中和してもよい。中和剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられる。
ポリマーの中和度は、分散安定性の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、顔料の分散性の観点から、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
ポリマーの中和度は、下記式によって求めることができる。
中和度(モル%)={[中和剤の質量(g)/中和剤のグラム当量]/[ポリマーの酸価(mgKOH/g)×ポリマーの質量(g)/(56×1000)]}×100
ポリマーの酸価は、ポリマーの製造時におけるモノマー成分の比から、計算で算出することができる。また、MEK等のポリマーを溶解できる溶媒にポリマーを溶解して、アルカリ剤で滴定する方法で求めることができる。
【0072】
工程1−3の有機溶媒としては、工程1で用いられる水溶性有機溶媒として例示されたものが好ましく用いられる。
【0073】
工程1−3において混練される混合物中の有機顔料の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
工程1−3の混合物中の有機顔料100質量部に対するポリマーの量は、分散安定性の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、同様の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
工程1−3の混合物中の、有機顔料100質量部に対する有機溶媒の量は、処理効率の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは100質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量部以下である。
【0074】
[工程2]
工程2は、混練後の混合物から水溶性無機塩、水溶性有機溶媒及び化合物(1)を除去する観点から、混練後の混合物を水性溶媒で洗浄し濾過する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)である。
【0075】
洗浄工程は、例えば以下の方法が挙げられる。混練後の混合物に含まれる水溶性無機塩及び水溶性有機溶媒を溶解するのに十分な量の水等の水性溶媒と、混練後の混合物とを攪拌混合し、顔料の分散液を得る。次いで分散液を濾過し、得られたウエットケーキを更に水性溶媒で洗浄することにより、水溶性無機塩、水溶性有機溶媒及び化合物(1)が除去された微細有機顔料ペースト(以下、単に「顔料ペースト」ともいう)が得られる。
【0076】
洗浄工程における濾過は、例えば、フィルタープレス機を用いて行なうことができる。フィルタープレス機としては、市販品として、薮田式濾過圧搾機(薮田機械株式会社製「丸型テスト機 YTO−8型」)、密閉式自動連続加圧ろ過装置(寿工業株式会社製「ロータリーフィルター」)が挙げられる。濾過圧力は、例えば、0.1〜1MPaである。
【0077】
洗浄工程で用いられる水性溶媒は、洗浄性の観点から、好ましくは水、より好ましくは水道水、イオン交換水、蒸留水、地下水及び鉱酸水溶液から選ばれる少なくとも1種であり、微細有機顔料の品質を保つ観点から、更に好ましくはイオン交換水であり、経済性の観点からは、より更に好ましくは地下水及び鉱酸水溶液である。
【0078】
(乾燥工程(工程2−2))
洗浄工程を経て得られた顔料ペーストを更に乾燥及び粉砕することで、粉末状の微細有機顔料が得られる。
【0079】
[微細有機顔料]
本発明の製造方法により得られる微細有機顔料は、上記工程2から得られる顔料ペーストであってもよいし、上記乾燥工程を経た粉末状の微細有機顔料であってもよい。
本発明の製造方法により得られる微細有機顔料は、例えば、上記原料有機顔料由来の顔料及び、任意で添加された顔料誘導体が含まれる。また、微細有機顔料は、その一次粒子径が原料有機顔料よりも小さいものであり、例えば、微細有機顔料の原料有機顔料に対する一次粒子径比(微細有機顔料の一次粒子径/原料有機顔料の一次粒子径)が、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下であり、また、作業効率の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上である。
微細有機顔料の一次粒子径は、顔料の種類及び用途にもよるが、例えば、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上であり、また、好ましくは130nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは60nm以下である。
また、微細有機顔料の一次粒子径は、原料有機顔料の選択、混練される混合物に配合される各成分の量、混練時間等の条件を設定することにより、好適に調整することができる。
なお、一次粒子径の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0080】
本発明の製造方法により得られる微細有機顔料は、インクジェット記録用インクやカラーフィルター等の用途に好適であるほか、例えば、インクジェット記録用以外の印刷用インク、塗料、着色樹脂成型品、静電荷像現像用トナー等の用途にも使用できる。これらの中でも、本発明の微細有機顔料は、インクジェット記録へ使用されることが好ましい。インクジェット記録とは、例えば、ノズルからインク液滴を吐出して記録部材にインクを付着させ、文字や画像等の印刷物を得る方法である。
【0081】
[分散体の製造]
本発明の分散体は、上記微細有機顔料を用いて製造される。
分散体は、例えば、微細有機顔料、溶媒を含む混合物を分散する工程を含む方法により、効率的に製造することができる。
【0082】
(工程3)
また、分散体は、好ましくは、下記工程3を含む方法により、効率的に製造することができる。
工程3:上記微細有機顔料ペーストと、有機溶媒と、水と、を分散処理する工程
上記工程3においては、必要に応じてポリマー又は分散剤を添加することができ、更に中和剤、架橋剤等を加えてもよい。
【0083】
分散剤としては、界面活性剤、(メタ)アクリル酸系(共)重合体、脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基を有するポリエステル系オリゴマー、オルガノシロキサンポリマー、及び塩基性ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ポリマー及び中和剤としては、上述の工程1−3で例示されるものが好ましく用いられる。
【0084】
(溶媒)
溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。
