特許第6393265号(P6393265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393265
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】テープディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/07 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   B65H35/07 N
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-532923(P2015-532923)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2014072058
(87)【国際公開番号】WO2015025964
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-174018(P2013-174018)
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104087
【氏名又は名称】カール事務器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112162
【弁理士】
【氏名又は名称】朝日 直子
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 弘幸
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−025045(JP,A)
【文献】 実開昭56−055257(JP,U)
【文献】 実開昭54−180085(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/157135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/00,35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープ(2)を切断するための切断刃(4)を備えた基台(10110)と、該基台(10110)に対して変位可能に取り付けられたホルダ部材(20120)と、該ホルダ部材(20120)に枢止されたリール部材(30)と、を含み、
前記ホルダ部材(20,120)のテープ引き出し方向前端に設けられた取付部(21,121)の上端に、引き出されたテープを仮留めするための第1の仮留部(41)を設けると共に、上端に第2の仮留部(42)を有する搖動部材(43)を前記基台(10,110)に枢止させ、
該搖動部材(43)と前記取付部(21,121)とをリンクバー(44)によって回動可能に連結して構成されたテープディスペンサー(1,1”,101)であって、
テープを引き出すことで前記第2の仮留部(42)が前記切断刃(4)に近接し、該切断刃(4)においてテープを切断することで、前記ホルダ部材(20120)と共に前記搖動部材(43)が前記切断刃(4)から離反する方向に変位し、前記第2の仮留部(42)が前記第1の仮留部(41)に略密接するように構成されたことを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項2】
平面状の前記切断刃(4)の一端のエッジ部に複数の陥没部(4c)を所定間隔ごとに設けて刃先(4a)を構成し、該刃先(4a)に向けてテープ(2)を引き出して前記陥没部(4c)とエッジ部とが成す角部(4d)においてテープ(2)を切り込み、エッジ部で筋づけしつつ該テープ(2)を直線状に切断するように構成されたテープディスペンサーであって、
前記刃先(4a)に至るまでの平面部において、切断されたテープ端部(2a)から所定長(M)のテープ同士が接触されない非接着領域(3a)を備えた摘み部(3)が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のテープディスペンサー。
【請求項3】
前記ホルダ部材(120)を前記基台(110)に対して回動可能に取り付けて構成されたテープディスペンサー(101)であって、
テープを引き出すことで前記ホルダ部材(120)を回動させて前記第2の仮留部(42)を前記切断刃(4)に近接させ、該切断刃(4)においてテープを切断することで、該ホルダ部材(120)を自重で回動させて前記搖動部材(43)を前記切断刃(4)から離反する方向に変位させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着テープを切断する際に、次の切断操作のための摘み部を形成することが可能なテープディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
