(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は車両に搭載されるパワーユニット10の一例を示す概略図である。
図1に示すように、車体11に搭載されるパワーユニット10は、エンジンルーム12からフロアトンネル13にかけて縦置きに配置されている。パワーユニット10は、エンジン14と、これに連結されるトランスミッション15と、を有している。エンジン14の前部には、図示しないタイミングチェーン等を覆うチェーンカバー16が取り付けられている。このチェーンカバー16によって区画されるチェーン室17は、エンジン14の内部を構成する空間であり、後述するシリンダブロック20,21内のクランク室65に連通する空間である。また、エンジン14の下方には、過給機であるターボチャージャ18が設置されている。
【0010】
図2はエンジン14の構成を示す概略図である。
図2に示すように、エンジン14は、一方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック20と、他方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック21と、一対のシリンダブロック20,21に支持されるクランク軸22と、を有している。シリンダブロック20,21にはシリンダボア23が形成されており、シリンダボア23にはピストン24が収容されている。また、クランク軸22とピストン24とは、コネクティングロッド25を介して連結されている。
【0011】
それぞれのシリンダブロック20,21には、動弁機構を備えたシリンダヘッド26,27が取り付けられている。また、それぞれのシリンダヘッド26,27には、吸気ポート28および排気ポート29が形成されている。シリンダヘッド26,27の吸気ポート28には吸気系30が接続されており、シリンダヘッド26,27の排気ポート29には排気系31が接続されている。さらに、シリンダブロック20,21の下部には、オイルを貯留するオイルパン32が取り付けられている。
【0012】
吸気系30は、エアクリーナボックス40、第1吸気ダクト41、コンプレッサ42、第2吸気ダクト43、インタークーラ44、スロットルバルブ45、および吸気マニホールド46等によって構成される。
図2に矢印a1で示すように、エアクリーナボックス40を通過した吸入空気は、第1吸気ダクト41、コンプレッサ42、第2吸気ダクト43、インタークーラ44、スロットルバルブ45、および吸気マニホールド46を経て、シリンダヘッド26,27の吸気ポート28に供給される。また、第1吸気ダクト41には、吸入空気の流量を検出するエアフローメータ47が設けられている。
【0013】
排気系31は、排気マニホールド50、タービン51、排気管52等によって構成される。
図2に矢印a2で示すように、排気ポート29から排出される排気ガスは、排気マニホールド50、タービン51および排気管52を経て、外部に排出される。なお、排気管52には、図示しない触媒コンバータや消音器が接続されており、排気ガスは触媒コンバータや消音器を経て外部に排出される。
【0014】
[ブローバイガス供給装置]
本発明の一実施の形態であるエンジン14のブローバイガス供給装置60について説明する。
図3は本発明の一実施の形態であるブローバイガス供給装置60を示す概略図である。なお、
図3において、
図2に示す部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0015】
図3に示すように、エンジン14には、ブローバイガスを吸気系30に還流させて再燃焼させるブローバイガス供給装置60が設けられている。ブローバイガス供給装置60は、チェーンカバー16と第1吸気ダクト41とを接続する第1ブローバイ配管(ガス通路)61と、シリンダブロック21と吸気マニホールド46とを接続する第2ブローバイ配管62と、を備えている。また、第2ブローバイ配管62には、流路面積を調整するPCVバルブ63が設けられている。なお、PCVとは「Positive Crankcase Ventilation」を略記したものである。エンジン14の燃焼室64からクランク室65に漏れたブローバイガスは、第1ブローバイ配管61または第2ブローバイ配管62を介して吸気系30に供給される。
【0016】
例えば、スロットル開度が小さい場合には、吸気マニホールド46の内圧が低下して負圧になるため、
図2に矢印b1で示すように、クランク室65に漏れたブローバイガスは、PCVバルブ63および第2ブローバイ配管62を経て吸気マニホールド46に供給される。このとき、第1吸気ダクト41を流れる空気の一部は、第1ブローバイ配管61を経てチェーン室17に供給される。一方、スロットル開度が大きく、コンプレッサ42によって吸入空気が過給されている場合には、吸気マニホールド46の内圧が上昇して正圧になるため、PCVバルブ63が閉塞される。このとき、ブローバイガスは、クランク室65と第1吸気ダクト41との圧力バランスにより、
