【文献】
Protein Engineering, Design & Selection, 2012年1月,Vol.25, No.3,p.107-117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のFN3ドメインは、P54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、EGFRに結合する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
前記第2のFN3ドメインは、P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、c−Metと結合する、請求項6に記載の二重特異性分子。
前記第1のFN3ドメイン及び/又は前記第2のFN3ドメインは、Tencon(配列番号1)の11、14、17、37、46、73及び86位に対応する1つ以上の残基位置で置換を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
前記第1のFN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110、122〜137、又は194〜211のうちの1つに示される配列を含み、前記第2のFN3ドメインは、配列番号32〜49、111〜114、又は212〜223のうちの1つに示される配列を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
前記第1のFN3ドメイン及び/又は前記第2のFN3ドメインは、Tencon(配列番号1)の置換L17A、N46V及びE86Iに対応する1つ以上の置換を含む、請求項13に記載の二重特異性分子。
配列番号50〜72、106、118〜121、138〜165又は190〜193で示すアミノ酸配列を含み、任意選択的に、前記分子のN末端に連結されるメチオニン(Met)を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、アルブミン変異体、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、請求項20に記載の二重特異性分子。
前記EGFR活性化突然変異は、G719A、G719X(Xは、任意のアミノ酸)、L861X(Xは、任意のアミノ酸)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、L858P又はT790Mの置換、E746〜A750の欠失、R748〜P753の欠失、M766〜A767間のAla(A)の挿入、S768〜V769間のSer、Val及びAla(SVA)の挿入、並びにP772〜H773間のAsn及びSer(NS)の挿入である、請求項29に記載の医薬組成物。
前記被験体は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、CO−1686、AZD9192又はセツキシマブによる治療に対して、耐性を示すか、又は耐性を得ている、請求項28に記載の医薬組成物。
癌は、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、非小細胞性肺癌(NSCLC)、肺腺癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頚部癌、咽頭癌、鼻腔癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、舌癌、食道癌、膣癌、子宮頸癌、脾臓癌、精巣癌、胃癌、胸腺癌、大腸癌、甲状腺癌、肝癌、肝細胞癌(HCC)、散発性又は遺伝乳頭状腎細胞癌(PRCC)である、請求項28に記載の医薬組成物。
前記第2の治療薬は、シスプラチン、ビンブラスチン、EGFR、c−Met、HER2、HER3、HER4若しくはVEGFRのチロシンキナーゼ阻害物質、エルロチニブ、ゲフィチニブ又はアファチニブである、請求項34に記載の医薬組成物。
前記FN3ドメインは、P54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、EGFRに結合する、請求項37又は38に記載のFN3ドメイン。
前記FN3ドメインは、P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、c−Metに結合する、請求項49又は50に記載のFN3ドメイン。
前記被験体は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、CO−1686、AZD9192又はセツキシマブによる治療に対して、耐性を示すか、又は耐性を得ている、請求項63に記載の医薬組成物。
癌は、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、非小細胞性肺癌(NSCLC)、肺腺癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頚部癌、咽頭癌、鼻腔癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、舌癌、食道癌、膣癌、子宮頸癌、脾臓癌、精巣癌、胃癌、胸腺癌、大腸癌、甲状腺癌、肝癌、肝細胞癌(HCC)、散発性又は遺伝乳頭状腎細胞癌(PRCC)である、請求項63に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で用いられる用語「フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン」(FN3ドメイン)は、フィブロネクチン、テネイシン、細胞内細胞骨格タンパク質類、サイトカイン受容体及び原核酵素を含む、タンパク質中に頻繁に存在するドメインを指す(Bork and Doolittle,Proc Nat Acad Sci USA 89:8990〜8994,1992;Meinkeら、J Bacteriol 175:1910〜1918,1993;Watanabeら、J Biol Chem 265:15659〜15665,1990)。例えば、例示的なFN3ドメインは、ヒトテネイシンC中に存在する15の異なるFN3ドメイン、ヒトフィブロネクチン(FN)中に存在する15の異なるFN3ドメイン、及び米国特許公開第2010/0216708号に記載されているような非天然合成FN3ドメインである。個々のFN3ドメインは、ドメイン番号及びタンパク質名によって、例えば、テネイシンの第3 FN3ドメイン(TN3)、又はフィブロネクチンの第10 FN3ドメイン(FN10)と称される。
【0023】
本明細書で用いられる用語「置換する」若しくは「置換される」、又は「変異する」若しくは「変異させられる」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列における1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドを変更、削除、挿入し、その配列の変異体を生成することを指す。
【0024】
本明細書で用いられる用語「ランダム化する」若しくは「ランダム化される」、又は「多様化される」若しくは「多様化する」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列において少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を行うことを指す。
【0025】
本明細書で用いられる「変異体」は、例えば、置換、挿入、又は欠失などのうちの1つ以上の修飾によって、基準ポリペプチド又は基準ポリヌクレオチドとは異なっている、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0026】
本明細書で用いられる用語「特異的に結合する」又は「特異的結合」は、約1×10
-6M以下、例えば、約1×10
-7M以下、約1×10
-8M以下、約1×10
-9M以下、約1×10
-10M以下、約1×10
-11M以下、約1×10
-12M以下、又は約1×10
-13M以下の解離定数(K
D)にて、所定の抗原に結合する、本発明のFN3ドメインの能力を指す。典型的には、本発明のFN3ドメインは、例えば、Proteon Instrument(BioRad)を使用して表面プラズモン共鳴によって測定したとき、非特異的抗原(例えば、BSA又は力ゼイン)に対するK
Dの少なくとも10倍以下であるK
Dにて、所定の抗原(すなわち、EGFR又はc−Met)に結合される。したがって、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、各EGFR及びc−Metに特異的に結合し、結合親和性(K
D)は、EGFR及びc−Metの両方に対して、少なくとも1×10
-6M以下である。しかし、所定の抗原に特異的に結合する本発明の単離FN3ドメインは、他の関連した抗原、例えば、その他の種(同族体類)からの同一の所定の抗原に対して、交差反応性を有し得る。
【0027】
用語「ライブラリ」は、変異体の集合を指す。ライブラリは、ポリペプチド又はポリヌクレオチド変異体からなっていてよい。
【0028】
本明細書で用いられる用語「安定性」は、生理学的条件下において、例えば、EGFR又はc−Metなどの所定の抗原に結合しているなど、正常な機能的活動のうちの少なくとも1つを保持するように、折り畳まれた状態を維持するための分子の能力を指す。
【0029】
本明細書で用いられる用語「上皮成長因子受容体」又は「EGFR」は、配列番号73及びGenBank登録番号NP_005219に示される配列を有するヒトEGFR(また、HER−1又はErb−B1としても既知である(Ullrichら、Nature 309:418〜425,1984))並びにこれらの天然の突然変異体を指す。こうした変異体としては、周知のEGFRvIII及び他の代替スプライス変異体が挙げられ、例えば、SwissProt Accession No.P00533−1(野生型;配列番号73及びNP_005219と同一)、P00533−2(F404L/L405S)、P00533−3(628〜705:CTGPGLEGCP...GEAPNQALLR→PGNESLKAML...SVIITASSCH及び706〜1210欠失)、P00533−4(C628S及び629〜1210欠失)、変異体Q98、R266、K521、I674、G962及びP988(Livingstonら、NIEHS−SNPs,environmental genome project,NIEHS ES15478),T790M,L858R/T790M及びdel(E746,A750)によって同定されるものがある。
【0030】
本明細書で用いられる用語「EGFRリガンド」は、EGF、TGF−α、ヘパリン結合EGF(HB−EGF)、アンフィレグリン(AR)及びエピレグリン(EPI)など、EGFRの全ての(例えば、生理学的)リガンド、を包含する。
【0031】
本明細書で用いられる用語「上皮成長因子」(EGF)は、配列番号74に示されるアミノ酸配列を有する既知の53のアミノ酸ヒトEGFを指す。
【0032】
本明細書で用いられる用語「肝細胞増殖因子受容体」又は「c−Met」は、配列番号101又はGenBank登録番号NP_001120972に示されるアミノ酸配列を有するヒトc−Met及びこれらの天然変異体を指す。
【0033】
本明細書で用いられる用語「肝細胞増殖因子」(HGF)は、分割されて、ジスルフィド結合によって連結したα鎖とβ鎖の二量体を形成する、配列番号102に示されたアミノ酸配列を有する周知のヒトHGFを指す。
【0034】
本明細書で用いられる用語「結合をブロッキングする」又は「結合を阻害する」は同じ意味で用いられ、本発明のFN3ドメイン又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の、EGFRに対するEGF及び/又はc−Metに対するHGFなどの、EGFRリガンドの結合をブロッキング又は阻害する能力を指し、そして、部分的なブロッキング/阻害、及び完全なブロッキング/阻害の両方を包含する。ブロッキング又は阻害のない場合の、EGFRに対するEGFRリガンドの結合及び/又はc−Metに対するHGFの結合と比較したとき、本発明のFN3ドメイン又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子による、EGFRに対するEGF及び/又はc−Metに対するHGFなどの、EGFRリガンドのブロッキング又は阻害は、EGFRシグナル伝達及び/又はc−Metのシグナル伝達の正常レベルを部分的に又は完全に低下させる。本発明のFN3ドメイン又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、阻害が、少なくとも、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である場合、EGFRに対するEGF及び/又はc−Metに対するHGFなどのEGFRリガンドの「結合をブロッキングする」。結合の阻害は、例えば、FACSを用いて、かつ本明細書に記載の方法を用いて、FN3ドメイン又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子にさらされたEGFR発現A431細胞上でのビオチン化EGFの結合の阻害を測定するか、又は周知の方法及び本明細書に記載の方法を用いて、c−Met細胞外ドメイン上のビオチン化HGF結合の阻害を測定するなどの、周知の方法を用いて、測定することができる。
【0035】
用語「EGFRシグナル伝達」は、EGFRに結合しているEGFRリガンドによって引き起こされるシグナル伝達を指し、EGFR中の少なくとも1つのチロシン残基の自己リン酸化をもたらす。例示的なEGFRリガンドは、EGFである。
【0036】
本明細書で用いられる用語「EGFRシグナル伝達を中和する」は、EGFなどのEGFRリガンドによって引き起こされるEGFRシグナル伝達を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害する、本発明のFN3ドメインの能力を指す。
【0037】
用語「c−Metシグナル伝達」は、c−Metに結合しているHGFによって引き起こされるシグナル伝達を指し、c−Met中の少なくとも1つのチロシン残基の自己リン酸化をもたらす。典型的には、1230、1234、1235又は1349位において、少なくとも1つのチロシン残基が、HGF結合時に自己リン酸化される。
【0038】
本明細書で用いられる用語「c−Metシグナル伝達を中和する」は、HGFによって引き起こされるc−Metシグナル伝達を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害する、本発明のFN3ドメインの能力を指す。
【0039】
本明細書で用いられる用語「過剰発現」、「過剰発現した」、「過剰発現している」は、同じ意味であり、同一組織型の正常細胞と比較して、表面上で測定可能なほど高レベルのEGFR及び/又はc−Metを有する癌又は悪性細胞を指す。このような過剰発現は、遺伝子増幅又は転写若しくは転換の増加によって引き起こされる場合がある。EGFR及び/又はc−Metの発現及び過剰発現は、例えば、生細胞又は溶解細胞でのELISA、免疫蛍光法、フローサイトメトリー又はラジオイムノアッセイを使用する、既知のアッセイにて測定することができる。あるいは、又は更には、EGFR及び/又はc−Met−コード核酸分子のレベルは、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション法、サザンブロット法又はPCR法を用いて、細胞中において測定してもよい。細胞表面上のEGFR及び/又はc−Metレベルが正常細胞と比較して、少なくとも1.5倍以上高いときは、EGFR及び/又はc−Metが過剰発現している。
【0040】
本明細書で用いられる用語「Tencon」は、配列番号1に示され、米国特許公開第2010/0216708号に記述されている配列を有する合成フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを指す。
【0041】
本明細書で用いられる用語「癌細胞」又は「腫瘍細胞」は、必ずしも新規遺伝物質の取り込みを伴わない、自然発生的又は誘発性表現型の変化を有する、インビボ、エクスビボ及び組織培養液のいずれかにおける、癌性、前癌性又は形質転換細胞を指す。形質転換は、形質転換ウイルスによる感染及び新規ゲノム核酸の取り込み又は外因性核酸の摂取から発生し得るが、自然発生的に又は発癌性物質への暴露後に発生することもあり、これによって、内在性遺伝子の突然変異が起こり得る。形質転換/癌の例としては、ヌードマウスなどの好適な動物宿主、インビトロ、インビボ、及びエクスビボにおける、形態的変化、細胞不死化、異常増殖制御、病巣形成、増殖、悪性疾患、腫瘍特異性マーカーレベル、侵襲性、腫瘍増殖又は抑制などがある(Freshney,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique(3rd ed.1994))。
【0042】
用語「ベクター」は、生物系内で複製することができる、又はこうした系の間で移動可能である、ポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは、典型的には、生物系においてこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持しやすくするために機能する複製源、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどの要素を含有する。このような生物系の例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターを複製することができる生物学的構成要素を利用して再構成された生物系を挙げることができる。ベクターを構成するポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッド分子であってもよい。
【0043】
「発現ベクター」という用語は、生物系又は再構成された生物系において、その発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドの翻訳を指示するために使用することができるベクターを意味する。
【0044】
「ポリヌクレオチド」なる用語は、糖−リン酸骨格又は他の同等の共有結合化学により共有結合を介して連結されたヌクレオチド鎖を含む分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型例である。
【0045】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により連結されポリペプチドを生成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。約50個未満のアミノ酸の小さなポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合がある。
【0046】
本明細書で用いられる用語「二重特異性EGFR/c−Met分子」又は「二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子」は、直接的に又はリンカーを介してのいずれかによって、共有結合により1つに連結される、EGFR結合FN3ドメイン及び異なるc−Met結合FN3ドメインを含む分子を指す。例示的な二重特異性EGFR/c−Met結合分子としては、EGFRに特異的に結合する第1のFN3ドメイン、及びc−Metに特異的に結合する第2のFN3ドメインが挙げられる。
【0047】
本明細書では、「価」は、分子中において、指定された数の、抗原特異的な結合部位の存在を意味する。そのため、用語「一価の」、「二価の」、「四価の」及び「六価の」は、それぞれ、分子中において抗原特異的な1個、2個、4個及び6個の結合部位の存在を意味する。
【0048】
本明細書で用いられる用語「混合物」は、共有結合により、共に連結されてない2つ又はそれ以上のFN3ドメインのサンプル又は製剤を指す。混合物は、2つ又はそれ以上の同一のFN3ドメイン又は異なるFN3ドメインから構成されていてよい。
【0049】
物質の組成
本発明は、単一特異性及び二重特異性EGFR及び/又はc−Met結合FN3ドメイン含有分子を提供する。本発明は、本発明のFN3ドメインをコードしているポリヌクレオチド、又はその相補的な核酸、ベクター、宿主細胞及びそれらを作製する方法、及び使用する方法を提供する。
【0050】
単一特異性EGFR結合分子
本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングする、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供し、これにより、治療用途及び診断用途において幅広く使用することができる。本発明は、本発明のFN3ドメインをコードしているポリヌクレオチド、又はその相補的な核酸、ベクター、宿主細胞及びそれらを作製する方法、及び使用する方法を提供する。
【0051】
本発明のFN3ドメインは、EGFRと高い親和性で結合し、EGFRのシグナル伝達を阻害し、低分子EGFR阻害物質と比較したときの特異性及び標的外の毒性の低減の点において、並びに従来の抗体治療と比較したときの組織侵入の改善の点おいて、利益をもたらし得る。
【0052】
本発明は、また、上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、かつ、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングする、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供する。
【0053】
本明細書に記載の本発明のFN3ドメインは、A431細胞を用い、本発明のFN3ドメインと共に又は本発明のFN3ドメイン無しで、インキュベートしたA431細胞において、600nMにて、ストレプトアビジン−フィコエリトリンコンジュゲートを使用して、結合されたビオチン化EGFからの蛍光量を検出する競合アッセイにおいて、約1×10
-7M未満、又は約1×10
-8M未満、又は約1×10
-9M未満、又は約1×10
-10M未満、又は約1×10
-11M未満、又は約1×10
-12M未満のIC
50値にて、EGFRに対するEGFの結合をブロッキングし得る。例示的なFN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110又は122〜137のアミノ酸配列を有するEGFR結合FN3ドメインなど、約1×10
-9M〜約1×10
-7MのIC
50値にて、EGFRに対するEGFの結合をブロッキングし得る。本発明のFN3ドメインは、本発明のFN3ドメインの不在下で、同じアッセイ条件を用いてEGFとEGFRとの結合を比較したとき、EGFRに対するEGFの結合を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%、ブロッキングし得る。
【0054】
本明細書に記載の本発明のFN3ドメインは、同じアッセイ条件を使用した、本発明のFN3ドメインの不在下でのシグナル伝達レベルと比較して、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%、EGFRシグナル伝達を阻害し得る。
【0055】
EGFなどのリガンドのEGFRへの結合は、受容体二量体化、自己リン酸化、受容体内部の活性化、細胞質チロシンキナーゼドメイン、並びにDNA合成の調節(遺伝子活性化)及び細胞周期の進行又は分裂に関連する複数のシグナル伝達及び転写促進経路の開始を刺激する。EGFRシグナル伝達の阻害により、1つ以上のEGFR下流のシグナル伝達経路を阻害することもあり、また、このために、EGFRの中和が、細胞増殖及び分化、脈管形成、細胞運動性並びに転移の阻害など、種々の影響を有することもある。
【0056】
EGFRシグナル伝達は、種々の周知の方法、例えば、チロシンY1068、Y1148及びY1173のいずれかの受容体の自己リン酸化(Downwardら、Nature 311:483〜5,1984)及び/又は天然基材又は合成基材のリン酸化を測定すること、を用いて測定することもできる。リン酸化は、ELISAアッセイ又はウェスタンブロット法など、周知の方法で、ホスホチロシン特異抗体を用いて検出できる。例示的なアッセイは、Panekら、J Pharmacol Exp Thera 283:1433〜44,1997及びBatleyら、Life Sci 62:143〜50,1998で見られ、また、本明細書に記載したアッセイが挙げられる。
【0057】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞中で測定したとき、約2.5×10
-6M未満、例えば、約1×10
-6M未満、約1×10
-7M未満、約1×10
-8M未満、約1×10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満又は約1×10
-12MのIC
50値にて、EGFR残基位置チロシン1173でのEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害する。
【0058】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞中で測定したとき、1.8×10
-8M〜約2.5×10
-6MのIC
50値にて、EGFR残基位置チロシン1173でのEGF誘発性のEGFRのリン酸化を阻害する。こうした例示的なFN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110又は122〜137のアミノ酸配列を有するFN3ドメインである。
【0059】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、当業者によって行われているような、表面プラズモン共鳴又はKinexa法によって測定されたとき、本発明のFN3ドメインは、約1×10
-8M未満、例えば、約1×10
-9M未満又は約1×10
-10M未満又は約1×10
-11M未満又は約1×10
-12M又は約1×10
-13Mの解離定数(K
D)にて、ヒトEGFRに結合する。いくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、約2×10
-10〜約1×10
-8MのK
Dにて、ヒトEGFRに結合する。EGFRのFN3ドメインの親和性は、任意の好適な方法を用いて実験的に決定され得る。(例えば、Berzofsky,ら、「Antibody−Antigen Interactions,」In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,NY(1984);Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,NY(1992);及び本明細書に記載の方法を参照)。特定のFN3ドメイン−抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件(例えば、浸透圧モル濃度、pH)下で測定される場合に異なる場合がある。したがって、親和性及びその他抗原−結合パラメータ(例えば、K
D、K
on、K
off)の測定は、好ましくは、タンパク質スカフォールド及び抗原の標準化溶液、及び本明細書で記載される緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行われる。
【0060】
EGFRに結合する本発明のFN3ドメインの例としては、配列番号18〜29、107〜110,又は122〜137のFN3ドメインが挙げられる。
【0061】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、EGFRに特異的に結合するFN3ドメインは、少なくとも87%が配列番号27のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。
【0062】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、EGFRに特異的に結合するFN3ドメインは、
HNVYKDTNX
9RGL(配列番号179)又は配列LGSYVFEHDVML(配列番号180)を含むFGループを含み、X
9は、M又はIであり;
BCループは、配列X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8(配列番号181)を含み、
X
1はA、T、G又はDであり;
X
2はA、D、Y又はWであり;
X
3はP、D又はNであり;
X
4はL又は存在せず;
X
5はD、H、R、G、Y又はWであり;
X
6はG、D又はAであり;
X
7は、A、F、G、H又はDであり;
X
8は、Y、F又はLである。
【0063】
EGFRと特異的に結合し、EGFRの自己リン酸化を阻害する本明細書に記載の本発明のFN3ドメインは、構造的特徴として、HNVYKDTNX
9RGL(配列番号179)又は配列LGSYVFEHDVML(配列番号180)を含み、ここで、X
9はM又はIである、FGループを含み得る。こうしたFN3ドメインは、長さ8又は9個のアミノ酸からなり、配列X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8(配列番号181)によって定義される、BCループを更に含み得る。また、前記FN3ドメインは、50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞中で測定したとき、約2.5×10
-6M未満又は約1.8×10
-8M〜約2.5×10
-6MのIC
50値にて、EGFRの自己リン酸化を阻害する。
【0064】
本明細書に記載される、EGFRに特異的に結合し、EGFRの自己リン酸化を阻害する、本発明のFN3ドメインは、
配列LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNX
9RGLPLSAEFTT(配列番号182)、又は配列
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVLGSYVFEHDVMLPLSAEFTT(配列番号183)を更に含み、
ここで、
X
1はA、T、G又はDであり;
X
2はA、D、Y又はWであり;
X
3はP、D又はNであり;
X
4はL又は存在せず;
X
5はD、H、R、G、Y又はWであり;
X
6はG、D又はAであり;
X
7は、A、F、G、H又はDであり;
X
8は、Y、F又はLであり;
X
9は、M又はIである。
【0065】
本明細書に記載のEGFR結合FN3ドメインを、作製し、周知の方法及び本明細書に記載の方法を用いて、EGFRの自己リン酸化を阻害する能力の試験を行うことができる。
【0066】
本発明は、また、EGFRに特異的に結合する単離FN3ドメインを提供し、ここで該FN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110、122〜137又は194〜211に示す配列を含む。
【0067】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、EGFR結合FN3ドメインは、例えば、半減期延長分子の発現及び/又は共役を促進させるために、N末端に連結される開始剤メチオニン(Met)又は特定のFN3ドメインのC末端に連結されるシステイン(Cys)を含む。
【0068】
本発明は、また、EGFRと特異的に結合し、EGFとEGFRとの結合をブロッキングする、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供し、該FN3ドメインは、配列番号1のTencon配列に基づいて設計されたライブラリから単離されている。
【0069】
本発明は、また、EGFRと特異的に結合し、EGFとEGFRとの結合をブロッキングする単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供し、該FN3ドメインは、P54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、EGFRに結合する。
【0070】
FN3ドメインのEGFRへの結合に寄与するアミノ酸残基は、突然変異誘発などの方法を用いて、及び結晶構造によって結合残基/表面を評価することによって、同定することができる。EGFR結合FN3ドメインP54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77、G85での置換は、FN3ドメインへのEGFRの結合を100倍超減少させる。EGFR結合FN3ドメインP54AR4−48、P54AR4−81、P53A1R5−17v2、P54AR4−83v22及びP54AR4−83v23は、これらの残基を共有し、P54AR4−83v2と同じパラトープ残基によりEGFRと結合すると予想できる。その他のEGFR結合FN3ドメインは、BCループ及びFGループの他の位置(24、25、75、76、78、79、80、81、82、83、84及び86位)にあるアミノ酸を変更する一方で、D23、F27、Y28、V77、G85位を変更せず保持することによって作製できる。これらの変更は、特定の位置で、特定のアミノ酸を設計することによって、又はこれらの位置を、ランダムなアミノ酸によりこれらの部位を置換するライブラリに取り込むことによって、行うことができる。このような方法で設計された新規FN3ドメインを使用して、EGFR結合性、溶解度、安定性、免疫原性又は血清半減期などの最適化された特性をスクリーニング又は選択することができる。
