(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記指向性アンテナ毎に設けられ、当該指向性アンテナの、上記無線通信装置の筐体に対する取り付け角度を調整する可動部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。説明の便宜上、各実施形態において同様の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0011】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の一実施形態(実施形態1)に係る無線通信装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、無線通信装置100は、第一無線回路部(無線回路部)21、第二無線回路部(無線回路部)22、制御部25、筐体30および複数の指向性アンテナ3を備えている。
【0012】
無線通信装置100が備える指向性アンテナ3のうち、一部は第一無線回路部21に接続されており(アンテナ群1)、残りは第二無線回路部22に接続されている(アンテナ群2)。第一無線回路部21および第二無線回路部22に接続される指向性アンテナ3の数は、何れも複数であれば特に限定されない。
【0013】
また、第一無線回路部21および第一無線回路部21に接続された指向性アンテナ3(アンテナ群1)によって第一無線機11が構成される。第二無線回路部22および第二無線回路部22に接続された指向性アンテナ3(アンテナ群2)によって第二無線機12が構成される。
【0014】
なお、本発明はこれに限定されず、さらに無線機を含むように構成してもよい。すなわち、無線通信装置100は、第一無線機11および第二無線機12とは異なる1個以上の無線機を構成する、無線回路部と、当該無線回路部に接続された複数の指向性アンテナ3とをさらに備えていてもよい。
【0015】
第一無線回路部21および第二無線回路部22は、指向性アンテナ3を介して無線信号を送受信するための高周波回路を備えた回路部であり、例えば、高周波スイッチ、デュプレクサ、フィルタ、整合回路、アンプ、ミキサ、発振器等を備え得る。第一無線回路部21および第二無線回路部22は、同時に動作可能なように構成されている。換言すれば、第一無線機11および第二無線機12は、同時に動作可能なように構成されている。
【0016】
第一無線回路部21および第二無線回路部22は共に、ベースバンド部である制御部25に接続しており、制御部25は、第一無線回路部21および第二無線回路部22における無線信号の送受信を同時に制御可能なようになっている。
【0017】
第一無線回路部21および第二無線回路部22が動作する周波数は特に限定されず、一実施形態において、第一無線回路部21および第二無線回路部22は、互いに異なる周波数帯において動作するようになっていてもよいし、近接した周波数において動作するようになっていてもよいし、同一の周波数帯で動作するようになっていてもよい(ただし、動作するチャンネルは異なっていてもよい。)。
【0018】
また、第一無線回路部21および第二無線回路部22は、同期して動作させてもよいし、非同期で動作させてもよい。例えば、第一無線回路部21および第二無線回路部22を共にTDD(Time Division Duplex)で動作させる場合、第一無線回路部21および第二無線回路部22を同期させて、互いの送受信のタイミングが重ならないように制御することで、自局内干渉を低減させてもよい。
【0019】
また、一実施形態において、第一無線回路部21および第二無線回路部22は、独立して、MIMO方式または送信ダイバーシチ方式で動作可能である。換言すれば、制御部25は、第一無線回路部21および第二無線回路部22に対して、個別に、MIMO方式または送信ダイバーシチ方式で動作するように制御することができる。
【0020】
筐体30は、第一無線回路部21、第二無線回路部22および制御部25を格納している。筐体30は、特に限定されないが、例えば、樹脂等の誘電体によって製造してもよいし、一部または全体を金属で作成してもよい。
【0021】
図2に、本実施形態に係る無線通信装置100の外観の一例を示す。
