(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物の全量に対して、グリセリン69.0〜94.8重量%と、ネイティブ型ジェランガム0.2〜1.0重量%と、水5.0〜30.0重量%とを含み、常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
前記熱可逆性組成物における、ネイティブ型ジェランガムの含有量が、0.5〜1.0重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
前記熱可逆性組成物における、グリセリンの含有量が、74.0〜86.5重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
前記熱可逆性組成物における、ネイティブ型ジェランガムと、水の割合が、1:25〜13:50である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気加熱型シガレットにおいて、エアロゾルの生成源となる組成物は、それを含む容器(ポッド)の移送中に、容器内から、その生成物に含んでもよいたばこ刻み等の粒状成分がばらけて散逸することがある。また、シガレットにおいて、先落ちと呼ばれる現象があることは前述したとおりである。
これらの現象を防ぐために、電気加熱シガレットやシガレットなどの喫煙物品に適用するための組成物について、その流動性を低くしたいという要求があった。さらに、電気加熱型シガレットに適用する場合、電気加熱によりエアロゾルを効率よく生成させるために、エアロゾルの生成源となる組成物の熱感応性をできるだけ高くしたいという要求があった。
さらに、エアロゾルの生成源となる組成物は、常温時は粘度が高く、流動しにくい一方で、温度が上昇した際には流動性が高まる組成物である、いわゆる熱可逆性の組成物であることが、その調製の際の利便性から望ましいという要求があった。
上記特許文献1に記載された蒸気形成媒体は、比熱が高く、また、その蒸気形成媒体は、常温でも比較的高い流動性を有するために、上記の課題を解決できない可能性がある。またシガレットの先落ちに関しては、特許文献2〜5に記載の発明とは異なり、たばこ刻に対して何らかの物質を添加することで、先落ちのような問題を解決する技術は知られていなかった。
【0006】
このようなことから、本発明では、常温時には粘度が高く流動性が小さい一方で、温度を上昇させると流動化し、加熱によって容易にエアロゾル化し、良好な喫味を与える喫煙物品用のゲル状の熱可逆性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討した結果、ネイティブ型ジェランガム0.20〜1.00重量%と、水5.0〜30.0重量%とグリセリン69.0〜94.8重量%とを含む、常温でゲル状の熱可逆性組成物が、上記の課題を解決できることが見出された。
通常、多くの多糖類が水を加えることによりゲル化することは知られている。しかしながら系中に水よりも多いグリセリンが存在する場合、水分量が少ないほどゲル化した組成物を得ることは困難であった。しかし前記の通り、グリセリンと、ネイティブ型ジェランガムと、水の含有量を調整することで、特異的に少ない水含有量の、常温でゲル状の熱可逆性組成物を得ることができた。そして、この組成物をシガレットまたは電気加熱型のシガレット用具に適用可能であることが見出された。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 組成物の全量に対して、グリセリン69.0〜94.8重量%と、ネイティブ型ジェランガム0.2〜1.0重量%と、水5.0〜30.0重量%とを含み、常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
[2] 前記熱可逆性組成物が、高速撹拌混合することにより得られるものである、[1]に記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
[3] 前記熱可逆性組成物における、水の含有量が、13.0〜25.0重量%である、[1]または[2]に記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