水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水が挙げられ、好ましくはイオン交換水である。
有機溶媒としては、アセトン、MEK、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」ともいう)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「BCA」ともいう)等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒が挙げられる。これらの中でも、アセトン、MEK、PGMEAがより好ましい。
上記工程3においては、有機溶媒及び水が用いられる。前記有機溶媒は、好ましくはケトン溶媒であり、より好ましくはMEKである。
【0085】
(架橋剤)
本発明においては、分散体及びインクの保存安定性を向上させるために、ポリマーを、分子中に2以上の反応性官能基を有する架橋剤で架橋してもよい。架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0086】
混合物の分散方法としては、任意の方法を選択できるが、顔料粒子を所望の平均粒径に制御する観点から、予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行うことが好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、具体例としては、ウルトラディスパー、浅田鉄工株式会社製「デスパミル」、株式会社荏原製作所製「マイルダー」、太平洋機工株式会社製「マイルダー」、プライミクス株式会社製「TKホモミクサー」、「TKパイプラインミクサー」、「TKホモジェッター」、「TKホモミックラインフロー」、「フィルミックス」等の高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、株式会社イズミフードマシナリ製「高圧ホモゲナイザー」に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、Microfluidics 社製「マイクロフルイダイザー」、吉田機械興業株式会社製「ナノマイザー」、スギノマシン株式会社製「アルティマイザー」、「スターバースト」等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、寿工業株式会社製「ウルトラ・アペックス・ミル」、浅田鉄工株式会社製「ピコミル」、シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料粒子を小粒子径化する観点及び分散体を安定化する観点から、高圧ホモジナイザー、メディア式分散機を用いることが好ましい。
工程3における分散処理は、高圧ホモジナイザーにより行われることが好ましい。
【0087】
分散における温度は、高い分散性を得る観点から、好ましくは5℃以上、また、好ましくは50℃以下、より好ましくは35℃以下である。
分散時間は、高い分散性を得る観点から、好ましくは1時間以上、また、好ましくは30時間以下、より好ましくは25時間以下である。
【0088】
工程3で高圧ホモジナイザーを用いた場合、処理圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは120MPa以上であり、また、好ましくは600MPa以下、より好ましくは300MPa以下、更に好ましくは200MPa以下である。
工程3で高圧ホモジナイザーを用いた場合、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、また、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。
【0089】
微細有機顔料は、分散体中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
分散剤は、分散体中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
溶媒は、分散体中、好ましくは10質量%以上、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0090】
得られた分散体は、水性溶媒を使用した場合、水溶性有機溶媒及び必要に応じて通常用いられる湿潤剤等の添加剤を添加して水系インクとして使用できる。
有機溶媒を使用した場合、分散体は、カラーフィルター用着色組成物(カラーレジスト)及びその原料として使用できる。
【0091】
[インクの製造(工程4)]
本発明のインクの製造方法は、下記工程4を含む。
工程4:上記方法により得られた分散体と、水及び有機溶媒から選ばれる1種以上とを混合する工程
工程4を行うことにより、所望の濃度、粘度等のインク物性を有する水系インクを得ることができる。
当該工程4に用いる有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアルキルエーテルアセテート、含窒素複素環化合物が挙げられる。
【0092】
多価アルコールとしては、例えば、DEG、プロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの中では、グリセリン、プロピレングリコール及びDEGから選ばれる1種以上が好ましい。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられ、好ましくはトリエチレングリコールモノブチルエーテルである。
多価アルコールアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、PGMEA,BCA等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等が挙げられる。
上記有機溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
工程4においては上記水及び有機溶媒のほか、保湿剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を混合してもよい。
本発明の製造方法で得られるインクの固形分は、高濃度のインクを得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、分散安定性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0094】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の微細有機顔料の製造方法、微細有機顔料、分散体等を開示する。
<1> 下記の工程1及び工程2を有する、微細有機顔料の製造方法。