【0071】
単一特異性c−Met結合分子
本発明は、また、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングし、これにより、治療用途及び診断用途において幅広く使用することができる、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供する。本発明は、本発明のFN3ドメインをコードしているポリヌクレオチド、又はその相補的な核酸、ベクター、宿主細胞及びそれらを作製する方法、及び使用する方法を提供する。
【0072】
本明細書に記載される本発明のFN3ドメインは、c−Metと高い親和性で結合し、c−Metのシグナル伝達を阻害し、低分子c−Met阻害物質と比較したときの特異性及び標的外の毒性の低減の点において、並びに従来の抗体治療と比較したときの組織侵入の改善の点おいて、利益をもたらし得る。本発明のFN3ドメインは一価であり、このため、他の二価の分子により発生することがある不要な受容体のクラスター形成及び活性化を妨げる。
【0073】
本発明は、また、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングする、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供する。
【0074】
本明細書に記載の本発明のFN3ドメインは、本発明のFN3ドメインの存在下で、ビオチン化HGFとc−Met融合タンパク質の結合の阻害を検出するアッセイにおいて、約1×10
-7M未満、約1×10
-8M未満、約1×10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満又は約1×10
-12M未満のIC
50値にて、c−Metに対するHGFの結合をブロッキングし得る。例示的なFN3ドメインは、約2×10
-10M〜約6×10
-8MのIC
50値にて、c−Metと結合するHGFをブロッキングし得る。本発明のFN3ドメインは、本発明のFN3ドメインの不在下で、同じアッセイ条件を用いたHGFとc−Metとの結合と比較したとき、c−Metに対するHGFの結合を、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%、ブロッキングし得る。
【0075】
本明細書に記載の本発明のFN3ドメインは、同じアッセイ条件を使用して、本発明のFN3ドメインの不在下でのシグナル伝達レベルと比較して、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%、c−Metシグナル伝達を阻害し得る。
【0076】
HGFのc−Metへの結合は、受容体二量体化、自己リン酸化、受容体内部の活性化、細胞質チロシンキナーゼドメイン、並びにDNA合成の調節(遺伝子活性化)及び細胞周期の進行又は分裂に関連する複数のシグナル伝達及び転写促進経路の開始を刺激する。c−Metシグナル伝達の阻害により、1つ以上のc−Met下流のシグナル伝達経路を阻害することもあり、また、このために、c−Metの中和が、細胞増殖及び分化、脈管形成、細胞運動性並びに転移の阻害など、種々の影響を有することもある。
【0077】
c−Metシグナル伝達は、種々の周知の方法、例えば、少なくとも1つのチロシン残基、Y1230、Y1234、Y1235又はY1349上の受容体の自己リン酸化及び/又は天然基材又は合成基材のリン酸化を測定すること、を用いて測定することもできる。リン酸化は、例えば、ELISAアッセイ法において、又はウェスタンブロット法においてリン酸化に対して特異的な抗体を用いて、検出することができる。チロシンキナーゼ活性のアッセイ(Panekら、J Pharmacol Exp Thera 283:1433〜44,1997;Batleyら、Life Sci 62:143〜50,1998)及び本明細書に記載のアッセイ。
【0078】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、100ng/mLの組換えヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞中で測定したとき、約1×10
-6M未満、約1×10
-7M未満、約1×10
-8M未満、約1×10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満又は約1×10
-12M未満のIC
50値にて、c−Met残基位置1349でのHGF誘発性のc−Metのリン酸化を阻害する。
【0079】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、100ng/mLの組換え型ヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞中で測定したとき、4×10
-9M〜約1×10
-6MのIC
50値にて、c−MetチロシンY1349でのHGF誘発性のc−Metのリン酸化を阻害する。
【0080】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、当業者によって行われているような、表面プラズモン共鳴又はKinexa法によって測定されたとき、本発明のFN3ドメインは、約1×10
-7M以下、1×10
-8M、1×10
-9M、1×10
-10M,1×10
-11M、1×10
-12M、1×10
-13M、1×10
-14M又は1×10
-15Mの解離定数(K
D)にて、ヒトc−Metに結合する。いくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、約3×10
-10M〜約5×10
-8MのK
Dにて、ヒトc−Metに結合する。c−MetのFN3ドメイン親和性は、任意の好適な方法を用いて実験的に決定され得る。(例えば、Berzofsky,ら、「Antibody−Antigen Interactions,」In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,NY(1984);Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,NY(1992);及び本明細書に記載の方法を参照)。特定のFN3ドメイン−抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件(例えば、浸透圧モル濃度、pH)下で測定される場合に異なる場合がある。したがって、親和性及びその他抗原−結合パラメータ(例えば、K
D、K
on、K
off)の測定は、好ましくは、タンパク質スカフォールド及び抗原の標準化溶液、及び本明細書で記載される緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行われる。
【0081】
c−Metに結合する本発明のFN3ドメインの例としては、配列番号32−49、111〜114又は212〜223のアミノ酸配列を有するFN3ドメインが挙げられる。
【0082】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、c−Metに特異的に結合するFN3ドメインは、少なくとも83%が配列番号41のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。
【0083】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、c−Metに特異的に結合するFN3ドメインは、
Cストランド及びCDループであって、配列、DSFX
10IRYX
11EX
12X
13X
14X
15GX
16(配列番号184)を含み、ここで、
X
10は、W、F又はVであり;
X
11は、D、F又はLであり;
X
12は、V、F又はLであり;
X
13は、V、L又はTであり;
X
14は、V、R、G、L、T又はSであり;
X
15は、G、S、A、T又はKであり;
X
16は、E又はDである、Cストランド及びCDループと;
Fストランド及びFGループであって、配列TEYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23(配列番号185)を含み、
X
17は、Y、W、I、V、G又はAであり;
X
18は、N、T、Q又はGであり;
X
19は、L、M、N又はIであり;
X
20は、G又はSであり;
X
21はS、L、G、Y、T、R、H又はKであり;
X
22は、I、V又はLであり;
X
23は、V、T、H、I、P、Y又はLである、Fストランド及びFGループと、を含む。
【0084】
本明細書に記載する、c−Metに特異的に結合し、c−Metの自己リン酸化を阻害する、本発明のFN3ドメインは、配列LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAF DSFX
10IRYX
11E X
12X
13X
14X
15GX
16 AIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23PLSAEFTT(配列番号186)、を更に含み、
ここで、
X
10は、W、F又はVであり;
X
11は、D、F又はLであり;
X
12は、V、F又はLであり;
X
13は、V、L又はTであり;
X
14は、V、R、G、L、T又はSであり;
X
15は、G、S、A、T又はKであり;
X
16は、E又はDであり;
X
17は、Y、W、I、V、G又はAであり;
X
18は、N、T、Q又はGであり;
X
19は、L、M、N又はIであり;
X
20は、G又はSであり;
X
21はS、L、G、Y、T、R、H又はKであり;
X
22は、I、V又はLであり;
X
23は、V、T、H、I、P、Y又はLである。
【0085】
本発明は、また、c−Metに特異的に結合する単離FN3ドメインを提供し、ここで該FN3ドメインは、配列番号32〜49又は111〜114に示す配列を含む。
【0086】
本発明は、c−Metと特異的に結合し、HGFとc−Metとのの結合をブロッキングする、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供し、該FN3ドメインは、配列番号1のTencon配列に基づいて設計されたライブラリから単離されている。
【0087】
本発明は、また、c−Metと特異的に結合し、HGFとc−Metとの結合をブロッキングする単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供し、該FN3ドメインは、P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、c−Metに結合する。
【0088】
FN3ドメインのc−Metへの結合に寄与するアミノ酸残基は、突然変異誘発などの方法を用いて、及び結晶構造によって結合残基/表面を評価することによって、同定することができる。c−Met結合FN3ドメインP114AR7P95−A3(配列番号27)の残基R34S、F38S、M72S及びI79Sでの置換により、FN3ドメインへのc−Metの結合が100倍超減少した。c−Met結合FN3ドメイン分子P114AR7P92−F3、P114AR7P95−D3、P114AR7P95−F10及びP114AR7P95−H8は、これらの残基を共有し、P114AR7P95−A3と同じパラトープ残基によりc−Metと結合すると予想できる。その他のc−Met結合FN3ドメインは、Cストランド、Fストランド、CDループ及び/又はFGループの他の位置(32、36、39、40、68、70、78及び81位)にあるアミノ酸を変更する一方で、R34S、F38S、M72S及びI79S位を変更せず保持することによって作製できる。これらの変更は、特定の位置で、特定のアミノ酸を設計することによって、又はこれらの位置を、ランダムなアミノ酸によりこれらの部位を置換するライブラリに取り込むことによって、行うことができる。このような方法で設計された新規FN3ドメインを使用して、c−Met結合性、溶解度、安定性、免疫原性又は血清半減期などの最適化された特性をスクリーニング又は選択することができる。
【0089】
Tencon配列に基づくライブラリからのEGFR又はc−Met FN3ドメインの単離
Tencon(配列番号1)は、ヒトテネイシン−Cの、15のFN3ドメインの共通配列から設計された非天然のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobsら、Protein Engineering,Design,and Selection,25:107〜117,2012;米国特許公開第2010/0216708号)。Tenconの結晶構造は、FN3ドメインに特有であるが、7つのβストランドを接続する6つの表面露出ループを示す。このβストランドは、A、B、C、D、E、F及びGとし、ループは、AB、BC、CD、DE、EF及びFGループと呼ばれる(Bork and Doolittle,Proc Natl Acad Sci USA 89:8990〜8992,1992;米国特許第6,673,901号)。これらのループ、又は各ループ内の選択された残基は、EGFR又はc−Metと結合する新規分子の選択に使用できるフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリを構築するために、ランダム化できる。表1には、Tencon(配列番号1)の各ループ及びβストランドの位置及び配列を示す。
【0090】
したがって、Tencon配列に基づいて設計されたライブラリは、以下に示すように、ライブラリTCL1又はTCL2など、ランダム化FGループ又はランダム化BCループ及びFGループを有し得る。Tencon BCループは、7個の長いアミノ酸であり、したがって、1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸は、BCループで多様化され、かつ、Tencon配列に基づいて設計されたライブラリ内でランダム化されてもよい。Tencon FGループは、7個の長いアミノ酸であり、したがって、1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸は、FGループで多様化され、かつ、Tencon配列に基づいて設計されたライブラリ内でランダム化されてもよい。Tenconライブラリ内のループでの更なる多様性は、ループでの残基の挿入及び/又は欠失によって得ることができる。例えば、FG及び/又はBCループは、アミノ酸1〜22個分だけ延長されるか、又はアミノ酸1〜3個分だけ減少させることができる。Tencon内のFGループは、7個のアミノ酸の長さであり、抗体の重鎖内の対応するループは、4〜28個の残基の範囲である。最大の多様性を提供するため、FGループは、配列及び長さを多様化させて、4〜28の残基の範囲の抗体CDR3の長さに対応させることができる。例えば、FGループは、更に1、2、3、4又は5個のアミノ酸でループを延長することによって、長さを更に多様化することができる。
【0091】
Tencon配列に基づいて設計されたライブラリは、また、FN3ドメインの側面に形成されるランダム化された代替表面を有し、かつ、2つ又はそれ以上のβストランド及び少なくとも1つのループを含み得る。このような1つの代替表面は、C及びFβストランド並びにCDループ及びFGループ(C−CD−F−FG表面)内でアミノ酸によって形成される。Tenconの代替C−CD−F−FG表面に基づくライブラリ設計は、
図1に示されており、かつ、こうしたライブラリの詳細な作製は、米国特許公開第2013/0226834号に記述されている。また、Tencon配列に基づいて設計されたライブラリとしては、11、14、17、37、46、73又は86の残基位置に置換を有し(配列番号1に対応してナンバリングした残基)、かつ、変異体が熱安定性の改善性を示すTencon変異体などの、Tencon変異体に基づいて設計されたライブラリが挙げられる。例示的なTencon変異体は、米国特許第2011/0274623号に記述されており、Tencon配列番号1と比較して、E11R、L17A、N46V及びE86Iの置換を有するTencon27(配列番号99)が挙げられる。
【0093】
Tencon及び他のFN3配列ベースのライブラリは、ランダムな又は定義されたアミノ酸セットを用いて、選択した残基位置にてランダム化することができる。例えば、ランダム置換を有するライブラリ中の変異体は、20の天然のアミノ酸全てをコードするNNKコドンを用いて生成できる。他の多様化スキームにおいて、アミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、Ser、Arg、Asp、Glu、Gly、及びCysをコードするために、DVKコドンが使用できる。あるいは、20全てのアミノ酸残基を生じさせ、同時に停止コドンの頻度を低減するために、NNSコドンが使用できる。多様化される位置に偏ったアミノ酸分布を有するFN3ドメインのライブラリは、例えば、Slonomics(登録商標)法(http:_//www_sloning_com)を用いて合成できる。この手法は、何千もの遺伝子合成プロセスに十分な普遍的な構築ブロックとして機能する、あらかじめ作られた二本鎖トリプレットのライブラリを使用する。このトリプレットのライブラリは、あらゆる所望のDNA分子を構築するのに必要な、全ての考えられる配列組合せを示す。コドン指定は、よく知られているIUBコードによる。
【0094】
本明細書に記載の、EGFR又はc−Metに特異的に結合する本発明のFN3ドメインは、cisディスプレイを用いて、スカフォールドタンパク質をコードするDNAフラグメントを、RepAをコードするDNAフラグメントにライゲートし、インビトロ翻訳後に形成されたタンパク質DNA錯体のプールを作製して(ここで、各タンパク質は、安定的にそれをコードするDNAと結びついている(米国特許第7,842,476号;Odegripら、Proc Natl Acad Sci USA 101,2806〜2810,2004))、TenconライブラリなどのFN3ライブラリを作製し、EGFR及び/又はc−Metに特異的に結合するためのライブラリを、当該技術分野で周知の、または、実施例に記載の任意の方法で分析することにより、単離することができる。使用できる例示的な周知の方法としては、ELISA、サンドイッチ免疫測定法、並びに競合アッセイ及び非競合アッセイが挙げられる(例えば、Ausubelら、eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい)。EGFR又はc−Metに特異的に結合する同定されたFN3ドメインについては、本明細書に記載の方法を用いて、EGFRに結合するEGF又はc−Metに対するHGFの結合などのEGFRリガンドをブロッキングする能力、及びEGFR及び/又はc−Metシグナル伝達を阻害する能力の特性を更に決定する。
【0095】
本明細書に記載のように、EGFR又はc−Metに特異的に結合する本発明のFN3ドメインは、ライブラリを作製するためのテンプレートとして、任意のFN3ドメインを用いて、また、本明細書に記載の方法を用いて、EGFR又はc−Metに特異的に結合する分子のライブラリをスクリーニングして、作製することができる。使用できる例示的なFN3ドメインは、テネイシンC(配列番号75)の第3のFN3ドメイン(TN3)、フィブコン(Fibcon)(配列番号76)及びフィブロネクチン(配列番号77)の第10のFN3ドメイン(FN10)である。インビトロでライブラリを発現又は翻訳させるために、ライブラリをベクターにクローニングするか、又はライブラリの二本鎖cDNAカセットを合成するために、標準的なクローニング及び発現法が使用される。例えば、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun,Proc Natl Acad Sci USA,94,4937〜4942,1997)、mRNAディスプレイ(Roberts and Szostak,Proc Natl Acad Sci USA,94,12297〜12302,1997)、又は他の無細胞系(米国特許第5,643,768号)などが使用され得る。FN3ドメイン変異型のライブラリは、例えば、任意の好適なバクテリオファージの表面上に提示される融合タンパク質として発現され得る。バクテリオファージの表面上に融合ポリペプチドを提示する方法は、よく知られている(米国特許公開第2011/0118144号;国際特許公開第2009/085462号;米国特許第6,969,108号;米国特許第6,172,197号;米国特許第5,223,409号;米国特許第6,582,915号;米国特許第6,472,147号)。
【0096】
本明細書に記載の、EGFR又はc−Metに特異的に結合する本発明のFN3ドメインは、変化させて、熱安定性及び熱的フォールティング並びにアンフォールディングの可逆性の改善などの特性を向上させることができる。タンパク質及び酵素の見かけの熱安定性を高めるため、極めて類似性の高い熱安定性配列との比較に基づく合理的設計、ジスルフィド架橋の安定化設計、α−ヘリックス傾向を増加させる変異、塩橋の改変、タンパク質の表面電荷の変化、定方向進化、及び共通配列の組成物を含む、いくつかの方法が適用されている(Lehmann及びWyss,Curr Opin Biotechnol,12,371〜375,2001)。高い熱安定性は、発現したタンパク質の収率を増加させ、溶解度又は活性を改善し、免疫原性を減少させ、製造におけるコールドチェーンの必要性を最小化することができる。Tencon(配列番号1)の熱安定性を向上させるために、置換することができる残基は、残基位置11、14、17、37、46、73、又は86であり、米国特許公開第2011/0274623号に記述されている。これらの残基に対応する置換は、本発明のFN3ドメイン又は二重特異性FN3ドメイン含有分子に組み込むことができる。
【0097】
本発明は、また、EGFRと特異的に結合し、EGFとEGFRとの結合をブロッキングし、配列番号18〜29、107〜110、122〜137に示す配列を含み、更に、Tencon(配列番号1)の11、14、17、37、46、73及び86位に対応する1つ以上の残基位置での置換を含む単離FN3ドメインを提供する。
【0098】
本発明は、また、c−Metと特異的に結合し、HGFとc−Metとの結合をブロッキングし、配列番号32〜49又は111〜114に示す配列を含み、更に、Tencon(配列番号1)の11、14、17、37、46、73及び86位に対応する1つ以上の残基位置での置換を含む単離FN3ドメインを提供する。
【0099】
例示的な置換は、置換E11N、E14P、L17A、E37P、N46V、G73Y及びE86I(ナンバリングは、配列番号1に従う)である。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、Tencon(配列番号1)の置換L17A、N46V及びE86Iに対応する置換を含む。
【0101】
本明細書に記載のとおり、EGFRに特異的に結合するFN3ドメイン(
図1)は、Tencon(配列番号1)と比較して、延長されたFGループを有する。したがって、Tencon(配列番号1)の残基11、14、17、37、46、73及び86に対応する残基は、
図1A及び1Bに示される、配列番号24のFN3ドメインを除くEGFR FN3ドメインの、残基11、14、17、37、46、73及び91であり、ここで、対応する残基は、BCループでの1つのアミノ酸の挿入により、残基11、14、17、38、74及び92となる。
【0102】
本発明は、また、EGFRと特異的に結合し、EGFとEGFRとの結合をブロッキングし、配列番号18〜29、107〜110、122〜137又は194〜211で示すアミノ酸配列を含み、Tencon(配列番号1)のL17A、N46V及びE86Iの置換に対応する、1つ、2つ又は3つの置換を任意選択的に有する、単離FN3ドメインを提供する。
【0103】
本発明は、また、c−Metと特異的に結合し、HGFとc−Meとの結合をブロッキングし、配列番号32〜49、111〜114又は212〜223で示すアミノ酸配列を含み、Tencon(配列番号1)のL17A、N46V及びE86Iの置換に対応する、1つ、2つ又は3つの置換を任意選択的に有する、単離FN3ドメインを提供する。
【0104】
タンパク質安定性及びタンパク質不安定性の測定は、タンパク質完全性と同じ又は異なる側面として見ることができる。タンパク質は、熱、紫外線又は電離放射線、(溶液中の場合は)周囲の浸透圧モル濃度及びpHの変化、小さな孔寸法での濾過による機械的剪断力、紫外線放射、γ線照射などの電離放射線、化学的又は熱的な脱水、又は、タンパク質構造の破壊を引き起こし得る他の任意の作用又は力に対して感受性があるか、又は「不安定」である。分子の安定性は、標準的な方法を用いて決定することができる。例えば、分子の安定性は、標準的な方法を用いて、分子の半分がアンフォールディングされる温度(℃)である、熱融解(「TM」)温度を測定することによって決定され得る。典型的には、TMが高いほど、分子はより安定している。熱に加えて、化学環境もまた、タンパク質が特有の三次元構造を維持する能力を変化させる。
【0105】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、本発明の、EGFR又はc−Metに結合するFN3ドメインは、改変前の同一ドメインと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%以上の、TMの上昇によって測定される増加した安定性を示す。
【0106】
化学変性も同様に、様々な方法によって測定することができる。化学的変性剤としては、グアニジン塩酸塩、チオシアン酸グアニジニウム、尿素、アセトン、有機溶媒(DMF、ベンゼン、アセトニトリル)、塩類(硫酸アンモニウム、臭化リチウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム)、還元剤(例えば、ジチオスレイトール、βメルカプトエタノール、ジニトロチオベンゼン(dinitrothiobenzene)、及び、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物)、非イオン性及びイオン性洗剤、酸類(例えば、塩酸(HCl)、酢酸(CH
3COOH)、ハロゲン化酢酸)、疎水性分子(例えば、リン脂質)、及び標的変性剤が挙げられる。変性の程度の定量化は、標的分子に結合する能力などの機能特性の損失、又はあるいは凝集傾向、これまで溶媒が到達しにくかった残基が露出する傾向、ジスルフィド結合が破壊若しくは形成する傾向などの物理化学的性質による損失に依存し得る。
【0107】
本明細書に記載するいくつかの実施形態では、EGFR又はc−Metに結合する本発明のFN3ドメインは、化学変性剤としてグアニジン塩酸塩を用いて測定した、改変前の同じスカフォールドと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%以上の安定性の増加を示す。増加した安定性は、よく知られている方法を使用して塩酸グアニジンの濃度を増加させる処理における、減少したトリプトファン蛍光によって測定され得る。
【0108】
本明細書に記載の本発明のFN3ドメインは、例えば、標的分子の原子価及びしたがって結合活性を増加させるための手段として、又は2つ以上の異なる標的分子に同時に結合する二重若しくは多特異性スカフォールドを生成するための手段として、単量体、二量体、若しくは多量体として、生成できる。二量体及び多量体は、例えば、アミノ酸リンカー、例えば、ポリグリシン、グリシン及びセリン、又はアラニン及びプロリンを含有するリンカーの含有によって、単一特異性、二重又は多特異性タンパク質スカフォールドを結合することによって生成できる。例示的なリンカーとしては、(GS)
2(配列番号78)、(GGGS)
2(配列番号224)、(GGGGS)
5(配列番号79)、(AP)
2(配列番号80)、(AP)
5(配列番号81)、(AP)
10(配列番号82)、(AP)
20(配列番号83)及びA(EAAAK)
5AAA(配列番号84)が挙げられる。二量体及び多量体は、互いにN−C方向に連結され得る。ポリペプチドを新規の結合融合ポリペプチドと結合するための天然の、または人工のペプチドリンカーの使用は、文献においてよく知られている(Hallewellら、J Biol Chem 264,5260〜5268,1989;Alfthanら、Protein Eng.8,725〜731,1995;Robinson & Sauer,Biochemistry 35,109〜116,1996;米国特許第5,856,456号)。
【0109】
二重特異性EGFR/c−Met結合分子
本明細書に記載される本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、低分子EGFR阻害物質と比較したときの特異性及び標的外の毒性の低減の点において、並びに従来の抗体治療と比較したときの組織侵入の改善の点おいて、利益をもたらし得る。本発明は、少なくとも一部は、EGFR結合及びc−Met結合FN3ドメインの混合物と比較したとき、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子が、大幅に改善された相乗的阻害効果をもたらすとの驚くべき発見に基づく。分子は、EGFR及びc−Metの双方に対して、特異的親和性となるように調節して、腫瘍侵入及び保持率を最大化してもよい。本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、EGFR及び/又はc−Metシグナル伝達経路のより効果的な阻害をもたらし、セツキシマブ(Eribtux(登録商標))より効率的に、腫瘍増殖を阻害する。
【0110】
本発明は、また、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン及び第2のFN3ドメインを含む単離二重特異性FN3ドメイン含有分子であって、該第1のFN3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングし、該第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングする、単離二重特異性FN3ドメイン含有分子を提供する。
【0111】
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、本発明の任意のEGFR結合FN3ドメイン及びc−Met結合FN3ドメインの直接的又はリンカーを介しての共有結合による連結により、生成することができる。このため、二重特異性分子の第1のFN3ドメインは、EGFR結合FN3ドメインについて、上述の特徴を有し得る。また、二重特異性分子の第2のFN3ドメインは、c−Met結合FN3ドメインについて、上述の特徴を有し得る。
【0112】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第1のFN3ドメインは、50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞において測定したとき、約2.5×10
-6M未満のIC
50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害し、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第2のFN3ドメインは、100ng/mLのヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約1.5×10
-6M未満のIC
50値にて、c−Met残基チロシン1349における、HGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害する。
【0113】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第1のFN3ドメインは、50ng/mLのヒトEGFを用いて、NCI−H292細胞において測定したとき、約1.8×10
-8M〜約2.5×10
-6MのIC
50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害し、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第2のFN3ドメインは、100ng/mLのヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約4×10
-9M〜約1.5×10
-6MのIC
50値にて、c−Met残基チロシン1349における、HGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害する。
【0114】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第1のFN3ドメインは、約1×10
-8M未満の解離定数(K