[4] 前記熱可逆性組成物における、ネイティブ型ジェランガムの含有量が、0.5〜1.0重量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
[5] 前記熱可逆性組成物における、グリセリンの含有量が、74.0〜86.5重量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
[6] 前記熱可逆性組成物における、ネイティブ型ジェランガムと、水の割合が、1:25〜13:50である、[1]〜[5]のいずれかに記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物を含む、電気加熱型たばこ用具。
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載の常温でゲル状の喫煙物品用の熱可逆性組成物を含む、シガレット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可逆性組成物は常温ではゲル状であり流動性が低いので、当該組成物をシガレットのたばこ刻に適用した後、または電気加熱型たばこ用具内のポッドに収容された後は、液体を添加した場合よりも強固に刻みを保持することが可能となり、当該組成物が流動してたばこ刻がこぼれ落ちたり(先落ち)せず、またはポッド内のたばこ刻が散逸したりすることがない。また加熱すると熱に感応しゾル状になるため、刻みへの添加時の性状の調整は容易である。さらに本発明の組成物は、水分を多く含むゲル状組成物よりも加熱された際の熱感応性が高いため、少ない熱量でも効率的にエアロゾルを生成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0012】
本発明の喫煙物品用の熱可逆性組成物には、グリセリンと、ネイティブ型のジェランガムと、水とを含有する。
グリセリンは、水を全く含まないものを用いることができるが、30重量%までの水を含んでいるものを用いてもよい。
本発明の熱可逆性組成物における水の含有量は、グリセリンに含まれる水とは別に水を含有させる場合には、それらの水の合計量を水の含有量とする。
本発明の熱可逆性組成物におけるグリセリンの含有量は、本発明の熱可逆性組成物が常温でゲル状であることを確保するために、69.0〜94.8重量%であり、好ましくは、74.0〜86.5重量%である。
【0013】
本発明の熱可逆性組成物には、ネイティブ型のジェランガムが含まれる。ジェランガムは、市販品として、ネイティブ型と脱アシル型のものが知られているが、本発明ではネイティブ型のものを用いる。ネイティブ型のものを用いることで、組成物が常温でゲル状になり、また熱可逆性が得られる。さらに、ネイティブ型ジェランガムを用いることで、熱可逆性組成物を電気加熱型たばこ用具に用いた場合に良好な喫味が得られる。
以降の実施例の結果から明らかなように、組成物に対してこのような性質を付与できるのは、ネイティブ型ジェランガムのみである。
ネイティブ型ジェランガムは、1−3結合したグリコ―スに、アセチル基とグリセリル基が存在するものである。本発明で用いるネイティブ型ジェランガムの平均分子量のグレードは、100,000〜700,000のものを挙げることができる。
本発明の熱可逆性組成物におけるネイティブ型のジェランガムの含有量は、0.2〜1.0重量%である態様を挙げることができ、好ましくは、0.50〜1.00重量%である。
本発明の熱可逆性組成物におけるネイティブ型ジェランガムの含有量の上限値と下限値は、本発明の熱可逆性組成物について、常温で好適な粘度を有するゲル状であることを確保するために設定されるものである。
【0014】
本発明の熱可逆性組成物には、水が含まれている。本発明の熱可逆性組成物における水の含有量は、5.0〜30.0重量%である態様を挙げることができ、好ましくは、13.0〜25.0重量%である。水の含有量の下限値は、本発明の熱可逆性組成物が常温でゲル状を有するために設定されるものであり、一方で水の含有量の上限値は、後述するように、本発明の熱可逆性組成物の熱感応性を所望の範囲に設定する観点から設定されるものである。
【0015】
前記組成物における、ネイティブ型ジェランガムと、水の重量割合は、1:25〜13:50であることが、熱可逆性組成物の粘度を所望のものにする観点から好ましい。
【0016】