接着テープを繰り出すためのリールを基台に設け、リールから引き出されたテープを切断刃によって切断する構造のテープディスペンサーにあっては、テープが切断される際にテープの端を折り返し、次の切断操作のための摘み部が形成されるようにしたものが各種提案されている。
例えば、リールと切断刃との間に、テープを仮留めするための第1の仮留部を設け、そこに仮留めした状態で、引き出されたテープを更に仮留めするための第2の仮留部を遥動板の上端面に設けた構造のテープディスペンサーが提案されている(特許文献1)。
【0003】
リールから引き出された接着テープが、第2の仮留部で仮留めされた状態で引き出されることによって、揺動板が引き出し方向へと変位し、その前端部に設けられた切断刃にてテープが切断されることにより、スプリングや磁石の力で揺動板を元の位置に復帰させて第1の仮留部と第2の仮留部とが接触されるように設計されている。
双方の仮留部に仮留めされているテープの接着面が相互に接着されることで、次の切断操作のための摘み部が形成される。
【0004】
また、リールと切断刃との間に、上端に仮留部を有する回動板を2個設け、それらの下端を連結板によって連結した構造のテープディスペンサーも提案されている(特許文献2)。
このテープディスペンサーは、引き出された接着テープを、第1の回動板の上端部に仮留めした後、僅かな距離を引き出すことによって、第2の仮留部としての第2の回動板の上端部が、増幅されたスピードと距離で回動し、前方に設けられた切断刃によりテープが切断されるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4979037号公報
【特許文献2】特許5156895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のテープディスペンサーは、揺動板の上端面に、切断刃と第2の仮留部とを形成しているので、切断された後も常に刃先にテープが接着された状態となる。このため、刃先にテープの接着材が粘着し、切断刃の性能が低下する、という不都合があった。
また、切断の前に、第1の仮留部と第2の仮留部との間に所定の間隔が設けられるようにしておく必要があるので、バネや磁石の力に抗して揺動板を変位させた状態で、テープを引き出さねばならず、操作性に問題があった。
【0007】
一方、特許文献2のテープディスペンサーは、引き出された接着テープを第1の仮留部に仮留めすると同時に、テープを更に引き出して第2の仮留部で仮留めさせなければならないので、テープを円滑に引っ張り出すことができなかった。
そこで、本発明は、切断刃の切断性能を低下させることなく、簡単かつ円滑な操作で次の切断操作のための摘み部を形成することができるテープディスペンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のテープディスペンサーは、粘着テープを切断するための切断刃を備えた基台と、該基台に対して変位可能に取り付けられたホルダ部材と、該ホルダ部材に枢止されたリール部材と、を含み、前記ホルダ部材のテープ引き出し方向前端に設けられた取付部の上端に、引き出されたテープを仮留めするための第1の仮留部を設けると共に、上端に第2の仮留部を有する搖動部材を前記基台に枢止させ、該搖動部材と前記取付部とをリンクバーによって回動可能に連結して構成されたテープディスペンサーであって、テープを引き出すことで前記第2の仮留部が前記切断刃に近接し、該切断刃においてテープを切断することで、前記ホルダ部材と共に前記搖動部材が前記切断刃から離反する方向に変位し、前記第2の仮留部が前記第1の仮留部略密接するように構成されたことを特徴とするものである。
この場合、平面状の前記切断刃の一端のエッジ部に複数の陥没部を所定間隔ごとに設けて刃先を構成し、該刃先に向けてテープを引き出して前記陥没部とエッジ部とが成す角部においてテープを切り込み、エッジ部で筋づけしつつ該テープを直線状に切断するように構成されたテープディスペンサーであって、前記刃先に至るまでの平面部において、切断されたテープ端部から所定長のテープ同士が接触されない非接着領域を備えた摘み部が形成されるようにしたものであってもよい。
