特許第6393275号(P6393275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6393275脈管内圧力監視装置と共に使用する無線インターフェース装置、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393275
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】脈管内圧力監視装置と共に使用する無線インターフェース装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20180910BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61B5/0215 C
   A61B5/026 110
【請求項の数】33
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-549541(P2015-549541)
(86)(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公表番号】特表2016-507266(P2016-507266A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2013075433
(87)【国際公開番号】WO2014099803
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/745,418
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515122402
【氏名又は名称】ボルケーノ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ハワード・デイビッド・アルパート
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−050546(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/161212(WO,A1)
【文献】 特開2003−223216(JP,A)
【文献】 特表2004−528920(JP,A)
【文献】 特表2009−515592(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0139720(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0071407(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0041281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02−5/0295
A61M 25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈管内圧力感知装置のためのインターフェースであって、
脈管内に配置される遠位圧力感知装置から遠位圧力信号を受信するように構成される遠位入力と、
血流力学システムによって利用可能な形式で前記遠位圧力信号を前記血流力学システムに出力するように構成される遠位出力と、
脈管内に配される近位圧力感知装置から近位圧力信号を受信するように構成される近位入力と、
前記血流力学システムによって利用可能な形式で前記近位圧力信号を前記血流力学システムに出力するように構成される近位出力と、
前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、および前記近位出力に結合される無線トランシーバと
前記近位圧力装置又は前記遠位圧力装置に印加される励起信号を前記血流力学システムから入力する一対のリードに結合された電力抽出装置であって、少なくとも前記無線トランシーバを動作させる際に使用される電力を、前記一対のリードから入力する前記励起信号から抽出する、電力抽出装置と、
を備え、前記無線トランシーバは、前記遠位圧力信号および前記近位圧力信号を、前記インターフェースから離して配置されるコンピューティングシステムに無線で送信するように構成され、前記コンピューティングシステムは、前記血流力学システムとは異なる、インターフェース。
【請求項2】
前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、前記近位出力、および前記無線トランシーバは、ハウジングに固定される、請求項1に記載のインターフェース。
【請求項3】
前記ハウジングが、幅5cmから25cm、高さ5cmから25cm、および奥行1cmから10cmである、請求項2に記載のインターフェース。
【請求項4】
前記遠位圧力感知装置が、圧力感知ガイドワイヤである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインターフェース。
【請求項5】
前記近位圧力感知装置が、前記血流力学システムと共に使用するために構成される圧力感知カテーテルである、請求項4に記載のインターフェース。
【請求項6】
前記圧力感知カテーテルが、少なくとも4つのリードを介して前記血流力学システムと通信する、請求項5に記載のインターフェース。
【請求項7】
前記少なくとも4つのリードのうち第1の対のリードが、励起信号を前記圧力感知カテーテルに送信することと関連する、請求項6に記載のインターフェース。
【請求項8】
前記第1の対のリードと電気的に結合される第1の増幅器をさらに備え、前記第1の増幅器が、前記励起信号をサンプリングするように構成される、請求項7に記載のインターフェース。
【請求項9】
前記第1の増幅器は、前記サンプリングされた励起信号を前記無線トランシーバに送信する、請求項8に記載のインターフェース。
【請求項10】
前記少なくとも4つのリードのうち第2の対のリードが、前記近位圧力感知装置から前記血流力学システムに前記近位圧力信号を送信することと関連する、請求項7乃至9に記載のインターフェース。
【請求項11】
前記第2の対のリードと電気的に結合される第2の増幅器をさらに備え、前記第2の増幅器が、前記近位圧力信号をサンプリングするように構成される、請求項10に記載のインターフェース。
【請求項12】
前記第2の増幅器は、前記サンプリングされた近位圧力信号を前記無線トランシーバに送信する、請求項11に記載のインターフェース。
【請求項13】
リードの前記対は、前記血流力学システムの近位圧力測定入力と関連する、請求項に記載のインターフェース。
【請求項14】
リードの前記対は、前記血流力学システムの遠位圧力測定入力と関連する、請求項に記載のインターフェース。
【請求項15】
前記無線トランシーバが、前記遠位圧力信号および前記近位圧力信号を伴う識別患者情報を、前記コンピューティングシステムに無線で送信するようにさらに構成される、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインターフェース。
【請求項16】
血管狭窄を評価するためのシステムであって、前記システムは、
人間の血管系に挿入するためのサイズおよび形状を有する遠位圧力感知装置と、
人間の血管系に挿入するためのサイズおよび形状を有する近位圧力感知装置と、
インターフェースと
を備え、
前記インターフェースは、
前記遠位圧力感知装置から遠位圧力信号を受信するように構成される遠位入力と、
前記近位圧力感知装置から近位圧力信号を受信するように構成される近位入力と、
処理システムによって利用可能な形式で前記近位圧力信号を前記処理システムに出力するように構成される近位出力と、
処理システムによって利用可能な形式で前記遠位圧力信号を前記処理システムに出力するように構成される遠位出力部と、
前記遠位入力前記遠位出力、前記近位入力、および前記近位出力に結合される無線トランシーバと
前記近位圧力装置又は前記遠位圧力装置に印加される励起信号を前記処理システムから入力する一対のリードに結合された電力抽出装置であって、少なくとも前記無線トランシーバを動作させる際に使用される電力を、前記一対のリードから入力する前記励起信号から抽出する、電力抽出装置と、
を備え、
前記無線トランシーバは、前記遠位圧力信号および前記近位圧力信号を、前記インターフェースから離して配置されるコンピューティングシステムに無線で送信するように構成され、
前記コンピューティングシステムは、前記処理システムとは異なる、
システム。
【請求項17】
前記処理システムは、血流力学システムである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記無線トランシーバが、IEEE802.11 Wi−Fi(登録商標)規格およびBluetooth(登録商標)規格の一方を使用して、前記遠位圧力信号および前記近位圧力信号を無線で送信するように構成される、請求項16又は17に記載のシステム。
【請求項19】
前記インターフェースが、前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、および前記近位出力に結合されるプロセッサをさらに含み、前記プロセッサが、前記受信した遠位圧力信号と前記受信した近位圧力信号とに基づいて前記遠位圧力信号と前記近位圧力信号との間の圧力差を算出するように構成され、前記無線トランシーバが、前記圧力差を、前記インターフェースから離して配置される装置に無線で送信するようにさらに構成される、請求項16乃至18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、前記近位出力、および前記無線トランシーバは、ハウジングに固定される、請求項16乃至19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記ハウジングが、幅5cmから25cm、高さ5cmから25cm、および奥行1cmから10cmである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記遠位圧力感知装置が、圧力感知ガイドワイヤである、請求項16乃至21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記近位圧力感知装置が、前記処理システムと共に使用するために構成される圧力感知カテーテルである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記圧力感知カテーテルが、少なくとも4つのリードを介して前記処理システムと通信する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記少なくとも4つのリードのうち第1の対のリードが、励起信号を前記圧力感知カテーテルに送信することと関連する、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の対のリードと電気的に結合される第1の増幅器をさらに備え、前記第1の増幅器が、前記励起信号をサンプリングするように構成される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の増幅器は、前記サンプリングされた励起信号を前記無線トランシーバに送信する、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記少なくとも4つのリードのうち第2の対のリードが、前記近位圧力感知装置から前記処理システムに前記近位圧力信号を送信することと関連する、請求項25乃至27のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記第2の対のリードと電気的に結合される第2の増幅器をさらに備え、前記第2の増幅器が、前記近位圧力信号をサンプリングするように構成される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記第2の増幅器は、前記サンプリングされた近位圧力信号を前記無線トランシーバに送信する、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
リードの前記対は、前記処理システムの近位圧力測定入力と関連する、請求項16に記載のシステム。
【請求項32】
リードの前記対は、前記処理システムの遠位圧力測定入力と関連する、請求項16に記載のシステム。
【請求項33】
前記無線トランシーバが、前記遠位圧力信号および前記近位圧力信号を伴う識別患者情報を、前記コンピューティングシステムに無線で送信するようにさらに構成される、請求項16乃至32のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、脈管の評価に関し、特に、脈管を流れる流体の流れの閉塞または他の制限の深刻度の評価に関する。本開示の態様は、特に、いくつかの例において、生物学的脈管の評価に適する。例えば、本開示のいくつかの特定の実施形態は、特に、人間の血管の狭窄を評価するために構成される。