なお、本発明において、「熱可逆性」とは、組成物が温度によってゾル−ゲル転移を起こす性質のことをいう。具体的には、70℃以上の温度ではゾル状を示し、60℃以下ではゲル状を示す。
また、本発明において、「ゲル状」は、ゾルとは異なり流動性を失った状態であり、具体的には、組成物をバイアル瓶のような容器に収容した後、その容器を横倒しにしても、横倒し後に下側となる容器の側面全体にまで組成物が拡散しない状態のものであり、その状態は目視によって確認することができる。
【0017】
本発明の熱可逆性組成物の25℃(常温)における粘度は、以下の試験により測定される。
<試験条件>
回転式粘度計HAKKE RheoStress1(Thermo Fisher Scientific社)を用い、線形変形領域における粘弾性測定時に得られた複素粘度を測定する。測定条件は下記の通りである。
[測定条件]
一定応力:5Pa
一定速度:1Hz
試料注入量:3mL
測定温度範囲:80℃〜25℃
測定方法としては、試料を80℃まで加温した後トレーに3mL注入し、接触子を下げシリコンオイルで密閉系にする。トレー温度が80℃に達したら測定を開始し、25℃までの各温度下での粘度を測定する。
本発明の熱可逆性組成物の25℃における粘度は、2000mPa・s以上であることが好ましく、一方、90000mPa・s以下であることが好ましい。
熱可逆性組成物の25℃における粘度が2000mPa・s以上であると、喫煙物品に適用した際にたばこ刻み等を十分に保持する能力を有する。シガレットに適用した場合には、先落ちを防ぐことができ、電気加熱型たばこ用具に適用した場合にも、たばこ刻みのこぼれを防ぐことができる。
一方で、熱可逆性組成物の25℃における粘度が90000mPa・s以下であることで、本発明の熱可逆性組成物が、必要以上に強固なゲルとなることを防ぎ、製造装置の破損等を防ぐことができる。
【0018】
本発明の熱可逆性組成物の熱感応性は、後述するように165℃の熱を加えた際の組成物の温度上昇速度によって判断する。組成物がゲル化することにより、電気加熱型たばこ用具内に配置された、本発明の熱可逆性組成物を収容する容器が電子ヒーターで加熱されると、わずかな熱量でも効率よく熱可逆性組成物の温度が上昇する。これにより、容器内の熱可逆性組成物のグリセリンが、効率良くエアロゾル化する。エアロゾル化したグリセリンは、熱可逆性組成物に含まれる任意の成分に由来する成分、例えば後述するたばこ刻みを含む場合はたばこ刻みに含まれる香喫味成分も同時に含む。電気加熱型たばこ用具の使用時には、発生したエアロゾルが使用者によって吸引される。しかしながら、熱可逆性組成物の含水量が多い場合には、含まれる水分の熱に対する感応性の低さが影響し、組成物自体の熱感応性も低下する。
【0019】
本明細書で用いられる「熱感応性」は、温度の変化に応じて組成物自体の温度を変化させる度合に関する性質である。熱感応性が高いとは、周囲の温度変化に応じて、その組成物自体の温度も素早く変化することをいう。
本発明の熱可逆性組成物の「熱感応性」は、以下の方法によって測定できる。
電気加熱型たばこ用具に収容されるアルミ製のポッド(容積0.47cm
3)に、対象とするゲル状の熱可逆性組成物10重量部と、たばこ刻み59重量部と、プロピレングリコール31重量部とを混合して調製したたばこ刻みを含む組成物を入れ、先端が円錐状の治具を用いて圧力をかけ、ポッドに調製したたばこ刻みを含む組成物を押し込む。
電気加熱型たばこ用具(PLOOM)のスイッチを入れ、ポッドを加熱する部位の温度が165℃に達したことが示された後(過熱状態ランプが点灯に変わることによって示される)、前記で準備したポッドを電気加熱型たばこ用具に収容し、ポッドの中で調製したたばこ刻みを含む組成物が最も押し込まれた部分に熱電対を設置し、調製したたばこ刻を含む組成物の温度が160℃に到達するまでの時間(秒)を測定することで当該組成物の温度(品温)が160℃に到達するまでの時間(秒)を測定する。
この秒数が短いほど、組成物の熱感応性が高いと言える。
本発明の熱可逆性組成物の熱感応性は、180秒以下であることが、組成物がエアロゾルに変化するまでの時間が短くなることから好ましい。また、本発明の熱可逆性組成物の熱感応性は、160秒以下であることがより好ましい。
この熱感応性は、本発明の熱可逆性組成物における水の含有量を調整することで調整できる。
【0020】
