(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、冊子プリンタの構成図である。
図1に示すように、冊子プリンタ101には、本発明の実施形態に係るページめくり部106(冊子ページめくり装置)が搭載されている。このページめくり部106は、例えば、現金自動取引装置や通帳の記帳装置に搭載され、通帳に取引の履歴を印字するものである。
【0012】
また、冊子プリンタ101は、冊子を挿入および排出する挿入口102、冊子を搬送する搬送部103、冊子のページコードを読み取る冊子読取部104、冊子のページに印字する印字機構部105、冊子のページめくりを行うページめくり部106、これらの機構部の制御を行う制御部107などを備えて構成されている。なお、ページコードの読み取りとは、通帳のマグネットストライプの読み取りやバーコードの読み取りである。
【0013】
挿入口102は、冊子プリンタ101の筺体の正面側に設けられ、冊子が投入されたことを検知するセンサ(不図示)が設けられている。なお、以下に示す冊子は、例えば、複数枚の紙葉類を綴じたものであり、表紙および裏表紙に硬い(剛性の高い)紙葉が用いられ、表紙と裏表紙との間に柔らかい(剛性の低い)紙葉が用いられたものである。
【0014】
搬送部103は、挿入口102とページめくり部106との間で冊子をガイドする下側搬送用ガイド113と上側搬送用ガイド114とを備えている。また、搬送部103は、冊子を搬送させる複数の搬送用ローラ115a〜115hを備えている。
【0015】
搬送用ローラ115a,115bは、上下に対向して配置され、搬送用ローラ115c,115dは、上下に対向して配置されている。搬送用ローラ115a,115bと搬送用ローラ115c,115dとの間に冊子読取部104が設置されている。
【0016】
搬送用ローラ115e,115fは、上下に対向して配置され、搬送用ローラ115g,115hは、上下に対向して配置されている。搬送用ローラ115e,115fと搬送用ローラ115g,115hとの間に印字機構部105が設置されている。
【0017】
搬送用ローラ115b,115d,115f,115hは、駆動ローラであり、従動側の搬送用ローラ115a,115c,115e,115gが搬送用ローラ115b,115d,115f,115hに圧接するように構成されている。
【0018】
図2は、冊子プリンタの制御ブロック図である。
図2に示すように、冊子プリンタ101の制御部107は、バス201aを介して本体制御部201と接続されている。制御部107は、本体制御部201からの指令および冊子プリンタ101の状態に応じて制御を行っている。冊子プリンタ101の内部では、各ユニット(挿入口102、搬送部103、冊子読取部104、印字機構部105、ページめくり部106)の駆動系統やセンサと接続され、それら駆動系の制御を行っている。
【0019】
図3は、第1実施形態の冊子ページめくり装置を示す構成図である。
図3に示すように、ページめくり部106は、搬送装置(冊子の搬送路を構成する上側搬送ガイド301,302および下側搬送ガイド303と、上側搬送ローラ304,305と、下側搬送ローラ306,307)と、ページめくりローラ308と、ページめくりローラ308を保持するローラ保持アーム309と、押し上げガイド311と、を備えて構成されている。
【0020】
上側搬送ガイド301,302は、冊子の上方に配置され、前後方向(正面⇔背面)に離間して配置されている。下側搬送ガイド303は、冊子の下方に配置されている。上側搬送ガイド301,302と下側搬送ガイド303との間には、冊子を搬送可能とする隙間が形成されている。
【0021】
上側搬送ローラ304は、下側搬送ローラ306と対向して配置され、ばね(不図示)などの弾性部材によって冊子または下側搬送ローラ306を圧接する方向に付勢されている。また、上側搬送ローラ304は、冊子から離れる上方(S1方向)に向けて退避可能に構成されている。下側搬送ローラ306には、モータ(不図示)の駆動力が伝達され、上側搬送ローラ304と下側搬送ローラ306とで冊子を挟持して搬送する。
【0022】
上側搬送ローラ305は、下側搬送ローラ307と対向して配置され、ばね(不図示)などの弾性部材によって冊子を圧接する方向に付勢されている。下側搬送ローラ307には、モータ(不図示)の駆動力が伝達され、上側搬送ローラ305と下側搬送ローラ307とで冊子を挟持して搬送する。