工程1:原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2:工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過する工程
【0095】
<2> 原料有機顔料が、より好ましくはキナクリドン系、ジケトピロロピロール系、ジスアゾ系及びベンズイミダゾロン系顔料から選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の方法。
<3> 原料有機顔料の一次粒子径が、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは150nm以下であり、また、好ましくは30nm以上、より好ましくは45nm以上、更に好ましくは60nm以上である、<1>又は<2>に記載の方法。
<4> 水溶性無機塩が、好ましくはアルカリ金属塩化物及びアルカリ金属硫酸塩から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアルカリ金属塩化物である、<1>〜<3>のいずれかに記載の方法。
<5> 水溶性無機塩が、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくは塩化ナトリウムである、<1>〜<4>のいずれかに記載の方法。
<6> 水溶性無機塩の20℃における水100gに対する溶解度が、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上、更に好ましくは30g以上であり、また、好ましくは100g以下、より好ましくは60g以下、更に好ましくは40g以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の方法。
<7> 水溶性無機塩が、水溶性有機溶媒に対して好ましくは難溶性であり、より好ましくは実質的に不溶性である、<1>〜<6>のいずれかに記載の方法。
<8> 水溶性無機塩の20℃における水溶性有機溶媒100gに対する溶解度が、好ましくは10g以下、より好ましくは1g以下である、<1>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<9> 水溶性無機塩の形状が、好ましくは粒子であり、その平均粒子径が、好ましくは1000μm以下、より好ましくは700μm以下、更に好ましくは400μm以下、更により好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下であり、また、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である、<1>〜<8>のいずれかに記載の方法。
<10> 水溶性有機溶媒が、好ましくはグリコール系溶媒又はグリセリン、より好ましくはジエチレングリコールである、<1>〜<9>のいずれかに記載の方法。
【0096】
<11> Rが、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはアルキル基である、<1>〜<10>のいずれかに記載の方法。
<12> Rが、好ましくは2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基及びジスチレン化フェニル基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはラウリル基、ステアリル基及びオレイル基から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはステアリル基である、<1>〜<11>のいずれかに記載の方法。
<13> Rの炭素数が、8以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、また、24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である、<1>〜<12>のいずれかに記載の方法。
<14> mが、30以下であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、また、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、また、好ましくは0以上であり、更に好ましくは0である、<1>〜<13>のいずれかに記載の方法。
<15> nが、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、また、70以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である、<1>〜<14>のいずれかに記載の方法。
<16> m+nが、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、また、70以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である、<1>〜<15>のいずれかに記載の方法。
<17> m/(m+n)が、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下であり、また好ましくは0以上であり、更により好ましくは0である、<1>〜<16>のいずれかに記載の方法。
<18> PO及びEOが存在する場合、POとEOの付加形態が、好ましくはブロック、より好ましくはジブロックである、<1>〜<17>のいずれかに記載の方法。
<19> PO及びEOが存在する場合、好ましくはEOの酸素原子とAが結合し、より好ましくは、ROの酸素原子とPOの炭素原子が結合し、EOの酸素原子とAが結合する、<1>〜<18>のいずれかに記載の方法。
<20> Aが、好ましくは水素原子、−SO又は−POであり、より好ましくは水素原子又は−SOであり、更に好ましくは−SOであり、更に好ましくは水素原子である、<1>〜<19>のいずれかに記載の方法。
<21> Xは、好ましくはNa、K又はNHであり、より好ましくはNa又はNHである、<1>〜<20>のいずれかに記載の方法。
<22> Xは、好ましくはNa、K又はNHOHであり、より好ましくはNa又はNHOHである、<1>〜<20>のいずれかに記載の方法。
<23> Xは、更に好ましくはNa又はKである、<1>〜<20>のいずれかに記載の方法。
<24> Xは、更により好ましくはNaである、<1>〜<20>のいずれかに記載の方法。
【0097】
<25> 原料有機顔料100質量部に対する化合物(1)の配合量が、0.8質量部以上であり、好ましくは1.2質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは4.5質量部以上であり、また、18.0質量部以下であり、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは9.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下である、<1>〜<24>のいずれかに記載の方法。