【背景技術】
【0002】
虚血性病変を含む、血管における狭窄の深刻度を評価するために現在認められている技術は、冠血流予備量比(fractional flow reserve:FFR)である。FFRは、(狭窄の遠位側で取得される)遠位圧力測定値と、(狭窄の近位側で取得される)近位圧力測定値との比を算出したものである。FFRにより、治療が必要な程度に閉塞が血管内の血流を制限しているかどうかを判断することを可能にする、狭窄の深刻度の指標がもたらされる。健康な血管でのFFRの通常値は、1.00であるが、約0.80未満の値は、一般に、顕著であると見なされ、治療を必要とする。一般的な治療オプションには、血管形成術およびステント留置術がある。
【0003】
冠血流は、(大動脈でのように)近位で生じる圧力の変動によって影響されるだけでなく、微小循環において遠位で生じる変動によって同時に影響されるという点で、独特である。したがって、遠位冠状動脈圧が、純粋に、血管の大動脈端からの圧力の残差ではないので、狭窄部における平均圧力またはピーク圧力の低下を単純に測定することによって、冠狭窄の深刻度を正確に評価することはできない。その結果、冠状動脈内のFFRを有効に計算するために、血管内の管抵抗を減らすことが必要である。現在、アデノシンなどの薬理学的充血剤が、冠状動脈内の抵抗を減らし、安定化するために投与される。これらの効果的な血管拡張剤により、(主に、心周期の収縮期部と関連する微小循環抵抗を下げることによって)抵抗の劇的な変動が小さくなり、比較的安定した最小の抵抗値が得られる。
【0004】
しかしながら、充血剤の投与は、常に可能で望ましいわけではない。第1に、充血剤を投与するクリニカルエフォートが著しい場合がある。国によっては(特に、アメリカ合衆国では)、アデノシンなどの充血剤は高価であり、静脈内(IV)に送達するのに時間がかかる。その点に関し、IV送達アデノシンは、一般に、病院の薬局で、場合ごとに調合される。アデノシンを準備して、作用領域に送達するために、かなりの時間と労力を要し得る。これらのロジスティックハードルが、FFRを使用するための意志の決定に影響を与え得る。第2に、患者の中には、喘息、重度のCOPD、低血圧、徐脈、低心駆出率、最近の心筋梗塞、および/または充血薬剤の投与を防止する他の要因などの、充血剤の使用に禁忌を有する者がいる。第3に、多くの患者が、充血剤の投与を不快であると認め、これは、FFR測定値を得るための手順の過程で、充血剤を複数回投与する必要がある可能性があるということによって悪化するばかりである。第4に、充血剤を投与するために、別方法であれば回避されるであろう中心静脈アクセス(例えば、中心静脈シース)も必要になる可能性がある。最後に、全ての患者が、予期したように充血剤に応答するものではなく、いくつかの例において、充血剤の投与前にこれらの患者を識別することは困難である。
【0005】
FFR測定値、または瞬時血流予備量比(instantaneous wave−free ratio:iFR)測定値などの他の同様の測定値を得るために、カテーテル法で使われるカテーテルまたはガイドワイヤなどの可撓性装置の遠位端に配置された1つまたは複数の超小型センサを使用して、遠位圧力値を取得し、一方、血流力学システムと呼ばれることの多い、測定機器に接続されたセンサを使用して、近位または大動脈圧測定値を得る。現在、大型で高価なシステムか、または遠位圧力ワイヤならびに血流力学システムに接続された複数の装置の組み合わせのみが、FFR測定値を算出し、表示することができる。その点に関し、FFRまたはiFRを算出するために、これらの装置は、大動脈または近位圧力測定値と、冠状動脈または遠位圧力測定値との両方を必要とする。したがって、これらのシステムは、カテーテル検査室の血流力学システムに対して、ハイレベルなアナログ電圧出力を要求する。この文脈において「ハイレベル」とは、概して、100mmHg/Volt出力を意味する。残念ながら、多くの血流力学システムは、ハイレベル出力を提供しない。その結果、これらの血流力学システムを使用する場合、FFR測定値または大動脈圧測定値を必要とする他の測定を提供することは、不可能ではなかったとしても困難である。さらに、典型的なカテーテル検査室のスペースは極端に限られている。したがって、大型で、カテーテル検査室内に設置される装置は、より小さい装置と比べると好まれず、特に、より大きい装置の機能のすべてを提供しなかったとしても、その大半をより小さな装置が提供できる場合、好まれない。その結果、遠位圧力測定値と大動脈圧測定値との両方を収集することができ、さらに患者のベッド上か、またはベッド付近に置くことができ、医師が容易に読み取ることができる、小型で軽量の装置が大いに望ましい。
【0006】
さらに、ほとんどの圧力測定装置は、ACアダプタまたは壁のコンセントのような別途電源を必要とする。このことにより、配線が混雑することとなり、利用可能な医療グレードACコンセントが、患者のベッドの近くで利用不可能となることが多い。さらには、AC電源を使用する任意の装置は、漏電による患者リスクを軽減するための、厳密な安全性の警告を行わなければならない。電力のための別の代替え手段にバッテリがある。しかし、バッテリは交換しなければならず、正確に廃棄しなければならず、貯蔵期限が有限である。
【0007】
さらに、多くの圧力測定装置は、受診した圧力データを、カテーテル検査室内に敷設されなければならない配線を介して、1つまたは複数の他の装置に送信する。これらのワイヤにより配線が混雑し、したがって、事故の危険性が増す。さらに、カテーテル検査室の内外のコンピューティングシステムは、FFRまたはiFRなどの、圧力ベースの診断特性を算出するための圧力測定値に依存することが多い。信頼性の高い診断特性のために、強い大動脈圧信号が必要となることが多い。現在の血流力学システムは、強く信頼性の高い大動脈圧信号をもたらすことができない可能性があり、不正確で不完全な患者の診断に繋がる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、脈管内の閉塞、特に、血管内の狭窄の深刻度を評価するための装置、システム、および方法を改善する必要性がある。その点に関し、小さく、サイズが小型で(例えば、ハンドヘルドでの使用に適している)、既存の近位および遠位の圧力測定装置と一体化した、別々の電源を必要としない、信頼性の高い圧力信号を収集および配信するための装置、システム、および方法を改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態は、脈管における閉塞、特に、血管の狭窄の深刻度を評価するように構成される。いくつかの特定の実施形態において、本開示の装置、システム、および方法は、信頼性の高い圧力信号を収集し、他の装置へ無線で配信し、そのことを、既存の近位ならびに遠位圧力測定システムと一体化され、別々の電源を必要としない、小さくて小型の装置において行うように構成される。
【0010】
一実施形態において、脈管内圧力感知装置のためのインターフェースを提供する。本インターフェースは、遠位圧力感知装置から遠位圧力信号を受信するように構成される遠位入力と、血流力学システムによって利用可能な形式で遠位圧力信号を血流力学システムに出力するように構成される遠位出力と、近位圧力感知装置からの近位圧力信号を受信するように構成される近位入力と、血流力学システムによって利用可能な形式で近位圧力信号を血流力学システムに出力するように構成される近位出力と、遠位入力、遠位出力、近位入力、および近位出力に結合される無線トランシーバとを備え、無線トランシーバは、遠位圧力および近位圧力を、インターフェースから離して配置されるコンピューティングシステムに無線で送信するように構成され、コンピューティングシステムは、血流力学システムとは異なる。いくつかの実施形態において、遠位入力、遠位出力、近位入力、近位出力、および無線トランシーバは、ハウジングに固定される。さらに、いくつかの例において、遠位圧力感知装置は、圧力感知ガイドワイヤであり、近位圧力感知装置は、血流力学システムと共に使用するために構成される圧力感知カテーテルである。
【0011】
別の実施形態において、血管狭窄を評価するためのシステムを提供する。本システムは、人間の血管系に挿入するためのサイズおよび形状を有する遠位圧力感知装置と、人間の血管系に挿入するためのサイズおよび形状を有する近位圧力感知装置と、インターフェースとを備え、インターフェースは、遠位圧力感知装置から遠位圧力信号を受信するように構成される遠位入力と、近位圧力感知装置から近位圧力信号を受信するように構成される近位入力と、処理システムによって利用可能な形式で近位圧力信号を処理システムに出力するように構成される近位出力と、遠位入力、遠位出力、近位入力、および近位出力に結合される無線トランシーバとを含み、無線トランシーバは、遠位圧力および近位圧力を、インターフェースから離して配置されるコンピューティングシステムに無線で送信するように構成され、コンピューティングシステムは、処理システムとは異なる。いくつかの例において、処理システムは、血流力学システムである。さらに、いくつかの例において、遠位入力、遠位出力、近位入力、近位出力、および無線トランシーバは、ハウジングに固定される。いくつかの例において、遠位圧力感知装置は、圧力感知ガイドワイヤであり、近位圧力感知装置は、処理システムと共に使用するために構成される圧力感知カテーテルである。
【0012】
本開示のさらなる態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0013】
本開示の例示的な実施形態は、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態による、狭窄を有する脈管の概略的概念図である。
図2図1の切断線2−2に沿った、図1の脈管の一部の概略的部分断面概念図である。
図3】本開示の一実施形態による、脈管内に配置される器具を用いた、図1および図2の脈管の概略的部分断面概念図である。
図4】本開示の一実施形態による、システムの概略的概念図である。
図5】本開示の一実施形態による、図4のシステムのインターフェース装置の概略的概念図である。
図6】本開示の一実施形態による、図5のインターフェース装置の一部の概略的概念図である。
図7図6に類似しながらも、本開示の別の実施形態を例示した図5のインターフェース装置の一部の概略的概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の原理の理解を促す目的で、図面中に例示された実施形態について以下参照し、同一の物について説明するために特定の用語を用いることとする。しかし、本開示の範囲を限定することを意図していない点を理解されたい。説明する装置、システムおよび方法に対して、本開示の原理の任意の置き換え、およびさらなる変更、ならびに任意のさらなる応用も意図され、本開示が関連する技術分野の当業者が通常思いつくものとして、本開示の範囲内に含まれる。特に、一実施形態について説明する特徴、構成要素、および/またはステップは、本開示の他の実施形態について説明する特徴、構成要素、および/またはステップと組み合わせてもよいことを完全に意図している。しかしながら、簡潔にする目的から、これらの組合せについて別途何度も繰り返して説明することはしない。
【0016】
図1および図2を参照すると、本開示の一実施形態による、狭窄部を有する脈管100を、これらの図で示す。ここで、図1は、脈管100の概略的概念図であり、一方、図2は、図1の切断線2−2に沿った、脈管100の一部の概略的部分断面概念図である。より具体的に図1を参照すると、脈管100は、近位部102と遠位部104とを含む。内腔106は、近位部102および遠位部104の間で、脈管100の長さ方向に沿って延びている。その点に関し、内腔106は、流体の流れが脈管を通ることを可能にするように構成される。いくつかの例において、脈管100は、血管である。ある特定の場合では、脈管100は、冠状動脈である。そのような場合において、内腔106は、脈管100を通る血液の流れを促進するように構成される。
【0017】