図2に矢印b2で示すように、第1ブローバイ配管61を経て第1吸気ダクト41に供給される。このブローバイガス供給装置60を用いることにより、ブローバイガスをエンジン14の燃焼室64に向けて供給することができ、ブローバイガスを燃焼させることができる。
【0017】
図3に示すように、コンプレッサ42の入力ポート42iには、入力ポート42iに吸引される吸入空気を案内する第1吸気ダクト(上流側通路)41が接続されている。また、コンプレッサ42の出力ポート42oには、出力ポート42oから吐出される吸入空気を案内する第2吸気ダクト(下流側通路)43が接続されている。さらに、第1吸気ダクト41と第2吸気ダクト43とは、バイパス配管(バイパス通路)70を介して接続されている。コンプレッサ42を迂回するバイパス配管70には、電磁制御バルブであるエアバイパスバルブ(バルブ機構)71が設けられている。なお、エアバイパスバルブ71は、連通ポート72を開閉する弁体73と、弁体73を移動させるソレノイド部74と、を有している。
【0018】
エアバイパスバルブ71は、弁体73を移動させて連通ポート72を開放する連通状態と、弁体73を移動させて連通ポート72を遮断する遮断状態と、に切り替えられる。エアバイパスバルブ71を連通状態に制御することにより、第2吸気ダクト43から第1吸気ダクト41に吸入空気を案内することができる。一方、エアバイパスバルブ71を遮断状態に制御することにより、第2吸気ダクト43から第1吸気ダクト41に向かう吸入空気を遮断することができる。また、エアバイパスバルブ71を連通状態に制御する際には、エアバイパスバルブ71の連通量つまり開度を連続的または段階的に調整することが可能である。このように、エアバイパスバルブ71の開度を調整することにより、第2吸気ダクト43から第1吸気ダクト41に戻される吸入空気の流量(以下、還流量と記載する。)を調整することが可能である。
【0019】
また、エアバイパスバルブ71を制御するため、ブローバイガス供給装置60にはコンピュータ等によって構成されるコントローラ(バルブ制御部)75が設けられている。コントローラ75には、エアフローメータ47に設けられる第1温度センサ76、吸気マニホールド46に設けられる第2温度センサ77、車両の走行速度を検出する車速センサ78、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ79、運転手によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ80等の各種センサが接続されている。コントローラ75は、各種センサから送信される各種信号に基づいて、エアバイパスバルブ71の開度を制御する。なお、第1温度センサ76は、第1吸気ダクト41に取り込まれた吸入空気の温度(以下、外気温度と記載する。)を検出する温度センサである。また、第2温度センサ77は、吸気マニホールド46に取り込まれた吸入空気の温度(以下、インマニ温度と記載する。)を検出する温度センサである。
【0020】
[エアバイパス制御(概要)]
前述したように、コンプレッサ42によって吸入空気を過給する場合には、吸気マニホールド46の内圧が上昇することから、ブローバイガスは第1ブローバイ配管61から第1吸気ダクト41に供給される。このように、ブローバイガスはコンプレッサ42の上流側に供給されるが、このブローバイガスには水分が含まれていることから、ブローバイガスに含まれる水分の凍結を抑制することが求められている。すなわち、ブローバイガス内の水分が凍結した場合には、コンプレッサ42に氷が吸い込まれてコンプレッサ42を損傷させる虞があるため、コンプレッサ42の上流側における氷の生成を抑制することが求められている。そこで、コントローラ75は、ブローバイガスに含まれる水分の凍結を抑制するため、エアバイパスバルブ71の開度を制御するエアバイパス制御を実行する。
【0021】
図4(a)はエアバイパスバルブ71を遮断状態に制御したときの吸入空気の流れを示す説明図であり、
図4(b)はエアバイパスバルブ71を連通状態に制御したときの吸入空気の流れを示す説明図である。
図4(a)に示すように、例えば、外気温度つまり吸入空気の温度が0℃を上回る状況では、第1吸気ダクト41においてブローバイガス内の水分が凍結しないため、エアバイパスバルブ71は遮断状態に制御される。一方、
図4(b)に示すように、例えば、外気温度つまり吸入空気の温度が0℃を下回る状況では、第1吸気ダクト41においてブローバイガス内の水分が凍結する虞があるため、エアバイパスバルブ71は連通状態に制御される。
【0022】