<26> 原料有機顔料100質量部に対する化合物(1)の含有量が、0.8質量部以上であり、好ましくは1.2質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは4.5質量部以上であり、また、18.0質量部以下であり、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは9.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下である、<1>〜<25>のいずれかに記載の方法。
<27> 前記工程1において、好ましくは水を更に配合し、より好ましくは前記水溶性無機塩100質量部に対し0.6質量部以上10質量部以下の水を更に配合する、<1>〜<26>のいずれかに記載の方法。
<28> 混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の配合量が、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、より更に好ましくは1.3質量部以上、より更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは7.0質量部以下であり、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である、<27>に記載の方法。
<29> 混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の含有量が、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、更により好ましくは1.3質量部以上、更により好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である、<27>又は<28>に記載の方法。
<30> 前記工程1において、好ましくは水溶性塩基性化合物を更に配合し、より好ましくは前記原料有機顔料100質量部に対し1.5質量部以上35質量部以下の水溶性塩基性化合物を更に配合する、<1>〜<29>のいずれかに記載の方法。
<31> 混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する水溶性塩基性化合物の配合量が、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは4.0質量部以上、より更に好ましくは5.5質量部以上、より更に好ましくは7.0質量部以上であり、また、好ましくは35質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、より更に好ましくは12質量部以下、より更に好ましくは9質量部以下である、<30>に記載の方法。
<32> 混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の配合量は、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、より更に好ましくは1.3質量部以上、より更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、同様の観点から好ましくは7.0質量部以下であり、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である、<30>又は<31>に記載の方法。
<33> 混練される混合物中における、水と水溶性塩基性化合物との合計に対する水溶性塩基性化合物の配合量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは22質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である、<30>〜<32>のいずれかに記載の方法。
【0098】
<34> 前記工程1が、好ましくは下記の工程1−1及び工程1−2を含む、<1>〜<33>のいずれかに記載の方法。
工程1−1 原料有機顔料と、水溶性無機塩粒子と、水溶性有機溶媒とを混合する工程
工程1−2 工程1−1で得られた混合物と、式(1)で表される化合物と、任意で配合される水及び水溶性塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種との混合物を混練する工程
<35> 原料有機顔料100質量部に対する水溶性無機塩の配合量が、好ましくは100質量部以上、より好ましくは300質量部以上、更に好ましくは400質量部以上であり、また、好ましくは3000質量部以下、より好ましくは1000質量部以下、更に好ましくは800質量部以下である、<1>〜<34>のいずれかに記載の方法。
<36> 原料有機顔料100質量部に対する水溶性有機溶媒の配合量が、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは200質量部以下である、<1>〜<35>のいずれかに記載の方法。
<37> 工程2の濾過が、好ましくはフィルタープレス機を用いて行なわれる、<1>〜<36>のいずれかに記載の方法。
【0099】
<38> 好ましくは下記の工程1−3を更に含む、<1>〜<37>のいずれかに記載の方法。
工程1−3:上記工程1又は、工程1−1及び工程1−2の混練後の混合物と、ポリマーとを混練する工程
<39> ポリマーが、好ましくはアニオン性ポリマーである、<38>に記載の方法。
<40> ポリマーが、好ましくは、(a)アニオン性モノマーと、(b)疎水性モノマーとを含むモノマー混合物の共重合により得られるビニル系ポリマーである、<38>又は<39>に記載の方法。
<41> ポリマーの重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは1万以上であり、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、更に好ましくは30万以下、更よりに好ましくは20万以下である、<38>〜<40>のいずれかに記載の方法。
<42> 工程1−3において混練される混合物中の有機顔料の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である、<38>〜<41>のいずれかに記載の方法。
<43> 工程1−3の混合物中の有機顔料100質量部に対するポリマーの量が、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下である、<38>〜<42>のいずれかに記載の方法。
<44> 工程1−3の混合物中の、有機顔料100質量部に対する有機溶媒の量が、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量部以下である、<38>〜<43>のいずれかに記載の方法。
