特許第6393418号(P6393418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393418
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20180910BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H01R13/64
   H01R13/42 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-521769(P2017-521769)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2016064231
(87)【国際公開番号】WO2016194579
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-109566(P2015-109566)
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野呂 豊
(72)【発明者】
【氏名】武田 和亜希
(72)【発明者】
【氏名】松浦 将仁
(72)【発明者】
【氏名】澤田 亮
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−132076(JP,U)
【文献】 実開平4−127982(JP,U)
【文献】 実開昭62−65778(JP,U)
【文献】 特開2005−5126(JP,A)
【文献】 特開2007−305473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64−13/641
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ハウジングに嵌合可能なハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、且つ電線の端部に接続され、両ハウジングの嵌合時に前記相手ハウジングに設けられた相手端子金具に電気的に接触する端子金具と、
前記ハウジングに設けられ、前記両ハウジングの正規嵌合時に互いに通電して検知回路を形成する一対の検知端子とを備え、
前記一対の検知端子は、電線を介して互いに接続され、前記端子金具と同一形状に形成され、
前記ハウジングには、前記端子金具及び前記検知端子が挿入される複数のキャビティと、前記キャビティにおける前記端子金具及び前記検知端子の挿入方向前方の空間を閉じる前壁と、前記キャビティに交差して連通するリテーナ装着孔とが設けられ、前記リテーナ装着孔には、前記端子金具及び前記検知端子の抜け止めをなすリテーナが挿入され、前記リテーナには、前記検知端子と当接して前記検知端子を前記前壁側に押圧可能な押圧部が突出して設けられ、
前記押圧部は、前記端子金具と対応する位置には設けられていないことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記一対の検知端子につながる電線は、前記端子金具につながる前記電線とともに結束具で結束されることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項5】
前記リテーナには、前記ハウジングに対して前記リテーナが正規に挿入されたときに前記ハウジングに当接するストッパ部が設けられ、前記ストッパ部と前記押圧部とが互いに同一方向に突出し、且つ、前記押圧部の突出端が前記ストッパ部の突出端より控えて位置していることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項6】
前記相手ハウジングには、前記検知回路に電気的に接続される相手検知端子が設けられ、前記相手検知端子及び前記相手端子金具は、タブを有する雄型端子とされ、前記検知端子及び前記端子金具は、前記タブが挿入接続される本体部を有する雌型端子とされており、前記相手検知端子の前記タブは、前記相手端子金具の前記タブよりも短くなっていることを特徴とする請求項1、2、5のいずれか1項記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジングを備えたコネクタが開示されている。第1ハウジングには第1端子金具と第1検知端子とが設けられ、第2ハウジングには第2端子金具と第2検知端子とが設けられている。
【0003】