図のように、脈管100は、近位部102および遠位部104の間で狭窄108を含む。狭窄108は、一般に、任意の閉塞、または他の構造的な配置物を表し、脈管100の内腔106を通る流体の流れに対する制限を結果的に引き起こす。本開示の実施形態は、多種多様な脈管の用途での使用に適し、そのような用途には、限定するものではないが、冠状、末梢(下肢、頸動脈、および神経脈管が含まれるが、これらに限定されない)、腎臓および/または静脈が含まれる。脈管100が血管である場合、狭窄108は、プラーク形成の結果である可能性があり、これらに限定するものではないが、線維性、線維脂質性(線維脂肪性)、壊死性コア、石灰密集(高密度カルシウム)、血液、新鮮な血栓、および成熟した血栓などのプラーク成分を含む。一般に、狭窄の構成物は、評価する脈管の種類に依存するであろう。その点において、本開示の概念は、流体の流れを結果的に減少させる任意の種類の閉塞要素または他の脈管を狭める要素に対して、仮想的に応用できることが理解される。
【0018】
より具体的に図2を参照すると、脈管100の内腔106は、ある直径110の狭窄108の近位部と、ある直径112の狭窄の遠位部とを有する。いくつかの例において、直径110および112は、互いに実質的に等しい。その点において、直径110および112は、内腔106の健全な部位を表すこと、または少なくとも狭窄108と比べると、健全な部位を表すことを意図している。したがって、内腔106のこれらのより健全な部位が実質的に一定の円柱状のプロファイルを有するものとして例示されており、その結果、内腔の高さまたは幅が直径と称されている。しかしながら、多くの場合、内腔106のこれらの部分は、プラーク形成、非対称的なプロファイル、および/または他の不規則性も有しているが、狭窄108よりも度合いが低く、したがって、円柱状プロファイルを有しないであろうことが理解される。そのような場合、直径110および112は、内腔の相対的サイズまたは断面積を表すものとして理解され、円状の断面プロファイルを表すものではない。
【0019】
図2に示すように、狭窄108は、脈管100の内腔106を狭めるプラーク形成114を含む。いくつかの例において、プラーク形成114は、均一または対称的なプロファイルを有さず、このような狭窄の血管造影評価の信頼性を損なっている。図示した実施形態において、プラーク形成114は、上部116と、相対する下部118とを含む。その点に関し、下部118は、上部116に比べて厚さが増しており、狭窄108の内腔近位部および遠位部に比べると、非対称的で不均一なプロファイルとなっている。図示するように、プラーク形成114は、内腔106を通って流体が流れるために利用可能な空間を減少させてしまう。特に、内腔106の断面積は、プラーク形成114によって減少する。上部116および下部118の間の最も狭い箇所では、内腔106が高さ120を有し、狭窄108の近位部および遠位部の直径110および112と比べて、サイズまたは断面積が減少していることを表している。狭窄108は、プラーク形成114を含み、本質的に例示的なものであり、いかなる方法でも、限定的なものと考えるべきであることに留意されたい。その点に関し、狭窄108は、他の例において内腔106を通る流体の流れを制限する他の形態および/または構成物を有することが理解される。脈管100は、図1および図2において、単一の狭窄108を有するものとして例示されており、以下の実施形態は、主に単一の狭窄の状況であるが、本明細書で説明する装置、システム、および方法は、複数の狭窄領域を有する脈管についても同様に応用できることが理解される。
【0020】
ここで図3を参照すると、脈管100は、本開示の一実施形態による、脈管内に配置された器具130および132を伴って示されている。通常は、器具130および132は、脈管内に配置するべきサイズおよび形状を有する任意の形態の装置、器具、またはプローブであってもよい。図示した実施形態において、器具130は、一般に、ガイドワイヤを表し、一方、器具132は、一般に、カテーテルを表す。その点に関し、器具130は、器具132の中心内腔を通って延在している。しかしながら、他の実施形態において、器具130および132は、他の形態をとる。その点に関し、器具130および132は、いくつかの実施形態では、類似の形態である。例えば、いくつかの例において、器具130および132の両方がガイドワイヤである。他の場合において、器具130および132の両方は、カテーテルである。他方で、器具130および132は、いくつかの実施形態において、異なる形態であり、図示した実施形態のように、一方の器具がカテーテルであり、他方がガイドワイヤである。さらに、いくつかの例において、図3で図示した実施形態で示すように、器具130および132は互いに同軸上に配置される。他の場合において、一方の器具は、他方の器具の内腔の中心から外れた位置を通って延在する。さらに他の場合において、器具130および132は、並んで延在する。いくつかの特定の実施形態において、少なくとも1つの器具は、迅速交換カテーテルなどの、迅速交換装置である。そのような実施形態において、他の器具は、迅速交換装置の導入および除去を容易にするように構成されたバディワイヤまたは他の装置である。またさらに、他の場合において、2つの別々の器具130および132の代わりとして、単一の器具を用いる。その点に関し、単一の器具は、いくつかの実施形態において、器具130および132の両方の機能(例えば、データ取得)の特徴を組み込む。
【0021】
器具130は、脈管100についての診断情報を得るように構成される。その点に関し、器具130は、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または、脈管についての診断情報を得るように構成される他の監視要素を含む。診断情報には、圧力、流れ(速度)、画像(超音波(例えば、IVUS)、OCT、熱および/または他の撮像技術を用いて得られた画像を含む)、温度、および/またはこれらの組合せの1つまたは複数を含む。1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または他の監視要素は、いくつかの例において、器具130の遠位部に隣接して配置される。その点に関し、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または他の監視要素は、いくつかの例において、器具130の遠位端134から30cm未満、10cm未満、5cm未満、3cm未満、2cm未満、および/または1cm未満の位置に配置される。いくつかの例において、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または他の監視要素のうち少なくとも1つは、器具130の遠位端に配置される。
【0022】
器具130は、脈管100内の圧力を監視するように構成される少なくとも1つの要素を含む。圧力監視要素は、ピエゾ抵抗圧力センサ、ピエゾ電気圧力センサ、容量圧力センサ、電磁気圧力センサ、流体カラム(流体カラムセンサと通信する流体カラムであって、流体カラムセンサは、器具とは分離しているか、および/または流体カラムの器具の近位部の一部に配置される)、光学的圧力センサ、および/またはこれらの組合せの形態をとることができる。いくつかの例において、圧力監視要素の1つまたは複数の特徴が、半導体および/または他の適切な製造技術を用いて製造された、固体状態の構成要素として実装される。適切な圧力監視要素を含む、市場で入手可能であるガイドワイヤ製品の例には、これらに限定されないが、PrimeWire PRESTIGE(登録商標)PLUS圧力ガイドワイヤ、PrimeWire PRESTIGE(登録商標)圧力ガイドワイヤ、PrimeWire (登録商標)圧力ガイドワイヤ、およびComboWire(登録商標)XT圧力・フローガイドワイヤがあり、これらは、それぞれ、Volcano Corporationから入手でき、さらにPressure Wire(商標)Certusガイドワイヤ、およびPressure Wire(商標)Aerisガイドワイヤがあり、これらは、それぞれSt.Jude Medical,Incから入手できる。一般的に、器具130は、遠位部の圧力の読み取りに影響する可能性がある、狭窄間での流体の流れに有意な影響を与えないように狭窄108を通して配置することができるサイズとなっている。したがって、いくつかの例において、器具130は、外径0.018インチ以下である。いくつかの実施形態において、器具130は、外径0.014インチ以下である。
【0023】
器具132も、脈管100についての診断情報を得るように構成される。いくつかの例において、器具132は、器具130と同じ診断情報を得るように構成される。他の場合において、器具132は、器具130とは異なる診断情報を得るように構成され、その情報は、追加の診断情報、より少ない診断情報、および/または代替診断情報を含むことができる。器具132によって得られる診断情報には、圧力、流れ(速度)、画像(超音波(例えば、IVUS)、OCT、熱および/または他の撮像技術を用いて得られた画像を含む)、温度、および/またはこれらの組合せの1つまたは複数を含む。器具132は、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または、この診断情報を得るように構成される他の監視要素を含む。その点に関し、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または他の監視要素は、いくつかの例において、器具132の遠位部に隣接して配置される。その点に関し、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または他の監視要素は、いくつかの例において、器具132の遠位端136から30cm未満、10cm未満、5cm未満、3cm未満、2cm未満、および/または1cm未満の位置に配置される。いくつかの例において、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または他の監視要素のうち少なくとも1つは、器具132の遠位端に配置される。
【0024】
器具130と同様に器具132も、脈管100内の圧力を監視するように構成される少なくとも1つの要素を含む。圧力監視要素は、ピエゾ抵抗圧力センサ、ピエゾ電気圧力センサ、容量圧力センサ、電磁気圧力センサ、流体カラム(流体カラムセンサと通信する流体カラムであって、流体カラムセンサは、器具とは分離しているか、および/または流体カラムの器具の近位部の一部に配置される)、光学的圧力センサ、および/またはこれらの組合せの形態をとることができる。いくつかの例において、圧力監視要素の1つまたは複数の特徴が、半導体および/または他の適切な製造技術を用いて製造された、固体状態の構成要素として実装される。いくつかの場合において、現在入手可能なカテーテル製品は、Siemens AXIOM Sensis、Mennen Horizon XVu、およびPhilips Xper IM Physiomonitoring 5の1つまたは複数と共に使用するのに適しており、圧力監視要素を含み、器具132のために使用することができる。
【0025】
本開示の態様によれば、器具130および132のうちの少なくとも一方は、狭窄108の遠位の脈管100内での圧力を監視するように構成され、器具130および132のうちの少なくとも一方は、狭窄の脈管近位部内の圧力を監視するように構成される。その点に関し、器具130、132は、脈管100内の圧力を監視するように構成される少なくとも1つの要素を配置することを可能にするようなサイズおよび形状であり、装置の構成に基づき、必要に応じて、狭窄108の近位部および/または遠位部に配置される。その点に関し、図3は、狭窄108の遠位部の圧力を測定するのに適切な位置138を示している。位置138は、いくつかの例において、狭窄108(図2に示す)の遠位端から、5cm未満、3cm未満、2cm未満、1cm未満、5mm未満、および/または2.5mm未満である。図3はまた、狭窄108の近位部での圧力を測定するための複数の適切な位置を示している。その点に関し、位置140、142、144、146、および148は、それぞれ、いくつかの例において、狭窄の近位部の圧力を監視するために適切な位置を表す。その点に関し、位置140、142、144、146、および148は、狭窄108の近位端から、20cm超から約5mm以下の範囲で距離を変動させて配置される。一般に、近位部圧力測定は、狭窄の近位端からは離隔している。したがって、いくつかの例において、近位圧力測定値は、狭窄の近位端から脈管の内腔の内径以上の距離で得られる。冠状動脈圧力測定の状況では、近位圧力測定値は、一般に、脈管の近位部内で、狭窄の近位部および大動脈の遠位部で得られる。しかしながら、冠状動脈圧力測定のいくつかの特定の場合において、近位圧力測定値は、大動脈内部の位置から得られる。他の場合において、近位圧力測定値は、冠状動脈の根本または心門で得られる。いくつかの例において、近位圧力測定値は大動脈圧と称される。
【0026】