図2に示すように、無線通信装置100は、筐体30の外部に接続されたL字型のアンテナユニット1a、1b、1c、2a、2bおよび2cを備えている。アンテナユニット1a、1b、1c、2a、2bおよび2cは、指向性アンテナ3毎に設けられており、筐体30に接続している側から、コネクタ部6、回転部5、および、指向性アンテナ3をその内部に固定する柱状部4を備えている。なお、アンテナユニット1a、1bおよび1cは、アンテナ群1に属し、第一無線回路部21に接続している指向性アンテナ3が組み込まれている。また、アンテナユニット2a、2bおよび2cは、アンテナ群2に属し、第二無線回路部22に接続している指向性アンテナ3が組み込まれている。このように、一実施形態において、同一の無線回路部に接続している指向性アンテナ3が組み込まれているアンテナユニットは、筐体30の同じ面に配列されている。また、一実施形態において、アンテナ群1に属するアンテナユニットと、アンテナ群2に属するアンテナユニットとは、筐体30の互いに背向する面に配列されている。
【0022】
図2中、黒線の矢印で示すように、回転部5は、指向性アンテナ3を回転させる。より詳細には、回転部5は、指向性アンテナ3毎に設けられており、当該指向性アンテナ3を回転させるようになっている。このように、各指向性アンテナ3が独立して回転することで、指向性アンテナ3の指向性の向きを個別に変更することができる。回転部5は、手動で回転するようになっていてもよいし、モータ等の駆動部を備え、自動で回転するようになっていてもよい。また、回転量の制限はなく、例えば、360°回転するようになっていてもよいし、±90°の範囲で回転するようになっていてもよい。
【0023】
このように、本実施形態では、各指向性アンテナ3が独立して回転するようになっていることで、簡易な構成で指向性の向きを変更することができ、設置位置、条件等に合わせて容易に最適な指向性を振り分けることが可能となる。
【0024】
なお、回転部5による指向性アンテナ3の回転は、指向性アンテナ3の指向性(放射パターン)の向きを変化させるものであれば特に限定されない。なぜなら、指向性アンテナ3の指向性の向きを個別に変化させることができれば、自局内干渉を少なくとも低減することができるからである。また、回転部5による指向性アンテナ3の回転は、例えば、指向性アンテナ3の指向性のビーム(主ローブ)方向、サイドローブ方向、および、ヌル方向から選択される一つ以上の向きを変化させるものであることがより好ましい。
【0025】
(アンテナユニット)
続いて、各アンテナユニットの詳細について説明する。
図3は、アンテナユニットの詳細な構造の一例を説明する模式図であり、(a)はアンテナユニットの外観を示し、(b)はアンテナユニットの内部を示す。
【0026】
柱状部4は、樹脂等の誘電体からなるアンテナレドームであり、その内部に、指向性アンテナ3を、固定部4aを介して固定している。柱状部4の形状は特に限定されず、円柱状または楕円柱状であってもよいし、多角柱状であってもよい。また、柱状部4の側面は、平滑であってもよいし、任意の凹凸、例えば、軸方向または周方向に延びる溝または畝、螺旋状の溝または畝が設けられていてもよい。また、柱状部4の側面は、先(コネクタ部6とは反対側)に向かって先細または先太になっていてもよい。
【0027】
ただし、柱状部4の先端側から見た柱状部4の形状を円形にすることで、アンテナユニットの形状を変化させることなく、指向性アンテナ3の指向性のみを変化させることができる。この場合、指向性アンテナ3の指向性の向きを、柱状部4の表面に印刷等でマークすることで確認できるようにしてもよい。
【0028】
また、指向性アンテナ3を格納する格納部は、柱状に限定されず、柱状部4に替えて他の形状の格納部を用いてもよい。その場合であっても、先端側からみた形状を円形とすることにより、アンテナユニットの形状を変化させることなく、指向性アンテナ3の指向性のみを変化させることができる。そのような形状としては、これに限定されないが、球状等の回転体(平面図形が中心軸を中心に回転して生ずる立体)状が挙げられる。
【0029】
一実施形態において、指向性アンテナ3は、パッチアンテナであり、パッチアンテナエレメント3aと、グランド面3bとを備えている。そして、第一無線回路部21または第二無線回路部22に電気的または高周波的に接続された同軸ケーブル7によって給電され、放射素子として動作する。なお、同軸ケーブル7は、パッチアンテナエレメント3aに接続する信号ライン7aと、グランド面3bに接続するグランドライン7bとを備えており、コネクタ部6の端子6aを介して、例えば、第一無線回路部21または第二無線回路部22につながっている筐体30側の端子に接続している。