第1端子金具は、筒状の箱部と箱部の後方に連なるオープンバレル状のバレル部とを有している。バレル部は電線の端部に圧着により接続されている。また、第1検知端子は、平板状の基部と、基部から前方に延出する左右一対の弾性接触片とを有している。一方、第1端子金具と第2検知端子とはいずれもピン状のタブ(特許文献1では呼称されず)を有している。第2検知端子のタブには、導電部と樹脂部が前後に並んで設けられている。
【0004】
第1、第2ハウジングの嵌合過程では、第1検知端子の一対の弾性接触片にそれぞれ対応する第2検知端子の導電部が弾性的に接触して、検知回路が閉じられる。第1、第2ハウジングの正規嵌合時には、弾性接触片が第2検知端子の樹脂部に乗り移り、検知回路が開かれる。したがって、検知回路が開状態になることをもって、第1、第2ハウジングが正規嵌合されたことを電気的に検知することができる。なお、特許文献1とは逆に、第1、第2ハウジングの正規嵌合時に、検知回路が閉じられる場合があり、むしろその場合のほうが多い。また、第1、第2ハウジングの正規嵌合時には、第2端子金具のタブが第1端子金具の箱部に挿入接続され、第1、第2端子金具が正規に導通接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−135196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の場合、第1検知端子が第1端子金具とは異なる形状に形成されているため、第1端子金具を成形する工程とは別に第1検知端子を成形する工程が必要とされ、工数が増えてコストが高くつくおそれがある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具と検知端子の成形を同時に行うことができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、相手ハウジングに嵌合可能なハウジングと、前記ハウジングに設けられ、且つ電線の端部に接続され、両ハウジングの嵌合時に前記相手ハウジングに設けられた相手端子金具に電気的に接触する端子金具と、前記ハウジングに設けられ、前記両ハウジングの正規嵌合時に互いに通電して検知回路を形成する一対の検知端子とを備え、前記一対の検知端子は、電線を介して互いに接続され、前記端子金具と同一形状に形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
電線を介して接続される一対の検知端子が端子金具と同一形状に形成されているため、端子金具の成形工程で検知端子を同時に成形することができる。その結果、工数及び金型費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るコネクタにおいて、ループ状の検知線とその周りの信号線が結束具で結束された状態を平面視方向から見た図である。
図2】(A)相手ハウジングの内部を平面視方向から見た図である。(B)ループ状の検知線とその周りの信号線が結束具で結束される前の状態を平面視方向から見た図である。
図3】ハウジングが相手ハウジングに嵌合される終盤の段階で、タブが本体部内に挿入される状態を側面視方向から見た図である。
図4】両ハウジングの正規嵌合時に、タブが本体部内に正規深さで挿入された状態を側面視方向から見た図である。
図5】リテーナの押圧部が検知端子に当接する状態の拡大図である。
図6】ハウジングの正面図である。
図7】ハウジングが相手ハウジングと正規嵌合された状態を平面視方向から見た図である。
図8】リテーナの正面図である。
図9図8のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい実施形態を以下に示す。
前記一対の検知端子につながる電線は、前記端子金具につながる前記電線とともに結束具で結束される。
一対の検知端子につながる電線は実質的にループ状(U字状又は環状)になるため、ループ状の電線が広がると、スペース効率が悪くなる懸念がある。しかし、上記構成によれば、ループ状の電線が端子金具につながる電線とともに結束具で結束されてコンパクトに効率良くまとめられる。
【0012】
前記ハウジングには、前記端子金具及び前記検知端子が挿入される複数のキャビティと、前記キャビティにおける前記端子金具及び前記検知端子の挿入方向前方の空間を閉じる前壁と、前記キャビティに交差して連通するリテーナ装着孔とが設けられ、前記リテーナ装着孔には、前記端子金具及び前記検知端子の抜け止めをなすリテーナが挿入され、前記リテーナには、前記検知端子と当接して前記検知端子を前記前壁側に押圧可能な押圧部が突出して設けられている。