【0023】
ページめくりローラ308は、冊子のめくりページに対して押圧回転することでページめくりするものであり、ローラ保持アーム309に軸308aを介して回転自在に支持されている。また、ページめくりローラ308は、モータ(不図示)の駆動力によってW1方向に1回転することにより、冊子のページめくりを行う。なお、ページめくりローラ308の詳細な形状については後記する。
【0024】
ローラ保持アーム309は、ページめくり部106の筺体に軸309aを介して回動自在に支持されている。また、ローラ保持アーム309には、ページがめくられたときに、めくりページの先端が引っ掛かるページ保持突起310が形成されている。
【0025】
また、ローラ保持アーム309の軸309aは、ページめくりローラ308の上方に位置するとともに、ページめくりローラ308の軸308aが軸309aよりも上側搬送ローラ304側に位置している。
図3に示すローラ保持アーム309は、ページを順方向にめくるときの状態である。なお、ローラ保持アーム309を、軸309aを介してW2方向に回動させることで、ページを逆方向にもめくることができるようにしてもよい。
【0026】
押し上げガイド311は、ページめくり時に冊子を押し上げて、ページをめくり易くするものであり、搬送路の下方に配置されている。また、押し上げガイド311は、モータ(不図示)の駆動力によって上方(S3方向)に可動するように構成されている。
【0027】
図4は、第1実施形態に係るページめくりローラを示す側面図である。なお、
図4は、ページめくりローラ308が回転する前(ページめくりする前)の状態であり、接触面620が上向きとなっている。
図4に示すように、ページめくりローラ308は、軸308aが固定されるベース部601と、冊子と接触する接触面620が形成される弾性部602とを備えて構成されている。
【0028】
ベース部601は、剛性の高い金属製のもの(アルミニウム合金など)で構成され、弾性部602を保持する保持部601aと、軸308aが挿通される軸孔601bと、を有している。
【0029】
弾性部602は、ゴムなどの弾性材料で形成され、ベース部601から略山型に突出する形状を有している。また、弾性部602の外周面は、ベース部601の両端から互いに内向きに延びる斜面部602a,602bと、こられの斜面部602a,602b同士をつなぐ頂部602cと、を有している。頂部602cは、軸308aの点Oを中心とした円弧形状を呈している。このように、頂部602cを円弧形状とすることにより、頂部602cが冊子と接したときに弾性部602が変形することで頂部602cを平面の状態で冊子に押し当てることができる。
【0030】
また、弾性部602は、側方(軸方向)に向けて(
図4の紙面に対して垂直方向に)貫通する中空部603,604を有している。
【0031】
中空部603は、弾性部602の頂部602c側に位置し、ページめくりローラ308の回転方向W1(
図4の左右方向)に沿って延在する長孔部603aと、この長孔部603aの両端部において側面視三角形状を呈する角部603b,603cと、を有して構成されている。
【0032】
角部603bは、斜面部602aと頂部602cとの境界である接触面端部P1に向けて突出している。角部603cは、斜面部602bと頂部602cとの境界である接触面端部P2に向けて突出している。なお、接触面端部P1は、ページを順めくりする場合(
図3参照)において、めくりページとの接触面620のうち、めくりページと始めに接触する当該ページめくりローラ308の回転方向W1の端部である。また、接触面端部P2は、逆めくりする場合において、めくりページとの接触面620のうち、めくりページと始めに接触する当該ページめくりローラ308の回転方向W1と逆方向の端部である。
【0033】
前記した形状の中空部603を設けることにより、弾性部602において、角部603b,603cと接触面端部P1,P2との肉厚が、他の部分の肉厚よりも薄い薄肉部609,610として形成されている。なお、他の部分の肉厚とは、接触面620のうちの接触面端部P1,P2(薄肉部609,610)を除く部分の肉厚である。また、角部603b,603cの形状は、薄肉部609,610が形成されるものであれば、側面視三角形状に限定されるものではなく、円弧形状や湾曲形状であってもよい。
