特許第6393427号(P6393427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393427
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】軸力特性が改善されたスチームタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 1/32 20060101AFI20180910BHJP
   F01D 3/00 20060101ALI20180910BHJP
   F01D 5/18 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   F01D1/32
   F01D3/00
   F01D5/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-531312(P2017-531312)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公表番号】特表2018-502247(P2018-502247A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】KR2015009052
(87)【国際公開番号】WO2016104915
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年6月9日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0188810
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515323054
【氏名又は名称】ポスコ エナジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン フォン
(72)【発明者】
【氏名】オウ,スン カン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジュ チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ タエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユン イル
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0173991(US,A1)
【文献】 特表2006−519335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/32
F01D 3/00
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内で軸受によって回動自在に支持されるタービン軸と、
前記タービン軸と一体に結合され、作動流体が噴射されながら回転するように少なくとも1つのノズル孔が内部に一体に設けられ、前記タービン軸の軸方向に沿って積層される複数のディスク形状のノズル回転体とを含んでなり、
前記ノズル孔は、前記ノズル回転体の内部から外部に前記作動流体が吐出されるように、前記ノズル回転体の外周面に貫通するように形成され、
前記作動流体が吐出される前記ノズル孔は、当該ノズル孔の長手方向が前記ノズル回転体の外周面の法線方向(n)に対してタービン軸の軸方向(c)に傾斜する内壁面を有し、
前記内壁面の傾斜方向は、前記作動流体の排気側に近づくにつれて前記タービン軸から離れるような方向であることを特徴とする、スチームタービン。
【請求項2】
前記ノズル孔は、前記ノズル回転体の回転軸に対して複数個が回転対称となるように設けられることを特徴とする、請求項1に記載のスチームタービン。
【請求項3】
前記ノズル孔の内壁面の傾斜方向は、前記作動流体の流れ方向であることを特徴とする、請求項1に記載のスチームタービン。
【請求項4】
各ノズル回転体のノズル孔の内壁面の傾斜角度が互いに異なることを特徴とする、請求項1に記載のスチームタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームタービンに係り、さらに詳しくは、多段に連結される複数のノズル回転体の回転駆動力を伝達するタービン軸を支持する軸受(bearing)要素の負荷を低減することが可能なスチームタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来技術に係るスチームタービンの構成図である。
【0003】
図1を参照すると、従来技術に係るスチームタービンシステムは、第1タービン1と第2タービン2が2ステージ(stage)に構成され、各タービンに作用するトルクを同一にして、タービン軸3を支持する軸受4に作用する軸方向荷重を相殺させることにより、軸受に作用する荷重を低減している。
【0004】
しかし、このような従来技術のスチームタービンシステムは、タービンを2ステージに構成することによるコストアップが発生し、全体的なタービンサイズが大きくなるという欠点がある。
【0005】
他の従来技術として、スチーム噴射による反作用を利用したスチームタービンが多数提案されており、この種のスチームタービンは、排出されるスチームエネルギーの反作用によって回転エネルギーを得るので構造が簡単であり、高い熱効率も得ることができるため、中小容量の原動機に適する。
【0006】
例えば、韓国公開特許第10−2012−47709号公報(公開日:2012年5月14日)、韓国公開特許第10−2013−42250号公報(公開日:2013年4月26日)及び韓国登録特許第10−1229575号公報(登録日:2013年1月29日)では、反作用式タービン装置を示している。