また、前記ホルダ部材を前記基台に対して回動可能に取り付けて構成されたテープディスペンサーであって、テープを引き出すことで前記ホルダ部材を回動させて前記第2の仮留部を前記切断刃に近接させ、該切断刃においてテープを切断することで、該ホルダ部材を自重で回動させて前記搖動部材を前記切断刃から離反する方向に変位させることを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るテープディスペンサーは、切断刃を備えた基台に対し、接着テープを保持するホルダ部材を変位可能に取り付けたので、テープを引っ張り出す操作によってホルダ部材を変位させ、テープが切断された際にホルダ部材を初期位置に復帰させることができる。そして、リール部材から繰り出されたテープを、ホルダ部材に設けられた第1の仮留め部と、リンクバーによってホルダ部材と基台とに連結された搖動部材に設けられた第2の仮留め部との2つの箇所で仮留めできるようにしたので、テープを引っ張ることでホルダ部材が変位された際に、その仮留部間にテープを張り渡すことができる。
【0010】
テープが切断された際には、ホルダ部材が初期位置に戻ることで離反状態の仮留部が近接するが、この際に、仮留部間に張り渡されていたテープ部位が撓み、内側の接着面が相互に接触することによって、テープが折り返される。この折り返された部位を、テープを引き出す際の摘み部とすることで、次回のテープ切断操作を円滑に行うことができる。
テープを仮留めしていたホルダ部材が、テープが切断されたときの張力の解除によって、テープを仮留めした状態で切断刃から離反するので、刃先にテープが付着し続けることがない。これにより、切断刃の性能が低下するのを防止することができる。
【0011】
このように、本発明によれば、基台に対してホルダ部材を変位可能に取り付けると共に、基台とホルダ部材の夫々に、引き出されたテープを仮留めするための仮留部を設けたので、テープを引き出して切断するという、従来のテープディスペンサーにおける切断操作と同様の動作で摘み部を作ることができる上、切断刃の性能低下を防止することもできる。
請求項2に係るテープディスペンサーは、ホルダ部材を前記基台に対して回動可能に取り付け、そのホルダ部材のテープ引き出し方向前端に設けられた取付部の上端に、引き出されたテープを仮留めするための第1の仮留部を設け、上端に第2の仮留部を有する揺動部材を基台に枢支させて該揺動部材と取付部とを回動可能に連結したので、テープを引き出し、仮留めし、切断する、という一連の操作を円滑に行うことができる。
請求項3に係るテープディスペンサーは、平面状の前記切断刃の一端のエッジ部に複数の陥没部を所定間隔ごとに設けて刃先を構成し、該刃先と前記第2の仮留部の間に所定の間隔が設けられるようにしたので、刃先に向けてテープを引き出しながら2箇所で仮留めした状態で、刃先の陥没部とエッジ部とが成す角部においてテープを切り込み、その切り込み線をエッジ部で筋づけしながら直線状に切断することができる。特に、刃先と第2の仮留部の間に所定の間隔を設けたことで、接着面同士の接触が免れる領域を作ることができる。この領域を利用することで、接着状態の摘み部を引き剥がすことが可能となり、通常のテープと同様、その全面を被接着物に貼付することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るテープディスペンサーを示す正面図であり、(a)は初期状態、(b)はテープを引き出して切断する状態を示す。
図2】上記テープディスペンサーの基台を示す正面図である。
図3】上記テープディスペンサーの折り返し機構を示す説明図であり、(a)は初期状態、(b)はテープを引き出して第1の仮留部に仮留めする状態、(c)は第2の仮留部に仮留めして切断する状態を示す。
図4】上記折り返し機構において摘み部が形成される状態を示す説明図であり、(a)はテープが切断される状態、(b)は切断されたテープが折り返されて摘み部が形成される状態を示す。
図5】上記折り返し機構の変形態様を示す説明図であり、(a)は初期状態、(b)はテープを引き出して仮留めする状態、(c)はテープが切断されて摘み部が形成される状態を示す。
図6】上記テープディスペンサーの変形例を示す説明図であり、(a)は初期状態、(b)はテープを引き出して第1の仮留部に仮留めする状態、(c)は第2の仮留部に仮留めする状態を示す。
図7】上記変形例において使用される切断刃の一例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は刃先の拡大図である。
図8】上記変形例によって摘み部が形成される状態を示し、(a)はテープを引き出して第1の仮留部に仮留めする状態、(b)は第2の仮留部に仮留めして切断する状態、(c)はテープが切断される状態、(d)は切断されたテープが折り返されて摘み部が形成される状態を示す。
図9】上記変形例において仮留部間にテープが張り渡された状態を示し、(a)は平面図であり、(b)はX−X線矢視断面図である。
図10】上記変形例においてテープが切断される際の状態を示し、(a)は平面図であり、(b)はX−X線矢視断面図である。
図11】上記変形例において摘み部が形成される状態を示し、(a)は平面図であり、(b)はX−X線矢視断面図である。
