【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係るテープディスペンサー1を示す正面図である。
このテープディスペンサー1は、接着テープ2を切断する際に、次の切断操作のための摘み部3を形成することができるものであり、先端部に切断刃4を備えた基台10と、基台10にスライド可能に取り付けられたスライド部材20と、スライド部材20に枢止されたリール部30と、テープを折り返すための折り返し機構40と、によって構成される。
【0015】
基台10は、
図2に示すように、重錘の内蔵された台座部11と、台座部11の上面部に設けられたレール12と、上端に切断刃4を取り付けた前壁部13と、その両側の側壁部14、14と、によって構成される。側壁部14、14には、折り返し機構50を取り付けるための枢止部45が設けられている。
台座部11の上面のレール部12には、スライド部材20がスライド可能に設けられている。このスライド部材20は、リール部30を介してテープロール2’を保持するホルダ部材として機能する。
【0016】
スライド部材20は、
図3に示すように、基台10の前壁部13との間に介装されたバネ15によって切断刃4から離反する方向に付勢されており、テープ2を引き出す際の引っ張り力によって、基台10に対して前方(即ち、テープの引出方向A)へと移動するようになっている。
このスライド部材20の前壁部21の上端部には、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41が設けられている。
【0017】
スライド部材20の正面側及び背面側の側壁部22、22には軸受23が設けられており、この軸受23に、リール部30が回転可能に取り付けられる。
リール部30には、内側面に接着材が塗布されたテープロール2’が取り付けられており、テープ2の先端の摘み部3を持って引き出すことによって、テープ2が繰り出される。この際に、スライド部材20が、バネ15の付勢力に抗して切断刃4の方向に向けてスライドされるように設計されている。
【0018】
そして、スライド部材20を移動させながら、テープ2を切断刃4の方向へと所望の長さだけ引き出し、切断刃4によって切断するわけであるが、スライド部材20と基台10との間に折り返し機構40を設けることで、切断されたテープ2の端部が内側に向けて折り返され、次回の切断操作のための摘み部3が形成されるようになっている。
以下に、テープ2の端部を折り返すための折り返し機構40の構成を説明する。
【0019】
折り返し機構40は、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41を備えたスライド部20と、第2の仮留部42を備えた揺動部材43と、それらを回動可能に連結させたリンクバー44と、によって構成される。
即ち、スライド部材20の前壁部21の上端部に、引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41が形成され、揺動部材43の上端部に、そのテープ2を更に仮留めするための第2の仮留部42が形成される。仮留部間の長さ(L)は、摘み部3のサイズに合わせて設計されている。
【0020】
揺動部材43は、下端部に設けられた枢止部45を介して、基台10の側壁部14に回動可能に取り付けられており、スライド部材20が前後方向に移動することで、リンクバー44が回動し、上端部に設けられた第2の仮留部42が、第1の仮留部41から離反するように構成されている。
この揺動部材43のように、枢止部45と回動端部(第2の取付部42)との略中間部においてリンクバー44を連結した場合、第1の仮留部41と第2の仮留部42との間の長さ(L)を、スライド部材20の移動距離の略2倍にすることができる。このため、コンパクトなサイズでありながら、充分な長さの摘み部3を形成することが可能なテープディスペンサー1が実現される。
【0021】
基台10のレール12やバネ15の長さは、スライド部材20の移動距離などに応じて設計するものとする。
上記構造のテープディスペンサー1の使用状態を、
図3及び
図4を参照して説明する。
先ず、
図3(a)の初期状態から、摘み部3を引っ張って、リール部30からテープ2を繰り出す。すると、スライド部材20が引き出し方向(A)に移動されながら、テープ2が引き出される。