【0034】
中空部604は、弾性部602の頂部602cとは逆のベース部601側に、中空部603と平行となるように形成されている。また、中空部604は、中空部603の長手方向と略同じ長さで形成されている。なお、本実施形態では、2つの中空部603,604が形成された場合を例に挙げて説明したが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0035】
また、弾性部602は、中空部603と中空部604との間が、補強桟605として機能している。
【0036】
また、弾性部602の頂部602cには、回転方向W1(図示左右方向)の中央部に、凹部606が形成されている。
【0037】
また、弾性部602には、中空部604の長手方向の両側に金属製の補強部607,608が形成されている。この補強部607,608は、ベース部601から突出する板形状であり、補強部607,608の先端が、補強桟605の位置まで延びている。
【0038】
補強部607は、中空部604の長手方向の一端と斜面部602bとの間(ページめくりローラ308の内部)に形成されている。補強部608は、中空部604の長手方向の他端と斜面部602aとの間に形成されている。つまり、補強部607,608の外側(図示左右外側)に弾性部602のゴム部分が形成されるように構成されている。
【0039】
また、ページめくりローラ308は、凹部606と軸308aの中心Oとを結ぶ仮想線VLに対して線対称となるように形成されている。
【0040】
図5は、第1実施形態に係るページめくりローラの押圧力を示すグラフ、
図6は、ページめくりローラの押圧力に関する説明図である。なお、
図5に示す実線402は、本実施形態におけるページめくりローラ308の押圧力の変化を示し、
図5に示す破線401は、従来形状におけるページめくりローラの押圧力の変化を示している。従来形状とは、側面視湾曲形状の弾性部に1つの中空部が形成された単純形状のものである。
【0041】
図5に示すように、ページめくり部106において冊子のページめくりを行う際には、冊子のめくりページを座屈させるために必要な力(表紙めくり十分値Fc、中紙めくり十分値Fp)が存在する。この表紙めくり十分値Fcおよび中紙めくり十分値Fpは、冊子の紙(紙葉)の剛性により決定される値であり、以下の式(1)、(2)によって求められる。
Fc=Rc/(μ
r-1−μ
1-2)・・・(1)
Fp=Rp/(μ
r-1−μ
1-2)・・・(2)
Fc:表紙めくり十分値
Fp:中紙めくり十分値
Rc:表紙の座屈抵抗力
Rp:中紙の座屈抵抗力
μ
r-1:ページめくりローラとめくりページ間の摩擦係数
μ
1-2:めくりページ2枚目ページ間の静止摩擦係数
【0042】
なお、冊子によっても硬さが違い、環境によっても硬さが変わるので、ここでの表紙めくり十分値Fcは、この値以上であれば、どのような環境(最悪な環境)下で、どのような硬さの表紙がきてもめくれる押圧力である。また、中紙めくり十分値Fpについても、この値以上であれば、どのような環境(最悪な環境)下で、どのような硬さの中紙がきてもめくれる押圧力である。
【0043】
また、冊子のうちの中紙のページめくりを行う際には、2枚めくりしないためのページめくりローラ308の上限値(2枚めくり上限値(めくりページ座屈前)Fp2,2枚めくり上限値(めくりページ座屈後)F'p2)が存在する。この2枚めくり上限値Fp2,F'p2は、めくりページが座屈し、動き出す前後によって静止摩擦力と動摩擦力の2つの場合が存在し、以下の式(3)、(4)によって求められる。
Fp2=Rp/(μ
1-2−μ
2-3)・・・(3)
F'p2=Rp/(μ'
1-2−μ
2-3)・・・(4)
Fp2:静止摩擦係数における2枚めくり上限値
F'p2:動摩擦係数における2枚めくり上限値
μ
2-3:2枚目ページと3枚目ページ間の静止摩擦係数
μ'
1-2:めくりページと2枚目ページ間の動摩擦係数
【0044】
図6に示すように、
図5の実線402で示す押圧力は、ページめくりローラ308を図中の回転方向W1に回転させる際、ページめくりローラ308から接触面502に加わる垂直方向の力(ページめくりローラ308の押圧力)を測定することで得られるものである。
【0045】
ところで、