D)にて、ヒトEGFRに結合し、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の第2のFN3ドメインは、約5×10
-8M未満のK
Dにて、ヒトc−Metに結合する。
【0115】
本明細書に記載される、EGFR及びc−Metの双方に結合する二重特異性分子では、第1のFN3ドメインは、ヒトEGFRと、約2×10
-10〜約1×10
-8MのK
Dにて結合し、前記第2のFN3ドメインは、ヒトc−Metと、約3×10
-10〜約5×10
-8MのK
Dにて結合する。
【0116】
二重特異性EGFR/c−Met分子のEGFR及びc−Metに対する親和性は、単一特異性分子の実施例3及び実施例5に記載されているように決定することができる。
【0117】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子の第1のFN3ドメインは、A431細胞を用い、第1のFN3ドメインと共に又は第1のFN3ドメイン無しで、インキュベートしたA431細胞において、600nMにて、ストレプトアビジン−フィコエリトリンコンジュゲートを使用して、結合されたビオチン化EGFからの蛍光量を検出するアッセイにおいて、約1×10
-9M〜約1.5×10
-7MのIC
50値にて、EGFRに対するEGFの結合をブロッキングし得る。本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子の第1のFN3ドメインは、第1のFN3ドメインの不在下で、同じアッセイ条件を用いてEGFとEGFRとの結合を比較したとき、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%、EGFRに対するEGFの結合をブロッキングし得る。
【0118】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子内の第2のFN3ドメインは、第2のFN3ドメインの存在下で、ビオチン化HGFとc−Met融合タンパク質の結合の阻害を検出するアッセイにおいて、約2×10
-10M〜約6×10
-8MのIC
50値にて、c−Metに対するHGFの結合をブロッキングし得る。二重特異性EGFR/c−Met分子内の第2のFN3ドメインは、第2のFN3ドメインの不在下で、同じアッセイ条件を用いてHGFとc−Metとの結合と比較したとき、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%、c−Metに対するHGFの結合をブロッキングし得る。
【0119】
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子は、同じアッセイ条件を使用した、本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子の不在下でのシグナル伝達レベルと比較して、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%、EGFR及び/又はc−Metシグナル伝達を阻害し得る。
【0120】
EGFR及びc−Metのシグナル伝達は、単一特異性分子について、上記のとおり種々の周知の方法を用いて測定することができる。
【0121】
EGFRに特異的に結合する第1のFN3ドメイン及びc−Metに特異的に結合する第2のFN3ドメインを含む、本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Me分子は、第1のFN3ドメイン及び第2のFN3ドメインの混合物によって観察される相乗的阻害と比較して、EGFR及びc−Metのシグナル伝達及び腫瘍細胞増殖の相乗的阻害の大幅な向上をもたらす。相乗的阻害は、例えば、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子及び2つの単一特異性分子(一方はEGFRに結合し、他方はc−Metに結合する)の混合物による、ERKリン酸化の阻害を測定することによって、評価できる。本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子は、2つの単一特異性FN3ドメインの混合物についてのIC
50値と比較した場合、少なくとも100倍小さい、例えば、少なくとも500、1000、5000、10,000倍小さいIC
50値にて、ERKのリン酸化を阻害することができ、これは、この二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子が、2つの単一特異性FN3ドメインの混合物と比較して、能力が少なくとも100倍増大されていることを示す。例示的な二重特異性EGFR c−Met FN3ドメイン含有分子は、約5×10
-9M以下のIC
50値にて、ERKのリン酸化を阻害することができる。ERKのリン酸化は、標準的な方法及び本明細書に記載の方法を用いて測定できる。
【0122】
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、第1のFN3ドメインと第2のFN3ドメインとの混合物を用いたH292細胞の増殖阻害のIC
50値と比較したとき、少なくとも30倍以下のIC
50値にて、H292細胞の増殖を阻害し得、ここで、この細胞増殖は、7.5ng/mLのHGFを添加した10% FBS含有培地により誘発される。本明細書に記載の本発明の二重特異性分子は、第1のFN3ドメインと第2のFN3ドメインとの混合物による腫瘍細胞の増殖阻害のIC
50値と比較したとき、約30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800又は約1000倍以下のIC
50値にて、腫瘍細胞の増殖を阻害し得る。腫瘍細胞増殖の阻害は、標準的な方法及び本明細書に記載の方法を用いて測定できる。
【0123】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、P54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、EGFRに結合する。
【0124】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、c−Metに結合する。
【0125】
二重特異性分子中のパラトープ残基は、突然変異誘発研究で同定できるか、又はFN3ドメイン及びEGFR又はc−Metの共結晶構造から同定することができる。突然変異誘発研究では、例えば、アラニンスキャニング法を利用してもよく、得られた変異体のEGFR又はc−Metへの結合について、標準的な方法により、試験を行ってもよい。典型的に、パラトープ残基は、突然変異が誘発されたときの残基であり、EGFR又はc−Metへの結合の低減又は消失に伴い変異体が発生する。P54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応するアミノ酸残基位置にて置換を有するEGFR結合FN3ドメインは、置換されるときに、野生型P54AR4−83v2と比較すると、EGFRの結合が少なくとも100倍減少する。二重特異性分子ECB1、ECB2、ECB3、ECB4、ECB5、ECB6、ECB7、ECB15、ECB17、ECB60、ECB37、ECB94、ECB95、ECB96、ECB97、ECB91、ECB18、ECB28、ECB38、ECB39、ECB168及びECB176は、P54AR4−83v2の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応する残基位置にて、D、F、Y、V及びGを有し、これらの残基により、EGFRと結合することが予測される。P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応するアミノ酸残基位置にて置換を有するc−Met結合FN3ドメインは、置換されるとき、野生型P114AR7P95−A3と比較すると、c−Met結合を少なくとも100倍消失又は低減する。二重特異性分子ECB2、ECB5、ECB15、ECB60、ECB38及びECB39は、P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応する残基位置にて、R、F、M及びIを有し、これらの残基によりc−Metに結合すると予測される。
【0126】
また、本発明は、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン及び第2のFN3ドメインを含む二重特異性FN3ドメイン含有分子であって、該第1のFN3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングし、該第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングする、二重特異性FN3ドメイン含有分子を提供し、
該第1のFN3ドメインは、
HNVYKDTNX
9RGL(配列番号179)又は配列LGSYVFEHDVML(配列番号180)を含むFGループを含み、X
9は、M又はIであり;
BCループは、配列X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8(配列番号181)を含み、
X
1はA、T、G又はDであり;
X
2はA、D、Y又はWであり;
X
3はP、D又はNであり;
X
4はL又は存在せず;
X
5はD、H、R、G、Y又はWであり;
X
6はG、D又はAであり;
X
7は、A、F、G、H又はDであり;
X
8は、Y、F又はLであり;
該第2のFN3ドメインは、
Cストランド及びCDループであって、配列、DSFX
10IRYX
11EX
12X
13X
14X
15GX
16(配列番号184)を含み、ここで、
X
10は、W、F又はVであり;
X
11は、D、F又はLであり;
X
12は、V、F又はLであり;
X
13は、V、L又はTであり;
X
14は、V、R、G、L、T又はSであり;
X
15は、G、S、A、T又はKであり;
X
16は、E又はDである、Cストランド及びCDループと;
Fストランド及びFGループであって、配列TEYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23(配列番号185)を含み、
X
17は、Y、W、I、V、G又はAであり;
X
18は、N、T、Q又はGであり;
X
19は、L、M、N又はIであり;
X
20は、G又はSであり;
X
21はS、L、G、Y、T、R、H又はKであり;
X
22は、I、V又はLであり;
X
23は、V、T、H、I、P、Y又はLである、Fストランド及びFGループと、を含む。
【0127】
本明細書に記載のその他のいくつかの実施形態では、二重特異性分子は、配列
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNX
9RGLPLSAEFTT(配列番号182)、又は、配列
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGV LGSYVFEHDVMLPLSAEFTT(配列番号183)、を含む、EGFRに結合する第1のFN3ドメインを含み、
配列番号182及び183では、
X
1はA、T、G又はDであり;
X
2はA、D、Y又はWであり;
X
3はP、D又はNであり;
X
4はL又は存在せず;
X
5はD、H、R、G、Y又はWであり;
X
6はG、D又はAであり;
X
7は、A、F、G、H又はDであり;
X
8は、Y、F又はLであり;
X
9は、M又はIである。
【0128】
本明細書に記載のその他のいくつかの実施形態では、二重特異性分子は、配列
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAF DSFX
10IRYX
11E X
12X
13X
14X
15GX
16AIVLTVPGSERSYDLTGLKPG TEYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23PLSAEFTT(配列番号186)、を含むc−Metに結合する第2のFN3ドメインを含み、
ここで、
X
10は、W、F又はVであり;
X
11は、D、F又はLであり;
X
12は、V、F又はLであり;
X
13は、V、L又はTであり;
X
14は、V、R、G、L、T又はSであり;
X
15は、G、S、A、T又はKであり;
X
16は、E又はDであり;
X
17は、Y、W、I、V、G又はAであり;
X
18は、N、T、Q又はGであり;
X
19は、L、M、N又はIであり;
X
20は、G又はSであり;
X
21はS、L、G、Y、T、R、H又はKであり;
X
22は、I、V又はLであり;
X
23は、V、T、H、I、P、Y又はLである、Fストランド及びFGループと、を含む。
【0129】
例示的な二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、配列番号50〜72、106、118〜121、138〜165、170〜178又は190〜193で示すアミノ酸配列を含む。
【0130】
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子は、EGFRの自己リン酸化の阻害などの、その機能的特性に関連する特定の構造特性を含んでおり、即ち、配列HNVYKDTNX
9RGL(配列番号179)又は配列LGSYVFEHDVML(配列番号180)(ここで、X
9は、M又はIである)を含む、EGFRに結合する第1のFN3ドメインのFGループなどである。
【0131】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、
50ng/mLのヒトEGFを用いて、H292細胞において測定したとき、約8×10
-7M未満のIC
50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害するか、
100ng/mLのヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約8.4×10
-7M未満のIC
50値にて、c−Met残基チロシン1349におけるHGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害するか、
約9.5×10
-6M未満のIC
50値にて、HGF誘発性のNCI−H292細胞増殖を阻害し、ここで該細胞増殖は、7.5ngのHGFを含有する10% FBSによって誘発されるか、
約2.0×10
-8M未満のK
Dにて、EGFRに結合するか;又は
約2.0×10
-8M未満のK
Dにて、c−Metに結合し、該K
Dは、実施例3又は実施例5に記載のように表面プラズモン共鳴を用いて測定される。
【0132】
別の実施形態においては、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、
50ng/mLのヒトEGFを用いて、H292細胞において測定したとき、約4.2×10
-9M〜8×10
-7MのIC
50にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害するか、
100ng/mLのヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約2.4×10
-8M〜約8.4×10
-7MのIC
50値にて、c−Met残基チロシン1349におけるHGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害するか、
約2.3×10
-8M〜約9.5×10
-6MのIC
50値にて、HGF誘発性のNCI−H292細胞増殖を阻害し、該細胞増殖は、7.5ngのHGFを含有する10% FBSによって誘発されるか、
約2×10
-10M〜約2.0×10
-8MのK
Dにて、EGFRに結合するか、又は
約1×10
-9M〜約2.0×10
-8MのK
Dにて、c−Metに結合し、該K
Dは、実施例3又は実施例5に記載のように表面プラズモン共鳴を用いて測定される。
【0133】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met分子は、EGFR結合FN3ドメインであって、
配列LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNX
9RGLPLSAEFTT(配列番号182)を含み、ここで、
X
1は、Dであり;
X
2は、Dであり;
X
3は、Pであり;
X
4は、存在せず;
X
5は、H又はWであり;
X
6は、Aであり;
X
7は、Fであり;
X
8は、Yであり;
X
9は、M又はIである、EGFR結合FN3ドメインと;
c−Met結合FN3ドメインであって、配列
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAF DSFX
10IRYX
11E X
12X
13X
14X
15GX
16AIVLTVPGSERSYDLTGLKPG TEYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23PLSAEFTT(配列番号186)を含み、
ここで、
X
10は、Wであり;
X
11は、Fであり;
X
12は、Fであり;
X
13は、V又はLであり;
X
14は、G又はSであり;
X
15は、S又はKであり;
X
16は、E又はDであり;
X
17は、Vであり;
X
18は、Nであり;
X
19は、L又はMであり;
X
20は、G又はSであり;
X
21は、S又はKであり;
X
22は、Iであり;
X
23は、Pである、c−Met結合FN3ドメインと、を含む。
【0134】
例示的な二重特異性EGFR/c−Met分子は、配列番号57、61、62、63、64、65、66、67、68又は190〜193に示す配列を有する分子である。
【0135】
本明細書に記載の本発明の二重特異性分子は、上述のとおり、Tencon(配列番号1)の11、14、17、37、46、73及び86位に対応する第1のFN3ドメイン及び/又は第2のFN3ドメインにおける1つ以上の残基位置にて、及び29位にて、置換を更に含み得る。例示的な置換は、置換E11N、E14P、L17A、E37P、N46V、G73Y及びE86I及びD29E(ナンバリングは、配列番号1に従う)である。当業者であれば、後に述べるように、側鎖内で関連付けられるアミノ酸ファミリー内のアミノ酸など、その他のアミノ酸を置換に使用できることは、理解するであろう。
【0136】
生成した変異体については、その安定性及び本明細書の方法を用いたEGFR及び/又はc−Metへの結合に関して試験を行うことができる。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、EGFRと特異的に結合する第1のFN3ドメインと、c−Metと特異的に結合する第2のFN3ドメインと、を含み、該第1のFN3ドメインは、配列
LPAPKNLVVSX
24VTX
25DSX
26RLSWDDPX
27AFYX
28SFLIQYQX
29SEKVGEAIX
30LTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYX
31VHNVYKDTNX
32RGLPLSAX
33FTT(配列番号:187)を含み、
X
24は、E、N又はRであり;
X
25は、E又はPであり;
X
26は、L又はAであり;
X
27は、H又はWであり;
X
28は、E又はDであり;
X
29は、E又はPであり;
X
30は、N又はVであり;
X
31は、G又はYであり;
X
32は、M又はIであり;
X
33は、E又はIであり、
第2のFN3ドメインは、配列
LPAPKNLVVSX
34VTX
35DSX
36RLSWTAPDAAFDSFWIRYFX
37FX
38X
39X
40GX
41AIX
42LTVPGSERSYDLTGLKPGTEYVVNIX
43X
44VKGGX
45ISPPLSAX
46FTT(配列番号188)を含み;
X
34は、E、N又はRであり;
X
35は、E又はPであり;
X
36は、L又はAであり;
X
37は、E又はPであり;
X
38は、V又はLであり;
X
39は、G又はSであり;
X
40は、S又はKであり;
X
41は、E又はDであり;
X
42は、N又はVであり;
X
43は、L又はMであり;
X
44は、G又はSであり;
X
45は、S又はKであり;
X
46は、E又はIである。
【0137】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が配列番号27のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む第1のFN3ドメインを含み、少なくとも83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が配列番号41のアミノ酸配列と同一である、アミノ酸配列を含む第2のFN3ドメインを含む。
【0138】
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、EGFR及びc−Metに対して、特異的親和性となるように調節して、腫瘍集積を最大化してもよい。
【0139】
また、本発明は、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン及び第2のFN3ドメインを含む単離二重特異性FN3ドメイン含有分子であって、該第1のFN3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングし、該第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングする、単離二重特異性FN3ドメイン含有分子であって、該第1のFN3ドメイン及び該第2のFN3ドメインは、配列番号1のTencon配列に基づいてデザインされたライブラリから単離される、単離二重特異性FN3ドメイン含有分子を提供する。
【0140】
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、周知の方法を用いた本発明のEGFR結合FN3ドメイン及びc−Met結合FN3ドメインの共有結合により、生成することができる。FN3ドメインは、リンカー、例えばポリグリシン、グリシンとセリン又はアラニンとプロリンを含有するリンカーを介して連結させることもできる。例示的なリンカーとしては、(GS)
2、(配列番号78)、(GGGS)2(配列番号224)、(GGGGS)
5(配列番号79)、(AP)
2(配列番号80)、(AP)
5(配列番号81)、(AP)
10(配列番号82)、(AP)
20(配列番号83)、A(EAAAK)
5AAA(配列番号84)が挙げられる。ポリペプチドを新規の結合融合ポリペプチドと結合するための天然の、または人工のペプチドリンカーの使用は、文献においてよく知られている(Hallewellら、J Biol Chem 264,5260〜5268,1989;Alfthanら、Protein Eng.8,725〜731,1995;Robinson & Sauer,Biochemistry 35,109〜116,1996;米国特許第5,856,456号)。本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met分子は、第1のFN3ドメインのC末端から第2のFN3ドメインのN末端へ、又は第2のFN3ドメインのC末端から第1のFN3ドメインのN末端へ、共に連結されてもよい。いずれのEGFR結合FN3ドメインも、共有結合により、c−Met結合FN3ドメインに連結されてよい。例示的なEGFR結合FN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110、122〜137、194〜211に示されたアミノ酸配列を有するドメインであり、例示的なc−Met結合FN3ドメインは、配列番号32〜49、111〜114又は212〜223に示されたアミノ酸配列を有するドメインである。二重特異性分子と結合したEGFR−結合FN3ドメインは、更に、N末端にて、反応開始剤メチオニン(Met)を含んでもよい。
【0141】
本明細書に記載されているような二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子の変異体は、本発明の範囲内である。例えば、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子における置換は、その結果得られた変異体において、親分子と比較して、EGFR及びc−Metに対する同様の感度及び効力が保持される限り、行われてもよい。例示的な一時的変異は、例えば、それらの親分子に類似の特徴を有する変異体となる同類置換である。同類置換とは、側鎖で関連したアミノ酸ファミリー内で起こる置換である。遺伝的にコードされるアミノ酸は、(1)酸性アミノ酸(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩)、(2)塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、(3)非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び(4)電荷を持たない極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)、の4つのファミリーに分類され得る。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸として共に分類される場合もある。あるいは、アミノ酸レパートリーは、以下のように分類され得る;(1)酸性アミノ酸(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩);(2)塩基性アミノ酸(リジン、アルギニンヒスチジン);(3)脂肪族アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)(セリン及びスレオニンは、任意選択的に、脂肪族水酸基として別に、分類される);(4)芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5)アミドアミノ酸(アスパラギン、グルタミン);(6)硫黄含有アミノ酸(システイン及びメチオニン)(Stryer(ed.),Biochemistry,2nd ed,WH Freeman and Co.,1981)。非同類置換は、異なる分類のアミノ酸間でのアミノ酸残基の置換を含む二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子に行って、二重特異性分子の特性を向上させることができる。ポリペプチド又はそのフラグメントのアミノ酸配列における変化が機能的相同体をもたらすかどうかは、本明細書に記載のアッセイを用いて、改変されていないポリペプチド又はフラグメントと同様のやり方で、この改変ポリペプチド又はフラグメントによる反応性を評価することによって、容易に評価され得る。1箇所以上で置換が生じたペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を、同様のやり方で容易に試験することができる。
【0142】
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、例えば、原子価を増加させることで、結合している標的分子の結合活性を増大させる手段として、単量体又は二量体として生成され得る。多量体は、EGFR又はc−Metのいずれかに対して少なくとも二重特異性である少なくとも3つの独立したFN3ドメインを含む分子を形成するために、例えば、周知の方法を用いて、アミノ酸リンカーを含めることによって、1つ以上のEGFR結合FN3ドメインと、1つ以上のc−Met結合FN3ドメインとを連結することによって、作製してもよい。
【0143】
また、本発明は、第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン及び第2のFN3ドメインを含む二重特異性FN3ドメイン含有分子であって、該第1のFN3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングし、該第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングする、二重特異性FN3ドメイン含有分子であって、配列番号50〜72、106、118〜121、138〜165、170〜179又は190〜193で示すアミノ酸配列を含む、二重特異性FN3ドメイン含有分子を提供する。
【0144】
半減期延長部分
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子又は単一特異性EGFR/c−Met FN3ドメインは、例えば、共有結合による相互作用を介して他のサブユニットを組み込むことができる。本発明の一態様では、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、半減期延長部分を更に含む。例示的な半減期延長部分は、アルブミン、アルブミン変異体、アルブミン−結合タンパク質及び/又はドメイン、トランスフェリン並びにそのフラグメント及び類縁体並びにFc領域である。例示的なアルブミン結合ドメインは、配列番号117に示されており、例示的なアルブミン変異体は、配列番号189に示す。
【0145】
抗体定常領域の全部又は一部分を、本発明の分子に付着させて、抗体様特性、特に、Fc領域と関連した特性(例えば、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などのFcエフェクター機能)を付与してもよく、また、これらの活性に関与するFc中の残基を修飾することによって更に修飾することもできる(概観のために、Strohl,Curr Opin Biotechnol.20,685〜691,2009を参照されたい)。
【0146】
PEG5000又はPEG20000などのポリエチレングリコール(PEG)分子、例えばラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ステアリン酸エステル、アラキジン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレイン酸エステル、アラキドン酸エステル、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などの異なる鎖長の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ポリリシン、オクタン、炭水化物(デキストラン、セルロース、オリゴ糖類又は多糖類)などの更なる部分を、所望の特性を得るために本発明の二重特異性分子に組み込むことができる。これらの部分は、タンパク質スカフォールドコード配列との直接融合であってもよく、標準的なクローニング及び発現法によって生成できる。別の方法としては、周知の化学カップリング法を使用して、この部分を組換えにより生成された本発明の分子に付着させてもよい。
【0147】
例えば周知の方法を用いて、システイン残基を分子のC末端に組み込み、PEG基(pegyl group)をシステインに付着させることによって、PEG部分を本発明の二重特異性又は単一特異性分子に付加してもよい。C末端システインを有する例示的な二重特異性分子としては、配列番号170〜178に示すアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0148】
追加部分を組み込まれている本明細書に記載の本発明の単一特異性及び二重特異性分子は、いくつかの周知のアッセイによって、機能を比較してもよい。例えば、Fcドメイン及び/又はFcドメインの変異体の取り込みによる単一特異性及び/又は二重特異性分子の変化した特性は、FcγRI、FcγRII、FcγRIII又はFcRn受容体などの受容体の可溶型を使用したFc受容体結合アッセイで、又は例えば、ADCC又はCDCを測定するか、又はインビボモデル中での本発明の分子の薬物動態的特性を評価する、周知の細胞ベース分析評価を使用して、分析できる。
【0149】
ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞
本発明は、単離したポリヌクレオチドとして、又は発現ベクターの一部として、若しくは、転写/翻訳に使用される線状DNA配列を含む線状DNA配列の一部として、EGFR−結合又はc−Met結合FN3ドメイン又は本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子をコードする核酸類及び組成物又はこれらの定方向突然変異原(directed mutagen)の原核、真核、線状ファージの発現、分泌及び/又は提示と適合性のあるベクターを提供する。特定の例示的なポリヌクレオチドは、本明細書にて開示されるが、所与の発現システムにおける、遺伝暗号の縮退又はコドン選択を考慮した、本発明のEGFR−結合ドメイン若しくはc−Met結合FN3ドメイン、又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子をコードする、その他のポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内である。
【0150】