【0007】
図1は従来技術に係る反作用式スチームタービンの一部を切開して示す構成図である。
【0008】
図1を参照すると、スチームタービンは、タービン軸10と、接線方向に作動流体の噴射が行われる多数のノズル回転体21を有するローター20と、ローター20を回動自在に支持し且つ作動流体によってローター20を回転駆動するように作動流体の流路を提供するハウジング30とから構成される。
【0009】
ローター20は、多数のノズル回転体21がタービン軸10に沿って互いに離隔して多段に構成され、それぞれのノズル回転体21は、一対のディスクから構成される。各ノズル回転体は、一側の軸方向に作動流体が流入する流入孔と、一対のディスクの内部に設けられた排気流路に沿って接線方向に作動流体の噴射が行われるように穿設される多数のノズル孔とを有する。
【0010】
ハウジング30は、略円筒状のボディ部31と、作動流体が流入するようにボディ部31の一側に設けられる流入部32と、流入部32他側に位置し、作動流体の排気が行われるようにボディ部31に設けられる排気部33と、ボディ部31の内周面に設けられ、それぞれのノズル回転体21同士の間に位置する隔壁部34とを含んでなる。
【0011】
ハウジング30は、タービン軸10を回動支持する軸受35をさらに含む。
【0012】
図3は従来技術のスチームタービンの断面構成図である。図3を参照すると、右側に流入した作動流体(スチーム)は、各ノズル回転体21の中央に流入し、ノズル回転体21の外周面の接線方向に設けられたノズル孔から吐出された後、次段のノズル回転体に流入して各段のノズル回転体21を回転させる。
【0013】
図4は従来技術のスチームタービンの要部構成図である。図4を参照すると、各ノズル回転体21においてタービン軸10の軸方向に沿って行われる作動流体の流れによって軸方向の力が作用し、これにより、全体的に図面上の左方向に軸受35に軸力F3が作用することになり、軸受35はこの軸力を支持するように反力F4が作用する。
【0014】
このように、従来技術のスチームタービンは、軸方向の作動流体の流れ構造によって作用する軸方向の力によって軸受の寿命を短縮させるうえ、軸方向の荷重を支持することが可能な特殊な軸受(ティルティングパッド軸受(tilting pad bearing)など)が求められて製造コストを上昇させるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2012−47709号公報(公開日:2012年5月14日)
【特許文献2】韓国公開特許第10−2013−42250号公報
【特許文献3】韓国登録特許第10−1229575号公報(登録日:2013年1月29日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、多段に連結される複数のノズル回転体の回転駆動力を伝達するタービン軸を支持する軸受要素の負荷を低減することが可能なスチームタービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係るスチームタービンは、ハウジングと、前記ハウジング内で軸受121によって回動自在に支持されるタービン軸と、前記タービン軸と一体に結合され、作動流体が噴射されながら回転するように少なくとも1つのノズル孔が内部に設けられ、前記タービン軸の軸方向に沿って積層される複数のディスク形状のノズル回転体とを含んでなり、前記ノズル孔は、前記ノズル回転体の外周面の法線方向nに対してタービン軸の軸方向cに傾斜を有することを特徴とする。
【0018】
好ましくは、本発明において、前記ノズル孔は、前記ノズル回転体の回転軸に対して複数個が回転対称となるように設けられることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、本発明において、前記ノズル孔は作動流体の流れ方向に傾斜を有することを特徴とする。
【0020】
好ましくは、本発明において、各ノズル回転体のノズル孔の傾斜角度は互いに異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスチームタービンは、多段に構成された複数のノズル回転体のノズル孔が一定の傾斜を有するように設けられることにより、ノズル孔から吐出されるスチームにより発生する全体軸方向反力と、ノズル孔から吐出された噴出力の軸方向の合力とが互いに相殺するようにしてタービン軸の軸方向の負荷を軽減させて応力発生による振動/疲労の問題を最小限に抑え、軸受の寿命短縮を低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術に係るスチームタービンの構成図である。
図2】他の従来技術としてスチームタービンの一部を切開して示す構成図である。
図3】従来技術のスチームタービンの断面構成図である。
図4】従来技術のスチームタービンの要部構成図である。
図5】本発明に係るスチームタービンの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に提示される特定の構造的または機能的説明は単に本発明の概念による実施形態を説明するために例示されたものに過ぎず、本発明の概念による実施形態は様々な形態で実施できる。本明細書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならず、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更物、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0024】