図12】上記変形例において切り取られたテープ片を貼り付ける状態を示す説明図である。
図13】本発明の第2実施形態に係るテープディスペンサーを示す正面図であり、(a)は初期状態、(b)はテープを引き出した状態を示す。
図14】上記テープディスペンサーにおいて、(a)はテープを仮留めする状態を示す正面図であり、(b)はテープが切断された状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、実施形態は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の課題を解決しうるものであれば他の態様も実施可能である。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係るテープディスペンサー1を示す正面図である。
このテープディスペンサー1は、接着テープ2を切断する際に、次の切断操作のための摘み部3を形成することができるものであり、先端部に切断刃4を備えた基台10と、基台10にスライド可能に取り付けられたスライド部材20と、スライド部材20に枢止されたリール部30と、テープを折り返すための折り返し機構40と、によって構成される。
【0015】
基台10は、図2に示すように、重錘の内蔵された台座部11と、台座部11の上面部に設けられたレール12と、上端に切断刃4を取り付けた前壁部13と、その両側の側壁部14、14と、によって構成される。側壁部14、14には、折り返し機構50を取り付けるための枢止部45が設けられている。
台座部11の上面のレール部12には、スライド部材20がスライド可能に設けられている。このスライド部材20は、リール部30を介してテープロール2’を保持するホルダ部材として機能する。
【0016】
スライド部材20は、図3に示すように、基台10の前壁部13との間に介装されたバネ15によって切断刃4から離反する方向に付勢されており、テープ2を引き出す際の引っ張り力によって、基台10に対して前方(即ち、テープの引出方向A)へと移動するようになっている。
このスライド部材20の前壁部21の上端部には、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41が設けられている。
【0017】
スライド部材20の正面側及び背面側の側壁部22、22には軸受23が設けられており、この軸受23に、リール部30が回転可能に取り付けられる。
リール部30には、内側面に接着材が塗布されたテープロール2’が取り付けられており、テープ2の先端の摘み部3を持って引き出すことによって、テープ2が繰り出される。この際に、スライド部材20が、バネ15の付勢力に抗して切断刃4の方向に向けてスライドされるように設計されている。
【0018】
そして、スライド部材20を移動させながら、テープ2を切断刃4の方向へと所望の長さだけ引き出し、切断刃4によって切断するわけであるが、スライド部材20と基台10との間に折り返し機構40を設けることで、切断されたテープ2の端部が内側に向けて折り返され、次回の切断操作のための摘み部3が形成されるようになっている。
以下に、テープ2の端部を折り返すための折り返し機構40の構成を説明する。
【0019】
折り返し機構40は、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41を備えたスライド部20と、第2の仮留部42を備えた揺動部材43と、それらを回動可能に連結させたリンクバー44と、によって構成される。
即ち、スライド部材20の前壁部21の上端部に、引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41が形成され、揺動部材43の上端部に、そのテープ2を更に仮留めするための第2の仮留部42が形成される。仮留部間の長さ(L)は、摘み部3のサイズに合わせて設計されている。
【0020】
揺動部材43は、下端部に設けられた枢止部45を介して、基台10の側壁部14に回動可能に取り付けられており、スライド部材20が前後方向に移動することで、リンクバー44が回動し、上端部に設けられた第2の仮留部42が、第1の仮留部41から離反するように構成されている。
この揺動部材43のように、枢止部45と回動端部(第2の取付部42)との略中間部においてリンクバー44を連結した場合、第1の仮留部41と第2の仮留部42との間の長さ(L)を、スライド部材20の移動距離の略2倍にすることができる。このため、コンパクトなサイズでありながら、充分な長さの摘み部3を形成することが可能なテープディスペンサー1が実現される。
【0021】
基台10のレール12やバネ15の長さは、スライド部材20の移動距離などに応じて設計するものとする。