本発明は、また、配列番号18〜29、107又は110、122〜137又は194〜211のアミノ酸配列を有する、EGFRに特異的に結合する、FN3ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドも提供する。
【0151】
本発明は、また、配列番号32〜49、111〜114又は212〜223のアミノ酸配列を有する、c−Metに特異的に結合する、FN3ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドも提供する。
【0152】
本発明は、また、配列番号50〜72、106、118〜121、138〜165、170〜179又は190〜193のアミノ酸配列を有する二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0153】
本発明は、また、配列番号97、98、103、104、115、116又は166〜169のポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0154】
本明細書に記載されるように、本発明のポリヌクレオチドは、自動式ポリヌクレオチド合成装置での固相ポリヌクレオチド合成などの化学合成により製造され得、完全一本鎖又は二本鎖分子に構築され得る。別の方法としては、本発明のポリヌクレオチドは、PCRに続いて慣用的なクローニングを行うなどの他の手法により製造され得る。特定の既知の配列のポリヌクレオチドを生成又は得るための方法は当該技術分野では周知のものである。
【0155】
本明細書に記載されるように、本発明のポリヌクレオチドは、プロモーター又はエンハンサー配列、イントロン、ポリアデニル化シグナル、シス配列促進RepA結合など、少なくとも1つの非コード配列を含んでもよい。ポリヌクレオチド配列はまた、タンパク質、シグナル配列、RepAなどの融合タンパク質パートナー、Fc、又はpIX若しくはpIIIなどのバクテリオファージコートタンパク質の精製又は検出を促進するために、例えば、マーカー又はヒスチジンタグ若しくはHAタグなどのタグ配列をコードする追加のアミノ酸をコードする更なる配列を含んでもよい。
【0156】
本発明は、また、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。こうしたベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現ベクター、トランスポゾンに基づいたベクター、又は任意の手段によって特定の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した他の任意のベクターであってもよい。かかるベクターは、かかるベクターによってコードされるポリペプチドの発現を制御、調整、誘発、又は許容することができる核酸配列因子を含む発現ベクターであってもよい。このような因子は、転写エンハンサー結合部位、RNAポリメラーゼ開始部位、リボソーム結合部位、及び所与の発現系におけるコードされたポリペプチドの発現を促進する他の部位を含んでよい。このような発現系は、当該技術分野において周知の細胞に基づく系、又は無細胞系であってよい。
【0157】
本発明は、また、本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明の単一特異性EGFR結合若しくはc−Met結合FN3ドメイン又は二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、任意選択的に、当該技術分野において周知のとおり、細胞株、混合細胞株、不死化細胞又は不死化細胞のクローン集団によって、製造することができる。例えば、Ausubelet al.ed.Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987〜2001)Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2
nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)Harlow and Lane,Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994〜2001)Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997〜2001)を参照されたい。
【0158】
発現のために選択される宿主細胞は、哺乳類起源であり得るか、又はCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、He G2、SP2/0、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、又はその任意の誘導物質、不死化若しくは形質転換細胞から選択され得る。あるいは、宿主細胞は、ポリペプチドをグリコシル化することが不可能な種又は生物、例えば、BL21、BL21(DE3)、BL21−GOLD(DE3)、XL1−Blue、JM109、HMS174、HMS174(DE3)、及び天然又は改変大腸菌種、クレブシエラ種、又はシュードモナス種の菌株などの原核細胞又は生物、から選択できる。
【0159】
本発明の別の実施形態は、EGFR又はc−Metに特異的に結合する本発明の単離FN3ドメイン又は本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子を作製する方法であって、本発明の単離宿主細胞を、EGFR又はc−Metに特異的に結合する単離FN3ドメイン若しくは単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子が発現するような条件下で培養することと、該ドメイン又は該分子を精製することと、を含む。
【0160】
EGFR又はc−Metに特異的に結合するFN3ドメイン又は本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子は、周知の方法、例えば、プロテインA精製法、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿法、酸抽出法、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーとレクチンクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、組換え細胞培養物から精製できる。
【0161】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子及びEGFR又はc−Met結合FN3ドメインの使用
本明細書に記載の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを使用して、ヒトの疾患症状又は細胞、組織、器官、流体又は一般に、宿主内での特定の病理の診断、モニター、調整、治療、軽減、発生の予防の補助、減少を行うことができる。本発明の方法を用いて任意の分類に属する患畜を治療することができる。このような動物の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。
【0162】
本発明の一態様は、細胞を、本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインに接触させることを含む、EGFR及び/又はc−Metを発現させる細胞の成長又は増殖を阻害する方法である。
【0163】
本発明の別の態様は、被験体において、EGFR及び/又はc−Met発現腫瘍細胞又は癌細胞の増殖又は転移を阻害する方法であって、この方法は、EGFR及び/又はc−Met発現腫瘍細胞又は癌細胞の増殖又は転移が阻害されるように、有効量の本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを被験体へ投与することを含む。
【0164】
本発明の別の態様は、治療的に有効な量の本発明の単離二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを、癌の治療を行うために十分な時間にわたって、その必要のある患者に投与することを含む、癌を有する被験体を治療する方法である。
【0165】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、EGFR、c−Met、EGF若しくは他のEGFRリガンド又はHGFの異常活性化又は産生により特徴付けられる任意の疾患又は障害、又は、EGFR若しくはc−Metの発現に関連する障害の治療に使用してもよく、これらは、悪性腫瘍又は癌に関係がある場合もない場合もあり、また、EGFR、c−Met、EGF若しくは他のEGFRリガンド又はHGFの異常活性化及び/又は産生は、疾患又は障害を有する又は素因になる被験体の細胞又は組織に発生する。本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、癌及び良性腫瘍などの腫瘍の治療に使用できる。本発明の二重特異性分子によって、治療を適用できる癌としては、EGFR及び/又はc−Metを過剰発現させる癌、並びにEGFR活性及び/又は発現レベルの上昇(例えば、EGFR活性化突然変異、EGFR遺伝子増幅又はリガンド媒介EGFR活性化など)及びc−Met活性及び/又は発現レベルの上昇(例えば、c−Met活性化突然変異、c−Met遺伝子増幅又はリガンド媒介c−Met活性化など)に関連する癌が挙げられる。
【0166】
癌と関連付けることができる例示的なEGFR活性化突然変異としては、チロシンキナーゼ活性の上昇、受容体ホモ二量体及びヘテロ二量体の形成、リガンド結合の増大など、EGFRの少なくとも1つの生物学的活性の上昇を引き起こす点変異、欠失変異、挿入変異、逆位又は遺伝子増幅が挙げられる。突然変異は、EGFR遺伝子の任意の部分又はEGFR遺伝子に関連付けられる制御領域の任意の部分に位置していてもよく、エクソン18、19、20若しくは21中の突然変異又はキナーゼドメイン中の突然変異が挙げられる。例示的な活性化EGFR突然変異としては、G719A、L861X(Xは、任意のアミノ酸)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、L858P又はT790M置換、E746〜A750の欠失、R748〜P753の欠失、M766〜A767間のAlaの挿入、S768〜V769間のSVA(Ser、Val、Ala)の挿入及びP772〜H773間のNS(Asn、Ser)の挿入が挙げられる。EGFR活性化突然変異の他の例は、当該技術分野で既知である(例えば、米国特許出願公開第2005/0272083号を参照されたい)。受容体ホモ二量体及びヘテロ二量体、受容体リガンド、自己リン酸化部位、並びにErbB媒介シグナル伝達に関与しているシグナル伝達分子などの、EGFR及び他のErbB受容体に関する情報は、当該技術分野で既知である(例えば、Hynes and Lane,Nature Reviews Cancer 5:341〜354,2005を参照されたい)。
【0167】
例示的なc−Met活性化突然変異としては、チロシンキナーゼ活性の上昇、受容体ホモ二量体及びヘテロ二量体の形成、リガンド結合の増大など、c−Metタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性の上昇を引き起こす点変異、欠失変異、挿入変異、逆位又は遺伝子増幅が挙げられる。突然変異は、c−Met遺伝子の任意の位置、又は遺伝子に関連付けられる調節領域にあり得、c−Metキナーゼドメイン内での突然変異などがある。例示的なc−Met活性化突然変異は、残基位置N375、V13、V923、R175、V136、L229、S323、R988、S1058/T1010及びE168での突然変異である。EGFR及びc−Met又は遺伝子増幅を検出する方法は、周知である。
【0168】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインによって、治療を受けることができる例示的な癌としては、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、非小細胞性肺癌(NSCLC)、肺腺癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頚部癌、咽頭癌、鼻腔癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、食道癌、膣癌、子宮頸癌、脾臓癌、精巣癌、胃癌、胸腺癌、大腸癌、甲状腺癌、肝癌、散発性又は遺伝乳頭状腎細胞癌(PRCC)が挙げられる。
【0169】
c−Metに特異的に結合し、HGFとc−Metとの結合をブロッキングする本発明のFN3ドメインは、癌及び良性腫瘍などの腫瘍の治療に用いてもよい。本発明のc−Met結合FN3ドメインによる治療を適用できる癌には、c−Metを過剰発現するものも含まれる。本発明のFN3ドメインによって治療を受けることのできる例示的な癌としては、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、大腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、食道癌、膣癌、子宮頚癌、脾臓癌、精巣癌、及び胸腺癌などが挙げられる。
【0170】
EGFRに特異的に結合し、EGFとEGFRとの結合をブロッキングする本発明のFN3ドメインは、癌及び良性腫瘍などの腫瘍の治療に用いてもよい。本発明のFN3ドメインによる治療を適用できる癌には、EGFR又は変異型を過剰発現するものも含まれる。本発明のFN3ドメインによって治療を受けることのできる例示的な癌としては、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、大腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、食道癌、膣癌、子宮頚癌、脾臓癌、精巣癌、及び胸腺癌などが挙げられる。
【0171】
本明細書に記載されたいくつかの方法においては、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを使用して、1つ以上のEGFR阻害物質での治療に対して耐性を示す又は耐性を得た、癌を有する被験体の治療を行ってよい。癌に耐性を付与し得る例示的なEGFR阻害剤としては、抗EGFR抗体セツキシマブ(アービタックス(登録商標))、パニツムマブ(ベクティビックス(登録商標))、マツズマブ、ニモツズマブ、低分子EGFR阻害剤タルセバ(登録商標)(エルロチニブ)、イレッサ(ゲフィチニブ)、EKB−569(ペリチニブ、不可逆的EGFR TKI)、pan−ErbB及び他の受容体型チロシンキナーゼ阻害剤ラパチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、ペリチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、バンデタニブ(ZD6474、ザクチマ(商標)、EGFR、VEGFR2及びRET TKI)、PF00299804(ダコミチニブ、不可逆的pan−ErbB TKI)、CI−1033(不可逆的Pan−erbB TKI)、アファチニブ(BIBW2992、不可逆的pan−ErbB TKI)、AV−412(二重EGFR及びErbB2阻害剤)EXEL−7647(EGFR、ErbB2、GEVGR及びEphB4阻害剤)、CO−1686(不可逆的な変異体選択EGFR TKI)、AZD9291(不可逆的な変異体選択EGFR TKI)、及びHKI−272(ネラチニブ、不可逆性EGFR/ErbB2阻害剤)が挙げられる。本明細書に記載の方法は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、CO−1686、AZD9291及び/又はセツキシマブを用いた治療への耐性を示す又は耐性を得た癌の治療に使用してもよい。使用できる例示的な二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110、122〜137、194〜211、32〜49、111〜114、212〜223、50〜72、106、118〜121、138〜165、170〜178又は190〜193に示すアミノ酸配列を有する、本明細書に記載のものである。
【0172】
本発明の別の態様は、治療的に有効な量の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、c−Metと特異的に結合するFN3ドメイン又はEGFRと特異的に結合するFN3ドメインを癌の治療に十分な時間にわたって、その必要のある患者に投与することを含む、癌を有する被験体を治療する方法であり、該被験体は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、CO−1686(CAS番号:1374640−70−6)、AZD9291又はセツキシマブによる治療に対して、耐性を示す又は耐性を得ている。
【0173】
様々な定性的及び/又は定量的方法を使用して、EGFR阻害剤による治療に対して、患者が耐性を示しているかどうか、耐性を発達させているかどうか、又は耐性が発達しやすいかどうかなどを判断してもよい。EGFR阻害剤への耐性に関連があり得る症状としては、例えば、患者の健康状態の低下又は横ばい状態、腫瘍の大きさの増加、腫瘍増殖低下の抑制又は減速、及び/又は1つの部位から他の器官、組織又は細胞への、身体内における癌細胞の伝播が挙げられる。また、食欲不振、認知機能障害、鬱病、呼吸困難、疲労、ホルモン障害、好中球減少、疼痛、末梢神経障害と性的機能不全など、癌に関連する種々の症状の再発又は悪化は、EGFR阻害剤に対して、被験体が耐性を発達させたか、又は発達させやすいこと示し得る。癌に関連する症状は、癌の種類によって異なる。例えば、子宮頸癌に伴う症状としては、異常出血、異常な大量の膣分泌物、正常な月経周期に関連がない骨盤痛、膀胱痛又は排尿時の痛み及び規則的な月経期間での出血、性交、腟洗浄又は内診後の出血を挙げることができる。肺癌に伴う症状としては、持続性の咳、喀血、息切れ、喘鳴、胸痛、食欲不振、努力することのない体重減少、及び疲労を挙げることができる。肝臓癌の症状としては、食欲及び体重の低下、腹痛(特に腹部の上部右部におけるもの、背部と肩に広がる場合もある)、悪心及び嘔吐、全身の虚弱と疲労、肝臓肥大、腹部膨満(腹水)、並びに皮膚及び白目の黄変(黄疸)を挙げることができる。腫瘍学分野の当業者は、特定の癌種に伴う症状を容易に識別し得る。
【0174】
EGFR阻害剤に対する耐性を被験体が発達したか否かを判断するその他の方法としては、癌細胞中におけるEGFRリン酸化、ERK1/2リン酸化及び/又はAKTリン酸化を調べることが挙げられ、ここで、リン酸化の増加は、EGFR阻害剤に対して、被験体が耐性を発達させたか、又は発達させやすいことを示し得る。EGFR、ERK1/2及び/又はAKTのリン酸化を判定する方法は、周知であり、かつ、本明細書に記述されている。EGFR阻害剤に対する耐性が発達した被験体の識別には、例えば、HGF循環レベルの上昇、c−Met遺伝子活性化変異又はc−Met遺伝子増幅に起因するc−Met発現レベルの上昇又はc−Met活性の上昇の検出を含み得る。
【0175】
本発明の別の実施形態は、治療的に有効な量の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを患者に投与することを含む、EGFR活性化突然変異又はEGFR遺伝子増幅を有するNSCLC腫瘍又は腫瘍転移を有する患者における、NSCLCを治療する方法である。
【0176】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを使用して、扁平上皮細胞癌、腺癌及び大細胞癌を含む非小細胞肺癌(NSCLC)の治療を行うことができる。いくつかの実施形態では、NSCLCの細胞は、上皮表現型を有する。いくつかの実施形態では、NSCLCは、1つ以上のEGFR阻害剤での治療に対する耐性を獲得している。
【0177】
NSCLCでは、EGFR遺伝子中の特定の突然変異は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TKI)に対する高い応答率(70〜80%)と関連している。エクソン19における5個のアミノ酸欠失又はEGFRにおけるL858Rの点変異は、EGFR−TKIの感応性に関連がある(Nakata and Gotoh,Expert Opin Ther Targets 16:771〜781,2012)。これらの突然変異により、EGFRキナーゼ活性のリガンド非依存性活性化がもたらされる。EGFR活性突然変異は、NSCLC患者の10〜30%に発生し、東アジア人、女性、非喫煙者及び腺癌組織像を有する患者において、有意によく見られる(Janne and Johnson Clin Cancer Res 12(14 Suppl):4416s〜4420s,2006)。また、EGFR遺伝子増幅は、EGFR−TKI治療後の応答と強く相関している(Cappuzzoら、J Natl Cancer Inst 97:643〜55,2005)。
【0178】
EGFR突然変異を有する多くのNSCLC患者は、初期に、EGFR TKI療法に応答を示すが、事実上、全てが、持続的反応を妨げる耐性を獲得する。患者の50〜60%は、EGFRのキナーゼドメイン(T790M)の第2位での点変異により、耐性を獲得する。EGFRチロシンキナーゼ阻害物質に対して耐性を示すようになる全腫瘍のほぼ60%がc−Metの発現の増加、c−Met遺伝子の増幅、又はその唯一の既知のリガンドであるHGFの増加を示す(Turkeら、Cancer Cell,17:77〜88,2010)。
【0179】
本発明の別の実施形態は、治療的に有効な量の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを、癌の治療に十分な時間にわたって、それを必要とする患者に投与することを含む、癌を有する患者を治療する方法であり、該癌は、EGFR活性化突然変異、EGFR遺伝子増幅、c−Met活性化突然変異又はc−Met遺伝子増幅と関連がある。
【0180】
いくつかの実施形態では、前記EGFR活性化突然変異は、G719A、G719X(Xは、任意のアミノ酸)、L861X(Xは、任意のアミノ酸)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、L858P又はT790Mの置換、E746〜A750の欠失、R748〜P753の欠失、M766〜A767間のAla(A)の挿入、S768〜V769間のSer、Val及びAla(SVA)の挿入、並びにP772〜H773間のAsn及びSer(NS)の挿入である。
【0181】
本発明の別の実施形態は、治療的に有効な量の本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを、癌の治療に十分な時間にわたって、それを必要とする患者に投与することを含む、癌を有する患者を治療する方法であり、該癌は、EGFR突然変異L858R、T790M、若しくは残基E746〜A750(del(E746、A750))、EGFR増幅又はc−Met増幅と関連がある。
【0182】
いくつかの実施形態において、癌は、野生型EGFR及び野生型c−Metと関連がある。
【0183】
いくつかの実施形態において、癌は、野生型EGFR及びc−Met増幅と関連がある。
【0184】
いくつかの実施形態において、癌は、EGFR L858R及びT790M突然変異並びに野生型c−Metと関連がある。
【0185】
いくつかの実施形態において、癌は、EGFRL欠失del(E764、A750)及び野生型c−Metと関連がある。
【0186】
いくつかの実施形態において、癌は、EGFRL欠失del(E764、A750)及びc−Met増幅と関連がある。
【0187】
いくつかの実施形態において、癌は、EGFR欠失del(E764、A750)、EGFR増幅及びc−Met増幅と関連がある。
【0188】
いくつかの実施形態において、患者は、EGFR L858R及びT790M突然変異並びに野生型c−Metと関連があるNSCLCを有する。
【0189】
いくつかの実施形態において、患者は、EGFR増幅及び野生型c−Metと関連があるNSCLCを有する。
【0190】
いくつかの実施形態において、患者は、EGFR増幅及びc−Met増幅と関連があるNSCLCを有する。
【0191】
いくつかの実施形態において、患者は、EGFR欠失del(E764、A750)及び野生型c−Metと関連があるNSCLCを有する。
【0192】
いくつかの実施形態において、患者は、EGFR欠失del(E764、A750)及びc−Met増幅と関連があるNSCLCを有する。EGFR又はc−Metの増幅は、例えば、サザンブロット法、FISH法、又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)法によって、EGFR又はc−Met遺伝子のコピー数を測定することなどの、標準的な方法によって評価することができる。
【0193】
用語「治療する」又は「治療」は、治療的処置及び保護的又は予防的措置のいずれをも指し、その目的は、癌の成長又は伝播など、望ましくない生理学的変化又は障害を予防する又は遅らせる(軽減する)ことである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果には、以下に限定されないが、症状の緩和、疾患範囲の減少、疾患の安定(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は減速、病態の改善又は緩和、及び寛解(部分、又は、全体)などが、検出可能か又は検出不可能であるかにかかわらず、含まれる。「治療」は、また、未治療の場合の予想生存期間と比較して、生存期間の延長を意味し得る。治療が必要な対象としては、これらの状態若しくは障害をすでに有する対象、及びこれらの状態若しくは障害を有する傾向にある対象、又はこれらの状態若しくは障害を予防すべき対象が挙げられる。
【0194】
「治療的に有効な量」は、望む治療結果を達成するために、必要な用量、時間で、効果的な量を意味する。本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの治療的に有効な量は、病態、年齢、性別及び個体重量、並びに個体において、所望の応答を引き出す本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの性能などの因子によって異なり得る。耐性と関連して、減少又は低下し得る有効なEGFR/c−Met治療を示すものの例としては、患者の健康状態の改善、腫瘍の大きさの減少又は収縮、腫瘍増殖の抑制又は減速、及び/又は身体内の他の位置への癌細胞転移の欠如が挙げられる。
【0195】
投与/医薬組成物
本発明は、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメイン及び製薬上許容できる担体である医薬組成物を提供する。治療に使用するために、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、製薬上許容できる担体中において、有効成分として有効量の前記ドメイン又は分子を含む医薬組成物として、調製することができる。「担体」という用語は、活性化合物と共に投与する希釈剤、補助剤、賦形剤又はビヒクルのことを指す。かかるビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、又は合成物由来のものを含む、水及び油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌液であり、一般的に、粒子状物質を含まない。これらは、従来の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。この組成物は、生理学的条件におおよそ近づけるために必要とされる製薬上許容できる補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤などを含むことができる。かかる医薬製剤中の本発明の分子の濃度は広範囲にわたって様々であってよく、すなわち約0.5重量%未満、通常は少なくとも約1重量%〜15又は20重量%までであってよく、また、選択される特定の投与方法にしたがって、主として必要とされる用量、液体の体積、粘度などに基づいて選択される。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21
st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691〜1092に記載され、特にpp.958〜989を参照されたい。
【0196】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの治療的使用のための投与方法は、宿主に薬剤を送達する、任意の好適な投与法であってよく、タブレット、カプセル、溶液、粉末、ゲル、粒子内の製剤;シリンジ、埋め込みデバイス、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプに収容された製剤を使用した;又は当該技術分野で周知の、当業者には理解される他の手段を使用した、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、若しくは皮下、肺;経粘膜的(経口、鼻腔内、膣内、直腸)投与;などがある。部位特異的投与は、例えば、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮送達によって達成され得る。
【0197】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌緩衝水、及び約1ng〜約100mg、例えば約50ng〜約30mg、又はより好ましくは約5mg〜約25mgの本発明のFN3ドメインを含有するように調製することができる。
【0198】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、例えば、静脈内(IV)注入、ボーラス注入、筋肉内又は皮下若しくは腹膜腔注入などの非経口注入など、任意の好適な経路によって、患者に投与され得る。IV注入は、15分間ほどで投与し得るが、多くの場合、30分間、60分間、90分間、又は2時間若しくは3時間、投与することもできる。本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、疾患部位(例えば、腫瘍自体)に直接注入してもよい。癌を有する患者への投与量は、治療対象の疾患を軽減する又は少なくとも一部、阻止するために十分な量であり(「治療的に有効な量」)、0.1〜10mg/kg体重、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10mg/kg体重であってもよいが、更に多量、例えば、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100mg/kg体重であってもよい。固定単位用量(例えば、50、100、200、500若しくは1000mg)を投与してもよく、又はこの用量は、患者の表面積に基づいて、例えば、400、300、250、200若しくは100mg/m
2であってもよい。癌治療には、通常、1〜8回の用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8回)を投与してもよいが、しかし、10、12、20回以上の用量を投与してもよい。本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、1ヵ月、5週、6週、7週、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、又はそれ以上経過後、反復して行ってもよい。長期投与と同様に、治療コースを繰返し行うことも可能である。反復投与は、同じ用量で行っても、異なる用量で行ってもよい。
【0199】
例えば、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの静脈内注射用医薬組成物は、80kgの患者に投与するために、滅菌リンガー溶液約200mL、及び二重特異性EGFR/c−Met抗体約8mg〜約2400mg、約400mg〜約1600mg又は約400mg〜約800mgを含むように、構成してもよい。非経口的に投与可能な組成物を調製する方法は周知のものであり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」(15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA)に、より詳細に記載されている。
【0200】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、保管のために凍結乾燥され、かつ、使用前に好適な担体中で再構成されてもよい。この技術は従来のタンパクの調製において有効であることが示されており、周知の凍結乾燥と再構成の技術を援用することができる。
【0201】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、被験体に単回投与してもよく、又は、例えば、1日、2日、3日、5日、6日、1週、2週、3週、1ヵ月、5週、6週、7週、2ヵ月又は3ヵ月経過後、反復投与してもよい。反復投与は、同じ用量で、又は異なる用量で行ってもよい。投与は1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上反復して行うことができる。