【0030】
なお、
図3では、指向性アンテナ3の一例としてパッチアンテナを記載しているが、指向性を有するアンテナであればよく、例えば、ダイポールアンテナと、反射板とを組み合わせた指向性アンテナ等であってもよい。また、指向性アンテナ3に給電する給電ラインとして、同軸ケーブル7を示しているが、本発明はこれに限定されず、任意の給電ライン、例えば、基板上に形成されたマイクロストリップライン等でもよい。また、無線通信装置100が備える各指向性アンテナ3は、同じものである必要はなく、各々が互いに異なる構成、指向性を有していてもよい。
【0031】
回転部5は、柱状部4をその中心軸4b周りに回転させる機械要素であり、例えば、二枚の板が枢着している構造を有するものであり得る。回転部5によって、柱状部4がその内部に固定された指向性アンテナ3ごと回転することによって、指向性アンテナ3が回転し、指向性アンテナ3の指向性の向きが変化するようになっている。
【0032】
また、指向性アンテナ3のビーム(主ローブ)方向は、これに限定するものではないが、柱状部4の中心軸4bに対して非平行であることが好適である。特に、
図3中、白抜きの矢印で示すように、中心軸4bに平行な直線に対して、60°以上120°以下の範囲の角度で、より好ましくは75°以上105°以下の範囲の角度で、特に好ましくは90°の角度で交わることが好適である。これにより、
図3中、黒線の矢印で示すような柱状部4の回転に伴って、指向性アンテナ3の指向性の向きを好適に変化させることができる。
【0033】
コネクタ部6は、アンテナユニットを筐体30に接続する部材であり、アンテナユニットにおいて、柱状部4は、回転部5を介して、コネクタ部6に連結している。コネクタ部6における筐体30と接続する側には端子6aが設けられている。コネクタ部6全体は、一体で成型されていることが好ましい。
【0034】
なお、コネクタ部6の形状は、L字型に限定されない。コネクタ部6の湾曲を調整することにより、筐体30に対する柱状部4の取り付け角度を異ならせ、各指向性アンテナ3の指向性の調整範囲を異ならせることができる。各コネクタ部6の形状は、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。このように各コネクタ部6の形状を選択することによって、所望の調整範囲で指向性アンテナ3の指向性を調整することを実現することができる。
【0035】
また、
図5に示すように、コネクタ部6が、機械的に可動なヒンジ構造(可動部)6bを備え、筐体30に対する柱状部4または指向性アンテナ3の取り付け角度が可動な構造であってもよい。このように構成することで、指向性アンテナ3の指向性の調整範囲をさらに拡大し、複数の軸でより自由な調整を実現することができる。
【0036】
このように、無線通信装置100が備える各アンテナユニットは同じものである必要はなく、各々が互いに異なる構成を有していてもよい。
【0037】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、全ての指向性アンテナ3を独立して回転させることができ、これによって、同一の無線回路部(第一無線回路部21または第二無線回路部22)に接続されている指向性アンテナ3のビーム(主ローブ)の向きを個別に調整することが可能である。ここで、主ローブ(メインローブ)はある程度の幅(角度)を持っているため、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3のビーム(主ローブ)の向きを個別に調整することで、基地局方向の利得をそれほど下げることなく、他のアンテナに対してヌルを向けることが可能である。すなわち、第一無線回路部21に接続されている指向性アンテナ3のビーム(主ローブ)の向きを、その通信相手となる基地局方向に概ね向けつつ、第二無線回路部22に接続されている指向性アンテナ3方向にヌル(ビームが向かわない方向)を向けることが可能となる。同様に、第二無線回路部22に接続されている指向性アンテナ3のビーム(主ローブ)の向きを、その通信相手となる基地局方向に概ね向けつつ、第一無線回路部21に接続されている指向性アンテナ3方向にヌルを向けることが可能となる。これを、以下に一例を挙げて詳細に説明する。
【0038】
図9は、自局内干渉の様子を説明する模式図である。
図9の(a)は、単一の指向性アンテナ3の放射パターン8の例を示す図である。