ここで図4を参照すると、本開示の一実施形態による、システム150を、この図で示す。その点に関し、図4は、システム150の、概略的概念図である。図のように、システム150は、器具152を含む。その点に関し、いくつかの例において、器具152は、上述した器具130および132のうち少なくとも一方として使用するのに適している。したがって、いくつかの例において、器具152は、器具130および132に関して上述したものと類似する特徴を含む。図示した実施形態において、器具152は、遠位部154と、遠位部に隣接して位置するハウジング156とを有するガイドワイヤである。その点に関し、ハウジング156は、器具152の遠位端から約3cm離れている。ハウジング156は、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または、脈管についての診断情報を得るように構成される他の監視要素を収容するように構成される。図示した実施形態において、ハウジング156は、器具152が配置される内腔内の圧力を監視するために構成される圧力センサを少なくとも含む。シャフト158は、ハウジング156から近位部方向に延在している。トルク装置160は、シャフト158の近位部の上部に位置し、シャフト158に結合している。器具152の近位端部162は、コネクタ164に接続されている。ケーブル166はコネクタ164からコネクタ168へ伸びている。いくつかの例において、コネクタ168は、インターフェース170へプラグインするように構成される。その点に関し、インターフェース170は、いくつかの例において、患者インターフェースモジュール(PIM)であるが、他の場合では、データ信号をさまざまなシステムおよび装置に経路付けるハブとしてもよい。いくつかの例において、ケーブル166は無線接続で置き換えてもよい。その点に関し、インターフェース170は、無線データ伝送のためのアンテナ171を含む。器具152とインターフェース170との間ではさまざまな通信経路を用いることができ、そのような経路としては、物理接続(電気的、光学的、および/または流体的接続を含む)、無線接続、および/またはこれらの組合せを含むことが理解される。
【0027】
インターフェース170は、接続部174を介して、血流力学システム172に通信可能に結合される。いくつかの例において、血流力学システム172は、Siemens AXIOM Sensis、Mennen Horizon XVu、またはPhilips Xper IM Physiomonitoring 5である。コネクタ164、ケーブル166、コネクタ168、インターフェース170、および接続部174は、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または器具152の他の監視要素と、血流力学システム172との間の通信を共に促進する。しかしながら、この通信経路は、本質的に例示的なものであり、決して限定的なものと考えるべきでない。その点に関し、器具152とインターフェース170との間では任意の通信経路を用いることができ、そのような経路としては、物理接続(電気的、光学的、および/または流体的接続を含む)、無線接続、および/またはこれらの組合せを含むことが理解される。その点に関し、血流力学システム172は、無線データ伝送のためのアンテナ173を含む。同様に、インターフェース170と血流力学システム172との間では任意の通信経路を用いることができ、そのような経路としては、物理接続(電気的、光学的、および/または流体的接続を含む)、無線接続、および/またはこれらの組合せを含むことが理解される。したがって、器具152、インターフェース170、および血流力学システム172の間の通信を促進するために、図4には例示されていない追加の構成要素(例えば、コネクタ、ルータ、スイッチなど)を含めてもよいことが理解される。
【0028】
いくつかの実施形態において、接続部174は、無線接続である。いくつかの例において、接続部174は、ネットワーク(例えば、イントラネット、インターネット、電気通信ネットワーク、および/または他のネットワーク)を介した通信リンクを含む。その点に関し、いくつかの例において、血流力学システム172は、器具152が用いられている作動領域から離れて位置することが理解される。接続部174がネットワークを介した接続を含むようにさせると、血流力学システムが隣接する部屋、隣接する建物、または異なる州/国にあるかどうかは関係なく、器具152と遠隔血流力学システム172との間の通信を促進することができる。さらに、いくつかの例において、器具152と血流力学システム172との間の通信経路が、安全な接続であることが理解される。さらに、いくつかの例において、器具152と血流力学システム172との間の通信経路の1つまたは複数の部分を介して通信されるデータは、暗号化されることが理解される。
【0029】
システム150はまた、器具175を含む。その点に関し、いくつかの例において、器具175は、上述した器具130および132のうち少なくとも一方として使用するのに適している。したがって、いくつかの例において、器具175は、器具130および132に関して上述したものと類似する特徴を含む。図示した実施形態において、器具175は、カテーテル型装置である。その点に関し、器具175は、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、および/または、脈管についての診断情報を得るように構成される器具の遠位部に隣接する他の監視要素を含む。図示した実施形態において、器具175は、器具175が配置される内腔内の圧力を監視するために構成される圧力センサを含む。ある特定の実施形態において、器具175は、その長さ方向に沿って伸びる流体カラムを含む圧力感知カテーテルである。そのような実施形態において、止血弁は、カテーテルの流体カラムに流体的に結合され、マニフォールドは、止血弁に流体的に結合され、チューブは、必要に応じて、構成要素間で伸び、構成要素を流体的に結合する。その点に関し、カテーテルの流体カラムは、弁、マニフォールド、およびチューブを介して圧力センサと流体連通する。いくつかの例において、圧力センサは、血流力学システム172の一部であるか、または血流力学システム172と通信する。他の場合において、圧力センサは、器具175とインターフェース170との間に位置するか、またはインターフェース170と血流力学システム172との間に位置する、別々の構成要素である。器具175は、接続部177を介してインターフェース170と通信する。さらに、インターフェース170は、接続部178を介して、コンピューティングデバイス172に、通信可能に結合される。
【0030】
器具152とインターフェース170と血流力学システム172との間の接続と同様に、接続部177および178は、1つまたは複数のセンサ、トランスデューサ、ならびに/もしくは器具175の他の監視要素と、インターフェース170と、血流力学システム172との間の通信を促進する。しかしながら、この場合も、この通信経路は、本質的に例示的なものであり、決して限定的なものと考えるべきでない。その点に関し、器具175とインターフェース170との間では任意の通信経路を用いることができ、そのような経路としては、物理接続(電気的、光学的、および/または流体的接続を含む)、無線接続、および/またはこれらの組合せを含むことが理解される。同様に、インターフェース170と血流力学システム172との間では任意の通信経路を用いることができ、そのような経路としては、物理接続(電気的、光学的、および/または流体的接続を含む)、無線接続、および/またはこれらの組合せを含むことが理解される。したがって、器具175、インターフェース170、および血流力学システム172の間の通信を促進するために、図4には例示されていない追加の構成要素(例えば、コネクタ、ルータ、スイッチなど)を含めてもよいことが理解される。
【0031】
いくつかの実施形態において、接続部178は、無線接続である。いくつかの例において、接続部178は、ネットワーク(例えば、イントラネット、インターネット、電気通信ネットワーク、および/または他のネットワーク)を介した通信リンクを含む。その点に関し、いくつかの例において、血流力学システム172は、器具175が用いられている作動領域から離れて位置することが理解される。接続部178がネットワークを介した接続を含むようにさせると、コンピューティングデバイスが隣接する部屋、隣接する建物、または異なる州/国にあるかどうかは関係なく、器具175と遠隔血流力学システム172との間の通信を促進することができる。さらに、いくつかの例において、器具175と血流力学システム172との間の通信経路が、安全な接続であることが理解される。さらに、いくつかの例において、器具175と血流力学システム172との間の通信経路の1つまたは複数の部分を介して通信されるデータは、暗号化されることが理解される。
【0032】
本開示の他の実施形態では、システム150の1つまたは複数の構成要素は含まれず、異なる配置/順序で実装され、および/または代替装置/機構に置き換えられることが理解される。あるいは、追加の構成要素および/または装置はシステム内に実装してもよい。概して、器具152、175のいずれか、または両方と、血流力学システム172との間の通信経路は、中間ノードを有しなくてもよく(すなわち、直接接続)、器具とコンピューティングデバイスとの間に1つの中間ノードを有してもよく、または器具とコンピューティングデバイスとの間に複数の中間ノードを有してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、インターフェース170は、無線トランシーバを含み、圧力読取値を、器具152および175の一方もしくは両方から、コンピューティングデバイス180などの、システム150における他の装置に無線で送信するように構成される。例えば、インターフェース170は、遠位圧力および/もしくは遠位圧力波形、近位(すなわち、大動脈の)圧力および/もしくは近位圧力波形を、コンピューティングデバイス180に無線で送信することができる。一実施形態において、コンピューティングデバイス180は、ハードウェアおよびソフトウェアを有するコンピュータシステムであり、マルチモダリティ医療データを取得し、処理し、表示するが、他の実施形態において、コンピューティングデバイス180は、医療データを処理するための他の任意の種類のコンピューティングデバイスとしてもよい。例えば、いくつかの例において、コンピューティングデバイス180は、遠位圧力および/または遠位圧力波形を、近位圧力および/または近位圧力波形と共に使用して、FFRを算出し、iFRを算出し、近位圧力と遠位圧力との間の圧力差を算出し、患者に充血剤を投与することなく圧力差の算出を行うのに適切な診断窓を識別し、識別された診断窓の間の圧力差を算出し、遠位圧力ならびに/もしくは近位(すなわち、大動脈の)圧力、およびそれらの任意の組み合わせによって影響される何らかの他の医学的診断特性を算出する。
【0034】
コンピューティングデバイス180が、コンピュータワークステーションである実施形態において、本システムは、少なくとも、マイクロコントローラもしくは専用の中央処理装置(CPU)などのプロセッサ、ハードドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ならびに/もしくは光学リードオンリーメモリ(CD−ROM、DVD−ROM、Blu−Ray(登録商標))などの非一時的コンピュータ読取り可能ストレージ媒体、グラフィック処理装置(GPU)などのビデオコントローラ、およびイーサネット(登録商標)コントローラもしくは無線通信トランシーバ182などのネットワーク通信装置を含む。いくつかの例において、コンピューティングデバイス180は、携帯用(例えば、ローリングカートの、ハンドヘルドなど)である。さらに、いくつかの例において、コンピューティングデバイス180は、複数のコンピューティングデバイスを備えることが理解される。いくつかの例において、医学的システム150は、制御室を有するカテーテル検査室で作動し、コンピューティングデバイス180は、制御室またはカテーテル検査室自体に設置される。他の実施形態において、コンピューティングデバイス180は、医療施設内の中央情報技術領域、または外部領域(すなわち、クラウド)などの、他の場所に設置してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、インターフェース170自体は、プロセッサおよびランダムアクセスメモリを含み、本明細書で説明するデータ取得および分析と関連するステップを実行するようにプログラムされる。特に、いくつかの実施形態において、インターフェース170は、器具152ならびに175の一方もしくは両方からの圧力読取値を受信し、表示するように構成され、および/または器具152ならびに175から取得した圧力測定値に基づき、FFRまたは他の圧力差を算出(および、表示)するように構成される。したがって、本開示のデータ取得、データ処理、器具制御、および/または他の処理もしくは制御態様に関連する任意のステップは、参照により組み込まれたものを含み、コンピューティングデバイスによってアクセス可能な非一時的コンピュータ読取り可能媒体上に、またはその中に格納される対応する命令を使用して、インターフェース170によって実行することができる。いくつかの実施形態において、インターフェース170は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,585,660号に記載の1つまたは複数の処理および/もしくは信号調整機能および/もしくは関連する構成要素/回路を含む。