【0202】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、第2の治療薬と併用して、同時に、逐次的に又は別途に投与されてもよい。第2の治療薬は、化学療法剤、抗血管新生阻害剤又は細胞毒性薬であってもよい。癌治療に使用するとき、二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、外科手術、放射線療法、化学療法又はこれらの組み合わせなど、従来の癌治療と組み合わせて使用することもできる。本発明のFN3ドメインと組み合わせて使用できる例示的な薬剤は、アンタゴニストHER2、HER3、HER4、VEGF及びイレッサ(登録商標)(ゲフィチニブ)及びTarceva(エルロチニブ)などのタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0203】
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、同業者に既知の化学療法剤又は他の抗癌治療剤のいずれか1つ以上と共に投与してもよい。化学療法剤は、癌治療に有用な化学物質であり、増殖阻害剤又は他の細胞毒性剤が挙げられ、また、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、血管形成阻害剤が挙げられる。化学療法剤の例としては、以下が挙げられる;アルキル化剤(例えばチオテパとシクロホスファミド(サイトキサン(登録商標)));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ;エチレンイミン及びメチラメラミン、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロメラミン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン;抗生物質(例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン)代謝拮抗薬、例えばメトトレキセート及び5−FU;葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン);アンドロゲン(例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン);葉酸補充剤、例えば、フォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグルコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクォン;エフロールニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類又はタキサンファミリのメンバー、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))及びその類似体;クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ類似体、例えば、シスプラチンとカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ(xeloda);イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;受容体チロシンキナーゼ阻害剤及び/又は血管形成阻害剤、例えば、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、パゾパニブ(VOTRIENT(商標))、トセラニブ(PALLADIA(商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(商標))、セディラニブ(RECENTIN(登録商標))、レゴラフェニブ(BAY73−4506)、アキシチニブ(AG013736)、レストールチニブ(CEP−701)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(商標))、BIBW 2992(TOVOK(商標))、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、ネラチニブ(HKI−272)など、及び上記のいずれかの製薬上許容できる塩、酸又は誘導体。この定義にも含まれるものとしては、腫瘍上でのホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗エストロゲンなどの抗ホルモン剤が挙げられ、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY 117018、オナプリストンとトレミフェン(フェアストン(登録商標);抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドとゴセレリン;上記のいずれかの製薬上許容できる塩、酸又は誘導体が挙げられる。Wiemannら、1985,in Medical Oncology(Calabresi et aL,eds.),Chapter 10,McMillan Publishing,に開示されているような他の従来の細胞毒性化学物質は、また、本発明の方法に適用できる。
【0204】
前記二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインと組み合わせて使用できる例示的な薬剤としては、イレッサ(登録商標)(ゲフィチニブ)、タルセバ(エルロチニブ)などのチロシンキナーゼ阻害剤及び標的抗癌治療剤及びHER2、HER3、HER4又はVEGFなどの他のアンタゴニストが挙げられる。例示的なHER2アンタゴニストとしては、CP−724−714、ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)、オムニターグ(OMNITARG)(商標)(ペルツズマブ)、TAK−165、ラパチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、及びGW−282974が挙げられる。例示的なHER3アンタゴニストとしては、抗−Her3抗体が挙げられる(例えば、米国特許第2004/0197332号を参照されたい)。例示的なHER4アンタゴニストとしては、抗−HER4 siRNAが挙げられる(例えば、Maattaら、Mol Biol Cell 17:67〜79,2006を参照されたい)。例示的なVEGFアンタゴニストは、ベバシズマブ(アバスチン(商標))である。
【0205】
低分子を本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインと組み合わせて使用するとき、典型的に、より頻回に、好ましくは、1日1回投与してもよいが、2、3,4回/日以上であってもよく、2日毎、毎週、又他の何らかの間隔毎に投与してもよい。多くの場合、低分子薬剤は、経口投与されるが、例えば、例えば、IV注入又はボーラス注入又は皮下投与又は筋肉内投与などの非経口的投与も可能である。低分子薬剤の用量は、通常、10〜1000mg、又は約100、150、200若しくは250mgである。
【0206】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインを、第2の治療薬と組み合わせて投与するとき、その組み合わせは、従来の任意の時間枠を超えて行われてもよい。例えば、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメイン及び第2の治療薬は、同じ日に患者に投与されてもよく、また同じ静脈内注射において投与されてもよい。しかし、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメイン及び第2の治療薬は、隔日、隔週及び2週間毎又は隔月などで患者に投与されてもよい。いくつかの方法では、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメイン及び第2の治療薬は、治療対象の患者において、検出可能なレベルで(例えば血清中に)同時に存在する時間内にて、十分に近接して投与される。いくつかの方法では、任意の期間にわたり、いくつかの投与回数からなる本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの全治療過程に続いて、又は、それに先立って、いくつかの投与回数からなる第2の治療薬の治療過程が行われる。いくつかの方法では、最初に投与した第2の治療薬に対して、患者が耐性を有するか、又は耐性を発達させた場合、二番目に本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインが投与される治療が開始される。患者は、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメイン及び第2の治療薬のいずれか1つ又は双方による単回治療過程又は複数回治療過程を受けてよい。本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインの投与と、第2の治療薬の投与との間に、1日、2日又は数日又は数週間の回復期間を使用してもよい。第2の治療薬の好適な投与計画がすでに構築されている場合、投与計画は、本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインと組み合わせて、その計画を使用してもよい。例えば、タルセバ(登録商標)(エルロチニブ)は、1日1回、100mg又は150mgピルとして投与され、イレッサ(登録商標)(ゲフィチニブ)は、250mg錠剤として毎日投与される。
【0207】
本発明の二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子、EGFR結合FN3ドメイン又はc−Met結合FN3ドメインは、任意選択的に、第2の治療薬と組み合わせて、外照射療法、強度変調放射線治療(IMRT)及びガンマナイフ、サイバーナイフ、リニアックなどの任意の形態の放射線外科手術、及び組織内照射(例えば、放射線シードインプラント、GliaSite balloon)などの任意の形態の放射線、並びに/又は外科手術などと合わせて投与してもよい。放射線治療との併用は、特に、頭頸部癌及び脳腫瘍に適切であり得る。
【0208】
本発明は一般論として記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例】
【0209】
実施例1.Tenconライブラリの構築
Tencon(配列番号1)は、ヒトテネイシン−Cの、15のFN3ドメインの共通配列から設計された免疫グロブリン様スカフォールドである、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobsら、Protein Engineering,Design,and Selection,25:107〜117,2012;米国特許公開第2010/0216708号)。Tenconの結晶構造は、7つのβストランドを接続する6つの表面露出ループを示す。これらのループ、又は各ループ内の選択された残基は、特定の標的と結合する新規分子の選択に使用できるフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリを構築するために、ランダム化できる。
【0210】
Tencon:
Lpapknlvvsevtedslrlswtapdaafdsfliqyqesekvgeainltvpgsersydltglkpgteytvsiygvkgghrsnplsaeftt(配列番号1)
【0211】
TCL1ライブラリの構築
Tencon(配列番号1)のFGループのみランダム化するように設計されたライブラリである、TCL1は、cis−ディスプレイ系で使用するために構築された(Jacobsら、Protein Engineering,Design,and Selection,25:107〜117,2012)。この系では、Tacプロモーター、Tenconライブラリコード配列、RepAコード配列、cis−エレメント及びoriエレメントの一本鎖DNA組み込み配列を作製する。インビトロ転写/翻訳系での発現時に、コードされているDNAに、cisにおいて結合するTencon−RepA融合タンパク質の錯体が生成される。次に、標的分子に結合する錯体は、単離され、前述のように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により、増幅される。
【0212】
cis−ディスプレイで使用するためのTCL1ライブラリの構築は、連続的に複数回PCRを行い、最終的な線状二本鎖DNA分子の2つの半体を生成することによって達成され、該DNAの5’フラグメントは、プロモーター及びTencon配列を含み、3’フラグメントには、repA遺伝子並びにcis−及びori−エレメントを含む。これらの各2つの半体は、全体構造を作製するために消化を制限することによって結合される。TCL1ライブラリは、TenconのFGループ、KGGHRSN(配列番号86)のみで、ランダムアミノ酸を組み込むように設計された。このライブラリの構造内にNNSコドンを使用した結果、20の全アミノ酸及び1つの終止コドンをFGループ内に取り込むことができた。TCL1ライブラリは、それぞれが、更に多様性を増大させるために、長さ7〜12の残基を有する異なるランダム化FGループを有する、6つのサブライブラリを別途に包含する。Tenconベースのライブラリの設計を表2に示す。
【0213】
【表2】
*TAPDAAFD:配列番号1の残基22〜28
**KGGHRSN:配列番号86
Xは、NNSコドンによりコードされたアミノ酸の変性を指す。
#は、本文に記述されている「設計されたアミノ酸分布」を指す。
【0214】
TCL1ライブラリを構築するために、連続的に複数回PCRを行い、Tacプロモーターが付加され、FGループに変性を組み込み、最終的なアセンブリのために、必要な制限酵素部位を加えた。第1に、プロモーター配列及びFGループのTencon配列5’を含むDNA配列は、2工程で、PCRによって作製された。全Tencon遺伝子配列に対応するDNAは、プライマーPOP2220(配列番号2)及びTC5’toFG(配列番号3)と共に、PCRテンプレートとして、使用した。この反応から得られたPCR産物は、プライマー130mer(配列番号4)及びTc5’toFGを用いて、次の回のPCR増幅を行うために、テンプレートとして使用し、5’及びプロモーター配列を完全にTenconに加えた。次に、縮重ヌクレオチドを含む、順方向プライマーPOP2222(配列番号5)、及び逆方向プライマーTCF7(配列番号6)、TCF8(配列番号7)、TCF9(配列番号8)、TCF10(配列番号9)、TCF11(配列番号10)、又はTCF12(配列番号11)を用い、第1工程で作製されたDNA産物を増幅することによって、多様性をFGループ内に導入した。各サブライブラリに対して、100μL PCR反応を少なくとも8回行い、PCRサイクルを最小化し、ライブラリの多様性を最大化させた。少なくとも5μgの、このPCR産物に対して、ゲル精製を行い、プライマーPOP2222(配列番号5)及びPOP2234(配列番号12)を用いた、次のPCR工程で使用し、その結果、6xHisタグ及びNotI制限酵素部位がTencon配列の3’末端部に結合された。このPCR反応は、15PCRサイクルのみ、少なくとも500ngのテンプレートDNAを用いて行った。得られたPCR産物は、ゲル精製を行い、NotI制限酵素で消化し、Qiagenカラムによって精製した。
【0215】
このライブラリの3’フラグメントは、repA遺伝子及びcis−及びori−エレメントのコード領域、PspOMI制限酵素部位などの、ディスプレイのためのエレメントを含有する一定のDNA配列である。PCR反応は、このDNAフラグメントを含有するプラスミド(pCR4Blunt)(Invitrogen)を使用して、M13順方向及びM13逆方向プライマーにより実施した。得られたPCR産物は、PspOMIにより一晩消化させ、ゲル精製した。ライブラリDNAの5’部位をrepA遺伝子を含む3’DNAにライゲートするために、2pmolの5’DNAを、NotI及びPspOMI酵素並びにT4リガーゼの存在下で、同じモル量の3’repA DNAにライゲートさせた。37℃で一晩ライゲーションさせた後、ライゲートさせたDNAのごく一部をゲル上で泳動させて、ライゲーション効率を確認した。ライゲートさせたライブラリ産物を12のPCR増幅に分割し、プライマー対、POP2250(配列番号13)及びDidLigRev(配列番号14)、を用いて、12サイクルのPCR反応を行った。TCL1ライブラリの各サブライブラリのDNA収率は、32〜34μgの範囲であった。
【0216】
ライブラリの質を評価するために、作業ライブラリのごく一部をプライマーTcon5new2(配列番号:15)及びTcon6(配列番号:16)により増幅し、リガーゼ非依存クローン化を介して、改変pETベクターにクローン化した。プラスミドDNAは、BL21−GOLD(DE3)コンピテント細胞(Stratagene)に形質転換し、ランダムに選択した96個のコロニーをT7プロモータープライマーを用いて、配列決定した。重複した配列は、検出されなかった。全体的に、約70〜85%のクローンが、フレームシフト突然変異のない、完全なプロモーター及びTenconコード配列を有していた。終止コドンとクローンを除いた機能シーケンス率は59%〜80%であった。
【0217】
TCL2ライブラリの構築
TenconのBCループ及びFGループのいずれもランダム化され、各位置でのアミノ酸の分布を厳密に管理したTCL2ライブラリが構築された。表3には、TCL2ライブラリ内での所望のループ位置における、アミノ酸分布を示す。設計されたアミノ酸分布には、2つの目的がある。第1に、このライブラリは、Tencon結晶構造の解析に基づき、かつ/又は相同モデリングから、Tenconのフォールディング及び安定性に、構造上重要であることが予測された残基に対してバイアスがある点である。例えば、位置29は、疎水性アミノ酸のサブセットのみであるように固定された。これは、この残基が、Tenconフォールドの疎水性コアに埋め込まれた(buried)変化したためである。第2層の設計には、高親和性結合剤を効率的に作製するために、抗体の重鎖HCDR3内に優先的に見られる残基に対するアミノ酸分布のバイアスが含まれる(Birtalanら、J Mol Biol 377:1518〜28,2008;Olsonら、Protein Sci 16:476〜84,2007)。この目標値に対して、表3の「設計された分布」は、以下の分布を示す。アラニン6%、アルギニン6%、アスパラギン3.9%、アスパラギン酸7.5%、グルタミン酸2.5%、グルタミン1.5%、グリシン15%、ヒスチジン2.3%、イソロイシン2.5%、ロイシン5%、リジン1.5%、フェニルアラニン2.5%、プロリン4%、セリン10%、スレオニン4.5%、トリプトファン4%、チロシン17.3%、バリン4%。この分布には、メチオニン、システイン及び終止コドンは含まれない。
【0218】
【表3】
*残基のナンバリングは、配列番号1のTencon配列に基づく。
【0219】
TCL2ライブラリの5’フラグメントは、プロモーター及びTencon(配列番号1)のコード領域を包含し、ライブラリプール(Sloning Biotechnology)として、化学的合成された。このDNAプールには、少なくとも1×10
11の異なるメンバーが包含された。フラグメントの端部では、BsaI制限酵素部位がRepAへのライゲーションのため、設計に含まれた。
【0220】
このライブラリの3’フラグメントは、6xHisタグ、repA遺伝子及びcis−エレメントのコード領域などの、ディスプレイのためのエレメントを含有する一定のDNA配列である。このDNAは、既存のDNAテンプレート(上述)及びプライマーLS1008(配列番号17)及びDidLigRev(配列番号14)を用いて、PCR反応によって調製した。完全なTCL2ライブラリを組み立てるために、BsaI−消化5’TenconライブラリDNA合計1μgを同じ酵素を用いて、制限消化によって作製された3’フラグメント3.5μgにライゲートした。一晩ライゲートした後、DNAはQiagenカラムにより精製し、このDNAは、吸光度260nmで測定することによって、定量化した。ライゲートされたライブラリ産物は、プライマー対POP2250(配列番号13)及びDidLigRev(配列番号14)を用いて、12サイクルのPCR反応によって増幅させた。合計72の反応を行い、それぞれがテンプレートとして、50ngのライゲートされたDNA産物を含有していた。TCL2ワーキングライブラリDNAの全収率は、約100μgであった。ワーキングライブラリのごく一部は、TCL1ライブラリに関して上述のように、サブクローン化され、配列決定された。重複した配列は、検出されなかった。約80%の配列は、フレームシフト変異のない完全なプロモーター及びTenconコード配列を含んでいた。
【0221】
TCL14ライブラリの構築
頂部(BC、DE、及びFG)及び底部(AB、CD、及びEF)ループ、例えば、FN3ドメイン中の報告された結合表面は、FN3構造の中心を形成するβストランドによって分離される。ループによって形成された表面とは異なる形状を有するFN3ドメインの2つの「側面」にある代替表面は、2つの逆並行βストランド、C及びFβストランドとCD及びFGループ(本明細書では、C−CD−F−FG表面と呼ばれている)によって、FN3ドメインの片面に形成される。
【0222】
Tenconの代替表面をランダム化するライブラリは、
図1に示すように、C及びFストランドの残基並びにD及びFGループの部分に露出された選択表面をランダム化することによって作製した。Tencon(配列番号1)と比較したときに、E11R L17A、N46V、E86Iの置換を有するTencon変異体、Tencon27(配列番号99)、を使用して、ライブラリを作製した。このライブラリを構築するために使用した方法の全詳細は、特許公開第2013/0226834号に記載されている。
【0223】
実施例2.EGFRに結合し、EGF結合を阻害するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインの選択
ライブラリのスクリーニング
Cis−ディスプレイを使用して、TCL1及びTCL2ライブラリから、EGFR結合ドメインを選択した。IgG1 Fc(R&D Systems)に融合された組換え型ヒト細胞外EGFRドメインは、標準的な方法を用いて、ビオチン化し、パニングのために使用した(配列番号73の全長EGFRの残基25〜645)。インビトロ転写及び翻訳(ITT)のために、ライブラリDNA 2〜6μgを、全アミノ酸0.1mM、1X S30プレミックス成分及びS30抽出物(Promega)30μL、合計量100μLを用いてインキュベートし、30℃でインキュベートした。1時間後、ブロッキング溶液450μL(2%ウシ血清アルブミン、herring sperm DNA 100μg/mL及びヘパリン1mg/mLを加えたPBS pH 7.4)を添加し、その反応物を氷上で15分間インキュベートした。EGFR−Fc:EGF錯体は、EGFR対EGFのモル比1:1及び10:1で、ブロッキング溶液中、室温にて1時間、組換え型ヒトEGF(R&D Systems)とビオチン化組換え型EGFR−Fcを混合することによって、組み込んだ。結合させるためにブロッキングITT反応生成物500μLをEGFR−Fc:EGF錯体100μLと混合し、結合した錯体は、磁性ニュートラアビジン又はストレプトアビジンビーズ(Seradyne)を用いてプルダウン(pulled down)した後、室温で1時間インキュベートした。非結合ライブラリメンバーは、PBST及びPBSで連続洗浄して除去した。洗浄後、更にパニング操作のために、10分間、65℃まで加熱することによって、結合錯体からDNAを溶出し、PCRによって増幅し、制限消化及びライゲーションによって、RepAをコードするDNAフラグメントに付着させた。高親和性結合剤は、連続的に標的EGFR−Fc濃度を低下させることによって、各操作200nM〜50nMで、洗浄の厳密性を増大させて単離した。4回目及び5回目では、非結合及び低結合FN3ドメインは、PBS中において、非ビオチン化EGFR−Fcの10倍のモル過剰存在下で、一晩、洗浄することによって除去した。
【0224】
パニング後、選択されたFN3ドメインは、oligos Tcon5new2(配列番号15)及びTcon6(配列番号16)を用いてPCRによって増幅し、リガーゼ非依存性クローニングサイトを含むように改変されたpETベクターにサブクローン化し、標準的な分子生物学的技術を用いて、大腸菌中で、可溶性として発現させるために、BL21−GOLD(DE3)(Stratagene)細胞に形質転換させた。C末端ポリ−ヒスチジンタグをコードする遺伝子配列を、精製及び検出が可能になるように、各FN3ドメインに付加した。培養物は、温度を30℃まで低下させて、IPTGを1mMまで添加する前に、1−mLの96−ウェルブロック中、100μg/mLカルベニシリン添加2YT培地において、37℃で、吸光度0.6〜0.8になるまで増殖させた。細胞は、遠心分離によって、約16時間後に収集し、−20℃で凍結した。室温で、45分間振盪させながら、BugBuster(登録商標)HT溶解緩衝液(Novagen EMD Biosciences)0.6mL中で各ペレットをインキュベートすることによって、細胞溶解物を得た。
【0225】
細胞上でEGFRに結合するFN3ドメインの選択
より生理学的な場合において、異なるFN3ドメインがEGFRに結合する能力を評価するために、A431細胞に結合する能力を測定した。A431細胞(American Type Culture Collection,カタログ番号CRL−1555)は、1細胞当たり約2×10
6個の受容体にて、EGFRを過剰発現する。細胞を、不透明の黒の96ウェルプレート中にて、5,000個/ウェルで播種し、5% CO
2の増湿大気中、37℃で一晩付着させた。FN3ドメイン発現細菌溶解物は、FACS染色緩衝液(Becton Dickinson)で1,000倍希釈し、3つのプレートで、室温にて1時間インキュベートした。細菌溶解物を除去し、細胞は、FACS染色緩衝液150μL/ウェルで3回洗浄した。細胞は、FACS染色緩衝液で1対100に希釈した抗−penta His−Alexa488抗体コンジュゲート(Qiagen)50μL/ウェルで、20分間、室温にてインキュベートした。細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液で3回洗浄し、その後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを入れ、読み取り機のAcumen eX3を用いて、488nmにて蛍光を読み取った。A431細胞(TCL1及びTCL2ライブラリの1320の粗細菌溶解物)に結合する能力に関して、細菌溶解物含有FN3ドメインをスクリーニングし、516の陽性クローンが同定された。ここで、結合は、バックグランドシグナルの10倍以上であった。TCL14ライブラリからの300の細菌溶解物の結合をスクリーニングし、その結果、EGFRに結合する58のユニークなFN3ドメイン配列を得た。
【0226】
細胞上でEGFに対するEGFRの結合を阻害するFN3ドメインの選定
EGFR結合の機序を更によく特徴決定するために、種々の同定FN3ドメインクローンが、EGFに競合するようにEGFRに結合する能力を、A431細胞を用いて測定し、A431結合アッセイスクリーニングと並行して実施した。A431細胞を、不透明の黒の96ウェルプレート中にて、5,000個/ウェルで播種し、5% CO
2の増湿大気中、37℃で一晩付着させた。細胞は、1対1,000に希釈した細菌溶解物50μL/ウェルで、3つのプレートにおいて、室温にて1時間インキュベートした。ビオチン化EGF(Invitrogen,カタログ番号E−3477)は、各ウェルに添加し、最終濃度30ng/mLとし、室温で10分間インキュベートした。細胞は、FACS染色緩衝液150μL/ウェルで3回洗浄した。細胞は、FACS染色緩衝液中に1対100に希釈したストレプトアビジン−フィコエリトリンコンジュゲート(Invitrogen)50μL/ウェルを用いて、20分間、室温にてインキュベートした。細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液で3回洗浄し、その後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを入れ、読み取り機のAcumen eX3を用いて、600nmにて蛍光を読み取った。
【0227】
FN3ドメインを含有する細菌溶解物を、上記のEGF競合アッセイでスクリーニングした。TCL1及びTCL2ライブラリからの1320の粗細菌溶解物をスクリーニングし、その結果、50%超のEGF結合を阻害する451の陽性クローンが得られた。
【0228】
同定されたEGFR結合FN3ドメインの発現と及び精製
His−タグFN3ドメインを、MultiTrap(商標)HPプレート(GE Healthcare)を用いて浄化大腸菌溶解物から精製し、リン酸ナトリウム20mM、塩化ナトリウム500mM及びイミダゾール250mMを含む、pH 7.4の緩衝液中に溶出させた。精製サンプルは、PD MultiTrap(商標)G−25プレート(GE Healthcare)を用いた分析のために、pH 7.4のPBSに取り替えた。
【0229】
サイズ排除クロマトグラフィー分析
サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、EGFRに結合するFN3ドメインの凝集状態を測定した。各精製FN3ドメインのアリコット(10μL)を、移動相(PBS、pH 7.4)中にて、流速0.3mL/分で、Superdex 75 5/150カラム(GE Healthcare)に注入した。カラムからの溶出を280nmの吸光度でモニターした。SECによって高レベルの凝集状態が示されたFN3ドメインは、更なる分析から除外した。
【0230】
EGFR−Fcからの選択されたEGFR結合FN3ドメインのオフレート
選択したEGFR結合FN3ドメインをスクリーニングして、ProteOn XPR−36 instrument(Bio−Rad)上でEGFR−Fcへの結合において、低オフレート(k
off)を有するものを同定し、高親和性結合剤を選択しやすくした。0.005%のPBSを含有するTween−20中で、流速30μL/分、チップ上での水平配向の6つの全リガンドチャネル上での、アミンカップリング(pH 5.0)を介し、5μg/mLの濃度のヤギ抗−ヒトFc IgG(R&D systems)を、直接固定化した。固定化密度は、平均約1500応答単位(RU)であり、チャネル間で、5%未満の変動があった。EGFR−Fcは、抗ヒトFc IgG表面上で、密度約600RUにて、縦のリガンド配向で捕捉した。試験対象のFN3ドメインは全て、濃度1μMに正規化し、水平配向における結合の試験を行った。FN3ドメインには、6つ全ての検体チャネルを使用して、スクリーニング能力を最大化した。解離フェーズは、10分間、100μL/分の流速にてモニターした。中間スポット結合シグナルは、基準として使用し、検体と固定化IgG表面との間の非特異的結合をモニターし、全ての結合応答から差し引いた。処理した結合データは、1対1の単純なラングミュアの結合モデルに局所的にフィッティングし、捕捉したEGFR−Fcに結合する各FN3ドメインのk
offを抽出した。
【0231】
EGFにより刺激されるEGFRリン酸化の阻害
EGFRのEGF刺激リン酸化を阻害する能力について、A431細胞において、単一濃度で、精製EGFR−結合FN3ドメインの試験を行った。EGFRリン酸化は、EGFRリン酸化(Tyr1173)キット(Meso Scale Discovery)を用いてモニターした。10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)と共に、GlutaMAX(商標)を含有する、100μL/ウェルのRPMI培地(Gibco)の入った、透明な96ウェル組織培養処理プレート(Nunc)に、20,000個/ウェルで、細胞を播種し、5% CO
2を含む増湿大気中、37℃で一晩付着させた。培地は、完全に除去し、細胞は、FBS非含有培地100μL/ウェル中、5%CO
2を含む増湿大気中、37℃で、一晩、飢餓させた。次に、細胞は、濃度2μMの予熱した(37℃)EGFR結合FN3ドメイン含有飢餓培地100μL/ウェルで、5% CO
2を含む増湿大気中、1時間、37℃にて処理した。対照は、飢餓培地のみで処理した。最終濃度がEGF 50ng/mL及びEGFR結合FN3ドメイン1μMとなるように、組換え型ヒトEGF(R&D Systems,カタログ番号236−EG)100ng/mLを含む予熱済み(37℃)飢餓培地100μL/ウェルを、添加して、穏やかに混合し、37℃にて、5% CO