【0100】
<45> 下記工程1及び工程2を含む微細有機顔料ペーストの製造方法。
工程1:原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2:工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過する工程
<46> 前記工程1において、好ましくは更に水を配合し、より好ましくは前記水溶性無機塩100質量部に対し0.6質量部以上10質量部以下の水を更に配合する、<45>に記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
<47> 混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の配合量が、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、より更に好ましくは1.3質量部以上、より更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは7.0質量部以下であり、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である、<45>又は<46>に記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
<48> 混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の含有量が、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、更により好ましくは1.3質量部以上、更により好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である、<45>〜<47>のいずれかに記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
<49> 前記工程1において、好ましくは水溶性塩基性化合物を更に配合し、より好ましくは前記原料有機顔料100質量部に対し1.5質量部以上35質量部以下の水溶性塩基性化合物を更に配合する、<45>〜<48>のいずれかに記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
<50> 混練される混合物中における、原料有機顔料100質量部に対する水溶性塩基性化合物の配合量が、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは4.0質量部以上、より更に好ましくは5.5質量部以上、より更に好ましくは7.0質量部以上であり、また、好ましくは35質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、より更に好ましくは12質量部以下、より更に好ましくは9質量部以下である、<49>に記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
<51> 混練される混合物中における、水溶性無機塩100質量部に対する水の配合量は、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.1質量部以上、より更に好ましくは1.3質量部以上、より更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、同様の観点から好ましくは7.0質量部以下であり、より好ましくは5.2質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.4質量部以下、より更に好ましくは1.7質量部以下である、<49>又は<50>に記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
<52> 混練される混合物中における、水と水溶性塩基性化合物との合計に対する水溶性塩基性化合物の配合量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは22質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である、<51>に記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
<53> 好ましくは下記工程1−3を更に含み、前記工程2が、工程1−3の混練後の混合物を洗浄する工程である、<45>〜<52>のいずれかに記載の微細有機顔料ペーストの製造方法。
工程1−3:工程1の混練後の混合物と、ポリマーと、を混練する工程
<54> 下記工程1、工程2、及び工程2−2を含む粉末状の微細有機顔料の製造方法。
工程1:原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2:工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過し、微細有機顔料ペーストを得る工程
工程2−2:工程2を経て得られた微細有機顔料ペーストを更に乾燥及び粉砕することで、粉末状の微細有機顔料を得る工程
【0101】
<55> 微細有機顔料の原料有機顔料に対する一次粒子径比(微細有機顔料の一次粒子径/原料有機顔料の一次粒子径)が、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下であり、また、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上である、<1>〜<54>いずれかに記載の方法。
<56> 微細有機顔料の一次粒子径が、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上であり、また、好ましくは130nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは60nm以下である、<1>〜<55>いずれかに記載の方法。
【0102】
<57> <1>〜<56>のいずれかの方法により得られる微細有機顔料、溶媒を含む混合物を分散する工程を含む、分散体の製造方法。
<58> 下記工程3を含む分散体の製造方法。
工程3:<45>〜<53>のいずれかに記載の製造方法により得られる微細有機顔料ペーストと、有機溶媒と、水と、を分散処理する工程
<59> 下記工程1〜3を含む分散体の製造方法。
工程1:原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2:工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過し、微細有機顔料ペーストを得る工程