【0036】
インターフェース170が、無線トランシーバを含み、さらに器具152および175から取得した圧力測定値に基づき、FFR、iFR、または別の診断特性差異を算出するように構成される実施形態において、インターフェース170は、まず、診断特性を算出し、次いで、事前に算出した結果を、コンピューティングデバイス180および/または血流力学システム172などの1つまたは複数の他の装置に無線で送信することができる。
【0037】
図4に図示した実施形態において、インターフェース170は、ハウジング184を含む。ハウジング184は、インターフェース170の電子部品を含む。その点に関し、図5および図6に関して後述するように、電子部品の配置の例示的な実施形態は、インターフェース170に適している。いくつかの実施形態において、インターフェース170は、手で持てるようなサイズであり、および/または患者のベッドの上もしくはその付近に設置することができるようなサイズである(例えば、ベッドのレールまたはIVポールに取り付ける)。その点に関し、いくつかの例において、インターフェース170は、Volcano Corporationから入手できるSmartMap(登録商標)Pressure Instrumentと同様のサイズであり、ハウジングの寸法が、幅約15.75cm(6.3インチ)であり、高さ8.853cm(3.54インチ)、および奥行4.48cm(1.79インチ)である。一般に、インターフェース170は、幅約5cmから約25cm、高さ約5cmから約25cm、および奥行約1cmから約10cmである。いくつかの例において、インターフェース170はまた、インターフェースの利用を容易にするように構成される、ディスプレイおよび1つまたは複数の仮想的もしくは物理的ボタンを含む。
【0038】
ここで図5を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、インターフェース170の概略図を、この図で示す。その点に関し、インターフェース170は、遠位圧力感知部品191からの信号を受信するための入力コネクタ190を含む。したがって、図4に示した配置と同様の配置を有するいくつかの実施形態において、入力コネクタ190は、器具152と通信するコネクタ168を受容するように構成され、ここで、遠位圧力感知部品191は、器具152の圧力感知部品である。インターフェース170はまた、遠位圧力信号を血液システムまたは他のコンピューティングデバイスの遠位圧力入力193に送信するように構成される、出力コネクタ192を含む。したがって、図4に示した配置と同様の配置を有するいくつかの実施形態において、出力コネクタ192は、接続部174を介して、血流力学システム172の入力に遠位圧力信号を送信するように構成される。その点に関し、いくつかの実施形態において、遠位圧力信号は、血液システムの励起電圧に基づいて変調され、遠位圧力信号の低レベル出力を血液システムにもたらす。本文における低レベル出力とは、典型的に、5μV/Vexc/mmHgであり、ここで、Vexcは、励起電圧である。しかしながら、いくつかの例において、より大きいか、またはより低いレベルの出力が使用される。
【0039】
さらに、インターフェース170は、インターフェース170にもたらされる医療データを無線で送信するように構成される無線トランシーバ206を含む。無線トランシーバ206は、データを、インターフェース170から離れて配置される他の装置に無線で送信することを可能にする任意の種類の無線通信モジュールとすることができる。例えば、無線トランシーバ206は、IEEE802.11 Wi−Fi(登録商標)規格、Bluetooth規格(登録商標)、セルラー規格(すなわち、GSM(登録商標)、CDMA、HSDPA、LTEなど)、超広帯域(UWB)規格、無線FireWire規格、無線USB規格、ならびに/または任意の他のショートレンジ、ミディアムレンジ、および/もしくはロングレンジ無線規格を使用して、データを送信することができる。図5で図示した実施形態において、無線トランシーバ206は、遠位圧力信号を入力コネクタ190から受信し、後に、遠位圧力信号を出力コネクタ192に送る。遠位圧力信号を受信する場合、無線トランシーバ206は、FFR、iFR、または別の圧力ベース診断特性を算出するように構成されるコンピューティングシステムなどの1つまたは複数の遠隔装置に、遠位圧力信号を無線で送信することができる。無線トランシーバ206は、自身で遠位圧力信号を送信することができ、または遠位圧力信号を、近位圧力信号などの他の受信した医療データと組み合わせて、その信号を共に送信することができる。一例において、遠位圧力信号は、無線トランシーバ206に到達する前に、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)により、アナログ信号からデジタル信号に変換される。他の例において、無線トランシーバ206は、遠位圧力信号を送信する前に、アナログ−デジタル変換を、自ら実行する。
【0040】
医療データを無線で送信する複数の装置を有する医療施設では、そのような医療データは、その医療データをもたらした患者と密接に関連していなければならない。その点に関し、いくつかの実施形態において、無線トランシーバ206は、医療データを1つまたは複数の遠隔装置に無線で送信する前に、医療データを、識別情報(例えば、固有識別子、患者名、患者の社会保障番号、患者の誕生日、手続き場所、手続き時間、医者名など)と関連づけることができる。例えば、無線トランシーバ206は、医療データおよび関連づけられた識別情報との両方を含む複数のメッセージ(すなわち、パケット)に、受信した医療データを変換することができる。そして、複数のメッセージを無線送信することができる。医療データを、識別患者情報と関連づけるメッセージフォーマットのさらなる詳細は、2011年8月8日に出願された米国特許仮出願第61/473,591号「DISTRIBUTED MEDICAL SENSING SYSTEM AND METHOD」で説明され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、いくつかの例において、無線トランシーバ206は、安全な通信リンクを介して、何らかの圧力データを無線で送信するように構成される。例えば、無線トランシーバ206は、有線同等機密(Wired Equivalent Privacy:WEP)、Wi−Fi保護アクセス(WPA)、拡張認証プロトコル(EAP)、または別の種類の無線セキュリティで保護された無線ネットワークを介して送信することができる。さらに、無線トランシーバ206は、送信する前に、任意のデータを暗号化および/または圧縮してもよい。
【0041】
また、いくつかの実施形態において、出力コネクタ192は、血液システムまたは他の圧力測定システムからの環境発電を促進するために使用される。その点に関し、インターフェース170内に追加電源の必要性が生じることを排除するため、電力抽出回路220は、遠位圧力入力193と関連する血液システムの励起電圧から少量の電力を抽出する。電力抽出回路220は、抽出されたエネルギーを、インターフェース170の残りの回路を動作させるのに必要な電力に変換する。いくつかの例において、電力抽出回路220は、インターフェース170の構成要素に電力供給するために使用される唯一の電力源となるように構成される。励起信号はACとすることができ、正もしくは負のDCとすることができ、および/またはさまざまな波形および電圧を有することができるため、電力抽出回路220は、これらを受容することができ、制御された電源に変換することができなくてはならない。その点に関し、励起信号から抽出された電圧は、制御されたVcc電圧に変換され、入力電圧に依存するバックまたはブーストレギュレータを用いて低電力回路を作動させる。電流リミッタは、ピークでの血液システムの波形に対する歪みを最小にする。いくつかの例において、電流は、ほとんどの血液システムと適合できるように、AAMIトランスデューサリミットを下回るレベルに制限される。いくつかの例において、血液システムの励起電圧は、IEC60601−2−34規格を満たす。いくつかの代替実施形態において、電力抽出回路220は、インターフェースの構成要素に電力供給するために使用することができる、バッテリまたは他の再充電可能な電源装置とインターフェースするように構成される。いくつかの代替実施形態において、電力抽出回路220は、インターフェースの構成要素に電力を提供するために、壁のコンセントにプラグを差し込めるようなACアダプタとインターフェースするように構成される。
【0042】
インターフェース170はまた、近位圧力測定システムとインターフェースするための入力/出力コネクタ194および195を含む。いくつかの特定の実施形態において、入力/出力コネクタ194および195は、血液システムの圧力監視装置と共に作動するように構成される。一般に、入力/出力コネクタ194は、近位圧力感知部品196から信号を受信するように構成される。いくつかの例において、近位圧力感知部品196は、大動脈圧を検出するように構成されるトランスデューサである。したがって、図4に示した配置と類似の配置を有するいくつかの実施形態において、入力/出力コネクタ194は、器具175から信号を受信するように構成され、ここで、近位圧力感知部品196は、器具175と関連する圧力感知部品である。入力/出力コネクタ195はまた、近位圧力信号を血液システムまたは他のコンピューティングデバイスの近位圧力入力197に送信するように構成される。したがって、図4に示した配置と同様の配置を有するいくつかの実施形態において、入力/出力コネクタ195は、接続部178を介して、血流力学システム172の入力に近位圧力信号を送信するように構成される。
【0043】
図5の図示した実施形態において、導体200および202は、励起信号を近位圧力感知部品196へ搬送する。図のように、増幅器204は、導体200および202に電気的に接続される。いくつかの実施形態において、増幅器204は、演算増幅器である。いくつかの例において、増幅器204によって抽出された励起信号は、図4に示したコンピューティングデバイス180などの遠隔装置に無線で送信するために、無線トランシーバ206に送信される。
【0044】
図5の図示した実施形態において、導体208および210は、近位圧力信号を、近位圧力感知部品196から、血流力学システムの近位圧力入力197に戻す。その点に関し、図のように、増幅器212は、導体208および210に電気的に接続される。いくつかの実施形態において、増幅器212は、演算増幅器である。増幅器212は、近位圧力感知部品196からもたらされる近位圧力信号(すなわち、大動脈圧信号)を監視またはサンプリングするように構成される。次いで、サンプリングされた近位圧力信号は、図4に示したコンピューティングデバイス180などの遠隔装置に無線で送信するために、無線トランシーバ206に送信される。いくつかの例において、サンプリングされた近位圧力信号は、無線トランシーバ206にもたらされる前に、アナログ信号からデジタル信号に変換されるが、他の場合では、無線トランシーバ206は、自身で、アナログ−デジタル変換を実行する。したがって、導体200および202からサンプリングされた励起信号/電圧と、導体208および210からサンプリングされた近位圧力信号は、両方とも送信するために無線トランシーバ206にもたらされる。このような方法で、大動脈圧感知トランスデューサから受信した大動脈圧信号は、コンピューティングデバイスに直接送信することができ、コンピューティングデバイスでは、大動脈圧信号は、さまざまな計算で使用することができる。したがって、コンピューティングデバイスは、信頼できないデータをもたらす可能性のある、血流力学システムからの大動脈圧信号を受信することに依存する必要がない。
【0045】