2で15分間インキュベートすることによって、細胞を刺激した。陰性対照として、対照ウェルセットを1つ、非刺激のままとした。培地を完全に除去して、細胞を、製造者の指示に従って、完全溶解緩衝液100μL/ウェル(Meso Scale Discovery)で、室温で、10分間振盪させながら、溶解させた。チロシン1173上でリン酸化されたEGFRの測定のために構成されたアッセイプレート(Meso Scale Discovery)を、製造者の指示に従って、1.5〜2時間、室温で提供されたブロッキング溶液によりブロッキングした。次いで、プレートは、1Xトリス洗浄緩衝液(Meso Scale Discovery)200μL/ウェルで4回洗浄した。細胞溶解物アリコット(30μL/ウェル)は、アッセイプレートに移し、プレートシーリングフィルム(VWR)で覆い、室温で、1時間振盪させながら、インキュベートした。アッセイプレートは、トリス洗浄緩衝液200μL/ウェルで4回洗浄し、その後、気泡が入らないように注意して、氷冷検出抗体溶液25μL/ウェル、(Meso Scale Discovery)を各ウェルに添加した。プレートは、室温で、1時間振盪させながら、インキュベートし、その後、トリス洗浄緩衝液200μL/ウェルで4回洗浄した。シグナルは、Read Buffer(Meso Scale Discovery)150μL/ウェル、を添加することによって検出され、製造業者によるアッセイ特定デフォルト設定を用いて、SECTOR(登録商標)Imager 6000装置(Meso Scale Discovery)で読み取った。各EGFR結合FN3ドメインのEGFにより刺激された陽性対照シグナル伝達の阻害率を算出した。
【0232】
TCL1及びTCL2ライブラリから同定された232のクローンについて、EGFにより刺激されたEGFRリン酸化の阻害を測定した。これらのクローンうちの22個は、1μMの濃度で50%以上のEGFRのリン酸化を阻害した。発現が不完全であるか、又はサイズ排除クロマトグラフィーによって多量体であると判断されたクローンを除去後、9つのクローンについて、更なる生物学的特徴決定を行った。これらのクローンのBC及びFGループ配列は、表4に示す。9個の選択されたクローン中8個は、共通のFGループ配列(HNVYKDTNMRGL、配列番号95)を有し、有意な類似性を示す領域は、BCループ配列中のいくつかのクローン間で見られた。
【0233】
【表4】
【0234】
実施例3:EGF結合を阻害するEGFR結合FN3ドメインの特徴決定
大規模発現、精製及びエンドトキシン除去
表4に示すFN3ドメインをスケールアップさせて、詳細な特徴決定のために更なる物質を提供した。各EGFR結合FN3ドメイン変異体を含む一晩培養物を使用して、100μg/mLのアンピシリンを一晩培養物の1/80に希釈して、新鮮培地に添加した、テリフィックブロス(Terrific broth)培地0.8Lに接種し、37℃で、振盪させながらインキュベートした。600nmでの吸光度が約1.2〜1.5に到達したとき、最終濃度が1mMになるようにIPTGを添加することによって培養物を誘導し、温度を30℃まで低下させた。4時間後、遠心分離によって細胞を回収し、細胞ペレットは、必要になるまで、−80℃で保管された。
【0235】
細胞溶解のため、解凍したペレットを、25U/mLのベンゾナーゼ(登録商標)(Sigma−Aldrich)及び1kU/mLのrLysozyme(商標)(Novagen EMD Biosciences)を添加した、1Xバグバスター(登録商標)中に、ペレット1グラム当たりバグバスター(登録商標)5mLの比率で、再懸濁した。溶解を、穏やかに攪拌しながら室温で1時間進行させ、その後、4℃で、50分間、56,000×gで遠心分離した。上清を採取して、0.2μmフィルターで濾過し、GE Healthcare AKTAexplorer 100sクロマトグラフィーシステムを用いて、緩衝液A(Tris−HCl 50mM、pH 7.5、NaCl 500mM、イミダゾール10mM)で事前に平衡化させた5−mLのHisTrap FFカラムに仕込んだ。このカラムを、20カラム容量分の緩衝液Aで洗浄し、更に、6カラム容量分の16%緩衝液B(Tris−HCl 50mM、pH7.5、NaCl 500mM、イミダゾール250mM)で洗浄した。FN3ドメインを10カラム容量分の50% Bで溶出させ、その後、6カラム容量超の50〜100%Bからの勾配で溶出させた。FN3ドメインタンパク質を含有する画分をプールし、濃縮器Millipore 10K MWCOを用いて濃縮し、PBSで事前に平衡化したHiLoad(商標)16/60 Superdex(商標)75カラム(GE Healthcare)に仕込む前に濾過した。サイズ排除カラムから溶出されるタンパク質モノマーのピークが保持された。
【0236】
エンドトキシンは、ActiClean Etox樹脂(Sterogene Bioseparations)を用いるバッチ法を用いて除去した。エンドトキシン除去前、この樹脂を、37℃で2時間(又は4℃で一晩)、1N NaOHで前処理し、pH試験紙で計測したとき、pHが約7に安定するまで、PBSで広範囲にわたり洗浄した。精製されたタンパク質は、樹脂1mLに対してタンパク質10mLの比率で、Etox樹脂1mLに添加する前に、0.2μmフィルターで濾過した。エンドトキシンの樹脂への結合は、少なくとも2時間、室温で、ゆっくり回転させながら進行させた。この樹脂には、2分間、500×gの遠心分離によって除去が行われ、タンパク質の上清は保持された。エンドトキシンレベルは、EndoSafe(登録商標)PTS(商標)カートリッジを使用して測定し、読み取り機のEndoSafe(登録商標)−MCS(Charles River)で分析した。第1のEtox処理後、エンドトキシン濃度が5EU/mg超である場合、エンドトキシンレベルが5EU/mg以下に低下するまで、この手順を繰り返し行った。エンドトキシン濃度が5EU/mg超であり、Etoxで2回連続処理した後にも安定していた場合は、残留エンドトキシンを除去するために、そのタンパク質に対して、陰イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィー条件を確立した。
【0237】
選択されたEGFR−結合FN3ドメインのEGFR−Fcに対する親和性(EGFR−Fc親和性)測定
選択されたEGFR結合FN3ドメインの組換え型EGFR細胞外ドメインへの結合親和性について、Proteon Instrument(BioRad)を用いた表面プラズモン共鳴法から、更に特性を決定した。アッセイ設定(チップの調製、EGFR−Fcの捕捉)は、上述のオフレート分析と同様であった。選択されたEGFR結合FN3ドメインの試験は、1μMの濃度で、3倍希釈系列で、水平方向で行った。緩衝液サンプルも注入して、ベースラインの安定性をモニターした。各EGFR結合FN3ドメインの全ての濃度に対して、解離相(dissociation phase)を、流速100μL/分で、30分間、(オフレートスクリーニングから、k
offが約10
-2s
-1以上の場合)又は1時間(k
offが約10
-3s
-1以下の場合)モニターした。次の2つの参照データのセットを、応答データから減算した:1)EGFR結合FN3ドメインと固定化IgG表面間の非特異的相互作用を修正するためのスポット間シグナル、2)経時的な、捕捉されたEGFR−Fc表面の解離による、ベースライン変動を修正するための緩衝液チャネルシグナル。各FN3ドメインに対する全ての濃度における、処理後の結合データを、1対1の単純なラングミュアの結合モデルに全体的にフィッティングし、動力学的定数(k
on、k
off)及び親和性(K
D)定数の推定値を抽出した。表5には、各構造の動力学的定数について、200pM〜9.6nMで親和性が変化することが示されている。
【0238】
細胞上での選択EGFR結合FN3ドメインとEGFRとの結合(「A431細胞結合アッセイ」)
A431細胞を、不透明の黒の96ウェルプレート中にて、5,000個/ウェルで播種し、5% CO
2の増湿大気中、37℃で一晩付着させた。精製されたEGFR結合FN3ドメイン(1.5nM〜30μM)を細胞(50μL中)に添加し、3つのプレートで、室温にて1時間インキュベートした。上清を除去し、細胞を、FACS染色緩衝液150μL/ウェルで3回洗浄した。細胞は、FACS染色緩衝液中に1対100に希釈した抗−penta His−Alexa488抗体コンジュゲート(Qiagen)50μL/ウェルを用いて、20分間、室温にてインキュベートした。細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液で3回洗浄し、その後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを入れ、読み取り機のAcumen eX3を用いて、488nmにて蛍光を読み取った。データは、生蛍光シグナルとして、FN3ドメインモル濃度の対数に対して、プロットし、可変スロープを用いて、GraphPad Prism 4(GraphPad Software)により、S字形用量反応曲線にフィッティングさせ、EC
50値を算出した。表5には、各構造のEC
50が、2.2nM〜20μM超にわたることが示されている。
【0239】
選択されたEGFR結合FN3ドメインを用いた、細胞上でのEGFRに対するEGF結合の阻害(A431細胞EGF競合アッセイ)
A431細胞を、不透明の黒の96ウェルプレート中にて、5,000個/ウェルで播種し、5% CO
2の増湿大気中、37℃で一晩付着させた。精製されたEGFR結合FN3ドメイン(1.5nM〜30μM)を細胞(50μL/ウェル)に添加し、3つのプレートで、室温にて1時間インキュベートした。ビオチン化EGF(Invitrogen,カタログ番号E−3477)は、最終濃度30ng/mLとなるように、各ウェルに添加し、室温で10分間インキュベートした。細胞は、FACS染色緩衝液150μL/ウェルで3回洗浄した。細胞は、FACS染色緩衝液中に1対100に希釈したストレプトアビジン−フィコエリトリンコンジュゲート(Invitrogen)50μL/ウェルを用いて、20分間、室温にてインキュベートした。細胞を、150μL/ウェルのFACS染色緩衝液で3回洗浄し、その後、ウェルにFACS染色緩衝液100μLを入れ、読み取り機のAcumen eX3を用いて、600nmにて蛍光を読み取った。データは、生蛍光シグナルとして、FN3ドメインモル濃度の対数に対して、プロットし、可変スロープを用いて、GraphPad Prism 4(GraphPad Software)により、S字形用量反応曲線にフィッティングさせ、IC
50値を算出した。表5には、このIC
50値が、1.8nM〜121nMにわたることが示されている。
【0240】
EGFにより刺激されたEGFRリン酸化の阻害(リン酸化EGRFアッセイ)
EGFにより刺激されたEGFRリン酸化が著しく阻害された選択FN3ドメインについて、阻害に対するIC
50値を測定することによって、更に完全に評価した。EGFにより刺激されたEGFRリン酸化の阻害を、上記の「EGFにより刺激されたEGFRリン酸化の阻害」に記載されたように、FN3ドメインの濃度を変化させて(0.5nM〜10μM)評価した。データは、電気化学発光シグナルとして、FN3ドメインモル濃度の対数に対して、プロットし、可変スロープを用いて、GraphPad Prism 4(GraphPad Software)により、データをS字形用量反応にフィッティングさせ、IC
50値を算出した。表5には、このIC
50値が、18nM〜2.5μM超にわたることが示されている。
【0241】
ヒト腫瘍細胞増殖の阻害(NCI−H292増殖及びNCI−H322増殖アッセイ)
EGFR依存性細胞増殖の阻害を、EGFR結合FN3ドメインへの暴露の後に、EGFR過剰発現ヒト腫瘍細胞株NCI−H292及びNCI−H322(American Type Culture Collection、カタログ番号はそれぞれ、CRL−1848、CRL−5806)の生存度を測定することによって評価した。
【0242】
【表5】
【0243】
不透明な白色96ウェル組織培養処理済みプレート(Nunc)中にて、GlutaMAX(商標)及び10mMのHEPESを含有する、RPMI培地(Gibco)100μL/ウェルに、10%加熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を添加して、細胞500個/ウェル(NCI−H292)又は細胞1,000個/ウェル(NCI−H322)で、細胞を播種し、5%CO
2を含む増湿大気中、37℃で一晩付着させた。細胞は、ある濃度範囲のEGFR−結合FN3ドメインを含むリン酸塩−緩衝生理食塩水(PBS)5μL/ウェルを添加することによって、処理した。対照は、5μL/ウェルのPBSのみ又は25mMエチレンジアミン四酢酸を含むPBSで処理した。細胞は120時間にわたって、37℃、5% CO
2にてインキュベートした。生細胞を、CellTiter−Glo(登録商標)試薬(Promega)75μL/ウェルを添加することによって、検出し、その後、プレートシェイカーで2分間混合し、暗所で、室温で、更に10分間、インキュベートした。培地のみのブランクに対して、読取り時間0.5秒/ウェルで発光モードに設定した、プレートリーダーのSpectraMax M5(Molecular Devices)にて、プレートの読み取りを行った。データは、FN3ドメインのモル濃度の対数に対するPBS処理細胞増殖率として、プロットした。可変スロープを用いて、GraphPad Prism4(GraphPad Software)により、データをS字形用量反応式にフィッティングさせ、IC
50値を算出した。表5には、NCI−H292及びNCI−H322細胞を用いたIC
50値が、それぞれ5.9nM〜1.15μM及び9.2nM〜3.1μM超にわたることが示されている。表5は、各アッセイに対するEGFR結合FN3ドメインの生物学的特性の一覧を示す。
【0244】
実施例4:EGFR結合FN3ドメインの改変
EGFR結合FN3ドメインのサブセットは、各分子の立体配座の安定性を高める設計がなされた。FN3ドメイン安定性の向上を示した突然変異L17A、N46V及びE86I(米国特許第2011/0274623号に記載されている)は、DNA合成によりクローンP54AR4−83、P54CR4−31及びP54AR4−37に組み込んだ。新規突然変異P54AR5−83v2、P54CR431−v2及びP54AR4−37v2は、前述のように発現させ、精製した。PBSでの示差走査熱量測定を用いて、対応する親分子の安定性と比較するために各変異体の安定性を評価した。表6は、各変異体分子のT
m 18.5℃の平均増加により、大幅に安定化したことを示す。
【0245】
【表6】
【0246】
実施例5.c−Metに結合し、HGF結合を阻害するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインの選択
ヒトc−Metのパニング
TCL14ライブラリについて、ビオチン化−ヒトc−Met細胞外ドメイン(bt−c−Met)に対するスクリーニングを行い、c−Metに特異的に結合できるFN3ドメインを同定した。選択のために、TCL14ライブラリ3μgは、E.Coli S30 Linear Extract(Promega,Madison,WI)及びCis−ブロック(2% BSA(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)、100μg/mL Herring Sperm DNA(Promega)、1mg/mLヘパリン(Sigma−Aldrich))でブロッキングした発現ライブラリにおいてインビトロ転写及び翻訳(IVTT)した。選択のために、bt−c−Metを400nM(1回目)、200nM(2及び3回目)及び100nM(4及び5回目)の濃度で添加した。neutravidin磁気ビーズ(Thermo Fisher,Rockford,IL)(1、3及び5回目)又はストレプトアビジン磁気ビーズ(Promega)(2及び4回目)を用いて、結合ライブラリメンバーを回収し、500μLのPBS−Tで、5〜14回ビーズを洗浄し、その後、500μLのPBSで2回洗浄することによって、非結合ライブラリメンバーを除去した。
【0247】
更に選択操作を実施して、改善された親和性を有するFN3ドメイン分子を同定した。要約すると、上記のとおり、5回目からの産出物を調製し、以下の点を変更して追加の反復選択操作を行った:bt−c−Metによるインキュベーションを1時間から15分に短縮、ビーズ捕捉を20分から15分に短縮、bt−c−Metを25nM(6及び7回目)又は2.5nM(8及び9回目)まで低減、かつ、過剰な非ビオチン化c−Metの存在下で更に1時間洗浄を実施。これらの変更の目的は、より高いオンレート及びより低いオフレートを有し得、実質的に低いK
Dが得られるバインダを同時に選択することであった。
【0248】
5、7及び9回目の産生物は、TCON6(配列番号30)及びTCON5 E86I short(配列番号31)プライマーを用いて、リガーゼ非依存クローニングサイト(pET15−LIC)を含有する改変pET15ベクター(EMD Biosciences,Gibbstown,NJ)にPCRクローン化し、タンパク質は、標準プロトコールを使用して、形質転換及びIPTG導入(最終濃度1mM、30℃で16時間)後、C末端His6−タグ付きタンパク質として発現された。細胞を、遠心分離によって収集し、続いて、ニワトリ卵白リゾチーム(Sigma−Aldrich)0.2mg/mLを加えたBugbuster HT(EMD Biosciences)で溶解させた。細菌溶解物は、遠心分離によって浄化し、上清は、新しい96ディープウェルプレートに移した。
【0249】
c−Metに対するHGFの結合を阻害するFN3ドメインのスクリーニング
大腸菌溶解物に存在するFN3ドメインについて、生化学的形式での、精製c−Met細胞外ドメインに対するHGFの結合を阻害する能力をスクリーニングした。組換え型ヒトc−Met Fcキメラ(PBS中0.5μg/mL、100μL/ウェル)を、96ウェルのWhite Maxisorp Plates(Nunc)上にコーティングし、一晩、4℃で、インキュベートした。これらのプレートを、Biotek plate washer上で0.05% Tween 20(TBS−T,Sigma−Aldrich)含有トリス緩衝生理食塩水300μl/ウェルで、2回洗浄した。アッセイプレートは、室温(RT)で、1時間、振盪させながらStartingBlock T20(200μL/ウェル、Thermo Fisher Scientific,Rockland,IL)でブロッキングし、再び、TBS−T300μlで2回洗浄した。FN3ドメイン溶解物は、Hamilton STARplus robotics systemを用いて、StartingBlock T20中に希釈した(1:10〜1:100,000)。溶解物(50μL/ウェル)は、振盪させながら、室温で1時間、アッセイプレート上でインキュベートした。これらのプレートを洗浄することなく、bt−HGF(StartingBlock T20中1μg/mL、50μL/ウェル、ビオチン化)を振盪させながら、室温で30分間、プレートに添加した。Tencon27溶解物を含有する対照ウェルには、StartingBlock T20又は希釈bt−HGFのいずれかを入れた。次いで、プレートを、TBS−T300μL/ウェルで4回洗浄し、30〜40分間、室温で、振盪させながら、ストレプトアビジン−HRP100μl/ウェルでインキュベートした(TBS−Tで1:2000、Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)。再び、これらのプレートをTBS−Tで4回洗浄した。シグナルを発達させるために、製造業者の指示に従って調製されたPOD化学発光基材(50μL/ウェル、Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)をプレートに添加し、約3分以内に、SoftMax Proを用いて、Molecular Devices M5で発光を読み取った。阻害率は、以下の式を用いて求めた。100−((RLU
sample−平均RLU
No bt-HGF control)/(平均RLU
bt-HGF control−平均RLU
No bt-HGF control)
*100)。50%以上の阻害率は、ヒットとみなされた。
【0250】
FN3ドメインのハイスループットな発現及び精製
His−タグFN3ドメインを、MultiTrap(商標)HPプレート(GE Healthcare)を用いて浄化大腸菌溶解物から精製し、リン酸ナトリウム20mM、塩化ナトリウム500mM及びイミダゾール250mMを含む、pH 7.4の緩衝液中に溶出させた。精製サンプルは、PD MultiTrap(商標)G−25プレート(GE Healthcare)を用いた分析のために、pH 7.4のPBSに取り替えた。
【0251】
c−Metに対するHGFの結合の阻害のIC
50測定
選択されたFN3ドメインは、HGF競合アッセイにおいて、更に特性決定された。精製FN3ドメインの用量反応曲線は、上記のアッセイを用いて作成した(出発濃度5μM)。阻害率を算出した。データは、阻害率として、FN3ドメインモル濃度の対数に対して、プロットし、可変スロープを用いて、GraphPad Prism 4により、データをS字形用量反応にフィッティングさせ、IC
50値を算出した。
【0252】
5回目からは、1対10の希釈において、活性を示す35個のユニークな配列が同定され、IC
50値は、0.5〜1500nMの範囲であった。7回目では、1対100の希釈において、活性を有する、39個のユニークな配列が産生し、IC
50値は、0.16〜2.9nMの範囲であった。1対1000の希釈で活性があることをヒットと定義して、9回目からは66個のユニークな配列が同定された。9回目で観察されたIC
50値は、0.2nMという低さであった(表8)。
【0253】
選択されたc−Met−結合FN3ドメインのc−Met−Fcに対する親和性(c−Met−Fc親和性)測定
c−Met−Fc融合タンパク質を実験で使用したことを除き、実施例3のEGFR結合FN3ドメインに対する親和性の測定のために記述されたプロトコールに従って、選択されたc−Met結合FN3ドメインに対して、親和性を測定した。
【0254】
実施例6:c−Metと結合し、HGF結合を阻害するFN3ドメインの特徴決定
上記の実施例2に記載のように、FN3ドメインを発現させ、精製する。それぞれ、上述の実施例1及び実施例2に記載のサイズ排除クロマトグラフィー及び動力学的解析を行った。表7は、各ドメインの全アミノ酸配列に対する、Cストランド、CDループ、Fストランド及びFGループの配列並びに配列番号を示す。
【0255】
【表7】
Cループ残基は、配列番号に示した残基28〜37に対応する
CDストランド残基は、配列番号に示した残基38〜43に対応する
Fストランド残基は、配列番号に示した残基65〜74に対応する
FGストランド残基は、配列番号に示した残基75〜81に対応する
【0256】
細胞上での選択c−Met結合FN3ドメインとc−Metとの結合(「H441細胞結合アッセイ」)
NCI−H441細胞(カタログ番号HTB−174,American Type Culture Collection,Manassas,VA)は、ポリ−D−リジンをコーティングした、底部が透明な黒色の96ウェルプレート(BD Biosciences,San Jose,CA)中、細胞20,000個/セルで播種し、5% CO
2、37℃で一晩付着させた。精製FN3ドメイン(50μL/ウェル;0〜1000nM)は、4℃で、1時間、2つのプレートで細胞に添加した。上清を除去し、FACS染色緩衝液(150μL/ウェル、BD Biosciences,カタログ番号554657)で3回洗浄した。細胞は(FACS染色緩衝液で1対160に希釈、50μL/ウェル、R&D Systems,カタログ番号BAM050)、4℃で、30分間、ビオチン化抗HIS抗体と共にインキュベートした。細胞を、3回、FACS染色緩衝液(150μL/ウェル)で洗浄した後、ウェルを抗マウスIgG1−Alexa 488コンジュゲート抗体(FACS染色緩衝液で1対80に希釈、50μL/ウェル、Life Technologies,カタログ番号A21121)で、4℃で、30分間インキュベートした。細胞は、FACS染色緩衝液で3回洗浄し(150μL/ウェル)、FACS染色緩衝液に放置した(50μL/ウェル)。全蛍光量は、読み取り機のAcumen eX3を使用して測定した。データは、生蛍光シグナルとして、FN3ドメインモル濃度の対数に対して、プロットし、可変スロープを用いて、GraphPad Prism 4(GraphPad Software)により、S字形用量反応曲線にフィッティングさせ、EC
50値を算出した。FN3ドメインは、表8に示すとおり、EC
50値が1.4nM〜22.0nMの間である、結合活性範囲を示すことがわかった。
【0257】
HGFにより刺激されたc−Metリン酸化の阻害
Meso Scale Discovery(Gaithersburg,MD)のc−Metリン酸化(Tyr1349)キットを用いて、NCI−H441において、c−MetのHGF刺激リン酸化を阻害する能力について、精製FN3ドメインの試験を行った。10%ウシ胎児血清(FBS;Life Technologies)を含有する、100μL/ウェルのRPMI培地(Glutamax及びHEPES含有、Life Technologies)の入った、透明な96ウェル組織培養処理プレートに、20,000個/ウェルで、細胞を播種し、5% CO
2、37℃で一晩付着させた。培養培地は、完全に除去して、細胞は、血清非含有RPMI培地(100μL/ウェル)中で、37℃で、5% CO
2にて、一晩飢餓させた。次に、細胞に、1時間、37℃にて、5% CO
2で、20μM以下の濃度の、FN3ドメインを含有する新鮮な血清非含有RPMI培地(100μL/ウェル)を補充(replenish)した。対照は、培地のみで処理した。細胞は、組換え型ヒトHGF(100μL/ウェル、R&D Systemsカタログ番号294−HGN)100ng/mLで刺激し、37℃、5% CO
2、15分間インキュベートした。陰性対照として、対照ウェルセットを1つ、非刺激のままとした。次に、培地を完全に除去して、細胞を、製造者の指示に従って、完全溶解緩衝液(50μL/ウェル、Meso Scale Discovery)で、室温で、10分間振盪させながら、溶解させた。リン酸化されたc−Metの測定のために構成されたアッセイプレートを、製造者の指示に従って、1時間、室温で提供されたブロッキング溶液によりブロッキングした。次いで、プレートは、トリス洗浄緩衝液(200μL/ウェル、Meso Scale Discovery)で3回洗浄した。細胞溶解物(30μL/ウェル)は、アッセイプレートに移し、室温で、振盪させながら1時間インキュベートした。アッセイプレートは、トリス洗浄緩衝液で4回洗浄し、その後、氷冷検出抗体溶液(25μL/ウェル、Meso Scale Discovery)を各ウェルに、1時間、室温で、振盪させながら添加した。プレートは、再び、トリス洗浄緩衝液で4回、すすぎ洗いをした。シグナルは、150 Read Buffer(150μL/ウェル、Meso Scale Discovery)を添加することによって検出され、製造業者によるアッセイ特定デフォルト設定を用いて、SECTOR(登録商標)Imager 6000装置(Meso Scale Discovery)で読み取った。データは、電気化学発光シグナルとして、FN3ドメインモル濃度の対数に対して、プロットし、可変スロープを用いて、GraphPad Prism 4により、データをS字形用量反応にフィッティングさせ、IC
50値を算出した。FN3ドメインは、表8に示すとおり、IC50値4.6nM〜1415nMにて、リン酸化c−Metを阻害することがわかった。
【0258】
ヒト腫瘍細胞増殖の阻害
c−Met依存性細胞増殖の阻害は、U87−MG細胞(American Type Culture Collection,カタログ番号HTB−14)の生存度を測定し、その後、c−Met結合FN3ドメインに暴露することによって評価した。10% FBSを添加したRPMI培地100μL/ウェルの入った不透明な白色96ウェル組織培養処理済みプレート(Nunc)中、細胞8000個/ウェルで、細胞を播種し、5% CO
2、37℃で一晩付着させた。プレーティングから24時間後、培地を吸引し、細胞に、無血清RPMI培地を補充した。
【0259】
【表8】
【0260】
血清飢餓から24時間後、細胞はc−Met結合FN3ドメイン含有無血清培地の添加によって処理した(30μL/ウェル)。細胞は72時間にわたって、37℃、5% CO
2にてインキュベートした。生細胞は、CellTiter−Glo(登録商標)試薬(Promega)100μL/ウェルを添加することによって、検出し、その後、プレートシェイカーで10分間混合した。読取り時間0.5秒/ウェルで発光モードに設定した、プレートリーダーのSpectraMax M5(Molecular Devices)にて、プレートの読み取りを行った。データは、FN3ドメインのモル濃度の対数に対する生蛍光単位(RLU)として、プロットした。可変スロープを用いて、GraphPad Prism 4により、データをS字形用量反応式にフィッティングさせ、IC
50値を算出した。表8に、1nM〜1000nM超の範囲のIC
50値を示す。
【0261】
表8に、c−Met結合FN3ドメインの特性をまとめる。
【0262】
c−Met結合FN3ドメインの熱安定性
PBS中の示差走査熱量測定は、各FN3ドメインの安定性を評価するために使用した。実験結果は、表9に示す。
【0263】
【表9】
【0264】
実施例7:二重特異性抗EGFR/c−Met分子の生成及び特徴決定
二重特異性EGFR/c−Met分子の生成
実施例1〜6に記載のEGFR及びc−Met結合FN3ドメインの多数の組み合わせを、EGFR及びc−Metの双方と結合できる二重特異性分子へと接合した。更に、配列番号107〜110に示されるアミノ酸配列を有するEGFR結合FN3ドメイン、及び配列番号111〜114に示されるアミノ酸配列を有するc−Met結合FN3ドメインを作製し、二重特異性分子へと接合した。以下のフォーマットを維持するように、配列番号50〜72、106、118〜121又は190〜193(表10)に示すアミノ酸配列をコードする合成遺伝子を作製した。EGFR結合FN3ドメインにペプチドリンカーが続き、c−Met結合FN3ドメインが続く。ポリ−ヒスチジンタグは、精製を補助するため、C末端で組み込まれた。表10に記載されているこれらの分子に加え、2つのFN3ドメイン間のリンカーを、表11に記載されているものに従い、長さ、配列の組成及び構造によって変化させた。いくつかの他のリンカーが、こうしたFN3ドメインに連結するために使用できると考えられている。二重特異性EGFR/c−Met分子は、単一特異性EGFR又はc−Met FN3ドメインについて記載されているように、IMAC及びゲル濾過クロマトグラフィー方法を用いて、大腸菌から発現させ、精製した。二重特異性EGFR/c−Met分子は、開始剤メチオニンを含んでいても、含んでいなくてもよいことは、当業者に明らかである。開始剤メチオニンを有する例示的な分子は、配列番号106、118〜121、138〜165、190及び192に示すアミノ酸配列を有する分子であり、開始剤メチオニンを有さない例示的な分子は、配列番号50〜72、191及び193に示す。EGFR結合FN3ドメインのための開始剤メチオニンの存在により、適切な活性が確保され、この開始剤メチオニンは、c−Met FN3ドメインに対して影響が少ない。
【0265】
【表10】
【0266】
【表11】
【0267】
二重特異性EGFR/c−Met分子により、単一特異性分子のみと比較して、効力が向上し、これは、結合活性を示す。
NCI−H292細胞を、96ウェルプレートにて、10% FBSを含有するRPMI培地中に播種した。24時間後、培地を無血清培地RPMIに置き換えた。血清飢餓の24時間後、細胞は、異なるFN3ドメイン濃度(高親和性単一特異性EGFR FN3ドメイン(P54AR4−83v2)、低親和性単一特異性c−Met FN3ドメイン(P114AR5P74−A5)、2つの単一特異性EGFR及びc−Met FN3ドメインの混合物、又は高親和性EGFR FN3ドメイン(ECB1)に連結する低親和性c−Met FN3ドメインからなる二重特異性EGFR/c−Met分子の混合物のいずれか)で処理した。細胞は、1時間、単一特異性又は二重特異性分子で処理し、その後、EGF、HGF又はEGFとHGFとの組み合わせで、37℃にて、5% CO
2で15分間刺激した。細胞はMSD溶解緩衝液で溶解させ、細胞のシグナル伝達は、適切なMSDアッセイプレートを用いて、製造業者の指示に従って、上記のとおり、評価した。
【0268】
低親和性c−Met FN3ドメインは、610nMのIC
50にて、c−Metのリン酸化を阻害した(
図4)。予想されたとおり、EGFR FN3ドメインは、c−Metのリン酸化を阻害することができず、また、単一特異性分子の混合物は、c−Met FN3ドメイン単体と同様であった。しかし、二種特異性EGFR/c−Met分子は、1nMのIC
50(
図4)にて、c−Metのリン酸化を阻害し、c−Met単一特異性単体と比較した効力の向上は、2−log超もシフトした。
【0269】
結合活性効果を介して、c−Met及び/又はEGFRのリン酸化の阻害を向上させる二重特異性EGFR/c−Met分子の可能性は、変動するc−MetとEGFRの密度及び比率を有する複数の細胞型において評価された(