工程3:工程2により得られる微細有機顔料ペーストと、有機溶媒と、水と、を分散処理する工程
<60> 工程3の有機溶媒が、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種である、<58>又は<59>に記載の方法。
<61> 分散処理が、好ましくは高圧ホモジナイザーにより行われる、<58>〜<60>のいずれかに記載の方法。
<62> 処理圧力が、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは120MPa以上であり、また、好ましくは600MPa以下、より好ましくは300MPa以下、更に好ましくは200MPa以下である、<61>に記載の方法。
<63> パス回数が、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、また、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である、<61>又は<62>に記載の方法。
【0103】
<64> 下記工程4を含むインクの製造方法。
工程4:<57>〜<63>のいずれかに記載の製造方法により得られた分散体と、水及び有機溶媒から選ばれる1種以上とを混合する工程
<65> 下記工程1〜4を含むインクの製造方法。
工程1:原料有機顔料と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶媒と、前記原料有機顔料100質量部に対し0.8質量部以上18.0質量部以下の式(1)で表される化合物とを配合し、得られる混合物を、混練する工程
O(PO)(EO)A (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、POはプロピレンオキシドを示し、EOはエチレンオキシドを示し、mは平均付加モル数を示し、0以上30以下であり、nは平均付加モル数を示し、10以上70以下であり、m+nは10以上70以下であり、Aは水素原子、−SO、−PO又は−CHCOOを示し、前記Xは一価のカチオンを示す。なお、PO及びEOが存在する場合、これらはいかなる配列順序であってもよい。)
工程2:工程1で得られた混合物を、水性溶媒で洗浄し、濾過し、微細有機顔料ペーストを得る工程
工程3:工程2により得られる微細有機顔料ペーストと、有機溶媒と、水と、を分散処理し分散体を得る工程
工程4:工程3により得られた分散体と、水及び有機溶媒から選ばれる1種以上とを混合する工程
<66> 工程4に用いる有機溶媒が、好ましくは多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアルキルエーテルアセテート、及び含窒素複素環化合物から選ばれる少なくとも1種である、<65>に記載の方法。
<67> 得られるインクの固形分が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である、<64>〜<66>のいずれかに記載の方法。
【0104】
<68> <1>〜<44>のいずれかに記載の方法によって得られる、微細有機顔料。
<69> <45>〜<62>のいずれかに記載の方法によって得られる、分散体。
<70> <63>〜<67>のいずれかに記載の方法によって得られる、インク。
【実施例】
【0105】
以下の合成例、製造例、実施例及び比較例において、プロピレンオキシドを以下「PO」ともいい、エチレンオキシドを以下「EO」ともいう。
本実施例において各種数値の測定及び評価は、以下の方法により行った。
【0106】
(1)PO及びEOの平均付加モル数の測定
NMR測定装置(Varian社製「Mercury400型」)を用いて、合成した化合物の末端水酸基をトリフルオロ酢酸でエステル化したサンプルのプロトン核磁気共鳴(H−NMR)スペクトルより求めた(測定条件:ノンデカップリング法、緩和時間10秒、積算回数32回)。トリフルオロ酢酸処理したサンプル 0.01gを重クロロホルム 0.99gに溶解した溶液を測定に用いた。PO及びEOの平均付加モル数はそれぞれ以下の式により計算した。
POの平均付加モル数=(ポリオキシプロピレンのメチル基に由来するシグナルの積分値)/(トリフルオロ酢酸エステル基に隣接するメチレン基に由来するシグナルの積分値)/1.5
EOの平均付加モル数=(ポリオキシエチレンのメチレン基に由来するシグナルの積分値)/(トリフルオロ酢酸エステル基に隣接するメチレン基に由来するシグナルの積分値)/2
【0107】
(2)顔料の一次粒子径の測定
エタノール50gに顔料粉末0.05gを加え、超音波洗浄機(アズワン株式会社製「ASU CLEANER ASU‐10M」、強度:「強」)で5分間処理し、得られた顔料分散液を透過型電子顕微鏡(TEM)用試料台に載せて風乾させ、TEMにて1〜10万倍の倍率で撮影して画像を得た。画像から顔料粒子約500個を無作為に抽出し、抽出した全粒子の長径を計測し、その平均値を顔料の一次粒子径とした。
【0108】
(3)濾過速度及び濾過速度維持率
実施例において、水50Lを圧力0.2MPaで圧入する際、圧入の開始30分後から10分間の濾液排出量(mL)を測定し、濾液排出速度(mL/min)を算出し、濾過速度とした。
また、化合物(1)を配合せずに、実施例の方法に従って試料を調製して測定された濾過速度に対する対象試料の濾過速度の割合(%)を濾過速度維持率とした。
【0109】
(4)固形分の測定
シャーレに乾燥無水硫酸ナトリウム10g及びガラス棒を入れ、試料1gを量り採り、ガラス棒で混合し、105℃で2時間乾燥した。乾燥後の質量を測定し、次式より固形分を算出した。
固形分(質量%)=〔(乾燥後の質量g)−(シャーレ+ガラス棒+乾燥無水硫酸ナトリウムの質量g)〕/(試料の質量g)×100
【0110】
(5)インクの平均粒子径の測定
大塚電子株式会社製レーザー粒子解析システム「ELS−8000」を用い、キュムラント解析(温度:25℃、入射光と検出器との角度:90°、積算回数:100回、分散溶媒の屈折率:1.333)によって測定した。試料は、イオン交換水にて約5×10−3質量%に濃度調整して、測定を行った。
【0111】
(6)光沢度の測定
ピエゾ方式プリンター(セイコーエプソン株式会社製「EM−930C」)を用いて、印刷用紙(セイコーエプソン株式会社製「写真用紙<光沢>KA4100PSKR」、20°光沢度:17)にベタ印字した。プリンターの印字条件は、用紙の種類:フォトプリント紙、モード設定:フォト、にそれぞれ設定した。印字後、25℃で24時間放置し、光沢計(日本電色工業株式会社製、「HANDY GLOSSMETER PG−1」)で20°光沢度の測定を5回行い、その平均値を光沢度とした。光沢度が高いほど、光沢性に優れる。
【0112】
合成例1[化合物D−3の合成]