図5に示すように、破線401で示す従来のページめくりローラでは、ページめくりローラの回転とともに押圧力が増大し、おおよそ真下を向いた地点でピークを迎えるように設定されている。表紙のノンピック(めくり上げ失敗)を起こさせないためには、少なくともこのピーク地点で表紙めくり十分値Fcを超える必要がある。しかし、そのために急峻な立ち上がりの押圧力をもつページめくりローラにすると、中紙めくり時に2枚めくりしない押圧力(2枚めくり上限値Fp2未満)の角度範囲A(
図5参照)が狭くなり、めくりページが座屈する前に必要以上(Fp2以上)の押圧力が加わることで2枚めくりしやすくなってしまう。また、中紙めくり時に2枚めくりを防ごうと、押圧力の弱いページめくりローラを用いると、ページめくりローラの押圧力のピーク値が小さくなってしまい、表紙めくり時にノンピックしやすくなってしまう。
【0046】
図5に示すように、第1実施形態のページめくりローラ308では、2段の階段状の押圧力が発生するようになっている。すなわち、めくり始めの部分では、緩やかな押圧力を生み出し、ページめくりローラ308の回転が進むと押圧力が増大し、大きな押圧力を生み出すことができる。
【0047】
さらに説明すると、中紙めくり時は、めくり始めの緩やかな押圧力(最初の段407、第1の押圧力)によって、めくりページを座屈させて動き出させることで、従来のページめくりローラに比べて、2枚めくりしない押圧力(中紙めくり十分値Fp以上2枚めくり上限値Fp2未満)の角度範囲B(
図5参照)を大きくしている。これにより、めくりページが座屈する前に必要以上の押圧力が加わるのを防ぐことができ、2枚めくり防止性能を向上させることが可能となる。また、ページめくりローラ308の回転が進んだ後の増大した押圧力(2つ目の段408、第2の押圧力)が存在することで、表紙めくり時のノンピックを防ぐことができる。
【0048】
このように、ページめくりローラ308の押圧力の増加量がページめくりの最中に変化することによって、押圧力が2段の階段状となり、表紙ノンピックの防止性能および中紙2枚めくりの防止性能が向上する。
【0049】
図7は、第1実施形態に係る冊子ページめくり装置のページめくり動作図である。
図7は、中紙めくり時の動作を示し、
図7(a)はページめくり動作前、(b)はめくりページ座屈時、(c)はページめくり上げ時、(d)はめくりページ引掛け時、(e)は冊子搬送時を示している。ページめくり動作開始前においては、ローラ保持アーム309が冊子搬送側に傾いた状態で保持されるとともに、ページめくりローラ308が上向き(回転角度0度の状態)に設定されている。また、押し上げガイド311が下側搬送ガイド303の下方に退避している。なお、以下では、
図4および
図5を適宜参照して説明する。
【0050】
まず、挿入口102(
図1参照)から挿入された冊子701を、搬送部103の搬送用ローラ115a〜115g(
図1参照)によって搬送し、さらにページめくり部106の上側搬送ローラ304,305および下側搬送ローラ306,307によって搬送し、
図7(a)に示す所定位置に搬送して停止させる。なお、所定位置とは、冊子の先端(綴じ代と反対側)を上側搬送ローラ304と下側搬送ローラ306とで挟み込むことができ、冊子の綴じ代側を上側搬送ローラ305と下側搬送ローラ307とで挟み込むことができる位置である。そして、ページめくりの際に邪魔にならないよう、冊子701の開き側に位置する上側搬送ローラ304を矢印S1方向へ退避させる。
【0051】
そして、
図7(b)に示すように、ページめくりローラ308をW1方向(図示時計回り方向)に回転させるとともに、押し上げガイド311を矢印S2方向に動作させる。具体的には、例えば、ページめくりローラ308が冊子701のめくりページに接触する前のある角度になったときに押し上げガイド311を上昇させる。押し上げガイド311を利用することで、めくりページを座屈させ易くできる。ページめくりローラ308が冊子701のめくりページを押圧回転することで、めくりページが座屈する。
【0052】
このとき、ページめくりローラ308の薄肉部609(
図4参照)が冊子701を押圧することで、ページめくりローラ308の角部603bの空間がS10方向(
図4参照)に広がる(伸びる)とともに角部603cの空間が矢印S20方向に狭まる(縮まる)ことで、冊子に対する押圧力が低く抑えられる。これによって、