図9に示す例では、指向性アンテナ3は、ビーム(主ローブ)方向A、ヌル方向B、およびサイドローブ方向Cを有する放射パターン8を有している。
図9の(b)に、アンテナ群1に属する指向性アンテナ3のビーム(主ローブ)を全て、第一無線回路部21の通信相手である基地局方向D1に向け、アンテナ群2に属する指向性アンテナ3のビーム(主ローブ)を全て、第二無線回路部22の通信相手である基地局方向D2に向けた場合の自局内干渉の様子を示す。
図9の(b)に示すように、各アンテナ群(同一の無線回路部に接続されているアンテナ群)に同一の指向性を有する多数の指向性アンテナ3が並んでいると、一方のアンテナ群に属する指向性アンテナ3の放射パターン8のサイドローブ方向が、他方のアンテナ群に属する指向性アンテナ3に向い、結果として自局内干渉(同一装置内における干渉)が生じることがある(E1〜E4)。
【0039】
ここで、異なる無線通信回路に接続されている指向性アンテナ3から入力される電力(例えば、
図9の(b)のE1における、右下の指向性アンテナ3から左上の指向性アンテナ3に入力される電力)は、すべて不要な電力(ノイズ)として見えることになる。高品質な通信を行うためには、所望の信号が、ノイズフロアからどの程度高い電力で受けられるかが重要である。したがって、ノイズフロアが上がってしまうと、同じ品質の通信(スループット等)を実現するためには、より高いレベルでの(所望の)信号を受信する必要がある。よって、干渉が発生すると、通信距離が短くなる等の問題が発生し、通信の品質が劣化してしまう。
【0040】
このように、同時に動作可能な複数の無線回路部を備え、無線回路部毎に複数の指向性アンテナを接続している無線通信装置では、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナの指向性を独立に調整せず、ただ単に基地局方向に向けただけでは、すべての指向性アンテナ間の指向性をヌル方向に配置することは困難である。特に、MIMO方式または送信ダイバーシチ方式の通信を行うために、複数の指向性アンテナを同一方向(基地局方向)に向けた場合、干渉が大きくなり、受信感度の劣化が顕著になるおそれがある。例えば、3×3MIMO方式で通信を行う場合、送信および受信のアンテナは、それぞれ3本ずつになるため、1対1の通信に比べて、3×3(=9)倍のノイズが受信回路に入りこむことになり、影響が大きくなる。
【0041】
これに対し、本実施形態に係る無線通信装置100のように、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3の指向性を独立して個別に調整し得るように構成されていれば、
図9の(c)に示すように、一方のアンテナ群に属する指向性アンテナ3の放射パターン8のヌル方向を、他方のアンテナ群に属する指向性アンテナ3に向けるようにして、自局内干渉を容易に回避することができる。
【0042】
すなわち、本実施形態によれば、各無線回路部に接続されている指向性アンテナ3の指向性を、概ね通信相手に向けつつ、他の無線通信装置に接続されている指向性アンテナ3方向にヌルを向けることが可能となり、自局内干渉を大幅に削減することができる。このように、本実施形態によれば、無線通信装置100における自局内干渉の回避を容易化することができ、自局内干渉が小さい良好な通信品質を確保可能な無線通信装置を提供することができる。
【0043】
ここで、無線通信装置100が備える無線回路部(第一無線回路部21および第二無線回路部22)が、近接した周波数で動作するようになっている場合、特に、同一の周波数帯で動作するようになっている場合や、MIMO方式または送信ダイバーシチ方式で動作する場合、自局内干渉の影響による通信品質の低下が顕著となるが、本実施形態によれば、自局内干渉の回避を容易化することができるため、通信品質の低下を抑制することができる。また、無線通信装置100が備える無線回路部が、近接した周波数で動作するようになっていない場合であっても、高調波、ノイズ等に起因して、自局内干渉の影響による通信品質の低下が生じ得るが、本実施形態によれば、このような通信品質の低下を抑制することもできる。
【0044】
また、
図2に示すように、第一無線回路部21に接続されている指向性アンテナ3(アンテナ群1)が、第二無線回路部22に接続されている指向性アンテナ3(アンテナ群2)に対し、筐体30を挟んで反対側に配置されている場合であっても、
図9の(c)に示すように、首尾良く、自局内干渉を回避することができる。
【0045】