このように、エアバイパスバルブ71を連通状態に制御することにより、バイパス配管70を介して第2吸気ダクト43から第1吸気ダクト41に吸入空気の一部を戻すことができる。すなわち、第2吸気ダクト43を流れる吸入空気は、コンプレッサ42によって断熱圧縮された吸入空気であるため、第1吸気ダクト41を流れる吸入空気に比べて高温の空気である。このため、第2吸気ダクト43から第1吸気ダクト41に対して高温の吸入空気を還流させることにより、
図4(b)に範囲Xで示すように、コンプレッサ42の入力ポート42iに流入する吸入空気を暖めることができる。
【0023】
これにより、ブローバイガスが流入する吸入空気の温度を、氷点である0℃よりも高く維持することができるため、ブローバイガスに含まれる水分の凍結を防止することができ、氷の吸い込みに伴うコンプレッサ42の損傷を防止することができる。また、
図4(b)に示すように、第1ブローバイ配管61は、第1吸気ダクト41において、バイパス配管70の接続箇所70cよりも下流側に接続される。すなわち、第1吸気ダクト41に対する第1ブローバイ配管61の接続箇所61cは、第1吸気ダクト41に対するバイパス配管70の接続箇所70cよりも、入力ポート42iに近づけて設けられている。これにより、吸入空気に対してブローバイガスが流入する前に、流入先の吸入空気を暖めておくことができるため、ブローバイガスの水分の凍結を効果的に抑制することができる。
【0024】
[エアバイパス制御(フローチャート)]
以下、エアバイパス制御の実行手順をフローチャートに沿って説明する。
図5および
図6はエアバイパス制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図5および
図6においては、エアバイパスバルブ71を「ABV」と略記している。
【0025】
図5に示すように、ステップS10では、外気温度が0℃(氷点)以下であるか否かが判定される。外気温度が0℃を下回る場合には、ブローバイガス内の水分が凍結する虞があることから、ステップS11に進み、エアバイパスバルブ71の要制御期間であるか否かが判定される。ここで、
図7はエアバイパスバルブ71の要制御期間の一例を示す図である。
図7に示すように、エアバイパスバルブ71の要制御期間とは、エンジン始動後の所定期間(時刻t1〜t2)であり、ブローバイガスに含まれる水分量が増加する期間である。
図5に示すように、ステップS11において、エアバイパスバルブ71の要制御期間から外れていると判定された場合には、ブローバイガス内の水分量が少ないことから、ステップS12に進み、エアバイパスバルブ71の開度が0%に制御され、エアバイパスバルブ71が全閉つまり遮断状態に制御される。なお、ステップS10において、外気温度が0℃を上回る場合には、ブローバイガス内の水分が凍結する虞がないことから、同様にステップS12に進み、エアバイパスバルブ71が遮断状態に制御される。
【0026】
図7に示すように、エンジン14が始動されてから時刻t1に到達するまで、つまりエンジン14が始動されてから第1時間T1が経過するまでは、エンジン14の油温等が十分に上昇していないため、クランク室65内における凝縮水の蒸発量が少なくブローバイガスに含まれる水分量が少ない状況である。また、エンジン14が始動されてから時刻t1を経過した状況とは、エンジン14の油温等が上昇して凝縮水の蒸発量が多くなるため、ブローバイガスに含まれる水分量も多くなる状況である。さらに、エンジン14が始動されてから時刻t2を経過した状況、つまりエンジン14が始動されてから第1時間T1よりも長い第2時間T2を経過した状況とは、蒸発に伴って凝縮水自体が減少していることから、ブローバイガスに含まれる水分量も少なくなる状況である。このように、エアバイパスバルブ71の要制御期間においては、ブローバイガスに含まれる水分量が増加することから、ブローバイガス内の水分を凍結させないように、エアバイパスバルブ71が連通状態に制御される。
【0027】
図5に示すように、外気温度が0℃以下であり、かつエアバイパスバルブ71の要制御期間であると判定された場合には、ステップS13に進み、外気温度とインマニ温度とに基づいて、エアバイパスバルブ71の目標開度Taが設定される。ここで、
図8はエアバイパスバルブ71の目標開度Taの一例を示す線図である。
図8に示すように、外気温度が0℃を下回る場合には、外気温度が低いほどに目標開度Taが大きく設定される。また、
図8に矢印α1で示すように、インマニ温度が低い場合には目標開度Taが大きく設定される一方、矢印β1で示すように、インマニ温度が高い場合には目標開度Taが小さく設定される。
【0028】