図5の最初の段407で示すように、ページめくりローラ308の押圧力が緩やかに上昇し、2枚めくり上限値(めくりページ座屈前)Fp2を超えるまでの時間を長く確保できる(
図5参照)。
【0053】
また、ページめくりローラ308に2つの中空部603,604を形成して、中空部603と中空部604との間に、補強桟605(
図4参照)を形成することで、角度範囲Bが広く(大きく)なり過ぎるのを防止できる。
【0054】
また、ページめくりローラ308に凹部606を形成することで、薄肉部609が変形する際に角部603bの変形に寄与できるので(変形し易くなるので)、
図5の最初の段407で示す押圧力を低く抑えることができる。
【0055】
そして、角部603bの空間がS10方向に広がり、角部603cの空間がS20方向に閉じることで、弾性部602が突っ張った状態となり(変形し難い状態となり)、ページめくりローラ308の押圧力を急増させることができる。このとき、薄肉部609(接触面端部P1)の回転方向W1とは反対側に補強部607を形成することによって、弾性部602のさらなる倒れ込みを抑える(ゴムの過変形を防ぐ)ことができるので、ページめくりローラ308の押圧力を急増させることができる。また、補強部607を弾性部602の一番外側ではなく、弾性部602の内部(内側)に配置することで、補強部607が弾性部602の一番外側にある場合よりも、弾性部602の弾性部分を外側(矢印S30方向)に逃がすことができ、ページめくりローラ308の押圧力が上がり過ぎる(2枚めくり上限値(めくりページ座屈後)F'p2を超える)のを防止できる。
【0056】
そして、中紙のめくりページが座屈した後、ページめくりローラ308がさらに回転して約180度(180±15度)回転した状態(ページめくりローラ308が下向きの状態)になると、ページめくりローラ308の押圧力がピーク値(2つ目の段408)となる。この押圧力のピーク値は、2枚めくり上限値(めくりページ座屈後)F'p2未満に設定されているので、中紙のめくりページが座屈した後であっても、2枚めくりされることがない。
【0057】
そして、
図7(c)に示すように、押し上げガイド311を矢印S3方向に退避させ、ページめくりローラ308を矢印W1方向に回転させ続けることで、中紙のめくりページが座屈した状態で持ち上げられる。なお、押し上げガイド311を動作させるタイミングは、ページめくりローラ308が中紙と接触している最中である。
【0058】
その後、
図7(d)に示すように、1回転するまでページめくりローラ308を回転させ続けることにより、中紙のめくりページをめくり上げ、ローラ保持アーム309のページ保持突起310にめくりページを引っ掛けて保持させる。そして、上側搬送ローラ304を再び矢印S4方向に移動し、めくりページ以外の引き込み側の冊子701を上側搬送ローラ304と下側搬送ローラ306とで挟持する。
【0059】
最後に、
図7(e)に示すように、上側搬送ローラ304,305および下側搬送ローラ306,307によって冊子701を矢印S5方向へと搬送することで、めくりページがページ保持突起310から外れ、めくりページ以外の引き込み側の冊子701を矢印S5方向へ引き込むことでめくりページがめくられ、ページめくり動作が完了する。
【0060】
また、ページめくり部106において表紙をめくる場合には、前記と同様にして、ページめくりローラ308が1回転することにより、表紙めくりが行なわれる。なお、表紙をめくる場合とは、例えば、新通帳を発行する際に、機械(ページめくり部106)の中に入っている閉じた状態の新通帳をめくるときである。
【0061】
表紙をめくる場合、
図7(b)に示す回転角度(薄肉部609で押圧した状態)では、表紙が座屈することがなく、ページめくりローラ308がさらに回転して、ページめくりローラ308が下向きになり、ページめくりローラ308の押圧力がピーク値となる付近で、表紙が座屈する。このように表紙をめくる場合、ページめくりローラ308の押圧力が最初の段407(
図5参照)においては表紙が座屈することがなく、ページめくりローラ308の押圧力が2つ目の段408(
図5参照)となる付近で、表紙が座屈して、表紙のページめくりが行なわれる。
【0062】
その後は、中紙めくりと同様に、表紙が座屈した状態で持ち上げられ(