上記構造のテープディスペンサー1の使用状態を、図3及び図4を参照して説明する。
先ず、図3(a)の初期状態から、摘み部3を引っ張って、リール部30からテープ2を繰り出す。すると、スライド部材20が引き出し方向(A)に移動されながら、テープ2が引き出される。
【0022】
スライド部材20の変位によって、スライド部材20と基台10との間のバネ15は圧縮され、付勢される。それと同時に、揺動部材42が揺動し、上端の第2の仮留部42が、第1の仮留部41から離反する方向に移動する(図3(b)を参照)。
揺動部材43は、リンクバー44を介してスライド部材20の前壁部21に連結されているので、第2の仮留部42は、スライド部材20の移動距離よりも長く、早い速度で、第1の仮留部41から離反される。
【0023】
このようにして、テープ2を所望の長さに引き出した後、図3(c)に示すように、リール部30の側に位置する第1の仮留部41と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42との2箇所において仮留めする。そして、図4に示すように、基台10の前端部の切断刃4によって切断すると、リング状の摘み部3が形成される。
即ち、テープ2が切断されることで圧縮状態のバネ15が復帰し、スライド部材20を初期位置に変位させるが、リンクバー44を介してスライド部材20に連結された揺動部材43が回動し、回動端部の第2の仮留部42を第1の仮留部41へと近接させる。
【0024】
この際、第1の仮留部41と第2の仮留部間42との間に張り渡されていたテープ部位3’が撓み、そのテープ部位3’が内側面において相互に接触され、摘み部3が形成される。
本実施形態のテープディスペンサー1によれば、切断刃4を備えた基台10にスライド部材20を設け、そのスライド部材20に接着テープ2を繰り出すためのリール部30を設けると共に、スライド部材20をバネ15によって切断刃4から離反する方向に付勢させたので、リール部30からテープ2を引き出す操作によってスライド部材20を変位させて所望の長さにテープ2を繰り出し、その後、テープの長さを確認しながら夫々の仮留部41、42に仮留することができる。
【0025】
このため、必要な長さを確認しながらテープ2を引き出し、慎重に仮留めし、慎重に切断することができる。
テープ2が切断されることで、付勢されていたバネ15が弾性変形し、スライド部材20が初期位置へと復帰する。この際、離反状態の仮留部41、42が近接し、仮留部間に張り渡されていたテープ部位3’が撓み、接着面を相互に接触させる。
このようにしてリング状の摘み部3ができるので、通常のテープディスペンサーによる切断操作と同じ操作で、次回の切断操作のための摘み部3を作ることが可能となる。
【0026】
テープ2が切断された後は、スライド部材20の復帰に伴い、切断刃4から離反する方向へと第2の仮留部42が移動するので、切断刃4から切断後のテープ2を引き剥がすことができる。
特に、第1の仮留部41をスライド部材20の引出方向前端部に設けられた取付部(21)の上端に設けると共に、上端に第2の仮留部42を形成した揺動部材43を基台10に枢支させ、その揺動部材43と取付部(21)とをリンクバー44によって回動可能に連結させたので、その連結位置を調節することで、所望の長さの摘み部3を形成することが可能となる。
【0027】
なお、本発明は、折り返し機構を簡略化させることもできる。例えば、図5に示すテープディスペンサー1’の折り返し機構40’のように、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41’を基台10’に突設すると共に、第2の仮留部42’をスライド部材20’に設けてもよい。
この場合、基台10’の台座部11’には、レール12’が設けられると共に、上端に第1の仮留部41’が設けられた第1の取付部16と、スライド部材20’との間に引っ張りバネ15’を保持するための保持部17とが設けられている。
【0028】
スライド部材20’の前壁部21’の上端に、第2の仮留部42’が設けられる。を設け、側壁部22’と基台10’との隙間において、前壁部21’と保持部材17との間に介装された引っ張りバネ15’を保持している。
図5(a)の初期状態から、摘み部3を摘みながらテープ2を引き出すことで、スライド部材20’が引出方向Aに向けてスライドされながら、テープ2が引き出される。
【0029】
この際、スライド部材20’と基台10’との間のバネ15’が引っ張られ、スライド部材20’の第2の仮留部42’は、基台10’に設けられた第1の仮留部41’から離反する(図5(b)を参照)。