すなわち、エアクリーナボックス40から第1吸気ダクト41に流入する吸入空気の温度が低い場合には、第1吸気ダクト41を流れる吸入空気の温度を0℃以上に暖め難いことから、吸入空気の還流量を増加させる必要がある。同様に、第2吸気ダクト43から第1吸気ダクト41に戻される吸入空気の温度が低い場合には、第1吸気ダクト41を流れる吸入空気の温度を0℃以上に暖め難いことから、吸入空気の還流量を増加させる必要がある。このため、外気温度が低いほどにエアバイパスバルブ71の開度つまり連通量は拡大され、インマニ温度が低いほどにエアバイパスバルブ71の開度つまり連通量は拡大される。
【0029】
なお、前述の説明では、インマニ温度つまり吸気マニホールド46を流れる吸入空気の温度に基づいて、コンプレッサ42によって断熱圧縮された吸入空気の温度、つまり第2吸気ダクト43を流れる吸入空気の温度を推定しているが、これに限られることはない。例えば、第2吸気ダクト43に温度センサを設けることで吸入空気の温度を直接的に検出し、この吸気温度に基づいて目標開度Taを設定しても良い。また、エンジン回転数や吸気マニホールド内圧等に基づいて、コンプレッサ42によって断熱圧縮された吸入空気の温度を推定し、この吸気温度に基づいて目標開度Taを設定しても良い。
【0030】
図5に示すように、ステップS14では、運転手の要求トルクに基づいてエアバイパスバルブ71の上限開度Amaxが設定される。ここで、
図9はエアバイパスバルブ71の上限開度Amaxの一例を示す図である。
図9に示すように、要求トルクとエンジン回転数とに基づいて、エアバイパスバルブ71の上限開度Amaxが設定されている。すなわち、エアバイパスバルブ71の開度を拡大させた場合には、吸入空気の還流量が増加して過給圧力が低下し、エンジントルクが低下することになる。このため、運転手の要求トルクを確保する観点から、エアバイパスバルブ71には上限開度Amaxが設定される。
図9に示すように、エンジン回転数がNe1であり、かつ要求トルクがTe1である場合には、エアバイパスバルブ71の上限開度Amaxとして上限開度M1(例えば60%)が設定される。また、
図9に矢印α2で示すように、アクセル開度の増加等によって要求トルクが上がった場合には、エアバイパスバルブ71の上限開度Amaxとして上限開度M1よりも小さな上限開度M2(例えば40%)が設定される。一方、
図9に矢印β2で示すように、アクセル開度の減少等によって要求トルクが下がった場合には、エアバイパスバルブ71の上限開度Amaxとして上限開度M1よりも大きな上限開度M3(例えば80%)が設定される。なお、コントローラ75は、車速やアクセル開度等に基づいて運転手の要求トルクを算出する機能を有している。
【0031】
図5に示すように、ステップS15では、エアバイパスバルブ71の目標開度Taが、上限開度Amax以下であるか否かが判定される。ステップS15において、目標開度Taが上限開度Amax以下であると判定された場合には、吸入空気を還流させた場合であっても要求トルクを確保することができるため、ステップS16に進み、目標開度Taに基づいてエアバイパスバルブ71の開度が制御される。一方、ステップS15において、目標開度Taが上限開度Amaxより大きいと判定された場合には、吸入空気の還流によって要求トルクが不足するため、ステップS17に進み、エアバイパスバルブ71が遮断状態に制御される。続いて、ステップS18では、エアバイパスバルブ71を遮断してから所定時間が経過したか否かが判定される。ステップS18において、エアバイパスバルブ71を遮断してから所定時間が経過していない場合には、エアバイパスバルブ71の遮断状態が継続される。このように、要求トルクが不足する虞がある場合には、所定時間に渡ってエアバイパスバルブ71が遮断されるため、エンジントルクを十分に確保することができ、車両のドライバビリティを向上させることができる。なお、エアバイパスバルブ71を遮断し続けた場合には、ブローバイガス内の水分を凍結させる虞があることから、エアバイパスバルブ71の遮断を許可する所定時間は、実験やシミュレーション等に基づいて氷を成長させない時間に設定される。
【0032】
ステップS18において、エアバイパスバルブ71を遮断してから所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS19に進み、エアバイパスバルブ71の目標開度Taが設定され、ステップS20に進み、エアバイパスバルブ71の上限開度Amaxが設定される。続くステップS21において、目標開度Taが上限開度Amax以下であると判定された場合、つまりアクセルペダルの踏み込み等が解除されて要求トルクが低下した場合には、ステップS16に進み、目標開度Taに基づいてエアバイパスバルブ71の開度が制御される。一方、ステップS21において、目標開度Taが上限開度Amaxを越えると判定された場合、つまりアクセルペダルの踏み込み等が継続されて要求トルクが維持される場合には、ブローバイガスに含まれる水分の凍結を抑制するため、ステップS22に進み、強制的に要求トルクを引き下げるトルク制限処理が実行される。
【0033】