図7(c)参照)、表紙がページ保持突起310に引っ掛かり(
図7(d)参照)、表紙以外の冊子701を矢印S5方向に戻すことにより(
図7(e)参照)、ページめくり動作が完了する。
【0063】
なお、本実施形態のページめくり部106では、ページめくりローラ308が、
図4において左右対称に形成されているので、逆方向のページめくり(以下、「逆めくり」とする)が可能となっている。逆めくりする場合とは、例えば、開いているページを閉じるときや、ページを戻すときである。
【0064】
すなわち、逆めくりする場合には、ローラ保持アーム309をW2方向(
図3参照)に回動(スイング)させ、ページめくりローラ308を前記W1方向とは逆向きに回転させる。また、上側搬送ローラ305は、冊子から離れる方向に退避可能に構成されている。中紙を逆めくりする場合には、中紙に対してページめくりローラ308が押圧回転する際、薄肉部610(
図4参照)によって、ページめくりローラ308の押圧力(
図5の最初の段407)が与えられることで、中紙のページめくりが行なわれる。詳述すると、ページめくりローラ308の薄肉部610(
図4参照)が冊子701を押圧することで、ページめくりローラ308の角部603cの空間が広がるとともに角部603bの空間が狭まることで、冊子に対する押圧力が低く抑えられる。これによって、
図5の最初の段407で示すように、ページめくりローラ308の押圧力が緩やかに上昇し、2枚めくり上限値(めくりページ座屈前)Fp2を超えるまでの時間を長く確保できる(
図5参照)。
【0065】
また、角部603cの空間が広がり、角部603bの空間が狭まることで、弾性部602が突っ張った状態となり(変形し難い状態となり)、ページめくりローラ308の押圧力を急増させることができる。このとき、薄肉部610(接触面端部P2)の回転方向とは反対側に補強部608を形成することによって、弾性部602のさらなる倒れ込みを抑える(ゴムの過変形を防ぐ)ことができるので、ページめくりローラ308の押圧力を急増させることができる。
【0066】
また、表紙を逆めくりする場合には、表紙に対してページめくりローラ308が押圧回転する際、ページめくりローラ308の押圧力(
図5の2つめの段408)が与えられることで、表紙のページめくりが行なわれる。
【0067】
このように構成された第1実施形態では、冊子701を搬送する搬送装置(上側搬送ガイド301,302、下側搬送ガイド303、上側搬送ローラ304,305および下側搬送ローラ306,307)と、冊子701に対して押圧回転することで当該冊子701のページをめくるページめくりローラ308と、を備え、ページめくりローラ308が、冊子701のページをめくっている際、2段以上の押圧力(
図5の最初の段407と2つ目の段408)を発生させる形状を有している。これによれば、ページめくりローラ308を回転させるだけで2段階の押圧力を発生させることができ、ページめくりローラ308を回転させる1つの機構のみで構成できる。よって、従来のようにページめくりローラ308を冷加温する機構やページめくりローラを保持するアームを可動させる機構など追加の機構を設けることなく異なる剛性のページを有する冊子のページめくりを良好に行うことが可能になる。
【0068】
また、第1実施形態では、ページめくりローラ308の内部に中空部603,604が形成され、ページめくりローラ308には、めくりページとの接触面620のうち、接触面端部P1,P2の肉厚が他の部分の肉厚よりも薄い薄肉部609,610が形成されている(
図4参照)。これによれば、接触面端部P1,P2がめくりページに当たったときに薄肉部609,610によって、最初の段407の押圧力に対応する角度範囲Bを大きく確保できるので、めくり始めの緩やかな押圧力を生み出すことができ、中紙の2枚めくりを防ぐことが可能になる。
【0069】
また、第1実施形態では、ページめくりローラ308に、接触面端部P1,P2と回転方向W1の反対側に補強部607,608が設けられている(
図4参照)。これによれば、ページめくりローラ308(弾性部602)のさらなる倒れ込みを抑えることができるので、ページめくりローラ308の押圧力を急増させることができる。
【0070】
また、第1実施形態では、補強部607,608が、ページめくりローラ308の内部に位置している(