仮に、検知端子がキャビティ内で遊動すると、検知のタイミングが一定とならず、検知信頼性が損なわれるおそれがある。その点、上記構成によれば、検知端子がキャビティ内で押圧部により押圧可能とされていて、リテーナと検知端子とのクリアランスが縮小又は無い状態になるため、検知端子がキャビティ内で大きく遊動することがなく、検知信頼性を向上させることができる。
【0013】
前記押圧部は、前記端子金具と対応する位置には設けられていない。
検知機能を有しない端子金具については検知端子ほど厳しくキャビティ内での遊動を抑える必要がないため、端子金具と対応する位置には押圧部が設けられておらず、これによって、リテーナの構成を簡略化することができる。また、こうして押圧部が必要最小限の範囲で設けられることにより、リテーナがリテーナ装着孔に挿入される際に、リテーナとハウジングとの間で発生する摺動抵抗を小さくすることができ、リテーナの装着作業性が悪化するのを回避することができる。
【0014】
前記リテーナには、前記ハウジングに対して前記リテーナが正規に挿入されたときに前記ハウジングに当接するストッパ部が設けられ、前記ストッパ部と前記押圧部とが互いに同一方向に突出し、且つ、前記押圧部の突出端が前記ストッパ部の突出端より控えて位置している。これによれば、押圧部がストッパ部によって外部異物から保護され得るため、押圧部が外部異物との干渉によって破損される事態を回避することができる。
【0015】
前記相手ハウジングには、前記検知回路に電気的に接続される相手検知端子が設けられ、前記相手検知端子及び前記相手端子金具は、タブを有する雄型端子とされ、前記検知端子及び前記端子金具は、前記タブが挿入接続される本体部を有する雌型端子とされており、前記相手検知端子の前記タブは、前記相手端子金具の前記タブよりも短くなっている。
本体部に挿入接続されるタイミングは相手検知端子のタブのほうが遅くなり得るため、相手端子金具が端子金具と電気的に接続される前に誤って嵌合検知する事態を防止することができる。
【0016】
<実施例>
以下、本発明の実施例を図1図9によって説明する。実施例のコネクタは、ハウジング10と、ハウジング10に収容される複数の端子金具20Aと、同じくハウジング10に収容される一対の検知端子20Bと、ハウジング10に組み付けられるリテーナ60とを備えている。ハウジング10は、相手ハウジング80に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、両ハウジング10、80が嵌合開始時に互いに向き合う面側を前側とする。また、上下方向は、図3図6図8及び図9を基準とする。
【0017】
相手ハウジング80は合成樹脂製であって、図2(A)に示すように、前方に開放された角筒状のフード部81を有している。フード部81の上壁の内面には、その略中央部に、円柱状のカムフォロア82が突出して設けられている。相手ハウジング80には、複数の相手端子金具90Aが装着されている。
【0018】
相手端子金具90Aは導電金属製であって、図2(A)に示すように、全体としてピン状をなし、前後方向に延出するタブ91Aを有している。タブ91Aは、フード部81の奥壁82を貫通し、先端部がフード部81内に突出して配置されている。フード部81内には、複数のタブ91Aが上下方向及び左右方向に所定間隔をあけて整列して配置されている。
【0019】
また、図2(A)に示すように、相手ハウジング80には、一対の相手検知端子90Bが装着されている。相手検知端子90Bは、図示しない検知回路に電気的に接続されている。そして、相手検知端子90Bは、サイズ(長さ)を除いて相手端子金具90Aと同様の形状に形成され、フード部81内に突出するピン状のタブ91Bを有している。フード部81内には、両相手検知端子90Bのタブ91Bが横並びで隣り合って配置されている。具体的には、両相手検知端子90Bのタブ91Bは、上段の各相手端子金具90Aと同じ高さ位置に、これら相手端子金具90Aの間に挟まれるようにして配置されている。
【0020】
図2(A)に示すように、相手検知端子90Bのタブ91Bは、全体として相手端子金具90Aのタブ91Aよりも短くされている。フード部81内に突出する突出量は、相手検知端子90Bのタブ91Bのほうが相手端子金具90Aのタブ91Aよりも小さい。このため、フード部81内には、相手検知端子90Bのタブ91Bの先端が相手端子金具90Aのタブ91Aの先端よりも後方に配置されるようになっている。
【0021】