なお、アンテナ群同士の配置関係は、筐体30の反対側の側面に配置されているものに限定されない。例えば、
図10に示すように、筐体30の隣り合う側面に配置されているものであってもよい。
図10の配置によれば、アンテナ群1(アンテナユニット1a、1bおよび1c)とアンテナ群2(アンテナユニット2a、2bおよび2c)の向きを90°異ならせることができるため、互いの偏波を異ならせ、自局内干渉を低減することができる。また、筐体30の形状も矩形に限定されず、円形であってもよいし、三角形等のその他の多角形であってもよく、非線対称な形状であってもよい。
【0046】
また、特に、柱状部4がその中心軸4b周りに回転することによって、指向性アンテナ3の指向性の向きを変化させるようになっていることにより、無線通信装置100の外観(デザイン)を変えることなく、各指向性アンテナ3の指向性の向きを変化させることができる上、無線通信装置100が多数の指向性アンテナ3を備えていても、各指向性アンテナ3の指向性の調整の際に、指向性アンテナ3同士が物理的に干渉することを避け、首尾良く所望の指向性に調整することができる。
【0047】
(指向性調整のバリエーション)
図4は、無線通信装置100における指向性調整のバリエーションを示す斜視図である。
図4中、白抜きの矢印は、各アンテナユニットが備える指向性アンテナ3の指向性を示す。一つの局面において、
図4の(a)〜(c)に示すように、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3を備えるアンテナユニットを一組として(すなわち、アンテナユニット1a、1bおよび1cの組、およびアンテナユニット2a、2bおよび2cの組)、向きを調整することができる。この場合、各指向性アンテナ3を、単独使用してもよいし、MIMO方式または送信ダイバーシチ方式での無線通信に使用してもよいし、ビームフォーミング方式での無線通信に使用してもよい。また、他の局面において、
図4の(d)のアンテナ群2において示すように、各指向性アンテナ3を別々の方向に指向性を有するように調整することによって、幅広いエリアを確保するようにしてもよい。さらには、アンテナ群1および2のそれぞれに含まれる3本のうち2本の指向性アンテナ3をMIMO方式または送信ダイバーシチ方式での無線通信に使用するようにしてもよい。この場合、残りの1本の指向性アンテナ3は、ダイバーシチで使用しても、使用しなくてもよい。なお、何れのケースにおいても、上述したように、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3の指向性を個別に調整することにより、自局内干渉を避けることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態において、無線通信装置100の設置方法は特に限定されないが、例えば、無線通信装置100の設置時に、無線通信におけるスループットが最大、またはエリアが最大になるように各指向性アンテナ3の向きを調整するものであることが好ましく、例として、以下の設置方法1および設置方法2が挙げられる。下記設置方法1および設置方法2は、何れか一方のみを使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。何れの設置方法においても、無線通信装置100を設置する環境下において同一の無線回路部に接続されている各指向性アンテナ3の回転角度を独立に変化させたときの、無線通信装置100の無線通信品質を推定または測定する評価工程と、評価工程において推定または測定された無線通信品質を参照して、無線通信装置100の各指向性アンテナ3の設置時の回転角度を個別に設定する設定工程と、無線通信装置100の各指向性アンテナ3の回転角度が、設定工程において設定された設置時の回転角度になるように、無線通信装置100を設置する設置工程と、を包含する。
【0049】
(設置方法1)
図11の(a)は、無線通信装置100の設置方法の一例(設置方法1)を説明するフローチャートである。設置方法1は、設置する現場到着前に予め設置する指向性アンテナ3の回転角度(向き)を算出しておく方法である。
【0050】
まず、無線通信装置100を設置する場所の環境(例えば、壁、天井、床等)を示す情報(設置環境情報)をシミュレーションツールに入力する(ステップS1)。例えば、シミュレーションツール上において、フロアマップ上に、壁、扉等の遮蔽物(材質選択を含み得る)を配置する。シミュレーションツールとしては、例えば、AirMagnet(http://www.toyo.co.jp/airmagnet/d_airmagnet_pn.html)等の公知の電波伝搬についてのシミュレーションツールを好適に用いることができる。