本発明の熱可逆性組成物の粘度については、例えば水とネイティブ型ジェランガムの含有量を調整することによって調整できる。
具体的には、ネイティブ型ジェランガムの量を多くしたり、一定以上のネイティブ型ジェランガムに対する水の含有量を高くしたりすることが挙げられる。
【0021】
本発明の熱可逆性組成物は、上記の材料を、高速撹拌混合することにより得ることが好ましい。
高速撹拌混合とは、高速撹拌ミキサーのような、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターと、の間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高分散作用が働くミキサーを用いて混合することを意味する。
このような高分散作用を生み出すためには、装置の大きさにもよるが、ローターの回転数を3000〜5000rpmに設定する態様を挙げることができる。ローターの回転数は好ましくは3500〜4500rpmを挙げることができ、3800〜4200rpmとすることがより好ましい。このような高速撹拌ミキサーは、市販品を使用することができ、例えば、ホモミキサーが挙げられる。
高速撹拌混合の際の温度は、50〜70℃で行い、混合時間は10〜60分の態様を挙げることができ、好ましくは55〜65℃で行い、混合時間は10〜20分程度を挙げることができる。
せん断混合を行うための装置としては、ホモミキサーを挙げることができる。ホモミキサーとしては、例えばPRIMIX社製(超高速マルチ攪拌システム ラボ・リューション)を挙げることができる。
本発明では、上記のような高速撹拌混合を行って熱可逆性組成物を調製した場合には、組成物に含まれる水にネイティブ型ジェランガムが良好に溶解し、組成物の粘度を所望のものにできるとともに、組成物の熱感応性が向上する。グリセリンとネイティブ型ジェランガムと水とを単純に分散しただけでは、このような良好な溶解は起こらず、組成物について所望の熱感応性や粘度を得ることが難しい。
【0022】
高速撹拌の工程の順序としては、グリセリンと、ネイティブ型ジェランガムと、水とを予め混合し、上記の高速撹拌混合を行ってもよいし、予め水を含むグリセリンと、ネイティブ型ジェランガムとを上記の高速撹拌混合に供してもよい。
【0023】
本発明の熱可逆性組成物は、電気加熱型たばこ用具に適用することができる。
電気加熱型たばこ用具は、商品名:PLOOMとして市販されており、吸い口部、前記熱可逆性組成物が収容されるポッドと電子ヒーターを含む本体部、電子ヒーターの温度を調節するための温度調節器等を含む。具体的な構成として、特許文献1に記載のものを用いることができる。
本発明の熱可逆性組成物は、上記のポッドに収容されるものである。本発明の熱可逆性組成物が収容されるポッドの材質は特に制限されず、アルミなどの熱伝導性の高い金属を挙げることができる。
本発明の熱可逆性組成物は、上記の電気加熱型たばこ用具に適用される際には、たばこ刻みと共に、上記のポッドに収容される。
たばこ刻みに用いられるたばこ種は、特に限定されるものではなく、例えばニコチアナ属であり、ニコチアナタバカムの黄色種・バーレー種、ニコチアナルスチカのブラジリア種などを挙げることができる。
たばこ刻みの大きさについても特に制限はなく、通常の電気加熱型たばこ用具に用いられるたばこ刻みの大きさを採用することができる。
本発明の熱可逆性組成物と、たばこ刻みとの重量割合は、たばこ刻みの乾燥重量に対して、熱可逆性組成物を、3:2〜9:1程度の割合で含有させる態様を挙げることができる。
【0024】
本発明の熱可逆性組成物には、他の成分を含有させてもよい。例えば、ネイティブ型ジェランガム以外の増粘多糖類を含ませてもよい。
【0025】
本発明の熱可逆性組成物は、その熱感応性や粘度の特性が、電気加熱型たばこ用具内に配置されるエアロゾルの生成源となる組成物として特に適している。より具体的には、本発明の熱可逆性組成物に、たばこ刻みを含有させた場合には、たばこ刻みに含まれる香喫味成分を含むエアロゾルを生成するための組成物として適している。
【0026】
また、本発明の熱可逆性組成物は、シガレットを構成するたばこロッドのたばこ刻みに適用されてもよい。本発明の熱可逆性組成物が適用されてもよいシガレットとしては公知のシガレットを挙げることができ、フィルター付でもフィルター無しのものでもよい。この際、用いるたばこ刻みの種類については特に制限されることなく、公知のものを用いることができ、例えば上記で説明した電気加熱型たばこ用具に用いられるものと同じものを用いることができる。