ハウジング10は合成樹脂製であって、図1及び図3に示すように、全体として角ブロック状のハウジング本体11を有している。ハウジング本体11には、複数のキャビティ12A、12Bが前後方向に延出して設けられている。各キャビティ12A、12Bは、各タブ91A、91Bと対応する位置に、上下方向及び左右方向に整列して配置され、互いに同一形状に形成されている。図3に示すように、各キャビティ12A、12Bの内壁上面には、前方に突出する片持ち状のランス13が撓み可能に設けられている。そして、各キャビティ12A、12Bのうち、後述する一対のキャビティ12Bを除く各キャビティ12Aには、後方から端子金具20Aが挿入される。
【0022】
端子金具20Aは導電性の金属板を曲げ加工などして一体に成形されている。図3に示すように、端子金具20Aは、前後方向に細長い角筒状の本体部21と、本体部21の後方に連なるワイヤバレル22と、ワイヤバレル22の後方に連なるインシュレーションバレル23とからなる。本体部21内には、本体部21の上壁前端から後方へ折り返されるようにして延出する片持ち状の弾性接触片24が撓み可能に設けられている。
【0023】
本体部21の上壁には、ランス孔25が貫通して設けられている。端子金具20Aがキャビティ12Aに正規挿入されると、本体部21のランス孔25にランス13が弾性的に係止され、もって端子金具20Aがキャビティ12Aに一次的に抜け止めされるようになっている。
【0024】
ワイヤバレル22はオープンバレル状をなし、信号用の電線(以下、信号線70Aという)の端末部において被覆72の除去により露出する芯線71に圧着により接続されている。また、インシュレーションバレル23は、信号線70Aの端末部における被覆72に圧着により接続されている。
【0025】
図1及び図3に示すように、上段の各キャビティ12A、12Bのうち、中央寄りの位置で横並びに隣り合う一対のキャビティ12Bには、後方から検知端子20Bが挿入される。
【0026】
検知端子20Bは、上記の端子金具20Aを流用するものであって、図3に示すように、端子金具20Aと同一形状(同じ形状で同じ大きさ)に形成されている。検知端子20Bは、ランス孔25及び弾性接触片24が設けられた本体部21と、ワイヤバレル22と、インシュレーションバレル23とで構成されることとなる。なお、これら検知端子20Bの細部構造には端子金具20Aと同一符号を付す。
【0027】
ワイヤバレル22及びインシュレーションバレル23は、両ハウジング10、80の嵌合を検知する検知用の電線(以下、検知線70Bという)の端末部に圧着により接続されている。
【0028】
検知線70Bは、信号線70Aとは用途が異なるが、構造は同一である。
図2に示すように、検知線70Bの長さ方向両端部にそれぞれ検知端子20Bのワイヤバレル22及びインシュレーションバレル23が接続され、両検知端子20Bの本体部21が前方に向けて並列に配置されることにより、検知線70Bがループ状(U字状又は環状)に回曲させられる。このため、両検知端子20Bは、一本のループ状の検知線70Bを介して通電可能に連結されている。
【0029】
図6に示すように、ハウジング本体11の前面には、その上端部から左右両側部にかけて門型をなす部分の内側に、装着凹部14が一段落ちて設けられている。装着凹部14には、ハウジング本体11とは別体のフロントホルダ50が嵌着される。フロントホルダ50は、ハウジング本体11の前面(詳細には装着凹部14の奥面)を覆う平板状の前壁51を有している。前壁51には、各キャビティ12A、12Bと対応する位置に、複数のタブ挿通孔52が貫通して設けられている。各タブ挿通孔52は、前方から見て正方形の断面形状を有し、互いに同一形状に形成されている。図2及び図3に示すように、各キャビティ12A、12Bの前方空間は、ハウジング10の前端において前壁51のうちのタブ挿通孔52を除く部分によって閉塞されている。
【0030】
図3及び図6に示すように、前壁51の前面には、タブ挿通孔52の開口縁部に、前方に拡開するテーパ状の誘い込み部53が設けられている。タブ91A、91Bは、誘い込み部53に誘い込まれてタブ挿通孔52からキャビティ12A、12Bに挿入される。また、図1及び図3に示すように、タブ挿通孔52の後部は、キャビティ12A、12Bとほぼ同一の開口径を有してキャビティ12A、12Bに連通し、内部に、本体部21の前端部が嵌合状態で挿入されるようになっている。
【0031】
また、図1及び図3に示すように、ハウジング本体11には、その下面から両側面にかけてリテーナ装着孔15が開口して設けられている。リテーナ装着孔15は、側方から見て方形の断面形状を有し(図3を参照)、各キャビティ12A、12Bに対しほぼ直角に交差して連通している。リテーナ装着孔15には、下方からリテーナ60が挿入される。