図5)。NCI−H292、NCI−H441又はNCI−H596細胞を、96ウェルプレートにて、10%FBSを含有するRPMI培地中に播種した。24時間後、培地を無血清培地RPMIに置き換えた。血清飢餓の24時間後、細胞は、異なるFN3ドメイン濃度(単一特異性EGFR結合FN3ドメイン、単一特異性c−Met FN3ドメイン又は二重特異性EGFR/c−Met分子(P53A1R5−17v2及びP114AR7P94−A3から構成されるECB5)のいずれか)で処理した。細胞は、1時間、単一特異性又は二重特異性分子で処理し、その後、EGF、HGF又はEGFとHGFとの組み合わせで、37℃にて、5% CO
2で15分間刺激した。細胞はMSD溶解緩衝液で溶解させ、細胞のシグナル伝達は、適切なMSDアッセイプレートを用いて、製造業者の指示に従って、上記のとおり、評価した。
【0270】
図5(A〜C)は、3つの異なる細胞株において、二重特異性EGFR/c−Met分子と比較して、単一特異性EGFR結合FN3ドメインを用いるEGFRの阻害を示す。EGFRリン酸化アッセイにおいて、結合活性を評価するために、中程度の親和性のEGFR結合FN3ドメイン(1.9nM)(P53A1R5−17v2)を、高親和性のc−Met結合FN3ドメイン(0.4nM)(P114AR7P94−A3)に連結された同一のEGFR結合FN3ドメインを含有する二重特異性EGFR/c−Met分子と比較した。H292及びH596細胞では、単一特異性及び二重特異性分子についてEGFRのリン酸化の阻害は同等であった(
図5A及び
図5B)。これはおそらく、これらの細胞株は、EGFR対c−Met受容体の比率が高いためである。この理論を試してみるために、EGFRよりc−Met受容体が多いNCI−H441細胞において、EGFRのリン酸化の阻害を評価した。NCI−H441細胞を二重特異性EGFR/c−Met分子で処理することにより、単一特異性EGFR結合FN3ドメインと比較して、EGFRのリン酸化の阻害を示すIC
50が30倍低下した(
図5C)。
【0271】
c−Metリン酸化アッセイで、EGFR親和性が高く(0.26nM)、c−Met親和性が中程度(10.1nM)である分子を用いて、二種特異性EGFR/c−Met分子により能力が増大する可能性を評価した。NCI−H292及びNCI−H596細胞では、いずれも、c−Metのリン酸化の阻害が二重特異性分子により、単一特異性c−Met結合FN3ドメインと比較して、それぞれ、134倍及び1012倍、増大した(
図3D及び3E)。
【0272】
二重特異性EGFR/c−Met分子により、EGFR及びc−Metリン酸化の阻害の効力が増大されることにより、シグナル伝達及び増殖の阻害の増大がもたらされることが確認された。これらの実験では、FN3EGFR結合とc−Met結合FN3ドメインとの混合物を二重特異性EGFR/c−Met分子と比較した。表12及び13に記載されている通り、細胞を二重特異性EGFR/c−Met分子で処理したとき、単一特異性結合剤の混合物と比較して、ERKリン酸化のIC
50値(表12)及びH292細胞の増殖(表13)は、低下した。二種特異性EGFR/c−Met分子のERKリン酸化の阻害に対するIC
50は、2つの単一特異性EGFR及びc−Met FN3ドメインの混合物と比べて、143倍低く、本アッセイにおける、分子の効力に対する結合活性の効果を示している。表12では、単一特異性EGFR及びc−Met結合FN3ドメインは、十分に活性が阻害されることはなく、このため、示されるIC
50値は、下限値を考慮する必要がある。増殖アッセイは、混合物又は二重特異性の形式で連結されたもののいずれかで、異なるEGFR結合FN3ドメインとc−Met結合FN3ドメインとの組み合わせを用いて、完了した。二重特異性EGFR/c−Met分子の増殖阻害を示すIC
50値は、単一特異性親EGFR又はc−Met結合FN3ドメインの混合物と比較して、34〜236倍低かった。受容体レベルで観察された結合活性効果(
図4及び
図5)は、細胞シグナル伝達(表12)及び細胞増殖(表13)の阻害の改善に変換されることが確認された。
【0273】
【表12】
【0274】
【表13】
【0275】
インビボでの腫瘍の異種移植片:PK/PD
単一特異性FN3ドメイン分子及び二重特異性FN3ドメイン分子のインビボでの有効性を判断するために、ヒトHGF(マウスHGFはヒトc−Metに結合しない)を分泌するように腫瘍細胞を改変した。ヒトHGFは、レンチウィルス感染(レンチウィルスDNAベクター発現ヒトHGF(Accession #X16322)及びレンチウイルスパッケージングキット(Genecopoeia))を用いてNCI−H292細胞内に安定して発現させた。感染後、HGF発現細胞を、プロマイシン4μG/mL(Invitrogen)で選択した。ヒトHGFタンパク質は、アッセイプレート(MesoScale Discovery)を用いて、プールされた細胞のコンディショニングした培地で検出された。
【0276】
SCIDベージュマウスの各動物の背側腹部に、NCI−H292細胞発現ヒトHGF(細胞2.0×10
6個、200μLのCultrex(Trevigen)中)を皮下接種した。腫瘍の測定は、腫瘍体積が150〜250mm
3となるまで、週2回行った。マウスには、二重特異性EGFR/c−Met分子(半減期を増大するアルブミン結合ドメインに連結される)又はPBSビヒクルを腹腔内に単回投与した。腫瘍は、投与の6時間又は72時間後に抽出され、すぐに液体窒素で凍結した。血液サンプルを心穿刺を介してプロテアーゼ阻害剤を含有する3.8%クエン酸に採取した。採取直後、血液試料を遠心分離し、得られた血漿をサンプルチューブに移し、−80℃で保管した。腫瘍は、重量を計測し、小さな断片に切断し、HALTプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤(Pierce)、フッ化ナトリウム50mM(Sigma)、活性化オルトバナジウム酸塩2mM(シグマ)及びPMSF(MesoScale Discovery)1mMを含む、RIPA緩衝液の入った溶解マトリックスAチューブ(LMA)で溶解した。溶解物は、LMAマトリックスから除去し、遠心分離し、不溶性タンパク質を除去した。可溶性腫瘍タンパク質は、BCAタンパク質アッセイで定量化し、腫瘍溶解緩衝液で同等のタンパク質レベルに希釈した。リン酸化c−Met、EGFR及びERKは、(製造業者のプロトコールに従って、上述のとおり)アッセイプレート(MesoScale Discovery)を用いて測定した。
【0277】
図6は、実験の結果を示す。各二重特異性EGFR/c−Met分子により、6時間及び72時間の両方の時点で、リン酸化されたc−Met、EGFR及びERKのレベルが大幅に減少した。
図6に提示されたデータから、c−Met及びEGFRの両方を同時に阻害する重要性及び各受容体の二重特異性EGFR/c−Met分子の親和性の下流ERKの阻害における役割がわかる。高親和性EGFR結合FN3ドメインを含む分子(P54AR4−83v2、図では「8」として示す、K
D=0.26nM)は、中程度の親和性を有するEGFR結合FN3ドメイン(P53A1R5−17v2、図では「17」として示す、K
D=1.9nM)を含むものと比較して、6時間及び72時間の両方で、より大きな程度でEGFRのリン酸化を阻害した。試験した4つの全ての二重特異性分子では、親和性に関係なく、6時間の時点で、完全にERKのリン酸化が阻害された。72時間の時点で、高い親和性のc−Met結合ドメインを含有する分子(P114AR7P94−A3;図では「A3」として示す、K
D=0.4nM)は、中程度の親和性のc−Met結合FN3ドメイン、(P114AR5P74−A5;図中「A5」として示す;K
D=10.1nM;
図6)と比較して、ERKのリン酸化が大幅に阻害された。
【0278】
各二重特異性EGFR/c−Met分子の濃度は、血液及び腫瘍に投与後、6時間及び72時間の時点で、測定した(
図7)。興味深いことに、高親和性c−Met結合FN3ドメイン(P114AR7P94−A3;K
D=0.4nM)を有する二重特異性分子ではなく、中程度の親和性のEGFR結合ドメイン(P53A1R5−17v2;K
D=1.9nM)が、6時間の時点で、他の分子に対して、大幅に多い腫瘍集積を有したが、この差は、72時間で減少した。腫瘍外の細胞では、EGFR及びc−Metの表面発現レベルはいずれも低く、このため、高親和性のEGFR結合FN3ドメインと比較して、中程度の親和性EGFR分子は、正常組織に強く結合しないと仮定できる。このため、腫瘍内では、結合できる中程度の親和性のEGFR結合FN3ドメインを含有していない。したがって、各受容体に対する適切な親和性を同定することにより、全身毒性の低下及び腫瘍集積の増大を伴う治療法が特定できると考えられる。
【0279】
二重特異性EGFR/c−Met分子による腫瘍有効性の研究
SCIDベージュマウスの各動物の背側腹部に、NCI−H292細胞発現ヒトHGF(細胞2.0×10
6個、200μLのCultrex(Trevigen)中)を皮下接種した。注入後1週間、マウスを同等の腫瘍体積を有する群に階層化した(平均腫瘍容積=77.9+/−1.7mm
3)。マウスは、週3回、二重特異性分子の投与を受け、腫瘍体積を週2回記録した。c−Met及びEGFRに対して異なる親和性を有する4つの異なる二重特異性分子により、腫瘍増殖阻害(TGI)を観察した。
図8に、高親和性EGFR結合FN3ドメインを含む分子で処置したマウスにおいて、c−Met結合FN3ドメインが中程度の親和性であるとき、中程度の親和性のEGFR結合FN3ドメインと比較して、腫瘍増殖の遅延が観察されたため、c−Met及びEGFRの両方を阻害する利点を示す(白三角vs黒三角、P54AR4−83v2〜P114AR5P74−A5、P53A1R5−17〜P114AR5P74−A5と比較)。更に、データから、高親和性又は中程度の親和性のEGFR結合FN3ドメインのいずれかを含む二重特異性分子として、高親和性c−Met結合FN3ドメインを有することの重要性が明らかであり、高親和性のc−Met結合FN3ドメインが、最も高い有効性を示した(灰色及び黒の点線、P54AR4−83v2〜P114AR7P94−A3及びP53A1R5−17v2〜P114AR7P94−A3)。
【0280】
二重特異性分子並びにEGFR及びc−Metの他の阻害剤の有効性
二重特異性EGFR/c−Met分子(ECB38)及び低分子阻害剤クリゾチニブ(c−Met阻害剤)及びエルロチニブ(EGFR阻害剤)、セツキシマブ(抗−EGFR抗体)(それぞれ単剤として)、及びクリゾチニブとエルロチニブを組み合わせたもののインビボ治療有効性を、SCID/ベージュマウスのH292−HGFヒト肺癌異種移植皮下モデルの治療において、評価した。
【0281】
H292−HGF細胞は、インビトロで、ウシ胎児血清(10% v/v)、L−グルタミン(2mM)を添加したRPMI1640培地で、大気中、5% CO2雰囲気で、37℃で維持した。細胞は、トリプシン−EDTA処理により、2回/週、定期的に、継代培養した。指数関数的増殖フェーズにおいて、増殖した細胞を採取し、腫瘍接種のために計数した。
【0282】
【表14】
【0283】
N:動物数;p.o.:経口投与;i.p.:腹腔内投与3回/週:週の第1日目、第3日目、第5日目に投与
QD:1日に1回Q4d:4日に1回;クリゾチニブとエルロチニブを組み合わせたものの間隔は、0.5時間;投与量は、体重(10l/g)を基準に調整した;a:グルーピング後、第14日目には投与しなかった。
【0284】
それぞれのマウスには、右腹部に、腫瘍成長のために、cultrexを含むPBS、0.1mL(1:1)中の、H292−HGF腫瘍細胞(2×10
6個)を皮下接種した。治療は、平均腫瘍サイズが139mm
3に達したときに開始された。各研究群における試験品の投与及び動物数は、以下の実験デザイン表に示す。腫瘍細胞の接種日は、第0日目と示した。表14は、治療群を示す。
【0285】
治療開始前に、全動物の重量を計量し、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積は任意の所与の治療の有効性に影響を及ぼし得るため、マウスは、腫瘍体積に基づく、無作為化ブロックデザインを用いて各群に割り当てた。これにより、全群がベースライン値で比較できる。無作為化ブロックデザインを用いて、各群に実験動物を割り当てた。第1に、実験動物は、初期腫瘍体積によって、同種ブロックに分けた。第2に、各ブロック内で、治療に対する実験動物のランダム化を行った。無作為化ブロックデザインを用いて、実験動物を割り当てることによって、所与の治療に割り当てるにあたって、各動物が確実に同じ確率を有するようにして、系統誤差を低減させた。
【0286】
定期的モニター時に、腫瘍増殖及び治療が通常の行動に及ぼすあらゆる影響(運動性、摂餌量及び摂水量の視覚的評価、体重増加/減少(体重は、週2回測定した)、眼/毛のつや、並びに他のあらゆる異常作用など)について、各動物を調べた。
【0287】
エンドポイントは、腫瘍増殖を遅延させることができるか、又は腫瘍を有するマウスを治癒することができるかのどちらかとした。腫瘍サイズは、2つの寸法を、キャリパを用いて週2回測定し、体積は、以下の式を用いて、mm
3で表された:V=0.5a×b
2(ここで、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長径と短径を指す)。次に、腫瘍サイズを、T−C値及びT/C値の両方の計算に使用した。T−C値は、治療群の平均腫瘍サイズが1000mm
3に到達するまでの所要時間(日)をT値として、また、対照群の平均腫瘍サイズが同サイズに到達するまでの所要時間(日)をC値として算出した。T/C値(%)は、抗腫瘍効果を示し、T値及びC値は、所与の日の治療群及び対照群のそれぞれの平均腫瘍体積とした。完全な腫瘍退縮(CR)は、触診の下限値(62.5mm
3)未満まで縮小した腫瘍と定義する。一部腫瘍退縮(PR)は、初期の腫瘍体積から縮小された腫瘍と定義する。持続的と考え得るCP又はPRには、最短期間として、3回以上の連続した腫瘍測定の間でのCR又はPRが必要とされる。
【0288】
20%を超える重量減少が認められた場合、又は、群の平均腫瘍サイズが2000mm
3を超えた場合、動物を安楽死させた。本研究は、最終投与から2週間観察後に終了した。
【0289】
表15に示すように、各時点での各群の腫瘍体積について、平均値及び標準誤差(SEM)などの統計概要を示す。一方向ANOVAに続いて、Games−Howellを用いて個別に比較することにより(等分散性は想定せず)、腫瘍体積の群間差に関する統計解析を、評価した。全データを、SPSS18.0を使用して解析した。p<0.05は、統計学的に有意であると考えられた。
【0290】
【表15】
【0291】
ビヒクル治療群(群1)の平均腫瘍サイズは、腫瘍接種後第23日目に1,758mm
3に達した。25mg/kgの投与レベル(群2)での二重特異性EGFR/c−Met分子による治療により、全マウスにおいて、完全腫瘍退縮(CR)となり、これは、3回超の連続した腫瘍測定において持続性が認められた(第23日のビヒクル群と比較して、平均TV=23mm
3、T/C値=1%、p=0.004)。
【0292】
投与レベル50mg/kgの単剤としての、クリゾチニブ治療群(群3)は、いかなる抗腫瘍活性も示さず、第23日において、平均腫瘍サイズは2,102mm
3であった(ビヒクル群と比較して、T/C値=120%、p=0.944)。
【0293】
投与レベル50mg/kgの単剤としての、エルロチニブ治療群(群4)は、わずかに抗腫瘍活性を示したが、ビヒクル群と比較して、有意な差は認められず、第23日に、平均腫瘍サイズ1,122mm
3(ビヒクル群と比較して、T/C値=64%、p=0.429)であり、ビヒクル群と比較すると、腫瘍サイズ1000mm
3において、4日の腫瘍増殖遅延であった。
【0294】
クリゾチニブ(50mg/kg、群5)及びエルロチニブ(50mg/kg、群5)の組み合わせは、有意に抗腫瘍活性を示し、第23日に、平均腫瘍サイズ265mm
3(T/C値=15%、p=0.008)であり、腫瘍増殖遅延17日目には、ビヒクル群と比較して、腫瘍サイズ1,000mm
3であり、ビヒクル群と比較すると、腫瘍サイズ1000mm
3において、17日の腫瘍増殖遅延であった。
【0295】
投与レベル1mg/マウスの単剤としてのセツキシマブ(群6)は、有意に抗腫瘍活性を示し、第23日に、平均腫瘍サイズ485mm
3(T/C値=28%、p=0.018)であり、ビヒクル群と比較すると、腫瘍サイズ1000mm
3において、17日の腫瘍増殖遅延であった。
図9及び表16は、様々な治療法の抗腫瘍活性を示す。
【0296】
【表16】
【0297】
ビヒクル群では、腫瘍量の増加によると考えられる中程度から重篤な体重減少が認められた。マウス3匹が死に、1匹のマウスを、23日目にBWL20%超のとき安楽死させた。群2では、二重特異性EGFR/c−Met分子のわずかな毒性が認められ、治療期間中、BWL20%超のとき3匹のマウスを安楽死させ、治療終了後2週間の観察期間中、体重は徐々に回復した。クリゾチニブ又はエルロチニブ単剤療法群では、ビヒクル群と比較して、更に重篤な体重減少が認められ、治療と毒性との関連が示唆された。クリゾチニブとエルロチニブとの組み合わせは、投与段階中には、全般的に許容されたが、研究終了時に重篤な体重減少が認められ、これは非治療期間中の急速な腫瘍増殖の再開によるものと考えられる。セツキシマブ単独療法は、本研究において、十分に許容され、体重減少は、腫瘍増殖の再開により、研究終了時のみに観察された。
【0298】
要約すると、25mg/kgでの二重特異性EGFR/c−Met分子(3回/週x3週間)により、SCID/ベージュマウスでのH292−HGFヒト肺癌異種移植モデルにおいて、完全奏効が得られた。マウス10匹中7匹が、治療に耐性を示し、その結果、10匹中3匹のマウスに重篤な体重減少が認められた。
図9は、治療後の時間内での、様々な治療が腫瘍サイズに及ぼす影響を示す。
【0299】
実施例8:二重特異性EGFR/c−Met分子の半減期延長
腎臓での濾過作用を低減することで、タンパク質の血中半減期を延長する多数の方法が公開されており、ポリエチレングリコール(PEG)又はその他のポリマーによる修飾、アルブミンへの結合、アルブミン又は他の血清タンパク質に結合するタンパク質ドメインとの融合、アルブミンとの遺伝的融合、IgG Fcドメインとの融合及び長く、構造化されていないアミノ酸配列との融合などが挙げられる。
【0300】
二重特異性EGFR/c−Met分子は、遊離システインを分子のC末端に組み込むことによって、流体力学的半径を増大させるために、PEGにより修飾された。最も一般的には、システイン残基の遊離チオール基を使用して、標準的な方法を用いて、マレイミド基又はイオドアセタマイド(iodoacetemide)基により官能基化できるPEG分子を結合させる。PEGの様々な形態を使用して、1,000、2,000、5,000、10,000、20,000、又は40,000kDaの線状PEGを含むタンパク質を修飾できる。これらの分子量の分鎖状PEG分子を修飾に使用することもできる。場合によっては、PEG基は、二重特異性EGFR/c−Met分子中において、第1級アミンを介して結合されてもよい。
【0301】
PEG化のほかに、二重特異性EGFR/c−Met分子の半減期を、天然の3−ヘリックスバンドル血清アルブミン結合ドメイン(ABD)又はコンセンサスアルブミン結合ドメイン(ABDCon)との融合分子としてこれらのタンパク質を生成することによって、延長させた。これらのタンパク質のドメインは、表12に記載されているリンカーのいずれかを介して、c−Met結合FN3ドメインのC末端に連結された。ABD又はABDConドメインは、一次配列において、EGFR結合FN3ドメインとc−Met結合FN3ドメインとの間に配置されてもよい。場合によっては、アルブミン又はアルブミン変異体(配列番号:189)は、二重特異性EGFR/c−Met分子と、c−Met結合FN3ドメインのC末端に連結された。
【0302】
実施例9.選択二重特異性EGFR/c−Met分子の特性決定
選択二重特異性EGFR/c−Met分子の、EGFR及びc−Metの双方に対する親和性、EGFR及びc−Metの自己リン酸化を阻害する能力、及びHGF細胞の増殖への影響に関して特性決定した。組換え型EGFR及び/又はc−Met細胞外ドメインへの二重特異性EGFR/c−Met分子の結合親和性は、実施例3に記載されているプロトコールに従って、Proteon Instrument(BioRad)を使用して、表面プラズモン共鳴法によって更に分析した。特性決定結果を表17に示す。
【0303】
【表17】
*ECB158は、配列番号:224の(GGGGS)
2リンカーを介して、ヒト血清アルブミン変異体C34SにコンジュゲートされたECB168である。
【0304】
実施例10:EGFR及びc−Met結合FN3ドメインのパラトープ
EGFR細胞外ドメインへの結合に重要な残基を決定するために、分子P54AR4−83v2(配列番号:27)に対して一連の突然変異体を作製した。この分析のため、BCループ及びFGループ中の全てのアミノ酸位置を、1つずつアラニンに変異させ、18個の新しい分子を生成した。これらの変異体がEGFRに結合する親和性は、Proteon instrumentを用いたSPR分析によって測定された。その結果は、表18に示す。10個の位置において、10倍以上の結合親和性の損失がもたらされ、これにより、これらのタンパク質が、EGFRへの結合に寄与していることがわかる。倍率変化(fold change)は、親分子P54AR4−83v2と比較したときの変異体のK
D値の倍率変化を示す。BCループ及びFGループからの残基の組み合わせは、結合面を構成する。10個の位置が、EGFRへの結合を10倍以上弱め、5個の位置では、EGFRへの結合を100倍以上弱めることがわかった(D23、F27、Y28、V77、G85)。P54AR4−83v2のほかに、EGFR結合分子P54AR4−48、P54AR4−81、P53A1R5−17v2、P54AR4−83v22及びP54AR4−83v23(それぞれ、配列番号:21、25、107、108及び109)は、変異時に100倍以上EGFR結合を弱めるパラトープ位置に同じ残基を有する。生成されたいくつかの二重特異性EGFR/c−Met分子は、表10に示すように、EGFR結合FN3ドメインとしてP54AR4−83v2、P54AR4−48、P54AR4−81、P53A1R5−17v2、P54AR4−83v22又はP54AR4−83v2を含む。
【0305】
【表18】
【0306】
同様に、標的の結合に重要な位置を定義するために、P114AR7P95−A3(配列番号:41)分子の推定c−Met相互作用表面に対して一連の突然変異体を作製した。この分析は、二重特異性分子ECB15(配列番号:145)の場合において行われ、上記のとおり、アラニンの代わりに、セリンを置換として使用した。セリンは、得られる突然変異体の疎水性を低下させるために選択された。表19は、分子A3(配列番号:41)の番号に関連する、各突然変異位置の番号と共に、SPR結果を示す。7つの位置が、c−Metとの結合を10倍以上弱めることが示された。M72S、R34S及びI79S変異体については、測定可能な結合は認められなかった。F38S変異体により、100倍以上、c−Metとの結合が低減した。このデータから、c−Met結合に寄与する位置は、Cストランド、Fストランド、CDループ及びFGループに分布していることがわかる。倍率変化は、親分子P114AR7P95−A3と比較したときの変異体のK
D値の倍率変化を示す。P114AR7P94−A3に加えて、c−Met結合分子P114AR7P92−F3、P114AR7P95−D3、P114AR7P95−F10及びP114AR7P95−H8(それぞれ、配列番号:34、44、47及び49)は、変異時に100倍以上c−Met結合を弱めるパラトープ位置に同じ残基を有する。
【0307】
【表19】
【0308】
実施例11.二重特異性EGFR/c−Met分子によるヒト腫瘍細胞増殖の阻害
ヒト腫瘍細胞増殖の阻害を、実施例3又は6によって、若しくは低付着状態で、標準付着培養物において評価した。低付着状態での生存を評価するために、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)、0.1mM NEAA(Gibco)、及び10%加熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco)を添加した、GlutaMAX及び25mM Hepes含有RPMI培地(Invitrogen)50μL/ウェルの入ったUltra Low Attachment 96ウェルプレート(Corning Costar)中に、細胞を播種し、5% CO
2、37℃で一晩付着させた。細胞は、異なる濃度(最終濃度0.035〜700nM)の抗体で、HGF(7.5ng/mL、R&D Systems、カタログ番号294−HGN)と共に処理し、37℃、5% CO
2で、72時間インキュベートした。いくつかのウェルは、対照として、HGF又は抗体のいずれかで処理されないままとした。生細胞は、CellTiter−Glo(登録商標)試薬(Promega)を用いて検出し、データは、発光を読み取る前に、溶解物を、不透明な白い96ウェルの組織培養処理済プレート(PerkinElmer)に移した点以外は、実施例3の「ヒト腫瘍細胞増殖の阻害(NCI−H292増殖及びNCI−H322増殖アッセイ)」に上述されているとおり分析した。
【0309】
これらの場合のうち、細胞増殖の最大阻害が40%超えであり、相対IC
50が5mM未満であるときには、細胞株は、EGFR/c−Met二重特異性分子に対する強力な応答因子として分類された。
【0310】
ECB15の阻害活性は、野生型、増幅型又は変異型EGFR及び野生型又は変異型c−Metを有する、複数の細胞株において評価した。ECB15は、表20に示す細胞株の腫瘍細胞増殖を阻害した。ECB15は、また、エルロチニブなどのTKIに耐性を示すことが明らかである変異型T790Mを有するNCI−H1975細胞株の増殖を阻害した。
【0311】
【表20】
WT:野生型
AMP:増幅
Del:欠失
【0312】
【表21-1】
【0313】
【表21-2】
【0314】
【表21-3】
【0315】
【表21-4】
【0316】
【表21-5】
【0317】
配列番号:73,PRT,Homo Sapiens,EGFR
【0318】
【0319】
【表22】
【0320】
配列番号:75,PRT,Homo Sapiens,Tenascin−C
【0321】
【0322】
【表23】
【0323】
>配列番号101
PRT
Homo sapiens
cMet
【0324】
【0325】
【表24-1】
【0326】
【表24-2】
【0327】
【表24-3】
【0328】
【表24-4】
【0329】
【表24-5】
【0330】
【表24-6】
【0331】
【表24-7】
【0332】
【表24-8】
【0333】
>配列番号179
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのFGループ
HNVYKDTNX
9RGL;
ここで、X
9は、M又はIである。
【0334】
>配列番号180
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのFGループ
LGSYVFEHDVML(配列番号:180)
【0335】
>配列番号181
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメインのBCループ
X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8(配列番号181);ここで、
X
1はA、T、G又はDであり;
X
2はA、D、Y又はWであり;
X
3はP、D又はNであり;
X
4はL又は存在せず;
X
5はD、H、R、G、Y又はWであり;
X
6はG、D又はAであり;
X
7は、A、F、G、H又はDであり;
X
8は、Y、F又はLである。
【0336】
>配列番号182
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNX
9RGLPLSAEFTT(配列番号182)、
X
1はA、T、G又はDであり;
X
2はA、D、Y又はWであり;
X
3はP、D又はNであり;
X
4はL又は存在せず;
X
5はD、H、R、G、Y又はWであり;
X
6はG、D又はAであり;
X
7は、A、F、G、H又はDであり;
X
8は、Y、F又はLであり;
X
9は、M又はIである。
【0337】
>配列番号183
PRT
人工
EGFR結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8DSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVLGSYVFEHDVMLPLSAEFTT(配列番号183)、
ここで、
X
1はA、T、G又はDであり;
X
2はA、D、Y又はWであり;
X
3はP、D又はNであり;
X
4はL又は存在せず;
X
5はD、H、R、G、Y又はWであり;
X
6はG、D又はAであり;
X
7は、A、F、G、H又はDであり;
X
8は、Y、F又はLである。
【0338】
>配列番号184
PRT
人工
c−Met結合FN3ドメイン、Cストランド及びCDループ配列
DSFX
10IRYX
11EX
12X
13X
14X
15GX
16(配列番号184)、ここで、
X
10は、W、F又はVであり;
X
11は、D、F又はLであり;
X
12は、V、F又はLであり;
X
13は、V、L又はTであり;
X
14は、V、R、G、L、T又はSであり;
X
15は、G、S、A、T又はKであり;
X
16は、E又はDである。
【0339】
>配列番号185
PRT
人工
c−Met結合FN3ドメイン、Fストランド及びFGループ
TEYX
17VX
18IX
19X
20V KGGX
21X
22SX
23(配列番号185)、ここで、
X
17は、Y、W、I、V、G又はAであり;
X
18は、N、T、Q又はGであり;
X
19は、L、M、N又はIであり;
X
20は、G又はSであり;
X
21はS、L、G、Y、T、R、H又はKであり;
X
22は、I、V又はLであり;
X
23は、V、T、H、I、P、Y又はLである。
【0340】
>配列番号186
PRT
人工
c−Met結合FN3ドメイン
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAF DSFX
10IRYX
11E X
12X
13X
14X
15GX
16 AIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYX
17VX
18IX
19X
20VKGGX
21X
22SX
23PLSAEFTT(配列番号186)、
ここで、
X
10は、W、F又はVであり;
X
11は、D、F又はLであり;
X
12は、V、F又はLであり;
X
13は、V、L又はTであり;
X
14は、V、R、G、L、T又はSであり;
X
15は、G、S、A、T又はKであり;
X
16は、E又はDであり;
X
17は、Y、W、I、V、G又はAであり;
X
18は、N、T、Q又はGであり;
X
19は、L、M、N又はIであり;
X
20は、G又はSであり;
X
21はS、L、G、Y、T、R、H又はKであり;
X
22は、I、V又はLであり;
X
23は、V、T、H、I、P、Y又はLである。
【0341】
>配列番号187
PRT
人工
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子のEGFR FN3ドメイン
LPAPKNLVVSX
24VTX
25DSX
26RLSWDDPX
27AFYX
28SFLIQYQX
29SEKVGEAIX
30LTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYX
31VHNVYKDTNX
32RGLPLSAX
33FTT(配列番号O:187)、ここで、
X
24は、E、N又はRであり;
X
25は、E又はPであり;
X
26は、L又はAであり;
X
27は、H又はWであり;
X
28は、E又はDであり;
X
29は、E又はPであり;
X
30は、N又はVであり;
X
31は、G又はYであり;
X
32は、M又はIであり;
X
33は、E又はIである。
【0342】
>配列番号188
二重特異性EGFR/c−Met FN3ドメイン含有分子のc−Met FN3ドメイン
LPAPKNLVVSX
34VTX
35DSX
36RLSWTAPDAAFDSFWIRYFX
37FX
38X
39X
40GX
41AIX
42LTVPGSERSYDLTGLKPGTEYVVNIX
43X
44VKGGX
45ISPPLSAX
46FTT(配列番号188)、ここで、
X
34は、E、N又はRであり;
X
35は、E又はPであり;
X
36は、L又はAであり;
X
37は、E又はPであり;
X
38は、V又はLであり;
X
39は、G又はSであり;
X
40は、S又はKであり;
X
41は、E又はDであり;
X
42は、N又はVであり;
X
43は、L又はMであり;
X
44は、G又はSであり;
X
45は、S又はKであり;
X
46は、E又はIである。
【0343】
>配列番号189
HSA変異体C34S