図4参照)。これによれば、補強部607,608がページめくりローラ308(弾性部602)の最も外側にある場合よりも、弾性部602のゴム部分(弾性変形)を外側(矢印S30方向)に逃がすことができるので、ページめくりローラ308の押圧力が上がり過ぎる(2枚めくり上限値(めくりページ座屈後)F'p2を超える)のを防止できる。
【0071】
また、第1実施形態では、ページめくりローラ308に接触面620の回転方向W1の中央部に凹部606が形成されている(
図4参照)。これによれば、薄肉部609,610が弾性変形する際に、その弾性変形に寄与できるので、
図5の最初の段407で示す押圧力を低く抑えることができる。
【0072】
また、第1実施形態では、ページめくりローラ308に、接触面620の中空部603と軸308aの中心O側(回転軸側)の中空部604とに区画する補強桟605が形成されている(
図4参照)。これによれば、めくり始めの緩やかな押圧力の角度範囲Bが大きくなりすぎないように調整でき、適切な角度で押圧力を増加させることが可能になる。
【0073】
また、第1実施形態では、ページめくりローラ308が、接触面620の中央部(凹部606)と中心Oとを通る仮想線VLに対して線対称に形成されている(
図4参照)。これによれば、一方向のみのページめくりだけではなく、逆方向のページめくりも可能になる。
【0074】
また、第1実施形態では、冊子701を所定位置に搬送した後、上側搬送ローラ304を冊子701から退避させ、押し上げガイド311によって冊子701を下から押し上げ、ページめくりローラ308を回転させることでページめくりを行うように構成されている。これによれば、めくりページを座屈させ易くできる。
【0075】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るページめくりローラを示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)平面図である。なお、第2実施形態の冊子ページめくり装置(ページめくり部106)は、ページめくりローラの形状が第1実施形態と異なり、ページめくりローラ308に替えてページめくりローラ800としたものである。特に言及しない限り本実施の形態における冊子ページめくり装置および動作は第1実施形態と同様である。
【0076】
図8(a)に示すように、ページめくりローラ800は、3枚のローラ801,802,803を一体にした形状を有している。ローラ801,803は、どちらも同じ形状および特性を有するものであり、中紙用の押圧力を発生させる柔らかいゴムによって構成されている。ローラ802は、表紙用の押圧力を発生させる硬いゴムによって構成されている。なお、ローラ803は、第1実施形態と同様に、ページの逆めくりに対応したものである。
【0077】
ローラ801,803は、軸308aが固定されるベース部801a,803aと、冊子と接触する弾性部801b,803bとを備えて構成されている。ローラ802も同様に、ベース部802aと弾性部802bとを備えて構成されている。ベース部801a,802a,803aは、例えば、金属製のもので構成されている。弾性部801b,802b,803bは、側面視において略山型(略三角形状)を呈するものであり、弾性部801b,802b,803bの内部に軸方向に貫通する中空部801c,802c,803cが形成されている。
【0078】
図8(b)に示すように、ローラ801は、ローラ802に対して軸308aの一方の回転方向に回動した状態で固定されている。ローラ803は、ローラ802に対して軸308aの他方の回転方向に回動した状態で固定されている(3つのローラ801,802,803の位相をずらした状態で構成されている)。
【0079】
ローラ801の頂部の接触面801dは、ローラ802の頂部の接触面802dに対して軸308aの回転方向にオフセットして配置されている。ローラ803の頂部の接触面803dは、接触面802dに対して軸308aの前記とは逆の回転方向にオフセットして配置されている。
【0080】
図8(c)に示すように、ローラ801の接触面801dは、軸308aの点Oを中心とした円弧形状である。同様にローラ802の接触面802dは、点Oを中心とした円弧形状であり、ローラ803の接触面803dは、点Oを中心とした円弧形状である。また、接触面801d,802d,803dは、点Oを中心とした同一径を有する円弧形状である。