【0032】
リテーナ60は合成樹脂製であって、図8及び図9に示すように、上下方向及び幅方向に沿った平板状のリテーナ本体61を有している。図3に示すように、リテーナ本体61は、リテーナ装着孔15に内嵌可能な形状及び大きさで構成されている。リテーナ本体61には、前後方向に貫通する複数の貫通孔62A、62Bが整列して設けられている。図1及び図3に示すように、各貫通孔62A、62Bは、リテーナ60がリテーナ装着孔15に正規に挿入された状態で、各キャビティ12A、12Bに連通して配置される。
【0033】
図8及び図9に示すように、各貫通孔62A、62Bの下縁には、抜止部63が突出して設けられている。図8に示すように、抜止部63は、また、リテーナ本体61の幅方向両端部に凹設された一対の凹段部64にも突出して設けられている。図3に示すように、リテーナ60がリテーナ装着孔15に正規に挿入されると、各抜止部63が対応するキャビティ12A、12Bに下方から進入して端子金具20A及び検知端子20Bのそれぞれの本体部21の後端に係止可能に配置され、これによって端子金具20A及び検知端子20Bがキャビティ12A、12Bに二次的に抜け止めされるようになっている。
【0034】
また、図1及び図8に示すように、リテーナ本体61には、その幅方向両端から前後両側に張り出す平板状の保護壁65が対をなして設けられている。図1に示すように、保護壁65は、ハウジング本体11の幅方向両端面に開口して設けられた装着溝16に嵌合状態で挿入され、リテーナ装着孔15の両側開口を閉塞する。リテーナ60の装着過程では、保護壁65が装着溝16の溝面を摺動することで、リテーナ60の装着動作がガイドされるようになっている。
【0035】
図8及び図9に示すように、リテーナ本体61の前面の下端には、その中央寄りの位置に、幅方向に沿ったリブ状のストッパ部66が突出して設けられている。リテーナ60がリテーナ装着孔15に正規に挿入されると、ストッパ部66がハウジング本体11の下端に当接して、リテーナ60の押し込みが規制されるようになっている。
【0036】
また、図8及び図9に示すように、リテーナ本体61の前面には、上段の各貫通孔62A、62Bのうちの中央寄りに位置する一対の貫通孔62Bの直下に、幅方向に沿ったリブ状の押圧部67が突出して設けられている。押圧部67は、一対の貫通孔62Bの下縁とほぼ平行して両貫通孔62Bを跨るように配置され、図9に示すように、ストッパ部66の上方においてストッパ部66よりも小さい突出量をもって突出する断面略台形状をなしている。
【0037】
押圧部67の下部及びストッパ部66は、側面視で保護壁65に隠れて見えず、両保護壁65によって実質的に覆われている(図9を参照)。したがって、側方からの図示しない外部異物が押圧部67及びストッパ部66と干渉するのが回避され、押圧部67及びストッパ部66が保護壁65によって保護される。また、押圧部67の突出端がストッパ部66の突出端より後方に控えて位置しているため、外部異物がストッパ部66と干渉しても押圧部67と干渉しないこともあり、押圧部68がストッパ部66によって保護され得る。
【0038】
リテーナ60がリテーナ装着孔15に正規に挿入されると、一対の貫通孔62Bが両キャビティ12Bと連通し(図1を参照)、押圧部67が両キャビティ12Bに下方から進入して配置される(図3を参照)。そして、両キャビティ12Bに進入した押圧部67は、検知端子20Bの本体部21の後端下縁部に当接し、検知端子20Bを前側(前壁51の位置する側)に押圧するようになっている。このため、図5に示すように、検知端子20Bの本体部21とリテーナ本体61とのクリアランスが実質的に無い状態となる。また、検知端子20Bにつながる検知線70Bが後方へ引っ張られたときには、検知端子20Bの本体部21に押圧部67が当接する状態が維持され、検知端子20Bの後方への抜け出しが規制される。図5に示すように、押圧部67は、貫通孔62Bに設けられた抜止部63とともに厚肉部68に設けられ、抜止部63とともに検知端子20Bの抜け止めをなす。
【0039】
図8に示すように、押圧部67は、端子金具20Aが挿入されるキャビティ12Aと対応する位置には設けられず、一対のキャビティ12Bと対応する位置に一つのみ設けられている。
【0040】