一方、本発明において、「第1」および/または「第2」等の用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素はこれらの用語に限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の概念による権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素とも命名でき、これと同様に第2構成要素は第1構成要素とも命名できる。
【0025】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる、或いは「接続されて」いると記載された場合には、該他の構成要素に直接連結または接続されていることもあるが、それらの間に別の構成要素が介在することもあると理解されるべきである。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる、或いは「直接接続されて」いると記載された場合には、それらの間に別の構成要素が介在しないと理解されるべきである。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち「〜間に」と「すぐに〜間に」、または「〜に隣り合う」と「〜に直接隣り合う」などの表現も同様に解釈されるべきである。
【0026】
本明細書で使用する用語は、単に特定の実施形態を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
図5は本発明に係るスチームタービンの構成図であって、理解を助けるために、作動流体は、右側から流入して各ノズル回転体を経由した後に、左側に排気されるものと説明し、nはノズル回転体の外周面における法線方向を示し、tはノズル回転体の外周面におけるタービン軸の軸方向cへの接線方向を示す。
【0029】
図5に示すように、本発明のスチームタービンは、ハウジング110と、ハウジング110内で軸受121によって回動自在に支持されるタービン軸120と、タービン軸120と一体に結合され、作動流体が噴射されながら回転するように少なくとも1つのノズル孔131が内部に設けられ、タービン軸120の軸方向に沿って積層される複数のディスク形状のノズル回転体130とを含んでなり、ノズル孔131は、ノズル回転体130の外周面の法線方向nに対してタービン軸120の軸方向cに傾斜を有することを特徴とする。
【0030】
ハウジング110は、タービンの外観を構成するボディ部111と、ボディ部111から一体に内側に拡張されて各ノズル回転体130を区画する隔壁部112とを含むことで、各ノズル回転体130から吐出された作動流体は、隔壁部112に沿って次段のノズル回転体の中央に作動流体の流れを誘導する。
【0031】
特に、本発明において、ノズル回転体130は外周面にノズル孔131が設けられ、この際、ノズル孔131は外周面の法線方向nに対してタービン軸120の軸方向cに一定の角度θの傾斜(0<θ<90°)を有する。
【0032】
好ましくは、ノズル孔131の傾斜方向は作動流体の流れ方向に傾斜を有する。
【0033】
このように傾斜を有するノズル孔131から作動流体が吐出されながら所定の噴出力f1が発生する。この際、吐出された作動流体はハウジング内で噴出力f1によって反力f2が作用する。
【0034】
一方、反力f2の接線方向成分f2_tは、作動流体の流れによる軸力と反対の方向に作用して作動流体による軸力を相殺させる。
【0035】
傾斜を有するノズル孔131による接線方向成分f2_tによる全体の力は、次の数式で表される。
【0036】
[数式]
F6=3×f2・sinθ
=−3×f1・sinθ
=−(r1+r2+r3)
=−R5
【0037】
このように、傾斜を有するノズル孔から吐出されるスチームにより発生する全体の軸方向の反力F6は、ノズル孔から吐出された噴出力f1の軸方向の合力F5と同一にすることにより、タービン軸120の軸方向の負荷を軽減させて応力発生による振動/疲労の問題を最小限に抑え、軸受の寿命軽減を防止することができる。
【0038】
一方、ノズル孔から吐出された噴出力f1の法線方向成分f2_nは、ノズル回転体130のノズル孔を回転軸に対して複数個が回転対称となるように設けることにより、互いに相殺できる。
【0039】
例えば、ノズル回転体130の外周面に2つのノズル孔が互いに180°の夾角をもって配置されることにより、ノズル孔から吐出された噴出力f1の法線方向成分f2_nは互いに相殺できる。
【0040】
本実施形態では、理解を助けるために、各ノズル回転体の噴出力f1が同一であると説明したが、実質的に各段のノズル回転体の作動流体の噴出力は差が発生し、これを反映して各段のノズル回転体のノズル孔の傾斜角度を最適化することで、各ノズル回転体におけるノズル孔の傾斜角度は互いに異なり得る。
【0041】
例えば、作動流体の流入部に隣接するノズル回転体は、排気部に隣接するノズル回転体と比較して相対的に作動流体の軸方向の軸力が大きく発生し、よって、流入部に隣接するノズル回転体はノズル孔の傾斜角がさらに大きく製作できる。
【0042】
以上で説明した本発明は、前述した実施形態及び添付図面によって限定されるものではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更を加え得ることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【符号の説明】
【0043】
110 ハウジング
120 タービン軸
121 軸受
130 ノズル回転体
131 ノズル孔
図1
図2
図3
図4
図5