【0081】
これによって、第2実施形態においても、ページめくりローラ800を用いることで、第1実施形態と同様のページをめくる際の押圧力が2段(
図5に示す最初の段407、2つ目の段408)存在する効果を得ることができる。
【0082】
図9は、第2実施形態に係る冊子ページめくり装置のページめくり動作図である。なお、
図9(a),(c),(d),(e)は、
図7(a),(c),(d)、(e)と同様であるので、以下では、
図9(b)のみについて説明する。
【0083】
図9(b)に示すように、ページめくりローラ800をW1方向(図示時計回り方向)に回転させるとともに、冊子701に対して押圧回転させる。このとき、ページめくりローラ800のローラ801が冊子701に最初に当たることで、中紙めくりに対応した押圧力を発生させることができる。また、ローラ801の接触面801dは、ページめくりローラ800のW1方向に長く形成されているので、
図5の最初の段407で示すように、ページめくりローラ800の押圧力が緩やかに上昇させることができ、2枚めくりを防止することが可能になる。
【0084】
また、表紙をめくる場合にも、ローラ801の接触面801dが表紙に対して最初に押圧するが、ここでは中紙めくりに対応した押圧力しか発生しないので、表紙が座屈してめくられることはない。そして、ページめくりローラ800がさらにW1方向に回転して、ローラ802の接触面802d(
図8(a)参照)が表紙に対して押圧することで、押圧力が急増して、表紙めくりに対応した押圧力を発生させることができる。
【0085】
また、逆めくりする場合には、第1実施形態と同様に、ローラ保持アーム309をW2方向(
図3参照)に回転(スイング)させ、ページめくりローラ800をW1方向とは逆回転させることで行なうことができる。中紙を逆めくりする場合には、ページめくりローラ800を回転させ、最初にローラ803の接触面803dが中紙を押圧することで、中紙を逆めくりすることができる。また、表紙を逆めくりする場合には、ローラ803の接触面803dが表紙を押圧した後に、ローラ802の接触面802dが表紙を押圧することで、表紙を逆めくりすることができる。
【0086】
このように構成された第2実施形態では、冊子701を搬送する搬送装置と、冊子701に対して押圧回転することで当該冊子701のページをめくるページめくりローラ800と、を備え、ページめくりローラ800が、冊子701のページをめくっている際、2段以上の押圧力(
図5の最初の段407と2つ目の段408)を発生させる形状を有している。これによれば、ページめくりローラ800を回転させるだけで2段階の押圧力を発生させることができ、ページめくりローラ800を回転させる1つの機構のみで構成できる。よって、従来のようにページめくりローラ308を冷加温する機構やページめくりローラを保持するアームを可動させる機構など追加の機構を設けることなく異なる剛性のページを有する冊子のページめくりを良好に行うことが可能になる。
【0087】
また、第2実施形態では、3つのローラ801,802,803を組み合わせたものとなっているため、ページめくり押圧力の階段状の段数に関する変更が容易になる。
【0088】
なお、本発明の範囲はこれらに限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲内において種々変更することが可能である。前記した実施形態では、2段の階段状のページめくりローラ308,800としたが、取り扱う冊子に応じて、前記した適正押圧力がいくつか存在する場合はより多くの段数を持つページめくりローラを用いることで、2枚めくり発生およびめくりページのノンピックを防ぐことが可能になる。
【0089】
また、前記した実施形態ではページめくりローラ308,800の押圧力特性により、ページめくり中の2枚めくりしない押圧力の角度範囲を大きくしたが、めくり始めのページめくり速度を遅くすることで、2枚めくりしない押圧力の角度に存在する時間を長くさせることでも本発明と同様の効果を得ることができる。
【0090】
また、前記した実施形態では、表紙と裏表紙に硬い紙とし、中紙に柔らかい紙とした2種類の紙を使用した場合を例に挙げて説明したが、3種類以上の紙を用いた冊子であってもよい。