【0051】
続いて、シミュレーションにより、最適なアンテナの向きを算出する。例えば、シミュレーションツール上において、遮蔽物が配置されたフロアマップ上に、さらに指向性アンテナ3のビームパターンを配置し、指向性アンテナ3の回転角度(向き)を変化させながら、無線通信におけるスループット、RSCP(Received Signal Code Power)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、カバレッジエリアといった無線通信品質を計算により推定する(ステップS2、評価工程)。そして、無線通信品質の計算値が最大になるように、指向性アンテナ3の回転角度(向き)を変化させて、最適な指向性アンテナ3の回転角度(設置時の回転角度)を設定する(ステップS3、設定工程)。このとき、同一の無線回路部に接続されている各指向性アンテナ3の回転角度を独立に変化させ、各指向性アンテナ3の回転角度を個別に設定することにより、上述した理由により、自局内干渉が抑制され、無線通信品質が高い、より好適な指向性アンテナ3の回転角度を設定することができる。
【0052】
特に、無線通信品質として、RSCPまたはRSSIのような、使用するチャンネルの周波数の信号のレベルに対応する数値を計算することにより、キャリア信号の他に、ノイズレベルがどの程度かも算出できるため、自局内干渉をさらに抑制することができる。なお、シミュレーションでは、各指向性アンテナ3の回転角度だけでなく、変調方式を変更した時のスループット、エリア等に関しても算出してもよい。
【0053】
そして、各指向性アンテナ3の回転角度が、ステップS3において設定した値になるように調整して、無線通信装置100を設置する(ステップS4、設置工程)。本設置方法では、シミュレーションツール自体の完成度、および、どの程度実環境とシミュレーション環境とを同じにできるかによって、精度が変化する。
【0054】
(設置方法2)
図11の(b)は、無線通信装置100の設置方法の他の例(設置方法2)を説明するフローチャートである。設置方法2は、設置する現場にて設置する指向性アンテナ3の回転角度を調整する方法である。
【0055】
まず、実際に設置する現場に、無線通信装置100を仮設置し(ステップS11)、指向性アンテナ3の回転角度(向き)を回転させて、無線通信装置100からRSSIやRSCP等の無線通信品質の情報を表示または出力させる(ステップS12、評価工程)。そして、スループット等が最大になるように各指向性アンテナ3の回転角度を個別に設定する(ステップS13、設定工程)。このとき、設置方法1と同様に、同一の無線回路部に接続されている各指向性アンテナ3の回転角度を独立に変化させ、各指向性アンテナ3の回転角度を個別に設定することにより、上述した理由により、自局内干渉が抑制され、無線通信品質が高い、より好適な指向性アンテナ3の回転角度を設定することができる。そして、各指向性アンテナ3の回転角度が、ステップS13において設定した値になるように調整して、無線通信装置100を本設置する(ステップS4、設置工程)。
【0056】
なお、ステップS12では、無線通信装置100に表示部を設けて、表示部にスループットの情報を表示させるようにしてもよいし、無線通信装置100が、有線または無線の情報通信(伝達)手段を介して、スループット等の情報を無線通信装置100以外の表示装置に転送するようにしてもよい。有線手段の例としては、LANケーブル、USB等が挙げられる。また、無線手段の例としては、WiFi(登録商標)、Z−Wave、Wi−SUN、ZigBee(登録商標)等が挙げられる。無線手段の場合は、第一無線機11、第二無線機12または任意の指向性アンテナ3を使用してもよく、他の構成を備えていてもよい。無線通信装置100以外の表示装置としては、特に限定されず、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等を用い得る。また、ステップS12において、目標とするスループット等の閾値を超えたときに、無線通信装置100または無線通信装置100以外の出力装置が、音を出力して知らせる構成であってもよい。
【0057】
〔実施形態2〕