【0022】
スライド部材20の変位によって、スライド部材20と基台10との間のバネ15は圧縮され、付勢される。それと同時に、揺動部材42が揺動し、上端の第2の仮留部42が、第1の仮留部41から離反する方向に移動する(
図3(b)を参照)。
揺動部材43は、リンクバー44を介してスライド部材20の前壁部21に連結されているので、第2の仮留部42は、スライド部材20の移動距離よりも長く、早い速度で、第1の仮留部41から離反される。
【0023】
このようにして、テープ2を所望の長さに引き出した後、
図3(c)に示すように、リール部30の側に位置する第1の仮留部41と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42との2箇所において仮留めする。そして、
図4に示すように、基台10の前端部の切断刃4によって切断すると、リング状の摘み部3が形成される。
即ち、テープ2が切断されることで圧縮状態のバネ15が復帰し、スライド部材20を初期位置に変位させるが、リンクバー44を介してスライド部材20に連結された揺動部材43が回動し、回動端部の第2の仮留部42を第1の仮留部41へと近接させる。
【0024】
この際、第1の仮留部41と第2の仮留部間42との間に張り渡されていたテープ部位3’が撓み、そのテープ部位3’が内側面において相互に接触され、摘み部3が形成される。
本実施形態のテープディスペンサー1によれば、切断刃4を備えた基台10にスライド部材20を設け、そのスライド部材20に接着テープ2を繰り出すためのリール部30を設けると共に、スライド部材20をバネ15によって切断刃4から離反する方向に付勢させたので、リール部30からテープ2を引き出す操作によってスライド部材20を変位させて所望の長さにテープ2を繰り出し、その後、テープの長さを確認しながら夫々の仮留部41、42に仮留することができる。
【0025】
このため、必要な長さを確認しながらテープ2を引き出し、慎重に仮留めし、慎重に切断することができる。
テープ2が切断されることで、付勢されていたバネ15が弾性変形し、スライド部材20が初期位置へと復帰する。この際、離反状態の仮留部41、42が近接し、仮留部間に張り渡されていたテープ部位3’が撓み、接着面を相互に接触させる。
このようにしてリング状の摘み部3ができるので、通常のテープディスペンサーによる切断操作と同じ操作で、次回の切断操作のための摘み部3を作ることが可能となる。
【0026】
テープ2が切断された後は、スライド部材20の復帰に伴い、切断刃4から離反する方向へと第2の仮留部42が移動するので、切断刃4から切断後のテープ2を引き剥がすことができる。
特に、第1の仮留部41をスライド部材20の引出方向前端部に設けられた取付部(21)の上端に設けると共に、上端に第2の仮留部42を形成した揺動部材43を基台10に枢支させ、その揺動部材43と取付部(21)とをリンクバー44によって回動可能に連結させたので、その連結位置を調節することで、所望の長さの摘み部3を形成することが可能となる。
【0027】
なお、本発明は、折り返し機構を簡略化させることもできる。例えば、
図5に示すテープディスペンサー1’の折り返し機構40’のように、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41’を基台10’に突設すると共に、第2の仮留部42’をスライド部材20’に設けてもよい。
この場合、基台10’の台座部11’には、レール12’が設けられると共に、上端に第1の仮留部41’が設けられた第1の取付部16と、スライド部材20’との間に引っ張りバネ15’を保持するための保持部17とが設けられている。
【0028】
スライド部材20’の前壁部21’の上端に、第2の仮留部42’が設けられる。を設け、側壁部22’と基台10’との隙間において、前壁部21’と保持部材17との間に介装された引っ張りバネ15’を保持している。
図5(a)の初期状態から、摘み部3を摘みながらテープ2を引き出すことで、スライド部材20’が引出方向Aに向けてスライドされながら、テープ2が引き出される。
【0029】
この際、スライド部材20’と基台10’との間のバネ15’が引っ張られ、スライド部材20’の第2の仮留部42’は、基台10’に設けられた第1の仮留部41’から離反する(
図5(b)を参照)。