上記のように、インターフェース170はまた、遠位圧力感知部品191から遠位圧力信号を受信し、処理するように構成される。その点に関し、いくつかの例において、無線トランシーバ206は、遠位圧力信号を近位圧力と関連づけ、その信号を共に遠隔装置に無線で送信するように構成され、遠隔装置では、圧力ベースの診断特性を算出することができる。いくつかの例において、単一遠位圧力信号および単一近位圧力信号は、それぞれ、2バイトのデータで表される。200Hzの例示的サンプリングレートを用いる場合、無線トランシーバ206は、ほとんどの無線通信規格のデータ送信レート限度内である、1秒ごとに約800バイトを送信することができる。他の例では、遠位圧力信号および近位圧力信号は、異なる量のデータによって表すことができ、サンプリングレートが異なっていてもよく、無線トランシーバ206に、秒ごとに、より多い、またはより少ない量のデータを送信することを要求する。上記のように、無線トランシーバ206は、識別情報を圧力信号と関連づけることができ、無線で送信されるデータの量を増やす。
【0046】
いくつかの例において、インターフェース170は、励起信号電圧(Vexc)および近位圧力感知部品の出力に基づき、近位圧力を算出するマイクロプロセッサを含み、算出された値は、送信するために、無線トランシーバ206にもたらされる。その点に関し、いくつかの例において、近位圧力感知部品の出力は、5uV/Vexc/mmHgのAAMI規格に適合する。AC励起信号の場合には、マイクロプロセッサは、励起波形と同期して近位圧力信号電圧を測定しなければならない。いくつかの例において、近位圧力信号は、上述した低レベル入力ではなく、インターフェース170によって、高レベル信号として受信される。例えば、近位圧力信号は、Volcano LoMap(Volcano Corporationから入手できる)からの、または外部の血液システムからの高レベル信号である。
【0047】
いくつかの実施形態において、入力/出力コネクタ194および195はまた、血液システムまたは他の圧力測定システムからの環境発電を促進するために使用される。その点に関し、インターフェース170内での追加電源の必要性を排除するために、電力抽出回路220は、導体200および202に接続されてもよく、近位圧力感知部品196用の血液システムの励起電圧から少量の電力を抽出するために用いられてもよく、無線トランシーバ206を含む、インターフェース170の残りの回路を作動させるために必要な電力に変換してもよい。上述したように、近位圧力感知側に接続された場合、電力抽出回路220は、依然として、コントローラ/コンピューティングデバイスから送信された励起信号から電力を抽出するように構成され、抽出された電力を使用して、インターフェース170の部品に電力を供給することができる。励起信号はACである可能性があり、正もしくは負のDCである可能性があり、および/またはさまざまな波形および電圧を有する可能性があるため、電力抽出回路220は、これらを受容することができ、近位圧力感知部品196で続く波形を歪ませることなく、制御された電源に変換することができなくてはならない。このことは、近位圧力感知部品196によって得られた圧力測定値に影響を与えることを避けるために必要である。励起信号から抽出された電圧は、制御されたVcc電圧に変換され、入力電圧に依存するバック(buck)またはブーストレギュレータを用いて低電力回路を作動させる。
【0048】
いくつかの例において、インターフェース170の信号調整部分216は、遠位圧力信号を受信する入力190と通信する。ここで図6を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、インターフェース170の一部の概略図を、この図で示す。特に、図6は、インターフェース170の信号調整部分216の例示的な実施形態の概略を表す。その点に関し、信号調整部分216は、遠位圧力測定装置から受信した信号を調整するように構成される。いくつかの例において、信号調整部分216は、遠位圧力測定装置の圧力センサ(RaおよびRb、これらは、集合的に遠位圧力感知部品191を構成する)に必要な励起および増幅を行う。
【0049】
装置コネクタにおいてEPROMを使用している遠位圧力測定装置によってもたらされる補正係数は、例えば、装置のためのゲイン、オフセット、および温度感度を調節するために読み込まれる。読取値は、ゲイン、オフセットおよび温度(TC)の補償をそれぞれ制御する、遠位圧力フロントエンド回路216内の3つのデジタル−アナログ変換器(DAC)224、226、および228を調節するために使用される。次いで、遠位圧力信号はアナログ−デジタル変換器230(ADC)を用いてデジタル化され、無線トランシーバ206に送信される。次いで、無線トランシーバ206は、遠位圧力を、さらなる計算のために、遠隔装置に無線で送信することができる。例えば、送信された遠位圧力ならびに/もしくは遠位圧力波形および近位圧力ならびに/もしくは近位圧力波形を無線で受信するコンピューティングデバイスは、それらを使用して、FFRを算出し、iFRを算出し、近位圧力と遠位圧力との間の圧力差を算出し、患者に充血剤を投与することなく圧力差の算出を行うのに適切な診断窓を識別し、識別された圧力窓の間の圧力差を計算し、および/またはそれらを組み合わせることができる。
【0050】
ここで図7を参照すると、本開示の別の例示的な実施形態による、インターフェース170の概略図を、この図で示す。特に、図7は、インターフェース170の信号調整部分216’の例示的な実施形態の概略を表す。その点に関し、信号調整部分216’は、遠位圧力測定装置から受信した信号を調整するように構成される。いくつかの例において、信号調整部分216’は、遠位圧力測定装置の圧力センサ(RaおよびRb、これらは、集合的に遠位圧力感知部品191を構成する)に必要な励起および増幅を行う。圧力センサRaおよびRbからの遠位圧力信号は、2チャンネルアナログ−デジタル変換器230(ADC)を用いてデジタル化され、送信するために無線トランシーバ206に送信される。インターフェース170がマイクロプロセッサを含む実施形態において、装置コネクタにおいてEPROM222を使用している遠位圧力測定装置によってもたらされる補正係数は、例えば、装置に対するゲイン、オフセット、および/または温度感度を調節するために、マイクロプロセッサによって読み込まれる。読取値は、マイクロプロセッサによって使用され、ゲイン、オフセット、および/または温度補償を制御する。いくつかの例において、マイクロプロセッサ内のファームウェアは、これらのパラメータを制御するために使用される。その場合、マイクロプロセッサは、さらなる計算のために、遠位圧力または遠位圧力波形を使用することができる。例えば、いくつかの例において、マイクロプロセッサは、遠位圧力および/または遠位圧力波形を、近位圧力および/または近位圧力波形と共に用いて、FFRを算出し、近位圧力と遠位圧力との間の圧力差を算出し、患者に充血剤を投与することなく圧力差の算出を行うために適切な診断窓を識別し、識別された診断窓の間の圧力差を算出し、および/またはそれらを組み合わせることができる。これらの計算のいずれも、1つまたは複数の遠隔装置への無線伝送のために、無線トランシーバ206にもたらすことができる。したがって、図7の信号調整部分216’は、図6の信号調整装置216と類似の機能を提供するが、3つのデジタル−アナログ変換器(DAC)224、226、および228を必要としない。
【0051】
再び図5を参照すると、インターフェース170はまた、遠位圧力信号を、血流力学システムの入力193に出力するように構成される。その点に関し、インターフェース170内の無線トランシーバ206または別々のマイクロプロセッサは、デジタル化された信号を、遠位出力回路218内のDACの追加セットにもたらす。このDACは、血液システムの励起を変調し、出力192を通じて血液システムへ、遠位圧力電圧の比例遠位波形を戻す。いくつかの実施形態において、戻されたスケーリング済み電圧は、AAMI規格に従った標準的な近位圧力のトランスデューサ(5uV/Vexc/mmHg)と同じである。出力段218は、血液システムの外部の励起を変調し、AAMI規格に従って、5μV/Vexc/mmHgにスケーリングされた、二重波形、またはDC電圧を、血液システムのための遠位圧力の大動脈トランスデューサにもたらす。したがって、出力192を通じて遠位圧力信号を出力し、さらに出力196を通じて近位圧力信号を出力することによって、その後、近位圧力および遠位圧力の両方を、血液システムの標準的な低レベル入力を用いた血液システムのディスプレイ上で観察することができる。
【0052】
上述したように、インターフェース170が無線トランシーバ206に統合されるか、または無線トランシーバ206とは別個のマイクロプロセッサを含むいくつかの場合において、インターフェースは、器具から受信した近位圧力データおよび遠位圧力データを用いて、脈管の評価、特に、脈管の狭窄の評価に有用となりうる情報を算出し、表示する。いくつかの例において、インターフェースは、FFRを算出および表示するように構成される。FFR測定の場合、マイクロプロセッサは、まず、大動脈圧に対して遠位圧力を正規化する。遠位圧力ワイヤが動脈性の損傷部位をまたぐと、遠位圧力の大動脈圧は、低下することになるであろう。2つの圧力間でのピーク差は、自動的に取り込まれるか、または手動ボタンを押下することで取り込まれ、FFRの計算が開始される。その結果生じる数値がディスプレイに表示される。ピーク差は、典型的には、アデノシンのような薬品を使用した際の充血の間、測定される。
【0053】
いくつかの実施形態において、インターフェース170は、外部のユーザ制御ボタンを含む。ある特定の実施形態において、ボタンの1つは、マイクロプロセッサに、近位圧力測定に対する遠位圧力測定の「正規化」を行わせる。これは、典型的には、患者内で互いに近いところに配置され、その結果、類似の圧力を受けることとなる、圧力感知部品191および196を用いて行われる。いくつかの例において、この補正は、損傷部位の近くで、および遠位圧力感知部品191が損傷部位を通り越して遠位方向に進む前に行われる。遠位圧力感知部品191を別のボタンの損傷部位と疑われる部位の範囲を超えて設置した後、マイクロプロセッサに、近位圧力に対する遠位圧力の比を算出させ、FFR値または圧力差をもたらす。その点に関し、いくつかの実装態様において、ボタンは、近位波形および遠位波形の観測に基づいて、充血の間、正確な瞬間に、ユーザによって押される。この場合、近位波形および遠位波形は、別々の装置(例えば、血液システムのディスプレイ)に表示することができ、またはインターフェース170のディスプレイに表示することができる。あるいは、FFRの算出のための適切な瞬間の決定は、マイクロプロセッサによって、自動的に行うことができる。その点に関し、いくつかの例において、FFRの算出は、遠位圧力と近位(大動脈)圧力との間のピーク差と一致するポイントで行われる。いくつかの実施形態において、圧力差は、以下で説明するように、充血剤を投与することなく、診断窓の間で、算出される。そのような実施形態において、圧力測定値および/または圧力差は、連続的に表示することができる。
【0054】
その点に関し、いくつかの例において、インターフェース170は、圧力測定値および/または圧力差を、ある評価技術に基づいて提供するように構成される。そのような技術については、以下の1つまたは複数の文献に記載されている:英国特許出願公開第2479340号(2010年3月10日出願、「METHOD AND APPARATUS FOR THE MEASUREMENT OF A FLUID FLOW RESTRICTION IN A VESSEL」)、英国特許出願第1100137.7号(2011年1月6日出願、「APPARATUS AND METHOD OF ASSESSING A NARROWING IN A FLUID FILLED TUBE」)、米国特許仮出願第61/525,739号(2011年8月20日出願、「DEVICES,SYSTEMS AND METHODS FOR ASSESSING A VESSEL」)、および米国特許仮出願第61/525,736号(2011年8月20日出願、「DEVICES,SYSTEMS,AND METHODS FOR VISUALLY DEPICTING A VESSEL AND EVALUATING TREATMENT OPTIONS」)。それぞれの文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