撹拌装置、温度制御装置を備えた容積6.0Lのオートクレーブに、2−エチル−1−ヘキサノール(和光純薬工業株式会社製) 126.3g(0.97モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液(関東化学株式会社製) 3.51gを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換した後に110℃、10.0kPaにて1.0時間保持し、水分を除去した。オートクレーブ内を窒素で大気圧に戻して140℃まで昇温し、EO 2665g(60.5モル)を圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら、EO付加反応を10時間行った。その後オートクレーブ内を60℃まで冷却し、氷酢酸(キシダ化学株式会社製) 2.0gを添加して1時間撹拌し、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル(化合物D−3) 2770gを得た。EOの平均付加モル数は60であった。
【0113】
合成例2[化合物D−4の合成]
EO 2665gを3546g(80.5モル)に、EO付加反応時間を12時間に、それぞれ変更した以外は、合成例1と同様の方法により、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル(化合物D−4) 3620gを得た。EOの平均付加モル数は80であった。
【0114】
合成例3[化合物D−14の合成]
2−エチル−1−ヘキサノールを1−オクタデカノール(和光純薬工業株式会社製) 262.4g(0.97モル)に、水分を除去する圧力を4.7kPaに、それぞれ変更した以外は、合成例2と同様の方法により、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(化合物D−14) 3760gを得た。EOの平均付加モル数は80であった。
【0115】
合成例4[化合物D−15の合成]
撹拌装置、温度制御装置を備えた容積6.0Lのオートクレーブに「原料アルコール」として1−オクタデカノール(和光純薬工業株式会社製) 524.8g(1.94モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液 7.01gを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換した後に110℃、4.7kPaにて1.0時間保持し、水分を除去した。窒素で大気圧に戻し、110℃でPO 1104g(12.5モル)を圧力0.1〜0.45MPaとなるように導入しながら、PO付加反応を24時間行った。次いで140℃まで昇温し、EO 1101g(9.5モル)を圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら、EO付加反応を6時間行った。その後オートクレーブ内を60℃まで冷却し、氷酢酸(キシダ化学株式会社製) 4.0gを添加して1時間撹拌し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル 2700gを得た。POの平均付加モル数は9、EOの平均付加モル数は12であった。
【0116】
合成例5[化合物D−16の合成]
1−オクタデカノールを1−ドコサノール(東京化成工業株式会社製) 1584.1g(4.85モル)に、48質量%水酸化カリウム水溶液を17.53gに、EOを1167g(5.3モル)に、EO付加反応時間を6時間に、氷酢酸を10.0gに、それぞれ変更した以外は、合成例3と同様の方法により、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(化合物D−16) 2740gを得た。EOの平均付加モル数は5であった。
【0117】
合成例6[化合物D−17の合成]
1−ドコサノールを950.4g(2.91モル)に、48質量%水酸化カリウム水溶液を10.52gに、EOを2709g(20.5モル)に、EO付加反応時間を10時間に、氷酢酸を6.0gに、それぞれ変更した以外は、合成例5と同様の方法により、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(化合物D−17) 3642gを得た。EOの平均付加モル数は20であった。
【0118】
合成例7[化合物D−19の合成]
1−ドコサノールを316.8g(0.97モル)に、48質量%水酸化カリウム水溶液を3.51gに、EOを3546g(80.5モル)に、EO付加反応時間を20時間に、氷酢酸を2.0gに、それぞれ変更した以外は、合成例5と同様の方法により、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(化合物D−19) 3756gを得た。EOの平均付加モル数は80であった。
【0119】
実施例及び比較例で用いた化合物について、表1に記載した。
【0120】
【表1】
【0121】
[実施例1〜42、比較例1〜22]
(混練工程)
工程1として、表2〜5に示す原料有機顔料、水溶性無機塩及び水溶性有機溶媒を、加圧式ニーダー(株式会社トーシン製「TD0.5−3M型」)を用いて、加圧無し、回転数30r/min、内容物の温度40〜60℃で0.5時間混練した。更に表2〜5に示す化合物(1)、水及び水溶性塩基化合物をニーダーに加え、同じ条件で2.0時間混練した。
(洗浄工程)
工程2として、前記工程1で得られた混合物を水3000gに加えて1時間撹拌し、得られた分散液をフィルタープレス機(薮田式濾過圧搾機:薮田機械株式会社製「丸型テスト機 YTO−8型」)の1室(濾室容積763cm、濾過面積513cm)に圧力0.2MPaで圧入した。次いで、水50Lを圧力0.2MPaで圧入することにより、水溶性無機塩及び水溶性有機溶媒を除去した。さらに、圧力0.4MPaで圧搾することにより、顔料ペーストを得た。
(乾燥工程)
得られた顔料ペーストを70℃、24時間で乾燥し、メノウ乳鉢にて粉砕することで微細有機顔料の粉末を得た。
なお、表2〜5に示す実施例及び比較例で使用した原料有機顔料、水溶性無機塩、水溶性有機溶媒、水溶性塩基性化合物及びその物性は、以下の通りである。
【0122】
[原料有機顔料]
A−1:PR122(2,9−ジメチルキナクリドン:大日精化工業株式会社製「CFR002」、一次粒子径91nm)
A−2:PV19(無置換キナクリドン:大日精化工業株式会社製「CFR0100」、一次粒子径62nm)
A−3:PR254(ジケトピロロピロール:BASF社製「B−CF」、一次粒子径70nm)
A−4:PY155(ジスアゾ系:Clariant社製「Ink Jet Yellow 4GC VP3854」、一次粒子径130nm)
A−5:PY180(ベンズイミダゾロン:Clariant社製「Toner Yellow HG」、一次粒子径125nm)
【0123】
[水溶性無機塩]
B−1:塩化ナトリウム(赤穂化成株式会社製「オシオミクロンT−0」、平均粒径10μm)