また、図6及び図7に示すように、ハウジング本体11の上端部には、各キャビティ12A、12Bが整列配置される領域の上方に、レバー収容部17が後方に開放して設けられている。レバー収容部17の上壁には、前後方向に延出してハウジング本体11の前端に開口する導入溝18が設けられている。レバー収容部17には、レバー40が回動可能に収容されて装着されるようになっている。レバー40は板状をなし、所定方向に延出するカム溝41を有している。また、図7に示すように、ハウジング本体11の後端部には、キャップ状の電線カバー30が装着される。各信号線70A及び検知線70Bは、ハウジング本体11から引き出され、電線カバー30で包囲されつつ外部へ導出されるようになっている。
【0041】
次に、コネクタの組み付け手順と作用について説明する。
ハウジング10への組み付け前、一対の検知端子20Bは、それぞれ共通の検知線70Bの両端部に接続され、検知線70Bをループ状に回曲させつつ、本体部21を前方に向けて並列に配置される。また、複数の端子金具20Aは、それぞれ対応する信号線70Aの端部に個別に接続され、同じく本体部21を前方に向けて配置される。
【0042】
続いて、各端子金具20A及び両検知端子20Bは、ハウジング本体11の各キャビティ12A、12Bに後方から挿入され、ランス13によって一次的に抜け止めされる。このとき、各端子金具20A及び両検知端子20Bのそれぞれの前端は、前後方向に関してほぼ同一位置に揃うように配置される。
【0043】
図示はしないが、各端子金具20A及び両検知端子20Bが各キャビティ12A、12Bに挿入される前、リテーナ60は、ハウジング10に対して仮係止位置に留め置かれ、各抜止部63及び押圧部67は、対応する各キャビティ12A、12Bから退避して配置される。このため、各端子金具20A及び両検知端子20Bは、各抜止部63及び押圧部67と干渉することなく各キャビティ12A、12Bに支障なく挿入される。
【0044】
各端子金具20A及び両検知端子20Bが各キャビティ12A、12Bに挿入された後、リテーナ60が上方に押し込まれる。リテーナ60の挿入過程では、押圧部67がリテーナ装着孔15の内面を摺動して摺動抵抗が発生する可能性があるものの、押圧部67が両検知端子20Bと対応した必要最小限の範囲にしか設けられていないため、摺動抵抗がとくに過大になることはない。
【0045】
リテーナ60がハウジング10に対して本係止位置に留め置かれ、リテーナ装着孔15に正規に挿入されると、押圧部67が両検知端子20Bの本体部21の後端下縁部に当接して両検知端子20Bを前方に押圧し、両検知端子20Bの本体部21が前壁51と押圧部67との間に前後方向への遊動を実質的に規制された状態で配置される(図3を参照)。一方、各端子金具20A及び両検知端子20Bのそれぞれの本体部21の後方には、対応する抜止部63が少し隙間をあけて係止可能に対向して配置される。
【0046】
ところで、図2(B)に示すように、検知端子20Bがキャビティ12Bに挿入されると、検知線70Bがハウジング本体11の後方における所定範囲においてループ状に回曲した状態で広がるようにして配置される。このため、ループ状の検知線70Bの両側に位置する信号線70Aも検知線70Bで押圧されて広がり、電線配索のスペース効率を悪化させるおそれがある。これに鑑み、本実施例においては、図1に示すように、ハウジング本体11の後方に突出する検知線70Bが各信号線70Aとともに幅狭に絞り込まれ、その状態で検知線70B及び各信号線70Aの周りに結束具としてのテープ35が巻き付けられることにより、検知線70B及び各信号線70Aがコンパクトにまとめられて一括して結束されるようになっている。とくに、図示する場合は、検知線70Bの広がりが確実に阻止されるように、検知線70Bの折り返し部75がテープ35で覆われてテープ35の内側で密着するように固定されている。
【0047】
続いて、ハウジング10が相手ハウジング80のフード部81内に嵌合される。両ハウジング10、80が浅く嵌合されると、相手ハウジング80のカムフォロア82がハウジング本体11の導入溝18を介してレバー40のカム溝41の入り口に進入する。その状態で、レバー40が回動されると、カムフォロア82がカム溝41の溝面を摺動してカム作用が発揮され、これによって両ハウジング10、80が低嵌合力で互いに嵌合される。図7に示すように、両ハウジング10、80が正規嵌合されると、カムフォロア82がカム溝41の奥側に至り、両ハウジング10、80が離脱規制された状態に保持される。
【0048】