いくつかの実施形態において、インターフェース170は、患者に充血剤を投与する従来のFFR手順で、FFRを算出および表示するために使用される。他の実施形態では、インターフェース170は、FFR(すなわち、近位圧力に対する遠位圧力の比率)に類似の圧力差を算出するために使用されるが、充血剤を使用しない。その点に関し、そのような算出を行うための適切な診断窓は、有用な測定値を得るように、決定および/または識別されなければならない。本開示による充血剤を用いずに狭窄間での異なる圧力を評価するための診断窓は、近位圧力測定値、遠位圧力測定値、近位速度測定値、遠位速度測定値、ECG波形、ならびに/または他の識別可能および/もしくは測定可能な脈管性能の態様の1つまたは複数の特徴および/または構成要素に基づいて識別することができる。その点に関し、さまざまな信号処理および/またはコンピュータ技術を、近位圧力測定値、遠位圧力測定値、近位速度測定値、遠位速度測定値、ECG波形、ならびに/または他の識別可能および/もしくは測定可能な脈管性能の態様の1つまたは複数の特徴および/または構成要素に適用し、適切な診断窓を識別することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、診断窓の決定および/または圧力差の算出は、診断窓の識別および圧力差の算出のために、ほぼリアルタイムまたはライブで行われる。その点に関し、本開示の文脈の範囲において圧力差を「リアルタイム」または「ライブ」で算出することは、データ取得から10秒以内で発生する計算を包含するものとして理解する。しかしながら、「リアルタイム」または「ライブ」の計算は、データ取得から1秒以内に行われることが多いことが認識される。いくつかの例において、「リアルタイム」または「ライブ」での算出は、データ取得と並行して行われる。いくつかの例において、算出は、データ取得の間での遅延中に、プロセッサによって行われる。例えば、データが圧力感知装置から、5msごとに1msの間、取得される場合、データ取得の間の4msにおいて、プロセッサは算出を行うことができる。これらのタイミングは、単なる例示であること、さらに算出を取り巻くデータ取得速度、処理時間、および/または他のパラメータは変動することが理解される。他の実施形態では、圧力差算出は、データ取得から10秒以上後で行われる。例えば、いくつかの実施形態において、診断窓を識別し、および/または圧力差を算出するために使用されるデータは、後の分析のために保存される。
【0057】
いくつかの例において、診断窓は、速度変化(すなわち、dU)がゼロを中心に揺らぐ期間に対応する心周期の一部を識別することにより選択される。速度変化が比較的一定であり、さらにほぼゼロである(すなわち、流体の流れの速度が安定している)期間は、本開示により充血剤を用いることなく、脈管の狭窄をまたいだ圧力差を評価するのに適切な診断窓である。その点に関し、液体流動システムにおいて、別々に前向きまたは後ろ向きに発生した圧力は以下のように定義される:
【0058】
【数1】
および
【0059】
【数2】
。ここで、dPは圧力差であり、ρは脈管内での流体の密度であり、cは、波速であり、dUは流速の差である。しかしながら、流体の流速が実質的に一定である場合、dUはほぼゼロであり、別々に前向きまたは後ろ向きに発生した圧力は以下のように定義される:
【0060】
【数3】
および
【0061】
【数4】
。言い換えると、dUがほぼゼロである期間中、前向きまたは後ろ向きに発生した圧力は、圧力変化によってのみ定義される。
【0062】
したがって、そのような期間中、脈管内の狭窄の深刻度は、狭窄の近位部および遠位部で取得された圧力測定値に基づいて評価することができる。その点に関し、狭窄の遠位部の前向きおよび/または後ろ向きに発生した圧力と、狭窄の近位部の前向きおよび/または後ろ向きに発生した圧力とを比較することにより、狭窄の深刻度の評価を行うことができる。例えば、前向きに発生した圧力差は、
【0063】
【数5】
として算出することができる。一方で、後ろ向きに発生した圧力差は、
【0064】
【数6】
として算出することができる。
【0065】
いくつかの例において、冠状動脈の状況では、前向きに発生した圧力差を用いて狭窄を評価する。その点に関し、いくつかの例において、前向きに発生した圧力差は、近位部で発生して(すなわち、大動脈から発生して)前方へ分離した圧力波および/または大動脈の遠位部の脈管構造からの近位部で発生して前方に分離した圧力波の反射に基づいて算出される。他の例において、冠状動脈の状況で、後ろ向きに発生した圧力差を用いて狭窄を評価する。その点に関し、後ろ向きに発生した圧力差は、遠位部で発生して(すなわち、微小循環系から発生して)後方へ分離した圧力波および/または微小循環系の近位部の脈管構造からの遠位部で発生して後方に分離した圧力波の反射に基づいて算出される。
【0066】
さらに他の例において、圧力波は、器具または医療装置によって脈管内に導入される。その点に関し、器具または医療装置は、狭窄の深刻度を評価する際に使用する目的で、近位部で生じる前向きの圧力波、遠位部で生じる後ろ向きの圧力波、および/またはこれらの組み合わせを発生させるために使用される。例えば、いくつかの実施形態において、可動膜を有する器具を脈管内に配置する。次いで、器具の可動膜を作動させて、膜の移動を引き起こし、対応する圧力波を脈管の流体内に発生させる。器具の構成、脈管内の膜の位置、および/または脈管内での膜の向きに基づいて、生じた圧力波は、遠位方向、近位方向、および/または両方向に向かうであろう。次いで、生じた圧力波に基づく圧力測定値を分析し、狭窄の深刻度を決定することができる。
【0067】
速度変化が比較的一定で、ほぼゼロである期間を識別するのに用いることができるさまざまな信号処理技術があり、そのような処理には、速度測定における微分の一次導関数、二次導関数、および/または三次導関数を用いることを含む。例えば、速度の一次導関数が比較的一定であり、ほぼゼロである場合の心周期の期間を識別することにより、速度が比較的一定である期間の場所を突き止めることが可能となる。さらに、速度の二次導関数が比較的一定であり、ほぼゼロである場合の心周期の期間を識別することにより、加速度が比較的一定であり、ゼロに近いが、必ずしもゼロではない期間の場所を突き止めることが可能となる。
【0068】
適切な診断窓を選択するための特定の技術の例を上記してきたが、これらは例示的なものであり他の技術も用いることができることが理解される。その点に関し、診断窓は、波形の特徴または他のデータの特徴を識別し、識別された特徴に対する開始点を選択する(例えば、特徴の前、後、または同時)こと、波形の特徴または他のデータ特徴を識別し、識別された特徴に対する終了点を選択する(例えば、特徴の前、後、または同時)こと、波形の特徴または他のデータの特徴を識別し、識別された特徴に対する開始点および終了点を選択すること、開始点を識別し、その開始点に基づいて終了点を識別すること、および終了点を識別し、その終了点に基づいて開始点を識別することから選択される1つまたは複数の技術を用いて決定されることが理解される。適切な診断窓を選択するためのさらなる詳細な技術は、米国特許仮出願第61/525,739号(2011年8月20日出願、「DEVICES,SYSTEMS AND METHODS FOR ASSESSING A VESSEL」)で説明され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。その点に関し、インターフェース170は、参照によって組み込まれるものを含む、本開示で説明する技術に基づいて1つまたは複数の診断窓を決定するためにプログラムすることができ、および/または参照によって組み込まれるものを含む、本開示で説明する技術に基づいて1つまたは複数の診断窓を識別するように構成される1つまたは複数のハードウェア特徴を含むことができることが理解される。
【0069】
さらに、いくつかの例において、さまざまな理由のために、インターフェース170が受信した近位圧力測定値および遠位圧力測定値は、時間的に整列していない。例えば、データ取得の間、測定値を取得するのに使用する器具の間のハードウェア信号の扱いの違いのために、遠位圧力測定信号と近位圧力測定信号との間で遅延が生じることが多い。その点に関し、そのような違いは、物理的な原因(例えばケーブル長および/または電子機器の変化)から生じる可能性があり、および/または信号処理の違い(例えばフィルタリング技術)が原因となりうる。いくつかの例において、信号の間で結果的に生じる遅延は、約5msから約150msの間である。個々の心周期は約500msから約1000msの間続く可能性があり、診断窓は心周期の全長の内の小さな割合である可能性があるため、近位圧力測定信号と遠位圧力測定信号との間のさらに長い遅延は、心周期の所望の拡張期窓に対する圧力差を算出するために、圧力データの配列に重大な影響を及ぼす可能性がある。
【0070】
その結果、いくつかの例において、圧力測定を時間的に整列させるために、近位圧力および遠位圧力の一方を、遠位圧力および近位圧力の他方に対してシフトさせることが必要である。例えば、遠位圧力測定値または近位圧力測定値の一部は、それぞれ、近位圧力測定値または遠位圧力測定値の対応する部分と時間的に整列するようにシフトさせることができ、診断窓と一致する。いくつかの例において、診断窓と関連する遠位圧力測定値または近位圧力測定値の一部のみのシフトを用いる一方で、他の例において、選択された診断窓に対応する部分を識別する前に、すべてのまたは実質的にすべての近位圧力値および遠位圧力値を整列させる。
【0071】
いくつかの例において、近位圧力値および遠位圧力値のすべてまたはその一部を整列することは、ハードウェアのアプローチを用いて実現される。例えば、1つまたは複数のハードウェア構成要素は、近位圧力測定値、遠位圧力測定値および/または両方の通信経路内に位置し、受信した圧力信号を時間的に整列するために必要な何らかの遅延をもたらす。いくつかの例において、これらのハードウェア構成要素は、インターフェース170内に配置される。他の例において、近位圧力値および遠位圧力値のすべてまたは一部を整列することは、ソフトウェアのアプローチを用いて実現される。例えば、いくつかの実施形態において、相互相関関数またはマッチング技術を用いて心周期を整列させる。他の実施形態では、整列は、ECG R波または圧力ピークなどの、心周期の特定の識別可能な特徴に基づく。さらに、いくつかの実施形態において、整列は、ソフトウェアのユーザによって行われ、ここで、ユーザにとって心周期が視覚的に整列されるまで、近位圧力値および遠位圧力値のうち少なくとも一方の遅延時間に対して調節がなされる。信号を整列するためのさらなる技術は、信号取得時点での同期されたタイムスタンプを適用することである。さらに、いくつかの例において、ハードウェア、ソフトウェア、ユーザ、および/またはタイムスタンプアプローチの1つまたは複数の組み合わせを用いて、信号を整列させる。
【0072】
実装様式に関係なく、いくつかのアプローチが、近位圧力測定信号および遠位圧力測定信号を整列させるために利用可能である。いくつかの例において、各個々の遠位圧力測定値心周期を、個別にシフトさせ、対応する近位圧力測定値の心周期とマッチさせる。他の例において、特定のプロシージャに対する平均シフトは、プロシージャの開始時に算出され、プロシージャ間のすべてのその後の心周期は、その分だけシフトされる。この技術では、初期シフトが決定された後、実施するための処理電力をほとんど必要としないが、それでもなお、プロシージャの進行する期間にわたって、信号を比較的正確に整列させることができる。というのも、信号遅延の大半は、患者間またはプロシージャ内で変化しない固定発生源によるためである。さらに他の例において、新たな平均シフトは、プロシージャ中に近位圧力信号および遠位圧力信号が互いに正規化されるたびに算出される。その点に関し、プロシージャ中に1回または複数回、狭窄の遠位部の圧力を監視するために使用される感知素子は、狭窄の近位部の圧力を監視するために使用される感知素子の隣に配置され、その結果、両方の感知素子は同一の圧力読取値を有するであろう。圧力読取値に違いがある場合、近位圧力信号および遠位圧力信号は、互いに正規化される。その結果、後に得られる近位圧力測定値および遠位圧力測定値は、互いとさらに一致し、したがって、得られる圧力差の算出値は、より正確となる。
【0073】
整列された近位圧力測定値および遠位圧力測定値を用いて、診断窓のための圧力差を算出する。いくつかの例において、圧力差は、診断窓間での近位圧力測定値および遠位圧力測定値に対する平均値を用いて算出する。いくつかの例において、本開示の圧力差算出は、単一の心周期に対して行われる。他の例において、圧力差算出は、複数の心周期に対して行われる。その点に関し、圧力差の精度は、圧力差算出を複数の心周期にわたって行い、値を平均化させることで向上させることができ、および/または、分析技術を用いて、最も正確であるおよび/または最も正確でないと思われる1つまたは複数の算出値を識別することで向上させることができる。
【0074】