図6は、実施形態2に係る無線通信装置100の外観の一例を示す斜視図である。実施形態2では、コネクタ部6が直線状であり、アンテナユニット1a、1b、1c、2a、2b、2cはストレート(直線)型の形状を有している。コネクタ部6の形状をこのように変更することで、実施形態1とは、筐体30に対する柱状部4の取り付け角度を異ならせ、各指向性アンテナ3の指向性の調整範囲を異ならせることができる。
【0058】
図7は、実施形態2に係る無線通信装置100における指向性調整のバリエーションを示す斜視図である。
図7中、白抜きの矢印は、各アンテナユニットが備える指向性アンテナ3の指向性を示す。実施形態1と同様に、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3を備えるアンテナユニットを一組として向きを調整して、各指向性アンテナ3を単独で、または、全部もしくは一部を、MIMO方式、送信ダイバーシチ方式もしくはビームフォーミング方式での無線通信に使用してもよいし(
図7の(a)〜(e))、各指向性アンテナ3を別々の方向に指向性を有するように調整することによって、幅広いエリアを確保するようにしてもよい(
図7の(f))。なお、本実施形態においても、実施形態1と同様に、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3の指向性を個別に調整することにより、自局内干渉を避けることが好ましい。
【0059】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態(実施形態3)として、各指向性アンテナ3の指向性の調整可能な範囲をさらに変更するための技術を説明する。実施形態3において、無線通信装置100は、実施形態1において説明した直線状のアンテナユニットと、実施形態2において説明したL字型のアンテナユニットとの両方を備えている。換言すれば、筐体30に接続されているコネクタ部6には、筐体30に対する柱状部4の取り付け角度を互いに異ならせる複数種類のコネクタ部6が含まれていてもよい。
図8は、実施形態3に係る無線通信装置100の外観の例を示す斜視図である。
図8の(a)に示すように、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3を備えるアンテナユニットが同一の形状を有していてもよいし、
図8の(b)に示すように、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3を備えるアンテナユニットが互いに異なる形状を有していてもよい。以上の構成により、各指向性アンテナ3の指向性の調整可能な範囲を所望のものとすることができる。特に、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナ3の指向性をバラバラにして幅広いエリアを確保する場合に効果を奏する。また、ストレート型のアンテナユニットと、L字型のアンテナユニットとを組み合わせることにより、各指向性アンテナ3の偏波を直交させることができ、より自局内干渉を抑えることが可能になる。
【0060】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る無線通信装置(100)は、同時に動作可能な複数の無線回路部(第一無線回路部21および第二無線回路部22)と、該無線回路部毎に複数個接続されている指向性アンテナ(3)と、該指向性アンテナ毎に設けられ、当該指向性アンテナの指向性の向きを変化させるように当該指向性アンテナを回転させる回転部(5)と、を備えている。
【0061】
上記の構成によれば、同時に動作可能な複数の無線回路部を備え、無線回路部毎に複数の指向性アンテナを接続している無線通信装置において、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナの指向性を独立して個別に調整し得るため、自局内干渉の回避を容易化することができる。
【0062】
本発明の態様2に係る無線通信装置は、上記態様1において、上記複数の無線回路部は、同一の周波数帯で動作するようになっていてもよい。また、本発明の態様3に係る無線通信装置は、上記態様1または2において、各無線回路部は、MIMO方式または送信ダイバーシチ方式で動作可能であるものであってもよい。
【0063】
上記の構成によれば、自局内干渉の影響による通信品質の低下が顕著となるが、本発明によれば、自局内干渉の回避を容易化することができるため、通信品質の低下を抑制することができる。