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQSPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
【0344】
>配列番号190
ECB168
MLPAPKNLVVSEVTEDSARLSWDDPWAFYESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNIRGLPLSAIFTTAPAPAPAPAPLPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFWIRYFEFLGSGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYVVNILSVKGGSISPPLSAIFTT
【0345】
>配列番号191
MetのないECB168
LPAPKNLVVSEVTEDSARLSWDDPWAFYESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNIRGLPLSAIFTTAPAPAPAPAPLPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFWIRYFEFLGSGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYVVNILSVKGGSISPPLSAIFTT
【0346】
>192
ECB、名前なし、リスト17v2−C5v2の最後(last in the list 17v2-C5v2)
mLpapknlvvsevtedsarlswadphgfydsfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaifttapapapapap
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFWIRYFEFLGSGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYVVNILSVKGGSISPPLSAIFTT
【0347】
>193
ECB、名前なし、metなし、リスト17v2−C5v2の最後
Lpapknlvvsevtedsarlswadphgfydsfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaifttapapapapap LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFWIRYFEFLGSGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYVVNILSVKGGSISPPLSAIFTT
【0348】
>配列番号194
83v2 D22A
Lpapknlvvsevtedsarlswadpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaiftt
【0349】
>配列番号195
>83v2 D23A
Lpapknlvvsevtedsarlswdapwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaiftt
【0350】
>配列番号196
>83v2 P24A
Lpapknlvvsevtedsarlswddawafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaiftt
【0351】
>配列番号197
>83v2 W25A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpaafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaiftt
【0352】
>配列番号198
>83v2 F27A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwaayesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaiftt
【0353】
>配列番号199
>83v2 Y28A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafaesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrglplsaiftt
【0354】
>配列番号200
>83v2 H75A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvanvykdtnmrglplsaiftt
【0355】
>配列番号201
>83v2 N76A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhavykdtnmrglplsaiftt
【0356】
>配列番号202
>83v2 V77a
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnaykdtnmrglplsaiftt
【0357】
>配列番号203
>83v2 Y78A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvakdtnmrglplsaiftt
【0358】
>配列番号204
>83v2 K79A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvyadtnmrglplsaiftt
【0359】
>配列番号205
>83v2 D80A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykatnmrglplsaiftt
【0360】
>配列番号206
>83v2 M83A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnarglplsaiftt
【0361】
>配列番号207
>83v2 R84A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmaglplsaiftt
【0362】
>配列番号208
>83v2 G85A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmralplsaiftt
【0363】
>配列番号209
>83v2 L86A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtnmrgaplsaiftt
【0364】
>配列番号210
>83v2 T81A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdanmrglplsaiftt
【0365】
>配列番号211
>83v2 N82A
Lpapknlvvsevtedsarlswddpwafyesfliqyqesekvgeaivltvpgsersydltglkpgteytvsiygvhnvykdtamrglplsaiftt
【0366】
配列番号212
>K78S
lpapknlvvsrvtedsarlswtapdaafdsfwiryfeflgsgeaivltvpgsersydltglkpgteyvvnimgvkggSispplsaiftt
【0367】
配列番号213
>G40S
lpapknlvvsrvtedsarlswtapdaafdsfwiryfeflSsgeaivltvpgsersydltglkpgteyvvnimgvkggkispplsaiftt
【0368】
配列番号214
>L39S
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【0369】
配列番号215
>V68S
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【0370】
配列番号216
>N70S
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【0371】
配列番号217
>P81S
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【0372】
配列番号218
>F36S
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【0373】
配列番号219
>W32S
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【0374】
配列番号220
>M72S
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【0375】
配列番号221
>R34S
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【0376】
配列番号222
>F38S
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【0377】
配列番号223
>I79S
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【0378】
配列番号224
PRT
人工
リンカー
GGGGSGGGGS
本出願は、例えば以下の発明を提供する。
[1] 第1のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン及び第2のFN3ドメインを含む単離二重特異性FN3ドメイン含有分子であって、該第1のFN3ドメインは、上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングし、該第2のFN3ドメインは、肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングする、単離二重特異性FN3ドメイン含有分子。
[2] [1]に記載の二重特異性分子であって、
a)前記第1のFN3ドメインは、50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞において測定したとき、約2.5×10-6M未満のIC50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害し、前記第2のFN3ドメインは、100ng/mLのヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約1.5×10-6M未満のIC50値にて、c−Met残基チロシン1349におけるHGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害するか、
b)前記第1のFN3ドメインは、50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞において測定したとき、約1.8×10-8M〜約2.5×10-6MのIC50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害し、前記第2のFN3ドメインは、100ng/mLのヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約4×10-9M〜約1.5×10-6MのIC50値にて、c−Met残基チロシン1349におけるHGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害するか、
c)前記第1のFN3ドメインは、ヒトEGFRと、約1×10-8M未満の解離定数(KD)にて結合し、前記第2のFN3ドメインは、ヒトc−Metと、約5×10-8M未満のKDにて結合し、該KDは、実施例3に記載のように表面プラズモン共鳴を用いて測定されるか、又は
d)前記第1のFN3ドメインは、ヒトEGFRと、約2×10-10〜約1×10-8MのKDにて結合し、前記第2のFN3ドメインは、ヒトc−Metと、約3×10-10〜約5x10-8MのKDにて結合し、該KDは、実施例5に記載のように表面プラズモン共鳴を用いて測定される、二重特異性分子。
[3] 前記二重特異性分子は、前記第1のFN3ドメイン及び前記第2のFN3ドメインの混合物によるNCI−H292細胞増殖阻害のIC50値と比較した場合、少なくとも30倍小さいIC50値にて、NCI−H292細胞の増殖を阻害し、該細胞増殖は、7.5ng/mLのHGFを含有する10% FBSによって誘発される、[1]又は[2]に記載の二重特異性分子。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の二重特異性分子であって、前記二重特異性分子は、
a)50ng/mLのヒトEGFを用いて、NCI−H292細胞において測定したとき、約8×10-7M未満のIC50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害するか、
b)100ng/mLのヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約8.4×10-7M未満のIC50値にて、c−Met残基チロシン1349におけるHGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害するか、
c)約9.5×10-6M未満のIC50値にて、HGF誘発性NCI−H292細胞増殖を阻害し、該細胞増殖は、7.5ngのHGFを含有する10% FBSによって誘発されるか、
d)約2.0×10-8M未満のKDにてEGFRに結合するか、又は
e)約2.0×10-8M未満のKDにてc−Metに結合し、該KDは、実施例3及び実施例5に記載のように表面プラズモン共鳴を用いて測定される、二重特異性分子。
[5] 前記第1のFN3ドメインは、少なくとも87%が配列番号27のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含み、前記第2のFN3ドメインは、少なくとも83%が配列番号41のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[6] 前記第1のFN3ドメインは、配列番号107又は108のアミノ酸配列を含み、前記第2のFN3ドメインは、配列番号114のアミノ酸配列を含む、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[7] 前記第1のFN3ドメインは、P54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、EGFRに結合する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[8] 前記第2のFN3ドメインは、P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、c−Metと結合する、[7]に記載の二重特異性分子。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の二重特異性分子であって、
a)前記第1のFN3ドメインは、
i)配列番号179のアミノ酸配列又は配列番号180のアミノ酸配列を含むFGループと、
ii)配列番号181のアミノ酸配列を含むBCループと、を含み、
b)前記第2のFN3ドメインは、
i)配列番号184のアミノ酸配列を含むCストランド及びCDループと、
ii)配列番号185のアミノ酸配列を含むFストランド及びFGループと、を含む、二重特異性分子。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載の二重特異性分子であって、
a)前記第1のFN3ドメインは、配列番号182のアミノ酸配列又は配列番号183のアミノ酸配列を含み、
b)前記第2のFN3ドメインは、配列番号186のアミノ酸配列を含む、二重特異性分子。
[11] 前記第1のFN3ドメイン及び/又は前記第2のFN3ドメインは、Tencon(配列番号1)の11、14、17、37、46、73及び86位に対応する1つ以上の残基位置で置換を含む、[5]〜[10]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[12] 前記第1のFN3ドメインは、配列番号187のアミノ酸配列を含み、前記第2のFN3ドメインは、配列番号188のアミノ酸配列を含む、[11]に記載の二重特異性分子。
[13] 前記第1のFN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110、122〜137、又は194〜211のうちの1つに示される配列を含み、前記第2のFN3ドメインは、配列番号32〜49、111〜114、又は212〜223のうちの1つに示される配列を含む、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[14] 前記第1のFN3ドメイン及び前記第2のFN3ドメインは、
a)それぞれ、27及び32、
b)それぞれ、27及び41、
c)それぞれ、27及び40、
d)それぞれ、27及び33、
e)それぞれ、107及び41、
f)それぞれ、107及び40、
g)それぞれ、107及び33、
h)それぞれ、107及び32、
i)それぞれ、107及び114、
j)それぞれ、108及び111、
k)それぞれ、108及び112、
l)それぞれ、108及び113、
m)それぞれ、108及び114、
n)それぞれ、109及び111、
o)それぞれ、109及び112、
p)それぞれ、109及び113、
q)それぞれ、109及び114、
r)それぞれ、110及び111、
s)それぞれ、110及び112、
t)それぞれ、110及び113、又は
u)それぞれ、110及び114、の配列番号のアミノ酸配列を含む、[13]に記載の二重特異性分子。
[15] 前記第1のFN3ドメイン及び/又は前記第2のFN3ドメインは、Tencon(配列番号1)の置換L17A、N46V及びE86Iに対応する1つ以上の置換を含む、[14]に記載の二重特異性分子。
[16] 前記第1のFN3ドメイン及び/又は前記第2のFN3ドメインは、配列番号1のTencon配列に基づいて設計されたライブラリから単離される、[1]〜[15]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[17] 前記第1のFN3ドメイン及び前記第2のFN3ドメインは、リンカーによって連結される、[1]〜[16]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[18] 前記リンカーは、配列番号78〜84又は224のうちの1つに示されるアミノ酸配列を含む、[17]に記載の二重特異性分子。
[19] 配列番号50〜72、106、118〜121、138〜165又は190〜193で示すアミノ酸配列を含み、任意選択的に、前記分子のN末端に連結されるメチオニン(Met)を含む、[1]〜[18]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[20] 前記分子のC末端に連結されるシステインを更に含む、[19]に記載の二重特異性分子。
[21] 半減期延長部分に連結される、[1]〜[20]のいずれか一項に記載の二重特異性分子。
[22] 前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、アルブミン変異体、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、[21]に記載の二重特異性分子。
[23] 前記半減期延長部分は、配列番号189の前記アルブミン変異体である、[22]に記載の二重特異性分子。
[24] [5]に記載の二重特異性分子をコードする、単離ポリヌクレオチド。
[25] [24]に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[26] [25]に記載のベクターを含む、単離宿主細胞。
[27] 二重特異性分子を作製する方法であって、[26]に記載の単離宿主細胞を、該二重特異性分子が発現するような条件下で培養することと、該二重特異性分子を精製することと、を含む、方法。
[28] [1〜23]のいずれか一項に記載の二重特異性分子と、製薬上許容できる担体と、を含む医薬組成物。
[29] 癌の治療を行うために十分な時間にわたって、治療的に有効な量の[1]に記載の二重特異性分子を、その必要のある患者に投与することを含む、癌を有する被験体を治療する方法。
[30] 癌は、EGFR活性化突然変異、EGFR遺伝子増幅、c−Met活性化突然変異又はc−Met遺伝子増幅と関連がある、[29]に記載の方法。
[31] 前記EGFR活性化突然変異は、G719A、G719X(Xは、任意のアミノ酸)、L861X(Xは、任意のアミノ酸)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、L858P又はT790Mの置換、E746〜A750の欠失、R748〜P753の欠失、M766〜A767間のAla(A)の挿入、S768〜V769間のSer、Val及びAla(SVA)の挿入、並びにP772〜H773間のAsn及びSer(NS)の挿入である、[30]に記載の方法。
[32] 前記被験体は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、CO−1686、AZD9192又はセツキシマブによる治療に対して、耐性を示すか、又は耐性を得ている、[29]に記載の方法。
[33] 癌は、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、非小細胞性肺癌(NSCLC)、肺腺癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頚部癌、咽頭癌、鼻腔癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、舌癌、食道癌、膣癌、子宮頸癌、脾臓癌、精巣癌、胃癌、胸腺癌、大腸癌、甲状腺癌、肝癌、肝細胞癌(HCC)、散発性又は遺伝乳頭状腎細胞癌(PRCC)である、[29]に記載の方法。
[34] 第2の治療薬を投与することを含む、[29]に記載の方法。
[35] 前記第2の治療薬は、化学療法剤又は標的抗癌治療剤である、[33]に記載の方法。
[36] 前記第2の治療薬は、シスプラチン、ビンブラスチン、EGFR、c−Met、HER2、HER3、HER4若しくはVEGFRのチロシンキナーゼ阻害物質、エルロチニブ、ゲフィチニブ又はアファチニブである、[35]に記載の方法。
[37] 前記第2の治療薬は、前記二重特異性分子と同時に、逐次的に又は別途に投与される、[34]に記載の方法。
[38] 上皮成長因子受容体(EGFR)と特異的に結合し、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの結合をブロッキングする、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインであって、該FN3ドメインは、配列番号1のTenconアミノ酸配列に基づいて設計されたライブラリから単離される、FN3ドメイン。
[39] [38]に記載のFN3ドメインであって、前記FN3ドメインは、
a)50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞において測定したとき、約2.5×10-6M未満のIC50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害するか、
b)50ng/mLのヒトEGFを用いて、A431細胞において測定したとき、約1.8×10-8M〜約2.5×10-6MのIC50値にて、EGFR残基チロシン1173におけるEGF誘発性のEGFRリン酸化を阻害するか、
c)約1×10-8M未満の解離定数(KD)にて、ヒトEGFRに結合し、該KDは、実施例3に記載の条件を用いて測定されるか、又は
d)約2×10-10〜約1×10-8MのKDにて、ヒトEGFRに結合し、該KDは、実施例3に記載のように表面プラズモン共鳴を用いて測定される、FN3ドメイン。
[40] 少なくとも87%が配列番号27のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む、[38]又は[39]に記載のFN3ドメイン。
[41] 前記FN3ドメインは、P54AR4−83v2(配列番号27)の残基D23、F27、Y28、V77及びG85に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、EGFRに結合する、[38]〜[40]のいずれか一項に記載のFN3ドメイン。
[42] [38]〜[41]のいずれか一項に記載のFN3ドメインであって、前記FN3ドメインは、
a)配列番号179のアミノ酸配列又は配列番号180のアミノ酸配列を含むFGループと、
b)配列番号181のアミノ酸配列を含むBCループと、を含む、FN3ドメイン。
[43] 配列番号182のアミノ酸配列又は配列番号183のアミノ酸配列を含む、[42]に記載のFN3ドメイン。
[44] 前記FN3ドメインは、配列番号18〜29、107〜110、122〜137又は194〜211のうちの1つに示される配列を含む、[38]〜[43]のいずれか一項に記載のFN3ドメイン。
[45] 前記FN3ドメインは、Tencon(配列番号1)の11、14、17、37、46、73及び86位に対応する1つ以上の残基位置で置換を含む、[44]に記載のFN3ドメイン。
[46] 前記FN3ドメインは、配列番号1のTenconアミノ酸配列の置換L17A、N46V及びE86Iに対応する1つ以上の置換を含む、[45]に記載のFN3ドメイン。
[47] [40]に記載のFN3ドメインをコードする、単離ポリヌクレオチド。
[48] [47]に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[49] [48]に記載のベクターを含む、単離宿主細胞。
[50] EGFRと特異的に結合するFN3ドメインを作製する方法であって、[48]に記載の単離宿主細胞を、EGFRと特異的に結合する該FN3ドメインが発現するような条件下で培養することと、該FN3ドメインを精製することと、を含む、方法。
[51] 肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合し、肝細胞増殖因子(HGF)とc−Metとの結合をブロッキングする、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
[52] [51]に記載のFN3ドメインであって、前記FN3ドメインは、
a)100ng/mLの組換え型ヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約1.5×10-6M未満のIC50値にて、c−Met残基チロシン1349におけるHGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害するか、
b)100ng/mLの組換え型ヒトHGFを用いて、NCI−H441細胞において測定したとき、約4×10-9M〜約1.5x10-6MのIC50値にて、c−Met残基チロシン1349におけるHGF誘発性のc−Metリン酸化を阻害するか、
c)約5×10-8M未満のKDにて、ヒトc−Metに結合し、該KDは、実施例3に記載の条件下で測定されるか、又は
d)約3×10-10〜約5x10-8MのKDにて、ヒトc−Metに結合し、該KDは、実施例5に記載のように表面プラズモン共鳴を用いて測定される、FN3ドメイン。
[53] 少なくとも83%が配列番号41のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む、[51]又は[52]に記載のFN3ドメイン。
[54] 前記FN3ドメインは、P114AR7P95−A3(配列番号41)の残基R34、F38、M72及びI79に対応する1つ以上のアミノ酸残基により、c−Metに結合する、[51]〜[53]のいずれか一項に記載のFN3ドメイン。
[55] [51]〜[54]のいずれか一項に記載のFN3ドメインであって、前記FN3ドメインは、
a)配列番号184のアミノ酸配列を含むCストランド及びCDループと、
b)配列番号185のアミノ酸配列を含むFストランド及びFGループと、を含む、FN3ドメイン。
[56] 配列番号186のアミノ酸配列を含む、[55]に記載のFN3ドメイン。
[57] 前記FN3ドメインは、配列番号32〜49、111〜114、又は212〜223のうちの1つに示される配列を含む、[51]〜[56]のいずれか一項に記載のFN3ドメイン。
[58] 前記FN3ドメインは、配列番号1のTenconアミノ酸配列の11、14、17、37、46、73及び86位に対応する1つ以上の残基位置で置換を含む、[57]に記載のFN3ドメイン。
[59] 前記FN3ドメインは、配列番号1のTenconアミノ酸配列の置換L17A、N46V及びE86Iに対応する1つ以上の置換を含む、[58]に記載のFN3ドメイン。
[60] 前記FN3ドメインは、配列番号1のTenconアミノ酸配列に基づいて設計されたライブラリから単離される、[51]〜[59]のいずれか一項に記載のFN3ドメイン。
[61] [53]に記載のFN3ドメインをコードする、単離ポリヌクレオチド。
[62] [61]に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[63] [62]に記載のベクターを含む、単離宿主細胞。
[64] c−Metと特異的に結合するFN3ドメインを作製する方法であって、[63に記載の単離宿主細胞を、c−Metと特異的に結合する該FN3ドメインが発現するような条件下で培養することと、c−Metと特異的に結合する該FN3ドメインを精製することと、を含む、方法。
[65] [38]又は[51]に記載のFN3ドメインと、製薬上許容できる担体と、を含む医薬組成物。
[66] 癌の治療を行うために十分な時間にわたって、治療的に有効な量の[65]に記載の医薬組成物を、その必要のある患者に投与することを含む、癌を有する被験体を治療する方法。
[67] 前記被験体は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、CO−1686、AZD9192又はセツキシマブによる治療に対して、耐性を示すか、又は耐性を得ている、[66]に記載の方法。
[68] 癌は、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、非小細胞性肺癌(NSCLC)、肺腺癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頚部癌、咽頭癌、鼻腔癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、舌癌、食道癌、膣癌、子宮頸癌、脾臓癌、精巣癌、胃癌、胸腺癌、大腸癌、甲状腺癌、肝癌、肝細胞癌(HCC)、散発性又は遺伝乳頭状腎細胞癌(PRCC)である、[66]に記載の方法。
[69] [1]〜[33]のいずれか一項に記載の二重特異性FN3ドメイン含有分子、[38〜46]のいずれか一項に記載の上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン、又は、[51]〜[60]のいずれか一項に記載の肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合する、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインの、治療のための使用。
[70] 癌の治療に使用するための、[1]〜[33]のいずれか一項に記載の二重特異性FN3ドメイン含有分子、[38]〜[46]のいずれか一項に記載の上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン、又は、[51〜60]のいずれか一項に記載の肝細胞増殖因子受容体(c−Met)と特異的に結合する、単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン。
[71] [70]に記載の使用のための、[1]〜[33]のいずれか一項に記載の二重特異性FN3ドメイン含有分子、[38]〜[46]のいずれか一項に記載の上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する単離フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインであって、前記癌は、上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、非小細胞性肺癌(NSCLC)、肺腺癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、肛門癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頚部癌、咽頭癌、鼻腔癌、膵癌、皮膚癌、口腔癌、舌癌、食道癌、膣癌、子宮頸癌、脾臓癌、精巣癌、胃癌、胸腺癌、大腸癌、甲状腺癌、肝癌、肝細胞癌(HCC)、散発性又は遺伝乳頭状腎細胞癌(PRCC)である、二重特異性FN3ドメイン含有分子、単離FN3ドメイン。