続いて、トルク制限処理の実行手順について説明する。要求トルクを引き下げるトルク制限処理においては、ステップS30において、エアバイパスバルブ71の目標開度Taが設定される。ステップS31では、要求トルクから所定トルクを減算することで要求トルクが引き下げられ、続くステップS32では、引き下げられた要求トルクに基づいてエアバイパスバルブ71の上限開度Amaxが設定される。そして、ステップS33において、目標開度Taが上限開度Amax以下であると判定された場合には、ステップS34に進み、目標開度Taに基づいてエアバイパスバルブ71の開度が制御される。一方、ステップS33において、目標開度Taが上限開度Amaxを越えると判定された場合には、ステップS35に進み、上限開度Amaxに基づいてエアバイパスバルブ71の開度が制御される。このように、目標開度Taまたは上限開度Amaxに基づいて、エアバイパスバルブ71の開度が制御されると、ステップS36に進み、トルク制限処理の開始から所定時間が経過したか否かが判定される。ステップS36において、所定時間が経過していないと判定された場合には、ステップS30に戻り、前述したトルク制限処理が継続される。一方、ステップS36において、所定時間が経過したと判定された場合には、トルク制限処理を終了させてルーチンを抜ける。
【0034】
これまで説明したように、外気温度が0℃を下回る場合には、エアバイパスバルブ71が連通状態に制御される一方、外気温度が0℃を上回る場合には、エアバイパスバルブ71が遮断
状態に制御される。これにより、ブローバイガスが流入する吸入空気を暖めることができるため、ブローバイガスに含まれる水分の凍結を防止することができる。また、外気温度が0℃を下回る場合であっても、エアバイパスバルブ71の要制御期間から外れる場合には、エアバイパスバルブ71が遮断状態に制御される。つまり、エンジン14が始動されてから第1時間T1を経過するまでは、外気温度が0℃を下回る場合であってもエアバイパスバルブ71が遮断状態に制御される。また、エンジン14が始動されてから第2時間T2を経過した後には、外気温度が0℃を下回る場合であってもエアバイパスバルブ71が遮断状態に制御される。これにより、ブローバイガスに含まれる水分量が少ない場合には、エアバイパスバルブ71が遮断状態に制御されるため、エンジントルクを確保することができ、車両のドライバビリティを向上させることができる。
【0035】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、バルブ機構として開度を連続的または段階的に調整可能なエアバイパスバルブ71を用いているが、これに限られることはなく、バルブ機構としては連通状態と遮断状態とに切り替えられるバルブ機構であれば良い。また、前述の説明では、外気温度つまり第1吸気ダクト41内の吸気温度に基づいて目標開度Taを設定し、かつインマニ温度つまり第2吸気ダクト43内の吸気温度に基づいて目標開度Taを設定しているが、これに限られることはない。例えば、第1吸気ダクト41を流れる吸入空気の温度だけに基づいて目標開度Taを設定しても良く、第2吸気ダクト43を流れる吸入空気の温度だけに基づいて目標開度Taを設定しても良い。また、要制御期間であるか否かをエンジン14が始動されてからの時間で判断するようにしたが、エンジン14の水温や油温、あるいはそれらの組み合わせによって判断しても良い。
【0036】
前述の説明では、氷点つまり水の凝固点として0℃を挙げているが、これに限られることはなく、不純物等によってブローバイガスに含まれる水分の凝固点が0℃以外である場合には、氷点として0℃以外の温度を採用しても良い。また、図示する例では、エンジン14として水平対向エンジンを用いているが、これに限られることはなく、他の形式のエンジンであっても良い。また、前述の説明では、コンプレッサ42として、エンジン14の排気エネルギーによって駆動されるターボチャージャ18のコンプレッサを用いているが、これに限られることはなく、エンジン14の出力軸によって駆動されるスーパチャージャのコンプレッサを用いても良い。
【0037】
前述の説明では、第1ブローバイ配管61をチェーンカバー16に接続しているが、これに限られることはなく、ブローバイガスが流れる空間を区画する他の部材に第1ブローバイ配管61を接続しても良い。例えば、エンジン14の側部に取り付けられるロッカーカバー81に、第1ブローバイ配管61を接続しても良い。つまり、ロッカーカバー81によって区画されるロッカー室82は、チェーンカバー16によって区画されるチェーン室17と同様に、クランク室65に連通するとともにブローバイガスが流れる空間である。また、第1ブローバイ配管61をシリンダブロック20,21に接続しても良いことはいうまでもない。このように、クランク室65、チェーン室17およびロッカー室82は、何れもエンジン14の内部を構成する空間であり、ブローバイガスが流れる空間である。