そして、リール部30の側に位置する第1の仮留部41’と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42’との2箇所において仮留めした状態で、基台10’の前端部の切断刃4によって切断する。
【0030】
テープ2が切断されることで、
図5(c)に示すように、引っ張られた状態のバネ15’が復帰し、スライド部材20’を初期位置へと変位させる。この際、第1の仮留部41’と第2の仮留部間42’との間に緊張状態で張り渡されていたテープ部位3’が撓み、内側面が相互に接触する。
これによって、テープ2が折り返されて摘み部3が形成される。
【0031】
この態様のテープディスペンサー1’においても、切断刃4を備えた基台10’にスライド部材20’を設け、そのスライド部材20’に接着テープ2を繰り出すためのリール部30を設けると共に、スライド部材20’をバネ15’によって切断刃4から離反する方向に付勢させたので、リール部30からテープ2を所望の長さに引き出した後、基台10’とスライド部材20’の夫々に設けられた仮留部41’、42’において、慎重にテープ2を仮留めした後、切断することができる。
切断によってテープ2の引っ張り力が解除されると、離反状態の仮留部41’、42’が近接し、そのテープ部位3’が撓んで摘み部3を作るが、この際、切断刃4からテープ2が引きはがされるので、刃先に接着材が粘着するのを防止できる。
【0032】
また、
図6に示すテープディスペンサー1”のように、テープ2が切断される際に、第2の仮留部42と切断刃4’との間に所定長の間隔(M)が設けられるようにしてもよい(
図6(b)を参照)。
この際、例えば、基台10の前壁部13の上縁に、平面部の一端エッジ部で切断する構造の切断刃4’を設けるのが好ましい。
【0033】
この切断刃4’は、テープ2を直線状に切断することができるように設計されたものであり、
図7に示すように、エッジにより、刃先4aを構成している。
即ち、平面状の切断刃4’の一端のエッジ部に、複数の陥没部4cを所定間隔ごとに設けることで刃先4aを構成している。陥没部4bとエッジ部とが成す角部4cにおいてテープ2を切り込み、そこからエッジ部に沿ってテープ2を筋づけし、次の陥没部4bと到る。この繰り返しによって、テープ2が直線状に切断される。
この構造の切断刃4’を使用すれば、刃先4aに至るまでの平面部において、所定長の間隔(M)を確保することができる(
図8を参照)。
【0034】
使用の際には、
図6(a)の初期状態から、摘み部3を引っ張ってテープ2を所望の長さに引き出した後、リール部30の側に位置する第1の仮留部41と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42との2箇所において仮留めした後、切断刃4’の平面部を経て刃先4aにおいて切断する。
仮留部間にテープ2が張り渡された際には、
図9に示すように、刃先4aと第2の仮留部42との間に所定長(M)の間隔を設けることができ、その領域(3a)が、テープ端部2aから第2の仮留部42までの領域となる(
図10を参照)。
【0035】
このため、第2仮留部42が第1仮留部41に近接した際に、接着面同士が接触するのを免れる(
図11を参照)。接触を免れた領域は、テープとしての接着機能を有する部位である。
この態様のテープディスペンサー”によれば、接着テープ2の端部2aに所定長の接着領域3aを設けた状態の摘み部3を形成することができ、この接着領域3aを利用することによって、接着状態の摘み部3を引き剥がすことが可能となる。
【0036】
即ち、
図12に示すように、先ず、摘み部3を持った状態でテープ2を被接着物に貼り付けて固定し、その後、端部の接着領域3aを引っ張ることによって、摘み部3の接着面を引き剥がすことができる。これによって、通常の接着テープ2と同様、その全面を被接着物に貼付することが可能となる。
【実施例2】
【0037】
図13は、本発明の第2実施形態に係るテープディスペンサー101を示す正面図である。
このテープディスペンサー101も、摘み部3を形成することを可能とするもので、先端部に切断刃4を備えた基台110と、基台110に回動可能に取り付けられた回動部材120と、回動部材120に枢止されたリール部30と、テープ2を折り返すための折り返し機構40と、によって構成される。
【0038】