たばこ刻みに適用する場合の、本発明の熱可逆性組成物の添加量は、20〜60mg/シガレットである態様を挙げることができる。
また、本発明の熱可逆性組成物が適用される、たばこ刻みから構成されるたばこロッドの部位としては特に制限されることはなく、たばこロッドの燃焼する側の先端部に添加する態様や、たばこロッドの全体に添加する態様も挙げることができる。
これにより、先落ちを防ぐことができる。
本発明の熱可逆性組成物を適用すること以外は、公知のシガレットの製造方法を用いることでシガレットを作製することができる。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0028】
<実施例1>
水18重量部を含むグリセリン94.5重量部、ネイティブ型ジェランガム0.5重量部を、ホモミキサーPRIMIX社製(超高速マルチ攪拌システム ラボ・リューション)に投入し、80℃、4000rpmで15分間高速撹拌混合した。
<比較例1〜10>
多糖類を変更する他は実施例1と同様の手順で比較例1〜10の組成物を得た。その性状や喫味を表1に示す。
まず、実施例及び比較例で得られた組成物の状態を目視により確認した。
目視でゲル化しているものを「○」とし、ゲル化していないものを「×」として、表1の「ゲル化有無」の欄にまとめた。
その結果、複数種の多糖類の中で、ゲル状組成物が得られたのは、ネイティブ型ジェランガムを用いた実施例1と、カラギナンを用いた比較例6のみであった。
また、ゲル化していた実施例1と比較例6の組成物については、温度を変化させて、ゾルゲル転移が起こるかどうかを確認した。実施例1(ネイティブ型ジェランガムを含む)と比較例6(カラギナンを含む)のゲル状組成物は共に80℃ではゾル状を示し、65℃近辺でのゾルゲル転移を示したため、熱可逆性を有していた。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例1と比較例6の組成物について、喫味評価を行ったところ、良好な喫味が得られたのは実施例1のみであった。比較例6で用いたカラギナンは組成中に硫化化合物を含有するため、それが喫味に悪影響を及ぼしていると考えられる。
喫味に関しては、以下の方法により測定を行った。
上述の通り実施例1と比較例6の多糖類と水とグリセリンを高速撹拌混合する事により得られたゲル状組成物10重量%をたばこ刻み59重量%とプロピレングリコール31重量%と共にポッドに充填しPLOOM用カートリッジを得た。そしてそのたばこ喫味を男性6人女性1人の専門パネラーにより以下の基準で評価した。
<刺激臭>
1・・・刺激あり;2・・・やや刺激あり;3・・・どちらでもない;4・・・やや刺激なし;5・・・全く刺激がなし
結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
<実施例2>
以下の表3に示すように、実施例1の組成物におけるネイティブ型ジェランガムの含有量とグリセリンの含有量を変えて、本発明の熱可逆性組成物を調製した。得られた熱可逆性組成物の状態を目視により確認し、粘度を測定した。結果を表3に記載した。
表3の結果から、水が十分に存在する組成物においては、ネイティブ型ジェランガムの含有量を0.20重量%以上とすることで、ゲル状組成物が得られることが分かった。
なお、常温(25℃)における粘度の測定は、以下の方法により行った。
<粘度測定方法>
回転式粘度計HAKKE RheoStress1(Thermo Fisher Scientific社製)を用い、線形変形領域における粘弾性測定時に得られた複素粘度を測定した。測定方法としては、試料を80℃まで加温した後サンプル用トレーに試料を3ml注入し、接触子を下げシリコンオイルで密閉系にする。トレー温度が80℃に達したら測定を開始し、25℃までの各温度下での粘度を測定した。
【表3】
【0033】
<実施例3>
以下の表4に示すように、実施例1の組成物における水の含有量とグリセリンの含有量を変えて、本発明の熱可逆性組成物を調製した。得られた熱可逆性組成物の状態を目視により確認した。表4の結果から、組成物においてネイティブ型ジェランガムを溶解するために水がある程度は必要であり、その程度として、5.0重量%以上であれば、組成物に含まれるネイティブ型ジェランガムが十分に溶解し、組成物をゲル化させることができることが分かった。