診断窓を識別し、圧力差を評価するための本開示の技術の利点の1つは、「ビートマッチング」の概念である。その点に関し、同じ心周期に対する近位波形および遠位波形は、単一の心周期を超えるスパンの平均または個々の算出を伴うことなく共に分析される。その結果、心周期における妨害要素(例えば急速収縮)は、近位部と遠位部の記録に等しく影響を及ぼす。その結果、現在のFFR技術に有害となる可能性のあるこれらの妨害要素が、本開示の技術に与える影響は軽微なものである。さらに、本開示のいくつかの実施形態において、心周期での妨害要素の影響および/またはデータ中の他の不規則性は、圧力差算出を監視してこれらの異常を検出し、影響を受けた心周期を自動的に除外することによって、さらに最小化され、および/または軽減される。
【0075】
特定の一実施形態において、圧力差が2つの連続する心周期で算出され、個々の圧力差の値が平均化される。次いで、第3の周期の圧力差を算出する。圧力差の平均値を、3つの周期を用いた平均圧力差と比較する。そのような平均値の間での差異が、所定の閾値未満である場合、算出値は、安定したものと考えられ、これ以上の算出は行わない。例えば、閾値0.001を用い、さらなる心周期を加えることによる平均圧力差値の変化が0.001未満である場合、算出は完了する。しかしながら、平均間での差異が、所定の閾値を超えた場合、第4の周期の圧力差を算出し、閾値との比較を行う。この処理を、心周期Nおよび心周期N+1の平均との間の差が所定の閾値未満になるまで繰り返す。圧力差の値が典型的には小数第2位の精度(例えば、0.80)まで表される場合、分析を完了するための閾値は、典型的には、次の心周期の追加が圧力差の値を変化させない程度に十分に小さくなるように選択される。例えば、いくつかの例において、閾値は約0.0001から約0.05の間になるように選択される。
【0076】
いくつかの例において、信頼ある算出のレベルについては、狭窄の度合いおよび/または最初に算出された圧力差の値により、異なる閾値を有する。その点に関し、狭窄の圧力差分析は、典型的には、もしある場合、どのような種類の治療法を施すべきかに関する決断を行うためのカットオフ値を基にする。したがって、いくつかの例において、これらのカットオフポイントについて、より正確であることが望ましい。言い換えると、算出された圧力差の値がカットオフに近い場合、より高度な信頼度が要求される。例えば、治療決定のためのカットオフが0.80であり、最初に算出された圧力差測定値が約0.75から約0.85である場合、最初に算出された圧力差測定値が、0.80のカットオフポイントから遠い値である0.40である場合より、さらに高度な信頼性が要求される。したがって、いくつかの例において、閾値は、最初に算出された圧力差測定値によって、少なくとも部分的に決定される。いくつかの例において、信頼レベルまたは算出された圧力差の安定性は、ソフトウェアインターフェースを介してユーザに視覚的に示される。
【0077】
本開示によれば、単一の心周期に基づいて圧力差を算出できるので、遠位圧力測定装置が脈管中を移動しながら、リアルタイムまたはライブの圧力差算出を行うことができる。したがって、いくつかの例において、本システムは、少なくとも2つのモードを含む。すなわち、遠位圧力測定装置を脈管内で動かしながら、圧力差算出を促進する単一心周期モード、およびさらに正確な圧力差算出を別々の部位で提供するマルチ心周期モードである。そのようなシステムの一実施形態において、遠位圧力測定装置が所望の位置に移動するまで、インターフェース170は、ライブの圧力差値を提供するように構成され、測定ボタンが選択され、および/またはいくつかの他の作動ステップが行われて、マルチ心周期モードの算出が開始される。
【0078】
当業者はまた、上述した装置、システム、および方法を、さまざまな方法で改変できることを認識するであろう。したがって、当業者は、本開示によって包含される実施形態は、上述した特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解するであろう。その点に関し、例示的な実施形態について図示し、説明してきたが、広い範囲の改変、変更、および置換を、上記開示では意図している。本開示の範囲から逸脱することなく、そのような変更を行うことができることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲については、広く解釈し、本開示に一致するように解釈するのが適切である。
本発明は一側面において以下の発明を包含する。
(発明1)
脈管内圧力感知装置のためのインターフェースであって、
遠位圧力感知装置から遠位圧力信号を受信するように構成される遠位入力と、
血流力学システムによって利用可能な形式で前記遠位圧力信号を前記血流力学システムに出力するように構成される遠位出力と、
近位圧力感知装置から近位圧力信号を受信するように構成される近位入力と、
前記血流力学システムによって利用可能な形式で前記近位圧力信号を前記血流力学システムに出力するように構成される近位出力と、
前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、および前記近位出力に結合される無線トランシーバと
を備え、前記無線トランシーバは、前記遠位圧力および前記近位圧力を、前記インターフェースから離して配置されるコンピューティングシステムに無線で送信するように構成され、前記コンピューティングシステムは、前記血流力学システムとは異なる、インターフェース。
(発明2)
前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、前記近位出力、および前記無線トランシーバは、ハウジングに固定される、発明1に記載のインターフェース。
(発明3)
前記ハウジングが、幅5cmから25cm、高さ5cmから25cm、および奥行1cmから10cmである、発明2に記載のインターフェース。
(発明4)
前記遠位圧力感知装置が、圧力感知ガイドワイヤである、発明3に記載のインターフェース。
(発明5)
前記近位圧力感知装置が、前記血流力学システムと共に使用するために構成される圧力感知カテーテルである、発明4に記載のインターフェース。
(発明6)
前記圧力感知カテーテルが、少なくとも4つのリードを介して前記血流力学システムと通信する、発明5に記載のインターフェース。
(発明7)
前記少なくとも4つのリードのうち第1の対のリードが、励起信号を前記圧力感知カテーテルに送信することと関連する、発明6に記載のインターフェース。
(発明8)
前記第1の対のリードと電気的に結合される第1の増幅器をさらに備え、前記第1の増幅器が、前記励起信号をサンプリングするように構成される、発明7に記載のインターフェース。
(発明9)
前記第1の増幅器は、前記サンプリングされた励起信号を前記無線トランシーバに送信する、発明8に記載のインターフェース。
(発明10)
前記少なくとも4つのリードのうち第2の対のリードが、前記近位圧力感知装置から前記血流力学システムに前記近位圧力信号を送信することと関連する、発明9に記載のインターフェース。
(発明11)
前記第2の対のリードと電気的に結合される第2の増幅器をさらに備え、前記第2の増幅器が、前記近位圧力信号をサンプリングするように構成される、発明10に記載のインターフェース。
(発明12)
前記第2の増幅器は、前記サンプリングされた近位圧力信号を前記無線トランシーバに送信する、発明11に記載のインターフェース。
(発明13)
前記血流力学システムから励起信号を受信する一対のリードに結合される電力抽出装置をさらに備え、前記電力抽出装置は、少なくとも前記無線トランシーバを動作させる際に使用するために前記励起信号から電力を抽出するように構成される、発明1に記載のインターフェース。
(発明14)
リードの前記対は、前記血流力学システムの近位圧力測定入力と関連する、発明13に記載のインターフェース。
(発明15)
リードの前記対は、前記血流力学システムの遠位圧力測定入力と関連する、発明13に記載のインターフェース。
(発明16)
前記無線トランシーバが、前記遠位圧力および前記近位圧力を伴う識別患者情報を、前記コンピューティングシステムに無線で送信するようにさらに構成される、発明1に記載のインターフェース。
(発明17)
血管狭窄を評価するためのシステムであって、前記システムは、
人間の血管系に挿入するためのサイズおよび形状を有する遠位圧力感知装置と、
人間の血管系に挿入するためのサイズおよび形状を有する近位圧力感知装置と、
インターフェースと
を備え、
前記インターフェースは、
前記遠位圧力感知装置から遠位圧力信号を受信するように構成される遠位入力と、
前記近位圧力感知装置から近位圧力信号を受信するように構成される近位入力と、
処理システムによって利用可能な形式で前記近位圧力信号を前記処理システムに出力するように構成される近位出力と、
前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、および前記近位出力に結合される無線トランシーバと
を備え、
前記無線トランシーバは、前記遠位圧力および前記近位圧力を、前記インターフェースから離して配置されるコンピューティングシステムに無線で送信するように構成され、
前記コンピューティングシステムは、前記処理システムとは異なる、
システム。
(発明18)
前記処理システムは、血流力学システムである、発明17に記載のシステム。
(発明19)
前記無線トランシーバが、IEEE802.11 Wi−Fi(登録商標)規格およびBluetooth(登録商標)規格の一方を使用して、前記遠位圧力および前記近位圧力を無線で送信するように構成される、発明17に記載のシステム。
(発明20)
前記インターフェースが、前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、および前記近位出力に結合されるプロセッサをさらに含み、前記プロセッサが、前記受信した遠位圧力信号と前記受信した近位圧力信号とに基づいて前記遠位圧力と前記近位圧力との間の圧力差を算出するように構成され、前記無線トランシーバが、前記圧力差を、前記インターフェースから離して配置される装置に無線で送信するようにさらに構成される、発明17に記載のシステム。
(発明21)
前記インターフェースが、処理システムによって利用可能な形式で前記遠位圧力信号を前記処理システムに出力するように構成される遠位出力をさらに備える、発明17に記載のシステム。
(発明22)
前記遠位入力、前記遠位出力、前記近位入力、前記近位出力、および前記無線トランシーバは、ハウジングに固定される、発明21に記載のシステム。
(発明23)
前記ハウジングが、幅5cmから25cm、高さ5cmから25cm、および奥行1cmから10cmである、発明22に記載のシステム。
(発明24)
前記遠位圧力感知装置が、圧力感知ガイドワイヤである、発明23に記載のシステム。
(発明25)
前記近位圧力感知装置が、前記処理システムと共に使用するために構成される圧力感知カテーテルである、発明24に記載のシステム。
(発明26)
前記圧力感知カテーテルが、少なくとも4つのリードを介して前記処理システムと通信する、発明25に記載のシステム。
(発明27)
前記少なくとも4つのリードのうち第1の対のリードが、励起信号を前記圧力感知カテーテルに送信することと関連する、発明26に記載のシステム。
(発明28)
前記第1の対のリードと電気的に結合される第1の増幅器をさらに備え、前記第1の増幅器が、前記励起信号をサンプリングするように構成される、発明27に記載のシステム。
(発明29)
前記第1の増幅器は、前記サンプリングされた励起信号を前記無線トランシーバに送信する、発明28に記載のシステム。
(発明30)
前記少なくとも4つのリードのうち第2の対のリードが、前記近位圧力感知装置から前記処理システムに前記近位圧力信号を送信することと関連する、発明29に記載のシステム。
(発明31)
前記第2の対のリードと電気的に結合される第2の増幅器をさらに備え、前記第2の増幅器が、前記近位圧力信号をサンプリングするように構成される、発明30に記載のシステム。
(発明32)
前記第2の増幅器は、前記サンプリングされた近位圧力信号を前記無線トランシーバに送信する、発明31に記載のシステム。
(発明33)
前記処理システムから励起信号を受信する一対のリードに結合される電力抽出装置をさらに備え、前記電力抽出装置は、前記ハウジング内に配置され、少なくとも前記無線トランシーバを動作させる際に使用するために前記励起信号から電力を抽出するように構成される、発明17に記載のシステム。
(発明34)
リードの前記対は、前記処理システムの近位圧力測定入力と関連する、発明33に記載のシステム。
(発明35)
リードの前記対は、前記処理システムの遠位圧力測定入力と関連する、発明33に記載のシステム。
(発明36)
前記無線トランシーバが、前記遠位圧力および前記近位圧力を伴う識別患者情報を、前記コンピューティングシステムに無線で送信するようにさらに構成される、発明17に記載のシステム。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7