そして、リール部30の側に位置する第1の仮留部41’と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42’との2箇所において仮留めした状態で、基台10’の前端部の切断刃4によって切断する。
【0030】
テープ2が切断されることで、図5(c)に示すように、引っ張られた状態のバネ15’が復帰し、スライド部材20’を初期位置へと変位させる。この際、第1の仮留部41’と第2の仮留部間42’との間に緊張状態で張り渡されていたテープ部位3’が撓み、内側面が相互に接触する。
これによって、テープ2が折り返されて摘み部3が形成される。
【0031】
この態様のテープディスペンサー1’においても、切断刃4を備えた基台10’にスライド部材20’を設け、そのスライド部材20’に接着テープ2を繰り出すためのリール部30を設けると共に、スライド部材20’をバネ15’によって切断刃4から離反する方向に付勢させたので、リール部30からテープ2を所望の長さに引き出した後、基台10’とスライド部材20’の夫々に設けられた仮留部41’、42’において、慎重にテープ2を仮留めした後、切断することができる。
切断によってテープ2の引っ張り力が解除されると、離反状態の仮留部41’、42’が近接し、そのテープ部位3’が撓んで摘み部3を作るが、この際、切断刃4からテープ2が引きはがされるので、刃先に接着材が粘着するのを防止できる。
【0032】
また、図6に示すテープディスペンサー1”のように、テープ2が切断される際に、第2の仮留部42と切断刃4’との間に所定長の間隔(M)が設けられるようにしてもよい(図6(b)を参照)。
この際、例えば、基台10の前壁部13の上縁に、平面部の一端エッジ部で切断する構造の切断刃4’を設けるのが好ましい。
【0033】
この切断刃4’は、テープ2を直線状に切断することができるように設計されたものであり、図7に示すように、エッジにより、刃先4aを構成している。
即ち、平面状の切断刃4’の一端のエッジ部に、複数の陥没部4cを所定間隔ごとに設けることで刃先4aを構成している。陥没部4bとエッジ部とが成す角部4cにおいてテープ2を切り込み、そこからエッジ部に沿ってテープ2を筋づけし、次の陥没部4bと到る。この繰り返しによって、テープ2が直線状に切断される。
この構造の切断刃4’を使用すれば、刃先4aに至るまでの平面部において、所定長の間隔(M)を確保することができる(図8を参照)。
【0034】
使用の際には、図6(a)の初期状態から、摘み部3を引っ張ってテープ2を所望の長さに引き出した後、リール部30の側に位置する第1の仮留部41と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42との2箇所において仮留めした後、切断刃4’の平面部を経て刃先4aにおいて切断する。
仮留部間にテープ2が張り渡された際には、図9に示すように、刃先4aと第2の仮留部42との間に所定長(M)の間隔を設けることができ、その領域(3a)が、テープ端部2aから第2の仮留部42までの領域となる(図10を参照)。
【0035】
このため、第2仮留部42が第1仮留部41に近接した際に、接着面同士が接触するのを免れる(図11を参照)。接触を免れた領域は、テープとしての接着機能を有する部位である。
この態様のテープディスペンサー”によれば、接着テープ2の端部2aに所定長の接着領域3aを設けた状態の摘み部3を形成することができ、この接着領域3aを利用することによって、接着状態の摘み部3を引き剥がすことが可能となる。
【0036】
即ち、図12に示すように、先ず、摘み部3を持った状態でテープ2を被接着物に貼り付けて固定し、その後、端部の接着領域3aを引っ張ることによって、摘み部3の接着面を引き剥がすことができる。これによって、通常の接着テープ2と同様、その全面を被接着物に貼付することが可能となる。
【実施例2】
【0037】
図13は、本発明の第2実施形態に係るテープディスペンサー101を示す正面図である。
このテープディスペンサー101も、摘み部3を形成することを可能とするもので、先端部に切断刃4を備えた基台110と、基台110に回動可能に取り付けられた回動部材120と、回動部材120に枢止されたリール部30と、テープ2を折り返すための折り返し機構40と、によって構成される。
【0038】
以下、第1実施形態と同一構成のものには、同一の符号を付すことで、その説明を省略する。
基台110は、重錘の内蔵された台座部111と、回動部材120を取り付けるための枢止部112と、上端に切断刃4を取り付けた前壁部113と、その両側の側壁部114、114と、によって構成される。
台座部111の側壁部114、114には、前寄りの下方位置に枢止部112が設けられており、そこに回動部材120が取り付けられている。
【0039】