【0064】
本発明の態様4に係る無線通信装置は、上記態様1〜3において、上記指向性アンテナ毎に設けられ、当該指向性アンテナの、無線通信装置の筐体に対する取り付け角度を調整する可動部(ヒンジ構造6b)をさらに備えているものであってもよい。
【0065】
上記の構成によれば、指向性アンテナ3の指向性の調整範囲をさらに拡大し、より自由な調整を実現することができる。
【0066】
本発明の態様5に係る無線通信装置は、上記態様1〜4において、上記指向性アンテナ毎に設けられ、当該指向性アンテナをその内部に固定する柱状部(4)をさらに備え、上記回転部は、該柱状部を、当該柱状部の中心軸周りに回転させることによって、上記指向性アンテナを回転させるものであってもよい。
【0067】
上記の構成によれば、無線通信装置の外観(デザイン)を変えることなく、各指向性アンテナの指向性の向きを変化させることができる上、無線通信装置が複数の指向性アンテナを備えていても、各指向性アンテナの指向性の調整の際に、指向性アンテナ同士が物理的に干渉することを避け、首尾良く所望の指向性に調整することができる。
【0068】
本発明の態様6に係る無線通信装置は、上記態様5において、上記指向性アンテナの主ローブ方向は、上記柱状部の中心軸に平行な直線に対して60°以上120°以下の角度で交わっていてもよい。
【0069】
上記の構成によれば、柱状部の回転によって、指向性アンテナの指向性の向きを好適に変化させることができる。
【0070】
本発明の態様7に係る無線通信装置は、上記態様5または6において、上記複数の無線回路部を格納する筐体(30)を備え、上記指向性アンテナと、当該指向性アンテナが固定されている上記柱状部と、当該柱状部を回転させる上記回転部とによって、アンテナユニット(1a、1b、1c、2a、2b、2c)が構成され、該アンテナユニットは、当該アンテナユニットを上記筐体に接続するコネクタ部(6)をさらに備えており、該アンテナユニットにおいて、上記柱状部は、上記回転部を介して、該コネクタ部に連結しているものであってもよい。
【0071】
上記の構成によれば、上記無線通信装置を好適に実現することができる。特に、筐体に接続するアンテナユニットのコネクタ部の形状を選択することにより、指向性アンテナの指向性の調整範囲を所望の範囲とすることができる。
【0072】
本発明の態様8に係る無線通信装置は、上記態様7において、上記筐体に接続されている上記コネクタ部には、上記筐体に対する上記柱状部の取り付け角度を互いに異ならせる複数種類のコネクタ部が含まれていてもよい。
【0073】
上記の構成によれば、指向性アンテナの指向性の調整範囲を所望の範囲とすることができる。特に、同一の無線回路部に接続されている指向性アンテナの指向性をバラバラにして幅広いエリアを確保する場合に効果を奏する。
【0074】
本発明の態様9に係る無線通信装置は、上記態様7または8において、上記複数の無線回路部には、第一無線回路部(21)と第二無線回路部(22)とが含まれており、第一無線回路部に接続されている上記指向性アンテナは、第二無線回路部に接続されている上記指向性アンテナに対し、上記筐体を挟んで反対側に配置されていてもよい。
【0075】
上記の構成によれば、
図9に示すように、自局内干渉が生じ得るが、本発明によれば、そのような自局内干渉の回避を容易化することができる。
【0076】
本発明の態様10に係る無線通信装置の設置方法は、上記態様1〜9の無線通信装置の設置方法であって、上記無線通信装置を設置する環境下において同一の上記無線回路部に接続されている各指向性アンテナの回転角度を独立に変化させたときの、上記無線通信装置の無線通信品質を測定または推定する評価工程と、該評価工程において測定または推定された該無線通信品質を参照して、上記無線通信装置の各指向性アンテナの設置時の回転角度を個別に設定する設定工程と、上記無線通信装置の各指向性アンテナの回転角度が、該設定工程において設定された該設置時の回転角度になるように、上記無線通信装置を設置する設置工程と、を包含する。
【0077】
上記の構成によれば、無線通信装置を設置する環境下において同一の無線回路部に接続されている各指向性アンテナの回転角度を独立に変化させたときの、無線通信装置の無線通信品質を測定または推定した結果に応じて、無線通信装置の各指向性アンテナの設置時の回転角度を個別に設定することにより、自局内干渉が抑制され、無線通信品質が高い状態で無線通信装置を設置することができる。