B−2:塩化ナトリウム(キシダ化学株式会社製「特級塩化ナトリウム(試薬)」、平均粒径約500μm)
【0124】
[水溶性有機溶媒]
C−1:ジエチレングリコール(和光純薬株式会社製「特級」)
C−2:プロピレングリコール(和光純薬株式会社製「特級」)
【0125】
[水溶性塩基性化合物]
F−1:水酸化ナトリウム
【0126】
得られた微細有機顔料の評価結果を表2〜5に示す。一次粒子径については、工程1において化合物(1)を配合しなかった場合の一次粒子径と比較して小さくなっているものを微細化効果があると評価した。濾過性については、92%以上の濾過速度維持率が得られた場合を、濾過性が高いと評価した。
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
表2〜3より、実施例1〜15、17、22〜30の結果は、比較例1の結果よりも一次粒子径が小さく、かつ濾過性が高いことがわかる。同様に、実施例16、31は比較例11に対し、実施例32は比較例22に対し、一次粒子径が小さく、かつ濾過性が高いことが分かる。
また、表4より、実施例18、33は比較例12に対し、実施例19、34は比較例13に対し、実施例20、35は比較例14に対し、実施例21、36は比較例15に対し、それぞれ一次粒子径が小さく、かつ濾過性が高いことが分かる。以上のことから、工程1及び工程2を有する微細有機顔料の製造方法によって、一次粒子径が非常に小さい微細有機顔料を得ることができ、洗浄工程においても濾過性に優れ、高い生産性で製造できることが示された。
表5に示された結果によれば、実施例37と実施例8との対比、実施例38と実施例25との対比、実施例39と実施例18との対比、実施例40と実施例33との対比、実施例41と実施例19との対比、実施例42と実施例34との対比から、水及び水溶性塩基性化合物を配合することで、顔料の一次粒子径がより小さくなり、かつ、同等の優れた濾過性を示すことが分かった。以上の結果より、化合物(1)のAが水素原子、すなわちノニオン性界面活性剤を用いた場合であっても、化合物(1)のAがアニオン性基、すなわちアニオン性界面活性剤を用いた場合であっても、水及び水溶性塩基性化合物を組み合わせることによって、顔料の一次粒子径が小さくなり、かつ濾過性に優れるという結果が得られた。
【0132】
[実施例43〜48,55,57(水分散体の調製)]
(顔料ペースト1〜6,13,15の調製)
表6に示す原料有機顔料、水溶性無機塩、水溶性有機溶媒、化合物(1)、水、水溶性塩基性化合物とした以外は、実施例1記載の工程1(混練工程)及び工程2(洗浄工程)と同様の方法により、表6に示す顔料ペーストを得た。
(水分散体1〜6,13,15の調製)
スチレン−アクリル酸系ポリマー(BASF社製「Joncryl 68」、以下「J68」ともいう)41.7gとMEK 113.4との混合溶液と、5N水酸化ナトリウム水溶液20.5gと、表6の「水分散体の調製」に示す顔料ペースト及びイオン交換水との混合物を調製した。得られた混合物を、ディスパー翼を用いて20℃、7000rpmで1時間混合し、更に、Microfluidics社製「マイクロフルイダイザー」を用いて、圧力150MPaで10パスの分散処理を行った。得られた分散液から、減圧下60℃でMEKを除去し、フィルター(富士フイルム株式会社製 アセチルセルロース膜、孔径5μm)で濾過し、表6に示す水分散体1〜6,13,15を得た。
【0133】
[実施例49〜54,56,58(水分散体の調製)]
(顔料ペースト7〜12,14,16の調製)
工程1として、表6に示す原料有機顔料、水溶性無機塩及び水溶性有機溶媒を、加圧式ニーダー(株式会社トーシン製「TD0.5−3M型」)を用いて、加圧無し、回転数30r/min、内容物の温度40〜60℃で0.5時間混練した。更に表6に示す量の化合物(1)をニーダーに加え、同じ条件で2.0時間混練した。更に42.5gのJ68と99.2gのDEGとの混合溶液をニーダーに加え、同じ条件で1.0時間混練した。得られた混合物に対し、実施例1の工程2(洗浄工程)と同じ操作を行い、表6に示す顔料ペースト7〜12,14,16を得た。
(水分散体7〜12,14,16の調製)
MEK 113.4g、5N水酸化ナトリウム水溶液20.5g、表6の「水分散体の調製」に示す顔料ペースト及びイオン交換水の混合物を調製した。得られた混合物を、ディスパー翼を用いて20℃、7000rpmで1時間混合し、更に、Microfluidics社製「マイクロフルイダイザー」を用いて、圧力150MPaで10パスの分散処理を行った。得られた分散液から、減圧下60℃でMEKを除去し、フィルター(富士フイルム株式会社製 アセチルセルロース膜、孔径5μm)で濾過し、表6に示す水分散体7〜12,14,16を得た。
【0134】
[実施例43〜58(インクの調製)]
(インク溶剤の調製)
1,2−ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)4.0g、2−ピロリドン(和光純薬株式会社製)6.0g、グリセリン(花王株式会社製)15.0g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤株式会社製「ブチルトリグリコール」)4.0g、アセチレングリコール系活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール465」)0.5g、アセチレングリコール系活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィンE1010」0.5g、防腐剤(アビシア株式会社製「プロキセルXL2」)0.3g、及びイオン交換水29.7gを均一に混合し、インク溶剤(以下、「ビヒクル」ともいう)を得た。
(インク1〜16の調製)
表6に示す水分散体1〜16の40gを撹拌しながら、前記ビヒクル60gを添加して混合し、フィルター(富士フイルム株式会社製 アセチルセルロース膜、孔径1.2μm)で濾過し、インク1〜16を得た。
【0135】
得られたインク1〜16の評価結果を表6に示す。
【0136】
【表6】
【0137】
実施例43〜48より、工程1及び工程2を有する微細有機顔料の製造方法によって製造された、顔料ペーストを用いて水性インクを製造すると微細な粒子径を持つインク得られ、光沢性に優れることが示された。さらに実施例49〜54より、工程1においてポリマーを加えさらに混練した顔料ペーストを用いて水性インクを製造すると、より微細な粒子径を持つインク得られ、より光沢性に優れることが示された。加えて実施例55〜58より、工程1において水及び水溶性塩基性化合物を加えさらに混練した顔料ペーストを用いて水性インクを製造すると、より微細な粒子径を持つインク得られ、より光沢性に優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、インクジェット用インクやカラーフィルター等の用途における、微細有機顔料の製造方法として有用である。