回動部材120は、テープロール2’を保持するためのホルダ部材として機能する部位であり、その両側の側壁部122、122に設けられた軸受123において、リール部30を回転可能に取り付けている。
リール部30には、テープロール2’が取り付けられており、テープ2を引き出した際の引っ張り力によって、回動部材120をテープ引き出し方向前方(A)に向けて変位させることができる(図13(b)を参照)。
そして、テープ2を切断し、回動部材120を引っ張る力を解除すると、その自重によって初期位置へと復帰する。
【0040】
この回動部材120の前壁部121の上端部は、折り返し機構40における第1の仮留部41となっている。
回動部材120の軸受123には、リール部30が回転可能に取り付けられており、そのリール部30に取り付けられたテープロール2’からテープ2が繰り出される際、テープ2を引っ張る力によって、リール部30の回転方向に、回動部材120が持ち上げられる。
【0041】
テープ2を切断刃4の方向へと所望の長さだけ引き出し、切断刃4によって切断することで、回動部材120が初期位置に復帰すると同時に、折り返し機構40によって摘み部3が形成される。
この折り返し機構40は、第1実施形態のものと同様、2つの仮留部(41,42)を含んで構成される。
【0042】
即ち、切断刃4の方向に向けて引き出された接着テープ2を仮留めするための第1の仮留部41が回動部材120に設けられ、上端に第2の仮留部42を備えた揺動部材43が、基台110に揺動可能に取り付けられる。
揺動部材43は、回動部材120に対して、リンクバー44を介して連結されており、回動部材120の変位に応じて、第1及び第2の仮留部41、42が離接する。
【0043】
上記構造のテープディスペンサー101の使用状態を、図13及び図14を参照して説明する。
先ず、図13(a)の初期状態から、摘み部3を引っ張って、リール部30からテープ2を繰り出す。すると、図13(b)に示すように、回動部材120が、テープ2の引き出し方向(A)に持ち上げられる。同時に、揺動部材42が揺動し、上端の第2の仮留部42が、第1の仮留部41から離反する。
【0044】
揺動部材43は、リンクバー44を介して回動部材120に連結されているので、回動部材20の変位量にも関わらず、摘み部3を形成し得るだけの距離が、仮留部41、42の間に確保される。
所望の長さにテープ2を引き出した後、図14(a)に示すように、リール部30の側に位置する第1の仮留部41と、切断刃4の側に位置する第2の仮留部42との2箇所において仮留めする。そして、基台110の前端部の切断刃4によって切断することで、反対方向(B)へと回動部材120が回動し(図14(b)を参照)、それに伴い、摘み部3が形成される。
【0045】
即ち、テープ2が切断されることで、自重によって回動部材120が初期位置へと戻るが、このとき、リンクバー44を介して回動部材120に連結された揺動部材43が回動し、第2の仮留部42を第1の仮留部41へと近接させる。
その際、第1の仮留部41と第2の仮留部間42との間に張り渡されていたテープ部位3’が撓み、内側面において相互に接触され、摘み部3となる(図13(a)を参照)。
本実施形態のテープディスペンサー101においても、基台110に対し、変位可能に回動部材120を取り付けたので、回動部材120に保持されたテープロール2’から所望の長さだけ引き出し、2つの仮留部41、42でテープ2を固定し、慎重に切断することが可能となる。
【0046】
テープ2を引き出し、仮留めし、切断する、という一連の操作を円滑に行うことが可能なので、通常のテープディスペンサーによる切断操作と同じ操作で、摘み部3を作ることができる。また、テープ2が刃先に付着され続けることがないので、切断刃4の性能の低下を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、あらゆる産業分野で使用されるテープディスペンサーに適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、1’、101…テープディスペンサー
2…テープ
3…摘み部
4、4’…切断刃
10、10’、110…基台
11、11’、111…台座部
12、12’…レール
13、13’、113…前壁部
14、114…側壁部
15、15’…バネ
16…第1の取付部
17…保持部
20、20’…スライド部材(ホルダ部材)
120・・・回動部材(ホルダ部材)
21、21’、121…前壁部
22、22’、122…側壁部
23、23’、123…軸受
30…リール部(リール部材)
40…折り返し機構
41、41’…第1の仮留部
42、42’…第2の仮留部
43…揺動部材
44…リンクバー
45…枢止部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14