以下、第1実施形態と同一構成のものには、同一の符号を付すことで、その説明を省略する。
基台110は、重錘の内蔵された台座部111と、回動部材120を取り付けるための枢止部112と、上端に切断刃4を取り付けた前壁部113と、その両側の側壁部114、114と、によって構成される。
台座部111の側壁部114、114には、前寄りの下方位置に枢止部112が設けられており、そこに回動部材120が取り付けられている。
【0039】
回動部材120は、テープロール2’を保持するためのホルダ部材として機能する部位であり、その両側の側壁部122、122に設けられた軸受123において、リール部30を回転可能に取り付けている。
リール部30には、テープロール2’が取り付けられており、テープ2を引き出した際の引っ張り力によって、回動部材120をテープ引き出し方向前方(A)に向けて変位させることができる(
図13(b)を参照)。
そして、テープ2を切断し、回動部材120を引っ張る力を解除すると、その自重によって初期位置へと復帰する。
【0040】
この回動部材120の前壁部121の上端部は、折り返し機構40における第1の仮留部41となっている。
回動部材120の軸受123には、リール部30が回転可能に取り付けられており、そのリール部30に取り付けられたテープロール2’からテープ2が繰り出される際、テープ2を引っ張る力によって、リール部30の回転方向に、回動部材120が持ち上げられる。
【0041】
テープ2を切断刃4の方向へと所望の長さだけ引き出し、切断刃4によって切断することで、回動部材120が初期位置に復帰すると同時に、折り返し機構40によって摘み部3が形成される。
この折り返し機構40は、第1実施形態のものと同様、2つの仮留部(41,42)を含んで構成される。
【0042】
即ち、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41が回動部材120に設けられ、上端に第2の仮留部42を備えた揺動部材43が、基台110に揺動可能に取り付けられる。
揺動部材43は、回動部材120に対して、リンクバー44を介して連結されており、回動部材120の変位に応じて、第1及び第2の仮留部41、42が離接する。
【0043】
上記構造のテープディスペンサー101の使用状態を、
図13及び
図14を参照して説明する。
先ず、
図13(a)の初期状態から、摘み部3を引っ張って、リール部30からテープ2を繰り出す。すると、
図13(b)に示すように、回動部材120が、テープ2の引き出し方向(A)に持ち上げられる。同時に、揺動部材42が揺動し、上端の第2の仮留部42が、第1の仮留部41から離反する。
【0044】
揺動部材43は、リンクバー44を介して回動部材120に連結されているので、回動部材20の変位量にも関わらず、摘み部3を形成し得るだけの距離が、仮留部41、42の間に確保される。
所望の長さにテープ2を引き出した後、
図14(a)に示すように、リール部30の側に位置する第1の仮留部41と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42との2箇所において仮留めする。そして、基台110の前端部の切断刃4によって切断することで、反対方向(B)へと回動部材120が回動し(
図14(b)を参照)、それに伴い、摘み部3が形成される。
【0045】
即ち、テープ2が切断されることで、自重によって回動部材120が初期位置へと戻るが、このとき、リンクバー44を介して回動部材120に連結された揺動部材43が回動し、第2の仮留部42を第1の仮留部41へと近接させる。
その際、第1の仮留部41と第2の仮留部間42との間に張り渡されていたテープ部位3’が撓み、内側面において相互に接触され、摘み部3となる(
図13(a)を参照)。
本実施形態のテープディスペンサー101においても、基台110に対し、変位可能に回動部材120を取り付けたので、回動部材120に保持されたテープロール2’から所望の長さだけ引き出し、2つの仮留部41、42でテープ2を固定し、慎重に切断することが可能となる。
【0046】
テープ2を引き出し、仮留めし、切断する、という一連の操作を円滑に行うことが可能なので、通常のテープディスペンサーによる切断操作と同じ操作で、摘み部3を作ることができる。また、テープ2が刃先に付着され続けることがないので、切断刃4の性能の低下を防止できる。