【0034】
【表4】
【0035】
<実施例4>
実施例2で用いた本発明の熱可逆性組成物のそれぞれについて、温度と粘度の関係を検証した。縦軸に粘度(mPa・s)を、横軸に温度(℃)を取ったグラフに結果をプロットした。ネイティブ型ジェランガムの含有量が0.5重量%と1.0重量%のものを
図1に、0.1重量%、0.15重量%、0.20重量%、0.25重量%のものを
図2にプロットした。
図1及び2の結果から、本発明の熱可逆性組成物は、70℃以上ではゾル状を示し、60℃以下ではゲル化しているものであることが分かった。
【0036】
<実施例5>
本発明のゲル状の熱可逆性組成物における、ゲル化剤(ネイティブ型ジェランガム)の含有量と、常温(25℃)における粘度(mPa・s)の関係を検証した。結果を
図3に示す。
この実施例で用いた組成物の組成は、実施例2で用いたものと同じものである。
この結果から、水が等量でゲル化剤(ネイティブ型ジェランガム)の含有量が多くなれば、粘度も増大することが分かった。
【0037】
<実施例6>
実施例1で作製した組成物のうち、ネイティブ型ジェランガムを0.5重量%、グリセリンを81.5重量%、水18.0重量%を含有するゲル状の熱可逆性組成物を、たばこ刻みとともに、電気加熱型たばこ用具に収容されるポッドの内部に添加した系を調製した(実施例添加)。
また、同様の操作により、何も添加しない系(無添加製品)、グリセリンのみを添加した系(グリセリン添加)を調製した。
これらの系について、東京理化器械株式会社 振盪機(マルチシェーカー)[MMS-310]を用いて72時間振動させ、こぼれ落ちたたばこ刻みの量をそれぞれ測定した。
結果を
図4に示す。
図4の結果から、本発明の熱可逆性組成物を添加した系では、こぼれ落ちたたばこ刻みの量が著しく少なく、たばこ刻みの保持能力が優れていることが分かった。
【0038】
<実施例7>
先落ちの検証をするために、たばこ刻みに添加する材料として実施例6と同じものを調製し、シガレットの先端部分に、何も添加しない系、グリセリンのみを添加した系、実施例6と同じゲル状組成物を添加した系をそれぞれ調製した。
これらの系について、アズワン株式会社 バリアブルミックスローター[VMR-5R]を用いて30分間回転搖動させ、こぼれ落ちた刻みの量をそれぞれ測定した。
結果を
図5に示す。
図5の結果から、本発明の熱可逆性組成物を添加した系では、こぼれ落ちたたばこ刻みの量が著しく少なく、たばこ刻みの保持能力が優れていることが分かった。
【0039】
<実施例8>
本発明のゲル状の熱可逆性組成物について、その水分含有量と、熱感応性の関係について検証した。
電気加熱型たばこ用具に収容されるアルミ製のポッド(容積0.47cm
3)に、対象とする、水の含有量が異なる熱可逆性組成物42.3mg(10重量部)と、たばこ刻み250mg(59重量部)と、プロピレングリコール131mg(31重量部)とを入れ、先端が円錐形の治具を用いて圧力をかけ、ポッドにたばこ刻みを含む組成物を押し込んだ。
電気加熱型たばこ用具(PLOOM)のスイッチを入れ、過熱状態ランプが点灯に変わった(165℃に達した)後、上記で準備したポッドを電気加熱型たばこ用具に収容し、ポッドの中で、たばこ刻みを含む組成物が最も押し込まれた部分に熱電対を設置し、そこの温度を測定した。当該組成物の温度(品温)が160℃に到達するまでの時間(秒)を測定した。さらに各ポッドについて、15秒ごとの温度と、160℃になった温度を計測した。
品温の測定には、熱電対(横川計測(メーターTX1001)を用いた。
組成物における水の含有量を横軸とし、当該組成物の温度(品温)が160℃に到達するまでの時間(秒)を縦軸として、得られた結果をプロットとした図を
図6として示す。
図6の結果から、本発明の熱可逆性組成物に含有させる水の含有量の範囲内では、当該組成物の温度(品温)が160℃に到達するまでの時間が180秒以内であり、組成物の熱感応性が高いことが分かった。また、本発明の熱可逆性組成物において、水の含有量が、13.0〜25.0重量%であると組成物の熱感応性がより高いことが分かった。これは、ゲルの構造において、グリセリンがネイティブ型ジェランガムとインターカレーションを起こしていることによるものであると考えられる。