ところで、両ハウジング10、80が正規嵌合される嵌合終盤の段階では、図3に示すように、相手端子金具90Aのタブ91Aがタブ挿通孔52を通して端子金具20Aの本体部21内に挿入され、これに遅れて、相手検知端子90Bのタブ91Bがタブ挿通孔52を通して検知端子20Bの本体部21内に挿入される。このとき、相手端子金具90Aのタブ91Aは端子金具20Aの本体部21内の弾性接触片24に接触して導通接続されるが、相手検知端子90Bのタブ91Bは検知端子20Bの本体部21内の弾性接触片24に未だ接触する位置に至らない。したがって、この段階では、検知回路は開いたままの状態となる。
【0049】
その後、図4に示すように、両ハウジング10、80が正規嵌合されると、相手端子金具90Aのタブ91Aが端子金具20Aの本体部21内に正規深さで挿入されて弾性接触片24との接触状態を維持し、且つ相手検知端子90Bのタブ91Bが弾性接触片24に接触して導通接続される。これにより、検知回路が閉成され、両ハウジング10、80が正規嵌合されたことを電気的に検知することが可能となる。
【0050】
以上説明したように、本実施例によれば、一対の検知端子20Bが検知線70Bを介して互いに接続され、この検知端子20Bが端子金具20Aと同一形状に形成されているため、端子金具20Aと検知端子20Bとを同じ工程で成形することができ、工数及び金型費用を削減することができる。
【0051】
また、一対の検知端子20Bにつながる検知線70Bがループ状になるものの、ループ状の検知線70Bと各信号線70Aがテープ35の巻き付けによって一括して固定されるため、スペース効率が悪化するのを回避することができる。
【0052】
また、相手検知端子90Bのタブ91Bが相手端子金具90Aのタブ91Aよりも短く、本体部21に挿入接続されるタイミングが相手検知端子90Bよりも端子金具20Aのほうが早くなるように設定されているため、端子金具20Aと相手端子金具90Aとが電気的に接続された後、両ハウジング10、80の正規嵌合状態を検知することができ、嵌合検知の信頼性が高められる。
【0053】
さらに、検知端子20Bがキャビティ12Bに挿入された後、リテーナ60がリテーナ装着孔15に正規に挿入されることにより、検知端子20Bが押圧部67により前壁51側に押圧されて、リテーナ60と検知端子20Bとのクリアランスが縮小又は実質的に無くなるため、検知端子20Bがキャビティ12B内で大きく遊動することがなく、検知信頼性を向上させることができる。
【0054】
さらにまた、押圧部67が各端子金具20Aと対応する位置には設けられていないため、リテーナ60の構成が簡略化されるとともに、リテーナ60の装着過程で押圧部67とハウジング本体11との間の摺動抵抗が大きくなることがなく、リテーナ60の装着作業性が悪化するのを回避することができる。
【0055】
<他の実施例>
以下、他の実施例を簡単に説明する。
(1)ハウジングに形状や大きさが異なる複数種の端子金具が収容される場合には、複数種の端子金具のうちの少なくとも1種の端子金具と検知端子が同一形状に形成されるものであればよい。
(2)端子金具及び検知端子は、筒状をなす本体部分の前方にタブが突出する雄型の端子金具として構成されるものであってもよい。
(3)上記実施例においては、前壁がハウジング本体とは別体のフロントホルダに設けられていたが、本発明によれば、前壁がハウジング本体に一体に設けられるものであってもよい。
(4)押圧部が、一対の検知端子のそれぞれと対応する位置に個別に設けられるものであってもよい。
(5)押圧部の全体が、側面視で保護壁に隠れて見えないように保護壁で覆われる構成であってもよい。
(6)検知端子がキャビティに深く挿入されて所定位置よりも前方に位置する場合には、リテーナがリテーナ装着孔に正規に挿入されたときに、押圧部が検知端子の本体部と当接しないこともある。
(7)検知線及び各信号線を束ねる結束具としては、とくに限定されず、テープの代わりに、例えば、タイバンドを用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…ハウジング
12A…(端子金具が挿入される)キャビティ
12B…(検知端子が挿入される)キャビティ
15…リテーナ装着孔
20A…端子金具
20B…検知端子
21…本体部
35…テープ(結束具)
51…前壁
60…リテーナ
65…保護壁
67…押圧部
70A…信号線(信号用の電線)
70B…検知線(検知用の電線)
90A…相手端子金具
90B…相手検知端子
91A…(相手端子金具の)タブ
91B…(相手検知端子の)タブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9